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特開2023-165668多孔性非晶質金属酸化物基盤の酸素発生反応用触媒及びこれを用いた水分解システム
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  • 特開-多孔性非晶質金属酸化物基盤の酸素発生反応用触媒及びこれを用いた水分解システム 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023165668
(43)【公開日】2023-11-16
(54)【発明の名称】多孔性非晶質金属酸化物基盤の酸素発生反応用触媒及びこれを用いた水分解システム
(51)【国際特許分類】
   C25B 11/077 20210101AFI20231109BHJP
   B01J 37/10 20060101ALI20231109BHJP
   B01J 37/08 20060101ALI20231109BHJP
   B01J 23/835 20060101ALI20231109BHJP
   C25B 11/031 20210101ALI20231109BHJP
   C25B 11/052 20210101ALI20231109BHJP
   C25B 11/091 20210101ALI20231109BHJP
   C25B 1/04 20210101ALI20231109BHJP
   C25B 9/00 20210101ALI20231109BHJP
【FI】
C25B11/077
B01J37/10
B01J37/08
B01J23/835 M
C25B11/031
C25B11/052
C25B11/091
C25B1/04
C25B9/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】21
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023076277
(22)【出願日】2023-05-02
(31)【優先権主張番号】10-2022-0055257
(32)【優先日】2022-05-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(71)【出願人】
【識別番号】308007044
【氏名又は名称】エスケー イノベーション カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】SK INNOVATION CO.,LTD.
【住所又は居所原語表記】26, Jong-ro, Jongno-gu, Seoul 110-728 Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【弁理士】
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【弁理士】
【氏名又は名称】林 一好
(72)【発明者】
【氏名】ハン ヒュン ス
(72)【発明者】
【氏名】キム ヒ ス
(72)【発明者】
【氏名】ソク テ ホン
(72)【発明者】
【氏名】イ スン オク
(72)【発明者】
【氏名】イム ジュ ファン
【テーマコード(参考)】
4G169
4K011
4K021
【Fターム(参考)】
4G169AA02
4G169AA03
4G169AA08
4G169BB06A
4G169BB06B
4G169BC15A
4G169BC20A
4G169BC21A
4G169BC21B
4G169BC24A
4G169BC67A
4G169BC67B
4G169CB81
4G169CC40
4G169DA05
4G169EC02X
4G169EC02Y
4G169EC25
4G169FB10
4G169FB29
4G169FC07
4G169FC08
4G169FC10
4K011AA21
4K011AA48
4K011BA08
4K011DA01
4K021AA01
4K021BA02
4K021DB19
4K021DC01
4K021DC03
(57)【要約】      (修正有)
【課題】水分解反応において、従来の貴金属系触媒の代わりに安価の金属を使いながらも、酸素発生反応の過電圧を低めることができる電気化学的触媒、及びこれを用いた水分解システムを提供する。
【解決手段】水分解反応の酸素発生反応電極用触媒であって、多孔性の非晶質コバルト酸化物と、ドーパントとして少なくとも一つのPブロック元素0.5~3原子%と、を含む、電極用触媒とする。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水分解反応の酸素発生反応電極用触媒であって、
多孔性の非晶質コバルト酸化物と、
ドーパントとして少なくとも一つのPブロック元素0.5~3原子%と、
を含む、水分解反応の酸素発生反応電極用触媒。
【請求項2】
前記触媒の比表面積(BET)は35~85m/gの範囲であることを特徴とする、請求項1に記載の水分解反応の酸素発生反応電極用触媒。
【請求項3】
前記少なくとも一つのPブロック元素は鉛(Pb)であることを特徴とする、請求項1に記載の水分解反応の酸素発生反応電極用触媒。
【請求項4】
前記触媒内の多孔性の非晶質コバルト酸化物はCoOで表示され、ここで、xは1~4の範囲であることを特徴とする、請求項1に記載の水分解反応の酸素発生反応電極用触媒。
【請求項5】
a)コバルト前駆体をソルボサーマル合成反応によってコバルト水酸化物に転換させる段階と、
b)前記ソルボサーマル合成生成物を酸素含有雰囲気及び第1熱処理温度の条件で熱処理して多孔性の非晶質コバルト酸化物を形成する段階と、
c)前記多孔性の非晶質コバルト酸化物に少なくとも一つのPブロック元素の前駆体を導入し、非活性雰囲気及び第2熱処理温度の条件で熱処理する段階と、
を含み、
多孔性の非晶質コバルト酸化物にPブロック元素から選択される少なくとも1種の元素が、触媒を基準に、0.5~3原子%の量でドーピングされている、触媒の製造方法。
【請求項6】
前記コバルト前駆体溶液の溶媒はポリグリコール及びポリオールを含む混合溶媒であることを特徴とする、請求項5に記載の触媒の製造方法。
【請求項7】
前記溶媒内のポリグリコール:ポリオールの体積比は10~50:1の範囲に調節することを特徴とする、請求項6に記載の触媒の製造方法。
【請求項8】
前記ポリグリコールは、トリエチレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール及びテトラエチレングリコールからなる群から選択される少なくとも1種であることを特徴とする、請求項6に記載の触媒の製造方法。
【請求項9】
前記ポリオールは、グリセロール、トリメチロールプロパン、グリセロールプロポキシレート、グリセロールエトキシレート及びグリセロールトリヘキサノエートからなる群から選択される少なくとも1種であることを特徴とする、請求項6に記載の触媒の製造方法。
【請求項10】
前記段階a)で、溶媒内のコバルト前駆体の濃度は50~200mMの範囲に調節することを特徴とする、請求項5に記載の触媒の製造方法。
【請求項11】
前記段階a)は150~250℃の範囲に調節される温度条件で遂行することを特徴とする、請求項5に記載の触媒の製造方法。
【請求項12】
前記第1熱処理温度及び前記第2熱処理温度はそれぞれ300~500℃の範囲に調節することを特徴とする、請求項5に記載の触媒の製造方法。
【請求項13】
前記段階c)で、少なくとも一つのPブロック元素の前駆体は鉛(Pb)前駆体であり、溶液の形態として添加され、その濃度は10~150mMの範囲で決定することを特徴とする、請求項5に記載の触媒の製造方法。
