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  • 特開-振動刺激装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023165526
(43)【公開日】2023-11-16
(54)【発明の名称】振動刺激装置
(51)【国際特許分類】
   A61H 23/02 20060101AFI20231109BHJP
【FI】
A61H23/02 336
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022076660
(22)【出願日】2022-05-06
(71)【出願人】
【識別番号】000241500
【氏名又は名称】トヨタ紡織株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】504160781
【氏名又は名称】国立大学法人金沢大学
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】川越 隆
(72)【発明者】
【氏名】川野 健二
(72)【発明者】
【氏名】森 香子
(72)【発明者】
【氏名】西川 裕一
(72)【発明者】
【氏名】小松崎 俊彦
【テーマコード(参考)】
4C074
【Fターム(参考)】
4C074AA03
4C074BB05
4C074CC01
4C074FF01
4C074GG03
4C074HH08
(57)【要約】
【課題】着席者の下肢における筋力の回復又は維持が可能な振動刺激装置を提供する。
【解決手段】本開示の一態様は、シートと、シートの着席者に振動を与えるように構成された振動発生部と、を備える振動刺激装置である。振動発生部は、シートのうち、着席者の大腿骨顆部を支持する第1部位に配置された第1振動体を有する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シートと、
前記シートの着席者に振動を与えるように構成された振動発生部と、
を備え、
前記振動発生部は、前記シートのうち、前記着席者の大腿骨顆部を支持する第1部位に配置された第1振動体を有する、振動刺激装置。
【請求項2】
請求項1に記載の振動刺激装置であって、
前記振動発生部は、前記シートのうち、前記着席者の坐骨結節を支持する第2部位に配置された第2振動体を有する、振動刺激装置。
【請求項3】
請求項2に記載の振動刺激装置であって、
前記振動発生部は、前記シートのうち、前後方向において前記第1部位と前記第2部位との間の第3部位に配置された第3振動体を有する、振動刺激装置。
【請求項4】
請求項2に記載の振動刺激装置であって、
前記振動発生部を制御するように構成された制御部をさらに備え、
前記振動発生部は、前記シートのうち、前記着席者のアキレス腱に近接する第4部位に配置された第4振動体を有し、
前記制御部は、前記第1振動体、前記第2振動体及び前記第4振動体それぞれについての駆動タイミングを規定した周期的パターンに基づいて、前記第1振動体、前記第2振動体及び前記第4振動体をそれぞれ駆動させる、振動刺激装置。
【請求項5】
請求項4に記載の振動刺激装置であって、
前記着席者の下肢を被覆するサポータをさらに備え、
前記振動発生部は、
前記サポータのうち、前記着席者の大腿直筋の近位腱を被覆する第5部位に配置された第5振動体と、
前記サポータのうち、前記着席者の膝蓋骨を被覆する第6部位に配置された第6振動体と、
前記サポータのうち、前記着席者の前脛骨筋を被覆する第7部位に配置された第7振動体と、
を有し、
前記制御部は、前記第1振動体、前記第2振動体、前記第4振動体、前記第5振動体、前記第6振動体及び前記第7振動体それぞれについての駆動タイミングを規定した前記周期的パターンに基づいて、前記第1振動体、前記第2振動体、前記第4振動体、前記第5振動体、前記第6振動体及び前記第7振動体をそれぞれ駆動させる、振動刺激装置。
【請求項6】
請求項4又は請求項5に記載の振動刺激装置であって、
