(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023165687
(43)【公開日】2023-11-17
(54)【発明の名称】エアーノズル式清掃装置
(51)【国際特許分類】
B08B 9/093 20060101AFI20231110BHJP
【FI】
B08B9/093
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022076797
(22)【出願日】2022-05-07
(71)【出願人】
【識別番号】300023796
【氏名又は名称】株式会社トーヨー・シーエス
(74)【代理人】
【識別番号】100134669
【弁理士】
【氏名又は名称】永井 道彰
(72)【発明者】
【氏名】細見 繁
【テーマコード(参考)】
3B116
【Fターム(参考)】
3B116AA33
3B116AB53
3B116BB23
3B116BB43
3B116BB53
3B116BB62
3B116BB88
(57)【要約】
【課題】 大型の容器内の壁面に形成された粉粒体付着塊などに対して、高所作業の従事者を介せずに、効率よく自動清掃できる清掃装置を提供する。
【解決手段】 吊下機構110により本体130を清掃対象の上部から吊下する。
本体130から清掃対象の壁面に対してエアーを噴き付けるエアーノズル140が搭載されており、エアー供給機構120によりエアーコンプレッサ121からエアーノズル140にエアーを所定圧力で供給し、エアーノズル140から噴き付けるエアーによって壁面を清掃する。エアーノズル回転機構134により本体130に対してエアーノズル140を相対的に回転させ、本体自転機構136により本体130ごと自転させ、昇降機構150により本体130の吊下位置を上下に昇降し、エアーノズル140を回転させて噴射角度を変化させることで清掃対象の壁面を3次元的に清掃する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
清掃対象の壁面を自動清掃する清掃装置であって、
前記清掃対象の上部から吊下する吊下機構と、
前記吊下機構により吊下される本体と、
前記本体から前記清掃対象の壁面に対してエアーを噴き付けるエアーノズルと、
エアーを供給するエアーコンプレッサと、前記エアーコンプレッサから前記エアーノズルまで空気を送気する供給路を備えたエアー供給機構を備え、
前記エアーノズルから噴き付けるエアーによって前記清掃対象の壁面を清掃するエアーノズル式清掃装置。
【請求項2】
前記本体に対して前記エアーノズルを相対的に回転させるエアーノズル回転機構を備えていることを特徴とする請求項1に記載のエアーノズル式清掃装置。
【請求項3】
前記エアーノズル回転機構の回転動作が2系統あり、1の系統の回転方向に対して、他の系統の回転方向が逆方向であることを特徴とする請求項2に記載のエアーノズル式清掃装置。
【請求項4】
前記吊下機構による前記本体の吊下位置を上下に可変とする昇降機構を備えていることを特徴とする請求項1に記載のエアーノズル式清掃装置。
【請求項5】
前記本体の吊下姿勢を可変とする本体自転機構を備えていることを特徴とする請求項1に記載のエアーノズル式清掃装置。
【請求項6】
前記吊下機構が、前記本体を吊下した状態で支持する吊下体と、前記吊下体の吊下位置を調整する吊下アームを備え、
前記吊下アームが移動することにより前記吊下体による前記本体の吊下位置を前記清掃対象の空間内での指定位置に変更し得ることを特徴とする請求項1に記載のエアーノズル式清掃装置。
【請求項7】
前記清掃対象がサイロである請求項1から5のいずれかに記載のエアーノズル式清掃装置。
【請求項8】
前記清掃対象がタンクである請求項1から5のいずれかに記載のエアーノズル式清掃装置。
【請求項9】
前記清掃対象がダクトである請求項1から5のいずれかに記載のエアーノズル式清掃装置。
【請求項10】
前記清掃対象がコンベアである請求項1から5のいずれかに記載のエアーノズル式清掃装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、容器内の清掃装置に関する。例えば、サイロ内や工業タンク内などの貯蔵設備内に形成されている塊状に堆積した残渣を吹き飛ばして清掃する清掃装置や、ダクトなどの運搬経路内に形成された工業製品または材料が塊状に堆積した残渣を吹き飛ばして清掃する清掃装置などがある。
【背景技術】
【0002】
我が国では、工業的な量産過程に供するため、様々な素材や材料を一時的に大量に貯蔵することが多い。それら素材や材料は大きな容器やタンクなどに貯留される。
