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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023165377
(43)【公開日】2023-11-15
(54)【発明の名称】マイクロニードル用アプリケータ
(51)【国際特許分類】
   A61M 37/00 20060101AFI20231108BHJP
【FI】
A61M37/00 510
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022076340
(22)【出願日】2022-05-02
(71)【出願人】
【識別番号】501296380
【氏名又は名称】コスメディ製薬株式会社
(72)【発明者】
【氏名】梶山 健次
(72)【発明者】
【氏名】権 英淑
(72)【発明者】
【氏名】神山 文男
【テーマコード(参考)】
4C267
【Fターム(参考)】
4C267AA71
4C267BB02
4C267BB03
4C267BB04
4C267BB11
4C267BB12
4C267BB19
4C267BB23
4C267BB37
4C267BB39
4C267BB40
4C267CC01
4C267CC05
4C267GG02
4C267GG05
4C267GG08
4C267HH08
(57)【要約】
【課題】マイクロニードル製剤を皮膚に適用するときに発生する痛みの緩和、穿刺性を向上する措置、これらの一方もしくは両方を搭載し、通常設計もしくは穿刺性を向上させたマイクロニードル製剤を適用するアプリケータを提供する。
【解決手段】マイクロニードルパッチ、マイクロニードルアレイ及びマイクロニードルを皮膚に投与する直接的な役割を担うピストンもしくはそれに類する部品及び機構に、痛みの緩和を目的とする緩和機構、穿刺性能の向上を目的とする突起形状の設計、この一方もしくは両方を有し、その他、投与を補助する機構・構造を有するアプリケータ。
【選択図】図7

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ピストンとピストンに衝撃を与える付勢部材とを備えたマイクロニードル用アプリケータにおいて、皮膚適用時の痛みを緩和する機構を設けたアプリケータ。
【請求項2】
前記緩和機構が前記ピストンの先端部に備えられている、請求項1に記載のアプリケータ。
【請求項3】
前記緩和機構がダッシュポットであり、該ダッシュポット内の液体の粘弾性を利用するものである、請求項1又は2に記載のアプリケータ。
【請求項4】
前記緩和機構が本体と蓋とが摺動可能に接触している容器であり、該本体と該蓋との接触面の摩擦を利用するものである、請求項1又は2に記載のアプリケータ。
【請求項5】
前記緩和機構がスプリング機構であり、該スプリング機構の伸縮又は変形を利用するものである、請求項1又は2に記載のアプリケータ。
【請求項6】
前記スプリング機構が軟性材料から構成されるものである、請求項5に記載のアプリケータ。
【請求項7】
前記軟性材料の原料が、ポリウレタン樹脂、ポリエーテル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリオレフィン樹脂、メラミン樹脂、シリコーン樹脂、フッ素樹脂、天然ゴム、ニトリルゴム、エチレンプロピレンゴム、及び、クロロプレンゴムからなる群より選ばれ、その固体、発泡体、フォーム、又は、スポンジの状態である、請求項6に記載のアプリケータ。
【請求項8】
ピストンとピストンに衝撃を与える付勢部材とを備えたマイクロニードル用アプリケータにおいて、マイクロニードルの穿刺性を向上させる設計を設けたアプリケータ。
【請求項9】
前記穿刺性向上設計が前記ピストンの先端部に備えられている、請求項8に記載のアプリケータ。
【請求項10】
前記穿刺性向上設計が前記ピストンの先端部中央に備えられた突起形状である、請求項9に記載のアプリケータ。
【請求項11】
ピストンとピストンに衝撃を与える付勢部材とを備えたマイクロニードル用アプリケータにおいて、皮膚適用時の痛みを緩和する機構及びマイクロニードルの穿刺性を向上させる設計を備えたアプリケータ。
【請求項12】
前記緩和機構及び前記マイクロニードルの穿刺性向上設計が前記ピストンの先端部に備えられている、請求項11に記載のアプリケータ。
【請求項13】
中心部と周囲部のマイクロニードルの配置密度が異なる設計を設けたマイクロニードルアレイ又はマイクロニードルパッチを投与する、請求項1~12のいずれか1項に記載のアプリケータ。
【請求項14】
