(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023165479
(43)【公開日】2023-11-16
(54)【発明の名称】反射スクリーン、映像表示装置、反射スクリーンの製造方法
(51)【国際特許分類】
G03B 21/60 20140101AFI20231109BHJP
G03B 21/14 20060101ALI20231109BHJP
H04N 5/74 20060101ALI20231109BHJP
G03B 21/00 20060101ALI20231109BHJP
【FI】
G03B21/60
G03B21/14 Z
H04N5/74 C
G03B21/00 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022076514
(22)【出願日】2022-05-06
(71)【出願人】
【識別番号】000002897
【氏名又は名称】大日本印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【弁理士】
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100165157
【弁理士】
【氏名又は名称】芝 哲央
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【弁理士】
【氏名又は名称】林 一好
(72)【発明者】
【氏名】関口 博
(72)【発明者】
【氏名】後藤 正浩
【テーマコード(参考)】
2H021
2K203
5C058
【Fターム(参考)】
2H021BA03
2H021BA09
2H021BA10
2K203FA62
2K203FA67
2K203FA82
2K203GC22
2K203GC29
2K203GC30
2K203HB29
2K203MA02
5C058BA08
5C058EA33
(57)【要約】
【課題】コントラストの高い映像を表示することができる反射スクリーン、映像表示装置、反射スクリーンの製造方法を提供する。
【解決手段】反射スクリーン1は、特定の波長領域の光照射によって特性が変化するフォトクロミック層30と、フォトクロミック層30に接して設けられた反射層40と、光を吸収する光吸収層20とを備える。不要な外光は光吸収層20によって吸収されるので、コントラストの高い映像を表示することができる。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
特定の波長領域の光照射によって特性が変化するフォトクロミック層と、
前記フォトクロミック層に接して設けられた反射層と、
光を吸収する光吸収層と、
を備える反射スクリーン。
【請求項2】
光透過性を有する基材層と、
前記基材層の厚み方向の背面側に配置され、映像光が入射する第1の面とこれに交差する第2の面とを有する単位光学形状が複数並べて配置された光透過性を有する光学形状層と、
前記単位光学形状に沿って前記光学形状層の背面側に配置され、特定の波長領域の光照射によって特性が変化するフォトクロミック層と、
前記第1の面上の前記フォトクロミック層の背面側に設けられた反射層と、
前記フォトクロミック層及び前記反射層の背面側に配置され、光を吸収する光吸収層と、
を備える反射スクリーン。
【請求項3】
請求項2に記載の反射スクリーンにおいて、
前記第1の面は、粗面であり、前記第1の面上の前記フォトクロミック層及び前記反射層は、前記第1の面の粗面に沿った粗面であること、
を特徴とする反射スクリーン。
【請求項4】
請求項2に記載の反射スクリーンにおいて、
前記第1の面は、平滑面であり、前記フォトクロミック層及び前記反射層は、前記第1の面の平滑面に沿った平滑面であり、
光を拡散する拡散層を有すること、
を特徴とする反射スクリーン。
【請求項5】
請求項2から請求項4までのいずれかに記載の反射スクリーンにおいて、
前記フォトクロミック層と前記反射層との間に、無電解メッキ触媒層が設けられていること、
を特徴とする反射スクリーン。
【請求項6】
請求項2から請求項4までのいずれかに記載の反射スクリーンと、
前記反射スクリーンへ映像光を投影する映像源と、
を備え、
前記第2の面が前記反射スクリーンのシート面の法線方向となす角をαとし、
前記映像源から投影される映像光が当該反射スクリーンの表面で屈折する屈折角をβとすると、
0≦α≦β
の関係を満たす、映像表示装置。
【請求項7】
基材層の厚み方向の背面側に、映像光が入射する第1の面とこれに交差する第2の面とを有する単位光学形状が複数並べて配置された光透過性を有する光学形状層を形成する光学形状層形成工程と、
前記光学形状層の前記単位光学形状を有する面に、特定の波長領域の光照射によって特性が変化するフォトクロミック層を形成するフォトクロミック層形成工程と、
前記光学形状層の前記単位光学形状とは反対側の面から光を前記第2の面上の前記フォトクロミック層に到達しない又は到達しにくい角度で前記単位光学形状の内部へ照射して前記第1の面に到達させて、前記第1の面上の前記フォトクロミック層の特性を変化させる光照射工程と、
前記第1の面に反射層を形成する反射層形成工程と、
前記フォトクロミック層及び前記反射層の背面側に、光を吸収する光吸収層を形成する光吸収層形成工程と、
を備える反射スクリーンの製造方法。
【請求項8】
請求項7に記載の反射スクリーンの製造方法において、
前記フォトクロミック層は、特定の波長領域の光照射により金属蒸着不可能な状態から金属蒸着可能な状態に変化する材料により形成されており、
前記光照射工程によって前記第2の面上の前記フォトクロミック層は金属蒸着不可能な状態を維持し、かつ、前記第1の面上の前記フォトクロミック層を金属蒸着可能な状態に変化させ、
前記反射層形成工程では、前記反射層となる金属を前記第1の面に蒸着処理を行い前記第1の面に前記反射層を形成すること、
を特徴とする反射スクリーンの製造方法。
【請求項9】
請求項7に記載の反射スクリーンの製造方法において、
前記フォトクロミック層は、特定の波長領域の光照射により特性が疎水性から親水性に変化する材料により形成されており、