例えば、穀物について言えば、その保管は穀物サイロ(以下、サイロと呼ぶ)によって行われている。このサイロは、例えば、直径が2~10m、高さが5~40m程度の巨大なものである。
また、例えば、粉体の工業素材について言えば、その保管は貯蔵タンクによって行われている。この貯蔵タンクも巨大なものがある。
【0003】
以下、穀物を貯蔵するサイロを例に説明する。
サイロの実運用においては、サイロ内部の壁面の清掃が重要となる。
サイロ内部の壁面には、サイロ内の貯蔵物が付着して付着塊を作る現象もあるが、サイロ内を漂う粉体が薄っすらと表面を覆うだけの穏かな付着を形成する現象もある。
前者は、サイロ内の穀類の水分量の影響、穀類の粉化の影響等により、サイロ内壁に穀類が付着し、時間の経過とともに固着する現象である。この場合は圧縮空気などで物理的にエネルギーを与えて粉砕する必要がある。
後者は、どのサイロにも発生し得る現象で、貯留物から粉体が発生するとサイロ内を漂うため、サイロの内壁面がコンクリートでも金属製であっても物理的に表面への穏やかな付着は生じ得る。この場合は空気を吹き付けるだけでサイロの内壁面は綺麗に清掃できることが多い。
前者、後者いずれの場合であっても、そのまま放置することは衛生管理の面から好ましくなく、サイロの清掃が必要となる。
【0004】
しかし、サイロは巨大であり、また、その内部は、穀類の微細粉塵が充満し、酸欠の恐れがあり、かつ足場が悪いなど、人が作業するには極めて劣悪かつ危険な環境である。そのため、サイロ内壁の清掃をできるだけ自動化した清掃システムの開発が望まれている。
【0005】
このような、大きな容器の内部を自動的に清掃する従来の清掃装置としては、実開平3-105988号公報が知られている。
実開平3-105988号公報の清掃装置では、
図7に示すように、鉛直方向に延びる加圧液導入管の下端に複数の分流管が水平方向に放射状に配設され、その分流管の先端部に外方に付勢された払拭部材が配設されている。このように構成された清掃装置では、加圧液導入管の基端に加圧液を供給することにより、分流管の先端から加圧液が噴出して分流管が回転し、それにより払拭部材がタンク内面を摺動して汚れが除かれる(特許文献1参照)。
【0006】
この従来のタンクの清掃装置では、鉛直方向に延びる加圧液導入管の先端に放射状に分流管が設けられているため、タンクの径に合わせて分流管の長さを変える必要があり、また、タンクの中心軸に対する加圧液導入管の位置の偏心による回転半径の変化を吸収する必要がある。そのため、分流管がある程度伸縮自在に構成されている。
【0007】
しかし、分流管の伸縮には限度があるため、径が大きく異なるタンクには同じ清掃装置を用いることができず、また、下部が逆円錐状に形成されたサイロのように、径が一定でない容器には用いることができない。つまり、容器の径の変化に対応することが困難である。
さらに、分流管を伸縮自在に構成したり、タンクからの反力を相殺すべく分流管を放射状に設けたりすることから構造が複雑であり、清掃現場への設置も容易ではない。
【0008】
発明者らは、上記指摘した付着塊が生じている場合でも清掃できるものとして、特開2004-358291号公報に開示された清掃装置を開発した。
特開2004-358291号公報に開示された清掃装置は、
図8に示すように、可撓性のホース14と、ホース14が垂下するように該ホースの基端側を軸心の回りに回動自在に保持するホース保持体11と、ホース14の先端側に配設された、容器18内面の付着物21を払拭するための払拭部材15とを備え、従来技術に比べて払拭部材15をサイロ内においてその配置位置の自由度を高め、形成された粉粒体の塊に払拭部材15を近づけて清掃することが可能となった。
【0009】
また、発明者らは、上記指摘した付着塊が生じている場合でも清掃できるものとして、特開2014-136181号公報(特許第5722358号)に開示された清掃装置も開発した。
特開2014-136181号公報に開示された清掃装置は、
図9に示すように、粉粒体の付着塊をピンポイントに狙い撃ちして圧縮空気を噴射するものである。圧縮空気砲噴射装置110は、圧縮空気貯留タンク111と、圧縮空気貯留タンク111から圧縮空気を引き出す排出管113と、電磁開閉弁114の開閉を制御する制御部112と、圧縮空気を集中させて噴射するレジューサ115を備えている。電磁開閉弁114の開閉制御を通じてノズル123から破壊力のある圧縮空気砲を一気に粉粒体の付着塊に向けて打ち出し、容器200内における粉粒体の付着塊を破砕して清掃する技術である。
【0010】
【特許文献1】実開平03-105988号公報
【特許文献2】特開2004-358291号公報
【特許文献3】特開2014-136181号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
