(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023165414
(43)【公開日】2023-11-15
(54)【発明の名称】半導体装置、及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
H01L 23/12 20060101AFI20231108BHJP
H01L 25/04 20230101ALI20231108BHJP
H01L 23/29 20060101ALI20231108BHJP
【FI】
H01L23/12 501P
H01L25/04 Z
H01L23/30 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】40
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023076112
(22)【出願日】2023-05-02
(31)【優先権主張番号】P 2022076301
(32)【優先日】2022-05-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000000033
【氏名又は名称】旭化成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100108903
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 和広
(74)【代理人】
【識別番号】100142387
【弁理士】
【氏名又は名称】齋藤 都子
(74)【代理人】
【識別番号】100135895
【弁理士】
【氏名又は名称】三間 俊介
(72)【発明者】
【氏名】清水 建樹
【テーマコード(参考)】
4M109
【Fターム(参考)】
4M109AA01
4M109EA02
4M109ED03
(57)【要約】
【課題】絶縁層の耐薬品性の向上と、絶縁層と配線の熱履歴後の密着性の確保と、を図ることができる半導体装置を提供する。
【解決手段】半導体チップ2と、半導体チップ2を、その少なくとも一部が露出するように覆う封止構造と、半導体チップ2における、封止構造によって覆われていない面側に配され、かつ、平面視で半導体チップ2よりも面積が大きい再配線層4と、を備え、再配線層4は、単層又は複数層の絶縁層6を含み、再配線層4の絶縁層6の断面視の段差が0.1μm~1.8μmである。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体チップと、
前記半導体チップを、その少なくとも一部が露出するように覆う封止構造と、
前記半導体チップにおける、前記封止構造によって覆われていない面側に配され、かつ、平面視で前記半導体チップよりも面積が大きい再配線層と、を備え、
前記再配線層は、単層構造又は複数層構造を有する絶縁層を含み、
前記再配線層の断面視において、前記絶縁層に含まれる層構造は、0.1μm~1.8μmである段差を含む、半導体装置。
【請求項2】
前記段差は、前記層構造での最大凸部と最大凹部との差である、請求項1に記載の半導体装置。
【請求項3】
前記再配線層が、3層以上の層構造を有する、請求項1に記載の半導体装置。
【請求項4】
前記半導体チップが、複数のチップを並列に含む、請求項1に記載の半導体装置。
【請求項5】
前記再配線層は、前記半導体チップに電気的に接続される中間層と、前記中間層を覆う前記絶縁層と、を有する、請求項1に記載の半導体装置。
【請求項6】
前記封止構造は、前記絶縁層と接する、請求項1に記載の半導体装置。
【請求項7】
前記封止構造は、エポキシ樹脂を含む、請求項1に記載の半導体装置。
【請求項8】
前記段差が、0.4μm~1.8μmである、請求項1に記載の半導体装置。
【請求項9】
前記絶縁層が、炭素(C)、水素(H)、窒素(N)、酸素(O)、ケイ素(Si)、及びチタン(Ti)から選択される少なくとも1種を含んで構成される、請求項1に記載の半導体装置。
【請求項10】
前記絶縁層は、ハロゲンを含まない、請求項1に記載の半導体装置。
【請求項11】
前記絶縁層は、ポリイミドと、ポリベンゾオキサゾールと、フェノール性水酸基を有するポリマーと、から選択される少なくとも1種を含む、請求項1に記載の半導体装置。
【請求項12】
前記絶縁層がポリイミドを含み、全反射測定法(ATR法)にてIRスペクトル測定を行った場合の、1380cm-1付近のピーク高さと、1500cm-1付近のピーク高さと、のピーク比(1380cm-1付近ピーク高さ/1500cm-1付近ピーク高さ)が0.2~1.0である、請求項1に記載の半導体装置。
【請求項13】
前記半導体装置は、前記半導体チップを保護する保護層を更に備え、
前記保護層は、前記半導体チップと、前記絶縁層と、の間に配される、請求項1に記載の半導体装置。
【請求項14】
前記保護層は、前記半導体チップと、前記絶縁層と、の少なくとも一方に接する、請求項13に記載の半導体装置。
【請求項15】
前記保護層には、孔が形成されており、
前記孔を通じて、前記半導体チップと、前記半導体チップに電気的に接続される中間層と、が電気的に接続されている、請求項13に記載の半導体装置。
【請求項16】
前記保護層における、前記半導体チップ側の面のうち、前記孔に由来する開口面積の割合が半分未満である、請求項15に記載の半導体装置。
【請求項17】
前記保護層は、ポリイミドと、ポリベンゾオキサゾールと、フェノール性水酸基を有するポリマーと、から選択される少なくとも1種を含む、請求項13に記載の半導体装置。
【請求項18】
前記保護層がポリイミドを含み、全反射測定法(ATR法)にてIRスペクトル測定を行った場合の、1380cm-1付近のピーク高さと、1500cm-1付近のピーク高さと、のピーク比(1380cm-1付近ピーク高さ/1500cm-1付近ピーク高さ)が1.2~2.5である、請求項13に記載の半導体装置。
【請求項19】
前記保護層及び前記絶縁層の少なくとも一方は、以下の一般式(1)の構造を含むポリイミドを含む、請求項13に記載の半導体装置。
【化1】
(一般式(1)中、X
1は、テトラカルボン酸二無水物に由来する4価の有機基であり、Y
1は、ジアミンに由来する2価の有機基であり、mは1以上の整数である。)
【請求項20】
前記一般式(1)中のX1が、芳香族環を含む4価の有機基であり、前記一般式(1)中のY1が、芳香族環を含む2価の有機基である、請求項19に記載の半導体装置。
【請求項21】
前記一般式(1)中のX
1は、下記一般式(2)~一般式(4)で表される少なくとも1つの構造を含む、請求項19に記載の半導体装置。
【化2】
【化3】
【化4】
(一般式(4)中、R
9は酸素原子、硫黄原子、又は2価の有機基である。)
【請求項22】
前記一般式(1)中のX
1は、下記一般式(5)で表される構造を含む、請求項21に記載の半導体装置。
【化5】
【請求項23】
前記一般式(1)中のY
1は、下記一般式(6)~一般式(8)で表される少なくとも1つの構造を含む、請求項19に記載の半導体装置。
【化6】
(R
10、R
11、R
12及びR
13は、それぞれ独立に、水素原子、炭素数が1~5の1価の脂肪族基又は水酸基であり、同一であっても異なっていてもよい。)
【化7】
(R
14~R
21は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、炭素数が1~5の1価の有機基又は水酸基であり、互いに異なっていても、同一であってもよい。)
【化8】
(R
22は2価の基又は酸素原子であり、R
23~R
30は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、炭素数が1~5の1価の脂肪族基又は水酸基であり、同一であっても異なっていてもよい。)
【請求項24】
前記一般式(1)中のY
1は、下記一般式(9)で表される構造を含む、請求項19に記載の半導体装置。
【化9】
【請求項25】
前記絶縁層が、以下の一般式(10)の構造を含む前記ポリベンゾオキサゾールを含む、請求項11に記載の半導体装置。
【化10】
(一般式(10)中、UとVは、2価の有機基である。)
【請求項26】
前記一般式(10)のUは、炭素数1~30の2価の有機基である、請求項25に記載の半導体装置。
【請求項27】
前記一般式(10)のUは、炭素数1~8でかつ水素原子の一部又は全部がフッ素原子で置換された鎖状アルキレン基である、請求項26に記載の半導体装置。
【請求項28】
前記一般式(10)のVは、芳香族基を含む2価の有機基である、請求項25に記載の半導体装置。
【請求項29】
前記一般式(10)のVは、下記一般式(6)~一般式(8)で表される少なくとも1つの構造を含む、請求項28に記載の半導体装置。
【化11】
(R
10、R
11、R
12及びR
13は、それぞれ独立に、水素原子、炭素数が1~5の1価の脂肪族基であり、同一であっても異なっていてもよい。)
【化12】
(R
14~R
21は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、炭素数が1~5の1価の有機基であり、互いに異なっていても、同一であってもよい。)
【化13】
(R
22は2価の基又は酸素原子であり、R
23~R
30は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、炭素数が1~5の1価の脂肪族基であり、同一であっても異なっていてもよい。)
【請求項30】
前記一般式(10)のVは、下記一般式(9)で表される構造を含む、請求項29に記載の半導体装置。
【化14】
【請求項31】
前記一般式(10)のVは、炭素数1~40の2価の有機基である、請求項25に記載の半導体装置。
【請求項32】
前記一般式(10)のVは、炭素数1~20の2価の鎖状脂肪族基である、請求項31に記載の半導体装置。
【請求項33】
前記フェノール性水酸基を有するポリマーが、ノボラック型フェノール樹脂を含む、請求項11に記載の半導体装置。
【請求項34】
前記フェノール性水酸基を有するポリマーが、不飽和炭化水素基を有しないフェノール樹脂と、不飽和炭化水素基を有する変性フェノール樹脂と、を含む、請求項11に記載の半導体装置。
【請求項35】
前記絶縁層は、第1の絶縁層と、前記第1の絶縁層とは異なる組成を有する第2の絶縁層と、を含む、請求項1に記載の半導体装置。
【請求項36】
前記半導体装置が、ファンアウト型のウェハレベルチップサイズパッケージ型の半導体装置である、請求項1~35のいずれか1項に記載の半導体装置。
【請求項37】
半導体チップを用意する第1工程と、
用意した前記半導体チップを、該半導体チップの少なくとも一部が露出するように封止構造で覆う第2工程と、
平面視で前記半導体チップよりも面積が大きく、かつ、単層構造又は複数層構造を有する絶縁層を含む再配線層を、前記半導体チップの前記露出する面側に形成する第3工程と、を含み、
前記第3工程では、前記再配線層の断面視において、前記絶縁層に含まれる層構造の段差が0.1μm~1.8μmである該絶縁層を作製する、半導体装置の製造方法。
【請求項38】
前記絶縁層を、ポリイミドと、ポリベンゾオキサゾールと、フェノール性水酸基を有するポリマーと、の少なくとも1つの化合物を形成可能な感光性樹脂組成物で形成する絶縁層形成工程を含む、請求項37に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項39】
前記第2工程は、
前記半導体チップに保護層を形成する工程と、
前記保護層を形成した前記半導体チップを、該保護層の少なくとも一部が露出するように封止構造で覆う工程と、を含み、
前記第3工程は、
前記再配線層を、前記保護層側に形成する工程を含む、請求項37又は38に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項40】
前記保護層を、ポリイミドと、ポリベンゾオキサゾールと、フェノール性水酸基を有するポリマーと、の少なくとも1つの化合物を形成可能な感光性樹脂組成物で形成する保護層形成工程を含む、請求項39に記載の半導体装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置、及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体装置における半導体パッケージ手法には、様々な方法がある。半導体パッケージ手法としては、例えば、半導体チップを封止構造で覆って、更に、半導体チップと電気的に接続する再配線層を形成するというパッケージング手法がある。半導体パッケージ手法の中でも、近年、ファンナウト(Fan-Out)という半導体パッケージ手法が主流となっている。
【0003】
