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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023165671
(43)【公開日】2023-11-16
(54)【発明の名称】皮膚しわ改善用の組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/67 20060101AFI20231109BHJP
   A61K 8/35 20060101ALI20231109BHJP
   A61Q 19/08 20060101ALI20231109BHJP
【FI】
A61K8/67
A61K8/35
A61Q19/08
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023076308
(22)【出願日】2023-05-02
(31)【優先権主張番号】10-2022-0055612
(32)【優先日】2022-05-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(71)【出願人】
【識別番号】514112488
【氏名又は名称】エルジー ハウスホールド アンド ヘルスケア リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(74)【代理人】
【識別番号】100122161
【弁理士】
【氏名又は名称】渡部 崇
(72)【発明者】
【氏名】ヘ-ジン・イ
(72)【発明者】
【氏名】ミ-ナ・キム
(72)【発明者】
【氏名】スン-ヒョン・ジュン
【テーマコード(参考)】
4C083
【Fターム(参考)】
4C083AD531
4C083AD532
4C083AD621
4C083AD622
4C083CC01
4C083CC02
4C083DD17
4C083DD22
4C083DD23
4C083DD31
4C083DD41
4C083EE11
(57)【要約】
【課題】組成物を皮膚に適用したとき、細胞核中でレチノールが転換されたレチノイン酸と結合して下位遺伝子の発現を促進するレチノイン酸受容体(RAR)の活性を高めることができるレチノール効能ブースターを共に処方することで、レチノールの皮膚しわ改善効果を増進させる組成物を提供する。
【解決手段】本発明の皮膚しわ改善用の組成物は、レチノール効能のブースターとしてカンファーを有効成分にして組み合わせて含むことで皮膚しわ改善に著しいシナジー効果を奏する。また、本発明の皮膚しわ改善用組成物は、カンファーを組み合わせることでレチノールを低濃度で使用可能になり、レチノイド反応によって起こる炎症性サイトカイン来由の皮膚刺激及び炎症を減少させることができる。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
レチノール及びカンファーを有効成分で含む皮膚しわ改善用の化粧料組成物。
【請求項2】
前記レチノールが、組成物の総重量に対して0.01~1重量%である、請求項1に記載の皮膚しわ改善用の化粧料組成物。
【請求項3】
前記カンファーが、組成物の総重量に対して0.001~1重量%である、請求項1に記載の皮膚しわ改善用の化粧料組成物。
【請求項4】
前記レチノールとカンファーの重量比が、1:1~20:1(レチノール:カンファー)である、請求項1に記載の皮膚しわ改善用の化粧料組成物。
【請求項5】
前記カンファーが、レチノイン酸受容体の活性を増加させる、請求項1に記載の皮膚しわ改善用の化粧料組成物。
【請求項6】
前記カンファーが、レチノイン酸受容体遺伝子の発現を増加させる、請求項1に記載の皮膚しわ改善用の化粧料組成物。
【請求項7】
レチノール及びカンファーを有効成分で含む、皮膚しわ改善用の医薬部外品組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、皮膚しわ改善用の組成物に関する。
本出願は、2022年5月4日出願の韓国特許出願第10-2022-0055612号に基づく優先権を主張し、当該出願の明細書及び図面に開示された内容は、すべて本出願に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
