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特開2023-165411アブレーション間の時間を短縮するための不可逆電気穿孔(IRE)ワークフロー
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  • 特開-アブレーション間の時間を短縮するための不可逆電気穿孔(IRE)ワークフロー 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023165411
(43)【公開日】2023-11-15
(54)【発明の名称】アブレーション間の時間を短縮するための不可逆電気穿孔(IRE)ワークフロー
(51)【国際特許分類】
   A61B 18/00 20060101AFI20231108BHJP
【FI】
A61B18/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023075492
(22)【出願日】2023-05-01
(31)【優先権主張番号】63/337,209
(32)【優先日】2022-05-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】18/123,424
(32)【優先日】2023-03-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】511099630
【氏名又は名称】バイオセンス・ウエブスター・(イスラエル)・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】Biosense Webster (Israel), Ltd.
(74)【代理人】
【識別番号】100088605
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 公延
(74)【代理人】
【識別番号】100130384
【弁理士】
【氏名又は名称】大島 孝文
(72)【発明者】
【氏名】アサフ・ゴバリ
(72)【発明者】
【氏名】アンドレス・クラウディオ・アルトマン
(72)【発明者】
【氏名】ライラ・マージアーノ
【テーマコード(参考)】
4C160
【Fターム(参考)】
4C160KK03
4C160KK04
4C160KK12
4C160KK22
4C160KK35
4C160MM38
4C160NN01
(57)【要約】
【課題】心臓組織の不可逆電気穿孔(IRE)を行うこと。
【解決手段】不可逆電気穿孔(IRE)方法は、臓器内の組織に近接して配置されたカテーテルの1つ以上の電極によって印加されるIREパルスの総数を受信することを含む。IREプロトコルは、休止によって分離された複数のパルス列へのIREパルスの総数の区分を定義することによって定義され、区分は、安全基準を満たしながらIREプロトコルの総持続時間を短縮するように定義される。IREプロトコルは、電極を使用して組織に適用される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
不可逆電気穿孔(IRE)システムであって、
臓器内の組織に近接して配置されたカテーテルの1つ以上の電極によって印加されるIREパルスの総数を受信するように構成されたユーザインターフェースと、
プロセッサであって、
休止によって分離された複数のパルス列への前記IREパルスの総数の区分を定義することによってIREプロトコルを定義することであって、前記区分が、安全基準を満たしながら前記IREプロトコルの総持続時間を短縮するように定義される、定義することと、
前記電極を使用して前記組織に前記IREプロトコルを適用することと、を行うように構成されたプロセッサと、を備える、システム。
【請求項2】
前記プロセッサが、前記安全基準を満たしながら前記総持続時間を短縮する、前記休止の数及び前記休止のそれぞれの持続時間を選択することによって前記区分を定義するように構成されている、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記プロセッサが、ルックアップテーブルを使用することによって、前記休止の数及び前記休止のそれぞれの持続時間を選択するように構成されている、請求項2に記載のシステム。
【請求項4】
前記ルックアップテーブルが、前記IREパルスの総数、パルス電圧、及びパルス繰り返し率に基づいて前記休止の数を決定する、請求項3に記載のシステム。
【請求項5】
前記プロセッサが、式のセットを使用することによって、前記休止の数及び前記休止のそれぞれの持続時間を選択するように構成されている、請求項2に記載のシステム。
【請求項6】
臓器内の組織に近接して配置されたカテーテルの1つ以上の電極によって印加されるIREパルスの総数を含むIREプロトコルを記憶するように構成されたメモリを備え、