ファンナウト型の半導体パッケージでは、保護層を形成した半導体チップを封止構造で覆うことにより半導体チップのチップサイズよりも大きいチップ封止体を形成する。更に、半導体チップ及び封止構造の領域にまで及ぶ再配線層を形成する。再配線層は、薄い膜厚で形成される。また、再配線層は、封止構造の領域まで形成できるため、外部接続端子の数を多くすることができる。
【0004】
例えば、ファンナウト型の半導体装置としては、下記の特許文献1が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ファンナウト型の半導体装置における再配線層は絶縁層を含んで構成され、この場合、半導体チップに電気的に接続される配線が、該絶縁層により覆われることが多い。このため、再配線層中の絶縁層は、上記配線を形成する際の薬品に耐性を持つ必要があった。
【0007】
加えて、本発明者らは、絶縁層を形成する一連のプロセスで熱を受けたとしても、絶縁層と配線の高い密着性を確保することが求められる観点に着目した。しかし、従来の半導体装置(ファンナウト型の半導体装置)は、絶縁層を形成する一連のプロセスで発生する熱履歴後の、半導体チップ側と再配線層中の絶縁層側との間の密着性が十分ではなかった。
【0008】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、絶縁層の耐薬品性の向上と、絶縁層と配線の熱履歴後の密着性の確保と、を両立することができる半導体装置、及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、以下の技術的手段によって上記課題を解決することができることを見出した。
[1]
半導体チップと、
前記半導体チップを、その少なくとも一部が露出するように覆う封止構造と、
前記半導体チップにおける、前記封止構造によって覆われていない面側に配され、かつ、平面視で前記半導体チップよりも面積が大きい再配線層と、を備え、
前記再配線層は、単層構造又は複数層構造を有する絶縁層を含み、
前記再配線層の断面視において、前記絶縁層に含まれる層構造は、0.1μm~1.8μmである段差を含む、半導体装置。
[2]
前記段差は、前記層構造での最大凸部と最大凹部との差である、項目1に記載の半導体装置。
[3]
前記再配線層が、3層以上の層構造を有する、項目1又は2に記載の半導体装置。
[4]
前記半導体チップが、複数のチップを並列に含む、項目1~3のいずれか1項に記載の半導体装置。
[5]
前記再配線層は、前記半導体チップに電気的に接続される中間層と、前記中間層を覆う前記絶縁層と、を有する、項目1~4のいずれか1項に記載の半導体装置。
[6]
前記封止構造は、前記絶縁層と接する、項目1~5のいずれか1項に記載の半導体装置。
[7]
前記封止構造は、エポキシ樹脂を含む、項目1~6のいずれか1項に記載の半導体装置。
[8]
前記段差が、0.4μm~1.8μmである、項目1~7のいずれか1項に記載の半導体装置。
[9]
前記絶縁層が、炭素(C)、水素(H)、窒素(N)、酸素(O)、ケイ素(Si)、及びチタン(Ti)から選択される少なくとも1種を含んで構成される、項目1~8のいずれか1項に記載の半導体装置。
[10]
前記絶縁層は、ハロゲンを含まない、項目1~9のいずれか1項に記載の半導体装置。
[11]
前記絶縁層は、ポリイミドと、ポリベンゾオキサゾールと、フェノール性水酸基を有するポリマーと、から選択される少なくとも1種を含む、項目1~10のいずれか1項に記載の半導体装置。
[12]
前記絶縁層がポリイミドを含み、全反射測定法(ATR法)にてIRスペクトル測定を行った場合の、1380cm
-1付近のピーク高さと、1500cm
-1付近のピーク高さと、のピーク比(1380cm
-1付近ピーク高さ/1500cm
-1付近ピーク高さ)が0.2~1.0である、項目1~11のいずれか1項に記載の半導体装置。
[13]
前記半導体装置は、前記半導体チップを保護する保護層を更に備え、
前記保護層は、前記半導体チップと、前記絶縁層と、の間に配される、項目1~12のいずれか1項に記載の半導体装置。
[14]
前記保護層は、前記半導体チップと、前記絶縁層と、の少なくとも一方に接する、項目13に記載の半導体装置。
[15]
前記保護層には、孔が形成されており、
前記孔を通じて、前記半導体チップと、前記半導体チップに電気的に接続される中間層と、が電気的に接続されている、項目13又は14に記載の半導体装置。
[16]
前記保護層における、前記半導体チップ側の面のうち、前記孔に由来する開口面積の割合が半分未満である、項目15に記載の半導体装置。
[17]
前記保護層は、ポリイミドと、ポリベンゾオキサゾールと、フェノール性水酸基を有するポリマーと、から選択される少なくとも1種を含む、項目13~16のいずれか1項に記載の半導体装置。
[18]
前記保護層がポリイミドを含み、全反射測定法(ATR法)にてIRスペクトル測定を行った場合の、1380cm
-1付近のピーク高さと、1500cm
-1付近のピーク高さと、のピーク比(1380cm
-1付近ピーク高さ/1500cm
-1付近ピーク高さ)が1.2~2.5である、項目13~17のいずれか1項に記載の半導体装置。
[19]
前記保護層及び前記絶縁層の少なくとも一方は、以下の一般式(1)の構造を含むポリイミドを含む、項目1~18のいずれか1項に記載の半導体装置。
【化1】
(一般式(1)中、X
1は、テトラカルボン酸二無水物に由来する4価の有機基であり、Y
1は、ジアミンに由来する2価の有機基であり、mは1以上の整数である。)
[20]
前記一般式(1)中のX
1が、芳香族環を含む4価の有機基であり、前記一般式(1)中のY
1が、芳香族環を含む2価の有機基である、項目19に記載の半導体装置。
[21]
前記一般式(1)中のX
1は、下記一般式(2)~一般式(4)で表される少なくとも1つの構造を含む、項目19又は20に記載の半導体装置。
【化2】
【化3】
【化4】
(一般式(4)中、R
9は酸素原子、硫黄原子、又は2価の有機基である。)
[22]
前記一般式(1)中のX
1は、下記一般式(5)で表される構造を含む、項目21に記載の半導体装置。
【化5】
[23]
前記一般式(1)中のY
1は、下記一般式(6)~一般式(8)で表される少なくとも1つの構造を含む、項目19~22のいずれか1項に記載の半導体装置。
【化6】
(R
10、R
11、R
12及びR
13は、それぞれ独立に、水素原子、炭素数が1~5の1価の脂肪族基又は水酸基であり、同一であっても異なっていてもよい。)
【化7】
(R
14~R
21は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、炭素数が1~5の1価の有機基又は水酸基であり、互いに異なっていても、同一であってもよい。)
【化8】
(R
22は2価の基又は酸素原子であり、R
23~R
30は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、炭素数が1~5の1価の脂肪族基又は水酸基であり、同一であっても異なっていてもよい。)
[24]
前記一般式(1)中のY
1は、下記一般式(9)で表される構造を含む、項目19に記載の半導体装置。
【化9】
[25]
前記絶縁層が、以下の一般式(10)の構造を含む前記ポリベンゾオキサゾールを含む、項目11に記載の半導体装置。
【化10】
(一般式(10)中、UとVは、2価の有機基である。)
[26]
前記一般式(10)のUは、炭素数1~30の2価の有機基である、項目25に記載の半導体装置。
[27]
前記一般式(10)のUは、炭素数1~8でかつ水素原子の一部又は全部がフッ素原子で置換された鎖状アルキレン基である、項目26に記載の半導体装置。
[28]
前記一般式(10)のVは、芳香族基を含む2価の有機基である、項目25~27のいずれか1項に記載の半導体装置。
[29]
前記一般式(10)のVは、下記一般式(6)~一般式(8)で表される少なくとも1つの構造を含む、項目28に記載の半導体装置。
【化11】
(R
10、R
11、R
12及びR
13は、それぞれ独立に、水素原子、炭素数が1~5の1価の脂肪族基であり、同一であっても異なっていてもよい。)
【化12】
(R
14~R
21は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、炭素数が1~5の1価の有機基であり、互いに異なっていても、同一であってもよい。)
【化13】
(R
22は2価の基又は酸素原子であり、R
23~R
30は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、炭素数が1~5の1価の脂肪族基であり、同一であっても異なっていてもよい。)
[30]
前記一般式(10)のVは、下記一般式(9)で表される構造を含む、項目29に記載の半導体装置。
【化14】
[31]
前記一般式(10)のVは、炭素数1~40の2価の有機基である、項目25~29のいずれか1項に記載の半導体装置。
[32]
前記一般式(10)のVは、炭素数1~20の2価の鎖状脂肪族基である、項目31に記載の半導体装置。
[33]
前記フェノール性水酸基を有するポリマーが、ノボラック型フェノール樹脂を含む、項目11に記載の半導体装置。
[34]
前記フェノール性水酸基を有するポリマーが、不飽和炭化水素基を有しないフェノール樹脂と、不飽和炭化水素基を有する変性フェノール樹脂と、を含む、項目11に記載の半導体装置。
[35]
前記絶縁層は、第1の絶縁層と、前記第1の絶縁層とは異なる組成を有する第2の絶縁層と、を含む、項目1~34のいずれか1項に記載の半導体装置。
[36]
前記半導体装置が、ファンアウト型のウェハレベルチップサイズパッケージ型の半導体装置である、項目1~35のいずれか1項に記載の半導体装置。
[37]
半導体チップを用意する第1工程と、
用意した前記半導体チップを、該半導体チップの少なくとも一部が露出するように封止構造で覆う第2工程と、
平面視で前記半導体チップよりも面積が大きく、かつ、単層構造又は複数層構造を有する絶縁層を含む再配線層を、前記半導体チップの前記露出する面側に形成する第3工程と、を含み、
前記第3工程では、前記再配線層の断面視において、前記絶縁層に含まれる層構造の段差が0.1μm~1.8μmである該絶縁層を作製する、半導体装置の製造方法。
[38]
前記絶縁層を、ポリイミドと、ポリベンゾオキサゾールと、フェノール性水酸基を有するポリマーと、の少なくとも1つの化合物を形成可能な感光性樹脂組成物で形成する絶縁層形成工程を含む、項目37に記載の半導体装置の製造方法。
[39]
前記第2工程は、
前記半導体チップに保護層を形成する工程と、
前記保護層を形成した前記半導体チップを、該保護層の少なくとも一部が露出するように封止構造で覆う工程と、を含み、
前記第3工程は、
前記再配線層を、前記保護層側に形成する工程を含む、項目37又は38に記載の半導体装置の製造方法。
[40]
前記保護層を、ポリイミドと、ポリベンゾオキサゾールと、フェノール性水酸基を有するポリマーと、の少なくとも1つの化合物を形成可能な感光性樹脂組成物で形成する保護層形成工程を含む、項目39に記載の半導体装置の製造方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、絶縁層の耐薬品性の向上と、絶縁層と配線の熱履歴後の密着性の確保と、を両立することができる半導体装置、及びその製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本実施形態に係る半導体装置の断面模式図である。
【
図2】本実施形態に係る半導体装置の平面模式図である。
【
図3】本実施形態に係る半導体装置の、段差の構成例を説明するための図である。
【
図4】本実施形態に係る半導体装置の製造工程の一例である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の半導体装置の一実施形態(以下、「実施形態」と略記する。)について、図面を参照して説明する。なお、本発明は、以下の実施形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施することができる。本実施形態において、「~」を用いて記載した数値範囲は、「~」の前後に記載された数値をその範囲内に含む。また、本実施形態において、段階的に記載されている数値範囲では、ある数値範囲で記載された上限値又は下限値は、他の段階的な記載の数値範囲の上限値又は下限値に置き換えることができる。更に、本実施形態において、ある数値範囲で記載された上限値又は下限値は、実施例に示された値に置き換えることもできる。図面に示される内容において、縮尺、形状及び長さ等は、明確性を更に図るために誇張して示されている場合がある。
【0013】
[実施形態1]
<半導体装置>
