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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023165498
(43)【公開日】2023-11-16
(54)【発明の名称】菌・ウイルス噴霧捕集装置
(51)【国際特許分類】
   C12M 1/28 20060101AFI20231109BHJP
【FI】
C12M1/28
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022076574
(22)【出願日】2022-05-06
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.テフロン
(71)【出願人】
【識別番号】000150567
【氏名又は名称】株式会社朝日工業社
(71)【出願人】
【識別番号】000135036
【氏名又は名称】ニプロ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100128509
【弁理士】
【氏名又は名称】絹谷 晴久
(74)【代理人】
【識別番号】100119356
【弁理士】
【氏名又は名称】柱山 啓之
(72)【発明者】
【氏名】村上 栄造
(72)【発明者】
【氏名】井上 克哉
(72)【発明者】
【氏名】須藤 良庸
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 隆
【テーマコード(参考)】
4B029
【Fターム(参考)】
4B029AA09
4B029BB01
4B029CC01
4B029DG08
4B029GA08
4B029GB01
4B029GB02
4B029GB05
4B029GB08
4B029HA09
(57)【要約】
【課題】BSL3相当の病原微生物を取り扱うのに有利な試験装置を提供する。
【解決手段】病原微生物に対する空気清浄機Mの除去性能を評価するための試験装置100は、試験室R内に設置され空気清浄機が収容される試験チャンバ1と、病原微生物を含有した噴霧液を試験チャンバ内に噴霧する噴霧器2と、噴霧後の試験チャンバ内の空気に含まれる病原微生物を捕集する捕集器3と、捕集器が収容された捕集器室4とを備える。捕集器室は、試験室から隔離されている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
病原微生物に対する空気清浄機の除去性能を評価するための試験装置であって、
試験室内に設置され前記空気清浄機が収容される試験チャンバと、
病原微生物を含有した噴霧液を前記試験チャンバ内に噴霧する噴霧器と、
噴霧後の前記試験チャンバ内の空気に含まれる病原微生物を捕集する捕集器と、
前記捕集器が収容された捕集器室と、
を備え、
前記捕集器室は、前記試験室から隔離されている
ことを特徴とする試験装置。
【請求項2】
前記捕集器室内の空気を屋外に排気するための排気装置を備える
請求項1に記載の試験装置。
【請求項3】
前記排気装置は、前記捕集器室内の空気を屋外に排気する前に清浄化するフィルタを備える
請求項2に記載の試験装置。
【請求項4】
前記捕集器室と前記排気装置は、囲い式局所排気装置を構成する
請求項2または3に記載の試験装置。
【請求項5】
前記捕集器は、その出口側に空気を清浄化するフィルタを備える
請求項1~4のいずれか一項に記載の試験装置。
【請求項6】
前記試験チャンバから前記捕集器に空気を送るための送気管と、
前記捕集器から排出された空気を送るための排気管と、
を備える
請求項1~5のいずれか一項に記載の試験装置。
【請求項7】
前記捕集器は、空気を導入する入口管と、空気を排出する出口管とを備え、
前記捕集器室内において、前記送気管の端部と前記入口管の端部とがワンタッチコネクタにより接続されると共に、前記排気管の端部と前記出口管の端部とがワンタッチコネクタにより接続され、
前記ワンタッチコネクタは、前記送気管の端部および前記排気管の端部に取り付けられた第1部分と、前記入口管の端部および前記出口管の端部に取り付けられた第2部分とを有し、
前記第1部分と前記第2部分は、接続時に自動開放し、分離時に自動閉止するよう構成されている
請求項6に記載の試験装置。
【請求項8】
試験後に前記送気管の内部を消毒するための消毒装置を備える
請求項6または7に記載の試験装置。
【請求項9】
前記送気管は、前記試験チャンバ内から前記捕集器室内まで延びると共に前記試験チャンバと前記捕集器室の壁を貫通し、
当該貫通箇所には、前記送気管と前記壁の隙間をシールするシール装置が設けられる
請求項6~8のいずれか一項に記載の試験装置。
【請求項10】
前記捕集器から空気を吸引するための吸引装置と、
前記捕集器と前記吸引装置の間に設けられたバルブと、
前記バルブとその下流側のリークチェックを行うためのリークチェック装置と、
を備えた
請求項1~9のいずれか一項に記載の試験装置。
【請求項11】
前記捕集器から空気を吸引するための吸引装置と、
前記吸引装置によって吸引される空気の流量を自動的に調整する捕集用瞬時流量調整器と、を備える
請求項1~10のいずれか一項に記載の試験装置。
【請求項12】
前記捕集用瞬時流量調整器は、1回の捕集当たりに吸引された空気の量を自動的に記録し保存する
請求項11に記載の試験装置。
【請求項13】
前記噴霧器に圧縮空気を供給するコンプレッサと、
前記噴霧器に供給される圧縮空気の流量を自動的に調整する噴霧用瞬時流量調整器と、を備える
請求項1~12のいずれか一項に記載の試験装置。
【請求項14】
前記噴霧用瞬時流量調整器は、1回の噴霧当たりに供給された圧縮空気の量を自動的に記録し保存する
請求項13に記載の試験装置。
【請求項15】
前記噴霧器は、前記試験チャンバ内に配置される
