(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023165578
(43)【公開日】2023-11-16
(54)【発明の名称】電界駆動型静電発電機の電荷搬送体の構造とその製法
(51)【国際特許分類】
H02N 1/08 20060101AFI20231109BHJP
【FI】
H02N1/08
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】書面
(21)【出願番号】P 2022084846
(22)【出願日】2022-05-06
(71)【出願人】
【識別番号】398055026
【氏名又は名称】酒井 捷夫
(72)【発明者】
【氏名】酒井 捷夫
(57)【要約】
【課題】非対称静電力駆動型の静電発電機において、その電荷搬送体の作製を機械的に容易にすること。
【解決手段】回転移動する電荷搬送体円板上において、一定の角度ごとに、半径に比例して変化する横幅を有する1個の電荷搬送体を配置する製法であって、該電荷搬送体円板の基板から一定の角度ごとに、電荷搬送体要素部分を残して切り落とし、また、その外側と内側で、電荷搬送体の横幅プラス高さ分、切り込みを入れ、該切り込み部分を、該円板に垂直に立ち上げ、さらに、立ち上げ部分の上方横幅部分を、該円板に水平に折り曲げて、電荷搬送体を作製する製法。
【選択図】
図17
【特許請求の範囲】
【請求項1】
帯電した電荷搬送体に作用する非対称静電力を駆動力とする静電応用機器において、電荷搬送体円板に放射状に配置する電荷搬送体および電極円板に放射状に配置する充電エレクトレット、駆動エレクトレット、回収電極の横幅を、円板の中心点からの、距離に比例して変えることを特徴とする静電応用機器。
【請求項2】
請求項1の静電応用機器であって、電荷搬送体の形状が横置き樋型である場合、電荷搬送体円板の基板から、電荷搬送体要素を残して、他の部分を切り取り、また電荷搬送体要素の外側と内側において、電荷搬送体の横幅プラス高さ分に切り込みを入れ、切り込まれた部分を該円板に垂直に立ち上げ、その立ち上げた部分の横幅部分を、該円板に水平に折り曲げる電荷搬送体の作製方法。
【請求項3】
請求項1の静電応用機器であって、電荷搬送体の形状が横置き樋型である場合、電荷搬送体円板の基板で、電荷搬送体要素の外側と内側において、電荷搬送体の横幅プラス高さ分に切り込みを入れ、切り込まれた部分を該円板に垂直に立ち上げ、その立ち上げた部分の横幅部分を、該円板に水平に折り曲げ、最後に電荷搬送体要素を残して、他の部分を切り取る電荷搬送体の作製方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非対称静電力を駆動力とする電界駆動型静電力応用機器(発電機、モーター、加速器等)で使用される電荷搬送体の新規構造と新規製法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
地球の環境問題を解決する有力な手段として太陽光発電が用いられているのは、
図1に示すように、太陽はその周辺に絶えることなくエネルギーを放出続けているからである。一方、我々の周囲に無数に存在する電子も、同様に、その周囲に常時エネルギーを放出続けており、太陽と同様に大変有益なエネルギー源である。
【0003】
しかしながら、現在、太陽の放出エネルギーは有効に利用されているが、電子の放出エネルギーは、ほとんど利用されていない。電子のエネルギーと機械的エネルギーを組み合わせた静電発電機は発明されているが、複雑な構成で、ほとんど使用されていない。そのため、太陽光発電のように、電子の放出エネルギーのみで発電できる構成のシンプルな静電発電機が望まれている。
(旧型静電発電機)
【0004】
旧型静電発電は、通常、電位の低いところで電荷を集めて電荷搬送体に載せ、これを電位の高いところまで搬送して降ろすことで行われる。
そのとき、電位の高いところに向かう電荷搬送体には、これを押し戻す方向に静電力が働く。この静電力に抗して電荷搬送体を電位の高いところまで持ち上げるためには、より強い力が必要である。現在、静電発電機としてもっとも普及しているバンデグラフの静電発電機では、この力を電気モーターで得ている。
しかしながら、このとき、モーターで消費される電気エネルギーは、発生する電気エネルギーより大きいので、正確には発電機ではなく高電位発生器である。
(新型静電発電機)
【0005】
