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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023165432
(43)【公開日】2023-11-16
(54)【発明の名称】空気入りタイヤ
(51)【国際特許分類】
   B60C 11/00 20060101AFI20231109BHJP
   B60C 5/00 20060101ALI20231109BHJP
   B60C 11/03 20060101ALI20231109BHJP
   B60C 11/13 20060101ALI20231109BHJP
【FI】
B60C11/00 F
B60C5/00 H
B60C11/03 B
B60C11/00 D
B60C11/13 C
B60C11/03 300A
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022076392
(22)【出願日】2022-05-06
(71)【出願人】
【識別番号】000183233
【氏名又は名称】住友ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000280
【氏名又は名称】弁理士法人サンクレスト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】永安 麻優
【テーマコード(参考)】
3D131
【Fターム(参考)】
3D131BA01
3D131BA20
3D131BB01
3D131BB11
3D131BC12
3D131BC13
3D131BC15
3D131BC18
3D131CB06
3D131EA09X
3D131EB05U
3D131EB08U
3D131EB11V
3D131EB11X
3D131EB31V
3D131EB31W
3D131EB31X
3D131EB44X
3D131EC12V
3D131EC12W
3D131EC12X
(57)【要約】
【課題】旋回時における唐突な挙動変化を抑制することができる技術を提供する。
【解決手段】タイヤ1は、トレッド部2の外面2aのプロファイルPが、タイヤ赤道PCを含むクラウンプロファイルPcrと、クラウンプロファイルPcrの両端からトレッド部2のタイヤ軸方向両端に繋がる一対のショルダープロファイルPsと、を含む。一対のショルダープロファイルPsのうち、車両装着時に車両内側となるタイヤ軸方向一方の内側ショルダープロファイルPsiの曲率半径をSin、車両装着時に車両外側となるタイヤ軸方向他方の外側ショルダープロファイルPsoの曲率半径をSoutとしたとき、下記式(1)を満たす。トレッド部2に含まれる複数の陸部のうち内側ショルダー陸部19の幅をWin、外側ショルダー陸部20の幅をWoutとしたとき、下記式(2)を満たす。
Sin < Sout ・・・(1)
Win < Wout ・・・(2)
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に対する装着方向が指定される空気入りタイヤであって、
トレッド部の外面のプロファイルが、タイヤ赤道を含むクラウンプロファイルと、前記クラウンプロファイルの両端から前記トレッド部のタイヤ軸方向両端に繋がる一対のショルダープロファイルと、を含み、
前記一対のショルダープロファイルのうち、前記車両装着時に車両内側となるタイヤ軸方向一方の内側ショルダープロファイルの曲率半径をSin、前記一対のショルダープロファイルのうち、前記車両装着時に車両外側となるタイヤ軸方向他方の外側ショルダープロファイルの曲率半径をSoutとしたとき、下記式(1)を満たし、
前記トレッド部は、複数の周方向溝と、前記複数の周方向溝によって区分された複数の陸部と、を含み、
前記複数の陸部のうち、タイヤ軸方向一方側の内側トレッド端を含む陸部が内側ショルダー陸部であり、
前記複数の陸部のうち、タイヤ軸方向他方側の外側トレッド端を含む陸部が外側ショルダー陸部であり、
前記内側ショルダー陸部の幅をWin、前記外側ショルダー陸部の幅をWoutとしたとき、下記式(2)を満たす
空気入りタイヤ。
Sin < Sout ・・・(1)
Win < Wout ・・・(2)
【請求項2】
前記内側ショルダー陸部、及び前記外側ショルダー陸部のそれぞれは、タイヤ軸方向に延びる横溝によって複数のショルダーブロックに区分され、
前記内側ショルダー陸部を区分する内側ショルダー横溝の前記内側トレッド端における溝深さをDin、前記外側ショルダー陸部を区分する外側ショルダー横溝の前記外側トレッド端における溝深さをDoutとしたとき、下記式(3)を満たす
