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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023165472
(43)【公開日】2023-11-16
(54)【発明の名称】止水装置及び止水方法
(51)【国際特許分類】
   E06B 5/00 20060101AFI20231109BHJP
   E06B 7/22 20060101ALI20231109BHJP
【FI】
E06B5/00 Z
E06B7/22 Z
【審査請求】有
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022076496
(22)【出願日】2022-05-06
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2023-10-06
(71)【出願人】
【識別番号】000239714
【氏名又は名称】文化シヤッター株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000626
【氏名又は名称】弁理士法人英知国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】廣瀬 誠
【テーマコード(参考)】
2E036
2E239
【Fターム(参考)】
2E036AA01
2E036BA01
2E036CA01
2E036DA02
2E036EA03
2E036EB02
2E239AC04
(57)【要約】
【課題】 止水体を上下に連結した場合に止水性能が低下するのを防ぐ。
【解決手段】 上下方向に接続される複数の板状の止水体により一方側から他方側に流れる水を阻むようにした止水装置であって、前記複数の止水体には、既設止水体10と新設止水体20が含まれ、新設止水体20は、既設止水体10よりも撓みに対する強度が大きく、既設止水体10の下側に設けられている。
【選択図】 図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
上下方向に接続される複数の板状の止水体により一方側から他方側に流れる水を阻むようにした止水装置であって、
前記複数の止水体には、既設止水体と新設止水体が含まれ、
前記新設止水体は、前記既設止水体よりも撓みに対する強度が大きく、前記既設止水体の下側に設けられていることを特徴とする止水装置。
【請求項2】
前記新設止水体は、前記既設止水体より厚みが大きいことを特徴とする請求項1記載の止水装置。
【請求項3】
下側の前記新設止水体が、前記他方側へ撓んだ際に上側の前記既設止水体に係合するようにしたことを特徴とする請求項1記載の止水装置。
【請求項4】
前記既設止水体の幅方向の中央寄りに、被係合部材が固定され、
前記新設止水体には、前記被係合部材に係合する係合部材が固定され、
前記係合部材は、前記他方側へ移動した場合に前記被係合部材を前記他方側へ引くように設けられていることを特徴とする請求項1~3何れか1項記載の止水装置。
【請求項5】
前記被係合部材と前記係合部材は、それぞれ前記既設止水体と前記新設止水体の他方側の面に固定され、先端側同士を互いに係合し合っていることを特徴とする請求項4記載の止水装置。
【請求項6】
前記既設止水体の幅方向の中央寄りに固定された被係合部材と、前記新設止水体に固定されて前記被係合部材に係合する係合部材と、前記新設止水体と前記既設止水体との間で弾性的に圧縮される水密材とを備え、
前記被係合部材と前記係合部材の係合状態が、前記水密材の復元力により保持されるようにしたことを特徴とする請求項1~3何れか1項記載の止水装置。
【請求項7】
一方側から他方側に流れる水を阻むように設置された既設止水体を上方へ移動する工程と、
前記既設止水体のあった位置に、前記既設止水体よりも撓み強度の大きい新設止水体を設ける工程と、
前記既設止水体を、下側に位置する前記新設止水体の上側に接続する接続工程とを含むことを特徴とする止水方法。
【請求項8】
前記既設止水体の幅方向の中央寄りに固定された被係合部材と、前記新設止水体に固定されて前記被係合部材に係合する係合部材と、前記新設止水体と前記既設止水体との間で弾性的に圧縮される水密材とを備え、
前記接続工程では、前記既設止水体を押し下げることで前記水密材を圧縮した後に、前記水密材の復元力により前記被係合部材と前記係合部材を係合することを特徴とする請求項7記載の止水方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、増水時に建物や地下道の開口部を略板状の止水体により閉鎖して水の侵入を阻む止水装置及び止水方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