前記プロセッサが、
前記メモリから前記IREプロトコルをアップロードすることと、
休止によって分離された複数のパルス列への前記IREパルスの総数の区分を定義することによって前記IREプロトコルを修正することであって、前記区分が、安全基準を満たしながら前記IREプロトコルの総持続時間を短縮するように定義される、修正することと、を行うように構成されている、請求項1に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、参照により本明細書に組み込まれる、2022年5月2日出願の米国特許仮出願第63/337,209号の利益を主張する。
【0002】
(発明の分野)
本発明は、概して、侵襲的アブレーションに関し、特に心臓組織の不可逆電気穿孔(IRE)に関する。
【背景技術】
【0003】
侵襲的アブレーションパラメータの推定及び推定に従ってアブレーションを制御することは、特許文献において以前に提案されている。
【0004】
パルスフィールドアブレーション(Pulsed Field Ablation:PFA)とも呼ばれる不可逆電気穿孔(Irreversible electroporation:IRE)は、高電圧パルスにさらすことによって組織細胞を死滅させるための侵襲性治療様式として使用され得る。マイクロ秒の持続時間の高電圧電気パルスの列(又は2つ以上の列)を使用することが知られている。典型的には、2つ以上のパルス列が、パルス間に規定された休止を伴って印加される。
【0005】
IREは加熱に基づくものではないが、アブレーションプロセス中に依然として、周囲の血液に気泡形成をもたらす場合があるいくらかの局所加熱がある。気泡形成は、潜在的に塞栓リスクにつながる場合がある。
【0006】
国際公開第2021/207385号は、各々が1つ以上の電極を有する1つ以上のエネルギー送達体を通してパルス電場(PEF)エネルギーを組織に送達するためのデバイス、システム、及び方法を記載している。PEFエネルギーは、様々な特徴を有する波形から生成される。所望の結果を得るために、パルス間遅延、サイクル間遅延、位相間遅延、パケット間遅延、バンドル間遅延などの波形遅延が治療内で利用されることができる。特に、これらの遅延は、特定の所望の結果を得るために具体的に操作されることができる。例えば、これらの遅延のうちの1つ、いくつか、又は全ては、いくつか例を挙げると、ガス形成、放電、空洞形成、筋収縮、及び温度上昇などの任意の関連付けられたリスクを緩和するように、PEF療法の様々な態様を制御するように操作されることができる。いくつかの例では、遅延は、PEFエネルギーが送達される期間を分配し、治療送達結果に対する顕著な変化及び最適化をもたらす。
【0007】
以下の本開示の実施例の詳細な説明を図面と一緒に読むことで、本開示のより完全な理解が得られるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】は、本開示の例に係る、カテーテルベースの不可逆電気穿孔(IRE)システムの概略描画図である。
図2】は、パルス列間にそれぞれの数の休止を有するパルス列に2つの異なる方法で区分されるIREパルスのシーケンスの概略描画図である。
図3】は、本開示の例に係る、総アブレーション時間を短縮しながら気泡を回避するように区分されたIREパルスのシーケンスを印加する方法を概略的に示すフローチャートである。
図4】は、本開示の別の例に係る、総アブレーション時間を短縮しながら気泡を回避するように区分されたIREパルスのシーケンスを印加する方法を概略的に示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
概説
体腔の血液中の気泡を回避するために、IREワークフロープロトコルは、腔壁組織の繰り返しアブレーションの間に休止を必要とする場合がある。上述したように、典型的な休止は約10秒続く場合がある。繰り返しアブレーション間の休止は、アブレーション処置の持続時間を大幅に増加させる。本発明者らは、驚くべきことに、気泡形成を回避するために必要な休止の持続時間が、パルス列の長さ及び/又はパルス列に含まれるパルスの数に非常に敏感であることを見出した。パルス列の長さを少し短くすると、気泡形成を回避するのに必要な休止を大幅に短縮することができる。本発明者らは、更に驚くべきことに、送達されるパルスの数をより多くのパルス列に分割し、パルス列間の休止持続時間を短縮することに基づいて、同じ数のパルスが、より短い持続時間にわたって、著しい気泡形成なしに患者に送達されることができることを見出した。いくつかの例示的な実施形態によれば、IREに関連する気泡形成を回避しながらIRE処置の持続時間を短縮するための方法が提供される。IREの繰り返しエポックの各々の持続時間が短縮されることができる場合、気泡のリスクが低減される。同時に、アブレーションのエポック間のより短い持続時間の休止を使用することが可能になり、その結果は、患者の利益のために、全体的により高速でより一貫したIRE処置である。