前記マイクロニードルアレイ又はマイクロニードルパッチの基板が基盤部と土台部とで構成され、該土台部にマイクロニードルが配置された設計である、請求項13に記載のアプリケータ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マイクロニードル製剤を皮膚に適用するとき、発生する痛みを緩和する機構、穿刺性を向上させる設計、その一方あるいは両方を搭載したアプリケータと穿刺性を向上させる設計を搭載したマイクロニードルアレイに関する。
【背景技術】
【0002】
薬物を人の体内に投与する手法として、経口的な投与法や経皮的な投与法がよく用いられている。注射は、代表的な皮膚を通じた投与法であるが、煩わしく苦痛を伴う。経皮的投与のさいに皮膚角質層は薬物透過のバリアとして働き、単に皮膚表面に薬物を塗布するだけでは、透過性は必ずしも十分ではない。これに対し、微小な針、すなわちマイクロニードルを用いて角質層を穿孔することにより、塗布法より薬物透過効率を格段に向上させることができる。このマイクロニードルを基板上に多数集積したものがマイクロニードルアレイ(以下、本願明細書においては単に「アレイ」と省略する場合がある)である。また、アレイを皮膚に付着させるための粘着シートや、粘着シートを保護しアレイを皮膚に貼付するさいの支えとするための保護離型シートなどを付加して使用しやすい製品としたものをマイクロニードルパッチ(以下、本願明細書においては単に「パッチ」と省略する場合がある)という。
【0003】
アレイを皮膚に投与するさい、アレイもしくはパッチを指で押さえるだけではマイクロニードルを皮膚内に穿刺することは容易ではない。これは一般に皮膚は柔軟であり弾力性のある組織であるから、マイクロニードルのとがった先端を皮膚に押しつけても、皮膚がその衝撃を吸収し変形することによりマイクロニードルの皮膚内侵入を妨げるためである。
【0004】
マイクロニードルを衝撃吸収能のある皮膚に投与するには、アレイもしくはパッチを皮膚方向に衝撃することが適切である。この具体的方法として、これまで、バネ(特許文献1-7)、空気圧(特許文献5)や磁力(特許文献8)などを用いたマイクロニードル投与装置(アプリケータ)が提案されてきた。
【0005】
本発明者らは、アレイを備えるパッチを容易に装着でき、多数の使用者に連続投与が可能なアプリケータとパッチ保持具を開発することに成功した(特許文献9)。アプリケータの内部には、バネを利用した機構により突出するピストンが備えられている。パッチ保持具には、パッチが中央の取付用ショルダーに衝撃により脱離しやすい方法で取り付けられている。パッチを保持したパッチ保持具をアプリケータ先端に取り付け、アプリケータを駆動すると、ピストンが突出し、パッチとパッチ保持具の脱離しやすい領域が破断され、パッチはパッチ保持具を離れて皮膚表面に瞬間的に衝撃とともに押し付けられ、パッチはピストンと皮膚に挟まれ、アレイに集積されたマイクロニードルは皮膚内に穿刺される。
【0006】
マイクロニードルは、その微細構造から皮膚に穿刺されても僅かな感触の伝播に留まる。しかしながら、マイクロニードルの穿刺の直後において、皮膚にアレイもしくはパッチとピストンが衝突され、皮膚表層から浅い部分に分布する痛覚が反応することで痛みが伝播される。また、アレイもしくはパッチの埋没による皮膚の変形から、皮膚表層から深い部分に分布する痛覚が反応することで痛みが伝播される。
【0007】
マイクロニードルを深く穿刺するには、アプリケータにより発生される衝撃が強くなるように設計する必要があるが、使用時の痛みも合わせて強くなる。マイクロニードルの穿刺の深さと痛みはトレードオフの関係であり、アプリケータの設計を決定する場合は、妥協点を探らざるをえない。アプリケータの衝撃の強弱以外の設計やアプリケータ以外の部分、例えばマイクロニードル、アレイ、パッチ等の設計による穿刺性の向上も必要となる。
【0008】
特許文献及び学術文献等で知られているアレイは、マイクロニードルを備える基板は平面であり、その上に長さが均一なマイクロニードルが均一な密度で垂直に立っているものである。本発明者らも、現在までに同様のアレイを作製し、特許出願に至っている(特許文献10、11)。これに加え、穿刺の確実性(特許文献12、13)、薬剤担持の均一性(特許文献14、15)を目的としたアレイの開発に成功した。更に近年、アレイ中心部の難穿刺部位の改善を目的とし、中心部と周囲部のマイクロニードルの配置密度が異なるアレイ(特許文献16)、アレイ全体の穿刺性の向上を目的とし、基板に高低差を設けたアレイ(特許文献17)等の開発にも成功している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特表2004-510530号公報(特許4198985号公報)
【特許文献2】特表2004-510534号公報(特許4104975号公報)
【特許文献3】特表2004-510535号公報(特許4659332号公報)
【特許文献4】特表2005-533625号公報
