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  • 特開-検出装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023165716
(43)【公開日】2023-11-17
(54)【発明の名称】検出装置
(51)【国際特許分類】
   G08B 21/24 20060101AFI20231110BHJP
   G01S 13/56 20060101ALI20231110BHJP
   G01V 3/12 20060101ALI20231110BHJP
【FI】
G08B21/24
G01S13/56
G01V3/12 A
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023140016
(22)【出願日】2023-08-30
(62)【分割の表示】P 2019177755の分割
【原出願日】2019-09-27
(71)【出願人】
【識別番号】000001960
【氏名又は名称】シチズン時計株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100114018
【弁理士】
【氏名又は名称】南山 知広
(74)【代理人】
【識別番号】100180806
【弁理士】
【氏名又は名称】三浦 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100160716
【弁理士】
【氏名又は名称】遠藤 力
(72)【発明者】
【氏名】清水 秀樹
(57)【要約】
【課題】使用者の体動よりも速い速度で接近して来る人や物体をそれらが物陰に隠れていても検出する装置を提供する。
【解決手段】検出装置(1)は、使用者の体に装着される本体ケース(2)と、本体ケース内に収納されたマイクロ波ドップラーセンサで構成される検出部(20)と、検出部からの出力信号の時間変化を示す微分信号を生成する微分部(42)と、検出部に接近する物体があるときの出力信号の符号を正、検出部から離反する物体があるときの出力信号の符号を負と定義して、微分信号の振幅の大きさが使用者の体動に応じた閾値を上回りかつ微分信号の符号が正から負に変化した場合に、使用者を目掛けた接近者がいると判定する判定部(44)と、判定部の判定結果を使用者に報知する報知部(3b)とを有する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
使用者の体に装着される本体ケースと、
前記本体ケース内に収納されたマイクロ波ドップラーセンサで構成される検出部と、
前記検出部からの出力信号の時間変化を示す微分信号を生成する微分部と、
前記検出部に接近する物体があるときの前記出力信号の符号を正、前記検出部から離反する物体があるときの前記出力信号の符号を負と定義して、前記微分信号の振幅の大きさが前記使用者の体動に応じた閾値を上回りかつ前記微分信号の符号が正から負に変化した場合に、前記使用者を目掛けた接近者がいると判定する判定部と、
前記判定部の判定結果を前記使用者に報知する報知部と、
を有することを特徴とする検出装置。
【請求項2】
使用者ごとに当該使用者の体動に応じた前記微分信号の振幅に基づき前記閾値を設定する設定部をさらに有する、請求項1に記載の検出装置。
【請求項3】
前記本体ケースを前記使用者の体に固定するための伸縮性のバンドをさらに有する、請求項1または2に記載の検出装置。
【請求項4】
平板状の電池と、
前記検出部からのマイクロ波が前記使用者の体で反射して前記検出部に入射することを防ぐ遮蔽板と、をさらに有し、
前記検出部は前記マイクロ波ドップラーセンサのアンテナパターンが形成されたセンサ基板を有し、
前記電池および前記遮蔽板は、前記本体ケース内において、前記センサ基板よりも前記本体ケースの前記使用者への装着面に近い側に配置され、
前記装着面に近い側の前記センサ基板の面は前記電池および前記遮蔽板により覆われている、請求項1~3のいずれか一項に記載の検出装置。
【請求項5】
前記微分部および前記判定部を構成する制御回路が搭載された制御基板をさらに有し、
前記センサ基板は、前記本体ケース内において、前記装着面に対して前記制御基板よりも高く持ち上げられ、かつ前記装着面の上方から見て前記制御基板とは重ならない位置に配置されている、請求項4に記載の検出装置。
【請求項6】
前記報知部は振動モータで構成され、前記判定部の判定結果を振動により報知し、
前記アンテナパターンは前記センサ基板の一端部側に形成され、
前記振動モータは前記センサ基板の前記一端部とは反対側の端部の側方に配置されている、請求項4または5に記載の検出装置。
【請求項7】
前記報知部は振動モータで構成され、前記判定部の判定結果を振動により報知し、