請求項1~14のいずれか一項に記載の試験装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は試験装置に係り、特に、病原微生物(細菌およびウイルスを含む)に対する空気清浄機の除去性能を評価するための試験装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、空気中に浮遊する病原微生物を除去するため、病原微生物に対する空気清浄機の除去性能に関する関心が高まりつつある。空気清浄機の性能評価試験は、基本的に、一般社団法人日本電機工業会が定めたJEM1467(空気清浄機の浮遊ウイルスに対する除去性能評価試験方法)という試験方法に準拠して行われる。
【0003】
この試験ではまず、試験チャンバ内に、病原微生物を含有した噴霧液を噴霧し、病原微生物をチャンバ内に浮遊させる。次に、試験チャンバ内に設置した評価対象の空気清浄機を作動させ、空気清浄機により試験チャンバ内の病原微生物を除去または処理する。空気清浄機の作動中に定期的に試験チャンバ内の病原微生物を捕集し、試験チャンバ内における病原微生物の減衰率から、空気清浄機の除去性能を評価する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第5656517号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、性能評価試験に用いられる試験装置は、一般的に、バイオセイフティレベル(BSL)2相当の比較的低リスクの病原微生物(例えば、大腸菌ファージやインフルエンザウイルス)を取り扱うように構成されている。
【0006】
しかし、近年ではより感染リスクの高いBSL3相当の病原微生物(例えば、新型コロナウイルスや結核菌)も空気清浄機で除去することが求められており、これに伴って、試験装置も、BSL3相当の病原微生物を取り扱うことが要請されている。
【0007】
そこで本開示は、かかる事情に鑑みて創案され、その目的は、BSL3相当の病原微生物を取り扱うのに有利な試験装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示の一の態様によれば、
病原微生物に対する空気清浄機の除去性能を評価するための試験装置であって、
試験室内に設置され前記空気清浄機が収容される試験チャンバと、
病原微生物を含有した噴霧液を前記試験チャンバ内に噴霧する噴霧器と、
噴霧後の前記試験チャンバ内の空気に含まれる病原微生物を捕集する捕集器と、
前記捕集器が収容された捕集器室と、
を備え、
前記捕集器室は、前記試験室から隔離されている
ことを特徴とする試験装置が提供される。
【0009】
好ましくは、前記試験装置は、前記捕集器室内の空気を屋外に排気するための排気装置を備える。
【0010】
好ましくは、前記排気装置は、前記捕集器室内の空気を屋外に排気する前に清浄化するフィルタを備える。
【0011】
好ましくは、前記捕集器室と前記排気装置は、囲い式局所排気装置を構成する。
【0012】
好ましくは、前記捕集器は、その出口側に空気を清浄化するフィルタを備える。
【0013】
好ましくは、前記試験装置は、
前記試験チャンバから前記捕集器に空気を送るための送気管と、
前記捕集器から排出された空気を送るための排気管と、
を備える。
【0014】
好ましくは、前記捕集器は、空気を導入する入口管と、空気を排出する出口管とを備え、
前記捕集器室内において、前記送気管の端部と前記入口管の端部とがワンタッチコネクタにより接続されると共に、前記排気管の端部と前記出口管の端部とがワンタッチコネクタにより接続され、
前記ワンタッチコネクタは、前記送気管の端部および前記排気管の端部に取り付けられた第1部分と、前記入口管の端部および前記出口管の端部に取り付けられた第2部分とを有し、
前記第1部分と前記第2部分は、接続時に自動開放し、分離時に自動閉止するよう構成されている。
【0015】
好ましくは、前記試験装置は、試験後に前記送気管の内部を消毒するための消毒装置を備える。
【0016】
好ましくは、前記送気管は、前記試験チャンバ内から前記捕集器室内まで延びると共に前記試験チャンバと前記捕集器室の壁を貫通し、
当該貫通箇所には、前記送気管と前記壁の隙間をシールするシール装置が設けられる。
【0017】
好ましくは、前記試験装置は、
前記捕集器から空気を吸引するための吸引装置と、
前記捕集器と前記吸引装置の間に設けられたバルブと、
前記バルブとその下流側のリークチェックを行うためのリークチェック装置と、
を備える。
【0018】
好ましくは、前記試験装置は、
前記捕集器から空気を吸引するための吸引装置と、
前記吸引装置によって吸引される空気の流量を自動的に調整する捕集用瞬時流量調整器と、を備える。
【0019】
好ましくは、前記捕集用瞬時流量調整器は、1回の捕集当たりに吸引された空気の量を自動的に記録し保存する。
【0020】
好ましくは、前記試験装置は、
前記噴霧器に圧縮空気を供給するコンプレッサと、
前記噴霧器に供給される圧縮空気の流量を自動的に調整する噴霧用瞬時流量調整器と、を備える。
【0021】
好ましくは、前記噴霧用瞬時流量調整器は、1回の噴霧当たりに供給された圧縮空気の量を自動的に記録し保存する。
【0022】
好ましくは、前記噴霧器は、前記試験チャンバ内に配置される。
【発明の効果】
【0023】
本開示によれば、BSL3相当の病原微生物を取り扱うのに有利な試験装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本開示の実施形態に係る試験装置を概略的に示す側面断面図である。
図2】捕集器を示す概略図である。
図3】試験装置の概略正面断面図であり、図6のIII-III断面図である。
図4】シール装置の断面図である。
図5】ワンタッチコネクタの断面図である。
図6】試験装置の概略平面断面図である。
図7】試験装置の側面図である。
図8】密栓の取付状態を示す概略図である。
図9】密栓の断面図である。
図10】消毒装置の基本例を示す概略図である。
図11】消毒装置の第1変形例を示す概略図である。
図12】消毒装置の第2変形例を示す概略平面断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、添付図面を参照して本開示の実施形態を説明する。なお本開示は以下の実施形態に限定されない点に留意されたい。