前記光照射工程によって前記第2の面上の前記フォトクロミック層は疎水性を維持し、かつ、前記第1の面上の前記フォトクロミック層を親水性に変化させ、
前記光照射工程と前記反射層形成工程との間において、前記フォトクロミック層に無電解メッキの触媒材料を塗布し、親水性に変化した前記フォトクロミック層の上に無電解メッキ触媒層を形成する無電解メッキ触媒層形成工程を備え、
前記反射層形成工程では、前記無電解メッキ触媒層の上に無電解メッキ処理を行い無電解メッキ層を前記反射層として形成すること、
を特徴とする反射スクリーンの製造方法。
【請求項10】
請求項7から請求項9までのいずれかに記載の反射スクリーンの製造方法において、
前記光照射工程の前に、前記特定の波長領域の光照射とは異なる波長領域の光を前記フォトクロミック層の全体に照射する初期照射工程を備えること、
を特徴とする反射スクリーンの製造方法。
【請求項11】
請求項7から請求項9までのいずれかに記載の反射スクリーンの製造方法において、
前記光照射工程では、前記第2の面に光が到達しないように部分的に遮光する遮光パターンを有するマスクを介して光を照射すること、
を特徴とする反射スクリーンの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、反射スクリーン、映像表示装置、反射スクリーンの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
投射距離が短いプロジェクターで投射しても、明るい映像が視認できる反射スクリーンとして、特許文献1には、フレネルレンズのレンズ面に反射層を形成したものが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1の構成では、フレネルレンズの映像光を反射するための反射面の他に、反射面を接続する立ち上がり面についても反射層として形成されていた。したがって、映像を構成するプロジェクターからの映像光以外の外光も反射することとなり、表示される映像のコントラストが低かった。
【0005】
本開示の課題は、コントラストの高い映像を表示することができる反射スクリーン、映像表示装置、反射スクリーンの製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示は、以下のような解決手段により、前記課題を解決する。なお、理解を容易にするために、本開示の実施形態に対応する符号を付して説明するが、これに限定されるものではない。
【0007】
第1の開示は、特定の波長領域の光照射によって特性が変化するフォトクロミック層(30)と、前記フォトクロミック層(30)に接して設けられた反射層(40、40B、40C)と、光を吸収する光吸収層(20)と、を備える反射スクリーン(1、1B、1C、1D、1E)である。
【0008】
第2の開示は、光透過性を有する基材層(11、11B)と、前記基材層(11、11B)の厚み方向の背面側に配置され、映像光が入射する第1の面(121a)とこれに交差する第2の面(121b)とを有する単位光学形状(121)が複数並べて配置された光透過性を有する光学形状層(12)と、前記単位光学形状(121)に沿って前記光学形状層(12)の背面側に配置され、特定の波長領域の光照射によって特性が変化するフォトクロミック層(30)と、前記第1の面(121a)上の前記フォトクロミック層(30)の背面側に設けられた反射層(40、40B、40C)と、前記フォトクロミック層(30)及び前記反射層(40、40B、40C)の背面側に配置され、光を吸収する光吸収層(20)と、を備える反射スクリーン(1、1B、1C、1D、1E)である。
【0009】
第3の開示は、第2の開示に記載の反射スクリーン(1、1B、1C、1E)において、前記第1の面(121a)は、粗面であり、前記第1の面(121a)上の前記フォトクロミック層(30)及び前記反射層(40、40B)は、前記第1の面(121a)の粗面に沿った粗面であること、を特徴とする反射スクリーン(1、1B、1C、1E)である。
【0010】
第4の開示は、第2の開示に記載の反射スクリーン(1D)において、前記第1の面(121a)は、平滑面であり、前記フォトクロミック層(30)及び前記反射層(40C)は、前記第1の面(121a)の平滑面に沿った平滑面であり、光を拡散する拡散層(11B)を有すること、を特徴とする反射スクリーン(1D)である。
【0011】
第5の開示は、第2の開示から第4の開示までのいずれかに記載の反射スクリーン(1C)において、前記フォトクロミック層(30)と前記反射層(40B)との間に、無電解メッキ触媒層(50)が設けられていること、を特徴とする反射スクリーン(1C)である。
【0012】
第6の開示は、第2の開示から第4の開示までのいずれかに記載の反射スクリーン(1、1B、1C、1D、1E)と、前記反射スクリーン(1、1B、1C、1D、1E)へ映像光を投影する映像源(LS)と、を備え、前記第2の面(121b)が前記反射スクリーン(1、1B、1C、1D、1E)のシート面の法線方向となす角をαとし、前記映像源から投影される映像光が当該反射スクリーン(1、1B、1C、1D、1E)の表面で屈折する屈折角をβとすると、0≦α≦βの関係を満たす、映像表示装置(100、100B、100C)である。
【0013】
第7の開示は、基材層(11、11B)の厚み方向の背面側に、映像光が入射する第1の面(121a)とこれに交差する第2の面(121b)とを有する単位光学形状(121)が複数並べて配置された光透過性を有する光学形状層(12)を形成する光学形状層形成工程と、前記光学形状層(12)の前記単位光学形状(121)を有する面に、特定の波長領域の光照射によって特性が変化するフォトクロミック層(30)を形成するフォトクロミック層形成工程と、前記光学形状層(12)の前記単位光学形状(121)とは反対側の面から光を前記第2の面(121b)上の前記フォトクロミック層(30)に到達しない又は到達しにくい角度で前記単位光学形状(121)の内部へ照射して前記第1の面(121a)に到達させて、前記第1の面(121a)上の前記フォトクロミック層(30)の特性を変化させる光照射工程と、前記第1の面(121a)に反射層(40、40B、40C)を形成する反射層形成工程と、前記フォトクロミック層(30)及び前記反射層(40、40B、40C)の背面側に、光を吸収する光吸収層(20)を形成する光吸収層形成工程と、を備える反射スクリーン(1、1B、1C、1D、1E)の製造方法である。