【請求項14】
前記段階b)で形成されたコバルト酸化物の比表面積(BET)は40~90m/gの範囲であることを特徴とする、請求項5に記載の触媒の製造方法。
【請求項15】
前記非活性雰囲気は、アルゴン、窒素及びヘリウムからなる群から選択される少なくとも1種のガスによって形成されることを特徴とする、請求項5に記載の触媒の製造方法。
【請求項16】
電極基材と、前記電極基材にローディングされた多孔性の非晶質コバルト酸化物基盤の触媒とを含む水分解反応の酸素発生反応電極であって、
前記多孔性の非晶質コバルト酸化物基盤の触媒は、
多孔性の非晶質コバルト酸化物と、
ドーパントとして少なくとも一つのPブロック元素0.5~3原子%と、
を含む、酸素発生反応用電極。
【請求項17】
前記電極は、10mA/cmの基準電流密度、走査速度10mVs-1及び0.1MのKOH溶液(pH13)の条件で0.4V(対RHE)以下の過電圧を示すことを特徴とする、請求項16に記載の酸素発生反応用電極。
【請求項18】
前記電極内の触媒のローディング量は、0.02~0.2mg/cmの範囲であることを特徴とする、請求項16に記載の酸素発生反応用電極。
【請求項19】
外部電源と電気的に連結された電気化学的電極としてアノード及びカソードと、電解質を含む水系媒質とを含む水分解システムであって、
前記外部電源から電圧が印加されることによって前記アノード側で酸素が発生する一方で、前記カソード側で水素が発生し、
前記アノードは、電極基材にローディングされた多孔性の非晶質コバルト酸化物基盤の触媒を含み、
前記多孔性の非晶質コバルト酸化物基盤の触媒は、(i)多孔性の非晶質コバルト酸化物、及び(ii)ドーパントとして少なくとも一つのPブロック元素0.5~3原子%を含む、水分解システム。
【請求項20】
前記電解質を含む水系媒質は、アルカリ性媒質または酸性媒質であることを特徴とする、請求項19に記載の水分解システム。
【請求項21】
電極基材を含むアノードと、
導電性材質を含むカソードと、
電解質を含む水溶液と、
電源と、を含み、
多孔性の非晶質コバルト酸化物基盤の触媒が前記電極基材にローディングされ、
前記多孔性の非晶質コバルト酸化物基盤の触媒は、
多孔性の非晶質コバルト酸化物と、
前記多孔性の非晶質コバルト酸化物基盤の触媒に原子百分率が0.5~3%の少なくとも一つのPブロック元素と、
を含む、水分解システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示内容は多孔性非晶質金属酸化物基盤の酸素発生反応用触媒及びこれを用いた水分解システムに関するものである。より具体的には、本開示内容は複雑でありながら高い過電圧を要求する水分解反応において従来の貴金属系触媒の代わりに安価の金属(具体的には、卑金属(base metal))を使いながらも、水分解反応の際、酸素発生反応(oxygen evolution reaction;OER)の過電圧(overpotential)を低めることができる電気化学的触媒、及びこれを用いた水分解システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
水分解(水の電気分解)、すなわち水を酸素ガス及び水素ガスに分離(splitting)または解離(dissociation)することは酸素ガス及び/または水素ガスの生成だけでなく、エネルギー貯蔵においても重要な反応である。特に、最近には、環境汚染問題及び化石燃料枯渇によって代替エネルギーに対する関心が高くなるのに伴い、原料が豊かで環境汚染の問題点がない効率的な代替エネルギーの一つとして水分解による水素エネルギーが高い関心を受けている。
【0003】
水分解反応は、水溶液状態で自然的には陰イオン及び陽イオンに分離されない化合物を電流の印加によって陰イオン及び陽イオンに分離する過程を意味する。これに関連して、水分解反応に使われるデバイスは、基本的に、外部電源、アノード(陽極)及びカソード(陰極)を含む。ここで、外部電源は電解対象物を陰イオン及び陽イオンに分離させるのに必要な電気力を提供する一方で、カソード及びアノードはそれぞれ電気分解対象物に電気力を伝達する役割、そして陰イオンまたは陽イオンの付着部位(サイト)を提供することができる。水分解反応における水素発生反応及び酸素発生反応の場合、反応速度が遅くて速度決定段階(rate determining step)として作用するので、酸素発生速度または酸素還元速度を増加させるためには電気化学的触媒が要求される。
【0004】
具体的には、水を水素ガス及び酸素ガスに分解する反応ではエネルギーが消耗される一方で、水素ガス及び酸素ガスが再結合して水分子を形成するときはエネルギーが放出され、水分解プロセスの全体的な反応メカニズムは下記の反応式1で表示することができる。
【0005】
[反応式1]
アノード(酸化反応):HO→2H+2e+1/2O
カソード(還元反応):2H+2e→H
全体反応:HO→H+1/2O
【0006】
特に、酸性媒質及びアルカリ媒質のそれぞれにおいて、半電池反応及び全体反応は下記の反応式2及び3のように示すことができる。
【0007】
[反応式2]
アノード(酸化反応):2HO(l)→O(g)+4H+4e
カソード(還元反応):4H+4e→2H
全体反応:HO(l)→H(g)+1/2O(g)
【0008】
[反応式3]
アノード(酸化反応):4OH→O(g)+2HO+4e
カソード(還元反応):4HO+4e→2H(g)+4OH
全体反応:HO(l)→ H(g)+ 1/2 O(g)
【0009】
前述した水分解反応により、酸素ガス及び水素ガスが1:2のモル比で生成され、このような生成ガスは無公害エネルギー源または燃料として使うことができる。
【0010】
水分解技術が商業的競争力を確保するためには、触媒が下記の要件を満たすことが要求される。(i)水素または酸化への転換効率が高く、(ii)耐久性に優れ、(iii)低電圧で作動し、かつ(iv)価格競争力がなければならない。特に、電気化学的に駆動される水分解触媒はpHに影響されず、低電圧で水素または酸素を発生させることが好ましい。
【0011】
ただ、水分解反応の遅い反応速度が問題視されているので、種々の電気化学的触媒の適用可能性が研究されている。これに関連して、水分解反応用貴金属系触媒が広く知られている。すなわち、水素生成反応では代表的に白金系触媒、そして酸素生成反応ではイリジウム酸化物(IrO)またはルテニウム酸化物(RuO)触媒が広く用いられている。
【0012】
既存の水分解システムに使われる電気化学的電極の場合、水素発生反応(HER)の面では一定水準以上の触媒活性を示したが、酸素発生電極(アノードまたは陽極)として適用する場合には、良好な酸素発生反応活性を達成するのに限界が存在する。特に、水分解システム内の2個の半反応において酸素発生反応は反応速度が遅く高い過電圧が要求されるので、技術的障壁と認識されている。さらに、アノード(酸化極)での酸素発生反応用触媒として主に使われるイリジウム酸化物の場合、最近には他の貴金属(例えば、白金、ルテニウムなど)に比べて高価によって商用化をもっと難しくする要因として指摘されている。
【0013】
また、水分解用アノード基材として金属材(例えば、銅、ニッケルなど)のプレート(plate)またはホイル(foil)、またはフォーム(foam)形態の構造物を用い、二酸化マンガン、タングステン、鉄カルコゲナイドなどの卑金属触媒成分を担持させた水分解用電気化学的電極の例も報告されている。しかし、性能に比べて高い触媒製造コストによって商用化に適しない。さらに、貴金属系触媒の代わりに安い卑金属(base metal)系触媒を使う場合、酸性で腐食されるかまたは高電圧で作動しなければならないなど、貴金属系触媒成分に比べて性能面では依然として改善の必要性がある。
