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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023165544
(43)【公開日】2023-11-16
(54)【発明の名称】断熱構造及び断熱方法
(51)【国際特許分類】
   E04B 1/76 20060101AFI20231109BHJP
【FI】
E04B1/76 400C
E04B1/76 500F
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022076717
(22)【出願日】2022-05-06
(71)【出願人】
【識別番号】504093467
【氏名又は名称】トヨタホーム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】笹川 拓也
【テーマコード(参考)】
2E001
【Fターム(参考)】
2E001DD01
2E001FA03
2E001GA01
2E001GA05
2E001HA32
2E001HA33
(57)【要約】
【課題】柱及び断熱材の施工がし易い断熱構造及び断熱方法を提供する。
【解決手段】断熱構造は、建物10の出隅部に配置され、上下方向に配置された下柱と上柱とを備えて形成された柱12と、下柱及び上柱それぞれの屋内側の面に配置され、下柱と上柱とを連結する連結部材20と、柱12の屋外側の隣り合う2面を被覆する外側断熱材30と、外側断熱材30を柱12に固定する固定部材40と、外側断熱材30とは別部材で形成されると共に、外側断熱材30と接して配置され、柱12の屋内側の2面を被覆する内側断熱材50と、を有する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物の出隅部に配置され、上下方向に配置された下柱と上柱とを備えて形成された柱と、
前記下柱及び前記上柱それぞれの屋内側の面に配置され、前記下柱と前記上柱とを連結する連結部材と、
前記柱の屋外側の隣り合う2面を被覆する外側断熱材と、
前記外側断熱材を前記柱に固定する固定部材と、
前記外側断熱材とは別部材で形成されると共に、前記外側断熱材と接して配置され、前記柱の屋内側の2面を被覆する内側断熱材と、
を有する断熱構造。
【請求項2】
前記固定部材は、
前記柱に塗布された接着剤である、
請求項1に記載の断熱構造。
【請求項3】
前記固定部材は、
前記柱に接合され、前記柱の屋外側へ突出した複数の棒状部材であり、前記棒状部材は前記外側断熱材を貫通している、請求項1に記載の断熱構造。
【請求項4】
前記固定部材は、
前記柱に接合された木下地材と、
前記木下地材に挿入され、前記柱の屋外側へ突出した複数の棒状部材と、を備え、
前記棒状部材は前記外側断熱材を貫通している、請求項1に記載の断熱構造。
【請求項5】
柱の上側を形成する上柱の隣り合う2面に外側断熱材を固定して被覆する工程と、
柱の下側を形成する下柱の隣り合う2面に外側断熱材を固定して被覆する工程と、
建物の出隅部に前記下柱を設置する工程と、
前記下柱の屋内側の面及び前記上柱の屋内側の面に連結部材を配置して、前記下柱と上柱とを連結し、柱を形成する工程と、
前記柱の屋内側の2面を内側断熱材で被覆して、前記外側断熱材と前記内側断熱材とが連続した断熱層を形成する工程と、
を有する断熱方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、断熱構造及び断熱方法に関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、建物の出隅部に設けられた柱に断熱材を貼り付けて、外壁出隅部に熱橋による結露が発生することを抑制する、建物の外壁出隅部構造が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010-156119号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1の外壁出隅部構造のように、柱を断熱材で被覆することは熱橋を抑制するために有効である。特に建物の出隅部は、2方向から外気に晒されることに起因して熱橋が生じやすいため、断熱性能を向上することが求められている。そこで、建物の出隅部の断熱性能を向上するために、出隅部の柱には、上記特許文献1に示されたような屋外側の断熱材に加えて、屋内側にも断熱材を敷設することが考えられる。