図1は、本実施形態に係る半導体装置の断面模式図である。
図1に示すように、半導体装置(半導体IC)1は、
半導体チップ2と、
半導体チップ2を、その少なくとも一部が露出するように覆う封止構造と、
半導体チップ2における、封止構造によって覆われていない面側に配され、かつ、平面視で半導体チップ2よりも面積が大きい再配線層4と、を備え、
再配線層4は、単層構造又は複数層構造を有する絶縁層(「層間絶縁膜」と称される場合がある。)6を含み、
再配線層6の断面視において、絶縁層6に含まれる層構造での段差が0.1μm~1.8μmである。
なお、
図1では、点線で示されるとおり、3層構造を有する絶縁層6が図示されている。
【0014】
一態様において、封止構造は、封止材3により構成されることができる。
図1に示すように、封止材3は、半導体チップ2の表面(側面及び上面)を覆うと共に、平面視(
図1中、A矢視)にて、半導体チップ2の領域よりも大きい面積にて形成されている。
【0015】
再配線層4は、半導体チップ2に設けられた複数の端子2aに電気的に接続される複数の配線5と、配線5の間を埋める絶縁層6とを有して構成される。半導体チップ2に設けられた複数の端子2aと再配線層4内の配線5は電気的に接続されている。配線5の一端が端子2aに接続され、また、他端が外部接続端子7に接続される。端子2aと外部接続端子7の間の配線5は絶縁層6に覆われている。半導体チップ2は、複数のチップを並列に配置して構成されることもできる。
図1には、面方向(A方向に対して垂直な方向)に沿って複数の半導体チップ2が配置される態様が図示されている。複数の半導体チップ2が配置される場合、各半導体チップ2の構成は、同一であっても異なってもよい。
【0016】
図1に示すように、平面視(A矢視)にて、再配線層4は、半導体チップ2よりも大きく形成されている。
図1に示す半導体装置1は、ファンナウト(Fan-Out)型のウェハレベルチップサイズパッケージ(WLCSP)型の半導体装置である。ファンナウト型の半導体装置では、再配線層4中の絶縁層6は、半導体チップ2のみならず封止材3とも密着する。半導体チップ2は、シリコン等の半導体から構成されており、また、内部に回路が形成されている。
【0017】
(再配線層)
再配線層4は、配線5と配線5の周りを覆う絶縁層6から構成される。再配線層は、絶縁層を3層以上含んでよい。再配線層が絶縁層を3層以上含むことで、段差を調整し易くなる。再配線層における絶縁層は、9層以下でよい。
【0018】
ここで、本実施形態における「再配線層」とは、上記したように、絶縁層6を有する薄膜の層であり、配線5を含んでよい。本実施形態における「再配線層」は、プリント配線板を含まない。
【0019】
本実施形態では、再配線層4の膜厚を、3~30μm程度とすることができる。再配線層4の膜厚は1μm以上でもよく、5μm以上でもよく、10μm以上でもよい。また、再配線層4の膜厚は40μm以下でもよく、30μm以下でもよく、20μm以下でもよい。
【0020】
半導体装置1を平面視(A矢視)した場合、以下の
図2のようになる。
図2は、本実施形態に係る半導体装置の平面模式図である。なお、封止材3の図示は、省略されている。
【0021】
図2に示す半導体装置1(
図1参照)は、再配線層4の面積S1が、半導体チップ2の面積S2よりも大きくなるように構成されている。再配線層4の面積S1は、外部接続端子の数を多くするとの観点から、半導体チップ2の面積S2の1.05倍以上であることが好ましく、1.1倍以上であることが好ましく、1.2倍以上であることがより好ましく、1.3倍以上であることが特に好ましい。上限は、再配線層4の面積S1は、半導体チップ2の面積S2の50倍以下であってもよく、25倍以下であってもよく、10倍以下であってもよく、5倍以下であってもよい。なお、
図2において、半導体チップ2に覆われている再配線層4の部分の面積も再配線層4の面積S1に含まれる。
【0022】
また、半導体チップ2及び、再配線層4の外形は、同じであってもよいし、異なっていてもよい。
図2では、半導体チップ2及び再配線層4の外形が、共に矩形の相似形状であるが、外形は、矩形以外であってもよい。
【0023】
(絶縁層)
絶縁層6は、配線5との意図しない導通を防止するとの観点から、絶縁性が高い部材であることが好ましい。
図3は、本実施形態における絶縁層の一態様を説明するための図であり、その断面を模式的に示す図である。
図3における再配線層4a~4cは、
図1において矢印で示される各部a~cに対応しており、また便宜上、
図1における各部の上下を反転させて図示されている。
【0024】
各図中、再配線層4を構成する絶縁層6の各層は、封止構造とは反対側の表面に凹凸を有している。各層において、最大厚みを与える凸部を「最大凸部」と称し、また、その最大凸部から厚み方向に最も深い窪みを与える凹部を「最大凹部」と称する。段差は、「最大凸部」及び「最大凹部」の差から求められる。「段差」の算出に際する具体的なプロセスは、後述の実施例の方法により明らかにされる。
【0025】
ここで、段差の算出に関して、以下の事項が考慮される。
(1)「最大凸部」、「最大凹部」、及び「段差」は、再配線層における特定の箇所(例えば、
図1において矢印で示されるa~c)を対象に、個別に算出されるのではなく、
図1において矢印で示されるa~cを含めた、再配線層の全体を対象に算出される。すなわち、再配線層の一端から他端に亘った全体を対象に観察したときに得られる「最大凸部」及び「最大凹部」から、「段差」が算出される。
(2)レリーフパターンによって形成される溝は、最大凹部を構成せず、また、配線の表面は最大凸部を構成しない。
(3)絶縁層が複数層構造を有する場合、その各層ごとに段差が算出される。この場合、各層ごとに算出される段差の、少なくとも一つが、0.1μm~1.8μmである。
【0026】
以下、段差の算出手法について、具体的に説明する。
図3(a)~(c)は、
図1中、矢印a~cで示される部分にそれぞれ対応している。
図3(a)は、封止構造(封止材3)上に、1層目の絶縁層61aと、2層目の絶縁層62aと、3層目の絶縁層63aと、が順次積層された構造を;
図3(b)は、封止構造(封止材3)上に、1層目の絶縁層61bと、配線52bと、3層目の絶縁層63bと、が順次積層された構造を;
図3(c)は、封止構造(封止材3)、保護層8、及び端子2a上に、1層目の絶縁層61c及び配線51cと、2層目の絶縁層62c及び配線52cと、3層目の絶縁層63cと、が順次積層された構造を;
それぞれ示している。
【0027】
図3(b)中、配線52bは、2層目の絶縁層(図示せず)によって形成されたレリーフパターン間に配されている。
図3(c)中、配線51cは、1層目の絶縁層61cによって形成されたレリーフパターン間に配されており、かつ、端子2aに接続されている。また、配線52cは、2層目の絶縁層62cによって形成されたレリーフパターン間に配されており、かつ、配線51cに接続されている。そして、3層目の絶縁層63cは、2層目の絶縁層62c及び配線52cを覆うように形成されており、その3層目の絶縁層63c上に外部接続端子7が配されている。
【0028】
まず、1層目に着目する。1層目を全体にわたって観察する(上記考慮事項(1))。
1層目のうち、最大厚みを与える最大凸部C1は、再配線層4aに;
その最大凸部C1から最も深い窪みを与える最大凹部D1は、再配線層4cに;
それぞれ観察される。そして、1層目における段差G1は、最大凸部C1及び最大凹部D1の差として算出される。
なお、最大凸部C1からの深さだけをみれば、1層目の絶縁層61cによって形成されたレリーフパターンのボトムBtが最も深いが、レリーフパターンによって形成される溝は、最大凹部を構成しない(上記の考慮事項(2))。
【0029】
次に、2層目に着目する。2層目を全体にわたって観察する(上記考慮事項(1))。
2層目のうち、最大凸部C2は、再配線層4cに;
最大凹部D2は、再配線層4aに;
それぞれ観察される。そして、2層目における段差G2は、最大凸部C2及び最大凹部D2の差として算出される。
なお、再配線層4b及び4cに、最大凸部C2の高さを上回る凸部がそれぞれ見られるが、これらは、配線52b、52cの表面に現れる凸部であるため、最大凸部を構成しない(上記の考慮事項(2))。
【0030】
次に、3層目に着目する。3層目を全体にわたって観察する(上記考慮事項(1))。
3層目のうち、最大凸部C3、及び最大凹部D2ともに、再配線層4bに観察される。そして、3層目における段差G3は、最大凸部C3及び最大凹部D3の差として算出される。
【0031】
なお、図示しないものの、再配線層がN層構造を有する場合、1層目~N層目の各層ごとに、計N個の段差が算出されることになる。
【0032】
以上のとおり算出された、各層ごとに算出される段差G1~G3の、少なくとも一つが、0.1μm~1.8μmである(上記考慮事項(3))。本実施形態において、段差を0.1μm~1.8μmとすることにより、絶縁層の耐薬品性の向上と、絶縁層と配線の熱履歴後の密着性の確保と、を両立することができる理由は明らかではないが、本発明者は以下のように考えている。絶縁層の段差は、例えば、モールド樹脂(封止材)の表面の凹凸、及び1層目の絶縁層の形成後に生じた段差、等に由来すると考えられる。段差を0.1μm以上とすることにより、絶縁層が十分に収縮するようになり、これにより、膜の強靭性が向上し、その結果、耐薬品性が向上する。耐薬品性、及び絶縁層のクラック耐性の観点で、段差は、0.2μm以上が好ましく、0.4μm以上がより好ましく、0.5μm以上が特に好ましい。
【0033】
また、半導体装置の製造プロセスにおいて、絶縁層の上部にスパッタ又はめっきにより配線を形成する。段差を1.8μm以下とすることにより、絶縁層と配線の間に発生する応力に対して、応力集中点が分散されることにより、応力緩和が進み、これにより密着性が向上するものと考えられる。半導体装置の収率の観点から、段差は、1.7μm以下が好ましく、1.6μm以下がより好ましく、1.5μm以下が特に好ましい。
【0034】
絶縁層6のヤング率は、現像性の観点で、5.0GPa以下が好ましく、4.5GPa以下がより好ましく、4.1GPa以下、又は4.0GPa以下が特に好ましい。また、配線を保護する観点で、2.0GPa以上が好ましく、2.5GPa以上がより好ましく、3.0GPa以上、又は3.2GPa以上が特に好ましい。
【0035】
再配線層4中の絶縁層6は多層であってよい。すなわち、再配線層4は、再配線層4を断面視した際に、第1の絶縁層と、第2の絶縁層と、第1の絶縁層及び第2の絶縁層とは異なる層で第1の絶縁層及び第2の絶縁層の間に設けられた中間層と、を含んでいてもよい。中間層とは例えば配線5である。配線5は、導電性が高い部材であればよく、一般に銅が使用される。
【0036】
第1の絶縁層と第2の絶縁層は同じ組成であってもよく異なる組成であってもよい。第1の絶縁層と第2の絶縁層は同じヤング率であってもよく異なるヤング率であってもよい。第1の絶縁層と第2の絶縁層は同じ膜厚であってもよく、異なる膜厚であってもよい。第1の絶縁層と第2の絶縁層とが、異なる組成、異なるヤング率、及び/又は異なる膜厚を有すると、各絶縁層に異なる性質を持たせることが可能となり、好ましい。
【0037】
(絶縁層の組成)
絶縁層6は、例えば、ポリイミドと、ポリベンゾオキサゾールと、フェノール性水酸基を有するポリマーと、から選択される少なくとも1つの化合物を含む膜であることが好ましい。
【0038】
(絶縁層を形成する樹脂組成物)
絶縁層6の形成に用いる樹脂組成物は、感光性の樹脂組成物であればよく、なかでも、ポリイミド前駆体と、ポリベンゾオキサゾール前駆体と、フェノール性水酸基を有するポリマーと、から選択される少なくとも1つの化合物を含む感光性樹脂組成物であることが好ましい。絶縁層6の形成に用いる樹脂組成物は、液体状でもフィルム状でもよい。また、絶縁層6の形成に用いる樹脂組成物は、ネガ型の感光性樹脂組成物でも、ポジ型の感光性樹脂組成物でもよい。
【0039】
本実施形態では、感光性樹脂組成物を露光、及び、現像した後のパターンをレリーフパターンといい、レリーフパターンを加熱硬化したものを硬化レリーフパターンという。この硬化レリーフパターンが、保護層8、絶縁層6に相当する。
本実施形態では、絶縁層はC、H、N、O、Si、及びTiから選択される少なくとも1種を含んで構成されることが好ましい。ハロゲン原子等の自由体積の大きな官能基を有しないことで、耐薬品性の低下を防止できる傾向にある。
【0040】
(封止材)
封止材3の材料は、エポキシ樹脂が、耐熱性、絶縁層との密着性の観点から好ましい。
【0041】
図1に示すように、封止材3は、半導体チップ2、及び、再配線層4に直接接していることが好ましい。これにより、半導体チップ2の表面から再配線層4の表面に至る封止性を効果的に向上させることができる。
