(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023165572
(43)【公開日】2023-11-16
(54)【発明の名称】高品質・低コストGaN自立基板の製造方法
(51)【国際特許分類】
C30B 29/38 20060101AFI20231109BHJP
C30B 25/18 20060101ALI20231109BHJP
C23C 16/34 20060101ALI20231109BHJP
H01L 21/205 20060101ALI20231109BHJP
【FI】
C30B29/38 D
C30B25/18
C23C16/34
H01L21/205
【審査請求】未請求
【請求項の数】20
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022081094
(22)【出願日】2022-05-17
(31)【優先権主張番号】P 2022076632
(32)【優先日】2022-05-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】502209796
【氏名又は名称】株式会社福田結晶技術研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100088096
【弁理士】
【氏名又は名称】福森 久夫
(72)【発明者】
【氏名】福田 承生
(72)【発明者】
【氏名】白石 裕児
(72)【発明者】
【氏名】南部 十輝
(72)【発明者】
【氏名】安藤 宏孝
(72)【発明者】
【氏名】熊谷 毅
(72)【発明者】
【氏名】高橋 和也
(72)【発明者】
【氏名】荒木 努
(72)【発明者】
【氏名】藤井 高志
(72)【発明者】
【氏名】出浦 桃子
(72)【発明者】
【氏名】只友 一行
(72)【発明者】
【氏名】井本 良
(72)【発明者】
【氏名】星生 伸一
(72)【発明者】
【氏名】斎藤 賢治
【テーマコード(参考)】
4G077
4K030
5F045
【Fターム(参考)】
4G077AA02
4G077BE15
4G077DB05
4G077EA02
4G077ED06
4G077EE05
4G077EE06
4G077EG03
4G077EG04
4G077FJ03
4G077TA04
4G077TB04
4G077TC06
4G077TK01
4G077TK08
4G077TK11
4G077TK13
4K030AA03
4K030AA13
4K030AA17
4K030AA18
4K030BA08
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4K030BB02
4K030BB14
4K030CA05
4K030DA02
4K030DA03
4K030DA05
4K030JA01
4K030JA05
4K030JA10
5F045AA03
5F045AB14
5F045AC13
5F045AC15
5F045AD14
5F045AF04
5F045BB09
5F045DB01
5F045DP15
5F045DQ08
5F045DQ10
(57)【要約】
【課題】HVPE法によるGaN自立基板作製で、従来よりも、結晶品質が良く、生産性が良く、低コストであり、大口径化が可能であるGaN自立基板の製造方法を提供すること。
【解決手段】MBE装置を用いてScAlMgO4(SAM)基板上、にバッファ層無しでGaN薄膜を直接成長させたGaNテンプレートを作製し、その上にHVPE装置によりGaNを1000℃以上の温度で成長させ、冷却時に自然はく離でGaN自立基板を製造する高品質・低コストGaN自立基板の製造方法。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
MBE装置を用いてScAlMgO4(SAM)基板上、にバッファ層無しでGaN薄膜を直接成長させたGaNテンプレートを作製し、その上にHVPE装置によりGaNを1000℃以上の温度で成長させ、冷却時に自然はく離でGaN自立基板を製造する高品質・低コストGaN自立基板の製造方法。
【請求項2】
前記MBE装置は、1枚の成長においてSAM基板に対して、基板を加熱する円形状のヒーターが1.2倍から1.5倍である請求項1記載のGaN自立基板の製造方法。
【請求項3】
前記MBE装置のヒーター径がSAM基板の1.5倍より大きいときは、基板とヒーターとの間に基板の直径に対して1.2倍から1.5倍の穴の開いている熱遮蔽板が設置されている請求項1記載のGaN自立基板の製造方法。
【請求項4】
1枚のモリブデンサセプタにSAM基板を複数枚設置して薄膜成長する場合、設置するSAM基板と同数の穴の開いた熱遮蔽版を設置する請求項1記載のGaN自立基板の製造方法。
【請求項5】
前記SAM基板は、CZ法で作製した結晶から加工して作製したもので、融液とする出発原料の組成比は、
27%≦Sc2O4≦28%
45%≦MgO≦46%
26%≦Al2O3≦28%
であり、
結晶の組成比は、
26%≦Sc2O4 ≦28%
49%≦MgO≦50%
23%≦Al2O3≦24%
である請求項1記載のGaN自立基板の製造方法。
【請求項6】
前記SAM基板の表面はc面±0.01°の面である請求項1記載のGaN自立基板の製造方法。
【請求項7】
前記SAM基板はc面から0.5°オフである請求項1記載のGaN自立基板の製造方法。
【請求項8】
前記SAM基板の転位密度は103/cm3以下である請求項1記載のGaN自立基板の製造方法。
【請求項9】
前記SAM基板の表面粗さはRa<0.2以下である請求項1記載のGaN自立基板の製造方法。
【請求項10】