これに対して、出願人は、電子が発生するエネルギーのみで継続的に発電できる新型の静電発電機を考案した。電荷搬送体を搬送する力(以下駆動力ともいう)は、いわゆる非対称静電力である。
ここで、非対称静電力とは、電界の方向が反転する前後において、帯電した非球形の導体に作用する各静電力の差(絶対値)であって、該導体を電界の方向に駆動する力をいう。又、非球形とは、例えば、横置きした箱等、進行方向前後で非対称な縦断面を有する立体形状を言う。
(非対称静電力)
【0006】
従来、電界中に置かれた電荷(q)に作用する静電力は、全て
図2に示すクーロンの法則(F=qE)を用いて計算されている。
同図において、参照番号1は高圧電極、参照番号2は接地された第一対向電極、参照番号3は点電荷、参照番号4は点電荷に作用する静電力のベクトル、参照番号5は電界(電気力線)、及び参照番号6は、接地された第二対向電極を示している。
つまり、
図2の中央左側において、例えば、電界の強さが10
6V/mで、点電荷の電荷量が10
-7Cのとき、点電荷に作用する静電力は0.100Nになる。
一方、
図2の中央右側のように、電界の方向が反転したとき、該点電荷に作用する静電力の方向も反転するが、その大きさ(絶対値)は0.100Nであり、変わらない。又、かかるクーロンの法則は、点電荷又は点電荷とみなせる球形の帯電体にしか適用できない。
(二次元差分法)
【0007】
従い、電界中に置かれ、帯電した非球形の導体に作用する静電力は、クーロンの法則(式)ではその計算ができないが、例えば、二次元差分法でシミュレーションすることで求められる。
そこで、
図3に示すように、参照番号7で示す帯電した導体の形状を非球形である横向きの樋型とし、その帯電量と電界の強さは
図2と各同じとして、二次元差分法で、該非対称形状の帯電した導体に作用する静電力を求めた。
その結果、電界が反転すると、帯電した非球形の導体に作用する静電力の絶対値は、
0.083Nから0.038Nへと大きく変わることが分かった。つまり、非対称静電力の存在を確認した。その際、導体に作用する静電力が相対的に大きくなる
図3の中央左側部分の電界を「順電界」、該静電力が小さくなる右側部分の電界を「逆電界」と定義した。
この現象は、実験でも確認され(非特許文献[3])、理論的にも証明された(非特許文献[4])。
(電界駆動型静電発電機)
【0008】
そして出願人は、かかる非対称静電力を駆動力とする電界駆動型静電発電機を提案した。(特許文献[1][2][3][4][5])(非特許文献[1][2][5][6])
【0009】
かかる非対称静電力を電荷搬送体の駆動力とする電界駆動型静電発電機では、電位0Vで、電荷搬送体を静電誘導によって帯電させ、該電荷搬送体を、先ず、順電界中において強い静電力で十分加速させたのち、逆電界に入れる。
該逆電界では、その非対称形状故に該電荷搬送体に働く進行逆方向の静電力は弱く、且つ該電荷搬送体の電位が0Vに戻ったとき、該電荷搬送体に余剰の運動エネルギーが残っている。
その結果、当該電荷搬送体は、当該逆電界において更に高い電位迄上ることができる。な
【0010】
図4は、かかる電界駆動型静電発電機の基本ユニットの正面図である。
図中、参照番号8は電荷注入電極を、参照番号9は電荷搬送体駆動用高電位源(例えば、高電圧が印加された電極、高電位のエレクトレット、高電位の強誘電体、以下同様)を、参照番号11は電荷搬送体を、参照番号10は電荷回収電極を、参照番号12は電荷回収電極10に接続された回収部コンデンサーを、参照番号13及び15は、これら両電極8及び10並びに高電位源(強誘電体も含むエレクトレット、以下同様)を支持する上下一対の絶縁性支持体を示している。以下、この構成を1ユニットと呼ぶ。
尚、参照番号4及び5は、
図2及び
図3と同じく、電荷搬送体11に加わる静電力と電界(電気力線)を示している。
【0011】
ここで、駆動用高電位源エレクトレット9は、例えば、0.1mC/m2の表面電荷密度を有し、その電位は、例えば、+2000Vである。一方、電荷注入電極8の電位は0Vで、電荷回収電極10の電位は、例えば、-200Vである。
この結果、電荷注入電極8とエレクトレット9の間には、負極性に帯電される前記電荷搬送体11に対して、順電界が形成される。
一方、エレクトレット9と回収電界10の間には、同電荷搬送体11に対して逆電界が形成される。
【0012】
上記の通り、電荷搬送体11は、横向きにした樋型であるから、その縦断面横方向中央に
あり、よって、移動方向に前後非対称な形状を有する。
