(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023165722
(43)【公開日】2023-11-17
(54)【発明の名称】人工心臓弁
(51)【国際特許分類】
A61F 2/24 20060101AFI20231110BHJP
【FI】
A61F2/24
【審査請求】有
【請求項の数】20
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023140494
(22)【出願日】2023-08-30
(62)【分割の表示】P 2021164810の分割
【原出願日】2015-05-07
(31)【優先権主張番号】14/704,861
(32)【優先日】2015-05-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】61/991,904
(32)【優先日】2014-05-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】500218127
【氏名又は名称】エドワーズ ライフサイエンシーズ コーポレイション
【氏名又は名称原語表記】Edwards Lifesciences Corporation
【住所又は居所原語表記】One Edwards Way, Irvine, CALIFORNIA 92614, U.S.A.
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】タミール・エス・リーヴァイ
(72)【発明者】
【氏名】ロン・シャロニ
(72)【発明者】
【氏名】エレナ・シャーマン
(72)【発明者】
【氏名】オレン・エイチ・ウィントナー
(72)【発明者】
【氏名】ケヴィン・ディ・ラップ
(72)【発明者】
【氏名】ソン・ヴイ・グエン
(72)【発明者】
【氏名】エージェイ・チャドハ
(72)【発明者】
【氏名】ジェフ・リンドストローム
(57)【要約】
【課題】径方向に収縮可能かつ拡張可能な人工心臓弁の実施形態が開示される。
【解決手段】この人工弁は、環状フレーム、弁尖、内方スカート、および外方スカートを備えることが可能である。外方スカートは、フレームの流入端部部分の外側に固定され、外方スカートは、弁が拡張構成にある場合に径方向に外方に座屈し弁が収縮構成にある場合に平坦状になる長手方向弛みを有し得る。いくつかの実施形態では、外方スカートは、弁の周方向よりも弁の軸方向においてより高い剛直性である。さらなる実施形態では、外方スカートは、外方スカートの径方向外方座屈を強化するように設定された形状記憶を有する形状記憶材料から作製された繊維を含む自己拡張可能布帛を備える。また、収縮構成または部分収縮構成へとかかる弁をクリンプ状にする方法が開示される。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
植込み可能な人工弁であって、
流入端部および流出端部を備える環状フレームであって、前記環状フレームが径方向収縮構成と径方向拡張構成との間で径方向に収縮可能かつ拡張可能であり、前記流入端部から前記流出端部に延在する軸方向を画定する環状フレームと、
前記環状フレーム内に位置決めされ、前記環状フレームに固定される弁尖構造体と、
前記環状フレームの外方表面の周囲に位置決めされる環状外方スカートと、
を備え、前記環状外方スカートが、
第1の位置にて前記環状フレームに固定される流入エッジ、
第2の位置で前記環状フレームに固定される流出エッジ、
前記人工弁が前記径方向拡張構成にある場合に、前記環状外方スカートの前記流入エッジおよび前記流出エッジから径方向に外方に座屈する弛みを有する前記流入エッジと前記流出エッジとの間の中間部分、ならびに
(a)前記弛みの径方向外方座屈を強化するために周方向に比べて前記人工弁の軸方向においてより高い剛直性の布帛、および/または
(b)前記環状外方スカートの前記弛みの前記径方向外方座屈を強化するように設定された形状記憶を有する形状記憶材料から作製された繊維を含む自己拡張可能布帛
を備える、植込み可能な人工弁。
【請求項2】
前記環状外方スカートの前記流出エッジは、複数の交互する突出部および切欠部を備え、前記突出部は、前記第2の位置にて前記環状フレームに固定され、前記切欠部は、前記環状フレームに直接的には固定されない、請求項1に記載の植込み可能な人工弁。
【請求項3】
前記環状フレームが前記径方向収縮構成にある場合に、前記環状外方スカートの前記流入エッジと前記環状外方スカートの前記流出エッジとの間の軸方向距離が、前記人工弁が前記径方向拡張構成にある場合よりも大きく、それにより前記環状外方スカートの前記中間部分の前記弛みが軽減される、請求項1または2に記載の植込み可能な人工弁。
【請求項4】
前記布帛は、前記環状フレームが前記径方向収縮構成から前記径方向拡張構成へと拡張された後に、残留ひずみを有していない繊維を含む、請求項1から3のいずれか一項に記載の植込み可能な人工弁。
【請求項5】
前記環状外方スカートは、周方向に比べて前記人工弁の軸方向により高い剛直性の布帛を備え、前記布帛は、
前記環状フレームの前記軸方向に対して平行な複数の第1の繊維と、
前記複数の第1の繊維に対して垂直な複数の第2の繊維と
を含み、
前記複数の第1の繊維中の繊維の少なくともいくつかが、前記複数の第2の繊維中の繊維よりも高い剛直性である、請求項1から4のいずれか一項に記載の植込み可能な人工弁。
【請求項6】
前記複数の第1の繊維は、モノフィラメント繊維を含む、請求項5に記載の植込み可能な人工弁。
【請求項7】
前記複数の第2の繊維は、マイクロフィラメント繊維、マルチフィラメント繊維、またはマイクロフィラメント繊維およびマルチフィラメント繊維の組合せを含む、請求項5または6に記載の植込み可能な人工弁。
【請求項8】
前記複数の第2の繊維は、前記環状フレームが前記径方向収縮構成から前記径方向拡張構成に拡張された後に、残留ひずみを有していない繊維を含む、請求項5から7のいずれか一項に記載の植込み可能な人工弁。
【請求項9】
前記自己拡張可能布帛は、経糸繊維および緯糸繊維の織成体を備える、請求項1から4のいずれか一項に記載の植込み可能な人工弁。
【請求項10】
前記緯糸繊維は、形状記憶材料から作製された繊維を含む、請求項9に記載の植込み可能な人工弁。
【請求項11】
前記経糸繊維および前記緯糸繊維の前記織成体は、
非形状記憶材料から作製された繊維を含む平織パターンと、
前記形状記憶材料から作製された前記繊維を含むサテン織パターンと
を含む、請求項9または10に記載の植込み可能な人工弁。
【請求項12】
前記サテン織パターンは、非形状記憶材料から作製された経糸繊維と、前記形状記憶材料から作製された緯糸繊維とを含む、請求項11に記載の植込み可能な人工弁。
【請求項13】
前記形状記憶材料は、ニッケルチタン合金である、請求項1または請求項9から12のいずれか一項に記載の植込み可能な人工弁。
【請求項14】
形状記憶材料から作製された前記繊維は、0.5~15ミルの直径を有する、請求項1または請求項9から13のいずれか一項に記載の植込み可能な人工弁。
【請求項15】
前記環状フレームは、複数の弁尖装着部分を備え、前記弁尖構造体は、前記環状フレームの前記弁尖装着部分に固定される、請求項1から14のいずれか一項に記載の植込み可能な人工弁。
【請求項16】
患者の体内に人工心臓弁を植え込むためのアセンブリであって、
細長シャフトを備える送達装置と、
前記体内に送達するための径方向収縮構成にて前記細長シャフト上に取り付けられる請求項1から15のいずれか一項に記載の人工心臓弁と、
を備える、アセンブリ。
【請求項17】
人工弁を径方向に圧縮する方法であって、
径方向拡張構成にある際に、クリンプ化顎部を備えるクリンプ化デバイスに前記人工弁を部分的に挿入するステップであって、外方スカートを備える前記人工弁の部分がクリンパ顎部の外部に延在する、ステップと、
第1の部分収縮構成へと前記人工弁をクリンプ状にするステップと、
前記外方スカートが前記クリンパ顎部同士の間に位置するように、前記クリンプ化デバイスに前記人工弁をさらに挿入するステップと、
第2の部分収縮構成へと前記人工弁をクリンプ状にするステップと、
完全クリンプ状構成へと前記人工弁を任意選択でクリンプ状にするステップと、
を含む、方法。
【請求項18】
前記完全クリンプ状構成へと前記人工弁をクリンプ状にするステップを含む、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
(a)前記第1の部分収縮構成にある前記人工弁は、前記径方向拡張構成にある前記人工弁の直径の約60%である直径を有する、
(b)前記第2の部分収縮構成にある前記人工弁は、前記径方向拡張構成にある前記人工弁の直径の約40%である直径を有する、
(c)完全収縮構成にある前記人工弁は、前記径方向拡張構成にある前記人工弁の直径の約10%である直径を有する、または
(d)(a)から(c)の2つ以上の組合せである、請求項17または18に記載の方法。
【請求項20】
前記クリンプ化デバイスは、自動クリンプ化デバイスである、請求項17から19のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、植込み可能な拡張可能人工器官と、人工器官をクリンプ状にするための方法とに関する。
【背景技術】
【0002】
ヒトの心臓は、様々な心臓弁膜症を患う可能性がある。これらの心臓弁膜症は、心臓の著しい機能不全を結果としてもたらし、最終的には人工弁で天然弁を置換する必要を生じさせ得る。多数の既知の人工弁と、ヒトにこれらの人工弁を植え込む多数の既知の方法とが存在する。従来の直視下心臓手術に伴う欠点により、経皮外科アプローチおよび低侵襲外科アプローチが熱い注目を集めつつある。一の技術では、人工弁が、カテーテル挿入によりはるかに侵襲性の低い手技において植え込まれるように構成される。例えば、収縮可能経カテーテル人工心臓弁は、圧縮状態へとクリンプ状になされ、カテーテル上に圧縮状態で経皮的に導入され、バルーン膨張によりまたは自己拡張フレームもしくは自己拡張ステントの利用により所望の位置で機能サイズまで拡張し得る。
【0003】
かかる手技において使用するための人工弁は、人工弁の弁尖が結合され得る径方向に収縮可能および拡張可能なフレームを備え得る。例えば、米国特許第6,730,118号、米国特許第7,393,360号、米国特許第7,510,575号、および米国特許第7,993,394号は、例示の収縮可能経カテーテル人工心臓弁を説明している。
【0004】
かかる手技において使用するための人工弁は、人工弁の弁尖が結合され得る、およびカテーテル上に収縮構成で経皮的に導入され、バルーン膨張によりまたは自己拡張フレームもしくは自己拡張ステントの利用により所望の位置で拡張され得る、径方向に収縮可能および拡張可能なフレームを備え得る。カテーテル植込み型人工弁の難点は、初期植込み後の一定期間にわたり発生し得る弁の周囲における弁周囲逆流の制御である。さらなる難点は、被験者への経皮的送達に、ならびに保管および/または保健医療提供者への発送に適したプロファイルへとかかる人工弁をクリンプ状にするプロセスを含む。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許第6,730,118号
