(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023165623
(43)【公開日】2023-11-16
(54)【発明の名称】インパクトドリルドライブ用のインパクトピストン装置
(51)【国際特許分類】
E21B 6/00 20060101AFI20231109BHJP
【FI】
E21B6/00
【審査請求】有
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023065311
(22)【出願日】2023-04-13
(31)【優先権主張番号】22171590
(32)【優先日】2022-05-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(71)【出願人】
【識別番号】514066712
【氏名又は名称】ユーロドリル ゲーエムベーハー
【氏名又は名称原語表記】EURODRILL GmbH
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】弁理士法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】マルクス メルツホイザー
【テーマコード(参考)】
2D129
【Fターム(参考)】
2D129AA04
2D129BA03
2D129BB01
2D129CA13
2D129CA26
(57)【要約】
【課題】インパクトピストン装置を提供する。
【解決手段】インパクトドリルドライブ用インパクトピストン装置は、前方打撃位置・後方退却位置間で反転可能となるようピストンハウジング内に可動実装されて前方加圧面及び後方加圧面を有するインパクトピストンであって、前方圧力チャンバ及び後方圧力チャンバがピストンハウジングと一体に形成されている、インパクトピストンと、ハイドローリック流体フィードと、ハイドローリック流体ドレインと、インパクトピストン反転運動用の後方圧力チャンバをハイドローリック流体フィードとハイドローリック流体ドレインに交互連結させる第1制御装置と、ピストンハウジング内のインパクトピストンのストローク経路を調整しうる第2制御装置を備える。第1制御装置が可作動な第1制御弁を有し且つ第2制御装置が可作動な第2制御弁を有し、第1制御弁及び第2制御弁が共通の弁ハウジング内に配置される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
インパクトドリルドライブ用のインパクトピストン装置であって、
前方打撃位置・後方退却位置間で反転可能となるようピストンハウジング内に可動実装されており、少なくとも1個の前方加圧面および少なくとも1個の後方加圧面を有するインパクトピストンであり、少なくとも1個の前方圧力チャンバおよび後方圧力チャンバが前記ピストンハウジングと一体に形成されているインパクトピストンと、
ハイドローリック流体フィードと、
ハイドローリック流体ドレインと、
前記インパクトピストンの反転運動を行わせるための少なくとも前記後方圧力チャンバを、前記ハイドローリック流体フィードと前記ハイドローリック流体ドレインとに交互に連結させる第1制御装置と、
前記ピストンハウジング内における前記インパクトピストンの少なくとも1本のストローク経路を調整しうる第2制御装置と、を備え、
前記第1制御装置が可作動な第1制御弁を有し且つ前記第2制御装置が可作動な第2制御弁を有し、
前記第1制御弁および第2制御弁が共通の弁ハウジング内に配置されている、インパクトピストン装置。
【請求項2】
請求項1に係るインパクトピストン装置であって、
前記弁ハウジングが弁ブロックを備えていて、それの内部に流体ラインと弁レセプタクルとが形成、とりわけミリングされている、インパクトピストン装置。
【請求項3】
請求項2に係るインパクトピストン装置であって、
カバープレートが設けられていて、それによって、前記流体ライン及び前記弁レセプタクルを内包する前記弁ブロックが閉止されている、インパクトピストン装置。
【請求項4】
請求項1に係るインパクトピストン装置であって、
前記ハイドローリック流体フィード用のポートと、前記ハイドローリック流体ドレイン用のポートと、前記ピストンハウジングへのライン連結用の連結ポートとが、前記弁ハウジング上に配置されている、インパクトピストン装置。
【請求項5】
請求項1に係るインパクトピストン装置であって、
