(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023165552
(43)【公開日】2023-11-16
(54)【発明の名称】点火装置、及び、ガス発生器
(51)【国際特許分類】
B60R 21/264 20060101AFI20231109BHJP
【FI】
B60R21/264
【審査請求】未請求
【請求項の数】18
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022076743
(22)【出願日】2022-05-06
(71)【出願人】
【識別番号】000002901
【氏名又は名称】株式会社ダイセル
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】米澤 賢一
【テーマコード(参考)】
3D054
【Fターム(参考)】
3D054DD17
(57)【要約】
【課題】点火装置に充填されるガス発生剤を筒内部材内で固定する。
【解決手段】点火器41と、点火器41により燃焼されるガス発生剤54が入る空間を画定する筒部材51であって、筒状の周壁部511及び周壁部511の一端51bを閉塞する頂面部512を有し、周壁部511の他端51cに点火器41を収容する筒部材51と、を備える、点火装置61であって、筒部材51の周壁部511には、筒部材51の中心軸方向の一端51bと他端51cとの間において、周壁部511の内径が、一端51b及び他端51cよりも小さい又は大きい径変化部10が形成され、径変化部10に接触してガス発生剤54が筒部材51の内部で、径変化部10に対して一端51bの側にも他端51cの側にも充填されている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
点火器と、
前記点火器により燃焼されるガス発生剤が入る空間を画定する筒部材であって、筒状の周壁部及び前記周壁部の一端を閉塞する頂面部を有し、前記周壁部の他端に前記点火器を収容する筒部材と、
を備える、点火装置であって、
前記筒部材の前記周壁部には、前記筒部材の中心軸方向の前記一端と前記他端との間において、前記周壁部の内径が、前記一端及び前記他端よりも小さい又は大きい径変化部が形成され、前記径変化部に接触して前記ガス発生剤が前記筒部材の内部で、前記径変化部に対して前記一端の側にも前記他端の側にも充填されている、
点火装置。
【請求項2】
前記径変化部は、前記周壁部の内径が前記一端及び前記他端よりも小さい縮径部であり、
前記一端または前記他端における前記中心軸から前記周壁部までの距離と、前記縮径部における前記中心軸から前記周壁部までの距離との差が、前記ガス発生剤の最大辺の長さ以上である、
請求項1に記載の点火装置。
【請求項3】
前記径変化部は、前記周壁部の内径が前記一端及び前記他端よりも小さい縮径部であり、
前記筒部材には、前記筒部材の内部と外部とを連通する連通孔が1つ以上形成されており、
前記径変化部における前記中心軸と直交する平面で前記筒部材を切断したときの前記筒部材の内部の空間の断面積が、前記連通孔の開口面積の総計よりも大きい、
請求項1または2に記載の点火装置。
【請求項4】
前記径変化部は、前記周壁部の内径が前記一端及び前記他端よりも大きい拡径部であり、
前記拡径部における前記中心軸から前記周壁部までの距離と、前記一端または前記他端における前記中心軸から前記周壁部までの距離との差が、前記ガス発生剤の最大辺の長さ以上である、
請求項1に記載の点火装置。
【請求項5】
前記径変化部は、前記周壁部の内径が前記一端及び前記他端よりも大きい拡径部であり、
前記拡径部における前記中心軸から前記周壁部までの距離と、前記一端または前記他端における前記中心軸から前記周壁部までの距離との差が、前記一端または前記他端における前記中心軸から前記周壁部までの距離の4分の1以下である、
請求項1または4に記載の点火装置。
【請求項6】
前記径変化部の前記中心軸と平行方向の長さが、前記ガス発生剤の最大辺の長さ以上である、
請求項1に記載の点火装置。
【請求項7】
前記径変化部の前記中心軸と平行方向の長さが、前記ガス発生剤の最大辺の3倍以下の長さである、
請求項1に記載の点火装置。
【請求項8】
前記径変化部は、前記周壁部の内径が前記一端及び前記他端よりも小さい縮径部であり、
前記縮径部は、前記一端側から前記中心軸方向に傾斜する第一傾斜部と、前記他端側から前記中心軸方向に傾斜する第二傾斜部と、を含んで構成され、
前記縮径部よりも前記一端側の前記周壁部と前記第一傾斜部とのなす角が、前記縮径部よりも前記他端側の前記周壁部と前記第二傾斜部とのなす角よりも小さい、
請求項1、2、6または7の何れか1項に記載の点火装置。
【請求項9】
前記径変化部は、前記周壁部の内径が前記一端及び前記他端よりも大きい拡径部であり、
前記拡径部は、前記一端側から前記周壁部の外側に傾斜する第三傾斜部と、前記他端側から前記周壁部の外側に傾斜する第四傾斜部と、を含んで構成され、
前記拡径部よりも前記一端側の前記周壁部と前記第三傾斜部とのなす角が、前記拡径部よりも前記他端側の前記周壁部と前記第四傾斜部とのなす角よりも大きい、
請求項1、4、6または7の何れか1項に記載の点火装置。
【請求項10】
前記点火器は、その周りに配置される保持部によって保持されており、
前記径変化部から前記保持部までの前記中心軸に沿った距離よりも、前記径変化部から前記頂面部までの前記中心軸に沿った距離のほうが長い、
請求項1、6,7の何れか1項に記載の点火装置。
【請求項11】
前記径変化部は、前記筒部材の中心軸を中心として、前記周壁部を連続して一周している、
請求項1に記載の点火装置。
【請求項12】
前記径変化部は、前記筒部材の中心軸を中心として、前記周壁部を断続的に一周している、
請求項1に記載の点火装置。
【請求項13】
前記径変化部は、前記筒部材の中心軸と平行方向に複数形成される、
請求項11または12に記載の点火装置。
【請求項14】
前記径変化部は、前記周壁部の内径が前記一端及び前記他端よりも小さい縮径部であり、
前記ガス発生剤は、前記周壁部の内面と対向する外径を有する前記筒部材の断面形状に対応した柱状に形成されており、且つ、前記ガス発生剤の外周面には、前記縮径部に沿うように形成した溝が形成されており、
前記溝に嵌入した状態で前記縮径部が形成される、
請求項1に記載の点火装置。
【請求項15】
前記筒部材に充填されるガス発生剤の密度が、前記径変化部よりも前記一端側のほうが、前記他端側よりも高い、
請求項1に記載の点火装置。
【請求項16】
請求項1、2,4,6,7,11,12の何れか1項に記載の点火装置と、
前記点火装置を内部に配置するハウジングと、を含むガス発生器。
【請求項17】
前記径変化部は、前記周壁部の前記一端および前記他端よりも可撓性が高い、
請求項16に記載のガス発生器。
【請求項18】
前記径変化部の板厚が、前記周壁部の前記一端および前記他端の板厚よりも薄い、
請求項16に記載のガス発生器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、点火器の作動によりガス発生剤を燃焼させて燃焼ガスを発生させる点火装置、及び、点火装置を含むガス発生器に関する。
【背景技術】
【0002】
筒部材内に点火器とガス発生剤とを配置し、点火器を作動させることでガス発生剤を燃焼させ、その燃焼ガス外部へ放出する点火装置が知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1では、ガス発生剤が充填された内筒部材をハウジング内に設けている。ここで、ガス発生器が車両などに搭載される場合には、ガス発生器に振動が伝わり、内筒部材に充填されたガス発生剤がその影響を受けやすくなる。例えば、ガス発生剤が振動により内筒部材の壁面に当たって異音が発生したり、ガス発生剤が粉砕したりする虞がある。そのため、内筒部材にクッション部材を設けることも考えられる。しかし、クッション部材の材質等によっては、その影響を十分に排除できない場合がある。また、ガス発生剤が接触する箇所全てにクッション部材を配置することが困難な場合もある。そのためガス発生剤の固定については改善の余地が残っている。
【0005】
本開示の目的は、ガス発生器に充填されるガス発生剤がガス発生器内で固定されることにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示における態様の一つは、
点火器と、
前記点火器により燃焼されるガス発生剤が入る空間を画定する筒部材であって、筒状の周壁部及び前記周壁部の一端を閉塞する頂面部を有し、前記周壁部の他端に前記点火器を収容する筒部材と、
を備える、点火装置であって、
前記筒部材の前記周壁部には、前記筒部材の中心軸方向の前記一端と前記他端との間において、前記周壁部の内径が、前記一端及び前記他端よりも小さい又は大きい径変化部が形成され、前記径変化部に接触して前記ガス発生剤が前記筒部材の内部で、前記径変化部に対して前記一端の側にも前記他端の側にも充填されている、
点火装置である。
【0007】
