(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023165512
(43)【公開日】2023-11-16
(54)【発明の名称】定着装置
(51)【国際特許分類】
G03G 15/20 20060101AFI20231109BHJP
【FI】
G03G15/20 555
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022076611
(22)【出願日】2022-05-06
(71)【出願人】
【識別番号】000003562
【氏名又は名称】東芝テック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165261
【弁理士】
【氏名又は名称】登原 究
(74)【代理人】
【識別番号】100194076
【弁理士】
【氏名又は名称】中本 篤志
(72)【発明者】
【氏名】佐伯 諒太
【テーマコード(参考)】
2H033
【Fターム(参考)】
2H033BA25
2H033BA26
2H033BA27
2H033BA31
2H033BA32
2H033BB03
2H033BB05
2H033BB06
2H033BB13
2H033BB14
2H033BB15
2H033BB18
2H033BB21
2H033BB22
2H033BB29
2H033BB30
2H033BB37
2H033BE03
(57)【要約】 (修正有)
【課題】面状ヒータの長辺を、定着ベルトの幅と対応する範囲内で一直線にできない場合、一直線にできない箇所付近で面状ヒータの長辺方向における温度の特異点が生じる。特異点の温度に基づいてしまうと適切な定着装置の温度制御ができない場合がある。温度の特異点の影響を避け、適切な温度制御を行うことが可能な定着装置を提供する。
【解決手段】定着装置に、筒状体と;筒状体の軸方向を長手とし、軸方向における筒状体の幅の範囲内において、軸方向に対して直交する断面の形状が、第1の形状である第1範囲と、第1の形状と異なる第2の形状であり軸方向において第1範囲よりも狭い第2範囲とを有する基板と、この基板に担持される発熱体と、を有し、筒状体を加熱するヒータユニットと;筒状体の、軸方向において第2範囲を避けた位置で筒状体の温度を測る感温素子と;を備える。
【選択図】
図13
【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状体と;
前記筒状体の軸方向を長手とし、前記軸方向における前記筒状体の幅の範囲内において、前記軸方向に対して直交する断面の形状が、第1の形状である第1範囲と、前記第1の形状と異なる第2の形状であり前記軸方向において前記第1範囲よりも狭い第2範囲とを有する基板と、この基板に担持される発熱体と、を有し、前記筒状体を加熱するヒータユニットと;
前記筒状体の、前記軸方向において前記第2範囲を避けた位置で前記筒状体の温度を測る感温素子と;
を備える定着装置。
【請求項2】
筒状体と;
前記筒状体の軸方向を長手とし、前記軸方向における前記筒状体の幅の範囲内において、前記軸方向に対して直交する断面の形状が、第1の形状である第1範囲と、前記第1の形状と異なる第2の形状であり前記軸方向において前記第1範囲よりも狭い第2範囲とを有する基板と、この基板に担持される発熱体と、を有し、前記筒状体を加熱するヒータユニットと;
前記筒状体の、前記軸方向において前記第2範囲を避けた位置で前記ヒータユニットの温度を測る感温素子と;
を備える定着装置。
【請求項3】
筒状体と;
前記筒状体の軸方向を長手とし、前記軸方向における前記筒状体の幅の範囲内において、前記軸方向に対して直交する断面の形状が、第1の形状である第1範囲と、前記第1の形状と異なる第2の形状であり前記軸方向において前記第1範囲よりも狭い第2範囲とを有する基板と、この基板に担持される発熱体と、を有し、前記筒状体を加熱するヒータユニットと;
前記ヒータユニットと当接する伝熱部材と;
前記筒状体の、前記軸方向において前記第2範囲を避けた位置で前記伝熱部材の温度を測る感温素子と;
を備える定着装置。
【請求項4】