前記第1制御弁が可作動な3/2ウェイバルブとして設計されたものである、インパクトピストン装置。
【請求項6】
請求項1に係るインパクトピストン装置であって、
前記第1制御弁が前記ピストンハウジング、とりわけ前記後方圧力チャンバを、前記ハイドローリック流体フィードと前記ハイドローリック流体ドレインとに、交互に連結する、インパクトピストン装置。
【請求項7】
請求項1に係るインパクトピストン装置であって、
前記可作動な第2制御弁が3/2ウェイバルブとして又は4/3ウェイバルブとして設計されたものである、インパクトピストン装置。
【請求項8】
請求項1に係るインパクトピストン装置であって、
前記第2制御弁のアウトレットが、前記第1制御弁を作動させるための圧力制御ラインに連結されている、インパクトピストン装置。
【請求項9】
請求項1に係るインパクトピストン装置であって、
前記第2制御弁のインレットが、それぞれ、前記ピストンハウジング内の環状空間にラインにより連結されている、インパクトピストン装置。
【請求項10】
請求項1に係るインパクトピストン装置であって、
前記第2制御弁を作動させるための制御ポートが前記弁ハウジング上に設けられている、インパクトピストン装置。
【請求項11】
少なくとも1個のドリルドライブを有するインパクトドリルドライブであって、
請求項1に係るインパクトピストン装置が設けられている、インパクトドリルドライブ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インパクトドリルドライブ用のインパクトピストン装置であって、前方打撃位置・後方退却位置間で反転可能となるようピストンハウジング内に可動実装されていて、少なくとも1個の前方加圧面及び少なくとも1個の後方加圧面を有し、少なくとも1個の前方圧力チャンバ及び後方圧力チャンバがそのピストンハウジングと一体に形成されているインパクトピストンと、ハイドローリック(流体圧的)流体フィードと、ハイドローリック流体ドレインと、インパクトピストンの反転運動を行わせるための少なくとも後方圧力チャンバをハイドローリック流体フィードとハイドローリック流体ドレインとに交互に連結させる第1制御装置と、ピストンハウジング内におけるインパクトピストンの少なくとも1本のストローク経路を調整しうる第2制御装置と、を備え、第1制御装置が可作動な第1制御弁を有し且つ第2制御装置が可作動な第2制御弁を有するインパクトピストン装置であり、請求項1の前提部分に係るものに関する。
【背景技術】
【0002】
こうしたインパクトピストン装置は、とりわけ、土砂及び岩盤ドリリング機で必要とされ、特にいわゆるアンカードリルで必要とされるインパクトドリルドライブにて、用いられている。インパクトピストンによる付加的な衝撃運動を回転駆動型ドリリング(掘削)ツールにそうして印加することができる。良好なドリリング進行が、特に硬質物質中で、とりわけ石質物質をドリリングする際に、或いは岩盤中でこのやり方により達成される。
【0003】
インパクトドリルドライブ用の一般的なインパクトピストン装置を、例えば特許文献1中に見出すことができる。
【0004】
この既知なインパクトピストン装置は、前方圧力チャンバ・後方圧力チャンバ間で軸方向可動となるようピストンハウジング内に実装されたピストン又はハンマを、備えるものである。それら2個の圧力チャンバのうち一方には、制御弁を備える第1制御装置を介しハイドローリック流体が継続的流体圧的にプリロード(予装荷)される。他方の圧力チャンバには、その制御弁を備える第1制御装置により加圧流体が供給され、それと交互に、そこからその流体がドレイン(排出)される。流体がこの圧力チャンバに供給されているときには、そのインパクトピストンに備わる大きな加圧面により、プリロード方向とは反対の軸方向シフトがもたらされる。その圧力チャンバからドレイン又はベント(抜出)されているときには、相応な反対方向の運動が発生する。
【0005】
インパクトピストンのストローク長を変化させるべく、制御弁を備える第2制御装置が設けられ、第1制御装置から分離配置される。設けられている様々なチャネルを開閉させることにより、またピストンハウジングに対し相互軸方向オフセットされているリング状グルーブの働きにより、そのインパクトピストン又はハンマにつき様々なストローク長を設定することができる。
【0006】
