(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023165535
(43)【公開日】2023-11-16
(54)【発明の名称】タイヤ
(51)【国際特許分類】
B60C 11/13 20060101AFI20231109BHJP
【FI】
B60C11/13 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022076700
(22)【出願日】2022-05-06
(71)【出願人】
【識別番号】000183233
【氏名又は名称】住友ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104134
【弁理士】
【氏名又は名称】住友 慎太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100156225
【弁理士】
【氏名又は名称】浦 重剛
(74)【代理人】
【識別番号】100168549
【弁理士】
【氏名又は名称】苗村 潤
(74)【代理人】
【識別番号】100200403
【弁理士】
【氏名又は名称】石原 幸信
(74)【代理人】
【識別番号】100206586
【弁理士】
【氏名又は名称】市田 哲
(72)【発明者】
【氏名】中島 幸一
【テーマコード(参考)】
3D131
【Fターム(参考)】
3D131BB01
3D131BC20
3D131BC44
3D131EB19V
3D131EB19X
3D131EB23V
3D131EB23X
(57)【要約】
【課題】優れたウェット性能を発揮し得るタイヤを提供する。
【解決手段】トレッド部2を有するタイヤである。トレッド部2は、踏面2sと、周方向溝3とを含む。周方向溝3は、一対の溝壁5と、溝底6とを備えている。一対の溝壁5は、踏面2sからタイヤ半径方向内側に向かって溝幅が小さくなる一対の第1溝壁部11と、第1溝壁部11のタイヤ半径方向内側に位置し、かつ、タイヤ半径方向内側に向かって溝幅が大きくなる一対の第2溝壁部12と、第1溝壁部11と第2溝壁部12との間の境界位置13とを含む。第1溝壁部11は、周方向溝3の深さ方向に対して35~50°の角度で傾斜している。踏面2sから境界位置13までの深さは、周方向溝3の最大深さの40%~70%である。周方向溝3の横断面において、溝底6は、溝幅方向に直線状に延びている。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
トレッド部を有するタイヤであって、
前記トレッド部は、踏面と、前記踏面から凹む少なくとも1本の周方向溝とを含み、
前記周方向溝は、一対の溝壁と、溝底とを備え、
前記一対の溝壁は、
前記踏面からタイヤ半径方向内側に向かって溝幅が小さくなる一対の第1溝壁部と、
前記第1溝壁部のタイヤ半径方向内側に位置し、かつ、タイヤ半径方向内側に向かって溝幅が大きくなる一対の第2溝壁部と、
前記第1溝壁部と前記第2溝壁部との間の境界位置とを含み、
前記第1溝壁部は、前記周方向溝の深さ方向に対して35~50°の角度で傾斜し、
前記踏面から前記境界位置までの深さは、前記周方向溝の最大深さの40%~70%であり、
前記周方向溝の横断面において、前記溝底は、溝幅方向に直線状に延びる、
タイヤ。
【請求項2】
前記トレッド部は、2本の前記周方向溝と、前記2本の周方向溝の間の第1陸部とを含み、
前記周方向溝の前記踏面での開口幅は、前記踏面での前記第1陸部のタイヤ軸方向の最大幅の30%~60%である、請求項1に記載のタイヤ。
【請求項3】
前記境界位置での溝幅は、6mm以上である、請求項1又は2に記載のタイヤ。
【請求項4】
前記一対の第2溝壁部の最大の溝幅は、前記周方向溝の前記踏面での開口幅の50%~90%である、請求項1又は2に記載のタイヤ。
【請求項5】
前記トレッド部には、2本又は3本の前記周方向溝が設けられている、請求項1又は2に記載のタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、タイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、下記特許文献1には、トレッド部に複数の縦溝が設けられた乗用車用タイヤが提案されている。前記縦溝は、タイヤ半径方向内方に向かって溝巾を漸減させる上方部分と、タイヤ半径方向内方に向かって溝巾を漸増させる下方部分と、これらの間のくびれ状のウエスト部とを含んでいる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
