IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ダイキン工業株式会社の特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023165461
(43)【公開日】2023-11-16
(54)【発明の名称】電力変換器の制御方法
(51)【国際特許分類】
   H02M 3/155 20060101AFI20231109BHJP
   H02M 7/48 20070101ALI20231109BHJP
【FI】
H02M3/155 H
H02M7/48 E
【審査請求】有
【請求項の数】18
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022076470
(22)【出願日】2022-05-06
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2023-08-02
(71)【出願人】
【識別番号】000002853
【氏名又は名称】ダイキン工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088672
【弁理士】
【氏名又は名称】吉竹 英俊
(74)【代理人】
【識別番号】100088845
【弁理士】
【氏名又は名称】有田 貴弘
(74)【代理人】
【識別番号】100103229
【弁理士】
【氏名又は名称】福市 朋弘
(72)【発明者】
【氏名】榊原 憲一
【テーマコード(参考)】
5H730
5H770
【Fターム(参考)】
5H730AA02
5H730AS04
5H730BB14
5H730BB57
5H730CC01
5H730DD03
5H730EE57
5H730FD11
5H730FD41
5H730FG05
5H770CA01
5H770CA02
5H770DA03
5H770DA41
5H770EA01
5H770HA02Y
5H770HA07Z
(57)【要約】
【課題】電力変換器において高調波を低減する。
【解決手段】直流リンクに対してブースタから昇圧した第1電圧を断続的に印加するスイッチを導通させるデューティおよび第1電圧のいずれかまたは両方が制御される。インバータが出力する交流電力が第1閾値よりも小さな第2閾値以上である場合に、コンバータで整流された整流電圧の波高値より等価直流電圧を高くかつ第1電圧以下に制御され;交流電力が第1閾値よりも大きな第1値をとるときの等価直流電圧を、交流電力が第2閾値よりも大きく且つ第1閾値よりも小さな第2値をとるときの等価直流電圧よりも高める。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電力変換器(100)を制御する方法であって、
前記電力変換器(100)は、
直流リンク(7)と、
単相の交流電圧(Vin)を整流し、前記交流電圧に基づく第1の交流電力を直流電力に変換して第1の瞬時電力(Pin)を出力するコンバータ(3)と、
前記直流リンク(7)との間で電力を授受し、第2の瞬時電力(Pbuf)でバッファリングするアクティブバッファ(4)と、
前記直流リンク(7)から入力される第3の瞬時電力(Pdc)を第2の交流電力(Pout)に変換して出力するインバータ(5)と
を備え、
前記アクティブバッファ(4)は、
前記交流電圧(Vin)が整流されて得られる整流電圧(Vrec)を昇圧して第1電圧(Vc)を生成するブースタ(4b)と、
前記直流リンクに対して前記ブースタ(4b)から前記第1電圧(Vc)を断続的に印加するスイッチ(4a,Sc,Qc)と
を有し、
前記スイッチ(4a,Sc,Qc)を第1デューティ(dc)で導通させ、
前記第1デューティ(dc)および前記第1電圧(Vc)のいずれかまたは両方を制御して:
前記第2の交流電力(Pout)が第1閾値よりも小さな第2閾値以上である場合に、等価直流電圧(Vdc)を前記整流電圧(Vrec)の波高値(Vm)より高くかつ前記第1電圧(Vc)以下に制御し;
前記第2の交流電力(Pout)が前記第1閾値よりも大きな第1値をとるときの前記等価直流電圧(Vdc)を、前記第2の交流電力(Pout)が前記第2閾値よりも大きく且つ前記第1閾値よりも小さな第2値をとるときの前記等価直流電圧(Vdc)よりも高め、
前記等価直流電圧(Vdc)は前記直流リンク(7)に印加され、前記インバータ(5)に流れる電流の平均値である直流電流(Idc)で前記第3の瞬時電力(Pdc)を除した直流電圧である、
電力変換器の制御方法。
【請求項2】
前記アクティブバッファ(4)は、
前記直流リンク(7)から前記第1の瞬時電力(Pin)の一部である第4の瞬時電力(PL)を入力し、前記直流リンク(7)へ第5の瞬時電力(Pc)を出力して、前記第2の瞬時電力(Pbuf=Pc-PL)をバッファリングし、
前記第3の瞬時電力(Pdc)は、
前記第1の瞬時電力(Pin)から前記第4の瞬時電力(PL)を減じた第6の瞬時電力(Prec)と、前記第5の瞬時電力(Pc)との和であり、
電力比は、前記第1の瞬時電力(Pin)に対する前記第6の瞬時電力(Prec)の比(Prec/Pin)であり、
前記第2の交流電力(Pout)が前記第1値をとる場合の前記電力比を、前記第2値をとる場合の前記電力比よりも小さくする、
請求項1に記載の電力変換器の制御方法。
【請求項3】
前記第2の交流電力(Pout)が前記第2閾値よりも大きい場合に、
前記第1デューティ(dc)を1から引いた値である第2デューティ(drec)の最大値は0より大きく1/√3未満、または1/√3より大きく1以下である、請求項1に記載の電力変換器の制御方法。
【請求項4】
前記第2の交流電力(Pout)が前記第2閾値よりも大きい場合に、
前記第2デューティ(drec)の最大値は0より大きく1/√3未満である、請求項3に記載の電力変換器の制御方法。
【請求項5】
昇圧比(α)は前記第1電圧(Vc)を前記波高値(Vm)で除した値であり、
電圧利用率(R)は前記等価直流電圧を前記波高値(Vm)で除した値であり、
前記昇圧比(α)は第3値(α1)および前記第3値よりも大きな第4値(α2)のいずれをも取り得て、
前記第2の交流電力(Pout)が前記第2閾値よりも大きい場合に:
前記昇圧比(α)が前記第3値(α1)をとるときには、1より大きい第1範囲(J1)内の前記電圧利用率(R)に対して、前記スイッチ(4a,Sc,Qc)のスイッチングによる前記交流電圧(Vin)に対する高調波の振幅(Ih’)が所定の閾値(TH2)以上であり、前記第1範囲(J1)外の前記電圧利用率(R)に対して、前記高調波の前記振幅(Ih’)が前記所定の閾値(TH2)未満であり;
前記昇圧比(α)が前記第4値(α2)をとるときには、1より大きい第2範囲(J2)内の前記電圧利用率(R)に対して、前記高調波の前記振幅(Ih’)が前記所定の閾値(TH2)以上であり、前記第2範囲(J2)外の前記電圧利用率(R)に対して、前記高調波の前記振幅(Ih’)が前記所定の閾値(TH2)未満であり;
前記電圧利用率(R)が前記第2範囲の上限(J2u)よりも大きいときには前記昇圧比(α)に前記第4値(α2)を採用する、請求項4に記載の電力変換器の制御方法。
【請求項6】
昇圧比(α)は前記第1電圧(Vc)を前記波高値(Vm)で除した値であり、
電圧利用率(R)は前記等価直流電圧を前記波高値(Vm)で除した値であり、
前記昇圧比(α)は第3値(α1)および前記第3値よりも大きな第4値(α2)のいずれをも取り得て、
前記第2の交流電力(Pout)が前記第2閾値よりも大きい場合に:
前記昇圧比(α)が前記第3値(α1)をとるときには、1より大きい第1範囲(J1)内の前記電圧利用率(R)に対して、前記スイッチ(4a,Sc,Qc)のスイッチングによる前記交流電圧(Vin)に対する高調波の振幅(Ih’)が所定の閾値(TH2)以上であり、前記第1範囲(J1)外の前記電圧利用率(R)に対して、前記高調波の前記振幅(Ih’)が前記所定の閾値(TH2)未満であり;
前記昇圧比(α)が前記第4値(α2)をとるときには、1より大きい第2範囲(J2)内の前記電圧利用率(R)に対して、前記高調波の前記振幅(Ih’)が前記所定の閾値(TH2)以上であり、前記第2範囲(J2)外の前記電圧利用率(R)に対して、前記高調波の前記振幅(Ih’)が前記所定の閾値(TH2)未満であり;
前記電圧利用率(R)が前記第1範囲の上限(J1u)よりも大きく前記第2範囲(J2)の上限(J2u)以下のときには前記昇圧比(α)に前記第3値(α1)を採用する、請求項4に記載の電力変換器の制御方法。
【請求項7】
昇圧比(α)は前記第1電圧(Vc)を前記波高値(Vm)で除した値であり、
電圧利用率(R)は前記等価直流電圧を前記波高値(Vm)で除した値であり、
前記昇圧比(α)は第3値(α1)および前記第3値(α1a;α1b)よりも大きな第4値(α2)のいずれをも取り得て、
前記第2の交流電力(Pout)が前記第2閾値よりも大きい場合に:
前記昇圧比(α)が前記第3値(α1a;α1b)をとるときには、1より大きい第1下限値(d1)以下の前記電圧利用率(R)に対して、前記スイッチ(4a,Sc,Qc)のスイッチングによる前記交流電圧(Vin)に対する高調波の振幅(Ih’)が所定の閾値(TH3)以上であり、前記第1下限値(d1a;d1b)より大きい前記電圧利用率(R)に対して、前記高調波の前記振幅(Ih’)が前記所定の閾値(TH3)未満であり;
前記昇圧比(α)が前記第4値(α2)をとるときには、前記第1下限値(d1a;d1b)よりも高い第2下限値(d2)以下の前記電圧利用率(R)に対して、前記高調波の前記振幅(Ih’)が前記所定の閾値(TH3)以上であり、前記第2下限値(d2)より大きい前記電圧利用率(R)に対して、前記高調波の前記振幅(Ih’)が前記所定の閾値(TH3)未満であり;
前記第3値(α1b)が前記第2下限値(d2)以上のときには、前記電圧利用率(R)が前記第1下限値(d1b)より大きく前記第2下限値(d2)未満のときに前記昇圧比(α)に前記第3値(α1b)を採用し;
前記第3値(α1a)が前記第2下限値(d2)未満のときには、前記電圧利用率(R)が前記第1下限値(d1a)より大きく前記第3値(α1)未満のときに前記昇圧比(α)に前記第3値(α1a)を採用する、請求項4に記載の電力変換器の制御方法。
【請求項8】
前記第3値(α1b)が前記第2下限値(d2)以上のときには、前記電圧利用率(R)が前記第2下限値(d2)より大きいときに前記昇圧比(α)に前記第4値(α2)を採用する、請求項7に記載の電力変換器の制御方法。
【請求項9】
前記第2の交流電力(Pout)が前記第2閾値よりも大きい場合に、
前記第2デューティ(drec)の最大値は1/√3より大きく1以下である、請求項3に記載の電力変換器の制御方法。
【請求項10】
昇圧比(α)は前記第1電圧(Vc)を前記波高値(Vm)で除した値であり、
電圧利用率(R)は前記等価直流電圧を前記波高値(Vm)で除した値であり、
前記昇圧比(α)は第3値(α1)および前記第3値よりも大きな第4値(α2)のいずれをも取り得て、
前記第2の交流電力(Pout)が前記第2閾値よりも大きい場合に:
前記昇圧比(α)が前記第3値(α1)をとるときには、1より大きい第1範囲(J1)内の前記電圧利用率(R)に対して、前記スイッチ(4a,Sc,Qc)のスイッチングによる前記交流電圧(Vin)に対する高調波の振幅(Ih’)が所定の閾値(TH2)以上であり、前記第1範囲(J1)外の前記電圧利用率(R)に対して、前記高調波の前記振幅(Ih’)が前記所定の閾値(TH2)未満であり;
前記昇圧比(α)が前記第4値(α2)をとるときには、1より大きい第2範囲(J2)内の前記電圧利用率(R)に対して、前記高調波の前記振幅(Ih’)が前記所定の閾値(TH2)以上であり、前記第2範囲(J2)外の前記電圧利用率(R)に対して、前記高調波の前記振幅(Ih’)が前記所定の閾値(TH2)未満であり;
前記電圧利用率(R)が前記第1範囲の下限(J1d)以上であって前記第2範囲(J2)の下限(J2d)未満のときには前記昇圧比(α)に前記第4値(α2)を採用する、請求項9に記載の電力変換器の制御方法。
【請求項11】
昇圧比(α)は前記第1電圧(Vc)を前記波高値(Vm)で除した値であり、
電圧利用率(R)は前記等価直流電圧を前記波高値(Vm)で除した値であり、
前記昇圧比(α)は第3値(α1)および前記第3値よりも大きな第4値(α2)のいずれをも取り得て、
前記第2の交流電力(Pout)が前記第2閾値よりも大きい場合に:
前記昇圧比(α)が前記第3値(α1)をとるときには、1より大きい第1範囲(J1)内の前記電圧利用率(R)に対して、前記スイッチ(4a,Sc,Qc)のスイッチングによる前記交流電圧(Vin)に対する高調波の振幅(Ih’)が所定の閾値(TH2)以上であり、前記第1範囲(J1)外の前記電圧利用率(R)に対して、前記高調波の前記振幅(Ih’)が前記所定の閾値(TH2)未満であり;
前記昇圧比(α)が前記第4値(α2)をとるときには、1より大きい第2範囲(J2)内の前記電圧利用率(R)に対して、前記高調波の前記振幅(Ih’)が前記所定の閾値(TH2)以上であり、前記第2範囲(J2)外の前記電圧利用率(R)に対して、前記高調波の前記振幅(Ih’)が前記所定の閾値(TH2)未満であり;
前記第1デューティ(dc)が第5の値をとり、かつ前記昇圧比(α)が前記第4値(α2)をとるときに前記電圧利用率(R)が前記第1範囲の下限(J1d)をとり、
前記電圧利用率(R)が前記第1範囲の下限(J1d)未満のときには、前記第1デューティには前記第5の値未満の値を採用し、前記昇圧比(α)には前記第3値(α1)を採用する、請求項9に記載の電力変換器の制御方法。
【請求項12】
前記ブースタ(4b)は昇圧チョッパを有し、
前記インバータ(5)のスイッチングに用いられるキャリアの周波数よりも高い周波数を用いて、前記昇圧チョッパに入力する電流(iL)のチョッピングを前記昇圧チョッパに行わせる、請求項1から請求項11のいずれか1項に記載の電力変換器の制御方法。
【請求項13】
前記電力変換器(100)は、