これらの調整には、ある程度のタイムラグがつきものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】独国特許第2635191号明細書(C3)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、基本的に、ひときわ効率的な応答特性を有するインパクトピストン装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この目的は、請求項1の諸特徴を有するインパクトピストン装置により本発明に従い達成される。本発明の好適な諸実施形態が従属形式請求項に示されている。
【0010】
本発明のインパクトドリルドライブ用インパクトピストン装置は、第1制御弁及び第2制御弁が共通の弁ハウジング内に配置されたことを特徴とする。
【0011】
本発明の下地をなす概念は、1個の弁ハウジング内で2個の制御装置の2個の制御弁を組み合わせることにより構成される。これにより、原理的に、非常に短い長さのライン及びハイドローリック液体用チャネルがもたらされる。加えて、それらのラインをハウジング内で固定することができ、ひいては漏れのリスクや例えばルースパイプライン又はホースラインに及ぶ損傷を避け又は小さくすることができる。それらラインの短縮及びそれによりもたらされる通流改善、並びにそれに対応するライン内液体体積低減により、それら2個の制御弁を備える制御配置の応答特性が改善される。これにより、動作中におけるインパクトピストンのより高速且つ効率的な作動及び調整が果たされるため、やはりよりコンパクト且つロバストなデザインがもたらされる。
【0012】
本発明のある好適実施形態においては、弁ハウジングが弁ブロックを備えるものとされ、その内部に流体ラインと弁レセプタクルとが形成、とりわけミリングされる。これにより、ひときわロバストな弁配置及び制御配置が好ましくは金属の弁ブロック内にもたらされる。この弁ブロックは、振動及び外部からの機械的影響に対しひときわ耐性がある。
【0013】
それらのラインはその弁ブロック内に窪みとしてミリング等により組み込まれる。本発明のある有利な発展形態においてはカバープレートが設けられ、それによって、それら弁ライン及び弁レセプタクルを内包する弁ブロックが閉止される。そのカバープレートは、適切なシールを介してその弁ブロック上に配置され、好ましくは液密要領にてその弁ブロックに螺合される。この好ましい二部品ハウジングデザインでは、第1に、ロバストな弁ブロックのひときわシンプルな製造が可能となり、第2に、そのカバープレート即ち上部ハウジング半部をその弁ブロック即ち下部ハウジング半部から取り外すことしか求められないため簡便なメンテナンスが可能となる。
【0014】
本発明のあるひときわ得策な実施形態においては、ハイドローリック流体フィード用のポートと、ハイドローリック流体ドレイン用のポートと、ピストンハウジングへのライン連結用の連結ポートとが、弁ハウジング上に配置される。とりわけ、ほんの3、4又は5個のポートをそのハウジング上に設けるだけでよいため、ひときわロバストな装置を実現することができる。
【0015】
原理的には、あらゆる好適且つ必要な制御弁を弁ブロック内に配設及び配置することができる。ここでひときわ好適なのは、第1制御弁を可作動な3/2ウェイバルブとして設計することである。この制御弁は、好適なことに、電気的に動作させうる要素、とりわけ電磁的に動作する要素の働きにより作動させることができる。その制御弁を、とりわけ、電磁石の働きによりその作動位置間で変位させうる軸方向可変位型制御ピストンを有するものと、することができる。
【0016】
本発明のあるひときわ得策な実施形態においては、第1制御弁により、ピストンハウジングとりわけ後方圧力チャンバが、ハイドローリックフィードとハイドローリックドレインとに交互に連結される。とりわけ、ピストンの打撃面により近いところに配置されている前方圧力チャンバに、一定のハイドローリック流体圧が継続的に供給される。第1制御弁を介した後方圧力チャンバの交互連結、即ち一方ではハイドローリックフィード、他方ではハイドローリック流体ドレインへという連結を通じ、そのインパクトピストン上にある適切なデザインの環状動作面の働きにより、そのインパクトピストンの反転運動を発生させることができる。
【0017】
