(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023165700
(43)【公開日】2023-11-17
(54)【発明の名称】マルチセグメント型外側リング付き創傷レトラクタ
(51)【国際特許分類】
A61B 17/02 20060101AFI20231110BHJP
【FI】
A61B17/02
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023136067
(22)【出願日】2023-08-24
(62)【分割の表示】P 2021159510の分割
【原出願日】2016-10-07
(31)【優先権主張番号】62/238,608
(32)【優先日】2015-10-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】503000978
【氏名又は名称】アプライド メディカル リソーシーズ コーポレイション
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100098475
【弁理士】
【氏名又は名称】倉澤 伊知郎
(74)【代理人】
【識別番号】100130937
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100144451
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 博子
(72)【発明者】
【氏名】アルブレヒト ジェレミー ジェイ
(72)【発明者】
【氏名】ベセラ マシュー エム
(72)【発明者】
【氏名】グエン エリック
(57)【要約】
【課題】レトラクタ/プロテクタを提供する。
【解決手段】外科的創(切開創)または生まれつき備わった口(orifice)に用いるのに適したレトラクタ/プロテクタが近位端から遠位端まで延びる器械接近チャネルを定める長手方向軸線と、可撓性外側リングと、内側リングと、外側リングと内側リングとの間に延びる可撓性シースと、可撓性外側リングに取り付けられ、それにより外側リングの剛性を高めるようになった少なくとも1つの剛性セグメントとを有する。インターロック式および非インターロック式剛性セグメントを有するレトラクタ/プロテクタの実施形態が記載される。剛性をたかめるとともに/あるいは取り外し可能なキャップの支持作用を提供するよう剛性セグメントに加えてまたはこれに代えて、可撓性外側リング中にまたはその下に挿入されるベースを有する実施形態もまた記載される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
レトラクタ/プロテクタであって、
可撓性外側リングと、
内側リングと、
前記外側リングと前記内側リングとの間に延びる可撓性シースと、
前記可撓性シースを通って近位端部のところの前記可撓性外側リングから遠位端部のところの前記内側リングまで延びる器械接近チャネルを定める長手方向軸線と、
第1の端部および第2の端部を備えた第1の剛性セグメントとを有し、前記第1の剛性セグメントは、前記可撓性外側リングに取り外し可能に連結され、それにより前記外側リングの剛性を高めるようになっている、レトラクタ/プロテクタ。
【請求項2】
第1の端部および第2の端部を備えた第2の剛性セグメントを更に有する、請求項1記載のレトラクタ/プロテクタ。
【請求項3】
複数の剛性セグメントを更に有する、請求項1記載のレトラクタ/プロテクタ。
【請求項4】
前記第1の剛性セグメントは、前記外側リングにスナップ装着されるようになっている、請求項1記載のレトラクタ/プロテクタ。
【請求項5】
前記第1の剛性セグメントと前記第2の剛性セグメントは、互いにインターロック可能である、請求項2記載のレトラクタ/プロテクタ。
【請求項6】
前記第1の剛性セグメントは、前記第1の端部のところに位置する凹部および前記第2の端部のところに位置するボスを更に有し、前記第2の剛性セグメントは、前記第1の端部のところに位置する凹部および前記第2の端部のところに位置するボスを更に有し、前記第1のセグメントの前記凹部は、前記第2のセグメントの前記ボスを受け入れ、それにより前記第1の剛性セグメントと前記第2の剛性セグメントをインターロックするようになっている、請求項5記載のレトラクタ/プロテクタ。
【請求項7】
レトラクタ/プロテクタであって、
可撓性外側リングと、
内側リングと、
前記外側リングと前記内側リングとの間に延びる可撓性シースと、
前記可撓性シースを通って近位端部のところの前記可撓性外側リングから遠位端部のところの前記内側リングまで延びる器械接近チャネルを定める長手方向軸線と、
