IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社日立公共システムの特許一覧

特開2023-165470予防医療支援システム及び予防医療支援方法
<>
  • 特開-予防医療支援システム及び予防医療支援方法 図1
  • 特開-予防医療支援システム及び予防医療支援方法 図2
  • 特開-予防医療支援システム及び予防医療支援方法 図3
  • 特開-予防医療支援システム及び予防医療支援方法 図4
  • 特開-予防医療支援システム及び予防医療支援方法 図5
  • 特開-予防医療支援システム及び予防医療支援方法 図6
  • 特開-予防医療支援システム及び予防医療支援方法 図7
  • 特開-予防医療支援システム及び予防医療支援方法 図8
  • 特開-予防医療支援システム及び予防医療支援方法 図9A
  • 特開-予防医療支援システム及び予防医療支援方法 図9B
  • 特開-予防医療支援システム及び予防医療支援方法 図9C
  • 特開-予防医療支援システム及び予防医療支援方法 図10
  • 特開-予防医療支援システム及び予防医療支援方法 図11
  • 特開-予防医療支援システム及び予防医療支援方法 図12
  • 特開-予防医療支援システム及び予防医療支援方法 図13
  • 特開-予防医療支援システム及び予防医療支援方法 図14
  • 特開-予防医療支援システム及び予防医療支援方法 図15
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023165470
(43)【公開日】2023-11-16
(54)【発明の名称】予防医療支援システム及び予防医療支援方法
(51)【国際特許分類】
   G16H 15/00 20180101AFI20231109BHJP
【FI】
G16H15/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022076491
(22)【出願日】2022-05-06
(71)【出願人】
【識別番号】596127554
【氏名又は名称】株式会社日立社会情報サービス
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】弁理士法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】新井 健司
(72)【発明者】
【氏名】碇 いつき
(72)【発明者】
【氏名】大塚 由香
(72)【発明者】
【氏名】中屋 文江
(72)【発明者】
【氏名】山下 敦司
【テーマコード(参考)】
5L099
【Fターム(参考)】
5L099AA01
5L099AA21
(57)【要約】
【課題】ユーザ属性(グループ)に対する健診結果の特徴を分析して、その結果を予防医療の継続判断や施策選定の意思決定に活用することができる予防医療支援システムを提供する。
【解決手段】予防医療支援システムPMSSは、健診結果データをユーザ属性情報に基づきグループに分類する分類部211と、グループの分類に関与する健診結果項目を抽出する機械学習部12と、機械学習部12が抽出した健診結果項目に対し、グループに対する健診結果のうち特徴ある健診結果を抽出する健診結果抽出部13と、抽出した特徴ある健診結果を出力する出力処理部14と、抽出した特徴ある健診結果について、グループ毎に有意差があるか統計的手法で検証を行う有意差検証部15と、を有する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
健診結果データをユーザ属性情報に基づきグループに分類する分類部と、
前記グループの分類に関与する健診結果項目を抽出する機械学習部と、
前記機械学習部が抽出した健診結果項目に対し、前記グループに対する健診結果のうち特徴ある健診結果を抽出する健診結果抽出部と、
前記抽出した特徴ある健診結果を出力する出力処理部と、
前記抽出した特徴ある健診結果について、前記グループ毎に有意差があるか統計的手法で検証を行う有意差検証部と、を有する
ことを特徴とする予防医療支援システム。
【請求項2】
前記分類部は、健診結果データとユーザ属性情報とに含まれる氏名を、ハッシュアルゴリズムを使用することにより匿名化する
ことを特徴とする請求項1に記載の予防医療支援システム。
【請求項3】
前記機械学習部は、前記ユーザ属性情報を目的変数とし、前記健診結果項目を説明変数とし、前記健診結果項目を重要度順に出力する
ことを特徴とする請求項1に記載の予防医療支援システム。
【請求項4】
前記健診結果抽出部は、前記機械学習部が抽出した健診結果項目に対し、健診結果の基準値によるグループ毎の割合、前記基準値によるグループ毎の対象者数を算出する