前記SAM基板サイズは、直径2インチ以上、厚さ300μm以上である請求項1記載のGaN自立基板の製造方法。
【請求項11】
前記SAM基板は無色透明であり、赤外領域(4~5未満μm)にかけて吸収がある請求項1記載のGaN自立基板の製造方法。
【請求項12】
前記SAM基板上にInGaN膜を形成する請求項1記載のGaN自立基板の製造方法。
【請求項13】
前記GaNテンプレート作成時におけるGaフラックス量は3×107~8×107Torrとして、鏡面でc軸配向した六方晶のGaNを成長させる請求項1記載のGaN自立基板の製造方法。
【請求項14】
前記GaNテンプレートにおいて、GaN膜厚は300~2μであること、又は、In0.17Ga0.83Nの膜厚が50~200μm、GaN膜厚が300~2μmである請求項1記載のGaN自立基板の製造方法。
【請求項15】
前記GaNテンプレートの表面は、面内均一、鏡面かつ原子レベルで平坦である請求項1記載のGaN自立基板の製造方法。
【請求項16】
前記HVPE装置は、成膜室とその外部に配置されたヒーターと、前記成膜室内に配置された内管とを有し、
前記内管は、下流側に出口を有し、内部がGa原料の収納部であるとともにHClの通路となっており、前記成膜室の内壁との間にアンモニアの通路を形成するように配置されており、
前記成膜室内には、前記出口側にGaNテンプレートを保持するための保持部材を有する請求項1記載のGaN自立基板の製造方法。
【請求項17】
前記保持部材は、サセプタと、前記サセプタ上に置かれたGaNテンプレートの周縁を押さえるカーボンリングと、前記カーボンリングを押さえるサセプタカバーを有することを特徴とする請求項16記載のGaN自立基板の製造方法。
【請求項18】
前記サセプタはカーボンサセプタである請求項17記載のGaN自立基板の製造方法。
【請求項19】
前記保持部材は、複数のGaNテンプレートを保持可能であり、複数枚を同時に成膜可能である請求項18記載のGaN自立基板の製造方法。
【請求項20】
剥離した後のSAM結晶の表面を10~20μm研磨して再利用する請求項1記載のGaN自立基板の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は高品質・低コストGaN自立基板の製造方法に係る。
【背景技術】
【0002】
厚膜GaNの既に報告されている代表的な成長手法である(a)アモノサーマル法、(b)Naフラックス法、および、(c)ボイド形成剥離法(AS)の特徴を
図1の模式図を使って説明する。
アモノサーマル法では、1,000気圧余りの圧力を用いるため、圧力容器に関する法律(圧力x容積)による制限から大型装置を作製できない。一方、本提案のHVPEを用いる方法では、圧力容器を必要としないので、装置の大型化(大口径化、多数枚成長を可能にする)が容易である。さらに.他の成長方法に比べて成長速度が高いのも優位な点である。Naフラックス法においては、結晶の積方向成長速度が小さいため、GaNテンプレート上に形成した多数の成長核を基点に成長して大型結晶化を図っている。この場合、結晶核から成長したアイランド(島状結晶)の会合位置で多くの資通転位が入り、基板全面の高品質化が難しいと考えられる。ボイド形成剥離法では、GaNとサファイア基板との熱膨張係数差が大きいので、大口径化が困難である。本提案のScAlMgO
4(以後、ここではSAMと略記する)基板を下地基板とする方法では、SAM基板の剥離性を利用してGaNと下地基板との剥離を行うので.大口径化が容易である。
現在、デバイス応用が可能なGaN基板を成長できる方法はHVPEだけである。HDPE成長には下地基板が必要であるが、GaN基板の生産に使われている下地基板はサファイア基板、GaAs基板であり、最近ではNaフラックス法によるGaN基板が下地基板として検討されている。表1に上記下地基板による優位性の比較を示す。本発明はHVPE成長したGaNと下地基板との分離性、結晶品質、大口径化、下地基板の再利用による低コスト化への期待などを比較すると、本発明のSAM基板を下地基板として活用する技術の優位性は大きいと考えられる。
【0003】
【0004】
図2に、SAM基板上に山口大学で独自に開発したHVPE成長技術によりGaNを成長し、自然剥離により1mm厚で50mm径のGaN結晶を得た例を示す。サファイア基板上にGaNをHVPE成長すると、自然分離してGaN結晶が得られる時もあるが、その確率は低い。本開発期間中に解決するべき、SAM基板上にGaNをHVPE成長する技術課題は明確であり、本提案技術並びに、後述する事業化シナリオの実現性は高い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、従来よりも、結晶品質が良く、生産性が良く、低コストであり、大口径化が可能であるGaN自立基板の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に係る発明は、MBE装置を用いてScAlMgO4(SAM)基板上、にバッファ層無しでGaN薄膜を直接成長させたGaNテンプレートを作製し、その上にHVPE装置によりGaNを1000℃以上の温度で成長させ、冷却時に自然はく離でGaN自立基板を製造する高品質・低コストGaN自立基板の製造方法である。
請求項2に係る発明は、 前記MBE装置は、1枚の成長においてSAM基板に対して、基板を加熱する円形状のヒーターが1.2倍から1.5倍である請求項1記載のGaN自立基板の製造方法である。
請求項3に係る発明は、前記MBE装置のヒーター径がSAM基板の1.5倍より大きいときは、基板とヒーターとの間に基板の直径に対して1.2倍から1.5倍の穴の開いている熱遮蔽板が設置されている請求項1記載のGaN自立基板の製造方法である。