【特許文献5】特表2006-500973号公報
【特許文献6】特表2007-509706号公報(特許4682144号公報)
【特許文献7】特開2014-42788号公報
【特許文献8】特開2011-078711号公報
【特許文献9】特開2018-118049号公報
【特許文献10】特開2009-273872号公報
【特許文献11】特開2010-029634号公報
【特許文献12】特開2016-175853号公報
【特許文献13】特開2017-074196号公報
【特許文献14】特開2015-109963号公報
【特許文献15】特開2017-047075号公報
【特許文献16】特開2021-003547号公報
【特許文献17】特開2021-186672号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
アレイもしくはパッチを投与するアプリケータは、すでにいくつか報告されている。しかし、アプリケータにより発生する痛みについて言及されている報告は無い。本発明が解決しようとする課題は、アレイ及びパッチを投与する機能を有した上で、使用により発生される痛みを緩和する機構及び該機構を備えたアプリケータを提供することである。また、マイクロニードルの穿刺性を向上させる設計及び穿刺性向上設計を備えたアプリケータを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するため、本発明者らは鋭意検討した結果、発生する痛みを緩和する機構及び該機構を備えるアプリケータを開発することに成功した。痛み緩和機構は、アプリケータのピストンに備えられ、マイクロニードルの穿刺の直後より変形することにより、アレイ、パッチ及びピストンと皮膚との衝突を吸収・緩和することを見出した。また、穿刺性を向上させる設計及び穿刺性向上設計を備えたアプリケータを開発することに成功した。穿刺性向上設計は、アプリケータとパッチとの接触部に備えられ、アプリケータによる衝撃をパッチに組み込まれたアレイに集中的に伝達し、穿刺を高めることを見出した。加えて、穿刺性を向上させる設計及び穿刺性向上設計を備えたアレイを開発することに成功した。穿刺性向上設計は、マイクロニードルの配置密度、マイクロニードルを集積する基板設計の最適化により、穿刺を高めることを見出した。
従来報告されている通常の設計のアレイ及びパッチ、本発明者らが開発した穿刺を高める設計を備えたアレイ及びパッチ、これらを投与出来ることを前提とし、痛みを緩和する機構を備えたアプリケータ、穿刺を高める設計を備えたアプリケータ、もしくは痛みを緩和する機構と穿刺を高める設計を備えたアプリケータにより、本発明を完成するに至った。
【0012】
本発明は、以下に示す通りである。
〔1〕 ピストンとピストンに衝撃を与える付勢部材とを備えたマイクロニードル用アプリケータにおいて、皮膚適用時の痛みを緩和する機構を設けたアプリケータ。
〔2〕 前記緩和機構が前記ピストンの先端部に備えられている、〔1〕に記載のアプリケータ。
〔3〕 前記緩和機構がダッシュポットであり、該ダッシュポット内の液体の粘弾性を利用するものである、〔1〕又は〔2〕に記載のアプリケータ。
〔4〕 前記緩和機構が本体と蓋とが摺動可能に接触している容器であり、該本体と該蓋との接触面の摩擦を利用するものである、〔1〕又は〔2〕に記載のアプリケータ。
〔5〕 前記緩和機構がスプリング機構であり、該スプリング機構の伸縮又は変形を利用するものである、〔1〕又は〔2〕に記載のアプリケータ。
〔6〕 前記スプリング機構が軟性材料から構成されるものである、〔5〕に記載のアプリケータ。
〔7〕 前記軟性材料の原料が、ポリウレタン樹脂、ポリエーテル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリオレフィン樹脂、メラミン樹脂、シリコーン樹脂、フッ素樹脂、天然ゴム、ニトリルゴム、エチレンプロピレンゴム、及び、クロロプレンゴムからなる群より選ばれ、その固体、発泡体、フォーム、又は、スポンジの状態である、〔6〕に記載のアプリケータ。
〔8〕 ピストンとピストンに衝撃を与える付勢部材とを備えたマイクロニードル用アプリケータにおいて、マイクロニードルの穿刺性を向上させる設計を設けたアプリケータ。
〔9〕 前記穿刺性向上設計が前記ピストンの先端部に備えられている、〔8〕に記載のアプリケータ。
〔10〕 前記穿刺性向上設計が前記ピストンの先端部中央に備えられた突起形状である、〔9〕に記載のアプリケータ。
〔11〕 ピストンとピストンに衝撃を与える付勢部材とを備えたマイクロニードル用アプリケータにおいて、皮膚適用時の痛みを緩和する機構及びマイクロニードルの穿刺性を向上させる設計を備えたアプリケータ。
〔12〕 前記緩和機構及び前記マイクロニードルの穿刺性向上設計が前記ピストンの先端部に備えられている、〔11〕に記載のアプリケータ。
