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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023165339
(43)【公開日】2023-11-15
(54)【発明の名称】車両の車室内構造
(51)【国際特許分類】
   B60R 5/04 20060101AFI20231108BHJP
   B60R 13/02 20060101ALI20231108BHJP
   B60N 2/32 20060101ALI20231108BHJP
【FI】
B60R5/04 T
B60R13/02 B
B60N2/32
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022076244
(22)【出願日】2022-05-02
(71)【出願人】
【識別番号】000002082
【氏名又は名称】スズキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099623
【弁理士】
【氏名又は名称】奥山 尚一
(74)【代理人】
【識別番号】100125380
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 綾子
(74)【代理人】
【識別番号】100142996
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 聡二
(74)【代理人】
【識別番号】100166268
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 祐
(74)【代理人】
【識別番号】100217076
【弁理士】
【氏名又は名称】宅間 邦俊
(74)【代理人】
【識別番号】100169018
【弁理士】
【氏名又は名称】網屋 美湖
(74)【代理人】
【氏名又は名称】有原 幸一
(72)【発明者】
【氏名】八百 悠介
【テーマコード(参考)】
3B087
3D022
3D023
【Fターム(参考)】
3B087CB03
3B087CB12
3D022BA07
3D022BB04
3D022BC08
3D022BC18
3D023BB07
3D023BC01
3D023BD18
3D023BD28
3D023BE02
(57)【要約】
【課題】車両用シートの状態に応じて拡張された車室空間における快適性を向上できる車両の車室内構造を提供する。
【解決手段】車両1の車室内構造は、シートバック22を後方に倒しにしたときに該シートバック22の座面の後部が水平となる水平位置にシートバック22を位置調整可能なフロントシート2と、車室内におけるフロントシート2の後方側に配置されるラゲッジボード4と、ラゲッジボード4のボード面が水平となるようにラゲッジボード4を支持する支持部5と、を備え、シートの状態に応じて車室空間を拡張可能に構成されている。支持部5は、水平位置にあるシートバック22の後面22Cとラゲッジボード4の前面4Aとが対面する対面位置に、ラゲッジボード4を支持している。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シートバックを後方に倒しにしたときに該シートバックの座面の後部が水平となる水平位置に前記シートバックを位置調整可能な車両用シートと、
車室内における前記車両用シートの後方側に配置されるラゲッジボードと、
前記ラゲッジボードのボード面が水平となるように前記ラゲッジボードを支持する支持部と、を備え、
前記車両用シートの状態に応じて車室空間を拡張可能な車両の車室内構造において、
前記支持部は、前記水平位置にある前記シートバックの後面と前記ラゲッジボードの前面とが対面する対面位置に、前記ラゲッジボードを支持することを特徴とする車両の車室内構造。
【請求項2】
前記ラゲッジボードのボード面は、前記支持部により前記対面位置に支持された状態で、前記水平位置にある前記シートバックの後面の上端よりも下方に配置されていることを特徴とする請求項1に記載の車両の車室内構造。
【請求項3】
前記シートバックは、前記座面を形成するシートバッククッションと、該シートバッククッションを支持するシートバックフレームと、を有し、
前記ラゲッジボードのボード面は、前記支持部により前記対面位置に支持された状態で、前記水平位置にある前記シートバックにおける前記シートバックフレームの上面よりも上方の位置に配置されていることを特徴とする請求項2に記載の車両の車室内構造。
【請求項4】
前記対面位置は、前記水平位置にある前記シートバックの後面と前記ラゲッジボードの前面とが隣接する第1対面位置と、前記水平位置にある前記シートバックの後面に対して前記ラゲッジボードの前面が前記第1対面位置よりも後方に位置する第2対面位置と、を含み、
前記支持部により支持された前記ラゲッジボードを前記第1対面位置または前記第2対面位置に固定にするための位置決め部を備えることを特徴とする請求項1に記載の車両の車室内構造。
【請求項5】
前記位置決め部は、
車室内における前記車両用シートの後方側に設けられ、前記支持部により支持された前記ラゲッジボードに当接する当接部と、
前記ラゲッジボードに設けられ、前記当接部が当接する被当接部と、を有し、
前記当接部および前記被当接部の一方が、前記第1対面位置および前記第2対面位置にそれぞれ対応させて複数設けられていることを特徴とする請求項4に記載の車両の車室内構造。
【請求項6】
前記支持部は、車室の側壁に設けられており、
前記車室の側壁には、車室内側に突出する弾性体が設置され、
前記ラゲッジボードは、前記支持部により前記対面位置に支持された状態で、前記弾性体に当接していることを特徴とする請求項1に記載の車両の車室内構造。
【請求項7】
前記弾性体は、前記対面位置に支持された前記ラゲッジボードよりも高い位置において、前記車室の側壁に着脱可能に固定されていることを特徴とする請求項6に記載の車両の車室内構造。
