(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023165402
(43)【公開日】2023-11-15
(54)【発明の名称】靴アッパー
(51)【国際特許分類】
A43B 23/02 20060101AFI20231108BHJP
A43B 13/38 20060101ALI20231108BHJP
【FI】
A43B23/02 101Z
A43B23/02 109
A43B13/38 Z
【審査請求】有
【請求項の数】22
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023070066
(22)【出願日】2023-04-21
(31)【優先権主張番号】10 2022 001 531.5
(32)【優先日】2022-05-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(71)【出願人】
【識別番号】510204998
【氏名又は名称】アディダス アーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 規雄
(74)【代理人】
【識別番号】100114409
【弁理士】
【氏名又は名称】古橋 伸茂
(74)【代理人】
【識別番号】100141025
【弁理士】
【氏名又は名称】阿久津 勝久
(74)【代理人】
【識別番号】100147762
【弁理士】
【氏名又は名称】藤 拓也
(72)【発明者】
【氏名】ロビー パターソン
(72)【発明者】
【氏名】バレンティン ペリン
(72)【発明者】
【氏名】フォーク ブランズ
(72)【発明者】
【氏名】東 貴志
【テーマコード(参考)】
4F050
【Fターム(参考)】
4F050AA01
4F050BA02
4F050BC20
4F050BC47
4F050BC48
4F050BF01
4F050EA19
4F050HA56
4F050HA85
4F050JA01
4F050KA03
4F050KA04
4F050LA01
(57)【要約】
【課題】快適かつ柔軟でありながら、必要とされる安定性を提供し、持続可能な方式で容易に製造することができる、軽量の靴アッパーを提供すること。
【解決手段】本発明は、結合されて着用者の足を収納する足受け入れ空洞を形成する第1のアッパー要素および第2のアッパー要素を備えている、靴アッパーに関し、第2のアッパー要素は中敷を形成し、第2のアッパー要素は、第2のアッパー要素の側方側および内方側から突出するウィングの少なくとも第1の組を備え、ウィングの第1の組は、第1のアッパー要素を第2のアッパー要素に取り付けるように構成された第1の合流エリアを備えている。
【選択図】
図2A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
靴アッパーであって、
結合されて着用者の足を収納する足受け入れ空洞を形成する第1のアッパー要素および第2のアッパー要素、を備え、
第2のアッパー要素が中敷を形成し、
第2のアッパー要素が、第2のアッパー要素の側方側および内方側から突出するウィングの少なくとも第1の組を備え、ウィングの第1の組は、第1のアッパー要素を第2のアッパー要素に取り付けるように構成された第1の合流エリアを備えている、靴アッパー。
【請求項2】
第2のアッパー要素のウィングの第1の組は、非連結状態において、第2のアッパー要素の長手方向に、第2のアッパー要素上に位置するかかとエリアを越えて延び;連結された状態において、ウィングの第1の組は、靴アッパーのかかとエリアを形成する、請求項1の靴アッパー。
【請求項3】
ウィングの第1の組が、ウィングの第1の組の外側縁部にあってボールエリアからかかとエリアまで延びる第2の合流エリア、をさらに備えている、請求項1の靴アッパー。
【請求項4】
第2のアッパー要素が、第2のアッパー要素の側方側から突出したウィングの少なくとも第2の組をさらに備えている、請求項1の靴アッパー。
【請求項5】
ウィングの第2の組が、靴アッパーのつま先エリアに位置している、請求項4の靴アッパー。
【請求項6】
ウィングの第1の組および/またはウィングの第2の組が、第2のアッパー要素の中敷と一体形成されている、請求項1の靴アッパー。
【請求項7】
ウィングの第2の組が、つま先エリアから横方向にボールエリアまで延びてウィングの第2の組の外側縁部に位置する第3の合流エリア、をさらに備えている、請求項6の靴アッパー。
【請求項8】
第1のアッパー要素と第2のアッパー要素とが、第1の合流エリアにおいて、および/または第2の合流エリアにおいて、および/または第3の合流エリアにおいて、共に結合されている、請求項1の靴アッパー。
【請求項9】
ウィングの第1の組および/またはウィングの第2の組が、中心に置かれた、第2のアッパー要素の長手軸に対して対称に配置されている、請求項1の靴アッパー。
【請求項10】
ウィングの第1の組のうち少なくとも1つのウィング、および/または第2の組のうち少なくとも1つのウィング、および/または第2のアッパー要素、および/またはかかとエリアに、それぞれの第1の合流エリアおよび/または第2の合流エリアおよび/または第3の合流エリアを少なくとも選択的に補強するように適合された、少なくとも1つの補強要素が設けられている、請求項1の靴アッパー。
【請求項11】
少なくとも1つの補強要素が、ウィングの第1の組、および/またはウィングの第2の組、および/または第2のアッパー要素、および/または第1の合流エリア、および/または第2の合流エリア、および/または第3の合流エリア、および/またはかかとエリアを補強するように適合されている、請求項10の靴アッパー。
【請求項12】
少なくとも1つの補強要素が、熱可塑性ポリウレタン(TPU)から作られている、請求項10の靴アッパー。
【請求項13】
第1のアッパー要素と第2のアッパー要素とが、少なくとも、それぞれのウィングの組の第1の合流エリアおよび/または第2の合流エリアおよび/または第3の合流エリア内で、縫いにより、および/または溶着により、共に結合されている、請求項1の靴アッパー。
【請求項14】
第1のアッパー要素および/または第2のアッパー要素の右の側方側から、かかとエリアの周りを通り、第1のアッパー要素および/または第2のアッパー要素の左の側方側まで延びて、第1のアッパー要素および/または第2のアッパー要素に締結された長手方向補強要素、をさらに備え、
長手方向補強要素が、着用者の足のかかとエリアに支持を与えるように適合されている、請求項1の靴アッパー。
【請求項15】
長手方向補強要素が、糊付けまたは溶着によって靴アッパーに接続されている、請求項14の靴アッパー。
【請求項16】
第1のアッパー要素および/または第2のアッパー要素が、少なくとも部分的にサンドイッチメッシュから作られている、請求項1の靴アッパー。
【請求項17】
サンドイッチメッシュは、縫いによって第1のアッパー要素と第2のアッパー要素とを共に結合することから生じる縫い目がサンドイッチメッシュ材料の表面よりも下に位置するように、適合されている、請求項13と組み合わせた請求項16の靴アッパー。
【請求項18】
靴アッパーにストローベルが無い、請求項1の靴アッパー。
【請求項19】
第1のアッパー要素が、第1のアッパー要素の形状で設けられたメッシュ要素で追加的に補強されている、請求項1の靴アッパー。
【請求項20】
請求項1の靴アッパーを備えた靴であって、第2のアッパー要素の底面が、靴の外側靴底として使用されるように適合されている、靴。
【請求項21】
請求項1の靴アッパーを備えた、靴。
【請求項22】
請求項1の靴アッパーを製造するための方法であって、
第1のアッパー要素および第2のアッパー要素を用意するステップであって、
第2のアッパー要素は、第2のアッパー要素の側方側および内方側から突出するウィングの少なくとも第1の組を備え、
各ウィングは、第1のアッパー要素を第2のアッパー要素に取り付けるように構成された第1の合流エリアを備えるステップと;
ウィングの少なくとも第1の組のウィングを、平面状の向きから、第1のアッパー要素に向かって3次元の向きに変形するステップと;
第1のアッパー要素と第2のアッパー要素とを、第1の合流エリア内で、変形されたウィングに沿って共に結合するステップであって、それにより第1のアッパー要素と第2のアッパー要素とが、靴アッパーのボールエリアから靴アッパーのかかとエリアまで上向きに共に結合される、ステップと、を含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、全般的に、靴アッパー、靴アッパーを備えた靴、およびその靴アッパーを製造するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
現代の靴は複数の個々の部品から作られることがあり、その場合、それら個々の構成部品が一連の製造ステップで共に組み合わされて、最終的な靴を作り出す。そのような組み合わせの1つは、足受け入れ空間を作り出すためにアッパーを組み合わせるものである。従来のスポーツシューズでは、これはストローベル(Strobel)構成を使用して実現される。ストローベル構成とは、ヴァンプとして知られることもある靴の上部構成部品が、さらなる構成部品であるストローベルに取り付けられる場合である。そして、ストローベルは、着用者が歩行中に踏むことのできる中敷の一部を形成し、それにより足受け入れ空間を作り出す。ストローベル構成の1つの不都合点は、靴内部の縫い目が足に刺激を引き起こすことがあり、悪ければ水ぶくれにつながり得ることである。皮膚の刺激を回避するために、靴アッパーには、クッショニングの目的、したがって着用者へのより高い快適性のために、靴アッパーの内部に靴下状の構成物(例えばソックライナー)が設けられる。
【0003】
しかし、ストローベル構成の今一つの不都合点は、追加的な構成部品の使用が構造の重量を増すことである。そのような追加的な構成部品の1つは、ストローベル構造が、通常、縫い目が着用者の足を刺激するという前述の不都合点を回避するためにソックライナーの使用をも要することである。
【0004】
当技術分野で知られているモカシン靴は、一つの部片としてすべてが共に縫い合わされた、アッパー、クオーター、および内底から構成される軽量な靴である。よって、モカシン構造は、ストローベル位置合わせおよびソックライナーを使用しない。
【0005】
しかし、モカシンは、運動活動に必要とされる十分な締まりおよび安定性を提供しないため、運動活動には適さない。
【0006】
米国特許第8,042,288(B2)号明細書は、履き物品およびその履き物品の製造方法に関する。同履き物は、アッパーおよび靴底構造を含み得る。アッパーは、足を受け入れる空隙の少なくとも一部を画定するために共に結合された縁部を持つ、テキスタイル要素を組み込んでいる。
