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特開2023-165720合わせガラス、合わせガラスの製造方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023165720
(43)【公開日】2023-11-17
(54)【発明の名称】合わせガラス、合わせガラスの製造方法
(51)【国際特許分類】
   C03C 27/12 20060101AFI20231110BHJP
   B32B 9/00 20060101ALI20231110BHJP
   B32B 17/10 20060101ALI20231110BHJP
   G02F 1/1339 20060101ALI20231110BHJP
   G02F 1/1333 20060101ALI20231110BHJP
   G02F 1/1335 20060101ALI20231110BHJP
   G02F 1/13 20060101ALI20231110BHJP
【FI】
C03C27/12 N
B32B9/00 Z
B32B17/10
G02F1/1339 500
G02F1/1339 505
G02F1/1333
G02F1/1335 500
G02F1/13 505
【審査請求】有
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023140415
(22)【出願日】2023-08-30
(62)【分割の表示】P 2022108863の分割
【原出願日】2018-07-30
(31)【優先権主張番号】P 2017148594
(32)【優先日】2017-07-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000002897
【氏名又は名称】大日本印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【弁理士】
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100165157
【弁理士】
【氏名又は名称】芝 哲央
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【弁理士】
【氏名又は名称】林 一好
(72)【発明者】
【氏名】石井 憲雄
(72)【発明者】
【氏名】三浦 啓介
(72)【発明者】
【氏名】萩原 裕介
(57)【要約】
【課題】液晶溜まりや空隙の発生を低減できる合わせガラス、合わせガラスの製造方法を提供する。また、シール材の劣化を防止することができる合わせガラスを提供する。
【解決手段】合わせガラス1は、第1のガラス板33Aと、第1の中間膜31Aと、液晶フィルム10と、第2の中間膜31Bと、第2のガラス板と、がこの順番で積層配置されており、第1のガラス板33A及び第2のガラス板33Bは、液晶フィルム10よりも外形形状が大きく形成されており、第1のガラス板33Aと第2のガラス板33Bとに挟まれる領域であって、かつ、液晶フィルム10が配置されない領域の少なくとも一部にスペーサー32が配置されている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1のガラス板と、第1の中間膜と、液晶フィルムと、第2の中間膜と、第2のガラス板と、がこの順番で積層配置されており、
前記液晶フィルムは、液晶層と、前記液晶層を封止し、前記液晶層の周囲を囲むように配置されたシール材とを有しており、
前記第1のガラス板及び前記第2のガラス板は、前記液晶フィルムよりも外形形状が大きく形成されており、
前記液晶フィルムは、液晶を封止するシール材を周囲に有しており、前記シール材に到達する外部からの光を遮光する遮光部を当該合わせガラスの外周に沿って備え、
前記液晶フィルムには、前記液晶層の厚みを一定にするために液晶内スペーサーが設けられており、
前記液晶フィルムは、
第1基材と、第1電極と、第1配向層との順に積層された第1積層体と、
第2基材と、第2電極と、第2配向層との順に積層された第2積層体と、
を有し、
前記液晶層は、前記第1配向層と前記第2配向層との間に配置され、
前記液晶内スペーサーは、前記第1配向層と前記第2配向層との少なくとも一方に配置されている、合わせガラス。
【請求項2】
請求項1に記載の合わせガラスにおいて、
前記スペーサーは、前記液晶フィルムの外周を全周囲んで配置されていること、
を特徴とする合わせガラス。
【請求項3】
請求項1に記載の合わせガラスにおいて、
前記スペーサーの高さの方は前記液晶フィルムの高さ以上であること、
を特徴とする合わせガラス。
【請求項4】
請求項1に記載の合わせガラスにおいて、
前記スペーサーは、前記液晶フィルムに隣接して配置されていること、
を特徴とする合わせガラス。
【請求項5】
請求項1に記載の合わせガラスにおいて、
前記スペーサーは、前記液晶フィルムとの間に距離を空けて配置されていること、
を特徴とする合わせガラス。
【請求項6】
請求項5に記載の合わせガラスにおいて、
前記スペーサーと前記液晶フィルムとの間には、前記第1の中間膜及び前記第2の中間膜の少なくとも一方が部分的に入り込んで配置されていること、
を特徴とする合わせガラス。
【請求項7】
液晶フィルムを第1のガラス板と第2のガラス板とで挟んだ積層体を用いた合わせガラスの製造方法であって、
前記液晶フィルムは、液晶層と、前記液晶層を封止し、前記液晶層の周囲を囲むように配置されたシール材とを有しており、前記シール材に到達する外部からの光を遮光する遮光部を当該合わせガラスの外周に沿って備え、
前記第1のガラス板及び前記第2のガラス板は、前記液晶フィルムよりも外形形状が大きく形成されており、
前記第1のガラス板と前記第2のガラス板とに挟まれる領域であって、かつ、前記液晶フィルムが配置されない領域の少なくとも一部に、平面視において、前記シール材の外側を囲むようにスペーサーを配置するスペーサー配置工程と、
前記スペーサーが配置された状態で前記第1のガラス板と前記第2のガラス板との少なくとも一方の板面に加圧する加圧工程と、
を備える合わせガラスの製造方法。
【請求項8】
請求項7に記載の合わせガラスの製造方法において、
前記スペーサーの高さの方は前記液晶フィルムの高さ以上であること、
を特徴とする合わせガラスの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、合わせガラス、合わせガラスの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば窓に貼り付けて外来光の透過を制御する電子ブラインド等に利用可能な調光部材が提案されている(特許文献1、特許文献2)。このような調光部材の1つに、液晶を利用したものがある。
液晶を利用した調光部材としての液晶フィルムは、透明電極を含む透明板材により液晶材料を挟持して液晶セルが製造され、この液晶セルを直線偏光板により挟持して作成される。この液晶フィルムは、透明電極間に印加する電界を変化させることにより液晶の配向を変化させ、外来光の透過量を制御する。
【0003】
また、上述した液晶フィルムをさらにガラスで挟み込んで合わせガラスを製造することが提案されている(特許文献3)。
しかし、従来は液晶フィルムを挟み込んだ合わせガラスが実際に製造されたことがなかった。したがって、単に中間膜を挟んで構成される従来の合わせガラスと同様な手法をそのまま適用しただけでは、液晶フィルムを挟み込んだ合わせガラスを正しく製造できない場合があった。
液晶フィルムを挟み込んだ合わせガラスが正しく製造できない場合として、液晶フィルム内における液晶が一部に多く溜まってしまう現象(以下、「液晶溜まり」と呼ぶ)がある。また、合わせガラスの一部に空隙が生じてしまう場合もある。このような液晶溜まりや空隙が存在すると、不良品として廃棄するしかなく、改善が望まれている。
【0004】
また、液晶フィルムは、シール材によって液晶層を封止して構成されているが、使用環境によっては、シール材へ太陽光が照射されることによって、シール材の劣化が懸念される場合があった。シール材が劣化すると、液晶層の液晶が漏れ出すおそれがあり、対策が望まれていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平03-47392号公報
【特許文献2】特開平08-184273号公報
