(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023165487
(43)【公開日】2023-11-16
(54)【発明の名称】三次元成形物の製造方法
(51)【国際特許分類】
B29C 51/14 20060101AFI20231109BHJP
B29C 45/14 20060101ALI20231109BHJP
H05K 3/00 20060101ALI20231109BHJP
H05K 1/02 20060101ALI20231109BHJP
【FI】
B29C51/14
B29C45/14
H05K3/00 W
H05K1/02 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022076535
(22)【出願日】2022-05-06
(71)【出願人】
【識別番号】304036754
【氏名又は名称】国立大学法人山形大学
(74)【代理人】
【識別番号】100101878
【弁理士】
【氏名又は名称】木下 茂
(74)【代理人】
【識別番号】100187506
【弁理士】
【氏名又は名称】澤田 優子
(72)【発明者】
【氏名】古川 忠宏
(72)【発明者】
【氏名】安部 雅則
(72)【発明者】
【氏名】河村 祐輝
(72)【発明者】
【氏名】高橋 辰宏
【テーマコード(参考)】
4F206
4F208
5E338
【Fターム(参考)】
4F206AD08
4F206AG03
4F206AH33
4F206JA07
4F206JB12
4F206JB17
4F206JB23
4F206JL02
4F208AC03
4F208AG03
4F208AH36
4F208MA01
4F208MA02
4F208MB01
4F208MC01
4F208MC02
4F208MG04
4F208MH06
4F208MH27
4F208MW02
5E338AA05
5E338AA16
5E338BB55
5E338BB56
5E338CC10
5E338CD23
5E338EE11
5E338EE27
5E338EE33
(57)【要約】
【課題】プラスチックシートの熱変形に伴う電極の亀裂、破断、断線、剥がれ等の不具合や、電子部品の接触不良、断線、脱落等の不具合を防止し、信頼性の高い三次元成形物を成形する三次元成形物の製造方法を提供する。
【解決手段】本発明にかかる三次元成形物の製造方法は、平面のプラスチックシートを用いて作製された回路基板を型の形状に熱変形させる三次元成形工程(ステップS4)を実施することにより、所望の三次元成形物を得る。具体的には、熱変形を抑制する範囲として規定したプラスチックシート上の所定位置に反射パターンを印刷する反射パターン印刷工程(ステップS2)を含み、前記三次元成形工程においては、反射パターン印刷面側を加熱することにより軟化したプラスチックシートに対し、前記型を押し込むことによって、前記回路基板を当該型の形状に熱変形させる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
平面のプラスチックシートを用いて作製された回路基板を型の形状に熱変形させる三次元成形工程を実施することにより、所望の三次元成形物を得る三次元成形物の製造方法であって、
熱変形を抑制する範囲として規定したプラスチックシート上の所定位置に反射パターンを印刷する反射パターン印刷工程、
を含み、
前記三次元成形工程においては、反射パターン印刷面側を加熱することにより軟化したプラスチックシートに対し、前記型を押し込むことによって、前記回路基板を当該型の形状に熱変形させる、
ことを特徴とする三次元成形物の製造方法。
【請求項2】
前記平面のプラスチックシートに電極を印刷する電極印刷工程、
をさらに含み、
前記所定位置を、印刷した電極のうちのベタパターンの印刷範囲とし、
前記反射パターン印刷工程では、ベタパターンの印刷範囲を覆うように、前記プラスチックシートの電極印刷面またはその裏面に対し、反射パターンを印刷する、
ことを特徴とする請求項1に記載の三次元成形物の製造方法。
【請求項3】
電極が印刷されたプラスチックシートの電極印刷面に電子部品を実装する実装工程、
をさらに含み、
前記反射パターン印刷工程では、前記所定位置として、前記プラスチックシートの電極印刷面における電子部品実装範囲の周囲、またはその裏面の電子部品実装範囲およびその周囲に、反射パターンを印刷する、
ことを特徴とする請求項2に記載の三次元成形物の製造方法。
【請求項4】
電極が印刷されたプラスチックシートの電極印刷面に電子部品を実装する実装工程、
をさらに含み、
前記反射パターン印刷工程では、前記所定位置として、前記プラスチックシートの電極印刷面における電子部品実装範囲の周囲、またはその裏面の電子部品実装範囲およびその周囲に、反射パターンを印刷する、
ことを特徴とする請求項1に記載の三次元成形物の製造方法。
【請求項5】
前記三次元成形工程において、電極印刷面を加熱する場合は当該電極印刷面に、電極印刷面の裏面を加熱する場合は当該裏面に、ベタパターンの印刷範囲を覆うように反射パターンを印刷する、
ことを特徴とする請求項2に記載の三次元成形物の製造方法。
【請求項6】
反射パターンの印刷範囲を、ベタパターンの形状に略一致する範囲とする、