ことを特徴とする請求項1に記載の予防医療支援システム。
【請求項5】
前記出力処理部は、横軸に前記分類されたグループとし、縦軸に前記健診結果項目の健診値とした数値データの分布及び平均値を含む図を表示部に表示する
ことを特徴とする請求項1に記載の予防医療支援システム。
【請求項6】
前記有意差検証部は、前記グループの分散が等しいか否かの検定をし、分散が等しくないと仮定した場合の検定をし、前記グループ毎に有意差があるか否かの検証を行う
ことを特徴とする請求項1に記載の予防医療支援システム。
【請求項7】
前記ユーザ属性情報は、ユーザの身体的・社会的特徴を示す情報である
ことを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載の予防医療支援システム。
【請求項8】
健診結果の特徴を分析する予防医療支援装置の予防医療支援方法であって、
前記予防医療支援装置は、
健診結果データをユーザ属性情報に基づきグループに分類し、
前記グループの分類に関与する健診結果項目を抽出し、
前記抽出した健診結果項目に対し、前記グループに対する健診結果のうち特徴ある健診結果を抽出し、
前記抽出した特徴ある健診結果を出力し、
前記抽出した特徴ある健診結果について、前記グループ毎に有意差があるか統計的手法で検証を行う
ことを特徴とする予防医療支援方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は予防医療支援システム及び予防医療支援方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、予防医療として健康診断結果(健診結果)を有効に利用することが期待されている。特許文献1の健康管理支援装置では、複数のユーザの各々に関連付けて、健康診断の結果を表す情報を含む当該ユーザの健康状態を表す情報と、生活習慣を表す情報とを記憶する記憶媒体と、記憶された健康状態を表す情報に基づいて、複数のユーザの中から健康管理の支援対象となる第1のユーザを選択する第1の選択部と、記憶された健康状態を表す情報と、記憶された生活習慣を表す情報とに基づいて、複数のユーザの中から、選択された第1のユーザにとって目標となる健康状態を有する第2のユーザを選択する第2の選択部と、選択された第2のユーザの生活習慣を表す情報を記憶媒体から読み出し、当該読み出された生活習慣を表す情報に基づいて、第1のユーザの健康管理を支援するための支援情報を生成する支援情報生成部と、生成された支援情報を出力する情報出力部とを具備することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第6957324号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1は、個人に対する健康管理支援及び支援情報の提供を目的としているが、企業等の予防医療・健康経営施策は対象者に対して一律の施策だったのが現状である。これは、健診結果データ・ユーザ属性情報を活用し、対象者の属性・健康状態に沿った施策適用という観点から、十分に分析が行われていないという課題があった。
【0005】
本発明は、前記した課題を解決するためになされたものであり、ユーザ属性(グループ)に対する健診結果の特徴を分析して、その結果を予防医療の継続判断や施策選定の意思決定に活用することができる予防医療支援システム及び予防医療支援方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的を達成するため、本発明の予防医療支援システムは、健診結果データをユーザ属性情報に基づきグループに分類する分類部と、前記グループの分類に関与する健診結果項目を抽出する機械学習部と、前記機械学習部が抽出した健診結果項目に対し、前記グループに対する健診結果のうち特徴ある健診結果を抽出する健診結果抽出部と、前記抽出した特徴ある健診結果を出力する出力処理部と、前記抽出した特徴ある健診結果について、前記グループ毎に有意差があるか統計的手法で検証を行う有意差検証部と、を有することを特徴とする。本発明のその他の態様については、後記する実施形態において説明する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、ユーザ属性(グループ)に対する健診結果の特徴を分析して、その結果を予防医療の継続判断や施策選定の意思決定に活用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施形態に係る予防医療支援システムを示すブロック図である。
図2】健診結果データの例を示す図である。
図3】ユーザ属性情報の例を示す図である。