高齢人口の増加及び期待寿命の上昇につれ、皮膚しわ改善を含む皮膚老化防止に対する関心が高まりつつある。皮膚は、人体体積の約16%を占める器官であって、身体の最も外部に存在して外部環境及び刺激からからだを保護する。このような皮膚は、身体内器官に比べて外部刺激に常に露出しているので、攻撃を受けやすく、特に、顔の皮膚の場合には、紫外線及び公害物質に直接的に露出してりつため、他の部分の皮膚に比べて老化が発生しやすい。
【0003】
皮膚老化は、自然に発生する内因性老化と外部要人による外因性老化に分けられる。内人性老化の主な要因として遺伝的な要因が挙げられ、これは、皮膚細胞及び組職の構造と変化を決定する。一方、外人性老化の要因は外部に来由し、栄養不足、紫外線、環境汚染による影響などが挙げられ、これは遺伝的な要因と異なり、いくらでも予防可能であり、回避可能な要因である。
【0004】
このような要因によって皮膚老化が進むにつれ、皮膚が乾燥して荒くなり、しわ生成、弾力低下、色素沈着などの症状が起こるようになる。特に、代表的な皮膚老化の症状で挙げられるしわ及び弾力低下の場合、真皮内の主要タンパク質であるコラーゲン及びエラスチンの減少及び変形が直接的に関与すると知られている。即ち、皮膚しわの始めは真皮の老化から進み、弾力繊維であるエラスチンの構造が変化して皮膚が弛んでしわができるようになり、真皮のコラーゲンを含めた結合組織成分を分解するMMP(matrix metalloproteinase;マトリクス・メタロプロテイナーゼ)活性増加によってコラーゲン合成が阻害され、しわが増加するという研究が報告されている。
【0005】
レチノールは、しわ改善効能が立証された成分であって、皮膚内で活性型であるレチノイン酸に比べて刺激が少なくて化粧料組成物などに比較的安全に使用される。レチノールの外にもレチノイド系の多様な物質は、互いに類似な効能を有する。レチノールは、レチナール、レチノイン酸への代謝過程を経て最終的にレチノイン酸の形態で核中へ入り、レチノイド受容体に結合して下位遺伝子の発現を調節する。しかし、レチノールは、皮膚に適用されると、約70%がレチニルパルミテートの形態で貯蔵され、レチナール及びレチノイン酸への転換が容易でないため、レチノイン酸に比べて効能が劣る。
【0006】
そこで、レチノールと混合して効果を極大化できる成分及び技術に対する研究が進んでおり、韓国登録特許第10-0865421号公報には、「レチノイド及びレチノイドブースターシステムを含む安定した皮膚管理組成物」が開示されている。レチノイドの代謝過程でレチノールをレチナールへ転換する酵素であるアルコールデヒドロゲナーゼ(ADH)、レチノールデヒドロゲナーゼ(RDH)及びレチナールをレチノイン酸へ転換する酵素であるレチナールアルデヒドデヒドロゲナーゼ(RALDH)を調節して最終産物であるレチノイン酸の割合を高めて効能を高めることができる。
【0007】
一方、カンファー(camphor)は、クスノキを水蒸気で蒸溜して抽出した乳液を固めて作った成分である。これは、特有の芳香性があり、かびまたは細菌に対する殺菌作用、鎮痛、防腐効果を奏し、腫物、皮膚潰瘍、かゆみなどの皮膚疾患に対する外用剤で使用されてきた。また、カンファーは、消炎鎮痛効果を示すことから、湿布剤、液状湿布剤などにも含有されており、化粧用エッセンシャルオイルにも広く使用されている天然物である。カンファーのUVBによるしわ生成抑制効能は報告されているが(Phytother Res.2015 Dec:29(12):1917-25.)、レチノールと共に使用する場合においてレチノールの代謝転換を助けるかについては全然知られていない。
【0008】
皮膚しわ改善用の組成物と係わる技術分野において、組成物を皮膚に適用したとき、レチノールが転換されたレチノイン酸の皮膚改善効果を増進させ得る新しい有効成分の開発が必要な実情である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】韓国登録特許第10-0865421号公報(2008.10.24.公告)