【特許文献3】特開2016-164617号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の課題は、液晶溜まりや空隙の発生を低減できる合わせガラス、合わせガラスの製造方法を提供することである。また、本発明の他の課題は、シール材の劣化を防止することができる合わせガラスを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、以下のような解決手段により、前記課題を解決する。なお、理解を容易にするために、本発明の実施形態に対応する符号を付して説明するが、これに限定されるものではない。
【0008】
第1の発明は、第1のガラス板(33A)と、第1の中間膜(31A)と、液晶フィルム(10)と、第2の中間膜(31B)と、第2のガラス板(33B)と、がこの順番で積層配置されており、前記液晶フィルム(10)は、液晶層(14)と、前記液晶層(14)を封止し、前記液晶層(14)の周囲を囲むように配置されたシール材(25)とを有しており、前記第1のガラス板(33A)及び前記第2のガラス板(33B)は、前記液晶フィルム(10)よりも外形形状が大きく形成されており、前記第1のガラス板(33A)と前記第2のガラス板(33B)とに挟まれる領域であって、かつ、前記液晶フィルム(10)が配置されない領域の少なくとも一部にスペーサー(32)が配置されており、平面視において、前記シール材(25)の外側が、前記スペーサー(32)で囲まれている合わせガラス(1)である。
【0009】
第2の発明は、第1の発明に記載の合わせガラス(1)において、前記スペーサー(32)は、前記液晶フィルム(10)の外周を全周囲んで配置されていること、を特徴とする合わせガラス(1)である。
【0010】
第3の発明は、第1の発明に記載の合わせガラス(1)において、前記スペーサー(32)の高さの方は前記液晶フィルム(10)の高さ以上であること、を特徴とする合わせガラス(1)である。
【0011】
第4の発明は、第1の発明に記載の合わせガラス(1)において、前記スペーサー(32)は、前記液晶フィルム(10)に隣接して配置されていること、を特徴とする合わせガラス(1)である。
【0012】
第5の発明は、第1の発明に記載の合わせガラス(1)において、前記スペーサー(32)は、前記液晶フィルム(10)との間に距離を空けて配置されていること、を特徴とする合わせガラス(1)である。
【0013】
第6の発明は、第5の発明に記載の合わせガラス(1)において、前記スペーサー(32)と前記液晶フィルム(10)との間には、前記第1の中間膜(31A)及び前記第2の中間膜(31B)の少なくとも一方が部分的に入り込んで配置されていること、を特徴とする合わせガラス(1)である。
【0014】
第7の発明は、液晶フィルム(10)を第1のガラス板(33A)と第2のガラス板(33B)とで挟んだ積層体(30)を用いた合わせガラス(1)の製造方法であって、前記液晶フィルム(10)は、液晶層(14)と、前記液晶層(14)を封止し、前記液晶層(14)の周囲を囲むように配置されたシール材(25)とを有しており、前記第1のガラス板(33A)及び前記第2のガラス板(33B)は、前記液晶フィルム(10)よりも外形形状が大きく形成されており、前記第1のガラス板(33A)と前記第2のガラス板(33B)とに挟まれる領域であって、かつ、前記液晶フィルム(10)が配置されない領域の少なくとも一部に、平面視において、前記シール材(25)の外側を囲むようにスペーサー(32)を配置するスペーサー配置工程と、前記スペーサー(32)が配置された状態で前記第1のガラス板(33A)と前記第2のガラス板(33B)との少なくとも一方の板面に加圧する加圧工程と、を備える合わせガラス(1)の製造方法である。
【0015】
第8の発明は、第7の発明に記載の合わせガラス(1)の製造方法において、前記スペーサー(32)の高さの方は前記液晶フィルム(10)の高さ以上であること、を特徴とする合わせガラス(1)の製造方法である。
【0016】
第9の発明は、第1のガラス板(33A)と、第1の中間膜(31A)と、液晶フィルム(10)と、第2の中間膜(31B)と、第2のガラス板(33B)と、がこの順番で積層配置されており、前記液晶フィルム(10)は、液晶を封止するシール材(25)を周囲に有しており、前記シール材(25)に到達する外部からの光を遮光する遮光部(70A,70B,70C,70D)を当該合わせガラス(1A,1B,1C,1D)の外周に沿って備える合わせガラス(1A,1B,1C,1D)である。
【0017】
第10の発明は、第9の発明に記載の合わせガラス(1A)において、使用状態において、前記遮光部(70A)は、当該合わせガラス(1A)の端面から前記シール材(25)よりも内側の位置まで配置されており、かつ、前記液晶フィルム(10)と前記第1のガラス板(33A)との間となる位置に配置されていること、を特徴とする合わせガラス(1A)である。
【0018】
第11の発明は、第9の発明に記載の合わせガラス(1B)において、前記遮光部(70A,70B)は、当該合わせガラス(1B)の端面から前記シール材(25)よりも内側の位置まで配置されており、かつ、前記液晶フィルム(10)と前記第1のガラス板(33A)との間となる位置、及び、前記液晶フィルム(10)と前記第2のガラス板(33B)との間となる位置の双方に配置されていること、を特徴とする合わせガラス(1B)である。
【0019】
第12の発明は、第9の発明に記載の合わせガラス(1C)において、前記遮光部(70C)は、当該合わせガラス(1C)の端面を覆い、かつ、前記端面から前記シール材(25)よりも内側の位置まで当該合わせガラス(1C)を挟んで配置されていること、を特徴とする合わせガラス(1C)である。
【0020】
第13の発明は、第9の発明に記載の合わせガラス(1D)において、前記遮光部(70A,70B,70D)は、当該合わせガラス(1D)の端面を覆い、かつ、前記端面から前記シール材(25)よりも外側の位置まで当該合わせガラス(1D)を挟んで配置されており、かつ、前記液晶フィルム(10)と前記第1のガラス板(33A)との間となる位置、及び、前記液晶フィルム(10)と前記第2のガラス板(33B)との間となる位置の双方に配置されていること、を特徴とする合わせガラス(1D)である。
【0021】
第14の発明は、第9の発明に記載の合わせガラス(1A,1B,1C,1D)において、前記第1のガラス板(33A)及び前記第2のガラス板(33B)は、前記液晶フィルム(10)よりも外形形状が大きく形成されており、前記第1のガラス板(33A)と前記第2のガラス板(33B)とに挟まれる領域であって、かつ、前記液晶フィルム(10)が配置されない領域の少なくとも一部にスペーサー(32)が配置されていること、を特徴とする合わせガラス(1A,1B,1C,1D)である。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、液晶溜まりや空隙の発生を低減できる合わせガラス、合わせガラスの製造方法を提供することができる。また、本発明によれば、シール材の劣化を防止することができる合わせガラスを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本実施形態の積層体30の構成を示す分解斜視図である。
図2】実施形態の液晶フィルム10を示す断面図である。
図3】合わせガラス1の製造方法を説明するフローチャートである。
図4図3中の積層体配置工程をより詳しく示したフローチャートである。
図5】合わせガラス1の製造過程で構成される積層体支持構造物50を説明する図である。
図6】真空ラミネーターによるプレラミネート加工の概要を説明する図である。
図7】加圧工程におけるシリコンゴムシート64の状態を模式的に示した図である。
図8】スペーサー32と液晶フィルム10との高さの関係がプレラミネート結果に与える影響を調べた実験結果をまとめた図である。
図9】スペーサー32の材料がプレラミネート結果に与える影響を調べた実験結果をまとめた図である。
図10A】PVB中間膜により形成されたスペーサー32の形状と配置がプレラミネート結果に与える影響を調べた実験結果をまとめた図である。
図10B】PET基材により形成されたスペーサー32の形状と配置がプレラミネート結果に与える影響を調べた実験結果をまとめた図である。
図11】形態1-1のスペーサー32の配置を示す図である。
図12】形態1-2のスペーサー32の配置を示す図である。
図13】形態1-3のスペーサー32の配置を示す図である。
図14】形態1-4のスペーサー32の配置を示す図である。
図15】形態1-5のスペーサー32の配置を示す図である。
図16】形態1-6のスペーサー32の配置を示す図である。
図17】形態1-7のスペーサー32の配置を示す図である。