請求項4に係る発明は、1枚のモリブデンサセプタにSAM基板を複数枚設置して薄膜成長する場合、設置するSAM基板と同数の穴の開いた熱遮蔽版を設置する請求項1記載のGaN自立基板の製造方法である。
請求項5に係る発明は、前記SAM基板は、CZ法で作製した結晶から加工して作製したもので、融液とする出発原料の組成比は、
27%≦Sc2O4 ≦28%
45%≦MgO≦46%
26%≦Al2O3≦28%
であり、
結晶の組成比は、
26%≦Sc2O4 ≦28%
49%≦MgO≦50%
23%≦Al2O3≦24%
である請求項1記載のGaN自立基板の製造方法である。
請求項6に係る発明は、前記SAM基板の表面はc面±0.01°の面である請求項1記載のGaN自立基板の製造方法である。
請求項7に係る発明は、前記SAM基板はc面から0.5°オフである請求項1記載のGaN自立基板の製造方法である。
請求項8に係る発明は、前記SAM基板の転位密度は103/cm3以下である請求項1記載のGaN自立基板の製造方法である。
請求項9に係る発明は、前記SAM基板の表面粗さはRa<0.2以下である請求項1記載のGaN自立基板の製造方法である。
請求項10に係る発明は、前記SAM基板サイズは、直径2インチ以上、厚さ300μm以上である請求項1記載のGaN自立基板の製造方法である。
請求項11に係る発明は、前記SAM基板は無色透明であり、赤外領域(4~5未満μm)にかけて吸収がある請求項1記載のGaN自立基板の製造方法である。
請求項12に係る発明は、前記SAM基板上にInGaN膜を形成する請求項1記載のGaN自立基板の製造方法である。
請求項13に係る発明は、前記GaNテンプレート作成時におけるGaフラックス量は3×107~8×107Torrとして、鏡面でc軸配向した六方晶のGaNを成長させる請求項1記載のGaN自立基板の製造方法である。
請求項14に係る発明は、前記GaNテンプレートにおいて、GaN膜厚は300~2μであること、又は、In0.17Ga0.83Nの膜厚が50~200μm、GaN膜厚が300~2μmである請求項1記載のGaN自立基板の製造方法である。
請求項15に係る発明は、前記GaNテンプレートの表面は、面内均一、鏡面かつ原子レベルで平坦である請求項1記載のGaN自立基板の製造方法である。
請求項16に係る発明は、前記HVPE装置は、成膜室とその外部に配置されたヒーターと、前記成膜室内に配置された内管とを有し、
前記内管は、下流側に出口を有し、内部がGa原料の収納部であるとともにHClの通路となっており、前記成膜室の内壁との間にアンモニアの通路を形成するように配置されており、
前記成膜室内には、前記出口側にGaNテンプレートを保持するための保持部材を有する請求項1記載のGaN自立基板の製造方法である。
請求項17に係る発明は、前記保持部材は、サセプタと、前記サセプタ上に置かれたGaNテンプレートの周縁を押さえるカーボンリングと、前記カーボンリングを押さえるサセプタカバーを有することを特徴とする請求項16記載のGaN自立基板の製造方法である。
請求項18に係る発明は、前記サセプタはカーボンサセプタである請求項17記載のGaN自立基板の製造方法である。
請求項19に係る発明は、前記保持部材は、複数のGaNテンプレートを保持可能であり、複数枚を同時に成膜可能である請求項18記載のGaN自立基板の製造方法である。
請求項20に係る発明は、剥離した後のSAM結晶の表面を10~20μm研磨して再利用する請求項1記載のGaN自立基板の製造方法である。
【0008】
異種基板上へのGaNエピタキシャル成長にはMOVPE法により約600℃の低温でアモルファス状又は多結晶状のバッファ層を作製し、その上に約1000℃以上の高温で約3μmのGaNを成長させGaNテンプレートを作製する。
超高真空化・低温環境下で成長可能なMBE法でバッファ層無しでGaN又は格子整合するIn0.17Ga0.83N成長させたテンプレートを作製する。
本発明のGaN結晶自立基板の製造方法は、ScAlMgO4(SAM)下地基板上にMOVPE法或し、はMBE法による高結晶性のGaN薄膜の結晶成長を行い、次いでSiO2等の誘電体のストライプ状、へキサゴナル状等のパターン形状のマスクを形成した後に、HVPE法による高速のGaN結晶成長を行うことで、クラックや破断の発生を抑制し、欠陥密度(CLで観測される暗点密度)が小さいGaNを得る。さらに、SAM基板の劈開性により厚膜GaN結品がSAM基板から容易に自然剥離し、自立GaN基板として容易に得られ、自然剥離したSAM基板は再研磨により、基板として再利用が可能である。
【0009】
尚、上記CLで観測される暗点密度は、結晶表面に表出している転位欠陥(貫通転位)を示すための指標となる物性値であり、走査型電子顕微鏡/力ソードルミネッセンス(SEMCL)装置を用いて測定される。測定時の加速電圧は5kVとし、観察範囲は20μm×20μmとする。このとき、観察範囲内に観察された暗点の数より暗点密度を算出する。
【0010】
[SAM基板]
従来はGaNの結晶成長の下地基板としてサファイア基板が使用されているが、本発明で使用する下地基板は上記SAM基板であり、(0001)面を使用する。(0001)面の劈開性に特徴がある。SAM基板のオフ角(ミス力ツト角)はGaNの結晶性を最大化するように最適化される。
該SAM基板は、通常、厚み力0.4-1mm、直径が50-300mmの円盤状のものが使用される。目的とするGaN基板の直径より約10mm径の大きいものが望ましい。
【0011】
[MOVPE法によるGaNテンプレートの作成]
HVPE法によるGaN自立基板は、GaNテンプレート上のホモエピタキシャル成長で作製される。最初に、SAM基板上にMOVPE法によりGaN薄順を成長させ、GaNテンプレートを作製する。
