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特開2023-165547合成ボックスカルバートの製造方法、及び合成ボックスカルバート
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023165547
(43)【公開日】2023-11-16
(54)【発明の名称】合成ボックスカルバートの製造方法、及び合成ボックスカルバート
(51)【国際特許分類】
   B28B 13/02 20060101AFI20231109BHJP
   B28B 21/56 20060101ALI20231109BHJP
   B28B 21/02 20060101ALI20231109BHJP
   B28B 21/76 20060101ALI20231109BHJP
【FI】
B28B13/02
B28B21/56
B28B21/02
B28B21/76
【審査請求】有
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022076730
(22)【出願日】2022-05-06
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2023-01-12
(71)【出願人】
【識別番号】390000332
【氏名又は名称】株式会社クリコン
(74)【代理人】
【識別番号】110002734
【氏名又は名称】弁理士法人藤本パートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】里西 善隆
(72)【発明者】
【氏名】林 一也
【テーマコード(参考)】
4G055
【Fターム(参考)】
4G055AA01
4G055AC00
4G055CA17
(57)【要約】
【課題】
強度性能に優れた合成ボックスカルバートとその製造方法を提供することを課題とする。
【解決手段】
外殻鋼板とコンクリート構造体とを備えた合成ボックスカルバートの製造方法であって、前記外殻鋼板は、合成ボックスカルバートの軸方向に沿って延びる筒状の外周部と、前記軸方向と直交する面内で前記外周部から内側に向かって延設される垂直部とを備え、前記コンクリート構造体は、前記外殻鋼板によって外側周面と軸方向端面とが囲まれたものであり、前記軸方向が鉛直方向に向くように前記外殻鋼板を載置するとともに前記外殻鋼板の内側に型枠を設置する工程と、前記外殻鋼板と前記型枠との間に高流動コンクリートを打設し、下方から上方へと該高流動コンクリートを充填することによって前記コンクリート構造体を作成する工程と、を備えたことを特徴とする合成ボックスカルバートの製造方法による。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
外殻鋼板とコンクリート構造体とを備えた合成ボックスカルバートの製造方法であって、
前記外殻鋼板は、合成ボックスカルバートの軸方向に沿って延びる筒状の外周部と、前記軸方向と直交する面内で前記外周部から内側に向かって延設される垂直部とを備え、前記コンクリート構造体は、前記外殻鋼板によって外側周面と軸方向端面とが囲まれたものであり、
前記軸方向が鉛直方向に向くように前記外殻鋼板を載置するとともに前記外殻鋼板の内側に型枠を設置する工程と、
前記外殻鋼板と前記型枠との間に高流動コンクリートを打設し、下方から上方へと該高流動コンクリートを充填することによって前記コンクリート構造体を作成する工程と、
を備えたことを特徴とする合成ボックスカルバートの製造方法。
【請求項2】
前記高流動コンクリートを打設する際、前記型枠の下方に設けた開口を介して該高流動コンクリートを打設することを特徴とする請求項1記載の合成ボックスカルバートの製造方法。
【請求項3】
前記高流動コンクリートが、Jリングフロー試験により測定されるPJ値が20mm以下、スランプフロー値が65~75cm、となるように調製された高流動コンクリートである、請求項2記載の合成ボックスカルバートの製造方法。
【請求項4】
前記高流動コンクリートを4m/h未満の速度で打設する、請求項3記載の合成ボックスカルバートの製造方法。
【請求項5】
前記高流動コンクリートを、s/aが55%以上、最大骨材径が15mm以下となるように調製する請求項4記載の合成ボックスカルバートの製造方法。
【請求項6】
前記外殻鋼板の垂直部に空気孔を設けておき、前記軸方向が鉛直方向に向くように前記外殻鋼板を載置した際に、該空気孔が、高流動コンクリートが打設される空間の最上部に位置するように配置して高流動コンクリートを打設する、請求項1記載の合成ボックスカルバートの製造方法。
【請求項7】