図4】ユーザ属性マスタの例を示す図である。
図5】匿名部による匿名加工処理後の健診結果データとユーザ属性情報の例を示す図である。
図6】匿名部による匿名加工処理の例を示す図である。
図7】分析対象データの例を示す図である。
図8】予防医療支援処理を示すフローチャートである。
図9A】健診結果項目(説明変数)の例を示す図である。
図9B】健診結果項目(説明変数)の例を示す図である。
図9C】健診結果項目(説明変数)の例を示す図である。
図10】機械学習部による健診結果項目(説明変数)の重要度の例を示す図である。
図11】健診結果抽出部による健診結果データの一覧情報を示すバイオリン図である。
図12】クラスタ毎の中性脂肪の検査値を示すバイオリン図である。
図13】クラスタ毎の中性脂肪の検査基準値に基づく特徴を示す図である。
図14】出力処理部による出力例を示す図である。
図15】有意差検証部による検証結果例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明を実施するための実施形態について、適宜図面を参照しながら詳細に説明する。
図1は、実施形態に係る予防医療支援システムPMSSを示すブロック図である。予防医療支援システムPMSS(Preventive Medical Support System)は、ユーザ属性(グループ)に対する健診結果の特徴を分析して、その結果を予防医療の継続判断や施策選定の意思決定に活用することを目的としている。特に、本発明は「グループ全体を見て、現状の問題を見つける」ことを目的としている。
【0010】
予防医療支援システムPMSSは、予防医療支援装置100と事業所サーバ200とから構成されている。予防医療支援装置100と事業所サーバ200とは、ネットワークNWを介して通信可能に接続されている。事業所は、商店、工場、事務所、営業所、銀行、支店、学校、寺院、病院、旅館、製錬所、鉱山、発電所等が該当する。
【0011】
事業所サーバ200は、顧客側の処理を支援するサーバであり、分析対象データ21を作成する上での前処理を実施する。事業所サーバ200は、処理部210と記憶部220を有している。記憶部220には、対象者の健診結果である健診結果データ221、対象者のユーザ属性を示すユーザ属性情報222、対象者を属性毎に分類する際に用いるユーザ属性マスタ223等が記憶されている。
【0012】
ここで、ユーザ属性とは、事業所の分析に用いるための属性であり、例えば、事業所が複数の工場を有している場合、工場別が属性となる。具体的には、A工場、B工場、C工場、D工場、E工場等となる。また、日本各地に分散している場合には、地域別が属性となる。具体的には、関東地域、中部地域、関西地域、中国地域、九州地域等となる。また、仕事の内容が多種ある場合には、職種別が属性となる場合もある。具体的には、営業職、開発職、流通職、管理職、総務職等である。
【0013】
処理部210は、健診結果データをユーザ属性情報に基づきグループに分類する分類部211と、顧客の健診結果データ221、ユーザ属性情報222を匿名加工する匿名部212を有する。処理部210が匿名加工することで、予防医療支援装置100側で、個人情報を取り扱わずに分析を実施可能となる。予防医療支援装置100は、事業所サーバ200に対し、匿名化ツールを提供する。なお、匿名部212は、分類部211の処理に含まれていてもよい。
【0014】
匿名化ツールは、ハッシュアルゴリズムを使用し匿名化することで、匿名化後のデータ同士で名寄せ作業が可能である。ハッシュ化とは、ハッシュ関数を使用し、規則性のない不可逆性の固定長の値を求めてデータを置き換えることである。同じデータからは常に同じハッシュ値が得られるが、少しでもデータが異なるとまったく類似しない別のハッシュ値が生成される。
【0015】
図2は、健診結果データ221の例を示す図である。健診結果データ221は、氏名、性別、生年月日、血圧収縮期、空腹時血糖、中性脂肪等の150項目の健診結果データ等を含んでいる。氏名、性別、生年月日は、後記する名寄せ作業のキー情報となる。
【0016】
なお、心臓から大動脈へ血液を送り出している状態では、血液を押し出すために心臓は収縮し、押し出された血液によって大動脈の血管壁には圧力がかかる。血圧収縮期は、この状態の血圧をいう。
【0017】
図3は、ユーザ属性情報222の例を示す図である。ユーザ属性情報222は、氏名、性別、生年月日、ユーザ属性コード等を含んでいる。氏名、性別、生年月日は、名寄せ作業のキー情報となる。
【0018】
図4は、ユーザ属性マスタ223の例を示す図である。ユーザ属性マスタ223は、属性コード、属性名を含んでいる。図4では、属性名としてX群、Y群、Z群、W群等としている。属性名は前記したA工場、B工場、C工場、D工場、E工場等に対応する。