【0014】
したがって、高価の貴金属の代わりに安価の金属を使いながらも、良好な水分解反応活性、特に酸素発生反応活性を具現することができる方案が要求される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本開示内容の一具体例では、酸素発生反応用電極の触媒として主に使用されたイリジウム酸化物などの貴金属系触媒と同等以上の性能を発揮することができる安価の卑金属系触媒及びこれを用いた電気化学的電極を提供しようとする。
【0016】
本開示内容の他の具体例では、前述した卑金属系触媒がアノードに適用された水分解システムを提供しようとする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本開示内容の第1面によると、
水分解反応の酸素発生反応電極用触媒であって、
多孔性の非晶質コバルト酸化物と、
ドーパントとして少なくとも一つのPブロック元素0.5~3原子%と、
を含む水分解反応の酸素発生反応用触媒が提供される。
【0018】
本開示内容の第2面によると、
水分解反応の酸素発生反応電極用触媒の製造方法であって、
a)コバルト前駆体をソルボサーマル合成反応によってコバルト水酸化物に転換させる段階と、
b)前記ソルボサーマル合成生成物を酸素含有雰囲気及び第1熱処理温度の条件で熱処理して多孔性の非晶質コバルト酸化物を形成する段階と、
c)前記多孔性の非晶質コバルト酸化物に少なくとも一つのPブロック元素の前駆体を導入し、非活性雰囲気及び第2熱処理温度の条件で熱処理する段階と、
を含み、
多孔性の非晶質コバルト酸化物に、Pブロック元素から選択される少なくとも1種の元素が、触媒を基準に、0.5~3原子%の量でドーピングされている触媒の製造方法が提供される。
【0019】
例示的具体例によれば、前記コバルト前駆体溶液の溶媒は、ポリグリコール及びポリオールを含む混合溶媒であってもよい。
【0020】
例示的具体例によれば、前記溶媒内のポリグリコール:ポリオールの体積比は10~50:1の範囲に調節することができる。
【0021】
例示的具体例によれば、前記ポリグリコールは、トリエチレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール及びテトラエチレングリコールからなる群から選択される少なくとも1種であり得る。
【0022】
例示的具体例によれば、前記ポリオールは、グリセロール、トリメチロールプロパン、グリセロールプロポキシレート、グリセロールエトキシレート及びグリセロールトリヘキサノエートからなる群から選択された少なくとも1種であり得る。
【0023】
例示的具体例によれば、前記段階a)で、溶媒内のコバルト前駆体の濃度は50~200mMの範囲に調節することができる。
【0024】
例示的具体例によれば、前記段階a)は、150~250℃の範囲に調節される温度条件で遂行することができる。
【0025】
例示的具体例によれば、前記第1熱処理温度及び前記第2熱処理温度はそれぞれ300~500℃の範囲に調節することができる。
【0026】
例示的具体例によれば、前記段階c)で、少なくとも一つのPブロック元素の前駆体は溶液の形態として添加し、その濃度は10~150mMの範囲で決定することができる。
【0027】
例示的具体例によれば、少なくとも一つのPブロック元素は鉛(Pb)であってもよい。
【0028】
例示的具体例によれば、前記コバルト酸化物の比表面積(BET)は40~90m/gの範囲にすることができる。
【0029】
例示的具体例によれば、前記触媒の比表面積(BET)は35~85m/gの範囲にすることができる。
【0030】
例示的具体例によれば、前記触媒内の多孔性の非晶質コバルト酸化物はCoOで表示され、ここで、xは1~4の範囲にすることができる。
【0031】
例示的具体例によれば、前記非活性雰囲気は、アルゴン、窒素及びヘリウムからなる群から選択される少なくとも1種のガスによって形成することができる。
【0032】
本開示内容の第3面によると、
電極基材と、前記電極基材にローディングされた多孔性の非晶質コバルト酸化物基盤の触媒とを含む水分解反応の酸素発生反応電極であって、
前記多孔性の非晶質コバルト酸化物基盤の触媒は、
多孔性の非晶質コバルト酸化物と、
ドーパントとして少なくとも一つのPブロック元素0.5~3原子%と、
を含む酸素発生反応用電極が提供される。
【0033】
例示的具体例によれば、前記電極は、10mA/cmの基準電流密度、走査速度10mVs-1及び0.1MのKOH溶液(pH13)の条件で0.4V(対RHE)以下の過電圧を示すことができる。
【0034】
例示的具体例によれば、前記電極内の触媒のローディング量は0.02~0.2mg/cmの範囲であり得る。
【0035】
本開示内容の第4面によると、
外部電源と電気的に連結された電気化学的電極としてアノード及びカソードと、電解質を含む水系媒質とを含む水分解システムであって、
前記外部電源から電圧が印加されることによって前記アノード側で酸素が発生する一方で、前記カソード側で水素が発生し、
前記アノードは、電極基材にローディングされた多孔性の非晶質コバルト酸化物基盤の触媒を含み、
前記多孔性の非晶質コバルト酸化物基盤の触媒は、(i)多孔性の非晶質コバルト酸化物、及び(ii)ドーパントとして少なくとも一つのPブロック元素0.5~3原子%を含む、水分解システムが提供される。
【発明の効果】
【0036】
本開示内容の具体例による多孔性の非晶質コバルト酸化物基盤の触媒は既存の水分解システムで技術的障壁として作用した非効率的な酸素発生反応活性において卑金属系触媒を使いながらも高価の貴金属系触媒と同等以上の水準に高めることができるので、経済性を高めることができる。このように製作された触媒は酸素発生反応用電極として適用して全体水分解システムの商用化に相応しく、高い付加価置を創出することができる利点を提供する。したがって、今後広範囲な適用が期待される。
【図面の簡単な説明】
【0037】
図1】例示的具体例によって多孔性の非晶質コバルト酸化物基盤の触媒を製造する一連の過程を概略的に示す図である。
図2】それぞれ鉛ドーピングされたCoO多孔性シート触媒(Pb-CoOx-PS)及び非多孔性CoO(CoOx)触媒のSEM及びEDX(Energy Dispersive X-ray Spectroscopy)マッピング分析結果を示す図である。
図3】鉛ドーピングされたCoO多孔性シート触媒(Pb-CoOx-PS)、CoO多孔性シート(CoOx-PS)触媒及び非多孔性CoO(CoOx)触媒のそれぞれのXRDパターンを示す図である。
図4】鉛ドーピングされたCoO多孔性シート触媒(Pb-CoOx-PS)、CoO多孔性シート(CoOx-PS)触媒及び非多孔性CoO(CoOx)触媒のそれぞれの比表面積(BET)分析のための吸着実験結果を示すグラフである。
図5】鉛ドーピングされたCoO多孔性シート触媒(Pb-CoOx-PS)、CoO多孔性シート(CoOx-PS)触媒及び非多孔性CoO(CoOx)触媒のそれぞれのXPS(X-ray photoelectron spectroscopy)分析結果を示す図である。
図6】商用イリジウム酸化物(IrO)触媒、鉛ドーピングされたCoO多孔性シート触媒(Pb-CoOx-PS)、CoO多孔性シート(CoOx-PS)触媒及び非多孔性CoO(CoOx)触媒のそれぞれの電流密度対電圧曲線を示すグラフである。