【0007】
米国特許第10,548,364(B2)号明細書は、単体の編み構造からなる編まれた構成部品を持つアッパーを含む、履き物品に関する。
【0008】
これら従来技術の靴アッパーも、軽量でないか、十分な安定性を提供しないか、または運動活動のために十分に快適ではないかのいずれかである。アッパーは、ぴったりフィットするが快適でないか、または快適であるが緩いかのいずれかである。スポーツシューズの場合、これは、例えば全速力で走ったり急速な方向転換を行ったりする時に、足の動きのコントロールの不足につながることがある。
【0009】
より重い靴はその大きい重量を動かすためにユーザから増大したエネルギー入力を必要とするため、運動靴の重量は、運動者の速度とパフォーマンスに影響することがある。運動競技の世界では一秒が極めて重要であり得ることはよく知られている。したがって、速度とパフォーマンスを増大させることが望ましい。これは、軽量の靴によって達成される。同時に、快適で柔軟であるが、高いパフォーマンスのために十分な安定性をも提供する、軽量の靴を提供することが求められる。
【0010】
したがって、上述したモカシン構造および従来の運動靴の欠点を克服する、運動靴用の靴アッパーが必要とされている。
【0011】
したがって、本発明の目的は、快適かつ柔軟でありながら、必要とされる安定性を提供し、持続可能な方式で容易に製造することができる、軽量の靴アッパーを提供することである。
【0012】
これは、請求項1に記載の靴アッパー、請求項Xに記載の靴、および請求項Yに記載の靴アッパーの製造方法によって達成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】米国特許第8,042,288(B2)号明細書
【特許文献2】米国特許第10,548,364(B2)号明細書
【発明の概要】
【0014】
本発明の第1の態様によれば、これらの問題は、靴アッパーによって少なくとも部分的に解決され、この靴アッパーは、着用者の足を収納する足受け入れ空洞を形成するために結合され得る、第1のアッパー要素および第2のアッパー要素を備えてよい。第2のアッパー要素は中敷を形成してよく、第2のアッパー要素は、第2のアッパー要素の側方側および内方側から突出するウィングの少なくとも第1の組を備えてよく、ウィングの第1の組は、第1のアッパー要素を第2のアッパー要素に取り付けるように構成された第1の合流エリアを備えてよい。
【0015】
靴アッパーは、少なくとも、第1のアッパー要素および第2のアッパー要素、の2つの要素を備えてよい。第1のアッパー要素は、靴アッパーの上側に位置してよいのに対し、第2のアッパー要素は、靴アッパーの底側に位置してよい。この文脈における上側とは、地面から最も遠い靴アッパーの側であると理解されてよく、靴アッパーの底面/底側は、地面に最も近い靴アッパーの側であると理解されてよい。
【0016】
底部要素としてのその機能において、靴アッパーの着用者は、靴アッパーを着用した時に少なくとも第2のアッパー要素の一部分を踏んでよい。
【0017】
側方側および内方側は、第2のアッパー要素を上から見たときに、第2のアッパー要素の左側および右側として理解されてよく、また、靴アッパーの内方側(着用者の身体の中心の方を向く)および側方側(着用者の身体から離れる方を向く)として理解されてよい。
【0018】
ウィングの第1の組は、好ましくは2つの(別個の)ウィングを備え得る。一部の例示的実施形態では、ウィングの第1の組が、3つ、4つ、5つ、6つ等の(別個の)ウィングを備えることも可能であり得る。
【0019】
第1の合流エリアは、好ましくは、(組み立てられた)靴アッパーの内方側および/または側方側に位置し得る。第1の合流エリアは、好ましくは、靴アッパーの内方側および/または側方側から、靴アッパーの底側から(例えば、組み立てられた靴アッパーにおいて、着用者の足のボールエリアに近くてよい側方/内方エリアから)、靴アッパーの着用者の足のくるぶし領域を横切って、靴アッパーの上部かかとエリアまで延び得る。かかとエリアは、着用者の足のアキレス腱が位置し得る、靴アッパーのエリアに関係してよい。
【0020】
第1のアッパー要素と第2のアッパー要素とを共に結合することに少なくとも部分的に基づいて靴アッパーを組み立てることにより、靴アッパーの形状の正確な画定が容易にされ得る。それぞれのウィングおよびそれぞれの合流エリアを用いて第1のアッパー要素と第2のアッパー要素とを共に結合することにより、着用者の足へのよりぴったりとした靴アッパーのフィットが促進され得る。これは、例えば当技術分野で知られる靴アッパーのように紐で互いと結び付けられることによって閉じられる場合と比べて、それぞれの第1のアッパー要素と第2のアッパー要素とが(結合の結果として)より近く、互いとぴったり合っていることによって容易にされ得る。これは、靴アッパーと着用者の足との間の望ましくない空間を防止し得る。したがって、靴アッパーに対する着用者の足の望ましくない緩み(例えば、着用者の足の側方くるぶし領域における)が抑制され得る。運動の実施時に、靴アッパーの「緩さ」は、エネルギーの損失と着用者による知覚される安定性の不足とに起因して、悪影響を有することがある。この知覚される、または実際の安定性の不足は、着用者が足と足首を安定させようとすることから、着用者の増大した(そして望ましくない)筋肉の活動につながることがあり、それが下肢筋肉に必要以上の疲労を生じさせ、これは、運動用途においては、運動エネルギーの少なくとも一部が緩みに変換され得、よって運動用途のために最大限提供されなくなり得るため、運動者にとってパフォーマンスの低下につながり得る。本発明の靴アッパーのさらなる利点は、第1のアッパー要素が第2のアッパー要素と結合され得る合流エリアがいずれも、中敷ではなく、靴アッパーの側方側および/または内方側に位置し得るという態様から生じ得る。したがって、靴アッパーの着用者は、望ましくない不快感につながり得る、それぞれの合流エリアの踏みつけを行わない可能性がある。したがって、従来のストローベル靴構成のような、縫い目線を覆うためのソックライナーが必要でなくなる。ソックライナーが存在しないことは、さらに靴アッパーの重量低減につながり得、よって、運動者の疲労への靴重量に関係する寄与が最小にされ得ることから、運動者の向上したパフォーマンスに貢献し得る。さらに、上述したような靴アッパーの設計は、かかとカウンターのない靴アッパーの製造をも可能にし得、これは、靴アッパーのさらなる重量低減に貢献し得る。
【0021】
本発明の靴アッパーのさらなる利点は、靴アッパーの向上したリサイクル性に見ることができ、これは、それほど複雑でない靴アッパーが提供され、それが、ひいては必要とされるリサイクル労力を低減するためである。
【0022】
ウィングの第1の組は、ウィングの第1の組の外側縁部に位置して、ボールエリアからかかとエリアまで延びる、第2の合流エリアをさらに備えてよい。
【0023】
外側縁部は、靴アッパーの底側に近い、靴アッパーのエリアに位置してよい。この文脈における近いとは、外側縁部が、靴アッパーの底側から、例えば2mm未満、3mm未満、5mm未満、10mm未満、15mm未満、または20mm未満の、距離にあり得るものと理解されてよい。
【0024】
第2の合流エリアを、それらが靴アッパーの右側の外側縁部と靴アッパーの左側の外側縁部とに沿って延びるように配置することにより、靴アッパーのヴァンプ部分内のそれぞれのエリアにも、少なくとも前記エリア内で靴アッパーの形状をより正確に画定するための手段が設けられ得ることが容易にされ得、これは、着用者の足の望ましくない緩みの抑制に貢献することができる。言い換えると、靴アッパーに第2の合流エリアを設けることにより、少なくとも第2の合流エリアにおける靴アッパーのよりぴったりしたフィットが容易にされ得る。これは、前記エリアにおける靴アッパーのよりぴったりしたフィットを可能にし、よって、上記で概説したように運動者に向上したパフォーマンス支援を提供し得る。
【0025】
第2のアッパー要素のウィングの第1の組は、非連結状態において、第2のアッパー要素の長手方向に、第2のアッパー要素上に位置するかかとエリアを越えて延びてよく、連結された状態において、ウィングの第1の組は、靴アッパーのかかとエリアを形成してよい。
【0026】
非連結状態とは、靴アッパーの組み立てられていない状態を言うことがある。上述の(非連結)状態において、上面から見たとき、第2のアッパー要素のウィングの第1の組のウィングは、かかとエリア(すなわち、靴アッパーが組み立てられた状態で着用者の足のかかとが位置し得る、第2のアッパー要素のエリア)を越えて延びてよい。
【0027】
第2のアッパー要素の左側に位置する第1のウィングと、第2のアッパー要素の右側に位置する第2のウィングとを結合するときに、靴アッパーのかかとエリアが形成されてよい。かかとエリアは、かかと(例えば着用者の足のアキレス腱)を支持するように構成されてよく、靴アッパーが着用された時に、着用者の足のかかとを完全に取り囲んでよい。
【0028】
そのような構成は、単純化され、より高速な靴アッパーの製造を可能にし得る。詳しくは、少なくともウィングの第1の組のウィングが予め第2のアッパー要素の一部であり得るため、組み立てて共に結合する必要のある構成部品がより少ない。かかとエリアはさらに、着用者の足のかかとへのぴったりしたフィットが容易にされ得るように適合されてよい。
【0029】
第2のアッパー要素は、第2のアッパー要素の対向する各側から突出してよい、ウィングの少なくとも第2の組をさらに備えてよい。
【0030】
ウィングの第2の組は、好ましくは2つの(別個の)ウィングを備え得る。一部の例示的実施形態では、ウィングの第1の組が、3つ、4つ、5つ、6つ等の(別個の)ウィングを備えることも可能であり得る。
【0031】
(例えば2つの)ウィングの第2の組がウィングの第1の組と別個である場合、第2のアッパー要素によるものを除いては、ウィングの第1の組のウィングとウィングの第2の組のウィングとの間に接続が存在しなくてよい。
【0032】
ウィングの第2の組の別個の配置は、第2のアッパー要素のウィングの第1の組のエリアにおける、着用者の足に合わせた靴アッパーの形状の適合とは独立して、ウィングの第2の組が位置するエリアにおいて、着用者の足の形状に合わせた、組み立てられた靴アッパーの形状の独立した調節を可能にし得る。したがって、着用者の足の形状に合わせた靴アッパーの強化された適合のために、追加的な自由度が与えられ得る。
【0033】