ハイドローリックフィードがスイッチオンされるときには、インパクトピストンの後方圧力チャンバ側動作面が相応に大きめであるため、前方圧力チャンバ内にてそのインパクトピストンの相応に小さな動作面に働く力よりも所定量だけ大きい力を、後方圧力チャンバの領域内にてそのインパクトピストンに働かせることができる。この場合、そのハイドローリックフィードをインパクトピストン及び/又はピストンハウジング上のリング状グルーブで以てデザインすることができ、ひいては、そのインパクトピストンがある特定の位置にあるときに、形成される圧力チャネルを介し加圧流体を前方圧力チャンバから後方圧力チャンバ内へと流出させることができ、従って打撃動作に対する改変を行えるようにすることができる。それら2個の圧力チャンバ内にもたらされる圧力が等しいことがこの事実につながるものであり、例えば、それら動作面のサイズが異なるため後方圧力チャンバ内で加圧流体によりインパクトピストンに及ぼされる力の方が大きくなり、所定の要領にてそのピストンが前方に押され打撃が実行されることとなる。
【0018】
本発明の更なる実施形態によれば、好適なことに、可作動な第2制御弁が3/2ウェイバルブ又は4/3ウェイバルブとして設計される。第1制御弁と同様に、その第2制御弁を、電磁的に動作する要素の働きにより電気的に動作させることができる。とりわけ、その制御弁を、電磁石の働きによりその作動位置間でシフトさせうる軸方向可シフト型制御ピストンを有するものと、することができる。これに代え、それら制御弁を、圧力チャネルを介し作動させることもできる。
【0019】
本発明に係るインパクトピストン装置のあるひときわ得策な実施形態においては、第2制御弁のアウトレットが、第1制御弁を作動させるための制御ラインに連結される。それら2個の制御弁間の直接制御ラインをこうして設けることができる。この場合、圧力変化により制御動作を引き起こすことができる。
【0020】
本発明の更なる変形形態により提供されるところによれば、第2制御弁のインレットが、それぞれ、ピストンハウジング内の環状空間にラインにより連結される。この場合、そのピストンハウジング内環状空間を、そのインパクトピストン自体の上にあり及び/又はそのピストンハウジングの内壁内にあるリング状グルーブにより、形成することができる。とりわけ、複数個の軸方向相互間隔配置された環状空間が、そのインパクトピストンのストローク長を調整すべく設けられる。それら環状空間の結合次第では、従って、そのインパクトピストンの何れの軸方向位置にて圧力チャネルと後方圧力チャンバ内圧力ビルドアップが実現され、そのインパクトピストンの前方打撃運動を開始させうるようになるのかを、決定することができる。
【0021】
本発明のインパクトピストン装置の更なる実施形態によれば、好適なことに、第2制御弁を作動させるための制御ポートが弁ハウジング上に設けられる。このやり方によれば、制御ポートを介し直に、第2制御弁を作動させることができる。
【0022】
本発明によるインパクトドリルドライブは少なくとも1個のドリルドライブを有するものであり、本発明に係るインパクトピストン装置がそれに設けられる。このドリルドライブは、それ自体、ドリリングツールを回転駆動するよう設計されたものである。そのインパクトピストン装置により定常的に或いは所定時点にて、そのドリリングツールに軸方向打撃運動を及ぼすことができる。
【0023】
とりわけ、本発明によれば、そのインパクトドリルドライブを、土砂又は岩盤ドリリング機のキャリッジ又はマスト上に配置することができる。とりわけ、その土砂又は岩盤ドリリング機を、専門土木工事におけるアンカードリリングに用いることができる。
【0024】
以下、図中に模式的に描かれている好適な例示的実施形態を参照し、本発明についてより詳細に記述する。図面には以下のものが示されている。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】本発明に係るインパクトピストン装置の模式的回路配置を示す図である。
【
図2】本発明に係るインパクトピストン装置のハイドローリック回路図である。
【
図3】本発明向けに提供されるブロック型弁ハウジングの様々な側方外観及び様々な斜視外観を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明に係るインパクトピストン装置10の動作モードを描出するため、第1制御装置50を有するものの本発明に係る第2制御装置は有していない第1回路配置を、