前記キャリアの前記周波数よりも低いカットオフ周波数を有するフィルタ(2)
を更に備え、
前記コンバータ(3)には前記フィルタ(2)を介して前記交流電圧(Vin)が入力される、請求項12に記載の電力変換器の制御方法。
【請求項14】
前記電力変換器(100)は、
前記キャリアの前記周波数よりも低いカットオフ周波数を有するフィルタ(2)
を更に備え、
前記コンバータ(3)は前記フィルタ(2)を介して前記第1の瞬時電力(Pin=Prec+PL)を出力する、請求項12に記載の電力変換器の制御方法。
【請求項15】
前記ブースタ(4b)は昇圧チョッパを有し、
前記スイッチ(4a,Sc,Qc)がスイッチングする周波数よりも高い周波数を用いて、前記昇圧チョッパに入力する電流(iL)のチョッピングを前記昇圧チョッパに行わせる、請求項1から請求項11のいずれか一つに記載の電力変換器の制御方法。
【請求項16】
前記電力変換器(100)は、
前記スイッチ(4a,Sc,Qc)がスイッチングする前記周波数よりも低いカットオフ周波数を有するフィルタ(2)
を更に備え、
前記コンバータ(3)には前記フィルタ(2)を介して前記交流電圧(Vin)が入力される、請求項15に記載の電力変換器の制御方法。
【請求項17】
前記電力変換器(100)は、
前記スイッチ(4a,Sc,Qc)がスイッチングする前記周波数よりも低いカットオフ周波数を有するフィルタ(2)
を更に備え、
前記コンバータ(3)は前記フィルタ(2)を介して前記第1の瞬時電力(Pin=Prec+PL)を出力する、請求項15に記載の電力変換器の制御方法。
【請求項18】
前記第1デューティ(dc)を制御して、前記第2の交流電力が前記第2閾値よりも小さい場合に:
前記第1デューティ(dc)が0である非導通期間と、前記第1デューティ(dc)が正である導通期間とを交互に設ける制御;
前記非導通期間の長さが実質的に0である他の制御;
のいずれかを採用する、請求項1から請求項11のいずれか一つに記載の電力変換器の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は電力変換に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば令和3年電気学会全国大会S12-7(吉岡、井上、佐々木、「電力変換装置におけるEMC規格の最新動向」:以下「非特許文献1」と称される)には、今後、電力変換装置におけるスイッチング動作の周波数帯域に、EMI(電磁気妨害)についての要件が課せられることが示されている。
【0003】
非特許文献1には、低圧系高次高調波の規格と、低圧系伝導妨害の規格とに関する検討状況が記載される。前者の規格は対象となる周波数を2~9kHzとするIEC61000-3-10として、後者の規格は対象となる周波数を9~150kHzとするIEC-61000-6-3として、それぞれ測定法と限度値とが規定される予定である。これらの規格においては、所定の疑似電源回路網(LISN:Line Impedance Stabilization Network)を用いて、それぞれの電圧実効値、電圧順尖頭値が評価される。
【0004】
現在、電力変換装置が備える整流回路は電圧形が主流である。電圧形の整流回路においては、リアクトルを介して商用電圧をスイッチングし、直流電圧を得て力率を改善する方式が採用される。当該方式においては、整流回路に流れるリプル電流を上記の疑似電源回路網によって電圧値に換算した値が上記の規格から逸脱しないように、当該リプル電流を低減する対策が望まれる。
【0005】
空気調和機に利用される電力変換器には、空気調和機の負荷がいわゆる部分負荷であるときの効率の向上と、運転範囲の拡大との両立が要求される。かかる要求に応えるため、電力変換器の動作において、整流動作とスイッチング動作とが併用される技術が提案される。
【0006】
特許第6478881号公報(以下で「特許文献1」として示される)は、同期整流と、部分スイッチングと、高速スイッチングとを、選択的に実施する技術を開示する。負荷が小さい中間運転領域においては同期整流が採用され、中間運転領域よりも負荷が大きい定格運転領域においては部分スイッチングが採用され、更に負荷が大きい運転領域においては高速スイッチングが採用される。
【0007】
コンデンサとスイッチング素子(以下では当該スイッチング素子は、コンデンサからインバータへの放電の有無を制御する観点から「放電スイッチ」とも称される)との直列接続を、コンバータとインバータとの間に並列に設ける、アクティブバッファ付き単相三相電力変換器も提案されている。
【0008】
例えば特許第5804167号公報は、アクティブバッファ付き単相三相電力変換器において、コンバータから出力される電圧(以下「コンバータ出力電圧」とも称される)を昇圧して当該コンデンサを充電する技術を開示する。特許第5804167号公報は、アクティブバッファ付き単相三相電力変換器において、コンバータが出力する電力をアクティブバッファに与えられる電力とインバータに与えられる電力とに分配し、アクティブバッファに与えられる電力はインバータに与えられる電力よりも小さい技術を開示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特許第6478881号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
特許第6478881号公報における同期整流による効果を得るためには、数mHオーダーのインダクタンスを有するリアクトルが要求される。このようなインダクタンスを有するリアクトルには、費用を下げる観点から珪素鋼板が利用される。珪素鋼板は鉄損が大きいため、部分スイッチングあるいは高速スイッチングの動作が基づく周波数は低いことが望ましい。他方、リアクトルの騒音を低減する観点からは、当該周波数は可聴域よりも高いことが望ましい。これらのことから、当該周波数は、可聴域上限の16kHz程度までしか低下されない。
【0011】
9~150kHzの範囲の周波数を対象とする低圧系伝導妨害についての規格へ対応する観点から、電力変換装置におけるスイッチング動作の周波数を高めたり、リアクトルのインダクタンスを大きくしたりする技術も想定される。しかしかかる技術は、リアクトルの損失(放熱を含む)を増大させ、電力変換装置の効率を低下させ、空気調和機の運転範囲を縮小させる。キャリアフィルタの利用も想定されるが、それは同期整流時における効率の低下や、電力変換装置の大型化を招く。
【0012】
アクティブバッファ付き単相三相電力変換器、とくにコンバータ出力電圧を昇圧してコンデンサを充電する構成においては、インバータに流れる直流電流は、コンバータを介して電源から供給される電流と、バッファ回路から供給される電流とが、所定のキャリアに基づく放電スイッチのオン/オフによって切り替わる。
【0013】
アクティブバッファ付き単相三相電力変換器において、放電スイッチにおけるスイッチングに利用されるキャリアの周期には、例えばインバータにおけるスイッチングに利用されるキャリアと同じ周期が選定される(例えば特開2021-58002号公報)。インバータにおけるスイッチングには例えば5kHz程度の周波数を有するキャリアが採用されるので、2~9kHzの範囲の周波数を対象とする低圧系高次高調波の規格が満足されることが望ましい。
【0014】
アクティブバッファ付き単相三相電力変換器におけるコンバータは、特許第6478881号公報に開示される技術とは異なり電流形変換器を基本とし、キャリアフィルタが採用される。低圧系高次高調波の規格における限度値に対する余裕度を高めるには、キャリアフィルタのフィルタ減衰率の増大や、キャリア周波数の増大が望ましいが、そのような増大は、アクティブバッファ付き単相三相電力変換器の大型化や効率低下を伴い易い。
【0015】
本開示では電力変換器において高調波を低減する技術が提案される。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本開示の、電力変換器の制御方法は電力変換器(100)を制御する方法である。前記電力変換器(100)は、直流リンク(7)と、単相の交流電圧(Vin)を整流し、前記交流電圧に基づく第1の交流電力を直流電力に変換して第1の瞬時電力(Pin)を出力するコンバータ(3)と、前記直流リンク(7)との間で電力を授受し、第2の瞬時電力(Pbuf)でバッファリングするアクティブバッファ(4)と、前記直流リンク(7)から入力される第3の瞬時電力(Pdc)を第2の交流電力(Pout)に変換して出力するインバータ(5)とを備える。
【0017】
前記アクティブバッファ(4)は、前記交流電圧(Vin)が整流されて得られる整流電圧(Vrec)を昇圧して第1電圧(Vc)を生成するブースタ(4b)と、前記直流リンクに対して前記ブースタ(4b)から前記第1電圧(Vc)を断続的に印加するスイッチ(4a,Sc,Qc)とを有する。
【0018】
本開示の、電力変換器の制御方法の第1の態様は、前記スイッチ(4a,Sc,Qc)を第1デューティ(dc)で導通させ、前記第1デューティ(dc)および前記第1電圧(Vc)のいずれかまたは両方を制御して:前記第2の交流電力(Pout)が第1閾値よりも小さな第2閾値以上である場合に、等価直流電圧(Vdc)を前記整流電圧(Vrec)の波高値(Vm)より高くかつ前記第1電圧(Vc)以下に制御し;前記第2の交流電力(Pout)が前記第1閾値よりも大きな第1値をとるときの前記等価直流電圧(Vdc)を、前記第2の交流電力(Pout)が前記第2閾値よりも大きく且つ前記第1閾値よりも小さな第2値をとるときの前記等価直流電圧(Vdc)よりも高める。
【0019】
前記等価直流電圧(Vdc)は前記直流リンク(7)に印加され、前記インバータ(5)に流れる電流の平均値である直流電流(Idc)で前記第3の瞬時電力(Pdc)を除した直流電圧である。
【0020】
本開示の、電力変換器の制御方法の第1の態様によれば、電力変換器における高調波が低減される。
【0021】
本開示の、電力変換器の制御方法の第2の態様は、その第1の態様であって、前記アクティブバッファ(4)は、前記直流リンク(7)から前記第1の瞬時電力(Pin)の一部である第4の瞬時電力(PL)を入力し、前記直流リンク(7)へ第5の瞬時電力(Pc)を出力して、前記第2の瞬時電力(Pbuf=Pc-PL)をバッファリングする。
【0022】
前記第3の瞬時電力(Pdc)は、前記第1の瞬時電力(Pin)から前記第4の瞬時電力(PL)を減じた第6の瞬時電力(Prec)と、前記第5の瞬時電力(Pc)との和である。電力比は、前記第1の瞬時電力(Pin)に対する前記第6の瞬時電力(Prec)の比(Prec/Pin)である。本開示の、電力変換器の制御方法の第2の態様は、前記第2の交流電力(Pout)が前記第1値をとる場合の前記電力比を、前記第2値をとる場合の前記電力比よりも小さくする。
【0023】
本開示の、電力変換器の制御方法の第3の態様は、その第1の態様または第2の態様であって、前記第2の交流電力(Pout)が前記第2閾値よりも大きい場合に、前記第1デューティ(dc)を1から引いた値である第2デューティ(drec)の最大値は0より大きく1/√3未満、または1/√3より大きく1以下である。本開示の、電力変換器の制御方法の第3の態様は、高調波をより低減する。
【0024】
本開示の、電力変換器の制御方法の第4の態様は、その第3の態様であって、前記第2の交流電力(Pout)が前記第2閾値よりも大きい場合に、前記第2デューティ(drec)の最大値は0より大きく1/√3未満である。
【0025】
本開示の、電力変換器の制御方法の第4の態様によれば、等価直流電圧を高めることができる。第3の態様によって第2デューティの最大値が1/√3より大きく1以下であることは、電力変換器の効率を向上させる。
【0026】
本開示の、電力変換器の制御方法の第5の態様および第6の態様のいずれもが、その第4の態様であって、昇圧比(α)は前記第1電圧(Vc)を前記波高値(Vm)で除した値であり、電圧利用率(R)は前記等価直流電圧を前記波高値(Vm)で除した値であり、前記昇圧比(α)は第3値(α1)および前記第3値よりも大きな第4値(α2)のいずれをも取り得る。前記第2の交流電力(Pout)が前記第2閾値よりも大きい場合に:前記昇圧比(α)が前記第3値(α1)をとるときには、1より大きい第1範囲(J1)内の前記電圧利用率(R)に対して、前記スイッチ(4a,Sc,Qc)のスイッチングによる前記交流電圧(Vin)に対する高調波の振幅(Ih’)が所定の閾値(TH2)以上であり、前記第1範囲(J1)外の前記電圧利用率(R)に対して、前記高調波の前記振幅(Ih’)が前記所定の閾値(TH2)未満である。前記昇圧比(α)が前記第4値(α2)をとるときには、1より大きい第2範囲(J2)内の前記電圧利用率(R)に対して、前記高調波の前記振幅(Ih’)が前記所定の閾値(TH2)以上であり、前記第2範囲(J2)外の前記電圧利用率(R)に対して、前記高調波の前記振幅(Ih’)が前記所定の閾値(TH2)未満である。
【0027】
本開示の、電力変換器の制御方法の第5の態様は、前記電圧利用率(R)が前記第2範囲の上限(J2u)よりも大きいときには前記昇圧比(α)に前記第4値(α2)を採用する。
【0028】
本開示の、電力変換器の制御方法の第6の態様は、前記電圧利用率(R)が前記第1範囲の上限(J1u)よりも大きく前記第2範囲(J2)の上限(J2u)以下のときには前記昇圧比(α)に前記第3値(α1)を採用する。
【0029】