ヒータユニットは、前記筒状体の内側にあり、前記筒状体に接触する、請求項1乃至3のいずれか1項に記載の定着装置。
【請求項5】
前記ヒータユニットは、前記長手の方向に長辺を有し、前記長辺に設けられた凹部によって前記第2の形状が前記第1形状と異なる、請求項1乃至3のいずれか1項に記載の定着装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、定着装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自宅やオフィス等のワークプレイスにある画像形成装置は、定着器を備えるものがある。
定着器は、トナー像が形成されたた用紙に当接する定着ベルトと、この定着ベルトを加熱する面状ヒータを備えるものがある。
定着器は、面状ヒータを支持するヒータホルダを有する。
ヒータホルダは、面状ヒータを、面状ヒータの長手方向が、用紙搬送方向と直交する方向に合うよう支持する。
面状ヒータが有する基板に、面状ヒータの温度を制御するための感温素子(サーミスタ等)を当接する構成が一般的である。
感温素子と基板との間に銅やグラファイトなどの高熱伝導率の部材がある構成もある。
【0003】
面状ヒータが定着ベルトの内周面に直接に摺接する構成もある。
面状ヒータと定着ベルトの内周面との間に、金属の保護部材を挟む構成もある。
どちらの構成であっても、定着ベルトあるいは保護部材への熱伝達の均一性を確保するために、
面状ヒータの、用紙搬送方向における上流側と下流側との両長辺は、少なくとも、用紙搬送方向と直交する方向における定着ベルトの長さ(すなわち定着ベルトの幅)の範囲内では、直線状であることが好ましい。
【0004】
しかしながら、諸般の理由から、面状ヒータの長辺を、定着ベルトの幅と対応する範囲内で一直線にできない場合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2020-052347号公報
【特許文献2】特開2000-010435号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
面状ヒータの長辺を、定着ベルトの幅と対応する範囲内で一直線にできない場合、一直線にできない箇所付近で面状ヒータの長辺方向における温度の特異点が生じる。特異点の温度に基づいてしまうと適切な定着装置の温度制御ができない場合がある。本発明が解決しようとする課題は、温度の特異点の影響を避け、適切な定着装置の温度制御を行うことである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
一実施形態に係る定着装置は、筒状体と;筒状体の軸方向を長手とし、軸方向における筒状体の幅の範囲内において、軸方向に対して直交する断面の形状が、第1の形状である第1範囲と、第1の形状と異なる第2の形状であり軸方向において第1範囲よりも狭い第2範囲とを有する基板と、この基板に担持される発熱体と、を有し、筒状体を加熱するヒータユニットと;筒状体の、軸方向において第2範囲を避けた位置で筒状体の温度を測る感温素子と;を備える。
一実施形態に係る定着装置は、筒状体と;筒状体の軸方向を長手とし、軸方向における筒状体の幅の範囲内において、軸方向に対して直交する断面の形状が、第1の形状である第1範囲と、第1の形状と異なる第2の形状であり軸方向において第1範囲よりも狭い第2範囲とを有する基板と、この基板に担持される発熱体と、を有し、筒状体を加熱するヒータユニットと;筒状体の、軸方向において第2範囲を避けた位置でヒータユニットの温度を測る感温素子と;を備える。
一実施形態に係る定着装置は、筒状体と;筒状体の軸方向を長手とし、軸方向における筒状体の幅の範囲内において、軸方向に対して直交する断面の形状が、第1の形状である第1範囲と、第1の形状と異なる第2の形状であり軸方向において第1範囲よりも狭い第2範囲とを有する基板と、この基板に担持される発熱体と、を有し、筒状体を加熱するヒータユニットと;ヒータユニットと当接する伝熱部材と;筒状体の、軸方向において第2範囲を避けた位置で伝熱部材の温度を測る感温素子と;を備える。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図2】第1の実施形態の定着装置を+Y方向から見た断面図。