特開2004-358291号公報に記載された清掃装置は実用性に優れたものであるが、発明者らは清掃装置の開発を進める中、巨大なサイズのサイロ内での作業の困難性をさらに緩和する技術の開発を目指した。
特開2004-358291号公報に記載された清掃装置はホース14の先端側に配設された払拭部材15を自在に移動させることができるものであるが、例えば、高さ30mの巨大なサイロ内で形成されたブリッジ状の粉粒体付着塊に払拭部材15を近づかせるためには、やはり作業員が人手で誘導する必要があり、高さ30mの巨大なサイロ内で安全装置などを体に装着してサイロ内に吊下された状態で作業する必要があった。
このように作業員が吊下された状態で作業することは簡単なことではないし、作業時間を短縮することが難しい。
ここで、巨大なサイロ内で形成されたブリッジ状の粉粒体付着塊を、離れた位置から破砕できれば非常に便利である。
【0012】
発明者らはその観点から特開2014-136181号公報を発明した。この発明にかかる技術は優れた技術であり、粉粒体付着塊の除去作業の効率化を図ることができた。
しかし、巨大なサイロは高さが10mを超えるものもあり、地上からでは圧縮空気を打ち出しても距離が長くなり、ピンポイントでサイロ内の粉粒体付着塊に強く吹き飛ばすことが難しい場合がある。
巨大なサイロの場合、地上からではなく、天井やサイロ上部の壁面から作業員がロープにてぶらさがった状態で作業する、いわゆる高所作業とならざるを得ず、作業員の安全、作業効率の観点からも高所作業に従事する作業員を介さず、地上や施設建物から操作することで、巨大なサイロの壁面を自動清掃することができる清掃装置が望まれていた。
【0013】
本発明は、上記のような課題を解決するためになされたもので、サイロや工業タンクやダクトなどに形成された粉粒体付着塊などに対して、高所作業の従事者を介せずに、効率よく自動清掃することができる清掃装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記目的を達成するために、本発明は、清掃対象の壁面を自動清掃するエアーノズル式清掃装置であって、その構成としては、前記清掃対象の上部から吊下する吊下機構と、前記吊下機構により吊下される本体と、前記本体から前記清掃対象の壁面に対してエアーを噴き付けるエアーノズルと、エアーを供給するエアーコンプレッサと前記エアーコンプレッサから前記エアーノズルまで空気を送気するエアー供給機構を備えた構成である。
上記構成により、本発明のエアーノズル式清掃装置は、吊下機構により清掃対象の上部から吊下し、エアーノズルから噴き付けるエアーによって清掃対象の壁面を自動清掃するものである。つまり、本発明のエアーノズル式清掃装置は、吊下機構により清掃対象の壁面に対して、昇降運動、水平面内での回転運動、エアーノズルの回転によるエアーの噴き付け角度の変化という動きを実現でき、いわゆる3次元的に清掃対象をくまなく清掃する上で効果がある。
【0015】
なお、エアーノズルから噴き付けるエアーが清掃対象をくまなく清掃するため、前記本体に対して前記エアーノズルを相対的に回転させるエアーノズル回転機構を備えていることが好ましい。
エアーノズルを相対的に回転させることでエアーの噴き付け角度が変化するため、清掃対象をくまなく清掃する上で効果がある。
例えば、本体から水平に回転軸が出ており、その回転軸に取り付けられたエアーノズルが垂直方向に回転するパターンがある。
【0016】
なお、回転を多様にするため、エアーノズル回転機構の回転動作が2系統ある場合は、1の系統の回転方向に対して、他の系統の回転方向が逆方向とすることが好ましい。
上記構成により、エアーノズルを相対的に回転させ、一方向だけでなく、逆方向の動きも入るため、エアーの噴き付け反動の左右差の不均衡がなくなり、反動による揺動防止が可能となり、装置の横ブレも防止できる。また、エアーの噴き付け角度がより多様に変化するため、清掃対象をくまなく清掃する上で効果がある。
例えば、本体から水平に回転軸が2本対象に出ており、その一方の回転軸に取り付けられたエアーノズルが垂直方向時計回りに回転し、他方の回転軸に取り付けられたエアーノズルが垂直方向反時計回りに回転するパターンがある。
【0017】
さらに、吊下機構による本体の吊下位置を上下に可変とする昇降機構を備えている構成とすることが好ましい。
上記構成によれば、本体の吊下位置が上下方向に昇降可能となるので、エアーの噴き付け高さが変化するため、清掃対象を上から下までくまなく清掃する上で効果がある。
【0018】
さらに、本体と吊下機構との間に本体の吊下姿勢を可変とする本体自転機構を備えている構成とすることが好ましい。
