(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023165493
(43)【公開日】2023-11-16
(54)【発明の名称】浮遊物捕集装置
(51)【国際特許分類】
E02B 15/00 20060101AFI20231109BHJP
【FI】
E02B15/00 Z
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022076555
(22)【出願日】2022-05-06
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2022-10-04
(71)【出願人】
【識別番号】596007577
【氏名又は名称】株式会社アントレックス
(71)【出願人】
【識別番号】593111738
【氏名又は名称】艫居 隆三
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】艫居 隆三
【テーマコード(参考)】
2D025
【Fターム(参考)】
2D025AA00
(57)【要約】
【課題】海及び湖の岸から離れた領域において使用可能であり、浮遊物を効果的に捕集できるようにする。
【解決手段】海80又は湖の所定領域81に浮かべられ、所定領域の平均水面82Aと一緒に上下動する内枠40と、内枠の外周側に位置しながら所定領域に浮かべられ、その上端が内枠の上端より上方に位置する状態で、所定領域の水面82と一緒に上下動する外枠15と、を備える。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
海又は湖の所定領域に浮かべられ、前記所定領域の平均水面と一緒に上下動する内枠と、
前記内枠の外周側に位置しながら前記所定領域に浮かべられ、その上端が前記内枠の上端より上方に位置する状態で、前記所定領域の水面と一緒に上下動する外枠と、
を備える浮遊物捕集装置。
【請求項2】
前記内枠が、前記所定領域の底から離れた位置に位置する錘を備える請求項1記載の浮遊物捕集装置。
【請求項3】
前記内枠と前記外枠の一方に設けられ、前記内枠と前記外枠の他方に対して回転しながら接触可能なローラを備える請求項1又は請求項2記載の浮遊物捕集装置。
【請求項4】
前記内枠の内周側に位置し、前記内枠に支持された網を備える請求項1又は請求項2記載の浮遊物捕集装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば海及び湖の浮遊物を除去するための浮遊物捕集装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、護岸に取り付けられた網によって、海面上を浮遊する浮遊物(ゴミ)を捕集する発明が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1の網は、護岸等に取り付ける必要がある。即ち、この網は、護岸から遠くはなれた海上で利用できない。さらに、この網は浮遊物の捕集機能に関して改善の余地がある。
【0005】
本発明は、海及び湖の岸から離れた領域において使用可能であり、浮遊物を効果的に捕集できる浮遊物捕集装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載の浮遊物捕集装置は、海又は湖の所定領域に浮かべられ、前記所定領域の平均水面と一緒に上下動する内枠と、前記内枠の外周側に位置しながら前記所定領域に浮かべられ、その上端が前記内枠の上端より上方に位置する状態で、前記所定領域の水面と一緒に上下動する外枠と、を備える。
【0007】
請求項1に記載の発明では、海又は湖の所定領域に浮かんだ内枠と外枠は、波の力により上下方向に相対移動する。この際、内枠は所定領域の平均水面と一緒に上下動する一方で、外枠は、その上端が内枠の上端より上方に位置する状態で、所定領域の水面と一緒に上下動する。
【0008】
なお、「内枠が平均水面と一緒に上下動する」とは、内枠が平均水面と完全に一緒に上下動すること、及び、内枠が平均水面と実質的に一緒に上下動すること、の両方の意味を含む。同様に、「外枠が所定領域の水面と一緒に上下動する」とは、外枠が所定領域の水面と完全に一緒に上下動すること、及び、外枠が所定領域の水面と実質的に一緒に上下動すること、の両方の意味を含む。
【0009】