前記判定部は前記振動モータの振動中には前記接近者の有無を判定しない、請求項1~5のいずれか一項に記載の検出装置。
【請求項8】
前記振動モータを収納するモータケースをさらに有し、
前記モータケースは前記本体ケースとは別体である、請求項7に記載の検出装置。
【請求項9】
前記本体ケースと前記モータケースとの間に配置された緩衝材をさらに有する、請求項8に記載の検出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、報知ユニットと、それを身体に装着するための装身具とを備える危険報知システムであって、身体の表面から法線方向にある物体までの距離を求める測定部と、身体に刺激を与える物理刺激部と、求められた距離を処理して物理刺激部を制御する処理部とを報知ユニットが備えるものが記載されている。特許文献2には、人体またはその周辺携帯物に装着される背後監視装置であって、人体の背後監視領域に監視電磁波を放射し、監視電磁波に基づき背後監視領域に存在する被監視体を検知して警報信号を出力し、警報信号に基づき人体に危険通報を行うものが記載されている。特許文献3には、移動物体の接近を検知するドップラーセンサを備え、移動物体の接近を検知した場合にそれを使用者に通知する聴覚障害者用の装身具が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2018-5820号公報
【特許文献2】特開2011-8746号公報
【特許文献3】特開2010-66276号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ヒトの注意感覚は、背後の死角に対しては非常に弱い。例えば通り魔による事件や、最近では警官が不審者に襲われて拳銃を奪われる事件などが増えており、不審者からの第1撃をかわせるように、死角になる背後からの接近者を検出して報知する装置が求められている。背後に接近してきたものを超音波で検出する技術は従来から提案されているが、超音波は剛体で反射するため、壁などの物陰に隠れながら接近して来るものは検出できない場合がある。また、例えば検出装置を身に着けた本人が歩行している場合には、自分自身も動いているため、接近者の動きと自分の動きとを区別するのが困難である。
【0005】
本発明は、使用者の体動よりも速い速度で接近して来る人や物体をそれらが物陰に隠れていても検出する装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
使用者の体に装着される本体ケースと、本体ケース内に収納されたマイクロ波ドップラーセンサで構成される検出部と、検出部からの出力信号の時間変化を示す微分信号を生成する微分部と、検出部に接近する物体があるときの出力信号の符号を正、検出部から離反する物体があるときの出力信号の符号を負と定義して、微分信号の振幅の大きさが使用者の体動に応じた閾値を上回りかつ微分信号の符号が正から負に変化した場合に、使用者を目掛けた接近者がいると判定する判定部と、判定部の判定結果を使用者に報知する報知部とを有することを特徴とする検出装置が提供される。
【0007】
検出装置は、使用者ごとにその使用者の体動に応じた微分信号の振幅に基づき閾値を設定する設定部をさらに有することが好ましい。検出装置は、本体ケースを使用者の体に固定するための伸縮性のバンドをさらに有することが好ましい。
【0008】
検出装置は、平板状の電池と、検出部からのマイクロ波が使用者の体で反射して検出部に入射することを防ぐ遮蔽板とをさらに有し、検出部はマイクロ波ドップラーセンサのアンテナパターンが形成されたセンサ基板を有し、電池および遮蔽板は、本体ケース内において、センサ基板よりも本体ケースの使用者への装着面に近い側に配置され、装着面に近い側のセンサ基板の面は電池および遮蔽板により覆われていることが好ましい。
【0009】
検出装置は、微分部および判定部を構成する制御回路が搭載された制御基板をさらに有し、センサ基板は、本体ケース内において、装着面に対して制御基板よりも高く持ち上げられ、かつ装着面の上方から見て制御基板とは重ならない位置に配置されていることが好ましい。
【0010】
報知部は振動モータで構成され、判定部の判定結果を振動により報知し、アンテナパターンはセンサ基板の一端部側に形成され、振動モータはセンサ基板の一端部とは反対側の端部の側方に配置されていることが好ましい。
【0011】
報知部は振動モータで構成され、判定部の判定結果を振動により報知し、判定部は振動モータの振動中には接近者の有無を判定しないことが好ましい。検出装置は、振動モータを収納するモータケースをさらに有し、モータケースは本体ケースとは別体であることが好ましい。検出装置は、本体ケースとモータケースとの間に配置された緩衝材をさらに有することが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
