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特開2023-165503アルミニウムフィン材、及び熱交換器
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023165503
(43)【公開日】2023-11-16
(54)【発明の名称】アルミニウムフィン材、及び熱交換器
(51)【国際特許分類】
   F28F 13/18 20060101AFI20231109BHJP
   F28F 21/08 20060101ALI20231109BHJP
【FI】
F28F13/18 A
F28F21/08 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022076590
(22)【出願日】2022-05-06
(71)【出願人】
【識別番号】000232542
【氏名又は名称】日本特殊塗料株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002505
【氏名又は名称】弁理士法人航栄事務所
(72)【発明者】
【氏名】加藤 歩並
(72)【発明者】
【氏名】山▲崎▼ 智也
(57)【要約】      (修正有)
【課題】防霜性に優れるアルミニウムフィン材、及び上記アルミニウムフィン材を含む熱交換器を提供すること。
【解決手段】アルミニウム基材と、アルミニウム基材の表面に設けられた多孔質膜と、多孔質膜の表面に設けられた撥水性膜と、撥水性膜の表面に設けられた潤滑オイル層とを含むアルミニウムフィン材、及び上記アルミニウムフィン材を含む熱交換器。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルミニウム基材と、
前記アルミニウム基材の表面に設けられた多孔質膜と、
前記多孔質膜の表面に設けられた撥水性膜と、
前記撥水性膜の表面に設けられた潤滑オイル層と、
を含む、アルミニウムフィン材。
【請求項2】
前記多孔質膜が陽極酸化皮膜である、請求項1に記載のアルミニウムフィン材。
【請求項3】
前記撥水性膜が含フッ素化合物を含む、請求項1に記載のアルミニウムフィン材。
【請求項4】
前記潤滑オイル層が含フッ素化合物を含む、請求項1に記載のアルミニウムフィン材。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1項に記載のアルミニウムフィン材を含む熱交換器。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アルミニウムフィン材、及び熱交換器に関する。
【背景技術】
【0002】
アルミニウムフィン材は熱交換器に用いられている。
たとえば、特許文献1には、アルミニウム板と、アルミニウム板の表面に形成された耐食性皮膜層と、耐食性皮膜層の表面に形成された親水性皮膜層とを備え、優れた親水性と防汚性とを発揮するアルミニウムフィン材が記載されている。
なお、特許文献2には、階層状のエッチングピット及びこのエッチングピット表面に存在するナノポアを有する酸化アルミニウム膜からなる階層構造のアルミニウム部材表面に酸化アルミニウム膜を有すると共に、該酸化アルミニウム膜はフッ素含有有機リン酸化合物の単分子層を有し、さらにこの単分子層の上にフッ素含有油の被覆層を有する、着雪抑制に用いるためのアルミニウム複合材により、架空送電線のアルミ線表面を難着雪性にすることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2021-116993号公報
【特許文献2】特開2019-85597号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ルームエアコン等の熱交換器用アルミニウムフィンは、1~2mm間隔で重ね合わせて設置されて、フィン間を流れる空気と熱交換を行う役割を担っている。また、フィン表面に付着した結露水がフィン間でブリッジを作り、目詰まりを起こすと、通風抵抗が大きくなり、熱交換効率が低下するため、目詰まりを防止する目的で、アルミニウムフィン表面は、一般に親水化処理が施されている。しかし、親水性の表面は、結露水が濡れ広がりやすいため、着霜しやすく、熱交換効率が低下するという問題がある。特に、冬季の熱交換器の稼働時における着霜は重大な課題となっており、防霜性に優れる(着霜を遅延させることができ、容易に除霜する)アルミニウムフィン材が求められる。