SAMの熱ダメージを保護し、Mg等のSAM由来の不純物のGaN層への拡散を抑制するために、SAM基板の裏面と側面にシリコン酸化膜又はシリコン窒化膜を形成する。その後露出している(0001)面にMOVPE法により低温でGaNバッファ一層を成長した後1-3μm程度のGaNを成膜する。104~105/cm2の転位密度であるが、本発明では低転位SAM基板できれば無転位SAM基板を使い、GaNテンプレートの高品質化、低転位化を図る。
【0012】
高品質GaNテンプレート開発における無転位SAMの効果を明らかにする方法として、RF-MBEによるGaN膜成長を行う。転位の低減、Mg不純物の混入を調べて、高品質GaNテンプレートの可能性も検討する。従来用いられてきたMOVPE法やHVPE法によるSAM基板上GaN成長では、必要とされる1000℃近い高温状態や成長時の高温ガス雰囲気化がSAM基板表面を悪化させたり、Mgなどの基板構成元素が脱離してGaN膜中に混入するなどの課題も残っている。これに対して、活性な窒素プラズマを用いたRF-MBE.1 法においては、10-10Torr以上の高真空状態にて、MOCVD法よりも数百度低い700°C程度でのGaN成長が可能であるので、Mg等の不純物の混入間題が抑制される可能性がある。
【0013】
[GaN結晶と下地基板との分離SAMを使った自然剥離]
HVPE法による厚膜のGaN結晶を育成した後、厚膜GaN結晶と下地基板との分離はGaN基板の生産歩留まりを左右する重要課題である。下地基板としてサファイア基板を使う場合は、レーザ一照射分離(レーザーリフトオフ)や研磨法、VAS法等の公知の方法により、下地基板との分離を行い、GaNの自立基板を得ている。
しかしながら、レーザ一照射分離や研磨等の方法では、GaN結晶へのダメージが発生する恐れがあり、VAS法ではプロセスが複雑であり、コストァッブの要因になるので、必ずしも効率的な分離方法ではない。
該SAM基板を用いて、膜厚が100μm以上、好適には300μm以上のGaN結品を成長した後、基板の冷却を行うと、特別に機械的応力を印加することなく、冷却時の熱応力のみにてSAMの劈開性により、GaN/SAMの界面或いは界面近傍のSAM結晶内で自然剥離が生じて分離できる。冷却は、例えば、低温ガス等を供給して強制的に行つてもよく、また、自然放冷によって行つてもよい。冷却によってGaN結晶層の温度を20℃~150℃まで低下させる。冷却速度は、例えば、1~100℃/minである。
本発明において、SAM下地基板は、GaN結晶成長後の冷却という簡単な操作でのGaN結晶の分離が可能であるので、自立GaN結晶の生産歩留まりの改善に役立つ。
【0014】
[マスクパターン]
マスクパタ一ニングの成膜手段はそれ自体公知であり、真空蒸着、スパッタリング、CVD(Chemical
Vapor Deposition)等の方法により、下地GaN薄膜の表面に、SAMおよびGaN結晶に比較して熱膨張係数が小さな、SiO2膜、SiNx膜、TiO2膜、ZrO2膜等を形成してパターニングする方法が挙げられる。該マスク属の厚さは、通常0.001~3μm程度であり、マスクパターンの幅は3μm~1000μm、開口幅は3μm~1000μmの範囲で選択できる。
【0015】
マスクパターンの形成は通常のフォトリソグラフィ一技術で行う。
上記GaN結晶層表面形成するマスク形状は特に制限されるものではなく、ストライプ状マスク、格子状マスク、ドット状マスク、へキサゴナル(ハニカム)状マスクなど様々な形状が採用される。格子状マスクの格子は、直交して良いし、所定の角度でクロスしてもよい。ドットの形状も特に制限はなく、円形、三角形、正方形、六角形などが具体的に挙げられる。また、ドットの配列パターン三角格子や正方格子等様々な形状が採用される。
上記マスクを構成するュニツト、例えば、前記ストライプ状マスクの場合は線、ドット状マスクの場合のドットは、相互に等間隔に存在することが好ましい。また、上記ユニツトは単一であってもよいし、複数の集合体であってもよい。例えば、ストライプ状マスクを構成する線は1本でもよいし、複数本の線の組み合わせでもよい。
このマスクノiターンは、厚膜成長したGaNのクラック発生を抑制する効果を有する。
【0016】
[HVPE法]
従来のHVVP装置としては、例えば、特許文献1に記載された装置が一般的に知られている。本発明の実施の形態に係るHVPE装置は、成膜室とその外部に配置されたヒーターと、前記成膜室内に配置された内管とを有し、
前記内管は、下流側に出口を有し、内部がGa原料の収納部であるとともにHClの通路となっており、前記成膜室の内壁との間にアンモニアの通路を形成するように配置されており、前記成膜室内には、前記出口側にGaNテンプレートを保持するための保持部材を有する。
【0017】
保持部材は、サセプタと、前記サセプタ上に置かれたGaNテンプレートの周縁を押さえるカーボンリングと、前記カーボンリングを押さえるサセプタカバーを有する。
HVPE法は、塩化ガリウムと、窒素源となるアンモニア等を、気相反応させて下地基板上にGaN結晶をエピタキシャル成長させる方法であり、それ自体公知の方法である。
結晶成長に用いられるHVPE装置は、大きくは反応管、加熱系、ガス供給系、及びガス排気系から構成される。ガス供給系はマスフローコントローラーによって、ガス供給量の精密な制御が可能である。加熱系は、石英製の反応管を抵抗加熱式のヒーターで覆い、反応管、及びその中に設置される基板やサセプタ、金属原料を加熱するホットウォール法が用いられている。ホットウォール法を用いることにより、原料ガスを充分に加熱して基板表面に供給することができ、供給原料の飽和蒸気圧を高くすることができる。その結果、多量の原料供給が可能となり高速成長を実現できる。
【0018】