波の影響により平均水面と外枠の上端との距離が小さくなったときに、波の力を受けた浮遊物が外枠の上端を乗り越えて内枠の内周側に移動することがある。即ち、浮遊物が浮遊物捕集装置によって捕集される。さらに、波の影響により、内枠の上端と外枠の上端との距離が大きくなると、捕集された浮遊物が、外枠の上端を乗り越えて外枠の外周側に移動するおそれが小さくなる。従って、請求項1に記載の浮遊物捕集装置は、浮遊物を効果的に捕集できる。
【0010】
さらに請求項1に記載の浮遊物捕集装置は、護岸等に接続される必要がない。そのため、請求項1に記載の浮遊物捕集装置は、海及び湖の岸から離れた領域において使用可能である。
【0011】
請求項2に記載の浮遊物捕集装置は、請求項1において、前記内枠が、前記所定領域の底から離れた位置に位置する錘を備える。
【0012】
請求項3に記載の浮遊物捕集装置は、請求項1又は請求項2において、前記内枠と前記外枠の一方に設けられ、前記内枠と前記外枠の他方に対して回転しながら接触可能なローラを備える。
【0013】
請求項4に記載の浮遊物捕集装置は、請求項1又は請求項2において、前記内枠の内周側に位置し、前記内枠に支持された網を備える。
【発明の効果】
【0014】
本発明の浮遊物捕集装置は、海及び湖の岸から離れた領域において使用可能であり、浮遊物を効果的に捕集できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】実施形態に係る浮遊物捕集装置の組み立て完了状態の斜視図である。
【
図2】浮遊物捕集装置の連結部材及び錘を省略して示す分解斜視図である。
【
図6】海の所定領域に設置された浮遊物捕集装置の模式的な側面図である。
【
図7】上記所定領域の波の影響により、外枠が内枠に対して
図6の状態から下方に相対移動したときの浮遊物捕集装置の模式的な側面図である。
【
図10】第3変形例の浮遊物捕集装置の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、実施形態に係る浮遊物捕集装置10について
図1~
図7を参照しながら説明する。
【0017】
図1及び
図2に示されるように浮遊物捕集装置10は、外枠15、内枠40及び網部材70を備える。
【0018】
図2~
図4に示されるように外枠15は、円筒状部材16、複数の横補強部材17、18、19、複数の縦補強部材20、複数のブラケット25及び複数の容器30を備える。
【0019】
外枠15は、軸線が上下方向に延びる円筒状部材16を備える。円筒状部材16の上下両端は共に開口している。円筒状部材16の外周面には3つの環状の横補強部材17、18、19が固定されている。但し、横補強部材17、18、19の数はこれに限定されない。横補強部材17、18、19は上下方向に並んでいる。円筒状部材16の内周面には、複数の縦補強部材20が周方向に並べて固定されている。本実施形態の外枠15は6本の縦補強部材20を備えるが、縦補強部材20の数はこれに限定されない。各縦補強部材20は上下方向と平行である。各縦補強部材20の水平面で切断したときの断面形状は略U字形である。即ち、各縦補強部材20は、上下方向に延びる平板状の基板部21と、基板部21の両側縁部に接続する一対の側板部22と、を備える。各縦補強部材20の基板部21が円筒状部材16の内周面に固定されている。基板部21と一対の側板部22とで囲まれた空間は収納空間23である。
図3に示されたように、対をなす側板部22の対向面同士の距離はw1である。
【0020】
図2及び
図5に示されたように、複数の上部ストッパ24Uが周方向に並べて円筒状部材16の内周面に固定されている。さらに複数の下部ストッパ24Dが周方向に並べて円筒状部材16の内周面に固定されている。各上部ストッパ24Uと各下部ストッパ24Dの周方向位置は互いに同じである。なお、便宜上、
図2及び
図5では、一部の上部ストッパ24U及び下部ストッパ24Dのみが図示されている。
【0021】
円筒状部材16の外周面には複数のブラケット25が設けられている。円筒状部材16の外周面には上下2段に渡って、合計20個のブラケット25が設けられている。但し、ブラケット25の数はこれには限定されない。なお、便宜上、
図1及び
図2では一部のブラケット25のみ図示されている。
図4に示されるように各ブラケット25の側面形状(断面形状)は略U字形である。即ち、各ブラケット25は、上下方向に延びる平板状の基板部26と、基板部26の上縁部に接続された上板27と、基板部26の下縁部に接続された下板28と、を備える。各ブラケット25の基板部26が円筒状部材16の外周面に固定されている。
【0022】