前記周期的パターンは、前記着席者の右下肢に適用される第1周期的パターンと、前記着席者の左下肢に適用される第2周期的パターンとを含み、
前記第2周期的パターンは、前記第1周期的パターンに対し各振動体の駆動タイミングが異なる、振動刺激装置。
【請求項7】
請求項1又は請求項2に記載の振動刺激装置であって、
前記振動発生部が発生させる振動の周波数は20Hz以上110Hz以下であり、前記振動の振幅は0.001mm以上1mm以下である、振動刺激装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、振動刺激装置に関する。
【背景技術】
【0002】
マッサージ及びリハビリを目的として、着席者の筋肉に振動刺激を与えるシート型の装置が知られている(特許文献1参照)。この装置は、着席者の首、背中、座部、及び脚部に振動を与えるように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000-262578号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述の装置は、脚部に振動を与えるように構成されているが、脚部の特定の部位に刺激を与える構成ではない。そのため、着席者の下肢の筋力の回復又は維持が十分に達成できない。
【0005】
本開示の一局面は、着席者の下肢における筋力の回復又は維持が可能な振動刺激装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様は、シート(2)と、シート(2)の着席者に振動を与えるように構成された振動発生部(4)と、を備える振動刺激装置(1)である。振動発生部(4)は、シート(2)のうち、着席者の大腿骨顆部を支持する第1部位に配置された第1振動体(41)を有する。
【0007】
このような構成によれば、第1振動体(41)によって着席者の大腿骨顆部近傍に振動刺激が与えられる。これにより、大腿骨顆部近傍の筋肉の筋紡錘が刺激に反応し、感覚神経から脊髄を経由して運動神経が刺激される。その結果、大腿骨顆部近傍の部位が筋収縮を起こすことで、トレーニング効果を生み、下肢における筋力が回復又は維持される。
【0008】
本開示の一態様では、振動発生部(4)は、シート(2)のうち、着席者の坐骨結節を支持する第2部位に配置された第2振動体(42)を有してもよい。このような構成によれば、第2振動体(42)によって着席者の坐骨結節近傍に振動刺激が与えられる。これにより、坐骨結節近傍の筋肉が筋収縮を起こすことで、下肢における筋力の回復効果又は維持効果が高められる。
【0009】
本開示の一態様では、振動発生部(4)は、シート(2)のうち、前後方向において第1部位と第2部位との間の第3部位に配置された第3振動体(43)を有してもよい。このような構成によれば、第3振動体(43)によって着席者の大腿二頭筋の筋腹に振動刺激が与えられる。これにより、大腿二頭筋が筋収縮を起こすことで、下肢における筋力の回復効果又は維持効果が高められる。
【0010】
本開示の一態様は、振動発生部(4)を制御するように構成された制御部(5)をさらに備えてもよい。振動発生部(4)は、シート(2)のうち、着席者のアキレス腱に近接する第4部位に配置された第4振動体(44)を有してもよい。制御部(5)は、第1振動体(41)、第2振動体(42)及び第4振動体(44)それぞれについての駆動タイミングを規定した周期的パターンに基づいて、第1振動体(41)、第2振動体(42)及び第4振動体(44)をそれぞれ駆動させてもよい。このような構成によれば、歩行機能に必要な複数の筋肉の筋力が、歩行時の運動パターンを模擬した周期的パターンによって刺激を受ける。そのため、着席者の歩行機能が回復又は維持される。
【0011】