〔13〕 中心部と周囲部のマイクロニードルの配置密度が異なる設計を設けたマイクロニードルアレイ又はマイクロニードルパッチを投与する、〔1〕~〔12〕のいずれか1項に記載のアプリケータ。
〔14〕 前記マイクロニードルアレイ又はマイクロニードルパッチの基板が基盤部と土台部とで構成され、該土台部にマイクロニードルが配置された設計である、〔13〕に記載のアプリケータ。
【発明の効果】
【0013】
本発明のアプリケータにおける痛み緩和機構は、パッチもしくはアレイに集積されるマイクロニードルを皮膚に接触及び穿刺されるまでは、その速度による作用でパッチもしくはアレイを皮膚に投射するピストンの一部として働き、マイクロニードルの穿刺の直後から発生する応力により変形することで、マイクロニードルの穿刺の低下を押さえると共に、衝撃を緩和することができる。本発明の痛み緩和機構を備えたアプリケータは、皮膚にパッチもしくはアレイとピストンが衝突された際の、皮膚表層から浅い部分に分布する痛覚の反応を緩和することができる。また、パッチもしくはアレイの埋没による皮膚の変形を最小に留め、皮膚表層から深い部分に分布する痛覚の反応を緩和することができる。
本発明のアプリケータにおける穿刺性向上設計は、パッチに備えられたアレイを皮膚に押し付けるというアプリケータの機能に集中させることができる。本発明の穿刺性向上設計を備えたアプリケータは、マイクロニードルの穿刺をより深く高めることができる。
本発明で用いられるマイクロニードルアレイは、アレイが皮膚に押し付けられる際の皮膚の変形を考慮した形状設計を備えることで、マイクロニードルの穿刺をより深く高めることができる。このようなアレイとしては、特開2021-003547号公報及び特開2021-186672号公報に記載されているものを好適に使用することができる。
本発明のアプリケータにおける痛み緩和機構と穿刺性向上設計、通常の設計のアレイ及びパッチ、穿刺性向上設計のアレイ及びパッチ、これらを組み合わせることにより、アプリケータにより発生する痛みの緩和の実現、アプリケータによるマイクロニードルの穿刺性の向上の実現、もしくはアプリケータにより発生する痛みの緩和とマイクロニードルの穿刺性の向上の両方の実現、これらによりマイクロニードルの安定した穿刺を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明者らが開発に成功したアプリケータの例(特開2018-118049号公報参照)。左より順に、アプリケータの前面図、側面図及び後面図。
図2】水・油などの液体の粘弾性の利用による痛み緩和機構の例
図3】摩擦の利用による痛み緩和機構の例
図4】スプリングの伸縮・変形構造体の利用による痛み緩和機構の例
図5】軟性材料の構造・物性による伸縮・変形能の利用による痛み緩和機構の例
図6】穿刺性向上設計を備えたアプリケータの例
図7】穿刺性向上設計と痛み緩和機構を備えたアプリケータの例
図8】従来のアプリケータにより皮膚にパッチを投与した際の断面イメージの例
図9】本発明のアプリケータにより皮膚にパッチを投与した際の断面イメージの例
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明を図1~9を参照して説明するが、本発明は、図面及び以下の実施形態に限定されるものではない。
【0016】
本発明のアプリケータは、皮膚にマイクロニードルを適用するために用いられるものである。
適用するマイクロニードルは、マイクロニードルそのもの、マイクロニードルアレイ、又はマイクロニードルパッチの型式であってもよい。マイクロニードルアレイ及びマイクロニードルパッチを、それぞれ、アレイ及びパッチと省略する場合がある。
本発明のアプリケータは、マイクロニードルを皮膚に投与する直接的な役割を担うピストンもしくはそれに類する部品及び機構、投与を実現及び補助する機構(ピストンに衝撃を与える付勢部材、例えば、バネ)、並びに、少なくとも1つの皮膚適用時の痛みの緩和を目的とする機構を備えている。
本発明のアプリケータは、従来から知られているアプリケータに、皮膚適用時の痛みの緩和を目的とする機構(痛み緩和機構)を付与したものであってもよい。
ここで従来から知られているアプリケータとしては、特開2014-42788号公報及び特開2018-118049号公報に記載されているマイクロニードルパッチ投与装置、マイクロニードルパッチ適用装置等があげられる。これらの装置は、いずれも圧縮したバネの衝撃力をピストンに与えることによって、ピストンがマイクロニードルパッチ背面を衝撃してマイクロニードルが皮膚に投与されるものである。本発明においては、これらに限定されるものではなく、同様のピストン-衝撃付勢機構を備えたアプリケータを用いることができる。