【特許文献2】米国特許第7,393,360号
【特許文献3】米国特許第7,510,575号
【特許文献4】米国特許第7,993,394号
【特許文献5】米国特許出願公開第2012/0123529号
【特許文献6】国際公開2011/126758号パンフレット
【特許文献7】国際公開2012/048035号パンフレット
【特許文献8】国際公開2014/004822号パンフレット
【特許文献9】国際公開2010/022138A2号パンフレット
【特許文献10】米国特許第8591570号
【特許文献11】米国特許第8613765号
【特許文献12】米国特許出願公開第2013/0030519号
【特許文献13】米国特許第8,007,992号
【特許文献14】米国特許第6,534,004号
【特許文献15】米国特許出願公開第2009/0164005号
【特許文献16】米国特許第7,530,253号
【特許文献17】米国特許出願第14/211,775号
【特許文献18】米国特許出願公開第2012/0239142号
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
本明細書では、弁周囲逆流を制御するための改良された外方スカートを備える径方向に収縮可能かつ拡張可能な人工弁の実施形態と、かかる人工弁をクリンプ状にする方法と、かかる人工弁を備える装置とが開示される。複数の実施形態において、開示される人工弁は、被験者に植え込むための置換心臓弁として構成される。
【0007】
複数の実施形態において、流入端部部分および流出端部部分を有する環状フレームと、フレーム内に位置決めされた弁尖構造体と、フレームの外方表面の周囲に位置決めされた環状外方スカートとを備える、径方向に収縮可能かつ拡張可能な人工心臓弁が提供される。外方スカートは、第1の箇所でフレームに径方向に固定される流入エッジと、第2の箇所でフレームに径方向に固定される外方エッジと、流入エッジと流出エッジとの間の中間部分とを備える。外方スカートの中間部分は、人工弁が拡張構成にある場合に、外方スカートの流入エッジおよび流出エッジから径方向に外方に座屈または波打つ弛みを有する。人工弁が収縮構成へと収縮されると、外方スカートの流入エッジと外方スカートの流出エッジとの間の軸方向距離が延び、それにより外方スカートの中間部分における弛みが軽減される。外方スカートは、(a)弛みの径方向外方座屈を強化するために周方向に比べて弁の軸方向においてより高い剛直性の布帛、および/または(b)外方スカートの弛みの径方向外方座屈を強化するように設定された形状記憶を有する形状記憶材料から作製された繊維を含む自己拡張可能布帛の一方を備えることが可能である。
【0008】
外方スカートが周方向に比べて弁の軸方向においてより高い剛直性の布帛を備える実施形態では、外方スカートは、人工弁の軸方向に対して平行な繊維の第1のセットと、人工弁の軸方向に対して垂直な繊維の第2のセットとの織成体を備えることが可能である。いくつかの実施形態では、第1のセットの繊維中の繊維は、第2のセットの繊維中の繊維よりも高い剛直性を有する。第1のセットの繊維は、モノフィラメント繊維のセットを含むことが可能である。第2のセットの繊維は、マイクロフィラメント繊維のセット、マルチフィラメント繊維のセット、またはマイクロフィラメント繊維およびマルチフィラメント繊維のセットを含むことが可能である。さらなる実施形態では、第2のセットの繊維は、人工弁が収縮構成から拡張構成に拡張された後に、残留ひずみを有していない繊維を含む。
【0009】
外方スカートが形状記憶材料から作製された繊維を含む自己拡張可能布帛を備える実施形態では、自己拡張可能布帛は、経糸繊維および緯糸繊維の織成体を備えることが可能であり、緯糸繊維の中の1つまたは複数が、形状記憶材料から作製された繊維を含む。経糸繊維および緯糸繊維の織成体は、複数の織成パターンの組合せを含むことが可能である。例えば、経糸繊維および緯糸繊維の織成体は、非形状記憶材料から作製された経糸繊維および緯糸繊維を含む平織パターンと、非形状記憶材料から作製された経糸繊維および形状記憶材料から作製された緯糸繊維を含むサテン織パターンとの組合せを含むことが可能である。いくつかの実施形態では、形状記憶材料は、ニッケルチタン合金であることが可能であり、例えば形状記憶材料から作製された繊維は、0.5~15ミルの直径を有するニッケルチタンワイヤであることが可能である。
【0010】
患者の体内に人工心臓弁を植え込むためのアセンブリの例示の一実施形態は、細長シャフトを備える送達装置と、体内への送達のために径方向収縮構成でシャフト上に取り付けられた径方向拡張可能人工心臓弁と、を備える。
【0011】
いくつかの実施形態では、人工弁をクリンプ状にする方法は、クリンプ化デバイスのクリンプ化顎部に拡張構成にある人工弁を部分的に挿入するステップであって、外方スカートを備える人工弁の部分がクリンパ顎部の外部に延在する、ステップを含む。次いで、人工弁は、第1の部分収縮構成へとクリンプ状になされ、その後に人工弁は、クリンプ化デバイスの顎部に完全に挿入される。次いで、人工弁は、第2の部分収縮構成へとクリンプ状になされ、任意選択で完全収縮構成へとクリンプ状になされ、その後クリンプ化デバイスから除去される。
【0012】
添付の図面を参照として進められる複数の実施形態の以下の詳細な説明から、本開示の前述および他の特徴ならびに利点がより明らかになろう。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】人工心臓弁の例示の実施形態を示す図である。
【
図2】人工心臓弁の例示の実施形態を示す図である。
【
図3】人工心臓弁の例示の実施形態を示す図である。
【
図4】
図1の人工心臓弁の例示のフレームを示す図である。
【
図5】
図1の人工心臓弁の例示のフレームを示す図である。
【
図6】
図1の人工心臓弁の例示のフレームを示す図である。
【
図7】
図1の人工心臓弁の例示のフレームを示す図である。
【
図8】
図1の人工心臓弁の例示のフレームを示す図である。
【
図9】
図1の人工心臓弁の例示のフレームを示す図である。
【
図10】
図1の人工心臓弁の例示のフレームを示す図である。
【
図11】人工心臓弁において使用するための別の例示のフレームを示す図である。
【
図12】人工心臓弁において使用するための別の例示のフレームを示す図である。
【
図13】人工心臓弁において使用するための別の例示のフレームを示す図である。
【
図14】人工心臓弁において使用するための別の例示のフレームを示す図である。
【
図15A】人工心臓弁において使用するための別の例示のフレームを示す図である。
【
図15B】人工心臓弁において使用するための別の例示のフレームを示す図である。
【
図16A】
図1の人工心臓弁の例示の内方スカートを示す図である。
【
図16B】
図1の人工心臓弁の例示の内方スカートを示す図である。
【
図17】変形フレームを有する人工心臓弁の別の実施形態を示す図である。
【
図18】収縮構成にあり例示のバルーンカテーテル上に取り付けられた
図1の人工心臓弁を示す図である。
【
図21】例示の弁尖構造体の組立てを示す図である。
【
図22】例示の弁尖構造体の組立てを示す図である。
【
図23】例示の弁尖構造体の組立てを示す図である。
【
図24】例示の弁尖構造体の組立てを示す図である。
【
図25】例示の弁尖構造体の組立てを示す図である。
【
図26】例示の弁尖構造体の組立てを示す図である。
【
図27】例示の弁尖構造体の組立てを示す図である。
【
図28】例示の弁尖構造体の組立てを示す図である。
【
図29】フレームのウィンドウフレーム部分との弁尖構造体の継ぎ目部分の組立てを示す図である。
【
図30】フレームのウィンドウフレーム部分との弁尖構造体の継ぎ目部分の組立てを示す図である。
【
図31】フレームのウィンドウフレーム部分との弁尖構造体の継ぎ目部分の組立てを示す図である。
【
図32】フレームのウィンドウフレーム部分との弁尖構造体の継ぎ目部分の組立てを示す図である。
【
図33】フレームのウィンドウフレーム部分との弁尖構造体の継ぎ目部分の組立てを示す図である。
【
図34】フレームのウィンドウフレーム部分との弁尖構造体の継ぎ目部分の組立てを示す図である。
【
図35】フレームのウィンドウフレーム部分との弁尖構造体の継ぎ目部分の組立てを示す図である。
【
図36】弁尖の下側エッジに沿った内方スカートとの弁尖構造体の組立てを示す図である。
【
図37】弁尖の下側エッジに沿った内方スカートとの弁尖構造体の組立てを示す図である。
【
図38】弁尖の下側エッジに沿った内方スカートとの弁尖構造体の組立てを示す図である。
【
図39】弁尖の下側エッジに沿った内方スカートとの弁尖構造体の組立てを示す図である。
【
図40】弁尖の下側エッジに沿った内方スカートとの弁尖構造体の組立てを示す図である。
【
図44】経糸繊維および緯糸繊維を詳細に示す、外方スカート布帛の一部分を示す図である。
【
図45】径方向収縮構成にある
図4のフレームの一部分を示す図である。
【
図46】流出端部から流入端部にかけての全体的なテーパ形状を示す、
図4のフレームの断面プロファイルを示す図である。
【
図47】広げられた平坦構成における
図4のフレームを示す図である。
【
図48】収縮構成にあり例示のバルーンカテーテル上に取り付けられた、
図1の人工心臓弁を示す図である。
【
図49】厚さが縮小された流入端部部分および流出端部部分を有する人工弁のためのフレームの代替的な実施形態のバルーン拡張を示す図である。
【
図50】厚さが縮小された流入端部部分および流出端部部分を有する人工弁のためのフレームの代替的な実施形態のバルーン拡張を示す図である。
【
図51】厚さが縮小された流入端部部分および流出端部部分を有する人工弁のためのフレームの代替的な実施形態のバルーン拡張を示す図である。
【
図52】外方スカートを備える拡張可能および収縮可能な人工弁をクリンプ状にするためのプロセスを示す図である。
【
図53】外方スカートを備える拡張可能および収縮可能な人工弁をクリンプ状にするためのプロセスを示す図である。
【
図54】外方スカートを備える拡張可能および収縮可能な人工弁をクリンプ状にするためのプロセスを示す図である。
【
図55】外方スカートを備える拡張可能および収縮可能な人工弁をクリンプ状にするためのプロセスを示す図である。
【
図56】外方スカートを備える拡張可能および収縮可能な人工弁をクリンプ状にするためのプロセスを示す図である。
【
図57】経糸繊維および緯糸繊維を詳細に示す、外方スカート布帛の一部分を示す図である。
【
図58】経糸繊維および緯糸繊維の3つの異なるパターンの設計を詳細に示す、外方スカート布帛の一部分を示す概略図である。
【
図59】経糸繊維および緯糸繊維の3つの異なるパターンの設計を詳細に示す、外方スカート布帛の一部分を示す概略図である。
【
図60】経糸繊維および緯糸繊維の3つの異なるパターンの設計を詳細に示す、外方スカート布帛の一部分を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本明細書では、本説明において、本開示の実施形態のいくつかの態様、利点、および新規の特徴が説明される。説明される方法、システム、および装置は、いかなる点においても限定的なものとして解釈されるべきではない。代わりに、本開示は、単独でのならびに相互に様々な組合せおよび下位組合せでの、様々な開示の実施形態の全ての新規かつ非自明な特徴ならびに態様を対象とする。開示の方法、システム、および装置は、それらのいずれの特定的な態様、特徴、または組合せにも限定されず、また開示の方法、システム、および装置は、1つまたは複数の特定の利点のいずれかが存在することまたは問題が解決されることを必要とするものではない。