図18】スペーサー32の占有率がプレラミネート結果に与える影響を調べた実験結果をまとめた図である。
図19図18の各形態を説明する図である。
図20】第2実施形態の合わせガラス1AがフレームFに取り付けられた使用状態を示す断面図である。
図21】第3実施形態の合わせガラス1BがフレームFに取り付けられた使用状態を示す断面図である。
図22】第4実施形態の合わせガラス1Cの端部付近を示す断面図である。
図23】第5実施形態の合わせガラス1Dの端部付近を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明を実施するための最良の形態について図面等を参照して説明する。
【0025】
(第1実施形態)
図1は、本実施形態の積層体30の構成を示す分解斜視図である。
なお、図1を含め、以下に示す各図は、模式的に示した図であり、各部の大きさ、形状は、理解を容易にするために、適宜誇張して示している。
また、以下の説明では、具体的な数値、形状、材料等を示して説明を行うが、これらは、適宜変更することができる。
本明細書において、形状や幾何学的条件を特定する用語、例えば、平行や直交等の用語については、厳密に意味するところに加え、同様の光学的機能を奏し、平行や直交と見なせる程度の誤差を有する状態も含むものとする。
本明細書において、板、シート、フィルム等の言葉を使用しているが、これらは、一般的な使い方として、厚さの厚い順に、板、シート、フィルムの順で使用されており、本明細書中でもそれに倣って使用している。しかし、このような使い分けには、技術的な意味は無いので、これらの文言は、適宜置き換えることができるものとする。
本明細書中において、シート面とは、各シートにおいて、そのシート全体として見たときにおける、シートの平面方向となる面を示すものであるとする。なお、板面、フィルム面に関しても同様であるとする。
また、本発明において透明とは、少なくとも利用する波長の光を透過するものをいう。例えば、仮に可視光を透過しないものであっても、赤外線を透過するものであれば、赤外線用途に用いる場合においては、透明として取り扱うものとする。
なお、本明細書及び特許請求の範囲において規定する具体的な数値には、一般的な誤差範囲は含むものとして扱うべきものである。すなわち、±10%程度の差異は、実質的には違いがないものであって、本件の数値範囲をわずかに超えた範囲に数値が設定されているものは、実質的には、本件発明の範囲内のものと解釈すべきである。
【0026】
本実施形態の説明中では、合わせガラス1の各構成部材が積層配置されているものを積層体30と呼ぶ。積層体30は、合わせガラス1の各部材が接合される前の状態を指しているので、構成自体は、合わせガラス1と同等である。よって、図1の分解斜視図は、合わせガラス1の分解斜視図を示したものでもある。
本実施形態の積層体30は、第1のガラス板33Aと、第1の中間膜形成シート31Aと、液晶フィルム10と、第2の中間膜形成シート31Bと、第2のガラス板33Bと、がこの順番で積層配置されている。また、液晶フィルム10と同一平面となる位置には、スペーサー32と、傾斜緩和部材34とが配置されている。
【0027】
図2は、実施形態の液晶フィルム10を示す断面図である。
液晶フィルム10は、合わせガラスとして構成されて調光を図る部位に使用される。調光を図る部位とは、例えば、車両の外光が入射する部位(リアウインドウ、サイドウインドウ、サンルーフ等)、建築物の窓ガラス、ショーケース、屋内の透明パーテーション等が例示できる。
【0028】
液晶フィルム10は、液晶を利用して透過光を制御する調光部材であり、フィルム状の液晶用第2積層体13及び液晶用第1積層体12により液晶層14を挟持して液晶セル15が製造され、この液晶セル15を直線偏光板16、17により挟持して作成される。
本実施形態において、液晶層14の駆動には、VA(Vertical Alignment)方式が採用されるが、これに限定されず、TN(Twisted Nematic)方式、IPS(In-Plane-Switching)方式等、種々の駆動方式を適用することができる。
なお、VA方式は、液晶の配向を垂直配向と水平配向とで変化させて透過光を制御する方式であり、無電界時、液晶を垂直配向させることにより、液晶層14を垂直配向層により挟持して液晶セル15が構成され、電界の印加により液晶材料を水平配向させるように構成される。
【0029】
液晶フィルム10には、液晶層14の厚みを一定に保持するための液晶内スペーサー24が液晶用第1積層体12及び又は液晶用第2積層体13に設けられる。
液晶用第1積層体12及び液晶用第2積層体13は、それぞれ基材21A、21Bに第1電極22A、第2電極22B、配向層23A、23Bを順次作成して形成される。また液晶フィルム10は、ゲストホスト方式の液晶セルを備えた構成としてもよく、この場合、直線偏光板は、省略することができる。また、ゲストホスト方式の場合に、直線偏光板は、必要に応じて液晶セルの一方、又は両方に配置してもよい。
【0030】
液晶フィルム10は、第1電極22Aと第2電極22Bとの間の電位差を変化させることにより外来光の透過を制御し、透明状態と非透明状態とで状態を切り替えるように構成される。本実施形態では、液晶層14の駆動は、いわゆるノーマリーブラックの構成を用いて駆動する例について説明するが、これに限らず、ノーマリーホワイトの構成で駆動するようにしてもよい。また、IPS方式を採用する場合、第1電極22A及び第2電極22Bは、配向層23A側又は配向層23B側のいずれかにまとめて構成され、これに対応するように液晶用第1積層体12及び液晶用第2積層体13が構成されることになる。
なお、ノーマリーブラックとは、液晶に電圧がかかっていない時に透過率が最小となり、黒い画面になる構造である。ノーマリーホワイトとは、液晶に電圧がかかっていない時に透過率が最大となり、透明となる構造である。
【0031】
[基材]
基材21A、21Bは、液晶セル15に適用可能な可撓性を有するTAC、ポリカ、COP、アクリル、PET等、各種の透明フィルム材を適用することができ、この実施形態では、両面にハードコート層が形成されたポリカーボネートのフィルム材が適用される。
【0032】
[電極]
第1電極22A及び第2電極22Bは、液晶層14に電界を印加可能であって、透明と知覚される種々の構成を適用することができる。本実施形態では、第1電極22A及び第2電極22Bは、透明電極材であるITO(Indium Tin Oxide)による透明導電膜を基材21A、21Bの全面に製造して形成される。上述したように、IPS方式等においては、電極は所望の形状にパターンニングされた構成となる。
【0033】
[配向層]
配向層23A及び配向層23Bは、光配向層により形成される。光配向層に適用可能な光配向材料は、光配向の手法を適用可能な各種の材料を広く適用することができるが、本実施形態では、例えば光二量化型の材料を使用する。この光二量化型の材料については、「M.Schadt, K.Schmitt, V. Kozinkov and V. Chigrinov : Jpn. J. Appl.Phys., 31, 2155 (1992)」、「M. Schadt, H. Seiberle and A. Schuster : Nature, 381, 212(1996)」等に開示されている。
【0034】
配向層23A及び配向層23Bは、光配向層に代えて、ラビング処理により製造してもよい。この場合、配向層23A、23Bは、ポリイミド等の配向層に適用可能な各種材料層を製造した後、この材料層の表面にラビングロールを使用したラビング処理により微細なライン状凹凸形状を製造して形成される。
また、配向層23A及び配向層23Bは、このようなラビング処理による配向層、光配向層に代えて、ラビング処理により製造した微細なライン状凹凸形状を賦型処理により製造して配向層を製造してもよい。
【0035】
[液晶内スペーサー]
液晶内スペーサー24は、液晶層14の厚みを規定するために設けられ、各種の樹脂材料を広く適用することができるが、本実施形態ではフォトレジストにより製造される。液晶内スペーサー24は、第2電極22Bが形成された基材21Bの上に、フォトレジストを塗工して露光、現像することにより形成される。なお液晶内スペーサー24は、液晶用第1積層体12に設けるようにしてもよく、液晶用第1積層体12及び液晶用第2積層体13の双方に設けるようにしてもよい。また液晶内スペーサー24は、配向層23Bの上に設けるようにしてもよい。また、スペーサーは、いわゆるビーズスペーサーを適用してもよい。ビーズスペーサーは、球形状だけでなく、ロッド形状(円筒形状)や、楕円球形状等の形状を用いてもよい。