本開示の、電力変換器の制御方法の第7の態様は、その第4の態様であって、昇圧比(α)は前記第1電圧(Vc)を前記波高値(Vm)で除した値であり、電圧利用率(R)は前記等価直流電圧を前記波高値(Vm)で除した値であり、前記昇圧比(α)は第3値(α1)および前記第3値(α1a;α1b)よりも大きな第4値(α2)のいずれをも取り得る。前記第2の交流電力(Pout)が前記第2閾値よりも大きい場合に:前記昇圧比(α)が前記第3値(α1a;α1b)をとるときには、1より大きい第1下限値(d1)以下の前記電圧利用率(R)に対して、前記スイッチ(4a,Sc,Qc)のスイッチングによる前記交流電圧(Vin)に対する高調波の振幅(Ih’)が所定の閾値(TH3)以上であり、前記第1下限値(d1a;d1b)より大きい前記電圧利用率(R)に対して、前記高調波の前記振幅(Ih’)が前記所定の閾値(TH3)未満である。前記昇圧比(α)が前記第4値(α2)をとるときには、前記第1下限値(d1a;d1b)よりも高い第2下限値(d2)以下の前記電圧利用率(R)に対して、前記高調波の前記振幅(Ih’)が前記所定の閾値(TH3)以上であり、前記第2下限値(d2)より大きい前記電圧利用率(R)に対して、前記高調波の前記振幅(Ih’)が前記所定の閾値(TH3)未満である。
【0030】
本開示の、電力変換器の制御方法の第7の態様は、前記第3値(α1b)が前記第2下限値(d2)以上のときには、前記電圧利用率(R)が前記第1下限値(d1b)より大きく前記第2下限値(d2)未満のときに前記昇圧比(α)に前記第3値(α1b)を採用し;前記第3値(α1a)が前記第2下限値(d2)未満のときには、前記電圧利用率(R)が前記第1下限値(d1a)より大きく前記第3値(α1)未満のときに前記昇圧比(α)に前記第3値(α1a)を採用する。
【0031】
本開示の、電力変換器の制御方法の第8の態様は、その第7の態様であって、前記第3値(α1b)が前記第2下限値(d2)以上のときには、前記電圧利用率(R)が前記第2下限値(d2)より大きいときに前記昇圧比(α)に前記第4値(α2)を採用する。
【0032】
本開示の、電力変換器の制御方法の第8の態様によれば、等価直流電圧が高まる。
【0033】
本開示の、電力変換器の制御方法の第9の態様は、その第3の態様であって、前記第2の交流電力(Pout)が前記第2閾値よりも大きい場合に、前記第2デューティ(drec)の最大値は1/√3より大きく1以下である。
【0034】
本開示の、電力変換器の制御方法の第9の態様によれば、電力変換器の効率が向上する。
【0035】
本開示の、電力変換器の制御方法の第10の態様および第11の態様のいずれもが、その第9の態様であって、昇圧比(α)は前記第1電圧(Vc)を前記波高値(Vm)で除した値であり、電圧利用率(R)は前記等価直流電圧を前記波高値(Vm)で除した値であり、前記昇圧比(α)は第3値(α1)および前記第3値よりも大きな第4値(α2)のいずれをも取り得る。前記第2の交流電力(Pout)が前記第2閾値よりも大きい場合に:前記昇圧比(α)が前記第3値(α1)をとるときには、1より大きい第1範囲(J1)内の前記電圧利用率(R)に対して、前記スイッチ(4a,Sc,Qc)のスイッチングによる前記交流電圧(Vin)に対する高調波の振幅(Ih’)が所定の閾値(TH2)以上であり、前記第1範囲(J1)外の前記電圧利用率(R)に対して、前記高調波の前記振幅(Ih’)が前記所定の閾値(TH2)未満である。前記昇圧比(α)が前記第4値(α2)をとるときには、1より大きい第2範囲(J2)内の前記電圧利用率(R)に対して、前記高調波の前記振幅(Ih’)が前記所定の閾値(TH2)以上であり、前記第2範囲(J2)外の前記電圧利用率(R)に対して、前記高調波の前記振幅(Ih’)が前記所定の閾値(TH2)未満である。
【0036】
本開示の、電力変換器の制御方法の第10の態様は、前記電圧利用率(R)が前記第1範囲の下限(J1d)以上であって前記第2範囲(J2)の下限(J2d)未満のときには前記昇圧比(α)に前記第4値(α2)を採用する。
【0037】
本開示の、電力変換器の制御方法の第11の態様においては、前記第1デューティ(dc)が第5の値をとり、かつ前記昇圧比(α)が前記第4値(α2)をとるときに前記電圧利用率(R)が前記第1範囲の下限(J1d)をとる。本開示の、電力変換器の制御方法の第11の態様は、前記電圧利用率(R)が前記第1範囲の下限(J1d)未満のときには、前記第1デューティには前記第5の値未満の値を採用し、前記昇圧比(α)には前記第3値(α1)を採用する。
【0038】
本開示の、電力変換器の制御方法の第11の態様によれば、電力変換器の効率が向上する。
【0039】
本開示の、電力変換器の制御方法の第12の態様は、その第1の態様から第11の態様のいずれかであって、前記ブースタ(4b)は昇圧チョッパを有する。本開示の、電力変換器の制御方法の第12の態様は、前記インバータ(5)のスイッチングに用いられるキャリアの周波数よりも高い周波数を用いて、前記昇圧チョッパに入力する電流(iL)のチョッピングを前記昇圧チョッパに行わせる。
【0040】
本開示の、電力変換器の制御方法の第13の態様は、その第12の態様であって、前記電力変換器(100)は、前記キャリアの前記周波数よりも低いカットオフ周波数を有するフィルタ(2)を更に備える。前記コンバータ(3)には前記フィルタ(2)を介して前記交流電圧(Vin)が入力される。
【0041】
本開示の、電力変換器の制御方法の第14の態様は、その第12の態様であって、前記電力変換器(100)は、前記キャリアの前記周波数よりも低いカットオフ周波数を有するフィルタ(2)を更に備える。前記コンバータ(3)は前記フィルタ(2)を介して前記第1の瞬時電力(Pin=Prec+PL)を出力する。
【0042】
本開示の、電力変換器の制御方法の第13の態様および第14の態様のいずれもが、インバータのスイッチングに起因するリプル電流のみならず、ブースタにおけるスイッチングに起因するリプル電流を、単相の交流側へ伝搬させないことに寄与する。
【0043】
本開示の、電力変換器の制御方法の第15の態様は、その第1の態様から第11の態様のいずれかであって、前記ブースタ(4b)は昇圧チョッパを有する。本開示の、電力変換器の制御方法の第15の態様は、前記スイッチ(4a,Sc,Qc)がスイッチングする周波数よりも高い周波数を用いて、前記昇圧チョッパに入力する電流(iL)のチョッピングを前記昇圧チョッパに行わせる。
【0044】
本開示の、電力変換器の制御方法の第16の態様は、その第15の態様であって、前記電力変換器(100)は、前記スイッチ(4a,Sc,Qc)がスイッチングする前記周波数よりも低いカットオフ周波数を有するフィルタ(2)を更に備える。前記コンバータ(3)には前記フィルタ(2)を介して前記交流電圧(Vin)が入力される。
【0045】
本開示の、電力変換器の制御方法の第17の態様は、その第15の態様であって、前記電力変換器(100)は、前記スイッチ(4a,Sc,Qc)がスイッチングする前記周波数よりも低いカットオフ周波数を有するフィルタ(2)を更に備える。前記コンバータ(3)は前記フィルタ(2)を介して前記第1の瞬時電力(Pin=Prec+PL)を出力する。
【0046】
本開示の、電力変換器の制御方法の第16の態様および第17の態様のいずれもが、スイッチのスイッチングに起因するリプル電流のみならず、ブースタにおけるスイッチングに起因するリプル電流を、単相の交流側へ伝搬させないことに寄与する。
【0047】
本開示の、電力変換器の制御方法の第18の態様は、その第1の態様から第17の態様のいずれかであって、前記第1デューティ(dc)を制御して、前記第2の交流電力が前記第2閾値よりも小さい場合に:前記第1デューティ(dc)が0である非導通期間と、前記第1デューティ(dc)が正である導通期間とを交互に設け、前記非導通期間と前記導通期間のいずれもが前記交流電圧(Vin)の四半周期の長さを有する制御;前記非導通期間の長さが実質的に0である他の制御;のいずれかを採用する。
【0048】
本開示の、電力変換器の制御方法の第18の態様によれば、電力変換器の効率が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0049】
図1】本実施の形態にかかる電力変換器およびその周辺を示す回路図である。
図2】電力変換器における電力の収支を模式的に示すブロック図である。
図3】電力変換器の等価回路を示す回路図である。
図4】電力の比の電圧利用率に対する依存性を示すグラフである。
図5】等価的PWM変調を例示するグラフである。
図6】電源周波数を基本周波数としたときの次数と、高調波成分の振幅との関係を示すグラフである。
図7】電源周波数を基本周波数としたときの次数と、高調波成分の振幅との関係を示すグラフである。
図8】周波数に対する高調波振幅を折れ線で示すグラフである。
図9】周波数に対する高調波振幅を折れ線で示すグラフである。
図10】周波数に対する高調波振幅を折れ線で示すグラフである。
図11】変調率と高調波振幅との関係を例示するグラフである。
図12】周波数に対する高調波振幅を折れ線で示すグラフである。
図13】周波数に対する高調波振幅を折れ線で示すグラフである。
図14】周波数に対する高調波振幅を折れ線で示すグラフである。
図15】変調率と高調波振幅との関係を例示するグラフである。
図16】高調波振幅の電圧利用率に対する依存性を示すグラフである。
図17】高調波振幅の電圧利用率に対する依存性を示すグラフである。
図18】電力変換器を制御する制御装置の概念的な構成の一例を示すブロック図である。
図19】電力変換器の制御方式の使い分けを行うルーチンを例示するフローチャートである。
図20】パルス波形をキャリア周期において示すグラフである。
図21】時比率とパルス波形のコンバータ側キャリア周波数の成分の振幅との関係を示すグラフである。
図22】信号波の位相と時比率との関係を示すグラフである。
図23】信号波の位相と時比率との関係を示すグラフである。
図24】電力変換器を部分的に示す回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0050】
A.電力変換器の構成.
(a-1)全体構成と電力収支.
図1は本実施の形態にかかる電力変換器100およびその周辺を示す回路図である。電力変換器100は直接形電力変換装置であり、その構成自体は例えば特許第5804167号公報によって公知である。電力変換器100は本開示にかかる電力変換方法が適用される電力変換器の例示であるともいえるし、所定の制御が行われることによって実現される、本開示にかかる電力変換器の例示であるともいえる。
【0051】
図2は電力変換器100における電力の収支を模式的に示すブロック図である。当該ブロック図の構成自体も、例えば特許第5804167号公報によって公知である。
【0052】
電力変換器100は、フィルタ2と、コンバータ3と、アクティブバッファ4と、インバータ5と、直流リンク7とを備えている。アクティブバッファ4は後述されるように電力をバッファリングするので、特許第5804167号公報においては「電力バッファ回路4」として紹介されている。
【0053】
電力変換器100には単相交流電源1から単相の交流電圧Vin、単相の交流電流Iinが入力される。
【0054】
コンバータ3は、交流電圧Vinを整流して整流電圧Vrecを得る。コンバータ3は、当該整流によって交流電力を直流電力に変換して瞬時電力Pinを出力する。
【0055】
アクティブバッファ4は、コンバータ3から瞬時電力Pinの一部である瞬時電力PL(特許第5804167号公報においては「Pl」と標記される)を入力し、瞬時電力Pcを出力して、瞬時電力Pbuf(=Pc-PL)をバッファリングする。
【0056】
インバータ5は、瞬時電力Pinから瞬時電力PLを減じた瞬時電力Prec(=Pin-PL)をコンバータ3から入力し、瞬時電力Pcをアクティブバッファ4から入力する。インバータ5は、瞬時電力Precと瞬時電力Pcとの和である瞬時電力Pdcを、瞬時電力Poutに変換して出力する(特許第5804167号公報においては「Pout」の標記が省略される)。瞬時電力Poutは交流負荷6へ出力される。
【0057】
直流リンク7は直流電源線LH,LLを有する。
【0058】
(a-2)フィルタ2の説明.
コンバータ3はフィルタ2を介してアクティブバッファ4と接続される。フィルタ2はローパスフィルタとして機能する。例えばフィルタ2は、リアクトルL2とコンデンサC2とを備える。コンデンサC2は例えば直流電源線LHと直流電源線LLとの間に備えられ、アクティブバッファ4の入力側に対して並列に設けられる。
【0059】
フィルタ2はアクティブバッファ4の動作やインバータ5の動作に伴うスイッチングに起因するリプル電流が単相交流電源1へ伝搬することを抑制する。他方、フィルタ2は整流電圧Vrecをアクティブバッファ4へ伝達する機能も有する。よって、フィルタ2のカットオフ周波数は整流電圧Vrecをコンバータ3からアクティブバッファ4へ伝達できる程度に高く、スイッチングに起因するリプル電流が単相交流電源1へ伝搬することを抑制できる程度に低く設定される。
【0060】
例えばフィルタ2のカットオフ周波数は、インバータ5のスイッチングに用いられるキャリアの周波数(以下「インバータ側キャリア周波数」とも称される)よりも低い。例えばフィルタ2のカットオフ周波数は、アクティブバッファ4が備えるコンデンサの放電の有無を決定するスイッチ(後述される)がスイッチングする周波数よりも低い。
【0061】
電力の収支においてフィルタ2は無視することができる。コンバータ3における損失を無視すると、交流電圧Vinと交流電流Iinとによってコンバータ3に与えられた主事電力が瞬時電力Pinとして、直流リンク7に与えられる。
【0062】
(a-3)コンバータ3の説明.
コンバータ3は例えばダイオードブリッジを採用し、ダイオードD31~D34を備える。ダイオードD31~D34はブリッジ回路を構成し、交流電圧Vinを単相全波整流して整流電圧Vrec(これは理想的には交流電圧Vinの絶対値|Vin|に等しい)に変換する。
【0063】
コンバータ3はフィルタ2を介してアクティブバッファ4へ整流電圧Vrecを印加する。整流電圧Vrecは直流電源線LH,LLの間に出力され、直流電源線LHには直流電源線LLよりも高い電位が印加される。
【0064】
(a-4)アクティブバッファ4の説明.
アクティブバッファ4はスイッチング回路4a及びブースタ4bを有する。アクティブバッファ4は直流リンク7から瞬時電力PLを入力し、直流リンク7へ瞬時電力Pcを出力する。
【0065】
(a-4-1)スイッチング回路4aの説明.