しかし、一部の実装では、第2のアッパー要素のそれぞれ同じ側に位置する、ウィングの第1の組のウィングと、ウィングの第2の組のウィングとが、それぞれの接続要素によって追加的に接続されてもよい。一部の場合には、接続要素は、ウィングの第1の組のウィングとウィングの第2の組のウィングとが一体に接続されるように適合されてよい。一部の実装では、接続要素は、例えば、布地片、メッシュ、TPU等から作られてよい。一部の場合には、接続要素は、第2のアッパー要素と同じ材料から作られてよい。
【0034】
ウィングの第2の組は、靴アッパーのつま先エリアに位置してよい。
【0035】
靴アッパーのつま先エリアは、靴アッパーが着用された時に着用者の足のつま先を収容し得る、靴アッパーのエリアに関係してよい。
【0036】
ウィングの第2の組を靴アッパーのつま先エリアに位置させることにより、前記領域における、着用者の足の形状に合わせた靴アッパーの形状の強化された適合が容易にされ、またかかとエリアから独立し得る。さらに、ウィングの第2の組は靴アッパーの側方側に位置し得るので、靴アッパーの底側のつま先エリアにおける合流エリアの存在から生じ得る不快感が防止され得る。
【0037】
ウィングの第1の組および/またはウィングの第2の組は、第2のアッパー要素の中敷と一体形成されてよい。
【0038】
ウィングの第1の組のウィングおよび/またはウィングの第2の組のウィングの、第2のアッパー要素の中敷との一体形成は、一体形成されたウィングおよび中敷が単一の要素として提供されるものと理解されてよい。単一の要素は、それぞれのウィングが第2のアッパー要素の中敷と一体に接続され、(追加的な)取り付け手順を全く必要としないように、積層された布地の1つまたは複数の層から第2のアッパー要素を切り出すことによって第2のアッパー要素が得られる実装に関係し得る。一部の場合には、ウィングの第1の組のウィングおよび/またはウィングの第2の組のウィングは、中敷と共に成型されてもよい。
【0039】
しかし、一部の実装では、中敷およびウィングの1つまたは複数が、互いと独立して得られ/製造され、次いで、続く製造ステップで第2のアッパー要素が得られるように一体に結合されることも可能であり得る。それぞれのウィングを中敷と共に一体に結合することは、縫製、溶着、糊付け等の1つまたは複数を含んでよい。
【0040】
ウィングの第1の組のウィングの両方、および/またはウィングの第2の組のウィングの両方が、中敷と一体形成されることが可能であり得る。しかし、一部の実施形態では、ウィングの第1の組のうち1つのみのウィングおよび/またはウィングの第2の組のうち1つのみのウィングが中敷と一体形成されることも可能であり得る。
【0041】
いずれの場合も、中敷と一体形成されたウィングを設ける(一体形成されるウィングの合計数に関係なく)ことにより、1つまたは複数のウィングを中敷に取り付けるという労働集約的な工程が旧式のものにされ得るため、靴アッパーの製造手順の簡略化が容易にされ得る。これは、靴アッパーの全体的な製造コストの低減にもつながり得る。
【0042】
ウィングの第2の組は、つま先エリアからボールエリアまで延びてウィングの第2の組の外側縁部に位置してよい第3の合流エリアをさらに備えてよい。
【0043】
第3の合流エリアは、ウィングの第2の組のウィングを、第1のアッパー要素、すなわち靴アッパーの上側、に結合することを可能にしてよい。
【0044】
好ましい実装では、第3の合流エリアは、靴アッパーの側方側および/または前側に位置してよい。前側とは、例えば、靴アッパーの最もつま先寄りの部分(靴アッパーが着用された時に着用者の足のつま先がそこに位置し得る)を言い得る。一部の実装では、第3の合流エリアは、(少なくとも部分的に)靴アッパーの上側のつま先エリアに位置してよい。
【0045】
第3の合流エリアを靴アッパーの側方側および/または上側に設けることにより、靴アッパーの着用者が、第3の合流エリアを踏みつけることから生じ得る、靴アッパーを着用している時の不快感を知覚することが防止され得る。そのような実装は、ストローベルおよび/または他のクッショニング材料を旧式のものにして、第3の合流エリアを踏みつけることから生じる、起こり得る不快感を克服するのに貢献し得る。したがって、利点として靴アッパーの重量軽減が支援され得、これは、当技術分野で知られる同様の靴(例えば、同様の運動用途のために提供される靴)と比べて15~20gにもなり得る。
【0046】
第1のアッパー要素と第2のアッパー要素とは、第1の合流エリアにおいて、および/または第2の合流エリアにおいて、および/または第3の合流エリアにおいて、共に結合されてよい。
【0047】
第1の合流エリアおよび/または第2の合流エリアおよび/または第3の合流エリアは、線の形状で設けられてよい。
【0048】
一部の実装では、第1、および/または第2および/または第3の合流エリアの少なくとも1つが、線の形状で設けられてよい。そのような線は、一つの合流エリアに関係してよく、合流エリアの長手方向の広がりは、その幅よりも大幅に長い。
【0049】
線形状は、とりわけ、その線によって共に結合される第1のアッパー要素および第2のアッパー要素のそれぞれの部分の重なり領域から生じ得る。
【0050】
合流エリアの少なくとも1つを線の形状で設けることにより、第2のアッパー要素のそれぞれの1つまたは複数のウィングが第1のアッパー要素と結合されるエリアの空間的広がりが低減され得る。したがって、靴を着用する快適性が向上され得る。さらに、線は、最小に抑えられた空間的広がりをもつエリアのみに関係し得るので、1つまたは複数のそれぞれのウィングを用いて第1のアッパー要素と第2のアッパー要素とを共に結合するために必要とされる材料消費量が低減され得る。これは、靴アッパーの製造のための材料消費量を低減し得(処理する必要のある材料の量がより少ないため)、また、より少ない手順ステップで済むため、概して製造時間を短縮し得る。これら上述の態様はさらに、靴アッパーの製造コストの低減に有利に貢献し得る。
【0051】
ウィングの第1の組および/またはウィングの第2の組は、中心に置かれた、第2のアッパー要素の長手軸に対して対称に配置されてよい。
【0052】
ウィングおよび/またはウィングの第2の組の対称配置は、例えば第2のアッパー要素の左側にあるウィング上の任意の取り得る点が、例えば第2のアッパー要素の対応する右側にあるそれぞれのウィング上に対応する点を有する実装に関係し得、第2のアッパー要素は、2つの互いに対応する点の各々が、中心に置かれた、第2のアッパー要素の長手軸まで同じ水平方向距離を持つように配置される。
【0053】
好ましい例では、中心に置かれた長手方向線は、それが、第2のアッパー要素の総面積を各自の等しい表面積を有する2つの部分に分けるように配置されてよい。中心に置かれた長手方向線は、好ましくは、第2のアッパー要素のつま先エリアから第2のアッパー要素のかかとエリアまで、かつ、第2のアッパー要素の左側に(中心に置かれた長手方向線に対して)位置する各選択された点が、第2のアッパー要素のそれぞれの右側にある対応する鏡像点を有して、中心に置かれた長手方向線までの2つの点の水平方向距離が等しくなるように、延びる。
【0054】
そのようなウィングの第1の組および/またはウィングの第2の組の対称配置は、靴アッパーを製造するために使用される部品の幾何学形状を簡素化し得る。対称性の有利な使用は、製造の複雑性の低減につながり得、よって、靴アッパーの製造コストも低減し得る。
【0055】
ウィングの第1の組のうち少なくとも1つのウィング、および/または第2の組のうち少なくとも1つのウィング、および/または第2のアッパー要素、および/またはかかとエリアに、それぞれの第1の合流エリアおよび/または第2の合流エリアおよび/または第3の合流エリアを選択的に補強するように適合された、少なくとも1つの補強要素が設けられてよい。
【0056】
一部の場合には、第1の合流エリアおよび/または第2の合流エリアおよび/または第3の合流エリアに、完全に補強要素が設けられてよい。代替的に、補強要素は、第1の合流エリアおよび/または第2の合流エリアおよび/または第3の合流エリアの一部のみに設けられてもよく、よって、第1の合流エリアおよび/または第2の合流エリアおよび/または第3の合流エリアを選択的にのみ補強してもよい。
【0057】
一部の実装では、第1の合流エリアおよび/または第2の合流エリアおよび/または第3の合流エリアに寄与しないそれぞれウィングの少なくとも一部分にも、補強要素が設けられてよい。
【0058】
補強要素の使用は、例えば、従来使用されているかかとカウンターの代替と見てよく(靴アッパーのかかと部分に補強と安定性を与え得るため)、しかし重量低減を伴う。靴アッパーの特定の部分に補強要素を選択的に設けることにより、補強要素の全体的な材料コストが最小にされ得る。さらに、状況によっては、補強要素の加工は、補強要素と異なる要素の処理として、よりコストがかかり得る。そのような場合、補強の選択的な配設は、伴う製造コストを減らし得る。したがって、製造コストが最小にされ得る。さらに、リサイクル性の観点から、補強の最小限の使用は、分離して処理する必要のある異なる材料の数が減るため、簡略化されたリサイクル性をも可能にし得る。
【0059】
少なくとも1つの補強要素は、ウィングの第1の組、および/またはウィングの第2の組、および/または第2のアッパー要素、および/または第1の合流エリア、および/または第2の合流エリア、および/または第3の合流エリア、および/またはかかとエリアを補強するように適合されてよい。
【0060】
好ましい応用例では、補強要素は、第1のおよび/または第3の合流エリアおよび/またはかかとエリアに、増大した応力耐性および/または耐裂性を与えるために使用されてよい。
【0061】
増大した応力耐性および/または耐裂性は、特に、運動用途時には、増大した引っ張る力がそれぞれの合流エリアおよび/またはかかとエリアにかかることがあり、それが前記エリアに対する強い負荷につながり得るため、前記エリアでは有利であると見てよい。前記エリアの引っかかりおよび/または前記エリアの他の種の劣化を回避するために、追加的な耐性のために補強要素が設けられてよく、これは、利点として靴アッパーの寿命の伸長に貢献し得た。
【0062】
少なくとも1つの補強要素は、熱可塑性ポリウレタン(TPU)から作られてよい。
【0063】
少なくとも1つの補強要素は、第1のアッパー要素および/または第2のアッパー要素の骨格の形状で設けられてよい。
【0064】
一部の用途では、少なくとも1つの補強要素が合流エリアおよび/またはウィングだけに限定されないことも可能であり得る。一部の用途では、第1のアッパー要素および/または第2のアッパー要素の少なくとも一部分にも補強要素が設けられてよい。そのような部分は、例えば第1のアッパー要素および/または第2のアッパー要素の骨格に関係してよい。