請求項1に記載の空気入りタイヤ。
Din > Dout ・・・(3)
【請求項3】
前記内側ショルダー陸部のゴムの硬さをHin、前記外側ショルダー陸部のゴムの硬さをHoutとしたとき、下記式(4)を満たす
請求項1又は請求項2に記載の空気入りタイヤ。
Hin < Hout ・・・(4)
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気入りタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、氷雪路面で使用されるスタッドレスタイヤ等の空気入りタイヤにおいては、接地面積を大きく確保するために、いわゆるスクエアショルダーが採用されることがある(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008-222158号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記スクエアショルダーでは、タイヤのトレッド面とサイド面とがエッジ状に繋がっている。
このため、旋回時においてトレッド部の車両外側の端部に荷重が集中すると、エッジ状であるトレッド部の端部の面圧が著しく高くなり、唐突な車両の挙動変化を生じさせる原因となるおそれがある。
【0005】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、旋回時における唐突な挙動変化を抑制することができる技術の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る空気入りタイヤは、車両に対する装着方向が指定される空気入りタイヤである。トレッド部の外面のプロファイルが、タイヤ赤道を含むクラウンプロファイルと、前記クラウンプロファイルの両端から前記トレッド部のタイヤ軸方向両端に繋がる一対のショルダープロファイルと、を含む。前記一対のショルダープロファイルのうち、前記車両装着時に車両内側となるタイヤ軸方向一方の内側ショルダープロファイルの曲率半径をSin、前記一対のショルダープロファイルのうち、前記車両装着時に車両外側となるタイヤ軸方向他方の外側ショルダープロファイルの曲率半径をSoutとしたとき、下記式(1)を満たす。前記トレッド部は、複数の周方向溝と、前記複数の周方向溝によって区分された複数の陸部と、を含み、前記複数の陸部のうち、タイヤ軸方向一方側の内側トレッド端を含む陸部が内側ショルダー陸部であり、前記複数の陸部のうち、タイヤ軸方向他方側の外側トレッド端を含む陸部が外側ショルダー陸部である。前記内側ショルダー陸部の幅をWin、前記外側ショルダー陸部の幅をWoutとしたとき、下記式(2)を満たす。
Sin < Sout ・・・(1)
Win < Wout ・・・(2)
【0007】
上記構成によれば、外側ショルダープロファイルの曲率半径Soutを、内側ショルダープロファイルの曲率半径Sinよりも大きくすることで、外側トレッド端近傍の外側ショルダー領域を相対的に大きなRを有するラウンドプロファイルとすることができる。
これにより、旋回時において外側ショルダー領域に大きな荷重が作用した場合にも、その荷重を分散でき、外側トレッド端に荷重が集中するのを抑制することができる。この結果、外側ショルダー領域において局所的に面圧が高くなるのを抑制することができ、唐突な挙動変化を抑制することができる。
【0008】
ここで、外側ショルダー領域をラウンドプロファイルとすることで部分的に接地面積が減少するが、内側トレッド端近傍の内側ショルダー領域を、外側ショルダー領域と比較してよりスクエアなプロファイルとしたので、トレッド部全体における接地面積の大幅な減少が抑えられる。
加えて、外側ショルダー陸部の幅Woutを、内側ショルダー陸部の幅Winよりも大きくすることで、外側ショルダー陸部の面積が内側ショルダー陸部に対して相対的に大きくなり、外側ショルダー領域をラウンドプロファイルとすることで部分的に減少した接地面積を補完することができる。これにより、接地面積の分布に極端な偏りが生じるのを抑制でき、旋回時以外における制動性能や操縦安定性能を維持することができる。
つまり、本発明によれば、旋回時以外における制動性能や操縦安定性能を維持しつつ、旋回時における唐突な挙動を抑制することができる。
【0009】
上記空気入りタイヤにおいて、前記内側ショルダー陸部、及び前記外側ショルダー陸部のそれぞれは、タイヤ軸方向に延びる横溝によって複数のショルダーブロックに区分され、前記内側ショルダー陸部を区分する内側ショルダー横溝の前記内側トレッド端における溝深さをDin、前記外側ショルダー陸部を区分する外側ショルダー横溝の前記外側トレッド端における溝深さをDoutとしたとき、下記式(3)を満たすことが好ましい。
