(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023165545
(43)【公開日】2023-11-16
(54)【発明の名称】電力制御機器、電力制御システム、及びプログラム
(51)【国際特許分類】
H02J 3/32 20060101AFI20231109BHJP
H02J 3/38 20060101ALI20231109BHJP
H02J 7/00 20060101ALI20231109BHJP
H02J 7/34 20060101ALI20231109BHJP
【FI】
H02J3/32
H02J3/38 120
H02J7/00 P
H02J7/34
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022076723
(22)【出願日】2022-05-06
(71)【出願人】
【識別番号】000006633
【氏名又は名称】京セラ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100132045
【弁理士】
【氏名又は名称】坪内 伸
(72)【発明者】
【氏名】東 和明
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 一生
【テーマコード(参考)】
5G066
5G503
【Fターム(参考)】
5G066AA04
5G066GA01
5G066GA02
5G066HA10
5G066HA17
5G066HB06
5G066HB09
5G066JA04
5G503AA01
5G503AA06
5G503AA07
5G503BA01
5G503BB02
5G503FA06
(57)【要約】
【課題】再生可能エネルギーによる発電の自己託送におけるインバランスを抑制するとともに、三相不平衡を抑制する、電力制御機器、電力制御システム、及びプログラムを提供する。
【解決手段】電力制御機器は、再生可能エネルギーに基づいて発電される三相電力のうち自己託送する電力を制御する。電力制御機器は、三相電力に基づく単相電力が供給される単相負荷に並列に接続される蓄電池の充放電を制御する。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
再生可能エネルギーに基づいて発電される三相電力のうち自己託送する電力を制御する電力制御機器であって、
前記三相電力に基づく単相電力が供給される単相負荷に並列に接続される蓄電池の充放電を制御する、電力制御機器。
【請求項2】
前記再生可能エネルギーに基づいて発電される三相電力のうち自己託送する電力の計画に応じて、前記蓄電池の充放電を制御する、請求項1に記載の電力制御機器。
【請求項3】
前記単相負荷によって消費される電力の少なくとも一部を放電するように前記蓄電池を制御する、請求項1に記載の電力制御機器。
【請求項4】
再生可能エネルギーに基づいて発電される三相電力のうち、前記単相負荷及び三相負荷によって消費される電力を差し引いた余剰分を自己託送するように制御する、請求項1に記載の電力制御機器。
【請求項5】
再生可能エネルギーに基づいて発電される三相電力の実績値が計画値を超える場合、余剰インバランスぶんの電力が前記蓄電池に充電されるように制御する、請求項1から請求項4のいずれかに記載の電力制御機器。
【請求項6】
自己託送を行わない時間に、前記蓄電池に電力が充電されるように制御する、請求項1から請求項4のいずれかに記載の電力制御機器。
【請求項7】
再生可能エネルギーに基づいて発電される三相電力の実績値が計画値に満たない場合、不足インバランスぶんの電力が前記蓄電池から放電されるように制御する、請求項1から請求項4のいずれかに記載の電力制御機器。
【請求項8】
自己託送を行う時間に、前記蓄電池から電力が放電されるように制御する、請求項1から請求項4のいずれかに記載の電力制御機器。
【請求項9】
前記蓄電池として定置型蓄電池の充放電を制御する、請求項1に記載の電力制御機器。
【請求項10】
前記蓄電池として電気自動車が備える蓄電池の充放電を制御する、請求項1に記載の電力制御機器。
【請求項11】
電力制御システムであって、
再生可能エネルギーに基づく発電を行う発電部と、
前記電力制御システムに接続された単相負荷に並列に接続される蓄電池と、
前記蓄電池の充放電を制御する電力制御機器と、
を含み、
前記蓄電池は、前記発電部が発電する電力を充電し、
前記電力制御機器は、前記発電部が発電する三相電力のうち自己託送する電力の計画に応じて、前記蓄電池の充放電を制御する、電力制御システム。
【請求項12】
電力制御システムの電力制御機器に、
前記電力制御システムに接続された単相負荷に並列に接続される蓄電池の充放電を制御するステップと、
再生可能エネルギーに基づく発電を行う発電部が発電する電力を前記蓄電池に充電させるステップと、