【0042】
封止材3は、単層であってもよいし、複数の層が積層された構成でもよい。封止材3が積層構造の場合、同種の材料の積層構造でも、異なる材料の積層構造でもよい。
【0043】
(保護層)
【0044】
本実施の形態における保護層8は、半導体チップ2を保護することができる。物理的な衝撃から半導体チップ2を保護する観点で、保護層8のヤング率は、4.0GPa以上が好ましく、4.5GPa以上がより好ましく、5GPa以上が特に好ましい。また、現像性の観点から、保護層8のヤング率は、9.0GPa以下が好ましく、8.5GPa以下がより好ましく、8.0GPa以下が特に好ましい。
本実施の形態におけるヤング率は、引張試験、及びナノインデンテーション試験等により算出することができる。
【0045】
保護層8は、半導体チップ2における、封止材3により覆われていない面に設けられている。封止材3により覆われた側から半導体チップ2を平面視(
図1におけるA矢視)したと仮定した場合、半導体チップ2の陰になるため、保護層8は観察されない。
【0046】
保護層8は、半導体チップ2と、絶縁層6と、の少なくとも一方に接している。これによれば、半導体チップ2を好適に保護し易くなる。また、このような構成は、保護層8側及び絶縁層6側の密着性の向上が望まれ易い態様であるが、半導体装置1は、そのような態様を有する場合においても、保護層8側及び絶縁層6側の密着性を高めることができる。特に、半導体装置1では、保護層8は、半導体チップ2と、絶縁層6と、の両方に接しており、上記の観点から、より好ましい態様である。なお、半導体装置1では省略されているが、本発明の効果が得られる限り、半導体チップ2と、絶縁層6と、の間に他の部材が介在してもよい。
【0047】
保護層8には、孔8aが形成されておる。孔8aを通じて、半導体チップ2側と、配線5側と、が電気的に接続されている。これによれば、半導体チップ2側と、配線5側と、の電気的接続を確保しつつ、かつ、半導体チップ2を更に保護し易くなる。保護層8の孔8aは、半導体チップ2の端子2aに対応して複数設けられている。複数の孔8aにそれぞれ端子2aが挿設されている。
【0048】
半導体装置1では、保護層8における、半導体チップ2側の面のうち、孔8aに由来する開口面積の割合が半分未満である。これによれば、半導体チップ2を保護するための保護面積を確保でき、ゆえに、半導体チップ2を更に保護し易くなる。ここで「開口面積」は、半導体チップ2側の面の、開口入口の面積の合計を言う。
【0049】
(保護層の組成)
保護層は、例えば、ポリイミドと、ポリベンゾオキサゾールと、フェノール性水酸基を有するポリマーと、から選択される少なくとも1つの化合物を含む膜であることが好ましい。
【0050】
(保護層を形成する樹脂組成物)
保護層の形成に用いる樹脂組成物は、感光性の樹脂組成物であればよく、なかでも、ポリイミド前駆体と、ポリベンゾオキサゾール前駆体と、フェノール性水酸基を有するポリマーと、から選択される少なくとも1つの化合物を含む感光性樹脂組成物であることが好ましい。保護層の形成に用いる樹脂組成物は、液体状でもフィルム状でもよい。また、保護層の形成に用いる樹脂組成物は、ネガ型の感光性樹脂組成物でも、ポジ型の感光性樹脂組成物でもよい。
【0051】
<ポリイミド前駆体組成物>
(A)感光性樹脂
ポリイミド前駆体組成物に用いる感光性樹脂としては、ポリアミド、ポリアミド酸エステル等を挙げることができる。例えば、ポリアミド酸エステルとしては、下記一般式(11)で表される繰り返し単位を含むポリアミド酸エステルを用いることができる。
【0052】
【化15】
R
1及びR
2は、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1~30の飽和脂肪族基、芳香族基、炭素炭素不飽和二重結合を有する一価の有機基、又は、炭素炭素不飽和二重結合を有する一価のイオンである。X
1は、テトラカルボン酸二無水物に由来する4価の有機基であり、Y
1は、ジアミンに由来する2価の有機基であり、mは1以上の整数である。mは2以上が好ましく、5以上がより好ましい。
【0053】
上記一般式(11)の、R1及びR2の少なくとも一方が一価の陽イオンとして存在するとき、その陽イオンに対応するOは、負の電荷を帯びる(-O-として存在する)。また、X1とY1は、水酸基を含んでいてもよい。
【0054】
一般式(11)中のR
1及びR
2は、より好ましくは、下記一般式(12):
【化16】
(一般式(12)中、R
3、R
4及びR
5は、それぞれ独立に、水素原子又は炭素数1~5の有機基であり、そしてm
1は、1~20の整数である。)
で表される1価の有機基;又は、
下記一般式(13):
【化17】
(一般式(13)中、R
6、R
7及びR
8は、それぞれ独立に、水素原子又は炭素数1~5の有機基であり、そしてm
2は、1~20の整数である。)
で表される1価の有機基;
の末端にアンモニウムイオンを有する構造である。
【0055】
一般式(11)で表されるポリアミド酸エステルを複数混合してもよい。また、一般式(11)で表されるポリアミド酸エステル同士を共重合させたポリアミド酸エステルを用いてもよい。
【0056】
X
1は、ヤング率、及び耐薬品性の観点から、芳香族基を含む4価の有機基であることが好ましい。具体的には、X
1は、下記一般式(2)~一般式(4):
【化18】
【0057】
【0058】
【化20】
(一般式(4)中、R
9は酸素原子、硫黄原子、2価の有機基のいずれかである。)
で表される少なくとも1つの構造を含む4価の有機基であることが好ましい。
【0059】
一般式(4)中のR9は、例えば、炭素数1~40の2価の有機基、又はハロゲン原子である。R9は水酸基を含んでもよい。
【0060】
現像性の観点から、X
1は下記一般式(5):
【化21】
で表される構造を含む4価の有機基が特に好ましい。
【0061】
Y
1は、ヤング率及び耐薬品性の観点から、芳香族基を含む2価の有機基であることが好ましい。具体的には、Y
1は、下記一般式(6)~一般式(8):
【化22】
(R
10、R
11、R
12及びR
13は、それぞれ独立に、水素原子、炭素数が1~5の1価の脂肪族基であり、同一であっても異なっていてもよい。)
【化23】
(R
14~R
21は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、炭素数が1~5の1価の有機基であり、互いに異なっていても、同一であってもよい。)
【化24】
(R
22は2価の基又は酸素原子であり、R
23~R
30は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、炭素数が1~5の1価の脂肪族基であり、同一であっても異なっていてもよい。)
で表される少なくとも1つの構造を含む2価の有機基であることが好ましい。
【0062】
一般式(8)中のR22は、例えば、炭素数1~40の2価の有機基、又はハロゲン原子である。
【0063】
現像性の観点から、Y
1は、下記一般式(9):
【化25】
で表される構造を含む2価の有機基が特に好ましい。
【0064】
上記ポリアミド酸エステルにおいて、その繰り返し単位中のX1は、原料として用いるテトラカルボン酸二無水物に由来し、また、Y1は、原料として用いるジアミンに由来する。
【0065】
原料として用いるテトラカルボン酸二無水物としては、例えば、無水ピロメリット酸(PMDA)、ジフェニルエーテル-3,3’,4,4’-テトラカルボン酸二無水物(4,4’-オキシジフタル酸二無水物:ODPA)、ベンゾフェノン-3,3’,4,4’-テトラカルボン酸二無水物、ビフェニル-3,3’,4,4’-テトラカルボン酸二無水物、ジフェニルスルホン-3,3’,4,4’-テトラカルボン酸二無水物、ジフェニルメタン-3,3’,4,4’-テトラカルボン酸二無水物、2,2-ビス(3,4-無水フタル酸)プロパン、2,2-ビス(3,4-無水フタル酸)-1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロプロパン等を挙げることができる。これらは単独でも、2種以上を混合して用いてもよい。
【0066】
原料として用いるジアミンとしては、例えば、p-フェニレンジアミン(PPD)、m-フェニレンジアミン、4,4’-ジアミノジフェニルエーテル(DADPE)、3,4’-ジアミノジフェニルエーテル、3,3’-ジアミノジフェニルエーテル、4,4’-ジアミノ-2,2’-ジメチルビフェニル(m-TB)4,4’-ジアミノジフェニルスルフィド、3,4’-ジアミノジフェニルスルフィド、3,3’-ジアミノジフェニルスルフィド、4,4’-ジアミノジフェニルスルホン、3,4’-ジアミノジフェニルスルホン、3,3’-ジアミノジフェニルスルホン、4,4’-ジアミノビフェニル、3,4’-ジアミノビフェニル、3,3’-ジアミノビフェニル、4,4’-ジアミノベンゾフェノン、3,4’-ジアミノベンゾフェノン、3,3’-ジアミノベンゾフェノン、4,4’-ジアミノジフェニルメタン、3,4’-ジアミノジフェニルメタン、3,3’-ジアミノジフェニルメタン、1,4-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3-ビス(3-アミノフェノキシ)ベンゼン、ビス〔4-(4-アミノフェノキシ)フェニル〕スルホン、ビス〔4-(3-アミノフェノキシ)フェニル〕スルホン、4,4-ビス(4-アミノフェノキシ)ビフェニル、4,4-ビス(3-アミノフェノキシ)ビフェニル、ビス〔4-(4-アミノフェノキシ)フェニル〕エーテル、ビス〔4-(3-アミノフェノキシ)フェニル〕エーテル、1,4-ビス(4-アミノフェニル)ベンゼン、1,3-ビス(4-アミノフェニル)ベンゼン、9,10-ビス(4-アミノフェニル)アントラセン、2,2-ビス(4-アミノフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2-ビス〔4-(4-アミノフェノキシ)フェニル)プロパン、2,2-ビス〔4-(4-アミノフェノキシ)フェニル)ヘキサフルオロプロパン、1,4-ビス(3-アミノプロピルジメチルシリル)ベンゼン、オルト-トリジンスルホン、9,9-ビス(4-アミノフェニル)フルオレン等が挙げられる。また、これらのベンゼン環上の水素原子の一部が置換されたものであってもよい。また、これらは単独でも、2種以上を混合して用いてもよい。
【0067】
ポリアミド酸エステル(A)の合成においては、通常、後述するテトラカルボン酸二無水物のエステル化反応を行って得られたテトラカルボン酸ジエステルを、そのままジアミンとの縮合反応に付す方法が好ましく使用できる。
【0068】
上記のテトラカルボン酸二無水物のエステル化反応に用いるアルコール類は、オレフィン性二重結合を有するアルコールである。具体的には、2-ヒドロキシエチルメタクリレート、2-メタクリロイルオキシエチルアルコール、グリセリンジアクリレート、グリセリンジメタクリレート等が挙げられる。これらのアルコール類は、単独又は2種以上を混合して用いることができる。
【0069】
本実施形態に用いるポリアミド酸エステル(A)の具体的な合成方法に関しては、従来公知の方法を採用することができる。合成方法については、例えば、国際公開第00/43439号パンフレットに示されている方法を挙げることができる。すなわち、テトラカルボン酸ジエステルを、一度テトラカルボン酸ジエステルジ酸塩化物に変換し、該テトラカルボン酸ジエステルジ酸塩化物とジアミンを塩基性化合物の存在下で縮合反応に付すことで、ポリアミド酸エステル(A)を製造する方法を挙げることができる。また、テトラカルボン酸ジエステルとジアミンとを有機脱水剤の存在下で縮合反応に付す方法によってポリアミド酸エステル(A)を製造する方法を挙げることができる。
【0070】
有機脱水剤の例としては、ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)、ジエチルカルボジイミド、ジイソプロピルカルボジイミド、エチルシクロヘキシルカルボジイミド、ジフェニルカルボジイミド、1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド、1-シクロヘキシル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩等が挙げられる。
【0071】
本実施形態に用いるポリアミド酸エステル(A)の重量平均分子量は、6000~150000であることが好ましく、7000~50000であることがより好ましく、7000~20000であることがより好ましい。
【0072】
(B1)光開始剤
