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特開2023-165533遊離塩素低減用組成物および遊離塩素低減用浴用化粧料
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023165533
(43)【公開日】2023-11-16
(54)【発明の名称】遊離塩素低減用組成物および遊離塩素低減用浴用化粧料
(51)【国際特許分類】
   C02F 1/58 20230101AFI20231109BHJP
   C11D 7/26 20060101ALI20231109BHJP
   C11B 9/00 20060101ALI20231109BHJP
   A61Q 19/10 20060101ALI20231109BHJP
   A61K 8/34 20060101ALI20231109BHJP
   A61K 8/37 20060101ALI20231109BHJP
   A61K 8/92 20060101ALI20231109BHJP
【FI】
C02F1/58 L
C11D7/26
C11B9/00 C
C11B9/00 S
A61Q19/10
A61K8/34
A61K8/37
A61K8/92
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022076696
(22)【出願日】2022-05-06
(71)【出願人】
【識別番号】593012228
【氏名又は名称】株式会社希松
(74)【代理人】
【識別番号】100110766
【弁理士】
【氏名又は名称】佐川 慎悟
(74)【代理人】
【識別番号】100165515
【弁理士】
【氏名又は名称】太田 清子
(74)【代理人】
【識別番号】100169340
【弁理士】
【氏名又は名称】川野 陽輔
(74)【代理人】
【識別番号】100195682
【弁理士】
【氏名又は名称】江部 陽子
(74)【代理人】
【識別番号】100206623
【弁理士】
【氏名又は名称】大窪 智行
(72)【発明者】
【氏名】中島 大輝
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 嘉純
(72)【発明者】
【氏名】小松 令以子
【テーマコード(参考)】
4C083
4D038
4H003
4H059
【Fターム(参考)】
4C083AA121
4C083AA122
4C083AC091
4C083AC092
4C083AC341
4C083AC342
4C083AD531
4C083AD532
4C083CC25
4C083EE12
4D038AA07
4D038AB39
4H003DA02
4H003EB04
4H003EB09
4H003FA02
4H003FA26
4H059BA12
4H059BA30
4H059BC23
4H059DA09
4H059EA35
(57)【要約】
【課題】 遊離塩素を低減でき、オイルなどの非極性物質にも配合可能な組成物、および、それを用いる浴用化粧料を提供する。
【解決手段】 リナロールおよび/または酢酸リナリルを有効成分とする、遊離塩素低減用組成物。本発明によれば、水道水など遊離塩素を含む液体の遊離塩素濃度を低減することができる。よって、遊離塩素に起因する悪影響、例えば、入浴用、洗面用、手洗い用、水泳用など皮膚に接触する形態で用いる水道水の皮膚刺激を低減することができる。
【選択図】 図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
リナロールおよび/または酢酸リナリルを有効成分とする、遊離塩素低減用組成物。
【請求項2】
リナロールおよび/または酢酸リナリルを合計で40質量%以上含む精油を有効成分とする、遊離塩素低減用組成物。
【請求項3】
シソ科ラヴァンドラ属の精油を有効成分とする、遊離塩素低減用組成物。
【請求項4】
ミカン科ミカン属の精油を有効成分とする、遊離塩素低減用組成物。
【請求項5】
シソ科アキギリ属の精油を有効成分とする、遊離塩素低減用組成物。
【請求項6】
シソ科ラヴァンドラ属がLavandula angustifoliaである、請求項3に記載の組成物。