上記構成によれば、本体ごと水平面内で回転させることができ、それに従ってエアーの噴き付け方向が水平面内で変化するため、清掃対象を水平方向360度くまなく清掃する上で効果がある。
【0019】
さらに、吊下機構が、本体を吊下した状態で支持するワイヤーロープやチェーンなどの吊下体と、吊下体の吊下位置を調整する吊下アームを備えた構成であることが好ましい。
吊下アームは、例えば、多関節のアームであり、吊下アームが移動することにより吊下体による本体の吊下位置を清掃対象の空間内での指定位置に変更し得る。
【0020】
なお、本発明のエアーノズル式清掃装置を適用する清掃対象には多様なものがあり得る。
例えば、本発明の清掃装置の適用例としてはサイロがある。この場合、清掃する付着塊はサイロ内に貯留されている粉粒体が塊状のブリッジとなったものが清掃対象となる。
また、例えば、本発明の清掃装置の他の適用例としては工業タンクがある。この場合、清掃する付着塊は工業タンク内に貯留されている工業製品または材料が堆積して塊状になったものが清掃対象となる。
また、例えば、本発明の清掃装置の他の適用例として大型ダクト(大型配管)がある。この場合、清掃する付着塊が大型ダクト内を通過する工業製品または材料の残渣がダクト内で堆積して塊状になったものが清掃対象となる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】実施例1にかかる清掃装置100の基本構成を模式的に示した図である。
【
図2】
図1(b)の状態から本体130およびエアーノズル140のみを取り出して上面から見た様子を拡大して示した図である。
【
図3】本体130およびエアーノズル140のみを取り出して側面から見た様子を拡大して示した図である。
【
図4】本体130およびエアーノズル140のみを取り出して冠状面(Coronal plate)の断面を正面から見た様子を拡大して示した図である。
【
図5】本発明の清掃装置100を清掃対象200の中心に移動させる様子を示した図である。
【
図6】本発明の清掃装置100が稼働を始め、エアーノズル140からエアーが噴き出し始めた様子を示す図である。
【
図7】本発明の清掃装置100の本体130が、本体自転機構136の駆動力により、ゆっくりと水平面内で回転する様子を示す図である。
【
図8】本発明の清掃装置100が昇降機構150により清掃対象200内をゆっくり下降している様子を示す図である。
【
図9】本発明の清掃装置100が昇降機構150により清掃対象200内をゆっくり上昇している様子を示す図である。
【
図10】清掃が終了し、本発明の清掃装置100を清掃対象200の中心から移動させて元の側方へ回収する様子を示した図である。
【
図11】従来技術における実開平3-105988号公報に記載された清掃装置の例を示す図である。
【
図12】従来技術における特開2004-358291号公報に記載された清掃装置の例を示す図である。
【
図13】従来技術における特開2014-136181号公報に記載された清掃装置の例を示す図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、本発明を実施するための最良の形態について実施例により具体的に説明する。なお、本発明の技術的思想の範囲はこれらの実施例の具体的な形状や数値に限定されるものではない。
本発明の清掃装置は、さまざまな容器やダクトの清掃に適用することができるものである。以下の実施例では、特にことわりがない限り、穀物を貯蔵したサイロを清掃する装置の例として説明する。
【実施例0023】
実施例1にかかる清掃装置100の基本構成を模式的に示す。
下記の
図1から
図4が静止状態の各構成を示す図である。
図1は、実施例1にかかる清掃装置100の基本構成を模式的に示した図である。
図1(a)は、清掃対象となる容器は容器200の上面付近のアクセス口220付近に配置された吊下機構110から吊下されている本体130を側面から簡単に示した図である。
図1(b)は、容器200の上面付近に配置された吊下機構110から吊下されている本体130を上面から簡単に示した図である。
図2は、
図1(b)の状態から本体130およびエアーノズル140のみを取り出して上面から見た様子を拡大して示した図である。吊下機構110やエアー供給機構120の図示は省略している。容器200は本体130との関係を示すために図示している。
図3は、本体130およびエアーノズル140のみを取り出して側面から見た様子を拡大して示した図である。吊下機構110やエアー供給機構120の図示は省略している。