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】Thao Anh Tran,Manh Tin Ho,Yeon Woo Song,Moonjae Cho,Somi Kim Cho,Phytother Res.2015 Dec:29(12):1917-25.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、組成物を皮膚に適用したとき、細胞核中でレチノールが転換されたレチノイン酸と結合して下位遺伝子の発現を促進するレチノイン酸受容体(RAR)の活性を高めることができるレチノール効能ブースターを共に処方することで、レチノールの皮膚しわ改善効果を増進させる組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記の課題を達成するために、本発明は、レチノール及びカンファー(camphor)を有効成分として含む皮膚しわ改善用の化粧料組成物を提供する。本発明者は、レチノールのしわ改善効果を増進させ得る新規のレチノール効能ブースターを発掘するために鋭意研究した結果、カンファーがレチノイン酸受容体(RAR)の活性を増進させることを見出した。
【0013】
具体的には、レチノールは、細胞核中でレチノイン酸へ転換され、レチノイン酸がその受容体に結合することでしわ改善と係わる効能を発生させる。前記カンファーは、レチノイン酸受容体遺伝子であるRARA、RARB、RARRの発現を促進してレチノイン酸受容体の活性を高めることができる。このように、カンファーがレチノイン酸受容体の活性を高めることでその下位遺伝子をより活性化(turn on)させることができ、これによってレチノールのしわ改善効能を大幅に増加させることができる。これによって、本発明者は、レチノールとカンファーを組み合わせて目元のしわ、目の下のしわまたはほうれい線のしわなどに処理したとき、レチノールを単独で処理した場合よりも皮膚しわ改善に著しいシナジー効果が発生することを確認し、本発明を完成するに至った。
【0014】
本発明の一面で、前記レチノールは、組成物の総重量に対して0.01~1 重量%、望ましくは0.03~0.8重量%、より望ましくは0.05~0.5重量%、最も望ましくは0.075~0.3重量%で含まれ得る。前記レチノールは、皮膚に塗布したとき、皮膚刺激を起こす可能性があるので、その適用量に限界がある。しかし、本発明においては、レチノールと共にカンファーを組み合わせることによってレチノールを過量で含まないことで、皮膚を刺激することなく皮膚しわ改善効果を顕著に増加させることができる。前記レチノールが組成物の総重量に対して1重量%を超過して含まれる場合は、皮膚刺激を起こす恐れがあり、0.01重量%未満である場合は、皮膚しわ改善効果が充分に発揮されないことがある。
【0015】
本発明の一面で、前記カンファーは、組成物の総重量に対して0.001~1重量%、望ましくは0.005~0.1重量%、より望ましくは0.01~0.05重量%で含まれ得る。前記カンファーが組成物の総重量に対して0.001重量%未満で含まれる場合、レチノール効能のブースター効果が充分に発揮されないことがあり、1重量%超過で含まれる場合、皮膚刺激を起こす恐れがある。
【0016】
本発明の一面で、前記レチノールとカンファーは1:1~20:1、望ましくは1.5:1~15:1、より望ましくは2:1~10:1の重量比(レチノール:カンファー)で組成物に含まれ得る。本発明の皮膚しわ改善用の化粧料組成物は、レチノール及びカンファーを前記重量比で含むことで、低含量のレチノールを含んでもカンファーとのシナジー効果によって皮膚しわ改善効果を大幅に上昇させることができ、皮膚刺激が減少する。
【0017】
本発明の一面で、前記レチノールは、レチノールの異性体を含み得る。例えば、全ての-トランス-レチノール、13-シス-レチノール、11-シス-レチノール、9-シス-レチノール、3,4-ジデヒドロ-レチノール、3,4-ジデヒドロ-13-シス-レチノール、3,4-ジデヒドロ-11-シス-レチノール、または3,4-ジデヒドロ-9-シス-レチノールなどがあるが、これらに制限されない。
【0018】