スイッチング回路4aは、ダイオードD42とトランジスタQcとを含む。ダイオードD42は直流電源線LH,LLの間で、後述されるコンデンサC4と直列に接続される。ダイオードD42は、その順方向が直流電源線LHから直流電源線LLへ向かう方向に配置される。ダイオードD42はコンデンサC4よりも直流電源線LH寄りに配置される。
【0066】
トランジスタQcには、例えば絶縁ゲート型バイポーラトランジスタ(以下「IGBT」と略記)が採用される。トランジスタQcはダイオードD42に対して逆並列接続される。ここで逆並列接続とは、順方向が相互に逆となって並列に接続されていることを指す。具体的にはトランジスタQcの順方向は直流電源線LLから直流電源線LHへと向かう方向であり、ダイオードD42の順方向は直流電源線LHから直流電源線LLへと向かう方向である。
【0067】
トランジスタQcの導通によってコンデンサC4が放電し、アクティブバッファ4から直流リンク7へ瞬時電力Pcが出力される。コンデンサC4から直流リンク7へ電流icが流れ、瞬時電力Pcがアクティブバッファ4から直流リンク7へ出力される。
【0068】
電流irec1は、コンバータ3から直流リンク7を経由してインバータ5へ流れる(後述される)。
【0069】
インバータ5へ供給される直流電流Idcは、式(1)に示される、通流比dc,drecに基づく電流ic,irec1として分流する。
【0070】
【数1】
【0071】
(a-4-2)ブースタ4bの説明.
ブースタ4bは、コンデンサC4と、ダイオードD40と、リアクトルL4と、トランジスタQLとを含む。
【0072】
ダイオードD40は、カソードと、アノードとを備え、当該カソードはトランジスタQcとコンデンサC4との間に接続される。リアクトルL4は直流電源線LHとダイオードD40のアノードとの間に接続される。トランジスタQLは直流電源線LLとダイオードD40のアノードとの間に接続される。トランジスタQLには例えばIGBTが採用される。ブースタ4bにおいてコンデンサC4はダイオードD40を経由して電圧Vcに充電される。以下、コンデンサC4の両端にかかる電圧Vcは「コンデンサ電圧」とも称される。
【0073】
例えばトランジスタQLを断続的に開閉して(いわゆるチョッピングによって)リアクトルL4にエネルギーを蓄積/放出させることによって、整流電圧Vrecを昇圧してコンデンサC4を充電する。このような動作を行うことから、ダイオードD40と、リアクトルL4と、トランジスタQLとは昇圧チョッパとして理解され得る。
【0074】
ただし、ブースタ4bは整流電圧Vrecを昇圧せずにコンデンサC4を充電する動作も行い得る。例えばトランジスタQLを開き続ける(非導通が維持される)ことにより、リアクトルL4に流れる電流iLがダイオードD40を介してコンデンサC4を充電する。かかる充電により、コンデンサ電圧Vcは、整流電圧Vrecの波高値Vm(これは交流電圧Vinの振幅でもあり、一定値をとると想定される)と等しいと見ることができる。一般に波高値Vmは、ダイオードD31,D33,D40およびリアクトルL2,L4における電圧降下が無視できる程度に、大きいからである。
【0075】
ブースタ4bの動作においてVc=Vmである動作は、例えば特開2021-58002号公報において公知である。ブースタ4bの動作においてVc>Vmである動作は、例えば特許第5804167号公報において公知である。
【0076】
ブースタ4bは、ダイオードD41を更に含む。ダイオードD41はトランジスタQLに対して逆並列接続される。具体的にはトランジスタQLの順方向は直流電源線LHから直流電源線LLへと向かう方向であり、ダイオードD41の順方向は直流電源線LLから直流電源線LHへと向かう方向である。
【0077】
直流電源線LHの方が直流電源線LLよりも電位が高いので、基本的にはダイオードD41には電流が流れない。Vc≧Vm≧Vrecであるので、基本的にはダイオードD42には電流が流れない。
【0078】
直流リンク7へはコンバータ3から電流irec(これはフィルタ2で阻止される高調波成分を無視して交流電流Iinの絶対値|Iin|に等しい)が流れ込む。直流リンク7からブースタ4bへは電流iLが流れ込み、ブースタ4bとスイッチング回路4aとの間の直流リンク7には電流irec1が流れる。電流irecから電流iL,irec1が分流するので、式(2)が成立する。
【0079】
【数2】
【0080】
式(1)で示される様に、直流電流Idcは直流リンク7を介して、電流irec1と電流icとして分流する。
【0081】
(a-4-3)電流阻止素子D0の説明.
電流阻止素子D0が、スイッチング回路4aとブースタ4bとの間において、直流電源線LHに介挿される。スイッチング回路4aが導通しているとき、直流電源線LHには、電流阻止素子D0のインバータ5側においてアクティブバッファ4からコンデンサ電圧Vcが印加され、電流阻止素子D0のコンバータ側においてコンバータ3からフィルタ2を介して整流電圧Vrecが印加される。コンバータ3はフィルタ2を介して瞬時電力Pinを出力する。
【0082】
Vc≧Vm≧Vrecであることから、電流阻止素子D0は、そのインバータ5側の電位をそのコンバータ3側の電位以上に維持することに寄与する。電流阻止素子D0は、直流電源線LHを介してコンデンサC4からフィルタ2へ向かう電流が流れることを阻止し、ひいてはコンデンサ電圧VcによるコンデンサC2の充電を阻止する。
【0083】
電流阻止素子D0には、例えばダイオードが採用される。当該ダイオードのアノードはリアクトルL4を介してダイオードD40のアノードに接続される。当該ダイオードのカソードはスイッチング回路4aを介してダイオードD40のカソードに接続される。
【0084】
(a-5)インバータ5の説明.
インバータ5は、電流阻止素子D0よりもインバータ5側における直流電源線LH,LLの間の直流電圧を交流電圧に変換し、当該交流電圧を出力端Pu,Pv,Pwに出力する。インバータ5は6つのスイッチング素子Sup,Svp,Swp,Sun,Svn,Swnを含む。スイッチング素子Sup,Svp,Swpはそれぞれ出力端Pu,Pv,Pwと直流電源線LHとの間に接続され、スイッチング素子Sun,Svn,Swnはそれぞれ出力端Pu,Pv,Pwと直流電源線LLとの間に接続される。インバータ5はいわゆる電圧形インバータを構成し、6つのダイオードDup,Dvp,Dwp,Dun,Dvn,Dwnを含む。
【0085】
ダイオードDup,Dvp,Dwp,Dun,Dvn,Dwnはいずれもそのカソードを直流電源線LH側に、そのアノードを直流電源線LL側に向けて配置される。ダイオードDupは、出力端Puと直流電源線LHとの間で、スイッチング素子Supに対して逆並列接続される。同様にして、ダイオードDvp,Dwp,Dun,Dvn,Dwnは、それぞれスイッチング素子Svp,Swp,Sun,Svn,Swnに対して逆並列接続される。
【0086】
負荷6へ、出力端Pu,Pv,Pwからそれぞれ交流電流Iu,Iv,Iwが出力され、これらは三相交流電流を構成する。例えばスイッチング素子Sup,Svp,Swp,Sun,Svn,SwnにはIGBTが採用される。
【0087】
(a-6)交流負荷6の説明.
交流負荷6は誘導性負荷であり、例えば三相モータである。図1においては交流負荷6が誘導性負荷であることを示す等価回路で図示されている。具体的には、交流負荷6は、リアクトルLu,Lv,Lwと抵抗Ru,Rv,Rwとを含んで示される。リアクトルLuと抵抗Ruとの直列接続の一端が出力端Puに接続される。リアクトルLvと抵抗Rvとの直列接続の一端が出力端Pvに接続される。リアクトルLwと抵抗Rwとの直列接続の一端が出力端Pwに接続される。これらの3つの直列接続のそれぞれの他端同士が相互に接続され、交流負荷6はいわゆるスター結線と称される構成を有する。
【0088】
(a-7)等価回路の説明.
図3は、電力変換器100の等価回路を示す回路図である。当該等価回路において、単相交流電源1、フィルタ2、およびコンバータ3は纏めて、電圧|Vin|を出力する電圧源として表される。
【0089】
当該等価回路において電流irec1は、スイッチSrecが導通するときにこれを経由する電流irec1として等価的に表されている。スイッチSrecの導通はirec1>0を示し、スイッチSrecの非導通はirec1=0を示す。スイッチSrecがどのように導通/非導通するかについては後述される。
【0090】
電流icは、スイッチScが導通するときにこれを経由する電流icとして等価的に表されている。スイッチScの導通はic>0を示し、スイッチScの非導通はic=0を示す。スイッチScの導通/非導通は、それぞれトランジスタQcのオン/オフを等価的に示す。
【0091】
当該等価回路において、ブースタ4bを構成するコンデンサC4、リアクトルL4、ダイオードD40、およびスイッチSLが表され、リアクトルL4を流れる電流iLが付記されている。スイッチSLの導通/非導通は、それぞれトランジスタQLのオン/オフを等価的に示す。
【0092】
インバータ5は、スイッチSz、直流電流源Idc、および等価電圧源Voを用いて示される。スイッチSzの導通は、インバータ5において出力端Pu,Pv,Pwが直流電源線LH,LLのいずれか一方に共通して接続される状況(以下「環流状況」とも称される)を等価的に示す。スイッチSzが導通するときには、スイッチSzに電流izが流れる。電流izは環流状況におけるインバータ5を介して交流負荷6に流れる電流(以下「零相電流」とも称される)を等価的に示す。
【0093】
スイッチSzが導通しないときには直流電流Idcは、電圧|Vin|を出力する電圧源から電流irec1として、ブースタ4bから電流icとして、時分割でインバータ5へ流れる。
【0094】
等価電流源Ioは、インバータ5から交流負荷6に流れる交流電流Iu,Iv,Iwを、直流電流Ioに換算して等価的に示す。等価電圧源Voは、インバータ5が交流負荷6に対して印加する交流電圧を、直流電圧に変換して等価的に表す。
【0095】
等価回路において、直流電源線LH,LL間の等価直流電圧Vdcと、等価電圧源Voが出力する直流電圧Voとを用いて、インバータ5の変調率DはVo/Vdcとして表される。
【0096】
インバータ5に入力される瞬時電力Pdcと、インバータ5が出力する瞬時電力Poutとは等しいことと(図2参照)、瞬時電力Pdcが等価直流電圧Vdcと直流電流Idcとの積で表されることと、瞬時電力Poutが直流電圧Voと等価電流源Ioが流す直流電流Ioとの積で表されることとから、変調率DはIdc/Ioとしても表される。
【0097】
等価回路においてスイッチSrec,Sc,Szが導通するそれぞれのデューティdrec,dc,dzを導入して、式(2)によって式(3)が成立する。デューティdrec,dcは上述の通流比drec,dcと等しい。
【0098】
【数3】
【0099】
電流irec1,ic,izはそれぞれ直流電流Idcにデューティdrec,dc,dzを乗算したものであるので、これらはスイッチSrec,Sc,Szのスイッチング周期における平均値である。
【0100】
また直流電流IdcはスイッチSrec,Sc,Szをそれぞれ流れる電流irec1,ic,izの総和であるので、式(4)が成立する。但し、0≦drec≦1,0≦dc≦1,0≦dz≦1である。
【0101】
【数4】
【0102】
デューティdrec,dc,dzの具体的な例は、例えば特許第5804167号公報、特許第5629885号公報、特開2021-58002号公報において紹介される。
【0103】
スイッチSzの導通時には電流irec1,icのいずれも0であり、スイッチSrec,Scのいずれもが等価的に非導通である。スイッチSzが非導通のときにはスイッチScが導通し得る。スイッチScが導通するとコンデンサ電圧Vc(≧Vm≧Vrec)が直流リンク7に印加されるのでirec1=0であり、スイッチSrec,Szのいずれもが等価的に非導通である。スイッチSzが非導通のときにスイッチScも非導通であれば、直流電源線LHにおいて電流irec1が流れる。よって瞬時的にはスイッチSrec,Sc,Szは択一的に導通すると言える。
【0104】
コンバータ3は能動的には直流リンク7へ電流irec1を流さない。デューティdzによる制限下でのインバータ5のスイッチングと、デューティdcに基づいたスイッチScのスイッチングとによって、スイッチSrecの導通/非導通が決定され、これに応じて電流irec1が流れたり(irec1>0)、流れなかったり(irec1=0)する。
【0105】
直流リンク7においてインバータ5への電力供給に利用される直流電圧が電力変換において意味を持つ。換言すれば瞬時的な直流電圧であってインバータ5が電力変換に用いないものは、電力の観点でも高調波の観点でも意味を有しない。そしてインバータ5は零相電流izが流れる期間においては、直流リンク7における直流電圧を利用して電力変換を行うことができない。
【0106】
この観点から等価直流電圧Vdcは、直流リンク7に印加され、かつ瞬時電力Pdcを直流電流Idcで除した直流電圧である。
【0107】
スイッチSrecが導通するときにはスイッチScが非導通であって直流リンク7に対して整流電圧Vrecが印加され、スイッチScが導通するときにはスイッチSrecが非導通であって直流リンク7に対してコンデンサ電圧Vcが印加される。よってこの実施の形態において等価直流電圧Vdcとして、デューティdrecと整流電圧Vrecとの積Vrec・drecと、デューティdcとコンデンサ電圧Vcとの積Vc・dcとの和が採用される。
【0108】
等価直流電圧Vdcはまた、インバータ5が出力できる電圧の最大値の、スイッチSc,SLやインバータ5のスイッチングを制御する周期についての平均として、直流リンク7に印加される電圧と把握することもできる。デューティdzに対応する期間においてはスイッチSrec,Scのいずれも非導通であり、インバータ5は環流状況にあってインバータ5は直流リンク7に対して電気的に接続されていないからである。
【0109】
等価直流電圧Vdcは、図3において、インバータ5の入力側に印加される電圧として付記される。
【0110】
B.インバータ5のスイッチングに採用されるキャリアに由来する高調波の低減.
(b-1)等価直流電圧Vdcによる制御.
インバータ5におけるスイッチングのキャリア成分は電流irecひいては交流電流Iinにとっての高調波である。そして式(1)、(2)からirec=drec・Idc+iLである。直流電流Idcが小さい方が、電流irecにおけるインバータ5のスイッチングに由来する高調波は小さい。変調率Dについて次式(5)が成立する。
【0111】
【数5】
【0112】
瞬時電力Pout(=Io・Vo)が一定であれば、等価直流電圧Vdcを高めることが直流電流Idcを小さくすることに寄与し、ひいては電力変換器100における低圧系高次高調波に関する周波数帯の高調波(以下「高次高調波」とも称される)を低減することに寄与する。
【0113】
等価直流電圧Vdcは積drec・Vrecと積dc・Vcとの和であり、デューティdzが一定(例えば零)であればデューティdcが大きいほどデューティdrecは小さい。よってデューティdcおよびコンデンサ電圧Vcのいずれかもしくは両方を高めることによって、等価直流電圧Vdcが高められる。
【0114】
以下では便宜的に、Vm<Vdc(≦Vc)であるときの電力変換器100の動作を昇圧動作と称した説明と、Vdc≦Vmであるときの電力変換器100の動作を非昇圧動作と称した説明とがなされる場合がある。
【0115】
(b-2)デューティdcまたはコンデンサ電圧Vcによる制御.