【請求項8】
車室内における前記車両用シートの後方側に配置されるリヤシートを備え、
前記リヤシートは、乗員が着座するリヤ座部と、該リヤ座部に支持されるリヤシートバックと、を有し、
前記リヤ座部は、車室のフロア面側に位置する収納位置、および該収納位置よりも上方に位置する展開位置に位置調整可能に構成され、
前記リヤシートバックは、前記リヤ座部と重なる重ね位置に位置調整可能に構成され、
前記支持部は、前記対面位置よりも高く、かつ、車両の運転操作を行う運転操作部と重なる高さ位置に、前記ラゲッジボードを支持可能に構成されていることを特徴とする請求項1に記載の車両の車室内構造。
【請求項9】
前記ラゲッジボードの車幅方向の幅は、車体の後部に設けられたバックドア開口の車幅方向の幅よりも広く、
前記支持部は、前記ラゲッジボードを支持する支持面を有し、
前記支持面の少なくとも一部は、前記バックドア開口の側縁部よりも車幅方向外側に位置していることを特徴とする請求項1に記載の車両の車室内構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の車室内構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車等の車両の後席側に設置される車両用シートとして、シートバックを前側に折り畳み、座部(シートクッション)とともに前方の足元スペースに収納することで、荷室スペースを拡大することが可能なチルトダウン式(ダイブダウン式)の車両用シートが知られている。例えば、特許文献1には、ダイブダウン式の車両用シートを後席だけでなく前席にも適用し、それぞれを収納状態としたときにシートバック背面と荷室フロア面とが略同一平面となるようにすることよって、車室空間を拡張して車室内での車中泊等を可能にした車両が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2019-130937号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記のような従来の車両の車室内構造については、車室空間の拡張時に、車室空間の下面(フロア面)の一部がシートバックの背面によって構成されることになるので、車室内の快適性が失われてしまう可能性があった。例えば、シートバックの背面側は、乗員が体を預けるシートバックの前面側に比べて、クッション材の厚みが薄く、かつ、背面の内側に金属製のシートバックフレームが配置されていることが多い。このため、シートバックの背面を拡張時の車室空間の下面の一部としてしまうと、乗員がシートバックの背面部分に違和感(硬さ)を覚えやすい。また例えば、シートバックの背面に回動展開式の補助テーブルが設けられている場合、車室空間の拡張時に補助テーブルを利用できなくなるため、乗員が食事やPC等を用いた事務作業を行い難くなってしまう。
【0005】
本発明は上記の点に着目してなされたもので、車両用シートの状態に応じて拡張された車室空間における快適性を向上できる車両の車室内構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため本発明の一態様は、シートバックを後方に倒しにしたときに該シートバックの座面の後部が水平となる水平位置に前記シートバックを位置調整可能な車両用シートと、車室内における前記車両用シートの後方側に配置されるラゲッジボードと、前記ラゲッジボードのボード面が水平となるように前記ラゲッジボードを支持する支持部と、を備え、前記車両用シートの状態に応じて車室空間を拡張可能な車両の車室内構造を提供する。該車両の車室内構造において、前記支持部は、前記水平位置にある前記シートバックの後面と前記ラゲッジボードの前面とが対面する対面位置に、前記ラゲッジボードを支持することを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明の一態様に係る車両の車室内構造によれば、車両用シートの状態に応じて拡張された車室空間の下面の一部が、車両用シートにおけるクッション性の高いシートバックの座面で構成されるようになるとともに、シートバックの座面の後部とラゲッジボードとの段差が小さくなるので、拡張された車室空間における快適性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の一実施形態に係る車両の車室内構造において車室空間をベッドモードで拡張した状態を示す斜視図である。
図2図1の拡張状態における車室内の概略配置を説明する側面図である。
図3】上記実施形態において支持部が形成されるサイドトリムの下部を示す拡大斜視図である。
図4図3のサイドトリム下部を車室内側から見た側面図である。
図5】上記実施形態におけるラゲッジボードをベッドモードで使用する第1ボード面部が上面となるように配置した状態を示す拡大斜視図である。
図6】上記実施形態におけるラゲッジボードを作業モードで使用する第2ボード面部が上面となるように配置した状態を示す拡大斜視図である。
図7】上記実施形態においてラゲッジボードの幅と第1~3支持部の上下方向の間隔との関係を説明するための概念図である。
図8】上記実施形態において車室空間を作業モードで拡張した状態の一例を示す斜視図である。
図9図8の拡張状態における車室内の概略配置を説明する側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態について添付図面を参照しながら詳細に説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る車両の車室内構造において車室空間をベッドモードで拡張した状態を示す斜視図である。また、図2は、図1の拡張状態における車室内の概略配置を説明する側面図である。なお、以下で説明する各図において、矢印Fr方向は車両用シートの前後方向における前方を示す。実施形態の説明における「前部(前端)および後部(後端)」は、シート前後方向における前部および後部に対応する。また、本実施形態におけるシート前後方向の前方は、車両前後方向の前方に対応する。矢印R方向および矢印L方向は、乗員が車両用シートに着座したときの右側および左側を示している。矢印U方向は、上方を示している。