【0015】
本発明の特定の態様、実施形態、または例との組合せで説明される特徴、完全体、特性、複合体、化学部分、または群は、適合しない場合を除いては、本明細書で説明されるいずれの他の態様、実施形態、または例にも適用可能である点を理解されたい。本明細書(任意の添付の特許請求の範囲、要約、および図面を含む)に開示される特徴の全て、および/または同様に開示される任意の方法もしくはプロセスのステップの全ては、かかる特徴および/またはステップの少なくともいくつかが相互に排他的である組合せを除いては、任意の組合せで組み合わされてもよい。本発明は、いずれの前述の実施形態の詳細にも制約されない。本発明は、本明細書(添付の特許請求の範囲、要約、および図面を含む)に開示される特徴の任意の新規の1つもしくは任意の新規の組合せにまで、または同様に開示される任意の方法もしくはプロセスのステップの任意の新規の1つもしくは任意の新規の組合せにまで及ぶ。
【0016】
開示される方法の中のいくつかの動作が、提示の都合によりある特定の逐次順序で説明されるが、この説明方法は、特定の順序が以下に示す特定の文言により必要とされない限りは、改変されたものを包含する点を理解されたい。例えば、いくつかの場合では、逐次的に説明される動作が、改変されてもまたは同時に実施されてもよい。さらに、簡略化のために、添付の図面は、開示される方法、システム、および装置が他のシステム、方法、および装置との組合せで使用され得る様々な方式を示さない場合がある。
【0017】
本明細書において、「1つ(a、an)」および「少なくとも1つの」という用語は、1つまたは複数の具体的に示される要素を包含する。すなわち、2つの特定の要素が存在する場合には、これらの要素の一方がやはり存在し、したがって「1つの」要素が存在する。「複数の(a plurality of、plural)」という用語は、2つ以上の具体的に示される要素を意味する。
【0018】
本明細書において、列挙される要素の最後の2つの間で使用される「および/または」という用語は、列挙される要素の任意の1つまたは複数を意味する。例えば、「A、B、および/またはC」という表現は、「A」、「B」、「C」、「AおよびB」、「AおよびC」、「BおよびC」、または「A、B、およびC」を意味する。
【0019】
本明細書において、「結合された」という用語は、物理的に結合またはリンクされることを一般的に意味し、それを否定する文言がない限り結合されたアイテム間の中間要素の存在を排除しない。
【0020】
図1から
図3は、一実施形態による人工心臓弁10の様々な図を示す。図示される人工弁は、天然の大動脈弁輪内に植え込まれるように構成されるが、他の実施形態では、心臓の他の天然弁輪(例えば肺動脈弁、僧帽弁、および三尖弁など)内に植え込まれるように構成され得る。また、人工弁は、体内の他の管状臓器または通路内に植え込まれるようにも構成され得る。人工弁10は、4つの主要な構成要素を、すなわちステントまたはフレーム12、弁構造体14、内方スカート16、および弁周囲封止手段を有することが可能であり、流入端部部分15、中間部分17、および流出端部部分19を有することが可能である。図示する実施形態では、弁周囲封止手段は、外方スカート18を備える。
【0021】
弁構造体14は、3つの弁尖40を備えることが可能であり、これらの弁尖40は、集合的に弁尖構造体を形成する。これらの弁尖40は、
図2に最も良く示されるように、三尖構成で収縮するように構成され得る。望ましくは、弁尖構造体14の下側エッジは、波動状の湾曲波形状を有する(
図1に示す縫合ライン154は弁尖構造体の波形状を辿る)。この波形ジオメトリを有する弁尖を形成することにより、弁尖に対する応力が軽減され、さらにこれにより人工弁の耐久性が改善される。さらに、波形状により、早期の石灰化を引き起こし得る領域である各弁尖の隆起部(各弁尖の中央部)の折り目および襞が、解消され得るかまたは少なくとも最小限に抑えられ得る。また、波形ジオメトリは、弁尖構造体を形成するために使用される組織材料の量を減少させ、それによって人工弁の流入端部により小さくより均一なクリンプ状プロファイルを与える。弁尖40は、心膜組織(例えばウシ心膜組織)、生体適合性合成材料、または当技術において既知であり米国特許第6,730,118号において説明されるような様々な他の適切な天然材料もしくは合成材料から形成され得る。
【0022】
むき出しのフレーム12が、
図4に示される。フレーム12は、以下でより詳細に説明するように、フレームに弁構造体14の継ぎ目部を取り付けるように構成された、複数の周方向に離間されたスロットまたは継ぎ目ウィンドウ20(図示する実施形態においては3つのスロットまたは継ぎ目ウィンドウ)を有して形成され得る。フレーム12は、当技術で知られているように様々な適切な可塑的拡張可能材料(例えばステンレス鋼など)または自己拡張材料(例えばニチノールなどのニッケルチタン合金(NiTi))のいずれかから作製され得る。可塑的拡張可能材料から作製される場合には、フレーム12(およびしたがって人工弁10)は、送達カテーテル上で径方向収縮構成へとクリンプ状になされ、次いで膨張可能バルーンまたは均等な拡張機構により患者の内部で拡張され得る。自己拡張材料から作製される場合には、フレーム12(およびしたがって人工弁10)は、径方向収縮構成へとクリンプ状になされ、送達カテーテルのシースまたは均等な機構に挿入されることにより収縮構成に拘束され得る。体内に置かれると、人工弁は、送達シースから前進され、それにより人工弁はその機能サイズへと拡張することが可能となり得る。
【0023】
フレーム12を形成するために使用され得る適切な可塑的拡張可能材料には、ステンレス鋼、生体適合性高強度合金(例えばコバルト-クロム合金もしくはニッケル-コバルト-クロム合金)、ポリマー、またはそれらの組合せが含まれるが、それらに限定されない。特定の実施形態においては、フレーム12は、UNS R30035合金(ASTM F562-02により覆われた)と均等であるMP35N(登録商標)合金(ペンシルベニア州ジェンキンタウンにあるSPSテクノロジーズ社)などのニッケル-コバルト-クロム-モリブデン合金から作製される。MP35N(登録商標)合金/UNS R30035合金は、35重量%のニッケル、35重量%のコバルト、20重量%のクロム、および10重量%のモリブデンを含む。フレーム12を形成するためにMP35N(登録商標)合金を使用することにより、ステンレス鋼よりも高い構造的成果が得られることが判明している。特に、MP35N(登録商標)合金が、フレーム材料として使用される場合には、径方向の押し潰し力に対する抵抗、耐疲労性、および耐腐食性において同一のまたはより優れた性能を実現するために必要となる材料がより少なくなる。さらに、必要となる材料がより少なくなるため、フレームのクリンプ状プロファイルが縮小され得るため、それにより体内の治療箇所に経皮送達するためにより低プロファイルの人工弁アセンブリが可能となる。
【0024】
図4および
図5を参照すると、図示する実施形態では、フレーム12は、端部同士が繋がれて配置されフレームの流入端部にて周方向に延在した、第1の下側列Iの有角ストラット22と、第2の列IIの周方向延在有角ストラット24と、第3の列IIIの周方向延在有角ストラット26と、第4の列IVの周方向延在有角ストラット28と、フレームの流出端部にて第5の列Vの周方向延在有角ストラット32と、を備える。複数の実質的に直線状の軸方向延在ストラット34は、第2の列IIのストラット24に第1の列Iのストラット22を相互連結するために使用され得る。第5の列Vの有角ストラット32は、複数の軸方向延在ウィンドウフレーム部分30(継ぎ目ウィンドウ20を画定する)と複数の軸方向延在ストラット31とによって第4の列IVの有角ストラット28に連結される。各軸方向ストラット31および各フレーム部分30は、2つの有角ストラット32の下側端部の集束により画定される箇所から、2つの有角ストラット28の上側端部の集束により画定される別の箇所まで延在する。
図6、
図7、
図8、
図9、および
図10は、
図4でそれぞれ文字A、B、C、D、およびEにより識別されるフレーム12の部分の拡大図である。
【0025】
各継ぎ目ウィンドウフレーム部分30は、弁尖構造体14の各継ぎ目部を据え付ける。示すように、各フレーム部分30は、その上側端部および下側端部にて隣接列のストラットに固定されることにより、弁尖構造体の継ぎ目部を支持する既知のカンチレバー型ストラットと比較して人工弁の周期的荷重下における耐疲労性を強化したロバスト構成を実現する。この構成により、フレーム壁部厚さが縮小されることによって、人工弁のクリンプ状直径をより小さく実現することが可能となる。特定の実施形態では、内径と外径との間で測定されるフレーム12の厚さT(
図4)は、約0.48mm以下である。
【0026】
フレームのストラットおよびフレーム部分は、フレームの複数の開放セルを集合的に画定する。フレーム12の流入端部では、ストラット22、ストラット24、およびストラット34が、開口36を画定する下側列のセルを画定する。第2の列のストラット24、第3の列のストラット26、および第4の列のストラット28は、開口38を画定する2つの中間列のセルを画定する。第4の列のストラット28および第5の列のストラット32は、フレーム部分30およびストラット31と共に、開口40を画定する上側列のセルを画定する。開口40は、比較的大きく、クリンププロファイルを最小限に抑えるために、フレーム12がクリンプ状になされた場合に弁尖構造体14の部分が開口40内におよび/または開口40を貫通して突出または膨出し得るようにサイズ設定される。
【0027】
図7に最も良く示されるように、ストラット31の下側端部は、結節部または連接部44にて2つのストラット28に連結され、ストラット31の上側端部は、結節部または連接部46にて2つのストラット32に連結される。ストラット31は、連接部44、46の厚さS2未満の厚さS1を有することが可能である。
図45は、収縮構成におけるフレーム12の一部分を示す。連接部44、46は、連接部64と共に、開口40の完全な閉鎖を防止する。
図18は、バルーンカテーテル上にクリンプ状になされた人工弁10を示す。示すように、ストラット31ならびに連接部44、46、および64のジオメトリは、人工弁尖の部分が開口を通り外方に突出または膨出することが可能となるのに十分なスペースを、収縮構成において開口40内に生じさせるのを支援する。これにより、人工弁は、全ての弁尖材料がクリンプ状フレーム内に拘束された場合よりも比較的より小さな直径へとクリンプ状になされることが可能となる。
【0028】
フレーム12は、特にフレームの流出端部部分19にて、弁尖構造体14を支持する所定のバルーン圧力で起こり得る人工弁の過拡張を軽減する、防止する、または最小限に抑えるように構成される。一態様では、フレームは、