ことを特徴とする請求項2に記載の三次元成形物の製造方法。
【請求項7】
前記三次元成形工程において、電極印刷面を加熱する場合は当該電極印刷面の電子部品実装範囲の周囲に、電極印刷面の裏面を加熱する場合は当該裏面の電子部品実装範囲全体およびその周囲に、反射パターンを印刷する、
ことを特徴とする請求項4に記載の三次元成形物の製造方法。
【請求項8】
前記電子部品実装範囲の周囲における反射パターンの印刷範囲を、
反射パターンを印刷してない部分の熱変形により三次元成形が完了できる範囲とし、さらに、電子部品の面積が大きいほど広くする、
ことを特徴とする請求項4に記載の三次元成形物の製造方法。
【請求項9】
前記三次元成形物における電子部品実装面を射出成形によりプラスチックで覆い、完成品を得る射出成形工程、
をさらに含む、
ことを特徴とする請求項3に記載の三次元成形物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、三次元成形物の製造方法および三次元成形物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電子機器の小型化および高性能化に伴い、三次元に成形されたプリント配線板(PWB:printed wiring board)や、三次元の表面に電気回路が実装されたプリント回路板(PCB:printed circuit board)等、三次元形状の回路基板(三次元成形物)の需要が高まっている。
【0003】
たとえば、平面のプラスチックシートに電極を印刷し、これを真空成形や真空圧空成形で三次元化する技術は、一般的に知られている。また、このように印刷された電極に、LEDチップや、CPUやメモリに代表されるIC(集積回路)を収めた電子部品等を実装し、三次元形状に加工する技術も一般的に行われている。
【0004】
下記特許文献1には、熱成形機を使用して三次元形状の回路基板を成形する技術として、真空成形や圧空成形によって平坦なフィルムを三次元化する技術が開示されている。
【0005】
具体的には、ポリカーボネート(PC)等の熱可塑性を有するフィルムに電極(導電性ペーストを使用)を印刷する工程と、電極が印刷されたフィルムに接着剤を使用して電子部品を取り付ける工程と、熱成形機を使用して電子部品が取り付けられたフィルムを三次元形状に成形する工程(三次元成形工程)と、三次元形状に成形された三次元成形物に対し射出成形を実施することによって電気機械的構造体(電気回路部品、電気製品等)を得る工程と、を実施することが記載されている。また、上記三次元成形工程においては、フィルムを加熱し、熱により軟化したフィルムが金型の形状となるように熱成形機内を真空にしてフィルムを金型に押しつけ、三次元形状に成形されたフィルム(三次元成形物)を冷却させつつ金型から取り出すこと、が行われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記のように、特許文献1に開示された技術を用いてフィルム(以後、プラスチックシートと呼ぶ場合がある)を三次元形状に成形する場合、熱により軟化したプラスチックシートは、型の形状に応じて変形しながら所望の形状に成形される。
【0008】
一方で、熱変形するプラスチックシートにおいて、プラスチックシートのみの部分と電極が印刷された部分とでは、三次元加工時の伸びやすさに違いがある。すなわち、プラスチックシートのみの部分よりも電極が印刷された部分の方が、導電性ペーストの成分や厚みの影響により変形しづらい傾向がみられる。
【0009】
しかしながら、プラスチックシートの熱変形に伴って電極が印刷された部分も同様に変形することになるため、プラスチックシートに印刷された電極、特に、ベタパターン等のように面積の大きい電極は、変形率(変形の大きさ)によってはその部分に亀裂、破断、断線、さらには剥がれ等の不具合が発生する可能性がある。
【0010】
また、上記プラスチックシートの熱変形に伴って、プラスチックシートに接着された電子部品に、接触不良、断線等の不具合が発生する可能性があり、さらに変形が進むと電子部品が脱落することもある。
【0011】
そして、このような不具合を有する三次元成形物は、完成品である電気回路部品や電気製品の発熱、誤動作、故障等の原因となる、という問題があった。
【0012】
本発明は、上記のような課題に鑑みてなされたものであって、三次元成形時のプラスチックシートの熱変形に伴う電極の亀裂、破断、断線、剥がれ等の不具合や、電子部品の接触不良、断線、脱落等の不具合を防止し、信頼性の高い三次元成形物を成形する三次元成形物の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明にかかる三次元成形物の製造方法は、平面のプラスチックシートを用いて作製された回路基板を型の形状に熱変形させる三次元成形工程を実施することにより、所望の三次元成形物を得る。具体的には、熱変形を抑制する範囲として規定したプラスチックシート上の所定位置に反射パターンを印刷する反射パターン印刷工程を含み、前記三次元成形工程においては、反射パターン印刷面側を加熱することにより軟化したプラスチックシートに対し、前記型を押し込むことによって、前記回路基板を当該型の形状に熱変形させる、ことを特徴とする。
【0014】