内側周囲、外側周囲、および前記外側周囲に沿ってぐるりと設けられた環状溝を備えたリング状剛性ベースとを有し、前記環状溝は、前記可撓性外側リングを受け入れるようになっている、レトラクタ/プロテクタ。
【請求項8】
レトラクタ/プロテクタであって、
第1の磁気ストリップを備えた外側リングと、
近位端部、遠位端部、および前記近位端部の周りに設けられている第2の磁気ストリップを備えた可撓性シースと、
内側リングとを有し、前記内側リングは、前記可撓性シースの前記遠位端部に取り付けられ、前記外側リングは、前記第1の磁気ストリップと前記第2の磁気ストリップとの間に働く磁気吸引力によって前記可撓性シースの前記近位端部に取り外し可能に連結される、レトラクタ/プロテクタ。
【請求項9】
前記外側リング内に設けられた剛性支持リングを更に有する、請求項8記載のレトラクタ/プロテクタ。
【請求項10】
前記外側リング内に設けられた弾性リングを更に有する、請求項8記載のレトラクタ/プロテクタ。
【請求項11】
前記外側リングは、近位管および遠位管を更に有し、前記近位管は、第1のルーメンを有し、前記遠位管は、第2のルーメンを有し、前記第1の磁気ストリップは、前記第2のルーメン内に設けられている、請求項8記載のレトラクタ/プロテクタ。
【請求項12】
前記外側リングの前記第1の管に取り外し可能に連結されたキャップを更に有する、請求項11記載のレトラクタ/プロテクタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、医療器具特にレトラクタまたはプロテクタの外側リングに取り付けられた取り外し可能な剛性セグメントを有する創傷レトラクタに関する。
【0002】
〔関連出願の説明〕
本願は、2015年10月7日に出願された米国特許出願第62/238,608号の権益主張出願であり、この米国特許出願を参照により引用し、その開示内容全体を本明細書の一部とする。
【背景技術】
【0003】
創傷レトラクタ/プロテクタが米国特許第7,650,887号明細書、同第7,727,146号明細書、同第7,883,461号明細書、同第7,913,697号明細書、同第8,235,054号明細書、および同第8,267,858号明細書に記載されており、これらの米国特許を参照により引用し、これらの開示内容全体を本明細書の一部とする。かかる創傷レトラクタの基本構成要素は、可撓性であっても良くまたは剛性であっても良い1つまたは複数の外側リング、内側リング、および各端が外側リングおよび内側リングのそれぞれに取り付けられた柔軟性スリーブを有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許第7,650,887号明細書
【特許文献2】米国特許第7,727,146号明細書
【特許文献3】米国特許第7,883,461号明細書
【特許文献4】米国特許第7,913,697号明細書
【特許文献5】米国特許第8,235,054号明細書
【特許文献6】米国特許第8,267,858号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
創傷レトラクタの1つまたは複数の外側リングは、可撓性または剛性である場合がある。一般に、可撓性外側リングは、配備するのが快適でありかつ容易であり、他方、剛性外側リングは、良好なレトラクションをもたらし、オプションとして、キャップまたは他の類似の器具の取り付けプラットフォームとしての役目を果たす。したがって、柔軟性リングの配備の快適さおよび容易さと剛性リングのレトラクションおよび機能を組み合わせた外側リングを有するレトラクタが要望されている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
外科的創または生まれつき備わった口(orifice)に用いられるのに適したレトラクタ/プロテクタが可撓性外側リングと、内側リングと、外側リングと内側リングとの間に延びる可撓性シースと、可撓性シースを通って近位端部のところの可撓性外側リングから遠位端部のところの内側リングまで延びる器械接近チャネルを定める長手方向軸線と、可撓性外側リングに取り外し可能に連結され、それにより外側リングの剛性を高めるようになった剛性セグメントとを有する。幾つかの実施形態では、2つの剛性セグメントが設けられ、他の実施形態では、3つ以上の剛性セグメントが外側リングに取り外し可能に連結される。幾つかの実施形態では、剛性セグメントは、互いにインターロック可能である。幾つかのインターロック可能な実施例では、剛性セグメントは、一端部に位置するボスおよび他端部に位置する凹部を有するのが良く、凹部は、連続剛性セグメントのボスを受け入れるよう構成されている。