前記空気孔が、前記垂直部において前記外周部に近接した位置に設けられる、請求項6記載の合成ボックスカルバートの製造方法。
【請求項8】
請求項1~7の何れかに記載の合成ボックスカルバートの製造方法によって製造されたことを特徴とする、合成ボックスカルバート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、合成ボックスカルバートの製造方法、及び合成ボックスカルバートに関し、より具体的には、ボックス推進工法において好適に使用しうる合成ボックスカルバート及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、プレキャスト製品を製造する際のコンクリートの打設方法としては、プレキャスト製品の形状に組み上げた型枠の上面開口部から高流動コンクリートを落下させながら打設する、いわゆる落とし込み充填工法が知られている。
【0003】
しかし、高流動コンクリートを落とし込み充填工法によって打設した場合、コンクリートが落下した際に空気を巻き込んでしまい、コンクリートの隅角部分やコンクリート内部に配設される鋼材との界面に気泡が残存したまま硬化する虞がある。
そこで、落とし込み充填工法によってプレキャスト製品を製造する際には、コンクリート打設時に巻き込んだ空気をコンクリート内部から排出させる方法が検討されている。
例えば、特許文献1においては、上面及び下面が鋼板で覆われたコンクリート構造物において高流動コンクリートを打設する際、上面を構成する鋼板の内面に沿ってグラウト管を多数配置し、高流動コンクリート中に含まれる空気を該グラウト管を介して外部へ排出する方法が提案されている。
また、特許文献2においては、上面を構成する鋼板に開口部を設けるとともに該開口部から気泡抜き取り具を差込み、コンクリート内部の空気を抜き取るようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平4-277297号公報
【特許文献2】特開2010-201915号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、プレキャスト製品の一種として知られているボックスカルバートは、地中に埋設されることによって断面矩形状の地下道や配管等の管路を構成するものである。ボックスカルバートの設置に際しては、先端に掘進機を配置し、該掘進機の後ろ側にボックスカルバートを設置し、油圧ジャッキ等によって前記ボックスカルバートを掘進機へ向けて押し込みながら掘進機で地盤を掘削し、ボックスカルバートを順次後端側に追加設置していく工法(いわゆるボックス推進工法)が採用される場合がある。
従って、前記ボックスカルバートは、地盤から受ける圧力に耐える必要があるだけでなく、上述のようなボックス推進工法によって設置される場合には、油圧ジャッキ等による押圧力を前方の掘進機へと伝達する必要があり、ボックスカルバートには優れた強度性能が必要となる。
【0006】
特に、ボックスカルバートを設置する深度が深くなるとボックスカルバートにかかる荷重が大きくなり、函体の厚さが通常の1.2~1.5倍程度必要となる場合があり、工場から現場へ輸送する際の大きさの限度である一辺3600mmを超えるような大きさとなってしまうことがある。ボックスカルバートを分割して作成し、施工現場にて組み立てることも考え得るが、作業場所の確保の問題や工期が長くなって工事費が高騰するといった問題が生じうる。
【0007】
近年、ボックスカルバートの一態様として、外側に向いた四面と、隣接して設置されるボックスカルバート同士の接合面とが鋼板で覆われ、その内部がコンクリート構造体で構成された、いわゆる合成ボックスカルバートが検討されている。該合成ボックスカルバートは、コンクリートによる圧縮強度の高さに加えて鋼板による引張強度の高さを兼ね備えたものであり、函体の厚さを厚くすることなく高強度を発揮し得るものとして注目されている。
【0008】
上記構成の合成ボックスカルバートを製造するためには、コンクリートが露出する内周面となる位置に型枠を設置して鋼板との間にコンクリートの打設空間を設け、その打設空間にコンクリートを打設する必要がある。鋼板と型枠によってコンクリートの全面が覆われるため、従来の落とし込み工法によってコンクリートを打設した際には、上述のようにコンクリート構造物ないに気泡が残存する虞があるため、強度性能を担保する観点で好ましくない。
【0009】
また、特許文献1に記載のようなグラウト管を配設する方法は、それを設置する作業が煩雑になるという問題があるだけでなく、上記のように高い強度性能が求められる合成ボックスカルバートにおいては構造上好ましくない。