本発明にかかる三次元成形物の製造方法によれば、三次元成形時のプラスチックシートの熱変形に伴う電極の亀裂、破断、断線、剥がれ等の不具合や、電子部品の接触不良、断線、脱落等の不具合を防止することができる。
【0015】
また、本発明にかかる三次元成形物の製造方法は、前記平面のプラスチックシートに電極を印刷する電極印刷工程をさらに含む。そして、前記所定位置を、印刷した電極のうちのベタパターンの印刷範囲とし、前記反射パターン印刷工程では、ベタパターンの印刷範囲を覆うように、前記プラスチックシートの電極印刷面またはその裏面に対し、反射パターンを印刷することとした。これにより、三次元成形工程実施時における電極部分の熱変形(伸び)が抑制されるため、電極の亀裂、破断、断線、剥がれ等を防止することができる。
【0016】
また、本発明にかかる三次元成形物の製造方法は、電極が印刷されたプラスチックシートの電極印刷面に電子部品を実装する実装工程をさらに含む。そして、前記反射パターン印刷工程では、前記所定位置として、前記プラスチックシートの電極印刷面における電子部品実装範囲の周囲、またはその裏面の電子部品実装範囲およびその周囲に、反射パターンを印刷することとした。これにより、三次元成形工程実施時における電子部品実装範囲の熱変形(伸び)が抑制されるため、電子部品の接触不良、断線、脱落等を防止することができる。
【0017】
また、本発明にかかる三次元成形物の製造方法にあっては、前記三次元成形工程において、電極印刷面を加熱する場合は当該電極印刷面に、電極印刷面の裏面を加熱する場合は当該裏面に、ベタパターンの印刷範囲を覆うように反射パターンを印刷することが望ましい。また、反射パターンの印刷範囲を、ベタパターンの形状に略一致する範囲とすることが望ましい。
【0018】
また、本発明にかかる三次元成形物の製造方法にあっては、前記三次元成形工程において、電極印刷面を加熱する場合は当該電極印刷面の電子部品実装範囲の周囲に、電極印刷面の裏面を加熱する場合は当該裏面の電子部品実装範囲全体およびその周囲に、反射パターンを印刷することが望ましい。また、前記電子部品実装範囲の周囲における反射パターンの印刷範囲を、反射パターンを印刷してない部分の熱変形により三次元成形が完了できる範囲とし、さらに、電子部品の面積が大きいほど広くすることが望ましい。
【0019】
また、本発明にかかる三次元成形物の製造方法の前記三次元成形工程においては、真空圧空成形機による真空圧空成形を実施すること、または、真空成形機による真空成形を実施すること、が望ましい。
【0020】
また、本発明にかかる三次元成形物の製造方法は、前記三次元成形物における電子部品実装面を射出成形によりプラスチックで覆い完成品を得る射出成形工程を、さらに含むこととした。
【発明の効果】
【0021】
本発明にかかる三次元成形物の製造方法によれば、三次元成形時のプラスチックシートの熱変形に伴う電極の亀裂、破断、断線、剥がれ等の不具合や、電子部品の接触不良、断線、脱落等の不具合を防止することができるとともに、信頼性の高い三次元成形物を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】
図1は、本発明にかかる三次元成形物の製造方法の一例を示すフローチャートである。
【
図2】
図2は、
図1のステップS1~ステップS3を実施した後の回路基板の一例を示す模式図である。
【
図3】
図3は、三次元成形工程(ステップS4)の一例を示す図である。
【
図4】
図4は、三次元成形工程(ステップS4)により得られた三次元成形物の一例を示す模式図である。
【
図5】
図5は、真空成形機による真空成形の各工程の一例を示す模式図である。
【
図6】
図6は、射出成形工程(ステップS5)の一例を示す図である。
【
図7】
図7は、ベタパターンの形状の一例を示す図である。
【
図8】
図8は、実施例において使用した型の形状を示す図である。
【
図9】
図9は、型から取り外した後の実施例1の三次元成形物の形状を示す模式図である。
【
図10】
図10は、本発明にかかる三次元成形物の製造方法の効果を示す図である。
【
図11】
図11は、実施例1および比較例1の三次元成形物におけるベタパターンの各部の寸法および変形の倍率を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明にかかる三次元成形物の製造方法、およびこの製造方法により製造された三次元成形物の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施形態により本発明が限定されるものではない。
【0024】
<製造方法>
図1は、本実施形態の三次元成形物の製造方法の一例を示すフローチャートである。
図1において、本実施形態の三次元成形物の製造方法は、熱可塑性を有するプラスチックシートに電極(導電性ペースト)を印刷する電極印刷工程(ステップS1)と、三次元成形時の熱変形を抑制する範囲として規定したプラスチックシート上の所定位置に反射パターン(反射ペースト)を印刷する反射パターン印刷工程(ステップS2)と、電極が印刷されたプラスチックシートの電極印刷面に電子部品を実装することにより回路基板を得る実装工程(ステップS3)と、真空圧空成形機を使用して回路基板を三次元形状に成形することにより三次元成形物を得る三次元成形工程(ステップS4)と、三次元成形物における電子部品実装面を射出成形によりプラスチックで覆い、完成品である電気回路部品や電気製品等を得る射出成形工程(ステップS5)と、を含むこととした。