【0019】
図5は、匿名部212による匿名加工処理後の健診結果データ221Aとユーザ属性情報222Aの例を示す図である。健診結果データ221Aとユーザ属性情報222Aは、キー情報のうち、氏名がハッシュ化され、生年月日も日付置換されている。生年月日が特定されないように日付を一律1日に変換されている。変換方法は、1日に限定されず、他の記号(例えば、**)に変換されてもよい。
【0020】
図6は、匿名部212による匿名加工処理S212の例を示す図である。匿名部212は、匿名加工処理S212により、健診結果データ221を健診結果データ221Aに変換し、ユーザ属性情報222をユーザ属性情報222Aに変換する。
【0021】
図1に戻り、予防医療支援装置100について説明する。
予防医療支援装置100は、処理部10、記憶部20、入力部30、出力部40、通信部50等を有する。処理部10は、事業所サーバ200から送付されたデータから分析対象データ21を作成するデータ作成部11と、グループの分類に関与する健診結果項目を抽出する機械学習部12と、機械学習部12が抽出した健診結果項目に対し、グループに対する健診結果のうち特徴ある健診結果を抽出する健診結果抽出部13と、抽出した特徴ある健診結果を出力する出力処理部14と、抽出した特徴ある健診結果について、グループ毎に有意差があるか統計的手法で検証を行う有意差検証部15等を有する。
【0022】
記憶部20には、分析対象データ21(図7参照)、健診結果項目重要度情報22(図10参照)、グループに対する健診結果情報23(図11参照)、出力情報24(図14参照)、健診結果項目25(図9A図9C参照)、基準値によるクラスタ毎の割合26(例えば、図13参照)、基準値によるクラスタ毎の対象者数27(例えば、図13参照)等が記憶されている。基準値によるクラスタ毎の割合26、基準値によるクラスタ毎の対象者数27については、後述する。
【0023】
図1において、処理部10は、中央演算処理装置(CPU)であり、RAMやHDD等に格納される各種プログラムを実行する。記憶部20は、HDDであり、予防医療支援装置100が処理を実行するための各種データを保存する。入力部30は、キーボードやマウス等のコンピュータに指示を入力するための装置であり、プログラム起動等の指示を入力する。出力部40は、ディスプレイ等であり、予防医療支援装置100による処理の実行状況や実行結果等を表示する。通信部50は、ネットワークNWを介して、他の装置と各種データやコマンドを交換する。
【0024】
データ作成部11は、事業所サーバ200から送付された健診結果データ221Aとユーザ属性情報222Aから名寄せ処理をして分析対象データ21を作成する。
【0025】
図7は、分析対象データ21の例を示す図である。分析対象データ21は、ハッシュ化された氏名、性別、日付置換された生年月日、血圧収縮期、空腹時血糖、中性脂肪等の150項目の健診結果データ、ユーザ属性コード(属性コード)、属性名等を含んでいる。
【0026】
図8は、予防医療支援処理S100を示すフローチャートである。データ作成部11は、前記したように、分析対象データ21を作成する(処理S110)。機械学習部12は、機械学習としてグループの分類に関与する健診結果項目を抽出し(処理S120)、健診結果項目の重要度を出力する(処理S130)。健診結果抽出部13は、機械学習部12が抽出した健診結果項目に対しグループ毎の健診結果を抽出し、グループに対する健診結果一覧を出力する(処理S140)。
【0027】
健診結果抽出部13は、グループに対応するクラスタの特徴を抽出する(処理S150)。特に、健診結果抽出部13は、機械学習部12が抽出した健診結果項目に対し、健診結果の基準値によるグループ毎の割合26、前記基準値によるグループ毎の対象者数27を算出する。出力処理部14は、抽出した特徴ある健診結果であるクラスタの特徴を出力する(処理S160)。有意差検証部15は、選択された2つのクラスタに有意差があるか統計的手法で検証を行い、有意差検証結果を出力する(処理S170)。
【0028】
各部の詳細について説明する。
図9A図9B図9Cは、健診結果項目(説明変数)の例を示す図である。図9A図9Cには、99項目の健診結果項目25が示されている。この中で、予防医療支援として重要な健診結果項目について絞り込む必要がある。
【0029】
機械学習部12は、大量の健診結果項目すべてに対して分析を行うのは現実的には困難なため、重要な項目に絞って分析を行うため、ユーザ属性を決定するのに重要な健診結果項目に絞ることを目的としている。
【0030】