本開示の一態様は、着席者の下肢を被覆するサポータ(3)をさらに備えてもよい。振動発生部(4)は、サポータ(3)のうち、着席者の大腿直筋の近位腱を被覆する第5部位に配置された第5振動体(45)と、サポータ(3)のうち、着席者の膝蓋骨を被覆する第6部位に配置された第6振動体(46)と、サポータ(3)のうち、着席者の前脛骨筋を被覆する第7部位に配置された第7振動体(47)と、を有してもよい。制御部(5)は、第1振動体(41)、第2振動体(42)、第4振動体(44)、第5振動体(45)、第6振動体(46)及び第7振動体(47)それぞれについての駆動タイミングを規定した周期的パターンに基づいて、第1振動体(41)、第2振動体(42)、第4振動体(44)、第5振動体(45)、第6振動体(46)及び第7振動体(47)をそれぞれ駆動させてもよい。このような構成によれば、着席者の下肢に与えられる刺激の周期的パターンを歩行時の運動パターンに近づけることができる。そのため、着席者の歩行機能の回復効果又は維持効果が促進される。
【0012】
本開示の一態様では、周期的パターンは、着席者の右下肢に適用される第1周期的パターンと、着席者の左下肢に適用される第2周期的パターンとを含んでもよい。第2周期的パターンは、第1周期的パターンに対し各振動体の駆動タイミングが異なってもよい。このような構成によれば、着席者の両脚に与えられる刺激のパターンを歩行周期に近づけることができる。そのため、着席者の歩行機能の回復効果又は維持効果が促進される。
【0013】
本開示の一態様では、振動発生部(4)が発生させる振動の周波数は20Hz以上110Hz以下であってもよい。振動の振幅は0.001mm以上1mm以下であってもよい。このような構成によれば、振動刺激によって筋紡錘及び受容器を効果的に反応させることができる。その結果、筋力の回復効果又は維持効果が促進される。
【0014】
なお、上記各括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的構成等との対応関係を示す一例であり、本開示は上記括弧内の符号に示された具体的構成等に限定されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1図1は、実施形態における振動刺激装置を示す模式的な側面図である。
図2図2Aは、図1の振動刺激装置におけるシートの模式的な平面図であり、図2Bは、図1の振動刺激装置におけるサポータの模式的な平面図である。
図3図3は、図1の振動刺激装置における制御部が用いる周期的パターンを示すタイムチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本開示が適用された実施形態について、図面を用いて説明する。
[1.第1実施形態]
[1-1.構成]
図1に示す振動刺激装置1は、利用者Uの下肢の筋力及び運動能力を維持又は回復するために使用される。振動刺激装置1は、シート2と、サポータ3と、振動発生部4と、制御部5とを備える。
【0017】
振動刺激装置1は、利用者Uがシート2に着席した状態で、振動発生部4によって利用者Uに振動刺激を与える。これにより、加齢による筋力低下及び筋肉量減少の抑制、並びにフレイル(つまり脆弱)の予防を図ることができる。
【0018】
そのため、利用者Uが運動を自ら行うことなく、利用者Uの下肢筋力を維持又は回復させることができる。これにより、利用者Uの下肢のバランス及び歩行機能の維持又は改善が期待される。
【0019】
<シート>
シート2は、利用者Uの臀部を支持する座面21と、利用者Uの脚部(具体的には脹脛及びアキレス腱等)に接触する接触面22と、背もたれ23とを有する。
【0020】
図1では、シート2の背もたれ23は、利用者Uの背筋が直立するように利用者Uを支持しているが、背もたれ23はリクライニング可能であってもよい。また、接触面22も、利用者Uの脚部を下方から支持するように上方にリクライニング可能であってもよい。
【0021】
ただし、振動刺激装置1の歩行機能改善プログラムを利用する場合は、図1のように利用者Uの背筋が直立し、かつ、利用者Uの膝下部分が鉛直方向に伸びる姿勢で利用者Uがシート2に着席することが好ましい。
【0022】
シート2には、着席者の下肢の関節角度を測定するためのゴニオメータが配置されてもよい。
【0023】
<サポータ>