【0025】
たとえば、平面のプラスチックシートを用いて作製された回路基板を、真空成形や真空圧空成形で三次元形状に成形する場合、熱により軟化したプラスチックシートは、型の形状に応じて変形しながら所望の形状に成形される。
【0026】
一方、熱変形するプラスチックシートにおいて、プラスチックシートのみの部分と電極が印刷された部分とでは、三次元成形時の伸びやすさに違いがある。すなわち、プラスチックシートのみの部分よりも電極が印刷された部分の方が、導電性ペーストの成分や厚みの影響により変形しづらい傾向がみられる。特に、ベタパターンとして配線された電極部分においては、このような傾向が顕著となる。
【0027】
しかしながら、真空圧空成形等の三次元成形においては、プラスチックシートの熱変形に伴って電極が印刷された部分も同様に変形することになるため、プラスチックシートに印刷された電極、特に、ベタパターン等のように面積の大きい電極は、下記で規定される変形率ΔLの大きさ(%)によってはその部分に亀裂、破断、断線、さらには剥がれ等が発生する可能性がある。
【0028】
ΔL(%)=(Lj-Li)/Li×100
Liは熱変形前の電極の寸法(mm)、Ljは変形後の電極の寸法(mm)を示す。
【0029】
また、上記プラスチックシートの熱変形に伴って、プラスチックシート上に接着された電子部品には、接触不良、断線等の不具合が発生する可能性があり、さらに変形が進むと、電子部品が脱落することもある。
【0030】
具体的には、プラスチックシート上のベタパターンの部分については、その部分の変形率ΔLが50%を超えると上記亀裂等の不具合が発生する可能性があり、プラスチックシート上の電子部品については、その部品が実装されている部分のプラスチックシートの変形率ΔLが20%を超えると上記接触不良等の不具合が発生する可能性がある。
【0031】
そこで、本実施形態においては、上記不具合を回避するための対策として、三次元成形時の熱変形を抑制する範囲として規定したプラスチックシート上の所定位置、すなわち、ベタパターンの印刷範囲および電子部品の実装範囲周辺を含む所定位置に、熱の伝わりを抑えるための反射パターン(反射ペースト)を印刷し、プラスチックシートの上記所定位置の熱変形(変形率)を抑制することとした。そして、本実施形態においては、プラスチックシート上のベタパターンの印刷範囲および電子部品の実装範囲において熱変形が抑制された分を、それ以外の部分の熱変形で補う(熱変形が抑制された範囲よりも大きく変形させる)ことによって、型の形状に応じた熱変形が行われ、これにより、所望の形状の三次元成形物が得られる。
【0032】
また、上記本実施形態の三次元成形物の製造方法を実施することにより、この製造方法により製造された三次元成形物は、熱変形に伴う電極の亀裂、破断、断線、剥がれ等の不具合や、電子部品の接触不良、断線、脱落等の不具合を防止することができる。
【0033】
なお、上記ベタパターンは、配線(信号線)よりも面積の大きい電極であり、たとえば、グランド用、電源用、センサ用、大電流用等の電極である。
【0034】
<製造方法(詳細)>
つづいて、本実施形態の三次元成形物の製造方法における各工程をさらに詳細に説明する。
【0035】
なお、本実施形態において使用するプラスチックシート(後述するプラスチックシート11に相当)は、三次元成形に必要な熱可塑性を有するポリカーボネート(PC)、ポリエチレンテレフタレート(PET)等を材料とする平面シートであることが好ましい。このプラスチックシートには、完成品(電気回路部品、電気製品等)の仕様および製造条件等(柔軟性、強度、接着性等)に応じて適切な他の材料(他のプラスチック、シリコン、ゴム等)を含ませることが可能である。また、プラスチックシートの厚さは、たとえば、シートの強度、柔軟性、弾力性、透明性、完成品の大きさ等に応じて適宜決定可能とする。
【0036】
上記プラスチックシートを使用した三次元成形物の製造方法において、電極印刷工程では、プラスチックシートに対し、導電性ペーストを使用して電極を印刷する(ステップS1)。導電性ペーストとしては、たとえば、銀ペーストを使用することが好ましい。
【0037】
なお、本実施形態においては、導電性ペーストとして銀ペーストを使用することとしたが、これに限るものではなく、他の導電性ペーストとして、たとえば、銅ペースト、カーボンペーストや、導電性のその他のペースト(インキ)も使用可能である。このようなペーストやインキは、印刷方式およびプラスチックシートの材料に応じて適宜選択可能とする。
【0038】
つぎに、反射パターン印刷工程(ステップS2)では、プラスチックシートに印刷された電極のうちのベタパターンの印刷範囲(上記所定位置)を覆うように、プラスチックシートの電極印刷面またはその裏面に対し、反射ペーストを使用して反射パターンを印刷する(第1の反射パターン印刷:ステップS2-1)。具体的には、三次元成形工程(ステップS4)においてIRヒーターで加熱する面、すなわち、電極印刷面を加熱する場合は電極印刷面に、電極印刷面の裏面を加熱する場合は裏面に、ベタパターンの印刷範囲を覆うように反射パターンを印刷する。