【0010】
本実施形態による車室内構造は、図1および図2に示すように、自動車等の車両1の車室内に、フロントシート2およびリヤシート3と、リヤシート3の後方側に配置されるラゲッジボード4と、該ラゲッジボード4を支持する支持部5と、を備えている。
【0011】
フロントシート2は、車室内の右前席(運転席)および左前席(助手席)として、車室のフロントフロア11の前部にそれぞれ設置されている。フロントシート2は、座部21と、シートバック22と、を有している。
【0012】
フロントシート2の座部21は、乗員が着座する部分である。座部21の骨格を構成する座部フレーム21Aの上部には、弾性特性を有する座部クッション21Bが設置されている。座部クッション21Bの上面には、着座面が形成されており、座部カバー(図示せず)が被せられている。座部フレーム21Aの後部には、リクライニング機構23が設けられている。
【0013】
フロントシート2のシートバック22は、座部21の後部から上方に延びている部分であり、座部21に着座した乗員の上半身を支持するように構成されている。シートバック22は、車両の運転時などには起立させた状態で使用される。図1および図2には、リクライニング機構23によりシートバック22を車両後方に倒した状態が示されている。
【0014】
シートバック22の骨格を構成するシートバックフレーム22A(点線)は、パイプ状の部材を湾曲させて略長方形状に形成されている。シートバック22の起立状態において、シートバックフレーム22Aの前部には、弾性特性を有するクッション材からなるシートバッククッション22Bが設置されている。
【0015】
シートバッククッション22Bの起立状態における前面には、乗員の背中を支持する座面(支持面)が形成されている。いる。また、シートバッククッション22Bの起立状態における上面には、ヘッドレスト24(後述する図9)が着脱可能に取り付けられている。ヘッドレスト24は、フロントシート2の座部21に着座した乗員の頭部を支持する。なお、図1および図2においてヘッドレスト24はシートバッククッション22Bから取り外されている。シートバッククッション22Bには、シートバックカバー(図示せず)が被せられている。
【0016】
上記のようなフロントシート2は、リクライニング機構23によって、シートバック22を後方に倒しにしたときに、シートバック22の座面の後部が水平となる水平位置に、シートバック22を位置調整可能な構成となっている。なお、前記水平位置は、シートバック22の座面の後部が概ね水平であればよく、厳密に水平である必要はない。具体的には、例えば、水平方向に対してシートバック22の座面の後部が±10°の範囲内、好ましくは、±5°の範囲内にあればよい。また、フロントシート2は、図示を省略するが、リクライニング機構23によって、シートバック22を前方に倒すことも可能である。
【0017】
本実施形態において、フロントシート2のシートバック22を上記水平位置まで後方に倒す際には、図1および図2に示すように、該フロントシート2の後方に位置するリヤシート3を足元スペースに収納しておく必要がある。リヤシート3には、上述した従来の車両の車室内に設置されていたものと同様なチルトダウン式(ダイブダウン式)の車両用シートが使用されている。
【0018】
リヤシート3は、車室内の右後席および左後席として、車室のフロントフロア11の後部とリアフロア12の前部とに亘ってそれぞれ設置されている。リヤシート3は、リヤ座部31と、リヤシートバック32と、を有している。リヤシート3は、リヤシートバック32を前側に折り畳み、リヤ座部31とともに前方の足元スペースに収納することで、車室空間を拡張することが可能な構成になっている。
【0019】
具体的に、リヤ座部31は、車室のフロントフロア11側に位置する収納位置、および該収納位置よりも上方のリアフロア12側に位置する展開位置に位置調整可能に構成されている。リヤ座部31の収納位置は、リヤシート3の前方の足元スペースを利用した位置であり、フロントフロア11の後部に設けられている凹部に対応している。リヤシートバック32は、リヤ座部31と重なる重ね位置に位置調整可能に構成されている。図1および図2に示すリヤシート3は、リヤシートバック32を重ね位置とし、かつ、リヤ座部31を収納位置としたチルトダウン状態(収納状態)に調整されている。
【0020】
本実施形態では、リヤシート3をチルトダウン状態に調整するとともに、フロントシート2のシートバック22を水平位置まで後方に倒した状態にすることで、車室空間がベッドモードに拡張された状態となる。ベッドモードでの車室空間の拡張時、ラゲッジボード4は、支持部5によって、水平位置にあるシートバック22の後面22Cとラゲッジボード4の前面4Aとが対面する対面位置に支持されている。なお、水平位置にあるシートバック22の後面22Cとは、起立状態のシートバック22の上面のことである。換言すると、シートバッククッション22Bのヘッドレスト24が取り付けられる取付面が、水平位置にあるシートバック22の後面22Cに対応している。
【0021】
図2に示す上下方向の範囲αは、上記対面位置においてラゲッジボード4の前面4Aを配置することが好ましい範囲を表している。本実施形態では、支持部5により支持されたラゲッジボード4の上面(ボード面)が、水平位置にあるシートバック22の後面22Cの上端よりも下方に配置され、かつ、当該シートバックフレーム22A(図2の点線)の上面よりも上方の位置に配置されている。具体的に、本実施形態におけるシートバックフレーム22Aの上面は、略長方形のシートバックフレーム22Aにおいてヘッドレスト24の取付側に位置しシート幅方向に延びるアッパーフレーム部分の上面に対応する。また、シートバックフレーム22Aの上面よりも上方の位置に関しては、シートバックフレーム22Aの上面とラゲッジボード4の前面4Aの一部とが前後方向で重なる位置にある場合が含まれる。以下、上記対面位置にラゲッジボード4を支持する支持部5の具体的な構造の一例について、図3および図4も参照しながら詳しく説明する。