【0005】
しかしながら、建物の柱は下柱と上柱とを連結して形成する場合が多く、このような場合においては、柱部材の連結部と断熱材との干渉により、連結部の施工や断熱材の配置が困難となることがある。
【0006】
本発明は、上記事実を考慮して、柱及び断熱材の施工がし易い断熱構造及び断熱方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第一態様の断熱構造は、建物の出隅部に配置され、上下方向に配置された下柱と上柱とを備えて形成された柱と、前記下柱及び前記上柱それぞれの屋内側の面に配置され、前記下柱と前記上柱とを連結する連結部材と、前記柱の屋外側の隣り合う2面を被覆する外側断熱材と、前記外側断熱材を前記柱に固定する固定部材と、前記外側断熱材とは別部材で形成されると共に、前記外側断熱材と接して配置され、前記柱の屋内側の2面を被覆する内側断熱材と、を有する。
【0008】
第一態様の断熱構造では、建物の出隅部に配置された柱の屋外側の2面が外側断熱材で被覆されている。また、柱の屋内側の2面も、内側断熱材で被覆されている。この内側断熱材は、外側断熱材と接して配置されている。このため、建物の出隅部において、柱の屋外側から屋内側にかけて、連続した断熱層が形成される。これにより、熱橋が生じやすい建物の出隅部の断熱性を高めることができる。
【0009】
また、この断熱構造では、外側断熱材と内側断熱材とが別体で形成されている。このため、断熱材の施工時期を、外側と内側とでずらすことができる。これにより、例えば下柱及び上柱の屋外側の面に外側断熱材を配置して、下柱と上柱とを連結部材で連結し、その後、下柱及び上柱それぞれの屋内側の面に内側断熱材を配置する、といった工程を採用できる。このような工程を踏まえると、下柱と上柱との連結部の施工すなわち柱の施工及び断熱材の施工が容易である。
【0010】
これに対して、仮に、外側断熱材と内側断熱材とが一体的に形成されている場合、断熱材の施工後に下柱と上柱とを連結しようとしても、連結部材が断熱材と干渉して連結し難い。あるいは、下柱及び上柱の連結後に断熱材を施工しようとしても、柱の屋外側に足場を組んで屋外側から作業したり、屋内側から柱の屋外側へ手を伸ばして作業したりする必要があり、作業性が悪い。
【0011】
また、外側断熱材と内側断熱材とが一体的に形成されている場合、柱の屋外側から屋内側へ断熱材を折り曲げて施工するため、この折り曲げた部分の厚みが薄くなり、他の部分より断熱性が劣る可能性がある。これに対して、外側断熱材と内側断熱材とが別体で形成されていれば、このような折り曲げによる断熱性の劣化が生じることを抑制できる。
【0012】
第二態様の断熱構造は、第一態様に記載の断熱構造において、前記固定部材は、前記柱に塗布された接着剤である。
【0013】
第二態様の断熱構造では、外側断熱材を柱に固定する固定部材が接着剤である。接着剤は面状に塗布されるため、外側断熱材を柱に対して面で支持できる。これにより外側断熱材を安定的に保持し易い。
【0014】
第三態様の断熱構造は、第一態様に記載の断熱構造において、前記固定部材は、前記柱に接合され、前記柱の屋外側へ突出した複数の棒状部材であり、前記棒状部材は前記外側断熱材を貫通している。
【0015】
第三態様の断熱構造では、外側断熱材を柱に固定する固定部材が、柱に接合され、柱の屋外側へ突出した複数の棒状部材である。
【0016】
この棒状部材は外側断熱材を貫通している。このような棒状部材によって外側断熱材を支持すると、外側断熱材の荷重が、棒状部材に作用する。棒状部材の剛性が十分に高ければ、外側断熱材に厚みや重量がある場合でも、外側断熱材が自重によってずり変形することが抑制される。このため、断熱性を保持し易い。
【0017】
第四態様の断熱構造は、第一態様に記載の断熱構造において、前記固定部材は、前記柱に接合された木下地材と、前記木下地材に挿入され、前記柱の屋外側へ突出した複数の棒状部材と、を備え、前記棒状部材は前記外側断熱材を貫通している。
【0018】
第四態様の断熱構造では、柱に接合された木下地材と、木下地材に挿入され、柱の屋外側へ突出した複数の棒状部材と、を備えている。
【0019】
この棒状部材は、外側断熱材を貫通している。このような棒状部材によって外側断熱材を支持すると、外側断熱材の荷重が、棒状部材に作用する。棒状部材の剛性が十分に高ければ、外側断熱材に厚みや重量がある場合でも、外側断熱材が自重によってずり変形することが抑制される。このため、断熱性を保持し易い。