反応管の中は大きく金属原料部と基板加熱部に分けられる。金属原料部にはGa金属が置かれており、高温下にて、HClガスを供給することにより、Ga金属とHClガスとが反応し、GaClが生成する。生成したGaCIガスは、石英製の配管を通り、基板加熱部へと連ばれる。基板加熱部には、ガスの流れに対して垂直に炭素製或いはSiC製のサセプタが配置され、 サセプタは自転機構或いは自公転機構を有している。そして、そのサセプタ上にSAM下地基板上にGaN結晶を成長させたテンプレート基板がセットされ、金属原料部で生成したGaCIガス、及び、NH3ガスが基板上で反応することで、GaN結晶の成長が進行する。
【0019】
結晶成長には原料ガスとして窒素原料であるNH3ガス、Ga源であるGaClを生成するためのHC1ガスが用いられる。GaCl生成には、HClガスの代わりにCl2ガスを使用しても良い。またGa原料であるGa金属は装置内に設置される。原料ガスであるNH3とHCIガスの他に、H2やN2などのキャリアガスが用いられる。
【発明の効果】
【0020】
従来よりも、結晶品質が良く、生産性が良く、低コストであり、大口径化が可能であるGaN自立基板を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図2】(a)自然剥離したGaN自立基板、(b)SAM、(c)、自然分離したGaN自立基板、(d)サファイア基板の外観写真図。
【
図3】MBE法によるSAM基板上へのGaN直接成長の結晶を示す写真。
【
図5】他の実施例に係るRF-MBE装置の基板保持部の概念図
【
図6】他の実施例の形態に係るRF-MBE装置の基板保持部の概念図
【
図9】実施例に係り、HVPEによる成長直後のGaN側の写真図。
【
図10】実施例に係り、HVPEによる成長直後のSAM側の写真図。
【実施例0022】
以下、本発明を、実施例を挙げて具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によって何ら制限されるものではない。また、実施例の中で説明されている特徴の組み合わせすべてが本発明の解決手段に必須のものとは限らない。
【0023】
(実施例1)
[GaN結晶層の形成〕[GaNテンプレート MOVPE法]
(0001)面SAMジャスト基板をCMP加工及び清浄化処理を行いエピレディのSAM基板を準備した。GaN結晶層の形成は、MOVPE法、MBE法などが選択されるが、ここではMOVPE法を使った。SAM基板を(0001)面が上向きになるよぅに石英トレイに載せ、MOVPEリアクタ一内にセットした。
SAM基板を載せた石英トレイをMOVPE内にセットした後、SAM基板を1100℃に加熱するとともに反応容器内の圧力を100kPaとし、また、反応容器内にキャリアガスとしてH2を10L/minで流し、その状態を10分間保持することによりSAM基板のサーマルクリ一ニングを行った。
【0024】
次いで、SAM基板の温度を450℃に降温し、反応容器内の圧力を100kPaに保持したまま、反応容器内に流すキャリアガスH2を5L/min及びN2ガスを5L/m inの流量で流しながら、そこにV族元素供給源(NH3)、及びlll族元素供給源(TMG)を、それぞれの供給量が5L/min及び5.5μmol/minを流し、SAM基板上にアモルファス状のGaNを約25nm堆積させた。続いてTMGの供給を止めて、反応容器内の圧力は100kPaのまま基板の温度を1100℃まで昇温した。この昇温過程で、基板上に堆積したアモルファスライクなGaNの一部の結晶化が進み、次のGaN成長プロセスの結晶成長核が形成される。
【0025】
続いて、基板の温度を1100℃、反応容器内の圧力を100kPaとし、また、反応容器内を流通させるキャリアガスをH2として、それを10L/minの流量で流通させながら、そこにV族元素供給源(NH3)、及びIII族元素供給源(TMG)を、それぞれの供給量が5L/min及び30μmol/minとなるように90分間流し、GaNを成長させることにより、SAM基板の主面に(0001)面GaNが約3μm成長し、GaN/SAMテンプレートを作製した。
【0026】
〔SiO2マスクパターンの形成〕
作製したGaN/SAMテンプレートのGaN結晶属(成長表面)上にレジストをスピンコートした。次いでフォトリソグラフィ一法にてGaNのa軸或いはm軸方向にストライプ状或いはヘキサゴナル状のパターンを形成した。
次いでスパッタリングによりSiO2を200nm成膜した。成膜の後、レジストを洗浄除去することでGaN結晶層上にストライプ状の或いはヘキサゴナル状のSiO2属のパターンを形成した。
【0027】
[GaN厚膜の形成] HVPEGaN(GaNテンプレート MOVPE法)
表面にSiO2マスクパターンを形成したGaNテンプレートは、HVPE装置内の炭素製試料固定治具(サセプター)にセットした。その後、反応管内にN2ガスを30min流し、反応管内をN2ガス雰囲気下とした。金属原料部が850℃、基板加熱部が1050℃となるように反応管を加熱し、設定温度到達後、25分間保持した。このとき、基板加熱部が500℃に達するまでは反応管内にはN2ガスを流通させ、500℃以上ではH2ガス、及び、NH3ガスを流通させた。
【0028】
次いで、反応管内に設置されたGa金属にHClガスを0.8L/min流通させた。また、NH3ガスを8L/min、キャリアガスであるH2ガスを4.1L/min流通し、720分間GaN結晶を成長させた。GaN結晶の膜厚は2000μmであった。
その後、HClガスの流通を止めて、成長を終了させ、基板の冷却を行った。冷却はガスを流通させながら、自然放冷にて行った。冷却時、基板温度が600℃以下になるまではNH3ガスを5L/min流通し、600℃以下ではN2ガスを37L/min流通した。