【請求項7】
ミカン科ミカン属がCitrus aurantiumである、請求項4に記載の組成物。
【請求項8】
シソ科アキギリ属がSalvia sclareaである、請求項5に記載の組成物。
【請求項9】
液体中の濃度が0.05ppm以上で用いられることを特徴とする、請求項3に記載の組成物。
【請求項10】
液体中の濃度が0.01ppm以上で用いられることを特徴とする、請求項4に記載の組成物。
【請求項11】
液体中の濃度が0.1ppm以上で用いられることを特徴とする、請求項5に記載の組成物。
【請求項12】
請求項1~11から選択されるいずれか1以上の組成物を含む、遊離塩素低減用浴用化粧料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、遊離塩素低減用組成物および遊離塩素低減用浴用化粧料に関する。詳細には、リナロールおよび/もしくは酢酸リナリル、リナロールおよび/もしくは酢酸リナリルを合計で40質量%以上含む精油、シソ科ラヴァンドラ属の精油、ミカン科ミカン属の精油、または、シソ科アキギリ属の精油を有効成分とする、遊離塩素低減用組成物ならびに遊離塩素低減用浴用化粧料に関する。
【背景技術】
【0002】
水道水には、病原微生物の殺菌を主目的として、塩素や次亜塩素酸ナトリウムが加えられている。塩素や次亜塩素酸ナトリウムは水に溶解すると、次亜塩素酸(HOCl)とそれがイオン化した次亜塩素酸イオン(OCl)とを生成する。これらの物質は併せて遊離塩素と称され、強い酸化力を有する。遊離塩素はその酸化力により、病原微生物の菌体膜を破壊し、あるいは酵素を失活させて殺菌作用を発揮する。
【0003】
水道水中の遊離塩素は、殺菌作用を発揮することにより消費され、自然分解によっても徐々に減少するが、相当量が残存する場合も多い。水中に残存した遊離塩素(遊離残留塩素)は、皮膚に対しても刺激が強いため、皮膚疾患に悩む人にとっては、症状を悪化させる一因ともなっている。そこで、遊離塩素を低減できる技術が求められており、例えば、従来からアミノ酸やビタミンC(アスコルビン酸)が用いられているほか、特許文献1には、タイム、ローズマリー、メリッサ、オウゴン、インチンコウ、エンメイソウ、サルビア、ビワ葉、ユキノシタ、カンゾウの抽出物のうち少なくとも1種以上を含有する残留塩素除去剤が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002-346575号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、アミノ酸やビタミンCは極性の高いものが多く、オイルなどの剤形には配合しにくい場合があり、展開できる製品形態が限られる。また、特許文献1に記載の残留塩素除去剤も、熱水およびエタノールによる抽出物であることから、高極性の物質と考えられる。すなわち、これらの従来技術を鑑みても、オイルなどの非極性物質にも配合可能な、遊離塩素を低減できる物質は充分に供給されている状況とはいえない。本発明は、係る課題を解決するためになされたものであって、遊離塩素を低減でき、オイルなどの非極性物質にも配合可能な組成物、および、それを用いる浴用化粧料を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、鋭意研究の結果、リナロールおよび/または酢酸リナリル、リナロールおよび/または酢酸リナリルを合計で40質量%以上含む精油、シソ科ラヴァンドラ属の精油、ミカン科ミカン属の精油ならびにシソ科アキギリ属の精油が、高い遊離塩素低減活性を有することを見出した。そこで、係る知見に基づいて下記の各発明を完成した。
【0007】
(1)本発明に係る遊離塩素低減用組成物の第1の態様は、リナロールおよび/または酢酸リナリルを有効成分とする。
【0008】
(2)本発明に係る遊離塩素低減用組成物の第2の態様は、リナロールおよび/または酢酸リナリルを合計で40質量%以上含む精油を有効成分とする。
【0009】
(3)本発明に係る遊離塩素低減用組成物の第3の態様は、シソ科ラヴァンドラ属の精油を有効成分とする。
【0010】