前記発電部が発電する三相電力のうち自己託送する電力の計画に応じて、前記蓄電池の充放電を制御するステップと、
を実行させる、プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電力制御機器、電力制御システム、及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、発電施設から出力される電力を、第三者エンティティによって管理される電力系統を介して、発電施設から需要施設に対して送電する仕組みとして、自己託送が知られている。自己託送を行うシステムにおいて、自己託送の電力を適切に把握する技術が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
現在、太陽光のような再生可能エネルギーによって発電された電力を、自己託送を利用して自社の他の拠点に系統線を経て送電することが注目されている。自己託送を利用する場合、電気の需要量及び供給量を所定の時間(例えば30分)単位で予測し、その計画値を報告する必要がある(すなわち、計画値同時同量の制度を守る必要がある)。その計画値と実績値のズレ、すなわちインバランスが生じると、そのインバランスに応じてペナルティ(インバランス料金)が課される。
【0004】
また、発電システムにおいて発電される電力を三相電力として利用する場合、単相負荷の接続相のばらつきにより三相の電圧降下が不均等になることがある(三相不平衡)。三相不平衡の電力が三相負荷に供給されると、各種不具合の原因になり得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述したような発電システムにおいて、再生可能エネルギーによる発電の自己託送におけるインバランスを抑制することが望ましい。また、上述したような発電システムにおいて、三相不平衡を抑制することが望ましい。
【0007】
本開示の目的は、再生可能エネルギーによる発電の自己託送におけるインバランスを抑制するとともに、三相不平衡を抑制する、電力制御機器、電力制御システム、及びプログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
一実施形態に係る電力制御機器は、
再生可能エネルギーに基づいて発電される三相電力のうち自己託送する電力を制御する。
前記電力制御機器は、前記三相電力に基づく単相電力が供給される単相負荷に並列に接続される蓄電池の充放電を制御する。
【0009】
一実施形態に係る電力制御システムは、
再生可能エネルギーに基づく発電を行う発電部と、
前記電力制御システムに接続された単相負荷に並列に接続される蓄電池と、
前記蓄電池の充放電を制御する電力制御機器と、
を含む。
前記蓄電池は、前記発電部が発電する電力を充電する。
前記電力制御機器は、前記発電部が発電する三相電力のうち自己託送する電力の計画に応じて、前記蓄電池の充放電を制御する。
【0010】
一実施形態に係るプログラムは、
電力制御システムの電力制御機器に、
前記電力制御システムに接続された単相負荷に並列に接続される蓄電池の充放電を制御するステップと、
再生可能エネルギーに基づく発電を行う発電部が発電する電力を前記蓄電池に充電させるステップと、
前記発電部が発電する三相電力のうち自己託送する電力の計画に応じて、前記蓄電池の充放電を制御するステップと、
を実行させる。
【発明の効果】
【0011】
一実施形態によれば、再生可能エネルギーによる発電の自己託送におけるインバランスを抑制するとともに、三相不平衡を抑制する、電力制御機器、電力制御システム、及びプログラムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】一実施形態の比較例に係る電力制御システムの構成を示す図である。
【
図2】一実施形態の比較例に係る電力制御システムにおける自己託送を説明する図である。
【
図3】一実施形態の比較例に係る電力制御システムにおける自己託送を説明する図である。
【
図4】一実施形態に係る電力制御システムの構成を示す図である。
【
図5】一実施形態に係る電力制御システムの動作を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本開示において、電力制御システム及び/又は電力制御機器は、電力によって動作するシステム及び/又は機器としてよい。また、電力制御システム及び/又は電力制御機器は、電力を制御する機能を含むものとしてよい。電力制御システム及び/又は電力制御機器の機能は、電力を制御する機能に限定されず、他の機能を有してもよい。
【0014】