瞬時電力Pcが直流リンク7に供給されるときにはスイッチSrecが非導通であってスイッチScが導通し、瞬時電力Precが直流リンク7に供給されるときにはスイッチScが非導通であってスイッチSrecが導通する。スイッチSrecの導通がインバータ5におけるスイッチングのキャリア成分を電流irecに伝えることになる。この観点から、瞬時電力Precを小さくすることは電力変換器100における高次高調波を低減することに寄与するといえる。
【0116】
以下の説明の便宜上、昇圧比αと電圧利用率Rとが導入される。また、説明が簡単となるように、デューティdzが0の場合(即ちdrec=1-dcの場合)が例示される。
【0117】
昇圧比αは波高値Vmに対するコンデンサ電圧Vcの比Vc/Vmで定義される。
【0118】
電圧利用率Rは波高値Vmに対する等価直流電圧Vdcの比Vdc/Vmで定義される。デューティdcが固定されていれば、昇圧比αの増大につれて等価直流電圧Vdcは増大する。昇圧比αが固定されていれば、デューティdcの増大につれて等価直流電圧Vdcは増大する。但しdc≦1であるのでR≦αである。
【0119】
図4は昇圧比αをパラメタとしたときの、電力の比Prec/Pin,PL/Pinの電圧利用率Rに対する依存性を示すグラフである。等価直流電圧Vdcが交流電圧Vinの位相ωtによらずに一定値をとる制御が行われる場合が例示される。
【0120】
いずれの昇圧比αにおいても、電圧利用率RによらずPrec/Pin+PL/Pin=1の関係がある。折れ線G11,G12は比Prec/Pinを示し、折れ線G21,G22は比PL/Pinを示す。折れ線G11,G21はα=1.29の場合を示し、折れ線G12,G22はα=1.47の場合を示す。
【0121】
電圧利用率Rはデューティdrec,dcによって制御される。dc=1のときにVdc=VcであってR=αであり、折れ線G11,G12のいずれにおいてもPrec/Pin=0であり、折れ線G21,G22のいずれにおいてもPL/Pin=1である。
【0122】
コンデンサ電圧Vc、あるいは昇圧比αを固定して考えると、デューティdcが増加すると、デューティdrecの減少により瞬時電力Precが減少する。このとき等価直流電圧Vdcの増加も伴う。よってそれぞれ昇圧比αが固定される折れ線G11,G12において、電圧利用率Rの増加に対して比Prec/Pinは減少する。コンデンサ電圧Vcが維持されるとき、等価直流電圧Vdcの増加を伴った瞬時電力Precの減少は、電力変換器100における高次高調波を低減することに寄与する、ということができる。
【0123】
他方、コンデンサ電圧Vcが維持される必要がないとき、等価直流電圧Vdcの増加を伴わずに瞬時電力Precを減少させることができる。例えば積dc・Vcを維持しつつコンデンサ電圧Vcを小さくし、デューティdcを高めることでも比Prec/Pinは小さくなるからである。これは電圧利用率Rの値に依らず、折れ線G11が折れ線G12よりも低い値を示すことからも理解される。
【0124】
前述の通り、電圧利用率Rの増加で比Prec/Pinは減少するので、瞬時電力Poutを高めるときに等価直流電圧Vdcを高めることは、電力変換器100における高次高調波を低減することに寄与する。そしてデューティdcの増大によって等価直流電圧Vdcが高められることは、上述の通りである。
【0125】
(b-3)総括的な説明.
(b-1)においては、等価直流電圧Vdcを増大して直流電流Idcを低減することにより、必ずしもデューティdcの増大が伴わなくても、電力変換器100における高次高調波が低減されることが説明された。(b-2)においては、必ずしも等価直流電圧Vdcの増大が伴わなくても、デューティdcを増大させることにより、電力変換器100における高次高調波が低減されることが説明された。
【0126】
瞬時電力Poutについての二つの閾値、具体的には第1閾値と、第1閾値よりも小さい第2閾値とを導入することにより、(b-1),(b-2)から以下の説明が得られる。
【0127】
インバータ5から出力される瞬時電力Poutが第2閾値以上では昇圧動作が採用される。昇圧動作が採用されることにより、瞬時電力Poutが大きくても直流電流Idcを小さくすることができ、高調波が低減される。
【0128】
瞬時電力Poutが第2閾値以上であって昇圧動作が採用されるとき、更に第1閾値を境界として、瞬時電力Poutに依存した制御が相違する。瞬時電力Poutが第1閾値よりも大きな値(このときの値の一例は「第1値」と仮称される)を採るときと、瞬時電力Poutが第1閾値よりも小さな値(このときの値の一例は「第2値」と仮称される:第2値は第2閾値よりも大きい)を採るときとでは、等価直流電圧Vdcが異なる。
【0129】
より具体的には、瞬時電力Poutが第1値をとるときの等価直流電圧Vdcは、瞬時電力Poutが第2値をとるときの等価直流電圧Vdcよりも高められる。上述されたように直流電流Idcが低減されることにより、あるいは瞬時電力Precが減少することにより、高調波が低減されるからである。
【0130】
後者の場合を(b-2)に即して言えば、瞬時電力Poutが第1値をとる場合の比Prec/Pinを、瞬時電力Poutが第2値をとる場合の比Prec/Pinよりも小さくする、と説明される。
【0131】
C.スイッチScのスイッチングに由来する高調波の低減.
スイッチScは電流irec1に対して電流icを合流させるか否かを決定する。スイッチScのスイッチングに由来して、電力変換器100における高次高調波が発生する。
【0132】
例えば特開2021-58002号公報において開示されるように、スイッチScの導通/非導通のタイミングを設定するために用いられるキャリアと、スイッチング素子Sup,Svp,Swpの導通/非導通のタイミングを設定するために用いられるキャリアとは周期が等しい。スイッチScは当該キャリアの一周期において、導通状態から非導通状態へ一回切り替わり、非導通状態から導通状態へ一回切り替わる。よってインバータ5のキャリア成分に由来する高調波の周波数も、スイッチScのスイッチングに由来する高調波の周波数も、低圧系高次高調波の規格の対象となる。
【0133】
コンバータ3から直流リンク7へ流れる電流irec1は、図3に示された等価回路に即して見れば、スイッチSrecの導通/非導通によってそれぞれ正/零となる。よって電流irec1に着目する限りにおいて、コンバータ3は等価的に、PWM変調が行われる電流形整流器であると見ることができる。以下、コンバータ3を等価的な電流形整流器と見たときの上述のPWM変調は、「等価的PWM変調」と仮称される。
【0134】
等価的PWM変調における変調率ksは、スイッチSrecが導通するデューティdrecによって制御される、と考え得る。デューティdrecはスイッチScが導通するデューティdcによって受動的に決定されることから、変調率ksは、デューティdcによって制御される、と考え得る。
【0135】
高調波は交流電流Iinを基本波として取り扱われ、電流irec1の基本波は変調率ksと電流irecとの積ks・irecと一致する。電流irecは交流電流Iinが全波整流されて得られる。よって等価的PWM変調における信号波として、交流電流Iinと同じ周期、従って交流電圧Vinと同じ周期を有する正弦波が想定される。
【0136】
電流iLが流れることにより、電流irec1は電流irecとは異なり、正弦波とは限らない。しかし電流irec1は電流irecと同じ周期を有する。よって、少なくとも高次高調波の増減の傾向を把握する限りにおいて、信号波について上述の様に正弦波を想定することは妥当である。
【0137】
図5は等価的PWM変調を例示するグラフである。信号波drecbには、上述のとおり、交流電圧Vinと同じ周期を有する正弦波が採用される。等価的PWM変調には二つのキャリアCp,Cnが採用される。
【0138】
例えばキャリアCp,Cnのいずれもが、交流電圧Vinの周波数(fs=ω/2π:以下「電源周波数」とも称される)の16倍の周波数を有する対称三角波である。ここでは電源周波数には50Hzであり、キャリアCp,Cnの周波数(以下「コンバータ側キャリア周波数」とも称される)が0.8kHzである場合が例示される。実際にはコンバータ側キャリア周波数にはより高い周波数、例えば上述の様に4.5kHzが採用されるものの、ここでは図示における視認性を高めるために0.8kHzの場合が例示される。キャリアCpは0以上1以下の値をとり、キャリアCnは-1以上0以下の値をとる。
【0139】
信号波drecbは電源周波数を有する正弦波である。図5においては変調率ksが1の場合、つまり信号波drecbの最小値が-1であり、最大値が1である場合が例示される。
【0140】
パルス波形SrecbはスイッチSrecの導通/非導通を反映する。パルス波形SrecbはキャリアCp,Cnと信号波drecbとの交点によって決定される。上述の様に信号波drecbには上述の正弦波が採用されるので、パルス波形Srecbは-1,0,1のいずれかの値をとる。
【0141】
具体的には信号波drecbの値がキャリアCp,Cnのいずれの値よりも高いときにパルス波形Srecbは値1を採り、信号波drecbの値がキャリアCp,Cnのいずれの値よりも低いときにパルス波形Srecbは値-1を採る。信号波drecbの値がキャリアCnの値以上であってキャリアCpの値以下であるときに、パルス波形Srecbは値0を採る。
【0142】
パルス波形Srecbが値-1,1のいずれかを採ることがスイッチSrecの導通に対応し、パルス波形Srecbが値0を採ることがスイッチSrecの非導通に対応する。昇圧動作においてdz=0とする場合を考えれば、パルス波形Srecbが値-1,1のいずれかを採ることがスイッチScの非導通に対応し、パルス波形Srecbが値0を採ることがスイッチScの導通に対応する。
【0143】
パルス波形Srecbのフーリエ係数を求めることにより(詳細は後述)、スイッチScのスイッチングに起因する高調波電流が解析される。図6および図7はいずれも、電源周波数を基本周波数としたときの次数と、電流irec1の高調波成分の振幅(以下「高調波振幅」とも称される)との関係を示すグラフである。但し当該振幅は電流irec1の基本周波数成分の振幅によって正規化されている。
【0144】
図6および図7はいずれも、図5で示されたキャリアCp,Cnが用いられたPWM変調に関したグラフである。図6は変調率ksが1の場合の高調波振幅を折れ線で示す。図7は変調率ksが0.5の場合、つまり信号波drecbの最小値が-0.5であり、最大値が0.5である場合の高調波振幅を折れ線で示す。図6図7との比較から理解されるように、高調波振幅の大きさおよびその分布は、変調率ksの影響を受ける。
【0145】
当該影響は、他の観点で以下のように説明される。デューティdcの制御によってデューティdrecが間接的に制御される。PWM変調の原理および図5から理解されるように、パルス波形Srecbを制御することにより、信号波drecbの波形が近似的に得られる。信号波drecbは、高次高調波の解析に関する限り電流irec1の波形として扱われ得る。このように、デューティdcの制御によって変調率ksが制御され、電流irec1ひいては交流電流Iinにおける、高次高調波の分布および振幅が制御される。
【0146】
交流負荷6が定電流負荷として機能するとき、インバータ5に供給される直流電流Idcは変動しない。このときには、デューティdcの増減は電流irec1それ自身の振幅にも影響を与える。デューティdcが大きいほど電流icは大きく、式(1)から理解されるように直流電流Idcが変動しないときには、電流irec1は小さいからである。例えばデューティdcが値0を採るときには電流icも値0をとり、変調率ksは値1を採る。このとき電圧利用率Rは値1を採る(即ちVdc=Vm)。例えばデューティdcが値1を採るときには電流irec1は値0をとり、変調率ksは値0を採る。このとき電圧利用率Rは昇圧比αに等しい(即ちVdc=Vc)。
【0147】
図8図9図10はいずれも周波数に対する高調波振幅を折れ線で示すグラフである。図11は変調率ksと高調波振幅との関係を例示するグラフである。但し図5図7とは異なり、図8図11においては、キャリアCp,Cnの周波数(以下「コンバータ側キャリア周波数」とも称される)は4.5kHzであって基本周波数の90倍である場合が例示される。インバータ5に供給される直流電流Idcは変動しない場合が想定される。
【0148】
図8図9図10のいずれもが、コンバータ側キャリア周波数およびその近傍における高調波振幅を示す。図8図9図10はそれぞれ変調率ksが値0.2、値0.6、値1.0を採る場合の高調波振幅を示す。
【0149】
図11において折れ線G31はコンバータ側キャリア周波数をfc=4.5kHzとし、基本周波数を電源周波数fs=50Hzとしたときの、値(fc-fs)を採る周波数の高調波振幅を示す。これは値(fc+fs)を採る周波数の高調波振幅にも等しい。以下では値(fc-fs)を採る周波数の高調波が1次側波帯高調波と仮称される。
【0150】
図11において折れ線G33は値(fc-3・fs)を採る周波数の高調波振幅を示す。これは値(fc+3・fs)を採る周波数の高調波振幅にも等しい。以下では値(fc-3・fs)を採る周波数の高調波が3次側波帯高調波と仮称される。
【0151】
図11において折れ線G35は値(fc-5・fs)を採る周波数の高調波振幅を示す。これは値(fc+5・fs)を採る周波数の高調波振幅にも等しい。以下では値(fc-5・fs)を採る周波数の高調波が5次側波帯高調波と仮称される。
【0152】
例えばデューティdcは値(Vrec-Vdc)/(Vrec-Vc)に設定され、デューティdrecは値(Vdc-Vc)/(Vrec-Vc)となる(Vc≧Vdc≧Vrec:例えば特許第6418287号公報の式(9)、(10)を参照)。デューティdc=0のときにはVdc=Vrecであり、デューティdc=1のときにはVdc=Vcである。
【0153】
変調率ksが値0を採るときにはデューティdrec=0であって電流irec1=0であり、デューティdc=1であってスイッチScのスイッチング動作はなく、これに由来する高調波もない。よって変調率ksが値0を採るときには、1次側波帯高調波、3次側波帯高調波および5次側波帯高調波のいずれも、値0を採る。