サポータ3は、利用者Uの下肢を被覆する装着具である。サポータ3は、例えば、利用者Uの下肢に巻き付けられることで装着される。サポータ3は、シート2と共に、利用者Uの下肢を上下方向又は前後方向に挟むように配置される。サポータ3は、複数の部位に分割されていてもよい。
【0024】
<振動発生部>
振動発生部4は、シート2の着席者(つまり利用者U)に振動を与えるように構成されている。
【0025】
振動発生部4は、第1振動体41と、第2振動体42と、第3振動体43と、第4振動体44と、第5振動体45と、第6振動体46と、第7振動体47と、第8振動体48とを有する。
【0026】
各振動体としては、公知のアクチュエータ式の振動体が使用できる。各振動体の振動(つまり振動発生部4が発生させる振動)の周波数は、20Hz以上110Hz以下が好ましい。また、各振動体の振動の振幅は、0.001mm以上1mm以下が好ましい。
【0027】
このような周波数及び振幅を用いることで、振動刺激によって筋紡錘及び受容器(例えばマイスナー小体及びパチニ小体)を効果的に反応させることができる。その結果、筋力の回復効果又は維持効果が促進される。
【0028】
第1振動体41は、シート2のうち、着席者の大腿骨顆部を支持する第1部位に配置されている。シート2の第1部位は、座面21の前端部を構成している。第1振動体41は、利用者Uの大腿骨顆部の内側、半膜様筋及び半腱様筋の遠位腱、並びに大腿二頭筋の腱が含まれる第1範囲P1に振動刺激を与える。
【0029】
第2振動体42は、シート2のうち、着席者の坐骨結節を支持する第2部位に配置されている。シート2の第2部位は、座面21の背もたれ近傍部を構成している。第2振動体42は、利用者Uの坐骨結節の下部、ハムストリングス(つまり、大腿二頭筋、半膜様筋及び半腱様筋)の近位腱、大臀筋、及び中臀筋が含まれる第2範囲P2に振動刺激を与える。
【0030】
第3振動体43は、シート2のうち、前後方向において第1部位と第2部位との間の第3部位に配置されている。シート2の第3部位は、座面21の中央部を構成している。第3振動体43は、利用者Uの大腿二頭筋の筋腹が含まれる第3範囲P3に振動刺激を与える。これにより、太ももの前面にも筋収縮が発生する。
【0031】
第4振動体44は、シート2のうち、着席者のアキレス腱に近接する第4部位に配置されている。シート2の第4部位は、接触面22の下部を構成している。第4振動体44は、利用者Uのアキレス腱、及び踝レベルでの下腿三頭筋の遠位腱が含まれる第4範囲P4に振動刺激を与える。
【0032】
第5振動体45は、サポータ3のうち、着席者の大腿直筋の近位腱を被覆する第5部位に配置されている。第5振動体45は、利用者Uの大腿直筋の近位腱、前下方腸骨の下部、及び腸腰筋(つまり大腰筋、小腰筋、及び腸骨筋)が含まれる第5範囲P5に振動刺激を与える。
【0033】
第6振動体46は、サポータ3のうち、着席者の膝蓋骨を被覆する第6部位に配置されている。第6振動体46は、利用者Uの膝蓋骨の下膝蓋腱、及び大腿四頭筋が含まれる第6範囲P6に振動刺激を与える。
【0034】
第7振動体47は、サポータ3のうち、着席者の前脛骨筋を被覆する第7部位に配置されている。第7振動体47は、利用者Uの前脛骨筋の腱、及び踝レベルでの背屈筋の遠位腱が含まれる第7範囲P7に振動刺激を与える。
【0035】
第8振動体48は、シート2のうち、上下方向において第1部位と第4部位との間の第8部位に配置されている。シート2の第8部位は、接触面22の上部を構成している。第8振動体48は、利用者Uの腓腹筋の筋腹が含まれる第8範囲P8に振動刺激を与える。これにより、すねの前面にも筋収縮が発生する。
【0036】
図2A及び図2Bに示すように、各振動体は、左右1つずつに配置された2つの振動体の組で構成されている。すなわち、第1振動体41は、右側振動体41Aと、左側振動体41Bとで構成される。第2振動体42は、右側振動体42Aと、左側振動体42Bとで構成される。第3振動体43は、右側振動体43Aと、左側振動体43Bとで構成される。第4振動体44は、右側振動体44Aと、左側振動体44Bとで構成される。第8振動体48は、右側振動体48Aと、左側振動体48Bとで構成される。