該電荷搬送体11は、軽い導体、例えばアルミで形成されていて、絶縁性の電荷搬送体保持体14に保持されている。その結果、電気的にフロートである。
【0013】
該電荷搬送体11は、非対称な静電力4で駆動されて、
図4中、左から右に移動して、上下一対の電荷注入電極8、駆動手段たる高電位源9、及び上下一対の電荷回収電極10を順次通り抜ける。
具体的には、先ず、該電荷搬送体11が、上下一対の電荷注入電極8を抜ける時、接地されたアルミフォイル又は導電糸等の材料からなる導電性端子が、電荷搬送体11に接触し、静電誘導によって、例えば負極性の電荷が該電荷搬送体11に注入される。
そして、該電荷搬送体11が上下一対の電荷回収電極10に奥深く入ったとき、該電荷回収電極10に繋がる搬送電荷回収用の導電性端子が接触して、該電荷搬送体11が有する前記注入電荷は回収される。
【0014】
即ち、順電界中においては、強い静電力によって電荷搬送体11を加速運動させ、電荷搬送体11が逆電界に入り、減速運動になっても、それが受ける逆方向の静電力は弱いので、十分な速度を持って電荷回収電極10に到達させられる。
【0015】
しかしながら、静電誘導によって電荷搬送体11に充電される電荷量は十分でなく、これを大幅に増やすために、出願人は、以下の新しい充電方法を提案した(非特許文献[5])。
即ち、所定の電位を有する充電電界形成電位源(例えば、電位を有する電極又はエレクトレット)18と電荷搬送体11を近接させ、両者間で一時的にコンデンサーを形成し、電荷搬送体11を接地したときに、当該コンデンサーに流れ込む電荷で当該電荷搬送体11を充電することで帯電する(非特許文献[5])。以下、該充電方法を、充電式帯電方法という。
(充電式帯電方法)
【0016】
図5は、かかる充電式帯電方法で電荷搬送体11へ電荷を注入する電界駆動型静電発電機における電荷注入部分の拡大図である。
同図において、参照番号18は低電圧が印加された充電電界形成源(例えば、電極またはエレクトレット)、参照番号9は駆動高電位源(例えば、電極またはエレクトレット)、参照番号11は電荷搬送体、参照番号23は接地された注入用端子を示している。
この充電電界形成電極18は、それ自体に低電圧が印加され、高電圧が印加された駆動電極9とで加速電界を形成する。
即ち、該充電電界形成電極18と駆動電極9間で順電界を形成し、その方向に作用する非対称静電力で電荷搬送体11を加速する加速電界が形成される。充電電界形成電極18は、又、接地されつつ通過する電荷搬送体11との間で専用の電界を形成し、該電荷搬送体11に電荷を充電する。
【0017】
具体的には、
図5に示すように、上下一対の充電電界形成電極18と、電荷搬送体11の上下の水平板112は、夫々空気層を挟んで、上下一対のコンデンサーを形成している。そのため、電荷搬送体11が、固定された注入用端子23を介して接地されると、上記上下の水平板112に電荷が注入される。
(充電式ベンチモデル)
【0018】
ここで、該充電式帯電方法を使用した充電式ベンチモデルである電界駆動型静電発電機の概略縦断面を
図6に、その概略横断面を
図7に示す。尚、図中、
図4及び
図5と同一の参照番号が付された部材は、
図4及び
図5と同一の部材を示す。又、簡略化のため、以下、充電電界形成源(例えば、電極またはエレクトレット)は、充電エレクトレット、駆動高電位源(例えば、電極またはエレクトレット)は駆動エレクトレットという。
即ち、参照番号18は充電エレクトレット、参照番号9は駆動エレクトレット、参照番号10は回収電極であり、参照番号14は電荷搬送体保持円板、参照番号16はステンレス製の回転軸(例えば柱)、参照番号23は注入用端子、及び参照番号24は回収用端子である。又、参照番号17は、電荷搬送体保持円板14のセンターに固定され、固定回転軸16の周りを回転するベアリングである。
【0019】
図6及び
図7に示されるように、上記充電エレクトレット18、駆動エレクトレット9、及び回収電極10、並びに電荷搬送体11は、垂直(紙面上下)に形成され、固定されている。そして、充電エレクトレット18、駆動エレクトレット9、及び回収電極10は、各半径方向で内外一対の垂直板部分を有し、その間を、電荷搬送体11が、順次軸周りに回転して通り抜けるように構成されている。
又、
図7に示されるように、充電エレクトレット18、駆動エレクトレット9、及び回収電極10は各々2個あり、合計6個が60度間隔で配置されている。又、電荷搬送体11も6個あり、電荷搬送体保持円板14に60度間隔で吊り下げられている。