(4)本発明に係る遊離塩素低減用組成物の第4の態様は、ミカン科ミカン属の精油を有効成分とする。
【0011】
(5)本発明に係る遊離塩素低減用組成物の第5の態様は、シソ科アキギリ属の精油を有効成分とする。
【0012】
(6)本発明において、シソ科ラヴァンドラ属は、Lavandula angustifoliaであってもよい。
【0013】
(7)本発明において、ミカン科ミカン属は、Citrus aurantiumであってもよい。
【0014】
(8)本発明において、シソ科アキギリ属は、Salvia sclareaであってもよい。
【0015】
(9)本発明に係る遊離塩素低減用組成物の第3の態様(シソ科ラヴァンドラ属の精油を有効成分とするもの)において、当該組成物は液体中の濃度が0.05ppm以上で用いられるものであってもよい。
【0016】
(10)本発明に係る遊離塩素低減用組成物の第4の態様(ミカン科ミカン属の精油を有効成分とするもの)において、当該組成物は液体中の濃度が0.01ppm以上で用いられるものであってもよい。
【0017】
(11)本発明に係る遊離塩素低減用組成物の第5の態様(シソ科アキギリ属の精油を有効成分とするもの)において、当該組成物は液体中の濃度が0.1ppm以上で用いられるものであってもよい。
【0018】
(12)本発明に係る遊離塩素低減用浴用化粧料は、本発明に係る遊離塩素低減用組成物を含む。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、水道水など遊離塩素を含む液体の遊離塩素濃度を低減することができる。よって、遊離塩素に起因する悪影響、例えば、入浴用、洗面用、手洗い用、水泳用など皮膚に接触する形態で用いる水道水の皮膚刺激を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】実施例で用いた評価検体を示す表である。
図2】各種植物の水溶性抽出物(ラベンダーエキス、ペパーミントエキス、バラエキス)または精油(ラベンダー油A、ペパーミント油、バラ・ホホバ混合油)を添加した水道水における遊離塩素濃度を示す棒グラフである。
図3】各種の精油を添加した水道水における遊離塩素濃度を示す棒グラフである。
図4】各種の精油におけるリナロールおよび酢酸リナリルの含有量(質量%)を示す表である。
図5】リナロールまたは酢酸リナリルを添加した水道水における遊離塩素濃度を示す棒グラフである。
図6】種々の濃度となるようラベンダー油Aを添加した水道水における、遊離塩素濃度を示す棒グラフである。
図7】種々の濃度となるようネロリ油を添加した水道水における、遊離塩素濃度を示す棒グラフである。
図8】種々の濃度となるようクラリセージ油を添加した水道水における、遊離塩素濃度を示す棒グラフである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明について詳細に説明する。
【0022】
「遊離塩素低減用組成物」は、遊離塩素を低減する用途で用いられる組成物をいう。本明細書では、第1~5の態様に係る遊離塩素低減用組成物をまとめて、あるいはそのうちのいずれか1以上を指して「本組成物」という場合がある。
【0023】
「遊離塩素」は、上述のとおり、次亜塩素酸(HOCl)および/または次亜塩素酸イオン(OCl)をいう。また、「遊離塩素を低減する」とは、遊離塩素の量を少なくすることをいい、全く無くすること(0にすること)を含む。
【0024】
遊離塩素の量(濃度)は、市販の残留塩素計を用いて、あるいは試薬を用いた定法(比色測定法)により測定することができる。市販の残留塩素計は、有試薬型および無試薬型(ガルバニ電池式、ポーラログラフ式)のいずれも用いることができる。比色測定法としては、DPD法、シリンガルダン法、ヨウ素滴定法、電流滴定法などを例示することができる。
【0025】
第1の態様に係る本組成物は、「リナロールおよび/または酢酸リナリル」を有効成分とする。リナロール(3,7-ジメチル-1,6-オクタジエン-3-オール、リナロオール、(S)体:コリアンドロール、(R)体:リカレオール)は、下記の式1で表されるモノテルペンアルコールの一種であり、分子式はC1018O、分子量は154.25である。