【0014】
第8の開示は、第7の開示に記載の反射スクリーン(1、1B、1D、1E)の製造方法において、前記フォトクロミック層(30)は、特定の波長領域の光照射により金属蒸着不可能な状態から金属蒸着可能な状態に変化する材料により形成されており、前記光照射工程によって前記第2の面(121b)上の前記フォトクロミック層(30)は金属蒸着不可能な状態を維持し、かつ、前記第1の面(121a)上の前記フォトクロミック層(30)を金属蒸着可能な状態に変化させ、前記反射層形成工程では、前記反射層(40、40C)となる金属を前記第1の面(121a)に蒸着処理を行い前記第1の面(121a)に前記反射層(40、40C)を形成すること、を特徴とする反射スクリーン(1、1B、1D、1E)の製造方法である。
【0015】
第9の開示は、第7の開示に記載の反射スクリーン(1C)の製造方法において、前記フォトクロミック層(30)は、特定の波長領域の光照射により特性が疎水性から親水性に変化する材料により形成されており、前記光照射工程によって前記第2の面(121b)上の前記フォトクロミック層(30)は疎水性を維持し、かつ、前記第1の面(121a)上の前記フォトクロミック層(30)を親水性に変化させ、前記光照射工程と前記反射層形成工程との間において、前記フォトクロミック層(30)に無電解メッキの触媒材料を塗布し、親水性に変化した前記フォトクロミック層(30)の上に無電解メッキ触媒層(50)を形成する無電解メッキ触媒層形成工程を備え、前記反射層形成工程では、前記無電解メッキ触媒層(50)の上に無電解メッキ処理を行い無電解メッキ層を前記反射層(40B)として形成すること、を特徴とする反射スクリーン(1C)の製造方法である。
【0016】
第10の開示は、第7の開示から第9の開示までのいずれかに記載の反射スクリーン(1、1B、1C、1D、1E)の製造方法において、前記光照射工程の前に、前記特定の波長領域の光照射とは異なる波長領域の光を前記フォトクロミック層(30)の全体に照射する初期照射工程を備えること、を特徴とする反射スクリーン(1、1B、1C、1D、1E)の製造方法である。
【0017】
第11の開示は、第7の開示から第9の開示までのいずれかに記載の反射スクリーン(1、1B、1C、1D、1E)の製造方法において、前記光照射工程では、前記第2の面(121b)に光が到達しないように部分的に遮光する遮光パターン(201)を有するマスク(200)を介して光を照射すること、を特徴とする反射スクリーン(1、1B、1C、1D、1E)の製造方法である。
【発明の効果】
【0018】
本開示によれば、コントラストの高い映像を表示することができる反射スクリーン、映像表示装置、反射スクリーンの製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】第1実施形態の反射スクリーン1の正面図である。
【
図2】
図1中の矢印A-Aの位置で反射スクリーン1を切断した断面の一部を示す図である。
【
図4】光学形状層形成工程によって光学形状層12を作製した状態を示す図である。
【
図5】フォトクロミック層形成工程によってフォトクロミック層30を形成した状態を示す図である。
【
図7】第1実施形態の反射層形成工程によって反射層40が形成された状態を示す図である。
【
図8】光吸収層形成工程により光吸収層20が形成された状態の反射スクリーン1を示す図である。
【
図9】第1実施形態の
図2と同様な位置で第2実施形態の反射スクリーン1Bを切断した断面の一部を示す図である。
【
図10】第2実施形態における光学形状層形成工程によって光学形状層12を作製した状態を示す図である。
【
図11】第2実施形態におけるフォトクロミック層形成工程によってフォトクロミック層30を形成した状態を示す図である。
【
図12】第2実施形態における光照射工程を説明する図である。
【
図13】第2実施形態における反射層形成工程によって反射層40が形成された状態を示す図である。
【
図14】第2実施形態における光吸収層形成工程により光吸収層20が形成された状態の反射スクリーン1Bを示す図である。
【
図15】第1実施形態の
図2と同様な位置で第3実施形態の反射スクリーン1Cを切断した断面の一部を示す図である。
【
図16】第3実施形態における無電解メッキ触媒層形成工程によって無電解メッキ触媒層50が形成された状態を示す図である。
【
図17】第3実施形態における反射層形成工程によって反射層40Bが形成された状態を示す図である。
【
図18】第1実施形態の
図2と同様な位置で第4実施形態の反射スクリーン1Dを切断した断面の一部を示す図である。
【
図19】第1実施形態の
図2と同様な位置で第5実施形態の反射スクリーン1Eを切断した断面の一部を示す図である。
【
図20】第6実施形態における光照射工程を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本開示を実施するための最良の形態について図面等を参照して説明する。
【0021】
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態の反射スクリーン1の正面図である。
図2は、
図1中の矢印A-Aの位置で反射スクリーン1を切断した断面の一部を示す図である。
なお、
図1を含め、以下に示す各図は、模式的に示した図であり、各部の大きさ、形状は、理解を容易にするために、適宜誇張したり、省略したりして示している。
また、以下の説明では、具体的な数値、形状、材料等を示して説明を行うが、これらは、適宜変更することができる。
本明細書において、形状や幾何学的条件を特定する用語、例えば、平行や直交等の用語については、厳密に意味するところに加え、同様の光学的機能を奏し、平行や直交と見なせる程度の誤差を有する状態も含むものとする。