図4は、本体130およびエアーノズル140のみを取り出して冠状面(Coronal plate)の断面を正面から見た様子を拡大して示した図である。吊下機構110やエアー供給機構120の図示は省略している。
【0024】
図1から
図4に示すように、清掃装置100は、吊下機構110、エアー供給機構120、本体130、エアーノズル140を備えたものとなっている。さらに、必須の部材ではなくオプションであるが、昇降機構150が設けられている。清掃対象となる容器は容器200として示す。
以下、吊下機構110、エアー供給機構120、本体130、エアーノズル140の各々の構成について順に説明し、その後、清掃装置100の基本動作を説明する。
【0025】
吊下機構110は、本体130を清掃対象200の上部から安定的に吊下するものである。
この構成例では、
図1に示すように、吊下機構110は、吊下機構本体111、吊下アーム112、吊下体113、吊下係止具114を備えた構成となっている。
吊下機構本体111は、清掃対象200の天井付近に配置する装置である。この例では、清掃対象200の天井付近の外周に重量物が配置できる足場となる床面210があり、この床面210の近くにアクセス口220が設けられており、その付近に吊下機構本体111が配置されている例とする。
吊下機構本体111は移動式で下面に車輪を備える構成も可能である。この例では下面に車輪を備えた構成となっており、進退が可能となっている。吊下機構本体111は清掃対象200の天井付近横の近くに配置される。
なお、後述するエアー供給機構120のエアーコンプレッサ121が、この吊下機構本体111の一部に組み込まれている構成も可能である。
【0026】
吊下機構110に吊下アーム112を搭載する構成が可能である。
吊下機構110は、本体130を中心とする装置全体を清掃対象200内の中心軸に沿って吊下するため、この例では、吊下機構本体111から本体130の吊下位置を調整できる角度可変な吊下アーム112を備えた構成となっている。この吊下アーム112を吊下機構本体111から前に出して清掃対象200内の中心軸付近にアクセス可能とする。
この例では、吊下アーム112には関節にあたる駆動軸が設けられた例となっており、吊下アーム112の角度を変えることができる構造となっている。
吊下アーム112は、いわゆるテレスコピック構造で大径の筒体から小径の筒体を繰り出すことで伸縮する構造としても良いが、伸縮しない長い1本の部材で構成してレール上を摺動させて進出させる構造でも良い。
【0027】
吊下体113は、吊下機構本体111から昇降可能に繰り出される部材であり、装置全体を吊下するための引っ張り強度を備えたものとする。例えば、吊下体112としては鋼鉄製のワイヤー、引っ張り強度が十分なチェーン、針金が内蔵されて引っ張り強度が十分な樹脂ロープや繊維ロープなどがあり得る。ここでは鋼鉄製のワイヤーとして説明を続ける。
吊下体113の基端は、吊下アーム112の先端に滑車があり、吊下体113の基端は滑車を介して吊下機構本体111内に引き込まれ、繰り出しや巻き取り可能に昇降機構150に取り付けられている構成も可能である。
昇降機構150については後述するが、ここでは、ウインチ(捲揚機)で鋼鉄製のワイヤーを繰り出しや巻き取り可能になっている例とする。
【0028】
吊下係止具114は、吊下体113の下端付近に取り付けられている器具であり、本体130の係止部131に対して係止する器具である。
吊下係止具114と本体130の係止部131は強固に係止できるものであれば良く、その組み合わせ構造は限定されないが、着脱可能に係止するものが好ましい。
例えば、吊下係止具114がボルトであって、本体130の上面にナットやメスネジなどの係止具131が設けられたもので、両者を螺合により締結するものがある。
また、吊下係止具114が嵌合片であって、本体130の上面に合致する嵌合受け口などの係止具131が設けられたもので、両者を嵌合により締結するものがある。
また、例えば、吊下係止具114が複数のフック部を備え、本体130の上面にリングなどの係止具131が設けられ、当該リング体などの係止具131にフック部である吊下係止具114を引っ掛けて複数個所で係止することにより係止耐力を大きくすることも好ましい。
また、係止耐力を補強するため、チェーンやロープなどを併設することも好ましい。
【0029】
次に、エアー供給機構120を説明する。
エアー供給機構120は、この構成例では、エアーコンプレッサ121とエアー供給路122とエアー接続器具123を備え、エアーコンプレッサ121からエアー供給路122を介してエアーノズル140に対してエアーを所定圧力で供給する装置である。