【0026】
リナロールは工業的に化学合成されたものが市販されているほか、ローズウッド、リナロエ、芳樟等の精油中など天然にも存在している。本発明では、合成品および天然から抽出物のいずれも、用いることができる。また、リナロールは(S)体、(R)体、これらの混合物のいずれであってもよい。
【0027】
酢酸リナリル(酢酸3,7-ジメチル-1,6-オクタジエン-3-イル、リナリルアセテート)は、下記の式2で表されるリナロールの酢酸エステルであり、分子式はC1220、分子量は196.29である。
【0028】
酢酸リナリルはリナロールのアセチル化により得られ、工業的に化学合成されたものが市販されているほか、クラリセージ、ラベンダー、ベルガモット等の精油中など天然にも存在している。本発明では、合成品および天然から抽出物のいずれも、用いることができる。また、酢酸リナリルは(S)体、(R)体、これらの混合物のいずれであってもよい。
【0029】
リナロールおよび酢酸リナリルは、特定の精油に含まれることが知られている。精油は、一般に、植物から産出される極性ないし水溶性が低い物質であり、多数の化合物の複雑な混合物である。精油は、常法により植物から製造されたものを用いることができる。係る常法としては、例えば、水蒸気蒸留法、高温乾留法、分別蒸留法、低温真空抽出法、アンフルラージュ(冷浸法、温浸法)、溶媒抽出法、二酸化炭素抽出法、エタノール抽出法、圧搾法などを例示することができる。精油は、精油成分を含む限り、コンクリートやアブソリュート、エッセンスであっても、用いることができる。また、精油は液体であってもよく、粉末や顆粒、固形物などの固体であってもよい。
【0030】
第2の態様に係る本組成物は、「リナロールおよび/または酢酸リナリルを合計で40質量%以上含む精油」を有効成分とする。当該精油としては、例えば、ラベンダー(シソ科ラヴァンドラ属)やクラリセージ(オニサルビア、シソ科アキギリ属)、ローズウッド(クスノキ科アニバ属)、ベルガモット(ミカン科ミカン属)、リナロエ(カンラン科ブルセラ属)、芳樟(クスノキ科ニッケイ属)、バジル(シソ科メボウキ属)の精油、コリアンダー(セリ科コエンドロ属)の種子の精油、ビターオレンジ(ダイダイ、ミカン科ミカン属)の花の精油(ネロリ)、ビターオレンジの枝葉の精油(プチグレイン)などを例示することができる。精油中のリナロールおよび酢酸リナリルの含有割合は、常法により(例えば、ガスクロマトグラフィー(GC)、ガスクロマトグラフィーマススペクトル(GC/MS)など)確認することができる。
【0031】
第3の態様に係る本組成物は、「シソ科ラヴァンドラ属の精油」を有効成分とする。シソ科ラヴァンドラ属の植物種は、精油原料として一般に用いられているものであればよい。係る植物種としては、例えば、Lavandula angustifolia、L. latifolia、L. stoechas、L. multifida、L. × intermediaなどを例示することができる。また、精油原料とするラヴァンドラ属の部位としては、例えば、先端部、花、葉などを例示することができる。
【0032】
第4の態様に係る本組成物は、「ミカン科ミカン属の精油」を有効成分とする。ミカン科ミカン属の植物種は、精油原料として一般に用いられているものであればよい。係る植物種としては、例えば、Citrus aurantium(ビターオレンジ、ダイダイ)、Citrus × bergamia(ベルガモット)などを例示することができる。また、精油原料とするミカン属の部位としては、例えば、花、枝葉、果皮などを例示することができる。
【0033】
第5の態様に係る本組成物は、「シソ科アキギリ属の精油」を有効成分とする。シソ科アキギリ属の植物種は、精油原料として一般に用いられているものであればよい。係る植物種としては、例えば、Salvia sclarea(クラリセージ、オニサルビア)、Salvia officinalis(コモンセージ、ヤクヨウサルビア)、Salvia lavendulaefolia(スパニッシュセージ、ラベンダーセージ)、Salvia apiana(ホワイトセージ)などを例示することができる。また、精油原料とするミカン属の部位としては、例えば、葉、花、全草、種子などを例示することができる。