保護層、及び絶縁層の形成に用いる樹脂組成物がネガ型の感光性樹脂の場合、光開始剤が用いられる。光開始剤としては、例えば、ベンゾフェノン、o-ベンゾイル安息香酸メチル、4-ベンゾイル-4’-メチルジフェニルケトン、ジベンジルケトン、及びフルオレノン等のベンゾフェノン誘導体、2,2’-ジエトキシアセトフェノン、及び2-ヒドロキシ-2-メチルプロピオフェノン等のアセトフェノン誘導体、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、チオキサントン、2-メチルチオキサントン、2-イソプロピルチオキサントン、及びジエチルチオキサントン等のチオキサントン誘導体、ベンジル、ベンジルジメチルケタール及び、ベンジル-β-メトキシエチルアセタール等のベンジル誘導体、ベンゾインメチルエーテル等のベンゾイン誘導体、2,6-ジ(4’-ジアジドベンザル)-4-メチルシクロヘキサノン、及び2,6’-ジ(4’-ジアジドベンザル)シクロヘキサノン等のアジド類、1-フェニル-1,2-ブタンジオン-2-(O-メトキシカルボニル)オキシム、1-フェニルプロパンジオン-2-(O-メトキシカルボニル)オキシム、1-フェニルプロパンジオン-2-(O-エトキシカルボニル)オキシム、1-フェニルプロパンジオン-2-(O-ベンゾイル)オキシム、1,3-ジフェニルプロパントリオン-2-(O-エトキシカルボニル)オキシム、1-フェニル-3-エトキシプロパントリオン-2-(O-ベンゾイル)オキシム等のオキシム類、N-フェニルグリシン等のN-アリールグリシン類、ベンゾイルパーオキシド等の過酸化物類、芳香族ビイミダゾール類、並びにチタノセン類等が用いられる。これらのうち、光感度の観点から、上記オキシム類が好ましい。
【0073】
これらの光開始剤の使用量は、ポリアミド酸エステル(A)100質量部に対し、1~40質量部が好ましく、2~20質量部がより好ましい。光開始剤をポリアミド酸エステル(A)100質量部に対し1質量部以上添加することで、光感度に優れ易い。また、40質量部以下添加することで厚膜硬化性に優れ易い。
【0074】
(B2)光酸発生剤
保護層、及び絶縁層の形成に用いる樹脂組成物がポジ型の感光性樹脂の場合、光酸発生剤が用いられる。光酸発生剤を含有することにより、紫外線露光部に酸が発生し、この場合、露光部のアルカリ水溶液に対する溶解性が増大する。これにより、ポジ型感光性樹脂組成物として用いられることができる。
【0075】
光酸発生剤としては、キノンジアジド化合物、スルホニウム塩、ホスホニウム塩、ジアゾニウム塩、ヨードニウム塩等が挙げられる。この中でも、優れた溶解抑止効果を発現し、これにより高感度のポジ型感光性樹脂組成物を得る観点から、キノンジアジド化合物が好ましく用いられる。また、光酸発生剤を2種以上含有してもよい。
【0076】
(C)添加剤
絶縁層の断面視の段差は、ポリマー構造によっても調整することができるし、添加剤の種類又は量でも調節することができる。例えば、ポリマー構造の揮発し易い部位、及び架橋部位等を調整することにより、硬化収縮率を調整し、そして所望の段差に調整することができる。
また、添加剤として、例えば硬化収縮率の高い化合物を選択することにより、段差を大きくすることができる傾向がある。また、硬化収縮率の低い化合物を選択することにより、段差を小さくすることができる傾向がある。段差を大きくする化合物としては、メタクリル基当量の小さな添加剤を挙げることができる。段差を小さくする化合物としては、エポキシ化合物及びオキセタン化合物を挙げることができる。添加剤の量については、目標とする断面視の段差に応じて適宜調整すればよい。
【0077】
(D)溶媒
各成分が溶解又は分散可能な溶媒が用いられる。例えば、N-メチル-2-ピロリドン、γ-ブチロラクトン、アセトン、メチルエチルケトン、ジメチルスルホキシド等が挙げられる。これらの溶媒は、塗布膜厚、粘度に応じて、(A)感光性樹脂100質量部に対し、30~1500質量部の範囲で用いることができる。
【0078】
(E)その他
ポリイミド前駆体組成物には架橋剤を含有させてもよい。架橋剤としては、ポリイミド前駆体組成物を露光、現像した後、加熱硬化する際に、(A)感光性樹脂を架橋し得る、又は架橋剤自身が架橋ネットワークを形成し得る架橋剤を用いることができる。架橋剤を用いることで、硬化膜(絶縁層)の耐熱性及び耐薬品性を更に強化することができる。
【0079】
その他、光感度を向上させるための増感剤、基材との接着性向上のための接着助剤等を含んでいてもよい。
【0080】
(現像)
ポリイミド前駆体組成物を露光した後、不要部分を現像液で洗い流す。使用する現像液は、溶剤で現像を行うポリイミド前駆体組成物の場合には、N,N-ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチル-2-ピロリドン、シクロペンタノン、γ-ブチロラクトン、酢酸エステル類等の良溶媒、これら良溶媒と低級アルコール、水、芳香族炭化水素等の貧溶媒との混合溶媒等が用いられる。現像後は、必要に応じて貧溶媒等でリンス洗浄を行う。
【0081】
アルカリ性水溶液で現像を行うポリイミド前駆体組成物の場合には、水酸化テトラメチルアンモニウムの水溶液、ジエタノールアミン、ジエチルアミノエタノール、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、トリエチルアミン、ジエチルアミン、メチルアミン、ジメチルアミン、酢酸ジメチルアミノエチル、ジメチルアミノエタノール、ジメチルアミノエチルメタクリレート、シクロヘキシルアミン、エチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン等のアルカリ性を示す化合物の水溶液が好ましい。
【0082】
(熱硬化)
現像後、露光後のポリイミド前駆体組成物を加熱することにより、ポリイミド前駆体を閉環する、すなわち、ポリイミドを形成する。このポリイミドが硬化レリーフパターン、すなわち、絶縁層に相当する。
【0083】
ポリイミド前駆体組成物の熱硬化のための加熱温度は、一般的に、加熱硬化温度が高いほど、ヤング率が大きくなる傾向にある。本実施形態の絶縁層のヤング率を所望の値にする観点から、当該加熱温度は、160℃以上が好ましく、180℃以上がより好ましく、200℃以上が特に好ましい。他部材への影響を抑える観点から、400℃以下が好ましい。
【0084】
<ポリイミド>
上記ポリイミド前駆体組成物から形成される硬化レリーフパターンの構造は、下記一般式(1):
【化26】
である。すなわち、保護層及び絶縁層の少なくとも一方は、一般式(1)の構造を含むポリイミドを含む。
【0085】
一般式(1)中のX1、Y1、mは、一般式(11)中のX1、Y1、mと同じく、X1は4価の有機基であり、Y1は2価の有機基であり、mは1以上の整数である。一般式(11)中の好ましいX1、Y1、mは、同じ理由により、一般式(1)のポリイミドにおいても好ましい。
【0086】
アルカリ可溶性ポリイミドの場合は、ポリイミドの末端を水酸基にしてもよい。
本実施形態にかかる保護層がポリイミドを含む場合、全反射測定法(Attenuated Total Reflection;ATR法)にてIRスペクトル測定を行った場合の、1380cm-1付近のピーク高さと、1500cm-1付近のピーク高さと、のピーク比(1380cm-1付近ピーク高さ/1500cm-1付近ピーク高さ)が1.2~2.5であることが好ましい。耐薬品性の観点から、1.3以上が好ましく、1.4以上がより好ましく、1.5以上が特に好ましい。現像性の観点から、2.4以下が好ましく、2.3以下がより好ましく、2.2以下が特に好ましい。
ここで言う「1380cm-1付近のピーク高さ」は、例えば、1330~1430cm-1の範囲内での最大ピーク高さであり、ここで言う「1500cm-1付近のピーク高さ」は、例えば、1450~1550cm-1の範囲内での最大ピーク高さである。
【0087】
本実施形態にかかる絶縁層がポリイミドを含む場合、全反射測定法(Attenuated Total Reflection;ATR法)にてIRスペクトル測定を行った場合の、1380cm-1付近のピーク高さと、1500cm-1付近のピーク高さと、のピーク比(1380cm-1付近ピーク高さ/1500cm-1付近ピーク高さ)が0.2~1.0であることが好ましい。耐薬品性の観点から、0.3以上が好ましく、0.4以上がより好ましく、0.5以上が特に好ましい。現像性の観点から、0.8以下が好ましく、0.7以下がより好ましく、0.6以下が特に好ましい。
ここで言う「1380cm-1付近のピーク高さ」は、例えば、1330~1430cm-1の範囲内での最大ピーク高さであり、ここで言う「1500cm-1付近のピーク高さ」は、例えば、1450~1550cm-1の範囲内での最大ピーク高さである。
【0088】
<ポリベンゾオキサゾール前駆体組成物>
(A)感光性樹脂
ポリベンゾオキサゾール前駆体組成物に用いる感光性樹脂としては、下記一般式(14):
【化27】
(一般式(14)中、Y
2とY
3は2価の有機基である。)
で表される繰り返し単位を含むポリ(o-ヒドロキシアミド)を用いることができる。
【0089】
絶縁層と封止材との密着性の観点から、Y2は、炭素数1~30の2価の有機基であることが好ましく、炭素数1~15の鎖状アルキレン基(但し、鎖状アルキレンの水素原子はハロゲン原子で置換されていてもよい)がより好ましく、炭素数1~8で且つ水素原子の一部又は全部がフッ素原子で置換された鎖状アルキレン基が特に好ましい。
【0090】
また、絶縁層と封止材との密着性の観点から、Y
3は、芳香族基を含む2価の有機基であることが好ましく、より好ましくは下記一般式(6)~一般式(8):
【化28】
(R
10、R
11、R
12及びR
13は、それぞれ独立に、水素原子、炭素数が1~5の1価の脂肪族基であり、同一であっても異なっていてもよい。)
【化29】
(R
14~R
21は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、炭素数が1~5の1価の有機基であり、互いに異なっていても、同一であってもよい。)
【化30】
(R
22は2価の基又は酸素原子であり、R
23~R
30は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、炭素数が1~5の1価の脂肪族基であり、同一であっても異なっていてもよい。)
で表される少なくとも1つの構造を含む2価の有機基であることが好ましい。
【0091】
一般式(8)中のR22は、例えば、炭素数1~40の2価の有機基、又はハロゲン原子である。
【0092】
絶縁層と封止材との密着性の観点から、Y
3は、下記一般式(9):
【化31】
で表される構造を含む2価の有機基が特に好ましい。
【0093】
絶縁層と封止材との密着性の観点から、Y3は、炭素数1~40の2価の有機基が好ましく、炭素数1~40の2価の鎖状脂肪族基がより好ましく、炭素数1~20の2価の鎖状脂肪族基が特に好ましい。
【0094】
ポリベンゾオキサゾール前駆体は、一般的にジカルボン酸誘導体とヒドロキシ基含有ジアミン類とから合成できる。具体的には、ジカルボン酸誘導体をジハライド誘導体に変換後、ジアミン類との反応を行うことにより合成できる。ジハライド誘導体としては、ジクロリド誘導体が好ましい。
【0095】
ジクロリド誘導体は、ジカルボン酸誘導体にハロゲン化剤を作用させて合成することができる。ハロゲン化剤としては、通常のカルボン酸の酸クロリド化反応に使用される、塩化チオニル、塩化ホスホリル、オキシ塩化リン、五塩化リン等が使用できる。
【0096】
ジクロリド誘導体を合成する方法としては、ジカルボン酸誘導体と上記ハロゲン化剤を溶媒中で反応させる方法、過剰のハロゲン化剤中で反応を行った後、過剰分を留去する方法等で合成できる。
【0097】
ジカルボン酸誘導体に使用するジカルボン酸としては、例えば、イソフタル酸、テレフタル酸、2,2-ビス(4-カルボキシフェニル)-1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロプロパン、4,4’-ジカルボキシビフェニル、4,4’-ジカルボキシジフェニルエーテル(4,4’-ジフェニルエーテルジカルボン酸)、4,4’-ジカルボキシテトラフェニルシラン、ビス(4-カルボキシフェニル)スルホン、2,2-ビス(p-カルボキシフェニル)プロパン、5-tert-ブチルイソフタル酸、5-ブロモイソフタル酸、5-フルオロイソフタル酸、5-クロロイソフタル酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸、マロン酸、ジメチルマロン酸、エチルマロン酸、イソプロピルマロン酸、ジ-n-ブチルマロン酸、スクシン酸、テトラフルオロスクシン酸、メチルスクシン酸、2,2-ジメチルスクシン酸、2,3-ジメチルスクシン酸、ジメチルメチルスクシン酸、グルタル酸、ヘキサフルオログルタル酸、2-メチルグルタル酸、3-メチルグルタル酸、2,2-ジメチルグルタル酸、3,3-ジメチルグルタル酸、3-エチル-3-メチルグルタル酸、アジピン酸、オクタフルオロアジピン酸、3-メチルアジピン酸、オクタフルオロアジピン酸、ピメリン酸、2,2,6,6-テトラメチルピメリン酸、スベリン酸、ドデカフルオロスベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ヘキサデカフルオロセバシン酸、1,9-ノナン二酸、ドデカン二酸、トリデカン二酸、テトラデカン二酸、ペンタデカン二酸、ヘキサデカン二酸、ヘプタデカン二酸、オクタデカン二酸、ノナデカン二酸、エイコサン二酸、ヘンエイコサン二酸、ドコサン二酸、トリコサン二酸、テトラコサン二酸、ペンタコサン二酸、ヘキサコサン二酸、ヘプタコサン二酸、オクタコサン二酸、ノナコサン二酸、トリアコンタン二酸、ヘントリアコンタン二酸、ドトリアコンタン二酸、ジグリコール酸、ジシクロペンタジエンカルボン酸等が挙げられる。これらを混合して使用してもよい。