【0010】
以下に説明される本開示の例は、気泡形成を回避するために必要とされる休止の持続時間が、各IREエポックにおけるパルスの列の長さを減少させることによって、例えば、列ごとにより少ないパルスを使用することによって、著しく低減されることができるという、開示された技術の開発者による観察を利用する。経験的観察に基づいて、開発者は、アブレーションのために組織に印加される全体的エネルギーを低減することなく、アブレーション処置中の気泡形成を回避するために必要とされる休止の全体的持続時間を短縮するための方法を考案した。休止の全持続時間を短縮することによって、アブレーション処置の持続時間が大幅に短縮されることができる。
【0011】
組織に印加されるパルスの総数を維持するために、繰り返しの数は、全体として、同じ数のパルスが送達されるように増加される。驚くべきことに、パルスの各列の持続時間を減少させながら繰り返しの数を増加させることは、気泡形成を回避するために必要とされる休止長さを有意に減少させ、それは、必要とされる全体的アブレーション時間を有意に減少させる。例えば、開発者によって経験的に、それらの間に10秒の休止を伴う3回の繰り返し(約20秒の全休止をもたらす)が、それらの間に3秒の休止を伴う4回の繰り返し(約9秒の全休止をもたらす)のシーケンスによって置き換えられることができることが見出された。休止が総アブレーション時間のかなりの部分を占めることを考慮すると、アブレーションの持続時間の短縮は著しい。
【0012】
いくつかの例では、開示される技術は、IREシステムのメモリに記憶されるルックアップテーブルを提供する。ルックアップテーブルは、印加されるパルスの総数と、パルス電圧と、パルス繰り返し率との間の経験的に導出された関係を与え、最適数に到達し、選択される場合、アブレーションの総持続時間を短縮し、他方で、安全基準も満たす(例えば、気泡を引き起こさない)休止の持続時間に到達する。
【0013】
別の例では、プロセッサは、電極熱発生率及び血液熱除去率式のセットを使用して、パルス列(例えば、アブレーションの繰り返しエポック)の最適数及び持続時間、並びにそれぞれの休止の持続時間を計算する。これらの式は、その一部が放散されるパルスの各エポックにおいて印加される総電力と、血液中の熱除去率とを考慮に入れる。式を解くことは、許容される最大エポック持続時間を見出すために、各IREエポックごとに許容される熱発生の最大量に対する制約を受けることができ、発生される熱の最大量を使用して、後続の休止の短縮された持続時間を計算することもできる。
【0014】
パルス列持続時間の更なる短縮及び血液冷却のための持続時間(例えば、休止の持続時間)の対応する短縮は、より多くの繰り返しを必要とするであろう。最適化の可能な目標は、繰り返し回数にわたる持続時間の加重和(熱発生率及び熱放散率によって加重される)であるIREセッションの総時間の短縮を達成することとすることができる。
【0015】
一例では、ユーザは、臓器内の組織と接触して配置されたカテーテルの1つ以上の電極によって印加されるIREパルスの総数を選択する。ユーザは、休止によって分離された複数のパルス列へのIREパルスの総数の区分を定義することによってIREプロトコルを定義し、区分は、安全基準(例えば、気泡が形成されないこと、又は測定された温度が所与の値を超えないこと)を満たしながらIRE処置の総持続時間を短縮するように定義される。ユーザは、電極を使用して組織にIREプロトコルを適用する。区分を定義することは、安全基準を満たしながら総持続時間を短縮する休止の数及び休止のそれぞれの持続時間を選択することを含む。
【0016】
更に別の例では、プロセッサは、パルス列内の個々のパルス間の休止、並びにパルス列間の休止を最適化し、双方とも、気泡形成を回避しながら全てのアブレーションを完了するのに必要な全体の時間を短縮する目的である。プロセッサが全体の持続時間を短縮するために選択することができるパラメータは、列間の休止、パルス間の休止、及び列当たりのパルス数である。
【0017】
システムの説明
図1は、本発明の一実施形態に係る、カテーテルベースの不可逆電気穿孔(IRE)システム20の概略描画図である。システム20は、カテーテル21を含み、カテーテルのシャフト22は、医師30によって、シース23を介して患者28の血管系を通って挿入される。次いで、医師は、シャフト22の遠位端40をナビゲートして、患者の心臓26内の標的組織位置(例えば、左心房45の壁組織)に接触させる。
【0018】
挿入図25に見られるように、例示されたカテーテル21は、リング電極50及び先端電極51を備える遠位端40を有する。電極は、双極及び/又は単極IREに使用されることができる。カテーテル21の近位端は、双極IREモードにおいて電極50及び51のうちの隣接する対の電極間に、又は単極IREモードにおいて電極51と体表面電極49との間にIREパルスを印加するように構成されたIREパルス発生器38を備えるコンソール24に接続される。電極は、カテーテル21のシャフト22内で走る電気配線によってIREパルス発生器38に接続される。