車両の高性能化に伴い、タイヤにおいても耐ハイドロプレーニング性能の向上が求められている。一方、世界的に自動車の騒音規制が厳しくなっており、タイヤにも、ノイズ性能の向上が求められている。
【0005】
本開示は、以上のような実情に鑑み案出なされたもので、ノイズ性能及び耐ハイドロプレーニング性能を両立させたタイヤを提供することを主たる課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示は、トレッド部を有するタイヤであって、前記トレッド部は、踏面と、前記踏面から凹む少なくとも1本の周方向溝とを含み、前記周方向溝は、一対の溝壁と、溝底とを備え、前記一対の溝壁は、前記踏面からタイヤ半径方向内側に向かって溝幅が小さくなる一対の第1溝壁部と、前記第1溝壁部のタイヤ半径方向内側に位置し、かつ、タイヤ半径方向内側に向かって溝幅が大きくなる一対の第2溝壁部と、前記第1溝壁部と前記第2溝壁部との間の境界位置とを含み、前記第1溝壁部は、前記周方向溝の深さ方向に対して35~50°の角度で傾斜し、前記踏面から前記境界位置までの深さは、前記周方向溝の最大深さの40%~70%であり、前記周方向溝の横断面において、前記溝底は、溝幅方向に直線状に延びる、タイヤである。
【発明の効果】
【0007】
本開示のタイヤは、上記の構成を採用したことによって、ノイズ性能及び耐ハイドロプレーニング性能を両立させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本実施形態のタイヤのトレッド部の子午線断面図である。
【
図3】従来の周方向溝がウェット路面に接地するときの拡大断面図である。
【
図4】本実施形態の周方向溝がウェット路面に接地するときの拡大断面図である。
【
図5】比較例のタイヤのトレッド部の子午線断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本開示の実施の一形態が図面に基づき説明される。
図1は、本開示の一実施形態を示すタイヤ1の正規状態におけるトレッド部2の子午線断面図である。
図1に示されるように、本開示は、例えば、乗用車用の空気入りタイヤに適用されるのが望ましい。但し、このような態様に限定されるものではなく、本開示は、例えば、自動二輪車用や重荷重用のタイヤに適用されても良い。
【0010】
前記「正規状態」とは、各種の規格が定められた空気入りタイヤの場合、タイヤが正規リムにリム組みされ、かつ、正規内圧が充填され、しかも、無負荷の状態である。各種の規格が定められていないタイヤの場合、前記正規状態は、タイヤの使用目的に応じた標準的な使用状態であって車両に未装着かつ無負荷の状態を意味する。本明細書において、特に断りがない場合、タイヤ各部の寸法等は、前記正規状態で測定された値である。また、本明細書において、特に断りの無い限り、前記寸法の測定方法には、公知の方法を適宜適用することができる。
【0011】
「正規リム」は、タイヤが基づいている規格を含む規格体系において、当該規格がタイヤ毎に定めているリムであり、例えばJATMAであれば "標準リム" 、TRAであれば "Design Rim" 、ETRTOであれば"Measuring Rim" である。
【0012】
「正規内圧」は、タイヤが基づいている規格を含む規格体系において、各規格がタイヤ毎に定めている空気圧であり、JATMAであれば "最高空気圧" 、TRAであれば表 "TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES" に記載の最大値、ETRTOであれば "INFLATION PRESSURE" である。
【0013】
本実施形態のタイヤ1の内部には、カーカスやベルト層等のタイヤ構成部材が配されている(図示省略)。これらのタイヤ構成部材には、公知の態様が適宜採用される。
【0014】
トレッド部2は、踏面2sと、踏面2sから凹む少なくとも1本の周方向溝3とを含む。本実施形態のトレッド部2には、2つのトレッド端Teの間に複数の周方向溝3が設けられている。周方向溝3は、例えば、タイヤ周方向に連続して延びている。また、トレッド部2は、複数の周方向溝3で区分された複数の陸部8を含む。
【0015】