【0020】
かかる構成において、電荷搬送体11は、先ず、充電エレクトレット18で帯電し、駆動エレクトレット9を通り抜けて回収電極10に入り、電荷の大部分を回収電極10に放出する。電荷搬送体11は、回収電極10を抜けて更に回転し、次の充電エレクトレット18に入り、帯電と電荷放出を繰り返す。つまり、前記非対称静電気力により電界駆動型の発電を行う。
【0021】
ここで、回収電極10は、
図4に示すように、外部コンデンサー12と接続されていて、その表面電位は、表面電位計(シシド静電気株式会社製の表面電位計:FLATIRON-DZ 3)で測定することができる。
そこで、試作機で測定したところ、回収コンデンサーの表面電位の変化は、
図8に示すとおりであった。つまり、その電位は、時間とともに、すなわち、帯電した電荷搬送体11が回収電極10を通過するごとに上昇しており、発電が行われていることが分かる。
【0022】
次に、帯電した電荷搬送体11が、電荷注入位置から電荷回収位置まで移動する際に、該電荷搬送体11に作用する静電力を、二次元差分法でシミュレーションした。その結果を
図9に示す。
つまり、この間に、順電界中で電荷搬送体が受けるエネルギーは16.81μJであり、逆電界中で失うエネルギーは6.27μJであり、その差は、10.54μJもある。ゆえに、理論上、電荷搬送体円板は、常に連続回転し、発電を続ける。
【0023】
る。そこで、実験機をよく見ると、空間の利用効率が悪い。つまりその中心部の空洞はなんの役にも立っていない。
そこで、
図10と
図11で示すとおり、空間の利用効率を改善するために、電荷搬送体円板14に吊り下げられていた樋型電荷搬送体11を水平に置き換える。
図10は電荷搬送体11を載せた電荷搬送体円板14の斜視図であり、
図11は装置全体の斜視図である。
【0024】
両図において、参照番号18は充電エレクトレット、9は駆動エレクトレット、及び11は電荷搬送体を示しており、10は回収電極、14は電荷搬送体11を載せた回転可能な電荷搬送体円板、及び13と15は、向かい合わせの同じ位置に、充電エレクトレット18と駆動エレクトレット9と回収電極10が設置され固定された固定電極円板を示しており、16は回転軸である。以下この1組の装置を1セットとする。
【0025】
さらに、
図12に示すように、該セットを多段に重ね、1個のボールベアリングで回転させることで、空間の利用効率は大幅に向上し、単位体積あたりの出力は10倍以上になる。
しかしながら、尚、市販機に必要な出力には及んでおらず、さらなる出力アップが必要である。
【0026】
以上の技術的背景より、発電機の出力を高めるためには、電荷搬送体11の帯電量を増やす必要がある。
【0027】
電荷搬送体11は、先に記したように、充電エレクトレット18との間にできる空気コンデンサーへの充電現象で帯電される。この時の帯電量は、充電エレクトレット18の表面電荷密度と、その厚さと、空気コンデンサーの厚さで決まる。手作り実験機では、縦に吊り下げられた電荷搬送体11の下端が遠心力で膨らむため、該空気コンデンサーの厚さは、
図13(1)に示すように、7.5mmもあった。しかしながら、電荷搬送体11が水平に回転され、かつ機械的に正確に作られる市販機では、
図13(2)に示すように、1/100の0.075mmに詰めて、充電電荷量を100倍にすることができる。さらに、この場合、横置き樋型電荷搬送体11の高さは、無関係である。
そこで、この高さを実験機の1/100の0.1mmにすると、
図13(3)に示すように、内外周充電エレクトレット18間に、例えば約100個(5個のみ図示)並べることができる。この結果、内外周充電エレクトレット18が形成する体積内に含まれる電荷搬送体11の充電電荷量はさらに100倍になる。
【0028】
ここで、電荷搬送体11の前面の高さのみを1/100とし、横の幅をそのままにしておくと、加速電界で前面に集まる電子の数が少なくなり、該電荷搬送体11を十分加速できなくなる。
そこで、
図13(4)に示されるように、横の幅も1/100にする。また、電荷搬送体11の長さがそのままでは、後で述べるように電荷搬送体円板14の設計が難しくなるので、同様に、1/100にするのがよい。
また、電荷搬送体11のかかるダウンサイズに対応して、他の部品もすべて1/100にダウンサイズすべきである。
【0029】
そこで、
図14に示すように、固定電極円板13,15上に中心点から外周に伸びる放射線上に、中心点からの距離に比例したサイズの充電エレクトレット18、駆動エレクトレット9及び回収電極10を各順次配置した。