【0037】
第5振動体45は、右側振動体45Aと、左側振動体45Bとで構成される。第6振動体46は、右側振動体46Aと、左側振動体46Bとで構成される。第7振動体47は、右側振動体47Aと、左側振動体47Bとで構成される。
【0038】
右側振動体41A-48Aは、利用者Uの右下肢(つまり右脚)に振動刺激を与える。左側振動体41B-48Bは、利用者Uの左下肢(つまり左脚)に振動刺激を与える。右側振動体41A-48Aと左側振動体41B-48Bとは互いに独立して振動のオン/オフが切り替えられる。
【0039】
<制御部>
図1に示す制御部5は、例えばプロセッサと、RAM、ROM等の記憶媒体と、入出力部とを備えるコンピュータである。
【0040】
制御部5は、記憶媒体に記憶されたプログラムによって、振動発生部4を制御するように構成されている。本実施形態では、制御部5は、シート2に内蔵されるか、又は取り付けられている。ただし、制御部5は、シート2の外部に配置されてもよい。
【0041】
具体的には、制御部5は、利用者Uの下肢の任意の部位に振動を与える運動神経刺激モードと、利用者Uの歩行機能を改善するプログラムを実行する歩行機能改善モードとを有する。運動神経刺激モードと歩行機能改善モードとは、例えば利用者U又は利用者Uの介助者によって切り替え可能である。
【0042】
運動神経刺激モードでは、制御部5は、利用者U又は介助者の入力に応じて、振動発生部4の任意の振動体を駆動させる。振動体の駆動の開始及び停止は、利用者U又は介助者の入力、又は予め設定された時間で行われる。
【0043】
歩行機能改善モードでは、制御部5は、第1振動体41、第2振動体42、第4振動体44、第5振動体45、第6振動体46及び第7振動体47それぞれについての駆動タイミングを規定した周期的パターンに基づいて、第1振動体41、第2振動体42、第4振動体44、第5振動体45、第6振動体46及び第7振動体47をそれぞれ駆動させる。
【0044】
駆動タイミングとは、各振動体における振動のオン及びオフのタイミングを意味する。図3に、歩行機能改善モードで使用される周期的パターンの一例を示す。図3の横軸は時間を表す。時刻T1は踵が着地するタイミング、時刻T2は爪先を蹴り出すタイミングを示す。
【0045】
踵が着地したタイミング(図3の左側のT1)から、爪先を蹴り出して再び踵が着地したタイミング(図3の右側のT1)までが、右下肢又は左下肢における1歩分の歩行周期である。
【0046】
制御部5は、まず時刻T1(つまり歩行周期の開始時点)において、第5振動体45の振動をオンにし、臀部の屈筋に刺激を与える。第5振動体45の振動開始後すぐに、制御部5は、第6振動体46の振動をオンにし、膝の屈筋にも刺激を与える。
【0047】
さらに、制御部5は、第6振動体46の振動開始後、第4振動体44の振動をオンにし、足底の伸筋に刺激を与える。これにより、踵を持ち上げる運動を疑似した刺激が利用者Uに与えられる。
【0048】
その後、制御部5は、時刻T2が近づいてきたタイミングで、第4振動体44の振動をオフにする。これと同時に、制御部5は、第7振動体47の振動をオンにし、足首の背部における屈筋に刺激を与える。
【0049】
また、制御部5は、時刻T2において、第5振動体45の振動及び第6振動体46の振動をオフにすると共に、第2振動体42及び第1振動体41の振動をオンにする。これにより、臀部及び膝それぞれの伸筋が刺激され、爪先を蹴り出す運動を疑似した刺激が利用者Uに与えられる。
【0050】
その後、制御部5は、第7振動体47、第1振動体41、及び第2振動体42の順でそれぞれの振動をオフにする。また、第1振動体41の振動のオフと同時に、第6振動体46の振動をオンにする。これにより、爪先を蹴り出した状態から踵を着地させる運動を疑似した刺激が利用者Uに与えられる。
【0051】
2回目の時刻T1以降は、上述の周期的パターンが歩行機能改善プログラムの終了まで繰り返される。また、周期的パターンは、着席者の右下肢に適用される第1周期的パターンと、着席者の左下肢に適用される第2周期的パターンとを含む。
【0052】