特徴量選択手法もしくは変数選択手法の一つに、Borutaがある。機械学習部12は、特徴量選択手法(Boruta)の使用により重要な項目を、重要度をもとに絞っている。その際重要度の分位点を実分析が可能な項目数になるようにチューニングを実施する。
【0031】
図10は、機械学習部12による健診結果項目(説明変数)の重要度の例を示す図である。図10は、機械学習による絞り込み結果を示す。図10を参照すると、健診時年齢、BMI_検査値、腹囲_検査値、血液一般・赤血球数_検査値、・・・、中性脂肪_検査値_、空腹時血糖_検査値、・・・等が重要であることがわかる。
【0032】
図11は、健診結果抽出部13による健診結果データの一覧情報23aを示すバイオリン図である。各図は、横軸は、グループに対応するクラスタ(CL)を示し、縦軸に各健診結果データを示す。各図のクラスタは、左からCL1,CL2,CL3,CL4,CL5とし、5つのクラスタを示している。バイオリン図は箱ヒゲ図と密度曲線を融合したチャートで、箱ヒゲ図と同じく数値データの分布を表現するのに加え、平均値も可視化される。そして、分布を密度曲線でも表しているチャートになる。バイオリン図の内部には平均(または中央値)と四分位範囲が描かれる。健診結果抽出部13は、各クラスタの平均値の変化、分布度合い等を調べ、重要となる健診結果データを詳細に抽出する。
なお、図11では5つのクラスタの例を示しているが、これに限定されているわけではない。分類部211(図1)で分類したグループ数に合わせて適宜変更してもよい。
【0033】
図12は、クラスタ毎の中性脂肪の検査値を示すバイオリン図である。横軸は、CL1,CL2,CL3,CL4,CL5とし、5つのクラスタを示し、縦軸に中性脂肪の検査値を示す。健診結果データ23bの突出値を除外した場合が、健診結果データ23cである。健診結果データ23bの(1)をみるとクラスタ毎の中央値にはほとんど差がないが、CL2・CL3はばらつきが大きい。健診結果データ23cの(2)をみると、CL4・CL5については他クラスタに比べて低い値にまとまっている傾向が見られる。
【0034】
図13は、クラスタ毎の中性脂肪の検査基準値に基づく特徴を示す図である。図13には、基準値によるクラスタ毎の割合26と基準値によるクラスタ毎の対象者数27が示されている。基準値によるクラスタ毎の割合26の(3)をみると、中性脂肪基準値(30~149mg/dl:正常)を超えている対象者の割合は、CL2が最も多く、CL5が最も少ない結果となっている。
【0035】
図14は、出力処理部14による出力例を示す図である。出力部40の表示画面には、中央部に健診結果抽出部13が抽出した健診結果データの表示領域24W、下部にタスクバーがある。タスクバーには、名寄せアイコン24A、機械学習アイコン24B、全体表示アイコン24C、選択表示アイコン24D、特徴抽出アイコン24E、有意差検証アイコン24F、戻りボタン24M、進むボタン24N等がある。
【0036】
名寄せアイコン24Aがクリックされると、データ作成部11の処理が開始し、名寄せ処理を実行し、事業所サーバ200から送付されたデータから分析対象データ21を作成する。機械学習アイコン24Bがクリックされると、機械学習部12の処理が開始し、グループ(クラスタ)の分類に関与する健診結果項目を抽出する。
【0037】
全体表示アイコン24Cがクリックされると、健診結果抽出部13の処理が開始し、機械学習部12が抽出した健診結果項目に対し、重要度の高い健診結果項目について全体表示する(図11参照)。全体表示の一覧画面において、ユーザが健診結果項目について画面上でクリックし、選択表示アイコン24Dがクリックされると、健診結果が拡大表示される。複数の健診結果項目が選択されると、複数の健診結果が表示される。
【0038】
全体表示又は拡大表示で、ユーザが健診結果項目について画面上でクリックし、特徴抽出アイコン24Eがクリックされると、健診結果抽出部13がグループに対する健診結果のうち特徴ある健診結果を抽出し、図14のように表示される。
【0039】
図14において、ユーザが二つのクラスタを画面上でクリックし、有意差検証アイコン24Fがクリックされると、有意差検証部15が抽出した特徴ある健診結果について、グループ(クラスタ)毎に有意差があるか統計的手法で検証を行う。本実施形態では、その1例として、F検定、t検定の例を示す。
【0040】
図15は、有意差検証部15による検証結果例を示す図である。有意差検証部15では、選択したクラスタの検査値に有意差があるかの検証をF検定、t検定により実施する。図15の例では、(1)F-検定:2標本を使った分散の検定を実施している。ここでは、図13に基づき、CL2とCL5が選択された場合を示す。CL2とCL5の2標本を使った分散結果について、P値が0.05未満なので、帰無仮説(分散は等しい)は棄却された。よって、「CL2とCL5の中性脂肪検査値の分散は等しくない」と判定されている。