【0154】
変調率ksのほぼ全ての値に亘って(ほぼ値0.98未満の変調率ksにおいて)、1次側波帯高調波の高調波振幅は、3次側波帯高調波および5次側波帯高調波のいずれの高調波振幅よりも大きい。
【0155】
変調率が増大するほど、3次側波帯高調波の高調波振幅および5次側波帯高調波の高調波振幅のいずれもが、単調に増大する。1次側波帯高調波の高調波振幅は、変調率に対して極大値を採る。1次側波帯高調波に極大値を与える変調率ksの値は、後述される近似計算によると、1/√3である。
【0156】
電力変換器100の高次高調波を低減する観点から、例えば1次側波帯高調波の高調波振幅が極大値をとる変調率ksを避けて、デューティdcが制御される。
【0157】
図12図13図14はいずれも周波数に対する高調波振幅を折れ線で示すグラフである。図8図11と同様に、図12図14においても、コンバータ側キャリア周波数fcは4.5kHzであって基本周波数(これは電源周波数fsと等しい)の90倍である場合が例示される。但し図8図11とは異なり、キャリアCp,Cnとして鋸波が採用された場合が例示される。ここでもインバータ5に供給される直流電流Idcが変動しない場合が想定される。
【0158】
図12図13図14のいずれもが、コンバータ側キャリア周波数およびその近傍における高調波振幅を示す。図12図13図14はそれぞれ変調率ksが値0.2、値0.6、値1.0を採る場合の高調波振幅を示す。
【0159】
図15は、キャリアCp,Cnとして鋸波が採用された場合の、変調率ksと高調波振幅との関係を例示するグラフである。図15において折れ線G41,G43,G45は、それぞれ1次側波帯高調波の高調波振幅、3次側波帯高調波の高調波振幅、5次側波帯高調波の高調波振幅を示す。
【0160】
図8図11図12図15とはそれぞれ対応しており、これら二群同士の相違はキャリアCp,Cnの波形に由来する。キャリアCp,Cnに鋸波が用いられた場合(図12図15)の方が、キャリアCp,Cnに対称三角波が用いられた場合(図8図11)の方よりも、高次高調波の分布が広く、1次側波帯高調波の高調波振幅は小さい(図11の折れ線G31と図15の折れ線G41とを参照)。
【0161】
図16は1次側波帯高調波の高調波振幅Ihの電圧利用率Rに対する依存性を示すグラフである。折れ線G51は昇圧比αが値1.29を採る場合を示す。折れ線G52は昇圧比αが値1.47を採る場合を示す。図16図11の折れ線G31に相当するものの、横軸が図11とは相違する。図16に示された丸印は、図11に示された丸印に対応する。
【0162】
図11において変調率ks=1のときにはVdc=Vmであって、図16において電圧利用率Rは値1を採る(折れ線G51,G52のそれぞれの左端の丸印に対応:両者は一致する)。図11において変調率ks=0のときにはVdc=Vcであって電圧利用率Rは昇圧比αに等しい(折れ線G51,G52のそれぞれの右端の丸印に対応)。
【0163】
上述の様に、電流irec1の基本波成分は変調率ksを導入してks・irecで表される。高調波に着目する限り、キャリアCp,Cnの振幅Cmが導入されて、信号波drecbにはks・sin(ωt)・Cmを採用することができる。上述の説明ではCm=1として扱われていたので、電流irec1の振幅も1として扱われ、デューティdrecと値が共通する。電流irecは全波整流された波形を呈することを考慮すると、位相ωt=π/2および3π/2のいずれにおいても、デューティdrecおよび信号波drecbの絶対値ks・|sin(ωt)|はそれぞれの波高値をとり、両者の波高値は一致する(ks=drec)。
【0164】
位相ωt=π/2および3π/2のいずれにおいても、|sin(ωt)|=1であり、Vrec=Vmであることから、等価直流電圧Vdcを位相ωtによらずに一定とするときに採用されるデューティdrecは次の値をとる:ks=drec=(Vdc-Vc)/(Vm-Vc)=(α-R)/(α-1)。従ってR=ks+(1-ks)αの関係がある。
【0165】
例えば折れ線G51の右から四つ目の丸印はks=0.3に相当し、α=1.29を考慮するとR=1.203である。折れ線G51の左から四つ目の丸印はks=0.7に相当し、α=1.29を考慮するとR=1.087である。
【0166】
電圧利用率Rは等価直流電圧Vdcの波高値Vmに対する比であり、通常は波高値Vmは一定であると想定される。よって電圧利用率Rが大きいことは等価直流電圧Vdcが大きいことを示す。他方、図11で示された高調波振幅は、電流irec1の基本周波数成分(電源周波数fsの成分)の振幅によって正規化されている。図16が例示する高調波振幅Ihは、電圧利用率Rの増大につれて瞬時電力Pout(=Pdc)が増大する場合における値を示す。
【0167】
瞬時電力Poutが所定値に維持されたときの、電圧利用率Rに対する1次側波帯高調波の高調波振幅の依存性は、次のようにして求められる。まず等価直流電圧Vdcについての正規化を行うため、高調波振幅Ihを電圧利用率Rで除した商が想定される。更に、フィルタ2による低減の効果を考慮して,下式(6)で示される係数Gと当該商との積を想定する。リアクトルL4のインダクタンス値L、コンデンサC2の静電容量Cが導入される。
【0168】
【数6】
【0169】
低電圧高次高調波の限度値は、所定のLISNにおいて検出される電圧値で表される。正規化された電流値に対する高調波振幅ではなく、実際に流れる電流値に対する高調波振幅を得るために、上述の積に対して更に直流電流Idcが乗じられる。Idc=Pdc/Vmであり、Pdc=Poutである。よって実際に流れる電流値に換算された、瞬時電力Poutが一定の場合の1次高調波側波帯の高調波振幅Ih’が、次式(7)で求められる。
【0170】
【数7】
【0171】
図17は高調波振幅Ih’の電圧利用率Rに対する依存性を示すグラフである。簡単のため、昇圧比αは値1.29~1.47のいずれをも取り得るとして説明される。昇圧比αは1.29未満の値を採っても良いし、1.47よりも大きな値を採っても良い。
【0172】
折れ線G61aは昇圧比αが値α1a=1.29を採る場合を示す。折れ線G61bは昇圧比αが値α1b=1.41を採る場合を示す。折れ線G62は昇圧比αが値α2=1.47を採る場合を示す。折れ線G61a,G61b,G62のいずれにおいても、丸印は図16に示された丸印と同様、0.1刻みのデューティdc(あるいはデューティdrec)を示す。
【0173】
昇圧比αが増大するにつれて高調波振幅Ih’の極大値は小さくなり、かつ極大値を与える電圧利用率Rは増大する。また、同じ値の高調波振幅Ih’が異なる昇圧比αにおいて得られるとき、当該値を与える電圧利用率Rは、昇圧比αの増大につれて増大する。R=1において高調波振幅Ih’は昇圧比αに依存せずに値1を採る。R=αにおいて高調波振幅Ih’は昇圧比αに依存せずに値0を採る。
【0174】
図17には閾値TH1,TH2,TH3も併記される。閾値TH1,TH2,TH3はいずれも低圧系高次高調波の規格における限度値を例示する(TH1>TH2>TH3)。当該限度値は周波数に依存して設定される。図11および図15から看取されるように、低圧系高次高調波としては1次高調波側波帯の高調波振幅Ih’が主となる。よって以下では値(fc-fs)をとる周波数に対して設定される限度値が、閾値TH1,TH2,TH3のいずれかである場合を例として説明される。
【0175】
閾値TH1は1.29≦α≦1.47のいずれにおいても、電圧利用率Rに依らずに高調波振幅Ih’よりも大きい。限度値が閾値TH1を採るときには、1.29≦α≦1.47、1≦R≦αである限り、昇圧比αおよび電圧利用率Rをどのように設定しても、高調波振幅Ih’は限度値未満に抑えられる。
【0176】
折れ線G61aは、J1d≦R≦J1uにおいてTH2≦Ih’であることを示す。折れ線G62は、J2d≦R≦J2uにおいてTH2≦Ih’であることを示す。これらは以下の様にも説明され得る。
【0177】
昇圧比αが値α1a(=1.29)をとるとき、高調波振幅Ih’は範囲J1の電圧利用率Rにおいて閾値TH2以上となる。高調波振幅Ih’は範囲J1以外の電圧利用率Rにおいて閾値TH2未満となる。範囲J1の下限J1d(約1.04)は1より大きく、範囲J1の上限J1u(約1.16)は値α1aよりも小さい。
【0178】
昇圧比αが値α2(=1.47)をとるとき、高調波振幅Ih’は範囲J2の電圧利用率Rにおいて閾値TH2以上となる。高調波振幅Ih’は範囲J2以外の電圧利用率Rにおいて閾値TH2未満となる。範囲J2の下限J2d(約1.09)は下限J1dより大きく、範囲J2の上限J2u(約1.24)は上限J1uよりも大きく値α2よりも小さい。
【0179】
閾値TH2が限度値であって、電圧利用率Rが上限J2uよりも大きいとき、昇圧比αが値α1aから値α2までのいずれの値をとっても、高調波振幅Ih’は限度値未満となる。
【0180】
このときにはどのような電圧利用率Rに対しても、昇圧比αは値α2をとることが望ましい。効率を高める観点からデューティdrecを低下させることなく、等価直流電圧Vdcが高まるからである。等価直流電圧Vdcが高まることは、例えば交流負荷6が三相モータであったときの、当該電動機の高速運転を容易にする。
【0181】
このように電圧利用率Rが上限J2uよりも大きく設定され、かつ昇圧比αを高める制御は、以下では第1制御と仮称される場合がある。第1制御は、電源位相がπ/2,3π/2におけるデューティdcを高め、コンデンサ電圧Vcを高めることによって実現される。
【0182】
閾値TH2が限度値であって、電圧利用率Rが上限J1uよりも大きく上限J2u以下のとき、昇圧比αはα1aを取ることが望ましい。このときにどのような電圧利用率Rに対しても高調波振幅Ih’が限度値未満になるからである。このように電圧利用率Rが上限J1uよりも大きく上限J2u以下に設定され、かつ昇圧比αを低める制御は、以下では第2制御と仮称される場合がある。第2制御は、電源位相がπ/2,3π/2におけるデューティdcの設定と、コンデンサ電圧Vcを低めることとによって実現される。
【0183】
閾値TH2が限度値であって、電圧利用率Rが下限J1d以上であって下限J2d未満のとき、昇圧比αはα2を取ることが望ましい。このときにどのような電圧利用率Rに対しても高調波振幅Ih’が限度値未満になるからである。
【0184】
このように電圧利用率Rが下限J1d以上であって下限J2d未満に設定され、かつ昇圧比αを高める制御は、以下では第3制御と仮称される場合がある。第3制御は、電源位相がπ/2,3π/2におけるデューティdcを低くし、コンデンサ電圧Vcを高めることによって実現される。
【0185】
閾値TH2が限度値であって、電圧利用率Rが下限J1d未満であれば昇圧比αは値α1a,α2のいずれであっても、高調波振幅Ih’が限度値未満になる。このときに昇圧比αが値α1aをとることは、昇圧比αが値α2をとる場合と比較して、ブースタ4bの効率を高め、ひいては電力変換器100の効率を高める。
【0186】
このように電圧利用率Rが下限J1d未満に設定され、かつ昇圧比αを高める制御は、以下では第4制御と仮称される場合がある。第4制御は、電源位相がπ/2,3π/2におけるデューティdcを低くし、コンデンサ電圧Vcを低めることによって実現される。
【0187】
第4制御においてデューティdcは値dc2未満の値をとることが望ましい。ここで値dc2は、昇圧比αが値α2をとるときに電圧利用率Rが下限J1dをとるときのデューティdcの値である。
【0188】
同じ電圧利用率Rを得るために必要なデューティdcの値は、昇圧比αが値α1aをとる場合の方が、昇圧比αが値α2をとる場合と比較して大きい。よってデューティdcが値dc2未満をとることは、高調波振幅Ih’が限度値を超える可能性を小さくすることに寄与する。またデューティdcを小さくすることは電力変換器100の効率を高めることに寄与する。
【0189】
折れ線G61aは、R≦d1aにおいてTH3≦Ih’であることを示す。折れ線G62は、R≦d2においてTH3≦Ih’であることを示す。これらは以下の様にも説明され得る。
【0190】
昇圧比αが値α1aをとるとき、下限値d1a以下の電圧利用率Rに対して、高調波振幅Ih’は閾値TH3以上となる。下限値d1aより大きい電圧利用率Rに対して、高調波振幅Ih’は閾値TH3未満である。
【0191】
昇圧比αが値α2をとるとき、下限値d2以下の電圧利用率Rに対して、高調波振幅Ih’は閾値TH3以上となる。下限値d2より大きい電圧利用率Rに対して、高調波振幅Ih’は閾値TH3未満となる。
【0192】
R≧d1aのとき、高調波振幅Ih’は昇圧比αによらずに単調減少である。α=α1aのときR=α1aでIh’=0であり、α=α2のときR=d2でIh’>0である。よってα1a<d2である。d1a<α1aであり、d1a<d2である。
【0193】
閾値TH3が限度値であって、電圧利用率Rが下限値d1aより大きく値α1a未満のとき、昇圧比αとして値α1aが採用されることが望ましい。このときにどのような電圧利用率Rに対しても高調波振幅Ih’が限度値未満になるからである。
【0194】
このように電圧利用率Rが下限値d1aより大きく値α1a未満に設定され、かつ昇圧比αを低める制御は、以下では第5制御と仮称される場合がある。第5制御は、電源位相がπ/2,3π/2におけるデューティdcの設定と、コンデンサ電圧Vcを低めることとによって実現される。
【0195】
次に、昇圧比αが値α1b=1.41を採るときの、電圧利用率Rに対する高調波振幅Ih’の振る舞いを考察する。折れ線G61bはかかる振る舞いを示す。α1a<α1b<α2の関係がある。
【0196】
折れ線G61bは、R≦d1bにおいてTH3≦Ih’であることを示す。これは以下の様にも説明され得る。
【0197】
昇圧比αが値α1bをとるとき、下限値d1b以下の電圧利用率Rに対して、高調波振幅Ih’は閾値TH3以上となる。下限値d1bより大きい電圧利用率Rに対して、高調波振幅Ih’は閾値TH3未満である。
【0198】
図17において示されるように、d1a<α1a<d1b<d2<α1b<α2の関係がある。昇圧比αが値α1b未満を取らないときには、以下の様に場合が分かれる。これはα1b=d2であっても同様である。
【0199】