上記の検出装置によれば、使用者の体動よりも速い速度で接近して来る人や物体をそれらが物陰に隠れていても検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】検出装置1の模式的な平面図および断面図である。
図2】検出装置1の機能ブロック図である。
図3】装着用カバー5とその着用状態を示す図である。
図4】制御部40の機能を説明するための波形図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照しつつ、検出装置を説明する。ただし、本発明は図面または以下に記載される実施形態には限定されないことを理解されたい。
【0015】
図1(A)および図1(B)は、検出装置1の模式的な平面図および断面図である。図1(B)では、図1(A)のIB-IB線に沿った検出装置1の切断面を示している。図2は、検出装置1の機能ブロック図である。検出装置1は、使用者の死角となる背後からの接近者を内蔵のマイクロ波ドップラーセンサで検出するウェアラブル装置であり、例えば警官または警備員などが警備用に、あるいは一般人が防犯用に使用することを意図したものである。検出装置1は、使用者の体の背面(例えば腰や背中など)に装着され、使用者の歩行や体動を学習し、それ以上の速い速度で使用者の後方から接近して来るものを検出して、振動で使用者に報知する。
【0016】
検出装置1は、本体ケース2、モータケース3および緩衝材4を有する。本体ケース2は、例えば箱型の形状を有し、図1(A)および図1(B)に示すように、電池2a、遮蔽板2b、制御基板2cおよびセンサ基板2dを収納する。符号90は使用者の体を示し、本体ケース2の底面が使用者への装着面になる。図1(A)では、内部の構造が分かるように、本体ケース2とモータケース3を透明なものとして図示している。検出装置1は、図2に示すように、機能ブロックとして、本体ケース2内に操作部10、検出部20、記憶部30および制御部40を有する。
【0017】
電池2aは検出装置1の電源であり、例えば、平板状(角型)で、本体ケース2の底面とほぼ同じ大きさを有し、本体ケース2内の底部に配置されている。遮蔽板(シールド板)2bは、検出部20からの電波を遮蔽するための導体板であり、例えば、本体ケース2の底面とほぼ同じ大きさを有し、本体ケース2内における電池2aの上側に、電池2aを覆い隠すように配置されている。制御基板2cは、記憶部30および制御部40を構成するマイクロコンピュータなどの制御回路Cが形成された基板であり、図示した例では遮蔽板2bの半分以下の大きさを有し、遮蔽板2bの上側に配置されている。制御基板2cの上には、ボタン状の操作部10も搭載されている。
【0018】
センサ基板2dは、マイクロ波ドップラーセンサのアンテナパターンPが上面に形成された基板であり、図示した例では遮蔽板2bの半分以下の大きさを有し、遮蔽板2b上に立てられた支持柱2eにより支持されて、遮蔽板2bの上方に配置されている。符号2fは、制御基板2cとセンサ基板2dとの間を電気的に接続する配線を示す。検出部20はマイクロ波ドップラーセンサであり、本体ケース2内に収納されたセンサ基板2dとアンテナパターンPとで構成される。
【0019】
マイクロ波ドップラーセンサは電波センサであり、本体ケース2が使用者の背面に装着されると、センサのごく近くにある背中の皮膚が使用者の骨格に対して微妙に動くため、接近者がいなくても、センサが使用者自身の動きに反応して出力信号が変化してしまう。そこで、検出装置1では、検出部20からのマイクロ波が使用者の体で反射して検出部20に入射することを防ぐために、センサ基板2dの使用者側の面である底面全体が遮蔽板2bで覆われ、さらにその下側に角型の電池2aが重ねて配置されている。すなわち、電池2a、遮蔽板2bおよびセンサ基板2dは、本体ケース2が使用者の体に装着されたときに使用者に近い側からこの順序で積層されるように配置されており、装着面に近い側のセンサ基板2dの面は電池2aおよび遮蔽板2bにより覆われている。
【0020】
こうした配置により、検出部20の背面感度、すなわち、使用者側(検出装置1の裏側)に行って戻ってくるマイクロ波が遮断されるので、使用者の皮膚の動きに起因する検出部20の出力信号のノイズが抑えられる。マイクロ波は電池2aや遮蔽板2b、制御基板2cでも反射するが、これらはマイクロ波ドップラーセンサに対して常に一定距離にあるので、出力信号には影響しない。さらに、電池2a、遮蔽板2b、制御基板2cおよびセンサ基板2dの中では電池2aが最も重く、その重い部材が装着面側に配置されるため、検出装置1の装着時に座りがよいという利点もある。
【0021】
電池2aおよび遮蔽板2bよりも上側、すなわち、本体ケース2の装着面から遠い側にセンサ基板2dが配置されていればよいので、遮蔽板2bと電池2aの順序は逆でもよい。遮蔽板2bは最低限、センサ基板2dの底面全体を覆えばよく、電池2aで検出部20の背面感度を十分に遮断できるならば遮蔽板2bは省略してもよい。