【0065】
骨格とは、それぞれの第1のアッパー要素および/または第2のアッパー要素に追加的な支持を与え得る(例えば、剛性、硬さ、ねじり剛性等の目的で)支持構造/足場として理解されてよい。
【0066】
少なくとも1つの補強要素を骨格の形状で設けることにより、全体的な補強材料の消費量が最小にされ得る。したがって、望まれる支持を与えるために必要とされる補強材料がより少なくなる。
【0067】
補強要素は、第2のアッパー要素の底面で第2のアッパー要素と結合されてよい。補強要素は、第2のアッパー要素の輪郭と一致する形状で設けられてよい。補強要素は、好ましくは、第2のアッパー要素の縁部から第2のアッパー要素の中心に向かって、15mm以下延び得る。
【0068】
好ましくは骨格の形状で、設けられる補強要素は、一体のユニットを形成するように第2のアッパー要素と結合されてよい。補強要素と第2のアッパー要素とは、例えば溶着、縫製、熱プレス、糊付け、またはそれらの組み合わせによって共に結合されてよい。一部の場合には、補強要素は、第2のアッパー要素から取り外し可能なように構成されてもよい。
【0069】
好ましい実装では、補強要素は、第2のアッパー要素の輪郭と一致するような形状で設けられてよい。輪郭は、例えば第2のアッパー要素の、周囲外側形状と理解されてよい。
【0070】
代替的に、補強要素は、補強要素に追加的な支持を与え得る任意の他の形状で設けられてもよい(例えば、第2のアッパー要素の少なくとも一部分にまたがり得るクロスバー形状の要素、円形状の要素等)。
【0071】
補強要素は、第2のアッパー要素と結合されたとき、好ましくは、第2のアッパー要素を完全には覆わないように適合され得、第2のアッパー要素の周囲領域のみを覆うように適合されてよい。一部の場合には、よって、補強要素は、第2のアッパー要素の縁部から第2のアッパー要素の中心に向かって、15mm以下、一部の場合には10mm以下、一部の場合には5mm以下、延びてよい。他の用途では、例えば、第2のアッパー要素に増大した支持が望まれる場合、補強要素は、第2のアッパー要素の中心に向かって15mm超、例えばさらには20mm超、30mm超等、延びてもよい。
【0072】
補強要素と第2のアッパー要素とを共に結合することにより、第2のアッパー要素に追加的な支持が与えられ得、そのようにして形成されたユニット(特に第2のアッパー要素)は、本明細書で概説されるTPU要素の利点を持ち得る。
【0073】
第1のアッパー要素および/または第2のアッパー要素の少なくとも1つは、実質的に非伸縮性の材料から作られてよい。
【0074】
非伸縮性の材料は、引っ張る力を加えた結果、著しい膨張を受けない材料と理解されてよい。
【0075】
この文脈における著しい膨張の欠如は、静止状態(例えば、引っ張る力が存在しない)における材料の長手方向の広がりよりも大幅に小さい膨張と理解されてよい。一例として、静止時の材料の長さに対する、引っ張る力を加えた結果としてのそれぞれの材料の長さの伸長は、1:100未満、1:1000、1:10000、さらにはそれ以下であってよい。
【0076】
実質的に非伸縮性の材料からなる第1のアッパー要素および/または第2のアッパー要素を設けることにより、少なくとも第1のアッパー要素および/または第2のアッパー要素による靴アッパーの形状の画定が容易にされ得、例えば運動の実施(例えばランニングなど)中に起こり得るような運動衝撃の結果、空間的変形を受けない可能性のある、寸法的に安定した靴アッパーが実現され得る。
【0077】
第1のアッパー要素と第2のアッパー要素とは、少なくとも、それぞれのウィングの組の第1の合流エリアおよび/または第2の合流エリアおよび/または第3の合流エリア内で、縫いにより、および/または溶着により、共に結合されてよい。
【0078】
第1の合流エリアおよび/または第2の合流エリアおよび/または第3の合流エリアが線の形状で設けられる場合、線の形状は、例えば縫いによる、合流エリアの少なくとも1つの形成から生じ得る。そのような場合、線は、基本的に縫い目に関係してよい。追加的にまたは代替的に、第1のアッパー要素と第2のアッパー要素とが、例えば糊付けを用いて共に結合されることも可能であり得る。
【0079】
第1のアッパー要素と第2のアッパー要素とを縫いおよび/または溶着によって共に結合することにより、運動用途の結果、場合によっては強い引張力に耐えることが可能であり得る、2つのアッパー要素間の安定していて弾性のある接続が形成され得る。
【0080】
靴アッパーは、長手方向補強要素をさらに備えてよく、長手方向補強要素は、第1のアッパー要素および/または第2のアッパー要素の右の側方側から、かかとエリアの周りを通り、第1のアッパー要素および/または第2のアッパー要素の左の側方側まで延びて、第1のアッパー要素および/または第2のアッパー要素に締結されてよく、長手方向補強要素は、着用者の足のかかとエリアに支持を与えるように適合されてよい。
【0081】
この文脈における長手方向とは、幅に比べて大幅に長い長手方向の広がりを持つ補強要素を言うものと理解されてよい。一例として、長手方向補強要素は、その幅の少なくとも2倍の長さを持っていてよい。しかし、長さが幅の任意の他の倍数であることも可能であり得る。倍数性は整数値に限定されず、任意の有理数を指してよいことがさらに留意される。
【0082】
長手方向補強要素がかかとエリアの周りを延びることは、靴アッパーのかかとエリアが狭くなることにつながり得る。靴アッパーの幅がより狭くなる結果、着用者の足のかかとは、靴アッパー内でよりぴったりしたフィットを経験し得、これは、利点として、運動パフォーマンスを向上させ得る。
【0083】
長手方向補強要素は、弾性材料から、好ましくはゴムから、作られてよい。
【0084】
一部の場合には、長手方向補強要素は、引っ張る力が補強要素に(その長手軸に沿って)作用した場合に、その長手方向の広がりに沿って延び得るように伸長可能であってよい。
【0085】
長手方向補強要素が弾性材料から作られる場合、長手方向補強要素は、着用者の足のかかとの形状に対してきつく適合し得、よって、ただ一つの靴設計で様々な着用者に汎用的なフィットを提供し得る。したがって、追加的な着用快適性が提供され得る。
【0086】
長手方向補強要素は、糊付けまたは溶着によって靴アッパーに接続されてよい。
【0087】
一部の場合には、長手方向補強要素が糊付けと溶着の両方によって靴アッパーに接続されることも可能であり得る。追加的にまたは代替的に、長手方向補強要素が縫製によって靴アッパーに接続されることも可能であり得る。
【0088】
上述した固定技術を用いて、長手方向補強要素が恒久的に靴アッパーに接続され、運動活動中に起こり得るような応力下でも有益な利点を提供し得ることが容易にされ得る。
【0089】
第1のアッパー要素および/または第2のアッパー要素は、少なくとも部分的にサンドイッチメッシュから作られてよい。
【0090】
好ましくは、サンドイッチメッシュは、増大した強度、呼吸性、柔らかさおよびクッショニング、ならびに望まれるクッション性を可能にするための厚みを提供するように適合され得る。
【0091】
一部の場合には、第1のアッパー要素および/または第2のアッパー要素の一部分のみが、サンドイッチメッシュから作られてよい。代替的に、一部の例示的な事例では、第1のアッパー要素および/または第2のアッパー要素の全体がサンドイッチメッシュから作られることも可能であり得る。
【0092】
サンドイッチメッシュの使用は、それにより、追加的なクッショニングを提供し得、靴アッパーの着用快適性を向上させ得る。さらに、追加的なクッショニングのために、運動者の脚筋肉の疲労が抑えられ得る。サンドイッチメッシュを使用することの別の利点は、ソックライナーのない靴アッパーを提供することも可能にし得る。
【0093】
サンドイッチメッシュは、縫いによって第1のアッパー要素と第2のアッパー要素とを共に結合することから生じる縫い目がサンドイッチメッシュ材料の表面よりも下に位置し得るように、適合されてよい。
【0094】
好ましい実装では、少なくとも第1の合流エリア、および/または第2の合流エリアおよび/または第3の合流エリアが、サンドイッチメッシュ材料から作られてよい。サンドイッチメッシュ材料は、縫いから生じ得る縫い目がサンドイッチメッシュの中に沈み得るように、すなわち、縫い目が一部の実装ではサンドイッチメッシュの表面に位置しないように、製造されてよい。
【0095】
少なくとも第1の合流エリア、および/または第2の合流エリアおよび/または第3の合流エリアをサンドイッチメッシュから作ることにより、着用者の足との縫い目の接触点/エリアが回避され得(縫い目がサンドイッチメッシュの中に存在し得るため)、利点として靴アッパーの着用快適感が向上し得る。さらに、この発想は、ソックライナーを不要にするのにさらに貢献する。
【0096】
靴アッパーは、ストローベル無しであってよい。
【0097】
ストローベルが存在しないことは、例えば組み立てられる必要のある部品がより少ないため、靴アッパーの簡略化された組み立て工程を可能にし得、これは靴アッパーの製造時間をさらに短縮し得る。さらに、靴アッパーの組み立てに必要とされる部品がより少ないため、より軽い靴アッパーが製造可能となり得る。
【0098】
第1のアッパー要素は、スエードから作られた補強要素で追加的に補強されてよい。第1のアッパー要素は、好ましくは、靴アッパーのかかとエリアを形成し得る第1のアッパー要素の部分内で補強され得る。
【0099】
一部の用途では、スエードに加えてまたはその代替として、例えばスムースレザー、フルレザー等の他の皮革要素も補強要素として使用されてよい。
【0100】
好ましくは、スエードは、第1のアッパー要素の一部分のみを覆い得る(例えば、靴アッパーのかかとエリアのみ、および/または靴アッパーのヴァンプ部分のみ)。一部の用途では、スエードは、第1のアッパー要素を完全に覆うよう、第1のアッパー要素と合同になるように製造されてよい。
【0101】
第1のアッパー要素および/または第2のアッパー要素をスエード(および/または任意の他の皮革)で補強することにより、それらの要素に向上した耐裂能力が与えられ得る(特に、運動中に起こり得る強い機械的負荷を経験するエリアで)。さらに、スエードは、靴アッパーに光学的識別を設けるために使用されてもよい(例えば、スエードに例えば靴アッパーの他の表面と比べて増大した粗さの表面を設けることができるため、色および/または表面構造に関して)。加えて、スエード(および/または任意の他の皮革)は、それぞれのエリアに撥水性を与え得る。
【0102】
第1のアッパー要素は、追加的に、第1のアッパー要素の形状で設けられたメッシュ要素で補強されてよい。
【0103】