【0026】
本実施形態は、病原微生物に対する空気清浄機の除去性能を評価するための試験装置に関する。病原微生物には、病原体をなす様々な細菌およびウイルスが含まれる。特に本実施形態の試験装置は、比較的低リスクのBSL2相当の病原微生物だけでなく、それより高リスクのBSL3相当の病原微生物にも適用するように構成されている。BSL3相当の病原微生物は、例えば新型コロナウイルスまたは結核菌であるが、これらに限定されない。なお感染症の見地から分類すると、本実施形態の試験装置は、五類感染症だけでなく、二類、三類および四類感染症の原因となる病原微生物にも適用するように構成されている。
【0027】
本実施形態の試験装置は、一般社団法人日本電機工業会が定めたJEM1467(空気清浄機の浮遊ウイルスに対する除去性能評価試験方法)に準拠した試験を実施するように構成されている。
【0028】
図1には、本実施形態に係る試験装置を概略的に示す。試験装置100は、試験室R内に設置され試験対象の空気清浄機Mが収容される試験チャンバ1と、病原微生物を含有した噴霧液を試験チャンバ1内に噴霧する噴霧器2と、噴霧後の試験チャンバ内の空気に含まれる病原微生物を捕集する捕集器3と、捕集器が収容された捕集器室4とを備える。本実施形態の場合、病原微生物はウイルスである。図中に前後左右上下の各方向を示す。
【0029】
試験室Rは、建屋内に設置された陰圧室であり、前室5からドア(図示せず)を通じて出入り可能であり、試験員Pが作業可能な安全な空間となっている。試験チャンバ1は、基本的に試験室Rから隔離されている。ここで「隔離」とは、両者の間で気体および液体の流通が不可能であるような非連通の状態をいう。但し試験室Rにはドア(図示せず)が設置され、このドアの開放時のみ両者が連通状態となる。試験チャンバ1が試験室Rから隔離されるため、試験員Pが試験チャンバ1内のウイルスに感染されるリスクを最小限に止めることができる。
【0030】
噴霧器2は、本実施形態ではネブライザーにより構成されるが、これに限定されない。噴霧器2は、噴霧液を貯留する着脱可能なタンクを備える。噴霧器2は試験チャンバ1内に配置される。そのため、噴霧液の補充やタンク交換等のためタンクを着脱したときに漏れた噴霧液を、試験チャンバ1内に止めさせることができ、噴霧液内のウイルスが試験チャンバ1外の試験室Rに漏れ出るのを抑制できる。
【0031】
噴霧器2は試験チャンバ1外の試験室R内から操作可能である。例えば、噴霧器2のタンクの着脱、噴霧液の補充、タンク交換等の作業は、試験員Pが試験室R内から、試験チャンバ1内に延びる隔離グローブを用いて安全に行うことができる。噴霧器2はこうした作業が行い易いような試験チャンバ1内の位置に設置されている。
【0032】
捕集器3は、本実施形態ではミゼットインピンジャー(以下単にインピンジャーという)により構成されるが、これに限定されない。周知のように捕集器3は、図2に拡大して示すように、捕集液6を貯留する透明ガラス製の捕集容器7と、下端部が捕集液6内に挿入された入口管8と、下端部が捕集液6の上方の空間に配置された出口管9と、捕集容器7の上端開口部を閉止する栓10とを備える。
【0033】
捕集器室4は、支持架台Bの上に設置されている。本実施形態では、この捕集器室4が試験室Rから隔離されている点が特徴の一つである。すなわち捕集器室4は、試験室Rとの間で気体および液体の流通が不可能となるよう、試験室Rと非連通の状態とされる。但し詳しくは後述するが、図3に示すように、捕集器室4には開口部11と、開口部11を開放可能に閉止する蓋12とが設けられ、蓋12の開放時のみ捕集器室4と試験室Rが連通状態となる。
【0034】
捕集器室4が試験室Rから隔離されるため、捕集器室4内に漏れたウイルスによって試験員Pが感染されるリスクを最小限に止めることができる。
【0035】
以下、試験装置100をより詳細に説明する。まず、噴霧液の噴霧系統について、試験装置100は、噴霧器2に圧縮空気を供給するコンプレッサ13と、コンプレッサ13および噴霧器2を接続する圧縮空気管14と、圧縮空気流れ方向の上流側から順に配置された噴霧用瞬時流量調整器15および電磁弁16とを備える。
【0036】
コンプレッサ13、噴霧用瞬時流量調整器15および電磁弁16は支持架台Bの中に設置されている。コンプレッサ13は試験室R内の空気を吸引し、圧縮して、圧縮空気管14内に送出する。電磁弁16は、図示しない制御ユニットにより開閉され、圧縮空気管14を開閉する。噴霧器2に圧縮空気が供給されたとき、噴霧器2はタンク内の噴霧液を試験チャンバ1内に向かって噴射する。
【0037】
噴霧用瞬時流量調整器15は、噴霧器2に供給される圧縮空気の流量を電気的かつ自動的に調整するための装置であり、マスフローコントローラとも称される。こうした流量調整器を用いることにより、圧力変動等の外乱があっても、設定値に等しい正確な流量の圧縮空気を供給でき、試験精度を高めることができる。また、噴霧用瞬時流量調整器15は、流量の瞬時値および積算値を測定および表示可能であり、1回の噴霧当たりに供給された圧縮空気の量を自動的に記録し保存する機能も有する。この点については後述する。
【0038】
圧縮空気管14は、本実施形態ではテフロン製等の可撓性チューブにより構成されるが、これに限定されない。圧縮空気管14は、試験チャンバ1の壁(本実施形態では縦壁)17を貫通して試験室Rから試験チャンバ1内に挿入される。ここで仮に、貫通箇所において、圧縮空気管14を切断し両者をフランジ接続したとすると、接続部で漏れが生じて、試験チャンバ1内のウイルスが試験室R内に漏出する虞がある。そこで本実施形態では、圧縮空気管14を切断せずに貫通させ、その貫通箇所において、圧縮空気管14と壁17の隙間をシール装置18によりシールする。
【0039】