【0019】
図示の例では、遠位端50をIRE組織部位に位置決めし、先端が組織と接触していることを確実にした後、医師30は、制御コンソール24内のIREパルス発生器38を作動させて、ケーブル38を介して電極50及び/又は51にIREパルスを供給する。任意に、IREアブレーションを作動させるために接触は必要とされない。
【0020】
コンソール24のメモリ48は、以下の表Iに示すようなIREパラメータを含む所定のIREプロトコルを記憶する。
【0021】
コンソール24は、典型的には患者26の胸の周りに配置されるカテーテル21及び外部電極49から信号を任意に受信するための適切なフロントエンド及びインターフェース回路37を備えたプロセッサ41、典型的には汎用コンピュータを備える。この目的で、プロセッサ41は、ケーブル39を通るワイヤによって外部電極49に接続されている。
【0022】
処置中、任意に、システム20は、その開示が参照により本明細書に組み込まれる米国特許第8,456,182号に記載されているアクティブ電流位置(ACL)法を使用して、心臓26内の電極50のそれぞれの位置を追跡することができる。
【0023】
いくつかの例では、医師は、アブレーションしたい場所に関する入力を提供する。その場所のパラメータ(壁厚及び組織タイプなど)に応じて、プロトコルは、プロセッサ41によって判定されてもよく、プロセッサは、選択されたプロトコルのIREパルス送達55を、パルス列間に休止59を伴う複数のパルス列57に分割(区分)する。休止は、気泡形成を防止するのに十分に放散するために、任意のパルスからのジュール加熱を可能にする。
【0024】
医師30が、最初に定義された(例えば、事前設定された)IREプロトコルを使用して気泡のリスクを心配する場合、医師30は、プロセッサ41に、より慎重なプロトコルを使用するように命令することができる。第1の例として、医師は、ユーザインターフェース47を介して、各列の長さ及び繰り返しの数を修正することができる。選択に基づいて、プログラムは、必要とされる休止の長さを定義する。第2の選択肢として、ユーザは、3つのパラメータ(列長、繰り返し、及び休止長)のうちの2つを定義することができ、第3のパラメータが計算される。第3の選択肢として、ユーザは、3つのパラメータのいずれか又は全てを定義することができ、アルゴリズムは、プロトコルが気泡をもたらす可能性があるときに警告を提供する。
【0025】
ユーザインターフェース47は、任意の適切なタイプの入力装置、例えば、キーボード、マウス、トラックボール、及び他の同様の装置を備えることができる。
【0026】
プロセッサ41は、典型的には、本明細書に記載の機能を実施するようにソフトウェアでプログラムされる。このソフトウェアは、例えばネットワーク上で、コンピュータに電子形態でダウンロードしてもよく、その代わりに又は更に、磁気メモリ、光メモリ若しくは電子メモリなどの非一時的有形媒体に提供し且つ/又は格納してもよい。
【0027】
具体的には、プロセッサ41は、本明細書に開示されて図3に示されるような専用のアルゴリズムを実行し、このアルゴリズムは、以下に更に説明されるように、開示されるステップをプロセッサ41が実行することを可能にする。特に、プロセッサ41は、プロセッサ41がメモリ48からアップロードする処理プロトコルに従ってIREパルスを出力するようにIREパルス発生器38に命令するように構成されている。
【0028】
気泡発生を回避しながらアブレーション時間を短縮するためのIREワークフロー
図2は、2つの異なる方法A及びBで、パルス列間にそれぞれの数の休止を有するパルス列に区分されたIREパルスのシーケンス202の概略図である。区分Aに見られるように、シーケンス202は、間に2つの休止210を有する3つのパルス列208に分割され、それらは合計してアブレーションの総持続時間204になる。区分Bにおいて、シーケンス202は、それらの間に3つのかなり短い休止216を有する4つのより短いパルス列212に分割され、それらは合計してアブレーションのより短い総持続時間206になる。
【0029】
例として、4Hzの繰り返し率を有する24個のバイポーラパルスを含むシーケンス202などのシーケンスが考慮され、このシーケンスは6秒間続く。区分Aは、シーケンスを8個のパルスからなる3つのパルス列に分割し(したがって、各列は2秒間続く)、それらの間に2つの3秒間の休止を伴う。したがって、区分Aにおける総アブレーション時間は12秒である。
【0030】
区分Bは、シーケンスを6つのパルスの4つのパルス列に分割し、各列は1.5秒続き、セット間に3つの1秒の休止を有する。したがって、区分Bにおける総アブレーション時間は7.5秒に短縮され、アブレーションの持続時間が45%短縮される。