撥水性表面は、親水性表面と比較して着霜を遅延させる効果があるため、アルミニウムフィン表面の撥水性処理が着霜防止には有効であるが、凹凸構造により発現する撥水性表面は、結露水が表面にピン止めされやすいため、除霜運転後の水滴が落ちにくいなどの問題がある。
そこで、本発明は、撥水性でありながら、潤滑オイルに被覆された非常に平滑な滑水性表面を有し、着霜遅延効果と水滴除去性に優れるアルミニウムフィン材を提供する。
【0005】
本発明の課題は、防霜性に優れるアルミニウムフィン材、及び上記アルミニウムフィン材を含む熱交換器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、以下の構成により上記課題を解決できることを見出した。
【0007】
(1)
アルミニウム基材と、
前記アルミニウム基材の表面に設けられた多孔質膜と、
前記多孔質膜の表面に設けられた撥水性膜と、
前記撥水性膜の表面に設けられた潤滑オイル層と、
を含む、アルミニウムフィン材。
(2)
前記多孔質膜が陽極酸化皮膜である、(1)に記載のアルミニウムフィン材。
(3)
前記撥水性膜が含フッ素化合物を含む、(1)又は(2)に記載のアルミニウムフィン材。
(4)
前記潤滑オイル層が含フッ素化合物を含む、(1)~(3)のいずれか1つに記載のアルミニウムフィン材。
(5)
(1)~(4)のいずれか1つに記載のアルミニウムフィン材を含む熱交換器。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、防霜性に優れるアルミニウムフィン材、及び上記アルミニウムフィン材を含む熱交換器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明のアルミニウムフィン材の一例を表す模式図である。
図2】各試料の着霜除霜試験結果の写真である。
図3】各試料について着霜除霜試験を繰り返し行った結果の写真である。
図4】各試料表面に残存した水滴質量の計測を行った結果の写真である。
図5】各試料表面に残存した水滴の大きさを示す写真である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明について説明する。以下の実施形態における各構成及びそれらの組み合わせは例であり、本発明は実施形態によって限定されることはない。
本明細書において、「~」とはその前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む意味で使用される。
【0011】
[アルミニウムフィン材]
本発明のアルミニウムフィン材は、アルミニウム基材と、アルミニウム基材の表面に設けられた多孔質膜と、多孔質膜の表面に設けられた撥水性膜と、撥水性膜の表面に設けられた潤滑オイル層とを含むアルミニウムフィン材である。
本発明のアルミニウムフィン材の表面は、SLIPS(Slippery Liquid Infused Porous Surface)であることが好ましい。
本発明では、アルミニウムフィン材の表面を滑水化することで、防霜性を付与する。本発明のアルミニウムフィン材の表面は滑水性に優れているため、霜のもととなる水滴が付着しても落下しやすく、防霜性に優れている。
【0012】
図1に、本発明のアルミニウムフィン材の一例を表す模式図を示す。
図1のアルミニウムフィン材10は、アルミニウム基材1と、アルミニウム基材1の表面に設けられた多孔質膜2と、多孔質膜2の表面に設けられた撥水性膜3と、撥水性膜3の表面に設けられた潤滑オイル層4とを含む。
【0013】
(アルミニウム基材)