【
図4】
図3のIII-III線における面状ヒータの断面図。
【
図5】面状ヒータが発熱した場合の温度分布を示す図。
【
図7】基板の長辺の凹部のバリエーションを示す図。
【
図8】基板の長辺の凹部のバリエーションを示す図。
【
図9】基板の長辺の凹部のバリエーションを示す図。
【
図10】基板の長辺の凹部のバリエーションを示す図。
【
図11】基板の長辺の凹部のバリエーションを示す図。
【
図13】ホルダに嵌めた面状ヒータを+z方向から見た図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、第1の実施形態の定着装置を、図面を参照して説明する。
図1は、画像形成装置の概略構成図である。
画像形成装置1は、シートSに画像を形成する処理を行う。シートSは紙でもよい。画像形成装置1は、ハウジング10と、スキャナ部2と、画像形成ユニット3と、シート供給部4と、搬送部5と、反転ユニット9と、トレイ7と、コントロールパネル8と、制御部6と、定着装置30と、を有する。
【0010】
ハウジング10は、画像形成装置1の外形を形成する。
スキャナ部2は、複写対象物の画像情報を光の明暗として読み取り、画像信号を生成する。スキャナ部2は、生成した画像信号を画像形成ユニット3に出力する。
画像形成ユニット3は、スキャナ部2または外部からの画像信号に基づいて、トナー像を形成する。トナー像はトナーあるいは他の材料で形成された像である。画像形成ユニット3は、トナー像をシートSの表面上に転写する。画像形成ユニット3は、シートSの表面上のトナー像を加熱および加圧して、トナー像をシートSに定着させる。
【0011】
シート供給部4は、画像形成ユニット3がトナー像を形成するタイミングに合わせて、シートSを1枚ずつ搬送部5に供給する。シート供給部4は、シート収容部20と、ピックアップローラ21と、を有する。
シート収容部20は、所定のサイズおよび種類のシートSを収納する。
ピックアップローラ21は、シート収容部20からシートSを1枚ずつ取り出す。ピックアップローラ21は、取り出したシートSを搬送部5へ供給する。
【0012】
搬送部5は、シート供給部4から供給されるシートSを画像形成ユニット3に搬送する。搬送部5は、搬送ローラ23と、レジストローラ24と、を有する。
搬送ローラ23は、ピックアップローラ21から供給されるシートSをレジストローラ24へ搬送する。搬送ローラ23は、シートSの搬送方向の先端をレジストローラ24のニップRNに突き当てる。
レジストローラ24は、ニップRNにおいてシートSを撓ませることにより、搬送方向でのシートSの先端の位置を整える。レジストローラ24は、画像形成ユニット3がトナー像をシートSに転写するタイミングに応じてシートSを搬送する。
【0013】
図2は、定着装置の正面断面図である。定着装置30は、加圧ローラ31と、加熱ローラ34と、を有する。加圧ローラ31と加熱ローラ34との間にはニップNが形成される。
本願において、z方向、x方向およびy方向が以下のように定義される。
z方向は、面状ヒータ40の厚さ方向であり、加熱ローラ34と加圧ローラ31とが並ぶ方向である。z方向において、加熱ローラ34から加圧ローラ31に向かう方向を正の向きとする。
x方向は、面状ヒータ40の短手方向であり、ニップNにおけるシートSの搬送方向である。x方向において、シートSの搬送方向の下流側を正の向きとする。
y方向は、面状ヒータ40の長手方向であり、加熱ローラ34の定着ベルト35の軸方向である。
【0014】
加圧ローラ31は、ニップNに進入したシートSのトナー像を加圧する。加圧ローラ31は、芯金32と、弾性層33と、を有する。
芯金32は、ステンレス等の金属材料により円柱状に形成される。
弾性層33は、シリコーンゴム等の弾性材料で形成される。弾性層33は、芯金32の外周面上に一定の厚さを有する。
PFA(テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体)などの樹脂材料の離型層が、弾性層33の外周面上にあってもよい。
【0015】