痛み緩和機構を有することによるアプリケータのその他の機能への影響については、特に限定されるものではないが、アプリケータの主とする機能であるマイクロニードルを皮膚に穿刺する性能(穿刺性)を、大きく低下させないことが望ましく、維持することがより好ましい。しかし、穿刺性を意図せず妨げる可能性を鑑み、マイクロニードル、アレイ、パッチもしくはアプリケータにおいて、穿刺性を向上させる仕組みを組み込むことがより好ましい。
したがって、本発明のアプリケータは、ピストンとピストンに衝撃を与える付勢部材とを備えたマイクロニードル用アプリケータにおいて、マイクロニードルの穿刺性を向上させる設計を設けたアプリケータであってもよい。
【0017】
本発明の痛み緩和機構は、ピストンもしくはそれに類する部品及び内部機構のいずれの箇所に備えてもよい。効果をより高めるために、パッチもしくはアレイを皮膚とピストンもしくはそれに類する部品で挟み込むように、ピストンの先端部に備えることが望ましい。
【0018】
本発明の痛み緩和機構の大きさは、特に限定されるものではないが、ピストンもしくはそれに類する部品及び内部機構のうち、痛み緩和機構を組み込む部位により、アプリケータの機能を損なうことのない範囲の大きさが望ましい。
【0019】
本発明の痛み緩和機構に用いられる原理は、従来の衝撃の吸収・緩和・緩衝の手法として提唱される、構造や物性による伸縮又は変形動作を用いたスプリングモデル(図4参照)、水、油等の液体の粘弾性を用いたダッシュポットモデル(図2参照)、摩擦現象を用いたフリクションモデル(図3参照、図3においては、本体と蓋とが摺動可能に接触している容器が備えられており、該本体と該蓋との接触面の摩擦を利用する)のいずれかを応用した機構を有し、いずれのモデルかそれに類する原理でもよい。構造の簡略化・費用効果から、構造や物性による伸縮又は変形動作を用いたスプリングモデルのうち、軟性材料を用いた緩和機構(図5参照)が望ましい。
【0020】
本発明の痛み緩和機構に用いられる軟性材料の原料は、特に限定されるものではないが、天然樹脂や合成樹脂があげられる。樹脂として、ポリウレタン樹脂、ポリエーテル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリオレフィン樹脂、メラミン樹脂、シリコーン樹脂、フッ素樹脂、天然(NR)ゴム、ニトリル(NBR)ゴム、エチレンプロピレン(EPDM)ゴム、クロロプレン(CR)ゴム、及びそれらの混合物やそれらの組み合わせなどが挙げられる。
【0021】
本発明の痛み緩和機構に用いられる軟性材料の状態は、固体のほか、発泡体、スポンジ、フォームがあげられる。状態として、特に限定されるものではないが、ピストンもしくはそれに類する部品及び機構の動作への影響が少なく、発泡体、スポンジ又はフォームであることが望ましい。弾性変形能による自己復元性があり、手動での復元の手間が省け、連続使用が可能な弾力性と耐久性を有することがより好ましい。
【0022】
本発明の痛み緩和機構に用いられる軟性材料は、マイクロニードルの穿刺の直後から発生する応力により変形することで効果を発揮する。変形の方向として、特に限定されるものではないが、変形は皮膚に対して垂直、水平、その両方があげられる。変形の状態として、特に限定されるものではないが、体積を維持するもの、体積を縮小するものがあげられる。ピストンもしくはそれに類する部品及び機構の動作への影響から、皮膚に対して垂直方向の変形で縮小するものが望ましい。
【0023】
本発明の痛み緩和機構に用いられる軟性材料の硬さは、特に限定されるものではないが、JIS-K7312 附属書2 スプリング硬さ試験タイプC試験方法の規定に準拠した硬度計による測定において、硬度20以下であることが望ましく、10以下がより好ましい。発泡体、スポンジ又はフォームに分類されるものであれば、いずれにおいても緩衝効果を得られ、痛みを軽減できる。硬度10以下であると緩衝効果はより高く、その効果は人感覚として差が感じられない範囲に及ぶ。
【0024】
本発明の痛み緩和機構に用いられる軟性材料の形状は、特に限定されるものではないが、投与するアレイもしくはパッチ、さらにはアプリケータの形状に合わせて、適する立体形状が望ましい。本発明者らが発明したアプリケータ及びパッチにおいては、円柱状が望ましい。また、中心部を除いた中空円柱状も挙げられる。円柱状の軟性材料をアプリケータ先端に備える際、備える面と垂直方向の長さを厚さ、水平方向の面の広さを面積とする。
【0025】
本発明の痛み緩和機構に用いられる軟性材料の厚さは、特に限定されるものではないが、軟性材料の厚さは1mm以上30mm以下が望ましく、2mm以上15mm以下がより好ましい。軟性材料として変形が認められる厚みがあれば、いずれにおいても緩衝効果を得られ、痛みを軽減できる。ただし、余りに長大であるとアプリケータの駆動を妨げ、またアプリケータのサイズの増大を助長する。