液晶内スペーサー24にビーズスペーサーを用いる場合、ビーズスペーサーは、配向層を形成した後に、配向層上に散布されることによって配置される。この場合、液晶層14内(配向層上)におけるビーズスペーサーの移動を抑制する観点から、ビーズスペーサーの表面に粘着剤等により形成される固着層を設けるようにしてもよい。
また、液晶層14内におけるビーズスペーサーの移動を抑制する観点から、配向層を形成する樹脂にビーズスペーサーを予め分散させて配向層の形成とともにビーズスペーサーを配置するようにしたり、液晶層を構成する液晶材料にビーズスペーサーを予め分散させて液晶層の形成とともにビーズスペーサーを配置するようにしたりすることも可能である。なお、ビーズスペーサーは、上述のフォトレジストのスペーサーと同様に、第1の積層体及び第2の積層体のいずれか一方に配置されるようにしてもよく、また、各積層体のそれぞれに配置されるようにしてもよい。
【0036】
[液晶層]
液晶層14は、この種の調光部材に適用可能な各種の液晶材料を広く適用することができる。具体的に、液晶層14には、重合性官能基を有していない液晶化合物として、ネマチック液晶化合物、スメクチック液晶化合物及びコレステリック液晶化合物を適用することができる。
ネマチック液晶化合物としては、例えば、ビフェニル系化合物、ターフェニル系化合物、フェニルシクロヘキシル系化合物、ビフェニルシクロヘキシル系化合物、フェニルビシクロヘキシル系化合物、トリフルオロ系化合物、安息香酸フェニル系化合物、シクロヘキシル安息香酸フェニル系化合物、フェニル安息香酸フェニル系化合物、ビシクロヘキシルカルボン酸フェニル系化合物、アゾメチン系化合物、アゾ系化合物、及びアゾオキシ系化合物、スチルベン系化合物、トラン系化合物、エステル系化合物、ビシクロヘキシル系化合物、フェニルピリミジン系化合物、ビフェニルピリミジン系化合物、ピリミジン系化合物、及びビフェニルエチン系化合物等を挙げることができる。
スメクチック液晶化合物としては、例えば、ポリアクリレート系、ポリメタクリレート系、ポリクロロアクリレート系、ポリオキシラン系、ポリシロキサン系、ポリエステル系等の強誘電性高分子液晶化合物を挙げることができる。
コレステリック液晶化合物としては、例えば、コレステリルリノレート、コレステリルオレエート、セルロース、セルロース誘導体、ポリペプチド等を挙げることができる。
また、市販品としては、例えばメルク社製MLC2166等の液晶材料を適用することができる。なお、ゲストホスト方式による場合、液晶層14には、液晶材料と調光に供する色素とが混入されるものの、ゲストホスト方式について提案されている液晶材料と色素との混合物を広く適用することができる。液晶セル15は、液晶層14を囲むように、シール材25が配置され、このシール材25により液晶の漏出が防止される。例えば、図1のように液晶フィルム10が四角形であり、液晶層14もまた四角形の場合、シール材25は、液晶層14の外側に枠状に配置される。ここでシール材25は、例えばエポキシ樹脂、紫外線硬化性樹脂等を適用することができる。
【0037】
[フレキシブルプリント配線基板]
第1電極22A及び第2電極22Bと外部との電気的接続を行うために、フレキシブルプリント配線基板18が配置されている。フレキシブルプリント配線基板18は、例えば、図2に示すように、第1電極22A及び第2電極22Bが液晶層14を挟んでいない領域において、第1電極22A及び第2電極22Bに挟まれて配置されることにより接続することができる。なお、フレキシブルプリント配線基板18は、図2に示した形態に限らず、例えば、第1電極22A及び第2電極22Bに挟まれていない形態としてもよいし、第1電極22A及び第2電極22Bの一方のみに接続するような形態としてもよい。
【0038】
図1に戻って、第1のガラス板33A及び第2のガラス板33Bは、それぞれ、合わせガラス1の表裏面に配置される板ガラスである。本実施形態では、第1のガラス板33A及び第2のガラス板33Bは、いずれも厚さ2mmの板ガラスを用いている。なお、以下の説明では、第1のガラス板33A及び第2のガラス板33Bは、平板ガラスとして説明するが、曲面ガラスや3D曲面で構成されたガラス板であってもよい。また、第1のガラス板33A及び第2のガラス板33Bは、液晶フィルム10よりも外形形状が大きく構成されている。
【0039】
第1の中間膜形成シート31A及び第2の中間膜形成シート31Bは、本実施形態では、PVB(ポリビニルブチラール)樹脂製の、厚さ760μmのシートを用いている。第1の中間膜形成シート31Aは、第1のガラス板33Aと液晶フィルム10とを接合させ、同様に、第2の中間膜形成シート31Bは、第2のガラス板33Bと液晶フィルム10とを接合させる。合わせガラス1が完成した状態では、第1の中間膜形成シート31A及び第2の中間膜形成シート31Bは、それぞれ、第1の中間膜及び第2の中間膜を構成する。よって、第1の中間膜形成シート31A及び第2の中間膜形成シート31Bは、合わせガラス1が完成した状態では、それぞれ、第1の中間膜31A及び第2の中間膜31Bとしてみることができる。
なお、第1の中間膜形成シート31A及び第2の中間膜形成シート31Bの素材としては、EVA(エチレン・酢酸ビニル共重合体)、PET(ポリエチレンテレフタラート)、COP(シクロオレフィンポリマー)等を用いてもよい。
【0040】
スペーサー32は、第1のガラス板33Aと第2のガラス板33Bとに挟まれる領域であって、かつ、液晶フィルム10が配置されない領域の少なくとも一部に配置されている。したがって、スペーサー32は、液晶フィルム10と同一平面となる位置に配置されており、液晶フィルム10が配置されていない空隙を埋めることができる。スペーサー32は、液晶フィルム10よりも厚さが厚いことが望ましい。また、スペーサー32は、第1の中間膜形成シート31A及び第2の中間膜形成シート31Bと同一素材を用いて構成すれば、第1の中間膜形成シート31A及び第2の中間膜形成シート31Bとの接合強度を高めることができる。
図1に例示した形態では、スペーサー32は、中抜きの四角形に形成されており、外形形状は第1のガラス板33A及び第2のガラス板33Bと同じであり、内側の抜き形状は、液晶フィルム10の外形形状と同等に構成されている。したがって、スペーサー32は、液晶フィルム10が配置されていない空隙を残さず埋めるように配置されていることとなる。
スペーサー32と液晶フィルム10との寸法関係と、スペーサー32の素材と、スペーサー32の形状及び配置とについての詳細は、後述する。
【0041】
傾斜緩和部材34は、フレキシブルプリント配線基板18の厚みによって生じる積層体30における第1のガラス板33Aと第2のガラス板33Bとの相対的な傾きを緩和する部材である。傾斜緩和部材34は、例えば、図1に示すように、液晶フィルム10を挟んでフレキシブルプリント配線基板18と対向する位置に配置される。この傾斜緩和部材34の配置位置は、一例であり、合わせガラス1の大きさや形状に応じて、最適な位置に配置するとよい。また、傾斜緩和部材34は、その厚さがフレキシブルプリント配線基板18と同じであることが望ましい。さらに、傾斜緩和部材34は、フレキシブルプリント配線基板18と同じ、又は、近い素材で構成されていることが望ましい。
【0042】
次に、合わせガラス1の製造方法について説明する。
図3は、合わせガラス1の製造方法を説明するフローチャートである。
図4は、図3中の積層体配置工程をより詳しく示したフローチャートである。
合わせガラス1の製造は、ステップ(以下、単に「S」と示す。)10で、積層体配置工程を行うことから開始する。この積層体配置工程については、図4を参照して説明する。
【0043】
S11では、第2のガラス板33Bを配置する(第2のガラス板配置工程)。なお、後述する当て第2の当て板41Bを用いる場合には、第2の当て板41Bを配置した上に、第2のガラス板33Bを配置する。
【0044】
S12では、第2の中間膜形成シート31Bを第2のガラス板33Bの上に配置する(第2の中間膜形成シート配置工程)。
【0045】
S13では、液晶フィルム10を第2の中間膜形成シート31Bの上に配置する(液晶フィルム配置工程)。ここで、本実施形態では、液晶フィルム10に既にフレキシブルプリント配線基板18が接続されているので、フレキシブルプリント配線基板18もこのS13で配置される(フレキシブルプリント配線基板配置工程)。
【0046】
S14では、傾斜緩和部材34を上述した所定の位置に配置する(傾斜緩和部材配置工程)。
【0047】