また、本開示において、「自己託送」とは、例えば、経済産業省の外局である資源エネルギー庁によって制定された「自己託送に係る指針」(平成26年4月1日施行、令和3年11月18日改正)に規定されたものとしてよい。すなわち、自己託送とは、自家用発電設備を設置する者が、当該自家用発電設備を用いて発電した電力を一般電気事業者が維持し、及び運用する送配電ネットワークを介して、当該自家用発電設備を設置する者の別の場所にある工場等に送電する際に、当該一般電気事業者が提供する送電サービスのこととしてよい。
【0015】
以下、一実施形態に係る電力制御システムについて、図面を参照して説明する。一実施形態に係る電力制御システムを説明するに際し、まず、一実施形態の比較例に係る電力制御システムを説明する。
【0016】
図1は、一実施形態の比較例に係る電力制御システムの構成例を示す図である。
【0017】
図1に示す電力制御システムは、発電所100において発電される電力を、系統線GLを経て、需要場所200に送電する。
図1に示すように、発電所100及び需要場所200は、ともに系統線GLに接続される。したがって、発電所100と需要場所200とは、系統線GLを介して接続される。
図1において、送電及び/又は受電の際の経路、すなわち電力の経路を、主として実線により示す。また、
図1において、情報の送信及び/又は受信の際の経路、すなわち電気信号の経路を、主として破線により示す。
【0018】
発電所100は、電力制御機器10と、計器11と、開閉器12と、三相変圧器13と、パワーコンディショナ20と、太陽電池30と、蓄電池40とを備えてよい。
【0019】
電力制御機器10は、発電所100における各機能部を制御することにより、発電所100における電力を制御する。電力制御機器10は、発電所100における各機能部の動作を制御するコントローラとしてよい。このコントローラは、種々の機能を実行するための制御及び処理能力を提供するために、例えば、CPU(Central Processing Unit)又はDSP(Digital Signal Processor)のような、少なくとも1つのプロセッサを含んでよい。コントローラは、1つのプロセッサで実現してよいし、複数のプロセッサで実現してよい。コントローラは、単一の集積回路として実現されてよい。プロセッサは、通信可能に接続された複数の集積回路及びディスクリート回路として実現されてよい。コントローラは、CPU又はDSP、及び当該CPU又はDSPで実行されるプログラムのようなソフトウェアとして構成されてよい。コントローラにおいて実行されるプログラム及びコントローラにおいて実行された処理の結果などは、それぞれ任意の記憶部に記憶されてよい。
【0020】
電力制御機器10は、それぞれハードウェア資源として構成されてもよいし、ソフトウェアとして構成されてもよいし、ソフトウェアとハードウェア資源とが協働することによって構築されてもよい。電力制御機器10による制御については、さらに後述する。
【0021】
計器11は、発電所100から系統線GLに出力される電力を計測する。計器11は、系統線GLからに発電所100に供給される電力を計測してもよい。計器11から出力される発電所100の電力は、系統線GLに供給される。このため、計器11と系統線GLとは例えば電線などによって接続されてよい。また、計器11は、その他各部の電力などを適宜計測できるものとしてもよい。計器11による計測の結果は、電力制御機器10に送信されてよい。このため、計器11と電力制御機器10とは、有線及び無線の少なくとも一方によって接続されてよい。計器11は、各部の電力などを計測する任意の機器を採用してよい。計器11は、各部の電力などを計測する任意の機器として、既知のものを採用してよいため、より詳細な説明は省略する。また、計器11は、開閉器12と例えば電線などによって接続されてよい。
【0022】
開閉器12は、計器11と三相変圧器13との間の電力の経路の接続(閉)と切断(開)とを切り替える。開閉器12は、例えば電力制御機器10によって開閉が切り替えられてよい。開閉器12は、他の手段又は手動などによって開閉が切り替えられてもよい。開閉器12は、2点間の電力の経路の接続と切断とを切り替える任意の機器を採用してよい。開閉器12そのものは既知であるため、より詳細な説明は省略する。開閉器12は、三相変圧器13と例えば電線などによって接続されてよい。
【0023】
三相変圧器13は、三相電力(三相交流電力)を変圧する。太陽電池30によって発電された電力は、パワーコンディショナ20を経てから、三相変圧器13に入力される。三相変圧器13は、入力された三相電力を変圧して、開閉器12に出力する。このため、三相変圧器13は、パワーコンディショナ20と例えば電線などによって接続されてよい。また、三相変圧器13は、開閉器12と例えば電線などによって接続されてよい。三相変圧器13は、三相電力を変圧(昇圧及び/又は降圧)する任意の機器を採用してよい。三相変圧器13は、三相電力を変圧する任意の機器として、既知のものを採用してよいため、より詳細な説明は省略する。