図4に示されるように、各ブラケット25には容器30が着脱可能に取り付けられている。即ち、上板27と下板28とによって容器30が挟まれている。各容器30は、端部が開口した容器本体31と、容器本体31の開口部を着脱可能に塞ぐキャップ32と、を備える。容器本体31は、例えばPET(ポリエチレンテレフタレート)製の容器である。容器本体31の内部空間は空気によって満たされている。
【0023】
円筒状部材16、横補強部材17、18、19、縦補強部材20及びブラケット25の構成材料としては、様々な材料を利用可能である。例えば、円筒状部材16、横補強部材17、18、19、縦補強部材20及びブラケット25の構成材料として金属を利用可能である。さらに円筒状部材16、横補強部材17、18、19、縦補強部材20、ブラケット25及び容器30を含む外枠15の比重は、海水の比重より小さい第1比重である。
【0024】
図2~
図4、
図6及び
図7に示されるように内枠40は、円筒状部材41、複数の横補強部材42、43、44、45、複数の縦補強部材46、複数の回転軸50、複数のローラ51、複数のブラケット54、複数の容器60、連結部材64及び錘65を備える。
【0025】
本実施形態の内枠40は、軸線が上下方向に延びる円筒状部材41を備える。円筒状部材41の上下両端は共に開口している。円筒状部材41の内周面には4つの環状の横補強部材42、43、44、45が固定されている。但し、横補強部材42、43、44、45の数はこれに限定されない。横補強部材42、43、44、45は上下方向に並んでいる。円筒状部材41の外周面には複数の縦補強部材46が固定されている。本実施形態の内枠40は6本の縦補強部材46を備えるが、縦補強部材46の数はこれに限定されない。各縦補強部材46は上下方向と平行である。各縦補強部材46の水平面で切断したときの断面形状は略U字形である。即ち、各縦補強部材46は、上下方向に延びる平板状の基板部47と、基板部47の両側縁部に接続する一対の側板部48と、を備える。各縦補強部材46の基板部47が、円筒状部材41の外周面に固定されている。
図3に示されたように、対をなす側板部48の外面同士の距離はw2である。この距離w2は上記距離w1より小さい。
【0026】
図3及び
図4に示されたように、各縦補強部材46の一対の側板部48には水平な複数の回転軸50の両端部が固定されている。各回転軸50は上下方向に並んでいる。さらに各回転軸50にはローラ51が回転可能に支持されている。
図4に示されたように、各ローラ51の一部は、縦補強部材46の側板部48の先端部(外周側端部)より内枠40の外周側に位置する。
【0027】
図2及び
図5に示されたように、複数の当接部材53が周方向に並べて円筒状部材41の外周面に固定されている。
【0028】
円筒状部材41の内周面には複数のブラケット54が設けられている。内枠40には上下2段に渡って、合計20個のブラケット54が設けられている。但し、ブラケット54の数はこれには限定されない。なお、便宜上、
図1及び
図2では一部のブラケット54のみ図示されている。
図4に示されるように各ブラケット54の側面形状(断面形状)は略U字形である。即ち、各ブラケット54は、上下方向に延びる平板状の基板部55と、基板部55の上縁部に接続された上板56と、基板部55の下縁部に接続された下板57と、を備える。
図4に示されるように、各ブラケット54の基板部55が円筒状部材41の内周面に固定されている。
【0029】
図4に示されるように、各ブラケット54には容器60が着脱可能に取り付けられている。即ち、上板56と下板57とによって容器60が挟まれている。各容器60は、端部が開口した容器本体61と、容器本体61の開口部を着脱可能に塞ぐキャップ62と、を備える。容器本体61は、例えばPET製の容器である。容器本体61の内部空間は空気によって満たされている。
【0030】
さらに
図1、
図6及び
図7に示されるように、内枠40の下端部には2本の連結部材64の上端部がそれぞれ固定され、各連結部材64の下端部に錘65が固定されている。
【0031】
円筒状部材41、横補強部材42、43、44、45、縦補強部材46、ブラケット54及び錘65の構成材料としては、様々な材料を利用可能である。例えば、円筒状部材41、横補強部材42、43、44、45、縦補強部材46、ブラケット54及び錘65の構成材料として金属を利用可能である。さらに円筒状部材41、横補強部材42、43、44、45、縦補強部材46、回転軸50、ローラ51、ブラケット54、容器60、連結部材64、及び錘65を含む内枠40の比重は、海水の比重より小さく且つ第1比重より大きい第2比重である。