加圧ローラ31は、モータにより駆動されて回転する。ニップNが形成された状態で加圧ローラ31が回転すると、加熱ローラ34の定着ベルト35が従動回転する。加圧ローラ31は、ニップNにシートSがある状態で回転することにより、シートSを搬送方向Wに搬送する。
【0016】
加熱ローラ34は、ニップNに進入したシートSのトナー像を加熱する。加熱ローラ34は、定着ベルト35と、面状ヒータ40と、伝熱部材48と、ホルダ50と、フレーム36と、感温素子371、372、381、382、391、392、393と、を有する。
【0017】
定着ベルト35は、筒状である。定着ベルト35は、内周側から順に、基層と、弾性層と、離型層と、を有する。基層は、低熱容量化を図るためポリイミド(PI)等の樹脂材料により形成される。弾性層は、シリコーンゴム等の弾性材料で形成される。離型層は、PFA樹脂などの材料で形成される。
【0018】
面状ヒータ40は、定着ベルト35の内側にある。面状ヒータ40の+z方向の表面は、グリースを介して定着ベルト35の内面に接触する。
図3は、面状ヒータを+z方向から見た図である。
図4は、
図3のIII-III線における面状ヒータの断面図である。面状ヒータ40は、基板41と、発熱体45と、配線46と、を有する。
【0019】
基板41は、ステンレス等の金属材料や窒化アルミニウム等のセラミック材料などで形成される。
図3に示されるように、基板41は、長細い長方形の板状である。基板41は、定着ベルト35の軸方向を長手方向とする。
図4に示されるように、
基板41の+z方向の表面に、ガラス材料等により絶縁層42が形成される。
基板41の-z方向の表面に、絶縁層47が形成される。
【0020】
発熱体45は、銀・パラジウム合金等により形成される。発熱体45は、通電されることにより発熱する。発熱体45は配線46に繋がっている。配線46は共通電極461、中央電極462、端部電極463を有する。発熱体45および配線46は、基板41の+z方向の表面に絶縁層42を介して配置される。配線46の共通電極461や中央電極462や端部電極463を除く部分や、発熱体45を、覆うようにガラス材料等により保護層43が形成される。
【0021】
図3に示されるように、発熱体45は、中央部発熱体451と、一対の端部発熱体452,453と、を有する。
端部発熱体452は、中央部発熱体451の+y側にある。
端部発熱体453は、中央部発熱体451の-y側にある。
中央部発熱体451と、一対の端部発熱体452,453とは、相互に独立して発熱を制御される。一対の端部発熱体452,453は互いに、同様に発熱を制御される。中央部発熱体451は、共通電極461と中央電極462との間に通電されることにより発熱する。一対の端部発熱体452,453は、共通電極461と端部電極463との間に通電されることにより発熱する。
【0022】
図2に示される伝熱部材48は、銅などの金属やグラファイトなどの熱伝導率の高い材料により形成される。
伝熱部材48の外形は、面状ヒータ40の基板41と同等である。伝熱部材48は、面状ヒータ40の-z方向の面に接触する。
【0023】
ホルダ50は、液晶ポリマーなどの樹脂材料により形成される。
ホルダ50は、面状ヒータ40のx方向の両側および-z方向の面を覆う。
ホルダ50は、面状ヒータ40の-z方向において、伝熱部材48を介して面状ヒータ40を支持する。
ホルダ50は、面状ヒータ40のx方向の両端部において、定着ベルト35の内周面を支持する。
【0024】
ホルダ50は、上流側リブ51と、下流側リブ52と、を有する。
上流側リブ51は、定着ベルト35の回転方向の上流側に伸びる。
下流側リブ52は、定着ベルト35の回転方向の下流側に伸びる。
上流側リブ51と下流側リブ52は、定着ベルト35の内面に当接可能である。
上流側リブ51と下流側リブ52は、定着ベルト35を所定の形状に保持する。
上流側リブ51と下流側リブ52は、y方向を厚さ方向とする板状である。
複数の上流側リブ51および複数の下流側リブ52がy方向に並ぶ。
上流側リブ51および下流側リブ52は、y方向において異なる位置にあってもよい。これにより、定着装置30の温度ムラが抑制される。