アルミニウム基材に用いられるアルミニウムは特に限定されないが、例えば、JIS H 4000:2014に規定されている1000系アルミニウムが挙げられ、具体的には合金番号1050、1070、1200のアルミニウムが好ましい。また、アルミニウム板製作工程において、調質焼鈍工程が施されたアルミニウムであることが最も好ましい。焼鈍を行ったアルミニウム板を使用した場合、撥水性膜形成後の撥水性(水接触角)は、150°以上にすることができる。これに対して、焼鈍を行っていないアルミニウム板では、水接触角が140°程度となる傾向がある。多孔質膜の多孔性は、撥水性膜形成後の表面の撥水性に大きく関与しており、焼鈍を行うことで、さらに優れた多孔性を付与できると考えられる。焼鈍を行ったアルミニウム板の陽極酸化処理表面をオイル保持層として使用した場合、潤滑オイルの保持力が非常に高くなるため、SLIPSの性能が十分に発揮される。
アルミニウム基材は、アルミニウムを含む合金からなるものであってもよいが、アルミニウムを90質量%以上含むことが好ましい。
アルミニウム基材の厚さは特に限定されないが、例えば、0.05mm以上1mm以下であってもよい。
【0014】
(多孔質膜)
アルミニウム基材の表面に設けられた多孔質膜は、アルミニウム基材と直接接していることが好ましい。
本発明では、アルミニウム基材自体の表面を多孔質にすることで多孔質膜を形成することが好ましく、例えば、アルミニウム基材の表面を化学的又は物理的に粗面化処理してなるものであることが好ましく、陽極酸化処理又はエッチング処理することにより形成されたものであることがより好ましく、陽極酸化処理することにより形成された陽極酸化皮膜(酸化アルミニウム膜)であることが最も好ましい。陽極酸化処理は公知の方法により行うことができる。
多孔質膜の厚さは特に限定されないが、例えば、0.1μm以上100μm以下であってもよい。
多孔質膜に含まれる孔のサイズは特に限定されないが、例えば、1nm以上200nm以下であってもよい。
【0015】
(撥水性膜)
多孔質膜の表面に設けられた撥水性膜は、多孔質膜と直接接していることが好ましい。
撥水性膜は、撥水性を示す化合物(好ましくは含フッ素化合物)により、多孔質膜を処理することで得ることができる。撥水性膜は、具体的には、含フッ素化合物を含む溶液に多孔質膜を含むアルミニウム基材を浸漬したり、含フッ素化合物を含む溶液を多孔質膜上に塗布(例えば、スピンコート)したり、含フッ素化合物を多孔質膜上に蒸着したりすることで得ることができる。このように多孔質膜を撥水処理することで、潤滑オイル層との親和性を高めることができ、潤滑オイル層を保持することができる。
撥水性膜は、含フッ素化合物を含むことが好ましい。含フッ素化合物としては、例えば、含フッ素有機リン酸化合物やフッ素系シランカップリング剤などが挙げられる。含フッ素有機リン酸化合物としては、FPE-50(AGCセイミケミカル株式会社)などが挙げられる。フッ素系シランカップリング剤としては、トリエトキシ-1H,1H,2H,2H-ヘプタデカフルオロデシルシラン(Triethoxy-1H,1H,2H,2H-heptadecafluorodecylsilane)などが挙げられる。
撥水性膜の厚さとしては含フッ素化合物による単分子膜レベルであることが好ましい。過剰に含フッ素化合物が吸着した場合、多孔質膜を消失させる可能性があるため、撥水処理後に適切な溶剤により表面を洗浄することで過剰量を除去することが好ましい。
【0016】
(潤滑オイル層)
撥水性膜の表面に設けられた潤滑オイル層は、撥水性膜と直接接していることが好ましい。前述したように、潤滑オイル層は、撥水処理された(表面に撥水性膜が設けられた)多孔質膜上に、保持されていることが好ましい。潤滑オイル層は、具体的には、潤滑オイルに撥水性膜が形成された多孔質膜を含むアルミニウム基材を浸漬したり、潤滑オイルを撥水性膜上に塗布したりすることで得ることができる。
潤滑オイル層は、含フッ素化合物を含むことが好ましい。含フッ素化合物としては、例えば、パーフルオロポリエーテル、フルオロアルキルアミンなどが挙げられる。例えば、GPLオイル101(Krytox)などが使用可能である。