【0031】
一例では、開示される技術は、IREシステムのメモリに記憶されるルックアップテーブルを提供する。ルックアップテーブルは、印加されるパルスの総数と、パルス電圧と、パルス繰り返し率との間の経験的に導出された関係を採用し、一方では、アブレーションの総持続時間を短縮し、他方では、気泡を生じさせないなどの安全基準を満たす、最適な数及び持続時間の休止を提供する。以下の表Iは、そのような可能なルックアップテーブルの一部の例である。
【0032】
【表1】
【0033】
別の例では、プロセッサは、以下式1と同様の式のセットを使用し、IREパルス列及びその間の休止の最適な数及び持続時間を計算する。この式は、最大許容血液温度、各エポックに印加される総電力(その一部が血液中に蓄積される)、及び血液熱除去能力を考慮して、短縮されているが依然として安全な冷却休止期間を計算する。
【0034】
例では、総時間は、例えば、熱発生率及び放散率式を使用して、加熱期間及び冷却期間の合計として解くことができる。
【0035】
【数1】
【0036】
方程式1、kは休止の数であり、N/fはパルスの評価率fで中断のないシーケンスにN個のパルスを印加するための総持続時間であり、Vはパルス電圧であり、hは血流によって支配される電極の場所からの熱除去率である。
【0037】
図3は、本開示の例に係る、気泡を避けるために区分されたIREパルスのシーケンス202を印加する方法を概略的に示すフローチャートである。アブレーションパルス列のシーケンスにおける各アブレーションパルス列の持続時間を短縮することによって、開示される技術は、より短いアブレーション期間を提供することができる。更に、各々がより短いより多くの休止を導入することによって、本技術は、例えば、図2に新たな持続時間206対事前設定持続時間204によって示されるように、短縮された総アブレーション時間を達成する。
【0038】
提示された例によれば、システム20によって実行されることができるアルゴリズムは、IREプロトコルアップロードステップ302において、医師30が、図2の区分Aなどのパルス列及び休止に区分されたパルス総数の事前設定シーケンスを含むIREプロトコルをアップロードするときに開始するプロセスを実行する。
【0039】
次に、IREプロトコル修正ステップ304において、例として、医師は、ユーザインターフェース47から、各列208の長さ(例えば、列212に)及び繰り返しの数(例えば、図2の区分Bが示すように3から4に)を修正する。
【0040】
次に、調整ステップ306において、例えばルックアップテーブルIに基づいて、プロセッサ41は、例えばテーブルIを使用して休止の新たな持続時間(例えば持続時間216)を計算して、総アブレーション持続時間を(例えば持続時間204から持続時間206に)安全に短縮する。
【0041】
最後に、プロセッサ41は、IRE処置ステップ308において、区分されたIREパルスを組織に印加するように発生器38に命令する。IREパルスは、左心房45内の不整脈を隔離するために、例えば、電極50及び51のうちの選択された電極間に双極で印加される。
【0042】
図4は、本開示の別の例に係る、総アブレーション時間を短縮しながら気泡を回避するように区分されたIREパルスのシーケンス202を印加する方法を概略的に示すフローチャートである。提示された例によれば、システム20によって実行されることができるアルゴリズムは、IREパラメータ受信ステップ402において、プロセッサ41がアブレーションに必要なパルス数を受信したときに開始するプロセスを実行する。
【0043】
次に、IREプロトコル生成ステップ404において、プロセッサ41は、気泡形成を伴わずに、短縮された持続時間の休止を伴って必要とされるアブレーションを達成するために(又は、全処置のための短縮された全休止持続時間を達成するために)必要とされる列の数及び列間の休止を計算する。
【実施例0044】
(実施例1)
不可逆電気穿孔(IRE)方法は、臓器内の組織に近接して配置されたカテーテル(21)の1つ以上の電極(50、51)によって印加されるIREパルスの総数を受信することを含む。IREプロトコルは、休止(216)によって分離された複数のパルス列(212)へのIREパルスの総数の区分を定義することによって定義され、区分は、安全基準を満たしながらIREプロトコルの総持続時間(206)を短縮するように定義される。IREプロトコルは、電極を使用して組織に適用される。
【0045】
(実施例2)
区分を定義することは、安全基準を満たしながら総持続時間を短縮する休止の数及び休止のそれぞれの持続時間を選択することを含む、実施例1に記載の方法。
【0046】
(実施例3)
休止の数及び休止のそれぞれの持続時間を選択することが、ルックアップテーブルを使用することを含む、実施例1又は2に記載の方法。