本明細書において、板、シート、フィルム等の言葉を使用しているが、これらは、一般的な使い方として、厚さの厚い順に、板、シート、フィルムの順で使用されており、本明細書中でもそれに倣って使用している。しかし、このような使い分けには、技術的な意味は無いので、これらの文言は、適宜置き換えることができるものとする。
本明細書中において、シート面とは、各シートにおいて、そのシート全体として見たときにおける、シートの平面方向となる面を示すものであるとする。なお、板面、フィルム面に関しても同様であるとする。
また、本開示において透明とは、少なくとも利用する波長の光を透過するものをいう。例えば、仮に可視光を透過しないものであっても、赤外線を透過するものであれば、赤外線用途に用いる場合においては、透明として取り扱うものとする。
なお、本明細書及び特許請求の範囲において規定する具体的な数値には、一般的な誤差範囲は含むものとして扱うべきものである。すなわち、±10%程度の差異は、実質的には違いがないものであって、本件の数値範囲をわずかに超えた範囲に数値が設定されているものは、実質的には、本件発明の範囲内のものと解釈すべきである。
また、図中には、説明の便宜のためX、Y、Zの直交座標を設け、以下の説明ではこの座標を用いて各部の向き等の説明を行う。
【0022】
第1実施形態の反射スクリーン1は、
図2に示すように映像源LSによって斜め下方から照射される映像光を反射して観察者O1が観察可能に反射する反射型のスクリーンである。反射スクリーン1と映像源LSとが組み合わせられて映像表示装置100が構成されている。
反射スクリーン1は、
図2に示すように、厚み方向(Z方向)において、-Z側(正面側)から順に、基材層11と、光学形状層12と、フォトクロミック層30と、反射層40と、光吸収層20とを備えている。
【0023】
基材層11は、光透過性を有するシート状の部材であり、その一方の面側である背面側(+Z側)に、光学形状層12が一体に形成されている。この基材層11は、光学形状層12を形成する基材(ベース)となる層である。なお、基材層11は、板状の部材であってもよいし、フィルム状の部材であってもよい。
基材層11は、例えば、高い光透過性を有するPET(ポリエチレンテレフタレート)等のポリエステル樹脂、アクリル樹脂、スチレン樹脂、アクリル・スチレン樹脂、PC(ポリカーボネート)樹脂、脂環式ポリオレフィン樹脂、TAC(トリアセチルセルロース)樹脂等により形成される。
【0024】
光学形状層12は、基材層11の+Z側に形成された光透過性を有する層である。光学形状層12の+Z側の面には、単位光学形状121が複数並べて設けられている。
単位光学形状121及び反射層40は、
図1に示すように、真円の一部形状(円弧状)であり、反射スクリーン1Bの範囲外に位置する点Cを中心として、同心円状に複数配列されている。
本実施形態では、
図1に示すように、光学形状層12を正面側(-Z側)から見たときに、点Cは、反射スクリーン1の左右方向(X方向)の中央であって反射スクリーン1の範囲外の下方(-Y側)に位置しており、点Cと点Dとは、Y方向に平行な同一直線上に位置している。なお、点Dは、反射スクリーン1の上下左右方向の中心位置(対角線の交点)である。
【0025】
単位光学形状121は、
図2に示すように、シート面に直交する方向(Z方向)に平行であって、単位光学形状121の配列方向に平行な断面において、略三角形形状(楔状)の断面形状となっている。
単位光学形状121は、+Z側に凸であり、第1の面121aと、これに交差し、シート面に直交する方向に延在する第2の面121bとを有している。
第1の面121aは、シート面に直交する断面(
図2等)においてシート面に対して角度をもって傾斜した斜面であり、正面下方(-Z側かつ-Y側)に配置された映像源LSからの映像光が入射する面である。
【0026】
図3は、
図2中の範囲Eを拡大した図である。
本実施形態では、第1の面121aは、微細かつ不規則な凹凸形状が形成されて粗面(マット面)として形成されている。この微細な凹凸形状は、凸形状と凹形状とが2次元方向(第1の面121aの面内方向)に不規則に配列されて形成されており、凸形状及び凹形状は、その大きさや形状、高さ等が不規則である。
ここで、第1の面121aの凹凸形状は、後述する光照射工程において照射され第1の面121aで屈折した光が第2の面121bに入射しない程度の凹凸形状となっている。
【0027】
また、第1の面121aに微細な凹凸形状が形成されていることから、フォトクロミック層30及び反射層40についても、この微細な凹凸形状に追従して形成される。そして、単位光学形状121側とは反対側の面にも、この微細かつ不規則な凹凸形状が維持された状態でフォトクロミック層30及び反射層40は、成膜されている。よって、映像光は反射層40によって適度に拡散された状態で反射されて観察者側へ届き、視野角を拡大することができる。
【0028】
光学形状層12は、光透過性の高いウレタンアクリレート系、ポリエステルアクリレート系、エポキシアクリレート系、ポリエーテルアクリレート系、ポリチオール系、ブタジエンアクリレート系等の紫外線硬化型樹脂により形成されている。
なお、本実施形態では、光学形状層12を構成する樹脂として、紫外線硬化型樹脂を例に挙げて説明するが、これに限らず、例えば、電子線硬化型樹脂等の他の電離放射線硬化型樹脂により形成してもよい。
【0029】
基材層11の屈折率n11と光学形状層12の屈折率n12とは、同じであるか、両者の屈折率差が0.01以下であることが望ましい。本実施形態では、基材層11の屈折率n11=1.57、光学形状層12の屈折率n12=1.57とした。
【0030】
フォトクロミック層30は、単位光学形状121に沿って薄膜状に積層されており、特定の波長領域の光照射によって特性が変化する層である。より具体的には、本実施形態のフォトクロミック層30は、1、2-ジアリールエテンを塗布して乾燥させたものである。また、本実施形態のフォトクロミック層30は、1、2-ジアリールエテンに波長が300~400nmの光を照射すると、蒸着する金属が付着可能な状態(金属蒸着可能な状態)となり、波長が500~600nmの光を照射すると、蒸着する金属が付着しない状態(金属蒸着不可能な状態)となる特性を利用する。