潤滑オイル層は、紫外線吸収剤、酸化防止剤等の添加剤を含むこともできる。
潤滑オイル層の含有量(保持量)は、特に限定されないが、例えば、本発明のアルミニウムフィン材の単位面積当たりの質量として、0.1~10mg/cmであってもよい。
【0017】
SLIPSの滑水性能は、表層に保持されている潤滑オイルの流動性によって発現しているため、低温環境下でも流動性を有するオイルを使用することが好ましい。一般に潤滑オイルとして使用されているオイルの種類は多く存在するが、その中でもフッ素系のオイルは極低温に至る幅広い温度領域で流動性を示すため、フッ素系潤滑油が好ましい。フッ素系潤滑油としては、例えば、パーフルオロポリエーテル、フルオロアルキルアミンなどが挙げられる。また、着霜面温度が潤滑オイルの流動温度以上の場合であっても、オイルの粘性は温度が低下するほど増大するため、流動温度は低いほど適している。例えば、GPLオイルシリーズ(Krytox)においては、100、101>102>103>104>105、106>107の順に好ましいと言える。
【0018】
[熱交換器]
本発明の熱交換器は、前述のアルミニウムフィン材を含む。
本発明の熱交換器は、前述のアルミニウムフィン材に加えて、熱交換器に含まれる部品として公知の部品(例えば、伝熱管など)を含むことができる。
【実施例0019】
以下に実施例に基づいて本発明を更に詳細に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、及び処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更できる。
【0020】
<実施例1>
アルミニウム基材として、JIS H 4000:2014に規定されているA1050であって、調質焼鈍工程が施された、厚み0.5mmのアルミニウム板を使用した。
上記アルミニウム板に対して、0.3mol/L硫酸水溶液中で、22Vで35分間、陽極酸化処理を行い、その後、希クロメート溶液中で封孔処理することにより、アルミニウム基材の表面に陽極酸化皮膜からなる多孔質膜を形成した。多孔質膜は、約100nmのサイズの孔を多数有していた。
次に、多孔質膜を有するアルミニウム基材を、簡易オートクレーブ内にトリエトキシ-1H,1H,2H,2H-ヘプタデカフルオロデシルシラン(Triethoxy-1H,1H,2H,2H-heptadecafluorodecylsilane)とともに入れ、80℃で約16時間蒸着させることで、多孔質膜上に撥水性膜を形成した。
更に、上記撥水性膜に、潤滑オイルであるGPLオイル101を塗布することで、潤滑オイル層を保持させ、過剰量のオイルはエアスプレーで除去し、SLIPS表面を形成した。潤滑オイルの保持量は約0.8mg/cmであった。
このようにして、実施例1の試料を作製した。
【0021】
<比較例1>
厚み0.5mmのA1050アルミニウム基材を比較例1として使用した。
【0022】
(水接触角の測定)
自動接触角計DMS-601(協和界面科学株式会社)を使用し、作製した試料表面の水接触角測定を実施した。測定時の水滴量は2μLとした。
【0023】
(滑落角の測定)
水接触角の測定と同様の装置を使用し、10μLの水滴に対する滑落角を測定した。
試料面を水平な状態から徐々に傾斜させ、水滴が滑落し始めるときの傾斜角を滑落角とし、試料面を垂直まで傾斜させた際、水滴が計測カメラ内に残留している場合、滑落角の結果は「×」とした。
【0024】
結果を下記表1に示す。
【0025】
【表1】
【0026】
(着霜・除霜試験)
恒湿恒温槽内に、実施例1及び比較例1の試料を、垂直に設置した冷却装置表面に固定した。また、各試料は3×6cmの大きさのものを使用した。恒湿恒温槽内は、10℃、相対湿度80%RHに設定した。
あらかじめ25℃に設定した冷却装置に各試料を設置した後、冷却装置で各試料の表面を-10℃にし、20分間、試料表面の温度を-10℃に保った。ここで、試料表面を目視で観察し、着霜を評価したところ、試料が全面着霜までの時間において、実施例1は約15分、比較例1は約7分であった。