【0022】
図3は、本実施形態において支持部5が形成されるサイドトリム13の下部を示す拡大斜視図である。また、図4は、図3のサイドトリム13の下部を車室内側から見た側面図である。
【0023】
支持部5は、図1図3および図4に示すように、車室後部の側壁を構成している左右のサイドトリム13の下部にそれぞれ形成されている。サイドトリム13は、車体側部に設けられているリアドア開口14の後縁部14Aと、車体後部に設けられているバックドア開口15の側縁部15Aとの間に配置され、車両上下方向に延びている。サイドトリム13の壁面(基準面)は、車両前後方向における後方側部分が前方側部分よりも車幅方向内側に位置している。本実施形態では、サイドトリム13の壁面は、車両後方側に向かうに従って車幅方向内側に徐々に傾斜している。つまり、右側のサイドトリム13の壁面と左側のサイドトリム13の壁面との間隔(幅)は、車両後方側に向かうに従って徐々に狭くなっている。なお、図1には、右側のサイドトリム13だけが示されており、左側のサイドトリム13の図示は省略されている。図3および図4には、右側のサイドトリム13の下部が拡大して示されている。サイドトリム13の壁面が上記のような傾斜形状に形成されていることによって、ラゲッジボード4を支持部5に設置する際に、サイドトリム13の壁面にラゲッジボード4を当接させながら該ラゲッジボード4の位置決めを行うことができるとともに、ラゲッジボード4に伝達される荷重をサイドトリム13に分散させることができるようになる。
【0024】
本実施形態における支持部5は、例えば、3段構成になっており、第1支持部51、第2支持部52および第3支持部53を有している。このような3段構成の支持部5において、上記ベッドモードでの対面位置(α)にラゲッジボード4を支持するのは第1支持部51である(図1)。
【0025】
第1支持部51は、図3および図4に示すように、サイドトリム13の下部における下端側の部分で、車室の内側に膨出している膨出箇所の上面部に形成されている。この膨出箇所の外方側には、車両の後輪に対応したタイヤハウス(図示せず)が配置されている。第1支持部51は、車両前後方向に延びており、中間部分の前方寄りに形成されている車室外側に窪んだ窪み箇所を挟んで、前方支持部分51Aと後方支持部分51Bとに分かれている。前方支持部分51Aおよび後方支持部分51Bの各上面は、略水平な平坦面になっている。後方支持部分51Bの上面は、車両後方に向かうに従い車幅方向の幅が狭くなっており、後方支持部分51Bが上下方向に撓み難くなっている。なお、上記窪み箇所は、ラゲッジボード4を縦置きする際に利用される。
【0026】
第1支持部51は、平坦な上面にラゲッジボード4の車幅方向側部が載置されることで、該ラゲッジボード4を下方側から支持する。つまり、第1支持部51の上面は、ラゲッジボード4の支持面になっている。第1支持部51の上面に載置されるラゲッジボード4は、車幅方向の幅がバックドア開口15の車幅方向の幅よりも広くなるように設定されている(図1)。なお、ラゲッジボード4の詳細については後述する。このため、第1支持部51の上面(支持面)の少なくとも一部は、車両前後方向から見て、バックドア開口15の側縁部15Aよりも車幅方向外側に位置している(図1および図3)。すなわち、第1支持部51は、支持面の全体がバックドア開口15の側縁部15Aよりも車幅方向外側に設けられていてもよく、或いは、支持面の一部がバックドア開口15の側縁部15Aよりも車幅方向外側に設けられ、かつ、支持面の残部がバックドア開口15の側縁部15Aよりも車幅方向内側に設けられていてもよい。
【0027】
第1支持部51に支持されたラゲッジボード4の前面4Aは、前述したように水平位置にあるシートバック22の後面22Cと対面する位置にある(図1および図2)。換言すると、車両前後方向から見て、第1支持部51に支持されたラゲッジボード4は、水平位置にあるシートバック22の後面22C(ヘッドレスト24の取付面)と重なるように配置されている。
【0028】
また、本実施形態におけるサイドトリム13には、第1支持部51の上面に載置されるラゲッジボード4に当接する第1当接部61が設けられている。この第1当接部61は、第1支持部51に支持されたラゲッジボード4が前後方向に移動するのを規制して、ラゲッジボード4の前後方向の位置決めを行っている。具体的に、第1当接部61は、第1支持部51の上面から上方側に突出した凸形状を有している。ラゲッジボード4の車幅方向の側部には、図1に示すように、第1当接部61の凸形状に対応させて車幅方向内側に凹んだ凹形状の被当接部4Bが、前後方向に間隔を空けて複数(ここでは、左右の側部にそれぞれ2個ずつ)設けられている。つまり、本実施形態では、サイドトリム13に設けられた第1当接部61とラゲッジボード4に設けられた複数の被当接部4Bとの組み合わせによって、ラゲッジボード4の前後方向の位置決めが行われている。
【0029】
第1支持部51の上面にラゲッジボード4を載置する際に、第1当接部61がラゲッジボード4の後側の被当接部4Bに当接するようにラゲッジボード4を置いた場合、シートバック22の後面22Cとラゲッジボード4の前面4Aとが隣接する位置(第1対面位置)に配置される。図2において実線で図示されているラゲッジボード4は、第1対面位置に配置された状態を表している。なお、第1対面位置における「隣接」は、「接触」および「非接触の近接」を含むものとする。
【0030】