メッシュ要素は、単独で第1のアッパー要素を補強するために使用されてよく、または皮革要素(例えばスエード)に加えて設けられてもよい。
【0104】
好ましい事例では、メッシュ要素は、第1のアッパー要素と合同であってよい。代替として、メッシュ要素が第1のアッパー要素の一部分だけを覆うことも可能であり得る。
【0105】
メッシュ要素は、単一のメッシュ要素であってよく、または少なくとも2つのメッシュ要素の組み合わせであってもよい。好ましい、非排他的なメッシュ要素は、例えばナイロンメッシュ、エアメッシュ、ライクラメッシュ等であり得る。
【0106】
第1のアッパー要素にメッシュを設けることにより、(メッシュが位置する)それぞれのエリアの呼吸性が増大し得、運動者の脚の発汗傾向が軽減され得る。さらに、第1のアッパー要素を補強するための第1のアッパー要素の使用は、軽量の補強をも可能にし得る。これは、靴アッパーの着用快適性に貢献し得る。
【0107】
本発明の別の態様は、靴に関する。この靴は、本明細書の他個所に記載される靴アッパーを備えてよい。さらに、第2のアッパー要素の底面は、靴の外側靴底として使用されるように適合されてよい。
【0108】
第2のアッパーは、底面(第2のアッパー要素のうち道路と接触し得る側)が靴の外側靴底として使用され得るような粗さを提供するように適合されてよい。底面の粗さは、運動者によって着用された時に、靴の望まれる蹴り出し性(例えばランニング中に)が提供され得るように適合されてよい。そのような場合、追加的な外側靴底は必要とされないことがある。
【0109】
第2のアッパーの底面は、望まれる粗さを提供するように一体に適合されてよく、および/または、第2のアッパー要素に、少なくとも部分的に追加的な層要素が設けられてよく、それが、望まれる粗さが得られるように第2のアッパー要素の底面上で第2のアッパー要素と結合されてよい。
【0110】
そのような靴の組み立ては、組み立てられる必要のある部品がより少ない(例えば外側靴底の扱いが必要とされない)ため、より容易な製造を提供し得、それが製造時間を短縮し得る。両態様とも、減少した製造コストに貢献し得る。靴の組み立てのために使用される部品がより少ないので、高められたリサイクル性が提供され得(互いから分離し、場合によっては異なる処理をする必要のある部品がより少ないため)、靴の総重量が低減され得る。
【0111】
本発明の別の態様は、本発明の他個所に記載される靴アッパーを備えた靴に関する。
【0112】
一部の場合には、靴アッパーは、外側靴底と結合されてよい。そのような場合、好ましくは第2のアッパー要素の底面が、例えば糊付け、縫い、溶着等、またはそれらの組み合わせにより、外側靴底と結合されてよい。
【0113】
本明細書の他個所に記載されるような靴アッパーと組み合わせた外側靴底の使用は、増大したクッション性を提供し得る。したがって、運動者の関節および筋肉が保護され、負傷および/または痛みが防止され得る。さらに、運動者の脚筋肉の疲労も軽減され得る。
【0114】
本発明の別の態様は、靴アッパーを製造するための方法に関する。方法は、第1のアッパー要素および第2のアッパー要素を用意することを含んでよく、第2のアッパー要素は、第2のアッパー要素の側方側および内方側から突出するウィングの少なくとも第1の組を備えてよい。各ウィングは、第1のアッパー要素を第2のアッパー要素に取り付けるように構成された第1の合流エリアを備えてよい。さらに、ウィングの少なくとも第1の組のウィングが、平面状の向きから、第1のアッパー要素に向かって3次元の向きに変形されてよい。さらに、第1のアッパー要素と第2のアッパー要素とが、第1の合流エリア内で、変形されたウィングに沿って共に結合されてよく、それにより、第1のアッパー要素と第2のアッパー要素とが、靴アッパーのボールエリアから靴アッパーのかかとエリアまで上向きに共に結合されてよい。
【0115】
方法の初期状態において、第1のアッパー要素および第2のアッパー要素は、平面状の要素(その厚みを無視したときに主として2次元の広がりを有する)と理解されてよい。第1のアッパー要素を第2のアッパー要素と結合する前に、少なくとも第2のアッパー要素が3次元形状を獲得し得るように、また第1のアッパー要素との第2のアッパー要素の結合を可能にするために、少なくともウィングの第1の組のウィングを上方に(例えば空の方へ)折り畳んでよい。
【0116】
本発明は、以下の実施形態を含む。
[1]靴アッパー(1)であって、
結合されて着用者の足を収納する足受け入れ空洞を形成する第1のアッパー要素(7)および第2のアッパー要素(8)、を備え、
第2のアッパー要素(8)が中敷(S)を形成し、
第2のアッパー要素(8)が、第2のアッパー要素(8)の側方側および内方側から突出するウィングの少なくとも第1の組(13a、13b)を備え、ウィングの第1の組(13a、13b)は、第1のアッパー要素(7)を第2のアッパー要素(8)に取り付けるように構成された第1の合流エリア(9a、9b)を備えている、靴アッパー(1)。
[2]第2のアッパー要素(8)のウィングの第1の組(13a、13b)は、非連結状態において、第2のアッパー要素(8)の長手方向に、第2のアッパー要素(8)上に位置するかかとエリア(4)を越えて延び;連結された状態において、ウィングの第1の組(13a、13b)は、靴アッパー(1)のかかとエリア(4)を形成する、[1]の靴アッパー(1)。
[3]ウィングの第1の組(13a、13b)が、ウィングの第1の組(13a、13b)の外側縁部にあってボールエリア(10)からかかとエリア(4)まで延びる第2の合流エリア(14a、14b)、をさらに備えている、[1]または[2]の靴アッパー(1)。
[4]第2のアッパー要素(8)が、第2のアッパー要素(8)の側方側から突出したウィングの少なくとも第2の組(15a、15b)をさらに備えている、[1]~[3]のいずれかの靴アッパー(1)。
[5]ウィングの第2の組(15a、15b)が、靴アッパーのつま先エリア(3)に位置している、[4]の靴アッパー(1)。
[6]ウィングの第1の組(13a、13b)および/またはウィングの第2の組(15a、15b)が、第2のアッパー要素(8)の中敷(S)と一体形成されている、[1]~[5]のいずれかの靴アッパー(1)。
[7]ウィングの第2の組(15a、15b)が、つま先エリア(3)から横方向にボールエリア(10)まで延びてウィングの第2の組(15a、15b)の外側縁部に位置する第3の合流エリア(18a、18b)、をさらに備えている、[6]の靴アッパー(1)。
[8]第1のアッパー要素(7)と第2のアッパー要素(8)とが、第1の合流エリア(9a、9b)において、および/または第2の合流エリア(14a、14b)において、および/または第3の合流エリア(18a、18b)において、共に結合されている、[1]~[7]のいずれかの靴アッパー(1)。
[9]ウィングの第1の組(13a、13b)および/またはウィングの第2の組(15a、15b)が、中心に置かれた、第2のアッパー要素(8)の長手軸に対して対称に配置されている、[1]~[8]のいずれかの靴アッパー(1)。
[10]ウィングの第1の組(13a、13b)のうち少なくとも1つのウィング、および/または第2の組(15a、15b)のうち少なくとも1つのウィング、および/または第2のアッパー要素(8)、および/またはかかとエリア(4)に、それぞれの第1の合流エリア(9a、9b)および/または第2の合流エリア(14a、14b)および/または第3の合流エリア(18a、18b)を少なくとも選択的に補強するように適合された、少なくとも1つの補強要素(T1、T2、26)が設けられている、[1]~[9]のいずれかの靴アッパー(1)。
[11]少なくとも1つの補強要素(T1、T2、26)が、ウィングの第1の組(13a、13b)、および/またはウィングの第2の組(15a、15b)、および/または第2のアッパー要素(8)、および/または第1の合流エリア(9a、9b)、および/または第2の合流エリア(14a、14b)、および/または第3の合流エリア(18a、18b)、および/またはかかとエリア(4)を補強するように適合されている、[10]の靴アッパー(1)。
[12]少なくとも1つの補強要素(T1、T2、26)が、熱可塑性ポリウレタン(TPU)から作られている、[10]または[11]の靴アッパー(1)。
[13]第1のアッパー要素(7)と第2のアッパー要素(8)とが、少なくとも、それぞれのウィングの組(13a、13b、15a、15b)の第1の合流エリア(9a、9b)および/または第2の合流エリア(14a、14b)および/または第3の合流エリア(18a、18b)内で、縫いにより、および/または溶着により、共に結合されている、[1]~[12]のいずれかの靴アッパー(1)。
[14]第1のアッパー要素(7)および/または第2のアッパー要素(8)の右の側方側から、かかとエリア(4)の周りを通り、第1のアッパー要素(7)および/または第2のアッパー要素(8)の左の側方側まで延びて、第1のアッパー要素(7)および/または第2のアッパー要素(8)に締結された長手方向補強要素(32)、をさらに備え、
長手方向補強要素(32)が、着用者の足のかかとエリア(4)に支持を与えるように適合されている、[1]~[13]のいずれかの靴アッパー(1)。
[15]長手方向補強要素(32)が、糊付けまたは溶着によって靴アッパー(1)に接続されている、[14]の靴アッパー(1)。
[16]第1のアッパー要素(7)および/または第2のアッパー要素(8)が、少なくとも部分的にサンドイッチメッシュから作られている、[1]~[15]のいずれかの靴アッパー(1)。
[17]サンドイッチメッシュは、縫いによって第1のアッパー要素と第2のアッパー要素とを共に結合することから生じる縫い目がサンドイッチメッシュ材料の表面よりも下に位置するように、適合されている、[13]と組み合わせた[16]の靴アッパー(1)。
[18]靴アッパー(1)にストローベルが無い、[1]~[17]のいずれかの靴アッパー(1)。
[19]第1のアッパー要素(7)が、第1のアッパー要素(7)の形状で設けられたメッシュ要素で追加的に補強されている、[1]~[18]のいずれかの靴アッパー(1)。
[20][1]~[19]のいずれかの靴アッパーを備えた靴であって、第2のアッパー要素(8)の底面(2)が、靴の外側靴底として使用されるように適合されている、靴。
[21][1]~[19]のいずれかの靴アッパー(1)を備えた、靴。
[22][1]~[19]の1つの靴アッパーを製造するための方法であって、
第1のアッパー要素(7)および第2のアッパー要素(8)を用意するステップであって、
第2のアッパー要素(8)は、第2のアッパー要素(8)の側方側および内方側から突出するウィングの少なくとも第1の組(13a、13b)を備え、