【0022】
図1(A)および図1(B)に示すように、センサ基板2dは、支持柱2eにより本体ケース2の装着面に対して制御基板2cよりも高く持ち上げられており、かつその装着面の上方から見て制御基板2cとは重ならない位置に配置されている。すなわち、センサ基板2dと制御基板2cとは、本体ケース2内で、その厚さ方向および厚さ方向に垂直な面内で互いにずれて配置されている。マイクロ波の周波数は数GHz程度であるが、制御回路Cに含まれるマイクロコンピュータのクロックの高調波がマイクロ波ドップラーセンサの出力信号に影響してノイズ源になる可能性もあるため、センサ基板2dと制御基板2cとはなるべく離して配置される。
【0023】
モータケース3は、本体ケース2よりも小さい箱型の形状を有し、モータ基板3aおよび振動モータ3bを収納する。モータ基板3aは振動モータ3b用の基板であり、振動モータ3bはモータ基板3aの上に搭載されている。振動モータ3bは報知部の一例であり、制御部40の制御の下で振動することで、検出装置1の検出結果を使用者に報知する。符号3cは、制御基板2cとモータ基板3aとの間を電気的に接続する配線を示す。
【0024】
緩衝材4は、振動モータ3bの振動が本体ケース2に伝搬するのを防ぐための部材であり、モータケース3を包むように配置されている。緩衝材4の材質は、例えばゴムなど、衝撃を吸収できればどのようなものでもよい。図示した例では緩衝材4を介して本体ケース2とモータケース3とが一塊になっているが、振動モータ3bの振動が本体ケース2に伝搬しない程度に本体ケース2とモータケース3との間隔を空ければ、緩衝材4は省略してもよい。モータ基板3aおよび振動モータ3bを緩衝材4で包んで本体ケース2の内部に配置してもよいが、振動がセンサ基板2dに伝搬するのを防ぐためには、モータケース3を本体ケース2とは別体にして、さらに両者の間に緩衝材4を挟むことが好ましい。
【0025】
図1(A)に示すように、アンテナパターンPはセンサ基板2dの一端部E1側に形成され、振動モータ3bは、センサ基板2dの一端部E1とは反対側の端部E2の側方に配置されている。振動モータ3bが検出部20のノイズ源になるのを避けるためには、このように、センサ基板2d上でアンテナパターンPを振動モータ3bからなるべく離れた位置に配置することが好ましい。
【0026】
図3(A)および図3(B)は、装着用カバー5とその着用状態を示す図である。検出装置1の使用時には、検出装置1と使用者の体との距離および位置関係が変動しないように、例えば、バンド5b付きの装着用カバー5内に検出装置1を収納し、バンド5bで装着用カバー5を使用者の背中または腰に密着させるとよい。図3(A)では、装着用カバー5が使用者90の腰に固定された状態を示している。図示した例では、装着用カバー5は腰に着けられるウェイストポーチであり、そのファスナ5aを開閉することで検出装置1を内部に収納できるようになっている。バンド5bは本体ケース2を使用者の体に固定するためのものであり、伸縮性を有することが好ましい。
【0027】
図2に示す記憶部30は、揮発性または不揮発性のメモリ装置であり、検出装置1の動作に必要な情報を記憶する。制御部40は、制御回路Cに含まれるマイクロコンピュータにより実現される機能ブロックとして、計時部41、微分部42、設定部43および判定部44を有する。
【0028】
図4は、制御部40の機能を説明するための波形図である。図4では、マイクロ波ドップラーセンサの出力信号c1とその時間変化を示す微分信号c2の波形を示している。横軸tは時間、縦軸は振幅であり、t軸の上側を正、下側を負とする。縦軸については、検出部20に接近する物体があるときの出力信号c1の符号を正、検出部20から離反する物体があるときの出力信号c1の符号を負と定義する。図示した波形は、検出装置1の装着者(使用者)が期間T0で静止し、期間T1で歩行し、期間T1における矢印a1~a3の時点で誰かが装着者に接近し、符号b1の時点で誰かが装着者から離反した場合のものである。
【0029】
マイクロ波ドップラーセンサは速度に応じた大きさの電圧信号を出力するので、出力信号c1の振幅は、動きがない期間T0では小さく、期間T1では装着者の体動の速さに応じて期間T0のときよりも大きくなり、装着者に対して接近または離反する者がいる矢印a1~a3,b1の時点では特に大きくなる。微分信号c2の波形は、速度に応じた信号の時間変化を表すので、検出部20に対して移動する物体の加速度を表している。図中の+Mと-Mは、装着者の体動を示す微分信号c2の振幅の上限値と下限値に相当する。微分信号c2の波形から、矢印a1~a3の時点で微分信号c2の振幅が+Mを上回ったときに、誰かが装着者の動きよりも速い速度で装着者に近付く側に動き出し、続いて-Mを下回ったときに、その人の速度が減少して一時停止したことが分かる。