フォトクロミック層30の層厚は、0.1μm以上、10μm以下とすることが望ましい。
また、フォトクロミック層30の屈折率n30と光学形状層12の屈折率n12とは、同じであるか、両者の屈折率差が0.01以下であることが望ましい。本実施形態では、フォトクロミック層30の屈折率n30=1.57であり、光学形状層12の屈折率n12と同じである。
【0031】
なお、本明細書中では、「フォトクロミック」との文言は、光照射によって何らかの特性が変化することを表すものとし、光照射によって色変化(透過スペクトルの変化)が生じることを要するものではない。また、上述したフォトクロミック層30の例では、可逆性のフォトクロミック特性を有しているが、不可逆性のフォトクロミック特性であってもよい。光照射により特性が変化する技術が記載されているものとして、高分子学会編集、“フォトクロミズム”共立出版、p.28 (2012)がある。
【0032】
反射層40は、第1の面121aに積層されたフォトクロミック層30上の+Z側の先端付近を除く略全面にフォトクロミック層30に接して薄膜状に形成されている。また、反射層40は、第2の面121bに積層されたフォトクロミック層30上には、設けられていない。
本実施形態の反射層40は、映像光を反射する反射層として設けられている。そのため、反射層40は、光反射性の高い金属、例えば、アルミニウム、銀、ニッケル等により形成され、その厚さは、数十nm程度である。
反射層40の反射率は、映像光を良好に反射させるために、50%以上であることが望ましい。
本実施形態で金属を用いて構成した反射層40は、アルミニウムを蒸着することにより形成されており、反射層40のみでの反射率が約85%である。
【0033】
光吸収層20は、単位光学形状121間の谷部を埋めるように充填され、光学形状層12の+Z側の面を平坦化している。この光吸収層20の-Z側の面は、光学形状層12の単位光学形状121の略逆型の形状が複数配列されて形成されている。
光吸収層20は、黒色等の暗色系の塗料や、暗色系の顔料や染料、カーボン粒子等を含有する紫外線硬化型樹脂や熱硬化型樹脂等により形成することができる。
光吸収層20を設けることにより、反射層40が設けられていない第2の面121b等の部位に到達する照明光等の不要な外光を吸収することができ、反射スクリーン1によって反射されて観察される映像のコントラストを向上させることができる。
また、光吸収層20を設けることにより、反射層40を保護することができる。
本実施形態の光吸収層20は、紫外線硬化型樹脂により形成されている。
【0034】
次に、本実施形態の反射スクリーン1の製造方法について説明する。
先ず、光学形状層12を作製する(光学形状層形成工程)。
図4は、光学形状層形成工程によって光学形状層12を作製した状態を示す図である。
光学形状層12は、基材層11の一方の面上に、未硬化の紫外線硬化型樹脂を塗布して別途用意した成形型に基材層11とともに押圧した状態で紫外線を照射して硬化させることにより形成される。なお、第1の面121aに設けられる微細な凹凸形状は、成形型において予め形状を設けてもよいし、成形後に表面を荒らしてもよい。
【0035】
光学形状層12を作製したら、次に、光学形状層12の上に、フォトクロミック層30を形成する(フォトクロミック層形成工程)。
図5は、フォトクロミック層形成工程によってフォトクロミック層30を形成した状態を示す図である。
フォトクロミック層30は、例えば、蒸着法、スピンコート法、スリットコート法等により形成することができる。
【0036】
なお、フォトクロミック層30は、乾燥直後は、金属蒸着不可能な状態であるが、波長が300~400nmの光が当たっていることが否定できない場合も想定される。そのような場合には、光照射工程の直前に、波長が500~600nmの光をフォトクロミック層30に十分に照射し(初期照射工程)、金属蒸着不可能な状態を確実にしておくとよい。
【0037】
次に、単位光学形状121の第1の面121aのみに特定波長の光を照射する(光照射工程)。
図6は、光照射工程を説明する図である。
光照射工程では、光学形状層12の単位光学形状121とは反対側の面から光を第2の面121bに到達しない又は到達しにくい角度で単位光学形状121の内部へ照射する。そして、照射した光を第1の面121aに到達させて、光が到達した第1の面121a上のフォトクロミック層30の特性を変化させる。すなわち、照射光の航路を基準としてみたときに第2の面121bの影が第1の面121a上にごくわずかに生じる程度の角度で光を照射する。本実施形態の光照射工程では、波長が300~400nmの光を照射して、第1の面121a上のフォトクロミック層30を金属蒸着不可能な状態から金属蒸着可能な状態へと変化させる。
【0038】
図6に示すように入射した光は、第1の面121a上に設けられたフォトクロミック層30を通過するが、第2の面121bの上に設けられたフォトクロミック層30には到達しない。よって、第1の面121aの上に設けられたフォトクロミック層30のみが金属蒸着不可能な状態から金属蒸着可能な状態へと変化する。また、光が照射されなかった第1の面121aの上に設けられたフォトクロミック層30の一部と、第2の面121bの上に設けられたフォトクロミック層30は、金属蒸着不可能な状態を維持する。
【0039】
次に、金属蒸着処理を行い反射層40の形成を行う(反射層形成工程)。
図7は、第1実施形態の反射層形成工程によって反射層40が形成された状態を示す図である。
先の光照射工程によって、第1の面121aの上に設けられたフォトクロミック層30のうち光が照射された部位のみが金属蒸着不可能な状態から金属蒸着可能な状態へと変化し、光が照射されなかった第1の面121aの上に設けられたフォトクロミック層30の一部と、第2の面121bの上に設けられたフォトクロミック層30は、金属蒸着不可能な状態を維持している。したがって、金属蒸着可能な状態へと変化した第1の面121aの上に設けられたフォトクロミック層30にのみ反射層40が形成される。
先に説明したように、本実施形態では、反射層40は、アルミニウムを用いており、反射層形成工程では、アルミニウムを蒸着させる。
【0040】