また、
図15に示すように、回転移動する電荷搬送体円板14上に、中心点からの距離、つまり半径に比例したサイズの電荷搬送体11を配置した。この構成によって、ダウンサイジングによる高出力化が実現できる。
【0030】
該固定電極円板13,15は、充電エレクトレット18、駆動エレクトレット9及び回収電極10とも固定平面形状なので、比較的容易に作製可能である。しかしながら、電荷搬送体円板14は電荷搬送体11が、立体形状なので、作製が大変難しい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0031】
【特許文献1】特開2009-232667号公報
【特許文献2】特許第6136050号公報
【特許文献3】特許第6286767号公報
【特許文献4】特開2018-029425号公報
【特許文献5】特開2022-002436号公報
【非特許文献】
【0032】
【非特許文献1】[Asymmetric Electrostatic Forces and a New Electrostatic Generator],Nova Science Publishers,New York,2010
【非特許文献2】2017年米国静電気学会年次大会予稿集 A-3
【非特許文献3】[Asymmetric Electrostatic Force],K.Sakai,Journal of Electromagnetic Analysis and Applications,2014,6
【非特許文献4】[Theory of Asymmetric Electrostatic Force],K.Sakai,Journal of Electromagnetic Analysis and Applications,2017,9
【非特許文献5】2019年米国静電気学会年次大会予稿集 A-4
【非特許文献6】[A new electrostatic generator driven by only an electric field of an electret],K.Sakai,Journal of Electromagnetic Analysis and Applications,2021,12
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0033】
本発明が解決しようとする課題は、非対称静電力駆動型の静電発電機において、その電荷搬送体の構造を工夫して、その製法を簡単にすることである。
【課題を解決するための手段】
【0034】
上記発明が解決しようとする課題を、電荷搬送体円板上において、外周から内周にかけて、順次その幅が、該半径に比例した大きさの電荷搬送体を、一定の角度ごとに放射状に配置すること、および、該電荷搬送体基板を、一定間隔ごとに、作製する電荷搬送体の上下の幅とその高さ分残して切り取り、次に、または切り取りと同時に、幅と高さ分切り込みを入れ、切れ込みを入れた部分、基板に垂直に立ち上げ、次に垂直に立ち上げた部分のうち、高さ部分を残して、残りの部分を基板と水平に折り曲げることで、前記形状の電荷搬送体を作製することで、達成した。
【発明の効果】
【0035】
上記電荷搬送体の形状およびその新規な製法により、非対称静電力駆動型の静電発電機が機械的に容易に製造可能になった。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【
図1】
図1は太陽と電子のエネルギー放出を示す模式図である。
【
図2】
図2はクーロンの法則を説明する模式図である。
【
図3】
図3は横向きで樋型の導体を用いた非対称静電力を説明する模式図である。
【
図4】
図4は電界駆動型静電発電機の基本ユニットの縦断面図である。
【
図5】
図5は電荷を充電方法で注入する本発明の電界駆動型静電発電機における電荷注入部分の拡大図である。
【
図6】
図6は試作した電界駆動型静電発電機の概略縦断面図である。
【
図7】
図7は試作した電界駆動型静電発電機の概略横断面図である。
【
図8】
図8は、電荷搬送体である円板の回転に伴って回収電極コンデンサーの表面電位が上昇する実験結果を示すグラフある。
【
図9】
図9は、電荷搬送体の位置と作用する静電力をシミュレーションで求めた結果を示すグラフである。
【
図10】
図10は、樋型電荷搬送体を水平に置き換えて載せた電荷搬送体円板の斜視図である。