【0020】
また、この棒状部材は、木下地材に挿入されている。木製の下地材は鋼製の下地材と比較して柔らかいため、ビス、釘、ステープルなど各種の棒状部材を挿入して固定し易い。このため様々な種類の棒状部材を用いることができ、汎用性が高い。
【0021】
第五態様の断熱方法は、柱の上側を形成する上柱の隣り合う2面に外側断熱材を固定して被覆する工程と、柱の下側を形成する下柱の隣り合う2面に外側断熱材を固定して被覆する工程と、建物の出隅部に前記下柱を設置する工程と、前記下柱の屋内側の面及び前記上柱の屋内側の面に連結部材を配置して、前記下柱と上柱とを連結し、柱を形成する工程と、前記柱の屋内側の2面を内側断熱材で被覆して、前記外側断熱材と前記内側断熱材とが連続した断熱層を形成する工程と、を有する。
【0022】
第五態様の断熱方法では、建物の出隅部に配置される柱の屋外側の2面が外側断熱材で被覆される。また、柱の屋内側の2面も、内側断熱材で被覆される。これらの外側断熱材と内側断熱材とは、連続した断熱層を形成する。このため、建物の出隅部において、柱の屋外側から屋内側にかけて、連続した断熱層が形成される。これにより、熱橋が生じやすい建物の出隅部の断熱性を高めることができる。
【0023】
また、この断熱方法では、断熱材の施工時期が、外側と内側とでずらされている。具体的には、下柱及び上柱それぞれの屋外側の面に外側断熱材を配置して、下柱と上柱とを連結部材で連結し、その後、下柱及び上柱それぞれの屋内側の面に内側断熱材を配置している。このような工程を踏まえると、下柱と上柱との連結部の施工、すなわち柱の施工及び断熱材の施工が容易である。
【0024】
これに対して、仮に、外側断熱材と内側断熱材とが一体的に形成されている場合、断熱材の施工後に下柱と上柱とを連結しようとしても、連結部材が断熱材と干渉して連結し難い。あるいは、下柱及び上柱の連結後に断熱材を施工しようとしても、柱の屋外側に足場を組んで屋外側から作業したり、屋内側から柱の屋外側へ手を伸ばして作業したりする必要があり、作業性が悪い。
【0025】
また、外側断熱材と内側断熱材とが一体的に形成されている場合、柱の屋外側から屋内側へ断熱材を折り曲げて施工するため、この折り曲げた部分の厚みが薄くなり、他の部分より断熱性が劣る可能性がある。これに対して、外側断熱材と内側断熱材とが別体で形成されていれば、このような折り曲げによる断熱性の劣化が生じることを抑制できる。
【発明の効果】
【0026】
本開示によると、柱及び断熱材の施工がし易い断熱構造及び断熱方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】本開示の実施形態に係る断熱構造の一例を示す平面図である。
図2】本開示の実施形態に係る断熱構造において、下柱と上柱との連結構造の一例を示す斜視図である。
図3】(A)は本開示の実施形態に係る断熱構造における内側断熱材の配置の一例を示す側断面図であり、(B)は別の一例を示す側断面図である。
図4】(A)は本開示の実施形態に係る断熱方法において、柱に外側断熱材を固定している状態を示す平面図であり、(B)は固定部材に外壁パネルを固定している状態を示す平面図であり、(C)は連結部材を用いて下柱に上柱を連結している状態を示す平面図であり、(D)は外側断熱材に接して内側断熱材を配置している状態を示す平面図であり、(E)は壁体断熱材を配置している状態を示す平面図である。
図5】本開示の実施形態に係る断熱構造において、固定部材の第1変形例を示す平面図である。
図6】(A)は第1変形例に係る断熱構造において、木桟に外側断熱材を固定した状態を示す斜視図であり、(B)は外側断熱材を柱に固定している状態を示す斜視図である。
図7】本開示の実施形態に係る断熱構造において、固定部材の第2変形例を示す平面図である。
図8】(A)は第2変形例に係る断熱構造において、ニードルに外側断熱材を貫通している状態を示す斜視図であり、(B)は外側断熱材を柱に固定している状態を示す斜視図である。
図9】本開示の実施形態に係る断熱構造において、固定部材の第3変形例を示す平面図である。
図10】(A)は第3変形例に係る断熱構造において、外側断熱材に棒状部材を貫通している状態を示す斜視図であり、(B)は外側断熱材を柱に固定している状態を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本開示の実施形態に係る断熱構造及び断熱方法について、図面を参照しながら説明する。各図面において同一の符号を用いて示される構成要素は、同一の構成要素であることを意味する。但し、明細書中に特段の断りが無い限り、各構成要素は一つに限定されず、複数存在してもよい。