【0026】
本発明の痛み緩和機構に用いられる軟性材料の面積は、特に限定されるものではないが、ピストンもしくはそれに類する部品のうち、追加する部位(例えば、先端部)の面積の0.1倍以上1.5倍以下が望ましく、0.2倍以上1.2倍以下がより好ましい。軟性材料として変形が認められる面積があれば、いずれにおいても緩衝効果を得られ、痛みを軽減できる。ただし、余りに広大であるとアプリケータの駆動を妨げ、またアプリケータのサイズの増大を助長する。
【0027】
本発明の痛み緩和機構を備えるアプリケータのアレイもしくはパッチを投与する方法、これを実現する内部機構の原理及び各所の設計パラメータは、特に限定されるものではないが、設計されたアプリケータを用いたとき、痛みの官能評価により痛いと感じるようであれば、痛み緩和機構を備えることが望ましい。本発明者らが発明したバネを用いる方法によるアプリケータにおいては、痛み緩和機構を備えるべきは、ピストンもしくはそれに類する部品を投射するに使用するバネのバネ定数は0.1N/mm以上が望ましく、0.5N/mm以上がより好ましい。
【0028】
本発明のアプリケータは、パッチもしくはアレイを皮膚に投与する際、パッチもしくはアレイに直接接触する部位に少なくとも1つの穿刺性の向上を目的とする突起形状の穿刺性向上設計を有し、その他、投与を実現及び補助する機構を有する。
【0029】
本発明の穿刺性向上設計は、アプリケータのうち、パッチもしくはアレイに直接接触する面のいずれの箇所に備えてもよい。本発明においては、ピストンの先端部が直接接触面であることが望ましい。効果を高めるために、パッチもしくはアレイの中心部と接触するように、穿刺性向上設計をピストンの先端部に備えることが望ましい。
【0030】
本発明の穿刺性向上設計の形状は、特に限定されるものではないが、パッチもしくはアレイの形状に合わせて、適する立体形状で突起と呼べるだけの形状が望ましい。本発明者らが発明したアプリケータ及びパッチにおいては、円柱状もしく円板状の突起が望ましい。突起をアプリケータ先端に備えるさい、備える面と垂直方向の長さを厚さ、水平方向の面の広さを面積とする。
【0031】
本発明の突起の面積は、特に限定されるものではないが、投与の安定性と影響性を鑑み、アレイの背部面積の0.1~0.5倍が望ましく、0.15~0.30倍がより好ましい。突起として認められる面積があれば、いずれにおいても効果を得られ、穿刺性を向上できる。ただし、アレイの背部面積と比較し、あまりに狭い場合はアレイもしくはパッチを皮膚に押し付ける機能に影響を及ぼし、あまりに広い場合は突起として作用しない。
【0032】
本発明の突起の厚さは、特に限定されるものではないが、投与の安定性と影響性を鑑み、1.0~10.0mmが望ましく、1.5~3.0mmがより好ましい。突起として認められる厚さがあれば、いずれにおいても効果を得られ、穿刺性を向上できる。ただし、余りに長大であるとアプリケータの駆動を妨げ、またアプリケータのサイズの増大を助長する。
【0033】
本発明のアプリケータは、痛み緩和機構と穿刺性向上設計を合わせて有してもよい。痛み緩和機構と穿刺性向上設計の組み合わせる方法については、特に限定されるものではないが、効果をより高めるために、パッチもしくはアレイを皮膚とピストンもしくはそれに類する部品で挟み込むように、双方共に先端部に備えることが望ましい。
【0034】
本発明のアプリケータは、報告されている従来の設計のアレイ及びパッチを投与できる機能を有する。また、穿刺性を高めるもしくは安定させることを目的としたアレイ及びパッチを投与できる機能を有する。
【0035】
本発明のアプリケータが投与するアレイ及びパッチが備えるマイクロニードルの設計は、特に限定されるものではないが、痛みを緩和しながら指定部位まで穿刺させるため、マイクロニードルの長さは、0.1~2.0mmが望ましく、0.3~1.0mmがより好ましい。
【0036】
本発明のアプリケータが投与するアレイ及びパッチに備えるマイクロニードルの配置は、特に限定されるものではないが、穿刺性を高めるための設計を備えることが望ましい。中心部のマイクロニードルの配置密度を周囲部より低くし、穿刺性を高めたアレイを用いてもよい。中心部にマイクロニードルを配置せず、ドーナツのように周囲部のみ配置し、穿刺性を高めたアレイを用いてもよい。好適なマイクロニードルアレイとして、特開2021-003547号公報及び特開2021-186672号公報に記載されているものがあげられる。
【0037】
本発明のアプリケータが投与するアレイ及びパッチの基板の設計は、特に限定されるものではないが、穿刺性を高めるための設計を備えることが望ましい。基板を基盤部と土台部で構成し、基盤部の上に土台部を設け、その上にマイクロニードルを配置することにより、穿刺性を高めたアレイを用いてもよい。土台部の高さは0.1~2.0mmが好ましい。