【0032】
図3に示されたように、円筒状部材16の内径より、円筒状部材41の外径が小さい。そのため外枠15の上端開口部又は下端開口部を通して、外枠15の内周側空間に内枠40を略同軸的に挿入可能である。このとき外枠15の各縦補強部材20と内枠40の各縦補強部材46の周方向位置を互いに一致させ、且つ、内枠40の各ローラ51を各縦補強部材20の収納空間23に位置させる。外枠15の縦補強部材20、並びに、内枠40の縦補強部材46、回転軸50及びローラ51は、案内機構の構成要素である。
【0033】
さらに
図5に示されたように、内枠40の各当接部材53が、外枠15の各上部ストッパ24Uと各下部ストッパ24Dとの間に位置する。そのため、外枠15は内枠40に対して、上部ストッパ24Uの下面に当接部材53の上面が接触する位置(
図5の実線参照)と、下部ストッパ24Dの上面に当接部材53の下面が接触する位置(
図5の仮想線参照)と、の間の範囲を上下方向に相対移動可能である。このとき少なくとも一つのローラ51が対応する基板部21に回転しながら接触可能である。
【0034】
図2に示されるように網部材70は、リング部材71、網72、連結部材73及び引掛け部74を備える。
【0035】
リング部材71は横補強部材42より小径である。可撓性材料によって構成された網72は上端のみが開口した袋状に形成されている。網72の上縁部がリング部材71に固定されている。リング部材71は横補強部材42に対して着脱可能である。リング部材71が横補強部材42に取り付けられると、
図6及び
図7に示されるように、網72が内枠40の内周側空間に位置する。さらに
図2に示されたように、リング部材71に複数の連結部材73の一端が固定され、各連結部材73の他端が引掛け部74に固定されている。引掛け部74は環状部75を備える。
【0036】
次に、実施形態の作用及び効果を説明する。
【0037】
例えば浮遊物捕集装置10は、
図6及び
図7に示されるように海80の岸(図示省略)から遠く離れた所定領域81に設置される。上述のように外枠15の比重は海水の比重より小さい第1比重であり、内枠40の比重は海水の比重より小さい第2比重である。そのため浮遊物捕集装置10を所定領域81に設置すると、各容器30、60が発生する浮力によって、外枠15及び内枠40は所定領域81に対して浮かぶ。より詳細には、外枠15の上端の水面82からの上方への突出量Ph1は、波83の高さに拘わらずほぼ一定である。即ち、外枠15は、実質的に波83(水面82)と一緒に上下動する。一方、内枠40は、実質的に所定領域81の平均水面82A(
図6及び
図7の仮想線参照)と一緒に上下動する。これは、重量が大きく且つ海80の底80Bから上方に離れた錘65が、緊張状態にある連結部材64を介して内枠40に力を及ぼしているためである。この錘65の働きにより、平均水面82Aと錘65の下面との間の上下方向の距離Dpが、波83の高さに拘わらず略一定に維持される。即ち、内枠40の上端の平均水面82Aからの上方への突出量Ph2が、波83の高さに拘わらずほぼ一定に維持される。本明細書において「平均水面」とは、その領域に含まれる全ての波83の高さの平均値を通る仮想面のことである。
【0038】
例えば、突出量Ph1は40~60cmの範囲で設定される。また、突出量Ph2は、例えば外枠15の上端と内枠40の上端との上下方向の距離が、20~30cmとなるように設定される。突出量Ph1の大きさは、容器30の数を変更することにより調整可能である。突出量Ph2の大きさは、錘65の質量及び容器60の数を変更することにより調整可能である。波83の高さが大きいときは、突出量Ph1、Ph2を、波83の高さが小さいときより大きくするのが好ましい。
【0039】
ここで
図6に示されるように、所定の大きさの波83が発生している所定領域81に浮遊物捕集装置10が浮かび、且つ、水面82に2つの浮遊物85、86が浮かんでいる場合を想定する。このとき波83(水面82)が
図6の状態にあり、外枠15の上端は
図6に示された位置に位置する。一方、内枠40の上端は
図6に示された位置にある。このときの外枠15の上端と内枠40の上端との上下方向の距離はD1である。このときの平均水面82Aから外枠15の上端までの距離H1が長いので、波83の力を受けた浮遊物85、86が外枠15の上端を乗り越えて、外枠15の内周側へ移動する可能性は低い。
【0040】
波83が
図7に示された状態になると、外枠15の上端は
図7に示された位置に位置し、内枠40の上端は