Din > Dout ・・・(3)
【0010】
この場合、外側ショルダー陸部の剛性を相対的に高くすることができ、旋回時の荷重集中による外側ショルダー陸部の過度な変形を抑制することができる。この結果、唐突な挙動変化を効果的に抑制することができる。
【0011】
また、前記内側ショルダー陸部のゴムの硬さをHin、前記外側ショルダー陸部のゴムの硬さをHoutとしたとき、下記式(4)を満たすことが好ましい。
Hin < Hout ・・・(4)
【0012】
この場合、トレッド部の車両内側部分の接地面積を、トレッド部の車両外側部分の接地面積よりも増やすことができ、制動性能や操縦安定性能を維持することができる。
また、外側ショルダー陸部の剛性を相対的に高くすることができ、唐突な挙動変化をより効果的に抑制することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、旋回時における唐突な挙動変化を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1図1は、実施形態に係る空気入りタイヤのトレッド部のタイヤ軸方向断面を示す図である。
図2図2は、トレッド部の外面の展開図である。
図3図3(a)は、内側ショルダー横溝の内側トレッド端における赤道面に沿う断面を示す図、図3(b)は、外側ショルダー横溝の外側トレッド端における赤道面に沿う断面を示す図である。
図4図4は、本実施形態のタイヤの子午線面における外面のプロファイルを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、適宜図面が参照されつつ、好ましい実施形態に基づいて、本発明が詳細に説明される。
【0016】
タイヤはリムに組まれる。タイヤの内部には空気が充填され、タイヤの内圧が調整される。本開示において、リムに組まれたタイヤは、タイヤ-リム組立体である。タイヤ-リム組立体は、リムと、このリムに組まれたタイヤとを備える。
【0017】
本開示においては、タイヤを正規リムに組み、タイヤの内圧を正規内圧に調整し、このタイヤに荷重をかけていない状態は、正規状態と称される。
【0018】
本開示においては、特に言及がない限り、タイヤ各部の寸法及び角度は、正規状態で測定される。
正規リムにタイヤを組んだ状態で測定できない、タイヤの子午線断面における各部の寸法及び角度は、回転軸を含む平面に沿ってタイヤを切断することにより得られる、タイヤの断面(以下、基準切断面)において、測定される。この測定では、左右のビード間の距離は、正規リムに組んだタイヤにおけるビード間の距離に一致するようにセットされる。
【0019】
正規リムとは、タイヤが依拠する規格において定められたリムを意味する。JATMA規格における「標準リム」、TRA規格における「Design Rim」、及びETRTO規格における「Measuring Rim」は、正規リムである。
【0020】
正規内圧とは、タイヤが依拠する規格において定められた内圧を意味する。JATMA規格における「最高空気圧」、TRA規格における「TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES」に掲載された「最大値」、及びETRTO規格における「INFLATION PRESSURE」は、正規内圧である。
【0021】
正規荷重とは、タイヤが依拠する規格において定められた荷重を意味する。JATMA規格における「最大負荷能力」、TRA規格における「TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES」に掲載された「最大値」、及びETRTO規格における「LOAD CAPACITY」は、正規荷重である。
【0022】
本開示において、タイヤを構成する要素のうち、架橋ゴムからなる要素の硬さは、JIS K6253の規定に準じて、23℃の温度条件下でタイプAデュロメータを用いて測定される。
本開示では、タイヤのトレッド部の表面にタイプAデュロメータの押針を押圧させることで硬さ測定を行った。
【0023】
図1は、実施形態に係る空気入りタイヤのトレッド部のタイヤ軸方向断面を示す図である。本実施形態の空気入りタイヤ1(以下、単にタイヤ1ともいう。)は、例えば、乗用車用である。
図1に示すように、タイヤ1は、トレッド部2と、第1サイド部4と、第2サイド部6とを備える。
トレッド部2は、路面と接地する、タイヤ1の部位である。サイド部4,6は、トレッド部2とビード部(図示省略)との間を架け渡す、タイヤ1の部位である。ビード部とは、リムに嵌め合わされる、タイヤ1の部位である。