【0024】
パワーコンディショナ20は、太陽電池30による電力の発電を制御及び/又は管理する。パワーコンディショナ20は、例えば、入力された直流の電力を交流の電力に変換する機能を備えてよい。パワーコンディショナ20は、例えば太陽電池30のような発電装置が発電して外部に出力する電力を制御する任意のパワーコンディショナ(Power Conditioning Subsystem:PCS)としてよい。パワーコンディショナそのものは既知であるため、より詳細な説明は省略する。パワーコンディショナ20は、太陽電池30と例えば電線などによって接続されてよい。
【0025】
太陽電池30は、光エネルギーを電力に変換する。太陽電池30は、光電変換可能なものであればその種類は制限されない。太陽電池30は、例えば、シリコン系多結晶太陽電池、シリコン系単結晶太陽電池、又はCIGS等薄膜系太陽電池などとしてよい。一実施形態において、太陽電池は、電力を供給するために太陽光発電を行う機能を有するものであれば、任意の電源を採用してよい。また、太陽電池30は、再生可能エネルギーによる発電を行う発電装置の一例として示すものである。したがって、太陽電池30は、例えば、風力発電のような他の再生可能エネルギーによる発電を行う装置に代替してもよい。
【0026】
図1において、太陽電池30が発電した電力は、パワーコンディショナ20によって直流から交流に変換され、三相変圧器13によって例えば200Vなどから、例えば6600Vなどに昇圧されてよい。このようにして三相変圧器13によって昇圧された交流の電力は、自己託送を行う電力として、系統線GLに流すことができる。
【0027】
一実施形態において、電力制御機器10は、太陽電池30の発電を制御してよい。電力制御機器10は、例えば、太陽電池30の発電を制御するパワーコンディショナ20を制御してよい。このため、電力制御機器10とパワーコンディショナ20とは、有線及び無線の少なくとも一方によって接続されてよい。一実施形態において、電力制御機器10は、計器11による計測結果に基づいて、太陽電池30の発電を制御してよい。
【0028】
蓄電池40は、電力の充電及び放電が可能な任意の蓄電池によって構成されてよい。例えば、蓄電池40は、リチウムイオン電池又はニッケル水素電池等の蓄電池から構成されてよい。蓄電池40は、充電された電力を放電することにより、電力を供給可能である。蓄電池40は、交流電力を直流電力に変換し、当該変換された直流電力を充電してよい。蓄電池40は、充電された直流電力を放電し、当該放電された直流電力を交流電力に変換してから出力してよい。このように、直流電力と交流電力とを変換する機能部は、蓄電池40に含まれるものとして、
図1において図示を省略してある。直流電力と交流電力とを変換する機能部は、例えば
図1に示す太陽電池30に接続されたパワーコンディショナ20と同様の機能を有してもよい。
【0029】
また、蓄電池40は、系統線GLから供給される電力、太陽電池30から供給される電力、燃料電池から供給される電力、及び他の電源などから供給される電力の少なくともいずれかを充電可能である。この場合、蓄電池40は、電力をやり取りする各機能部と例えば電線などによって接続されてよい。一実施形態において、蓄電池40は、電力を充電及び放電する機能を有するものであれば、任意の電源を採用してよい。また、蓄電池40は、例えば、車載充電装置を搭載した電気自動車(Electric Vehicle:EV)又はプラグインハイブリッド車などとしてもよい。
【0030】
図1に示すように、蓄電池40は、三相変圧器13とパワーコンディショナ20との間に、例えば電線などによって接続されてよい。
【0031】
一実施形態において、電力制御機器10は、蓄電池40の充電及び放電の少なくとも一方を制御してよい。このため、電力制御機器10と蓄電池40とは、有線及び無線の少なくとも一方によって接続されてよい。一実施形態において、電力制御機器10は、計器11による計測結果に基づいて、蓄電池40の充電及び放電の少なくとも一方を制御してよい。
【0032】
需要場所200は、発電所100によって発電された電力のうち需要場所200に自己託送される電力を消費する負荷を適宜備えてよい。需要場所200を所有する事業者は、発電所100を所有する事業者と同じであるか、又は同じグループ企業に属するなど、密接な関係を有するものとしてよい。
【0033】
次に、
図1に示す電力制御システムにおいて行う自己託送について説明する。
【0034】
図1に示す発電所100は、太陽電池30によって発電される電力の自己託送を行う際に、蓄電池40を活用することができる。例えば、
図1に示す発電所100は、太陽電池30によって発電される電力のうち、発電所100において消費される電力を差し引いた余剰分の電力を、需要場所200に自己託送してよい。上述のように、自己託送制度においては、所定の時間(例えば30分)ごとの計画値に応じて、同時同量の電力を、系統線GLに出力する必要がある(計画値同時同量)。