次に、光吸収層20の形成を行う(光吸収層形成工程)。
図8は、光吸収層形成工程により光吸収層20が形成された状態の反射スクリーン1を示す図である。
光吸収層形成工程では、単位光学形状121間の谷部を埋めるように光吸収層20となる紫外線硬化型樹脂を充填し、紫外線を照射して紫外線硬化型樹脂を硬化させて光吸収層20を形成することにより、
図1、
図2、
図8に示した反射スクリーン1が完成する。
【0041】
以上説明したように、第1実施形態によれば、従来は作製が困難であった第1の面121aのみに反射層40を有する反射スクリーン1を、簡単に作製することができる。
また、完成した反射スクリーン1は、反射層40が映像観察に必要な光を反射する第1の面121aにのみ形成されており、他の部位に到達する外光は光吸収層20によって吸収されて観察者には殆ど届かない。よって、観察者は、コントラストの高い映像を観察することができる。
【0042】
(第2実施形態)
図9は、第1実施形態の
図2と同様な位置で第2実施形態の反射スクリーン1Bを切断した断面の一部を示す図である。
第2実施形態の反射スクリーン1Bは、単位光学形状121の形状及び屈折率が異なる点と、製造方法の一部が異なる他は、第1実施形態と同様である。よって、前述した第1実施形態と同様の機能を果たす部分には、同一の符号を付して、重複する説明を適宜省略する。
第2実施形態の単位光学形状121は、第2の面121bがシート面に直交せずに、シート面の法線方向に対して角度を有して傾斜している点で、第1実施形態の単位光学形状121と異なっている。
第2実施形態の単位光学形状121(光学形状層12)の屈折率は、フォトクロミック層30の屈折率よりも大きい。具体的には、第2実施形態の単位光学形状121(光学形状層12)の屈折率n12=1.62であり、フォトクロミック層30の屈折率n30=1.57よりも大きい。
図9に示すように、第2の面121bが反射スクリーン1Bのシート面の法線方向となす角をαとし、映像源LSから投影される映像光が反射スクリーン1Bの表面で屈折する屈折角をβとすると、0≦α≦βの関係を満たすことが望ましい。この関係を満たすことにより、より多くの映像光を反射層40に入射させることができ、表示される画像を明るくすることができる。なお、先に説明した第1実施形態においても上記関係を満たすことが望ましく、第1実施形態では、α=0、α≦βの形態である。また、第2実施形態は、0<α≦βの形態である。
【0043】
図10は、第2実施形態における光学形状層形成工程によって光学形状層12を作製した状態を示す図である。
図11は、第2実施形態におけるフォトクロミック層形成工程によってフォトクロミック層30を形成した状態を示す図である。
図10及び
図11にそれぞれ示す、第2実施形態における光学形状層形成工程及びフォトクロミック層形成工程は、第1実施形態と同様に行われる。
【0044】
図12は、第2実施形態における光照射工程を説明する図である。
第2実施形態の反射スクリーン1Bは、第2の面121bがシート面に直交せずに、シート面の法線方向に対して角度を有して傾斜している(0<α)ことから、光照射工程における光の照射状態が異なっている。
第2実施形態における光照射工程では、光学形状層12の単位光学形状121とは反対側の面から光を第2の面上のフォトクロミック層30に到達しない又は到達しにくい角度で単位光学形状121の内部へ照射して光を第1の面121aに到達させて、第1の面121a上のフォトクロミック層30の特性を変化させる。
より具体的には、第2実施形態における光照射工程では、基材層11の法線方向から光を照射する。この光は、第1の面121aだけでなく第2の面121bにも到達する。しかし、第2の面121bへの入射角が臨界角よりも大きくなることから、照射された光は第2の面121bで全反射して第1の面121aへ向かうので、第2の面121bの上に設けられているフォトクロミック層30には、到達しない。よって、第1実施形態と同様に、第1の面121aの上に設けられたフォトクロミック層30のみが金属蒸着不可能な状態から金属蒸着可能な状態へと変化する。また、第2の面121bの上に設けられたフォトクロミック層30は、金属蒸着不可能な状態を維持する。なお、第2実施形態では、第1の面121aの上に設けられたフォトクロミック層30は、全てに光が照射される点で、第1実施形態とは異なる。
【0045】
図13は、第2実施形態における反射層形成工程によって反射層40が形成された状態を示す図である。
図14は、第2実施形態における光吸収層形成工程により光吸収層20が形成された状態の反射スクリーン1Bを示す図である。
第2実施形態における反射層形成工程及び光吸収層形成工程は、第1実施形態と同様に行われ、第2実施形態の反射スクリーン1Bが完成する。
【0046】
以上説明したように、第2実施形態によれば、従来は作製が困難であった第1の面121aのみに反射層40を有する反射スクリーン1Bを、簡単に作製することができる。特に、光照射工程において光の照射角度を微妙に調整する必要がないことから、より簡単に反射スクリーン1Bを作製することができる。
また、完成した反射スクリーン1Bは、第1実施形態の反射スクリーン1と同様に、反射層40が映像観察に必要な光を反射する第1の面121aにのみ形成されており、他の部位に到達する外光は光吸収層20によって吸収されて観察者には殆ど届かない。よって、観察者は、コントラストの高い映像を観察することができる。
【0047】
(第3実施形態)
図15は、第1実施形態の
図2と同様な位置で第3実施形態の反射スクリーン1Cを切断した断面の一部を示す図である。
第3実施形態の反射スクリーン1Cは、無電解メッキ触媒層50を備える点で、第1実施形態の反射スクリーン1と異なっている。また、第3実施形態のフォトクロミック層30は、第1実施形態と同様に、1、2-ジアリールエテンを塗布して乾燥させたものであるが、利用する特性が第1実施形態と異なっている。さらに、第3実施形態の反射スクリーン1Cは、反射層40Bが無電解メッキにより形成されている点が第1実施形態と異なっている。その他の点は、第1実施形態と同様であるので、前述した第1実施形態と同様の機能を果たす部分には、同一の符号を付して、重複する説明を適宜省略する。