第1サイド部4は、トレッド部2のタイヤ軸方向一方側に設けられる。第2サイド部6は、トレッド部2のタイヤ軸方向他方側に設けられる。
図1中、トレッド部2の外面2aには、周方向に沿って延びる複数の(図例では4つ)の周方向溝10が設けられている。
【0024】
図2は、トレッド部2の外面2aの展開図である。
図2に示すように、タイヤ1のトレッド部2は、非対称のトレッドパターンを有する。
本実施形態のタイヤ1は、車両に対する装着方向が指定される。具体的に、タイヤ1は、第1サイド部4が車両内側に位置するように車両に装着される。よって、第2サイド部6は、タイヤ1が車両に装着された場合、車両外側に位置する。
【0025】
トレッド部2は、内側トレッド端Tiと外側トレッド端Toとの間で周方向に連続して延びる複数(図例では4つ)の周方向溝10と、4つの周方向溝10によって区画された複数(図例では5つ)の陸部とを含む。
【0026】
内側トレッド端Ti及び外側トレッド端Toは、車両装着時におけるトレッド端である。内側トレッド端Tiは、トレッド部2のタイヤ軸方向一方側(車両内側)に位置している。外側トレッド端Toは、トレッド部2のタイヤ軸方向他方側(車両外側)に位置している。
内側トレッド端Ti及び外側トレッド端Toは、タイヤ接地面におけるタイヤ軸方向両側の最外位置となる。つまり、外側トレッド端To及び内側トレッド端Tiは、タイヤ接地面における接地端となる。なお、前記タイヤ接地面は、正規状態のタイヤ1に正規荷重が負荷されキャンバー角0°で平面に接地したときの接地面である。
【0027】
4つの周方向溝10は、内側クラウン周方向溝11と、外側クラウン周方向溝12と、内側ショルダー周方向溝13と、外側ショルダー周方向溝14とを含む。
内側クラウン周方向溝11及び外側クラウン周方向溝12は、赤道面CLの両外側に設けられている。
内側ショルダー周方向溝13は、内側クラウン周方向溝11と、内側トレッド端Tiとの間に設けられている。
外側ショルダー周方向溝14は、外側クラウン周方向溝12と、外側トレッド端Toとの間に設けられている。
【0028】
なお、本実施形態において赤道面CLとは、第1サイド部4及び第2サイド部6を含んだタイヤ1のタイヤ軸方向中心を通過する面である。
【0029】
4つの周方向溝10によって、トレッド部2は、クラウン陸部16と、内側ミドル陸部17と、外側ミドル陸部18と、内側ショルダー陸部19と、外側ショルダー陸部20と、に区分される。
【0030】
クラウン陸部16は、赤道面CLを含む位置に設けられている。
内側ショルダー陸部19は、内側トレッド端Tiを含む位置に設けられている。
外側ショルダー陸部20は、外側トレッド端Toを含む位置に設けられている。
内側ミドル陸部17は、クラウン陸部16と、内側ショルダー陸部19との間に設けられている。
外側ミドル陸部18は、クラウン陸部16と、外側ショルダー陸部20との間に設けられている。
【0031】
クラウン陸部16は、タイヤ軸方向に延びる複数のクラウン横溝16aによって区分された複数のクラウンブロック16bを含む。
内側ミドル陸部17は、タイヤ軸方向に延びる複数の内側ミドル横溝17aによって区分された複数の内側ミドルブロック17bを含む。
外側ミドル陸部18は、タイヤ軸方向に延びる複数の外側ミドル横溝18aによって区分された複数の外側ミドルブロック18bを含む。
【0032】
内側ショルダー陸部19は、タイヤ軸方向に延びる複数の内側ショルダー横溝19aによって区分された複数の内側ショルダーブロック19bを含む。
複数の内側ショルダーブロック19bは、タイヤ周方向に延びる縦溝19cによって、外ブロック片19b1と、内ブロック片19b2とに区分される。
外側ショルダー陸部20は、タイヤ軸方向に延びる複数の外側ショルダー横溝20aによって区分された複数の外側ショルダーブロック20bを含む。
複数の外側ショルダーブロック20bは、タイヤ周方向に延びる縦溝20cによって、外ブロック片20b1と、内ブロック片20b2とに区分される。
【0033】
クラウンブロック16b、内側ミドルブロック17b、外側ミドルブロック18b、内側ショルダーブロック19b、及び外側ショルダーブロック20bには、それそれ、複数のサイプ22が設けられている。サイプとは、微小な幅を有する切れ込み要素であって、互いに向かい合う2つのサイプ壁の間の幅が0.6mm以下のものを指す。サイプの前記幅は、望ましくは0.1~0.5mmであり、より望ましくは0.2~0.4mmである。本実施形態のサイプは、その全深さに亘って、前記幅が上述の範囲とされている。
【0034】