S15では、スペーサー32を第2の中間膜形成シート31Bの上であって、かつ、液晶フィルム10が配置されていない位置に配置する。なお、スペーサー32は、フレキシブルプリント配線基板18及び傾斜緩和部材34と重なるが、後の加圧工程等によりスペーサー32が変形するので、本実施形態では、そのまま重なっていて支障はない。
【0048】
S16では、第1の中間膜形成シート31Aを、液晶フィルム10及びスペーサー32の上に配置する(第1の中間膜形成シート配置工程)。
【0049】
S17では、第1のガラス板33Aを第1の中間膜形成シート31Aの上に配置する(第1のガラス板配置工程)。
以上の工程によって、積層体30の配置(仮積層)が完了する。
【0050】
図5は、合わせガラス1の製造過程で構成される積層体支持構造物50を説明する図である。
積層体30は、各構成部材が互いに固定されていないので、そのままでは、製造過程で位置ズレが生じたりするおそれがある。また、本実施形態の合わせガラス1は、液晶フィルム10を挟み込んだ構成となっていることから、後述の加圧工程では、第1のガラス板33A及び第2のガラス板33Bに均等に圧力をかける必要がある。そこで、本実施形態では、積層体30を製造行程中に安定的に保持することができる積層体支持構造物50を構成する。
【0051】
本実施形態の積層体支持構造物50は、積層体30と、第1の当て板41Aと、第2の当て板41Bと、支持体43とを備えている。
【0052】
第1の当て板41A及び第2の当て板41Bは、積層体30を上下から挟み込むように配置される部材である。本実施形態の第1の当て板41A及び第2の当て板41Bは、第1のガラス板33A及び第2のガラス板33Bと同等、又は、それ以上の厚みのガラスを用いるとよい。第1の当て板41A及び第2の当て板41Bは、第1のガラス板33A及び第2のガラス板33Bよりも厚さの厚いガラスを用いることにより、加圧時に第1のガラス板33A及び第2のガラス板33Bが撓むことを防止することが主な目的である。したがって、第1の当て板41A及び第2の当て板41Bは、ガラスに限らず、他の部材により構成してもよい。なお、第1のガラス板33A及び第2のガラス板33Bの剛性が十分に高い場合には、第1の当て板41A及び第2の当て板41Bを省略してもよい。
【0053】
支持体43は、積層体30の外周に沿って配置される枠形状の部材である。支持体43は、後述する加圧工程における第1の中間膜形成シート31A及び前記第2の中間膜形成シート31Bよりも剛性が高い材料により構成されている。本実施形態ではアルミニウム製の角材を用いている。
また、支持体43の高さは、積層体30と、第1の当て板41A及び第2の当て板41Bとを重ねた高さに対して適切な範囲内(高さの差が所定値内)にあることが必要となる。なお、第1の当て板41A及び第2の当て板41Bを用いずに合わせガラスの製造を行う場合には、支持体43の高さは、積層体30の高さとの比較において、適切な範囲内であることが必要となる。
【0054】
なお、支持体43は、それぞれが枠形状に構成された部材である例を示したが、これに限らず、部分的に分解可能な構成として、積層体30の周囲における着脱が容易となる構成としてもよい。
【0055】
図3に戻って、S20では、積層体30の周囲に支持体43を配置する(支持体配置工程)。
【0056】
S30では、積層体の内部を真空状態とする真空工程を行う。
本実施形態では、この真空工程と、後述の加圧工程とを、真空ラミネーターによるプレラミネート加工と呼ばれる手法によって行う。
図6は、真空ラミネーターによるプレラミネート加工の概要を説明する図である。
真空ラミネーターによるプレラミネート加工では、第1チャンバ61Aと第2チャンバ61Bの2つの空間を備えた圧力容器61を用いる。第1チャンバ61Aと第2チャンバ61Bとの境界には、シリコンゴムシート64が設けられており、第1チャンバ61Aと第2チャンバ61Bとの間は気密状態を保てるようになっている。また、第1チャンバ61Aと第2チャンバ61Bとには、それぞれ、通気孔62,63が設けられており、外部のエアポンプにそれぞれが独立して接続されている。したがって、第1チャンバ61Aと第2チャンバ61Bとは、それぞれの空間を独立して減圧する程度を制御可能である。また、第1チャンバ61Aの底面は、ヒーターが内蔵されており、第1チャンバ61A内の被加工物を加熱することができる。
【0057】
このS30では、第1チャンバ61A内に積層体支持構造物50を配置して、第1チャンバ61Aと第2チャンバ61Bとの両方を真空状態として、積層体支持構造物50に残留する空気を除去する。本実施形態の真空工程は、常温下で行った。
【0058】
図3に戻って、S40では、積層体支持構造物50ごと、積層体30に圧力を加える(加圧工程)。ここで、加圧工程は、積層体30を加熱した状態で行われる。本実施形態では、積層体30を積層体支持構造物50ごと加熱した。また、加圧工程は、0.5気圧以下の圧力で行われる。
このS40の加圧工程は、S30の真空工程に引き続いて連続的に行われ、先に示した圧力容器61の第1チャンバ61A内に積層体支持構造物50を真空状態においたまま行われる。加圧工程では、第1チャンバ61Aを真空状態に維持し、かつ、第2チャンバ61B内を加圧して、第1チャンバ61Aと第2チャンバ61Bとの差圧が積層体30に加えるべき圧力と一致するように調整する。例えば、積層体30に0.5気圧を加える場合には、第2チャンバ61B内の吸引を抑制したり停止したりして、0.5気圧相当の空気が第2チャンバ61B内に流入するようにする。
【0059】
図7は、加圧工程におけるシリコンゴムシート64の状態を模式的に示した図である。
空気が第2チャンバ61Bに送り込まれて、圧力が第2チャンバ61Bから第1チャンバ61Aに加えられると、この圧力によってシリコンゴムシート64が第1チャンバ61Aに向けて押されて、シリコンゴムシート64は、積層体支持構造物50に密着し、積層体支持構造物50に対しても圧力が加わる。
本実施形態の加圧工程では、第1の中間膜形成シート31A及び第2の中間膜形成シート31BのTg±10℃、0.5気圧の状態を維持した。
加圧工程が終了すると、合わせガラスとしてのプレラミネートが終了する。
【0060】
S50では、オートクレーブ工程を行う。このオートクレーブ工程では、プレラミネートが終了した積層体30を、オートクレーブ用の圧力容器に移し、高圧高温環境下に積層体30を所定時間おいて、合わせガラスとしての接合を強めて強度を高める。本実施形態では、120℃、8気圧の環境下にプレラミネート後(加圧工程後)の積層体30をおいて、オートクレーブ工程とした。オートクレーブ工程が終了すれば、合わせガラス1として完成となる。なお、必要に応じて、以下の切除工程を行うこともできる。
【0061】
S60では、オートクレーブ工程が完了した積層体30(合わせガラス1)の外周の一部を切除する切除工程を行う。なお、この切除工程は、行わなくてもよい。
【0062】
次に、スペーサー32に関してより詳しく説明する。
図8は、スペーサー32と液晶フィルム10との高さの関係がプレラミネート結果に与える影響を調べた実験結果をまとめた図である。
図8に示す実験は、PVB中間膜を素材とするスペーサー32の高さから液晶フィルム10の高さを引いた値(高さの差)を変化させた実験である。他の条件は、上述した条件で一定としている。実験に用いた試験片(合わせガラス)の大きさは、1辺が100mmの正方形である。判定の内容は、液晶の偏りの発生の有無と、液晶フィルム10内の気泡の発生の有無と、液晶フィルム10と中間膜(第1の中間膜形成シート31A、第2の中間膜形成シート31B)との間の接着状態である。なお、気泡の発生とは、ここでは、気泡と表現しているものの、空間が生じている状態であり、真空状態であるか、気体が含まれているかは問わない。判定結果の”excellent”は、液晶の偏りが発生しない、又は、セル内の気泡が発生しないことを示し、”good”は、複数回の実験においてごく希に発生するものであり、”bad”は、頻繁に発生するものである。接着状態に関する判定は、オートクレーブ工程後の判定であり、判定結果の”excellent”は、良好な接着状態を維持しており、”good”は、複数回の実験においてごく希に接着不良が生じるものであり、”bad”は、頻繁に接着不良が発生するものである。
なお、図8の判定結果を含め本明細書における判定結果中において、”excellent”、”good”、”bad”の判定結果を用いるが、いずれの場合においても、上述した基準で判定を行なっている。また、判定結果が、”excellent”、及び、”good”は、製品としての使用可能なものであり、”bad”は、製品としての使用不可能なものである。
【0063】