一方、第1支持部51の上面にラゲッジボード4を載置する際に、第1当接部61がラゲッジボード4の前側の被当接部4Bに当接するようにラゲッジボード4を置いた場合には、シートバック22の後面22Cに対してラゲッジボード4の前面4Aが上記第1対面位置よりも後方となる位置(第2対面位置)に配置される。図2において二点鎖線で図示されているラゲッジボード4’の前面4A’は、第2対面位置に配置された状態を表している。
【0031】
つまり、第1支持部51に支持されたラゲッジボード4は、水平位置にあるシートバック22の後面22Cに対して、前後方向に異なる第1対面位置および第2対面位置のいずれかに位置決めされることになる。このようなラゲッジボード4の位置決めは、ベッドモードで拡張された車室空間のフロントシート2およびラゲッジボード4に横たわる乗員(図2)の身長などに合わせて適宜に行われる。
【0032】
さらに、本実施形態におけるサイドトリム13の下部には、第1支持部51に支持されたラゲッジボード4の上面(ボード面)よりも高い位置に、ブッシュ7(弾性体)を着脱可能に固定するためのブッシュ固定部71が設けられている(図1図3および図4)。ブッシュ7は、ブッシュ固定部71に固定された状態で、サイドトリム13の壁面よりも車室内側に突出しており、該ブッシュ7の下部が第1支持部51に支持されたラゲッジボード4の上面に当接するように構成されている。ブッシュ固定部71は、第1当接部61に隣接して設けるのが好ましい。第1当接部61に隣接してブッシュ7が配置されることにより、第1当接部61が前後方向から荷重を受けて振動しても、該振動をブッシュ7で吸収しやすくなる。
【0033】
上記3段構成の支持部5における第2支持部52および第3支持部53は、ラゲッジボード4を食事やPC等を用いた事務作業を行うためのテーブルとして利用する作業モードに対応したものである。第2支持部52は、第1支持部51の上方側に間隔を空けて配置されており、該第2支持部52よりも更に上方側に間隔を空けて第3支持部53が配置されている(図3および図4)。
【0034】
具体的に、第2支持部52は、サイドトリム13の下部における上下方向の中間部分に、車室内側に突出するように形成されている。第2支持部52は、車両前後方向に延びており、前述した第1支持部51の窪み箇所の上方の位置を境にして、前方支持部分52Aと後方支持部分52Bとに分かれている。前方支持部分52Aおよび後方支持部分52Bの各上面は、略水平な平坦面になっている。後方支持部分52Bの上面は、車両後方に向かうに従い車幅方向の幅が狭くなっており、後方支持部分52Bが上下方向に撓み難くなっている。第2支持部52は、平坦な上面にラゲッジボード4の車幅方向側部が載置されることで、該ラゲッジボード4を下方側から支持している。
【0035】
また、第2支持部52の上面には、上方側に突出した凸形状の第2当接部62が設けられている。第2支持部52に対応した第2当接部62は、前後方向で、第1支持部51に対応した第1当接部61よりも後方側に配置されている。前述した第1当接部61と同様に、第2当接部62は、第2支持部52に支持されたラゲッジボード4が前後方向に移動するのを規制している。第2当接部62が第1当接部61よりも後方側に配置されている理由は、リヤシート3を乗員が着席可能な状態に展開したときに、第2支持部52に支持されたラゲッジボード4の前面4Aがリヤシートバック32に干渉するのを避けるためである。
【0036】
さらに、サイドトリム13の下部には、第2支持部52に支持されるラゲッジボード4の上面よりも高い位置に、前述したブッシュ7を着脱可能に固定するためのブッシュ固定部72も設けられている。ブッシュ固定部72に固定された状態のブッシュ7は、サイドトリム13の壁面よりも車室内側に突出しており、該ブッシュ7の下部が第2支持部52に支持されたラゲッジボード4の上面に当接するように構成されている。ブッシュ固定部72は、前述したブッシュ固定部71と同様に、第2当接部62に隣接して設けるのが好ましい。
【0037】
第3支持部53は、サイドトリム13の下部における上側部分に、車室内側に突出するように形成されている。第3支持部53は、車両前後方向に延びており、前述した第1支持部51の窪み箇所の上方の位置を境にして、前方支持部分53Aと後方支持部分53Bとに分かれている。前方支持部分53Aおよび後方支持部分53Bの各上端には、平坦な面がそれぞれ形成されている。後方支持部分53Bの上面は、車両後方に向かうに従い車幅方向の幅が狭くなっており、後方支持部分53Bが上下方向に撓み難くなっている。第3支持部53は、平坦な上面にラゲッジボード4の車幅方向側部が載置されることで、該ラゲッジボード4を下方側から支持している。
【0038】
また、第3支持部53の上面には、前述した第2当接部62と同様に、上方側に突出した凸形状の第3当接部63が設けられている。第3当接部63は、前後方向で、第2当接部62よりも後方側に配置されている。さらに、サイドトリム13の下部には、前述したブッシュ固定部72と同様に、第3支持部53に支持されるラゲッジボード4の上面よりも高い位置に、第3当接部63に隣接させてブッシュ固定部73が設けられている。
【0039】
加えて、サイドトリム13の下部には、第1支持部51、第2支持部52および第3支持部53それぞれの後方に位置する部分に、車室内側に隆起して上下方向に延びている、第1規制部81、第2規制部82および第3規制部83が設けられている(図3および図4)。第1~3規制部81~83は、第1~3支持部51~53に支持されたラゲッジボード4の後方への移動を規制する縦面と、該縦面の上端部から前方に延び、ラゲッジボード4の上方への移動を規制する下面と、該下面の前端部から上方前側に傾斜して延びる傾斜面と、該傾斜面の前端部から上方に延びる連結面と、をそれぞれ有している。第1~3規制部81~83の縦面の下端部は、第1~3支持部51~53の上面(支持面)に接続されている。また、第1、2規制部81,82の連結面の上端部は、第2、3規制部82,83の下面に接続されている。
【0040】