【0035】
図2は、自己託送として系統線GLに出力する電力の30分ごとの計画値の例を示す図である。
図2は、ある一日に自己託送として系統線GLに出力する電力の計画値を、30分ごとのコマとして棒グラフで示したものである。
図2に示すグラフの横軸は、ある1日の24時間を30分ごとのコマで示している。この横軸は、ある1日の午前0時から開始して、当該1日の翌日の午前0時で終了する24時間を示すものとしてよい。
図2に示すグラフの縦軸は、自己託送として系統線GLに出力する電力の計画値を示すものとしてよい。この縦軸は、自己託送として系統線GLに出力する電力の計画値の最小をゼロとし、最大を1として、相対的な量を示すものとしてよい。
【0036】
例えば、午前0:00から午前5:30までの時間帯(コマ1からコマ11まで)は、太陽電池30が発電しないため、自己託送する電力の計画値もゼロとなっている。午前5:30から午前11:30までの時間帯(コマ12からコマ23まで)は、太陽電池30発電が徐々に増大し、自己託送する電力の計画値も全体として徐々に増大する傾向となっている。午前11:30から午後1:00までの時間帯(コマ24からコマ26まで)は、太陽電池30が最大又は最大に近い状態となり、自己託送する電力の計画値がピークとなっている。午後1:00から午後6:00までの時間帯(コマ27からコマ36まで)は、太陽電池30発電が徐々に減少し、自己託送する電力の計画値も全体として徐々に低減する傾向となっている。午後6:00から次の日の午前0:00までの時間帯(コマ37からコマ48まで)は、太陽電池30が発電しないため、自己託送する電力の計画値もゼロとなっている。
【0037】
図2に示すような自己託送する電力の計画値は、例えば太陽電池30による太陽光発電の場合、前日時点の気象の予測などから翌日の発電量を推定してよい。この際、例えば翌日に発電所100において消費する電力の予測も考慮して、自己託送する電力の計画値を推定してもよい。電力制御機器10は、上述した気象の予測及び発電所100において消費する電力の予測を、例えば発電所100における任意の機能部又は外部サーバなどから取得してよい。
【0038】
しかしながら、太陽電池30による太陽光発電の実績値は、当日の太陽電池30の設置場所の天候などに左右される。このため、実際に自己託送する電力の実績値は、計画値との誤差、すなわちインバランスが発生し得る。電力制御機器10は、太陽電池30による太陽光発電の実績値を、発電所100における任意の機能部(例えばパワーコンディショナ20)などから取得してよい。
【0039】
このようなインバランスを抑制するために、太陽電池30による発電の実績値が計画値を超えそうな時は、例えば電力制御機器10は、パワーコンディショナ20を制御することにより、太陽電池30による電力の出力を制限してもよい。このように制限することにより、例えば天候が予測に反して曇りから急に晴れになるような場合には対応することができる。ただ、このように制限したとしても、例えば天候が予測に反して急に悪化するような場合には、対応することができない。
【0040】
そこで、
図1に示す電力制御システムのように、太陽電池30のような発電設備に並列に接続された蓄電池40を活用することで、インバランスを低減してもよい。すなわち、自己託送の送電(逆潮流)電力量の実績値が計画値を超える時、電力制御機器10は、その超えるぶんが蓄電池40に充電されるように、蓄電池40を制御してよい。この自己託送の送電(逆潮流)電力量は、計器11によって計測されるものとしてよい。一方、自己託送の送電(逆潮流)電力量の実績値が計画値よりも不足する時、電力制御機器10は、その不足するぶんが蓄電池40から放電されるように、蓄電池40を制御してよい。
【0041】
図3は、
図1に示す電力制御システムにおいてインバランスを回避する動作の例を説明する図である。
【0042】
図3は、午前7:00から午前8:00までの時間帯(コマ15からコマ16まで)において、自己託送する電力の実績値が
図2に示した計画値よりも増大し、このままでは
図3に示す余剰インバランスが発生する見込みであることを示している。この場合、電力制御機器10は、余剰インバランスが発生する見込みの電力が、蓄電池40に充電されるように、蓄電池40を制御してよい。
【0043】
また、
図3は、午前11:00から午後12:00までの時間帯(コマ23からコマ24まで)において、自己託送する電力の実績値が
図2に示した計画値よりも減少し、このままでは
図3に示す不足インバランスが発生する見込みであることを示している。この場合、電力制御機器10は、不足インバランスが発生する見込みの電力が、蓄電池40から放電されるように、蓄電池40を制御してよい。