【0039】
また、反射パターンの印刷範囲は、ベタパターンの印刷範囲全体が反射パターンで覆われ、かつ反射パターンを印刷してない部分の熱変形により三次元成形が完了できればよく(所望の形状の三次元成形物が得られればよく)、たとえば、ベタパターンの形状に略一致する範囲とすることが好ましい。これにより、IRヒーターからの熱が反射パターンの外側からベタパターンの周縁部分に多少なりとも伝わり、ベタパターン部分の変形を抑制しつつ、ベタパターン部分を適度に変形させることができる。反射パターンの印刷範囲がベタパターンの印刷範囲より小さい場合は、ベタパターン部分の変形が大きくなり亀裂等が発生し好ましくない。また、反射パターンの印刷範囲がベタパターンの印刷範囲を大きく超える場合は、この部分の軟化が不十分になり型の形状に追従できずに三次元成形を完了できない(所望の形状の三次元成形物が得られない)可能性あり好ましくない。
【0040】
第1の反射パターン印刷(ステップS2-1)を実施することにより、三次元成形工程(ステップS4)実施時における電極(導電性ペースト)部分の熱変形(伸び)が抑制されるため、電極の亀裂、破断、断線、剥がれ等を防止することができる。
【0041】
なお、プラスチックシートに印刷した電極のうち、配線(信号線)として印刷された電極については、ベタパターンに比べて細くかつ面積が小さいことから熱変形による影響を受けづらいため、反射パターンの印刷は任意となる。
【0042】
さらに、反射パターン印刷工程(ステップS2)では、プラスチックシートの上記電極印刷面(電子部品の実装面に相当)における電子部品実装範囲の周囲(上記所定位置)、またはその裏面の電子部品実装範囲およびその周囲(上記所定位置)に、反射ペーストを使用して反射パターンを印刷する(第2の反射パターン印刷:ステップS2-2)。具体的には、三次元成形工程(ステップS4)においてIRヒーターで加熱する面、すなわち、電極印刷面を加熱する場合は電極印刷面の電子部品実装範囲の周囲(電子部品実装範囲を避ける)に、電極印刷面の裏面を加熱する場合は裏面の電子部品実装範囲全体およびその周囲(電子部品実装範囲を含む)に、反射パターンを印刷する。IRヒーターにより電極印刷面を加熱する場合において、電子部品実装範囲を避けて、その周囲にのみ反射ペーストを印刷する理由は、電極印刷面に実装された電子部品によりIRヒーターの赤外線が遮断されプラスチックシートに熱が伝わりづらいため、反射ペーストを印刷しなくともプラスチックシートの熱変形を抑制できるからである。電子部品実装範囲に反射ペーストを印刷しないことにより、プラスチックシートの配線(電極)に対し電子部品の電極を直接接続することが可能となる。
【0043】
また、電子部品実装範囲の周囲における反射パターンの印刷範囲(部品からの距離)は、反射パターンを印刷してない部分の熱変形により三次元成形が完了できる範囲(所望の形状の三次元成形物が得られる印刷範囲)とする。また、電子部品実装範囲の周囲における反射パターンの印刷範囲(部品からの距離)は、電子部品の面積が大きいほど広く(部品からの距離が長く)なるようにする。
【0044】
なお、ステップS2-2の工程については、ステップS3に示す実装工程の後、すなわち、電子部品を接着した後に実施することとしてもよい。
【0045】
第2の反射パターン印刷(ステップS2-2)を実施することにより、三次元成形工程(ステップS4)実施時における電子部品実装範囲の熱変形(伸び)が抑制されるため、電子部品の接触不良、断線、脱落等を防止することができる。
【0046】
なお、反射パターン印刷工程(ステップS2)において使用する反射ペースト(インキ)は、IRヒーターの赤外線を反射できるものであれば市販の一般的なものでよく、一例として、「十条ケミカル製 鏡面インキ:FUNCOATメタミラー」、「セイコーアドバンス製 真空成形用インキ(TSN(遅乾)series、2500series)」、「セイコーアドバンス製 鏡面インキ(各種series)」、「大日精化工業製 高輝度UVメタリックインキ輝シリーズ」、「帝国インキ製 鏡面インキ(MIR41000ミラーシルバー、MIR41000ミラーシルバー、MIR41000ミラーシルバー)」等が使用可能である。また、反射ペーストは、絶縁性のものであることが望ましいが、必ずしも絶縁性である必要はなく、反射パターンを印刷する箇所に応じて、たとえば、電子部品の電極と電気的に接続する箇所等については、導電性のものを選択的に使用可能とする。
【0047】
また、反射パターンの印刷が電極印刷面の裏面側である場合、すなわち、電極印刷面の裏面を加熱する場合については、ステップS2の反射パターン印刷工程(ステップS2-1および/またはステップS2-2)を電極印刷工程(ステップS1)の前に実施することとしてもよい。
【0048】
また、電極および反射パターンの印刷は、スクリーン印刷が好ましいが、たとえば、インクジェット印刷、グラビア印刷、フレキソ印刷、オフセット印刷等、電極および反射パターンを印刷可能であればどのような印刷方式であってもよい。また、反射パターンは、印刷以外の手段として、たとえば、エッチングや薄膜蒸着等の手法により形成することとしてもよい。
【0049】