【0007】
本発明の別の実施形態では、剛性取り付け具は、リング状剛性ベースの形態をしている。リング状剛性ベースは、ベースの外周部に沿ってぐるりと設けられた環状溝を有するのが良く、かかる溝は、外側リングを受け入れるように構成されている。この実施例では、外側リングは、必要なときに剛性を提供するよう剛性ベース中にスナップ嵌入されるのが良い。
【0008】
本発明の更に別の実施形態では、外側リングは、可撓性シースから取り外し可能である。この実施形態では、外側リングは、第1の磁気ストリップを有する。可撓性シースは、シースの近位端部のところに設けられた第2の磁気ストリップを有し、その結果、外側リングは、第1の磁気ストリップと第2の磁気ストリップとの間に働く磁気吸引力によって可撓性シースの近位端部に取り外し可能に連結されるようになっている。変形実施形態では、外側リングは、第1の管および第2の管を有し、剛性支持リングが第1のルーメン内に設けられ、第1の磁気ストリップは、第2のルーメン内に設けられている。幾つかの実施形態では、キャップが外側リングに取り外し可能に連結されるのが良い。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図2】切開創内に配備された創傷レトラクタの断面図である。
【
図3A】互換性のある剛性セグメントを備えた可撓性外側リングを含む外側リングシステムを有する創傷レトラクタの正面図である。
【
図7A】剛性ベースに取り付けられるようになった可撓性外側リングを有する創傷レトラクタの平面図である。
【
図10A】
図9の外側リングおよび剛性ベースの平面図である。
【
図10B】
図9の外側リングおよび剛性ベースの断面図である。
【
図10C】
図9の外側リングおよび剛性ベースの斜視図である。
【
図11A】埋め込み状態の磁気ストリップを有する創傷レトラクタの平面図である。
【
図11B】埋め込み状態の磁気ストリップを有する創傷レトラクタの正面図である。
【
図11C】埋め込み状態の磁気ストリップを有する創傷レトラクタの斜視図である。
【
図12A】破線で示された断面線付きの
図11の創傷レトラクタの正面図である。
【
図14A】破線で示された断面線付きの
図13の創傷レトラクタの正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
創傷レトラクタ/プロテクタは、米国特許第7,650,887号明細書、同第7,727,146号明細書、同第7,883,461号明細書、同第7,913,697号明細書、同第8,235,054号明細書、および同第8,267,858号明細書ならびに米国特許出願第12/873,115号明細書に記載されており、これら特許文献を参照により引用し、これらの開示内容全体を本明細書の一部とする。
【0011】
図1は、種々の外科的処置で有用な調節可能な創傷レトラクタ100を示している。創傷レトラクタ100は、外側リング102、内側リング104、および外側リングを内側リングに結合する伸張可能なシース106を有する。外側リング102は、単一のリングとして示されているが、二重リングまたは三重リングもしくは多重のリングであっても良い。図示の実施形態では、外側リング102は、環状軸線を有し、外側リング102は、外側リング102をそれ自体丸めるプロセスにおいてこの環状軸線回りに回転可能でありまたは裏返し可能である。
【0012】
丸めを容易にするとともに快適さを高めるために外側リング102は、好ましくは、可撓性材料から成る。幾つかの実施形態では、可撓性材料は、1種類または2種類以上のポリマー、例えば軟質エンジニアリングプラスチックを含む。幾つかの実施形態では、軟質材料は、エラストマー、例えば熱可塑性エラストマーから成る。幾つかの実施形態では、外側リング102は、複合材、例えばポリマーと補強材から成る。適当な補強材の例としては、繊維、布などが挙げられ、これら材料は、ポリマー、金属、ガラス、セラミックなどのうちの少なくとも1つから成る。外側リング102の実施形態は、単一の部品としてまたは外側リング102の状態に組立てられる複数の部品として成形されるとともに/あるいは押し出される。
【0013】