台風や集中豪雨などによる増水が建物や地下道の開口部に侵入すると、浸水による甚大な被害を及ぼすおそれがある。そこで、このような事態に備えて、予め建物や地下道などの開口部の両側に支柱を対向させて立設しておくとともに、この支柱の近傍に板状の止水体を格納しておき、増水が発生したときには、止水体を前記支柱に取り付け、開口部を閉鎖して水の侵入を阻むようにしたものが従来知られている(特許文献1参照)。
ところで、このような従来技術によれば、前記止水体の高さより高い水位の増水が見込まれる場合、その増水が前記止水体を乗り越えてしてしまうおそれがある。そこで、既設の前記止水体の上に、新たに止水体を積み重ねて、水位がより高い増水に対応できるようにすることが考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005-2644号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、既設の止水体に新たな止水体を積み重ねた場合、増水による水深が大きくなるため、下側に位置する既設の止水体に加わる水圧が、上側に位置する新設の止水体に加わる水圧よりも大きくなる。このため、下側の止水体が水圧により弓形に撓んで上側の止水体との間に隙間が生じるおそれがある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
このような課題に鑑みて、本発明の一つは、以下の構成を具備するものである。
上下方向に接続される複数の板状の止水体により一方側から他方側に流れる水を阻むようにした止水装置であって、前記複数の止水体には、既設止水体と新設止水体が含まれ、前記新設止水体は、前記既設止水体よりも撓みに対する強度が大きく、前記既設止水体の下側に設けられていることを特徴とする止水装置。
【発明の効果】
【0006】
本発明は、以上説明したように構成されているので、止水体を上下に連結した場合に止水性能が低下するのを防ぐ。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本発明に係る止水装置の一例を示す斜視図である。
図2】同止水装置の分解斜視図である。
図3】既設止水体の移動前を実線、移動後を二点鎖線で示す縦断面図である。
図4】既設止水体のあった位置に新設止水体を設置している様子を示す縦断面図である。
図5】既設止水体を新設止水体の上側に接続する様子を示す縦断面図である。
図6】既設止水体と新設止水体を接続した状態を示す縦断面図である。
図7図6の要部を拡大した図である。
図8】本発明に係る止水装置の他例を示す縦断面図である。
図9】係合部材及び被係合部材の他例を示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
次に、本発明に係る実施形態について、図面に基づいて詳細に説明する。
【0009】
止水装置1は、開口部Aを塞ぐようにして上下方向に接続された複数(図示例によれば二つ)の板状の止水体と、これら止水体を開口部Aの両側で支持する左右の止水体支持部30,30とを備え、前記止水体により一方側から他方側に流れる水を阻む。前記一方側と前記他方側は、図示例によれば、それぞれ、屋外側と屋内側である。なお、他例としては、前記一方側を屋内側、前記他方側を屋外側とすることも可能である。
【0010】
前記複数の止水体には、当該止水装置1の初期設置時に設けられた既設止水体10と、後から既設止水体10の下側に追加で設けられた新設止水体20とが含まれる(図3図6参照)。
【0011】
既設止水体10は、本体板11と、本体板11の横幅方向の両端側で止水体支持部30に圧接される水密材12と、本体板11の下端側で下方側の面(例えば、下側の新設止水体20の上端面、又は床面等)に圧接される水密材13と、本体板11の左端側と右端側の各々で、止水体支持部30に対し屋外側から係合する下側掛止部14と、同止水体支持部30に対し屋外側から係合する上側掛止部15と、屋内側の面の下端側で幅方向の中央寄りに後付けされる被係合部材16とを備える。
【0012】
本体板11は、金属等の硬質材料により横長矩形状に形成され、その長手方向の一端側と他端側が、それぞれ、止水体支持部30の屋外側の面に重なり合うように位置する。
この本体板11は、図示例によれば、引き抜き成形された中空横長矩形状の部材と、この部材の表面と裏面を覆う板状部材等からなるが、他例としては、単一の横長矩形状部材からなる態様や、図示例以外の複数の部材を適宜に組み合わせた態様等とすることが可能である。
なお、符号11aは、本体板11の表側部分と裏側部分を連結する水平板状の補強部である(図6参照)。
【0013】
また、水密材12,13は、ゴムやエラストマー樹脂等の弾性材料からなる長尺状の部材である。
【0014】
水密材12は、本体板11の左端側と右端側の各々における屋内側の面に固定され、本体板11の上下方向の略全長にわたり連続している。この水密材12は、その略全長にわたって、止水体支持部30の屋外側面に対し、屋外側から接する。