図5に示すようにストラット間に比較的より大きな角度42a、42b、42c、42d、42eを有するように構成される。この角度がより大きいほど、フレームを開く(拡張させる)ために必要とされる力はより大きくなる。この現象は、
図15Aおよび
図15Bに概略的に示される。
図15Aは、フレーム12がその収縮構成にある(例えばバルーン上に取り付けられた)場合のストラット32を示す。ストラットの端部間の垂直方向距離d
1は、フレームが圧縮される場合に最大となり、バルーンの膨張による(または別の拡張デバイスの拡張による)開放力の印加時に逆方向へとストラットの端部に作用される力F
1とF
2との間に比較的大きなモーメントをもたらす。フレームが径方向に拡張すると、ストラットの端部間の垂直方向距離は、
図15Bに示すように距離d
2まで縮小する。垂直方向距離が縮小すると、力F
1とF
2との間のモーメントも低下する。したがって、ストラットの端部間の垂直方向距離およびモーメントが縮小および低下することにより、比較的より大きな拡張力が必要とされることが理解できる。さらに、ストラットの端部におけるひずみ硬化(剛直化)は、フレームが拡張することにより増大し、これはストラットの端部にさらなる可塑的変形を誘発するために必要とされる拡張力を増加させる。そのため、フレームのストラット間の角度は、所与の開放圧力(例えばバルーンの膨張圧力)でのフレームの径方向拡張を制限するように選択され得る。特定の実施形態では、これらの角度は、フレームがその機能サイズまで拡張された場合に少なくとも110度以上であり、さらにより具体的には、これらの角度は、フレームがその機能サイズまで拡張された場合に最大で約120度となる。
【0029】
さらに、一般的には、フレームの流入端部および流出端部は、人工弁を拡張させるために使用されるバルーンの「ドッグボーン化」効果により、フレームの中間部分よりもさらに過拡張する傾向がある。弁尖構造体14の過拡張から保護するために、弁尖構造体は、望ましくは
図1に最も良く示されるようにストラット32の上側列の下方でフレーム12に固定される。
図47は、
図5と同様のフレーム12の平坦図を示すが、いくつかの実施形態における弁尖40の上側エッジの近似位置を示すためにフレームに重畳された破線176を示す。したがって、フレームの流出端部が過拡張された場合に、弁尖構造体は、過拡張が発生する可能性のあるところより下の高さに位置決めされ、それにより過拡張から弁尖構造体を保護する。
【0030】
既知の人工弁構造では、弁尖の部分は、弁尖がフレームの遠位端部に過剰に近くに取り付けられた場合には、人工弁がクリンプ状になされるとフレームの流出端部を越えて長手方向に突出し得る。クリンプ状になされた人工弁が取り付けられた送達カテーテルが、人工弁の流出端部を押すまたは当接する押し機構または停止部材を備える(例えば送達カテーテル上におけるクリンプ状になされた人工弁の位置を維持するために)場合には、押し部材または停止部材は、フレームの流出端部を越えて延在する露出された弁尖の部分に損傷を与える恐れがある。フレームの流出端部から離間された箇所に弁尖を取り付ける別の利点は、
図48に示すように人工弁が送達カテーテル上でクリンプ状になされた場合に、弁尖40ではなくフレーム12の流出端部が人工弁10の最近位構成要素となる点である。そのため、送達カテーテルは、人工弁の流出端部を押すまたは当接する押し機構または停止部材を備える場合には、押し機構または停止部材は、弁尖40ではなくフレームの流出端部に接触して、弁尖への損傷を回避する。
【0031】
また、
図5に示すように、フレームの最下列の開口の開口36は、2つの中間列の開口の開口38よりも比較的より大きい。
図46に示すように、これにより、フレームは、クリンプ状になされた場合に、人工弁の流出端部における最大径D
1から人工弁の流入端部における最小径D
2にかけてテーパ状をなす全体的なテーパ形状を取ることが可能となる。クリンプ状になされた場合に、フレーム12は、参照番号174により示される、フレームの流入端部に隣接するフレームの部分に沿って延在する小直径領域を有し、これは、外方スカート18により覆われるフレームの領域とほぼ一致する。いくつかの実施形態では、領域174の直径は、外方スカート18が人工弁のクリンプ状プロファイル全体を増大させないように、フレームの上側部分(外方スカートにより覆われない)の直径に比べて小さい。人工弁が展開されると、フレームは、
図4に示すほぼ円筒状の形状にまで拡張し得る。一例では、26mm人工弁のフレームは、クリンプ状になされた場合に、人工弁の流出端部に14フレンチの直径D
1と、人工弁の流入端部174に12フレンチの直径D
2とを有した。
【0032】
図11および
図12は、人工弁10に組み込まれ得る代替的なフレーム50を示す。フレーム50は、結節部または連結部分54および56にて相互に連結された複数列の周方向延在有角ストラット52を備える。最上列のストラット52は、複数の軸方向延在ストラット58および継ぎ目ウィンドウフレーム部分60により隣接列のストラットに連結される。各継ぎ目フレーム部分60は、以下でさらに詳細に説明されるように、弁構造体の各継ぎ目部を取り付けるためのスロットまたは継ぎ目ウィンドウ62を画定する。特定の実施形態では、フレーム50の厚さTは、約0.45mm以下である。当然ながら、フレームの厚さTは、フレームに十分な強度を与えるように選択される。そのため、厚さTは、いくつかの実施形態ではフレームの異なる下位構成要素および/またはアセンブリごとに異なることが、当業者には理解されよう。
図13および
図14は、
図12においてそれぞれ文字AおよびBにより識別されるフレーム50の部分の拡大図である。
【0033】
内方スカート16の主な機能は、フレーム12への弁構造体14の固定を支援することと、弁尖の下側エッジの下側のフレーム12の開放セルを通る血液の流れを阻止することにより人工弁と天然弁輪との間における良好なシール形成を支援することである。望ましくは、内方スカート16は、ポリエチレンテレフタレート(PET)などの強靭な耐引裂性材料を含むが、様々な他の合成材料または天然材料が使用可能である。望ましくは、スカートの厚さは、約0.15mm(約6ミル)未満であり、望ましくは0.1mm(約4ミル)未満であり、さらにより望ましくは約0.05mm(約2ミル)である。特定の実施形態では、スカート16は、様々な厚さを有することが可能であり、例えばスカートは、その中心よりもそのエッジの少なくとも一方がより厚いことが可能である。一実装形態では、スカート16は、そのエッジにて約0.07mmのおよびその中心にて約0.06mmの厚さを有するPETスカートを備えることが可能である。より薄いスカートは、依然として良好な弁周囲封止をもたらしつつ、より良好なクリンプ性能の実現を可能にし得る。
【0034】
スカート16は、
図39に示すように縫合糸70によりフレーム12の内部に固定され得る。弁構造体14は、しっかりした縫合を可能にし、弁尖構造体の心膜組織を引裂きから保護する、以下に論じる例えば薄いPET補強ストリップなどの1つまたは複数の補強ストリップ72(集合的にスリーブを形成し得る)によりスカートに装着され得る。弁構造体14は、
図38に示すようにスカート16と薄いPETストリップ72との間で挟まれ得る。スカート16にPETストリップおよび弁尖構造体14を固定する縫合糸154は、Ethibond Excel(登録商標)PET縫合糸(ニュージャージー州ニューブランズウィックにあるジョンソンエンドジョンソン)などの任意の適切な縫合糸であることが可能である。望ましくは、縫合糸154は、以下でより詳細に説明するように弁尖構造体14の下部エッジの曲線を辿る。
【0035】
既知の布帛スカートは、相互に垂直に延在し、繊維の1つのセットがスカートの上側エッジと下側エッジとの間に長手方向に延在した、経糸繊維および緯糸繊維の織成体を備える。布帛スカートが固定される金属フレームが径方向に圧縮されると、フレームの軸方向長さ全体が増大する。残念ながら、本来的に弾性が制限された布帛スカートは、フレームと共に伸長することができず、したがってフレームのストラットを変形させ均一なクリンプ化を妨げる傾向がある。
【0036】
図16Bを参照すると、既知の布帛スカートとは対照的に、望ましくは、スカート16は、第1のセットの繊維、またはヤーンもしくはストランド78と、第2のセットの繊維、またはヤーンもしくはストランド80とから織成され、これらは共に、スカートの上側エッジ82および下側エッジ84に対して非垂直である。特定の実施形態では、第1のセットの繊維78および第2のセットの繊維80は、上側エッジ82および下側エッジ84に対して約45度の角度で延在する。スカート16は、布帛の上側エッジおよび下側エッジに対して45度の角度で繊維を織成することにより形成され得る。代替的には、スカートは、繊維がスカートの切断上側エッジおよび下側エッジに対して45度で延在するように、垂直方向に織成された布帛(繊維が材料のエッジに対して垂直に延在する)から対角線方向に切断され(斜めに切断され)得る。
図16Bにさらに示すように、望ましくは、スカートの両短エッジ86、88は、上側エッジ82および下側エッジ84に対して非垂直である。例えば、望ましくは、短エッジ86、88は、上側エッジおよび下側エッジに対して約45度の角度で延在し、したがって第1のセットの繊維78と整列される。したがって、スカートの全体形状は、偏菱形または平行四辺形の全体形状となる。
【0037】
図17は、ストラットが、スカートの上側エッジと下側エッジに対して垂直におよび/または上側エッジと下側エッジとの間で長手方向に延在する繊維を有するスカートにより、参照番号100で示されるような複数の箇所で変形された、クリンプ状になされた人工弁の一例を示す。さらに、布帛は、いくつかの箇所で余剰材料の膨出部を束ねるまたは作り出す傾向があり、これが、最小限のクリンプ状プロファイルを限定し、均一なクリンプ化を妨げる。
【0038】
図19Aおよび
図19Bは、両短エッジ部分90、92がスカートの環状形状を形成するように共に縫い合わされた後のスカート16を示す。図示するように、エッジ部分90は、対向側のエッジ部分92に対して重畳関係で配置され、2つのエッジ部分は、短エッジ86、88に対して平行な対角線方向に延在する縫合ライン94で共に縫い合わされ得る。スカート16の上側エッジ部分は、軸方向ストラット31の下側端部のすぐ隣の第4の列のストラット28の形状または外形にほぼ倣う波動状形状を画定する複数の突出部96を有して形成され得る。このようにして、
図20に最も良く示されるように、スカート16の上側エッジは、縫合糸70によりストラット28にしっかりと固定され得る。また、スカート16は、フレームに対するスカートの装着を容易にするためにスリット98を有して形成され得る。スリット98は、スカートの上側エッジ部分がストラット28の周囲に部分的に巻き付けられることが可能なように、および装着手順の際にスカートにおける応力を軽減するように寸法設定される。例えば、図示する実施形態では、スカート16は、フレーム12の内側に配置され、スカートの上側エッジ部分は、ストラット28の上側表面の周囲に巻き付けられ、縫合糸70により定位置に固定される。このようにストラット28の周囲にスカートの上側エッジ部分を巻き付けることにより、フレームにスカートをより強力かつより高い耐久性で装着することが実現される。また、スカート16は、縫合糸70によりそれぞれ第1の列のストラット22、第2の列のストラット24、および第3の列のストラット26に固定され得る。