図示の実施形態では、外側リング102の断面形状は、全体として8の字形でありまたは第1の円と第2の円をこれらの間に延びるウェブによって接合したものである。外側リングは、中実であっても良く、リング内に設けられた1つまたは2つ以上のルーメンを有しても良い。外側リングの他の実施形態は、互いに異なる断面形状、例えば、全体として卵形または楕円形、ダイヤモンド形またはひし形、砂時計形またはドッグボーン形、雪だるま形、半径方向に平坦な形状(ワッシャ型外側リング)、長手方向に平坦な形状(円筒形外側リング)、または別の角度で見て平坦な形状(切頭円錐形外側リング)、円形(ドーナツ型外側リング)、X字形、三角形、正方形、六角形、多角形などを有しても良い。外側リングの他の幾つかの実施形態は、外側リングをその環状軸線回りに手で丸めやすくする1つまたは2つ以上の把持面を有する。適当な把持面の例としては、全体として平たくされた表面および凹状表面が挙げられる。外側リング102の幾つかの実施形態では、外側リング102が例えば細長い部材をねじり、次に端部を接合することによってあらかじめ荷重が加えられた円周方向ねじり応力を備えた状態で製作されるメビウス形態を有する。
【0014】
外側リング102の幾つかの中空実施形態では、ワイヤまたはロッドが少なくとも1つの第1のルーメン内に設けられる。外側リング102の幾つかの実施形態では、そのルーメン内にロッドまたはワイヤを備えない。非応従性外側リング102の幾つかの実施形態は、別の器具、例えばふた、キャップ、および/またはゲルキャップを外側リング102に直接結合しやすくする。応従性外側リング102の幾つかの実施形態は、体の表面に合致する。
【0015】
図1に戻ってこれを参照すると、シース106は、ヒートシール、接着剤、または当該技術分野において周知である他の手段によって外側リング102および内側リング104に結合されるのが良い。シース106は、柔軟性でありかつ体液および細菌に対して不透過性である材料で作られるのが良い。
【0016】
シースの実施形態は、シースに耐研磨性および耐穿通性を与える1種類または2種類以上の材料のシート、メンブレン、繊維および/またはストランドから成る。適当なシート、メンブレン、繊維および/またはストランドは、天然ポリマー、半合成ポリマー、合成ポリマー、金属、セラミック、ガラス、炭素繊維、カーボンナノチューブなどのうちの少なくとも1つから成る。適当な天然繊維としては、セルロース、シルクなどが挙げられる。半合成繊維としては、ニトロセルロース、セルロースアセテート、レーヨンなどが挙げられる。適当な合成繊維としては、ポリエステル、芳香族ポリエステル、ポリアミド(NYLON(登録商標)、DACRON(登録商標))、アラミド(KEVLAR(登録商標))、ポリイミド、ポリオレフィン、ポリエチレン(SPECTRA(登録商標))、ポリウレタン、ポリウレア、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリ塩化ビニリデン、ポリエーテルアミド(PEBAX(登録商標))、ポリエーテルウレタン(PELLETHANE(登録商標))、ポリアクリレート、ポリアクリロニトリル、アクリル、ポリフェニレンスルフィド(PPS)、ポリ乳酸(PLA)、ポリ(ジイミダゾピリジニレン‐ジヒドロキシフェニレン)(M‐5)、ポリ(p‐フェニレン‐2,6‐ベンゾビソキサゾール)(ZYLON(登録商標))、液晶ポリマー繊維(VECTRAN(登録商標))など、ならびにこれらの配合物、コポリマー、複合材、および混合物が挙げられる。適当な金属としては、ステンレス鋼、ばね鋼、ニチノール、超弾性材料、アモルファス金属合金などが挙げられる。
【0017】
シース材料の幾つかの実施形態は、ファブリック(もしくは織物)または布(もしくは生地)、例えばコーテッドファブリック、ラミネートまたは貼合せ布およびポリマーに埋め込まれた布のうちの少なくとも1つからなる複合材から成る。コーティングおよび/またはラミネートがファブリックの片面または両面上に施される。適当な被覆および貼合せ材料としては、ポリマー、例えばポリウレタン、ポリエステル、PVC、ポリビニリデンクロリド、シリコーン、スチレン‐ブタジエン、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン‐プロピレンコポリマー、ポリイソプレン、エチレンビニルアセテート(EVA)、エチレン‐プロピレン‐ジエンモノマー(EPDM)、ポリアミド(MYLAR(登録商標))、ポリエーテルブロックアミド(PEBAX(登録商標))、ポリエーテルウレタン