【0030】
矢印b1の時点については、微分信号c2の振幅が-Mを下回ったときに、誰かが装着者の動きよりも速い速度で装着者から離れる側に動き出し、続いて+Mを上回ったときに、その人の速度が減少して一時停止したことが分かる。このように、装着者に対して接近または離反する者が移動と停止を行えば加速度の増加と減少が起こるため、微分信号c2の波形におけるピークから接近または離反する者がいると判断でき、そのピークの符号から接近か離反かを見分けることができる。特に、装着者を目掛けて接近して来る者は装着者に近接したときに一時停止するため、接近する方向に加速した後で減速することから、接近者がいれば、微分信号c2の波形では+側のピークに続いて-側のピークが現れる。
【0031】
計時部41は公知の時計回路で構成され、設定部43や判定部44の処理中に経過時間を計測する。微分部42は、マイクロ波ドップラーセンサの出力信号c1を時間について微分し、出力信号c1の時間変化を示す微分信号c2を生成する。
【0032】
設定部43は、使用者により操作部10のボタンが押下されると、例えば10秒間などの一定期間、使用者(装着者)の体動を学習し、使用者の体動に応じた微分信号c2の振幅の上限値(図4のM)を決定する。この値は、使用者よりも速い速度で動いている者がいると判断するための閾値になる。体動の大きさは人によって異なるため、設定部43は、使用者ごとに、その使用者の体動に応じた微分信号c2の振幅の一定期間内における最大値と最小値を求め、両者の絶対値のうちの大きい方を閾値Mとして設定し、記憶部30に記憶させる。あるいは、設定部43は、得られた最大値と最小値をそれぞれ微分信号c2の振幅の+側と-側の閾値としてもよい。
【0033】
あるいは、操作部10として、使用者が操作するボタンではなく、使用者が装着用カバー5を体に固定したことによってオンになるスイッチ機構を本体ケース2の底面に設けてもよい。この場合、設定部43は、使用者の操作によらず、検出装置1が装着されたことに応じて自動的にその使用者についての閾値Mを設定する。
【0034】
判定部44は、微分信号c2の振幅の大きさが使用者の体動に応じた閾値Mを上回り、かつ微分信号c2の符号が正から負に変化した場合に、使用者を目掛けて接近して来る者がいると判定する。すなわち、判定部44は、図4の例において矢印a1~a3で示した時点のように、微分信号c2の振幅が+Mを上回り、続いて-Mを下回った場合に、接近者がいると判定する。逆に、微分信号c2の振幅の大きさが閾値M以下である間、および、その振幅の大きさが閾値Mを上回っても、微分信号c2の符号が負から正に変化した場合には、判定部44は、接近者はいないと判定する。そして、接近者がいると判定した場合に限り、判定部44は、例えば3秒間などの一定期間、振動モータ3bを振動させて、判定結果を使用者に報知する。
【0035】
判定部44は、振動モータ3bの振動に起因する出力信号c1の変動を接近者によるものと誤って判定しないように(すなわち、多重検出とノイズ防止のために)、振動モータ3bの振動中には接近者の有無を判定しない(判定をマスクする)ことが好ましい。また、ブザーなどの音により判定結果を使用者に報知してもよいが、検出装置1は不審者からの危険回避を目的としているため、無音で使用者への報知が可能な振動を利用することが好ましい。あるいは、検出装置1とイヤホンを組み合わせて、制御部40からの無線通信でイヤホンに音を発生させることで、接近者に対しては無音で判定結果を使用者に報知してもよい。
【0036】
検出装置1によれば、使用者の皮膚の動きによるノイズを抑え、使用者自身の体動と接近者の動きとを区別することができるので、使用者に接近して来る人や物体を高精度に検出することができる。マイクロ波は超音波よりも透過性が高いため、マイクロ波ドップラーセンサを用いることで、壁などの物陰に隠れている者も検出することができる。
【符号の説明】
【0037】
1 検出装置
2 本体ケース
3 モータケース
4 緩衝材
5 装着用カバー
10 操作部
20 検出部(マイクロ波ドップラーセンサ)
30 記憶部
40 制御部
図1
図2
図3
図4
【手続補正書】
【提出日】2023-09-29
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
使用者の体に装着される本体ケースと、
前記本体ケース内に収納され、物体の接近及び離反を示す出力信号を出力する検出部と、
前記出力信号に基づいて前記使用者に接近する物体があると判定する判定部と、を有した検出装置において、
前記判定部が、前記使用者の体動に応じた変化を越える前記出力信号に応じて定まる値に基づいて、前記使用者に接近する物体を検出する
ことを特徴とする検出装置。