図4に示すように、シール装置18は、試験チャンバ1側から壁17の穴19にパッキン20を挟んで挿入される略円筒状の装置本体21と、試験室R側から装置本体21の雄ネジ22に締め付けられ装置本体21を壁17に固定するナット23と、試験チャンバ1内において装置本体21の雄ネジ24に螺合される袋状ナット25と、装置本体21および袋状ナット25とその中心部に挿通された圧縮空気管14との間をシールするテーパ円筒状のゴムシール26とを備える。袋状ナット25を締め付けるとゴムシール26が半径方向内側に押し潰されてシールが達成される。圧縮空気管14が切断されずに壁17を貫通されるので、貫通箇所におけるウイルス漏れのリスクを最小限に止めることができる。なお、装置本体21は逆側すなわち試験室R側から穴19に挿入されてもよい。シール装置18は他の構成であってもよい。
【0040】
次に、試験チャンバ1に関して説明する。前述したように試験チャンバ1内には、噴霧器2と、試験対象の空気清浄機Mとが設置されている。これらに加え試験チャンバ1内には、その内部の空気を攪拌するための攪拌ファン27が設置されている。
【0041】
試験チャンバ1は、外気により換気できるようになっている。すなわち、試験チャンバ1には、建屋外の屋外から外気を導入するための吸気ダクト28と、試験チャンバ1内の空気を屋外に排出するための排気ダクト29とが接続されている。これら吸気ダクト28と排気ダクト29には空気を浄化するためのフィルタ30,31が取り付けられている。本実施形態の場合、フィルタ30,31は高性能のHEPAフィルタにより構成されるが、これに限定されない。
【0042】
特に、排気側フィルタ31でウイルスを除去した後に試験チャンバ1内の空気を屋外に排出できるので、屋外でのウイルスによる感染リスクを最小限に止めることができる。
【0043】
吸気ダクト28と排気ダクト29は、試験中は図示しない弁により閉じられており、試験が終了すると換気のため開放される。
【0044】
次に、捕集器3への空気供給系統について説明する。試験中、ウイルスを含む試験チャンバ1内の空気が捕集器3に送られる。この捕集器3に送られる空気をサンプル空気という。サンプル空気を試験チャンバ1から捕集器3に送るための送気管32が設けられる。送気管32は、試験チャンバ1内から捕集器室4内まで延びる。送気管32は、本実施形態ではテフロン製等の可撓性チューブにより構成されるが、これに限定されない。この送気管32は、前述した理由により、途中で切断ないし分断されることなく、試験チャンバ1内から、捕集器室4内まで連続的に延びる。すなわち1本の送気管32により試験チャンバ1と捕集器3が接続される。
【0045】
試験室R内の支持架台Bの上には、捕集器室4に隣接した配管室33が設けられており、送気管32は、配管室33を通って捕集器室4内に入る。配管室33と試験チャンバ1の間には所定の隙間34が設けられている。
【0046】
送気管32は、試験チャンバ1の壁17と、これに対向する配管室33の壁35と、捕集器室4および配管室33を区分する捕集器室4の壁36とを貫通する。そしてこれら貫通箇所には、圧縮空気管14のときと同様のシール装置18が設けられる。
【0047】
試験チャンバ1の壁17のシール装置18により、試験チャンバ1内のウイルスが試験室R内に漏出するのを防止できる。また特に、捕集器室4の壁36のシール装置18により、捕集器室4内のウイルスが室外ひいては試験室R内に漏出するのを防止でき、捕集器室4の隔離状態を確保できる。
【0048】
また仮に捕集器室4内のウイルスが配管室33に漏出すると、そのウイルスが試験室R内に漏出する虞があるが、配管室33の壁35のシール装置18によればこれを防止できる。つまり配管室33は、捕集器室4および試験室Rから隔離されている。
【0049】
次に、捕集器室4に関して説明する。図2に示すように、捕集器室4内において、送気管32の下流側端部と、捕集器3の入口管8の端部とは、ワンタッチコネクタ37により接続される。ワンタッチコネクタ37は、送気管32の下流側端部に取り付けられた第1部分38と、入口管8の端部に取り付けられた第2部分39とを有する。第1部分38と第2部分39は、接続時に自動開放し、分離時に自動閉止するよう構成されている。
【0050】
なお図示しないが、入口管8は具体的には、捕集容器7内に挿入される下流側のガラス管部分と、このガラス管部分に接続された上流側のチューブ部分を有する。第2部分39は、上流側のチューブ部分の上流側端部に取り付けられている。
【0051】
図5に、ワンタッチコネクタ37の好適な一例を示す。雌部材としての第1部分38は、送気管32に挿入接続される略円筒状の本体40と、本体40の内部に軸方向スライド可能に配置された弁体41と、弁体41を閉側に付勢する弁バネ42と、ロックバネ43Aによりロック方向aに付勢されるロック板43とを有する。
【0052】
雄部材としての第2部分39も同様に、入口管8に挿入接続される略円筒状の本体40Aと、本体40Aの内部に軸方向スライド可能に配置された弁体41Aと、弁体41Aを閉側に付勢する弁バネ42Aとを有する。また第2部分39は、接続時に第1部分38との隙間をシールするOリング44と、ロック板43が係合する係合溝46とを有する。
【0053】
第1部分38と第2部分39は、分離時に弁体41,41Aが閉となって閉止状態となる。一方、第1部分38と第2部分39は、接続と同時に弁体41,41A同士が押し合って開放し、弁体41,41Aの穴45,45Aが弁座の前後を連通する。これにより自動開放が達成される。接続と同時にロック板43が係合溝46に係合しロックが達成される。
【0054】
この接続状態からロック板43をロック方向aの反対方向、すなわち解除方向に押し、第1部分38と第2部分39を互いに引き抜くと、分離と同時に弁体41,41Aが閉まる。これにより自動閉止が達成される。
【0055】
特に、第1部分38と第2部分39が分離と同時に自動閉止するため、捕集器3の搬出等のために第1部分38と第2部分39を分離したときであっても、ウイルスの漏出を最小限に止めることができる。
【0056】