(PELLETHANE(登録商標))、複合材、配合物、混合物などのうちの少なくとも1つが挙げられる。適当な複合ファブリックの一例は、ポリウレタンラミネート生地(polyurethane laminated fabric :PUL)である。コーティングまたはラミネートの幾つかの実施形態は、例えばシース材料を貫通して存在する細孔のサイズを制御することによって、シース材料を通る気体および/または水分透過性を改変する。例えば、水分透過性を減少させることにより、レトラクトした組織の脱水度が減少するとともに/あるいは病原体、例えば細菌に対するバリヤが作られる。気体および水分透過性を増大させることにより、レトラクトした組織の脱水および/または酸素化が可能である。材料の中には、ある特定の流体に対して選択的に透過性であるものがある。例えば、PVCの幾つかの実施形態は、酸素透過性かつ水分不透過性であり、それにより脱水度の軽減と同時に組織への酸素化を可能にする。コーティングまたはラミネートの幾つかの実施形態は、抗菌薬または抗微生物薬を含む。幾つかの実施形態では、抗菌薬または抗微生物薬は、材料表面に施される作用剤でありまたは材料と一体でありもしくは材料中に混ぜ込まれる。適当な抗菌薬または抗微生物薬の例としては、ヨウ素、抗生物質、銀、トリクロサン、殺生剤などが挙げられる。コーティングまたはラミネートの幾つかの実施形態は、滑らかでありかつ/あるいは減摩性の内面をもたらし、それによりシースに対する器械による損傷傾向が減少する。
【0018】
シースの幾つかの実施形態は、繊維強化ポリマー膜またはメンブレンを含む複合材から成る。適当な繊維またはストランドについては上述してある。適当なポリマー膜材料としては、被膜および貼合せ材料として上述した材料のうちの少なくとも1つを含む。幾つかの実施形態では、繊維は、ポリマー膜層相互間にサンドイッチされる。幾つかの実施形態では、ポリマー膜層は、別個独立に選択される。例えば、幾つかの実施形態では、外側層は、上述した所望の組織接触特性をもたらし、他方、内側層は、耐穿通性である。
【0019】
シースの幾つかの実施形態は、複数の層、例えば織物層およびポリマー膜層、またはポリマー膜層相互間にサンドイッチされた織物層を含む。幾つかの実施形態では、これらの層は、互いに固定される。他の実施形態では、これらの層は、互いに独立しておりまたは互いに固定されておらず、例えばポリマー膜層および上述した複数のストリップまたはバンドから成る層である。
【0020】
シースの幾つかの実施形態は、流体不透過性層上に被着された流体透過性層を含み、流体不透過性層は、シースの内側に被着される。流体透過性層は、創傷の辺縁に接触し、それによりユーザは、加圧流体を創傷辺縁に供給するとともに/あるいは真空を創傷辺縁に及ぼすことができる。例えば、幾つかの実施形態では、酸素、水分、治療薬、および/または他の流体が創傷辺縁に供給される。幾つかの実施形態では、真空を効かせることにより、出血が促進され、それにより組織の壊死が軽減される。流体透過性層の実施形態は、連続気泡フォーム、織物、不織布、および編物のうちの少なくとも1つを含む。
【0021】
幾つかの実施形態では、シースの少なくとも一部分は、透明であり、それによりレトラクタとされた組織のビューが提供される。ポリマーメンブレンまたはフィルムから成る幾つかの実施形態では、ポリマーメンブレンまたはフィルムは、透明である。
【0022】
内側リング104は、体腔904(
図2)中への挿入後においてその形状を保持するのに十分な硬さを有するが切開創を通って内側リングを挿入可能に圧縮することができるのに十分可撓性である材料で作られるのが良い。外側リング102の構成材料により、外側リングを以下に更に説明するようにその環状軸線回りに丸めることができなければならない。外側リング102の形状は、その把持能力と調節中および調節後における安定性の提供の両方に影響を及ぼす。
【0023】
図2は、創傷開口900内に配備された創傷レトラクタを示す図である。創傷レトラクタを配備するため、スリットの形をした切開創がまず最初に患者の体壁902、例えば腹壁902に作られる。内側リング104を押し縮め、内側リングおよびシース106を外側リング102が体腔の外側に位置したままの状態で、手作業で切開創に通して体腔904中に挿入する。内側リング104がいったん体腔904内に位置すると、内側リング104は、切開創900の内面周りに拡張して腹壁902の外面とほぼ平行になる。シース106は、体腔904の外側から体腔の内側までの作業チャネルとなる。
【0024】
外側リング102は、当初、創傷開口900の周りで腹壁902上に置かれている。シース106の上端部が外側リング102に結合されているので、シース106は、シース106を上方にかつ半径方向外方または内方に引くことができ、それにより内側リング104が腹壁902の内面にしっかりと引き付けられる。さらに、シース106の中間部分を創傷開口900の側部および縁部にしっかりと引き付け、それにより隣接の組織をレトラクトするとともに体腔904内にしっかりと密閉された開口部を作る。シース106は、創傷900の表面全体に接触し、これを汚染および感染から保護的に覆うとともに封止する。切開創900のサイズおよび深さに応じて、ユーザは、外側リング102を掴んでこれを回転させることによってシース106を巻き上げることができ、ついには、シース106は、創傷開口900の外縁に当接する。内側リング104は、腹壁902の内面と並置するようになっており、外側リング102は、腹壁の外面と並置するようになっている。内側リング104と外側リング102の両方は、腹壁902の切開創900に対して相対位置を取るようになっている。シース106は、腹壁902の切開創900を横切るようになっている。