図7】商用イリジウム酸化物(IrO)触媒、鉛ドーピングされたCoO多孔性シート触媒(Pb-CoOx-PS)、CoO多孔性シート(CoOx-PS)触媒及び非多孔性CoO(CoOx)触媒のそれぞれの印加電圧対ログ電流密度曲線を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0038】
本発明は下記の説明によって全部達成可能である。下記の説明は本発明の好適な具体例を記述するものと理解しなければならないが、本発明が必ずしもこれに限定されるものではない。また、添付図面は理解を手伝うためのものであり、本発明がこれに限定されるものではなく、個別構成についての詳細事項は後述する関連記載の具体的趣旨によって適切に理解可能である。
【0039】
本明細書において、「触媒」とは電気化学的分解反応の速度を増加させ、その自体が電気分解反応に参加することはするが、反応自体によって消耗されないながらも電気化学的反応に参加することができる成分を意味し得る。狭義では水分解による水素発生反応及び/または酸素発生反応において電子を提供するか電子を収容する反応メカニズムを促進する成分であり得る。
【0040】
「ソルボサーマル合成法(solvothermal synthesis)」は密封容器内で溶媒の沸点より高い温度の条件で溶媒内で起こる化学的反応を意味し得る。ここで、溶媒が水の場合には「水熱合成法(hydrothermal synthesis)」と言える。
【0041】
「水分解」は外部から供給された電気エネルギーを用いて水を酸素ガス及び水素ガスに分離する反応を意味し得る。
【0042】
「電極」は、本明細書では、水分解システムにおいて外部電源と電気的に連結されており、典型的には外部電源とは外観上分離された導電性構造物であり、外部電源から電圧の印加の際、還元反応が起こるカソード、及び酸化反応が起こるアノードをそれぞれ意味し得る。
【0043】
「触媒電極」は、電流集電体に吸収されるかまたは別に電流集電体と電気的に連結される触媒がローディングされた電流集電体を意味し得る。ここで、触媒は水系媒質(例えば、電解質水溶液など)に露出された場合、酸化状態の変化及び/または水系媒質との動的平衡によって電流集電体と会合することができるものと理解することもできる。
【0044】
「電気化学的電極」は電極(カソード及び/またはアノード)の基材に水分解反応を促進する触媒成分が混入するかまたは付着された電極構造物を意味し得る。
【0045】
「過電圧(overpotential)」は所望の触媒活性を得るのに要求される熱力学的還元または酸化電圧以外の電圧を意味し得る。本明細書では、水分解反応を起こすために電極に印加されなければならない電圧から当該反応に要求される熱力学的電圧を差し引いたものを意味し得る。
【0046】
「上に」または「上側に」及び「下側に」または「下に」のような用語は構成要素または部材の間の相対的な位置関係を記述するものと理解することができ、「上側に位置する」または「下側に位置する」という用語は特定の対象と接触した状態だけでなく接触していない状態での相対的な位置関係を表現するものと理解することができる。
【0047】
本明細書で、数値範囲を下限値及び/または上限値で特定した場合、当該数値範囲内の任意のサブ組合せも開示するものと理解することができる。例えば、「1~5」と記載された場合、1、2、3、4及び5はもちろんのこと、これらの間の任意のサブ組合せも含むことができる。
【0048】
本明細書で、ある構成要素または部材が他の構成要素または部材と「連結される」と記載されている場合、他に言及しない限り、前記他の構成要素または部材と直接連結されている場合だけでなく、他の構成要素または部材を介在して連結されている場合も含むものと理解することができる。
【0049】
これと同様に、「接触する」と言う用語も必ずしも直接的に接触する場合だけでなく、他の構成要素または部材を介在して接触する場合も含むものと理解することができる。
【0050】
ある構成要素を「含む」というとき、これは、別途の言及がない限り、他の構成要素をさらに含むことができることを意味する。
【0051】
触媒及びその製造方法
例示的具体例によって多孔性の非晶質コバルト酸化物基盤の触媒を製造する一連の過程は図1に概略的に示すようである。
【0052】
前記図を参照すると、水分解システムの電気化学的電極、具体的には酸素発生反応用電極(アノード)に適用可能な触媒を製造するために、まずソルボサーマル合成法(solvothermal synthesis)及び後続の熱処理によってコバルト前駆体を用いて多孔性の非晶質コバルト酸化物を製造する。
【0053】
図1を参照すると、まずコバルト前駆体(コバルトソース)を準備する。ここで、コバルト前駆体は、塩形態、具体的には2+の酸化価を有する塩を使うことができる。一例として、コバルト前駆体は、例えばハロゲン化物(具体的には、塩化物)、硫酸塩、硝酸塩、リン酸塩、炭酸塩、酢酸塩などから選択される少なくとも1種であってもよく、また上述した化合物の水和物形態であってもよい。より具体的には、コバルト前駆体は硝酸塩(またはその水和物)であり得る。硝酸塩はポリオール及びポリグリコールに対して良好な溶解度を有するので、ソルボサーマル合成反応の際に効果的に反応するのに有利である。
【0054】
図示の具体例によれば、前述したコバルト前駆体を溶媒、具体的には有機溶媒、より具体的にはアルコール系溶媒に添加することで、ソルボサーマル合成のための反応物としてコバルト前駆体溶液を製造する。
【0055】
例示的具体例によれば、ソルボサーマル合成反応に使用可能な溶媒は合成されるコバルト酸化物の凝集現象などを抑制することができる種類であり得る。このような溶媒は、ポリグリコール、ポリオールなどから選択される少なくとも1種、具体的にはポリグリコール及びポリオールの組合せを含む混合溶媒を使うことができる。一例として、溶媒は比較的高い沸点、例えば少なくとも約200℃、具体的には約230~350℃、より具体的には約250~320℃、特に具体的には約270~300℃の範囲の沸点を有することができる。このように高沸点の溶媒、具体的には溶媒の組合せによって、コバルト水酸化物のソルボサーマル合成過程で凝集現象などを効果的に抑制することができる。
【0056】
例示的具体例によれば、ポリグリコールは下記の一般式1で表示される2以上のグリコール分子の脱水反応によって形成されたジヒドロキシエーテルを意味し得る。
【0057】
[一般式1]
【化1】
【0058】
前記式で、R~Rのそれぞれは水素または炭素数1~6のアルキル基であり得る。
【0059】
本具体例で、ポリグリコールは界面活性剤として機能することができ、また還元力を提供することができるので、ソルボサーマル合成の生成物であるコバルト水酸化物のナノ構造体の生成に有利である。例示的具体例において、ポリグリコールは、例えばトリエチレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、テトラエチレングリコールなどから少なくとも1種を選択することができ、より具体的にはトリエチレングリコール(TEG)を使うことができる。これに関連して、トリエチレングリコールはコバルト前駆体に対して高い溶解度を有するだけでなく、相対的に低温でも良好な還元力を有する点で有利である。
【0060】
一方、ポリオールは少なくとも3個のヒドロキシ基を含むアルコール、より具体的には3個のヒドロキシ基を含むアルコールであり得る。ここで、ポリオールは強い界面活性剤として機能することができ、ソルボサーマル合成の生成物であるコバルト水酸化物のナノ構造を制御することができる。例示的具体例において、ポリオールは、例えばグリセロール、トリメチロールプロパン、グリセロールプロポキシレート、グリセロールエトキシレート、グリセロールトリヘキサノエートなどから少なくとも1種を選択することができ、より具体的にはグリセロールを使うことができ、少量でもナノ構造を容易に制御することができるので有利である。