各ウィング(13a、13b)は、第1のアッパー要素(7)を第2のアッパー要素(8)に取り付けるように構成された第1の合流エリア(9a、9b)を備えるステップと;
ウィングの少なくとも第1の組(13a、13b)のウィング(13a、13b)を、平面状の向きから、第1のアッパー要素に向かって3次元の向きに変形するステップと;
第1のアッパー要素(7)と第2のアッパー要素(8)とを、第1の合流エリア(9a、9b)内で、変形されたウィングに沿って共に結合するステップであって、それにより第1のアッパー要素(7)と第2のアッパー要素(8)とが、靴アッパー(1)のボールエリア(10)から靴アッパー(1)のかかとエリア(4)まで上向きに共に結合される、ステップと、を含む、方法。
【0117】
本発明の態様は、以下で添付図面を参照しながらより詳細に説明される。それらの図面は以下を示している。
【図面の簡単な説明】
【0118】
【
図2A】一実施形態に係る第1のアッパー要素および第2のアッパー要素の図である。
【
図2B】一実施形態に係る第1のアッパー要素および第2のアッパー要素の図である。
【
図3A】一実施形態に係る靴アッパーの例示的組み立て工程の図である。
【
図3B】一実施形態に係る靴アッパーの例示的組み立て工程の図である。
【
図3C】一実施形態に係る靴アッパーの例示的組み立て工程の図である。
【
図3D】一実施形態に係る靴アッパーの例示的組み立て工程の図である。
【
図4A】一実施形態に係る靴アッパーの第1のアッパー要素のための追加的なオプションの構成部品の全体図である。
【
図4B】一実施形態に係る靴アッパーの第1のアッパー要素のための追加的なオプションの構成部品の全体図である。
【
図5A】一実施形態に係る靴アッパーの第2のアッパー要素のための追加的なオプションの構成部品の全体図である。
【
図5B】一実施形態に係る靴アッパーの第2のアッパー要素のための追加的なオプションの構成部品の全体図である。
【
図5C】一実施形態に係る靴アッパーの第2のアッパー要素のための追加的なオプションの構成部品の全体図である。
【
図6A】一実施形態に係る靴アッパーのための追加的なオプションの構成部品の全体図である。
【
図6B】一実施形態に係る靴アッパーのための追加的なオプションの構成部品の全体図である。
【
図7A】一実施形態に係る靴アッパー(および靴)の図である。
【
図7B】一実施形態に係る靴アッパー(および靴)の図である。
【
図7C】一実施形態に係る靴アッパー(および靴)の図である。
【
図7D】一実施形態に係る靴アッパー(および靴)の図である。
【
図7E】一実施形態に係る靴アッパー(および靴)の図である。
【
図7F】一実施形態に係る靴アッパー(および靴)の図である。
【
図8A】かかとブリンカー(blinker)を備えた、一実施形態に係る例示的な靴アッパー組み立て品の図である。
【
図8B】かかとブリンカー(blinker)を備えた、一実施形態に係る例示的な靴アッパー組み立て品の図である。
【
図8C】かかとブリンカー(blinker)を備えた、一実施形態に係る例示的な靴アッパー組み立て品の図である。
【
図8D】かかとブリンカー(blinker)を備えた、一実施形態に係る例示的な靴アッパー組み立て品の図である。
【
図9A】一実施形態に係る例示的な靴アッパーの図である。
【
図9B】一実施形態に係る例示的な靴アッパーの図である。
【
図9C】一実施形態に係る例示的な靴アッパーの図である。
【
図9D】一実施形態に係る例示的な靴アッパーの図である。
【発明を実施するための形態】
【0119】
以下、本発明の実施形態および変形形態が、靴アッパー、特にスポーツシューズ用の靴アッパー、を用いてより詳細に説明される。ただし、本発明はそれに限定されないこと、および実施形態の組み合わせも可能であり得ることが強調される。
【0120】
図1は、本願全体を通じて使用される靴アッパーの様々なエリアの名称の理解を助けるための靴アッパーの概略図を示す。
【0121】
例示的な靴アッパー1は、一部の実施形態では靴アッパー1の(外側)靴底として機能することのできる、底面2を備えている。底面2は、靴の着用者からそれる方の面を言うことがあり、よって、靴の着用者がそれに沿って移動し得る道の方を向くことがある。
【0122】
靴アッパー1は、靴アッパー1が着用されたときに着用者の足のつま先が位置し得るつま先エリア3をさらに備えている。つま先エリア3は、靴アッパーの前側と理解されてもよい。
【0123】
靴アッパー1の各対向側、すなわち靴アッパー1の後ろ側には、かかとエリア4が位置している。かかとエリア4には、靴アッパー1が着用されたときに着用者の足のアキレス腱が収容され得る。
【0124】
つま先エリア3とかかとエリア4とは、横軸Tに対して対向しており、横軸Tは、長手軸Lに対して実質的に垂直であり、横軸T(
図1では見えていない)は、長手軸Lの長手方向の広がりの半分のところに位置する。長手軸Lは、靴アッパー1がそれに沿って延び得る靴アッパー1の長さ方向と関連しているのに対し、横軸は、(製造の不確定性を無視して)長手軸Lに対して横断方向に測定され得る靴アッパー1の幅(例えば、靴アッパー1の遠位表面から靴アッパー1の近位表面までの水平方向の最短距離)を言うものと理解されてよい。
【0125】
靴アッパー1は、靴アッパー1が着用されたときに着用者の足の足首(例えば、くるぶしの骨)が位置し得る領域に位置するクオーター部分5をさらに備えている。クオーター部分5は、靴アッパー1の左の側方側に位置しており、また靴アッパー1の右の側方側に位置している。
【0126】
靴アッパー1は、ヴァンプ部分6をさらに備えており、ヴァンプ部分6は、靴アッパー1が着用されたときに着用者の足の足中央部エリアを収納するために適合されている。ヴァンプ部分6は、靴アッパー1の左の側方側に位置しており、また靴アッパー1の右の側方側に位置している。
【0127】
靴アッパー1は、第1のアッパー要素7および第2のアッパー要素8をさらに備えている。第1のアッパー要素7は、それがヴァンプ部分6を少なくとも部分的に形成するように、かつ靴アッパー1のクオーター部分5を少なくとも部分的に形成するように、適合されてよい。
【0128】
第1のアッパー要素7と第2のアッパー要素8とは、靴アッパー1のボールエリア10から靴アッパー1の上部かかとエリア4まで斜め上方に延びる第1の合流エリア9a内で(および靴アッパー1のそれぞれの対向する側方側に配置された第1の合流エリア9b内で)共に結合されている。
【0129】
第1のアッパー要素7は、靴紐12を受け入れるように適合された(少なくとも1つの)紐穴11を備えてよい。
【0130】
図2Aは、第2のアッパー要素8の例示的実施形態を描写している。第2のアッパー要素8は、上から見たとき、かつ靴アッパー1が組み立てられていない状態で、好ましくは、着用者の足の足底Sの形状で提供される。これに関して、
図2Aは、着用者の左足に着用されるものとしての第2のアッパー要素8を示している。
【0131】
第2のアッパー要素8は、第2のアッパー要素8の側方側および内方側から突出した(例えば2つの)ウィング13aおよび13bの第1の組を備えている。2つのウィング13aおよび13bの第1の組は、靴アッパー1のかかとエリア4から突出している。
【0132】
2つのウィング13aおよび13bの第1の組の各ウィングには、第2のアッパー要素8がそれに沿って第1のアッパー要素7(
図2Aには描写されていない)と結合される、各自の第1の合流エリア9aおよび各自の第1の合流エリア9bが設けられている。一部の実施形態では、第1の合流エリア9aおよび9bは、基本的に、2つのウィング13aおよび13bの第1の組のウィングの縁部(例えば、ウィングの一番外側の場所)に関係してよい。追加的または代替的に、第1の合流エリア9aおよび9bは、2つのウィング13aおよび13bの第1の組の各々の少なくとも一部分を挟んで延びてもよい。
【0133】
2つのウィング13aおよび13bの第1の組の各ウィングには、場合によって、各自の第2の合流エリア14aおよび各自の第2の合流エリア14bが備えられてもよく、これらは、主として、靴アッパーの右側の各自の縁部と、靴アッパーの左側の各自の縁部とに沿って延びる。
【0134】
この例示的実施形態では、ウィング13aおよび13bの第1の組の各ウィングは、熱可塑性ポリウレタン(TPU)要素T1およびT2の形態の補強要素をさらに具備する。TPU要素T1およびT2は、2つのウィング13aおよび13bの第1の組の各自の第1の合流エリア9aおよび9bを補強するように適合されている。追加的または代替的に、TPU要素T1およびT2は、靴アッパーにデザイン要素を設けるために使用されてもよい。光学的識別の効果を強調するために、TPU要素T1および/またはT2には、靴アッパーに色のアクセントが設けられ得るように、第1のアッパー要素および/または第2のアッパー要素の色と異なる色が設けられてよい。
【0135】
第2のアッパー要素8は、2つのウィング15aおよび15bの第2の組を、好ましくは靴アッパーのつま先エリア3に、さらに備えている。2つのウィング15aおよび15bの第2の組は、第2のアッパー要素8の対向する各側方側に配置されている。
【0136】
2つのウィング15aおよび15bの第2の組の2つのウィングの各々は、各自の第3の合流エリア18aおよび各自の第3の合流エリア18bを備えている。第3の合流エリア18aおよび18bは、上記の第1の合流エリア9aおよび9bならびに第2の合流エリア14aおよび14bと同一に実施されてよい。
【0137】
図2Bは、第2のアッパー要素8(底面2)および第1のアッパー要素7の両側図を示す。第2のアッパー要素8は、
図2Aを参照して前に説明された第2のアッパー要素と同一に実施される。
【0138】
第1のアッパー要素7は、この例では、靴アッパー1のヴァンプ部分6およびクオーター部分5を形成するように適合され、よって、靴アッパー1の上部部分も形成するように適合されている。第1のアッパー要素7は、靴アッパー1の対向する各側に位置する第1の合流部分17aおよび17bを備えており、これらは、第2のアッパー要素8の各自の第1の合流エリア9aおよび9bと結合されるように適合されている。より具体的には、合流部分17aは、第2のアッパー要素8の第1の合流エリア9aと結合されるように適合されてよいのに対し、合流部分17bは、第2のアッパー要素8の第1の合流エリア9bと結合されるように適合されてよい。
【0139】