図1に示す。専ら模式的に示されているピストンハウジング12の内部には、シャフト状のインパクトピストン20が、反転させうるよう可動実装されている。インパクトピストン20の前方打撃側面22はピストンハウジング12から張り出しており、その打撃側面22を打撃要領にて例えばドリルドライブシャフト(図示せず)上に衝突させることができる。
【0027】
前方第1ショルダ24と、少なくとも1個の更なる後方第2ショルダ28が、概ね既知な要領にてインパクトピストン20上に形成されている。大きめな直径のショルダ24,28が軸方向に沿い相互間隔配置されており、より小さな直径を有する環状空間15が2個の隣り合うショルダ24,28間に各々形成されている。円筒状の受容チャンバを有するピストンハウジング12内では、第1前方圧力チャンバ14が第1ショルダ24により範囲画定されており、その前方圧力チャンバ14の方を向く前方加圧面26が第1ショルダ24上に形成されている。
【0028】
ピストンハウジング12の受容チャンバ内では、後方圧力チャンバ16が第2ショルダ28の後方に形成されており、その後方圧力チャンバ16の方を向く後方加圧面29が後方第2ショルダ28上に形成されている。ここでこのインパクトピストン装置10の動作モードにとり肝心なのは、
図1にも明白に示されている通り後方加圧面29が前方加圧面26よりも大きいことである。
【0029】
図1ではピストンハウジング12内の退却位置にある態で示されているインパクトピストン20の反転運動のため、諸ラインによるハイドローリックフィード30が設けられている。ハイドローリック液体は、ハイドローリックポンプ32によりタンク42から引き込まれ、圧力下でハイドローリックフィード30内へと導入される。前方圧力チャンバ14には、自身に至る第1ブランチを介しその加圧ハイドローリック液体が継続的に供給される。前方圧力チャンバ14内ハイドローリック液体の前方加圧面26への作用により、インパクトピストン20が、
図1に示されているそれ自身の退却位置に向かい後方へと押される。
【0030】
更に、ラインによるハイドローリックフィード30が第1制御装置50へと延びており、その第1制御装置50には、3個のポートを備えていて二通りの弁位置を採りうる第1制御弁52が備わっている。第1制御弁52は従って3/2ウェイバルブである。
【0031】
図1に示されている第1設定位置では、ハイドローリック液体がハイドローリックフィード30からピストンハウジング12内の後方圧力チャンバ16へと差し向けられる。第2ショルダ28上の後方加圧面29の方が大きな面であるため、前方圧力チャンバ14内圧力流体が前方加圧面26上に及ぼす逆方向力よりも大きい力が、打撃側面22の方向に沿いインパクトピストン20上に及ぼされることとなる。第1制御弁52がこの位置にあるときには、従ってインパクトピストン20が前方に向かいピストンハウジング12外へと動き、打撃運動が実行されることとなる。弁位置は、その可作動な第1制御弁52上の第1制御ポート54を介し、第1制御弁52の前段にあるハイドローリックフィード30内の圧力を踏まえ、検出することができる。制御ライン57内圧力、即ち前方圧力チャンバ14の縁にてピストンハウジング12内に入り第1ショルダ24の方に伝わる圧力を、制御ライン57を介し第2制御ポート56を通じ検出することができる。
【0032】
打撃側面22の方に向かい前方へとインパクトピストン20を変位させることにより、制御ライン57が前方圧力チャンバ14から遮断される。
図1中に示されている矢印の方向に沿いインパクトピストン20を更に動かすことにより、環状空間15がベントライン59に連結され、そのベントライン59が同じくピストンハウジング12内に通じる。インパクトピストン20が相応な位置にあるときには、環状空間15からベントライン59を介しハイドローリックドレイン40の方へと、ひいてはタンク42へとベントすることができる。環状空間15はこうして減圧され、いずれは低減圧力を呈することとなる。矢印方向に沿いインパクトピストン20を更にシフトさせることにより、そのベントされた環状空間15と制御ライン57との間のライン連結が確立されて、その制御ライン57内で相応な圧力低減が確立されることとなる。このやり方で、第1制御弁52を、第1制御装置50の第2制御ポート56により切り換えることができる。
【0033】