そして、この水密材12は、既設止水体10が屋外側から受ける水圧により止水体支持部30に水密に圧接される。
【0015】
水密材13は、本体板11の下端から下方へ突出するとともに、本体板11の横幅方向の略全長にわたる長尺状に連続している。この水密材13は、既設止水体10の自重を受けて、下方側の新設止水体20の上端部、又は床面等に対し、水密に圧接される。
【0016】
下側掛止部14は、本体板11の横幅方向の一端側において、本体板11の屋内側の面から突出して、止水体支持部30側の下側被係合部31に対し、屋外側斜め上側から掛止されるように形成されている(図5参照)。
【0017】
上側掛止部15は、本体板11の横幅方向の一端側において、本体板11の屋内側の面から突出して、止水体支持部30の上側被係合部32に対し、屋外側の斜め上側から近づいて離脱しないように係合する、この係合状態は、図示しない係脱機構に対する手動操作により解除可能である。
【0018】
被係合部材16は、後述する新設止水体20の係合部材26によって係合される部材である。この被係合部材16は、図7に示すように、横断面横向き略凹状に形成され、上下に間隔を空けて屋内側へ突出する上側片16aと下側片16bを一体に有する。下側片16bの突端側には、上向きに立ち上がった被掛止部16b1が設けられる。
【0019】
この被係合部材16は、後述するように、既設止水体10を上方へ移動して止水体支持部30から外した後の作業中に、既設止水体10の屋内側面に固定される(図4図5参照)。
なお、他例としては、前記作業の前に、予め既設止水体10に固定しておいてもよい。
【0020】
新設止水体20は、既設止水体10よりも厚みが大きく設定され、これにより、既設止水体10よりも撓みに対する強度が大きくなっている。
この新設止水体20は、既設止水体10の下側に設けられ、屋内側へ撓んだ際に、上側の既設止水体10に係合して、その撓みが抑制される。
【0021】
詳細に説明すれば、この新設止水体20は、本体板21と、本体板21の横幅方向の両端側で止水体支持部30に圧接される水密材12と、本体板21の下端側で下方側の面(例えば、床面や図示しない止水体等)に圧接される水密材13と、本体板21の左端側と右端側の各々で、止水体支持部30の下側被係合部31に対し屋外側から係合する下側掛止部14と、同止水体支持部30の上側被係合部32に対し屋外側から係合する上側掛止部15と、既設止水体10の被係合部材16に係合する係合部材26とを備える。
この新設止水体20において、水密材12,13、下側掛止部14及び上側掛止部15は、既設止水体10のものと共通部品である。
【0022】
本体板21は、既設止水体10の本体板11よりも厚みが大きい。すなわち、本体板21の厚さ寸法t2は、本体板11の厚さ寸法t1よりも大きい(図8参照)。
この本体板21は、本体板11と同様に、金属等の硬質材料により中空横長矩形状に形成され、その長手方向の一端側と他端側が、それぞれ、止水体支持部30の屋外側の面に重なり合うように位置する。符号21aは、本体板11の表側部分と裏側部分を連結する補強部である(図6参照)。
【0023】
係合部材26は、屋内側へ移動した場合に、被係合部材16を屋内側へ引く部材である。
詳細に説明すれば、この係合部材26は、図7に示すように、新設止水体20の屋内側面の上端側に止着された基部26aと、基部26aから屋内側へ突出するとともに上方へ延設されて下側片16bに掛合する掛合部26bとを一体に有する。
【0024】
掛合部26bは、被係合部材16に嵌り合って該被係合部材16の被掛止部16b1に掛止される横断面略フック状に形成される。
詳細に説明すれば、この掛合部26bの先端側には、下方向きに突出して、被掛止部16b1に対し屋外側から近接又は接触する掛止部26b1が設けられる。
【0025】
すなわち、被係合部材16と係合部材26とは、それぞれ既設止水体10と新設止水体20の屋内側の面に固定され、先端側同士(図示例によれば、被掛止部16b1と掛止部26b1)を互いに係合し合っている(図7参照)。
【0026】
止水体支持部30は、開口部Aの幅方向の両側にそれぞれ立設される。
各止水体支持部30は、下側支柱30aの上端に、図示しない接続部材を介して上側支柱30bを接続してなる。
下側支柱30aは、当該止水装置1の初期設置時等、新設止水体20の設置前に、建物開口部等の不動部位に固定された既設の支柱である。
これに対し、上側支柱30bは、既設止水体10と新設止水体20を接続する際に、既設止水体10の上方側に接続される新設の支柱である。
【0027】
下側支柱30aには、開口部Aの側の面から突出するとともに、上下方向に間隔を置いた軸状の下側被係合部31及び上側被係合部32が固定される。
上側支柱30bは、下側支柱30aと同構成の部材であり、下側被係合部31及び上側被係合部32を有する。
【0028】
次に、上記構成の止水装置1について、製造方法上の特徴を詳細に説明する。