【0029】
また、各図面において重複する構成及び符号については、説明を省略する場合がある。なお、本開示は以下の実施形態に限定されるものではなく、本開示の目的の範囲内において構成を省略する又は異なる構成と入れ替える等、適宜変更を加えて実施することができる。
【0030】
各図において矢印X、Yで示す方向は水平面に沿う方向であり、互いに直交している。また、矢印Zで示す方向は鉛直方向(上下方向)に沿う方向である。各図において矢印X、Y、Zで示される各方向は、互いに一致するものとする。
【0031】
<断熱構造>
図1には、本開示の一実施形態に係る断熱構造が示されている。この断熱構造は、鉄骨造の建物10の出隅部に適用され、柱12、連結部材20、外側断熱材30、固定部材40及び内側断熱材50を備えて形成されている。なお、この断熱構造は、木造の建物に適用することもできる。
【0032】
(柱)
柱12は、建物10の出隅部に配置された鉄骨柱であり、角型鋼管を用いて形成されている。図2に示すように、柱12は、上下方向に配置された下柱14と上柱16とを備えて形成されている。
【0033】
下柱14の上端面には、鋼製のプレート14Aが溶接されている。プレート14Aは、下柱14の上端の開口部を閉塞する板であり、平面視(X方向に沿う視線)で矩形状である。
【0034】
プレート14Aの屋内側の2つの端面(図2に示す手前側の2面)には、それぞれ固定片14Bが形成されている。固定片14Bは、プレート14Aの屋内側の端面において、屋外側の端面と接する位置に設けられている。
【0035】
固定片14Bにはボルト孔H1が形成されている。固定片14Bの形状は、ボルト孔H1を形成できるものであればよく特に限定されるものではないが、本実施形態においては略矩形状である。
【0036】
一方、上柱16の下端面には、鋼製のプレート16Aが溶接されている。プレート16Aは、上柱16の下端の開口部を閉塞する板であり、平面視で矩形状である。
【0037】
プレート16Aの屋内側の2つの端面(図2に示す手前側の2面)には、それぞれ固定片16Bが形成されている。固定片16Bは、プレート16Aの屋内側の端面において、屋外側の端面と接する位置に設けられている。また、固定片16Bは、平面視で固定片14Bと重なる位置に設けられている。
【0038】
固定片16Bにはボルト孔H2が形成されている。固定片16Bの形状は、ボルト孔H2を形成できるものであればよく特に限定されるものではないが、本実施形態においては略矩形状である。
【0039】
(連結部材)
下柱14と上柱16とは、連結部材20で連結されている。連結部材20は、ボルト20A及びナット20Bを備えている。なお、連結部材20は、ワッシャ等を備えていてもよい。
【0040】
ボルト20Aは、下柱14の固定片14Bに形成されたボルト孔H1と、上柱16の固定片16Bに形成されたボルト孔H2と、を挿通して配置される。ボルト20Aがボルト孔H1及びH2に挿通された状態でナット20Bを捩じ込むことにより、下柱14と上柱16とが連結される。
【0041】
(外側断熱材)
図1に示すように、外側断熱材30は、柱12の屋外側の隣り合う2面を被覆する断熱材であり、一例として、グラスウールやロックウール等がフィルムに被覆されて形成された袋状断熱材である。
【0042】
なお、外側断熱材30は、必ずしも袋状に形成しなくてもよく、フィルムを用いずに繊維が露出したものとしてもよい。また、外側断熱材30は、グラスウールやロックウール等が板状に成形された断熱材としてもよい。
【0043】
外側断熱材30は、柱12において屋外に面する一方側の面(X方向に沿う面)から他方側の面(Y方向に沿う面)に亘って巻き付けて配置されている。また、外側断熱材30は、柱12の屋外側の両面の全面を被覆している。
【0044】
なお、「全面を被覆」とは、図1に示すように、外側断熱材30が、柱12を平面視した場合に、X方向及びY方向に沿う面の全面を被覆している状態を示している。上下方向であるZ方向においては、部分的に外側断熱材30が配置されない間欠部を有していてもよい。
【0045】
さらに、外側断熱材30は、X方向に沿う部分とY方向に沿うそれぞれの部分が、柱12の外側へ延長して配置され、延長された部分が、後述する内側断熱材50と接して配置されている。
【0046】