【0048】
第3実施形態の反射スクリーン1Cは、フォトクロミック層30と反射層40Bとの間に、無電解メッキ触媒層50を備えている。無電解メッキ触媒層50は、第1の面121aに積層されたフォトクロミック層30上の+Z側の先端付近を除く略全面に薄膜状に形成されておれている。また、無電解メッキ触媒層50は、第2の面121bに積層されたフォトクロミック層30上には、設けられていない。
無電解メッキ触媒層50としては、例えば、塩化パラジウム触媒を用いることができる。
【0049】
反射層40Bは、第1の面121aに積層された無電解メッキ触媒層50上に薄膜状に形成されている。また、反射層40Bは、第2の面121bに積層されたフォトクロミック層30上には、設けられていない。
第3実施形態の反射層40Bは、ニッケル、銀等を用いて形成することができるが、その形成方法が第1実施形態の反射層40と異なる。
【0050】
次に、第3実施形態の反射スクリーン1Cの製造方法について説明する。
第3実施形態の反射スクリーン1Cの製造工程は、光照射工程を行うまでの光学形状層形成工程、フォトクロミック層形成工程は、第1実施形態と同様である(
図4、
図5参照)。
【0051】
次に、単位光学形状121の第1の面121aのみに特定波長の光を照射する(光照射工程)。
この光照射工程も、第1実施形態と略同様(
図5参照)に行われるが、照射する光の波長が第1実施形態と異なっている。
第3実施形態のフォトクロミック層30は、他の実施形態と同様に、1、2-ジアリールエテンを塗布して乾燥させたものであるが、乾燥直後は、親水性である。本実施形態のフォトクロミック層30は、紫外光(波長:100~400nm)を照射すると疎水性になり、可視光(波長:400~750nm)を照射すると親水性になる性質を有している。
そこで、光照射工程を行う前に、フォトクロミック層30の全体に紫外光(波長:100~400nm)を照射して、フォトクロミック層30の全体を疎水性としておく(初期照射工程)。
【0052】
次に、光学形状層12の単位光学形状121とは反対側の面から光を第2の面121bに到達しない又は到達しにくい角度で単位光学形状121の内部へ照射する(
図5参照)。そして、照射した光を第1の面121aに到達させて、第1の面121a上のフォトクロミック層30の特性を変化させる。本実施形態の光照射工程では、波長が400~750nmの可視光を照射して、第1の面121a上のフォトクロミック層30を疎水性から親水性に変化させる。
【0053】
次に、無電解メッキ触媒層50の形成を行う(無電解メッキ触媒層形成工程)。
図16は、第3実施形態における無電解メッキ触媒層形成工程によって無電解メッキ触媒層50が形成された状態を示す図である。
先の光照射工程によって、第1の面121aの上に設けられたフォトクロミック層30のみが疎水性の状態から親水性の状態へと変化し、第2の面121bの上に設けられたフォトクロミック層30は、疎水性の状態を維持している。したがって、疎水性の状態の第2の面121bでは、無電解メッキの触媒材料を塗布しても、はじかれて無電解メッキの触媒材料が付着しない。よって、
図16に示すように第1の面121aの上に設けられたフォトクロミック層30上にのみ無電解メッキ触媒層50が形成される。
無電解メッキ触媒層形成工程では、例えば、フォトクロミック層30を無電解メッキの触媒材料に浸漬してもよいし、スリットコート、スピンコート等により無電解メッキの触媒材料をフォトクロミック層30上に塗布してもよい。
【0054】
次に、無電解メッキ触媒層50上に反射層40Bを形成する(反射層形成工程)。具体的には、ニッケルの無電解メッキ処理が行われる。なお、ニッケルの他に、銀も反射層40Bとして用いることができる。
図17は、第3実施形態における反射層形成工程によって反射層40Bが形成された状態を示す図である。
反射層形成工程では、無電解メッキ触媒層50が形成された光学形状層12が無電解銅メッキ液に浸漬させられる。
図17に示すように、無電解メッキ触媒層50が形成されている表面にのみニッケルの無電解メッキ層が反射層40Bとして形成される。
【0055】
次に、単位光学形状121間の谷部を埋めるように光吸収層20となる紫外線硬化型樹脂を充填する。そして、紫外線を照射して紫外線硬化型樹脂を硬化させて光吸収層20を形成する(光吸収層形成工程)ことにより、
図15に示した反射スクリーン1Cが完成する。
【0056】
以上説明したように、第3実施形態によれば、無電解メッキを利用して、従来は作製が困難であった第1の面121aのみに反射層40Bを有する反射スクリーン1Cを、簡単に作製することができる。また、第3実施形態の反射スクリーン1Cは、第1実施形態と同様にコントラストの高い映像を表示することができる。
【0057】
(第4実施形態)
図18は、第1実施形態の
図2と同様な位置で第4実施形態の反射スクリーン1Dを切断した断面の一部を示す図である。
第4実施形態の反射スクリーン1Dは、基材層11Bの形態と、第1の面121a及び反射層40Cの形態が第2実施形態の反射スクリーン1Bと異なっているが、その他の部分については、第2実施形態の反射スクリーン1Bと同様である。よって、前述した第2実施形態と同様の機能を果たす部分には、同一の符号を付して、重複する説明を適宜省略する。
【0058】
第4実施形態の基材層11Bは、第1実施形態と同様な樹脂素材に、光拡散剤を含んでおり、拡散層として構成されている。
また、第4実施形態では、第1の面121aは平滑面(鏡面)として構成される。よって、フォトクロミック層30及び反射層40Cも第1の面121aに倣って平滑面として構成される。
【0059】
第4実施形態によれば、斜面に凹凸形状を設ける必要がないので、さらに製造を容易にすることができる。
また、映像光を映像源側(+Z側)から映像源LSによって投影すると、映像光は反射層40Cで鏡面反射された後、基材層11Bによって適度に拡散反射されて観察者O1に届き、観察者O1は、映像を観察可能である。
【0060】
(第5実施形態)
図19は、第1実施形態の
図2と同様な位置で第5実施形態の反射スクリーン1Eを切断した断面の一部を示す図である。