本発明の一面で、前記皮膚しわ改善用の化粧料組成物は、溶液、外用軟膏、クリーム、フォーム、栄養化粧水、柔軟化粧水、パック、柔軟水、乳液、メークアップベース、エッセンス、せっけん、液体洗浄剤、入浴剤、日焼け止めクリーム、サンオイル、懸濁液、乳濁液、ペースト、ゲル、ローション、パウダー、界面活性剤含有クレジング、オイル、パウダーファンデーション、乳濁液ファンデーション、ワックスファンデーション、パッチ及びスプレーなどを含む群より選択される剤形に製造され得るが、これらに制限されない。
【0019】
本発明の一面で、前記皮膚しわ改善用の化粧料組成物は、油分、水、界面活性剤、保湿剤、アルコール、増粘剤、キレート剤、色素、防腐剤及び香料からなる群より選択される一種以上の物質をさらに含み得るが、これらに制限されない。 なお、本発明の化粧料組成物には、化粧品学的に許容可能な担体が含まれ得る。
【0020】
本発明の一面で、前記皮膚しわ改善用の化粧料組成物の剤形が軟膏、ペースト、クリームまたはゲルである場合には、担体成分として、動物性オイル、植物性オイル、ワックス、パラフィン、でん粉、トラカント、セルロース誘導体、ポリエチレングリコール、シリコーン、ベントナイト、シリカ、タルク、酸化亜鉛またはこれらの混合物などが使用され得る。
【0021】
本発明の一面で、前記皮膚しわ改善用の化粧料組成物の剤形がパウダーまたはスプレーである場合には、担体成分として、ラクトース、タルク、シリカ、アルミニウムヒドロキシド、カルシウムシリケート、ポリアミドパウダーまたはこれらの混合物などが使用され得る。特に、スプレーの場合には、クロロフルオロハイドロカーボン、プロパン/ブタンまたはジメチルエーテルなどのような推進剤をさらに含み得る。
【0022】
本発明の一面で、前記皮膚しわ改善用の化粧料組成物の剤形が溶液または乳濁液である場合には、担体成分として、溶媒、溶解化剤または乳濁化剤が使用され、例えば、水、エタノール、イソプロパノール、エチルカーボネート、エチルアセテート、ベンジルアルコール、ベンジルベンゾエート、プロピレングリコール、または1,3-ブチルグリコールオイルなどが使用され得る。また、前記担体成分として、綿実油、落花生油、トウモロコシ胚芽油、オリーブオイル、ヒマシ油及び胡麻オイル、グリセロール脂肪族エステル、ポリエチレングリコールまたはソルビタンの脂肪酸エステルなどが使用され得る。
【0023】
本発明の一面で、前記皮膚しわ改善用の化粧料組成物の剤形が懸濁液である場合には、担体成分として、水、エタノールまたはプロピレングリコールのような液相の希釈剤、エトキシル化イソステアリルアルコール、ポリオキシエチレンソルビトールエステル及びポリオキシエチレンソルビタンエステルのような懸濁剤、微小結晶性セルロース、アルミニウムメタヒドロキシド、ベントナイト、アガーまたはトラカントなどが使用され得る。
【0024】
本発明の一面で、前記皮膚しわ改善用の化粧料組成物の剤形がカプセルである場合には、アルジネート(alginate)カプセル、アガー(agar)カプセル、ゼラチン(gelatin)カプセル、ワックス(wax)類カプセル、または二重カプセルなどの形態に剤形化され得るが、これらに制限されない。
【0025】
本発明の一面で、前記皮膚しわ改善用の化粧料組成物は、レチノール及びカンファーの他に通常使用される補助剤、例えば、親水性または親油性ゲル化剤、親水性または親油性活性剤、保存剤、抗酸化剤、溶媒、芳香剤、充填剤、遮断剤、顔料、吸臭剤または染料などを含み得る。
【0026】
また、本発明は、レチノール及びカンファーを有効成分として含む皮膚しわ改善用の医薬部外品組成物を提供する。前記医薬部外品組成物には、前記成分の他に必要に応じて薬学的に許容可能な担体、賦形剤または希釈剤をさらに含み得る。前記薬学的に許容可能な担体、賦形剤または希釈剤は、本発明の効果を害しない限り、制限されない。例えば、充填剤、増量剤、結合剤、湿潤剤、崩壊剤、界面活性剤、滑剤、甘味剤、芳香剤、保存剤などを含み得る。前記医薬部外品組成物は、消毒清潔剤、シャワーウフォーム、軟膏液、ウェットティッシュ、コーティング剤などが挙げられるが、これらに制限されず、医薬部外品の製剤化方法、容量、利用方法、構成成分などは、技術分野における公知の通常の技術から適切に選択可能である。
【0027】