また、図3に示すように、柱12における下柱14を覆う外側断熱材30と、上柱16を覆う外側断熱材30とは別体とされ、互いに接して配置されている。
【0047】
なお、後述する断熱材30A及び30B(図5参照)のように、外側断熱材30は、柱12におけるX方向に沿う面を覆う部材とY方向に沿う面を覆う部材とを分けて形成してもよい。
【0048】
(固定部材)
固定部材40は、柱12(下柱14及び上柱16)に塗布された接着剤である。固定部材40は、柱12の屋外側の両面の全面に塗布されている。これにより、柱12と外側断熱材30とが面接触する。
【0049】
なお、「全面に塗布」とは、図1に示すように、固定部材40が、柱12を平面視した場合に、X方向及びY方向に沿う面の全面に塗布されている状態を示している。上下方向であるZ方向においては、部分的に固定部材40が塗布されない間欠部を有していてもよい。
【0050】
(内側断熱材)
内側断熱材50は、柱12の屋内側の隣り合う2面をそれぞれ被覆する断熱材であり、グラスウールやロックウール等がフィルムに被覆されて形成された袋状断熱材である。なお、内側断熱材50は、必ずしも袋状に形成しなくてもよく、フィルムを用いずに繊維が露出したものとしてもよい。
【0051】
柱12の屋内側の一方の面と他方の面とは、それぞれ別体の内側断熱材50で被覆されている。また、内側断熱材50は、外側断熱材30とは別部材で形成されると共に、外側断熱材30と接して配置されている。なお、内側断熱材50は、柱12において屋内側の面の「全面」を被覆する必要はなく、少なくとも外側断熱材30寄りの部分を被覆していればよい。
【0052】
内側断熱材50は、平面視で連結部材20と重なる位置に配置されている。内側断熱材50は、図3(A)に示すように、下柱14と上柱16との境界部分で分割して形成し、下側の内側断熱材50と上側の内側断熱材50とで、連結部材20を上下方向に挟む構成とすることができる。
【0053】
また、内側断熱材50は、図3(B)に示すように、下柱14と上柱16との境界部分で連続して形成し、連結部材20、固定片14B及び16Bと干渉する部分を変形させて、連結部材20、固定片14B及び16Bを上下方向に挟む構成とすることもできる。
【0054】
内側断熱材50を変形させるためには、作業員が手指を用いて、連結部材20の形状に沿うように形を調整してもよいし、内側断熱材50に切り込みを入れて変形させ易くしてもよい。
【0055】
なお、図1に二点鎖線で示すように、柱12には、梁18が接合されている。内側断熱材50は、この梁18と干渉する部分で分割させたり、適宜変形させたりして用いることができる。内側断熱材50を梁18と干渉する部分で分割すれば、内側断熱材50を梁18に載置して保持することができる。すなわち、内側断熱材50は、梁18の位置に応じて、形状を適宜変更することができる。
【0056】
(その他の構成)
柱12の屋外側には、外壁パネル60が配置されている。外壁パネル60は、柱12と間隔を空けて配置され、この柱12と外壁パネル60との間に、外側断熱材30が配置されている。外壁パネル60は、固定部材60Aに固定されている。固定部材60Aは、図示しない連結部材を用いて、柱12又は梁18に連結され、保持されている。
【0057】
また、内側断熱材50には、壁体断熱材62及び64が接して配置されている。壁体断熱材62及び64は、建物10における外壁(屋外に面した壁体)の内部に配置された断熱材であり、外壁の略全面に亘って配置されている。壁体断熱材62は袋状断熱材であり、壁体断熱材62の外側に配置された壁体断熱材64は板状断熱材である。
【0058】
内側断熱材50と壁体断熱材62及び64とが接して配置されることにより、建物10の出隅部を含む外周部には、断熱材が連続して配置される。
【0059】
なお、壁体断熱材64と外壁パネル60とは間隔を空けて配置されている。この部分には、断熱材をさらに配置してもよいし、配置しなくてもよい。
【0060】
<断熱方法>
上述した断熱構造を形成する方法としての断熱方法について説明する。断熱構造を形成するためには、まず、図4(A)に示すように、柱12の上側を形成する上柱16の隣り合う2面に、接着剤である固定部材40を塗布する。固定部材40は、固定片16Bが設けられていない面に塗布される。そして、この固定部材40によって上柱16に外側断熱材30が固定され被覆される。
【0061】