エアーコンプレッサ121は、空気を外部から取り込んで加圧し、空気を所定圧力にて供給する装置である。エアーコンプレッサ121の設置位置は限定されないが、この例では、吊下機構本体111内に組み込まれているものとする。もちろん、吊下機構本体111外で清掃対象200の天井付近横の近くに設置されていても良いし、清掃対象200の外部の地上や建物内に設置されていても良い。この例では、エアーコンプレッサ121が吊下機構本体111内に組み込まれている例とする。
エアーノズル140からのエアー噴射速度は限定されない。このエアーコンプレッサ121のエアーの供給圧力によって調整可能となっている構成が好ましい。
【0030】
エアー供給路122は、エアーコンプレッサ121からエアーノズル140まで空気を送気する経路を提供するものである。ここでは、本体装置の吊下を伴う作業に追随して変形する必要があるため、可撓性ある供給路としてホースのような部材である。
なお、エアーコンプレッサ121から供給される空気圧はある程度大きいものと想定されるので、エアー供給路122の素材はある程度の強度は必要である。例えば、頑丈なチューブ体であり肉厚内部には引張強度の大きな繊維(炭素繊維、高強度ポリエチレン繊維など)が編み込まれたものが好ましい。さらに、エアー供給路122についても容器200内の粉塵爆発などを防ぐための静電防止、帯電防止の工夫をしておくことが好ましい。
また、エアー供給路122の長さについては、清掃対象となる容器200の高さなどに応じた長さが必要である。なお、図ではエアー供給路122は繰り出しや巻き取りが可能なホースの繰り出し機構などが図示されていないが、図示は省略しているもののエアー供給路122は繰り出し機構を備えており供給路の長さが調整可能となっているものとする。
【0031】
エアー接続器具123は、本体130のエアー接続部132と強固に接続される接続器具であり、その構造は限定されないが、例えば、チャックとチャック弁のように、内部にエアー供給機構120のエアー供給路122を共有してエアーの導通を確保しつつ、本体130のエアー接続部132に強固に噛み合って嵌合状態と開放状態を切り替えられるものとなっている。
【0032】
次に、エアー供給路122と吊下体113の配置についての工夫を述べる。この例では、エアー供給路122も吊下体113と同じように、本体130にアクセスしつつ追随するので、エアー供給路122と吊下体113が並行して設けられた構成でも良い。さらに、例えば、両者が昇降機構150からの繰り出し動作や巻き取り動作において絡まったり、空中で揺動して絡まったりしないように、両者を適度な間隔ごとに紐や結束バンドなどで締結しても良い。
【0033】
次に、本体130は、吊下機構110により吊下される本体装置である。ここでは、係止部131、エアー接続部132、回転軸134、エアーノズル回転機構135、本体自転機構136を備えた構成となっている。
大きさの限定はないが、小型のものは30cm角程度、大型のものは装置規模に応じてスケールアップできることは言うまでもない。
以下、各構成を説明する。
【0034】
係止部131は、本体130の一部に配設され、例えば上面付近にある。上記したように、吊下係止具114と強固に係止できるものであれば良く、その組み合わせ構造は限定されないが、例えば、上記したように、吊下係止具114であるボルトに適合するナットやメスネジ、吊下係止具114である嵌合片に合致する嵌合受け口、吊下係止具114であるフック部に適合するリング部などがあり得る。
【0035】
エアー接続部132は、エアー供給機構120のエアー接続器具123と強固に接続される接続器具であり、その構造は限定されないが、例えば、チャックとチャック弁のように、内部にエアー供給路122を共有しつつエアーが導通できる構造であり、エアー接続器具123と強固に噛み合って嵌合状態と開放状態を切り替えられ、かつ、着脱可能に接続できるものが好ましい。
なお、エアー接続部132にタンク状の空気室を設けても良い。空気室(図示せず)は、エアー供給機構120のエアー接続器具123からエアーの供給を受け、エアーノズル140へ噴出するための中継路である。後述するように、エアーノズル140が本体130に対して回転するため、エアー供給機構120のエアー接続器具123からエアーノズル140を分離した状態でエアーを受け渡す役割を果たす。後述するようにエアーノズル140へエアーを受け渡しても気密性が保たれる。
【0036】
本体筐体133は、本体の装置の外殻である。特に限定されないが、内部の部品を外部衝撃から保護するため、ある程度の構造的強度は必要となる。
素材は限定されないが、重量を軽量化するため、ステンレス、アルミ合金、ジュラルミンなどでも良い。
【0037】