この製造方法は、屋外側から屋内側に流れる水を阻むように設置された既設止水体10を上方へ移動する第1工程と、既設止水体10のあった位置に、既設止水体10よりも撓み強度の大きい新設止水体20を設ける第2工程と、既設止水体10を、下側に位置する新設止水体20の上側に接続する第3工程(接続工程)とを含む。
【0029】
より具体的に説明すれば、初期状態では、既設された両側の下側支柱30a,30aの間に、既設止水体10が設置されている(図3参照)。
【0030】
第1工程では、既設止水体10を、上方へ移動するようにして、両側の下側支柱30a,30aから外す(図3の二点鎖線参照)。
【0031】
第2工程では、両側の下側支柱30a,30aに対し、新設止水体20が設置される(図4参照)。詳細には、新設止水体20の両側の下側被係合部31,上側被係合部32が、それぞれ、下側支柱30a側の下側掛止部14と上側掛止部15に掛止され、水密材12,13がそれぞれ下側支柱30aと床面に圧接される。
【0032】
また、下側支柱30aに対しては図示しない接続部材等を介して上側支柱30bが連結され、取り外された既設止水体10には被係合部材16が装着される。被係合部材16を既設止水体10に固定する手段は、例えば、ねじ止めや、溶接等とすればよい。
なお、図示例以外の態様としては、被係合部材16を、予め既設止水体10に固定しておいてもよい。
【0033】
第3工程(接続工程)では、上側支柱30bの下側被係合部31と上側被係合部32に対し、それぞれ既設止水体10の下側掛止部14と上側掛止部15を掛止するとともに、既設止水体10を新設止水体20の上端に連結する(図5参照)。
この際、既設止水体10の被係合部材16に係合部材26が掛止され、水密材12,13はそれぞれ上側支柱30bと新設止水体20に圧接される(図7参照)。
【0034】
より詳細に説明すれば、前記第3工程(接続工程)では、既設止水体10を押し下げることで水密材13を弾性的に圧縮した後に、水密材13の復元力によって被係合部材16と係合部材26を係合させる。この係合状態は、水密材13の復元力により保持される。
【0035】
よって、上記構成の止水装置1及び止水方法によれば、先に設置されていた既設止水体10を有効に利用して、より水位の高い増水に対応することでき、しかも、新設止水体20の厚みにより新設止水体20が横断面弓状に変形するのを抑制することができ、ひいては、下側の新設止水体20の撓みにより、既設止水体10と新設止水体20の間に隙間が生じ、止水性能が低下するのを防ぐことができる。
【0036】
また、仮に新設止水体20が横断面弓状に変形した場合でも、係合部材26及び被係合部材16によって、この変形に追従するように既設止水体10が変形するため、既設止水体10と新設止水体20に前後のずれが生じるのを防止して、既設止水体10と新設止水体20の間に隙間が形成されるのを効果的に防ぐことができる。
【0037】
なお、上記実施形態によれば、被係合部材16と係合部材26をそれぞれ本体板11,21に対し単数設けたが、他例としては、これら被係合部材16と係合部材26を横幅方向に間隔を置くようにして複数設けたり、被係合部材16及び係合部材26を横幅方向に長尺状に設けたりすることも可能である。
【0038】
また、上記実施形態によれば、止水体支持部30を複数の支柱(図示例によれば、下側支柱30aと上側支柱30b)を連結して構成したが、他例としては、下側支柱30aと上側支柱30bの合計の長さを有する単一の支柱により止水体支持部を構成し、この止水体支持部の上半部と下半部にそれぞれ下側被係合部31と上側被係合部32を設けるようにしてもよい。
【0039】
<変形例>
図8に示す止水装置2は、上記止水装置1において、係合部材26及び被係合部材16を、係合部材27に置換したものである。
係合部材27は、新設止水体20における本体板21の中央寄りにおける上端側に、溶接やねじ止め等の固定手段によって固定される。
この係合部材27は、本体板21から上方へ突出し、その突端側を、逆L字状に屋内側へ曲げて本体板21面に近接又は接触させている。
【0040】
上記構成の止水装置2によれば、新設止水体20が屋内側へ撓んだ際に、係合部材27の上端側が、上側の既設止水体10の屋外側面に当接する。
このため、新設止水体20の撓みに追従するように既設止水体10も撓み、既設止水体10と新設止水体20の間に隙間が生じるのを防ぐことができる。
【0041】
なお、上記実施形態によれば、新設止水体20の撓みに対する強度を、既設止水体10よりも大きくする手段として、新設止水体20の厚さ寸法t2を既設止水体10の厚さ寸法t1よりも大きくしたが(図8参照)、この手段の他例としては、本体板21を本体板11よりも高強度な材質から形成した態様や、本体板21内の補強部21aの数や厚みを本体板11内の補強部11aよりも大きくした態様等とすることが可能である。これら他例においては、新設止水体20の厚さ寸法t2と既設止水体10の厚さ寸法t1とを同寸法にしてもよい。