図7に示された位置に位置する。このときの外枠15の上端と内枠40の上端との上下方向の距離は、上記距離D1より短い距離D2である。さらに、このときの平均水面82Aから外枠15の上端までの距離H2は、距離H1より短い。そのため、例えば、このタイミングで所定領域81において大きな波(図示省略)が発生すると、この波によって浮遊物85、86が外枠15の上端を乗り越えて、内枠40の上端及びリング部材71の内周側へ移動し易い。即ち、浮遊物85、86が網72によって捕集され易い。
【0041】
さらに、この直後に所定領域81が
図6に示された状態に戻ると、外枠15及び内枠40の上下方向位置が
図6に示された位置になる。即ち、外枠15の上端と内枠40の上端との上下方向の距離が再び距離D1になる。そのため、網72によって捕集された浮遊物85、86が、外枠15の上端を乗り越えて、外枠15の外周側に移動するおそれは小さい。
【0042】
このように本実施形態の浮遊物捕集装置10は、海80にある浮遊物を効果的に捕集できる。さらに浮遊物捕集装置10は、護岸等に接続される必要がないので、海80の岸から離れた領域(所定領域81)において使用可能である。さらに海80の潮の干満によって底80Bから水面82(平均水面82A)までの距離が変化しても、浮遊物捕集装置10は上記効果を発揮可能である。
【0043】
さらに、外枠15と内枠40が上下方向に相対移動するときに、少なくとも一つのローラ51が縦補強部材20の基板部21に回転しながら接触する。換言すると、外枠15と内枠40が上下方向に相対移動するときに、縦補強部材20が内枠40に接触しない。そのため、外枠15と内枠40が繰り返し上下動しても、外枠15と内枠40は損傷し難い。
【0044】
さらに網部材70が引掛け部74を備える。そのため、例えば空中を飛行可能なドローン(図示省略)を水面82へ接近させることにより、ドローンに設けられたフックを環状部75に引っ掛けることが可能である。さらに、その後にドローンを上方へ移動させると、網部材70が内枠40から分離する。この状態でドローンを所定の浮遊物回収場まで飛行させることにより、網72によって捕集された浮遊物を浮遊物回収場まで移送できる。
【0045】
以上、本発明を実施形態に基づいて説明したが、本発明はその要旨を逸脱しない範囲内において、適宜設計変更可能である。
【0046】
例えば、
図8に示された第1変形例の態様で浮遊物捕集装置10Aを構成してもよい。この浮遊物捕集装置10Aの内枠40は、円筒状部材41A、複数の横補強部材42、43、44、45、複数の縦補強部材46、複数の回転軸50、複数のローラ51、複数のブラケット54、複数の容器60及び錘65を備える。この内枠40の比重も第2比重である。なお、便宜上、
図8では横補強部材42、43、44、45、縦補強部材46、回転軸50、ローラ51、及びブラケット54及び容器60の図示が省略されている。
【0047】
第1変形例の円筒状部材41Aの上下長は、上記実施形態の円筒状部材41の上下長より大きい。さらに円筒状部材41Aの底部に錘65が固定されている。そのため第1変形例においても、錘65の働きにより、平均水面82Aと錘65の下面との間の上下方向の距離Dpが、波83の高さに拘わらず略一定に維持される。即ち、内枠40の上端の平均水面82Aからの上方への突出量Ph2が、波83の高さに拘わらずほぼ一定に維持される。そのため第1変形例の浮遊物捕集装置10Aも、上記実施形態の浮遊物捕集装置10と同様の作用効果を発揮可能である。
【0048】
また
図9に示された第2変形例の態様で浮遊物捕集装置10Bを構成してもよい。この浮遊物捕集装置10Bの外枠15は、円筒状部材16の上端部の内周側に位置し、円筒状部材16と同軸をなす、円筒形状のスライド部材35を備える。スライド部材35は円筒状部材16に対して上下方向にスライド可能である。さらに固定手段(図示省略)により、スライド部材35を円筒状部材16に対して任意の上下方向位置で固定可能である。この外枠15の比重も第1比重である。
【0049】
例えば、スライド部材35を仮想線で示された位置へスライドさせた後に上記固定手段により、スライド部材35と円筒状部材16を固定した場合を想定する。この場合は、浮遊物捕集装置10Bがスライド部材35を具備しない場合と比べて、平均水面82Aから外枠15の上端までの距離H3が大きくなる。そのため、網72によって捕集された浮遊物85、86が、外枠15の上端を乗り越えて、外枠15の外周側に移動するおそれがより小さくなる。
【0050】
また
図10及び