回転軸134は、エアーノズル140を取り付ける軸である。なお、回転軸134も内部が中空でエアーを受け渡す中継路の一部を構成するものであっても良い。回転軸134は複数本あっても良い。この例では、左右に1本ずつ本体130の側面に設けられた構成例となっている。
【0038】
エアーノズル回転機構135は、回転軸134を回転中心軸としてエアーノズル140を相対的に回転させる駆動力を与える機構である。このエアーノズル回転機構135の駆動力は限定されないが、この例では、上部のエアーコンプレッサ120から与えられる空圧により回転力(トルク)を発生させる空圧駆動とする。電気により回転力(トルク)を発生させる電気モーターを排除するものではないが、サイロ等の清掃対象の内部の状態によっては粉塵爆発などのリスクが小さい空圧駆動の回転機構の方が好ましい場合がある。
なお、エアーノズル回転機構135の回転力(トルク)を伝導するギアが存在しても良い。エアーノズル回転機構135の回転動作を2系統とし、1の系統の回転方向に対して、他の系統の回転方向が逆方向とすることができる。例えば、上記のギアが存在する場合は、ギアの回転方向を逆転させればよい。この構成例では2つある回転軸134の回転方向を他方に逆回転にできる。
【0039】
本体自転機構136は、本体130自体を吊下機構110に対して自転させる駆動力を与える機構である。この本体自転機構136により本体130の吊下姿勢を可変とする。本体自転機構136の駆動力は限定されないが、この例では、上部のエアーコンプレッサ120から与えられる空圧により回転力(トルク)を発生させる空圧駆動とする。電気により回転力(トルク)を発生させる電気モーターを排除するものではないが、サイロ等の清掃対象の内部の状態によっては粉塵爆発などのリスクが小さい空圧駆動の回転機構の方が好ましい場合がある。
本体自転機構136の回転力(トルク)を伝導するギアが存在しても良い。
この本体自転機構136は必須の構成ではなくオプションであるが、本体自転機構136を備えれば、本体130ごと水平面内で回転させることができ、それに従ってエアーの噴き付け方向が水平面内で変化するため、清掃対象を水平方向360度くまなく清掃できる。
本体自転機構136による回転方向は限定されず、本体130が上面から見て時計回りでも良いし、反時計回りでも良い。
【0040】
次に、エアーノズル140を説明する。
エアーノズル140は、本体130から清掃対象の壁面に対してエアーを噴き付けるノズルである。エアー供給機構120からエアーの供給を受けてエアーを噴射する。エアーノズル140から噴き付けるエアーによって清掃対象の壁面を清掃する。
エアーノズル140は複数本あっても良い。この例では、回転軸134から左右に対で開く形で取り付けられている。この例ではそれが左右一対ずつ取り付けられており、合計4本のエアーノズル140が本体130の側面に搭載されている。
エアーノズル140の軸141の長さは限定されないが、その先端が清掃対象200の壁面に対して適度な距離となるものが好ましい。エアーノズル140の先端から清掃用のエアーが噴き出ているが、清掃対象200の壁面まで距離が空き過ぎているとエアーによる清掃能力が低くなるおそれがある。その一方で、清掃対象200の壁面まで距離が近付きすぎると、吊下体113の揺動やエアー噴き出しによる反発力などを通じて本体130が左右に揺動すると、エアーノズル140の先端が清掃対象200の壁面と衝突するおそれもあり得る。そこで、適切な距離が保たれていれば良い。作業環境、清掃対象の大きさ、清掃対象の壁面の状態にもより、一概には言えないが、例えば、1mから2mぐらいが適切なケースが多いと考えられる。一例としては、清掃対象の壁面の直径が3mであるとき、エアーノズル140の軸141の長さ30cm程度でも効果が得られることがある。なお、それより距離が近くなるものでも良く、それより距離が大きくなるものでも良い。
【0041】
エアーノズル回転機構135により、エアーノズル140は本体130に対して相対的に回転する。この例では、本体130の側面において、本体130に対して回転軸134を回転軸として回転する。
エアーノズル140の素材は限定されないが、回転でも曲がらない程度の剛性が或るものであれば良く、ステンレス、プラスチック樹脂などがある。
【0042】
次に、昇降機構150を説明する。昇降機構150は、吊下機構110による本体130の吊下位置を上下に可変とする昇降装置である。例えば、吊下機構110の内部に搭載されていても良く、吊下機構110の外部に設置されていても良い。
昇降機構150は上記したように、吊下体113の基端が昇降機構150に取り付けられており、繰り出しや巻き取り可能になっている。この例では昇降機構150はウインチであり、吊下体113を繰り出して本体130を下降させたり、吊下体113を巻き取って本体130を上昇させたりすることができるものとなっている。吊下アーム112の先端に滑車があり、吊下体113を繰り出したり巻き取ったりすることで、本体130を昇降することができるようになっている。
