(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023165680
(43)【公開日】2023-11-16
(54)【発明の名称】高効率抗菌性ヒドロキシ酸エステルオリゴマー
(51)【国際特許分類】
A01N 37/36 20060101AFI20231109BHJP
A01P 3/00 20060101ALI20231109BHJP
A61K 8/37 20060101ALI20231109BHJP
A61P 31/04 20060101ALI20231109BHJP
A61P 31/10 20060101ALI20231109BHJP
A61K 31/22 20060101ALI20231109BHJP
A61K 47/14 20170101ALI20231109BHJP
C07C 67/08 20060101ALN20231109BHJP
C07C 69/675 20060101ALN20231109BHJP
C07C 67/03 20060101ALN20231109BHJP
C07C 69/68 20060101ALN20231109BHJP
C07B 61/00 20060101ALN20231109BHJP
A23L 3/3499 20060101ALN20231109BHJP
【FI】
A01N37/36
A01P3/00
A61K8/37
A61P31/04
A61P31/10
A61K31/22
A61K47/14
C07C67/08
C07C69/675
C07C67/03
C07C69/68
C07B61/00 300
A23L3/3499
【審査請求】有
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023136426
(22)【出願日】2023-08-24
(62)【分割の表示】P 2021175005の分割
【原出願日】2021-10-26
(31)【優先権主張番号】202011155869.5
(32)【優先日】2020-10-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(31)【優先権主張番号】202111137059.1
(32)【優先日】2021-09-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(71)【出願人】
【識別番号】521470054
【氏名又は名称】ジョージアン エンマット バイオロジカル テクノロジー シーオー.,エルティーディー.
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【弁理士】
【氏名又は名称】家入 健
(72)【発明者】
【氏名】▲陳▼ 学▲軍▼
(72)【発明者】
【氏名】周 国敏
【テーマコード(参考)】
4B021
4C076
4C083
4C206
4H006
4H011
4H039
【Fターム(参考)】
4B021MC01
4B021MK20
4C076DD45R
4C076FF39
4C083AC371
4C083AC372
4C083CC01
4C083EE01
4C206AA01
4C206AA02
4C206DB03
4C206DB43
4C206MA01
4C206MA04
4C206NA14
4C206ZB35
4H006AA02
4H006AA03
4H006AB03
4H006AC48
4H006BA07
4H006BA10
4H006BA32
4H006BA52
4H011AA03
4H011AA04
4H011BB06
4H039CA66
4H039CL10
(57)【要約】
【課題】本発明は高効率抗菌性ヒドロキシ酸エステルオリゴマーを提供する。
【解決手段】本発明で提案されているヒドロキシ酸エステルオリゴマーの一般構造式は式(I)である。本発明は、分子構造の設計に注目して、式(I)で表される物質の末端基及び鎖長の構造を合理的に設計するとともに、そのclogP値を制御することにより、本発明の式(I)で表される物質のサイズを適切にし、式(I)で表される物質が細菌の内部への浸透能力及び細菌の細胞膜に対する破壊能力の両方を最大限に向上させることで、効率的な抗菌という目的を達成させ、且つ分子構造を正確に設計することで、ヒドロキシ酸エステルオリゴマーの親水性と疎水性を調整し、水溶性制御可能なバイオベースの抗菌剤を得る。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