【0061】
例示的具体例によれば、混合溶媒のうち、ポリグリコール:ポリオールの体積比は、例えば約10~50:1、具体的には約15~40:1、より具体的には約20~30:1の範囲に調節することができる。これに関連して、ポリグリコールの相対的な量があまりにも多いか少ない場合には生成物が凝集するかまたは収得率が減少する現象が起こることがあるので、前述した範囲に調節することが有利である。ただ、上述した範囲はポリグリコール及び/またはポリオールの種類によって変更可能であり、本具体例がこれに限定されるものではない。
【0062】
例示的具体例によれば、溶液内のコバルト前駆体の濃度は、粒子形成程度を考慮して決定することができる。例えば約50~200mM、具体的には約70~150mM、より具体的には約90~120mMの範囲にすることができる。
【0063】
本具体例によれば、前駆体溶液内のコバルト前駆体はソルボサーマル合成によってコバルト水酸化物形態に転換されることができる。これに関連して、ポリグリコール(具体的には、トリエチレングリコール)はヒドロキシル基(hydroxyl group)を有し、弱い還元剤及び界面活性剤として機能するので、反応中に不均一な核生成が起こり、反応初期に生成された微細粒子が持続的に成長及び凝集することにより粒子のサイズが増加する。ここで、ポリオール(具体的には、グリセロール)が補助界面活性剤として作用して粒子サイズを制御する機能を果たすことができる。
【0064】
例示的具体例によれば、ソルボサーマル合成の際の反応温度は、例えば約150~250℃、具体的には約160~220℃、より具体的には約170~200℃の範囲に調節することができる。また、反応圧力は、特に限定されるものではないが、典型的には少なくとも約15kg/cm、より典型的に約10~20kg/cmの範囲に調節することができる。その他にも、反応時間は、例えば少なくとも約1時間、具体的には約2~5時間、より具体的には約3~4時間の範囲に調節することができるが、これは例示的な趣旨と理解することができる。ソルボサーマル合成が完了すれば、生成物を、例えば少なくとも1回にかけて洗浄(例えば、水、アセトン、炭素数1~4のアルコール(具体的には、メタノール、エタノール、及び/またはプロパノール)などから選択される少なくとも1種の溶媒を使うことができる)及び/または乾燥工程を遂行することで生成物を収得することができる。
【0065】
図示の具体例で、ソルボサーマル合成反応の生成物は熱処理(第1熱処理)によって多孔性の非晶質コバルト酸化物に転換させることができる。ここで、熱処理は酸素含有雰囲気で遂行することができ、具体的には空気雰囲気で遂行することができる。また、熱処理温度(第1熱処理温度)は、例えば約300~500℃、具体的には約350~450℃、より具体的には約380~420℃の範囲に調節することができる。熱処理時間は、水熱合成の生成物を実質的に全部酸化物形態に転換させる限り、特に限定されるものではないが、例えば少なくとも約2時間、具体的には約2~6時間、より具体的には約3~5時間の範囲に調節することができる。
【0066】
このように、熱処理によって形成された生成物は化学式CoOで表示される非晶質のコバルト酸化物であり得る。ここで、xは約1~4、具体的には約1.5~3.5、より具体的には約2~3の範囲にすることができる。このような非晶質特性は酸素空孔(空格子点または欠陥;oxygen vacancy)を多量含んでいるから、酸素発生反応(OER)の反応中間体であるOHイオンを効果的に吸着することができるので、OER性能向上に有利である。
【0067】
ここで、注目すべき点は、前述した方式で製造されたコバルト酸化物はポアが発達したシート状のナノ構造体、特に通常のコバルト酸化物に比べて著しく増加した多孔性、すなわちスポンジ(sponge)構造を有することである。また、シート状を構成するコバルト酸化物粒子は、例えば球形、楕円形、線形などの形態学的特徴を有することができる。
【0068】
これに関連して、多孔性コバルト酸化物(CoO)の平均ポアサイズは、窒素吸着(N sorption)方法で測定することができる。例えば約0.1~3nm、具体的には約0.5~2nm、より具体的には約1~1.5nmの範囲にすることができる。
【0069】
例示的具体例によれば、コバルト酸化物の比表面積(BET)は、例えば約40~90m/g、具体的には約50~80m/g、より具体的には約60~70m/gの範囲にすることができる。また、ポアの体積は、例えば約0.05~0.3cm/g、具体的には約0.8~0.2cm/g、より具体的には約0.1~0.15cm/gの範囲に調節することができる。このように発達した多孔性によって反応活性点が増加することができるだけでなく、反応物/生成物の効率的な物質伝達を誘導することができる。
【0070】
本開示内容の一具体例によれば、多孔性の非晶質コバルト酸化物を製造した後には、ドーパントとしてPブロック元素(最後の電子がpオービタルを占める元素(例えば、周期表上の13族~18族元素)を意味することができる)、具体的には周期表上の14族元素(特に、金属)を混入する段階を遂行する。本具体例で、ドーパントとして適したPブロック元素は、例えば約1.6~2、具体的には約1.7~1.9、より具体的には約1.9前後の電気陰性度(electronegativity;Pauling scale)を有する種類であり得る。例示的に、Pブロック元素は、鉛(Pb)、インジウム(In)、アンチモン(Sb)、スズ(Sn)などから選択される少なくとも1種であり得る。
【0071】
特定の具体例で、Pブロック元素は鉛(Pb)であり得る。鉛は優れた疑似容量特性(pseudocapacitive property)及び高い電気陰性度(1.9)を有するので、コバルト酸化物の電荷移動を促進することができ、電気的特性を容易に制御することができるので、触媒性能を極大化することができるという点で有利である。
【0072】
例示的具体例によれば、ドーパントは前駆体形態として導入することができ、具体的には前駆体溶液の形態としてコバルト酸化物に添加することができる。ここで、使用可能な媒質または溶媒としては、水、エタノール、メタノール及びプロパノールなどを使うことができ、単独媒質または混合物形態として適用可能である。より具体的には、媒質または溶媒は水(例えば、脱イオン水)であり得る。
【0073】
特定の具体例で、ドーパントが鉛(Pb)の場合、鉛前駆体は媒質または溶媒にイオン化する性状を有する限り、特に限定されるものではなく、例えば硝酸鉛(Pb(NO)、塩化鉛(PbCl)、硫酸鉛(PbSO)、鉛アセチルアセトネート(Pb(C)などから選択される少なくとも1種であり得る。例示的具体例によれば、ドーパント前駆体溶液の濃度は、例えば約10~150mM、具体的には約20~100mM、より具体的には約30~70mMの範囲にすることができる。ドーパント前駆体溶液の濃度があまりにも高いか低い場合には、望まないドーパント前駆体の酸化物が形成されるか、またはドーピング効果が小さい現象が発生することがあるので、前述した範囲に適切に調節することが有利である。ただ、前述した濃度範囲は例示的な趣旨と理解することができる。
【0074】
例示的具体例によれば、先に製造された多孔性の非晶質コバルト酸化物にドーパント前駆体溶液を添加するか接触させる段階を遂行することができる。
【0075】