一方、特許文献2に記載のような方法では、製品を構成する外殻鋼板に、空気抜き取り具を挿入するための大きな開口部を設ける必要があるため、合成ボックスカルバート製品の強度が低下する虞があるうえ、空気抜き取り具による空気抜き取り作業が煩雑であるという問題がある。
【0010】
本発明は、強度性能に優れた合成ボックスカルバートを製造することが可能な合成ボックスカルバートの製造方法、及び、強度性能に優れた合成ボックスカルバートを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の一態様は、
外殻鋼板とコンクリート構造体とを備えた合成ボックスカルバートの製造方法であって、
前記外殻鋼板は、合成ボックスカルバートの軸方向に沿って延びる筒状の外周部と、前記軸方向と直交する面内で前記外周部から内側に向かって延設される垂直部とを備え、前記コンクリート構造体は、前記外殻鋼板によって外側周面と軸方向端面とが囲まれたものであり、
前記軸方向が鉛直方向に向くように前記外殻鋼板を載置するとともに前記外殻鋼板の内側に型枠を設置する工程と、
前記外殻鋼板と前記型枠との間に高流動コンクリートを打設し、下方から上方へと該高流動コンクリートを充填することによって前記コンクリート構造体を作成する工程と、
を備えたことを特徴とする合成ボックスカルバートの製造方法である。
【0012】
上記構成の合成ボックスカルバートの製造方法によれば、型枠の下方に設けた開口を介して高流動コンクリートを外殻鋼板と型枠との間に打設し、下方から上方へと該高流動コンクリートを充填するため、コンクリート打設時に気泡が発生しにくく、コンクリート中への気泡の混入が抑制され、強度性能に優れた合成ボックスカルバートを提供することが可能となる。
【0013】
また、上記一態様としての合成ボックスカルバートの製造方法では、前記高流動コンクリートを打設する際、前記型枠の下方に設けた開口を介して該高流動コンクリートを打設することが好ましい。
【0014】
また、上記一態様としての合成ボックスカルバートの製造方法では、前記高流動コンクリートが、Jリングフロー試験により測定されるPJ値が20mm以下、スランプフロー値が65~75cm、となるように調製された高流動コンクリートであることが好ましい。
【0015】
また、上記一態様としての合成ボックスカルバートの製造方法では、前記高流動コンクリートを4m/h未満の速度で打設することが好ましい。
【0016】
また、上記一態様としての合成ボックスカルバートの製造方法では、前記高流動コンクリートを、s/aが55%以上、最大骨材径が15mm以下となるように調製することが好ましい。
【0017】
また、上記一態様としての合成ボックスカルバートの製造方法では、前記外殻鋼板の垂直部に空気孔を設けておき、前記軸方向が鉛直方向に向くように前記外殻鋼板を載置した際に、該空気孔が、高流動コンクリートが打設される空間の最上部に位置するように配置して高流動コンクリートを打設することが好ましい。
【0018】
また、上記一態様としての合成ボックスカルバートの製造方法では、前記空気孔が、前記垂直部において前記外周部に近接した位置に設けられることが好ましい。
【0019】
また、本発明の合成ボックスカルバートの一態様は、上記製造方法によって製造された合成ボックスカルバートである。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、強度性能に優れた合成ボックスカルバートを製造することが可能となり、強度性能に優れた合成ボックスカルバートが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1図1は、一実施形態に係る合成ボックスカルバートの軸方向から見た正面図である。
図2図2は、図1に示す一実施形態に係る合成ボックスカルバートの軸方向における断面図である。
図3図3は、一実施形態に係る合成ボックスカルバートを構成する外殻鋼板の軸方向と垂直な断面図である。
図4図4は、図3に示す外殻鋼板の軸方向における断面図である。
図5図5は、一実施形態に係る合成ボックスカルバートの製造方法において、外殻鋼板と型枠との間に高流動コンクリートを打設する状態を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の第一実施形態に係る合成ボックスカルバートの製造方法及び合成ボックスカルバートについて、添付図面を参照しつつ具体的に説明する。
【0023】
なお、本実施形態の説明においては、合成ボックスカルバートの中心を通る仮想的な中心線に沿った方向(すなわち、ボックス推進工法において推進方向となる方向であって、地下道や管路の延びる方向)を軸方向、該軸方向から見た平面視(該軸方向と直交する面内)において前記中心線と交差する方向を径方向、前記平面視において前記中心線を中心として周回する方向を周方向と称することとする。