抗菌性化合物を調整し、前記抗菌性化合物を抗菌の目的で使用する方法であって、
前記抗菌性化合物は、以下の一般構造式(II)又は(III)を有する、方法。
【化1】
【化2】
【請求項2】
抗菌性化合物を調整し、前記抗菌性化合物を抗菌の目的で使用する方法であって、
前記抗菌性化合物は、以下の一般構造式(IV)を有する、方法。
【化3】
(式中、n=2~3である。)
【請求項3】
抗菌性化合物を調整し、前記抗菌性化合物を抗菌の目的で使用する方法であって、
前記抗菌性化合物は、以下の一般構造式(V)を有する、方法。
【化4】
(式中、n=4~8である。)
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生物医学の分野に属し、特に高効率抗菌性ヒドロキシ酸エステルオリゴマーに関する。
【背景技術】
【0002】
抗菌剤(anti-bacterial agents)とは、特定の微生物(細菌、真菌、酵母菌、藻類及びウイルスなど)の成長又は繁殖を特定の期間内に特定レベル以下に維持できる物質を指す。抗菌剤は、織物、プラスチック、洗浄用品、医療用品などの分野で広く使用されている。
【0003】
人々の生活水準の継続的な改善に伴い、織物やさまざまな家庭用プラスチックの衛生要件もますます高まっている。抗菌製品の自然及び環境保護基準の継続的な改善は、中国の衛生保健水準を向上させ、公共環境での交差感染を減らすために重要な実用的な価値を有する。したがって、バイオベースの材料のための自然で安全かつ効率的な抗菌剤を研究することが不可欠である。
【0004】
中国特許CN110452115Aには、抗菌材料の調製に使用されるポリ3-ヒドロキシブチレート系オリゴマーが開示されている。その最小発育阻止濃度(MIC、単位mg/mL)は、以下の表に示すとおりである。
【0005】
上記オリゴマーは、抗菌活性が高くなく、抗菌製品に対する人々の増え続ける性能要件を満たすことができず、且つその水溶性が調整制御できないため、適用範囲が狭くなる。また、合成プロセスで使用される原材料は、高価であり、非生物学的材料であるブチロラクトンであると同時に、有毒な触媒と溶媒を使用するため、後処理プロセスが複雑になる。
【0006】
細菌は、高度に組織化された細胞膜構造を持っているので、外来の入侵分子の結合と浸透を効果的に抵抗できる。したがって、細菌の細胞膜に効果的に浸透して破壊する抗菌剤の合理的な設計は、非常に重要である。発明者は、長期の研究により、ヒドロキシ酸エステルオリゴマーの末端基と鎖長の相乗効果を利用して、細菌細胞膜に対する抗菌剤の浸透と破壊の効率を効果的に向上させ得ることを発見した。それにより効率的な抗菌の目的を達成でき、さらに抗菌剤の制御可能な水溶性を達成できる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、自然で環境に優しい抗菌剤の開発ニーズに基づいて、高効率抗菌性を有する物質であるR-(-)-ヒドロキシ酸エステルオリゴマーを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の抗菌物質であるR-(-)-ヒドロキシ酸エステルオリゴマーは、pH値が中性に近く、その一般構造式は、以下の式(I)に示される。
【化1】
(式中、nは1~8の自然数であり、すなわち重合度DPは1~8であり、R
1はC
1~C
5のアルキル基、好ましくはC
1~C
2のアルキル基であり、R
2はC
2~C
8のアルキル基、好ましくはC
5~C
6のアルキル基であり、mは0~3の自然数であり、好ましくは、mは0又は1である。)
【0009】
好ましくは、高効率抗菌性ヒドロキシ酸エステルオリゴマーのclogP値は、1.5~3.0であり、より好ましくは2.0~2.5である。
【0010】
好ましくは、高効率抗菌性ヒドロキシ酸エステルオリゴマーの一般構造式は、以下の式(II)と(III)に示される。
【化2】
【化3】
【0011】