本開示に係るガス発生器には、点火器が備えられ、この点火器によりガス発生剤が燃焼される。また、本開示に係る点火装置には、筒部材が備えられている。この筒部材は、一端が頂面部により閉塞されており、他端が開口されている。この開口部を点火器に嵌め込むことにより、筒部材が固定される。筒部材の内部の空間には、ガス発生剤が入れられている。ガス発生剤は固形であり、その形状には、顆粒状、ペレット状、または、円柱状などを例示できる。筒部材には、比較的小さな複数のガス発生剤が充填されていてもよく、1つの塊として形成されているガス発生剤(ワングレインタイプ)が挿入されていてもよ
い。どのようなガス発生剤を採用するかについては、点火装置としての燃焼生成物の放出特性に応じて適宜選択すればよい。
【0008】
ここで、点火装置が振動の影響を受けることによりガス発生剤に起因する異音が発生したり、ガス発生剤が擦れて微塵が発生したりする虞がある。そこで、筒部材の周壁部には、径変化部が形成されている。径変化部は、筒部材の周壁面において筒部材の直径が一端及び他端よりも小さい又は大きい部位である。例えば、径変化部は、周壁部の内径が一端及び他端よりも小さい縮径部であってもよく、周壁部の内径が一端及び他端よりも大きい拡径部であってもよい。径変化部を設けることにより、周壁部の内面に凹凸が形成される。この凹凸にガス発生剤が引っかかることで、ガス発生剤を固定することができる。つまり径変化部はガス発生剤に対してのストッパの役割を果たしており、そのためガス発生剤は径変化部に接触した状態で筒部材の内部に充填されている。また筒部材に充填された状態で、ガス発生剤は径変化部の一端側にも他端側にも充填されている。
【0009】
このように構成される点火装置によれば、ガス発生剤が筒部材内部で固定されるため、異音の発生を抑制できる。また、ガス発生剤が粉砕したり、ガス発生剤の微塵が発生したりして、燃焼時の燃焼速度が速くなることを抑制できるため、想定どおりに燃焼ガスを放出することができる。
【0010】
また、前記径変化部は、前記周壁部の内径が前記一端及び前記他端よりも小さい縮径部であり、前記一端または前記他端における前記中心軸から前記周壁部までの距離と、前記縮径部における前記中心軸から前記周壁部までの距離との差が、前記ガス発生剤の最大辺の長さ以上であってもよい。ここで、「前記一端または前記他端における前記中心軸から前記周壁部までの距離と、前記縮径部における前記中心軸から前記周壁部までの距離との差」は、縮径部が凹む距離、または、縮径部が中心軸方向に突出する距離ともいえる。なお、以下では、「前記一端または前記他端における前記中心軸から前記周壁部までの距離と、前記縮径部における前記中心軸から前記周壁部までの距離との差」を、縮径部の突出量ともいう。ガス発生剤の最大辺とは、例えば、ガス発生剤の高さ、幅、または、直径などのうち、距離が最も長い部位である。縮径部の突出量を、ガス発生剤の最大辺の長さ以上に設定することで、ガス発生剤が縮径部に引っかかりやすくなる。すなわち、縮径部がストッパとして機能してガス発生剤を固定することができる。なお、この場合には、比較的小さな粒径を有する複数のガス発生剤が筒部材に充填される。周壁部までの距離とは、周壁部内周面までの距離を指す。
【0011】
また、前記径変化部は、前記周壁部の内径が前記一端及び前記他端よりも小さい縮径部であり、前記筒部材には、前記筒部材の内部と外部とを連通する連通孔が1つ以上形成されており、前記径変化部における前記中心軸と直交する平面で前記筒部材を切断したときの前記筒部材の内部の空間の断面積が、前記連通孔の開口面積の総計よりも大きくてもよい。連通孔は、燃焼ガスが筒部材の外部に放出されるときに通過する孔である。この連通孔は複数設けることができる。この連通孔を燃焼ガスが通過して点火装置の外部に燃焼ガスを放出することができる。ここで、点火器によってガス発生剤に着火されると、発生した燃焼ガスが縮径部の内側を通って連通孔に流れる。そのため、縮径部における内部空間の断面積が小さすぎると、燃焼ガスが通過するときの抵抗が大きくなってしまい、燃焼ガスの放出特性に影響を与える。一方、縮径部における筒部材の内部空間の断面積が、連通孔の開口面積の総計よりも大きければ、ガス発生剤の燃焼特性を連通孔で調整することができる。
【0012】
また、前記径変化部は、前記周壁部の内径が前記一端及び前記他端よりも大きい拡径部であり、前記拡径部における前記中心軸から前記周壁部までの距離と、前記一端または前記他端における前記中心軸から前記周壁部までの距離との差が、前記ガス発生剤の最大辺
の長さ以上であってもよい。ここで、「前記拡径部における前記中心軸から前記周壁部までの距離と、前記一端または前記他端における前記中心軸から前記周壁部までの距離との差」は、拡径部が外部方向に突出する距離ともいえる。なお、以下では、「前記拡径部における前記中心軸から前記周壁部までの距離と、前記一端または前記他端における前記中心軸から前記周壁部までの距離との差」を、拡径部の突出量ともいう。拡径部の突出量を、ガス発生剤の最大辺の長さ以上に設定することで、ガス発生剤が拡径部に入りやすくなる。これにより、拡径部にガス発生剤が引っかかりやすくなるため、拡径部がストッパとして機能してガス発生剤を固定することができる。なお、この場合には、比較的小さな粒径を有する複数のガス発生剤が筒部材に充填される。周壁部までの距離とは、周壁部内周面までの距離を指す。
【0013】
また、前記径変化部は、前記周壁部の内径が前記一端及び前記他端よりも大きい拡径部であり、前記拡径部における前記中心軸から前記周壁部までの距離と、前記一端または前記他端における前記中心軸から前記周壁部までの距離との差が、前記一端または前記他端における前記中心軸から前記周壁部までの距離の4分の1以下であってもよい。拡径部の突出量が大きすぎると他の部材に接触する虞がある。また、拡径部の突出量がある程度大きくなると、それ以上大きくしても、ストッパとしての機能が大きく変わることはない。したがって、拡径部の突出量を、「前記一端または前記他端における前記中心軸から前記周壁部までの距離の4分の1以下」とすることで、拡径部の突出量を必要以上に大きくすることを抑制できる。なお、この場合には、比較的小さな粒径を有する複数のガス発生剤が筒部材に充填される。周壁部までの距離とは、周壁部内周面までの距離を指す。
【0014】
また、前記径変化部の前記中心軸と平行方向の長さが、前記ガス発生剤の最大辺の長さ以上であってもよい。「前記径変化部の前記中心軸と平行方向の長さ」は、径変化部の幅ともいえる。径変化部の幅が狭すぎると径変化部の形成が困難になる。これに対して、径変化部の幅をガス発生剤の最大辺の長さ以上とすることで、比較的容易に径変化部を形成することができる。なお、この場合には、比較的小さな粒径を有する複数のガス発生剤が筒部材に充填される。
【0015】
また、前記径変化部の前記中心軸と平行方向の長さが、前記ガス発生剤の最大辺の3倍以下の長さであってもよい。径変化部の幅が広すぎるとストッパとしての効果が小さくなる。これに対して、径変化部の幅をガス発生剤の最大辺の3倍以下の長さとすることで、ストッパとしての効果が小さくなることを抑制できる。なお、この場合には、比較的小さな粒径を有する複数のガス発生剤が筒部材に充填される。
【0016】
また、前記径変化部は、前記周壁部の内径が前記一端及び前記他端よりも小さい縮径部であり、前記縮径部は、前記一端側から前記中心軸方向に傾斜する第一傾斜部と、前記他端側から前記中心軸方向に傾斜する第二傾斜部と、を含んで構成され、前記縮径部よりも前記一端側の前記周壁部と前記第一傾斜部とのなす角が、前記縮径部よりも前記他端側の前記周壁部と前記第二傾斜部とのなす角よりも小さくてもよい。第一傾斜部は、縮径部において内部空間の断面積が最も小さくなる箇所よりも一端側の部位である。また、第二傾斜部は、縮径部において内部空間の断面積が最も小さくなる箇所よりも他端側の部位である。ここで、複数のガス発生剤を他端側から筒部材に充填するときに、他端側の周壁部と第二傾斜部とのなす角が大きいほど、第二傾斜部が中心軸と平行方向に近付くため、第二傾斜部でガス発生剤が滑りやすくなり、ガス発生剤を一端側に入れやすくなる。一方、ガス発生剤を筒部材に充填し他端側を下にしたときは、一端側の周壁部と第一傾斜部とのなす角が小さいほど、第一傾斜部が中心軸と直交する方向に近付くため、ガス発生剤が縮径部に当たるときの抵抗が大きくなり、ガス発生剤が他端側に移動し難くなる。したがって、縮径部よりも一端側の周壁部と第一傾斜部とのなす角が、縮径部よりも他端側の周壁部と第二傾斜部とのなす角よりも小さくなるように縮径部を形成することにより、ガス発生
剤を充填しやすくすると共に、ガス発生剤を充填した後はガス発生剤の固定が行いやすい。
【0017】