ここで、内側ショルダー陸部19のタイヤ軸方向の幅をWin、外側ショルダー陸部20のタイヤ軸方向の幅をWoutとする。
内側ショルダー陸部19の幅Winは、内側ショルダー陸部19の内側ショルダー周方向溝13側の端縁19dから内側トレッド端Tiまでの寸法である。
外側ショルダー陸部20の幅Woutは、外側ショルダー陸部20の外側ショルダー周方向溝14側の端縁20dから外側トレッド端Toまでの寸法である。
本実施形態では、内側ショルダー陸部19の幅Win及び外側ショルダー陸部20の幅Woutが下記式の関係を満たす。
Win < Wout
【0035】
また、本実施形態では、トレッド部2において赤道面CLよりも車両内側部分におけるランド比が、赤道面CLよりも車両外側部分におけるランド比よりも大きくなっている。
より具体的に、図2中、赤道面CLと内側トレッド端Tiとの間の領域を車両内側領域、赤道面CLと外側トレッド端Toとの間の領域を車両外側領域としたとき、車両内側領域のランド比Liと、車両外側領域のランド比Loとの関係は、下記式を満たす。
なお、ランド比とは、トレッド部の溝を全て埋めた仮想接地面の面積に対する、トレッド部の実際の接地面の面積の割合をいう。
Li > Lo
【0036】
図3(a)は、内側ショルダー横溝19aの内側トレッド端Tiにおける赤道面に沿う断面を示す図、図3(b)は、外側ショルダー横溝20aの外側トレッド端Toにおける赤道面に沿う断面を示す図である。
図3に示すように、内側ショルダー横溝19aの内側トレッド端Tiにおける溝深さをDin、外側ショルダー横溝20aの外側トレッド端Toにおける溝深さをDoutとしたとき、下記式を満たす。
Din > Dout
【0037】
図4は、本実施形態のタイヤ1の子午線面における外面のプロファイルを示す図である。図4に示すタイヤ1のプロファイルは、正規状態であるタイヤ1の外面形状を変位センサで計測することで得られる。
タイヤ1の外面のプロファイル(輪郭)は、計測した外面形状において、周方向溝10や装飾等がないと仮定し、直線又は円弧からなる複数の輪郭線をつないで構成される。本開示において、直線又は円弧からなる輪郭線は単に輪郭線と称される。直線からなる輪郭線は直線輪郭線と称され、円弧からなる輪郭線は曲線輪郭線と称される。曲線輪郭線の半径は、該当する領域における外面の曲率半径を表す。
【0038】
図4に示す外面のプロファイルは、トレッド部2の外面2aのプロファイルPを含む。外面2aのプロファイルPは、異なる半径を有する複数の曲線輪郭線を含む。
プロファイルPに含まれる複数の曲線輪郭線のうち、トレッド部2のタイヤ軸方向両端の部分に位置し、サイド面4a、6aに繋がる一対の曲線輪郭線が一対のショルダープロファイルPsである。
一対のショルダープロファイルPsは、タイヤ半径方向外側に向かって凸である円弧状である。
なお、サイド面4aは、第1サイド部4の外面である。サイド面6aは、第2サイド部6の外面である。
【0039】
また、プロファイルPに含まれる複数の曲線輪郭線のうち、一対のショルダープロファイルPsの間のクラウン領域Crに位置する曲線輪郭線がクラウンプロファイルPcrである。
クラウンプロファイルPcrは、赤道PCを含んでいる。クラウンプロファイルPcrは、例えば、1又は複数の曲線輪郭線を含んで構成される。クラウンプロファイルPcに含まれる複数の曲線輪郭線は、赤道PCに近い曲線輪郭線ほど曲率半径が大きい。
なお、赤道PCは、赤道面CLと外面2aとの交点である。
【0040】
一対のショルダープロファイルPsのうち、車両装着時に車両内側となるタイヤ軸方向一方の内側ショルダープロファイルPsiは、クラウン領域Crのタイヤ軸方向一方側に隣接する内側ショルダー領域Shiに位置する。
符号TEiで示される位置は、内側ショルダー領域Shiとサイド面4aとの境界である。この境界TEiがトレッド部2の外面2aのタイヤ軸方向一方側の端である。
【0041】
一対のショルダープロファイルPsのうち、車両装着時に車両外側となるタイヤ軸方向他方の外側ショルダープロファイルPsoは、クラウン領域Crのタイヤ軸方向他方側に隣接する外側ショルダー領域Shoに位置する。
符号TEoで示される位置は、外側ショルダー領域Shoとサイド面6aとの境界である。この境界TEoがトレッド部2の外面2aのタイヤ軸方向他方側の端である。
つまり、一対のショルダープロファイルPsは、クラウンプロファイルPcrの両端と、トレッド部2のタイヤ軸方向両端との間に亘っており、クラウンプロファイルPcrの両端からトレッド部2のタイヤ軸方向両端に繋がっている。
【0042】