図8の結果から、スペーサー32の高さ(厚み)は、液晶フィルム10の高さ(厚み)以上であることが望ましい。また、スペーサー32の高さから液晶フィルム10の高さを引いた値(高さの差)は、0mm以上、+0.90mm以下であることが望ましい。より好ましくは、スペーサー32の高さから液晶フィルム10の高さを引いた値(高さの差)は、+0.12mmが望ましい。
【0064】
図9は、スペーサー32の材料がプレラミネート結果に与える影響を調べた実験結果をまとめた図である。
図9に示す実験は、スペーサー32の材料を変化させた実験である。他の条件は、上述した条件で一定としている。なお、スペーサー32の高さから液晶フィルム10の高さを引いた値(高さの差)は、+0.12mmとした。
実験に用いたスペーサー32の材料としては、第1の中間膜形成シート31A、第2の中間膜形成シート31Bと同一材料のPVB中間膜と、これとは異なる中間膜として利用可能なEVA中間膜と、PET基材と、COP基材とを用いた。
図9の結果から、上述した、PVB中間膜と、EVA中間膜と、PET基材と、COP基材とのうちのいずれの材料であっても、液晶の偏り、セル内気泡、セルと中間膜の接着のいずれの判定においても、”bad”の判定結果を含まないので、製品においてスペーサー32として用いることができることが確認できた。より望ましくは、PVB中間膜又はEVA中間膜をスペーサー32の材料として用いるとよい。
【0065】
図10Aは、PVB中間膜により形成されたスペーサー32の形状と配置がプレラミネート結果に与える影響を調べた実験結果をまとめた図である。
図10Aに示す実験は、スペーサー32の形状と配置を変化させた実験である。他の条件は、上述した条件で一定としている。なお、スペーサー32の高さから液晶フィルム10の高さを引いた値(高さの差)は、+0.12mmとした。
図10Bは、PET基材により形成されたスペーサー32の形状と配置がプレラミネート結果に与える影響を調べた実験結果をまとめた図である。図10Bの実験では、材料が異なる他は、上記図10Aと同様な条件とした。
スペーサー32の形状と配置の組合せとして、図10A及び図10B中に記載した7形態について実験を行った。この形態を図11から図17に示した。
【0066】
図11は、形態1-1のスペーサー32の配置を示す図である。
形態1-1は、図11に示すように、液晶フィルム10の外周を全周囲むロの字形状のスペーサー32を配置する形態である。
図12は、形態1-2のスペーサー32の配置を示す図である。
形態1-2は、図12に示すように、直線形状の4本のスペーサー32を配置する形態である。
図13は、形態1-3のスペーサー32の配置を示す図である。
形態1-3は、図13に示すように、直線形状の2本のスペーサー32を、液晶フィルム10を挟んで対向する2辺に配置する形態である。
図14は、形態1-4のスペーサー32の配置を示す図である。
形態1-4は、図14に示すように、直線形状の1本のスペーサー32を配置する形態である。
図15は、形態1-5のスペーサー32の配置を示す図である。
形態1-5は、図15に示すように、L形状の2本のスペーサー32を配置する形態である。
図16は、形態1-6のスペーサー32の配置を示す図である。
形態1-6は、図16に示すように、L字形状の1本のスペーサー32を配置する形態である。
図17は、形態1-7のスペーサー32の配置を示す図である。
形態1-7は、図17に示すように、液晶フィルム10の外周を全周囲みながら、フレキシブルプリント配線基板18の位置を除いた矩形状のスペーサー32を配置する形態である。
【0067】
図10A及び図10Bの結果から、少なくとも液晶フィルム10を挟んで対向する2辺にスペーサー32を配置することが望ましいことが確認できる。また、スペーサー32は、液晶フィルム10の外周を全周囲んで配置されていることがより望ましい。また、図10AのPVB中間膜の場合には、形態1-7のようにフレキシブルプリント配線基板18の位置で重ならないようにするよりも、スペーサー32を均等に配置した方が望ましいことが確認できる。一方、図10BのPET基材の場合には、加熱してもPET基材が変形しにくいことから、フレキシブルプリント配線基板18の位置で重ならないように配置することが望ましい。
また、図10Aの結果から、形態1-4及び形態1-6は、”bad”の判定結果を含むため、使用不可であるが、その他の形態については、”bad”の判定結果を含まないため、製品として使用可能であることが確認できた。
【0068】
次に、合わせガラスにおける中間膜の占有率について説明する。
ここで、占有率とは、第1のガラス板33Aと第2のガラス板33Bとに挟まれる領域において、液晶フィルム10及びスペーサー32が配置されている領域の面積割合を%表示で示したものである。なお、この占有率の値は、プレラミネートを行う前の部材寸法における値とする。理想的には、100%とすることが望ましいといえる。しかし、100%とすると、寸法ばらつきや組み立てばらつきを考慮すると、スペーサー32が液晶フィルム10と重なって配置されてしまうおそれが高くなる。そこで、スペーサー32が液晶フィルム10との間にどの程度の隙間を設けることがよいか、占有率をパラメータとして調べた。
【0069】
図18は、スペーサー32の占有率がプレラミネート結果に与える影響を調べた実験結果をまとめた図である。
図19は、図18の各形態を説明する図である。なお、図19は、配置工程直後の状態、すなわち、各層を単に重ねて配置しただけの状態であって、まだ熱を加えていないことから各層が溶融したり接合したりしていない状態を、説明のために模式的に示した図であり、製造後の合わせガラス1の積層状態を示すものではない。
図18に示す実験は、スペーサー32の占有率を変化させた実験である。
図18中の中間膜気泡の判定は、中間膜部分において残存する気泡の発生状況を判定した結果である。判定基準については、セル内気泡の判定基準と同様である。
【0070】
形態2-1は、スペーサー32を設けない形態であり、占有率は99%である。なお、この形態2-1では、上記占有率の定義では、スペーサー32が配置されていないことから占有率はもっと低い値となるが、図19(a)に示すように、第2の中間膜形成シート31Bが第1の中間膜形成シート31Aと接合されて実質的に空間を埋めることから、図19(a)中に示した三角形形状の空隙が残ることとして占有率を演算して99%とした。
【0071】
形態2-2は、スペーサー32と液晶フィルム10との間の隙間が0であり、占有率は、100%である。図19(b)は、この形態2-2を示している。
形態2-3及び形態2-4は、スペーサー32と液晶フィルム10との間の隙間が0であり、占有率は、100%であるが、液晶フィルム10との重なりが生じている場合である。図19(d)は、形態2-3を示し、図19(e)は、形態2-4を示している。
形態2-5は、スペーサー32と液晶フィルム10との間の隙間が1mmであり、占有率は、91%である。図19(c)は、この形態2-5を示している。
【0072】
また、占有率を大きく下げるために、液晶フィルム10の形状を変更した物を作製して、比較のために実験を行った。
形態2-6は、液晶フィルム10の角に角R=20mmとして占有率を下げた形態であり、占有率は、85%である。
形態2-7は、液晶フィルム10の形状を半径R=40mmの円形として占有率を下げた形態であり、占有率は、69%である。
なお、スペーサー32の形状は、いずれもロの字形状である。
【0073】
図18に示すように、スペーサー32と液晶フィルム10との間の隙間を0として、占有率100%とすると、適切に両者が配置されている場合(形態2-2)には、良好な結果が得られるものの、両者が重なってしまうと、非常に悪い結果となっている(形態2-3、形態2-4)。一方、占有率が大きく下がりすぎてしまっている形態(形態2-6及び形態2-7)についても、非常に悪い結果となっている。
そこで、形態2-5のように、スペーサー32と液晶フィルム10との間の隙間を適度に空けて配置することが、望ましいといえる。より具体的には、占有率を91%以上とし、かつスペーサー32と液晶フィルム10との間の隙間を1mm空けることが望ましい。この場合、プレラミネートの前には、スペーサー32と液晶フィルム10との間には空隙が存在しているが、この空隙があった部分には、プレラミネート後、第1の中間膜形成シート31A及び第2の中間膜形成シート31Bが部分的に入り込んでおり、また、スペーサー32もこの空隙に入り込み、空隙が埋められている。
【0074】
以上説明したように、本実施形態では、スペーサー32を配置したことにより、プレラミネートの成功率が飛躍的に向上する。この理由について説明する。