また、本発明は、レチノール及びカンファーを有効成分として含む皮膚しわ改善用の組成物を個体に投与する段階を含む皮膚しわ改善方法を提供する。前記「投与」とは、如何なる適切な方法で患者に本発明の組成物を導入することを意味し、前記組成物の投与経路は、目的組織に到達できる限り、如何なる通常の経路によっても投与され得る。本発明の組成物が皮膚しわ改善に効果を奏する特性上、前記組成物の投与経路は皮膚塗布による投与であり得る。
【0028】
本発明の一面で、前記皮膚しわ改善用組成物は、毎日投与または間歇的に投与可能であり、一日の投与回数は1回または2~3回に分けて投与され得る。また、本発明の組成物は、皮膚しわ改善のために単独で、または他の薬物治療と併用して使用可能である。前記要素を全て考慮して副作用なく最小限の量で最大の効果が得られる量を投与することが重要であり、投与量は、当業者によって容易に決定され得る。前記「個体」は、しわまたは皮膚しわが発生したか、または発生し得るヒトを含むねずみ、マウス、家畜などの全ての動物を意味し、具体的にはヒトを含む哺乳動物であり得る。
【0029】
本発明に記載された全ての成分は、望ましくは、韓国、中国、アメリカ、ヨーロッパ、日本などの関連法規または規範(例えば、化粧品安全基準などに関する規定(韓国)、化粧品安全技術規範(中国))などで規定した最大使用値を超過しない。即ち、望ましくは、本発明による化粧料組成物、または医薬部外品用の組成物は、各国の関連法規または規範で許容する含量の限度で本発明による成分を含む。
【発明の効果】
【0030】
本発明の皮膚しわ改善用の組成物は、レチノール効能ブースターとしてカンファーを有効成分にして組み合わせて含むことで皮膚しわ改善に顕著なシナジー効果を示す。
また、本発明の皮膚しわ改善用の組成物は、カンファーを組み合わせることでレチノールを低濃度で使用可能になり、レチノイド反応によって起こる炎症性サイトカイン来由の皮膚刺激及び炎症を減少させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1】実験例1において、カンファーの濃度(ppm)による細胞生存率の評価結果を示したグラフである。
図2】実験例6において、人工皮膚にレチノール及び/またはカンファーを処理したときのコラーゲン合成効果を実験した結果である。
図3】実験例7において、レチノール、またはレチノールとカンファーの組合せによる使用時におけるしわ改善のブースト効果を比較実験した結果を示すグラフである。
図4】実験例7において、レチノール、またはレチノールとカンファーの組合せによる使用時、目元のしわ改善ブースト結果を示したイメージである。
図5】実験例7において、レチノール、またはレチノールとカンファーの組合せによる使用時、目の下のしわ改善ブースト結果を示したイメージである。
図6】実験例7において、レチノール、またはレチノールとカンファーの組合せによる使用時、ほうれい線のしわ改善ブースト結果を示したイメージである。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、本発明を具体的な実施例を挙げて説明する。しかし、本発明による実施例は他の多様な形態に変更可能であり、本発明の範囲が後述する実施例に限定されると解釈されてはならない。本発明の実施例は本発明が属する分野において平均的な知識を有する者に本発明をより完全に説明するために提供されるものである。
【0033】
実験例1:細胞生存率(cell viability)評価
(1)細胞培養
ヒト皮膚線維芽細胞(primary dermal fibroblast,normal,human,neonatal,ATCC No.PCS-201-010)は、ATCCから購買して使用した。購入した細胞は、DMEM(Dulbecco Modified Eagle Medium-Thermo Fisher Scientific)に10%FBS(Fetal Bovine Serum;ウシ胎仔血清)及び1%抗生剤(Penicillin streptomycin;ペニシリンストレプトマイシン)を混合して作った培地を用いて37℃、5%のCOインキュベーターで培養した。
【0034】
(2)細胞生存率の測定