【0039】
図16Bを再び参照すると、上側エッジおよび下側エッジに対して繊維が角度を有して配向されることにより、スカートは、軸方向に(すなわち上側エッジ82から下側エッジ84に至る方向に)より大きな伸長を被り得る。
【0040】
したがって、金属フレーム12が、(
図18に示すように)クリンプ状になされると、スカート16は、フレームと共に軸方向に伸長し、したがってより均一かつ予測可能なクリンプ状プロファイルをもたらし得る。図示する実施形態の金属フレームの各セルは、クリンプ化で軸方向へと回転する(例えば有角ストラットがフレームの長さにより整列された状態になる)少なくとも4つの有角ストラットを備える。各セルの有角ストラットは、ストラットの同一方向にスカートの繊維を回転させるための機構として機能して、スカートがストラットの長さに沿って伸長するのを可能にする。これは、スカートのより大きな伸長を許容し、人工弁がクリンプ状になされた場合のストラットの望ましくない変形を回避させる。
【0041】
さらに、織成された繊維またはヤーン同士の間の間隔が、軸方向へのスカートの伸長を容易化させるように拡大され得る。例えば、20デニールのヤーンから形成されたPETスカート16の場合に、ヤーン密度は、典型的なPETスカートの場合よりも約15%~約30%も低くなり得る。いくつかの例では、スカート16のヤーン間隔は、約63ヤーン/cm(約160ヤーン/インチ)など、約60ヤーン/cm(約155ヤーン/インチ)~約70ヤーン/cm(約180ヤーン/インチ)となり得る一方で、典型的なPETスカートでは、ヤーン間隔は、約85ヤーン/cm(約217ヤーン/インチ)~約97ヤーン/cm(約247ヤーン/インチ)となり得る。傾斜エッジ86、88は、クリンプ化の際にフレームの内周に沿った布帛材料の均一かつ均等な分布を促進し、それにより、布帛の束化を軽減または最小限に抑え、可能な限り最小の直径への均一なクリンプ化を容易にする。さらに、垂直に対角線方向縫合糸を切断することにより、切断されたエッジに沿って解き放たれたフリンジが残され得る。傾斜エッジ86、88は、この発生を最小限に抑えるのを補助する。上記のように、
図17は、スカートの上側エッジおよび下側エッジに対して垂直に延在する繊維を有する典型的なスカートを有するクリンプ状になされた人工弁を示す。
図17および
図18を比較すると、スカート16の構造により、フレームストラットの望ましくない変形が回避され、フレームのより均一なクリンプ化がもたらされることが明らかである。
【0042】
代替的な実施形態では、スカートは、人工弁のクリンプ化の際に軸方向に伸長し得る織成弾性繊維から形成され得る。経糸繊維および緯糸繊維は、垂直方向に、およびスカートの上側エッジおよび下側エッジに対して平行に延在し得るか、または代替的には、上述のようにスカートの上側エッジおよび下側エッジに対して0~90度の間の角度で延在し得る。
【0043】
内方スカート16は、縫合ライン154から離れた箇所でフレーム12に縫合され得ることにより、スカートは、その領域でより柔軟になり得る(
図28を参照、縫合ラインは以下で論じるようにマーキング縫合糸136を辿る)。この構成は、スカート16に弁尖の下側エッジを装着する縫合ライン154への応力集中を回避させ得る。
【0044】
上述したように、図示する実施形態の弁尖構造体14は、3つの可撓性弁尖40を備える(しかし、より多数または少数の弁尖を使用することが可能である)。
図21に最も良く示されるように、図示する構成における各弁尖40は、弁尖の両側の両上側タブ112の間に延在する上側(流出)自由エッジ110を有する。各上側タブ112の下方には、対応する下側タブ116から上側タブを分離させる切欠部114が存在する。下側タブ116の各端部間に延在する弁尖の下側(流入)エッジ部分108は、対応する下側タブ116から下方に延在する弁尖の両側の垂直方向または軸方向エッジ部分118と、弁尖の下側端部に平滑な湾曲先端部分119を有する実質的にV字形の中間エッジ部分120と、軸方向エッジ部分と先端部分との間に延在する一対の傾斜部分121とを備える。傾斜部分は、先端部分よりも大きな曲率半径を有し得る。各弁尖40は、
図22に示すように、下側エッジ部分108の内方表面に固定された(例えば縫い付けられた)補強ストリップ72を有することが可能である。
【0045】
弁尖40同士は、それらの隣接し合う側部にて相互に固定されて、弁尖構造体の継ぎ目部122を形成し得る。複数の可撓性コネクタ124(
図23にその中の1つが図示される)は、弁尖同士の隣接し合う側部の対を相互連結するために、および継ぎ目ウィンドウフレーム部分30に弁尖を取り付けるために使用され得る。可撓性コネクタ124は、織成PET布帛片から作製され得るが、他の合成および/または天然材料を使用することが可能である。各可撓性コネクタ124は、コネクタの中心にて下側エッジから上側エッジに延在するウェッジ126を備えることが可能である。ウェッジ126は、仮縫合糸128によりコネクタに固定される、例えばEthibond Excel(登録商標)2-0縫合糸材料(ニュージャージー州ニューブランズウィックにあるジョンソンエンドジョンソン)などの、ロープ、編みヤーン、またはモノフィラメントヤーンなどの非金属材料を含むことが可能である。ウェッジ126は、継ぎ目ウィンドウフレーム部分30に固定されると、弁尖タブの回転方向移動を防止するのを補助する。コネクタ124は、その上側エッジおよび下側エッジに沿って形成される一連の内方切欠部130および外方切欠部132を有し得る。
【0046】
図24は、可撓性コネクタ124により相互連結された2つの弁尖40の隣接し合う側部を示す。可撓性コネクタ124の両端部部分は、内方切欠部130がタブ116の垂直方向エッジに整列された状態で、下側タブ116と重畳関係に配置され得る。各タブ116は、下側エッジ上の外方切欠部132からコネクタの上側エッジ上の外方切欠部132まで延在するラインに沿って縫合することにより、可撓性コネクタ124の対応する端部部分に固定され得る。3つの弁尖40は、
図25に示すように3つの可撓性コネクタ124を使用して横並びに相互に固定され得る。
【0047】
次に
図26および
図27を参照すると、2つの弁尖の隣接し合うサブ継ぎ目部分118が、相互に直接的に縫合され得る。図示する例では、PTFE6-0縫合材料が、両弁尖上のサブ継ぎ目部分118および補強ストリップ72を貫通して延在する並縫いステッチ133および櫛縫いステッチ(comb stitch)134を形成するために使用される。隣接し合うサブ継ぎ目部分118の2つの残りの対は、同様に共に縫合されて組み立てられた弁尖構造体14を形成することが可能であり、次いでこれは、以下の方法でフレーム12に固定され得る。
【0048】
上述したように、内方スカート16は、フレームへの弁尖構造体14の縫合を支援するために使用され得る。
図28に示すように、スカート16は、各弁尖40の下側エッジの装着を案内するために波動状仮マーキング縫合糸136を有することが可能である。スカート16自体は、スカート16への弁尖構造体14の固定前に、上述したように縫合糸70を使用してフレーム12のストラットに縫合され得る。望ましくはマーキング縫合糸136に交差するストラットは、スカート16に装着されない。これは、スカート16がフレームに固定されない領域においてより柔軟になるのを可能にし、スカートに弁尖の下側エッジを固定する縫合ラインに沿った応力集中を最小限に抑える。矩形140により区切られるスカート16の部分は、初めはフレーム12に固定されずに残され、以下でさらに説明されるように弁尖構造体14がスカートに固定された後に、後にフレームに固定される。上述したように、スカートがフレームに固定されると、スカートの繊維78、80(
図16Bを参照)は、フレームの有角ストラットとほぼ整列されて、フレームの均一なクリンプ化および拡張を促進する。
【0049】
図29は、対応するウィンドウフレーム部分30に固定された2つの弁尖の隣接し合うタブ部分を示す、フレームおよび弁尖構造体の一部分の断面図である。
図30~
図36は、フレームの継ぎ目ウィンドウフレーム部分30に弁尖構造体14の継ぎ目部分122を固定するための1つの具体的なアプローチを示す。初めに、
図30に示すように、2つの弁尖の2つの隣接し合う側部を固定する可撓性コネクタ124が、幅方向に折り曲げられ、上側タブ部分112が、可撓性コネクタへと下方に折り曲げられる。
図30および
図31に最も良く示されるように、各上側タブ部分112は、長さ方向に(垂直方向に)折り目を付けられて、弁尖の内方表面へと折り曲げられる内方部分142とコネクタ24へと折り曲げられる外方部分144とを有するL字形状部を呈する。次いで、外方部分144が、縫合ライン146に沿ってコネクタ124に縫合され得る。次に、
図31に示すように、(コネクタ124により連結された一対の下側タブ部分116から成る)継ぎ目タブアセンブリが、対応するウィンドウフレーム部分30の継ぎ目ウィンドウ20に挿通される。
図32は、継ぎ目タブアセンブリがウィンドウフレーム部分30を貫通して外方に延在するのを示す、フレーム12の側面図である。
【0050】
図29および
図33に最も良く示されるように、継ぎ目タブアセンブリは、下側タブ部分116の一方およびコネクタ124の一部分が、ウィンドウフレーム部分30の一方の側でフレーム12へと折り曲げられ、他方の下側タブ部分116およびコネクタ124の一部分が、ウィンドウフレーム部分30の他方の側でフレーム12へと折り曲げられるように、ウェッジ126にて径方向に内方に圧迫される。一対の縫合ライン148が、
図29に示すようにフレーム12に対して下側タブ部分116を保持するように形成される。各縫合ライン148は、コネクタ124、下側タブ部分116、ウェッジ126、およびコネクタ124の別の部分を貫通して延在する。次いで、
図29および
図34に示すように、各下側タブ部分116は、コネクタ124の1つの層、下側タブ部分116、コネクタ124の別の層、コネクタ124の別の層、および上側タブ部分112を貫通して延在する一次縫合ライン150により対応する上側タブ部分112に固定される。最終的に、
図29および
図35に示すように、一次縫合ライン150を形成するために使用される縫合材料は、タブ部分112、116間に挟まれるコネクタ124の2つの層を貫通して延在するタブ部分112、116のエッジにかがり縫いステッチ152をさらに形成するために使用され得る。
【0051】
図29および
図30に示すように、折り曲げられた上側タブ部分112は、継ぎ目部にて弁尖材料の二重層を形成する。上側タブ部分112の内方部分142は、各継ぎ目部がウィンドウフレーム30のすぐ内側に4つの層の弁尖材料を備えるように、平坦に位置決めされて、継ぎ目部を形成する2つの弁尖40の層に当接する。継ぎ目部のこの4層部分は、比較的より剛性の4層部分からすぐ径方向に内方の弁尖40の部分よりも、曲げまたは関節動作に対してより高い抵抗であり得る。これにより、弁尖40は、体内での実施時に人工弁を通過する血流に応答して、ウィンドウフレーム30の軸方向ストラットの周囲または近位で関節動作するのではなく、折り曲げられた内方部分142の内方エッジ143にて主に関節動作する。弁尖は、ウィンドウフレーム30から径方向に内方に離間された箇所で関節動作するため、弁尖は、フレームとの接触およびフレームによる損傷を回避し得る。しかし、高い力の下では、継ぎ目部の4層部分は、各内方部分142が各外方部分144へと折り込まれた状態で、ウィンドウフレーム30に隣接する長手方向軸145(