好ましくは、一般構造式(I)中、n=1~3であり、R1はC1~C5のアルキル基であり、R2はC2~C3のアルキル基であり、m=0~3である場合、R-(-)-ヒドロキシ酸エステルオリゴマーは水溶性物質であり、一般構造式(I)中、n=1~3であり、R1はC1~C5のアルキル基であり、R2はC4~C8のアルキル基であり、m=0~3である場合、R-(-)-ヒドロキシ酸エステルオリゴマーは、非水溶性物質であり、さまざまな有機溶媒(エタノール、n-ブタノール、ジメチルスルホキシド、アセトン、及びエチルエーテルなど)に溶解でき、一般構造式(I)中、n=4~8であり、R1はC1~C5のアルキル基であり、R2はC2~C8のアルキル基であり、m=0~3である場合、R-(-)-ヒドロキシ酸エステルオリゴマーは、非水溶性物質であり、さまざまな有機溶媒(エタノール、n-ブタノール、ジメチルスルホキシド、アセトン、及びエチルエーテルなど)に溶解できる。
【0012】
好ましくは、水溶性抗菌物質R-(-)-ヒドロキシ酸エステルオリゴマーの一般構造式は、以下に示される。
【化4】
(式中、n=2~3である。)
【0013】
好ましくは、非水溶性抗菌物質R-(-)-ヒドロキシ酸エステルオリゴマーの一般構造式は、以下に示される。
【化5】
(式中、n=4~8である。)
【0014】
本発明の有益な効果は、以下のとおりである。
1、本発明は、分子構造の設計に注目して、式(I)で表される物質の末端基及び鎖長の構造を合理的に設計するとともに、そのclogP値を制御することにより、本発明の式(I)で表される物質のサイズを適切にし、式(I)で表される物質が細菌の内部への浸透能力及び細菌の細胞膜に対する破壊能力の両方を最大限に向上させることで、効率的な抗菌という目的を達成させる。
2、本発明は、分子構造を正確に設計することでR-(-)-ヒドロキシ酸エステルオリゴマーの親水性と疎水性を調整し、水溶性制御可能なバイオベースの抗菌剤を得、その使用範囲を広げ、例えば、食品、医薬品や化粧品などの分野では、水溶性が高く、使用しやすく、水中の物質が均一に分散している抗菌剤が必要であり、水溶性ヒドロキシ酸エステルオリゴマーは、使用ニーズをよく満たすことができ、一方、塗料、繊維、プラスチックや建材などの分野では、抗菌効果を長持ちさせるために耐水性を有する抗菌剤が必要であり、この場合では、非水溶性のヒドロキシ酸エステルオリゴマーのみがこの要件を満たすことができる。
3、本発明で使用される原材料はすべて、バイオベースの原材料であり、便利で入手が容易であり、合成プロセス中に有毒な触媒及び溶媒の使用を避け、複雑な後処理を避け、且つ触媒をリサイクルすることができ、スケールアップと生産が容易であり、環境保護要件を満たし、生産コストを削減するのにも役立つ。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】実施例1-1の水溶性R-(-)-3-ヒドロキシ酪酸エチルエステルオリゴマーの質量分析結果を示す図である。
【
図2】実施例1-2の非水溶性R-(-)-3-ヒドロキシ酪酸エチルエステルオリゴマーの質量分析結果を示す図である。
【
図3】R-(-)-3-ヒドロキシ酪酸ヘキシルエステルの核磁気スペクトルである。
【
図4】R-(-)-2-ヒドロキシプロピオン酸ヘキシルエステルの核磁気スペクトルである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の技術的解決手段及び効果について、実施例と併せてさらに説明するが、本発明は、実施例に示される物質、混合比及び方法に限定されるものではなく、これらの実施例に示した材料の組み合わせ及び方法に基づいて当業者が容易に得ることができるすべての変更はいずれも、本発明の保護範囲に属するものとする。
【0017】
実施例1:R-(-)-3-ヒドロキシ酪酸エチルエステルオリゴマーの合成
【0018】
実施例1-1
【0019】
機械的攪拌、温度計及び蒸留装置を備えた三口フラスコに、10gの3-ヒドロキシ酪酸エチルと0.01gの酢酸亜鉛(すなわち、3-ヒドロキシ酪酸エチルの質量の0.1%)をそれぞれ加え、撹拌速度を約150rpmとし、微量の窒素ガス環境下で0.5-3℃/minで150℃まで昇温させて1時間反応させ、反応を停止させ、3-HBオリゴマーを得、その重合度を質量スペクトル法で検出し、抗菌実験は、『GB/T 20944.3-2008 織物の抗菌特性の評価 第3部:振動法』を参照し、菌種は、Escherichia coli ATCC 25922である。
【0020】
実施例1-2~1-3
【0021】
表1によれば、実施例1-1に基づいて触媒の種類と反応温度を変更し、他の条件は、実施例1-1と同じであり、重合度の異なるR-(-)-3-ヒドロキシ酪酸エチルエステルオリゴマーを得る。