この切換により制御弁52は第2弁位置となり、もはや、圧力流体が第1制御弁52を介しピストンハウジング12へとハイドローリックフィード30を通じ向かうことはなくなる。加えて、その際にそのピストンハウジング12への連結ラインがその第1制御弁を介しハイドローリックドレイン40に、ひいてはタンク42に連結される。後方圧力チャンバ16では、こうしたタンク42へのベント及び減圧切換により、いずれは明白な圧力低下が発生する。従って、第1ブランチを介しハイドローリックフィード30を通じてのハイドローリック流体の連続フィードが原因で、前方圧力チャンバ14内圧力の方が大きくなるため、やはり前方加圧面26を介しインパクトピストン20上に力が作用することになる。インパクトピストン20の後方運動、即ちピストンハウジング12内へ且つ
図1に示されている退却位置へと再び戻る運動が、こうして開始される。
【0034】
図1に示されている配置では、1個又は複数個の環状空間15の配置が、ピストンハウジング12内にあるインパクトピストン20のストローク長に影響を持つ結果となる。
【0035】
2個以上の環状空間15がインパクトピストン20に配置されている場合は、そのインパクトピストン20のストロークに、
図2との関連で記述される第2制御装置60を通じ影響を及ぼすこと、ひいてはそれを調整することができる。
【0036】
本発明によれば、第1制御装置50と第2制御装置60とが、この場合、共通の弁ハウジング70内に配置され、その回路配置が、
図2中に模式的に示され以下説明されるものとなる。
【0037】
図1との関連で示した通り、第1制御装置50は、3個のポート及び二通りの弁位置を伴う第1制御弁52を有するものと、することができる。ハイドローリックフィード30へのライン連結がポートPを介し確立される一方、ハイドローリックドレイン40ひいてはタンク42へのライン連結がポートTを介し確立されている。第1制御装置50は、
図1との関連で先に述べた通り、ポートSを介しインパクトピストン20のピストンハウジング12へとラインにより連結される。
図1に関する先の記述に相応して、第1制御装置50の第1制御ポート54がラインによりハイドローリックフィード30に連結されている。
【0038】
本発明によれば、第2制御弁62を備える第2制御装置60も、その内部に第1制御装置50が配置されているそれと同じ弁ハウジング70内に配置される。
【0039】
図2に示されている記述においては、第2制御弁62が好適にも4個のポート及び三通りの弁位置を有するもの、即ち4/3ウェイバルブとされている。ここでは、第2制御弁62のアウトレット64が、圧力制御ライン65を介して第1制御弁52の第2制御ポート56に連結されている。ある有望な別例のインパクトピストン20にて4個のショルダによりもたらされる3個の間隔配置環状空間が、第2制御弁62の3個のインレットHB1、HB2及びHB3に個別連結される。第2制御弁62側の制御ポート66を介し且つ作動ライン68を介し、マシンオペレータは、ピストンハウジング12内にあるインパクトピストン20の所望ストローク長に従い、インレットHB1,HB2,HB3のうち何れ、ひいてはインパクトピストン20に所在する環状空間15のうち何れを圧力制御ライン65に連結して第1制御弁52を作動させるかを選び、それをトリガすることができる。本例示実施形態におけるそれら3個の環状空間の配置によれば、こうしてピストンハウジング12内のインパクトピストン20のより長い又は短いストローク経路が確立される。
【0040】
原理的には、より少数又は多数の環状空間15をインパクトピストン20に設けることもでき、その場合には、インレットの相応な削減又は増加を伴う第2制御弁62の相応な適合化が必要となる。
【0041】
本発明向けに提供される弁ハウジング70であり、箱状の弁ブロック72を有していて、それをカバープレート74により片側で閉止できるものが、様々な側面の多様な外観の態で
図3に示されている。カバープレート74は、ここでは中央の側面図だけに示されている。弁レセプタクル76と、第1制御装置50及び第2制御装置60を形成しているライン又はダクトとを、弁ブロック72内に組み込むこと、とりわけミリングすることができる。全体として、ライン経路が短くひときわロバストな回路配置がこうして達成される。ひときわ高速な作動や、ストローク長の切換も、このやり方で達成することができる。
【0042】
図3から看取できる通り、ハイドローリックフィード30用のポートを弁ハウジング70の一側面上に設けることができ、ハイドローリックドレイン40及び作動ライン68用のポートを逆の側面上に設けることができる。ストローク制限を目的とする相応な環状空間連結用ポートHBを、別の側面上に配置することができる。