【0098】
ヒドロキシ基含有ジアミンとしては、例えば、3,3’-ジアミノ-4,4’-ジヒドロキシビフェニル、4,4’-ジアミノ-3,3’-ジヒドロキシビフェニル、ビス(3-アミノ-4-ヒドロキシフェニル)プロパン、ビス(4-アミノ-3-ヒドロキシフェニル)プロパン、ビス(3-アミノ-4-ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(4-アミノ-3-ヒドロキシフェニル)スルホン、2,2-ビス(3-アミノ-4-ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(3-アミノ-4-ヒドロキシフェニル)-1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロプロパン、2,2-ビス(4-アミノ-3-ヒドロキシフェニル)-1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロプロパン等が挙げられる。これらを混合して使用してもよい。
【0099】
(B2)光酸発生剤
光酸発生剤は、光照射部のアルカリ水溶液可溶性を増大させる機能を有する。光酸発生剤としては、ジアゾナフトキノン化合物、アリールジアゾニウム塩、ジアリールヨードニウム塩、トリアリールスルホニウム塩等が挙げられる。このうち、ジアゾナフトキノン化合物は、感度が高く好ましい。
【0100】
(C)添加剤
好ましい添加剤の種類及び量は、ポリイミド前駆体組成物の項目で記載した内容と同じである。
【0101】
(D)溶媒
各成分を溶解又は分散可能な溶媒が用いられる。
【0102】
(E)その他
ポリベンゾオキサゾール前駆体組成物は、架橋剤、増感剤、接着助剤、熱酸発生剤等を含むことができる。
【0103】
(現像)
ポリベンゾオキサゾール前駆体組成物を露光した後、不要部分を現像液で洗い流す。使用する現像液としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、ケイ酸ナトリウム、アンモニア、エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、トリエタノールアミン、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド等のアルカリ水溶液が好ましいものとして挙げられる。
【0104】
上記では、ポジ型のポリベンゾオキサゾール前駆体組成物を中心に説明したが、ネガ型のポリベンゾオキサゾール前駆体組成物であってもよい。
【0105】
(熱硬化)
現像後、ポリベンゾオキサゾール前駆体組成物を加熱することにより、ポリベンゾオキサゾール前駆体を閉環する、すなわち、ポリベンゾオキサゾールを形成する。このポリベンゾオキサゾールが硬化レリーフパターン、すなわち、絶縁層6に相当する。
【0106】
ポリベンゾオキサゾール前駆体組成物の熱硬化のための加熱温度は、他部材への影響を抑える観点から、加熱温度は低い温度であることが好ましい。当該加熱温度は、250℃以下が好ましく、230℃以下がより好ましく、200℃以下がより好ましく、180℃以下が特に好ましい。
【0107】
<ポリベンゾオキサゾール>
上記ポリベンゾオキサゾール前駆体組成物から形成される硬化レリーフパターンの構造は、下記一般式(10):
【化32】
である。
【0108】
一般式(10)中のUは、一般式(14)中のY2と同じであり、一般式(10)中のVは、一般式(14)中のY3と同じである。一般式(14)中の好ましいY2、Y3は、同じ理由により、一般式(10)のポリベンゾオキサゾールにおいても好ましい。
【0109】
<フェノール性水酸基を有するポリマー>
(A)感光性樹脂
該ポリマーは、分子中にフェノール性水酸基を有する樹脂であり、アルカリに対して可溶である。その具体例としては、ポリ(ヒドロキシスチレン)等のフェノール性水酸基を有するモノマー単位を含むビニル重合体、フェノール樹脂、ポリ(ヒドロキシアミド)、ポリ(ヒドロキシフェニレン)エーテル、ポリナフトールが挙げられる。
【0110】
これらの中で、コストが安いこと、及び硬化時の体積収縮が小さいことから、フェノール樹脂が好ましく、ノボラック型フェノール樹脂が特に好ましい。
【0111】
フェノール樹脂は、フェノール又はその誘導体とアルデヒド類との重縮合生成物である。重縮合は、酸又は塩基等の触媒存在下で行われる。酸触媒を用いた場合に得られるフェノール樹脂を、特にノボラック型フェノール樹脂という。
【0112】
フェノール誘導体としては、例えば、フェノール、クレゾール、エチルフェノール、プロピルフェノール、ブチルフェノール、アミルフェノール、ベンジルフェノール、アダマンタンフェノール、ベンジルオキシフェノール、キシレノール、カテコール、レゾルシノール、エチルレゾルシノール、ヘキシルレゾルシノール、ハイドロキノン、ピロガロール、フロログルシノール、1,2,4-トリヒドロキシベンゼン、パラロゾール酸、ビフェノール、ビスフェノールA、ビスフェノールAF、ビスフェノールB、ビスフェノールF、ビスフェノールS、ジヒドロキシジフェニルメタン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,4-ビス(3-ヒドロキシフェノキシベンゼン)、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)プロパン、α,α’-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-1,4-ジイソプロピルベンゼン、9,9-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)フルオレン、2,2-ビス(3-シクロヘキシル-4-ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(2-ヒドロキシ-5-ビフェニルイル)プロパン、ジヒドロキシ安息香酸等が挙げられる。
【0113】
アルデヒド化合物としては、ホルムアルデヒド、パラホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、ピバルアルデヒド、ブチルアルデヒド、ペンタナール、ヘキサナール、トリオキサン、グリオキザール、シクロヘキシルアルデヒド、ジフェニルアセトアルデヒド、エチルブチルアルデヒド、ベンズアルデヒド、グリオキシル酸、5-ノルボルネン-2-カルボキシアルデヒド、マロンジアルデヒド、スクシンジアルデヒド、グルタルアルデヒド、サリチルアルデヒド、ナフトアルデヒド、テレフタルアルデヒド等が挙げられる。
【0114】
(A)成分は、(a)不飽和炭化水素基を有しないフェノール樹脂と、(b)不飽和炭化水素基を有する変性フェノール樹脂とを、含むものであることが好ましい。前記(b)成分は、フェノール性水酸基と多塩基酸無水物との反応によって更に変性されているものがより好ましい。
【0115】
また、(b)成分としては、機械特性(破断伸び、弾性率及び残留応力)をより向上できる観点から、炭素数4~100の不飽和炭化水素基を有する化合物で変性されたフェノール樹脂を用いることが好ましい。
【0116】
(b)不飽和炭化水素基を有する変性フェノール樹脂は、一般に、フェノール又はその誘導体と不飽和炭化水素基を有する化合物(好ましくは炭素数が4~100のもの)(以下、場合により単に「不飽和炭化水素基含有化合物」という。)との反応生成物(以下「不飽和炭化水素基変性フェノール誘導体」という。)と、アルデヒド類との縮重合生成物、又は、フェノール樹脂と不飽和炭化水素基含有化合物との反応生成物である。
【0117】
ここでいうフェノール誘導体は、(A)成分としてのフェノール樹脂の原料として上述したフェノール誘導体と同様のものを用いることができる。
【0118】
不飽和炭化水素基含有化合物の不飽和炭化水素基は、レジストパターンの密着性及び耐熱衝撃性の観点から、2以上の不飽和基を含むことが好ましい。また、樹脂組成物としたときの相溶性及び硬化膜の可とう性の観点から、不飽和炭化水素基含有化合物は炭素数8~80のものが好ましく、炭素数10~60のものがより好ましい。
【0119】
不飽和炭化水素基含有化合物としては、例えば、炭素数4~100の不飽和炭化水素、カルボキシル基を有するポリブタジエン、エポキシ化ポリブタジエン、リノリルアルコール、オレイルアルコール、不飽和脂肪酸及び不飽和脂肪酸エステルである。好適な不飽和脂肪酸としては、クロトン酸、ミリストレイン酸、パルミトレイン酸、オレイン酸、エライジン酸、バクセン酸、ガドレイン酸、エルカ酸、ネルボン酸、リノール酸、α-リノレン酸、エレオステアリン酸、ステアリドン酸、アラキドン酸、エイコサペンタエン酸、イワシ酸及びドコサヘキサエン酸が挙げられる。これらの中でも特に、炭素数8~30の不飽和脂肪酸と、炭素数1~10の1価から3価のアルコールとのエステルがより好ましく、炭素数8~30の不飽和脂肪酸と3価のアルコールであるグリセリンとのエステルが特に好ましい。
【0120】
炭素数8~30の不飽和脂肪酸とグリセリンとのエステルは、植物油として商業的に入手可能である。植物油は、ヨウ素価が100以下の不乾性油、100を超えて130未満の半乾性油又は130以上の乾性油がある。不乾性油として、例えば、オリーブ油、あさがお種子油、カシュウ実油、さざんか油、つばき油、ひまし油及び落花生油が挙げられる。半乾性油として、例えば、コーン油、綿実油及びごま油が挙げられる。乾性油としては、例えば、桐油、亜麻仁油、大豆油、胡桃油、サフラワー油、ひまわり油、荏の油及び芥子油が挙げられる。また、これらの植物油を加工して得られる加工植物油を用いてもよい。
【0121】
上記植物油の中で、フェノール若しくはその誘導体又はフェノール樹脂と植物油との反応において、過度の反応の進行に伴うゲル化を防ぎ、そして歩留まりを向上させる観点から、不乾性油を用いることが好ましい。他方、レジストパターンの密着性、機械特性及び耐熱衝撃性が向上する観点から、乾性油を用いることが好ましい。乾性油の中でも、本発明による効果をより有効かつ確実に発揮できることから、桐油、亜麻仁油、大豆油、胡桃油及びサフラワー油が好ましく、桐油及び亜麻仁油がより好ましい。
【0122】
これらの不飽和炭化水素基含有化合物は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いられる。
【0123】
(b)成分を調製するにあたり、まず、上記フェノール誘導体と上記不飽和炭化水素基含有化合物とを反応させることで、不飽和炭化水素基変性フェノール誘導体を作製する。前記反応は、50~130℃で行うことが好ましい。フェノール誘導体と不飽和炭化水素基含有化合物との反応割合は、硬化膜(レジストパターン)の可とう性を向上させる観点から、フェノール誘導体100質量部に対し、不飽和炭化水素基含有化合物1~100質量部であることが好ましく、5~50質量部であることがより好ましい。不飽和炭化水素基含有化合物が1質量部未満では、硬化膜の可とう性が低下する傾向があり、100質量部を超えると、硬化膜の耐熱性が低下する傾向がある。上記反応においては、必要に応じて、p-トルエンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸等を触媒として用いてもよい。
【0124】
上記反応により生成する不飽和炭化水素基変性フェノール誘導体と、アルデヒド類とを重縮合させることにより、不飽和炭化水素基含有化合物によって変性されたフェノール樹脂が生成する。アルデヒド類は、フェノール樹脂を得るために用いられるアルデヒド類として上述したものと同様のものを用いることができる。
【0125】