第5実施形態の反射スクリーン1Eは、単位光学形状121とフォトクロミック層30との間に、下地層60を有している点が第2実施形態と異る他は、第1実施形態と同様である。よって、前述した第2実施形態と同様の機能を果たす部分には、同一の符号を付して、重複する説明を適宜省略する。
【0061】
下地層60は、第1の面121a及び第2の面121bに沿って所定の厚さで形成された層であり、反射スクリーン1Eの厚み方向において、単位光学形状121とフォトクロミック層30との間に形成されている。
【0062】
下地層60は、単位光学形状121よりも屈折率が低く、光透過性を有する層である。この下地層60は、フォトクロミック層形成工程の前に、第1の面121a及び第2の面121bの表面を覆うように形成される(下地層形成工程)。下地層60は、フッ化マグネシウムやフッ化カルシウムを蒸着法又はスパッタ法により形成してもよいし、フッ素含有アクリレート樹脂等のフッ素樹脂、シリコーン樹脂、フッ化マグネシウムやフッ化カルシウム等の低屈折率材料のナノ粒子を含む樹脂、中空ナノ粒子を含む樹脂等をディップコートにより形成してもよい。
下地層60は、その厚みを0.1μm以上、10μm以下とすることが好ましい。
【0063】
なお、本実施形態のフォトクロミック層30については、第2実施形態に示したフォトクロミック層30と同様であり、屈折率が単位光学形状121よりも小さい。しかし、上述のように下地層60をフォトクロミック層30と単位光学形状121との間に設ける場合には、フォトクロミック層30は、その屈折率が単位光学形状121の屈折率より大きいものとしてもよい。
【0064】
第5実施形態の反射スクリーン1Eの製造方法においては、光学形状層形成工程を行った後、下地層60を形成する下地層形成工程を行う。その後、下地層60の上に、フォトクロミック層30を形成するフォトクロミック層形成工程を行う。以降の工程は、第2実施形態の反射スクリーン1Bの製造方法と同様である。
【0065】
第5実施形態によれば、第2実施形態等に示した効果に加えて、以下のような効果を奏することができる。
第5実施形態によれば、下地層60を設けることにより、光照射工程において、照射光がフォトクロミック層30にその波長分だけ潜り込むことを抑制でき、フォトクロミック層30の厚みを薄くできる。これにより、フォトクロミック材料の使用量を削減でき、生産コストを低減できる。
また、第5実施形態によれば、下地層60を設けることにより、フォトクロミック層30よりも屈折率の低い材料を光学形状層12(単位光学形状121)の形成に用いることができ、光学形状層12(単位光学形状121)の材料の選択の範囲が広がる。
【0066】
(第6実施形態)
図20は、第6実施形態における光照射工程を示す図である。
第6実施形態の反射スクリーンは、第2実施形態の変形形態であり、少なくとも光照射工程においてマスクシート200を備える点の他は、第2実施形態と同様である。よって、前述した第2実施形態と同様の機能を果たす部分には、同一の符号を付して、重複する説明を適宜省略する。
【0067】
マスクシート200は、基材層11の法線方向から見たときに第1の面121aと第2の面121bとが谷部分(基材層11側へ凹の谷部分)を構成する部位と重なる位置を遮光する遮光パターン201を備えている。マスクシート200は、例えば、アクリル樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂等の透明なシートに遮光パターンを印刷やフォトリソグラフィー等によって形成することにより作製できる。
【0068】
マスクシート200は、光照射工程よりも前の工程において、基材層11の光学形状層12とは反対側に密着させる(マスクシート密着工程)。マスクシート200は後の工程で除去するので、マスクシート200を基材層11へ密着させるためには、弱粘着性の粘着剤を用いるとよい。
【0069】
第6実施形態における光照射工程では、第2の面121bに光が到達しないように部分的に遮光する遮光パターン201を有するマスクシート200を介して、単位光学形状121とは反対側の面から光を単位光学形状121の内部へ照射する。これにより、第1の面121aと第2の面121bとが谷部分を構成する部位の付近が露光されることを確実に防止することができ、反射層40を適切な位置にのみ形成することができる。
マスクシート200は、光照射工程終了後は不要となるので、光照射工程の後の工程で剥離される。完成後の反射スクリーンの形態は、第2実施形態と略同様な形態となる。
【0070】
第6実施形態によれば、マスクシート200を利用するので、第1の面121aと第2の面121bとが谷部分を構成する部位の付近が露光されることを確実に防止することができ、反射層40を適切な位置にのみ形成することができる。よって、製造時の不良品の発生を抑えることができる。
【0071】
(変形形態)
以上説明した実施形態に限定されることなく、種々の変形や変更が可能であって、それらも本開示の範囲内である。
【0072】
(1)第4実施形態において、基材層11Bに光拡散剤を含めた例を示して説明した。これに限らず、例えば、拡散層を別途設けたりしてもよいし、基材層11Bの-Z側の面に微細な凹凸形状を設けたりしてもよい。また、光学形状層12に光拡散機能を持たせてもよい。
【0073】
(2)第3実施形態において、第1実施形態と同様な形状の単位光学形状121において無電解メッキを用いて反射層40を形成する例を挙げて説明した。これに限らず、例えば、第2実施形態同様な形状の単位光学形状121において無電解メッキを用いて反射層40を形成してもよい。
【0074】
なお、各実施形態及び変形形態は、適宜組み合わせて用いることもできるが、詳細な説明は省略する。また、本開示は以上説明した各実施形態によって限定されることはない。
【符号の説明】
【0075】
1、1B、1C、1D、1E 反射スクリーン
11、11B 基材層
12 光学形状層
20 光吸収層
30 フォトクロミック層
40、40B、40C 反射層
50 無電解メッキ触媒層
60 下地層
100 映像表示装置
121 単位光学形状
121a 第1の面
121b 第2の面
200 マスクシート
201 遮光パターン