【0043】
<付記>
[1]
インパクトドリルドライブ用のインパクトピストン装置であって、
前方打撃位置・後方退却位置間で反転可能となるようピストンハウジング(12)内に可動実装されており、少なくとも1個の前方加圧面(26)及び少なくとも1個の後方加圧面(29)を有するインパクトピストン(20)であり、少なくとも1個の前方圧力チャンバ(14)及び後方圧力チャンバ(16)が前記ピストンハウジング(12)と一体に形成されているインパクトピストン(20)と、
ハイドローリック流体フィード(30)と、
ハイドローリック流体ドレイン(40)と、
前記インパクトピストン(20)の反転運動を行わせるための少なくとも前記後方圧力チャンバ(16)を、前記ハイドローリック流体フィード(30)と前記ハイドローリック流体ドレイン(40)とに交互に連結させる第1制御装置(50)と、
前記ピストンハウジング(12)内における前記インパクトピストン(20)の少なくとも1本のストローク経路を調整しうる第2制御装置(60)と、
を備え、前記第1制御装置(50)が可作動な第1制御弁(52)を有し且つ前記第2制御装置(60)が可作動な第2制御弁(62)を有するインパクトピストン装置であって、
前記第1制御弁(52)及び第2制御弁(62)が共通の弁ハウジング(70)内に配置されていることを特徴とするインパクトピストン装置。
[2]
上記[1]に係るインパクトピストン装置であって、
前記弁ハウジング(70)が弁ブロック(72)を備えていて、それの内部に流体ラインと弁レセプタクル(76)とが形成、とりわけミリングされていることを特徴とするインパクトピストン装置。
[3]
上記[2]に係るインパクトピストン装置であって、
カバープレート(74)が設けられていて、それによって、前記流体ライン及び前記弁レセプタクル(76)を内包する前記弁ブロック(72)が閉止されていることを特徴とするインパクトピストン装置。
[4]
上記[1]~[3]のうち何れか一項に係るインパクトピストン装置であって、
前記ハイドローリック流体フィード(30)用のポート(P)と、前記ハイドローリック流体ドレイン(40)用のポート(T)と、前記ピストンハウジング(12)へのライン連結用の連結ポート(S)とが、前記弁ハウジング(70)上に配置されていることを特徴とするインパクトピストン装置。
[5]
上記[1]~[4]のうち何れか一項に係るインパクトピストン装置であって、
前記第1制御弁(52)が可作動な3/2ウェイバルブとして設計されたものであることを特徴とするインパクトピストン装置。
[6]
上記[1]~[5]のうち何れか一項に係るインパクトピストン装置であって、
前記第1制御弁(52)が前記ピストンハウジング(12)、とりわけ前記後方圧力チャンバ(16)を、前記ハイドローリック流体フィード(30)と前記ハイドローリック流体ドレイン(40)とに、交互に連結することを特徴とするインパクトピストン装置。
[7]
上記[1]~[6]のうち何れか一項に係るインパクトピストン装置であって、
前記可作動な第2制御弁(62)が3/2ウェイバルブとして又は4/3ウェイバルブとして設計されたものであることを特徴とするインパクトピストン装置。
[8]
上記[1]~[7]のうち何れか一項に係るインパクトピストン装置であって、
前記第2制御弁(62)のアウトレット(64)が、前記第1制御弁(52)を作動させるための圧力制御ライン(65)に連結されていることを特徴とするインパクトピストン装置。
[9]
上記[1]~[8]のうち何れか一項に係るインパクトピストン装置であって、
前記第2制御弁(62)のインレットが、それぞれ、前記ピストンハウジング(12)内の環状空間(15)にラインにより連結されていることを特徴とするインパクトピストン装置。
[10]
上記[1]~[9]のうち何れか一項に係るインパクトピストン装置であって、
前記第2制御弁(62)を作動させるための制御ポート(66)が前記弁ハウジング(70)上に設けられていることを特徴とするインパクトピストン装置。
[11]
少なくとも1個のドリルドライブを有するインパクトドリルドライブであって、
上記[1]~[10]のうち何れか一項に係るインパクトピストン装置(10)が設けられていることを特徴とするインパクトドリルドライブ。