一方、図2に示すように、捕集器室4内には、捕集器3から排出された空気を送るための排気管50の上流側端部が配置されている。そして捕集器室4内において、排気管50の上流側端部と、捕集器3の出口管9の端部とは、前記同様のワンタッチコネクタ37により接続される。ワンタッチコネクタ37は、排気管50の上流側端部に取り付けられた第1部分38と、出口管9の端部に取り付けられた第2部分39とを有する。なお図示しないが、出口管9は具体的には、捕集容器7内に挿入される上流側のガラス管部分と、このガラス管部分に接続された下流側のチューブ部分を有する。第2部分39は、下流側のチューブ部分の下流側端部に取り付けられている。
【0057】
この出口側でも、第1部分38と第2部分39が分離と同時に自動閉止するため、捕集器3の搬出等のために第1部分38と第2部分39を分離したときであっても、ウイルスの漏出を最小限に止めることができる。
【0058】
ここで捕集器3は、その出口側に、ウイルス捕集後のサンプル空気をさらに清浄化するフィルタすなわちラインフィルタ51を備える。ラインフィルタ51は、本実施形態ではHEPAフィルタまたはこれに相当するフィルタにより構成されるが、それらに限定されない。ラインフィルタ51は、ワンタッチコネクタ37の第2部分39より上流側の出口管9に設けられている。
【0059】
サンプル空気中のウイルスが捕集液6により捕集されると、出口管9内の流れには基本的にはウイルスが存在しない。しかしながら、その流れに微量のウイルスが混入している可能性もある。そのため本実施形態では、その微量の残留ウイルスをラインフィルタ51により除去する。これにより捕集器3の下流側にウイルスが漏出するのを確実に防止することができる。また、捕集器3の下流側にある排気管50、バルブ57および吸引装置56等がウイルスで汚染されるのを抑制することができる。
【0060】
図1に示すように、排気管50は、捕集器室4の壁36を貫通して捕集器室4から配管室33に入る。そしてこの貫通箇所にもシール装置18が設けられる。
【0061】
また試験装置100は、捕集器室4内の空気を屋外に排気するための排気装置52を備える。そして排気装置52は、捕集器室4内の空気を屋外に排気する前に清浄化するフィルタ53を備える。
【0062】
より詳しくは、排気装置52は、捕集器室4を屋外に連通させる排気ダクト54と、排気ダクト54の入口部に設けられたフィルタ53と、フィルタ53の下流側に設けられ捕集器室4内の空気を吸引する吸引ファン55とを備える。本実施形態の場合、フィルタ53は高性能のHEPAフィルタにより構成されるが、これに限定されない。
【0063】
排気装置52を設けたことにより、捕集器室4を試験室Rより低圧の陰圧にすることができる。また図3に示すように、捕集器3の取り出し等のため蓋12を開けて開口部11を開放したとき、試験室Rから開口部11を通じて捕集器室4に入る空気流を生成できる。こうして捕集器室4と排気装置52は、囲い式局所排気装置を構成することとなり、捕集器3の取り出し等に際し捕集器室4を試験室Rに対し開放したときであっても、捕集器室4から試験室Rにウイルスが漏出するリスクを最小限に止めることができる。
【0064】
なお、開口部11の寸法と吸引ファン55の風量は、開口部11の開放時に最適な所定速度V(例えば0.5m/s)の空気流を生成できるような値であるのが好ましい。蓋12は着脱式であってもよいし、ヒンジによる回動式であってもよい。
【0065】
次に、捕集器3からの排気系統について説明する。図1に示すように、試験装置100は、捕集器3から空気(捕集液6によりウイルスが捕集された後のサンプル空気)を吸引するための吸引装置56と、捕集器3と吸引装置56の間に設けられたバルブ57とを備える。
【0066】
捕集器3と吸引装置56は、前述の排気管50により接続される。前述したように、排気管50の上流側端部は、捕集器室4内において、ワンタッチコネクタ37により捕集器3の出口管9の端部に接続されている。一方、排気管50は、捕集器室4の壁36を貫通して配管室33に入った後、配管室33の底壁35Aを貫通して配管室33から突出し、支持架台Bの中に設置された吸引装置56の入口に接続されている。底壁35Aの貫通箇所には前述のシール装置18が設けられている。
【0067】
吸引装置56は、本実施形態では真空ポンプにより構成されるが、これに限定されない。バルブ57は、単に開閉する電磁弁からなり、配管室33内において排気管50に取り付けられている。
【0068】
また、排気管50におけるバルブ57の下流側には、吸引装置56によって吸引される空気の流量を自動的に調整する捕集用瞬時流量調整器58が設けられている。捕集用瞬時流量調整器58は、配管室33外の支持架台Bの中に配置されている。
【0069】
吸引装置56の出口には、環流管59の上流側端部が接続されている。環流管59の下流側端部は、試験チャンバ1の壁17を貫通して試験チャンバ1内に延びる。この貫通箇所にも前述のシール装置18が設けられている。環流管59は、本実施形態ではテフロン製等の可撓性チューブにより構成されるが、これに限定されない。
【0070】
捕集器3にウイルスを捕集する際、吸引装置56が作動され、バルブ57が開弁される。すると捕集容器7内に負圧が発生し、この負圧により試験チャンバ1内の空気が送気管32と入口管8を通じて捕集容器7内に導入される。捕集容器7の捕集液6により空気中のウイルスが捕集される。そしてウイルス捕集後の空気は、出口管9と排気管50を通じて吸引装置56に導入され、環流管59を通じて試験チャンバ1内に環流される。
【0071】
このとき、捕集用瞬時流量調整器58は、噴霧用瞬時流量調整器15と同様に、吸引装置56に吸引される空気の流量を電気的かつ自動的に調整する。これにより圧力変動等の外乱があっても、設定値に等しい正確な流量の空気を吸引でき、試験精度を高めることができる。また、捕集用瞬時流量調整器58は、流量の瞬時値および積算値を測定および表示可能であり、1回の捕集当たりに吸引された空気の量を自動的に記録し保存する機能も有する。この点については後述する。
【0072】
図1に示すように、試験室R内には、試験員Pが操作可能なコンソール60が設置されている。コンソール60には、装置全体を制御する制御ユニット、入出力装置、監視モニター、記憶装置、その他の装置の運転に必要な電子機器が設けられている。