【0029】
基板温度が150℃以下になった時点で、装置内から基板を取り出したところ、その時点においてすでにSAM基板とGaN結晶層とは全面で自然剥離しており、自立GaN基板が得られた。自然;剥離の歩留まりは100%であった。
得られたGaN結晶自立基板の特性を以下の方法で測定した。
【0030】
〔暗点密度評価〕
得られたGaN結晶自立基板について、走査型電子顕微鏡/カソードルミネッセンス(SEM/CL)装置(日本電子社製JSM-7600F/Gatan社製MonoCL4)を用いて、GaN結晶自立基板の表面の観察を行った。このときの加速電圧は5kV、観察範囲は20μm×20μmとし、観察範囲内に観察された暗点の総数から暗点密度を算出した。
【0031】
〔クラック本数評価〕
得られたGaN結品自立基板について、高強度ハロゲン光を照射し、結晶内に存在するクラックの本数を測定した。
【0032】
〔表面状態〕
得られたGaN結品自立基板について、ノマルスキ一微分干渉顕微鏡を用いて表面状態の評価を行った。
【0033】
得られたGaN結晶は、HVPE炉から取り出した時にはSAM基板と自然剥離しており、(0001)面を主面とする、厚みが約2mmの自立GaN基板であった。基板にはクラックは確認できなかった。裏側の剥離面はGaN結晶側もSAM基板側も鏡面であり、SAM基板も割れることなく回収することができた。
自然剥離の確率は、100%であり、SAM基板の回収率は80%であった。
自然剥離したGaN結晶の0002XRCの半値全幅は120arcsecであり、CL測定による暗点密度は1.0×106個/cm2であった。
【0034】
[MBE法GaNテンプレート作製方法]
次に、MBE法GaNテンプレート作製方法についてSAM基板に合わせた装置改良、GaN on SAMの成長方法の実施例について述べる。
ScAlMgO4(SAM)基板上にMBE法で窒化物成長させる場合、(000l)面内の格子不整合は比較的小さい(In0.17Ga0.63Nでは格子不整合はない)が、(0001)面に対して垂直方向のステップ高さは、大きく異なる。そのため、そのステップ高さの異方性のために立方晶構造の窒化物が容易に生成する。これを避けるためには、テラスを広くとることが必要で(0001)面内でのオフ角が小さいことが必要となる。小さな基板では、オフ角は面内で均一に加工できるが、口径が大きくなるとパルク結晶内のひずみやスライスするときのそりなどにより、面内でのオフ角はばらつきが生じる。このような不均一があると、オフ角の大きなところで立方晶が発生やすいために、全面で六方品単相とすることは困難である。
(2)大口径基板では、通常は中心から周辺に同心円状にそりが発生する。そのため、特に中心ではよりオフ角を小さくすることが必要である。
(3)ステップ高さが窒化物とSAM基板とでは大きく異なっている。そのため、SAM基板の加工において表面にスッテプが安定した状態でなければ、立方晶が容易に生成して六方品単相にならなぃ。
(4)MOCVD法において、サファイア基板上に窒化物半導体を成長する場合、表面を窒化することが有効と言われている。小径の基板では面内での均一性を確保することは容易であるが、大口径では面内ばらつきが大きくなる。それを解消するために、MBE成長装置内の高真空状態で、基板温度を高温に一定時間、基板回転しながら保持したのち、基板温度を変化させて、ラジカル化した窒素ガスを一定時間、基板回転しながら表面処理を行う。その後、成長温度に保持して結品成長を行う。これにより、基板表面状態が均一化され、六方晶単相の重化物が生成できる。
【0035】
(実施例3)
MBE法による直径50mmc面SAM基板上GaN成長
Mercure Beam Epitaxy(MBE)法は高真空容器内の上部に成長面を下に向けて成長用基板を設置する。真空容器下部にGa金属を入れたるつぼを設置してヒーターにより過熱して金属蒸気を発生させる。同様に、真空容器下部に窒素ガスの導入孔から窒素ガスを噴霧し、これらのGa蒸気と窒素ガスを基板上で合流させて基板上にGaN単結晶を成長させる。原料となるGa金属は純度6Nで、Ga蒸気の供給量は過熱するヒーター温度で決定する。窒素ガスは、純度5Nで活性化させるためにプラズマセルを通して供給する。供給量はガス流量で決定し、活性化度はプラズマセルのパワーで決定する。
成長条件
雰囲気: 真空、1x10-6Pa以下
成長温度: 700°C
基板回転: 10rpm
Ga Flux量: 6x10-7Torr
窒素ガス流量: 2sccm
窒素ラジカル用プラズマバワー : 120w
成長時間: 4時間
【0036】
成長はRHEEDで観察しながら行った。その結果、SAM基板上全面に厚さ均一のGaN単結晶膜の成長に成功した。膜厚は1.0μmで膜厚測定は、分光光度計による非破壊膜厚計測で行った。
【0037】
図3に示すようにSAM基板上にバッファ層を介さずにGaNが直接成長していることが実証された。直径50mmのSAM基板上にバッファ層無しで約1μm膜厚のGaNプレートができた。
実際に使用した装置の内部構造を
図4に示す。SAM基板としては直径50mm以上の基板を用いた。
MBE法で窒化物半導体を成長する場合、基板温度昇温後、一定時間真空中に放置する工程とラジカル化した窒素ガスを照射する工程を備えた単結晶成長方法で行った。
【0038】
1. 前項において、基板直径が50mm以上のため、 モリブデンサセプタとSAM基板の温度上昇速度が異なる。そのため、所定の基板温度に到達したのち、一定時間その温度で保持して、SAM基板の温度分布を均一化する。
2.その後、基板表面の状態を一定にするため、ラジカル化した窒素ガスを一定時間照射する。
3.窒素ガスを照射直後は、基板表面温度から熱が奪われるために、温度の不均一が生じる。 それを避けるために前項の行程を入れたのち、金属粒子を照射して地下物膜を生成させる。