上記のような第1~3規制部81~83がサイドトリム13に設けられていることにより、第1~3支持部51~53の後方支持部51B~53Bが互いに連結されるようになる。このため、第1~3支持部51~53のいずれかに支持されたラゲッジボード4を使用中に後方支持部に加わる荷重が、第1~3規制部81~83を介して他の後方支持部に分散されるようになる。したがって、ラゲッジボード4自体の振動、或いは第1~3支持部51~53それぞれの弾性変形に起因する振動を抑制することが可能になる。なお、上記のような第1~3規制部81~83は、第1~3支持部51~53の前方側にそれぞれ配置されていてもよい。
【0041】
上述したような3段構成の支持部5については、ベッドモードで使用される第1支持部51(前方支持部分51Aおよび後方支持部分51B)の上面の面積が、作業モードで使用される、第2支持部52(前方支持部分52Aおよび後方支持部分52B)または第3支持部53(前方支持部分53Aおよび後方支持部分53B)それぞれの上面の面積よりも大きくなるように設定するのが好ましい。このように第1支持部51の上面(支持面)の面積を設定することによって、乗員の荷重(体重)がラゲッジボード4を介して支持部5に最も作用しやすいベッドモードにおいて、該荷重を第1支持部51(前方支持部分51Aおよび後方支持部分51B)の上面で受けやすくすることができる。
【0042】
ここで、本実施形態におけるラゲッジボード4の具体的な構成例について図5図7を参照しながら詳しく説明する。
図5は、ラゲッジボード4をベッドモードで使用する第1ボード面が上面となるように配置した状態を示す拡大斜視図である。また、図6は、ラゲッジボード4を作業モードで使用する第2ボード面が上面となるように配置した状態を示す拡大斜視図である。さらに、図7は、ラゲッジボード4の幅と第1~3支持部51~53の上下方向の間隔との関係を説明するための概念図である。
【0043】
ラゲッジボード4は、図5および図6に示すように、横置きされた状態において、上述した前面4Aが車両前方を臨むように配置され、車幅方向の両側部には上述した複数の被当接部4Bが形成されている。ラゲッジボード4は、車両上下方向を臨む第1ボード面部4Cおよび第2ボード面部4Dを有しており、ベッドモードにおいて第1ボード面部4Cが車両上方を臨むように配置され(図5)、作業モードにおいて第2ボード面部4Dが車両上方を臨むように配置される(図6)。ベッドモードで使用される第1ボード面部4Cは、作業モードで使用される第2ボード面部4Dと比べて可撓性または弾性が大きくなるように設定されている。具体的に、第2ボード面部4Dは、例えば、樹脂成形された部材の内部に板金の補強部材が配置されている。ただし、補強部材は、樹脂成形部材が十分な剛性を有している場合には省略可能である。第1ボード面部4Cは、ボード面が表皮材で構成され、該表皮材と上記第2ボード面部4Dの樹脂成形部材との間にクッション材が設けられている。
【0044】
上記のようなラゲッジボード4では、ベッドモードにおいて可撓性または弾性が大きい第1ボード面部4Cが上面となるように配置されることにより、乗員がラゲッジボード4の第1ボード面部4Cを床面(ベッド)として身体を預けたときに、該床面が硬く感じるのを抑制することができる。一方、作業モードにおいて可撓性または弾性が小さい第2ボード面部4Dが上面となるように配置されることにより、食事や事務作業等を安定して行うことができる。このように第1、2ボード面部4C,4Dの可撓性または弾性に差を持たせることにより、ラゲッジボード4を反転させるだけで、モードに適合したラゲッジボード4のボード面を容易に選択することが可能になる。
【0045】
さらに、作業モードで使用される第2ボード面部4Dについては、図6に示すように複数の窪み部4E~4Hが形成されていてもよい。第1窪み部4Eは、車幅方向に延び、車両前後方向の幅が車幅方向の長さよりも短い横長溝状に形成されている。この第1窪み部4Eには、キーボードを有していない所謂タッチパネル式の薄型ポータブルデバイスを挿し込んで縦置きすることが可能である。このように第1窪み部4Eを利用して薄型ポータブルデバイスを縦置きすることで、事務作業をしつつ、該デバイスのディスプレイの視認およびタッチ操作を容易に行うことができる。第2窪み部4Fは、車両前後方向および車幅方向に延びる略矩形で平坦な窪みである。この第2窪み部4Fには、ノートパソコン等の事務機器を載置することが可能である。第2窪み部4Fに載置された機器は、第2窪み部4Fを形成する周壁によって位置決めされるため、該機器を乗員が操作しやすくなる。第3窪み部4Gおよび第4窪み部4Hは、円形状の窪みであり、第4窪み部4Hの直径が第3窪み部4Gの直径よりも大きくなるように設定されている。第3窪み部4Gには飲料等を載置することが可能であり、また、第4窪み部4Hには皿などを載置することが可能であり、水分補給や食事をしながら事務作業を行いやすくなる。
【0046】
なお、図6に示した例では、第1窪み部4Eがラゲッジボード4の幅方向に亘って形成されている一例を示したが、薄型ポータブルデバイスのサイズに応じて複数の第1窪み部4Eを配置するようにしてもよい。また、第2ボード面部4Dに複数の窪み部4E~4Hを設けて各種の物品を位置決めしやすくしたが、第2ボード面部4Dから突出する突出部を設けることにより、各種の物品を位置決めしやすくしてもよい。例えば、薄型ポータブルデバイスを縦置きする場合、第2ボード面部4Dに所定の間隔を空けて配置される一対の突出部を設ければ、該一対の突出部の間に薄型ポータブルデバイスを縦置きすることができる。このように突出部を設けることで、該突出部が第2ボード面部4Dのリブとして機能するようになるので、ラゲッジボード4の剛性を高めることができる。さらに、第2ボード面部4Dに窪み部および突出部の両方を設けてもよい。例えば、窪み部と突出部を隣接配置すれば、物品の下部を窪み部で位置決めしつつ、物品の下部より上方を突出部で位置決めすることができる。