つぎに、実装工程では、プラスチックシートの電極印刷面に各種電子部品を実装し、回路基板を得る(ステップS3)。このとき、電子部品は、実装する位置に応じて、たとえば、導通させる電極部分(配線接続部分)には導電性の接着剤や導電ペーストを使用して接着する。また、それ以外の部分は、接着剤を使用しないか、または、エポキシ等、固定用として絶縁性の接着剤を使用して接着する。また、接着剤は、三次元成形時の圧力および熱に耐えうるものを選択する。
【0050】
また、上記電子部品は、LEDチップや各種素子(トランジスタ、抵抗、コンデンサ、ダイオード等)、CPUやメモリに代表されるデジタル部品(デジタルIC)、およびアンプや各種コンバータに代表されるアナログ部品(アナログIC)等、電気回路を構成する各種の部品を含む。
【0051】
図2は、ステップS1~ステップS3を実施した後の回路基板の一例を示す模式図である。この例は、三次元成形工程(ステップS4)において、電極印刷面をIRヒーターで加熱する場合を想定したものである。具体的には、プラスチックシート11における一方の面上に、電極12と反射パターン13が印刷され、さらに、電子部品14が実装されることで、回路基板31が形成されている。なお、電極印刷面の裏面をIRヒーターで加熱する場合、反射パターン13は、電極印刷面の裏面に印刷される。
【0052】
つぎに、三次元成形工程では、上記ステップS1~S3を実施した後の回路基板31を、真空圧空成形機を使用して三次元形状に成形し、三次元成形物を得る(ステップS4)。
【0053】
図3は、本実施形態の三次元成形工程の一例を示す図であり、たとえば、真空圧空成形機による真空圧空成形の各工程を示している。
【0054】
図3において、真空圧空成形機20は、上下に駆動し互いに対面する開口を有する上ボックス21および下ボックス22と、回路基板31を加熱するためのIRヒーター23と、上下に駆動するテーブル24と、上ボックス21に接続され上ボックス21内を減圧するための上通気口25と、下ボックス22に接続され下ボックス22を減圧するための下通気口26と、上ボックス21に接続され上ボックス21内を加圧するための加圧用通気口27と、を備える。
【0055】
また、テーブル24には、三次元成形用の型32が載置された状態で固定されている。型32の材料は、特に限定するものではなく、三次元成形時の熱および圧力に耐えうるものであればよく、たとえば、樹脂製、金属製等のものが使用可能である。
【0056】
また、真空圧空成形機20は、上ボックス21と下ボックス22とを閉じた状態で回路基板31を境界として形成される上空間28および下空間29を有する。この上空間28および下空間29は、上ボックス21と下ボックス22が閉じた状態において気密性が確保されている。
【0057】
以下、本実施形態においては、一例として、反射ペーストを電極印刷面に印刷し、回路基板31(プラスチックシート11)の電極印刷面(
図2参照)をIRヒーターで加熱する場合について説明する。
【0058】
本実施形態の真空圧空成形においては、まず、成形前の準備作業として、上ボックス21と下ボックス22とを開いた状態でテーブル24上に型32を固定し、さらに、回路基板31を、電極印刷面を上に向けて下ボックス22の開口部に固定する。そして、この状態で上ボックス21と下ボックス22とを閉じることにより、回路基板31を境界として気密性を有する上空間28および下空間29を形成する。
図3(a)は、準備作業完了後の真空圧空成形機20の概略構成の一例を示す図である。
【0059】
つぎに、上ボックス21内のIRヒーター23により上から回路基板31を加熱し、プラスチックシート11を軟化させる。また、第一通気口25から上空間28を減圧し、第二通気口26から下空間29を減圧することにより、上空間28および下空間29を真空状態にする(
図3(b)参照)。
【0060】
この状態で、
図3(c)に示すように、テーブル24を上昇させ、軟化された回路基板31に型32を押し込むことにより、回路基板31は、三次元形状である型32の形状に変形していく。そして、
図3(d)に示すように、加圧通気口29から上空間28に空気を導入して加圧することにより、軟化された回路基板31を型32にさらに密着させる。これにより、回路基板31は、型32の形状を正確に再現した形状、すなわち、所望の三次元成形物となる。最後に、上ボックス21と下ボックス22とを開き、型32から三次元成形物を取り外す。
【0061】
図4は、三次元成形工程(ステップS4)により得られた三次元成形物の一例を示す模式図である。
図4において、三次元成形物41は、熱変形後のプラスチックシート42と電極43と電子部品44から構成され、プラスチックシート42の一方の面に、電極43が印刷されかつ電子部品44が実装され、電極印刷面の上記所定位置に反射パターン(図示せず)が印刷されているものとする。
【0062】
なお、上記では、一例として、反射ペーストを電極印刷面に印刷し、回路基板31の電極印刷面をIRヒーターで加熱する場合について説明したが、たとえば、反射ペーストを電極印刷面の裏面の所定位置に印刷し、回路基板31の電極印刷面の裏面をIRヒーターで加熱する場合には、電極印刷面を下(反射パターンを上)に向けて、回路基板31を下ボックス22の開口部に固定する。それ以外の手順は、回路基板31の電極印刷面をIRヒーターで加熱する場合と同様である。