図4中、内側ショルダープロファイルPsiの曲率半径Sin、及び外側ショルダープロファイルPsoの曲率半径Soutは、クラウンプロファイルPcrを構成する1又は複数の曲線輪郭線の曲率半径よりも小さい。
また、本実施形態の内側ショルダープロファイルPsiの曲率半径Sin、及び外側ショルダープロファイルPsoの曲率半径Soutは下記式を満たす。
Sin < Sout
【0043】
例えば、内側ショルダープロファイルPsiの曲率半径Sinが、外側ショルダープロファイルPsoの曲率半径Sout以上である場合、外側ショルダー領域Shoに大きな荷重が作用した場合に、外側トレッド端Toに荷重が集中してしまい、外側ショルダー領域Shoにおける面圧が高くなり、唐突な挙動変化を生じさせるおそれがある。
【0044】
これに対して、上記構成によれば、外側ショルダープロファイルPsoの曲率半径Soutを、内側ショルダープロファイルPsiの曲率半径Sinよりも大きくすることで、外側トレッド端近傍の外側ショルダー領域Shoを相対的に大きなRを有するラウンドプロファイルとすることができる。
これにより、旋回時において外側ショルダー領域Shoに大きな荷重が作用した場合にも、その荷重を分散でき、外側トレッド端Toに荷重が集中するのを抑制することができる。この結果、外側ショルダー領域Shoにおいて局所的に面圧が高くなるのを抑制することができ、唐突な挙動変化を抑制することができる。
【0045】
ここで、外側ショルダー領域Shoをラウンドプロファイルとすることで部分的に接地面積が減少するが、内側トレッド端近傍の内側ショルダー領域Shiを、外側ショルダー領域Shoと比較してよりスクエアなプロファイルとしたので、トレッド部2全体における接地面積の大幅な減少が抑えられる。
加えて、外側ショルダー陸部20の幅Woutを、内側ショルダー陸部19の幅Winよりも大きくすることで、外側ショルダー陸部20の面積が内側ショルダー陸部19に対して相対的に大きくなり、外側ショルダー領域Shoをラウンドプロファイルとすることで部分的に減少した接地面積を補完することができる。これにより、接地面積の分布に極端な偏りが生じるのを抑制でき、旋回時以外における制動性能や操縦安定性能を維持することができる。
つまり、本発明によれば、旋回時以外における制動性能や操縦安定性能を維持しつつ、旋回時における唐突な挙動を抑制することができる。
【0046】
本実施形態において、下記に示す曲率半径Sinと、曲率半径Soutとの比R1は、0.075以上、0.75以下であることが好ましい。
R1=曲率半径Sin/曲率半径Sout
【0047】
R1が0.075よりも小さい場合、曲率半径Soutが相対的に大きくなりすぎ、旋回時の応答性が低下し、操縦性を低下させるおそれがある。また、R1が0.75よりも大きい場合、曲率半径Sinと、曲率半径Soutとの差が小さくなり、外側ショルダー領域Shoに作用する荷重の分散効果が十分に得られず、唐突な挙動変化の抑制が困難になるおそれがある。
R1を0.075以上、0.75以下とすることで、唐突な挙動変化を効果的に抑制することができる。
R1の数値範囲は、より好ましくは、0.28以上、0.50以下である。
【0048】
内側ショルダープロファイルPsiの曲率半径Sinは、例えば、3mm以上、20mm以下であることが好ましく、より好ましくは10mm以上、15mm以下である。
また、外側ショルダープロファイルPsoの曲率半径Soutは、例えば、25mm以上、40mm以下であることが好ましく、より好ましくは30mm以上、35mm以下である。
内側ショルダープロファイルPsi及び外側ショルダープロファイルPsoの曲率半径Soutは、上述の数値範囲を満たすように設定されることが好ましい。
【0049】
また、本実施形態において、下記に示す内側ショルダー陸部19の幅Winと、外側ショルダー陸部20の幅Woutとの比R2は、0.6以上、0.95以下であることが好ましい。
R2=幅Win/幅Wout
【0050】
R2が0.6よりも小さい場合、幅Woutが相対的に大きくなりすぎ、内側ショルダー陸部19の接地面積の不足を招くおそれがある。また、R2が0.95よりも大きい場合、幅Winと幅Woutとの差が小さくなり、ラウンドプロファイルとすることで部分的に減少した外側ショルダー領域Shoの接地面積を補完することができず、旋回時以外における制動性能や操縦安定性能を維持できないおそれが生じる。
R2を0.6以上、0.95以下とすることで、旋回時以外における制動性能や操縦安定性能を効果的に維持することができる。
R2の数値範囲は、より好ましくは、0.75以上、0.90以下である。
【0051】