また、添加される溶液内のドーパント前駆体とコバルト酸化物との比は最終触媒の組成によって決定することができる。一例として、コバルト酸化物:ドーパント前駆体のモル比は、例えば約20~2:1、具体的には約15~4:1、より具体的には約10~6:1の範囲になるようにドーパント前駆体溶液を使うことができるが、これは例示的趣旨と理解することができる。また、ドーパント前駆体溶液は滴加(drop-wise addition)方式でコバルト酸化物に添加することができる。
【0076】
上述したようにドーパント前駆体を添加した後には、例えば少なくとも1回にかけて洗浄を行うことで、多孔性コバルト酸化物に混入せずに残留するドーパント前駆体、不純物などを洗浄して除去することができ、これと同時にまたは選択的に乾燥(例えば約60~120℃、具体的には約80~100℃の乾燥温度)工程を遂行することもできる。
【0077】
その後、ドーパント前駆体が添加されたコバルト酸化物に対して熱処理(第2熱処理)段階を行って電気化学的触媒を製造することができる。ここで、熱処理は非活性雰囲気で遂行することができる。例えば、アルゴン、窒素、ヘリウムなどから選択される少なくとも1種のガスによる雰囲気で、より具体的には窒素雰囲気で遂行することができる。また、熱処理温度(第2熱処理温度)は、例えば約300~500℃、具体的には約350~450℃、より具体的には約380~420℃の範囲に調節される温度の条件で遂行することができる。その他にも、熱処理時間は特に限定されるものではないが、例えば少なくとも約2時間、具体的には約2~5時間、より具体的には約3~4時間の範囲に調節することができる。このような非活性雰囲気での熱処理によってPブロック元素はコバルト酸化物にドーピングされて部分酸化した形態に転換されることができる。
【0078】
本具体例によれば、コバルト酸化物基盤の電気化学的触媒の場合、ナノサイズのコバルト酸化物粒子が多孔性シート構造を形成する。ここで、SEMによって測定されるコバルト酸化物粒子のサイズ(または直径)は、例えば約20~100nm、具体的には約30~80nm、より具体的には約40~70nmの範囲にすることができる。
【0079】
また、コバルト酸化物粒子の会合によって形成された多孔性コバルト酸化物シートの幅は、例えば約1~100μm、具体的には約5~80μm、より具体的には約10~50μmの範囲にすることができる。
【0080】
また、Pブロック元素であるドーパントはホスト成分であるコバルト酸化物に混入してコバルト酸化物の電子構造を効果的に制御することができ、電荷移動を向上させることができる。このとき、単原子の形態として混入することができる。
【0081】
例示的具体例によれば、多孔性の非晶質コバルト酸化物にドーパント成分であるPブロック元素を、触媒を基準に、例えば約0.5~3原子%、具体的には約0.6~2.5原子%、より具体的には約0.7~2原子%の量で含有することができる。特定の具体例によれば、Pブロック元素を、触媒を基準に、例えば約0.8~1.5原子%、具体的には約0.9~1.2原子%の量で含有することができる。ドーパント含量があまりにも少ないか多い場合にはドーピング効果が低いか酸化物が形成される現象が発生することがあるので、前述した範囲内で適切に調節することが有利である。
【0082】
また、本具体例によるコバルト酸化物基盤の触媒は、Pブロック元素の混入またはドーピングによってドーピング前の多孔性のコバルト酸化物に比べて比表面積が少し減少することがあるが、依然としてコバルト酸化物の高い多孔性を維持することができる。これに関連して、本具体例でドーピングされたコバルト酸化物基盤の触媒は、例えば約35~85m/g、具体的には約40~75m/g、より具体的には約50~70m/gの範囲にすることができる。ここで、ドーピング前に比べて比表面積(BET)の減少は、例えば約8%以下、具体的には約6%以下、より具体的には約4%以下であり得る。
【0083】
このように、本具体例による電気化学的触媒の場合、コバルト酸化物の増加した比表面積によって触媒活性点が増加し、反応物/生成物が効果的に伝達されることができるだけでなく、ドーパントとしてPブロック元素、特に鉛(Pb)を導入することによって性能が極大化することができる。また、本具体例による電気化学的触媒は、既存のイリジウム酸化物界触媒と比較すると、同等以上の電気化学的活性、特に酸素発生反応活性を示すことができるので、これは経済性及び商用化の側面で有利である。
【0084】
本開示内容が特定の理論に限定されるものではないが、卑金属(base metal)を使っても良好な酸素発生反応(OER)活性を示す理由は、ナノ構造効果、電子構造制御だけでなく、非晶質構造による酸素空孔が豊かでありながらも効果的に触媒の表面に分布することによるシナジー効果によるものであると説明することができる。
【0085】
酸素発生反応用電極(触媒電極)及び水分解システム
本開示内容の他の具体例によって、Pブロック元素でドーピングされた多孔性の非晶質コバルト酸化物界触媒を電気化学的電極に導入(ローディング)し、これを用いて水分解システムを構成することができる。特に、前述した触媒がローディングされた電極は、水分解システムのうち酸素発生反応が起こるアノードに適用することができる。
【0086】
例示的具体例によれば、電極製造の際、触媒は導電性基材にローディングされることができるが、このようなローディング方式が特に限定されるものではなく、当該分野で公知となった方式、例えばスラリーを用いたローディング、蒸着、スプレーコーティングなどを適用することができる。
【0087】
一例として、スラリーローディング方式の場合、先に製造された触媒のスラリー(分散媒は、例えば炭素数1~4のアルコール(例えば、メタノール、エタノール、プロパノールなど)及び水(例えば、蒸留水)からなる群から選択される少なくとも1種とすることができる)を製造することができる。ここで、触媒スラリーの濃度は、例えば約5~30重量%、具体的には約10~20重量%の範囲に調節することができる。次いで、電極基材(例えば、導電性基材)にスラリーを塗布した後、これを乾燥させることで触媒電極を製造することができる。
【0088】
選択的に、蒸着方式を適用することができる。この場合、蒸着速度、乾燥温度などを調節してローディングされる触媒層を調節することができ、蒸着の後には洗浄を遂行することができる。
【0089】
例示的具体例によれば、触媒がローディングされる基材は、プレート、ロッド、メッシュ、ディスク、ワイヤなどの多様な形状を有することができる。また、導電性基材は酸化雰囲気に露出される場合にも導電性を維持することができる材質から構成することができる。例えば、バルブ金属(具体的には、チタン、アルミニウム、クロムなど)、ステンレススチールなどから選択される少なくとも1種(合金を含む)、炭素などの材質から構成することができる。
【0090】
例示的具体例で、ローディングされる触媒の量は、電極を基準に、例えば約0.02~0.2mg/cm、具体的には約0.04~0.15mg/cm、より具体的には約0.08~0.12mg/cmの範囲にすることができるが、これは例示的な趣旨と理解することができる。
【0091】
本開示内容の一具体例によれば、前述した電気化学的電極をアノードとして使用して水を分解させることで、カソードでは水素、かつアノードでは酸素を発生させる水分解システムを具現することができる。水分解システムは基本的に一対の相反する電極(すなわち、アノード及びカソード)を含み、一対の電極のそれぞれは外部電源(例えば、一定の定電位電解装置(potentiostat)、電池など)と電気的に連結されている。その他にも、3電極システムの場合には基準電極をさらに含むこともできる。このような基準電極はAg/AgCl、SCE(saturated calomel electrode)、Hg/HgO及びHg/HgSOからなる群から選択することができ、具体的にはAg/AgCl(3MNaCl)を使うことができる。