液晶フィルム10は、その内部に液晶層が形成されており、この液晶フィルム10を挟み込む合わせガラスは、従来の合わせガラスでは、あり得ないような柔らかい素材を挟み込むこととなる。したがって、プレラミネートの加圧工程において、僅かであっても圧力のかかり方に片寄り等が存在すると、その影響を受けて、液晶層が流動してしまい、液晶フィルム10に液晶溜まりや空隙が生じてしまう。特に、真空ラミネーターによるプレラミネート加工では、シリコンゴムシート64が加圧時に積層体30の外周部分、すなわち、第1のガラス板33A又は第2のガラス板33Bの外周部分を押圧することにより、第1のガラス板33A又は第2のガラス板33Bを歪ませてしまうことが考えられる。
【0075】
本実施形態では、スペーサー32を周囲に配置したことにより、第1のガラス板33A又は第2のガラス板33Bの外周部分に押圧力がかかってしまっても、スペーサー32があることによって第1のガラス板33A又は第2のガラス板33Bの変形を抑制することができ、第1のガラス板33A及び第2のガラス板33Bに均等に圧力をかけることが可能となっている。よって、液晶層に不要な流動等を生じさせることなく、適切にプレラミネートを行うことが可能である。したがって、液晶溜まりや空隙の発生を低減できる合せガラスの製造方法を提供することができる。
【0076】
また、本実施形態では、液晶フィルム10の液晶層14の周囲を囲むようにシール材25が配置され、液晶フィルム10の周囲にスペーサー32が配置されているため、平面視において、シール材25の外側がスペーサー32で囲まれている。
後述するように、シール材25に太陽光が長時間照射されると、シール材25の材料によっては、シール材25が劣化するおそれがあり、シール材25が劣化してしまうと、そのシール機能が低下して、液晶層14が漏れ出してしまうおそれがある。
しかし、本実施形態では、平面視において、シール材25の外側がスペーサー32で囲まれているため、スペーサー32により、合わせガラス1の側面方向からの光がシール材25に直接当たらないように遮ることができ、シール材25の劣化を防止できる。
この効果は、スペーサー32が液晶フィルム10の外周を全周囲んで配置される場合、すなわち、スペーサー32がシール材25の外側を全周囲んで配置される場合において、顕著に得られるが、スペーサー32が液晶フィルム10の外周に配置されていれば、一部が途切れて配置されていても、得られる。
【0077】
なお、上述した実験は、1辺が100mmのものであったが、支持体が上述した適切な位置に配置されていれば、良好なプレラミネート結果が得られることを、1辺が300mmの合せガラスを用いて確認済みであり、この結果から、さらに大きなサイズの合せガラスにおいても同様となることが確認できた。
【0078】
(第2実施形態)
図20は、第2実施形態の合わせガラス1AがフレームFに取り付けられた使用状態を示す断面図である。この第2実施形態及び後述の第3実施形態では、合わせガラス1A(1B)が枠状のフレーム(窓枠)Fに固定されて取り付けられた構成として説明する。
第2実施形態の合わせガラス1Aは、実際の使用にあたり、必要な構成をさらに追加した構成となっているが、基本的な構成は第1実施形態の合わせガラス1と同様である。よって、前述した第1実施形態と同様の機能を果たす部分には、同一の符号を付して、重複する説明を適宜省略する。
図20の断面は、合わせガラス1AがフレームFに取り付けられた状態を、合わせガラス1Aの端部近傍で切断して示している。合わせガラス1Aは、図20に示す層構成が全周にわたって構成されており、接着剤80を用いてフレームFに取り付けられている。
なお、合わせガラス1Aを車両に取り付ける場合には、例えば、車体がフレームFに相当し、合わせガラス1Aを建物に取り付ける場合には、例えば、窓枠がフレームFに相当する。また、図20中で下方が車内側や屋内側であり、上方が車外側や屋外側であるとして示しており、これらを図中に”INSIDE”、”OUTSIDE”と示した。
【0079】
第2実施形態の合わせガラス1Aは、遮光部70Aをさらに備えている点で、第1実施形態の合わせガラス1と異なっている。
遮光部70Aは、少なくとも紫外光領域の波長の光を遮光する作用を備えた材料で構成されており、シール材25に到達する外部からの光を遮光する。遮光部70Aは、合わせガラスの外周に沿って全周に配置されている。遮光部70Aは、遮光機能を発揮できればよいので、光吸収作用によって遮光する光吸収部として構成してもよいし、光を反射する作用によって遮光する光反射部として構成してもよい。
【0080】
第2実施形態の遮光部70Aは、合わせガラス1Aの端面からシール材25よりも内側の位置まで配置されている。また、第2実施形態の遮光部70Aは、液晶フィルム10と第1のガラス板33Aとの間となる位置に配置されている。より具体的には、本実施形態では、遮光部70Aは、第1のガラス板33Aと第1の中間膜31Aとの間に設けられている。
遮光部70Aを形成するための具体的な形態及び具体的な製造方法は、どのようなものであってもよい。例えば、遮光部70Aは、第1のガラス板33A上、又は、第1の中間膜31A上に印刷によって形成してもよい。
遮光部70Aを第1のガラス板33A上に印刷により形成する場合には、例えば、液状の黒セラミックを印刷して乾燥することにより形成することができる。
また、遮光部70Aを第1の中間膜31A上に印刷により形成する場合には、例えば、カーボンブラック等をインキとして用いることができる。
さらに、遮光部70Aは、遮光フィルム等を第1のガラス板33Aと第1の中間膜31Aとの間に配置して構成してもよい。遮光部70Aを遮光フィルム等の配置により形成する場合には、例えば、黒色に着色されたPET基材等を遮光部70Aの素材として用いることができる。なお、遮光フィルム等を第1のガラス板33Aと第1の中間膜31Aとの間に配置して構成すると、遮光フィルム等を第1のガラス板33Aとの間での接着力が十分とならない場合が想定される。そのような場合には、遮光フィルム等を第1のガラス板33Aとの間にさらに、中間膜等を配置するとよい。
【0081】
図20に示すように、合わせガラス1Aは、第1のガラス板33Aが車外側又は屋外側となり、第2のガラス板33Bが車内側又は屋内側となるようにして、フレームFに取り付けられる。ここで、第2実施形態のフレームFは、シール材25の位置よりも合わせガラス1Aの内側まで延在して構成されている。よって、合わせガラス1Aの端部や車内側又は屋内側からシール材25へ到達する光は、フレームFによって遮られる。また、見た目においても、フレームFによって遮られてシール材25は車内側又は屋内側から見えないように隠される。
一方、車外側又は屋外側からシール材25へ向かう光に関しては、遮光部70Aが仮に配置されていない場合、車外側又は屋外側からシール材25へ太陽光等が直に照射されることとなる。シール材25に太陽光が長時間照射されると、シール材25の材料によっては、シール材25が劣化するおそれがある。シール材25が劣化してしまうと、そのシール機能が低下して、液晶層14が漏れ出してしまうおそれもある。
そこで、本実施形態では、遮光部70Aが上述した位置に配置されることにより、シール材25へ直接光が照射されることを防ぎ、シール材25の劣化を防止している。また、遮光部70Aによって、車外側又は屋外側からシール材25を隠すことにより、意匠性を向上することができる。
【0082】
以上説明したように、第2実施形態によれば、シール材25へ直接光が照射されることを防ぎ、シール材25の劣化を防止でき、かつ、意匠性を向上できる。
また、フレームFが遮光性を有していない場合であっても、スペーサー32が配置されていることにより、合わせガラスの側面方向からの光がシール材25に直接当たらないように遮ることができ、シール材25の劣化を防止できる。
【0083】
(第3実施形態)
図21は、第3実施形態の合わせガラス1BがフレームFに取り付けられた使用状態を示す断面図である。
第3実施形態の合わせガラス1Bは、遮光部70A、70Bを備える点が第2実施形態と異なるが、基本的な構成は第2実施形態の合わせガラス1Aと同様である。よって、前述した第2実施形態と同様の機能を果たす部分には、同一の符号を付して、重複する説明を適宜省略する。
【0084】
第3実施形態では、遮光部70Aと遮光部70Bとの二つの(二層の)遮光部を備えている。
第3実施形態の遮光部70Aは、第2実施形態の遮光部70Aと同様に構成されている。
第3実施形態の遮光部70Bは、液晶フィルム10と第2のガラス板33Bとの間となる位置に配置されている。より具体的には、本実施形態では、遮光部70Bは、第2のガラス板33Bと第2の中間膜31Bとの間に設けられている。遮光部70Bのその他の構成、形成方法等は、第1実施形態の遮光部70Aと同様である。