2つのトレッド端Teは、正規状態のタイヤ1に正規荷重の70%が負荷されキャンバー角0°で平面に接地したときの最もタイヤ軸方向外側の接地位置である。また、この状態で前記平面に接地するトレッド部2の外面が、踏面2sに相当する。
【0016】
「正規荷重」は、各種の規格が定められた空気入りタイヤの場合、タイヤが基づいている規格を含む規格体系において、各規格がタイヤ毎に定めている荷重であり、JATMAであれば "最大負荷能力" 、TRAであれば表 "TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES" に記載の最大値、ETRTOであれば "LOAD CAPACITY" である。各種の規格が定められていないタイヤの場合、「正規荷重」は、上述の規格に準じ、タイヤを使用する上で適用可能な最大の荷重を指す。
【0017】
周方向溝3の溝幅及び深さは、タイヤのカテゴリに応じて適宜決定される。本実施形態において、周方向溝3の開口幅W1(踏面2s上での溝幅である。)は、少なくとも3mm以上であり、例えば、5~15mmである。周方向溝3の深さd1は、少なくとも3mm以上であり、例えば、5~10mmである、但し、本開示は、このような態様に限定されるものではない。
【0018】
図2には、2本の周方向溝3の拡大断面図が示されている。
図2に示されるように、周方向溝3は、一対の溝壁5と、溝底6とを備えている。また、一対の溝壁5は、一対の第1溝壁部11と、一対の第2溝壁部12と、これらの間の境界位置13とを含む。一対の第1溝壁部11は、踏面2sからタイヤ半径方向内側に向かって溝幅が小さくなっている。一対の第2溝壁部12は、第1溝壁部11のタイヤ半径方向内側に位置し、かつ、タイヤ半径方向内側に向かって溝幅が大きくなっている。
【0019】
本開示のタイヤ1では、第1溝壁部11が、周方向溝3の深さ方向(以下、単に「深さ方向」という場合がある。)に対して35~50°の角度θ1で傾斜している。また、踏面2sから境界位置13までの深さd3は、周方向溝の最大深さd2の40%~70%である。また、周方向溝3の横断面において、溝底6は、溝幅方向に直線状に延びている。本開示のタイヤ1は、上述の構成を採用したことにより、ノイズ性能及び耐ハイドロプレーニング性能を両立させることができる。そのメカニズムは、以下の通りである。
【0020】
図3には、従来の周方向溝gvがウェット路面Gに接地するときの周方向溝gvの拡大断面図が示されている。
図3に示されるように、従来の周方向溝gvの溝壁gwは、溝縁から溝底まで、溝幅を小さくする向きに傾斜している。一般に、周方向溝gvの深さ方向に対する、溝壁gwの角度は、10°以下とされる。周方向溝gvがウェット路面Gに接地すると、水Waが溝壁gwに案内されて周方向溝gvの内部に入り込む。タイヤの回転に伴って、トレッド部の踏面は、接地後すぐに路面から離れるため、周方向溝gvの排水性を高めるには、その内部に水Waが入り込み易いことが重要である。
【0021】
図4には、本開示の周方向溝3がウェット路面Gに接地するときの周方向溝3の拡大断面図が示されている。
図4に示されるように、本開示の周方向溝3は、上述の構成を備えることにより、従来の形状を有する周方向溝gv(
図3に示す)と溝容積を揃えて比較した場合、開口幅が大きく、接地時により多くの水を溝内に取り込むことができる。
【0022】
また、本開示の周方向溝3は、第1溝壁部11の角度が適正化されているため、溝内に取り込まれた水は、第1溝壁部11に案内されて溝底6側に早く移動することができる。また、溝底6が直線状であるため、周方向溝3は、第2溝壁部12側において、大きな容積を有し、水がさらに溝底6側に移動し易くなる。本開示では、このような作用により、周方向溝3の排水性が向上し、耐ハイドロプレーニング性能が向上する。
【0023】
他方、一般に、周方向溝が発生する気柱共鳴音のエネルギーは、その周方向溝の容積に比例するが、周方向溝の溝壁及び溝底の表面積が大きい程、溝壁及び溝底の表面でエネルギーの散逸が生じ、気柱共鳴音のエネルギーが小さくなることが知られている。本開示の周方向溝3は、溝壁5が第1溝壁部11及び第2溝壁部12を含み、かつ、溝底6が直線状であることにより、従来の形状の周方向溝gvと比較して、溝壁5及び溝底6の表面積が十分に大きい。したがって、本開示の周方向溝3では、上述のエネルギーの散逸がより大きく生じて気柱共鳴音の低減が期待でき、ノイズ性能が向上する。
【0024】