本実施形態において、内側ショルダー陸部19の幅Winは、例えば、トレッド幅TWの10%以上、24%以下であることが好ましく、より好ましくは13%以上、20%以下である。
また、外側ショルダー陸部20の幅Woutは、例えば、トレッド幅TWの11%以上、25%以下であることが好ましく、より好ましくは15%以上、23%以下である。
内側ショルダー陸部19の幅Win及び外側ショルダー陸部20の幅Woutは、上述の数値範囲を満たすように設定されることが好ましい。
【0052】
また、本実施形態では、内側ショルダー横溝19aの内側トレッド端Tiにおける溝深さDinが、外側ショルダー横溝20aの外側トレッド端Toにおける溝深さDoutよりも大きいので、外側ショルダー陸部20の剛性を相対的に高くすることができ、旋回時の荷重集中による外側ショルダー陸部20の過度な変形を抑制することができる。この結果、唐突な挙動変化を効果的に抑制することができる。
【0053】
本実施形態において、下記に示す溝深さDinと、溝深さをDoutとの比R3は、1.05以上、1.65以下であることが好ましい。
R3=溝深さDin/溝深さDout
【0054】
R3が1.05よりも小さい場合、溝深さDinと溝深さDoutとの差が小さくなることで、内側ショルダー陸部19と外側ショルダー陸部20との剛性の差が小さくなり、外側ショルダー陸部20の過度な変形を抑制する効果が十分に得られないおそれがある。また、R3が1.65よりも大きい場合、内側ショルダー陸部19の剛性が低下し過ぎて、操縦性に悪影響を与えるおそれが生じる。
R3を1.05以上、1.65以下とすることで、唐突な挙動変化を効果的に抑制することができる。
R3の数値範囲は、より好ましくは、1.10以上、1.25以下である。
溝深さDin及びDoutは、上述の数値範囲を満たすように設定される。
【0055】
また、トレッド部2を構成するゴムの硬さは、タイヤ軸方向において均一でもよいが、内側ショルダー陸部19のゴムの硬さをHin、外側ショルダー陸部20のゴムの硬さをHoutとしたとき、下記式を満たすように構成してもよい。
Hin < Hout
【0056】
この場合、トレッド部2の車両内側部分における氷雪路面に対する接地面積を、車両外側部分の接地面積よりも増やすことができ、制動性能や操縦安定性能を維持することができる。
また、外側ショルダー陸部20の剛性を相対的に高くすることができ、唐突な挙動変化をより効果的に抑制することができる。
【0057】
内側ショルダー陸部19のゴムの硬さHinと、外側ショルダー陸部20のゴムの硬さHoutとが、上記式を満たす場合、内側ミドル陸部17のゴムの硬さを内側ショルダー陸部19のゴム硬さHinと同じ値とし、クラウン陸部16及び外側ミドル陸部18のゴムの硬さを外側ショルダー陸部20のゴムの硬さHoutと同じ値としてもよい。
また、内側ミドル陸部17、クラウン陸部16、及び外側ミドル陸部18のゴムの硬さを外側ショルダー陸部20のゴムの硬さHoutと同じ値としてもよい。
さらに、内側ミドル陸部17及びクラウン陸部16のゴムの硬さを内側ショルダー陸部19のゴムの硬さHinと同じ値とし、外側ミドル陸部18のゴムの硬さを外側ショルダー陸部20のゴムの硬さHoutと同じ値としてもよい。
また、内側ミドル陸部17、クラウン陸部16、及び外側ミドル陸部18のゴムの硬さを内側ショルダー陸部19のゴムの硬さHinと同じとしてもよい。
【0058】
本実施形態において、下記に示すHinと、Houtとの比R4は、0.88以上、0.98以下であることが好ましい。
R4=Hin/Hout
【0059】
R4が0.88よりも小さい場合、Houtが相対的に高くなりすぎ、外側ショルダー陸部20側の接地面積の不足を招くおそれがある。また、R4が0.98よりも大きい場合、HinとHoutとの差が小さくなり、内側ショルダー陸部19側において必要な接地面積を得ることができないおそれが生じる。
R4を0.88以上、0.98以下とすることで、唐突な挙動変化をより効果的に抑制することができる。
R4の数値範囲は、より好ましくは、0.92以上、0.97以下である。
硬さHin、Houtは、上述の数値範囲を満たすように設定される。
【0060】
また、本実施形態では、車両内側領域のランド比Liを、車両外側領域のランド比Loよりも大きくしたので、トレッド部の車両内側部分の接地面積を、トレッド部の車両外側部分の接地面積よりも増やすことができ、制動性能や操縦安定性能を維持することができる。
【0061】
本実施形態において、下記に示す車両内側領域のランド比Liと、車両外側領域のランド比Loとの比R5は、1.05以上、1.30以下であることが好ましい。
R5=ランド比Li/ランド比Lo
【0062】