図11に示された第3変形例の態様で浮遊物捕集装置10Cを構成してもよい。この浮遊物捕集装置10Cは、外枠90、内枠92、連結部材64及び錘65を備える。
【0051】
外枠90は、内部に気体(例えば空気)が充填された袋状の環状部材である第1浮遊体91を備える。第1浮遊体91は、例えば樹脂材料により構成される。外枠90の比重も第1比重である。
【0052】
内枠92は、内部に気体(例えば空気)が充填された袋状の環状部材である第2浮遊体93、連結部材64及び錘65を備える。第2浮遊体93は、例えば樹脂材料により構成される。第2浮遊体93の下端部には2本の連結部材64の上端部がそれぞれ固定され、各連結部材64の下端部に錘65が固定されている。内枠92の比重も第2比重である。
【0053】
図10に示されたように、第1浮遊体91の内径が第2浮遊体93の外径より大きい。
図11に示されたように、第1浮遊体91及び第2浮遊体93は、第1浮遊体91の内周側に第2浮遊体93が位置する状態で、海80の所定領域81に浮かべられる。
【0054】
図11に示されたように、第1浮遊体91(外枠90)の上端の水面82からの上方への突出量Ph1は、波83の高さに拘わらずほぼ一定である。即ち、第1浮遊体91は、実質的に波83(水面82)と一緒に上下動する。一方、第2浮遊体93(内枠92)は、錘65の働きにより、実質的に所定領域81の平均水面82Aと一緒に上下動する。平均水面82Aと錘65の下面との間の上下方向の距離Dpは、波83の高さに拘わらず略一定に維持される。そのため、第2浮遊体93の上端の平均水面82Aからの上方への突出量Ph2は、波83の高さに拘わらずほぼ一定に維持される。
【0055】
第1浮遊体91の外周側において水面82に浮かんでいた浮遊物85、86が波の影響により、第1浮遊体91の上端部及び第2浮遊体93の上端部を乗り越えて第2浮遊体93の内周側に移動すると、浮遊物85、86は第2浮遊体93の内周側において水面82に浮かぶ。このようにして第2浮遊体93の内周側に集められた浮遊物85、86は、例えば所定領域81に浮かぶ船舶(図示省略)に設置された吸引装置(図示省略)により、当該船舶のデッキ上に集めることが可能である。
【0056】
このように第3変形例の浮遊物捕集装置10Cも、上記実施形態の浮遊物捕集装置10と同様の作用効果を発揮可能である。さらに第3変形例の浮遊物捕集装置10Cは網部材70に相当する部材を具備しないので、構成が簡単である。
【0057】
浮遊物捕集装置10、10A、10B、10Cが使用される場所は、波が発生する湖であってもよい。この場合の第1比重及び第2比重は湖の比重より小さい。
【0058】
一部のブラケット25にのみ容器30を取り付けてもよい。同様に、一部のブラケット54にのみ容器60を取り付けてもよい。
【0059】
外枠15が海又は湖に浮かぶのであれば、外枠15はブラケット25及び容器30を備えなくてもよい。
【0060】
内枠40が海又は湖に浮かぶのであれば、内枠40はブラケット54及び容器60を備えなくてもよい。
【0061】
内枠40の比重(第2比重)が外枠15の比重(第1比重)より大きく、且つ、突出量Ph2が波83の高さに拘わらずほぼ一定に維持されるのであれば、内枠40、92は錘65を備えなくてもよい。
【0062】
外枠15の機械的強度を確保できるのであれば、外枠15は横補強部材17、18、19を備えなくてもよい。
【0063】
内枠40の械的強度を確保できるのであれば、内枠40は横補強部材42、43、44、45を備えなくてもよい。
【0064】
外枠15にローラ51を回転可能に設けて、このローラ51を内枠40の外周面に接触させてもよい。
【0065】
外枠15が、円筒状部材16の代わりに、断面形状が多角形又は略多角形をなす筒状部材を備えてもよい。
【0066】
内枠40が、円筒状部材41の代わりに、断面形状が多角形又は略多角形をなす筒状部材を備えてもよい。
【0067】
外枠15の円筒状部材16又は上記筒状部材に、多数の貫通孔が形成されてもよい。同様に、内枠40円筒状部材41又は上記筒状部材に、多数の貫通孔が形成されてもよい。
【0068】
浮遊物捕集装置10、10A、10Bから網部材70を省略してもよい。この場合は、内枠40の内周側において捕集された浮遊物を、吸引装置(図示省略)又は容器(図示省略)を利用して回収してもよい。なお、この容器は、多数の小径の貫通孔が形成されたものであってもよい。
【符号の説明】
【0069】
10 浮遊物捕集装置
15 外枠
20 縦補強部材
40 内枠
46 縦補強部材
50 回転軸
51 ローラ
72 網
80 海
80B 底
81 所定領域