以上のメカニズムにより、本開示のタイヤ1は、ノイズ性能及び耐ハイドロプレーニング性能を両立させることができる。また、本開示の周方向溝3について、溝容積が適宜調整されることにより、ノイズ性能を維持しつつ、耐ハイドロプレーニング性能に優れたタイヤや、耐ハイドロプレーニング性能を維持しつつ、ノイズ性能に優れたタイヤを得ることができる。
【0025】
以下、本実施形態のさらに詳細な構成が説明される。なお、以下で説明される各構成は、本実施形態の具体的態様を示すものである。したがって、本開示は、以下で説明される構成を具えないものであっても、上述の効果を発揮し得るのは言うまでもない。また、上述の特徴を具えた本開示のタイヤに、以下で説明される各構成のいずれか1つが単独で適用されても、各構成に応じた性能の向上は期待できる。さらに、以下で説明される各構成のいくつかが複合して適用された場合、各構成に応じた複合的な性能の向上が期待できる。
【0026】
図1に示されるように、トレッド部2には、2本又は3本の周方向溝3が設けられているのが望ましい。これにより、本実施形態のタイヤ1は、トレッド部2が3つの陸部8で構成された3リブタイヤ、又は、トレッド部2が4つの陸部8で構成された4リブタイヤであるのが望ましい。
【0027】
図2に示されるように、トレッド部2は、2本の周方向溝3と、これらの周方向溝3の間の第1陸部8aとを含む。また、周方向溝3の踏面2sでの開口幅W1は、踏面2sでの第1陸部8aのタイヤ軸方向の最大幅W2の望ましくは30%以上、より望ましくは35%以上であり、望ましくは60%以下、より望ましくは55%以下である。これにより、ノイズ性能と耐ハイドロプレーニング性能がバランス良く向上する。
【0028】
本実施形態の周方向溝3は、その横断面において、深さ方向に延びる溝中心線(図示省略)に対して線対称である。これにより、一対の第1溝壁部11は、互いに同じ形状で構成されている。但し、本開示は、このような態様に限定されるものではない。
【0029】
第1溝壁部11は、平面状に構成されている。これにより、周方向溝3の横断面において、第1溝壁部11は、周方向溝3の溝縁3eから第2溝壁部12との境界位置13まで直線状に延びている。第1溝壁部11は、例えば、タイヤ外方側に凸の滑らかな湾曲面で構成されても良い。
【0030】
第1溝壁部11の周方向溝3の深さ方向に対する角度θ1は、より望ましくは40~45°である。踏面2sから境界位置13までの深さd3は、周方向溝3の最大深さd2の望ましくは45%~55%である。このような周方向溝3は、上述の効果をさらに確実に発揮することができる。
【0031】
境界位置13での溝幅W3は、望ましくは6mm以上であり、より望ましくは7mm以上である。これにより、優れた耐ハイドロプレーニング性能が発揮される。また、境界位置13での溝幅W3は、周方向溝3の開口幅W1の70%以下、より望ましくは60%以下である。これにより、優れたノイズ性能が発揮される。なお、一方の溝壁5における第1溝壁部11と第2溝壁部12との境界位置13と、他方の溝壁5における前記境界位置13とについて、深さ方向の位置が異なる場合、境界位置13での溝幅W3は、一方の溝壁5の前記境界位置13を通って深さ方向に延びる仮想線と、他方の溝壁5の前記境界位置13を通る同様の仮想線との距離に相当する。
【0032】
本実施形態において、一対の第2溝壁部12は、互いに同じ形状で構成されているが、このような態様に限定されるものではない。第2溝壁部12は、第1溝壁部11とは逆向きに傾斜しており、平面状に構成されている。これにより、周方向溝3の横断面において、第2溝壁部12は、第1溝壁部11との境界位置13からタイヤ半径方向内側に向かって直線状に延びている。第2溝壁部12の深さ方向に対する角度θ2は、例えば、第1溝壁部11の前記角度θ1よりも小さい。具体的には、第2溝壁部12の前記角度θ2は、20~35°であるのが望ましい。
【0033】
本実施形態では、一対の第2溝壁部12の最大の溝幅W4が、周方向溝3の踏面2sでの開口幅W1よりも小さい。具体的には、一対の第2溝壁部12の前記溝幅W4は、前記開口幅W1の望ましくは50%以上、より望ましくは60%以上であり、望ましくは90%以下、より望ましくは80%以下である。これにより、耐ハイドロプレーニング性能とノイズ性能とがバランス良く向上する。
【0034】
溝底6は、例えば、円弧状に湾曲する湾曲面を介して第2溝壁部12と連なっている。本実施形態の溝底6は、境界位置13での溝幅W3よりも大きい範囲で、直線状に延びている。これにより、ノイズ性能及び耐ハイドロプレーニング性能がさらに向上する。