【0044】
一方、その他の時間帯(コマ1からコマ14まで、コマ17からコマ22まで、及びコマ25からコマ48まで)は、計画値と実績値に差が生じない。このため、当該時間帯において、電力制御機器10は、インバランスを回避又は抑制するために蓄電池40を制御する必要はない。
【0045】
以上のような制御により、電力制御機器10は、
図3に示すような見込みになりそうであった自己託送する電力の実績値を、
図2に示した計画値に近付けることができる。したがって、
図1に示した電力制御システムは、自己託送を行う際のインバランスを回避又は抑制することができる。
【0046】
しかしながら、
図1に示した発電所100において、太陽電池30の発電による三相電力を三相負荷に供給し、さらに当該三相電力のうち1相を単相電力として単相負荷に供給すると、三相不平衡の状態が発生し得る。この三相不平衡は、単相負荷が接続される相のばらつきにより、三相の電圧降下が不均等となることが原因となり発生する。このように、三相不平衡の電力が三相誘導モータ及びインバータなどに給電されると、例えば、振動、温度、及び/又は高調波が発生するなどの各種不具合の原因になり得る。
【0047】
そこで、以下、自己託送におけるインバランスを抑制するとともに、三相不平衡を抑制する電力制御システムについて説明する。
【0048】
図4は、一実施形態に係る電力制御システムを示す図である。
図4において、
図1に示したのと同じ機能部には同じ参照番号を付して示す。以下、
図1に示したのと同じ機能部の説明は、適宜、簡略化又は省略する。
【0049】
図4に示す一実施形態に係る電力制御システムは、
図1に示した電力制御システムにおいて、さらに、単相変圧器14と、逆電力継電器15と、三相変圧器16と、を備えている。また、
図4に示す電力制御システムは、
図1に示した電力制御システムにおいて、さらに、単相負荷50及び三相負荷60も図示してある。一方、
図4においては、
図1に示した電力の自己託送元である発電所100、及び自己託送先である需要場所200の図示は省略してある。
図4に示すように、電力制御機器10、計器11、開閉器12、三相変圧器13、単相変圧器14、逆電力継電器15、及び三相変圧器16を含む設備は、受変電設備1としてよい。
【0050】
単相変圧器14は、単相電力(単相交流電力)を変圧する。
図4に示すように、単相変圧器14は、開閉器12と三相変圧器13との間に、例えば電線などによって接続されてよい。すなわち、単相変圧器14は、三相変圧器13と並列に接続されてよい。単相変圧器14は、太陽電池30による発電電力がパワーコンディショナ20によって交流に変換されてから三相変圧器13によって昇圧された電力の電圧を変圧(降圧)させてよい。単相変圧器14は、三相電力のうちの1相を単相電力として用いて、当該単相電力の電圧を変圧してよい。ここで、単相電力は、例えば、R相、S相、及びT相のうちの1相を用いてよい。単相変圧器14は、変圧した電力を、逆電力継電器15に出力してよい。このため、単相変圧器14は、逆電力継電器15と例えば電線などによって接続されてよい。
【0051】
単相変圧器14は、単相電力を変圧(昇圧及び/又は降圧)する任意の機器を採用してよい。単相変圧器14は、単相電力を変圧する任意の機器として、既知のものを採用してよいため、より詳細な説明は省略する。
【0052】
逆電力継電器15は、逆潮流の発生を防止するため設置されるRPR(Reverse Power Relay)としてよい。逆電力継電器15は、逆方向の電力を検知した際、遮断器の開放などを行うことにより、逆潮流を防止することができる。逆電力継電器15は、逆潮流が発生したタイミングで動作するため、結果として電力の流れが停止するため、逆潮流を防止することができる。逆電力継電器15は、既知のRPRを採用してよいため、より詳細な説明は省略する。逆電力継電器15は、単相負荷50と例えば電線などによって接続されてよい。
【0053】
単相負荷50は、一般的な100V又は200Vの単相電力を消費する各種機器としてよい(いわゆる電灯負荷)。単相負荷50は、受変電設備1に接続される負荷のうち、単相電力を消費する負荷としてよい。
【0054】
図1に示した電力制御システムにおいて、蓄電池40は、三相変圧器13とパワーコンディショナ20との間に接続されていた。一方、
図4に示す一実施形態に係る電力制御システムにおいて、蓄電池40は、逆電力継電器15と単相負荷50との間に接続される。すなわち、
図4に示す電力制御システムにおいて、蓄電池40は、単相負荷50と並列に接続されてよい。
図4に示す本実施形態に係る電力制御システムにおいて、蓄電池40の充電及び/又は放電は、電力制御機器10によって制御されてよい。このため、電力制御機器10と蓄電池40とは、有線及び無線の少なくとも一方によって接続されてよい。一実施形態において、電力制御機器10は、計器11による計測結果に基づいて、蓄電池40の充電及び放電の少なくとも一方を制御してよい。