【0034】
本組成物は、遊離塩素を含む対象物に接触させることにより用いる。例えば、対象物が水道水などの液体であれば、当該液体に本組成物を添加すればよい。
【0035】
本組成物の使用量は、本組成物の態様(有効成分の種類)、対象物の種類や含有成分、所望の遊離塩素濃度、当該濃度に達するまでの所要時間、気温などに応じて、適宜設定することができる。一例として、例えば、対象物が水道水の場合、本組成物の有効成分が「リナロールおよび/または酢酸リナリル」であれば、使用時の終濃度が0.004ppm以上、0.004ppm超、0.02ppm以上、0.02ppm超、0.04ppm以上、0.04ppm超あるいは0.2ppm以上を例示することができる。
【0036】
また、例えば、対象物が水道水の場合、本組成物の有効成分が「リナロールおよび/または酢酸リナリルを合計で40質量%以上含む精油」であれば、使用時の終濃度が0.01ppm以上、0.01ppm超、0.05ppm以上、0.05ppm超、0.1ppm以上、0.1ppm超あるいは0.5ppm以上を例示することができる。
【0037】
また、例えば、対象物が水道水の場合、本組成物の有効成分が「シソ科ラヴァンドラ属の精油」であれば、使用時の終濃度が0.05ppm以上、0.05ppm超、0.1ppm以上、0.1ppm超、0.2ppm以上、0.2ppm超、0.3ppm以上、0.3ppm超、0.4ppm以上、0.4ppm超あるいは0.5ppm以上を例示することができる。
【0038】
また、例えば、対象物が水道水の場合、本組成物の有効成分が「ミカン科ミカン属の精油」であれば、使用時の終濃度が0.01ppm以上、0.01ppm超、0.02ppm以上、0.02ppm超、0.03ppm以上、0.03ppm超、0.04ppm以上、0.04ppm超あるいは0.05ppm以上を例示することができる。
【0039】
また、例えば、対象物が水道水の場合、本組成物の有効成分が「シソ科アキギリ属の精油」であれば、使用時の終濃度が0.1ppm以上、0.1ppm超、0.2ppm以上、0.2ppm超、0.3ppm以上、0.3ppm超、0.4ppm以上、0.4ppm超あるいは0.5ppm以上を例示することができる。
【0040】
本組成物は、浴用化粧料に配合して用いることもできる。本組成物を含む浴用化粧料は、浴用に用いられる湯や水の遊離塩素を低減できることから、遊離塩素を低減するための浴用化粧料(遊離塩素低減用浴用化粧料)として用いることができる。
【0041】
ここで、浴用化粧料は、入浴、手浴、足浴、上がり湯、身体の洗浄、清拭などに際して湯や水等の液体で希釈して使用する化粧料をいう。浴用化粧料における本組成物の配合量は、上述の、各有効成分の使用時の終濃度を踏まえて、製品形態に応じて設定することができる。浴用化粧料の形態としては液体であってもよく、粉末や顆粒、固形物などの固体であってもよい。浴用化粧料の態様として、より具体的には、バスソルト、バスオイル、バブルバス、フォームバス、シャンプー、リンス、コンディショナー、ボディソープ、洗顔料、ハンドソープなどを例示することができる。
【0042】
以下、本発明について、実施例に基づいて説明する。なお、本発明の技術的範囲は、これらの実施例によって示される特徴に限定されない。
【実施例0043】
<評価検体>
評価検体は、図1に示す植物からの水溶性抽出物および精油ならびに単一化合物(全て市販品)を用いた。
【0044】
<遊離塩素低減活性の評価>
評価検体を水道水に添加し、直後に水中の遊離塩素(遊離残留塩素)の濃度(mg/L)を測定することにより、遊離塩素低減活性を評価した。比較対照として、評価検体を添加しない精製水および水道水の遊離塩素濃度も同様に測定した。遊離塩素濃度は、ポータブル残留塩素計RC-31P-F(測定方式:ポーラログラフ法、測定対象:遊離残留塩素、東亜DKK社)を用いて測定した。以下の実施例では、例えば、「評価検体Xを添加して遊離塩素濃度を測定した試料」を「X添加試料」あるいは「X」と略記する場合がある。
【0045】
<実施例1>各種植物抽出物の残留塩素低減活性