上記アルデヒド類と上記不飽和炭化水素基変性フェノール誘導体との反応は、重縮合反応であり、また、従来公知のフェノール樹脂の合成条件を用いることができる。反応は、酸又は塩基等の触媒の存在下で行うことが好ましく、酸触媒を用いることがより好ましい。酸触媒としては、例えば、塩酸、硫酸、ぎ酸、酢酸、p-トルエンスルホン酸及びシュウ酸が挙げられる。これらの酸触媒は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0126】
上記反応は、通常反応温度100~120℃で行うことが好ましい。また、反応時間は使用する触媒の種類、及び/又は量により異なり、通常1~50時間である。反応終了後、反応生成物を200℃以下の温度で減圧脱水することで、不飽和炭化水素基含有化合物によって変性されたフェノール樹脂が得られる。なお、反応には、トルエン、キシレン、メタノール等の溶媒を用いることができる。
【0127】
不飽和炭化水素基含有化合物によって変性されたフェノール樹脂は、上述の不飽和炭化水素基変性フェノール誘導体を、m-キシレンのようなフェノール以外の化合物とともにアルデヒド類と重縮合することにより得ることもできる。この場合、フェノール誘導体と不飽和炭化水素基含有化合物とを反応させて得られる化合物に対するフェノール以外の化合物のモル比は、0.5未満であると好ましい。
【0128】
(b)成分は、前記(a)成分のフェノール樹脂と不飽和炭化水素基含有化合物とを反応させて得ることもできる。
【0129】
フェノール樹脂と反応させる不飽和炭化水素基含有化合物は、上述した不飽和炭化水素基含有化合物と同様のものを使用することができる。
【0130】
フェノール樹脂と不飽和炭化水素基含有化合物との反応は、通常、50~130℃で行うことが好ましい。また、フェノール樹脂と不飽和炭化水素基含有化合物との反応割合は、硬化膜(レジストパターン)の可とう性を向上させる観点から、フェノール樹脂100質量部に対し、不飽和炭化水素基含有化合物1~100質量部であることが好ましく、2~70質量部であることがより好ましく、5~50質量部であることが更に好ましい。不飽和炭化水素基含有化合物が1質量部未満では、硬化膜の可とう性が低下する傾向にあり、100質量部を超えると、反応中にゲル化する可能性が高くなる傾向、及び、硬化膜の耐熱性が低下する傾向がある。このとき、必要に応じて、p-トルエンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸等を触媒として用いてもよい。なお、反応にはトルエン、キシレン、メタノール、テトラヒドロフラン等の溶媒を用いることができる。
【0131】
以上のような方法により生成する不飽和炭化水素基含有化合物によって変性されたフェノール樹脂中に残ったフェノール性水酸基に、更に多塩基酸無水物を反応させる。これにより、酸変性したフェノール樹脂を(b)成分として用いることもできる。多塩基酸無水物で酸変性することにより、カルボキシ基が導入され、この場合、(b)成分のアルカリ水溶液(現像液)に対する溶解性がより一層向上する。
【0132】
多塩基酸無水物は、複数のカルボキシ基を有する多塩基酸のカルボキシ基が脱水縮合して形成された酸無水物基を有していればよい。多塩基酸無水物としては、例えば、無水フタル酸、無水コハク酸、オクテニル無水コハク酸、ペンタドデセニル無水コハク酸、無水マレイン酸、無水イタコン酸、テトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、無水ナジック酸、3,6-エンドメチレンテトラヒドロ無水フタル酸、メチルエンドメチレンテトラヒドロ無水フタル酸、テトラブロモ無水フタル酸及び無水トリメリット酸等の二塩基酸無水物、ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、ジフェニルエーテルテトラカルボン酸二無水物、ブタンテトラカルボン酸二無水物、シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物、無水ピロメリット酸及びベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物等の芳香族四塩基酸二無水物が挙げられる。これらは1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。これらの中でも、多塩基酸無水物は、二塩基酸無水物であることが好ましく、テトラヒドロ無水フタル酸、無水コハク酸及びヘキサヒドロ無水フタル酸からなる群より選ばれる1種以上であることがより好ましい。この場合、更に良好な形状を有するレジストパターンを形成できるという利点がある。
【0133】
また、(A)フェノール性水酸基を有するアルカリ可溶性樹脂は、更に多塩基酸無水物を反応させて酸変性したフェノール樹脂を含有することができる。(A)成分が多塩基酸無水物で酸変性したフェノール樹脂を含有することにより、(A)成分のアルカリ水溶液(現像液)に対する溶解性がより一層向上する。
【0134】
前記多塩基酸無水物としては、例えば、無水フタル酸、無水コハク酸、オクテニル無水コハク酸、ペンタドデセニル無水コハク酸、無水マレイン酸、無水イタコン酸、テトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、無水ナジック酸、3,6-エンドメチレンテトラヒドロ無水フタル酸、メチルエンドメチレンテトラヒドロ無水フタル酸、テトラブロモ無水フタル酸、無水トリメリット酸等の二塩基酸無水物、ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、ジフェニルエーテルテトラカルボン酸二無水物、ブタンテトラカルボン酸二無水物、シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物、無水ピロメリット酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物等の脂肪族、芳香族四塩基酸二無水物等が挙げられる。これらは1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。これらの中でも、多塩基酸無水物は、二塩基酸無水物であることが好ましく、例えば、テトラヒドロ無水フタル酸、無水コハク酸及びヘキサヒドロ無水フタル酸からなる群より選ばれる1種以上であることがより好ましい。
【0135】
(B2)光酸発生剤
光酸発生剤としては、ジアゾナフトキノン化合物、アリールジアゾニウム塩、ジアリールヨードニウム塩、トリアリールスルホニウム塩等が挙げられる。このうち、ジアゾナフトキノン化合物は、感度が高く好ましい。
【0136】
(C)添加剤
好ましい添加剤の種類及び量は、ポリイミド前駆体組成物の項目で記載した内容と同じである。
【0137】
(D)溶媒
各成分を溶解又は分散可能な溶媒が用いられる。
【0138】
(E)その他
熱架橋剤、増感剤、接着助剤、染料、界面活性剤、溶解促進剤、架橋促進剤等を含むことができる。このうち、熱架橋剤を含有することにより、パターン形成後の感光性樹脂膜を加熱して硬化する際に、熱架橋剤成分が(A)成分と反応して橋架け構造が形成される。これにより、低温での硬化が可能となり、膜の脆さや膜の溶融を防ぐことができる。熱架橋剤成分として、具体的には、フェノール性水酸基を有する化合物、ヒドロキシメチルアミノ基を有する化合物、エポキシ基を有する化合物を好ましいものとして用いることができる。
【0139】
(現像)
フェノール性水酸基を有するポリマーを露光した後、不要部分を現像液で洗い流す。使用する現像液としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、ケイ酸ナトリウム、アンモニア、エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、トリエタノールアミン、水酸化テトラメチルアンモニウム(TMAH)等のアルカリ水溶液が好適に用いられる。
【0140】
(熱硬化)
現像後、フェノール性水酸基を有するポリマーを加熱することにより、フェノール性水酸基を有するポリマー同士を熱架橋する。この架橋後のポリマーが硬化レリーフパターン、すなわち、絶縁層6に相当する。
【0141】
フェノール性水酸基を有するポリマーの熱硬化のための加熱温度は、他部材への影響を抑える観点から、加熱温度は低い温度であることが好ましい。当該加熱温度は、250℃以下が好ましく、230℃以下がより好ましく、200℃以下がより好ましく、180℃以下が特に好ましい。
【0142】
<半導体装置の製造方法)
本実施形態の半導体装置の製造方法は、
半導体チップを用意する第1工程と、
用意した半導体チップを、該半導体チップの少なくとも一部が露出するように封止構造で覆う第2工程と、
平面視で半導体チップよりも面積が大きく、かつ、単層構造又は複数層構造を有する絶縁層を含む再配線層を、半導体チップの露出する面側に形成する第3工程と、を含み、
第3工程では、再配線層の断面視において、絶縁層に含まれる層構造の段差が0.1μm~1.8μmである該絶縁層を作製する。
【0143】
ここで、第2工程は、
半導体チップに保護層を形成する工程(保護層形成工程)と、
保護層を形成した半導体チップを、該保護層の少なくとも一部が露出するように封止構造で覆う工程(封止構造形成工程)と、を含むことが好ましい。
また、第3工程は、再配線層を、保護層側に形成する工程(再配線層形成工程)を含むことが好ましい。
【0144】
本実施形態における半導体装置の製造方法について
図4を用いて説明する。
図4は、本実施形態の半導体装置の製造工程の一例である。
図4Aでは、前工程済みウェハ10を用意する。その後、感光性樹脂組成物(保護層形成用の感光性組成物)を塗布し、その後、露光現像してレリーフパターンを形成する(保護層形成工程)。そして、
図4Bにて、上記ウェハをダイシングして複数の半導体チップ2を形成する。このようにして準備された半導体チップ2を、
図4Cに示すように、支持体11上に所定間隔にて貼り付ける。
【0145】
続いて、半導体チップ2上から支持体11上にかけてモールド樹脂12を塗布し、そして、
図4Dに示すようにモールド封止する(封止構造形成工程)。続いて、支持体11を剥離し、そして、モールド樹脂12を反転させる(
図4E参照)。
図4Eに示すように、半導体チップ2とモールド樹脂12とは、略同一平面で現れる。続いて、
図4Fに示す工程では、感光性樹脂組成物13を、半導体チップ2上及びモールド樹脂12上に塗布する。そして、塗布された感光性樹脂組成物13を露光現像して、レリーフパターンを形成する(レリーフパターン形成工程)。なお、感光性樹脂組成物13は、ポジ型でもネガ型でもどちらでもよい。更に、レリーフパターンを加熱して硬化レリーフパターンを形成する(絶縁層形成工程)。更に、硬化レリーフパターンを形成しない箇所に配線を形成する(配線形成工程)。
【0146】
なお、本実施形態では、上記のレリーフパターン形成工程と絶縁層形成工程と配線形成工程とを合わせて、半導体チップ2に接続する再配線層を形成する再配線層形成工程と称する。
【0147】
再配線層中の絶縁層は多層であってもよい。従って、再配線層形成工程は複数回のレリーフパターン形成工程と、複数回の絶縁層形成工程と、複数回の配線形成工程と、を含んでいてもよい。
【0148】
そして、
図4Gでは、各半導体チップ2に対応する複数の外部接続端子7を形成し(バンプ形成)、その後、各半導体チップ2間をダイシングする。これにより、
図4Hに示すように、半導体装置(半導体IC)1を得ることができる。本実施形態では、
図4に示す製造方法により、ファンナウト型の半導体装置1を複数得ることができる。
【0149】
本実施形態では、上記した絶縁層形成工程では、絶縁層を、ポリイミド、ポリベンゾオキサゾール、フェノール性水酸基を有するポリマーの少なくとも1つの化合物を形成可能な感光性樹脂組成物で形成することが好ましい。
[他の実施形態]
以上、本実施形態について説明したが、本発明の態様は上記に限定されない。
【0150】
例えば、封止構造は、半導体チップの側面を囲む封止用部材と、半導体チップの上面(絶縁層が配される面とは反対側の面)に重なるテープと、を含んで構成されてよい。封止用部材は、絶縁層と接することができ、また、エポキシ樹脂を含むことができる。
【0151】
また、
図1には、2つのチップを並列に含む半導体チップ2が図示されているが、半導体チップは、3つ以上のチップを並列に含むこともできる。更に、保護層8は省略可能である。この場合、半導体チップと封止構造とが略同一面を形成し、かかる面上に再配線層が配される。
【実施例0152】
以下、本発明の効果を明確にするために行った実施例について説明する。実施例においては、以下の材料及び測定方法を用いた。
【0153】
以下、本発明の効果を明確にするために行った実施例について説明する。
【0154】