第2周期的パターンは、第1周期的パターンに対し各振動体の駆動タイミングが異なる。具体的には、第2周期的パターンは、第1周期的パターンの振動のタイミング(つまり位相)を半周期ずらしたものである。
【0053】
制御部5は、右下肢に対し、第1周期的パターンに基づいて右側振動体41A-48Aによって刺激を与えつつ、左下肢に対し、第2周期的パターンに基づいて左側振動体41B-48Bによって刺激を与える。
【0054】
[1-2.効果]
以上詳述した実施形態によれば、以下の効果が得られる。
(1a)第1振動体41によって着席者の大腿骨顆部近傍に振動刺激が与えられる。これにより、大腿骨顆部近傍の筋肉の筋紡錘が刺激に反応し、感覚神経から脊髄を経由して運動神経が刺激される。その結果、大腿骨顆部近傍の部位が筋収縮を起こすことで、トレーニング効果を生み、下肢における筋力が回復又は維持される。
【0055】
(1b)第2振動体42によって着席者の坐骨結節近傍に振動刺激が与えられる。これにより、坐骨結節近傍の筋肉が筋収縮を起こすことで、下肢における筋力の回復効果又は維持効果が高められる。
【0056】
(1c)第3振動体43によって着席者の大腿二頭筋の筋腹に振動刺激が与えられる。これにより、大腿二頭筋が筋収縮を起こすことで、下肢における筋力の回復効果又は維持効果が高められる。
【0057】
(1d)制御部5が周期的パターンに基づいて各振動体を駆動させることで、歩行機能に必要な複数の筋肉の筋力が、歩行時の運動パターンを模擬した周期的パターンによって刺激を受ける。そのため、着席者の歩行機能が回復又は維持される。
【0058】
(1e)第1振動体41、第2振動体42、第4振動体44、第5振動体45、第6振動体46及び第7振動体47を駆動させることで、着席者の下肢に与えられる刺激の周期的パターンを歩行時の運動パターンに近づけることができる。そのため、着席者の歩行機能の回復効果又は維持効果が促進される。
【0059】
(1f)周期的パターンが着席者の右下肢に適用される第1周期的パターンと着席者の左下肢に適用される第2周期的パターンとを含むことで、着席者の両脚に与えられる刺激のパターンを歩行周期に近づけることができる。そのため、着席者の歩行機能の回復効果又は維持効果が促進される。
【0060】
[2.他の実施形態]
以上、本開示の実施形態について説明したが、本開示は、上記実施形態に限定されることなく、種々の形態を採り得ることは言うまでもない。
【0061】
(2a)上記実施形態の振動刺激装置において、振動発生部は、必ずしも上述した全ての振動体を有しなくてもよい。例えば、振動発生部は、サポータに設けられた振動体を有しなくてもよい。
【0062】
(2b)上記実施形態の振動刺激装置において、制御部は、必ずしも周期的パターンに基づいて振動体を駆動させなくてもよい。つまり、制御部は、必ずしも歩行機能改善モードを有しなくてもよい。
【0063】
(2c)上記実施形態における1つの構成要素が有する機能を複数の構成要素として分散させたり、複数の構成要素が有する機能を1つの構成要素に統合したりしてもよい。また、上記実施形態の構成の一部を省略してもよい。また、上記実施形態の構成の少なくとも一部を、他の上記実施形態の構成に対して付加、置換等してもよい。なお、特許請求の範囲に記載の文言から特定される技術思想に含まれるあらゆる態様が本開示の実施形態である。
【符号の説明】
【0064】
1…振動刺激装置、2…シート、3…サポータ、4…振動発生部、5…制御部、
21…座面、22…接触面、23…背もたれ、
41…第1振動体、41A…右側振動体、41B…左側振動体、
42…第2振動体、42A…右側振動体、42B…左側振動体、
43…第3振動体、43A…右側振動体、43B…左側振動体、
44…第4振動体、44A…右側振動体、44B…左側振動体、
45…第5振動体、45A…右側振動体、45B…左側振動体、
46…第6振動体、46A…右側振動体、46B…左側振動体、
47…第7振動体、47A…右側振動体、47B…左側振動体、
48…第8振動体、48A…右側振動体、48B…左側振動体。
図1
図2
図3