【0092】
例示的具体例によれば、水分解システムは、一対の電極のうち前述した触媒が含有されるか付着された電気化学的電極をアノードとして使用し、残りの電極であるカソードは当該分野で知られた種類を使うことができる。これに関連して、カソードも導電性材質から構成されることができる。一例として、カソードに適用可能な導電性材質は、水素の発生が容易であり、水溶液と接触しても分解しないなどの性状を有しながらも、特に低い過電圧を示すことができる種類から選択することができる。例えば、白金、ニッケル、コバルト、鉄などから選択される少なくとも1種であり得る(合金を含む)。特定の具体例による水分解システムにおいて、カソード及びアノードのそれぞれは電解質含有水溶液と接触するか浸漬された状態で運転することができる。例示的に、このような一対の電極の少なくとも約20%、具体的には少なくとも約50%、より具体的には少なくとも80%、特に実質的に電極の全表面を電解質含有水溶液内に浸漬させた状態で作動させることができる。
【0093】
一方、例示的具体例によれば、水分解システム内で水系媒質(水)を供給することができるが、より具体的には水系媒質内に電解質が溶解した電解質水溶液(酸性またはアルカリ性であり得る)を供給することができる。ここで、アルカリ性媒質(または電解質)は水酸化カリウム、炭酸水素カリウム、重炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム、水酸化ナトリウム、水酸化リチウムなどから少なくとも1種を選択することができる。例示的に、アルカリ性媒質の濃度は、例えば約0.05~3M、具体的には約0.08~2M、より具体的には約0.1~1.5Mの範囲にすることができる。また、アルカリ性媒質(具体的には、電解質含有水溶液)のpHは塩基性領域で調節することができる。例えば、約9~14、具体的には約11~14、より具体的には約12~13の範囲に調節することができる。
【0094】
一方、例示的具体例によれば、酸性媒質(または電解質)は、硫酸、硝酸、リン酸、過塩素酸、塩酸などから少なくとも1種を選択することができる。例示的に、酸性媒質の濃度は、例えば約1~5M、具体的には約1~4M、より具体的には約1~2Mの範囲で決定することができる。また、酸性媒質のpHは、例えば約4以下、具体的には約1~3、より具体的には約1~2の範囲に調節することができる。
【0095】
例示的具体例によれば、水分解システムは、アルカリ性または酸性電解質含有水溶液基盤の水分解槽を用いて水素及び/または酸素生成反応を遂行することができる。
【0096】
選択的に、高分子電解質メンブレインなどをセパレーターとして使って水分解システムを構成することもできる。このようなセパレーターは典型的にカソードとアノードとの間に位置し、アノードで生成された酸素がカソードで生成された水素と混合して再び水を形成しないように一種の隔壁を形成する機能を担当することができる。これに関連して、セパレーターの材質は、多孔性セラミックメンブレイン(例えば、ジルコニア系メンブレイン)、多孔性高分子メンブレイン(例えば、ポリオレフィン系、より具体的にはポリプロピレン系メンブレイン)、固体高分子電解質メンブレイン(商品名、Nafionのような過弗化スルホン酸高分子材質のイオン交換性メンブレイン)などから選択することができる。
【0097】
一般的に、水分解反応のための熱力学的分解電圧は、25℃及び大気圧の条件で1.23Vであるが、実際の水分解システムでは多様な抵抗要因が存在して反応速度が減少するので、水分解がほとんど起こらない。よって、典型的には過電圧を印加するときに初めて水分解反応が起こる。すなわち、アノードで発生する酸化電流とカソードの還元電流の絶対値が同一になる場合、すなわちアノード及びカソードで流れる電子の量が同一であるときに回路を形成することができるので、水分解反応が起こることができる。このような相反した一対の電極で同じ強度の電流が流れるための電位はそれぞれの電極で異なる値を有し、このときの電圧がそれぞれの電極での過電圧に相当する。
【0098】
本具体例による複合体触媒を用いた電気化学的電極を含む水分解システムの場合、低い過電圧で水分解反応を遂行することができる。例えば、水分解反応によってアノードから酸素(または酸素ガス)が生成される場合、低い過電圧で作動可能である。また、水分解反応は、例えば約15~40℃、具体的には約20~30℃、より具体的には常温で遂行することができる。
【0099】
本具体例によって、Pブロック元素でドーピングされた多孔性の非晶質コバルト酸化物界触媒がローディングされた電気化学的電極をアノードとして使う場合、OER性能は、10mA/cmの基準電流密度、走査速度10mVs-1及び0.1MのKOH溶液(pH13)の条件で、例えば約0.4V以下、具体的には約0.38V以下、より具体的には約0.36V以下、特に具体的には約0.34V以下であり得る。また、ターフェル(Tafel)勾配は、例えば約100mV/dec以下、具体的には約80mV/dec以下、より具体的には約70mV/dec以下であり得る。
【0100】
一方、本具体例による電気化学的電極を水分解反応に適用する場合、アノード及びカソードのそれぞれから酸素及び水素を回収することができる。特に、アノードから発生する酸素の純度は、例えば少なくとも約98%(具体的には少なくとも約99%、より具体的には少なくとも約99.9%)であり、実質的に100%であり得る。その他にも、カソードから発生する水素の純度は、例えば少なくとも約98%(具体的には少なくとも約99%、より具体的には少なくとも約99.9%)であり得る。
【0101】
以下、本発明の理解を手伝うために好適な実施例を提示するが、下記の実施例は本発明をより容易に理解するために提供するものであるだけで、本発明がこれに限定されるものではない。
【0102】
実施例
本実施例で使用した物質、触媒の分析及び電気化学的性能テストについての詳細事項は下記のようである。
【0103】
A.物質
硝酸コバルト(II)六水和物(Cobalt(II) nitrate hexahydrate(Co(NO6HO、98.5%)、硝酸鉛水和物(Pb(NOxHO、99.9%)、トリエチレングリコール、グリセロール及び水酸化カリウム(KOH、1.0M)のそれぞれはSigma-Aldrich社から購入した。
【0104】
すべての物質は追加的な精製過程なしに購入した状態で使った。また、実施例で使用した水としては脱イオン水を使った。
【0105】
B.触媒分析
X線回折分析法(X-ray diffraction;XRD;PANalytical)を用いて金属結晶面を確認した。ここで、CuKα線を用いて40kV及び100mAで測定し、0.01°の間隔で分当たりの6°のスキャン速度で10~80°の範囲で測定した。
【0106】
X線光電子分光法(X-ray photoelectron spectroscopy、XPS;ESCALAB 250Xi)を用いて遷移金属の酸化数の変化を分析した。XPSのすべての結果は炭素の1s結合エネルギーである284.6eVを基準に補正した。
【0107】
走査電子顕微鏡(Scanning Electron Microscope;SEM;SU8230)を用いて触媒の表面構造を分析し、元素マッピング(elemental mapping)は走査電子顕微鏡に付着されたEDS検出器(EDS detector)を用いた。
【0108】
C.電気化学的性能(OER)評価実験