【0039】
ヒーター径が1.5倍より大きい場合においては、基板とヒーターの間に基板の直径に対して1.2倍から1.5倍の穴の開いている熱遮蔽板が設置されたMBE法成長装置にする。MBE法成長装置を
図5に示す。
【0040】
前項において、ヒーター径が設置するSAM基板の1.5倍より大きい時は、前項のヒーターとSAM基板の間に穴の開いた熱遮蔽板を設置し、その穴の直径が、基板の直径の1.2倍から1.5倍となっている。
【0041】
ヒーターからの輻射熱は熱遮蔽板で遮られるため、基板側から見て、ヒーター直径は前項と同じ効果が認められる。
1枚のモリブデンサセプタにSAM基板を複数枚設置して薄膜成長する場合、前項と同様に、設置する基板と同数の穴の開いた熱遮蔽板を設置する構造となっているMBE装置にする。装置を
図6に示す。
【0042】
(実施例4)
MBE法による直径50mmc面SAM基板上lnGaN成長
上述した実施例と同様の構成で、Ga金属源に加えてln金属源を設置して、lnGaN結晶成長を実施した。ln金属の純度は5Nである。
成長条件
雰囲気: 真空、1x10-6Pa以下
成長温度: 600°C
基板回転: 10rpm
ln+Ga Flux量: 4.3x10-7Torr
ln/(ln+Ga)比: 0.4
窒素ガス流量: 2sccm
窒素ラジカル用プラズマシャワーパワー:110W
成長時間:4時間
【0043】
成長は、RHEEDで観察しながら行った。その結果、SAM基板上全面に厚さ均一のln0.17Ga0.83N単結晶膜の成長に成功した。膜厚は0.85μmで膜厚測定は、分光光度計による非破壊膜厚計側で行った。
MBE法にて本発明の方法によるGaNテンプレートln0.17Ga0.83で作成する場合、SAM基板は直径50mm以上で(0001)面(c面)を用いたが下記の条件も望ましい。
【0044】
(1)MBE法により空化物半導体育成に用いる(0001)ScAIMgO
4単結品において、直径50mmより大口径の基板において、全面に均一に六方品の室化物半導体膜を生成させるために、(000l)ScAIMgO
4基板のオフ角が、基板全面で0.5°以内であることを特徴とする単結品基板。
(2)上記基板において中心ではオフ角か0.1°以内である。
(3)上記基板の表面がAFMによりステップを観察できる状態である。
(4)MBE法で窒化物半導体を成長する場合、基板温度昇温後、一定時間真空中に放置する工程とラジカル化した窒素ガスを照射する工程を備えた単結品成長方法
前記SAM基板は、CZ法により作成したものであり、融液とする出発原料の組成比 (質量比)は
図7を参照に、
27%≦Sc
2O
4≦28%
45%≦MgO≦46%
26%≦A1
2O
3≦28%
であり、
結品の組成比は、
26%≦Sc
2O
4≦28%
49%≦MgO≦50%
23%≦A1
2O
3≦24%
であることが好ましい。
【0045】
(実施例5)
高周波誘導加熱型チョクラルスキ一炉を用いてSAM単結晶を育成した。
外径φl50mm、高さl50mmのIr製ルツボの上部に外径φ150mm内径φl20mmのIr製のリングを設置し、出発原料として4N(99.99%)のスカンジウム、アルミニウム、マグネシウムをSc:A1:Mg=27.8%:26.7%:45.5%に配合した原料6500g投入した。この際、ルツボ下部の耐火材に隙間を設け、ルツボ下部からの放熱を強くなる様に構成の調整を行った。
【0046】
原料を投入したルツボを前記育成炉に投入し、炉内を真空にした後にN2ガスを導入し、炉内が大気圧となった時点で、装置の加熱を開始し、融液に達するまで、24時間かけて加熱した。その後、原料が融液になった所でN2ガスに0.5%の割合でO2ガスを混合させた。<001>方位の円柱状に加工したSAM単結晶を種結品として用い、種結品を融液近くまで下降させた。この種結品を5rpmで回転させながら徐々に降下させ、種結晶の先端を融液に接触させた後、ネッキング処理を行い、その後、温度を徐々に降下させながら、引上速度0.5mm/Hrの速度で種結晶を上昇させて結品成長を行った。その結果、クラック無しの直径70mm、直順部の長さ50mmの単結晶が得られた。
【0047】
得られた単結晶をICP-MSにて組成分析を行った所、Sc:A1:Mg=26.8%:23.6%:49.5%であることが確認された。その後、結品をXRTに転位の評価を行った所、結晶の貫通転位がl03/cm2以下であった。作成した結晶はウェハ加工し、GaN薄膜成長用の基板とした。その際、ウェノ、は鏡面研磨とし、表面粗さをRa0.2nm以下、面方位公差を±0.01度以下とした。加工したウェハをバッファ層無しでGaN薄膜を直接成長させた所、GaNテンプレートが作製出来た。
【0048】
(実施例6)
高周波誘導加熱型チョクラルスキ一炉を用いてSAM単結品を育成した。
外径φ150mm、高さ150mmのIr製ルツボの上部に外径φl50mm内径φ120mmのIr製のリングを設置し、出発原料として4N(99.99%)のスカンジウム、アルミニウム、マグネシウムをSc:A1:Mg=27.2%:27.2%:45.6%に配合した原料6500g投入した。前記実施例1と同構成・同条件にて結品成長を行った。
その結果、前記実施例1と同様にクラック無しの直径70mm、直胴部の長さ50mmの単結品が得られた。
【0049】
得られた単結品をICP-MSにて組成分析を行った所、Sc:Al:Mg=27.5%:23.0%:49.5%であることが確認された。その後、前記実施例1と同様に結晶をXRTに転位の評価を行った所、結晶にみられる貫通転位がl03/cm2以下であり、前記実施例1と同様にウェハ加工した基板をGaN薄膜成長用とした。加工したウェハをバッファ属無しでGaN薄膜を直接成長させた所、GaNテンプレートが作製出来た。