細胞生存率を測定するために、前記ヒト皮膚線維芽細胞を96ウェルプレートに10cells/wellずつ分注して一晩中COインキュベーターで培養した。カンファーを濃度別に培養液に添加した後、24時間の培養した。細胞生存率の測定は、Cell Counting Kit-8(CCK-8,Dojindo,Japan)を用いてプロトコールによって行った。CCK-8溶液を各ウェルに添加した後、1時間30分間培養した後、450nmで光学密度を測定して比較した。
【0035】
図1に示した細胞生存率の測定結果から、カンファーは1,000ppmまで処理しても細胞毒性がないことを確認した。本発明の実験例では、カンファーをレチノールと共に処方するために、細胞生存率に変化がない水準(変化10%以内)でカンファーを100ppm以下に処理して実験した。
【0036】
実験例2:レチノールの代謝と係わる遺伝子発現測定
細胞核中のレチノイン酸受容体遺伝子であるRARA、RARB、RARRの遺伝子発現量を測定するために、皮膚線維芽細胞を6ウェルプレートに5×10cells/wellずつ分注して一晩中COインキュベーターで培養した。カンファーを濃度別に培養液に添加した後、24時間培養した。RNA-spin Total RNA Extraction Kit(イントロンバイオテクノロジー,Korea)を用いてプロトコールによってRNAを抽出し、Taqmanプローブを用いてReal-time qPCRを行って遺伝子発現量を比較分析した後、下記の表1に測定結果を示した。
【0037】
【表1】
【0038】
前記表1の測定結果から、カンファーを10ppmで処理する場合、RARBの発現を大幅に増加させ、50ppm以上に処理する場合、RARA、RARB、RARRの発現をいずれも著しく増加させることを確認した。
【0039】
実験例3:レチノールとカンファーを組み合わせた場合のレチノイン酸受容体の活性測定
レチノールから転換されたレチノイン酸が細胞核中に入ってレチノイン酸受容体(RAR)と結合して起こすRAR活性程度を測定するために、RARγ Reporter(Luc)-HEK293 cell line(BPS bioscience,USA)を購買して実験を行った。細胞を96ウェルプレートに10cells/wellずつ分注して一晩中COインキュベーターで培養した。カンファーを濃度別に培養液に添加した後、24時間培養した。培養終了後、Steady-Glo(R) Luciferase Assay System(Promega,USA)を用いてルシフェラーゼ分析を用いてレチノイン酸受容体の活性程度の差を比較した。
【0040】
【表2】
【0041】
前記表2に示した結果から、レチノールとカンファーを組み合わせて処理した場合、各々を単独で処理した場合に比べてレチノイン酸受容体の活性が著しく増加してシナジー効果を奏することを確認した。特に、レチノール3ppm処理群(RARγ活性増加率91%)に比べて著しく少ない量で0.3ppmのレチノールのみを使用したも、それをカンファー10ppmと共に組み合わせる場合、RARγ活性増加率が118%に大幅に増加することから、レチノールとカンファーの組合せによるシナジー効果を奏することを確認した。また、RARγ活性阻害剤を共に処理するとき、RARγ活性増加が抑制されることを確認することができ、このことからレチノールとカンファーの組合せがRAR活性を増進させてしわ改善効能を向上させることが分かる。
【0042】
実験例4:レチノールとカンファーのコラーゲン合成測定
皮膚細胞のコラーゲン合成能力を評価するために、コラーゲン遺伝子COL1A1の発現量を測定した。先ず、細胞を6ウェルプレートに5×10cells/wellずつ分注して一晩中COインキュベーターで培養した。レチノールとカンファーを下記表3に示した処理量で添加した後、24時間培養した。レチノールは3ppm(約10μM)を超過する場合には、細胞毒性によって実験が不可能であるので、最高処理濃度を3ppmに設定した。RNA-spin Total RNA Extraction Kit(イントロンバイオテクノロジー,Korea)を用いてプロトコールによってRNAを抽出し、Taqmanプローブを用いてReal-time qPCRを行って遺伝子発現量を比較分析した後、下記の表3に測定結果を示した。