【0055】
三相変圧器16は、三相変圧器13と同様に、三相電力(三相交流電力)を変圧する。
図4に示すように、三相変圧器16は、開閉器12と三相変圧器13との間に、単相変圧器14とともに、例えば電線などによって接続されてよい。すなわち、三相変圧器16は、三相変圧器13及び単相変圧器14と並列に接続されてよい。
【0056】
三相変圧器16は、太陽電池30による発電電力がパワーコンディショナ20によって交流に変換されてから三相変圧器13によって昇圧された電力の電圧を変圧(例えば降圧)させてよい。三相変圧器16は、変圧した電力を、三相負荷60に出力してよい。このため、三相変圧器16は、三相負荷60と例えば電線などによって接続されてよい。
【0057】
三相変圧器16は、三相変圧器13と同様に、三相電力を変圧(昇圧及び/又は降圧)する任意の機器を採用してよい。三相変圧器16は、三相変圧器13と同様に、三相電力を変圧する任意の機器として、既知のものを採用してよいため、より詳細な説明は省略する。
【0058】
三相負荷60は、例えば200Vの三相電力を消費する各種機器としてよい(いわゆる動力負荷)。三相負荷60は、受変電設備1に接続される負荷のうち、三相電力を消費する負荷としてよい。
【0059】
以上説明したように、
図4に示す一実施形態に係る電力制御システムは、太陽電池30による発電の三相系統の自己託送を行う電力制御システムにおいて、単相負荷50に並列に蓄電池40を接続したものとしてよい。
図4に示す一実施形態に係る電力制御システムは、太陽電池30によって発電された電力の自己託送において、インバランスを抑制するとともに、三相不平衡も抑制し得る。
【0060】
次に、
図4に示す電力制御システムの動作について説明する。
【0061】
図4に示す受変電設備1は、太陽電池30によって発電される電力の自己託送を行う際に、蓄電池40を活用することができる。例えば、
図4に示す受変電設備1は、太陽電池30によって発電される電力のうち、受変電設備1に接続された単相負荷50及び三相負荷60において消費される電力を差し引いた余剰分の電力を自己託送するものとして、系統線GLに出力してよい。上述のように、自己託送制度においては、所定の時間(例えば30分)ごとの計画値に応じて、同時同量の電力を、系統線GLに出力する必要がある(計画値同時同量)。
【0062】
図4に示す受変電設備1において、電力制御機器10は、自己託送の計画に連動して、蓄電池40の充電及び/又は放電を制御してよい。このような制御により、受変電設備1は、単相負荷50が消費する電力の範囲内で蓄電池40の充放電を行って、インバランスを抑制することができる。
【0063】
電力制御機器10は、自己託送の送電を行わない時間帯(例えば夜間など)に、蓄電池40に充電された電力を放電するように制御してよい。このような制御により、単相負荷50による三相不平衡を改善し得る。また、電力制御機器10による基本的な制御として、受変電設備1において自己託送の送電(逆潮流)を行う時に、蓄電池40が充電されるように制御してよい。このように、太陽電池30によって発電される電力の余剰分を蓄電池40に充電しておき、蓄電池40に充電された電力を、自己託送を行わない時間帯に放電することにより、単相負荷50のピーク電力の上昇を抑制することができる。
【0064】
図4に示す電力制御システムにおいて、単相負荷50は1つのみ示してある。しかしながら、一実施形態に係る電力制御システムは、単相負荷50を複数備えてもよい。ここで、複数の単相負荷50は、同じ相の複数の負荷としてもよいし、異なる相の複数の負荷としてもよい。一実施形態に係る電力制御システムは、複数の単相負荷の異なる相においてバランスを制御してもよい。
【0065】
図4に示す電力制御システムは、蓄電池40の充放電を行うことにより、インバランスを抑制することができる。しかしながら、インバランスの発生の度合いによっては、
図4に示す電力制御システムは、蓄電池40の充放電を行うのみでは、インバランスを抑制しきれない事態も想定し得る。このような場合、すなわち、蓄電池40の充放電を行うのみではインバランスを抑制しきれない場合、電力制御機器10は、例えばパワーコンディショナ20を制御することにより、太陽電池30による発電を抑制してもよい。
【0066】
図4に示す蓄電池40は、必ずしも定置型の蓄電池でなくてもよい。蓄電池40は、例えば、車載充電装置を搭載した電気自動車(Electric Vehicle:EV)又はプラグインハイブリッド車などとしてもよい。
【0067】
また、一実施形態において、電力制御機器10は、例えば停電時など場合の動作として、開閉器12を開放することにより、太陽電池30による自立運転を行ってもよい。このように、電力制御機器10は、太陽電池30による自立運転を行うことにより、