【0035】
以上、本開示の一実施形態のタイヤが詳細に説明されたが、本開示は、上記の具体的な実施形態に限定されることなく、種々の態様に変更して実施され得る。
【実施例0036】
実施例のタイヤとして、サイズ215/55R17の空気入りタイヤが製造された。実施例のタイヤは、
図1で示されるトレッド部を有し、かつ、周方向溝が
図2で示される断面形状を有している。比較例1として、
図5に示されるトレッド部a及び周方向溝bを有するタイヤが試作された。比較例1の周方向溝bは、
図3で示される従来の周方向溝と同様の断面形状を有している。また、比較例1の周方向溝の溝壁の深さ方向に対する角度は、5°である。比較例2~5として、
図1で示されるトレッド部を有し、かつ、周方向溝が
図2で示されている断面形状を有しているが、第1溝壁部の角度や踏面から境界位置までの深さが本開示の範囲から外れているタイヤが試作された。比較例1~5のタイヤは、上記の事項を除き、実質的に実施例のタイヤと同じである。これらのテストタイヤについて、耐ハイドロプレーニング性能、ノイズ性能がテストされた。各テストタイヤの共通仕様やテスト方法は、以下の通りである。
装着リム:17×7.5
タイヤ内圧:前輪220kPa、後輪240kPa
テスト車両:排気量2000cc、後輪駆動車
タイヤ装着位置:全輪
【0037】
<耐ハイドロプレーニング性能>
上記テスト車両を、水深10mmの水膜を張ったウェット路面に、速度を段階的に増加させながら進入させ、ハイドロプレーニング現象が発生したときの速度が測定された。結果は、比較例1の前記速度を100とする指数で示されており、数値が大きいほど、前記速度が大きく、耐ハイドロプレーニング性能が優れていることを示す。
【0038】
<ノイズ性能>
上記テスト車両でドライ路面を速度100km/hで走行したときの、周方向溝の気柱共鳴音が測定された。結果は、比較例1の前記気柱共鳴音のエネルギーの逆数を100とする指数で示されており、数値が大きい程、前記エネルギーが小さく、良好であることを示す。
テストの結果が表1~2に示される。
【0039】
【0040】
【0041】
表1~2の「周方向溝の容積の合計」は、トレッド部に設けられた複数の周方向溝の容積の合計が、比較例1を100とする指数で示されている。また、表1~2の「トータル性能」は、上述の耐ハイドロプレーニング性能及びノイズ性能の指数の合計点である。
【0042】
表1の比較例1と比較例2~5との比較から読み取れる通り、
図1で示されるトレッド部を有するタイヤであっても、第1溝壁部や踏面から境界位置までの深さが本開示の範囲から外れている場合、耐ハイドロプレーニング性能とノイズ性能とを両立させるのは難しい。
【0043】
これに対し、表2の実施例1~7で示される通り、本開示のタイヤは、ノイズ性能及び耐ハイドロプレーニング性能を両立させていることが確認できた。
【0044】
[付記]
本開示は以下の態様を含む。
【0045】
[本開示1]
トレッド部を有するタイヤであって、
前記トレッド部は、踏面と、前記踏面から凹む少なくとも1本の周方向溝とを含み、
前記周方向溝は、一対の溝壁と、溝底とを備え、
前記一対の溝壁は、
前記踏面からタイヤ半径方向内側に向かって溝幅が小さくなる一対の第1溝壁部と、
前記第1溝壁部のタイヤ半径方向内側に位置し、かつ、タイヤ半径方向内側に向かって溝幅が大きくなる一対の第2溝壁部と、
前記第1溝壁部と前記第2溝壁部との間の境界位置とを含み、
前記第1溝壁部は、前記周方向溝の深さ方向に対して35~50°の角度で傾斜し、
前記踏面から前記境界位置までの深さは、前記周方向溝の最大深さの40%~70%であり、
前記周方向溝の横断面において、前記溝底は、溝幅方向に直線状に延びる、
タイヤ。
[本開示2]
前記トレッド部は、2本の前記周方向溝と、前記2本の周方向溝の間の第1陸部とを含み、
前記周方向溝の前記踏面での開口幅は、前記踏面での前記第1陸部のタイヤ軸方向の最大幅の30%~60%である、本開示1に記載のタイヤ。
[本開示3]
前記境界位置での溝幅は、6mm以上である、本開示1又は2に記載のタイヤ。
[本開示4]
前記一対の第2溝壁部の最大の溝幅は、前記周方向溝の前記踏面での開口幅の50%~90%である、本開示1又は2に記載のタイヤ。
[本開示5]
前記トレッド部には、2本又は3本の前記周方向溝が設けられている、本開示1又は2に記載のタイヤ。