【0047】
また、ラゲッジボード4の車幅方向の幅W1(図5および図7)については、前述したようにバックドア開口15の車幅方向の幅W2よりも広くなるように設定されている。ラゲッジボード4は、図7の一点鎖線に示すように、車幅方向の一端側を他端側よりも上方または下方に傾けた状態で、バックドア開口15から出し入れ可能となるように、第1~3支持部51~53の上下方向の間隔が設定されている。具体的に、第1支持部51の上面と第2支持部52の上面との間の上下方向の間隔をXとし、第2支持部52の上面と第3支持部53の上面との間の上下方向の間隔をYとした場合、間隔Xおよび間隔Yの少なくとも一方は、上記傾けた状態にあるラゲッジボード4の左右両端における上下方向の間隔Zよりも広くなるように設定されている。このような構成とすることにより、ラゲッジボード4の幅W1をバックドア開口15の幅W2よりも広くしてベッドモードでの床面や作業モードでの作業スペースを拡大しつつ、バックドア開口15からラゲッジボード4を出し入れできるので、ラゲッジボード4の脱着作業を容易に行うことが可能になる。
【0048】
次に、本実施形態において作業モードで車室空間を拡張した状態について、図8および図9を参照しながら説明する。図8は、車室空間を作業モードで拡張した状態の一例を示す斜視図である。また、図9は、図8の拡張状態における車室内の概略配置を説明する側面図である。なお、図8には、左右のフロントシート2を取り除いた状態が図示されている。
【0049】
図8および図9に示す車室空間を作業モードで拡張した状態の例では、第3支持部53に支持されたラゲッジボード4がテーブルとして利用されるとともに、リヤシートバック32をリヤ座部31に重ねた状態で展開位置にチルトアップしたリヤシート3が椅子として利用されている。なお、ここでは図示を省略するが、作業モードの他の例として、第2支持部52に支持されたラゲッジボード4をテーブルとし、チルトダウン状態(収納状態)のリヤシート3を椅子として利用することも可能である。
【0050】
このような作業モードでの拡張状態において、第3支持部53(または第2支持部52)は、ベッドモードでの拡張状態における対面位置(α)よりも高く、かつ、車両の運転操作を行うステアリングホイール16(運転操作部)と重なる高さ位置(β)に、ラゲッジボード4を支持可能に構成されている(図9)。第3支持部53によって高さ位置(β)に支持されたラゲッジボード4と展開位置にあるリヤシート3との間には、乗員がリヤシート3(リヤシートバック32の背面)に座ってラゲッジボード4の下方に脚を延ばすことのできるスペースが確保されている。このとき、乗員が着座面の硬さを感じるようであれば、リヤシートバック32の背面上に別途クッション33などを敷いて座るのがよい。
【0051】
また、作業モードでの拡張状態におけるフロントシート2については、図9の二点鎖線に示すように、シートバック22を起立させるとともに座部21を後方にスライドさせることで、リヤシート3に座る乗員の背もたれとしてシートバック22の背面を利用することが可能である。このように作業モードで拡張された車室空間において、乗員は、リヤシート3に座り、高さ位置(β)に支持されたラゲッジボード4をテーブルとして利用して、食事やPC等を用いた事務作業を快適に行うことができるようになる。
【0052】
以上説明したように本実施形態による車両の車室内構造では、ベッドモードでの車室空間の拡張時に、第1支持部51が、水平位置にあるシートバック22の後面22Cとラゲッジボード4の前面4Aとが対面する対面位置(α)に、ラゲッジボード4を支持するように構成されている。これにより、拡張された車室空間の下面(フロア面)の一部がフロントシート2におけるクッション性の高いシートバック22の座面で構成されるようになるとともに、シートバック22の座面の後部とラゲッジボード4との段差が小さくなるので、乗員は拡張された車室空間を快適に利用することができる。また、フロントシート2のシートバック22を後方に倒すことによって車室空間をベッドモードに拡張できるので、乗員がフロントシート2から降りて車室空間の拡張作業を行う頻度を少なくすることが可能になる。よって、本実施形態による車両の車室内構造は、ベッドモードに拡張された車室空間における快適性を向上させることができる。
【0053】
また、本実施形態による車両の車室内構造では、第1支持部51により対面位置に支持されたラゲッジボード4の上面が、水平位置にあるシートバック22の後面22Cの上端よりも下方に配置されている。このようなラゲッジボード4の配置によれば、シートバック22の座面側のクッション材が乗員の体重によって弾性変形して下方に沈み込んだときに、シートバック22の座面とラゲッジボード4の上面との間に形成される段差を抑制することができるため、乗員は拡張された車室空間をより快適に利用することができる。
【0054】
さらに、本実施形態による車両の車室内構造では、第1支持部51により対面位置に支持されたラゲッジボード4の上面が、水平位置にある前記シートバック22におけるシートバックフレーム22Aの上面よりも上方の位置に配置されている。このようなラゲッジボード4の配置によれば、シートバック22の座面側のクッション材が乗員の体重によって弾性変形して下方に沈み込んだときにでも、シートバックフレーム22Aの上面がラゲッジボード4の上面よりも低い位置にあるため、乗員がシートバックフレーム22Aの硬さに違和感や不快感を覚えるのを抑制することができる。
【0055】