【0025】
フレーム36は、鋼板材料等により形成される。
フレーム36は、定着ベルト35の内側にある。
フレーム36は、ホルダ50の-z方向の面に装着される。
フレーム36はy方向に伸びる。
フレーム36のy方向の両端部は、画像形成装置1のハウジング10に固定される。
フレーム36は、ホルダ50および伝熱部材48を介して、面状ヒータ40を支持する。
【0026】
感温素子371、372は例えばサーミスタである。感温素子381、382は例えばサーモスタットである。感温素子391、392、393は例えばサーミスタである。
感温素子371、372は、伝熱部材48を挟んで面状ヒータ40の-z側にある。
感温素子371、372は、伝熱部材48を介して面状ヒータ40の温度を計測する。
感温素子381、382は、伝熱部材48を介して検知した面状ヒータ40の温度が所定温度を超えた場合に、発熱体45への通電を遮断する。
感温素子391、392、393は、定着ベルト35の内周面に接触して、定着ベルト35の温度を計測する。
なお、伝熱部材48の-z方向の面と感温素子371、372、381、382との間には電気的絶縁性を確保するために、電気的絶縁性を確保するためのコーティング層が設けられたり、ポリイミドなどの電気的絶縁性シートが配置されてもよい。本実施の形態では伝熱部材48の-z方向の面の電気的絶縁性のコーティング層やシートも含めて伝熱部材48と称して扱う。
【0027】
基板41の-x側の長辺481は、定着ベルト35の内周面と対応する範囲ではほぼ一直線だが、1か所だけ+x方向に凹んだ、凹部4811を有する。
基板41の+x側の長辺482は、定着ベルト35の内周面と対応する範囲ではほぼ一直線だが、1か所だけ-x方向に凹んだ、凹部4821を有する。
y方向において凹部4811と凹部4821とは互いに同じ位置にある。
y方向において凹部4811と凹部4821とは中央部発熱体451と重なる位置にある。
【0028】
凹部4811と凹部4821とは例えば、面状ヒータ40の製造工程において、面状ヒータ40を固定するためのクリップやストラップなどの工具を当接させるためにある、凹部4811と凹部4821に工具を当接させることによって、面状ヒータ40を安定的かつ確実に固定することができると共に、凹部4811と凹部4821以外の基板41の長辺481、482を傷めずに済む。
凹部4811と凹部4821とは例えば、基板41の製造工程において、隣り合わせで並べられた他の基板41との間に工具を挿入するために、他の基板41とのクリアランスを拡大するために設けられたものである場合もある。
凹部4811と凹部4821とは例えば、基板41を鋳造や射出成型で製造する場合の、ランナーを設定する場所であって、ランナーを切り離したあとに残るいわゆるバリを基板41の長辺481、482に突出させないようにするためのものである。
凹部4811と凹部4821とは例えば、基板41をプレス加工で製造する場合に生じる可能性があるバリを基板41の長辺481、482に突出させないようにするためのものである。
以上のように、製造工程における都合から、面状ヒータ40の基板41の長辺481、482を、定着ベルト35の幅と対応する範囲内で一直線にできず、凹部4811や凹部4821が設けられる場合がある。
【0029】
図5は、凹部4811や凹部4821を有する面状ヒータ40が通電されることにより発熱した場合の、y方向における温度分布を示す。
図3における
端部発熱体452の+y側の端の位置Lpf、
端部発熱体452と中央部発熱体451との間の位置Lpg2、
中央部発熱体451と重なり凹部4811や凹部4821の中央である位置Lpm、
端部発熱体453と中央部発熱体451との間の位置Lpg3、
端部発熱体453の-y側の端の位置Lpr、
がそれぞれ
図5の同符号の位置と対応する。
端部発熱体452の+y側の端の位置Lpfや端部発熱体453の-y側の端の位置Lprでは外側に向かって温度の落ち込みが生じる。
発熱体同士の間の位置でも温度の落ち込みが生じる。
さらに、凹部4811や凹部4821が設けられたため基板41のXZ断面の断面積が減少した位置Lpmでは、凹部4811や凹部4821のy方向端部付近で温度が落ち込み、凹部4811や凹部4821のy方向中央では逆に温度が高くなる。