第1のアッパー要素7は、靴アッパー1の対向する各側に第2の合流部分19aおよび19bをさらに備えてよい。第2の合流部分19aおよび19bは、第2のアッパー要素8の第3の合流エリア18aおよび18bと結合されるように適合されてよい。より具体的には、第2の合流部分19aは、第3の合流エリア18aと結合されるように適合され、第2の合流部分19bは、第3の合流エリア18bと結合されるように適合される。
【0140】
第1のアッパー要素7は、1つまたは複数の紐穴11をさらに備え、1つまたは複数の紐穴11は、着用者によって着用されたときに靴アッパー1をさらにきつく締めるために靴紐(
図2Bには描写されていない)を受けるように適合される。紐穴11は、刺繍法、紐穴穿孔、および/またはタングステッチ(tongue stitching)、または当技術分野における他のそのような従来の手段によって形成されてよい。
【0141】
図3A~
図3Dは、本明細書に記載される態様に係る靴アッパー1の例示的な組み立て工程のステップを示す。
【0142】
図3Aは、第2のアッパー要素8の上に置かれた第1のアッパー要素7の重畳の上面図を示し、ここで、第2のアッパー要素8は、
図2Bに描写された第2のアッパー要素8の向きと比べて、その長手軸に沿って180°回転されて(ひっくり返されて)いる。さらに、
図3Aは、直接比較した、第1のアッパー要素7と第2のアッパー要素8の例示的な大きさ比を示すことを意図している。
【0143】
図3Aに示される第1のアッパー要素7および第2のアッパー要素8の配置では、2つのウィング15aおよび15bの第2の組のそれぞれのウィングと第2の合流部分18aおよび18bとを結合するために、2つのウィング15aおよび15bの第2の組が、第1のアッパー要素7の第2の合流部分18aおよび18bのすぐ隣に位置し得ることが見て取れる。
【0144】
さらに、描写された上面図では、2つのウィング13aおよび13bの第1の組のウィングは、かかとエリア4内で第1の合流部分17aおよび17bの隣に位置してよい。
【0145】
図3Bは、靴アッパー1の組み立て工程の例示的な組み立てステップ(上記
図3Aを参照して説明した組み立てステップの後に行われてよい)を示し、ここでは靴アッパー1が3次元状の形状に変形されている。
【0146】
図3Bに描写された組み立て段階では、第2のアッパー要素8の2つのウィング15aおよび15bの第2の組のうち右側ウィング15bが、第1のアッパー要素7のそれぞれの右側合流部分19bと結合される。
【0147】
図解の目的で、2つのウィング15aおよび15bの第2の組のうち(左側の)ウィング15aは、第1のアッパー要素7の各自の合流部分19aと結合されていない。
【0148】
図3Bでは、第2のアッパー要素8の2つのウィング13aおよび13bの第2の組のウィングは、かかとエリア4内で(第1のアッパー要素7の)それぞれの第1の合流部分17aおよび17bと結合されていない。
図3Bにおいて、第2のアッパー要素8は、靴アッパーの組み立てに備えて、
図2Bの図示(右側)と比べてひっくり返されていることが留意される。
【0149】
図3Cは、靴または靴アッパー1の組み立て工程の例示的な(続きの)組み立てステップを示す。特に、
図3Cは、靴アッパー1の底面2の図を示す。
【0150】
描写されている組み立て工程の段階では、第1のアッパー要素7と第2のアッパー要素8とが、少なくともつま先エリア3内で結合される。さらに、
図3Cでは、第1のアッパー要素7は、第1の合流エリア9aおよび9b(
図3Cには図示せず)に沿って、少なくともクオーター部分5内で、第2のアッパー要素8とも結合されている。
図3Cでは、また、第2の合流エリア14aおよび14b(
図3Cには図示せず)が第1のアッパー要素7と結合され、第3の合流エリア18aおよび18b(
図3Cには図示せず)が、第1のアッパー要素7と結合されている。
図3Cでは、第1の合流エリア9a、9b、第2の合流エリア14aおよび14b、ならびに第3の合流エリア18aおよび18bは、縫い目線として実施されている。
【0151】
描写されている組み立て工程の段階では、少なくともTPU要素T1は、(まだ)TPU要素T2と結合されていない。
【0152】
図3Dは、靴アッパー1の組み立て工程の(最終の)例示的ステップを示し、これは、上記で
図3Cを参照して概説された組み立て工程のステップの後に行われてよい。
【0153】
詳しくは、
図3Dは、靴アッパー1のかかとエリア4の図を描写しており、ここでは、第1のTPU要素T1と第2のTPU要素T2とが、第1の合流エリア9a、9b内で結合されており、合流エリアはとりわけ、靴アッパー1のかかとエリア4の底部部分からかかとエリア4の上部部分まで延びていてよい。第1の合流エリア9aと第1の合流エリア9bとは、縫い目線20によって結合されている。
【0154】
図4Aおよび
図4Bは、靴アッパー1の第1のアッパー要素7に設けられてよいオプションの構成部品の例示的実施形態を示す。前記構成部品は、下記でさらに説明されるように、靴アッパー1に追加的な望まれる機能性を与えるために使用されてよい。以下で
図4Aおよび
図4Bを参照して説明される構成部品は、非縫製構成(縫い/縫製が必要とされず、それぞれの構成部品は、例えば熱プレスによって共に結合される)および/または縫製/縫いによって、靴アッパー1に実施されてよいことが留意される。下記で説明されるオプションの構成部品は、それだけで靴アッパー1に含まれても、または互いと組み合わされてもよいことがさらに留意される。下記で説明される構成部品の各々は、第1のアッパー要素7と合同であってよく、または第1のアッパー要素7の特定の部分を覆うだけであってもよい。
【0155】
特に、
図4Aは、第1のアッパー要素7のためのオプションの構成部品を示し、これらは、第1のアッパー要素7に、追加的な剛性、強度耐性、呼吸性、または光学的識別(例えば、それぞれの構成部品の異なる色および/またはそれぞれの構成部品の異なる材料(組成)から生じる)を与えてよい。
【0156】
より具体的には、第1のアッパー要素7に、第1のアッパー要素7の骨格の形状であってよいTPU要素21が設けられてよい。
【0157】
追加的にまたは代替的に、第1のアッパー要素7にメッシュ要素22が設けられることも可能であり得る。メッシュ要素22は、利点として、第1のアッパー要素7に向上した呼吸性および着用快適性を与え得る(これは、メッシュ要素22が、例えば紐穴11(
図4Aには図示せず)および/または靴紐に当たるクッショニング要素として働き得、それらが靴アッパー1の着用者の足と直接接触するのを防止され得るためである)。
【0158】
追加的にまたは代替的に、第1のアッパー要素7に、合成スエードおよび/または(接着を助けるための)ホットメルト、例えばクーパーIIフレックス層23が設けられることも可能であり得る。詳しくは、合成スエードの使用は、第1のアッパー要素7のそれぞれの部分(スエードが位置する)に、例えば引き裂き強さ、摩耗耐性等に関して、追加的な安定性を与え得る。一部の場合には、合成スエードは、着用者の足の低温状態が回避され得るように、増大した断熱のために使用されてもよい。一部の場合には、合成スエードは、例えばその色および/または材料外観のために、第1のアッパー要素7の光学的識別要素として使用されてもよい。
【0159】
図4Bは、第1のアッパー要素7に実施されるさらなるオプションの構成部品を示し、これは好ましくは、第1のアッパー要素7に、増大した安定性および/または光学的識別を与え得る。
図4Bに示される構成部品のいずれかが、それだけで第1のアッパー要素7に実施されてよく、または上記で
図4Aを参照して説明されたオプションの構成部品の1つまたは複数と組み合わされてもよい。
【0160】
一部の場合には、第1のアッパー要素7に輪郭要素24が設けられてよく、輪郭要素24は好ましくは、第1のアッパー要素7の輪郭の形状(外側周囲形状)で提供され得る。輪郭要素24は、一体形成された部片であっても、または1つもしくは複数の別個の部分からなってもよい。輪郭要素24は、単色で提供されてよい。
【0161】
一部の場合には、第1のアッパー要素7に、代替的または追加的に輪郭要素25が設けられてよく、輪郭要素25は、輪郭要素25が第1のアッパー要素7と結合され得る領域内の第1のアッパー要素7の各色と一致してよい2つ以上の色で設けられる。
【0162】
輪郭要素24および25は、TPU、プラスチック材料、および/または任意の他の好適な材料から作られてよい。
【0163】
図5A~
図5Cは、第2のアッパー要素8の例示的実施形態を示し、ここでは、第2のアッパー要素8に、安定性を増すための、および/または第2のアッパー要素8に光学的識別を与えるための手段が設けられている。ここで概説される実施形態は、靴アッパー1の組み立てのためにそれだけで使用されてよく、または本明細書の他個所で説明される実施形態の1つもしくは複数と組み合わされてもよいことが強調される。
【0164】
図5Aは、本明細書に記載されるように実施された、メッシュ材料から作られ得る第2のアッパー要素8を示す。第2のアッパー要素8に、任意で、TPU要素T1およびT2が設けられてよい。
【0165】
第2のアッパー要素8に、追加的にTPU要素26が設けられてよい(
図5Aの右側)。TPU要素26は好ましくは、第2のアッパー要素8の底面2(
図5Aには図示せず)で第2のアッパー要素8と結合され得る。一部のシナリオでは、TPU要素26は、第2のアッパー要素8のそれぞれの上面(例えば、第2のアッパー要素8が靴アッパー1として着用されたときに着用者の足の方を向く)で、第2のアッパー要素8とも結合されてよい。
【0166】
TPU要素26は、第2のアッパー要素8の輪郭と一致する形状で設けられる。TPU要素26は好ましくは、第2のアッパー要素8の縁部27から第2のアッパー要素8の中心28に向かって、好ましくは15mm以下、延びる。
【0167】
図5Bは、本明細書に記載される一実施形態に係る靴アッパー1の底側を示し、ここでは、第2のアッパー要素8に、底面2上のTPU要素26が設けられている。TPU要素26は、下塗剤および/または糊によって第2のアッパー要素8と結合されてよい。TPU要素は、接着剤が靴アッパー1の内側底部に入るのを防止し、靴アッパー1の結合強度および/または安定性を向上させ得る。
【0168】
図5Cは、TPU要素1およびT2が第2のアッパー要素8に取り付けられた、第2のアッパー要素8の例示的実施形態を示す。
【0169】
第1のアッパー要素7と同様、第2のアッパー要素8にも、それぞれの輪郭要素29が設けられてよく、輪郭要素29は、第2のアッパー要素8の外側輪郭の形状で設けられてよい。輪郭要素29の形状を除いて、輪郭要素29は、上記で
図4Bを参照して説明された輪郭要素24または25と同一に実施されてよい。
【0170】
図6Aおよび