【0022】
【0023】
図1は、実施例1-1の水溶性R-(-)-3-ヒドロキシ酪酸エチルエステルオリゴマーの質量分析結果を示す図である。
【0024】
図2は、実施例1-2の非水溶性R-(-)-3-ヒドロキシ酪酸エチルエステルオリゴマーの質量分析結果を示す図である。
【0025】
実施例2:R-(-)-3-ヒドロキシ酪酸モノマー(n=1)の合成
【0026】
実施例2-1
【0027】
三口フラスコに、1molのR-(-)-3-ヒドロキシ酪酸、10molのメタノール、5.2gの触媒P-トルエンスルホン酸(R-(-)-3-ヒドロキシ酪酸の質量の0.15%)、及び体積量がアルコール体積の50%の水運搬剤n-ヘキサンを加え、攪拌しながら、150℃までゆっくりと昇温させ、温度を維持して8時間反応させ、反応を停止し、室温まで冷却した後、90℃で、5000Paで減圧蒸留して残りのアルコールとn-ヘキサンを除去し、次に150℃まで昇温させ、1000Pa未満の減圧下で留出物を収集し、留出物は、3-ヒドロキシ酪酸メチルであり、収率が93%である。
【0028】
実施例2-2~2-8
【0029】
実施例2-2~2-8では、実施例2-1に基づいて、メタノールをエタノール、1-プロパノール、1-ブタノール、1-ペンタノール、1-ヘキサノール、1-ヘプタノール、及び1-オクタノールにそれぞれ変更し、他の実験条件は、実施例2-1と同じであり、R-(-)3-ヒドロキシ酪酸エチルエステル(収率95%)、R-(-)3-ヒドロキシ酪酸プロピルエステル(収率93%)、R-(-)3-ヒドロキシ酪酸ブチルエステル(収率92%)、R-(-)3-ヒドロキシ酪酸ペンチルエステル(収率94%)、R-(-)3-ヒドロキシ酪酸ヘキシルエステル(収率96%)、R-(-)3-ヒドロキシ酪酸ヘプチルエステル(収率95%)、及びR-(-)3-ヒドロキシ酪酸オクチルエステル(収率94%)をそれぞれ得、気相検出純度は、約100%である。
【0030】
図3は、R-(-)-3-ヒドロキシ酪酸ヘキシルエステルの核磁気スペクトルを示す図である。
【0031】
実施例1-2及び2-6で調製されたR-(-)-3-ヒドロキシ酪酸エチルエステルオリゴマー及びR-(-)-3-ヒドロキシ酪酸ヘキシルエステルオリゴマーは、広東省微生物分析検査センターにより試験され、試験の根拠と方法は、中国保健省の2002年の『消毒技術規範』-2.1.8.4 最小発育阻止濃度試験(栄養ブロス法)であり、その結果は、表2に示すとおりである。
【0032】
【0033】
実施例2-9
【0034】
実施例2-1に基づいて、R-(-)-3-ヒドロキシ酪酸をR-(-)-3-ヒドロキシプロピオン酸に変更し、メタノールを1-ヘキサノールに変更し、他の実験条件は、実施例2-1と同じであり、R-(-)-2-ヒドロキシプロピオン酸ヘキシルエステルを得る。
【0035】
図4は、R-(-)-2-ヒドロキシプロピオン酸ヘキシルエステルの核磁気スペクトルを示す図である。
【0036】
R-(-)3-ヒドロキシ酪酸メチルエステルのNMR実験データは、そのスペクトログラムは以下のとおりである。1H NMR(CDCl3):4.33(m,H),3.72(s,3H),2.53(q,2H),1.21(d,3H)である。
【0037】
R-(-)3-ヒドロキシ酪酸エチルエステルのNMR実験データは、そのスペクトログラムは以下のとおりである。1H NMR(CDCl3):4.33(m,H),4.01(m,2H),2.41(m,2H),1.15(m,6H)である。
【0038】
R-(-)3-ヒドロキシ酪酸プロピルエステルのNMR実験データは、そのスペクトログラムは以下のとおりである。1H NMR(400MHz,Chloroform-d) δ4.28-4.16(m,1H),4.10(t,2H),2.59-2.40(m,2H),1.76-1.64(m,2H),1.26(dd,3H),0.97(t,3H)である。
【0039】
R-(-)3-ヒドロキシ酪酸ブチルエステルのNMR実験データは、そのスペクトログラムは以下のとおりである。1H NMR(400MHz,Chloroform-d) δ4.48-4.39(m,2H),4.33(ddt,4H),2.78-2.55(m,4H),1.84(tdd,4H),1.69-1.52(m,4H),1.49-1.39(m,6H),1.21-1.09(m,6H)である。