【0030】
図6は、面状ヒータ40を-z方向から見た図である。
位置Lpg2や位置Lpg3や、位置Lpm周辺など、中央部発熱体451や端部発熱体452や端部発熱体453それぞれの、通電されることにより発熱した場合に温度分布が平坦にならず、局所的に高くなったり低くなったりする部分を避けた位置に感温素子371、372、感温素子381、382がある。
具体的には、
感温素子371は、y方向において中央部発熱体451の範囲のうち端部発熱体452に近い位置で、伝熱部材48に当接する。
感温素子372は、y方向において端部発熱体452の範囲のうち中央部発熱体451に近い位置で、伝熱部材48に当接する。
感温素子381は、y方向において中央部発熱体451の範囲のうち端部発熱体453に近い位置で、伝熱部材48に当接する。
感温素子382は、y方向において端部発熱体453の範囲のうち中央部発熱体451に近い位置で、伝熱部材48に当接する。
【0031】
感温素子371、372、381、382が、y方向において位置Lpm、すなわち凹部4811や凹部4821の中央を避けた位置に設けられているので、基板41のXZ断面の断面積の変化の影響で生じる温度の特異点の影響を、感温素子371、372、感温素子381、382が受けることを抑制することができる。
さらに、感温素子371、372、、381、382が、y方向において凹部4811や凹部4821の範囲を避けた位置に設けられているので、基板41のXZ断面の断面積の変化の影響で生じる温度の特異範囲の影響を、感温素子371、372、感温素子381、382が受けることを抑制することができる。
【0032】
基板41の長辺の凹部は様々なバリエーションがある。
例えば
図7のように、
基板41の-x側の長辺481の凹部4811に対し、
基板41の+x側の長辺482に、y方向において凹部4811からずれた位置の凹部4822がある場合がある。
y方向において凹部4811と凹部4822とは中央部発熱体451と重なる位置にある。
また、
基板41の-x側の長辺481の凹部4811に対し、
基板41の+x側の長辺482に、y方向において凹部4811からずれた位置の凹部4822、4823などの複数の凹部がある場合がある。
y方向において凹部4811と凹部4822、4823とは中央部発熱体451と重なる位置にある。
【0033】
例えば
図8のように、
基板41の+x側の長辺482の凹部4821に対し、
基板41の-x側の長辺481に、y方向において凹部4821と重なる位置に、凹部4821よりy方向に長い凹部4812がある場合がある。
y方向において凹部4812と凹部4821とは中央部発熱体451と重なる位置にある。
【0034】
例えば
図9のように、
基板41の+x側の長辺482の凹部4821に対し、
基板41の-x側の長辺481に、y方向において凹部4821からずれた位置の凹部4813がある場合がある。
y方向において凹部4821と凹部4813とは中央部発熱体451と重なる位置にある。
また、
基板41の+x側の長辺482の凹部4821に対し、
基板41の-x側の長辺481に、y方向において凹部4821からずれた位置の凹部4813、4814などの複数の凹部がある場合がある。
y方向において凹部4821と凹部4813、4814とは中央部発熱体451と重なる位置にある。
【0035】
例えば
図10のように、
基板41の-x側の長辺481の凹部4815と基板41の+x側の長辺482の凹部4825とが、y方向において、互いに同じ位置にあるが端部発熱体452と中央部発熱体451との間の位置とも重なる。
また、
基板41の-x側の長辺481の凹部4816と基板41の+x側の長辺482の凹部4826とが、y方向において、互いに同じ位置にあるが端部発熱体453と中央部発熱体451との間の位置とも重なる。
【0036】
例えば
図11のように、
基板41の+x側の長辺482に凹部4822があるが、
基板41の-x側の長辺481に凹部がない場合がある。
当然、
図7~
図11の+x側と-x側とも置き換えた形状や、基板41の長辺の凹部の有無や数について、上記のバリエーションのみに限られるものではない。