【0024】
本実施形態に係る合成ボックスカルバート1は、図1及び図2に示すように、合成ボックスカルバートの外殻を構成する外殻鋼板10と、該外殻鋼板10によって内周面以外の面を覆われたコンクリート構造体20とを備える。
【0025】
前記外殻鋼板10は、軸方向と平行に延びる筒状の外周部11と、該外周部11から内側に向かって延設され且つ軸方向に面する一対の垂直部12とを備える。前記外殻鋼板10の外周部11は、合成ボックスカルバート1の外周部分を構成するものであり、本実施形態では軸方向と垂直な断面が略矩形状をなしている。具体的には、前記外周部11は、合成ボックスカルバート1の上面を構成する上面部11a、底面を構成する底面部11b、及び両側方に位置して合成ボックスカルバート1の側面を構成する一対の側面部11cを有する。上面部11aと側面部11c、および側面部11cと底面部11bは、それぞれ湾曲した曲面で接続されている。また、複数の合成ボックスカルバート1を隣接させて配置する際に、合成ボックスカルバート同士が嵌合した状態となるよう、前記外周部11の軸方向における一端側と他端側とは、中心線からの距離が異なるように構成されている。具体的には、軸方向一端側(図4左側)に位置する外周部11は、軸方向他端側(図4右側)に位置する外周部11よりも径方向内側となるように構成されている。
【0026】
一方、一対の垂直部12の各々は、図3に示すように前記外周部11の内面に沿って略四角形の環状に形成されている。具体的には、一対の垂直部12の各々は、前記外周部11の上面部11aに固定された上面垂直部12a、前記外周部11の底面部11bに固定された底面垂直部12b、および前記外周部11の一対の側面部11cに固定された側面垂直部12cとを備える。
【0027】
一対の垂直部12は、当該合成ボックスカルバート1を隣接して配置する際、隣り合う合成ボックスカルバート同士で当接する位置に配置される。本実施形態においては、複数の合成ボックスカルバートを隣接させて配置する際に、合成ボックスカルバート同士が嵌合した状態となることに伴い、軸方向一端側(図4左側)に位置する垂直部12は、合成ボックスカルバートの最も端、即ち軸方向先端に位置しており、軸方向他端側(図4右側)に位置する垂直部12は、合成ボックスカルバートの最も端、即ち軸方向後端から内側に向かってオフセットした位置に配置されている。
【0028】
本実施形態の合成ボックスカルバート1では、前記一対の垂直部12の一方に、垂直部12を軸方向に貫通する空気孔30が形成されている。本実施形態では、該空気孔30は、垂直部12の上下左右の四カ所に設けられており、具体的には、垂直部12を構成する上面垂直部12a、底面垂直部12b、および一対の側面垂直部12cの各々に、1か所ずつ空気孔30が形成されている。各空気孔30は、垂直部12における径方向外方、すなわち外周部11に近接した位置に設けられている。各空気孔30は、好ましくは直径10~100mmの円形とされる。
【0029】
また、本実施形態の合成ボックスカルバートは、図3及び図4に示すように、前記外周部11と前記一対の垂直部12とを固定する複数の組立リブ40を備えている。組立リブ40の各々は、板状の部材によって構成され、前記外周部11と前記垂直部12とに対してそれぞれ垂直となるように設けられる。また、該組立リブは、前記外周部の内面に沿って概ね均等な間隔で前記外周部の全周に亘って配置される。
【0030】
一対の垂直部12の間には前記コンクリート構造体20が配置され、一対の垂直部12によって前記コンクリート構造体が挟まれた状態となる。該コンクリート構造体20は、後述する手順に沿って一対の垂直部12の間にコンクリートが隙間なく充填され、硬化したものである。使用されるコンクリートとしては、外殻鋼板の内部に隙間なく充填可能なコンクリートであれば特に限定はされないが、好ましくは所定の流動性を備えた高流動コンクリートが用いられる。
【0031】
本実施形態に係る合成ボックスカルバートは、外殻鋼板の内側に複数の鉄筋(図示せず)を備えて構成される。該鉄筋は、具体的には、合成ボックスカルバートの軸方向と平行に延びるように配設されたもの、及び軸方向と垂直に延びるように配設されたもの、を含む。
なお、何れの鉄筋も、前記コンクリートが外殻鋼板内に充填されることによって該コンクリートに覆われることとなるため、外部からは視認できない状態となっている。
【0032】
次に、本発明の第一実施形態に係る合成ボックスカルバートの製造方法について説明する。
【0033】
本実施形態の合成ボックスカルバートの製造方法は、外殻鋼板を作成する工程と、外殻鋼板の内側に型枠を設置する工程と、外殻鋼板と型枠との間の空間にコンクリートを打設する工程とを備える。