評価検体として各種植物の水溶性抽出物(ラベンダーエキス、ペパーミントエキス、バラエキス)および精油(ラベンダー油A、ペパーミント油、バラ・ホホバ混合油)を用いた。精製水適量に、評価検体を終濃度1質量%、PEG-30水添ヒマシ油を終濃度3質量%、エタノールを終濃度10質量%となるよう添加して混合・可溶化し、検体溶液を調製した。検体溶液20μLを水道水200mLに滴下して混合し、直後に遊離塩素濃度を測定した。その結果を図2に示す。
【0046】
図2に示すように、ラベンダーエキス添加試料とラベンダー油A添加試料とで遊離塩素濃度を比較すると、ラベンダーエキス添加試料では水道水よりもやや低い程度であったのに対して、ラベンダー油A添加試料では水道水よりも顕著に低かった。一方、ペパーミントエキス添加試料とペパーミント油添加試料とで遊離塩素濃度を比較すると、ペパーミント油添加試料の方がやや低いものの、いずれも、水道水よりも顕著な低下は見られなかった。また、バラエキス添加試料とバラ・ホホバ混合油添加試料とで遊離塩素濃度を比較すると、バラ・ホホバ混合油添加試料の方がやや低いものの、いずれも、水道水よりも顕著な低下は見られなかった。
【0047】
すなわち、ラベンダー、ペパーミントおよびバラの抽出物のうちでは、ラベンダーの精油を添加した水道水のみで遊離塩素濃度が顕著に低かった。この結果から、シソ科ラヴァンドラ属の精油は高い遊離塩素低減活性を有することが明らかになった。
【0048】
<実施例2>各種精油の遊離塩素低減活性
評価検体として、各種植物の精油(ラベンダー油A~C、ネロリ油、クラリセージ油)を用いた。精製水適量に、評価検体を終濃度1質量%、PEG-30水添ヒマシ油を終濃度3質量%、エタノールを終濃度10質量%となるよう添加して混合・可溶化し、検体溶液を調製した。検体溶液20μLを水道水200mLに滴下して混合し、直後に遊離塩素濃度を測定した。その結果を図3に示す。
【0049】
図3に示すように、遊離塩素濃度は、水道水と比較して、ラベンダー油A、ラベンダー油B、ラベンダー油C、ネロリ油およびクラリセージ油をそれぞれ添加した試料でいずれも顕著に低く、水道水の1/6~1/3程度まで低下していた。すなわち、ラベンダー、ビターオレンジおよびオニサルビアの精油を添加した水道水では、遊離塩素濃度が顕著に低かった。この結果から、シソ科ラヴァンドラ属、ミカン科ミカン属およびシソ科アキギリ属の精油は、高い遊離塩素低減活性を有することが明らかになった。
【0050】
<実施例3>リナロールおよび酢酸リナリルの残留塩素低減活性
実施例1および実施例2において高い遊離塩素低減活性が示されたラベンダー油、ネロリ油およびクラリセージ油は、いずれも、リナロールおよび酢酸リナリルの含有量が比較的大きく、遊離塩素低減活性が低かったペパーミント油およびダマスクバラ油は、いずれも、その含有量が小さい。この点、文献(三上杏平 著、カラーグラフで読む精油の機能と効能 エッセンシャルオイルの作用と安全性を図解、フレグランスジャーナル社、ISBN:9784894791497、2008年12月1日出版、第27、62、74、76および92頁)によれば、これら精油のリナロールおよび酢酸リナリルの含有量は図4のとおりである。図4に示すように、ラベンダー油、ネロリ油およびクラリセージ油は、いずれも、リナロールおよび/または酢酸リナリルを40質量%程度以上と比較的高含有しているといえる。そこで、リナロールおよび酢酸リナリルの残留塩素低減活性を評価した。
【0051】
すなわち、評価検体として、リナロールおよび酢酸リナリルを用意した。精製水適量に、評価検体を終濃度0.1質量%または1質量%、PEG-30水添ヒマシ油を終濃度3質量%、エタノールを終濃度10質量%となるよう添加して混合・可溶化し、検体溶液を調製した。検体溶液20μLを水道水200mLに滴下して混合し、直後に遊離塩素濃度を測定した。この場合、試料における評価検体の終濃度は、それぞれ0.1ppmまたは1ppmとなる。その結果を図5に示す。
【0052】
図5に示すように、遊離塩素濃度は、水道水と比較して、リナロールおよび酢酸リナリルを各0.1ppm含有する試料で低く、各1ppm含有する試料で顕著に低かった。すなわち、リナロールおよび酢酸リナリルを添加した水道水では、その含有濃度依存的に、遊離塩素濃度が顕著に低下した。この結果から、リナロールおよび酢酸リナリルは、高い遊離塩素低減活性を有することが明らかになった。