また、基板41の長辺に凹部が設けられる理由は製造工程における都合のみでない。例えば、面状ヒータ40がホルダ50に対してy方向に移動してしまうのを防ぐための係合部を受け入れるための凹部が基板41の長辺に設けられる場合もある。
【0037】
いずれの形状でも、感温素子をy方向において凹部の範囲を避けた位置に設ければ、基板41のXZ断面の断面積の変化の影響で生じる温度の特異範囲の影響を、感温素子が受けることを抑制することができる。
なお、凹部でなく凸部が基板41の長辺に設けられた場合も、y方向における凸部のある位置では基板41のXZ断面の断面積が増加して温度の不均一が生じる虞がある。 感温素子をy方向において凸部の範囲を避けた位置に設ければ、基板41のXZ断面の断面積の変化の影響で生じる温度の特異範囲の影響を、感温素子が受けることを抑制することができる。
【0038】
また、発熱体45も、中央部発熱体451と一対の端部発熱体452,453と、がy方向に並ぶものに限られるものではない。例えば、
図12のような、y方向中央の範囲での発熱量が高い上流側発熱体454と下流側発熱体455との間に、y方向両端部の範囲での発熱量が高い中間補助発熱体456を有する形態でもよい。上流側発熱体454と下流側発熱体455とが互いに同様に発熱を制御され、上流側発熱体454と下流側発熱体455とは独立して中間補助発熱体456が発熱を制御される形態であってもよい。
【0039】
図13は、ホルダ50に嵌めた面状ヒータ40を+z方向から見た図である。
位置Lpg2や位置Lpg3や、位置Lpm周辺など、中央部発熱体451や端部発熱体452や端部発熱体453それぞれの、通電されることにより発熱した場合に温度分布が平坦にならず、局所的に高くなったり低くなったりする部分の+x方向(定着ベルト35の回転方向でいえば下流側)の位置を避けた位置に感温素子391、392、393がある。
具体的には、
感温素子391は、y方向において中央部発熱体451の範囲の、定着ベルト35の回転方向における下流側で、定着ベルト35に当接する。
感温素子392は、y方向において端部発熱体452の範囲のうち中央部発熱体451に近い位置の、定着ベルト35の回転方向における下流側で、定着ベルト35に当接する。
感温素子393は、y方向において端部発熱体453の範囲のうち中央部発熱体451から遠い位置の、定着ベルト35の回転方向における下流側で、定着ベルト35に当接する。
【0040】
感温素子391、392、393が、y方向において位置Lpm、すなわち凹部4811や凹部4821の中央を避けた位置に設けられているので、基板41のXZ断面の断面積の変化の影響で生じる温度の特異点の影響を、感温素子391、392、393が受けることを抑制することができる。
さらに、感温素子391、392、393が、y方向において凹部4811や凹部4821の範囲を避けた位置に設けられているので、基板41のXZ断面の断面積の変化の影響で生じる温度の特異範囲の影響を、感温素子391、392、393が受けることを抑制することができる。
【0041】
以上のように、全ての感温素子を、y方向において位置Lpm、すなわち凹部4811や凹部4821の中央を避けた位置に設けることにより、基板41のXZ断面の断面積の変化の影響で生じる温度の特異点の影響を、全ての感温素子が受けることを抑制することができ、ひいては定着装置を適切に制御することができる。
さらに、全ての感温素子を、y方向において凹部4811や凹部4821の範囲を避けた位置に設けることにより、基板41のXZ断面の断面積の変化の影響で生じる温度の特異範囲の影響を、全ての感温素子が受けることを抑制することができ、ひいては定着装置を適切に制御することができる。
【0042】
なお、サーミスタもサーモスタットも感温素子として、y方向において位置Lpm、すなわち凹部4811や凹部4821の中央を避けた位置に設けてもよい。