また、前記径変化部は、前記周壁部の内径が前記一端及び前記他端よりも大きい拡径部であり、前記拡径部は、前記一端側から前記周壁部の外側に傾斜する第三傾斜部と、前記他端側から前記周壁部の外側に傾斜する第四傾斜部と、を含んで構成され、前記拡径部よりも前記一端側の前記周壁部と前記第三傾斜部とのなす角が、前記拡径部よりも前記他端側の前記周壁部と前記第四傾斜部とのなす角よりも大きくてもよい。第三傾斜部は、拡径部において内部空間の断面積が最も大きくなる箇所よりも一端側の部位である。また、第四傾斜部は、拡径部において内部空間の断面積が最も大きくなる箇所よりも他端側の部位である。ここで、他端側から複数のガス発生剤を筒部材に充填するときに、一端側の周壁部と第三傾斜部とのなす角が大きいほど、第三傾斜部が中心軸と平行方向に近付くため、第三傾斜部でガス発生剤が滑りやすくなり、ガス発生剤を一端側に入れやすくなる。一方、ガス発生剤を筒部材に充填し他端側を下にしたときは、他端側の周壁部と第四傾斜部とのなす角が小さいほど、第四傾斜部が中心軸と直交する方向に近付くため、ガス発生剤が縮径部に当たるときの抵抗が大きくなり、ガス発生剤が他端側に移動し難くなる。したがって、拡径部よりも一端側の周壁部と第三傾斜部とのなす角が、拡径部よりも他端側の周壁部と第四傾斜部とのなす角よりも大きくなるように拡径部を形成することにより、ガス発生剤を充填しやすくすると共に、ガス発生剤を充填した後はガス発生剤の固定が行いやすい。
【0018】
また、前記点火器は、その周りに配置される保持部によって保持されており、前記径変化部から前記保持部までの前記中心軸に沿った距離よりも、前記径変化部から前記頂面部までの前記中心軸に沿った距離のほうが長くてもよい。すなわち、径変化部を筒部材の開口部(前記他端側)により近づけて配置することにより、径変化部よりも頂面部側(前記一端側)に充填されたより多くのガス発生剤を固定することができる。
【0019】
また、前記径変化部は、前記筒部材の中心軸を中心として、前記周壁部を連続して一周していてもよい。径変化部を周壁部で連続して一周させることにより、径変化部による効果をより高めることができる。
【0020】
また、前記径変化部は、前記筒部材の中心軸を中心として、前記周壁部を断続的に一周していてもよい。例えば周壁部の外側に突出する拡径部をプレスで形成する場合は、拡径部が360度連続しているよりも、周方向に何箇所か独立して配置されるほうが形成しやすい。
【0021】
また、前記径変化部は、前記筒部材の中心軸と平行方向に複数形成されてもよい。これにより、ストッパとなる凹凸をより多く形成することができるため、ガス発生剤の移動をより抑制可能となる。
【0022】
また、前記径変化部は、前記周壁部の内径が前記一端及び前記他端よりも小さい縮径部であり、前記ガス発生剤は、前記周壁部の内面と対向する外径を有する前記筒部材の段形状に対応した柱状に形成されており、且つ、前記ガス発生剤の外周面には、前記縮径部に沿うように形成した溝が形成されており、前記溝に嵌入した状態で前記縮径部が形成されてもよい。この場合、ガス発生剤は、大きな1つの塊として形成され、筒部材に挿入される。このときに縮径部が既に形成されていると、筒部材を挿入することができなくなるため、筒部材を挿入した後に筒部材の周壁部に縮径部を形成する。また、縮径部の形状に合わせてガス発生剤に溝を形成しておくことにより、周壁部に縮径部を形成した後には、縮径部がガス発生剤の溝に嵌り込むため、ガス発生剤を固定することができる。
【0023】
また、前記筒部材に充填されるガス発生剤の密度が、前記径変化部よりも前記一端側のほうが、前記他端側よりも高くてもよい。ガス発生剤の密度は、例えば、タッピングにより高めることができる。筒部材にガス発生剤を充填するときには、筒部材の頂面部を下に向けて、筒部材の開口部からガス発生剤を入れる。このときに、適宜タッピングを行うことにより、ガス発生剤の密度を高めることができる。ここで、周壁部の一端から径変化部までの間のガス発生剤の密度を高めることにより、ガス発生剤を1つの塊に近い状態とすることができる。このような状態のガス発生剤は、径変化部によって固定されやすい。一方、径変化部よりも他端側のガス発生剤の密度を低くすることにより、筒部材を点火器に嵌めやすくなる。
【0024】
また前記点火装置は、ガス発生器の点火装置として用いることができる。この場合点火装置はガス発生器のハウジング内に充填されており、ガス発生器としては例えば特開2009-156107号公報の
図1に示すシングルパイロタイプのガス発生器や、特開2014-073743号公報の
図1に示すデュアルパイロタイプのガス発生器、あるいは特開2012-076608号公報の
図1に示す加圧ガスを使用したガス発生器等の点火手段として使用することができる。
【0025】
また、前記径変化部は、前記周壁部の前記一端および前記他端よりも可撓性が高くてもよい。すなわち、所定以上の荷重が加わった時に径変化部が撓みやすいように径変化部を形成してもよい。ここで、点火装置をデュアルタイプのガス発生器における点火装置として用いた場合、ガス発生剤が燃焼したときの圧力の上昇により筒部材が点火器から外れることがある。この場合、筒部材がガス発生器のハウジングの内壁に衝突し、このときの衝撃が他の部材に伝わる虞がある。例えば、この衝撃により未作動の点火手段に対するコネクタの接続が緩む虞がある。これに対して、径変化部の可撓性を比較的高くしておくことにより、径変化部が変形しやすくなる。これにより、筒部材がハウジングに衝突したときの衝撃を緩和することができる。
【0026】
また、前記径変化部の板厚が、前記周壁部の前記一端および前記他端の板厚よりも薄くてもよい。これにより、径変化部が変形しやすくなるので、筒部材がハウジングに衝突したときの衝撃を緩和することができる。
【発明の効果】
【0027】
本開示によれば、点火装置に充填されるガス発生剤が筒部材内で固定される。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】第1実施形態に係る点火装置を含むガス発生器の高さ方向の断面図である。
【
図2】第1内筒部材を、中心軸を含む平面で切断したときの断面図である。
【
図4】断面形状が台形である縮径部の断面図である。
【
図5】断面形状が三角形である縮径部の断面図である。
【
図6】第1内筒部材に伝火薬を入れた後の状態を示した図である。
【
図7】第1内筒部材への伝火薬の充填が完了して第1点火器組立体に第1内筒部材を嵌め込む直前の状態を示した図である。
【
図8】第1点火器組立体に第1内筒部材が嵌め込まれた後の状態を示した図である。
【
図9】第1内筒部材を第1点火器組立体に嵌め込んで、頂面部が上側になるように配置したときの図である。
【
図10】第2実施形態に係る点火装置を含んだガス発生器の高さ方向の断面図である。
【
図11】第1内筒部材を、中心軸を含む平面で切断したときの断面図である。
【
図12】断面形状が台形である拡径部の断面図である。
【
図13】断面形状が三角形である拡径部の断面図である。
【
図14】第1内筒部材に伝火薬を入れた後の状態を示した図である。
【
図15】第1内筒部材への伝火薬の充填が完了して第1点火器組立体を第1内筒部材に嵌め込む直前の状態を示した図である。
【
図16】第1内筒部材へ第1点火器組立体が嵌め込まれた後の状態を示した図である。
【
図17】第1内筒部材を第1点火器組立体に嵌め込んで、頂面部が上側になるように配置したときの図である。
【
図18】第3実施形態に係る第1内筒部材の斜視図である。
【
図19】第1内筒部材の縮径部が連続していない場合であって、上下方向にずれて配置される縮径部の一例を示した図である。
【
図20】第1内筒部材の縮径部が連続していない場合における、第1内筒部材の中心軸と直交する断面で縮径部を切断したときの断面図である。
【
図21】第1内筒部材の拡径部が連続していない場合における、第1内筒部材の中心軸と直交する断面で拡径部を切断したときの断面図である。
【
図22】伝火薬を第1内筒部材の伝火薬室に挿入する前の状態を示した図である。
【
図23】伝火薬を第1内筒部材に挿入した状態を示した図である。
【
図24】第1内筒部材に縮径部を形成した後の状態を示した図である。
【
図25】第1内筒部材を保持部に嵌め込む前の状態を示した図である。
【
図26】第1点火装置を作動させる前のガス発生器の状態を示した図である。
【
図27】第1点火装置を作動させた後のガス発生器の状態を示した図である。
【
図28】第5実施形態に係る縮径部の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下に、図面を参照して本開示の実施形態に係るガス発生器について説明する。なお、実施形態における各構成及びそれらの組み合わせ等は、一例であって、本開示の主旨から逸脱しない範囲内で、適宜、構成の付加、省略、置換、及びその他の変更が可能である。本開示は、実施形態によって限定されることはなく、特許請求の範囲によってのみ限定される。
【0030】
<第1実施形態>
図1は、第1実施形態の点火装置を含むガス発生器1の高さ方向の断面図である。ガス発生器1は、上部シェル2及び下部シェル3で形成される外殻ハウジング4内に充填されたガス発生剤を燃焼させて、燃焼ガスを外部に放出するように構成されている。なお、ガス発生器1は、後述するように2つの燃焼室が配置され、各燃焼室にガス発生剤を配置した、いわゆるデュアルタイプのガス発生器である。ただし、デュアルタイプに限らず、シングルタイプのガス発生器(例えば特開2019-156107号公報の
図1で示すガス発生器)の点火装置であっても、本開示の適用が可能である。また本開示の技術を、特開2004-217059号公報の