図6Bは、第1のアッパー要素7と第2のアッパー要素8とがどのようにして結合され得るかの例示的実施形態を示し、熱プレス/ゴム成型のステップを含んでいる。
【0171】
図6Aは、3つのゴム要素30a~30cを示し、これらは、靴アッパーの着用者のつま先が好ましくは、それぞれの第3の合流エリア18aおよび18bと接触しないよう、第1のアッパー要素7と第2のアッパー要素8が、靴アッパー1の上側でおよびつま先エリア3内で結合され得るように、少なくとも第1の合流エリア13aおよび13bならびに/または第3の合流エリア18aおよび18bの各自の場所に配置されるように適合されており、これは、本発明の靴アッパー1がストローベル構成を必要としないという本発明の態様を裏付ける。
【0172】
第1のアッパー要素7と第2のアッパー要素8とを結合するためにゴム要素30aがそれだけで使用されること、または、例えば、縫いを強化するため、靴アッパー1に光学的識別を与えるため、および/または起こり得る摩耗から縫い目を保護するなどのために、第1のアッパー要素7と第2のアッパー要素8とを結合するために縫製/縫い手順に加えてゴム要素30aが使用されることが可能であり得る。
【0173】
図6Bは、ゴム要素30a~30cがどのように靴アッパー1に取り付けられ得るかの例示的製造ステップを示す。
【0174】
この例示的な事例では、靴アッパー1が熱プレス機31に入れられる。少なくともゴム要素30a(
図6Bで靴アッパー1の隣に示されている)が、続くステップで、それが靴アッパー1に取り付けられることになっている靴アッパー1の望ましい箇所に置かれる(特に、ゴム要素30aは第3の合流エリア18aおよび18bに置かれてよい)。熱プレス機31を閉じ、少なくとも上部の熱加熱要素を加熱することにより、ゴム要素30a(一例として)が加熱され、少なくとも部分的に溶融する(それにより、ゴム要素30aが変形可能となり得、靴アッパー1上の所望の場所に付着し得る)。
【0175】
図7A~
図7Fは、上述のゴム要素30a~30cが設けられた靴アッパー1の例示的実施形態を様々な視点で示す。
【0176】
図7Aは、上方側方視から見た靴アッパー1のつま先エリア3およびヴァンプ部分6を示す。
図7Aは、第3の合流エリア18aおよび18bが位置するつま先エリア3の最もつま先寄りの部分を中心に巻かれた、好ましくは熱プレスされた、ゴム要素30aを示す。
【0177】
【0178】
図7Cは、
図7Aおよび
図7Bに描写された靴アッパー1を示し、つま先エリア3および(部分的に)ヴァンプ部分6を側方視で示している。
【0179】
詳しくは、
図7Cは、ゴム要素30aとゴム要素30bとの一部を示している。ゴム要素30bは、第1の合流エリア9aの隣に配置され、第1の合流エリア9aは、
図7Cでは、線、好ましくは縫い目線、として例示的に描写されている。第1の合流エリア9aは、靴アッパー1のボールエリア10から靴アッパー1の上部かかとエリア(
図7Cには図示せず)まで斜め上方に延びることが強調される。好ましい実施形態では、少なくとも第1の合流エリア9aが、靴アッパー1の左側/内方側のそれぞれの縁部(第2の合流エリア14b内)に沿って、靴アッパー1のつま先エリア3に向かってさらに延びる。
【0180】
図7Dは、
図7A~
図7Cに描写された靴アッパー1を示し、内方側視から見たつま先エリア3および(部分的に)ヴァンプ部分6を示している。
【0181】
図7Dはさらに、靴アッパー1の長手方向線に対して靴アッパー1の第1の合流エリア9aの対向側に位置する、第1の合流エリア9bを示している。第1の合流エリア9bは、第1の合流エリア9aと同一に実施されてよい。ゴム要素30cは、第1の合流エリア9bの隣に位置してよく、ゴム要素30bと同一に実施されてよい。
【0182】
図7E(
図7Eの右下側)は、側方側から見た靴アッパー1を上方斜め視で示す。一部の場合には、靴アッパー1に、上記で説明された態様に対して追加的または代替的に、長手方向補強要素32が設けられてよく、これはかかとエリア4の周りに巻き付けられ、靴アッパー1の2つの対向する側部に取り付けられてよい。補強要素32は、登山靴から知られているゴム様の要素と同様に適合されてよい(それぞれのかかとエリア4内に)。長手方向補強要素32は、糊付け、熱プレス、縫製等の少なくとも1つにより、靴アッパー1に取り付けられてよい。
【0183】
図7Eの右側に描写された靴アッパー1には、かかとブリンカー33がさらに設けられてよく、ここで、靴アッパー1のスロート開口34から突出しているかかとブリンカー33の最上部は、靴アッパー1の外側表面上に折り畳まれる。
【0184】
図7Eの左上側に示される靴アッパー1は、さらに靴アッパー1の底面2を斜め上方視で描写しており、これも、靴アッパー1の底面2の一部分まで、最大で靴アッパー1のボールエリア10まで、延びてよい長手方向補強要素32を示している。
【0185】
図7Fは、靴アッパー1のかかとエリア4の上方斜視視点から見た靴アッパー1を示す。この図では、かかとブリンカー33が少なくとも部分的に長手方向補強要素32の上に巻き付けられていることが見て取れる。この図では、TPU要素T2も見えている。
【0186】
図8A~
図8Dは、靴アッパー1に任意で設けられてよい、かかとブリンカー33の実装を示す。靴アッパー1にかかとブリンカー33を設けることは、本明細書に記載されるように、靴アッパー1に設けられ得る他の構成部品と組み合わされてよい。かかとブリンカー33は、靴アッパー1に靴アッパー1のかかとエリア4における追加的な安定性を与えるために、および/または光学的識別のために、使用されることがある。
【0187】
図8Aは、好ましい実施形態では合成スエード要素33aから作られてよい、かかとブリンカー33の例示的実施形態を示す。好ましい実施形態では、
図9Aに描写されるように、かかとブリンカー33にクーパーIIフレックス要素33bが追加的に設けられてよい。
【0188】
図8Bは、かかとブリンカー33がどのように靴アッパー1に挿入され得るかの例示的な組み立てステップを示す。
図8Bでは、かかとブリンカー33は、湾曲した形状に形成されてから、靴アッパー1に(スロート開口34を通じて)挿入される。かかとブリンカー33は好ましくは、合成スエード要素32aの少なくとも一部分がかかとエリア4で靴アッパー1のスロート開口34から突出するように、靴アッパー1に挿入され得る。
【0189】
図8Cは、かかとブリンカー33が靴アッパー1に挿入された後の、靴アッパー1の中の、靴アッパー1の長手軸に沿ったかかとブリンカー33の図を示す。
【0190】
図8Cは、靴アッパー1の内側表面35をさらに示しており、これは
図8Cでは、メッシュ材料から作られており、第2のアッパー要素8の上面に対応している。
【0191】
図8Dは、かかとブリンカー33が、好ましくは熱プレスにより、どのように靴アッパー1と結合され得るかの例示的な組み立てステップを示す。
図8D(左側)は、靴アッパー保持構造35を用いて靴アッパー1のかかとエリア4を受け入れるように適合され得る、例示的な熱プレス機31を示す。
【0192】
かかとブリンカー33は、次いで、熱プレス機31を下方に動かして靴アッパー1のかかとエリア4に載せ、かかとエリア4内のそれぞれの部分を熱プレスすることにより、靴アッパー1と結合されてよい。
【0193】
続くステップ(
図8D、右側)で、力印加要素36が、靴アッパー1のかかとエリア4と係合してよい。
【0194】
この工程は、湾曲したかかとエリア4を確実にするためにさらに使用されてよい。かかとエリア4を湾曲させる工程は、2ステップ工程と理解してよく、すなわち、第1のステップである加熱工程で、かかとエリア4を形成するために使用される材料が、加えられた熱によって、柔らかく、伸展可能にされ得る。次いで、続く第2のステップの冷温ステップが適用されて、かかとエリア4の最終的な湾曲形状を固定してよい。
【0195】
【0196】
図9Aは、内方側の視点から見たとき(左側)、および上から見たとき(右側)の、この実施形態に係る例示的な靴(第1のアッパー要素38および第2のアッパー要素37によって形成された靴アッパー1を備える)の図示を示す。
【0197】
一部の場合には、この実施形態に係る靴アッパー1は、靴アッパー1の着用中にアスファルトと接触し得る第2のアッパー要素37の底面が追加的な(外側)靴底を必要とせずに提供され得るように、提供されてよい(
図9Aの左側)。代替的に、靴は、靴アッパー1およびそれに取り付けられた底面2を備えてもよい(
図9Aの右側)。前者の実装は、さらなる重量低減を助けることができ、よって軽量の靴を容易にし得るのに対し、後者は、追加的なクッショニング、よって運動者の関節の負傷に対する向上した予防を与えることができる。
【0198】
靴アッパー1のかかとエリア4には、描写された例示的実施形態では、かかと要素39がさらに設けられ、かかと要素39は、靴アッパー1の側方側から靴アッパー1の内方側までかかとエリア4の周りに巻き付けられる。かかとエリア4は、靴アッパー1に追加的な寸法的安定性を与えるために使用されてよい。より具体的には、かかと要素39は、従来使用されているかかとカウンターの役割を少なくとも部分的に果たし、少なくとも、かかとエリア4を固くすることに貢献し得る。これは、走行中に(特に、着地および蹴り出しの段階中に)かかとの移動を最小にし得、よって、利点として、靴(アッパー)を着用した時に着用者の足の安定性に貢献し得る。かかと要素39のさらなる副次効果は、靴アッパーのさらなる重量低減に見ることができる(例えば、従来のかかとカウンターのあり得る使用と比較して)。
【0199】
【0200】
図9Dは、靴アッパー1のかかとエリア4からの斜め上方視で見た、靴アッパー1のさらなる図示を示す。この図示は、靴アッパー1のつま先エリア3に向かう、靴アッパー1のスロート34内の見た目を描写している。
【符号の説明】
【0201】
1 靴アッパー
2 底面
3 つま先エリア
4 かかとエリア
T 横軸
L 長手軸
5 クオーター部分
6 ヴァンプ部分
7、38 第1のアッパー要素
8、37 第2のアッパー要素
10 ボールエリア
9a、9b 第1の合流エリア
12 靴紐
11 紐穴
13a、13b、15a、15b ウィング
14a、14b 第2の合流エリア
T1、T2、21、26 TPU要素
18a、18b 第3の合流エリア
17a、17b 第1の合流部分
19a、19b 第2の合流部分
22 メッシュ要素
23 クーパーIIフレックス層
24、25、29 輪郭要素
27 縁部
28 中心
30a~30c ゴム要素
31 熱プレス機
32 補強要素
33 かかとブリンカー
34 スロート開口
33a 合成スエード要素
33b クーパーIIフレックス要素
35 靴アッパー保持構造
36 力印加要素
39 かかと要素
【外国語明細書】