【0041】
次に、有意差検証部15は、(2)分散が等しくないと仮定した場合のt検定を実施する。P値が0.05(有意水準)未満なので、帰無仮説は棄却された。つまり、「CL2とCL5で中性脂肪の検査値に有意差がある」と判定されている。
有意差検証部15の検証結果より、ユーザは選択したクラスタの検査値に有意差があるか確認することができる。
【0042】
以上説明した本実施形態の予防医療支援システムは、次の特徴を有する。
(1)本実施形態の予防医療支援システムPMSSは、健診結果データをユーザ属性情報に基づきグループに分類する分類部211と、グループの分類に関与する健診結果項目を抽出する機械学習部12と、機械学習部12が抽出した健診結果項目に対し、グループに対する健診結果のうち特徴ある健診結果を抽出する健診結果抽出部13と、抽出した特徴ある健診結果を出力する出力処理部14と、抽出した特徴ある健診結果について、グループ毎に有意差があるか統計的手法で検証を行う有意差検証部15と、を有することを特徴とする。これにより、ユーザ属性(グループ)に対する健診結果の特徴を分析して、その結果を予防医療の継続判断や施策選定の意思決定に活用することができる。
【0043】
本実施形態では、予防医療支援装置100と事業所サーバ200とに分けて説明したがこれに限定されるわけではない。予防医療支援装置100が、分類部211を有していてもよい。
【0044】
(2)分類部211は、健診結果データとユーザ属性情報とに含まれる氏名を、ハッシュアルゴリズムを使用することにより匿名化する。これにより、個人情報を取り扱わずに分析できる。
【0045】
(3)機械学習部12は、ユーザ属性情報を目的変数とし、健診結果項目を説明変数とし、健診結果項目を重要度順に出力する。これにより、例えば150項目に及ぶ多数の健診結果項目から重要な項目に絞り込むことができる。
【0046】
(4)健診結果抽出部13は、機械学習部12が抽出した健診結果項目に対し、健診結果の基準値によるグループ毎の割合、前記基準値によるグループ毎の対象者数を算出することができる。これにより、グループ毎(クラスタ毎)の相違点が明確になる。
【0047】
(5)出力処理部14は、横軸に分類されたグループとし、縦軸に健診結果項目の健診値とした数値データの分布及び平均値を含む図を表示部に表示する。これにより、ユーザはグループ毎(クラスタ毎)の相違点を把握することができる。本実施形態では、予防医療支援装置100の出力部40(表示部)に表示するとして説明したがこれに限定されない。Webサーバを介して、事業所サーバ200から閲覧可能にしてもよい。
【0048】
(6)有意差検証部15は、グループ(クラスタ)の分散が等しいか否かの検定をし、分残が等しくないと仮定した場合の検定をし、グループ毎に有意差があるか否かの検証を行う。これにより、選択された二つのグループの分布に相違点があるか否かを把握することができる。
【0049】
(7)ユーザ属性情報は、ユーザの身体的・社会的特徴を示す情報である。本実施形態では、企業内の予防医療として、工場別、地域別、職種別等で説明したが、これに限定されない。病院毎等のグループ分析に利用することができる。
【0050】
(8)健診結果の特徴を分析する予防医療支援装置の予防医療支援方法であって、予防医療支援装置は、健診結果データをユーザ属性情報に基づきグループに分類し、グループの分類に関与する健診結果項目を抽出し、抽出した健診結果項目に対し、グループに対する健診結果のうち特徴ある健診結果を抽出し、抽出した特徴ある健診結果を出力し、抽出した特徴ある健診結果について、グループ毎に有意差があるか統計的手法で検証を行うことを特徴とする。これにより、ユーザ属性(グループ)に対する健診結果の特徴を分析して、その結果を予防医療の継続判断や施策選定の意思決定に活用することができる。
【符号の説明】
【0051】
10 処理部
11 データ作成部
12 機械学習部
13 健診結果抽出部
14 出力処理部
15 有意差検証部
20 記憶部
21 分析対象データ
22 健診結果項目重要度情報
23 グループに対する健診結果情報
24 出力情報
30 入力部
40 出力部(表示部)
50 通信部
100 予防医療支援装置
200 事業所サーバ
210 処理部
211 分類部
220 記憶部
221 健診結果データ
222 ユーザ属性情報
223 ユーザ属性マスタ
NW ネットワーク
PMSS 予防医療支援システム
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9A
図9B
図9C
図10
図11
図12
図13
図14
図15