以上が、本発明の清掃装置100の各基本構成の説明である。
【0043】
次に、本発明の清掃装置100による清掃処理の基本動作を説明する。
なお、この例では、清掃対象200の上端付近に床面があり、本発明の清掃装置100は既にその床面に設置されている状態であり、吊下機構本体111が清掃対象200の上端付近にある。
清掃対象200の形状は限定されないが、水平断面が円形の円筒型サイロや、水平断面が四角形の四角柱型サイロなどがある。ここでは、例えば、円筒型サイロとする。
すでにエアーノズル140が本体130に取り付けられており、吊下係止具114により吊下されている状態である。
【0044】
図5は、本発明の清掃装置100を清掃対象200の中心に移動させる様子を示した図である。
図5(a)は横から見た図、
図5(b)は上方向から見た図となっている。
吊下機構本体111から吊下アーム112が伸びて、吊下体113により吊下された本体130が清掃対象200の中心に移動する。
【0045】
図6は、本発明の清掃装置100が稼働を始め、エアーノズル140からエアーが噴き出し始めた様子を示す図である。
エアーノズル140の先端からエアーが吹き出しており、そのエアーによって清掃対象200の小麦粉などの付着物が吹き飛ばされて行く。
図6に示すように、エアーノズル140は回転しており、エアーノズル140が水平方向の位置に来るともっとも清掃対象200の壁面と近くなるが、回転しているので、その前後は角度が微妙に変化しながら壁面を上から下になぞるように、または、下から上になぞるようにエアーを噴き出している。
【0046】
図7は、本発明の清掃装置100の本体130が、本体自転機構136の駆動力により、ゆっくりと水平面内で回転する様子を示す図である。
本体自転機構136の駆動力により本体130自体が吊下機構110に対して自転する。自転スピードは特に限定されないが、念入りに清掃する場合は分速1回転以下でもよく、比較的速くても良く場合は分速1回転以上でも良い。なお、後述する昇降動作を複数回繰り返す場合などは、自転スピードは比較的速くても良い場合がある。
【0047】
図8は、本発明の清掃装置100が昇降機構150により清掃対象200内をゆっくり下降している様子を示す図である。昇降スピードは限定されず、念入りに清掃する場合は分速1m以下でもよく、昇降動作を複数回繰り返す場合などは、比較的速くても良く、分速1m以上でも良い。上記した
図7の自転速度との兼ね合いも考慮する必要がある。
【0048】
図9は、本発明の清掃装置100が昇降機構150により清掃対象200内をゆっくり上昇している様子を示す図である。
本発明の清掃装置100が所定高さまで一度目の下降を終えると、上昇フェーズに切り替わる。
なお、この上昇が本発明の清掃装置100による清掃処理が終了して単に本発明の清掃装置100を引き揚げるだけであれば比較的速い速度で上昇させても良い。
もし、この上昇が本発明の清掃装置100による清掃処理が継続しており、2ストローク目の清掃処理(上昇フェーズによる清掃処理)であれば、下降時と同じ程度の速度で上昇することも良い。この場合、
図3のエアーノズル140の回転、および
図4の本体130の自転は同様に行われる。
【0049】
以上が本発明の清掃装置100による清掃処理の基本動作である。
図5から
図9のストロークを複数回繰り返すことも可能である。
図10は、清掃が終了し、本発明の清掃装置100を清掃対象200の中心から移動させて元の側方へ回収する様子を示した図である。
図10(a)は横から見た図、
図10(b)は上方向から見た図となっている。
吊下アーム112が吊下機構本体111に向けて戻り、吊下体113により吊下された本体130が清掃対象200の中心から離れて床面の方に移動して初期状態に戻る。
【0050】
以上、本発明の清掃装置における好ましい実施形態を図示して説明してきたが、本発明の技術的範囲を逸脱することなく種々の変更が可能であることは理解されるであろう。
本発明の清掃装置は、清掃用途であれば特に限定されず広く適用することができる。例えば、サイロの清掃、工業タンクの清掃に適用することができる。また、それ以外の容器であっても内部に粉粒体が堆積して付着塊・堆積状態を形成するものであれば好適に適用することができる。また、容器に限らず、ダクトなどの粉粒体が通過する配管であっても適用することができる。また、ベルトコンベアなど粉粒体を運搬する運搬装置であっても適用できるものであることが理解されよう。