【実施例0038】
以下、本発明の実施の形態を実施例に基づき説明するが、本発明は実施例の内容に限定されるものではない。実施例及び比較例において共通する試験法と準備した発明品・開発品を説明する。
【0039】
痛み評価試験法
評価対象のアプリケータをボランティア被験者(1名)の前腕部に適用した。0が「痛みなし」、1が「わずかな痛み」2~3が「軽度痛み」、4~6が「中程度痛み」、7~10が「深刻な痛み」として、0~10までの11段階に分けて、痛みがどの程度かを指し示す段階的スケールであるNumerical Rating Scale(NRS)法により、痛みを10段階のNRS値として数値化して評価した。本発明のアプリケータを利用してNRS値が5以下に改善することを目標とし、さらに3以下であればより好ましい。
【0040】
穿刺性評価試験法
アプリケータのパッチ保持具にマイクロニードルを備えたアレイを備え付けた。厚さ130μmのパラフィルムを8枚重ね合わせた上に、評価対象となるアプリケータを用いて、パッチを適用した。重ね合わせたパラフィルムの上から1枚ずつ観察し、穴の数を数え、アレイに備えられたマイクロニードルの本数の100%が穿刺されたパラフィルムの枚数にパラフィルムの厚さ130μmを乗算した数値を穿刺深さとして評価した。
【0041】
痛みを緩和する機構として、軟性材料のうち発泡材を選択した。発泡材として、材料はポリウレタン樹脂、硬度はJIS-K7312 附属書2 スプリング硬さ試験タイプC試験方法の規定に準拠した硬度計による測定において硬度1以下、厚さは10mm、面積はピストン先端面積と同面積、形状は円柱型(発泡材:円柱型)のもの、これの中央に6mmの孔をあけた中空円柱型(発泡材:中空円柱型)のもの、2種類を用意した。
【0042】
本発明者らが開発したアプリケータにおいて、従来のもの(アプリケータ:突起無し)とピストンの設計を変更しパッチと接触する面に突起を設けたもの(アプリケータ:突起有り)、2種類を用意した。突起は、ピストンの中央部に位置し、厚さを2mm、直径を6mm、形状は円柱型とした。
【0043】
本発明者らが開発したアレイにおいて、ポリグリコール酸(PGA)製、針長さ900μm、針本数200本、針配置が均一なもの(アレイ:従来設計)、中心部にマイクロニードルを配置せずドーナツのように周囲部のみ配置したもの(アレイ:ドーナツ型設計)、従来品の土台部の厚みを0.5mm厚くしたもの(アレイ:土台部設計)、3種類を用意した。
【0044】
実施例1~6
用意した発泡材2種類、アプリケータ2種類、アレイ3種類をそれぞれ組み合わせ、痛み評価と穿刺性評価を実施した。
実施例1として、発泡材を円柱型、アプリケータを突起無し、アレイを従来設計として、痛みの緩和効果の確認を主として評価した。
実施例2として、発泡材を備えず、アプリケータを突起有り、アレイを従来設計として、穿刺の向上効果の確認を主として評価した。
参考例3として、発泡材を備えず、アプリケータを突起無し、アレイをドーナツ型設計及び土台部設計として、穿刺の向上効果の確認を主として評価した。
実施例4として、発泡材を円柱型、アプリケータを突起無し、アレイをドーナツ型設計及び土台部設計として、痛みの緩和効果と穿刺の向上効果を評価した。
実施例5として、発泡材を中空円柱型、アプリケータを突起有り、アレイを従来設計として、痛みの緩和効果と穿刺の向上効果を評価した。
実施例6として、発泡材を中空円柱型、アプリケータを突起有り、アレイをドーナツ型設計及び土台部設計として、痛みの緩和効果と穿刺の向上効果を評価した。
評価の結果を表1にまとめる。
【0045】
比較例1
発泡材を備えず、アプリケータを突起無し、アレイを従来設計として、従来の開発品の痛み評価と穿刺性評価を実施した。評価の結果を表1にまとめる。
【0046】
【表1】
【0047】
実施例7
痛みを緩和する機構として、軟性材料のうち発泡材を選択した。発泡材として、材料はポリウレタン樹脂、硬度はJIS-K7312 附属書2 スプリング硬さ試験タイプC試験方法の規定に準拠した硬度計による測定において、硬度20、15、10、5、及び1以下のものを用意、形状は円柱型、厚さは10mm、面積はピストン先端面積と同面積とした。本発明者らが開発したアプリケータのピストンの先端に、本発泡材を備え付け、痛み評価と穿刺性評価を実施した。評価の結果を表2にまとめる。
【0048】
【表2】
【0049】
実施例8~14