図1で示されるシートベルトリトラクタ用ガス発生器にも適用できる。ここで、外殻ハウジング4の軸C1の方向に沿う方向をガス発生器1の上下方向と定義し、上部シェル2側(即ち、
図1における上側)をガス発生器1の上側とし、下部シェル3側(即ち、
図1における下側)をガス発生器1の下側とする。また、上下方向と直交する方向、すなわち、
図1における左右方向を、水平方向とする。
【0031】
上部シェル2は、上側周壁部21及び頂面部22を有し、これらにより凹状の内部空間を形成する。詳しくは、上側周壁部21の一端側に頂面部22が接続し、その他端側が上部シェル2の開口部となることで、凹状の内部空間が形成される。上側周壁部21の下端部には、径方向外側に延在した接合部23が形成されている。
【0032】
下部シェル3は、下側周壁部31及び底面部32を有し、これらにより凹状の内部空間を形成する。詳しくは、下側周壁部31の一端側に底面部32が接続し、その他端側は下部シェル3の開口部となることで、凹状の内部空間が形成される。そして、下側周壁部31による内部空間の半径は、上部シェル2の上側周壁部21による内部空間の半径と概ね同じである。下側周壁部31の上端部には、径方向外側に延在した接合部33が形成されている。
【0033】
底面部32には、第1点火器組立体41を底面部32に取り付けるための第1取付孔32a、及び、第2点火器組立体42を底面部32に取り付けるための第2取付孔32bが形成されている。第1点火器組立体41は、後述する第1点火器411とそれを保持する保持部412を含む。第1取付孔32aに第1点火器組立体41が嵌め込まれ、第2取付孔32bに第2点火器組立体42が嵌め込まれる。また、第1点火器組立体41を囲むように、第1内筒部材51が設けられている。第1内筒部材51は「筒部材」の一例であり、第1点火器組立体41を取り囲むようにして底面部32から頂面部22に向かって延びる筒状の部材である。第1内筒部材51は、周壁部511及び頂面部512を有し、これらにより凹状の内部空間を形成する。詳しくは、周壁部511の一端側に頂面部512が接続し、その他端側が第1内筒部材51の開口部となることで、凹状の内部空間が形成される。第1内筒部材51は、一端(上端)が閉塞され他端(下端)が開口した筒状に形成されており、その他端に保持部412が嵌入(圧入)されることで、底面部32に取り付けられている。第1点火器組立体41と第1内筒部材51をあわせて、第1点火装置61となる。また、第2点火装置62を構成する部品として、第2内筒部材52が設けられている。第2内筒部材52は、底面部32から頂面部22に向かって延びる筒状の部材である。なお、第1点火器組立体41、及び、第1内筒部材51についての詳細な説明は後述する。なお、第1点火装置61及び第2点火装置62は、点火装置の一例である。
【0034】
上部シェル2の接合部23と下部シェル3の接合部33とが重ね合わされてレーザ溶接等によって接合されることで、軸方向の両端が閉塞した短尺円筒状の外殻ハウジング4が形成されている。この外殻ハウジング4によって、燃焼室40が画定されている。また、上部シェル2の上側周壁部21には、燃焼室40と外殻ハウジング4の外部空間とを連通するガス排出孔24が、周方向に沿って複数並んで形成されている。ガス排出孔24は、第1点火装置61、または、第2点火装置62が作動する前の状態では、シールテープ25により閉塞されている。
【0035】
なお、上部シェル2の頂面部22及び下部シェル3の底面部32は、上面視で概ね円形状を有しており、上部シェル2の上側周壁部21及び下部シェル3の下側周壁部31は、それぞれ頂面部22、底面部32の周囲を囲み、各面部から概ね垂直に延在した環状の壁面を形成している。つまり、上部シェル2と下部シェル3とが一体化された外殻ハウジング4においては、頂面部22、底面部32、上側周壁部21及び下側周壁部31が、それぞれ天板、底板、周壁板となって外殻ハウジング4が形成される。なお、外殻ハウジング4は、ハウジングの一例である。
【0036】
このように構成される外殻ハウジング4の内部空間には、第1点火装置61及び第2点火装置62が収容される。なお、本実施例に係るガス発生器1では、軸C1に対して略対称となる位置に、第1点火装置61及び第2点火装置62が配置されるものとする。そして、外殻ハウジング4の内部空間において、更に第1点火器組立体41と第1内筒部材51とによって画定される閉空間(以下、「伝火薬室53」と称する場合もある。)には、伝火薬54が充填される。また、外殻ハウジング4の内部空間において、更に第2点火器組立体42と第2内筒部材52とによって画定される閉空間には、第2ガス発生剤55が充填される。なお、このように第2ガス発生剤55が充填される空間を、以下「第2燃焼室56」と称する。伝火薬54及び第2ガス発生剤55は、ガス発生剤の一例である。
【0037】
そして、伝火薬室53及び第2燃焼室56よりも外側の外殻ハウジング4の内部空間に燃焼室40が形成されている。燃焼室40には、第1ガス発生剤43が充填され、第1ガス発生剤43を取り囲むように環状のフィルタ44が配置されている。フィルタ44は、ステンレス鋼製平編の金網を半径方向に重ね、半径方向及び軸方向に圧縮して形成されており、第1ガス発生剤43、第2ガス発生剤55、及び、伝火薬54による燃焼ガスを冷却し、その燃焼残渣を捕集する。このように、燃焼室40に第1ガス発生剤43が配置され、第2燃焼室56に第2ガス発生剤55が配置されることで、ガス発生器1はデュアルタイプのガス発生器として構成されている。このようなガス発生器1によれば、第1ガス発生剤43の燃焼と、第2ガス発生剤55の燃焼とによって、外部への燃焼ガスの放出の形態を多様に調整することができる。
【0038】
ここで、第1ガス発生剤43は、燃焼室40内で不要に振動しないように不図示のクッション(例えば、上部シェル2内の頂面部22側に設けられる)の付勢力により外殻ハウジング4、フィルタ44等に抑えつけられた状態で充填されている。第1ガス発生剤43の燃焼温度は、1000~1700℃の範囲にあることが望ましく、第1ガス発生剤43には、例えば、硝酸グアニジン(41重量%)、塩基性硝酸銅(49重量%)及びバインダーや添加物からなる、単孔円柱状のものを用いることができる。
【0039】
また、上部シェル2の上側周壁部21および下部シェル3の下が周壁部31とフィルタ44との間には、ガス通路45が設けられる。ガス通路45は、フィルタ44の周囲に半径方向外側に環状に形成された空間である。このガス通路45により、燃焼ガスはフィルタ44の全領域を通過し、フィルタ44の有効利用と燃焼ガスの効果的な冷却・浄化が達成される。
【0040】
第1点火器組立体41は、第1点火器411と、第1取付孔32aに嵌め込まれ第1点火器411を固定する保持部412と、を備える。なお、第1点火器組立体41は、点火器の一例である。第1点火器411は、点火薬が収容された金属製のカップ体411aと、外部から電流の供給を受けるための一対の通電ピン411b,411cと、を有する。第1点火器411は、一対の通電ピン411b,411cに供給される着火電流により作動することで該点火薬を燃焼させ、その燃焼生成物をカップ体411aの外部に放出させる。保持部412は、第1点火器411と第1取付孔32aとの間に介装されることで、第1取付孔32aに対して第1点火器411を固定する樹脂を含む部材である。保持部412は、第1点火器411の下部を覆うと共に第1取付孔32aと係合することで、カップ体411aの少なくとも一部が保持部412から露出した状態となるように、第1取付孔32aに対して第1点火器411を固定する。但し、保持部412の樹脂によってカップ体411aの全体がオーバーモールドされていてもよい。即ち、カップ体411aの全体が樹脂に覆われた状態であってもよい。また、保持部412は、第1取付孔32aの内側に、一対の通電ピン411b,411cに外部電源からの電力を供給するコネクタ(図示せず)を挿入可能なコネクタ挿入空間412aを形成している。保持部412は、一対の通電ピン411b,411cの下端がコネクタ挿入空間412aに露出するように、一対の通電ピン411b,411cの一部を覆い、保持している。保持部412の樹脂によって、一対の通電ピン411b,411c同士の絶縁性が保たれている。なお、第2点火装置62も第1点火装置61と同様の構造であるため、第2点火装置62の説明は省略する。
【0041】
伝火薬54は、第1点火器411の作動により燃焼し、燃焼ガスを発生させる。ここで、伝火薬54としては、着火性が良く、第1ガス発生剤43よりも燃焼温度の高いガス発生剤を使用することができる。伝火薬54の燃焼温度は、例えば、1700~3000℃の範囲に設定される。このような伝火薬54としては、例えばニトログアニジン(34重
量%)、硝酸ストロンチウム(56重量%)からなるものを用いることができる。また、伝火薬54には、例えば顆粒状、ペレット状、円柱状、ディスク状等、種々の形状を採用できる。
【0042】
また、第1内筒部材51の周壁部511には、その内部空間(即ち、伝火薬室53)と外部空間とを連通する連通孔51aが複数形成されている。連通孔51aは、第1点火装置61が作動する前の状態では、シールテープにより閉塞されるなど、連通が阻止されており、伝火薬54と第1ガス発生剤43との混在が防止される。