図4に示す電力制御システムを安定して運転することができる。
【0068】
次に、一実施形態に係る電力制御システムによる動作をより具体的に説明する。
【0069】
図5は、一実施形態に係る電力制御システムの動作を説明する図である。
図5は、
図3と同様に、午前7:00から午前8:00までの時間帯(コマ15からコマ16まで)において、自己託送する電力の実績値が
図2に示した計画値よりも増大し、このままでは
図5に示す余剰インバランス(瞬時)が発生する見込みであることを示している。また、
図5においては、自己託送の送電(逆潮流)電力量の瞬時値を、折れ線グラフによって示してある。この自己託送の送電(逆潮流)電力量の瞬時値は、計器11によって計測されるものとしてよい。
図5において、自己託送の送電(逆潮流)電力量の瞬時値と、計画値との差を、余剰インバランスの瞬時値として示してある。
【0070】
まず、一実施形態に係る電力制御システムにおいて、電力制御機器10は、対象となる時間帯(コマ15)になると、電力量の積算値をリセットする。次に、電力制御機器10は、
図5に示すような、自己託送の送電(逆潮流)電力量(リアルタイムの積算値)を、計画値と比較する。ここでは、自己託送の送電(逆潮流)電力量が計画値を超える。したがって、電力制御機器10は、当該超えるぶん(すなわち余剰インバランスぶん)の電力量を、蓄電池40に充電するように制御する。これにより、余剰インバランスの差分が相殺される。このような制御により、蓄電池40は、計画値を上回る電力を充電することになる。
【0071】
次の時間帯(コマ16)において、電力制御機器10は、所定の時間(ここでは30分)に自己託送する電力量を推定し、上述の動作を繰り返し行ってよい。
【0072】
例えば、
図3に示す午前11:00から午後12:00までの時間帯(コマ23からコマ24まで)のように、自己託送の送電(逆潮流)電力量に不足インバランスが生じる見込みである場合、電力制御機器10は、次のような動作を行う。すなわち、この場合、電力制御機器10は、不足するぶん(すなわち不足インバランスぶん)の電力量を、蓄電池40から単相負荷50に放電するように制御する。
【0073】
このように、一実施形態に係る電力制御システムによれば、太陽光発電のような再生可能エネルギーによる発電の余剰分を自己託送する際のインバランスを抑制することができる。また、一実施形態に係る電力制御システムによれば、単相負荷50に対しては蓄電池40から放電される単相電力を供給するため、三相不平衡を抑制することができる。したがって、一実施形態に係る電力制御システム及び電力制御機器10によれば、再生可能エネルギーによる発電の自己託送におけるインバランスを抑制するとともに、三相不平衡を抑制することができる。
【0074】
上述の実施形態は代表的な例として説明したが、本開示の趣旨及び範囲内で、多くの変更及び置換が可能であることは当業者に明らかである。したがって、本開示は、上述の実施形態によって制限するものと解するべきではなく、特許請求の範囲から逸脱することなく、種々の変形及び変更が可能である。例えば、実施形態の構成図に記載の複数の構成ブロックを1つに組み合わせたり、あるいは1つの構成ブロックを分割したりすることが可能である。
【0075】
例えば、
図4に示した電力制御システムは、
図1に示したような、太陽電池30が発電する電力を充放電可能な蓄電池40をさらに備えてもよい。
【0076】
また、例えば、
図4に示した電力制御システムは、太陽電池30が発電する電力の自己託送を行うものに限定されない。例えば、
図4に示した電力制御システムは、風力発電などのような、他の再生可能エネルギーに基づいて発電される三相電力を自己託送してもよい。
【0077】
上述した実施形態は、
図4に示した電力制御システムのようなシステムとしての実施のみに限定されない。例えば、上述した実施形態は、
図4に示した電力制御システムのようなシステムの少なくとも一部を構成する機器(例えば電力制御機器10など)として実施してもよい。
【0078】
また、上述した実施形態は、例えば、上述したシステム又は機器の制御方法として実施してもよい。また、上述した実施形態は、例えば、上述したシステム又は機器のコンピュータにおいて実行されるプログラムとして実施してもよい。さらに、上述した実施形態は、例えば、上述したシステム又は機器のコンピュータにおいて実行されるプログラムを記録した記録媒体、すなわちコンピュータ読み取り可能な記録媒体として実施してもよい。
【符号の説明】
【0079】
1 受変電設備
10 電力制御機器
11 計器
12 開閉器
13 三相変圧器
14 単相変圧器
15 逆電力継電器
16 三相変圧器
20 パワーコンディショナ
30 太陽電池
40 蓄電池
50 単相負荷
60 三相負荷
100 発電所
200 需要場所