【0063】
また、本実施形態においては、一例として、真空圧空成形機による真空圧空成形により三次元成形物を得ることとしたが、これに限るものではなく、真空成形機による真空成形により三次元成形物を得ることとしてもよい。
【0064】
図5は、真空成形機による真空成形の各工程の一例を示す模式図である。真空成形機50による真空成形においては、ボックス51上部の開口部にセットされた回路基板31をIRヒーター52で上から加熱してプラスチックシート11(回路基板31)を軟化させる(
図5(a)参照)。そして、通気口53から空間54を減圧することにより空間54を真空状態にするとともに、テーブル55を上昇させ、軟化された回路基板31に型32を押し込むことにより、回路基板31は、三次元形状である型32の形状に変形する。これにより、回路基板31は、型32の形状を再現した形状、すなわち、所望の三次元成形物41となる。
【0065】
上述したように三次元成形工程(ステップS4)を実施した後、つぎに、射出成形工程では、三次元成形物41の電子部品実装面を射出成形によりプラスチックで覆い、完成品である電気回路部品や電気製品等を得る(ステップS5)。
【0066】
図6は、本実施形態の射出成形工程の一例を示す図である。
【0067】
本実施形態において使用する金型61は、たとえば、三次元成形工程(ステップS4)により得られた三次元成形物41の電子部品実装面の裏面を嵌め込むことが可能な第1の金型61-1と、第1の金型61-1と組み合わせた(接合した)ときに三次元成形物41の電子部品実装面側に空間62を設けるように形成された第2の金型61-2と、から構成される。そして、三次元成形物41を嵌め込んだ状態の第1の金型61-1と第2の金型61-2とを接合して閉じることにより、完成品(電気回路部品や電気製品等)の形状を有する金型61を形成する。
【0068】
また、第2の金型61-2には、金型61内の空間62に溶かした樹脂(プラスチック)を注入するための樹脂注入口63が設けられている。
【0069】
本実施形態の射出成形においては、まず、三次元成形工程(ステップS4)により得られた三次元成形物41を用意し(
図6(a)参照)、この三次元成形物41を第1の金型61-1に嵌め込んだ状態で、第1の金型61-1と第2の金型61-2とを接合して金型61を形成する(
図6(b)参照)。
【0070】
つぎに、樹脂注入口63から、金型61内の空間62に熱で溶かした樹脂を注入する(
図6(b)参照)。そして、本実施形態においては、冷やすことにより固まったプラスチック64と三次元成形物41とが密着状態で一体化した完成品65(電気回路部品や電気製品等)を、金型61から取り出す(
図6(c)参照)。
【0071】
<効果>
以上のように、本実施形態の三次元成形物の製造方法においては、平面のプラスチックシート11を用いて作製された回路基板31を型32の形状に熱変形させる三次元成形工程(ステップS4)を実施することにより、所望の三次元成形物41を得る。具体的には、熱変形を抑制する範囲として規定したプラスチックシート11上の所定位置に反射パターン13を印刷する反射パターン印刷工程(ステップS2)を含み、三次元成形工程においては、反射パターン印刷面側を加熱することにより軟化したプラスチックシート11(回路基板31)に対し、型32を押し込むことによって、回路基板31を型32の形状に熱変形させる。
【0072】
また、プラスチックシート11に電極12を印刷する電極印刷工程(ステップS1)をさらに含み、前記所定位置を、印刷した電極のうちのベタパターンの印刷範囲とし、上記反射パターン印刷工程では、ベタパターンの印刷範囲を覆うように、プラスチックシート11の電極印刷面またはその裏面に対し、反射パターン13を印刷する。
【0073】
さらに、電極12が印刷されたプラスチックシート11の電極印刷面に電子部品14を実装する実装工程(ステップS3)を含み、上記反射パターン印刷工程では、前記所定位置として、プラスチックシート11の電極印刷面における電子部品実装範囲の周囲、またはその裏面の電子部品実装範囲およびその周囲に、反射パターン13を印刷する。
【0074】
これにより、三次元成形工程実施時における電極(導電性ペースト)部分の熱変形(伸び)が抑制されるため、電極の亀裂、破断、断線、剥がれ等を防止することができる。また、三次元成形工程実施時における電子部品実装範囲の熱変形(伸び)が抑制されるため、電子部品の接触不良、断線、脱落等を防止することができる。
【実施例0075】
つづいて、本発明にかかる三次元成形物の製造方法の実施例について説明する。なお、本発明は下記実施例により制限されるものではない。
【0076】
<実施例1>
実施例1では、
図3に示す真空圧空成形機と、
図7に示す形状のベタパターンを印刷したプラスチックシートと、
図8に示す円筒を半分にした半円筒状の型とを使用し、さらに、ベタパターンを覆うように電極印刷面に反射パターンを印刷した上で、
図1に示す三次元成形工程(ステップS4)を実施した。実施例1においては、電子部品を実装していないプラスチックシートを三次元形状に成形し、三次元成形物を得た。
【0077】