痛みを緩和する機構として、軟性材料のうち発泡材を選択した。発泡材として、材料はポリウレタン樹脂(実施例8)、メラミン樹脂(実施例9)、シリコーン樹脂(実施例10)、NRゴム(実施例11)、NBRゴム(実施例12)、EPDMゴム(実施例13)及びCRゴム(実施例14)を用意、硬度はJIS-K7312 附属書2 スプリング硬さ試験タイプC試験方法の規定に準拠した硬度計による測定において硬度1以下、形状は円柱型、厚さは10mm、面積はピストン先端面積と同面積とした。本発明者らが開発したアプリケータのピストンの先端に、本発泡材を備え付け、痛み評価を実施した。評価の結果を表3にまとめる。
【0050】
【表3】
【0051】
実施例15
痛みを緩和する機構として、軟性材料のうち発泡材を選択した。発泡材として、材料はポリウレタン樹脂、硬度はJIS-K7312 附属書2 スプリング硬さ試験タイプC試験方法の規定に準拠した硬度計による測定において硬度1以下、形状は円柱型、厚さは2、5、10、15、20及び30mmのものを用意し、面積はピストン先端面積と同面積とした。本発明者らが開発したアプリケータのピストンの先端に、本発泡材を備え付け、痛み評価を実施した。評価の結果を表4にまとめる。
【0052】
【表4】
【0053】
実施例16
痛みを緩和する機構として、軟性材料のうち発泡材を選択した。発泡材として、材料はポリウレタン樹脂、硬度はJIS-K7312 附属書2 スプリング硬さ試験タイプC試験方法の規定に準拠した硬度計による測定において硬度1以下、形状は円柱型、厚さは10mm、面積はピストン先端の面積の0.2、0.5、0.75、1.0、1.2及び1.5倍のものを用意した。本発明者らが開発したアプリケータのピストンの先端に、本発泡材を備え付け、痛み評価と穿刺性評価を実施した。評価の結果を表5にまとめる。
【0054】
【表5】
【0055】
実施例17
痛みを緩和する機構として、軟性材料のうち発泡材を選択した。発泡材として、材料はポリウレタン樹脂、硬度はJIS-K7312 附属書2 スプリング硬さ試験タイプC試験方法の規定に準拠した硬度計による測定において硬度1以下、厚さは10mm、面積はピストン先端面積と同面積、これの中央に突起の形状に合わせた孔を空けた中空円柱型のものを用意した。
【0056】
本発明者らが開発したアプリケータにおいて、ピストンの設計を変更し、パッチと接触する面に突起を設けた。突起にあたる部位は、ピストンの中央部に位置し、形状は円柱形、厚さは1.0、1.5、2.0、3.0、5.0、及び10.0mmのものを用意し、面積はアレイ背部面積の0.2倍のものとした。本発明者らが開発したアプリケータに本発泡材と本ピストンを備え付け、痛み評価と穿刺性評価を実施した。アレイは、PGA製、針長さ900μm、針本数200本、針配置が均一なものを用いた。評価の結果を表6にまとめる。
【0057】
【表6】
【0058】
実施例18
痛みを緩和する機構として、軟性材料のうち発泡材を選択した。発泡材として、材料はポリウレタン樹脂、硬度はJIS-K7312 附属書2 スプリング硬さ試験タイプC試験方法の規定に準拠した硬度計による測定において硬度1以下、厚さは10mm、面積はピストン先端面積と同面積、これの中央に突起の形状に合わせた孔を空けた中空円柱型のものを用意した。
【0059】
本発明者らが開発したアプリケータにおいて、ピストンの設計を変更し、パッチと接触する面に突起を設けた。突起にあたる部位は、ピストンの中央部に位置し、形状は円柱形、厚さは2mm、面積はアレイ背部面積の0.1、0.2、0.3、0.4、及び0.5倍のものを用意した。本発明者らが開発したアプリケータに本ピストンを備え付け、痛み評価と穿刺性評価を実施した。アレイは、PGA製、針長さ900μm、針本数200本、針配置が均一なものを用いた。評価の結果を表7にまとめる。
【0060】
【表7】
【0061】
実施例19
痛みを緩和する機構として、軟性材料のうち発泡材を選択した。発泡材として、材料はポリウレタン樹脂、硬度はJIS-K7312 附属書2 スプリング硬さ試験タイプC試験方法の規定に準拠した硬度計による測定において硬度1以下、厚さは10mm、面積はピストン先端面積と同面積の円柱型のものを用意した。
【0062】
本発明者らが開発したアプリケータのピストンの先端に、本発泡材を備え付け、痛み評価と穿刺性評価を実施した。アレイは、PGA製、針長さ900μm、針本数200本、針配置が均一で、基板を基盤部と土台部で構成し、基盤部の上に土台部を設け、その上にマイクロニードルを配置したアレイを用いた。なお、土台部の厚さは0.1、0.5、1.0、2.0、及び3.0mmのものを用意した。評価の結果を表8にまとめる。
【0063】
【表8】
【符号の説明】
【0064】
1 ピストン
2 液体粘弾系緩和機構
3 摩擦系緩和機構
4 スプリング緩和衝機構
5 軟性材料系緩和機構
6 ピストン突起
7 粘着テープ
8 皮膚
9 従来設計アレイ
10 土台部設計アレイ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9