次に、図4(B)に示すように、外壁パネル60を、固定部材60Aに固定する。これにより、図4(C)に二点鎖線で示すように、外壁パネル60と上柱16との間に外側断熱材30が保持された建物ユニット10Aが形成される。建物ユニット10Aは、図4(C)に二点鎖線で示すように、建物10(図1参照)の出隅部を含む箱型ユニットであり、工場において製造され、建物10の建設現場へ搬入される。
【0062】
図示は省略するが、同様に、柱12の下側を形成する下柱14(図2参照)の隣り合う2面にも、外側断熱材30が固定され被覆される。そして外壁パネル60を含む建物ユニットを形成し、建物10の建設現場へ搬入する。
【0063】
その後、建物10の出隅部に、下柱14を含む建物ユニットを設置する。換言すると、下柱14を含む建物ユニットが設置され、建物10の出隅部が形成される。そして、下柱14を含む建物ユニットの上方に、上柱16を含む建物ユニット10Aを配置する。そして、下柱14の屋内側の面及び上柱16の屋内側の面に連結部材20を配置して、下柱14と上柱16とを連結し、柱12を形成する。
【0064】
次に、図4(D)に示すように、柱12の屋内側の2面を内側断熱材50で被覆して、図4(E)に示すように、外側断熱材30と内側断熱材50とが連続した断熱層を形成する。その後、壁体断熱材64等を順次配置して、建物10を施工する。
【0065】
<作用及び効果>
本開示の断熱構造では、図1に示すように、建物10の出隅部に配置された柱12の屋外側の2面が外側断熱材30で被覆されている。また、柱12の屋内側の2面も、内側断熱材50で被覆されている。この内側断熱材50は、外側断熱材30と接して配置されている。このため、建物10の出隅部において、柱12の屋外側から屋内側にかけて、連続した断熱層が形成される。これにより、熱橋が生じやすい建物10の出隅部の断熱性を高めることができる。
【0066】
また、この断熱構造では、外側断熱材30と内側断熱材50とが別体で形成されている。このため、図4を用いて説明したように、断熱材の施工時期を、外側と内側とでずらすことができる。すなわち、例えば下柱14及び上柱16それぞれの屋外側の面に外側断熱材30を配置して(図4(A)参照)、下柱14と上柱16とを連結部材20で連結し(図4(C)参照)、その後、下柱14及び上柱16の屋内側の面に内側断熱材50を配置する(図4(D)参照)、といった工程を採用できる。このような工程を踏まえると、下柱14と上柱16との連結部の施工すなわち柱12の施工及び断熱材(外側断熱材30及び内側断熱材50)の施工が容易である。
【0067】
これに対して、仮に、外側断熱材30と内側断熱材50とが一体的に形成されている場合(比較例)、断熱材の施工後に下柱14と上柱16とを連結しようとしても、連結部材20が断熱材と干渉して連結し難い。あるいは、下柱14及び上柱16の連結後に断熱材を施工しようとしても、柱12の屋外側に足場を組んで屋外側から作業したり、屋内側から柱12の屋外側へ手を伸ばして作業したりする必要があり、作業性が悪い。
【0068】
また、外側断熱材30と内側断熱材50とが一体的に形成されている場合(比較例)、柱12の屋外側から屋内側へ断熱材を折り曲げて施工するため、この折り曲げた部分の厚みが薄くなり、他の部分より断熱性が劣る可能性がある。これに対して、本開示のように、外側断熱材30と内側断熱材50とが別体で形成されていれば、このような折り曲げによる断熱性の劣化が生じることを抑制できる。
【0069】
また、本開示の断熱構造では、外側断熱材30を柱12に固定する固定部材が接着剤である。接着剤は面状に塗布されるため、外側断熱材30を柱12に対して面で支持できる。これにより外側断熱材30を安定的に保持し易い。
【0070】
<変形例>
(第1変形例)
上記実施形態においては、固定部材40を接着剤としているが、本開示の実施形態はこれに限らない。例えば図5に示すように、木桟72、ビス74及び76で形成された固定部材70を用いてもよい。なお、木桟72は本開示における木下地材の一例であり、ビス74は本開示における棒状部材の一例である。
【0071】
木桟72は、ビス76を用いて柱12に接合されている。ビス74は、木桟72に挿入され、柱12の屋外側へ突出している、また、ビス74は、外側断熱材30を貫通している。
【0072】
この例においては、外側断熱材30を、柱12の屋外側の一方の面を被覆する断熱材30Aと、他方の面を被覆する断熱材30Bとに分割して、それぞれの断熱材30A及び30Bを、ビス74を用いて木桟72に固定している。
【0073】