【0025】
手術後、内側リング104およびシース106を掴んでこれらを創傷開口900中に引くことによって創傷レトラクタ100を取り出すことができる。シース106の使用および外側リング102のレトラクタのしやすさにより、内側リングと外側リングとの間の高い圧縮度が得られる。その結果、創傷レトラクタ100は、広範な切開創サイズに合うよう小刻みな調節性をもたらすとともに疾患のある体の部分および汚染された器械を創傷に通しているときに創傷を細菌感染から隔離するとともに保護する。
【0026】
図3および
図4は、外側リングシステムが配備のしやすさのための可撓性といったん配備されたときの十分なレトラクションのための剛性の両方をユーザに提供するよう設計された新規な創傷レトラクタを示している。外側リングシステムは、可撓性外側リング800および乗っかっている状態にあるときには外側リングに剛性を提供するよう可撓性リングに取り付けることができる1つまたは2つ以上の互換性のある剛性セグメント802を含む。剛性セグメントを例えば一定の最大視覚化が要求されるレトラクタされた状態の創傷に沿って巧妙に配置することができる。
【0027】
幾つかの実施形態では、剛性セグメントは、可撓性外側リングにスナップ装着されるよう設計されており、これら剛性セグメントは、ユーザの好みおよび所望の剛性度に基づいて可撓性リングの周囲に沿って部分的にまたは連続的に配置できる。
【0028】
図3Aは、平面図である
図3Bまたは補助図である
図3Cで良好に理解できるように3つの剛性セグメント802が外側リング800にスナップ装着された新規な創傷レトラクタの正面図である。当業者であれば理解されるように、剛性セグメントの数および寸法は、意図した使用に応じて様々であろう。かくして、例えば、剛性セグメントは、多くのかかるセグメントを外側リングに取り付けることができる短い長さを有しても良く、あるいは、剛性の高い外側リングをもたらすよう比較的少ないセグメントが取り付けられる長い長さを有しても良い。剛性セグメントの数および寸法を変化させることにより、外側リングの剛性が効果的に調整される。同様に、セグメントを外側リング上のどこかの場所にはいちして互いに異なる剛性度を提供することができる。
図3に示されている剛性セグメントは、外側リングの周りに実質的に均等に配置されているが、ユーザの特定の要件に応じて、セグメントは、剛性の増大が望ましい外側リングの領域内に配置することができ、他方、外側リングの他の部分は可撓性のままである。外側リング800に取り付けられた剛性セグメント802の拡大図が
図4A(平面図)および
図4B(右側面図)に示されている。
【0029】
図3および
図4に示された実施形態では、剛性セグメントは、互いに連係していない独立したユニットである。
図5および
図6に示されているような変形実施形態では、インターロック可能な剛性セグメント804は、一端部のところに位置するボス806および他端部のところに位置する凹部808を有し、凹部は、隣りの剛性セグメントのボスを受け入れ、それによりセグメントを互いに連係させるようになっている。図示の実施形態では、相互に連係した剛性セグメントは、完全なリングを形成し、この完全なリングは、
図5B、
図5Cおよび
図6Bで最も良く分かるように外側リング800を実質的に覆う。理解されるべきこととして、ボス806は、凹部808中への容易な挿入を可能にするために剛性であるのが良くまたは剛性セグメント804の相互に連結されたリングが互いに異なる形状、例えば円形、長円形、楕円形などの可撓性外側リングに同形となることができるよう比較的可撓性であっても良い。ボスおよび凹部の他に他のインターロック器具もまた本発明において想定され、かかるインターロック器具としては、クランプ、フックおよび当該技術分野において知られている他のインターロック手段が挙げられる。
【0030】
理解されるべきこととして、外側リングシステムは、必要に応じて多くの(または少ない)剛性リングを有するよう構成できる。剛性セグメントは、例えばボスと凹部から成る構成の場合のように相互連結可能であっても良くあるいは外側リングに独立して取り付けられても良い。さらに理解されるように、一連の別々のセグメントによって剛性を外側リングに提供することによりある範囲のシース設計、例えば円形、楕円形または他の非円形の形状に対応できる。