【0050】
(実施例7)
実施例3のGaNテンプレート作製に用いるSAM基板は、無色透明で赤外線領域6μm以上で吸収端があるものである。
【0051】
(サファイア等) サファイア等の透明基板上に窒化物半導体をエピタキシャル成長させる場合、MBE法の成長温度450℃~900℃(723K~1173K)における放射エネルギーのビーク波長は4μm~2.5μmであるが、サファイアの赤外吸収端は5~6μm(厚みによる)であるため加熱効率が悪く、また、加熱時の基板温度の不均一化が生じ易い。そのため、基板サイズ2インチ以上のエピタキシャル成長の場合には、成長面の裏面にTi等の金属を蒸着したり、基板近辺に被加熟体としてモリブデン板を設置する場合が多かった。
【0052】
(SAM)SAM基板は無色透明であるが赤外領域(2~10μm)にかけて吸収があり、そのため何ら手段を講じることなく、基板に対して直接対峙するようにヒーターを設置するだけで、良質な2インチサイズのエピタキシャル成長が可能である。
【0053】
(赤外吸収特性の評価)
指定組成で作製された結晶から、長さ10mm、幅10mm、厚さ0.5mmの形状に加工し、透過面2面に対してそれぞれ光学研磨を施し、スペクトル測定用試料とした。
フーリェ変換赤外分光光度計(FTIR)を用いて真空雰囲気下で測定を行い、透過率を算出した。
サファイアと比較した図を
図8(a)、
図8(b)に示す。
【0054】
(実施例8)
〔SiO2マスクパターンの形成〕
作製したGaN/SAMテンプレートのGaN結晶層(成長表面)上にレジストをスピンコートした。次いでフォトリソグラフィ一法にてGaNのa軸或いはm軸方向にストライプ状或いはヘキサゴナル状のパターンを形成した。
【0055】
次いでスパッタリングによりSiO2を200nm成膜した。成膜の後、レジストを洗浄除去することでGaN結晶層上にストライプ状の或いはヘキサゴナル状のSiO2層のパターンを形成した。
【0056】
〔GaN厚膜の形成〕
表面にSiO2マスクパターンを形成したGaNテンプレートは、HVPE装置内の炭素製試料固定治具(サセプター)にセットした。その後、反応管内にN2ガスを30min流し、反応管内をN2ガス雰囲気下とした。金属原料部が850℃、基板加熱部が1050℃となるように反応管を加熟し、設定温度到達後、25分間保持した。このとき、基板加熟部が500℃に達するまでは反応管内にはN2ガスを流通させ、500℃以上ではH2ガス、及び、NH3ガスを流通させた。
【0057】
次いで、反応管内に設置されたGa金属にHC1ガスを0.8L/min流通させた。また、NH3ガスを8L/min、キャリアガスであるH2ガスを4.IL/min流通し、720分間GaN結晶を成長させた。GaN結晶の膜厚は2000μmであった。
その後、HClガスの流通を止めて、成長を終了させ、基板の冷却を行った。冷却はガスを流通させながら、自然放冷にて行った。冷却時、基板温度が600℃以下になるまではNH3ガスを5L/min流通し、600℃以下ではN2ガスを37L/min流通した。
【0058】
基板温度が150℃以下になった時点で、装置内から基板を取リ出したところ、その時点においてすでにSAM基板とGaN結晶層とは全面で自然剥離しており、自立GaN基板が得られた。自然剥離の歩留まりは100%であった。
得られたGaN結晶自立基板の特性を以下の方法で測定した。
【0059】
〔暗点密度評価〕
得られたGaN結晶自立基板について、走査型電子顕微鏡/力ソードルミネッセンス(S EM/CL)装置(日本電子社製JSM-7600F/Gatan社製MonoCL4)を用いて、GaN結晶自立基板の表面の観察を行った。このときの加速電圧は5kV、観察範囲は20μm×20μmとし、観察範囲内に観察された暗点の総数から暗点密度を算出した。
【0060】
〔クラック本数評価〕
得られたGaN結晶自立基板について、高強度ハロゲン光を照射し、結晶内に存在するクラックの本数を測定した。
【0061】
〔表面状態〕
得られたGaN結晶自立基板について、ノマルスキ一微分干渉顕微鏡を用いて表面状態の評価を行った。
得られたGaN結晶は、HVPE炉から取り出した時にはSAM基板と自然剥離しており、(0001)面を主面とする、厚みが約2mmの自立GaN基板であった。基板にはクラックは確認できなかった。裏側の剥離面はGaN結晶側もSAM基板側も鏡面であり、SAM基板も割れることなく回収することができた。
自然剥離の確率は、100%であり、SAM基板の回収率は80%であった。
自然剥離したGaN結晶の0002XRCの半値全幅は120arcsecであり、C L測定による暗点密度は1.0x105個/cm2であった。
【0062】
(実施例9)
HVPE法GaN多数枚同時作成
直径6インチ以上作成できるHVPE装置を用いて直径2インチのGaN/SAMテンプレートを5枚配置してHVPE成長を行った。テンプレートは実施例1(MOVPE)、実施例3(MBE)で作成したものを用いた。
HVPE法GaN成長条件は実施例2に指名したものとほぼ同じ条件で行った。
実験は、MOVPE製GaNテンプレート3枚、MBE製GaNテンプレート2枚で行った。
HVPE成長直後のGaN側の写真図を
図9に示す。HVPE成長直後のSAM側の写真図を
図10に示す。
【0063】
また、
図11に、自然分離したMO-GaNテンプレートを、
図12に自然分離したMBE-GaNテンプレートを示す。
図11、
図12に示されるようにMBEテンプレートもMOVPEテンプレートと同様、自然分離することが確認された。
MOVPEの場合、GaNは約3μmであるが、MBEは約1μmでも自然分離が出来、分離後のSAM基板の表面がきれいで平坦であった。