図6(A)に示すように木桟72は、上下方向に沿う長尺部材である。複数のビス74によって断熱材30B(又は30A)が固定された木桟72は、図6(B)に示すように、複数のビス76を用いて柱12に固定される。
【0074】
このように、第1変形例に係る断熱構造では、固定部材70が、柱12に接合された木下地材としての木桟72と、木桟72に挿入され、柱12の屋外側へ突出した複数の棒状部材としてのビス74と、を備えている。
【0075】
このビス74は、外側断熱材30を貫通している。このようなビス74によって外側断熱材30を支持すると、外側断熱材30の荷重が、ビス74に作用する。ビス74の剛性が十分に高ければ、外側断熱材30に厚みや重量がある場合でも、外側断熱材30が自重によってずり変形することが抑制される。換言すると、ビス74としては、外側断熱材30が自重によってずり変形することを抑制できる程度の剛性を備えたものが選定されている。このため、断熱性を保持し易い。
【0076】
また、このビス74は、木桟72に挿入されている。木製の下地材は鋼製の下地材と比較して柔らかいため、ビス、釘、ステープルなど各種の棒状部材を挿入して固定し易い。このためビス74に代えて、様々な種類の棒状部材を用いることができ、汎用性が高い。
【0077】
(第2変形例)
本開示においては、図7に示すような固定部材80を用いてもよい。固定部材80は、ニードル82及び座金84を備えている。ニードル82は、柱12に接合され、柱12の屋外側へ突出した複数の棒状部材であり、外側断熱材30を貫通している。
【0078】
図8(A)に示すように、ニードル82は、外側断熱材30の固定に先立って、板状の基端部が予め接着剤や両面テープなどを用いて柱12に接合されている。ニードル82の先端は、図8(B)に示すように、上下方向に折り曲げて二股に分かれるように形成されている。外側断熱材30をニードル82の先端に押し付けて貫通させたあと、外側断熱材30の側に座金84を配置して、ニードル82の先端を開く。これにより、外側断熱材30が、柱12に固定される。
【0079】
このように、ニードル82は、外側断熱材30を貫通している。このようなニードル82によって外側断熱材30を支持すると、外側断熱材30の荷重が、ニードル82に作用する。ニードル82の剛性が十分に高ければ、外側断熱材30に厚みや重量がある場合でも、外側断熱材30が自重によってずり変形することが抑制される。換言すると、ニードル82としては、外側断熱材30が自重によってずり変形することを抑制できる程度の剛性を備えたものが選定されている。このため、断熱性を保持し易い。
【0080】
(第3変形例)
本開示においては、図9に示すような固定部材90を用いてもよい。固定部材90は、柱12に接合され、柱12の屋外側へ突出した複数の棒状部材であり、外側断熱材30を貫通している。固定部材90としては、溶接ピンが用いられる。この溶接ピンは、針部92と頭部94とを備えている。針部92は針状の部材であり、頭部94は、針部92の先端に形成された平板状の部材である。
【0081】
図10(A)に示すように、固定部材90は、外側断熱材30を柱12に押し当てた状態で、針部92を外側断熱材30に突き刺して配置する。針部92の先端が柱12に接触した状態で、外側断熱材30の外側から、頭部94に電流を流すことより、針部92の先端が柱12に溶接される。これにより、外側断熱材30が、柱12に固定される。
【0082】
このように、固定部材90は、外側断熱材30を貫通している。このような固定部材90によって外側断熱材30を支持すると、外側断熱材30の荷重が、固定部材90に作用する。固定部材90の剛性が十分に高ければ、外側断熱材30に厚みや重量がある場合でも、外側断熱材30が自重によってずり変形することが抑制される。換言すると、固定部材90としては、外側断熱材30が自重によってずり変形することを抑制できる程度の剛性を備えたものが選定されている。このため、断熱性を保持し易い。
【符号の説明】
【0083】
10 建物
12 柱
14 下柱
16 上柱
20 連結部材
20A ボルト(連結部材)
20B ナット(連結部材)
30 外側断熱材
30A 断熱材(外側断熱材)
30B 断熱材(外側断熱材)
40 固定部材
50 内側断熱材
70 固定部材
72 木桟(木下地材)
74 ビス(棒状部材)
80 固定部材
90 固定部材
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10