電圧利用率Rが下限値d1bより大きく下限値d2未満のとき、昇圧比αは値α1bをとることが望ましい。このときにはどのような電圧利用率Rに対しても、高調波振幅Ih’は限度値未満となるからである。
【0200】
このように電圧利用率Rが下限値d1bより大きく下限値d2未満に設定され、かつ昇圧比αを低める制御は、以下では第6制御と仮称される場合がある。第6制御は、電源位相がπ/2,3π/2におけるデューティdcの設定と、コンデンサ電圧Vcを低めることとによって実現される。
【0201】
電圧利用率Rが下限値d2以上のとき、昇圧比αは値α2をとることが望ましい。効率を高める観点からデューティdrecを低下させることなく、等価直流電圧Vdcが高まるからである。等価直流電圧Vdcが高まることは、例えば交流負荷6が三相モータであったときの、当該電動機の高速運転を容易にする。
【0202】
このように電圧利用率Rを高め、昇圧比αを高める制御は、以下では第7制御と仮称される場合がある。第7制御は、電源位相がπ/2,3π/2におけるデューティdcを高め、コンデンサ電圧Vcを高めることによって実現される。
【0203】
以下、交流負荷6が三相モータである場合について説明される。
【0204】
<速度検出部9の説明>
速度検出部9は、交流電流Iu,Iv,Iwを入力し、電流Id,Iqおよび交流負荷6の回転角速度ωmを求める。電流Id,Iqは交流電流Iu,Iv,Iwをいわゆるdq軸座標系に変換した電流である。
【0205】
<制御装置10の説明>
図18は、電力変換器100を制御する制御装置10の概念的な構成の一例を示すブロック図である。制御装置10は、アクティブバッファ4の制御装置として機能するブロック10aと、インバータ5の制御装置として機能するブロック10bとを有する。
【0206】
ブロック10aは、電流分配率生成部11と、電圧指令生成部15と、加算器13と、チョッパ制御部16と、比較器12,14と、キャリア生成部23,24とを備える。
【0207】
ブロック10bは、出力電圧指令生成部31と、演算部32,33と、比較器34,35と、論理和/論理積演算部36とを備える。
【0208】
電流分配率生成部11は交流電圧Vinの振幅でもある波高値Vmと、交流電流Iinの振幅Imと、等価直流電圧Vdcについての指令値Vdc*と、コンデンサ電圧Vcについての指令値Vc*と、電源角速度ωとを入力する。波高値Vm、振幅Im及び電源角速度ωは例えば公知の検出部を設けることで、検出されて電流分配率生成部11に入力される。指令値Vdc*,Vc*は電圧指令生成部15から入力される。
【0209】
電流分配率生成部11は、デューティdrec,dc,dz、及び電流iLについての指令値(以下「電流指令値」とも称される)iL*を出力する。電流分配率生成部11は、等価直流電圧Vdcが指令値Vdc*に追従するようにデューティdrec,dc,dzを決定し、コンデンサ電圧Vcが指令値Vc*に追従するように電流指令値iL*を決定する。
【0210】
電圧指令生成部15は、指令値Vd*,Vq*、電流Id,Iqを入力して瞬時電力Poutを求める。指令値Vd*,Vq*はそれぞれ電圧Vd,Vqの指令値である。電圧Vd,Vqはインバータ5が出力する三相電圧をいわゆるdq軸座標系に変換した電圧である。電流Id,Iqは交流電流Iu,Iv,Iwをいわゆるdq軸座標系に変換した電流である。例えばPout=Vd*・Id+Vq*・Iqである。電圧指令生成部15は瞬時電力Poutに応じて指令値Vdc*,Vc*を決定する。指令値Vd*,Vq*は出力電圧指令生成部31から得られ、電流Id,Iqは速度検出部9から得られる。
【0211】
デューティdrecとデューティdzとは加算器13において加算され、その結果(drec+dz)が比較器12においてキャリアC1と比較される。キャリアC1はキャリア生成部23で生成され、例えば最小値0、最大値1を採る三角波である。
【0212】
比較器12の比較結果はスイッチScへ与えるスイッチング信号SScとして出力される。例えば比較器12はキャリアC1が値(drec+dz)以上となる期間で活性化した信号をスイッチング信号SScとして出力する。トランジスタQc(等価的なスイッチSc)は、スイッチング信号SScの活性によってオンする。
【0213】
チョッパ制御部16は波高値Vmおよび電源角速度ω(あるいは交流電圧Vin)および指令値Vc*を入力し、これらとリアクトルL4のインダクタンスLmとから、電流指令値iL*に基づいてデューティdLを出力する。与えられた電流指令値iL*、コンデンサ電圧Vc、交流電圧Vin、インダクタンスLmからデューティdLを決定する技術は、例えば特許5772915号公報、特許5629885号公報によって公知である。コンデンサ電圧Vcは指令値Vc*に追従する制御を受けることから、チョッパ制御部16は例えば特許5772915号公報、特許5629885号公報を参照して容易に実現される。
【0214】
デューティdLは比較器14においてキャリアC3と比較される。キャリアC3はキャリア生成部24で生成され、例えば最小値0、最大値1を採る三角波である。比較器14の比較結果はスイッチSLの開閉を制御する制御信号SSLとして出力される。例えば比較器14はキャリアC3がデューティdL以下となる期間で活性化した信号を制御信号SSLとして出力する。トランジスタQL(等価的なスイッチSL)は、制御信号SSLの活性によってオンする。
【0215】
出力電圧指令生成部31は指令値Vd*,Vq*と相電圧指令Vu*,Vv*,Vw*とを生成する。図18の例示では、出力電圧指令生成部31には交流負荷6の回転角速度ωmと、その指令値ωm*とが入力される。回転角速度ωmは速度検出部9によって求められ、指令値ωm*は不図示の外部構成によって入力される。出力電圧指令生成部31は回転角速度ωmとその指令値ωm*との偏差が低減するように、公知の手法によって指令値Vd*,Vq*と相電圧指令Vu*,Vv*,Vw*を生成する。
【0216】
例えば出力電圧指令生成部31は回転角速度ωmおよび指令値ωm*並びに電流Id,Iqを入力し、変調率Dおよびインバータ5が出力する電圧の位相φ(図示省略)を生成する。変調率Dおよび位相φを用いて、相電圧指令Vu*,Vv*,Vw*および指令値Vd*,Vq*が生成される。かかる技術は、例えば特許6721097号公報の速度制御部1010の機能と、出力電圧指令部1011の機能との組み合わせと見ることができる。
【0217】
演算部32にはデューティdrec,dz,dcと相電圧指令Vu*,Vv*,Vw*とが入力される。演算部32は値(drec+dz+dc・Vx*)(但しxはu,v,wを代表する)を算出してこれらを出力する。演算部33にはデューティdrecと相電圧指令Vu*,Vv*,Vw*とが入力され、値(drec・(1-Vx*))を算出してこれらを出力する。
【0218】
値(drec+dz+dc・Vx*)は比較器34においてキャリアC1と比較され、値(drec・(1-Vx*))は比較器35においてキャリアC1と比較される。比較器34は例えばキャリアC1が値(drec+dz+dc・Vx*)以上となる期間で活性化する信号を出力し、比較器35は例えばキャリアC1が値(drec・(1-Vx*))以下となる期間で活性化する信号を出力する。
【0219】
このようにキャリアC1はブロック10a,10bのいずれに対しても用いることができるので、図2においてキャリア生成部23はブロック10a,10bの境界を跨がって設けられているように示される。
【0220】
比較器34,35の比較結果は論理和/論理積演算部36に入力される。比較器34,35の比較結果の論理和が、スイッチング素子Sup,Svp,Swpへとそれぞれ与えるスイッチング信号SSup,SSvp,SSwpとして出力され、これらの否定論理が、スイッチング素子Sun,Svn,Swnへとそれぞれ与えるスイッチング信号SSun,SSvn,SSwnとして出力される。
【0221】
このように、デューティdrec,dz,dcと相電圧指令Vu*,Vv*,Vw*とに基づいて、スイッチング信号SSup,SSvp,SSwp,SSun,SSvn,SSwnを生成する技術は周知であり、よって当該技術の詳細な説明は割愛される。
【0222】
<種々の制御方式の使い分け>
図19は、制御装置10による電力変換器100の制御方式の使い分けを行うルーチンを例示するフローチャートである。上述の様に電力変換器100の動作を制御するコンデンサ電圧Vcおよびデューティdcのいずれかまたは両方を制御することで、電力変換器100の動作は制御され得る。
【0223】
ステップS11において、瞬時電力Poutが或る閾値P1よりも小さいかが判断される。閾値P1は(b-3)で説明された第2閾値に相当する。瞬時電力Poutが閾値P1よりも小さいときにはステップS11における判断結果は肯定的であって、ステップS14が実行される。ステップS11における判断結果が肯定的であったことに由来してステップS14が実行される場合、等価直流電圧Vdcを高める必要は無く、非昇圧制御が採用される。ステップS14においては非昇圧制御として、例えば連続スイッチング方式または交互導通方式が採用される。
【0224】
「交互導通方式」という用語は、デューティdcが0である非導通期間と、デューティdcが正である導通期間とが交互に設けられる制御に対する、本実施の形態における仮称である。交互導通方式は、例えばデューティdcおよびコンデンサ電圧Vcのいずれかまたは両方が制御されて実現される。
【0225】
交互導通方式は半周期スイッチング方式を含む。「半周期スイッチング方式」は、瞬時電力Pbufを交流電圧Vinの半周期ごとにアクティブバッファ4によって充放電する制御として、特開2021-58002号公報において特許第5629885号公報を例として紹介される。半周期スイッチング方式においては当該非導通期間および導通期間のいずれもが電源周期の四分の一、つまり交流電圧Vinの四半周期の長さを有する。
【0226】
「連続スイッチング方式」は、交流電圧Vinの電源位相において排他的な期間が設定されることなく連続してアクティブバッファ4によって充放電する制御として、特開2021-58002号公報において特許第5804167号公報を例として紹介される。連続スイッチング方式においては、例えば非導通期間の長さは実質的に0である制御が行われる。
【0227】
半周期スイッチング方式および連続スイッチング方式は、電力変換器100の効率を高める観点で有利である。
【0228】
交互導通方式において、等価直流電圧Vdcの指令値Vdc*が交流電圧Vinの絶対値よりも高い第1区間においてデューティdcが0であり、デューティdrecには等価直流電圧Vdcの指令値Vdc*を整流電圧Vrecで除した値が採用されてもよい。第1区間は非導通期間として捉えられ得る。指令値Vdc*が交流電圧Vinの絶対値以下の第2区間においてデューティdrecには0が、デューティdcには指令値Vdc*を波高値Vmで除した値が、それぞれ採用される。第2区間は導通期間として捉えられ得る。かかる制御方式は例えば特開2021-58002号公報において開示される(以下「第0制御」と仮称)。第0制御によれば、電源位相に拘わらず、指令値Vdc*に対応する等価直流電圧Vdcが得られる。
【0229】
等価直流電圧Vdcが同じであれば、一般的に、半周期スイッチング方式は連続スイッチング方式と比較してアクティブバッファ4に要求される電力容量が小さく、コンデンサC4を充電する電流の実効値が小さいために、部分負荷における効率が改善される観点で有利である。第0制御を採用することにより、ブースタ4bにおいてスイッチングを伴うことなくコンデンサC4が充電されるため、部分負荷における効率の更なる向上が期待できる。
【0230】
ステップS11において、瞬時電力Poutが或る閾値P1以上であると判断されれば、ステップS11における判断結果は否定的となり、昇圧制御が行われる。ステップS11における判断結果は否定的であれば、ステップS12,S13の判断結果に従って、電力変換器100の制御方式が振り分けられる。
【0231】
ステップS12,S13において判断基準として高調波振幅Ih’に対する限度閾値THが導入される。本実施の形態における例示では、限度閾値THは上述の閾値TH1,TH2,TH3(図17参照)のいずれかに相当する。
【0232】
ステップS13の実行に先だってステップS12が実行される。ステップS12において、等価直流電圧Vdcが波高値Vm以上コンデンサ電圧Vc未満であるときに、高調波振幅Ih’が、常に限度値未満であるかが判断される。
【0233】
図17に即して言えばTH=TH1のとき、ステップS12における判断結果は肯定的となる。この場合、高調波振幅Ih’以外の観点、例えば効率を高める観点や、電圧利用率Rを高める観点で、電力変換器100の制御方式を選択でき、後述されるステップS27が実行され、制御方式の使い分けは終了する。
【0234】
図17に即して言えばTH=TH2またはTH=TH3のとき、ステップS12における判断結果は否定的となり、ステップS13が実行される。
【0235】
ステップS13においては、等価直流電圧Vdcが波高値Vmであるときの、つまり電圧利用率Rが値1であるときの高調波振幅Ih’が、限度値未満であるかが判断される。図17に即して言えば、TH=TH2のときにはステップS13における判断結果は肯定的となり、TH=TH3のときにはステップS13における判断結果は否定的となる。
【0236】
ステップS13の判断結果が肯定的であれば、閾値TH2が限度値であるときの説明で示されたように、電力変換器100の制御には、第1制御、第2制御、第3制御、第4制御のいずれもが採用され得る。
【0237】
ステップS13の判断結果が肯定的であればステップS15が実行される。ステップS15は等価直流電圧Vdcが波高値Vmの上限J2u倍よりも大きいか否かが判断される。図19ではステップS15の判断基準が電圧利用率Rを用いて略記される。ステップS15の判断結果が肯定的な場合には、ステップS16において第1制御が採用される。ステップS16が実行されて、制御方式の使い分けは終了する。
【0238】
ステップS15の判断結果が否定的であればステップS17が実行される。ステップS17では等価直流電圧Vdcが波高値Vmの上限J1u倍よりも大きいか否かが判断される。図19ではステップS17の判断基準が電圧利用率Rを用いて略記される。
【0239】