さらに、実施例1では、結露水が表面上で滑落する様子が観察された。
続いて、試料表面の温度を-10℃から1℃まで、2℃/分の速度で上昇させ、3分間、試料表面の温度を1℃に保った。ここで、試料表面を目視で観察し、除霜を評価したところ、実施例1では比較的大きな水滴は滑落により表面上から除去されたのに対し、比較例1では大部分の水滴が表面に残留する結果であった。図2に実施例1及び比較例1の着霜除霜試験結果の写真を示す。各写真はそれぞれの温度及び時間におけるものである。各写真において左側が実施例1の試料であり、右側が比較例1の試料である。
【0027】
(耐久性試験)
実施例1の耐久性を確認するため、着霜・除霜試験を繰り返し行った。前述の試験直後の試料に対して、引き続き試料表面の温度を-10℃に冷却し、20分間、試料表面の温度を-10℃に保った。ここで、試料表面を目視で観察し、着霜を評価したところ、試料が全面着霜するまでの時間において、実施例1は約13分、比較例1は約4分であり、着霜までの時間の差がさらに広がる結果となった。これは、比較例1では、除霜後に表面に付着している水滴量が実施例1と比較して多いため、着霜までの時間が大幅に促進されたと考えられる。一方、実施例1では、除霜段階で、大部分の水滴が除去されるため、着霜までの時間の促進が顕著ではなかったと考えられる。したがって、繰り返し着霜・除霜試験を行った場合には、本発明の滑水表面(SLIPS)としたアルミニウムフィン材の着霜遅延効果が、さらに発揮されることが分かった。
続いて、上記と同様の方法で試料表面の温度を-10℃から1℃まで上昇させたところ、1回目の除霜試験と同様に、比較例1では大部分の水滴が表面に残留したのに対し、実施例1で大部分の水滴が滑落により除去された。
さらに、5回まで着霜・除霜を繰り返したところ、5回目の除霜後も1回目と同程度に水滴の滑落する様子が実施例1で確認された。図3に実施例1及び比較例1について着霜除霜試験を繰り返し行った結果の写真を示す。また、試験後の表面の滑落角を測定したところ、1~5°と試験前と同程度の滑水性を示したことより、着霜・除霜の繰り返しによる耐久性を有することが分かった。
【0028】
(付着水滴質量測定)
各試料表面上に残留する水滴質量を測定するため、実施例1及び比較例1の試料を各3枚ずつ使用し、上記と同様の方法で各試料表面上に十分着霜をさせた後、除霜を行った。残存した水滴質量は、実施例1では平均0.033gであったのに対し、比較例1では平均0.114gであり、実施例1で残留水滴量は約7割減少する結果となった。図4に試料表面に残存した水滴質量の計測に用いた各試料の写真を示す。
さらに、各試料表面に残存する水滴の高さを評価した。試料表面に付着した水滴の高さは目視で計測することが困難であったため、付着している水滴の半径と各試料表面の水接触角から以下の式より算出した。
【0029】
【数1】
【0030】
ここで、hは水滴の高さ、rは水滴の半径、θは試料表面の水滴接触角である。図5に各試料表面に残存した水滴の大きさを表す写真を示す。実施例1に付着した水滴の直径は、最大で約1.5mm、高さは約1.1mmであった。一方、比較例1に付着した水滴の直径は、最大で約4.0mm、高さは約2.1mmであり、アルミニウム表面を滑水化処理することにより、表面に付着する水滴の大きさは半減することが分かった。したがって、本発明の滑水表面(SLIPS)としたアルミニウムフィン材は、フィンピッチが2mmの熱交換器に設置された際には、水滴付着によるフィン間の目詰まりを防ぎ、通風抵抗の低下を抑制する効果が見込める。さらに、本発明のアルミニウムフィン材は、撥水性に優れるため、錆の要因となる付着水を排除しやすいため、防錆効果も期待できる。
【0031】
以上より、実施例1の試料は防霜性に優れることが分かった。したがって、本発明のアルミニウムフィン材は防霜性に優れ、熱交換器に適用した際に、着霜を遅延させることができ、かつ容易に除霜できると言える。
【符号の説明】
【0032】
1 アルミニウム基材
2 多孔質膜
3 撥水性膜
4 潤滑オイル層
10 アルミニウムフィン材


図1
図2
図3
図4
図5