【0073】
次に、試験装置10をより詳細に説明する。図3図6および図7に示すように、試験装置100には複数の捕集器3が設けられている。本実施形態では、計10個の捕集器3が設けられ、前後方向に直列的に配列された5個の捕集器3が、左右方向に互いに離間された2つの捕集器室4(4L,4R)にそれぞれ並列的に配置されている。便宜上、各捕集器3に、図6に丸付き数字で示されるような1~10の番号を付す。
【0074】
送気管32と排気管50は捕集器3毎に計10本ずつ設けられる。各送気管32が試験チャンバ1の壁17を貫通する各貫通箇所と、各送気管32が配管室33の壁35を貫通する各貫通箇所と、各送気管32が捕集器室4の壁36を貫通する各貫通箇所とに、シール装置18が設けられている。
【0075】
左右の捕集器室4L,4R内において、各捕集器3が配置されたスペースを区分する仕切板61が設けられている。但し、この仕切板61は単にスペースを区分するだけであり、各スペース同士は互いに連通されている。
【0076】
排気ダクト54の上流側端部は二股に分岐され、この二股部分のそれぞれが左右の捕集器室4L,4Rに連通されている。吸引ファン55は、排気ダクト54の合流部分に設けられ、左右の捕集器室4L,4から同時に空気を吸引する。フィルタ53も排気ダクト54の合流部分に設けられ、合流後の空気を清浄化する。
【0077】
開口部11および蓋12は、左右の捕集器室4L,4Rにおける左右方向外側の面の壁62に設けられ、各捕集器スペース毎に設けられている。なお、図7は、前から2番目の捕集器スペースの蓋12のみが取り外され(あるいは開放され)、残りの捕集器スペースの蓋12が取り付けられた(あるいは閉止された)状態を示す。開口部11および蓋12がある捕集器室4L,4Rの面の壁62と蓋12は、内部の捕集器3が見易いよう、透明な樹脂板で作製されている。
【0078】
図1から理解されるように、各排気管50が捕集器室4の壁36を貫通する各貫通箇所にも、シール装置18が設けられている。配管室33内において、各排気管50にバルブ57が設けられ、各排気管50はバルブ57の下流側で合流接続される。そして合流後の1本の排気管50が、底壁35Aを貫通して吸引装置56に接続される。貫通箇所にシール装置18が設けられる。
【0079】
ここで、各排気管50の合流部にはリークチェック用バルブ63が設けられる。このリークチェック用バルブ63は、10個のバルブ57とその下流側のリークチェックを行うためのリークチェック装置64を構成する。
【0080】
次に、この試験装置100を用いた試験方法を説明する。
【0081】
まず、コンプレッサ13を作動させると共に電磁弁16を開弁し、噴霧器2に圧縮空気を供給し、噴霧器2から噴霧液を試験チャンバ1内に所定時間噴霧する。そして攪拌ファン27を作動させ、試験チャンバ1内の空気を攪拌する。なお試験中は吸気ダクト28と排気ダクト29を閉止し、外気との連通を遮断する。
【0082】
噴霧時、噴霧用瞬時流量調整器15により、圧縮空気の流量が設定値に等しくなるよう正確に調整される。これにより噴霧液の供給量が正確となり、試験精度を高めることができる。
【0083】
また、噴霧用瞬時流量調整器15は、1回の噴霧当たりに供給された圧縮空気の量を自動的に記録し保存する。これにより、圧縮空気の実際の供給量を後に把握することができ、試験精度の改善に資することができる。
【0084】
次に、空気清浄機Mの作動開始直前に、試験チャンバ1内の空気に含まれる浮遊ウイルスを捕集する。空気中の初期ウイルス濃度を把握するためである。
【0085】
このとき、吸引装置56が作動されると共に、1つの捕集器3(本実施形態では1番の捕集器3)に対応する1つのバルブ57が開弁され、試験チャンバ1内の空気が、対応する送気管32と入口管8を通じて捕集容器7内に導入される。そして捕集容器7内の捕集液6により空気中のウイルスが捕集される。ウイルス捕集後の空気は、出口管9、排気管50、吸引装置56および環流管59を順に通じて試験チャンバ1内に戻される。
【0086】
捕集時、捕集用瞬時流量調整器58により、吸引空気の流量が設定値に等しくなるよう正確に調整される。これにより圧力変動等の外乱があっても、設定値に等しい正確な流量の空気を吸引でき、試験精度を高めることができる。
【0087】
また、捕集用瞬時流量調整器58は、1回の捕集当たりに吸引された空気の量を自動的に記録し保存する。これにより、空気の実際の吸引量を後に把握することができ、試験精度の改善に資することができる。
【0088】
1回の捕集時には、所定時間(例えば2分)の間に所定量(例えば10L)の空気が吸引される。こうした吸引を正確に行えるよう、捕集用瞬時流量調整器58は吸引中にリアルタイムで空気流量を調整する。
【0089】
本実施形態では、1番の捕集器3(図6参照)から番号順に捕集を行う。よってこの最初の捕集は1番の捕集器3で行われ、1番の捕集器3に対応したバルブ57のみが開弁され、残りのバルブ57は閉とされる。リークチェック用バルブ63は、後述のリークチェックを行うとき以外常に閉である。
【0090】
次に、最初の捕集の完了直後、空気清浄機Mの作動が開始され、試験チャンバ1内の空気中のウイルスが空気清浄機Mにより徐々に除去される。
【0091】
この空気清浄機Mの作動を継続したまま、定期的にウイルスの捕集が実行される。すなわち、所定の時間間隔毎に、最初の捕集時と同様の方法で、2番、3番・・・の捕集器3といったように順番で、サンプル空気中のウイルスが捕集器3に捕集されていく。
【0092】
各回の捕集が終わると、各捕集器3が取り外され、別の検査場所に移送され、各捕集器3に捕集されたウイルスの量が測定される。このウイルス量の時間に対する減衰ないし減少の仕方に基づいて空気清浄機Mの性能が評価される。
【0093】
ある捕集器3を取り外す際、吸引ファン55を作動させ、捕集器室4を予め陰圧化させておく。そしてこの状態で、対応する捕集器室4の蓋12を開ける。すると、試験室Rから開口部11を通じて捕集器室4に入る空気流を生成でき、捕集器室4内のウイルスが試験室Rに漏出するリスクを最小限に止めることができる。