鉛ドーピングされたCoO多孔性シート(Pb-CoOx-PS)触媒、CoO多孔性シート(CoOx-PS)触媒、非多孔性CoO(CoOx)触媒、及び商用触媒IrOのそれぞれを回転ディスク電極(RDE:Rotating Disk Electrode)であるガラスカーボン電極(glassy carbon electrode)上にマイクロピペットを用いて蒸着させた後、作業電極(working electrode)をセットした(ローディング量:0.1mg/cm)。
【0109】
0.1MのKOH溶液(pH13)及び常温と走査速度(scan rate)10mV/sの条件で酸素発生反応(OER)の分極を測定した。一方、基準電極(reference electrode)及び相対電極(counter electrode)としてHg/HgO(sat. 1MNaOH)及びPtワイヤをそれぞれ使った。
【0110】
また、電気化学的テスト中に測定された電位は下記の数学式1によってHg/HgOから可逆的水素電極(reversible hydrogen electrode;RHE)に変換し、すべての測定値は「vs RHE(reversible hydrogen electrode)」で表示した。
【0111】
[数学式1]
E(RHE)=E(Hg/HgO)+0.8676
【0112】
その他にも、水分解効率を測定するために、LSV(Linear Sweep Voltammetry)を測定し、これに基づいてターフェル(Tafel)勾配を算出した。
【0113】
実施例1
鉛ドーピングされたCoO多孔性シート(Pb-CoOx-PS)触媒の製造
トリエチレングリコール48mL及びグリセロール2mLの混合溶媒に硝酸コバルト6水和物5mmolを添加し、コバルト前駆体が完全に溶解するまで超音波処理及び撹拌した。その後、水熱合成法で170℃で3時間反応させた後、アセトン及び蒸留水でサンプルを洗浄し、次いで400℃及び空気雰囲気で熱処理を遂行することでコバルト酸化物を製造した。
【0114】
製造されたコバルト酸化物に0.05mmol/mLのPb前駆体溶液をピペットで滴加した後、80℃で乾燥させ、その後、400℃及び窒素雰囲気で熱処理を行うことでPb-CoOx-PS触媒を収得した。ここで、触媒内のPbドーピング量は1.0原子%であった。
【0115】
比較例1
CoO多孔性シート(CoOx-PS)触媒の製造
触媒製造過程で鉛(Pb)溶液を添加しなかったことを除き、実施例1と同様な手順でドーピングされなかったCoOx-PS触媒を製造した。
【0116】
比較例2
非多孔性CoO(CoOx)触媒の製造
トリエチレングリコール及びグリセロールの組合せの代わりにエチレングリコール(Sigma-Aldrich)50mLを使い、200℃で3時間反応を遂行したことを除き、実施例1と同様な方法でコバルト前駆体のソルボサーマル合成及び熱処理を遂行することでCoOx触媒を製造した。
【0117】
比較例3
商用酸化極触媒であるIrOブラック(重量100%、Alfa Aesar)を使った。
【0118】
結果及び討議
A.特性化
SEM分析
鉛ドーピングされたCoO多孔性シート触媒(Pb-CoOx-PS)及び非多孔性CoO(CoOx)触媒のSEM及びEDX(Energy Dispersive X-ray Spectroscopy)マッピング分析結果を図2a及び図2bにそれぞれ示した。
【0119】
前記図を参照すると、Pb-CoOx-PS触媒の場合、50nmの平均サイズを有するコバルト酸化物粒子が多孔性シート構造を形成していることを確認した。一方、ソルボサーマル合成反応の際、エチレングリコールウを使って製造したCoOx触媒の場合、構造的特異事項がない非多孔性構造を有していた。
【0120】
XRD分析
鉛ドーピングされたCoO多孔性シート(Pb-CoOx-PS)触媒、CoO多孔性シート(CoOx-PS)触媒及び非多孔性CoO(CoOx)触媒のそれぞれのXRDパターンを図3に示した。
【0121】
前記図を参照すると、分析された3個のサンプルのいずれでも結晶ピークが観察されなかった。これは非晶質性状を有していることを指示する。
【0122】
比表面積(BET)分析
鉛ドーピングされたCoO多孔性シート(Pb-CoOx-PS)触媒、CoO多孔性シート(CoOx-PS)触媒及び非多孔性CoO(CoOx)触媒のそれぞれの比表面積(BET)分析のための吸着実験結果を下記の表1及び図4に示した。
【0123】
【表1】
【0124】
前記表及び図を参照すると、多孔性シート構造を有するCoOx-PS触媒及びPb-CoOx-PS触媒の場合、非多孔性のCoOx触媒に比べてBET比表面積がおよそ2倍増加することを確認した。
【0125】
XPS分析
鉛ドーピングされたCoO多孔性シート(Pb-CoOx-PS)触媒、CoO多孔性シート(CoOx-PS)触媒及び非多孔性CoO(CoOx)触媒のそれぞれのXPS分析結果を図5に示した。
【0126】
前記図を参照すると、XPS分析結果、CoO構造が支配的なCoOxが合成され、Pb-CoOx-PSの場合には成功的にPb原子がドーピングされたことを確認した。特に、Pブロック元素であるPbがドーピングされた場合、Co 2pの主ピークでピークシフトが観察された。これは電子構造が変化したことを指示する。
【0127】
B.電気化学的性能分析
商用イリジウム酸化物(IrO)触媒、鉛ドーピングされたCoOx多孔性シート(Pb-CoOx-PS)触媒、CoOx多孔性シート(CoOx-PS)触媒及び非多孔性CoO(CoOx)触媒のそれぞれに対する過電圧測定結果及び電流密度対電圧曲線を下記の表2及び図6に示した。
【0128】
【表2】
:iR-corrected data
【0129】
前記表及び図によれば、酸素発生反応性能はIrO≧Pb-CoOx-PS>CoOx-PS>CoOxの順に評価された。具体的には、Pb-CoOx-PS触媒は10mA/cmに相当する電流密度値を得るのに0.34Vの過電圧が要求されたところ、これはCoOx-PS触媒及びCoOx触媒よりそれぞれ約40mV及び約120mVだけ小さな値に相当する。特に、少量の触媒をローディングしたにもかかわらず、Pb-CoOx-PS触媒の性能は貴金属であるIrOと同等の水準以上であることが分かる。
【0130】
商用イリジウム酸化物(IrO)触媒、鉛ドーピングされたCoO多孔性シート(Pb-CoOx-PS)触媒、CoO多孔性シート(CoOx-PS)触媒及び非多孔性CoOx(CoOx)触媒のそれぞれに対する印加電圧対ログ電流密度曲線からターフェルプロット(Tafel plot)の勾配を測定することでOER速度(kinetics)を評価することができる。その結果を図7に示した。
【0131】
前記図を参照すると、Pb-CoOx-PS触媒の勾配(69.5mV/dec)はIrO(70.0mV/dec)と類似しており、CoOx-PS(85.5mV/dec)及びCoOx(108.4mV/dec)に比べて低い値を示した。上述した結果からPb-CoOx-PS触媒がより効率的な触媒反応経路を介して酸素発生反応を促進させるという点を確認した。
【0132】
上述した結果は大きな比表面積を有する多孔性の非晶質シート構造によって活性点が極大化しただけでなく、反応物/生成物が効果的に伝達されたことによるものであると判断される。さらに、Pb-CoOx-PS触媒の場合、鉛(Pb)をドーピングして電子構造を調節することで、電気化学的活性、すなわち酸素発生反応性能が改善したことを確認することができる。
【0133】
本発明の単純な変形乃至変更は当該分野の通常の知識を有する者が容易に用いることができ、このような変形や変更はいずれも本発明の領域に含まれるものと見なすことができる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
【外国語明細書】