【0040】
R-(-)3-ヒドロキシ酪酸ペンチルエステルのNMR実験データは、そのスペクトログラムは以下のとおりである。1H NMR(CDCl3):4.23(m,H),4.14(t,2H),2.43(m,2H),1.67(m,2H),1.37(m,4H),1.26(d,3H),0.95(m,3H)である。
【0041】
R-(-)3-ヒドロキシ酪酸ヘキシルエステルのNMR実験データは、そのスペクトログラムは以下のとおりである。1H NMR(400MHz,Chloroform-d) δ4.29-4.18(m,1H),4.14(t,2H),2.58-2.40(m,2H),1.73-1.61(m,2H),1.44-1.29(m,6H),1.26(d,3H),0.97-0.89(m,3H)である。
【0042】
R-(-)3-ヒドロキシ酪酸ヘプチルエステルのNMR実験データは、そのスペクトログラムは以下のとおりである。1H NMR(400MHz,Chloroform-d) δ4.23(dqd,1H),4.14(t,2H),2.53(dd,1H),2.50-2.40(m,1H),1.67(t,2H),1.43-1.29(m,9H),1.27(dd,3H),0.92(t,3H)である。
【0043】
R-(-)3-ヒドロキシ酪酸オクチルエステルのNMR実験データは、そのスペクトログラムは以下のとおりである。1H NMR(400MHz,Chloroform-d) δ4.23(t,1H),4.15(t,3H),2.54(dd,1H),2.46(dd,1H),1.74-1.62(m,3H),1.42-1.24(m,18H),0.92(t,4H)である。
【0044】
実施例3:R-(-)-乳酸エステルモノマー(n=1)の合成
【0045】
実施例3-1
【0046】
実施例2-1では、R-(-)-3-ヒドロキシ酪酸をR-(-)-乳酸に変更し、メタノールを1-ヘキサノールに変更し、他の条件は、実施例2-1と同様であり、調製してR-(-)-乳酸ヘキシルを得、収率は、94%であり、気相検出純度は、約100%である。
【0047】
実施例3-2~3-3
【0048】
実施例3-2~3-3では、実施例3-1に基づいて、1-ヘキサノールをエタノール及び1-ヘプタノールにそれぞれ変更し、他の条件は、実施例3-1と同様であり、R-(-)-乳酸エチル及びR-(-)-乳酸ヘプチルをそれぞれ得、気相検出純度は、約100%である。
【0049】
実施例4:R-(-)-2-ヒドロキシプロピオン酸ヘキシルエステルの合成
【0050】
実施例3-1では、実施例3-1に基づいて、R-(-)-乳酸をR-(-)-2-ヒドロキシプロピオン酸に変更して、R-(-)-2-ヒドロキシプロピオン酸ヘキシルエステルを得、気相検出純度は、約100%である。
【0051】
R-(-)-2-ヒドロキシプロピオン酸ヘキシルエステルのNMR実験データは、そのクロマトグラムは、1H NMR(CDCl3):4.29(m,H),1.60(m,2H),1.42(m,9H),0.88(m,3H)である。
【0052】
実施例2-3の生成物に対する抗菌試験及びclogP理論計算は、表3に示すとおりである。
【0053】
【表3】
備考:clogPは、脂肪と水の2相における物質の分配係数の対数値を表し、そのデータは、ChemDraw Ultra 13.0 プログラムを使用して理論的に推定され、抗菌試験方法の試験基準と方法は、中国保健省の2002年の『消毒技術規範』-2.1.8.4最小発育阻止濃度試験(栄養ブロス法)であり、その中で、菌種は、大腸菌E.coli ATCC25922を選択する。
【0054】
表2から、本発明により調製されたヒドロキシ酸エステルオリゴマーのclogP値は、エステル基の鎖長とともに規則的に増加するが、clogP値が約2.4である場合、最良の抗菌効果(MICは1.95mg/mLである。)が達成されることが分かる。clogP=2.4の場合、R-(-)-ヒドロキシ酸エステルは、分子サイズが最適であるため、細胞膜に挿入されて細胞膜リン脂質二重層の安定した構造を破壊して、効率的な抗菌効果を達成することができる。
【0055】
以上に述べた本発明の特定の実施形態は、本発明の保護範囲に対する限定を構成しないことを指摘しておくべきである。本発明の技術的概念に従って行われた他の対応する変更及び修正はいずれも、本発明の特許請求の範囲の保護範囲に含まれるべきである。