【0094】
次に試験員Pは、図5に示すように、入口側のワンタッチコネクタ37におけるロック板43を解除方向に押し、第1部分38と第2部分39を互いに引き抜く。この分離と同時に、第1部分38と第2部分39が即座かつ自動的に閉止状態となり、第1部分38と第2部分39からのウイルスの漏出を最小限に止めることができる。
【0095】
この後、万全を期すため、第1部分38と第2部分39には、図2図8および図9に示すような第1密栓38Aと第2密栓39Aがそれぞれ取り付けられる。
【0096】
本実施形態の場合、図9から理解されるように、第1密栓38Aは、第1部分38と対となる第2部分39のチューブ取付管39Bを単に塞いだものである。本実施形態では、チューブ取付管39Bに、一端を栓39Cで塞いだチューブ39Dの他端を取り付けている。
【0097】
この第1密栓38Aを第1部分38に接続することにより、第1部分38からのウイルス漏出をより確実に防止することができる。
【0098】
同様に、第2密栓39Aは、第2部分39と対となる第1部分38のチューブ取付管38Bを単に塞いだものである。本実施形態では、チューブ取付管38Bに、一端を栓38Cで塞いだチューブ38Dの他端を取り付けている。
【0099】
この第2密栓39Aを第2部分39に接続することにより、第2部分39からのウイルス漏出をより確実に防止することができる。
【0100】
なお、出口側のワンタッチコネクタ37についても同様の作業を行う。第1密栓38Aと第2密栓39Aは他の構成であってもよい。
【0101】
こうして、入口側と出口側のワンタッチコネクタ37を分離すると、捕集器3は送気管32および排気管50から分離され、搬出可能となる。よって試験員Pは、開口部11を通じて捕集器3を捕集器室4から取り出し、移送用の密閉容器に移し替える。そして蓋12により開口部11を閉じる。
【0102】
この後、次回に蓋12を開けるときまで、吸引ファン55が停止される。
【0103】
こうして次々と捕集工程が繰り返され、所定回数の捕集が終わったら試験が終了される。試験終了後、吸気ダクト28と排気ダクト29が開放され、試験チャンバ1内が外気により換気される。
【0104】
ところで、試験終了後、ラインフィルタ51の下流側では基本的にウイルスがない清浄な状態が保たれているものの、ラインフィルタ51の上流側、特に送気管32の内部には、ウイルスが残留している可能性がある。この残留ウイルスの影響を避けるため、送気管32は試験毎に交換される。この交換時に送気管32を取り外したとき、送気管32の内部の残留ウイルスが試験室R内に漏出する可能性がある。
【0105】
そこで本実施形態の試験装置100は、試験後に送気管32の内部を消毒するための消毒装置を備える。
【0106】
図10に示すように、消毒装置65は、送気管32の内部に消毒液66を流すように構成されている。具体的には、消毒装置65は、消毒液66を貯留する密閉された容器67と、容器67内に圧縮空気を送るポンプ68と、圧縮空気によって加圧された消毒液66を容器67から送気管32に送り出す送液管69とを備える。送液管69の下端部は容器67の底部付近に位置され消毒液66内に没入される。送液管69の上端部にはワンタッチコネクタ37の第2部分39が取り付けられ、この第2部分39が送気管32の第1部分38と接続される。これにより容器67内の消毒液66を送気管32の内部に送ることが可能となる。
【0107】
また消毒装置65は、送気管32の反対側の端部、すなわち試験チャンバ1内の上流側端部から排出された消毒液66を受け取る排液容器70を備える。
【0108】
消毒の際には、図10に示すように、1本の送気管32に送液管69を接続する。送液管69は、開口部11を通じて捕集器室4の室内から室外へと繰り出される。室外に容器67とポンプ68が配置されるので、試験員Pは試験室R内の広いスペースで作業を行える。ポンプ68は電動式であってもよいし、手動式であってもよい。
【0109】
ポンプ68を作動させると、圧縮空気が容器67内に供給され、これに押し出されて容器67内の消毒液66が送気管32内に供給される。消毒液66は、サンプル空気流れ方向と逆方向に送気管32内を流れ、送気管32から排出された後、排液容器70に受け入れられる。これにより送気管32内の逆洗が行われる。この例では、送気管32が1本ずつ順番に消毒される。
【0110】
消毒液66を供給する第1の方法は、消毒液66を予め定められた時間だけ供給する方法である。また第2の方法は、消毒に必要且つ十分な過不足の無い量の消毒液66を容器67内に予め貯留しておき、この貯留した消毒液66が無くなるまで消毒液66を供給する方法である。また第3の方法は、第2の方法に加え、貯留した消毒液66が無くなった後に連続して所定時間の間、圧縮空気を供給する方法である。
【0111】
第1の方法によれば、簡便な方法で消毒が行える。第2の方法によれば、丁度良い適量の消毒液66で効率よく消毒が行える。第3の方法によれば、消毒液66の供給後に送気管32内に残留した消毒液66を圧縮空気で吹き飛ばしてパージすることができ、その後の送気管32の交換作業を容易に行うことができる。
【0112】
なお、消毒液66は前記と逆に、サンプル空気の流れ方向と同方向に流してもよい。このとき、容器67等と排液容器70の配置は逆となる。送気管32の内部の消毒後、送気管32の外面部を消毒液66で拭き取りながら、袋状ナット25を予め緩めたシール装置18から送気管32を引き抜き、送気管32を密閉袋に回収する。
【0113】
次に、消毒装置65および消毒方法の変形例を説明する。
【0114】
図11に示す第1変形例では、消毒装置65が、2本の送気管32の端部同士を連結する連結管71を備える。この連結管71も、テフロン製等の可撓性チューブにより構成されるが、これに限定されない。
【0115】
連結管71は、試験チャンバ1内において2本の送気管32の上流側端部同士を連結する。図示例では、番号順で隣り合う2つの捕集器3、すなわち1番と2番の捕集器3に対応した1番と2番の送気管32の上流側端部同士を連結している。しかし、これに限定されない。