ステップS17が実行される場合には、既にステップS15の判断によってR≦J2uである。よってステップS17の判断結果が肯定的な場合には、ステップS18において第2制御が採用される。ステップS18が実行されて、制御方式の使い分けは終了する。
【0240】
ステップS17の判断結果が否定的であればステップS19が実行される。ステップS19では等価直流電圧Vdcが波高値Vmの下限J1d倍よりも小さいか否かが判断される。図19ではステップS19の判断基準が電圧利用率Rを用いて略記される。ステップS19の判断結果が肯定的な場合には、ステップS20において第4制御が採用される。ステップS20が実行されて、制御方式の使い分けは終了する。
【0241】
ステップS19の判断結果が否定的であればステップS21が実行される。ステップS21では等価直流電圧Vdcが波高値Vmの下限J2d倍よりも大きいか否かが判断される。図19ではステップS21の判断基準が電圧利用率Rを用いて略記される。
【0242】
ステップS21が実行される場合には、既にステップS19の判断によってJ1d≦Rである。よってステップS21の判断結果が肯定的な場合には、ステップS22において第3制御が採用される。ステップS22が実行されて、制御方式の使い分けは終了する。
【0243】
ステップS21の判断結果が否定的な場合には、J2d≦R≦J1uである。このような電圧利用率Rが採用されることはTH2≦Ih’となって望ましくない。よってステップS30において等価直流電圧Vdcの再設定が実行される。ステップS30が実行されて、制御方式の使い分けは終了する。
【0244】
ステップS13の判断結果が否定的であれば、閾値TH3が限度値であるときの説明で示されたように第5制御、第6制御、第7制御のいずれもが採用され得る。
【0245】
ステップS13の判断結果が否定的であればステップS23が実行される。ステップS23は等価直流電圧Vdcが波高値Vmの下限値d1倍以下であるかが判断される。下限値d1は上述された下限値d1a,d1bを代表する値である。図19ではステップS23の判断基準が電圧利用率Rを用いて略記される。
【0246】
ステップS23の判断結果が肯定的な場合には、TH3≦Ih’となって望ましくない。よってステップS30において等価直流電圧Vdcの再設定が実行される。ステップS30が実行されて、制御方式の使い分けは終了する。
【0247】
ステップS23の判断結果が否定的な場合には、ステップS24が実行される。ステップS24は等価直流電圧Vdcが波高値Vmの下限値d2倍以上であるかが判断される。図19ではステップS24の判断基準が電圧利用率Rを用いて略記される。ステップS24の判断結果が肯定的な場合には、ステップS25において第7制御が採用される。ステップS25が実行されて、制御方式の使い分けは終了する。
【0248】
ステップS24の判断結果が否定的な場合には、ステップS26が実行され、第5制御、または第6制御が採用される。ステップS24が実行される場合には、既にステップS23の判断によってd1<Rである。よってステップS24の判断結果が否定的な場合には、d1<R<d2である。この場合には値α1と下限値d2との大小関係に依存して第5制御、または第6制御が選択される。図19ではこの選択が「第5,6制御」と表記されたステップS26として示される。ステップS26が実行されて、制御方式の使い分けは終了する。
【0249】
ステップS12の判断結果が肯定的な場合には、上述の第1制御から第7制御のいずれもが採用され得る。図19ではこの選択が「第1~7制御」と表記されたステップS27として示される。ステップS27が実行されて、制御方式の使い分けは終了する。
【0250】
<パルス波形Srecbのフーリエ係数>
図5で示されたパルス波形Srecbのフーリエ係数を求める計算が下記に例示される。パルス波形Srecbは、周期2π、平均値0の奇関数であるので、交流電圧Vinの位相ωtを位相θと表現して式(8),(9)で表現される。但し式(9)では波形の対称性から積分区間は0~π/2である。
【0251】
【数8】
【0252】
【数9】
【0253】
位相θ~θk+1(θk+1はπ/2以下の偶数)において、キャリアCpと信号波drecbとが等しくなる。図5においてはθk+1=π/2の場合が例示される。位相θ~θk+1は、例えば数値計算によって求められる。
【0254】
位相θ~θk+1と式(9)から、パルス波形Srecbのフーリエ係数が求められ、スイッチScのスイッチングに起因する高調波電流が解析される。
【0255】
<高調波振幅Ih’の極大値を与える変調率ks>
パルス波形Srecbのコンバータ側キャリア周波数の基本波成分により、信号波drecbが変調されて、高調波が発生すると考えることができる。1次側波帯高調波の高調波振幅Ihは式(10)で表される。式(10)には振幅Π0が導入される。振幅Π0は、パルス波形Srecbのコンバータ側キャリア周波数の基本波振幅の、位相ωtの一周期(2π/ω)に亘る平均値である。このように、キャリア周波数が平均値として捉えられるので、式(10)のcos(2π・fc・t)は振幅1の方形波信号の基本波成分を表している。
【0256】
【数10】
【0257】
以下、振幅Π0を求め、次いで高調波振幅Ihの極値を与える変調率ksを求める計算が説明される。
【0258】
パルス波形Srecbの各々は方形波であり、キャリアCp,Cnの周期であるキャリア周期(1/fc)に対し、方形波の幅を決定する時比率dを有する。当該方形波の各々の、コンバータ側キャリア周波数の成分は、方形波の各々の時比率dに依存する。
【0259】
方形波の幅は当該方形波が位置する位相に依存する。図5に即して言えば、位相θ1~θ2において値1をとる方形波の幅は、位相π/2近傍において値1をとる方形波の幅よりも狭い。
【0260】
図20は、位相θにおいて立ち上がり、位相θj+1において立ち下がるパルス波形Πを、位相(θ+θj+1)/2を中心とするキャリア周期において示すグラフである(添字jはk以下の奇数)。パルス波形Πの時比率dは式(11)によって求められる。
【0261】
【数11】
【0262】
パルス波形Πのフーリエ係数を求めることにより、パルス波形Πのコンバータ側キャリア周波数の成分の振幅Πmは、式(12)によって求められる。
【0263】
【数12】
【0264】
図21は、時比率dと振幅Πmとの関係を示すグラフである。振幅Πmは、時比率dに対して、d=1/2を軸として時比率dに対して対称である。
【0265】
振幅Πmは信号波drecbの位相に依存して異なる。よってその平均値たる振幅Π0は、信号波drecbの一周期における時比率dの平均値d^を用いて、式(12)と類似して式(13)で表される。
【0266】
【数13】
【0267】
但し上述された振幅Πmの時比率dに対する対称性から、平均値d^を計算する際には、1/2≦d≦1においては時比率dに代えて値(1-d)が採用される。
【0268】
信号波drecbは正弦波であってその波形Jは、位相θを導入して式(14)が成立する。
【0269】
【数14】
【0270】
図22は信号波drecbの位相と、時比率dまたは値(1-d)との関係を、変調率ksをパラメタとして示すグラフである。当該グラフにおいて時比率dが1/2以上においては、時比率dに代えて値(1-d)が示される。
【0271】
曲線G71,G72,G73,G74,G75,G76,G77はそれぞれ、変調率ksが値0.2,0.4,0.5,q1,q2,q3,1をとる場合を示す。但しq1=√2/(1+√3),q2=1/√3,q3=1/√2である。
【0272】
時比率dが値1/2をとるときの、信号波drecbの位相Θ(0<Θ<π/2)を導入する。変調率ksが1/2より小さいと位相Θは存在せず、変調率ksが1/2より大きいほど、位相Θは小さい。
【0273】
θ=Θの場合を考慮すると式(15)が成立する。
【0274】
【数15】
【0275】
曲線G71,G72は値1/2をとらず位相Θは存在しない。曲線G73ではΘ=90度である。曲線G74ではΘ=75度である。曲線G75ではΘ=60度である。曲線G76ではΘ=45度である。曲線G77ではΘ=30度である(式(15)参照)。
【0276】
図23はΘ=π/3(60度)の場合における、信号波drecbの位相と、時比率dまたは値(1-d)との関係を示すグラフである(図22にも示された曲線G75の再掲)。信号波drecbは正弦波であり、その対称性から位相0~π/2において時比率dまたは値(1-d)の積分値を求め、当該積分値をπ/2で除すことによって平均値d^が求められる。
【0277】
上述の積分値に基づいて平均値d^は式(16)で求められる。
【0278】
【数16】
【0279】
平均値d^を最大にする位相Θは、式(16)を位相Θで微分して0となる位相Θ(<π/2)である。位相Θについての微分を記号Δ/ΔΘで表して式(17)が得られる。
【0280】
【数17】
【0281】
式(17)から、平均値d^を最大にする位相Θはπ/3であり、これに対応する変調率ksは1/√3である(式(16)参照)。
【0282】
平均値d^を最大とする位相Θ(<π/2)が値sin(d^・π)を最大とすることは、キャリア周期について示される図21の関係が、周期の大きさによらず時比率とパルス幅との関係として成立することから明白である。よって式(13)で表される振幅Π0もΘ=π/3において最大となり、変調率ks=1/√3において高調波振幅Ihは最大値をとる(式(10)参照)。
【0283】
上述の説明から理解されるように、高調波振幅Ihの最大値を与える変調率ks(=1/√3)は昇圧比αには依存しない。但し、等価直流電圧Vdcを位相ωtによらずに一定とするときにR=ks+(1-ks)αの関係があるので、高調波振幅Ihの最大値を与える電圧利用率Rは昇圧比αの増大によって増大する。このことは、図16において折れ線G51の極大値を与える電圧利用率Rの値よりも、折れ線G52の極大値を与える電圧利用率Rの値の方が大きいことに現れている。
【0284】
デューティdrecはθ=π/2において変調率ksと一致して最大値をとる。デューティdrecの最大値が1/√3未満または1/√3より大きく1以下であることは、昇圧比αの値に依らず、高調波振幅Ihを低減する観点で望ましい。
【0285】
昇圧制御におけるデューティdzが0であるとすると、デューティdcを1から引いた値の最大値が、0より大きく1/√3未満、または1/√3より大きく1以下であることが望ましい。
【0286】
デューティdrecの最大値が1/√3未満であることは等価直流電圧Vdcを高める観点で望ましい。デューティdrecの最大値が1/√3より大きく1以下であることは、電力変換器100の効率を向上させる観点で望ましい。
【0287】
このようなデューティdrec,dcの選定は、高調波振幅Ihを低減する観点のみならず高調波振幅Ih’を低減する観点でも同様である。なるほど、式(7)により、ある昇圧比αにおいて高調波振幅Ih’の極大値を与える電圧利用率Rは、同じ昇圧比αにおいて高調波振幅Ihの極大値を与える電圧利用率Rよりも大きい。しかし例えばデューティdrecが値0.6(>1/√3)をとる場合における高調波振幅Ih’の値の、デューティdrecが値1/√3をとる場合における高調波振幅Ihの値に対する増加率は1%未満であり、実際の制御上ではかかる増加率は無視され得る。
【0288】
図17および図19を参照すると、第1制御、第2制御、第5制御、第6制御、第7制御のいずれもが、デューティdrecの最大値が1/√3未満である場合に相当することが理解される。同様にして、第3制御、第4制御のいずれもが、デューティdrecの最大値が1/√3より大きく1以下である場合に相当することが理解される。
【0289】
D.フィルタ2の機能と配置.
フィルタ2は単相交流電源1に対してコンバータ3よりも単相交流電源1寄りに設けられてもよい。例えばリアクトルL2は単相交流電源1が有する2つの出力端のうちの一つとコンバータ3との間に設けられる。コンデンサC2は単相交流電源1の2つの出力端の間においてリアクトルL2と直列に接続される。
【0290】
図24は上述の様にフィルタ2が配置される場合の、電力変換器100を部分的に示す回路図である。当該電力変換器100の構成は、フィルタ2の配置を除き、図1で例示された構成と同一である。
【0291】
図18を参照して、ブースタ4bの昇圧チョッパが、電流iLのチョッパを行う基本周波数には、キャリアC3の周波数が採用される。またインバータ側キャリア周波数はキャリアC1の周波数である。例えばキャリアC3の周波数がキャリアC1の周波数よりも高く設定される。スイッチング回路4aにおいてトランジスタQcがスイッチングする基本周波数には、キャリアC1の周波数が採用される。
【0292】
そしてフィルタ2のカットオフ周波数がキャリアC1の周波数よりも低いことは、インバータ5のスイッチングに起因するリプル電流のみならず、スイッチング回路4aにおけるスイッチングに起因するリプル電流およびブースタ4bにおけるスイッチングに起因するリプル電流のいずれかもしくは両方を、単相交流電源1に伝搬させないことに寄与する。かかる寄与は、フィルタ2が図1のように配置されるか、図24のように配置されるかには依らない。
【0293】
以上、実施形態を説明したが、特許請求の範囲の趣旨及び範囲から逸脱することなく、形態や詳細の多様な変更が可能なことが理解されるであろう。上述の各種の実施形態および変形例は相互に組み合わせることができる。
【符号の説明】
【0294】
2 フィルタ
3 コンバータ
4 アクティブバッファ
4a スイッチング回路
4b ブースタ
5 インバータ
7 直流リンク
100 電力変換器
Idc 直流電流
Ih’ 振幅
J1,J2 範囲
J1d,J2d 下限
J1u,J2u 上限
PL,Pbuf,Pc,Pdc,Pin,Pout,Prec 瞬時電力
Qc トランジスタ
R 電圧利用率
Sc スイッチ
TH1,TH2,TH3 閾値
Vc コンデンサ電圧
Vdc 等価直流電圧
Vin 交流電圧
Vm 波高値
Vrec 整流電圧
d1,d1a,d1b,d2 下限値
dc,drec デューティ
iL 電流
α 昇圧比
α1,α1a,α1b,α2 値
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24