【0043】
また、第2内筒部材52内の空間には、第2ガス発生剤55が充填される。また、第2ガス発生剤55にも、第1ガス発生剤43と同様に、硝酸グアニジン(41重量%)、塩基性硝酸銅(49重量%)及びバインダーや添加物からなる、単孔円柱状のものを用いることができる。そして、第2内筒部材52に設けられた連通孔52aは、不図示のアルミニウムテープで塞がれ、第2ガス発生剤55と第1ガス発生剤43との混在が防止される。
【0044】
そして、以上に述べたガス発生器1において、第1点火装置61が作動すると、伝火薬54が燃焼され、第1内筒部材51内に燃焼生成物が生じる。そうすると、この燃焼生成物の作用により、それまで塞がれていた連通孔51aが開口し、該燃焼生成物が、連通孔51aを介して燃焼室40へ流出する。その結果、第1ガス発生剤43が燃焼される。つまり、本実施例に係るガス発生器1では、第1点火装置61の作動タイミングによって、第1ガス発生剤43の燃焼タイミングが制御される。また、第2点火装置62が作動すると、第2ガス発生剤55が燃焼され、第2内筒部材52内に燃焼ガスが生じる。そして、この燃焼ガスは、連通孔52aを介して燃焼室40へ流出する。
【0045】
ところで、第1内筒部材51の内部で伝火薬54が移動しやすい状態であると、伝火薬54が第1内筒部材51に衝突して異音が発生したり、伝火薬54が粉砕したりする虞がある。また、伝火薬54が、第1内筒部材51の壁面で擦れて微塵が発生する虞がある。そうすると、伝火薬54の表面積が増加することにより、燃焼速度が増加して、第1内筒部材51内部の圧力が想定以上に増加する虞がある。これに対して、第1実施形態に係る第1内筒部材51には、上下方向の一端51b及び他端51cよりも内径が小さくなる縮径部10が形成されている。なお、縮径部10は、径変化部の一例である。また、第1実施形態及び以下の実施形態では、第1内筒部材51、第1点火器組立体41及び第1点火装置61について説明するが、第2内筒部材52、第2点火器組立体42及び第2点火装置62においても同様の形状を採用することができる。その場合、第2内筒部材が「筒部材」となり、第2点火器組立体42と第2内筒部材52を合わせて「点火装置」に対応する。
【0046】
ここで、
図2は、第1内筒部材51を、中心軸C2を含む平面で切断したときの断面図である。第1内筒部材51の中心軸C2は、外殻ハウジング4の軸C1と平行である。縮径部10は、第1内筒部材51の周壁部511を中心軸C2方向に凹ませることにより形成されている。第1実施形態に係る縮径部10は、第1内筒部材51の周方向に連続して形成されている。また、縮径部10は、例えば、周壁部511の内周面からD1で示した距離だけ中心軸C2方向に突出するように形成されている。縮径部10は、断面が例えば半円形となるように形成されているが、これに限らず、他の形状を採用することもできる。
【0047】
図2において、第1内筒部材51の一端51b側及び他端51c側の周壁部511の直径はD6で示されており、縮径部10における第1内筒部材51の直径はD5で示される。D5はD6よりも小さい値である。なお、本開示におけるD5及びD6等の寸法は、第
1内筒部材51の内壁面を基準とした寸法で表している。D5は、周壁部511の直径が最も小さくなる箇所における直径である。すなわち、D5は、縮径部10の突出量が最も大きい箇所における周壁部511の直径(内径)である。また、縮径部10の突出量が最も大きい箇所は、第1内筒部材51の一端51bからD2で示した距離、且つ、保持部412の頂面412bからD3で示した距離に位置する。ここで、例えば、D3はD2よりも小さい値であるが、これに限らず、D3がD2以上の値であってもよい。また、縮径部10は、連通孔51aよりも第1内筒部材51の他端51c側に形成されている。また、
図2では、縮径部10の中心軸C2方向の幅をD4で示している。
【0048】
図2における縮径部10の突出量D1および幅D4は、例えば、伝火薬54の形状に基づいて設定してもよい。縮径部10は、例えば、伝火薬54が伝火薬室53の中で移動することを抑制するような形状とする。ここで、
図3は、伝火薬54の形状を例示した図である。縮径部10は、例えば、伝火薬54の最大辺A1に基づいて設定される。例えば、54aの符号で示した略円柱形の伝火薬54では、底面の円の直径A11よりも高さA12のほうが長いため、高さA12が最大辺A1となる。一方、54bの符号で示した略円柱形の伝火薬54では、底面の円の直径A11のほうが高さA12よりも長いため、直径A11が最大辺A1となる。そして、例えば、縮径部10の突出量D1が、伝火薬54の最大辺A1以上となるように、突出量D1を設定してもよい。そうすると、第1内筒部材51に充填した伝火薬54が、縮径部10に引っかかりやすくなるため、伝火薬54が固定されやすくなる。
【0049】
また、縮径部10における第1内筒部材51の直径D5は、例えば、縮径部10における中心軸C1と直交する平面で第1内筒部材51を切断したときの第1内筒部材51の内部の空間の断面積が、連通孔51aの開口面積の総計(連通孔51a1つの開口面積×連通孔51aの数)よりも大きくなるように設定する。これにより、伝火薬54が燃焼したときに発生するガスの流速や伝火薬54の燃焼性能を連通孔51aで調整可能となり、伝火薬54全体の燃焼をコントロールすることができる。
【0050】
また、縮径部10の幅D4の上限は、伝火薬54の最大辺A1の2倍から3倍以下であることが好ましく、さらには、最大辺A1と同等であることがより好ましい。ここで、縮径部10の幅D4があまりに大きすぎると、幅D4の間で伝火薬54が移動しやすくなるため、縮径部10の効果が低くなる。一方、幅D4が狭すぎると、縮径部10を形成するときの加工が困難になり得る。したがって、これらを考慮しつつ幅D4を設定してもよい。
【0051】
なお、縮径部10の断面形状は
図2に示す半円形に限らない。例えば、
図4は、断面形状が台形である縮径部10の断面図である。
図4は、中心軸C2を含む平面で縮径部10を切断した場合の断面図である。縮径部10は、第1内筒部材51の一端51b側から中心軸C2方向に傾斜する上側傾斜部10aと、他端51c側から中心軸C2方向に傾斜する下側傾斜部10bと、周壁部511の一端51b及び他端51cよりも中心軸C2側に該中心軸C2と平行に配置され、上側傾斜部10aと下側傾斜部10bとを接続する底部10cとを含んで構成される。なお、
図4における縮径部10の突出量D1、縮径部10の幅D4、及び、縮径部10における第1内筒部材51の直径D5については、
図2に示した縮径部10と同様に考えることができる。
【0052】
また、
図5は、断面形状が三角形である縮径部10の断面図である。
図5は、中心軸C2を含む平面で縮径部10を切断した場合の断面図である。縮径部10は、第1内筒部材51の一端51b側から中心軸C2方向に傾斜する上側傾斜部10dと、他端51c側から中心軸C2方向に傾斜する下側傾斜部10eと、を含んで構成されている。なお、
図5における上側傾斜部10dは、第一傾斜部の一例であり、下側傾斜部10eは、第二傾斜
部の一例である。上側傾斜部10dと下側傾斜部10eとは、接続部10fにおいて接続されている。接続部10fは、縮径部10において中心軸C2に最も近い箇所である。
図5における縮径部10の突出量D1、縮径部10の幅D4、及び、縮径部10における第1内筒部材51の直径D5については、
図2に示した縮径部10と同様に考えることができる。
【0053】
また、
図5において、第1内筒部材51の一端51b側の周壁部511と、上側傾斜部10dとのなす角R1が、第1内筒部材51の他端51c側の周壁部511と、下側傾斜部10eとのなす角R2よりも小さくなるように、上側傾斜部10d及び下側傾斜部10eを形成してもよい。
【0054】
ここで、第1内筒部材51に伝火薬54を充填するときには、他端51c側を上に向けた状態にして、第1内筒部材51の他端51c側から伝火薬54を充填する。このときに、第1内筒部材51の他端51c側の周壁部511と、下側傾斜部10eとのなす角R2が比較的大きいと、下側傾斜部10eの内壁面上を伝火薬54が滑りやすくなる。したがって、領域Y1に伝火薬54を充填しやすくできる。ここで、
図5において、領域Y1は、第1内筒部材51の内部空間であって、接続部10fよりも第1内筒部材51の一端51b側の空間である。また、領域Y2は、第1内筒部材51の内部空間であって、接続部10fよりも第1内筒部材51の他端51c側の空間である。
【0055】
一方、第1内筒部材51の一端51b側の周壁部511と、上側傾斜部10dとのなす角R1が比較的小さいと、第1内筒部材51を
図1の向きに組付けたときに領域Y1に一旦入った伝火薬54が、上側傾斜部10dの内壁面に引っかかりやすくなるため、伝火薬54が領域Y1から領域Y2に移動することが抑制される。なお、第1内筒部材51の一端51b側の周壁部511と、上側傾斜部10dとのなす角R1は、90度としてもよく、90度以下の角度であってもよい。すなわち、上側傾斜部10dを含む平面が中心軸C2と直交していてもよい。