【0047】
(実施例4)
ルックアップテーブルが、IREパルスの総数、パルス電圧、及びパルス繰り返し率に基づいて休止の数を決定する、実施例1から3のいずれか一項に記載の方法。
【0048】
(実施例5)
休止の数及び休止のそれぞれの持続時間を選択することが、式のセットを使用することを含む、実施例2に記載の方法。
【0049】
(実施例6)
不可逆電気穿孔(IRE)システム20が、ユーザインターフェース(47)及びプロセッサ(41)を含む。ユーザインターフェースは、臓器内の組織に近接して配置されたカテーテルの1つ以上の電極によって印加されるIREパルスの総数を選択するように構成されている。プロセッサは、(i)休止によって分離された複数のパルス列へのIREパルスの総数の区分を定義することによってIREプロトコルを定義し、区分が、安全基準を満たしながらIREプロトコルの総持続時間を短縮するように定義され、(ii)電極を使用して組織にIREプロトコルを適用するように構成されている。
【0050】
(実施例7)
不可逆電気穿孔(IRE)システム20は、メモリ(48)及びプロセッサ(41)を含む。メモリ(48)は、臓器内の組織に近接して配置されたカテーテルの1つ以上の電極によって印加されるIREパルスの総数を含むIREプロトコルを記憶するように構成されている。プロセッサ(41)は、(i)メモリからIREプロトコルをアップロードし、(ii)休止によって分離された複数のパルス列へのIREパルスの総数の区分を定義することによってIREプロトコルを定義し、区分が、安全基準を満たしながらIREプロトコルの総持続時間を短縮するように定義され、(iii)電極を使用して組織にIREプロトコルを適用するように構成されている。
【0051】
本明細書に記載される実施例は、主に心臓用途に対処するものであるが、本明細書に記載される方法及びシステムは、神経や耳鼻咽喉などの他の医療用途において使用されることもできる。
【0052】
したがって、上に説明される実施例は、例として挙げたものであり、本開示は、本明細書の上記で具体的に図示及び説明されるものに限定されない点が理解されよう。むしろ、本発明の範囲は、本明細書の上に説明されている様々な特徴の組み合わせ及び部分的組み合わせの双方、並びに前述の説明を一読すると当業者に想到されるであろう、先行技術において開示されていないそれらの変形例及び変更例を含むものである。参照により本特許出願に援用される文献は、これらの援用文献において、いずれかの用語が本明細書において明示的又は暗示的になされた定義と矛盾して定義されている場合には、本明細書における定義のみを考慮するものとする点を除き、本出願の一部とみなすものとする。
【0053】
〔実施の態様〕
(1) 不可逆電気穿孔(IRE)システムであって、
臓器内の組織に近接して配置されたカテーテルの1つ以上の電極によって印加されるIREパルスの総数を受信するように構成されたユーザインターフェースと、
プロセッサであって、
休止によって分離された複数のパルス列への前記IREパルスの総数の区分を定義することによってIREプロトコルを定義することであって、前記区分が、安全基準を満たしながら前記IREプロトコルの総持続時間を短縮するように定義される、定義することと、
前記電極を使用して前記組織に前記IREプロトコルを適用することと、を行うように構成されたプロセッサと、を備える、システム。
(2) 前記プロセッサが、前記安全基準を満たしながら前記総持続時間を短縮する、前記休止の数及び前記休止のそれぞれの持続時間を選択することによって前記区分を定義するように構成されている、実施態様1に記載のシステム。
(3) 前記プロセッサが、ルックアップテーブルを使用することによって、前記休止の数及び前記休止のそれぞれの持続時間を選択するように構成されている、実施態様2に記載のシステム。
(4) 前記ルックアップテーブルが、前記IREパルスの総数、パルス電圧、及びパルス繰り返し率に基づいて前記休止の数を決定する、実施態様3に記載のシステム。
(5) 前記プロセッサが、式のセットを使用することによって、前記休止の数及び前記休止のそれぞれの持続時間を選択するように構成されている、実施態様2に記載のシステム。
【0054】
(6) 臓器内の組織に近接して配置されたカテーテルの1つ以上の電極によって印加されるIREパルスの総数を含むIREプロトコルを記憶するように構成されたメモリを備え、
前記プロセッサが、
前記メモリから前記IREプロトコルをアップロードすることと、
休止によって分離された複数のパルス列への前記IREパルスの総数の区分を定義することによって前記IREプロトコルを修正することであって、前記区分が、安全基準を満たしながら前記IREプロトコルの総持続時間を短縮するように定義される、修正することと、を行うように構成されている、実施態様1に記載のシステム。
図1
図2
図3
図4
【外国語明細書】