(ポリマーA-1:ポリイミド前駆体の合成)
テトラカルボン酸二無水物として4,4’-オキシジフタル酸二無水物(ODPA)を2リットル容量のセパラブルフラスコに入れた。更に、2-ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)とγ-ブチロラクトンを入れて室温下で攪拌し、攪拌しながらピリジンを加えて反応混合物を得た。反応による発熱の終了後に室温まで放冷し、16時間放置した。
【0155】
次に、氷冷下において、ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)をγ-ブチロラクトンに溶解した溶液を攪拌しながら40分かけて反応混合物に加えた。続いてジアミンとして4,4’-ジアミノジフェニルエーテル(DADPE)をγ-ブチロラクトンに懸濁したものを攪拌しながら60分かけて加えた。更に、室温で2時間攪拌した後、エチルアルコールを加えて1時間攪拌し、次に、γ-ブチロラクトンを加えた。反応混合物に生じた沈殿物をろ過により取り除き、反応液を得た。
【0156】
得られた反応液を、エチルアルコールに加えて粗ポリマーからなる沈殿物を生成した。生成した粗ポリマーを濾別し、テトラヒドロフランに溶解して粗ポリマー溶液を得た。得られた粗ポリマー溶液を水に滴下してポリマーを沈殿させ、得られた沈殿物を濾別した後、真空乾燥して粉末状のポリマー(ポリイミド前駆体(ポリマーA-1))を得た。使用した化合物の質量については、下表の通りである。ポリマーA-1の重量平均分子量(Mw)を測定したところ、22,000であった。
【0157】
(ポリマーA-2、及びポリマーA-3:ポリイミド前駆体の合成)
テトラカルボン酸二無水物とジアミンを下記表のように変更した以外は前述のポリマーA-1に記載の方法と同様にして反応を行い、ポリイミド前駆体(ポリマーA-2)、及び(ポリマーA-3)をそれぞれ得た。ポリマーA-2及びポリマーA-3の重量平均分子量(Mw)を測定したところ、ポリマーA-2が21,000、ポリマーA-3が23,000であった。
【0158】
(ポリマーA-4:ポリイミドの合成)
2,2’-ビス(トリフルオロメチル)-4,4’-ジアミノビフェニル(TFMB)64.1gを1リットル容量のセパラブルフラスコに入れ、窒素雰囲気下でγ-ブチロラクトン400mlを加えて室温下で攪拌しながら4,4’-(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸無水物(6FDA)97.7gを加えて、室温で6時間撹拌することにより、ポリアミック酸溶液を得た。次いで、ピリジン15g及び無水酢酸80gを加え、トルエン40gを加えた。その後、185℃で4時間撹拌し、水が理論量除かれたことを確認し、トルエンを除去した後に室温まで冷却し、ポリイミド(ポリマーA-4)を含む溶液を得た。得られた溶液を、ポリマーA-1の製造例と同様の方法で後処理を行うことにより、ポリマーA-4を得た。このポリマーA-4の重量平均分子量(Mw)を測定したところ、22,000であった。
【0159】
(ポリマーB-1:ポリベンゾオキサゾール前駆体の合成)
攪拌機、温度計を備えた0.5リットルのフラスコ中に、ジカルボン酸として4,4’-ジフェニルエーテルジカルボン酸15.48g、N-メチルピロリドンを仕込んだ。フラスコを、5℃に冷却した。その後、塩化チオニルを滴下し、30分間反応させて、ジカルボン酸クロリドの溶液を得た。次いで、攪拌機、温度計を備えた0.5リットルのフラスコ中に、N-メチルピロリドンを仕込んだ。ビスアミノフェノールとして2,2-ビス(3-アミノ4-ヒドロキシフェニル)プロパン12.9gと、m-アミノフェノール2.18gを攪拌溶解した後、ピリジンを添加した。そして、温度を0~5℃に保ちながら、ジカルボン酸クロリドの溶液を30分間で滴下した後、30分間攪拌を続けた。溶液を3リットルの水に投入し、析出物を回収、純水で3回洗浄した後、減圧乾燥してポリマー(ポリベンゾオキサゾール前駆体(ポリマーB-1))を得た。ポリマーB-1で使用した化合物の質量については下表の通りである。
【0160】
(ポリマーB-2の合成)
ジカルボン酸とビスアミノフェノールを下表のように変更した以外は前述のポリマーB-1に記載の方法と同様にして反応を行い、ポリベンゾオキサゾール前駆体(ポリマーB-2)を得た。
【0161】
(ポリマーC-1:フェノール樹脂の合成)
下記に示すC1樹脂を85gと、下記に示すC2樹脂を15g含むフェノール樹脂をポリマーC-1として用意した。
C1:クレゾールノボラック樹脂(クレゾール/ホルムアルデヒドノボラック樹脂、m-クレゾール/p-クレゾール(モル比)=60/40、ポリスチレン換算重量平均分子量=12,000、旭有機材工業社製、商品名「EP4020G」)
【0162】
C2樹脂:C2樹脂は以下のようにして合成した。
<C2:炭素数4~100の不飽和炭化水素基を有する化合物で変性されたフェノール樹脂の合成>
フェノール100質量部、亜麻仁油43質量部及びトリフロオロメタンスルホン酸0.1質量部を混合し、120℃で2時間撹拌し、植物油変性フェノール誘導体(a)を得た。次いで、植物油変性フェノール誘導体(a)130g、パラホルムアルデヒド16.3g及びシュウ酸1.0gを混合し、90℃で3時間撹拌した。次いで、120℃に昇温して減圧下で3時間撹拌した。その後、反応液に無水コハク酸29g及びトリエチルアミン0.3gを加え、大気圧下、100℃で1時間撹拌した。反応液を室温まで冷却し、反応生成物である炭素数4~100の不飽和炭化水素基を有する化合物で変性されたフェノール樹脂(C2樹脂)を得た(酸価120mgKOH/g)。
【0163】
(ポリマーC-2の合成)
下記C1樹脂100gをポリマーC-2として用意した。
【0164】
【0165】
[配合例1~11]及び[比較配合例1~3]
下表の通りに配合し、感光性樹脂組成物の溶液を得た。なお、表1における各成分の配合量の単位は質量部である。
表中に記載の段差、耐薬品性試験結果、密着性については、下記の方法にて測定を行った。
【0166】
作製した感光性樹脂組成物について、下記のとおり、再配線層の絶縁層の断面視の(1)段差を測定した。また、作製した感光性樹脂組成物について、再配線層の絶縁層の、(2)耐薬品性、(3)密着性について試験を行った。各試験の結果は、下表に示されている。
【0167】
[実施例1]
(1)段差
(1-1)半導体装置の作製 半導体チップとしての6インチシリコンウェハ(フジミ電子工業株式会社製、厚み625±25μm)の上面及び側面を、モールド樹脂としてのエポキシ樹脂によって覆い、これにより、封止材を形成した。
【0168】
ウェハの下面(ウェハの封止材により覆われていない面)上に、スパッタ装置(L-440S-FHL型、キヤノンアネルバ社製)を用いて200nm厚のTi、400nm厚のCuをこの順にスパッタした。続いて、このウェハ上に、配合例1の樹脂組成物をコーターデベロッパー(D-Spin60A型、SOKUDO社製)を用いて回転塗布し、110℃で180秒間ホットプレートにてプリベークを行い、最終膜厚が15ミクロンとなるように塗膜を形成した。塗膜形成後速やかに(ここでは、塗膜を形成してから5分未満のタイミングで)、この塗膜に、テストパターン付マスクを用いて、プリズマGHI(ウルトラテック社製)により400mJ/cm2のエネルギーを照射した。次いで、この塗膜を、現像液としてシクロペンタノンを用いて、未露光部が完全に溶解消失するまでの時間に1.4を乗じた時間、コーターデベロッパー(D-Spin60A型、SOKUDO社製)でスプレー現像し、プロピレングリコールメチルエーテルアセテートで10秒間回転スプレーリンスすることにより、Cu上のレリーフパターンを得た(レリーフパターン形成工程)。
【0169】
Cu上に該レリーフパターンを形成したウェハを、昇温プログラム式キュア炉(VF-2000型、光洋リンドバーグ社製)を用いて、窒素雰囲気下、230℃、2時間加熱処理することにより、Cu上に約15μm厚の樹脂から成る硬化レリーフパターンを得た(絶縁層形成工程;一層目の絶縁層)。得られたレリーフパターン上に前述のスパッタ装置にて200nm厚のTi、400nm厚のCuをこの順にスパッタした(配線形成工程;配線)。
【0170】
スパッタ後のレリーフパターンに配合例1で得られた感光性樹脂組成物を、同様にコーターデベロッパー(D-Spin60A型、SOKUDO社製)を用いて回転塗布し、そして、110℃で180秒間ホットプレートにてプリベークを行うことで、塗膜を形成した。得られた塗膜を、昇温プログラム式キュア炉(VF-2000型、光洋リンドバーグ社製)を用いて、窒素雰囲気下、下表に記載の温度において2時間加熱処理することにより、配合例1の硬化物のレリーフパターン上に、約5μm厚の樹脂から成る硬化膜を得た(二層目の絶縁層)。これにより、一層目の絶縁層、配線、及び二層目の絶縁層を含む、再配線層を形成した。
【0171】
そして、再配線層の封止材とは反対側に、各半導体チップに対応する複数の外部接続端子を形成し(バンプ形成)、各半導体チップ間をダイシングすることで、実施例1の半導体装置を作製した。この半導体装置は、ファンアウト型のウェハレベルチップサイズパッケージ型の半導体装置である。
【0172】
(1-2)段差の測定
実施例1の半導体装置における、上記再配線層をFIB装置(日本電子社製、JIB-4000)で断面を切断し、その断面を観察することで、段差を測定した。
【0173】
(2)耐薬品性試験
(1)で作製した実施例1の半導体装置について、その上記再配線層における、硬化物のレリーフパターン(一層目の絶縁層)上に形成した約5μm厚の硬化膜(二層目の絶縁層)を薬液(DMSO:70重量%、2-アミノエタノール:25重量%、TMAH:5重量%)に50℃で5分間浸漬した。その後にTencor P-15型段差計(ケーエルエーテンコール社製)を用いて絶縁層の膜厚測定を行い、薬品処理前と比較することにより溶解レート(nm/分)として算出した。
【0174】
(3)密着性試験
(1)で作製した実施例1の半導体装置について、その上記再配線層における、硬化物のレリーフパターン(一層目の絶縁層)上に形成した約5μm厚の硬化膜(二層目の絶縁層)を、リフローを5回実施した後に、JIS K 5600-5-6規格のクロスカット法に準じて、銅基板/絶縁層(硬化樹脂塗膜)間の接着特性を以下の基準に基づき、評価した。
「優」:基板に接着している絶縁層の格子数が80以上~100
「可」:基板に接着している絶縁層の格子数が40以上~80未満
「不可」:基板に接着している絶縁層の格子数が40未満
なお、リフローは、メッシュベルト式連続焼成炉(光洋サーモシステム社製、型式名6841-20AMC-36)を用いた模擬的な半田リフロー条件で、窒素雰囲気下、ピーク温度260℃まで加熱した。模擬的なリフロー条件とは、半導体装置の評価方法に関する米国半導体業界団体の標準規格であるIPC/JEDEC J-STD-020Aの7.6項記載の半田リフロー条件に準拠する形で、半田融点を高温の220℃と仮定し、規格化した。
【0175】
(4)ヤング率測定
配合例で調製した樹脂組成物を、表面にアルミ蒸着層を設けた6インチシリコンウェハ基板に、硬化後膜厚が10μmになるようにスピンコートし、110℃にて4分間プリベークした。その後、縦型キュア炉(光洋リンドバーグ社製、型式名VF-2000B)を用いて、表に記載の硬化温度で2時間の加熱硬化処理を施し、樹脂膜(絶縁層)が形成されたウェハを作製した。ダイシングソー(株式会社ディスコ製 DAD 3350)を用いて該ウェハの樹脂膜に3mm幅の切れ目を入れた後、希塩酸水溶液に一晩浸して樹脂膜片を剥離し、乾燥させた。これを、長さ50mmにカットし、サンプルとした。
上記のサンプルにつき、TENSILON(オリエンテック社製 UTM-II-20)を用いて、試験速度40mm/min、初期加重0.5fsにてヤング率を測定した。
【0176】
(5)ATR法によるピーク比の算出
上記(4)と同様の方法で得られた樹脂膜が形成されたウェハを、サーモフィッシャーサイエンティフィック社製FT-IRを用いて、測定範囲4000~400cm-1、測定回数50回で測定を行った。硬化膜の1380cm-1付近のピーク高さと1500cm-1付近のピーク高さを求め、ピーク比(1380cm-1付近ピーク高さ/1500cm-1付近ピーク高さ)を算出した。
【0177】
【0178】
【0179】
表から明らかなように、実施例1~10の半導体装置について行った結果から、段差を一定範囲とすることで、絶縁層の耐薬品性の向上と、絶縁層と配線の熱履歴後の密着性の確保と、を両立することができた。
本発明は、半導体チップと、半導体チップに接続される再配線層とを有する半導体装置、特に、ファンナウト(Fan-Out)型のウェハレベルチップサイズパッケージ型の半導体装置に好ましく適用される。