R5が1.05よりも小さい場合、ランド比Liとランド比Loとの差が小さくなることで、トレッド部2の車両内側部分の接地面積と、車両外側部分の接地面積との差が小さくなり、制動性能や操縦安定性能を維持できないおそれがある。また、R5が1.30よりも大きい場合、車両外側部分の接地面積が不足し、操縦性に悪影響を与えるおそれが生じる。
R5を1.05以上、1.30以下とすることで、制動性能や操縦安定性能を効果的に維持することができる。
R5の数値範囲は、より好ましくは、1.10以上、1.20以下である。
【0063】
本実施形態において、ランド比Liは、例えば、70以上、77以下であることが好ましく、より好ましくは72以上、75以下である。
また、ランド比Loは、例えば、60以上、66以下であることが好ましく、より好ましくは62以上、66以下である。
ランド比Li、Loは、上述の数値範囲を満たすように設定される。
【0064】
なお、今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。
本開示の範囲は、上記した意味ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味、及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【実施例0065】
以下、実施例によって本発明についてさらに詳しく説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
図2に示すトレッドパターンを有するサイズ195/65R15のタイヤを、表1に記載の仕様に基づいて比較例のタイヤ及び実施例のタイヤを試作した。
比較例のタイヤと、実施例のタイヤとは、表1に記載の仕様以外の仕様については、同一とした。
【0066】
比較例のタイヤ及び実施例のタイヤに対して、氷上ブレーキ評価、氷上旋回性能評価、及び、雪上操縦安定性評価を行った。
評価方法は、以下の通りである。
装着リム:タイヤサイズに応じた正規リム
タイヤ内圧:230kpa
テスト車両:ゴルフ
【0067】
〈氷上ブレーキ評価〉
上記テスト車両で氷上を走行し、氷上でのブレーキ性能を運転者の官能により評価した。運転者は唐突な挙動の有無に着目しつつブレーキ性能を評価した。評価結果は、比較例を100とする評点であり、数値が大きい程、氷上でのブレーキ性能が優れていることを示す。
〈氷上旋回性能評価〉
上記テスト車両で氷上を走行し、氷上での旋回性能を運転者の官能により評価した。運転者は唐突な挙動の有無に着目しつつ旋回性能を評価した。評価結果は、比較例を100とする評点であり、数値が大きい程、氷上での旋回性能が優れていることを示す。
〈雪上操縦安定性評価〉
上記テスト車両で雪上を走行し、雪上での操縦安定性を運転者の官能により評価した。評価結果は、比較例を100とする評点であり、数値が大きい程、雪上での操縦安定性能が優れていることを示す。
【0068】
下記表1に評価結果を示す。
【0069】
【表1】
【0070】
表1に示すように、実施例のタイヤによれば、旋回時以外における制動性能や操縦安定性能を維持しつつ、旋回時における唐突な挙動を抑制することができることが明らかとなった。
【符号の説明】
【0071】
1 空気入りタイヤ
2 トレッド部
2a 外面
4 第1サイド部
4a サイド面
6 第2サイド部
6a サイド面
10 周方向溝
11 内側クラウン周方向溝
12 外側クラウン周方向溝
13 内側ショルダー周方向溝
14 外側ショルダー周方向溝
16 クラウン陸部
16a クラウン横溝
16b クラウンブロック
17 内側ミドル陸部
17a 内側ミドル横溝
17b 内側ミドルブロック
18 外側ミドル陸部
18a 外側ミドル横溝
18b 外側ミドルブロック
19 内側ショルダー陸部
19a 内側ショルダー横溝
19b 内側ショルダーブロック
19b1 外ブロック片
19b2 内ブロック片
19c 縦溝
19d 端縁
20 外側ショルダー陸部
20a 外側ショルダー横溝
20b 外側ショルダーブロック
20b1 外ブロック片
20b2 内ブロック片
20c 縦溝
20d 端縁
22 サイプ
CL 赤道面
Cr クラウン領域
Din 溝深さ
Dout 溝深さ
P プロファイル
PC 赤道
Pcr クラウンプロファイル
Ps ショルダープロファイル
Psi 内側ショルダープロファイル
Pso 外側ショルダープロファイル
Shi 内側ショルダー領域
Sho 外側ショルダー領域
Sin 曲率半径
Sout 曲率半径
TEi 境界
TEo 境界
TW トレッド幅
Ti 内側トレッド端
To 外側トレッド端
Win 幅
Wout 幅
図1
図2
図3
図4