図29)を中心として広がり離れ得る。例えば、これは、人工弁10が、圧迫され、送達シャフト上に取り付けられて、より小さなクリンプ状直径を可能にする場合に発生し得る。また、継ぎ目部の4層部分は、バルーンカテーテルが人工弁の拡張時に膨張された場合に、軸145を中心として広がり離れ得る。これは、バルーンにより引き起こされる継ぎ目部に対する圧力の一部を解放して、拡張時の継ぎ目部への損傷の可能性を低下させ得る。
【0052】
最終的に、3つの継ぎ目タブアセンブリは、各ウィンドウフレーム部分30に固定され、継ぎ目タブアセンブリ間の弁尖40の下側エッジは、内方スカート16に縫合され得る。例えば、
図36~
図38に示すように、各弁尖40は、例えばEthibond Excel(登録商標)PET糸などを使用して縫合ライン154に沿ってスカート16に縫合され得る。これらの縫合糸は、各弁尖40、スカート16、および各補強ストリップ72を貫通して延在する並縫い縫合糸であることが可能である。各弁尖40および各補強ストリップ72は、スカート16に個別に縫い付けられ得る。このようにすることで、弁尖の下側エッジは、スカート16を介してフレーム12に固定される。
図38に示すように、弁尖は、補強ストリップ72および弁尖40のエッジの周囲にループしつつ、各補強ストリップ72、弁尖40、およびスカート16を貫通して延在するブランケット縫合糸156でスカートにさらに固定され得る。ブランケット縫合糸156は、PTFE縫合材料から形成され得る。
図39および
図40は、フレームに弁尖構造体およびスカートを、ならびにスカートに弁尖構造体を固定した後の、フレーム12、弁尖構造体14、およびスカート16の2つの回転された側面図を示す。
【0053】
図41は、フレーム12への装着前の外方スカート18の平坦図を示す。外方スカート18は、強靭な耐久性材料片からレーザ切断または他の方法で形成され得る。外方スカート18は、複数の交互の突出部164および切欠部166、すなわちキャスタレーションを画定する実質的に直線状の下側エッジ160および上側エッジ162を有することが可能である。
図42において最も良く示されるように、スカート18の下側エッジ160は、人工弁の流入端部で内方スカート16の下側エッジに縫合され得る。
図43に示すように、各突出部164は、フレーム12の第2の段IIのストラット24に縫合され得る。突出部164の上側エッジ162は、段IIの各ストラットに折り重ねられ、縫合糸168により固定され得る。
【0054】
図1~
図3および
図42~
図43に示すように、外方スカート18は、フレームがその拡張構成にある場合に(すなわち被験者内で展開された場合に)フレーム12の外方表面に密着しない余剰材料が下側エッジ160と上側エッジ162との間にあるように、フレーム12に固定される。外方スカート18は、フレーム12に直接的に、および/または例えばフレーム12に直接的に固定された内方スカートに外方スカートを固定することによってフレーム12に間接的に固定され得る。人工弁の拡張構成では、外方スカート18の上側装着点と下側装着点との間の距離は、小さくなり(短縮され)、結果として外方スカート18の外方径方向座屈をもたらす。さらに、外方スカート18の下側エッジと上側エッジとの間の余剰材料により、フレーム12は外方スカートからの任意の抵抗を伴わずにクリンプ状になされた場合に、軸方向に伸長し得る。いくつかの実施形態では、スカート18は、フレームが完全にクリンプ状になされた場合に、フレーム12に対するスカート18の上側装着点と下側装着点との間の軸方向長さと実質的に同一であり得る軸方向長さまたは高さを有する。かかる実施形態では、フレーム12が完全にクリンプ状になされた場合に、外方スカートは、フレーム12の外方表面に密着し得る。
【0055】
いくつかの実施形態では、外方スカート18は、布帛170を備えることが可能であり、この布帛170は、外方スカート18の外方径方向座屈または拡張を強化するためにフレーム12に装着された場合に、周方向173よりも軸方向172により高い剛直性である(
図44を参照)。例えば、布帛170は、第1のセットの繊維(またはヤーンもしくはストランド)176と、第2のセットの繊維(またはヤーンもしくはストランド)178とから織成され得る。布帛170は、第1のセットの繊維176を含む経糸繊維と、第2のセットの繊維178を含む緯糸繊維との織成体を備え得る。代替的には、布帛170は、第2のセットの繊維178を含む経糸繊維と、第1のセットの繊維176を含む緯糸繊維との織成体を備え得る。
【0056】
第1のセットの繊維176は、第2のセットの繊維178内の繊維よりも高い剛直性のモノフィラメントを含むことが可能である。適切なモノフィラメントの例には、PET、PTFE、および/またはNiTiなどのポリマーワイヤまたは金属ワイヤから作製されたものが含まれるが、それらに限定されない。いくつかの実施形態では、モノフィラメントは、約0.05mm~約0.5mm(約0.002~0.02インチ)の直径を有することが可能である。第2のセットの繊維178は、第1のセットの繊維176中の繊維よりも剛直性の低いマルチフィラメントおよび/またはマイクロファイバを含むことが可能である。適切なマルチフィラメントおよび/またはマイクロファイバの例には、PETおよび/またはPTFEなどのポリマーから作製されたものが含まれるが、それらに限定されない。いくつかの実施形態では、第2のセットの繊維178は、第1のセットの繊維176よりも低い全体的な剛直性を有する材料混合物(マルチフィラメントおよびマイクロファイバの混合物など)を含むことが可能である。
【0057】
第1のセットの繊維または第2のセットの繊維の中の繊維は、同一タイプの繊維である必要はなく、例えば第1のセットの繊維は、布帛170が人工弁10に取り付けられた場合に周方向よりも軸方向により高い剛直性である限りは、モノフィラメント、マイクロフィラメント、および/またはマイクロファイバを含むことが可能である。同様に、第2のセットの繊維は、モノフィラメント、マイクロフィラメント、および/またはマイクロファイバを含むことが可能である。
【0058】
いくつかの実施形態では、布帛170は、周方向における単位長さあたりの繊維よりも多くの平行繊維を軸方向の単位長さあたりに含む。したがって、布帛170は、周方向に延在する繊維に比べて高い密度で軸方向に延在する繊維を含む。
【0059】
さらなる実施形態では、外方スカート18は、NiTiなどの形状記憶材料から作製された1つまたは複数の繊維を含む自己拡張可能布帛230を備えることが可能である(
図57を参照)。例えば、形状記憶材料から作製された1つまたは複数の繊維は、自己拡張可能布帛230の織成体に含まれ得るか、または他の方法で布帛に装着するように(例えば、縫合糸によって)固定されて自己拡張可能布帛230を作製し得る。かかる繊維の形状記憶は、フレーム12に取り付けられた場合に外方スカート18の径方向外方への座屈または拡張を強化するように設定され得る。さらに、自己拡張可能布帛230の形状記憶材料の繊維は、特定の解剖学的構造体に形状合致するための必要に応じて異なる形状記憶を有することが可能である。したがって、自己拡張可能布帛230は、布帛が患者の特定の解剖学的構造体に形状合致する3次元形状を備えるように設定された形状記憶を有する形状記憶材料から作製された複数の繊維を有するように織成または作製され得る。
【0060】
自己拡張可能布帛230から作製される場合には、外方スカートは、径方向収縮構成へとクリンプ状になされ、外方スカートを備える人工弁を送達カテーテルのシースまたは均等な機構に挿入することによって収縮構成に拘束され得る。体内に置かれると、人工弁は、送達シースから前進され得、それにより人工弁および外方スカートは、それらの機能サイズへと拡張可能となる。
【0061】
図57を参照すると、自己拡張可能布帛230は、第1のセットの繊維(またはヤーンもしくはストランド)232と、第2のセットの繊維(またはヤーンもしくはストランド)234とから織成され得る。自己拡張可能布帛230は、外方スカート18の径方向外方への座屈または拡張を容易にする任意の配向でフレーム12上に位置決めされ得る。例えば、
図57に示すように、外方スカート18の自己拡張可能布帛230は、第1のセットの繊維232を含む軸方向236の経糸繊維と、第2のセットの繊維234を含む周方向238の緯糸繊維との織成体を備えることが可能である。別の実施形態では、外方スカート18の自己拡張可能布帛230は、第1のセットの繊維232を含む軸方向236の緯糸繊維と、第2のセットの繊維234を含む周方向238の経糸繊維との織成体を備えることが可能である。
【0062】
第1のセットの繊維232は、外方スカート18の径方向外方座屈を強化するように設定された形状記憶を有する形状記憶材料から作製された1つまたは複数の繊維を含む。例えば、繊維は、織成応力に耐えるのに十分な伸長性と、ニチノールワイヤの設定形状へと隣接し合う繊維を自己装填するおよび押すのに十分な大きさの直径とを有するNiTiワイヤであることが可能である。
【0063】
複数の実施形態において、かかるNiTiワイヤは、4~6ミル、1~5ミル、2~5ミル、3~5ミル、4~7ミル、または4~6ミルの直径など、0.5~15ミルの直径を有することが可能である。例えば、いくつかの実施形態では、NiTiワイヤは、約0.002インチ、約0.003インチ、約0.004インチ、または約0.005インチの直径など、0.002~0.005インチの直径を有することが可能である。自己拡張可能布帛230中の任意のNiTiワイヤの形状記憶が、布帛へと織成される前の外方スカート18の径方向外方座屈を強化する形状へと設定され得る。一例では、NiTiワイヤの形状記憶は、2時間にわたり500℃超に加熱され、その後90分間にわたり450℃で時効化されることによって仕込まれ得る。この加熱は、空気炉または真空炉内で実施され、その後急速(好ましくは水)冷却され得る。NiTiワイヤの形状記憶が設定された後に、ワイヤは、自己拡張可能布帛230へと織成され得る。いくつかの実施形態では、外方スカート18の自己拡張可能布帛内の緯糸繊維の5~25パーセント(5~10、5~15、5~20、10~15、10~20、10~25、15~20、15~25、または20~25パーセントなど)が、形状記憶材料から作製され得る。いくつかの実施形態では、外方スカート18の自己拡張可能布帛内の緯糸繊維の最大で100%が、形状記憶材料から作製され得る。
【0064】