【0116】
この場合、1番の送気管32が往路側となり、2番の送気管32が復路側となる。1番の送気管32には図10に示した基本例と同様、容器67から延びる送液管69が接続される。他方、2番の送気管32の下流側端部には、排液管72がワンタッチコネクタ37により接続される。排液管72は、開口部11を通じて捕集器室4の室内から室外へと繰り出される。排液管72の出口の下方には排液容器70が配置される。
【0117】
この第1変形例では、ポンプ68を作動させて消毒液66を1番の送気管32に送ると、その上流側端部から出た消毒液66が連結管71を通じて2番の送気管32の上流側端部に入る。そして2番の送気管32を流れた後、排液管72を通じて排液容器70に排出される。
【0118】
よって、2本の送気管32を同時に消毒することが可能となり、消毒作業を効率よく行うことができる。
【0119】
次に、図12を参照して第2変形例を説明する。この第2変形例では、10本の送気管32が全て連結管71により連結される。
【0120】
すなわち、1番の送気管32の下流側端部から消毒液66を供給する点は前記同様である。本変形例では、1番および2番の送気管32の上流側端部同士と、3番および4番の送気管32の上流側端部同士と、5番および6番の送気管32の上流側端部同士と、7番および8番の送気管32の上流側端部同士と、9番および10番の送気管32の上流側端部同士とが、それぞれ連結管71により連結されている。
【0121】
また、2番および3番の送気管32の下流側端部同士と、4番および5番の送気管32の下流側端部同士と、6番および7番の送気管32の下流側側端部同士と、8番および9番の送気管32の下流側端部同士とが、それぞれ連結管71により連結されている。より詳しくは、各送気管32の下流側端部と連結管71は、前述の排液管72と同様の延長管73を介して接続されている。延長管73は開口部11を通じて捕集器室4の室内から室外へと繰り出され、その室外で延長管73の端部同士が連結管71により連結される。
【0122】
10番の送気管32の下流側端部には、第1変形例のときと同様、排液管72が接続され、排液管72の出口の下方に排液容器70が配置される。
【0123】
この第2変形例では、ポンプ68を作動させて消毒液66を1番の送気管32に送ると、その消毒液66が2番の送気管32、3番の送気管32といったように次々と順番に送気管32内を流れる。そして消毒液66は最終的に、10番の送気管32を流れ、その後、排液管72を通じて排液容器70に排出される。
【0124】
よって、全ての送気管32を同時に消毒することが可能となり、消毒作業を一層効率よく行うことができる。
【0125】
なお、第1変形例では2本の送気管32を連結し、第2変形例では10本全ての送気管32を連結したが、送気管32の連結本数は任意である。例えば、左右の捕集器室4L,4Rの一方に属する5つの捕集器3に対応した5本の送気管32を連結しても良い。この場合、左右の捕集器室4L,4R毎に消毒が行われる。
【0126】
次に、図1を参照してリークチェック装置64について説明する。
【0127】
試験を適正に行うためには、捕集器3からの吸引系統に漏れがないか否かを予めチェックしておくことが望ましい。そのため本実施形態ではリークチェック装置64が設けられる。このリークチェック装置64によりリークチェックを行う際には、10個のバルブ57とリークチェック用バルブ63を閉にし、吸引装置56を作動させて吸引を行う。
【0128】
この吸引中、捕集用瞬時流量調整器58のモニターを監視し、捕集用瞬時流量調整器58によって測定された吸引空気の流量がゼロになっているか否かを確認する。ゼロになっていれば、10個のバルブ57とその下流側(吸引装置56までの間)で、リークは生じていないと判断し、ゼロより大きければ、リークが生じていると判断する。
【0129】
この後、吸引装置56を停止して吸引を停止するが、このままだと10個のバルブ57と吸引装置56の間の経路で負圧が残ってしまう。よって吸引停止後にはリークチェック用バルブ63が短時間だけ開弁される。これにより当該経路に試験室R内の空気を導入し、負圧を解放することができる。
【0130】
以上述べたように、本実施形態の試験装置100では、捕集器室4が試験室Rから隔離されている。そのため、仮に捕集器室4内にウイルスが漏出したとしても、そのウイルスが試験室R内に漏出するのを確実に防止できる。そのため、本実施形態によれば、BSL3相当の病原微生物を取り扱うのに有利な試験装置100を提供することができる。
【0131】
以上、本開示の実施形態を詳細に述べたが、本開示の実施形態および変形例は他にも様々考えられる。
【0132】
(1)例えば、捕集器3の数は10個に限定されず、任意である。また捕集器室4の数も、2つに限定されず、任意である。
【0133】
(2)配管室33は、送気管32のみを収容してもよい。この場合も配管室33は試験室Rから隔離されるのが好ましい。
【0134】
前述の各実施形態および各変形例の構成は、特に矛盾が無い限り、部分的にまたは全体的に組み合わせることが可能である。本開示の実施形態は前述の実施形態のみに限らず、特許請求の範囲によって規定される本開示の思想に包含されるあらゆる変形例や応用例、均等物が本開示に含まれる。従って本開示は、限定的に解釈されるべきではなく、本開示の思想の範囲内に帰属する他の任意の技術にも適用することが可能である。
【符号の説明】
【0135】
1 試験チャンバ
2 噴霧器
3 捕集器
4 捕集器室
8 入口管
9 出口管
13 コンプレッサ
15 噴霧用瞬時流量調整器
17,36 壁
18 シール装置
32 送気管
37 ワンタッチコネクタ
38 第1部分
39 第2部分
50 排気管
51 ラインフィルタ
52 排気装置
53 フィルタ
56 吸引装置
57 バルブ
58 捕集用瞬時流量調整器
64 リークチェック装置
65 消毒装置
100 試験装置
M 空気清浄機
R 試験室
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12