【
図15】
図15は、中心からの距離に比例したサイズの電荷搬送体を、電荷搬送体円板上において、外周から5列配置した時の略横断面図である。
【
図16】
図16は作製容易な電荷搬送体の形状を示す説明図である。
【
図18】
図18は、
図16に示す電荷搬送体の形状に合わせて電極円板上に形成された充電エレクトレット、駆動エレクトレット、回収電極を示す略横断面図である。
【
図19】
図19は、
図16に示す電荷搬送体に作用する静電力をシミュレーションで求めた結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【実施例0037】
電荷搬送体円板14の中心点からの距離に比例して横幅が変わる横置き樋型電荷搬送体11を多数作製し、放射状に配置するのは、可能ではあるが、大変コストのかかる製法である。そこで、放射状に、縦に多数並べられた電荷搬送体11を、
図16に示すように、一つにまとめ、かつその横幅を中心点からの距離に比例して変化させた。
【0038】
次に記す、その新しい製法を理解しやすくするために、具体的な数値を示す。半径50mmの電荷搬送体円板14の中心点から24mm-48mmに長さ24mmの電荷搬送体11を11.3mmごとに、放射状に、25個(図示は6個)形成する。その幅は、外側で1.0mm、内側で0.5mmである。高さは一定で1.0mm、膜厚は0.02mmである。
【0039】
次に、
図17でその製法を説明する。半径50mm、厚さ0.02mmのアルミ円板を、25個(図示は8個)の電荷搬送体要素を残して、11.3mmごとに、切り取る。電荷搬送体要素は、長さが24mmで、幅が、外側で3.0mm、内側で、2.0mmである。次に、あるいは、同時に、電荷搬送体要素の外側で、2.0mm、内側で、1.5mmの切り込みを入れる。該切り込みは、
図17で太線で表示されている。切り取りと切り込みは、カッターでもよいが、薄いアルミなので、レーザーでも可能である。
【0040】
次に、電荷搬送体要素の点線の左側の部分を、円板と垂直に立てる。次に、一点鎖線より上の部分を、円板と平行に右に折り曲げる。これで、電荷搬送体は完成である。25個の電荷搬送体11は、一つづつではなく、同時に作製できる。機械的に簡単な工程なので、自動化も容易である。
もちろん、先に、一点鎖線の左側を、垂直に立ててから、点線の左側を垂直に立ててもよい。電荷搬送体要素部分以外の部分の切り取りは、最初ではなく、最後にやってもよい。
【0041】
なお、電荷搬送体11の間隔は、充電エレクトレット18と駆動エレクトレット9の間に、同時に2つの電荷搬送体11が入らなければよいので、もっと狭めることができる。例えば、該25個の電荷搬送体11を有する、電荷搬送体円板14、3枚を、角度を変えて、互いに絶縁させて張り合わせることで、75個の電荷搬送体111を有する電荷搬送体円板14にできる。
【0042】
この構成で、1個の電荷搬送体11に作用する静電力をシミュレーションした。ただし、二次元の差分法では、奥行の幅を変えることができないため、長さ24mmの電荷搬送体11を4等分して一つづつシミュレーションした。その外側の電荷搬送体11の幅は、外側で1.0mm、内側で、0.875mmであるが、内側も、1.0mmとしてシミュレーションした。なお、新型電荷搬送体11に合わせて、充電エレクトレット18、駆動エレクトレット9、回収電極10も
図18に示すように変えた。その幅は、それぞれ、1.38mm、0.64mm、1.92mmで、それらの間隔は、3.2mmである。半径50mmの電極円板13,15には25ユニットが入るが
図18では、5ユニットのみ表示している。その他のシミュレーション条件の詳細は、省略する。
【0043】
このシミュレーション結果を、
図19に示す。ラフなシミュレーションではあるが、駆動エレクトレット9手前の順電界で作用する静電力の絶対値が、駆動エレクトレット9通過後の逆電界で作用する静電力の絶対値よりも圧倒的に大きいことがわかる。すなわち、この電荷搬送体11は順電界で、大きな運動エネルギーを得、逆電界で、それをほとんど失うことなく、回収電極10に到達できることがわかる。この結果、途中の計算結果は省略するが、10cm立方の該静電発電機の出力は、41.8Wになった。1m立方では、41.8kWにもなるので、多くの電気製品に使用可能である。
以上、非対称静電力を使う静電発電機の電荷搬送体として説明したが、その他の非対称静電力を使う静電応用機器の電荷搬送体の場合も同じである。