【0056】
なお、
図4に示した形状においても、第1内筒部材51の一端51b側の周壁部511と、上側傾斜部10aとのなす角が、第1内筒部材51の他端51c側の周壁部511と、下側傾斜部10bとのなす角よりも小さくなるように、上側傾斜部10a及び下側傾斜部10bを形成してもよい。
【0057】
また、
図5に示した形状において、第1内筒部材51の一端51b側の壁面と上側傾斜部10dとのなす角R1と、第1内筒部材51の他端51c側の壁面と下側傾斜部10eとのなす角R2とが等しくなるように、上側傾斜部10d及び下側傾斜部10eを形成してもよい。
【0058】
次に、第1内筒部材51に伝火薬54を充填する方法について説明する。
図6は、第1内筒部材51に伝火薬54を入れた後の状態を示した図である。第1内筒部材51の一端51b側の頂面部512が下側になるように第1内筒部材51を上下逆さまの状態にして、他端51c側の開口部から伝火薬54を入れている。このときに、
図6においてY11で示す境界線までは、タッピングを行いつつ伝火薬54を入れる。なお、Y11で示す境界線は、縮径部10において中心軸C2からの距離が最も短い箇所における水平線である。
【0059】
そして、境界線Y11よりも上側(すなわち、他端51c側)に入れる伝火薬54にはタッピングを行わない。なお、別法として、境界線Y11よりも他端51c側は、一端51b側よりも伝火薬54のタッピングを軽く行う程度にしておく。このようにして、境界線Y11よりも一端51b側の伝火薬54の密度を比較的高くし、境界線Y11よりも他
端51c側の伝火薬54の密度を比較的低くして、第1内筒部材51に規定量の伝火薬54を充填する。
【0060】
図7は、第1内筒部材51への伝火薬54の充填が完了して第1点火器組立体41に第1内筒部材51を嵌め込む直前の状態を示した図である。頂面部512を下に向けたまま、他端51c側から第1点火器組立体41を嵌め込む。このときには、第1点火器組立体41は、底面部32の第1取付孔32aに既に嵌め込まれた状態になっている。ただし、上部シェル2と下部シェル3とは接合されていない。このときに、境界線Y11よりも他端51c側の伝火薬54の密度が比較的低いために、第1点火器411は、伝火薬54を押し分けながら頂面部512の方向に挿入される。
【0061】
図8は、第1点火器組立体41に第1内筒部材51が嵌め込まれた後の状態を示した図である。このときには、第1点火器411のカップ体411aの周囲に伝火薬54が回り込み、カップ体411aの周りに伝火薬54が配置された状態になる。次に、
図9は、第1内筒部材51を第1点火器組立体41に嵌め込んで、頂面部512が上側になるように配置したときの図である。このときには、縮径部10に接触して伝火薬54が内筒部材51の内部で、縮径部10に対して一端51bの側にも他端51cの側にも充填されている。このように、頂面部512が上側となるように配置しても、境界線Y11よりも一端51b側の伝火薬54は、高い密度で充填されているため、境界線Y11よりも下側に移動することが抑制される。すなわち、境界線Y11よりも頂面部512側に充填されている伝火薬54は、1つの塊に近い状態で充填されている。それに対して縮径部10がストッパの役目を果たすため、境界線Y11よりも上側の伝火薬54が、境界線Y11よりも下側に落下することを抑制している。
【0062】
そして、
図2において、第1内筒部材51の一端51b側の頂面部512から縮径部10までの距離D2が、保持部412の頂面412bから縮径部10までの距離D3よりも長くなるように縮径部10を形成することにより、伝火薬54の密度が高い領域をより広くすることができるため、第1内筒部材51内で固定される伝火薬54の量をより多くすることができる。
【0063】
ここで、従来の内筒部材には縮径部10が形成されていない。そのため、たとえタッピングを行って伝火薬の密度を高めたとしても、ストッパがないことから伝火薬同士の間に形成されたわずかな隙間により伝火薬が移動しやすくなる。したがって、異音が発生したり、微塵が発生したりする虞がある。
【0064】
一方、第1実施形態に係るガス発生器1では、縮径部10により伝火薬54が固定される。これにより、異音の発生及び微塵の発生を抑制できる。また、伝火薬54が粉砕されることを抑制できる。したがって、燃焼速度が想定よりも上昇することを抑制できる。
【0065】
<第2実施形態>
図10は、第2実施形態に係る点火装置を含んだガス発生器1の高さ方向の断面図である。第1実施形態で説明したガス発生器1の第1点火装置61と比較して、第2実施形態に係るガス発生器1の第1点火装置61は、第1内筒部材51だけが異なる。したがって、第1内筒部材51について主に説明する。第2実施形態では、第1実施形態において縮径部10が形成されている箇所に、拡径部100が形成されている。
【0066】
拡径部100は、第1内筒部材51の上下方向の一端51b及び他端51cよりも内径が大きくなるように形成されている。なお、拡径部100は、径変化部の一例である。
図11は、第1内筒部材51を、中心軸C2を含む平面で切断したときの断面図である。拡径部100は、第1内筒部材51の直径方向の外側に突出するように形成されている。第
2実施形態に係る拡径部100は、第1内筒部材51の周方向に連続して形成されている。また、拡径部100は、例えば、第1内筒部材51の内周面からD7で示した距離だけ中心軸C2から離れる方向に突出するように形成されている。拡径部100は、断面が例えば半円形となるように形成されているが、これに限らず、他の形状を採用することもできる。
【0067】
図11において、第1内筒部材51の一端51b側及び他端51c側の周壁部511の直径はD6で示されており、拡径部100における第1内筒部材51の直径はD8で示される。D8はD6よりも大きい値である。D8は、周壁部511の直径が最も大きくなる箇所における直径である。すなわち、D8は、拡径部100の突出量が最も大きい箇所における周壁部511の直径(内径)である。また、拡径部100の突出量が最も大きい箇所は、第1内筒部材51の一端51bからD2で示した距離、且つ、保持部412の頂面412bからD3で示した距離に位置する。ここで、例えば、D3はD2よりも小さい値であるが、これに限らず、D3がD2以上の値であってもよい。また、拡径部100は、連通孔51aよりも第1内筒部材51の他端51c側に形成されている。また、
図11では、拡径部100の中心軸C2方向の幅をD4で示している。
【0068】
図11における拡径部100の突出量D7および幅D4は、例えば、伝火薬54の形状に基づいて設定してもよい。拡径部100は、例えば、伝火薬54が伝火薬室53の中で固定されやすい形状とする。例えば、拡径部100の突出量D7が、
図3に示した伝火薬54の最大辺A1以上となるように、突出量D7を設定してもよい。また、拡径部100の突出量D7の最大値は、例えば、第1内筒部材51の一端51b側の直径D6の4分の1であるが、第1内筒部材51の外部の他の部材(例えば、第2内筒部材52、または、フィルタ44など)に干渉しない範囲で最大限突出するように設定してもよい。このように拡径部100を形成することで、拡径部100に伝火薬54が入りやすくなるため、拡径部100に伝火薬54が引っかかりやすくなる。したがって、伝火薬54が固定される。
【0069】
また、拡径部100の幅D4の上限は、
図3に示した伝火薬54の最大辺A1の2倍から3倍以下であることが好ましく、さらには、最大辺A1と同等であることがより好ましい。ここで、拡径部100の幅D4があまりに大きすぎると、幅D4の間で伝火薬54が移動しやすくなるため効果が低くなる。一方、幅D4が狭すぎると、拡径部100を形成するときの加工が困難になり得る。したがって、これらの条件を満たすように幅D4を設定してもよい。
【0070】
なお、拡径部100の断面形状は
図11に示す半円形状に限らない。例えば、
図12は、断面形状が台形である拡径部100の断面図である。
図12は、中心軸C2を含む平面で拡径部100を切断した場合の断面図である。拡径部100は、第1内筒部材51の一端51b側から、第1内筒部材51の外部の方向(中心軸C2から離れる方向)に傾斜する上側傾斜部100aと、他端51c側から第1内筒部材51の外部の方向(中心軸C2から離れる方向)に傾斜する下側傾斜部100bと、周壁部511の一端51b及び他端51cよりも周壁部511の外側に該中心軸C2と平行に配置され、上側傾斜部100aと下側傾斜部100bとを接続する底部100cとを含んで構成される。なお、
図12における拡径部100の突出量D7、拡径部100の幅D4、及び、拡径部100における第1内筒部材51の直径D8については、
図11に示した拡径部100と同様に考えることができる。
【0071】
また、
図13は、断面形状が三角形である拡径部100の断面図である。
図13は、中心軸C2を含む平面で拡径部100を切断した場合の断面図である。拡径部100は、第1内筒部材51の一端51b側から第1内筒部材51の外部方向に傾斜する上側傾斜部1