【0042】
また、上記実施形態によれば、上下に連結される複数の止水体を既設止水体10と新設止水体20により構成したが、他例としては、3以上の止水体を上下に連結した態様とすることも可能である。
【0043】
また、上記止水装置1によれば、略フック状の係合部材26に対し被係合部材16が係合するようにしたが、他例としては、これら係合部材26及び被係合部材16を図9に示す係合部材28及び被係合部材17に置換することが可能である。
被係合部材17は、既設止水体10から屋内側へ突出するように設けられ、その突端側に上下方向の孔17aを有する。
係合部材28は、新設止水体20の屋内側面にブラケット等を介して固定され上方へ向けられた軸状部材であり、その上端側を孔17aに挿通している。
よって、図9に示す係合部材28及び被係合部材17によれば、上記した係合部材26及び被係合部材16と同様に、既設止水体10と新設止水体20の間に変形等に起因する前後のずれ及び隙間が生じるのを防ぐことができる。
なお、これら係合部材28と係合部材26において、孔と軸の関係は逆にすることが可能である。すなわち、係合部材28に設けられた孔に、軸状の係合部材26を挿通するようにしてもよい。
【0044】
また、本発明は上述した具体的構成に限定されず、本発明の要旨を変更しない範囲で適宜変更可能である。
【0045】
<総括>
以上のとおり、上記実施形態では以下の構成を開示している。
(1)上下方向に接続される複数の板状の止水体により一方側から他方側に流れる水を阻むようにした止水装置であって、前記複数の止水体には、既設止水体と新設止水体が含まれ、前記新設止水体は、前記既設止水体よりも撓みに対する強度が大きく、前記既設止水体の下側に設けられていることを特徴とする止水装置(図6参照)。
(2)前記新設止水体は、前記既設止水体より厚みが大きいことを特徴とする(1)に記載の止水装置(図6参照)。
(3)下側の前記新設止水体が、前記他方側へ撓んだ際に上側の前記既設止水体に係合するようにしたことを特徴とする(1)又は(2)に記載の止水装置(図6図8参照)。
(4)前記既設止水体の幅方向の中央寄りに、被係合部材が固定され、前記新設止水体には、前記被係合部材に係合する係合部材が固定され、前記係合部材は、前記他方側へ移動した場合に前記被係合部材を前記他方側へ引くように設けられていることを特徴とする(1)~(3)のいずれかに記載の止水装置(図7参照)。
(5)前記被係合部材と前記係合部材は、それぞれ前記既設止水体と前記新設止水体の他方側の面に固定され、先端側同士を互いに係合し合っていることを特徴とする(4)に記載の止水装置(図7参照)。
(6)
前記既設止水体の幅方向の中央寄りに固定された被係合部材と、前記新設止水体に固定されて前記被係合部材に係合する係合部材と、前記新設止水体と前記既設止水体との間で弾性的に圧縮される水密材とを備え、前記被係合部材と前記係合部材の係合状態が、前記水密材の復元力により保持されるようにしたことを特徴とする(1)~(3)のいずれかに記載の止水装置(図7参照)。
(7)
一方側から他方側に流れる水を阻むように設置された既設止水体を上方へ移動する工程と、前記既設止水体のあった位置に、前記既設止水体よりも撓み強度の大きい新設止水体を設ける工程と、前記既設止水体を、下側に位置する前記新設止水体の上側に接続する接続工程とを含むことを特徴とする止水方法(図3図5参照)。
(8)
前記既設止水体の幅方向の中央寄りに固定された被係合部材と、前記新設止水体に固定されて前記被係合部材に係合する係合部材と、前記新設止水体と前記既設止水体との間で弾性的に圧縮される水密材とを備え、前記接続工程では、前記既設止水体を押し下げることで前記水密材を圧縮した後に、前記水密材の復元力により前記被係合部材と前記係合部材を係合することを特徴とする(7)に記載の止水方法(図7参照)。
【0046】
また、上記実施形態では、次の構成要件のみを必須とした発明も開示している。
この発明の一つは、上下方向に接続される複数の板状の止水体により一方側から他方側に流れる水を阻むようにした止水装置であって、前記複数の止水体には、既設止水体と、前記既設止水体よりも後に設置された新設止水体とが含まれ、前記新設止水体は、前記既設止水体の下側に設けられ、前記他方側へ撓んだ際に上側の前記既設止水体に係合する。
この発明によれば、新設止水体が前記他方側へ変形した場合でも、この変形に追従するように既設止水体が変形するため、既設止水体と新設止水体の間に隙間が形成され、止水性能が低下するようなことを防ぐことができる(図6図8参照)。
【符号の説明】
【0047】
1,2:止水装置
10:既設止水体
11:本体板
16:被係合部材
20:新設止水体
21:本体板
26:係合部材
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9