【0053】
<実施例4>精油濃度の検討
(1)ラベンダー油
評価検体として、ラベンダー油Aを用いた。精製水適量に、評価検体を終濃度0.01、0.05、0.1、0.5、1または5質量%、PEG-30水添ヒマシ油を終濃度3質量%、エタノールを終濃度10質量%となるよう添加して混合・可溶化し、検体溶液を調製した。検体溶液20μLを水道水200mLに滴下して混合し、直後に遊離塩素濃度を測定した。この場合、試料におけるラベンダー油Aの終濃度は、それぞれ0.01、0.05、0.1、0.5、1または5ppmとなる。その結果を図6に示す。
【0054】
図6に示すように、遊離塩素濃度は、水道水と比較して、ラベンダー油Aを0.01、0.05、0.1、0.5、1または5ppm含有する試料でいずれも低く、特に、0.1、0.5、1または5ppm含有する試料で顕著に低かった。すなわち、ラベンダー油Aを添加した水道水では、ラベンダー油Aの含有濃度の多少に関わらず、遊離塩素濃度が低下した。この結果から、シソ科ラヴァンドラ属の精油は、その使用濃度の大小にかかわらず、遊離塩素を低減できることが明らかになった。また、高い遊離塩素低減活性を得る観点からは、シソ科ラヴァンドラ属の精油は、液体中での終濃度が0.05ppm以上で用いられるのが好ましく、0.1ppm超で用いられるのがより好ましいことが明らかになった。
【0055】
(2)ネロリ油
評価検体として、ネロリ油を用いた。精製水適量に、評価検体を終濃度0.01、0.05、0.1、0.5または1質量%、PEG-30水添ヒマシ油を終濃度3質量%、エタノールを終濃度10質量%となるよう添加して混合・可溶化し、検体溶液を調製した。検体溶液20μLを水道水200mLに滴下して混合し、直後に遊離塩素濃度を測定した。この場合、試料におけるネロリ油の終濃度は、それぞれ0.01、0.05、0.1、0.5または1ppmとなる。その結果を図7に示す。
【0056】
図7に示すように、遊離塩素濃度は、水道水と比較して、ネロリ油を0.01、0.05、0.1、0.5または1ppm含有する試料でいずれも低く、特に、0.05、0.1、0.5または1ppm含有する試料で顕著に低かった。すなわち、ネロリ油を添加した水道水では、ネロリ油の含有濃度の多少に関わらず、遊離塩素濃度が低下した。この結果から、ミカン科ミカン属の精油は、その使用濃度の大小にかかわらず、遊離塩素を低減できることが明らかになった。また、高い遊離塩素低減活性を得る観点からは、ミカン科ミカン属の精油は、液体中での終濃度が0.01ppm以上で用いられるのが好ましく、0.05ppm超で用いられるのがより好ましいことが明らかになった。
【0057】
(3)クラリセージ油
評価検体として、クラリセージ油を用いた。精製水適量に、評価検体を終濃度0.01、0.05、0.1、0.5または1質量%、PEG-30水添ヒマシ油を終濃度3質量%、エタノールを終濃度10質量%となるよう添加して混合・可溶化し、検体溶液を調製した。検体溶液20μLを水道水200mLに滴下して混合し、直後に遊離塩素濃度を測定した。この場合、試料におけるクラリセージ油の終濃度は、それぞれ0.01、0.05、0.1、0.5または1ppmとなる。その結果を図8に示す。
【0058】
図8に示すように、遊離塩素濃度は、水道水と比較して、クラリセージ油を0.01、0.05、0.1、0.5または1ppm含有する試料でいずれも低く、特に、0.5または1ppm含有する試料で顕著に低かった。すなわち、クラリセージ油を添加した水道水では、クラリセージ油の含有濃度の多少に関わらず遊離塩素濃度が低下した。この結果から、シソ科アキギリ属の精油は、その使用濃度の大小にかかわらず、遊離塩素を低減できることが明らかになった。また、高い遊離塩素低減活性を得る観点からは、シソ科アキギリ属の精油は、液体中での終濃度が0.1ppm以上で用いられるのが好ましく、0.5ppm超で用いられるのがより好ましいことが明らかになった。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8