00dと、他端51c側から第1内筒部材51の外部方向に傾斜する下側傾斜部100eと、を含んで構成されている。なお、上側傾斜部100dは、第三傾斜部の一例であり、下側傾斜部100eは、第四傾斜部の一例である。上側傾斜部100dと下側傾斜部100eとは、接続部100fにおいて接続されている。接続部100fは、拡径部100において中心軸C2から最も遠い箇所である。なお、
図13における拡径部100の突出量D7、拡径部100の幅D4、及び、拡径部100における第1内筒部材51の直径D8については、
図11に示した拡径部100と同様に考えることができる。
【0072】
また、
図13において、第1内筒部材51の一端51b側の周壁部511と、上側傾斜部100dとのなす角R3が、第1内筒部材51の他端51c側の周壁部511と、下側傾斜部100eとのなす角R4よりも大きくなるように、上側傾斜部100d及び下側傾斜部100eを形成してもよい。
【0073】
ここで、第1内筒部材51に伝火薬54を充填するときには、他端51c側を上に向けた状態にして、第1内筒部材51の他端51c側から伝火薬54を充填する。このときに、第1内筒部材51の一端51b側の周壁部511と、上側傾斜部100dとのなす角R3が比較的大きいと、上側傾斜部100dの内壁面上を伝火薬54が滑りやすくなる。したがって、領域Y21に伝火薬54を充填しやすくできる。ここで、
図13において、領域Y21は、第1内筒部材51の内部空間であって、接続部100fよりも第1内筒部材51の一端51b側の空間である。また、領域Y22は、第1内筒部材51の内部空間であって、接続部100fよりも第1内筒部材51の他端51c側の空間である。
【0074】
一方、第1内筒部材51の他端51c側の周壁部511と、下側傾斜部100eとのなす角R4が比較的小さいと、第1内筒部材51を
図10の向きに組付けたときに領域Y21に一旦入った伝火薬54が、下側傾斜部100eの内壁面に引っかかりやすくなるため、伝火薬54が領域Y21から領域Y22に移動することが抑制される。なお、第1内筒部材51の一端51b側の周壁部511と、下側傾斜部100eとのなす角R4は、90度としてもよく、90度以下の角度であってもよい。すなわち、下側傾斜部100eを含む平面が中心軸C2と直交していてもよい。
【0075】
なお、
図12に示した形状においても、第1内筒部材51の一端51b側の周壁部511と上側傾斜部100aとのなす角が、第1内筒部材51の他端51c側の周壁部511と、下側傾斜部100bとのなす角よりも大きくなるように、上側傾斜部100a及び下側傾斜部100bを形成してもよい。
【0076】
また、
図13に示した形状において、第1内筒部材51の一端51b側の周壁部511と、上側傾斜部100dとのなす角R3が、第1内筒部材51の他端51c側の周壁部511と、下側傾斜部100eとのなす角R4とが等しくなるように、上側傾斜部100d及び下側傾斜部100eを形成してもよい。
【0077】
次に、第1内筒部材51に伝火薬54を充填する方法について説明する。
図14は、第1内筒部材51に伝火薬54を入れた後の状態を示した図である。第1内筒部材51の一端51b側の頂面部512が下側になるように第1内筒部材51を上下逆さまの状態にして、他端51c側の開口部から伝火薬54を入れている。このときに、Y23で示す境界線までは、タッピングを行いつつ伝火薬54を入れる。なお、Y23で示す境界線は、拡径部100によって第1内筒部材51の内径が他端51c側よりも大きくなり始める境界線である。
【0078】
そして、境界線Y23よりも上側(すなわち、他端51c側)に入れる伝火薬54にはタッピングを行わない。なお、別法として、境界線Y23よりも他端51c側は、一端5
1b側よりも伝火薬54のタッピングを軽く行う程度にしておく。このようにして、境界線Y23よりも一端51b側の伝火薬54の密度を比較的高くし、境界線Y23よりも他端51c側の伝火薬54の密度を比較的低くして、第1内筒部材51に規定量の伝火薬54を充填する。少なくとも境界線Y23までタッピングを行うことにより、拡径部100に伝火薬54が押し込まれるため、拡径部100における伝火薬54の密度が高くなる。
【0079】
図15は、第1内筒部材51への伝火薬54の充填が完了して第1点火器組立体41を第1内筒部材51に嵌め込む直前の状態を示した図である。頂面部512を下に向けたまま、他端51c側から第1点火器組立体41を嵌め込む。このときには、第1点火器組立体41は、底面部32の第1取付孔32aに既に嵌め込まれた状態になっている。ただし、上部シェル2と下部シェル3とは接合されていない。このときに、境界線Y23よりも他端51c側の伝火薬54の密度が比較的低いために、第1点火器411は、伝火薬54を押し分けながら頂面部512の方向に挿入される。
【0080】
図16は、第1内筒部材51へ第1点火器組立体41が嵌め込まれた後の状態を示した図である。このときには、第1点火器411のカップ体411aの周囲に伝火薬54が回り込み、カップ体411aの周りに伝火薬54が配置された状態になる。
図17は、第1内筒部材51を第1点火器組立体41に嵌め込んで、頂面部512が上側になるように配置したときの図である。このように、頂面部512が上側となるように配置しても、境界線Y23よりも頂面部512側の伝火薬54は、高い密度で充填されているため、境界線Y23よりも下側に移動することが抑制される。すなわち、境界線Y23よりも頂面部512側に充填されている伝火薬54は、1つの塊に近い状態で充填されている。それに対して拡径部100がストッパの役目を果たすので、境界線Y23よりも上側の伝火薬54が、境界線Y23よりも下側に落下することを抑制している。
【0081】
そして、
図11において、第1内筒部材51の一端51b側の頂面部512から拡径部100までの距離D2が、保持部412の頂面412bから拡径部100までの距離D3よりも長くなるように拡径部100を形成することにより、伝火薬54の密度が高い領域をより広くすることができるため、第1内筒部材51内で固定される伝火薬54の量をより多くすることができる。
【0082】
このように、第2実施形態に係るガス発生器1では、拡径部100により伝火薬54の固定が可能になる。したがって、異音の発生、伝火薬54の粉砕、及び、伝火薬54の微塵の発生を抑制できる。また、拡径部100の内部に伝火薬54が入るために、第1内筒部材51に伝火薬54をより多く充填することができる。
【0083】
<第3実施形態>
第3実施形態では、第1内筒部材51の他の態様について説明する。
図18は、第3実施形態に係る第1内筒部材51の斜視図である。第1内筒部材51以外は
図1に示したガス発生器1の第1点火装置61と同じため説明を省略する。第3実施形態に係る第1内筒部材51は、第1縮径部110及び第2縮径部111を備えている。第1縮径部110及び第2縮径部111の夫々の形状は、第1実施形態で説明した縮径部10と同じである。第1縮径部110は、第2縮径部111よりも一端51b側に形成されている。第1縮径部110よりも一端51b側の第1内筒部材51の壁面には、複数の連通孔51aが第1内筒部材51の中心軸C2を中心として例えば等間隔に形成されている。また、第1縮径部110よりも他端51c側、且つ、第2縮径部111よりも一端51b側にも、複数の連通孔51aが第1内筒部材51の中心軸C2を中心として例えば等間隔に形成されている。連通孔51aは、シールテープ等で閉塞されていてもよい。なお、第1縮径部110と第2縮径部111とで、形状が異なっていてもよく、同じであってもよい。
【0084】
ここで、第1内筒部材51の一端51bから、第1縮径部110の一端51b側の端部までの距離D11、及び、第1縮径部110の他端51c側の端部から、第2縮径部111の一端51b側の端部までの距離D12は、夫々、伝火薬54の最大辺A1以上にする。これにより、この箇所に伝火薬54が入り込みやすくなるため、第1縮径部110及び第2縮径部111に伝火薬54が引っかかりやすくなる。したがって、伝火薬54の固定ができる。
【0085】
なお、
図18では、上下方向に2つの縮径部が形成されているが、これに代えて、上下方向に2つの拡径部が形成されていてもよい。この拡径部の形状は、第2実施形態で説明した拡径部100と同じである。また、上下方向に、縮径部と、拡径部とが形成されていてもよい。この場合、縮径部と拡径部とのどちらが一端51b側に形成されていてもよい。
【0086】
また、
図19は、第1内筒部材51の縮径部10が周方向に連続していない場合であって、上下方向にずれて配置される第1縮径部110と第2縮径部111の一例を示した図である。
図19におけるD11及びD12は、
図18と同じ意味で用いている。このように、縮径部110、111が周方向に連続しないように、且つ、上下方向にずれるように形成してもよい。
【0087】
なお、第1実施形態に係る縮径部10は、周壁部511の周方向に一周しているが、これに代えて、周壁部511の周方向に断続的に複数形成することもできる。例えば、第1実施形態に係る縮径部10は、中心軸C2の周りに360度連続して形成されているが、これに代えて、各縮径部の円周方向の中心部が180度離れた位置に二か所、120度毎に3か所、または、90度毎に4か所形成してもよい。ここで、