なお、実施例1で使用するプラスチックシートは、厚さ0.4mm、幅335mm、長さ450mmのポリカーボネートシート「PC-2151」(帝人株式会社製)を使用した。また、ベタパターン(電極)には、導電性ペーストとして「DOTITE XA-3737」(藤倉加成株式会社製)を使用した。また、反射パターンには、反射ペーストとして「FUNCOATメタミラー」(十条ケミカル製)を使用した。また、型は、鉄製とし、半円の直径40mm、高さ80mmの半円筒状のものを使用した(
図8参照)。
【0078】
また、真空圧空成形機は、TOM(Three-dimension Overlay Method)成形機「NGT-T-0203」(manufactured by Fuse Vacuum Forming Co. Ltd.)を使用した。また、真空圧空成形機のIRヒーターは、1本0.3kWのIRヒーターを16本(4.8kW)配置(縦4本×横4本に配置)して使用した。
【0079】
実施例1においては、まず、上記プラスチックシートに対し、上記導電性ペーストを使用してベタパターンを印刷した(
図1のステップS1に相当)。実施例1では、
図7に示すとおり、k=45.49mm、l1=6.27mm、l2=2.51mmのベタパターンをプラスチックシートの中心に下記印刷条件1によりスクリーン印刷した。
(印刷条件1)
・印刷方式:スクリーン印刷
・スキージスピード:100mm/sec
・スキージ押込み量:0.2mm
・クリアランス量:1.0mm
・オフコン量:1.0mm
・その他:ベーク温度はクリーンオーブンにて125℃、30分。
【0080】
つぎに、ベタパターンを覆うように、プラスチックシートのベタパターン印刷面に対し、上記反射ペーストを使用して反射パターンを印刷した(
図1のステップS2に相当)。具体的には、ベタパターンと略同一形状の反射パターンを下記印刷条件2によりスクリーン印刷(重ね塗り)した。
(印刷条件2)
・印刷方式:スクリーン印刷
・スキージスピード:100mm/sec
・スキージ押込み量:0.2mm
・クリアランス量:1.0mm
・オフコン量:1.0mm
・その他:初期乾燥は50℃以下で表面が乾燥するまで自然乾燥または送風乾燥。その後、クリーンオーブンにて80℃、30分。
【0081】
そして、上記のようにベタパターンおよび反射パターンを印刷した後のプラスチックシートを、真空圧空成形機を使用して三次元形状に加工し、三次元成形物を得た(
図1のステップS4に相当)。
【0082】
具体的には、まず、成形前の準備作業として、真空圧空成形機の上ボックスと下ボックスとを開いた状態でテーブル上に型を固定した。このとき、型は、半円筒の内部側(内側)が上向きとなるように(
図8参照)、テーブルの中心付近に固定した。そして、型の内部(半円筒の内部)にベタパターンが収まるように、ベタパターン印刷面を上に向けて(IRヒーター側に向けて)プラスチックシートを下ボックスの開口部に固定し、この状態で上ボックスと下ボックスとを閉じた。
【0083】
成形前の準備作業が完了した後、下記の製造条件により三次元成形工程を実施した。
(製造条件)
・シート温度(Sheet temperature):140℃
・型移動速度(Mold speed):80mm/s
・圧力強度(Pressure):200kPa
・プレス時間(Pressing time):60(s)
・プレスタイミング(Pressing timing):0.7(s)
【0084】
図9は、型から取り外した後の実施例1の三次元成形物の形状を示す模式図である。
【0085】
<比較例1>
比較例1では、
図3に示す真空圧空成形機と、
図7に示すベタパターンを印刷したプラスチックシートと、
図8に示す円筒を半分にした半円筒状の型とを使用して、反射パターンを印刷することなく、
図1に示す三次元成形工程(ステップS4)を実施した。実施例1とは、反射パターンを印刷していない点だけが異なる。
【0086】
<評価>
実施例1により製造した三次元成形物と比較例1により製造した三次元成形物とを比較した。
【0087】
図10は、本発明にかかる三次元成形物の製造方法の効果を示す図であり、
図10(a)は実施例1の三次元成形物におけるベタパターンの形状および状態を示すものであり、
図10(b)は比較例1の三次元成形物におけるベタパターンの形状および状態を示すものである。また、
図11は、実施例1および比較例1の三次元成形物におけるベタパターンの各部の寸法(mm)を示す図であり、ベタパターンの各部の寸法(mm)であるk、l1、l2の測定結果が記載されている。
【0088】
図11を参照すると、比較例1の寸法は、L1が10.7mmで成形前の1.61倍、L2が4.03mmで成形前の1.61倍となっている一方で、実施例1の寸法は、L1が6.88mmで成形前の1.1倍、L2が3.45mmで成形前の1.37となっている。すなわち、実施例1の熱変形後のベタパターンと比較例1の熱変形後のベタパターンとを比較すると、実施例1の方が、変形量(伸びの長さ)が抑制されていることがわかる。
【0089】
また、
図10(a)(b)を参照すると、比較例1の熱変形後のベタパターンには複数の亀裂が発生しているが、実施例1の熱変形後のベタパターンは、上記のとおり変形量(伸びの長さ)が抑制されているため、亀裂、破断、断線、剥がれ等は見られなかった。