【0085】
以上説明したように、第3実施形態では、液晶フィルム10と第1のガラス板33Aとの間となる位置、及び、液晶フィルム10と第2のガラス板33Bとの間となる位置の双方に遮光部(70A,70B)を配置した。よって、合わせガラス1Aの表裏いずれの方向からの光についても、シール材25へ到達することを遮ることができる。また、表裏いずれの側から見ても、シール材25を隠すことができ、意匠性を向上させることができる。よって、例えば、図21に示すように、フレームFがシール材25の外側までしか到達していないような場合であっても、車内側又は屋内側からシール材25へ到達する光を遮ることができる。したがって、第3実施形態の合わせガラス1Bは、シール材25の劣化を防止でき、かつ、シール材25を見えないように隠すことができる。さらに、合わせガラス1Bが平板状であれば、表裏の区別をすることなく用いることが可能であり、施工性を向上できる。
また、フレームFが遮光性を有していない場合であっても、スペーサー32が配置されていることにより、合わせガラスの側面方向からの光がシール材25に直接当たらないように遮ることができ、シール材25の劣化を防止できる。
【0086】
(第4実施形態)
図22は、第4実施形態の合わせガラス1Cの端部付近を示す断面図である。
この第4実施形態及び後述の第5実施形態では、車両等のスライド開閉可能な窓に用いられる合せガラス1C(1D)を例として説明する。図22に示す断面は、スライド開閉可能な窓として用いられる合せガラス1Cの開状態において車両等のフレームから離れて露出する部位の端部付近を切断して示している。
第4実施形態の合わせガラス1Cは、実際の使用にあたり、必要な構成をさらに追加した構成となっているが、基本的な構成は第1実施形態の合わせガラス1と同様である。よって、前述した第1実施形態と同様の機能を果たす部分には、同一の符号を付して、重複する説明を適宜省略する。
【0087】
第4実施形態の合わせガラス1Cは、遮光部70Cを備えている点で、第1実施形態の合わせガラス1と異なっている。
遮光部70Cは、少なくとも紫外光領域の波長の光を遮光する作用を備えた材料で構成されており、シール材25に到達する外部からの光を遮光する。遮光部70Cは、合わせガラス1Cの端面を覆い、かつ、端面からシール材25よりも内側の位置まで合わせガラス1Cを挟んで配置されている。また、遮光部70Cが配置される位置は、合わせガラスの外周に沿った位置であり、少なくとも窓を開状態としたときに露出する端部に沿って配置されている。なお、窓の開閉機構が接続されている側の端部付近で車体内部等に隠れる部位については、遮光部70Cは設けなくてもよい。
遮光部70Cは、遮光機能を発揮できればよいので、光吸収作用によって遮光する光吸収部として構成してもよいし、光を反射する作用によって遮光する光反射部として構成してもよい。
【0088】
遮光部70Cを形成するための具体的な形態及び具体的な製造方法は、どのようなものであってもよい。例えば、遮光部70Cは、樹脂成形部品を嵌め合せて接着固定して構成してもよいし、樹脂や塗料等を塗布して構成してもよいし、テープやシート等を貼り合わせて構成してもよい。
【0089】
第4実施形態によれば、合わせガラス1Cは、遮光部70Cを備えているので、シール材25に直接光が当たらないように遮ることができ、シール材25の劣化を防止できる。
また、スペーサー32を配置したことにより、シール材25を合わせガラスの内側に、側面から離して配置できるので、合わせガラスの側面方向からの光がシール材25に直接当たらないように遮ることができ、シール材25の劣化を防止できる。
【0090】
(第5実施形態)
図23は、第5実施形態の合わせガラス1Dの端部付近を示す断面図である。
第5実施形態の合わせガラス1Dは、実際の使用にあたり、必要な構成をさらに追加した構成となっているが、基本的な構成は第3実施形態の合わせガラス1Bと同様である。よって、前述した第3実施形態と同様の機能を果たす部分には、同一の符号を付して、重複する説明を適宜省略する。
【0091】
第5実施形態の合わせガラス1Dは、第3実施形態の合わせガラス1Bに、遮光部70Dをさらに加えた形態に相当する。また、第5実施形態の合わせガラス1Dは、スライド開閉可能な形態で用いられる点でも、第3実施形態の合わせガラス1Bと異なっている。
遮光部70Dは、第4実施形態の遮光部70Cと基本的には同様な構成をしているが、端面からシール材25よりも外側の位置までしか合わせガラス1Dを挟んで配置されていない点が第4実施形態の遮光部70Cと異なっている。
【0092】
先に説明した第4実施形態の遮光部70Cは、合せガラスの端部に設けられているが、窓を開状態とした場合には、目立つ位置となる。したがって、意匠性を向上する観点から、遮光部70Cを小さくしたい場合がある。そのような場合、図23に示すようにシール材25まで遮光部70Dが到達できないことがあり得る。そのような場合には、図23に示すように、遮光部70A,70Bを遮光部70Dとともに配置することにより、シール材25に到達する光を遮ることができ、シール材25の劣化を防止できる。
また、スペーサー32を配置したことにより、シール材25を合わせガラスの内側に、側面から離して配置できるので、合わせガラスの側面方向からの光がシール材25に直接当たらないように遮ることができ、シール材25の劣化を防止できる。
【0093】
(変形形態)
以上説明した実施形態に限定されることなく、種々の変形や変更が可能であって、それらも本発明の範囲内である。
【0094】
(1)各実施形態において、VA方式の液晶フィルムについて説明したが、本発明はこれに限定されず、電位差により調光量を調整できる他の方式であってもよい。
例えば、VA方式以外の液晶フィルムとして、TN方式(twisted Nematic)を用いてもよい。TN方式は、液晶フィルムは、電圧が印加されていないときは液晶分子が水平に並び、光を通過させて画面が「白」になる。徐々に電圧を印加していくと、液晶分子が垂直に立ち上がっていき、光をさえぎって画面が黒くなる方式である。
【0095】
(2)各実施形態において、液晶セルを直線偏光板で挟持して液晶フィルムを構成する場合ついて述べたが、本発明はこれに限らず、ゲストホスト型液晶による液晶層を使用して直線偏光板を省略して液晶フィルムを構成する場合にも広く適用することができる。
【0096】
(3)第1実施形態において、傾斜緩和部材34は、矩形形状であって、フレキシブルプリント配線基板18と対向する位置に配置した例を挙げて説明した。これに限らず、例えば、枠形状の傾斜緩和部材を配置してもよく、傾斜緩和部材の形状及び配置は、適宜変更可能である。
【0097】
(4)第1実施形態において、加圧工程には、真空ラミネーターによるプレラミネート加工を用いた例を挙げて説明した。これに限らず、例えば、熱ラミネーターを利用して加圧工程を行ってもよいし、真空バック法やチューブ法であっても、本発明を適用可能である。
【0098】
(5)第2実施形態から第5実施形態作成において、スペーサー32を備える構成を例に挙げて説明した。これに限らず、例えば、スペーサー32を省略した合わせガラスとしてもよい。
【0099】
なお、各実施形態及び変形形態は、適宜組み合わせて用いることもできるが、詳細な説明は省略する。また、本発明は以上説明した各実施形態によって限定されることはない。
【符号の説明】
【0100】
1 合せガラス
10 液晶フィルム
12 液晶用第1積層体
13 液晶用第2積層体
14 液晶層
15 液晶セル
16 直線偏光板
17 直線偏光板
18 フレキシブルプリント配線基板
21A 基材
21B 基材
22A 第1電極
22B 第2電極
23A 配向層
23B 配向層
24 液晶内スペーサー
25 シール材
30 積層体
31A 第1の中間膜形成シート(第1の中間膜)
31B 第2の中間膜形成シート(第2の中間膜)
32 スペーサー
33A 第1のガラス板
33B 第2のガラス板
34 傾斜緩和部材
41A 第1の当て板
41B 第2の当て板
43 支持体
50 積層体支持構造物
61 圧力容器
61A 第1チャンバ
61B 第2チャンバ
62 通気孔
63 通気孔
64 シリコンゴムシート
70A,70B,70C,70D 遮光部
80 接着剤
F フレーム
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10A
図10B
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23