図20は、第1内筒部材51の縮径部10が連続していない場合における、第1内筒部材51の中心軸C2と直交する断面で縮径部10を切断したときの断面図である。
図20は、縮径部10を90度毎に4か所形成した場合の断面を表している。この場合の縮径部10は、内部空間の断面積が、連通孔51aの開口面積の総計よりも大きくなるように形成してもよい。また、別法として、縮径部10が連続していると仮定した場合の断面積が、連通孔51aの開口面積の総計よりも大きくなるように、縮径部10を形成してもよい。この場合、
図20のD5を直径とする円の面積が、連通孔51aの開口面積の総計よりも大きくなるように、縮径部10を形成することになる。
【0088】
また、第2実施形態に係る拡径部100は、周壁部511の周方向に一周しているが、これに代えて、周壁部511の周方向に断続的に複数形成することもできる。例えば、第2実施形態に係る拡径部100は、中心軸C2の周りに360度連続して形成されているが、これに代えて、各拡径部の円周方向の中心部が180度離れた位置に二か所、120度毎に3か所、または、90度毎に4か所形成してもよい。
図21は、第1内筒部材51の拡径部100が連続していない場合における、第1内筒部材51の中心軸C2と直交する断面で拡径部100を切断したときの断面図である。
図21は、拡径部100を90度毎に4か所形成した場合の断面を表している。なお、拡径部100の断面積は、拡径部100が連続していると仮定した場合の断面積としてもよい。この場合、
図21のD8を直径とする円の面積が、拡径部100の断面積と考えてもよい。
【0089】
ここで、拡径部100をプレスで形成する場合は、拡径部100を360度連続して配置するよりも、周壁部511の周方向に何箇所かに断続的に配置するほうが形成しやすくなる。
【0090】
<第4実施形態>
第4実施形態に係る伝火薬540は、所謂ワングレインの伝火薬であり、1つの塊とし
て形成されている。
図22から
図25は、1つの伝火薬540を第1内筒部材51に配置する手順を示した図である。
図22は、伝火薬540を第1内筒部材51の伝火薬室53に挿入する前の状態を示した図である。伝火薬540は一つの塊として形成されており、外径が第1内筒部材51の内径よりも若干小さい円筒形に形成されている。伝火薬540の断面形状は第1内筒部材51内の空間の断面形状に対応している。なお、第1内筒部材51には、縮径部10はまだ形成されていない。すなわち、第1内筒部材51に縮径部10が形成されていると、伝火薬540を挿入することができなくなるため、縮径部10は伝火薬540の挿入後に形成される。また、伝火薬540の外周面には、その後に第1内筒部材51に形成される縮径部10の形状に合わせて溝541が形成されている。また、伝火薬540は、中心軸の周りが空洞の筒状となるよう貫通孔542が形成されている。中心軸C2と直交する方向の内周面の直径は、第1点火器組立体41の第1点火器411が嵌るように、第1点火器411の形状に合わせて形成される。この貫通孔542を形成することにより、貫通孔542に第1点火器411を挿入することができると共に、伝火薬540の表面積を増大させることができるため、焼尽時間を短くすることができる。なお、貫通孔542に代えて、貫通していない穴を形成してもよい。また、貫通孔542の断面形状は円形に限らない。さらに、伝火薬540の中心軸方向に複数の孔を形成してもよい。そして、伝火薬540は、第1内筒部材51の他端51c側の開口部から第1内筒部材51の内部に挿入される。
【0091】
図23は、伝火薬540を第1内筒部材51に挿入した状態を示した図である。頂面部512に伝火薬540の端部を接触させることにより、第1内筒部材51の内部に伝火薬540を配置している。この状態で、縮径部10を形成するために、第1内筒部材51の周壁部511を、外部から中心軸C2方向に押圧することにより周壁部511を凹ませる。凹ませる箇所は、伝火薬540の溝541に対応する箇所である。なお、縮径部10は、周方向に1周してもよいが、別法として、例えば、周壁部511の対向する2か所、すなわち、180度ずらした位置を凹ませて縮径部10を形成してもよい。また、3か所以上を凹ませて縮径部10を断続的に形成してもよい。縮径部10の位置は、伝火薬540が第1内筒部材51内で固定され得る位置であればよい。
【0092】
図24は、第1内筒部材51に縮径部10を形成した後の状態を示した図である。第1内筒部材51の中心軸C2側に突出した縮径部10が、伝火薬540の溝541に嵌ることで、伝火薬540が固定されている。
【0093】
図25は、第1内筒部材51を保持部412に嵌め込む前の状態を示した図である。第1内筒部材51の他端51c側の開口部を下に向けて第1内筒部材51を保持部412に嵌め込む。これにより、第1点火器411のカップ体411aが貫通孔542の内部に挿入される。このときには、伝火薬540は縮径部10により固定されているため、下側に落下することはない。また、第1内筒部材51を保持部412に嵌め込んだ後も、伝火薬540は縮径部10によって固定されている。
【0094】
以上説明したように第4実施形態に係るガス発生器1によれば、ワングレインの伝火薬540を用いた場合であっても縮径部10を設けることができる。これにより、伝火薬540を固定することができるため、異音の発生および微塵の発生等を抑制し得る。
【0095】
<第5実施形態>
第5実施形態では、縮径部112を変形可能に形成する。これにより、第1点火装置61の作動時に第1内筒部材51が保持部412から抜けた場合に、第1内筒部材51の一端51b側が上部シェル2の頂面部22に衝突したときの衝撃を緩和させる。
図26は、第1点火装置61を作動させる前のガス発生器1の状態を示した図である。
図26に示したガス発生器1は、
図1に示したガス発生器1と、縮径部112以外は同様の構造のため
縮径部112以外の構造の説明は省略する。第5実施形態に係る第1点火装置61を有するガス発生器1は、第1点火装置61の作動時に伝火薬室53の圧力が上昇すると、第1内筒部材51が第1点火器組立体41から外れて上方向に移動し、このときに燃焼ガスが燃焼室40に流れ出ることで、第1ガス発生剤43を着火させるタイプのガス発生器である。
【0096】
図27は、第1点火装置61が作動しているときのガス発生器1の状態を示した図である。伝火薬室53内の圧力上昇によって第1内筒部材51が保持部412から外れて上方に移動し、第1内筒部材51の頂面部512が上部シェル2の頂面部22に衝突する。このときに、
図27の矢印で示したように、燃焼ガスが第1内筒部材51の他端51c側の開口部から燃焼室40に流れ出る。この燃焼ガスにより、燃焼室40内の第1ガス発生剤43が着火される。また、第1内筒部材51の頂面部512が上部シェル2の頂面部22に衝突したときに、縮径部112が上下方向に潰れることにより、縮径部112の上下方向の幅が狭くなる。
【0097】
ここで、縮径部112は、周壁部511の他の部位よりも可撓性が高くなるように形成されている。例えば、縮径部112の肉厚を、他の部位よりも薄くしておく。別法として、縮径部112を他の部位よりも可撓性の高い材料で形成してもよい。
図28は、第5実施形態に係る縮径部112の断面図である。
図28は、中心軸C2を含む平面で縮径部112を切断したときの断面図である。縮径部112における板厚D20が、縮径部112以外の周壁部511の板厚D21よりも薄くなるように、縮径部112が形成されている。そうすると、第1内筒部材51が上部シェル2の頂面部22に衝突したときに、縮径部112が上下方向に潰れやすくなるため、衝突時の衝撃を緩和することができる。また、第5実施形態に係る縮径部112は、第1内筒部材51の中心軸C2を中心として周壁部511の円周方向に連続して形成されている。これによっても、縮径部112が潰れやすくなるため、衝突時の衝撃を緩和することができる。このような衝撃の緩和により、他の部材に衝撃が伝わることを抑制できるため、例えば、衝撃により第2点火装置62の一対の通電ピンに接続されていたコネクタが緩むことを抑制できる。これにより、第2点火装置を確実に作動させることができる。
【0098】
なお、第5実施形態では縮径部112を例に挙げて説明したが、拡径部であっても変形可能に形成することによって上記の衝撃の緩和が可能となる。
【0099】
以上説明したように、第5実施形態によれば、縮径部112または拡径部により衝撃の緩和が可能となるため、ガス発生器1の他の部材に衝撃が伝わることを抑制できる。また、縮径部112及び拡径部により、作動前の状態では伝火薬54が固定されている。
本明細書に開示された各々の態様は、本明細書に開示された他のいかなる特徴とも組み合わせることができる。
【符号の説明】
【0100】
1 ガス発生器
2 上部シェル
3 下部シェル
4 外殻ハウジング
10 縮径部
32 底面部
41 第1点火器組立体
51 第1内筒部材
51a 連通孔
53 伝火薬室
54 伝火薬
61 第1点火装置
100 拡径部
511 周壁部
512 頂面部