【0043】
【表3】
【0044】
前記表3の実験結果から、レチノールとカンファーを組み合わせて処理した場合、Type1コラーゲン遺伝子の発現量がシンナー増進されることを確認した。望ましくは、レチノールとカンファーが2:1、5:1または10:1の重量比(レチノール:カンファー)であるとき、著しいシナジー効果を奏することを確認した。
【0045】
実験例5:カンファーによるレチノールの皮膚刺激減少効果
レチノイド性接触性皮膚炎は、レチノイン酸の適用時に誘発されるIL-1 またはIL-8のようなサイトカイン分泌に起因する炎症反応が原因として提示された(J Invest Dermatol.2004 Dec;123(6):1078-85.)。これによって、レチノールの適用時に分泌される皮膚刺激指標であるIL-8を分析するためにヒト皮膚線維芽細胞を24ウェルプレートに2×10cells/wellずつ分注し、一晩中COインキュベーターで培養した。レチノールとカンファーを下記表4に示した量で添加した後、24時間培養した。培養液を得えた後、培養液に分泌されたIL-8の量をHuman IL-8/CXCL8 DuoSet ELISA(DY208,R&D Systems,USA)を用いて測定した。
【0046】
【表4】
【0047】
前記表4に示した結果から、レチノールを単独で0.3~3ppm処理した場合、濃度増加によってIL-8が増加して皮膚刺激が増加することが分かり、これによってレチノールを高容量で使用することに限界があることが分かる。しかし、レチノールと共にカンファーを組み合わせて使用する場合、1L-8の誘導量が減少してレチノールによる皮膚刺激を減少させることができることを確認した。望ましくは、レチノールとカンファーが2:1、5:1または10:1の重量比(レチノール:カンファー)であるとき、レチノールによる皮膚刺激が著しく減少した。
【0048】
実験例6:レチノールとカンファーのコラーゲン合成効果の測定
インビトロ(in vitro)で人工皮膚を対象にして、レチノールとカンファーを含む組成物を処理したとき、しわ改善効果を確認した。前記レチノールとカンファーの濃度は、実際の剤形に適用可能な濃度範囲水準で使用された。レチノールは、しわ機能性と係わって告示された濃度である0.075重量%以上に含まれることが可能であり、通常的に約0.1重量%含まれることが可能であり、しわ改善能力を極大化するために0.3重量%まで含まれ得る。カンファーは、特有の香臭による消費者の選好度、溶解度、剤形安定性などを考慮して0.1重量%以下に含まれ得る。本実験例では、レチノールは0.1重量%で使用されており、カンファーは0.01重量%で使用された。下記の表5及び図2にコラーゲン合成を測定した結果を示した。
【0049】
【表5】
【0050】
前記表5に示した結果から、レチノールとカンファーを組み合わせて処理すると、各々を単独で処理する場合と比較してコラーゲン合成量が著しく増加し、皮膚しわ改善にシナジー効果を奏することを確認することができる。
【0051】
実験例7:レチノール及びカンファーのしわ改善ブースト効能評価
40~50代女性5人を対象にしてしわ改善効果を評価し、対照群としてレチノール0.1重量%(3300IU)を使用し、実験群としてレチノール0.1重量%(3300IU)とカンファー0.05重量%の組合せを使用した。各被験者は、対照群または実験群を一日に二回(朝、夕方)、顔のしわ部位(目元、目の下、ほうれい線)に6週間塗布した。しわの測定はAntera 3D機器を用いて部位別に測定し、6週後にしわ改善効果を下記表6及び図3に示した。また、各々の目元のしわ改善、目の下のしわ改善、ほうれい線のしわ改善に対し、代表的なしわ改善イメージを図4図6に示した。
【0052】
【表6】
【0053】
前記表6に記載された結果から、レチノールとカンファーを組み合わせて処理した場合、レチノールを単独で処理した場合よりも、目元、目の下及びほうれい線のしわ改善効果が著しく増加し、これによってレチノールとカンファーの組合せによって皮膚しわ改善にシナジー効果が発生することが分かる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
【外国語明細書】