【0034】
外殻鋼板を作成する工程では、上述したような構成の外殻鋼板を作成する。上記実施形態で説明したように、合成ボックスカルバートが組立リブや鉄筋を備えたものである場合、それらも併せて作成し、外殻鋼板内部の所定の位置に固定した状態とする。
【0035】
外殻鋼板の内側に型枠を設置する工程では、作成した外殻鋼板を軸方向が鉛直方向を向くように、すなわち外殻鋼板を横倒しにした状態に配置し、該外殻鋼板の内側に沿って型枠を設置する。具体的には、該型枠は一対の垂直部の径方向内側端縁と接触するように外殻鋼板の内周に沿って配置され、外殻鋼板と型枠との間にコンクリートを充填する空間が形成される。
【0036】
コンクリートを打設する工程では、図5に示すように、外殻鋼板10と型枠50との間に形成された前記空間に対して、高流動コンクリート25を打設する。本実施形態に係る製造方法では、前記型枠50の一部にコンクリート打設用の開口51を設け、所定の流動性を有する高流動コンクリートを打設する。前記開口51は、前記型枠の下方に設けることとし、コンクリートが打設される空間の鉛直方向高さをHとした場合に、好ましくは底面からH/2の高さよりも下方、より好ましくはH/4の高さよりも下方に設けることとする。あるいは、実際の寸法としては、コンクリートが打設される空間の底から鉛直方向において、好ましくは50cm以下、より好ましくは30cm以下の高さの範囲内に前記開口を設ける。
【0037】
このような高さにコンクリート打設用の開口51を設けることにより、供給される高流動コンクリートが記空間内に流入した際に、気泡の巻き込みが最小限に抑えられることとなる。また、コンクリートの打設を継続するとコンクリートの上面が該開口を超えて上方へと昇っていくため、供給されるコンクリートは打設されたコンクリートの内部に直接流入することとなり、より一層気泡が混入しにくくなる。
【0038】
なお、前記コンクリート打設用の開口の大きさについては特に限定されるものではないが、コンクリートを供給する管路と同程度の直径を有することが好ましい。
【0039】
使用するコンクリートは、Jリングフロー試験により測定されるPJ値が20mm以下であり、スランプフロー値が65~75cm、となるように調製された高流動コンクリートであることが好ましい。かかる構成の高流動コンクリートを用いることにより、外殻鋼板の内部に設置された多数の組立リブや多数の配管の間に、隙間なく充填され易くなる。
【0040】
ここで、Jリングフロー試験とは、JIS A 1159に規定された高流動コンクリートの流動性を評価するための試験であり、PJ値は当該JIS規格に記載された方法によって測定された結果に基づいて求められるものである。
【0041】
また、スランプフロー値とは、JIS A 1150に規定されたスランプフロー試験方法によって計測される値である。
【0042】
さらに、前記コンクリートを打設する工程においては、前記コンクリートを4m/h未満の速度で打設することが好ましく、3m/h未満の速度で打設することがより好ましい。このような打設速度で打設することにより、気泡混入をより確実に防止し、外殻鋼板の内部に空気だまりが生じることをより効果的に抑制しうる。
【0043】
使用する高流動コンクリートは、細骨材率(s/a)が55%以上であることが好ましい。また、使用する高流動コンクリートは、最大骨材径が15mm以下であることが好ましい。
【0044】
なお、本発明において使用し得る高流動コンクリートの具体的な組成については、特に限定されるものではなく、例えば、水/結合材比の調整や、シリカフューム、フライアッシュ、高炉スラグ微粉末、石灰石微粉末等の混和材の添加、或いは、減水剤、高性能減水剤、高性能AE減水剤等の混和剤の添加などによって所定の流動性を発揮するよう調整して得られるものである。
【0045】
かかる構成の高流動コンクリートを用いることにより、組立リブや鉄筋に囲まれた狭い空間の内部の隅々までコンクリートが充填されやすくなり、強度性能に優れた合成ボックスカルバートを製造することが可能となる。
【0046】
また、本実施形態においては、前記外殻鋼板を構成する垂直部において、上面垂直部、底面垂直部、および一対の側面垂直部の各々に、1か所ずつ空気孔が形成されている。外殻鋼板の軸方向が鉛直方向となるように外殻鋼板を横向きに設置する際、該空気孔が上方に位置するように外殻鋼板を設置することにより、コンクリートが充填される空間の最も上部に該空気孔が位置することとなる。
【0047】
従って、コンクリートを打設する工程において、万一コンクリートが空気を巻き込んだ場合であっても、該空気が上昇して前記空気孔から外部へ排出されることとなるため、コンクリート構造体の内部に空気だまりが生じることを効果的に防止し得る。