サーモスタット等の、特定の温度を越えた際に感温素子自体が電力の遮断を行うようないわゆる安全装置としての機能のみを担う感温素子は、特異点であっても異常高温が生じたら作動せねばならない役割であれば、y方向において位置Lpm、すなわち凹部4811や凹部4821の中央を避けた位置に設ける感温素子群から、除外してもよい。サーモスタット等の安全装置としての機能のみを担う感温素子も、特異点の温度で作動させるべきではないからy方向において位置Lpmを避けた位置に設けるという考え方もある。
少なくとも、サーミスタ等の、面状ヒータ40の通電量を制御するための温度計としての機能を担う感温素子は、y方向において位置Lpm、すなわち凹部4811や凹部4821の中央を避けた位置に設けるとよい。
【0043】
図14は、第2の実施形態の定着装置の正面断面図である。第1の実施形態と同じ構成については同じ符号を付して説明を省略する。
第2の実施形態の定着装置は、面状ヒータ40と定着ベルト35との間にカバー60を有する。面状ヒータ40の+z方向の表面がカバー60の-z方向の面に接し、カバー60の+z方向の表面が定着ベルト35の内面に摺接する。
カバー60は、y方向において発熱体45の全体を覆う。カバー60は、y方向において発熱体45の全体を覆う。カバー60は、+y方向の定着ベルト35の端より外から-y方向の定着ベルト35の端より外まで面状ヒータ40を覆えるとよい。
カバー60は例えばステンレス等の金属材料により形成される。
【0044】
面状ヒータ40の、通電されることにより発熱した場合のy方向の温度分布の不均一が、カバー60の内部での熱拡散により緩和された状態で定着ベルト35に伝わる。
局所的に特異な温度が若干均されるので、第1の実施形態と比較すれば期待される効果は高くないものの、第2の実施形態においても、
感温素子391、392、393を、y方向において位置Lpm、すなわち凹部4811や凹部4821の中央を避けた位置に設けることでで、基板41のXZ断面の断面積の変化の影響で生じる温度の特異点の影響を、感温素子391、392、393が受けることを抑制することは有用である。
【0045】
図15は、第3の実施形態の定着装置の正面断面図である。第1の実施形態と同じ構成については同じ符号を付して説明を省略する。
第3の実施形態の定着装置は、面状ヒータ40とホルダ50の間に伝熱部材48を挟んでいない。面状ヒータ40の-z方向の表面に感温素子371、372、381、382が当接する。
面状ヒータ40の、通電されることにより発熱した場合のy方向の温度分布の不均一が、第1の実施形態では伝熱部材48の内部での熱拡散により緩和された状態で感温素子371、372、381、382に伝わるが、
この第3の実施形態のように伝熱部材48を挟んでいない形態では、面状ヒータ40のy方向の温度分布の不均一が緩和されず感温素子371、372、381、382により大きく影響するので、感温素子371、372、381、382を、y方向において位置Lpm、すなわち凹部4811や凹部4821の中央を避けた位置に設けることでで、基板41のXZ断面の断面積の変化の影響で生じる温度の特異点の影響を、感温素子371、372、381、382が受けることを抑制することができる。
【0046】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0047】
1・・・画像形成装置、2・・・スキャナ部、3・・・画像形成ユニット、4・・・シート供給部、5・・・搬送部、6・・・制御部、7・・・トレイ、8・・・コントロールパネル、9・・・反転ユニット、10・・・ハウジング、10・・・ハウジング、20・・・シート収容部、21・・・ピックアップローラ、23・・・搬送ローラ、24・・・レジストローラ、30・・・定着装置、31・・・加圧ローラ、32・・・芯金、33・・・弾性層、34・・・加熱ローラ、35・・・定着ベルト、36・・・フレーム、36・・・フレーム、40・・・面状ヒータ、41・・・基板、42・・・絶縁層、43・・・保護層、45・・・発熱体、46・・・配線、47・・・絶縁層、48・・・伝熱部材、50・・・ホルダ、51・・・上流側リブ、52・・・下流側リブ、60・・・カバー、451・・・中央部発熱体、452,453・・・端部発熱体、371,372,381,382,391,392,393・・・感温素子、N・・・ニップ、RN・・・ニップ、S・・・シート。