いくつかの実施形態では、第1のセットの繊維232(NiTiワイヤを含む)が、織成体の緯糸繊維である。代替的な実施形態では、第1のセットの繊維232(NiTiワイヤを含む)が、織成体の経糸繊維である。また、第1のセットの繊維および第2のセットの繊維の中の残りの繊維は、外方スカート18の径方向外方座屈を強化するように設定された形状記憶を有する形状記憶材料(NiTiなど)から作製され得る。代替的には、残りの繊維は、PETまたはPTFEなどの非形状記憶材料から作製され得る。残りの繊維は、同一タイプの繊維である必要はなく、例えば第1のセットの繊維および/または第2のセットの繊維は、モノフィラメント、マイクロフィラメント、および/またはマイクロファイバを含むことが可能である。適切なモノフィラメント、マイクロフィラメント、および/またはマイクロファイバの例には、PETまたはPTFEなどのポリマーから作製されたものが含まれるが、それらに限定されない。いくつかの実施形態では、モノフィラメントまたはマイクロファイバは、約0.05mm~約0.5mm(約0.002~0.02インチ)の直径を有することが可能である。
【0065】
上述したように、布帛230は、外方スカートの外方への座屈および拡張を容易にする任意の配向でフレーム12内に位置決めされ得る。いくつかの実装形態では、外方スカート18は、軸方向にのみ形状記憶繊維(例えばNiTiワイヤ)を有する。他の実装形態では、外方スカート18は、周方向にのみ形状記憶繊維(例えばNiTiワイヤ)を有する。さらに他の実装形態では、外方スカート18は、軸方向および周方向に形状記憶繊維(例えばNiTiワイヤ)を有する。
【0066】
図57に示すように、自己拡張可能布帛230内の経糸繊維および緯糸繊維は、平織であることが可能である。また、代替的な織成パターンが利用されてもよい。例えば、自己拡張可能布帛230は、平織パターンの非形状記憶経糸繊維および非形状記憶緯糸繊維(PET繊維など)と交互する、サテン織パターンの形状記憶緯糸繊維および非形状記憶経糸繊維かまたは形状記憶経糸繊維および非形状記憶緯糸繊維のハイブリッド織成体を備えることが可能である(
図58~
図60を参照)。サテン織パターンでは、緯糸繊維の浮き糸長は、平織パターンの場合よりも長い。したがって、形状記憶繊維が、サテン織パターンで緯糸繊維として使用される場合には、布帛の外方座屈は、接触点がより少なくなることにより増大され得、これにより外方に座屈するより高い自由度が形状記憶繊維に与えられる。したがって、非形状記憶繊維の平織を形状記憶繊維および非形状記憶繊維のサテン織と組み合わせることにより、高い径方向外方座屈力を有する外方スカート材料がもたらされる。
【0067】
図58~
図60は、自己拡張可能布帛230の織成体のための3つの例示の設計を示す織成図を示す。
図58~
図60に示す織成図では、経糸繊維は列で示され、緯糸繊維は行で示される。図中の正方形は、経糸繊維および緯糸繊維の交差部を示す。緯糸繊維が、ある特定の交差部で経糸繊維の径方向外方にある場合には、その正方形は、斜線陰影(形状記憶繊維の場合)または網目陰影(非形状記憶繊維の場合)でマーキングされる。経糸繊維が、ある特定の交差部で緯糸繊維の径方向外方にある(すなわち経糸繊維が緯糸繊維上に「浮き糸として存在する」)場合には、その正方形は、空白のままとなる。図示する織成図では、緯糸繊維は、形状記憶繊維を含む。しかし、他の実施形態では、繊維は、緯糸繊維が経糸繊維となり、経糸繊維が緯糸繊維となり、依然として同一の織成パターンを実現するように逆転され得る。
【0068】
図58~
図60に示すように、織成体中の緯糸繊維の行は、様々なパターンで形状記憶繊維と非形状記憶繊維との間で交互し得る。例えば、形状記憶緯糸繊維の1つまたは複数の行が、非形状記憶繊維の1つまたは複数の(2つ、3つ、4つ、または5つなどの)行により分離され得る。さらに、ある特定の行において形状記憶繊維の上に「浮き糸として存在する」隣接し合う経糸繊維の個数は、例えば1~2つの隣接し合う経糸繊維(例えば、
図59に示すように)または1~5つの隣接し合う経糸繊維から、最大で10個の隣接し合う経糸繊維(2つの隣接し合う経糸繊維、3つの隣接し合う経糸繊維、4つの隣接し合う経糸繊維、5つの隣接し合う経糸繊維(
図58に示すように)、6つの隣接し合う経糸繊維、7つの隣接し合う経糸繊維、8つの隣接し合う経糸繊維(
図60に示すように)、または9つの隣接し合う経糸繊維など)までなど、変動することも可能である。
【0069】
いくつかの実施形態では、外方スカート18は、非形状記憶経糸繊維および非形状記憶緯糸繊維の平織の2つの行と交互する、形状記憶緯糸繊維および非形状記憶経糸繊維のサテン織の1つの行を有する、平織パターンおよびサテン織パターンの組合せを備える、自己拡張可能布帛230を備えることが可能である。サテン織は、単一の経糸繊維を覆う形状記憶緯糸繊維の径方向外方露出の間に5つの隣接し合う経糸繊維の浮き糸を備えることが可能である(
図58を参照)。
【0070】
いくつかの実施形態では、外方スカート18は、非形状記憶経糸繊維および非形状記憶緯糸繊維の平織の4つの行と交互する、形状記憶緯糸繊維および非形状記憶経糸繊維のサテン織の1つの行を有する、平織パターンおよびサテン織パターンの組合せを備える、自己拡張可能布帛230を備えることが可能である。サテン織は、1~2つの隣接し合う経糸繊維を覆う形状記憶緯糸繊維の径方向外方露出の間に1~隣接し合う2つの経糸繊維の浮き糸を備えることが可能である(
図59を参照)。
【0071】
いくつかの実施形態では、外方スカート18は、非形状記憶経糸繊維および非形状記憶緯糸繊維の平織の1つの行と交互する、形状記憶緯糸繊維および非形状記憶経糸繊維のサテン織の1つの行を有する、平織パターンおよびサテン織パターンの組合せを備える、自己拡張可能布帛230を備えることが可能である。サテン織は、単一の経糸繊維を覆う形状記憶緯糸繊維の径方向外方露出の間に8つの経糸繊維の浮き糸を備えることが可能である(
図60を参照)。
【0072】
図48に示すように、収縮構成では、外方スカート18の余剰材料が、軸方向に延在する複数の折り目179を形成する。この構成では、第1のセットの繊維176または232は、実質的に直線状の非折れ構成において軸方向に延在することが可能であり、第2のセットの繊維178または234は、複数の折り目179を備える。複数の実施形態において、第2のセットの繊維の弾性範囲は、人工弁10が収縮構成にあり、外方スカート18が複数の折り目179を形成する場合には超過されない。したがって、人工弁10が、収縮構成から径方向に拡張される場合には、第2のセットの繊維に残留ひずみは存在しない(すなわち第2のセットの繊維にしわは形成されない)。複数の実施形態において、第2のセットの繊維178または234は、マルチフィラメントおよび/またはマイクロファイバのセットを備え、これらはそれぞれ、人工弁10が収縮構成にあり、外方スカート18が複数の折り目179を備える場合に、マルチフィラメントおよび/またはマイクロファイバの弾性範囲が超過されないように十分に小さな直径を個別に有する。かかる実施形態では、人工弁10が収縮構成へと圧縮された後に、第2のセットの繊維178または234において残留ひずみは存在しない。したがって、複数の実施形態において、第2のセットの繊維178または234は、「しわの発生しない」繊維を含むかまたはそれから構成され、すなわち第2のセットの繊維178または234は、その弾性範囲を超過せず、人工弁10が完全な収縮構成へと圧迫され、外方スカート18に複数の折り目179を形成した後には、残留ひずみ(すなわち、しわ)を有していない。
【0073】
人工弁10が体内で展開されると、外方に座屈する外方スカート18の中間部分の余剰材料は、フレーム12と周囲の天然弁輪との間の間隙を埋めて、人工弁と天然弁輪との間における良好な液密シールの形成を支援し得る。したがって、外方スカート18は、人工弁10の植込み後の弁周囲逆流を回避するために内方スカート16と協働する。複数の実施形態において、外方に座屈する外方スカート18を備える人工弁10は、外方スカート18がない同様の人工弁と比較して、被験者内に植え込まれた場合の弁周囲逆流が軽減され得る。
【0074】
図48は、患者の体内に人工弁10を植え込むための送達アセンブリを形成する送達装置の細長シャフト180上に取り付けられた
図1~
図3および
図42~
図43の人工弁10を示す。人工弁10は、体内に送達するための径方向収縮構成で取り付けられる。シャフト180は、体内で人工弁を拡張させるための膨張可能バルーン182を備え、クリンプ状になされた人工弁10は、収縮されたバルーンを覆って位置決めされる。人工弁10のフレーム12は、径方向に圧縮され取り付けられた構成では、フレームの外方端部の外径D
1よりも小さな外径D
2を有する流入端部部分174を備えることが可能である(
図46を参照)。フレームのテーパ形状は、少なくとも部分的にはV字形弁尖40に起因するものであり得る。なぜならば、V字形弁尖は、より丸いU字形弁尖に比較してフレーム12の流入端部部分内により少ない弁尖材料を有するからである。取付け構成におけるフレーム12のテーパ形状により、外方スカート18の追加の厚さが、フレーム12の流入端部部分174の周囲に位置決めされる場合でも、人工弁10の流入端部部分の全体外径は、人工弁の流出端部部分の全体外径とほぼ等しいかまたはそれ未満となり得る。
【0075】
さらに、
図48に示すように、人工弁10は、対応するウィンドウフレーム部分30を貫通しフレーム外部の箇所まで径方向に外方に延在し、継ぎ目ウィンドウフレームの側部ストラットに縫合される、弁尖の継ぎ目部分を備えることが可能である。人工弁のクリンプ状プロファイルを最小限に抑えるために、ウィンドウフレーム部分30は、人工弁がシャフト上で収縮構成へと径方向に圧迫されると、隣接し合う継ぎ目ウィンドウ間に延在するフレーム部分などのフレームの周囲部分に対して径方向に内方に押し下げられ得る。例えば、フレームの継ぎ目ウィンドウ30は、人工弁が径方向に収縮された場合に、隣接し合う継ぎ目ウィンドウ間に延在するフレームの部分に対して約0.2mm~約1.0mmの間の径方向距離だけ内方に押し下げられ得る。このようにすることで、継ぎ目部分を備える人工弁の流出端部部分の外径は、体内への人工弁の送達を妨げ得る人工弁の周囲部分から外方に突き出す継ぎ目部分とは対照的に、ほぼ一貫したものとなり得る。径方向に押し下げられた継ぎ目ウィンドウフレーム30を有する場合でも、フレームの流入端部の外径は、人工弁がシャフト上で径方向に収縮された場合に、フレームの流出端部の外径よりも依然として小さいかまたはほぼ同一であり得るため、これにより人工弁の最小/最大全体直径が許容される。送達シャフト上に取り付けられた場合に人工弁の直径を最小化することにより、アセンブリは、より小径のカテーテル内に収容されることが可能となり、したがって、体内でより小さな脈管を通り送られることが可能となり、概して低侵襲性のものとなり得る。
【0076】
図49~
図51は、
図49に示すような径方向収縮構成から
図51に示すような径方向拡張状態への人工弁10の一実施形態の拡張を示す。人工弁10は、送達シャフト180のバルーン182の上に取り付けられ、流入端部部分15、流出端部部分19、および中間部分17を備える。明瞭化のために、人工弁10の外方スカート18およびフレーム12は図示されるが、弁尖および内方スカートなどの人工弁の他の構成要素は図示されない。フレーム12は、流入端部部分15および流出端部部分19にて、中間部分17に比べてより薄い厚さを有し得る。
図50に示すように、端部部分がより薄いことにより、バルーン182が膨張されると、端部部分15および19は、拡張に対してより低い抵抗を示し、中間部分17よりも速く拡張する。端部部分が中間部分よりも速く拡張することにより、フレーム12は、バルーン182上に拘束された状態となるため、フレームがバルーンのいずれかの端部に向かって摺動するのが阻止され、フレームが早すぎる段階で摺動してバルーンから外れるリスクが軽減される。