【0048】
また、本実施形態の合成ボックスカルバートにおいて、該空気孔は、垂直部における径方向外方、すなわち外周部に近い位置に設けられているため、垂直部における径方向内側には貫通した孔がない状態となっている。かかる構成により、該合成ボックスカルバートに対して外部から圧力が加わった際には、合成ボックスカルバートの径方向内側領域に作用する引っ張り応力に対しては、該垂直部が十分な強度を発揮することが可能となり、合成ボックスカルバートの径方向外側領域に作用する圧縮応力に対しては、コンクリート構造体が充分な強度を発揮することが可能となる。これにより強度性能に優れた合成ボックスカルバートを提供することができる。
【0049】
尚、本発明に係る合成ボックスカルバートおよびその製造方法は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
【0050】
例えば、上記実施形態の合成ボックスカルバートは、軸方向から見た断面形状が概ね正方形であったが、幅方向又は高さ方向が長い長方形や、円形とすることができる。
【0051】
また、上記実施形態では、外殻鋼板の内側に設置した型枠の下方に高流動コンクリートを打設するための開口を設け、該開口から高流動コンクリートを打設するようにしたが、外殻鋼板の何れかの箇所にコンクリート打設用の開口を設け、該開口から高流動コンクリートを打設するようにしてもよい。
【0052】
例えば、外殻鋼板を構成する垂直部のうち、外殻鋼板の軸方向が鉛直方向に向くように外殻鋼板を載置した際に、上側に位置する垂直部に開口を設け、該開口からコンクリート打設用の配管を挿入し、該配管の先端が、外殻鋼板と型枠によって囲まれたコンクリート打設空間の下方まで至る状態とし、該配管を介して高流動コンクリートを打設してもよい。配管の先端は、コンクリートが打設される空間の鉛直方向高さをHとした場合に、好ましくは底面からH/2の高さよりも下方、より好ましくはH/4の高さよりも下方となるように設置することができる。あるいは、実際の寸法としては、コンクリートが打設される空間の底から鉛直方向において、好ましくは50cm以下、より好ましくは30cm以下の高さの範囲内に前記配管の先端が位置するように設置することができる。これにより、型枠の下方に開口を設けて高流動コンクリートを打設する場合と同様、高流動コンクリート打設時の空気の巻き込みを最小限に抑えることができる。
【0053】
また、上記実施形態では、空気孔を垂直部の周囲にそれぞれ1か所ずつ設けるようにしたが、本発明はかかる構成に限定されず、空気孔を任意の場所に2カ所以上備えていてもよい。
【符号の説明】
【0054】
1…合成ボックスカルバート、10…外殻鋼板、11…外周部、12…垂直部、20…コンクリート構造体、25…高流動コンクリート、30…空気孔、40…組立リブ、50…型枠、51…開口
図1
図2
図3
図4
図5
【手続補正書】
【提出日】2022-10-18
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
外殻鋼板とコンクリート構造体とを備えた合成ボックスカルバートの製造方法であって、
前記外殻鋼板は、合成ボックスカルバートの軸方向に沿って延びる筒状の外周部と、前記軸方向と直交する面内で前記外周部から内側に向かって延設される垂直部とを備え、前記コンクリート構造体は、前記外殻鋼板によって外側周面と軸方向端面とが囲まれたものであり、
前記軸方向が鉛直方向に向くように前記外殻鋼板を載置するとともに前記外殻鋼板の内側に型枠を設置する工程と、
前記外殻鋼板と前記型枠との間に高流動コンクリートを打設し、下方から上方へと該高流動コンクリートを充填することによって前記コンクリート構造体を作成する工程と、
を備え
前記高流動コンクリートを打設する際、前記型枠の下方に設けた開口を介して該高流動コンクリートを打設し、
前記高流動コンクリートが、Jリングフロー試験により測定されるPJ値が20mm以下、スランプフロー値が65~75cm、となるように調製された高流動コンクリートであり、
前記高流動コンクリートを4m /h未満の速度で打設し、
前記高流動コンクリートを、s/aが55%以上、最大骨材径が15mm以下となるように調製することを特徴とする合成ボックスカルバートの製造方法。
【請求項2】
前記外殻鋼板の垂直部に空気孔を設けておき、前記軸方向が鉛直方向に向くように前記外殻鋼板を載置した際に、該空気孔が、高流動コンクリートが打設される空間の最上部に位置するように配置して高流動コンクリートを打設する、請求項1記載の合成ボックスカルバートの製造方法。
【請求項3】
前記空気孔が、前記垂直部において前記外周部に近接した位置に設けられる、請求項記載の合成ボックスカルバートの製造方法。