また、本実施形態による車両の車室内構造では、第1支持部51により支持されたラゲッジボード4が、サイドトリム13に設けられた第1当接部61とラゲッジボード4に設けられた複数の被当接部4Bとによって、前後方向に異なる第1対面位置および第2対面位置のいずれかに位置決めされている。身長の比較的高い乗員がベッドモードで拡張された車室空間を利用する場合、ラゲッジボード4が第1対面位置(水平位置にあるシートバック22の後面22Cとラゲッジボード4の前面4Aとが隣接する位置)に固定されていると、シートバック22の座面に横になった乗員の体の一部(特に頭)がラゲッジボード4よりも後方に位置してしまう可能性がある。このような場合には、ラゲッジボード4の固定位置を第1対面位置よりも後方の第2対面位置に調整することができるので、乗員が横になったときに覚える違和感を抑制することができる。加えて、ラゲッジボード4が第1対面位置または第2対面位置に固定されているので、乗員が横になっているときにラゲッジボード4が前後方向に位置ずれすることで乗員が違和感を覚えてしまうような状況も避けることができる。
【0056】
さらに、本実施形態による車両の車室内構造では、車室の側壁を構成するサイドトリム13に車室内側に突出するブッシュ7(弾性体)が設置され、第1支持部51により支持されたラゲッジボード4がブッシュ7に当接するように構成されている。これにより、ラゲッジボード4の振動をブッシュ7によって吸収することができるとともに、ラゲッジボード4の位置ずれをブッシュ7によって防止することができるので、乗員は拡張された車室空間を一層快適に利用することが可能になる。特に、ブッシュ7がラゲッジボード4よりも高い位置でサイドトリム13に着脱可能に固定されるようにすれば、該ブッシュ7によってラゲッジボード4の上下方向の振動を効果的に低減することができ、拡張された車室空間の快適性を更に向上させることが可能になる。また、ラゲッジボード4の支持部5への着脱時には、サイドトリム13からブッシュ7を取り外すことができるので、ラゲッジボード4の着脱作業を容易に行うことも可能である。
【0057】
加えて、本実施形態による車両の車室内構造では、作業モードでの車室空間の拡張時に、リヤシート3が収納位置または展開位置に調整されるとともに、第2支持部52または第3支持部53が、ベッドモードにおける対面位置(α)よりも高く、かつ、ステアリングホイール16と重なる高さ位置(β)に、ラゲッジボード4を支持可能に構成されている。このような構成において、乗員は、リヤシートバック32の背面に着座し、高さ位置(β)に支持されたラゲッジボード4をテーブルとして使用することができる。これにより、ラゲッジボード4を、ベッドモードにおいて車中泊等を行うための寝台スペースとして利用しつつ、必要があれば、作業モードにおいて食事や事務作業などを行うためのテーブルとして利用することができる。しかも、作業モードにおけるラゲッジボード4がステアリングホイール16と重なる高さ位置にあるので、テーブルとして利用する際のラッゲジボードの高さに乗員が違和感を覚え難くなり、作業モードで拡張された車室空間を快適に利用することができる。
【0058】
以上、本発明の実施形態について述べたが、本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想に基づいて各種の変形および変更が可能である。例えば、上述した実施形態では、ベッドモードでの車室空間の拡張時に、フロントシート2のシートバック22を後方に倒して水平位置とする一例を示したが、リヤシートの後方に十分なスペースがある場合には、リヤシートバックを後方に倒して水平位置とし、該リヤシートバックの後面とラゲッジボードの前面とを対面位置に配置するようにしてもよい。
【0059】
また、上述した実施形態では、チルトダウン式のリヤシート3が使用される場合を説明したが、リヤシートはチルトダウン式に限定されず、例えば、車室フロアに着脱可能なリヤシートを適用し、車室空間をベッドモードで拡張する際にはリヤシート自体を取り外して別の場所(車室側部や車外空間など)に配置するようにしてもよい。
【0060】
さらに、上述した実施形態では、ラゲッジボード4の位置決め部として、サイドトリム13に凸形状の第1当接部61を設け、ラゲッジボード4に凹形状の被当接部4Bを設ける一例を示したが、サイドトリム13およびラゲッジボード4で凹凸形状を逆にすることも勿論可能である。加えて、弾性体のブッシュ7が設けられる一例を説明したが、ブッシュは樹脂部材等の非弾性体で構成されていてもよい。
【0061】
また、上述した実施形態では、図1および図2に示したようにシートバック22を車両後方に倒した状態においてヘッドレスト24がシートバッククッション22Bから取り外される一例を説明した。しかし、ヘッドレスト24を取り外す代わりに、ラゲッジボード4にヘッドレスト24の形状に対応した切欠部を形成し、シートバック22を車両後方に倒した時にシートバッククッション22Bに取り付けられたヘッドレスト24がラゲッジボード4の切欠部を通過可能な構成としてもよい。或いは、ヘッドレスト24をシートバック22の背面側に移動させる機構(例えば、回動機構や折畳機構など)を設けたり、ヘッドレスト24をシートバック22の内部に収納可能な構成にしたりして、ヘッドレスト24をシートバック22に取り付けた状態で、該シートバック22を車両後方に倒すようにしてもよい。
【符号の説明】
【0062】
1…車両
11…フロントフロア
12…リアフロア
13…サイドトリム
14…リアドア開口
15…バックドア開口
15A…側縁部
16…ステアリングホイール
2…フロントシート
21…座部
21A…座部フレーム
21B…座部クッション
22…シートバック
22A…シートバックフレーム
22B…シートバッククッション
22C…水平位置にあるシートバックの後面
23…リクライニング機構
24…ヘッドレスト
3…リヤシート
31…リヤ座部
32…リヤシートバック
4…ラゲッジボード
4A…前面
4B…被当接部
4C…第1ボード面部
4D…第2ボード面部
5…支持部
51~53…第1~3支持部
61~63…第1~3当接部
7…ブッシュ(弾性体)
71,72,73…ブッシュ固定部
81~83…第1~3規制部
W1…ラゲッジボードの幅
W2…バックドア開口の幅
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9