【0031】
別の実施形態では、リングを剛性のベース内に設けることによって剛性を可撓性外側リングに提供することができ、それにより創傷は、手技の持続時間中、そのレトラクタとされた形状を維持することができる。例えば、
図7および
図8は、リング状剛性ベース810がベースの近位表面または頂面に沿って設けられた環状溝812内に可撓性リング800を受け入れるよう構成された創傷レトラクタを示している。使用に当たり、レトラクタを上述したように切開創内に配備し、創傷をレトラクトし、次に腹部ベースを通って可撓性外側リング800を引き上げて環状溝812中に挿入する。
【0032】
図9および
図10に示されている変形実施形態では、剛性ベースは、可撓性外側リング内に配備されるよう構成されている。この実施形態では、リング状剛性ベース814は、その外周部に沿って位置していて可撓性リング800を受け入れるようになった環状溝816を有する。創傷レトラクタを創傷中に配備して創傷をレトラクトした後、剛性ベース814を可撓性リング800内に挿入し、この可撓性外側リングは、剛性外側リングシステムを提供するよう環状溝816中にスナップ嵌めされるようになっている。
【0033】
図7~
図10に示された実施形態は、封止キャップと併用されるようになった創傷レトラクタに特に適している。剛性ベースは、外側リングの下に設けられるにせよこの中に設けられるにせよいずれにせよ、可撓性外側リングに迅速かつ容易に追加でき、それにより封止キャップの取り付けのための一様なプラットフォームを提供することができる。創傷レトラクタとの併用に適したゲルキャップの詳細が米国特許第8,267,858号明細書に記載されており、この米国特許を参照により引用し、その記載内容全体を本明細書の一部とする。
【0034】
図11および
図12に示されている更に別の実施形態では、外側リングは、シースから取り外し可能である。この実施形態では、外側リング818は、従来の化学的溶接または熱溶接ではなく、磁気吸引力を用いてシース106に取り付けられる。磁気リングまたはストリップ820がシースの近位端部内に埋め込まれ、外側リングは、磁気ストリップ820を引き付ける(またはこれに取り付けられる)少なくとも1つの磁気または強磁性リング822を有する。オプションとして、強磁性ストリップがシースの近位端部内に埋め込まれても良く、この場合、外側リングは、磁気リングから成る。オプションとして、
図12Cに最も良く示されているように、外側リングは、弾性リング823および/または剛性支持リング824を更に有するのが良い。
【0035】
さらに別の実施形態では、外側リングは、更に、封止キャップ、例えばゲルキャップを受け入れて体腔の瞬時封止を提供する一方で、この封止キャップを通って体腔中に至る作業チャネルを提供するよう構成されているのが良い。
図13および
図14では、創傷レトラクタは、2つの管、第1の管および第2の管から成る外側リング826を有し、各管は、ルーメンを有する(
図14C参照)。剛性支持リング824が第1の管のルーメン内に配置され、それによりキャップの取り付けのための剛性ベースが提供されている。磁気または強磁性リング822が外側リング826をシース106の磁気リング820に取り付けるために第2の管のルーメン内に配置されている。オプションとして、鉄でできたストリップがシースの近位端部内に受け込まれても良く、この場合、磁気リングが第2の管のルーメン内に設けられる。
【0036】
本発明をその例示の実施形態を参照して具体的に示すとともに説明したが、当業者であれば理解されるように、以下の特許請求の範囲に記載された本発明の精神および範囲から逸脱することなく、かかる実施形態に対して形態および細部における種々の変更を行うことができる。
【手続補正書】
【提出日】2023-09-25
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
レトラクタ/プロテクタであって、
可撓性外側リングと、
内側リングと、
前記外側リングと前記内側リングとの間に延びる可撓性シースと、
前記可撓性シースを通って近位端部のところの前記可撓性外側リングから遠位端部のところの前記内側リングまで延びる器械接近チャネルを定める長手方向軸線と、
第1の端部および第2の端部を備えた第1の剛性セグメントとを有し、前記第1の剛性セグメントは、前記可撓性外側リングに取り外し可能に連結され、それにより前記外側リングの剛性を高めるようになっている、レトラクタ/プロテクタ。
【外国語明細書】