図51に示すように、バルーンのさらなる膨張により、フレームの中間部分17は、植込みのために端部部分15および19と同一の最終直径へと拡張され得る。その後、バルーンは収縮および除去され得る。バルーン上における人工弁の位置の制御は、特に拡張時に短縮しバルーンに対して移動するフレームを用いる場合には、送達時に重要となり得る。
図49~
図51に示す実施形態では、フレームの中間部分17は、バルーンに対して一定に維持され得るが、2つの端部部分は、バルーンの「ドッグボーン」効果により中間部分に向かって短縮する。端部部分15および19の厚さを小さくするフレーム12を形成するために、レーザ切断、レーザアブレーション、ウォータージェット加工、または機械加工などを行う前にハイポチューブの研磨性の絞り部分に端部部分を接触させることなど、任意の適切な手段を使用することが可能である。一実施形態では、フレームの端部部分15および19は、約0.37mmの厚さを有し、中間部分17は、約0.45mmの厚さを有する。
【0077】
人工弁10のコンテクストにおいて説明したが、周方向よりも軸方向により高い剛直性の布帛170か、または形状記憶材料から作製された繊維を含む自己拡張可能布帛230を備える外方スカート18は、当技術で既知の任意の適切な人工心臓弁などの任意の適切な人工弁上の外方スカートとして含まれ得る。複数の実施形態において、周方向よりも軸方向により高い剛直性の布帛170か、または形状記憶材料から作製された繊維を含む自己拡張可能布帛230を備える外方スカート18は、既知の人工心臓弁上の外方スカートの代わりに含まれ得る。外方スカート18が、周方向よりも軸方向により高い剛直性の布帛170か、または形状記憶材料から作製された繊維を含む自己拡張可能布帛230を備える適切な人工心臓弁の非限定的な例には、米国特許出願公開第2012/0123529号、国際公開2011/126758号パンフレット、国際公開2012/048035号パンフレット、国際公開2014/004822号パンフレット、国際公開2010/022138A2号パンフレット、米国特許第8591570号、および米国特許第8613765号に開示されるものが含まれる。
【0078】
さらに、人工弁10の外方スカート18のコンテクストにおいて説明したが、形状記憶材料から作製された繊維を含む自己拡張可能布帛230は、特定の解剖学的形状に合わせて設定された形状記憶効果を用いた組織工学用の足場としてシート形態で使用することも可能である。
【0079】
人工弁10は、被験者に植え込むための適切な送達装置向けに構成され、この送達装置上に取り付けられ得る。複数のカテーテルベース送達装置が知られており、適切なカテーテルベース送達装置の非限定的な例には、米国特許出願公開第2012/0123529号および米国特許出願公開第2013/0030519号に開示されるものが含まれる。
【0080】
人工弁は、組み立てられると、被移植者による人工弁への拒絶反応を防止し、人工弁を滅菌し、人工弁弁尖組織中のタンパクを安定化させ、機械的疲労に対して組織により高い耐性を持たせ、タンパク質分解酵素による組織の劣化を軽減させ、および/またはドライ形態での人工弁の包装もしくは送達を可能にするのを補助し得る、様々な化学薬剤の組合せの中の任意のものを用いて処理され得る。代替的な実施形態では、人工弁の弁尖は、フレームに固定される前に、化学薬剤で処理され得る。
【0081】
典型的には、いくつかの人工心臓弁は、患者内への植込み前に発送および保管のために保存溶液で充填されたジャー内に包装される。しかし、保存溶液に浸漬させずに、生体人工心臓弁を乾燥させ保管する技術もまた知られている。「乾燥された」または「乾燥状の」生体人工心臓弁という用語は、保存溶液を用いずにこれらの生体人工心臓弁を保管することが可能であることを単に示し、「乾燥状の」という用語は、脆性または剛性と同義とみなされるべきではない。実際に、「乾燥状の」生体人工心臓弁弁尖は、植込み前であっても比較的柔軟であってもよい。生体人工心臓弁を乾燥させるための、および一般的に組織インプラントを乾燥させるための複数の提案された方法があり、本願は、これらの方法のいずれかにより処理される生体人工心臓弁の使用を予期する。生体人工心臓弁を乾燥させる特に好ましい方法が、Tianらの米国特許第8,007,992号に開示されている。代替的な嵌挿方法が、Chenらの米国特許第6,534,004号に開示されている。また、生体人工心臓弁を乾燥させるためのこれらのおよび他の方法は、本明細書で説明されるクリンプ化システムおよび方法の使用前に使用され得る。
【0082】
1つのかかるストラテジは、グリセロール/エタノール混合物中で生体人工組織を脱水し、酸化エチレンを用いて滅菌し、最終製品を「乾燥状態」で包装することである。このプロセスは、滅菌剤および保存溶液としてのグルタルアルデヒドの潜在的な毒性および石灰化効果を解消する。結果的に得られる組織は、組織が過剰なグルタルアルデヒドを含む溶液内に保管される湿潤状態ではなく「乾燥」状態に置かれるように、グルタルアルデヒド後処理方法において糖アルコール(例えばグリセロール)、アルコール、およびそれらの組合せを使用する複数の提案された方法がある。米国特許第6,534,004号(Chenら)は、グリセロールなどの多価アルコール内での生体人工組織の保管について記載している。組織がエタノール/グリセロール溶液内で脱水されるプロセスでは、組織は、酸化エチレン(ETO)、ガンマ照射、または電子ビーム照射を使用して滅菌され得る。
【0083】
より近年では、Doveらが、米国特許出願公開第2009/0164005号の中で、酸化の結果として発生し得る脱水された組織内におけるいくつかの有害な変化に対する解決策を提案している。Doveらは、組織中のアルデヒド基の恒久的封止(例えば還元的アミノ化による)を提案する。また、Doveらは、滅菌(例えば酸化エチレン、ガンマ照射、電子ビーム照射など)および保管の際に組織の酸化を防止するための、脱水溶液(例えばエタノール/グリセロール)への化学物質(例えば酸化防止剤)の添加についても記載している。Doveらで開示される原理に従って処理される組織は、「封止された組織」と呼ばれ、したがってかかる組織を使用する生体人工心臓弁は、「封止された組織弁」と呼ばれる。グルタルアルデヒドの封止により、遊離アルデヒド基の全てまたはほぼ全てが消費されることによって架橋プロセスが終焉し、これは、乾燥状態に保管することによる架橋溶液(例えばグルタルアルデヒド)からの人工組織弁の除去と組み合わせることにより、架橋プロセスを終焉させるための最も効果的な方法であると考えられている。
【0084】
適切な化学薬剤を用いて処理されると、人工弁は、被移植者への植込みおよび/または保健医療提供者への発送に適した小さなプロファイルへとクリンプ状になされ得る。人工弁は、送達デバイス上に(例えばバルーンカテーテルのバルーン上にまたはバルーンに隣接するバルーンカテーテルのシャフト上に)直接的にクリンプ状になされ得る。クリンプ状になされると、人工弁は、人工弁が取り付けられた送達カテーテル(または送達カテーテルの部分のみ)と共に乾燥状態で滅菌パッケージ内に包装され、次いで保健医療施設に発送され得る。人工弁および送達カテーテルは、手技のために必要とされるまでは保管され得る。また、手技時において、医師は、パッケージから人工弁および送達カテーテルを取り出し、次いで患者内に人工弁を植え込むことが可能となる。
【0085】
図52は、流出端部部分および流入端部部分と、流入端部部分上の外方スカート(外方スカート18など)とを備える、拡張可能かつ収縮可能な人工弁(弁12など)をクリンプ状にするための複数ステッププロセス200を示す。外方スカートは、上記で外方スカート18に関して説明したように、人工弁に連結される上側エッジおよび下側エッジを有する。複数ステッププロセス200を使用することにより、外方スカート(外方スカート18など)を備える人工弁は、外方スカートの不均一な座屈または潰れを伴うことなく小径へとクリンプ状になされ得る。複数ステッププロセス200を使用することにより、人工弁は、被移植者内への植込みに適した小さなプロファイルへとクリンプ状になされ得る。代替的には、人工弁は、被移植者内への植込み前にさらにクリンプ状にする保健医療提供者に発送するために部分収縮プロファイルへとクリンプ状になされ得る。人工弁は、送達デバイス上に直接的に(例えばバルーンカテーテルのバルーン上にまたはバルーンに隣接するバルーンカテーテルのシャフト上に)クリンプ状態になされ得る。クリンプ状になされる(部分的にまたは完全に)と、人工弁は、単体でまたは送達カテーテルと共に滅菌パッケージ内に包装され、次いで保健医療提供者に発送され得る。人工弁および送達カテーテルは、手技のために必要とされるまでは保管され得る。また、手技時において、医師は、パッケージから人工弁および送達カテーテルを取り出し、次いで患者内に人工弁を植え込むことが可能となる。代替的な実施形態では、人工弁は、完全拡張状態で保健医療提供者に提供され得る。プロセス200は、植込みの直前に送達装置上に人工弁をクリンプ状にするためにエンドユーザによって使用され得る。
【0086】
図52に示すように、プロセスブロック202で、プロセス200は、拡張可能人工弁を完全拡張構成で受け入れることにより開始される。クリンプ化プロセスは、プロセスブロック204にて、弁クリンパに拡張された人工弁を部分的に挿入することによって継続され得る。人工弁の流出端部部分は、クリンプ化デバイスの顎部が人工弁のフレームに接触し得る位置で、クリンプ化デバイスに挿入され得る。外方スカートで覆われた人工弁の部分は、クリンパ顎部(作動された場合に)が外方スカートに接触しないように、または代替的には外方スカートの上側エッジもしくは上側部分(外方スカート18の上側エッジまたは外方スカート18の複数の交互する突出部164および切欠部166など)に接触するが、外方スカートの中間部分には接触しないように、クリンプ化デバイスのクリンプ化穴の外部に配置される。
【0087】
プロセスブロック206で、人工弁は、第1の部分収縮構成へとクリンプ状になされる。外方スカート18に関して上記で論じたように、収縮可能かつ拡張可能な人工弁が完全収縮構成へとクリンプ状になされると、外方スカートの上側装着点と下側装着点との間の距離が延び、結果として外方スカートは人工弁のフレームに対して平坦化される。したがって、プロセスブロック206で、人工弁が第1の部分収縮構成へとクリンプ状になされると、外方スカートの上側装着点と下側装着点との間の距離は延び、結果として外方スカートは、人工弁のフレームに対して部分的に平坦化される。この部分的平坦化は、軸方向に人工弁のフレームが伸長することによるものである。部分的平坦化により、軸方向に延在する折り目が外方スカートに形成される。人工弁は、クリンパに完全には挿入されないが、クリンパ顎部同士の間に挿入される人工弁の部分の径方向圧縮により、このクリンプ化ステップの際にクリンパ顎部同士の間に挿入されない人工弁の部分の対応する径方向収縮が結果としてもたらされる。
【0088】
いくつかの実施形態では、拡張可能人工弁は、第1の部分収縮構成へとクリンプ状になされるとみなすことが可能であり、したがって、プロセスブロック206は、外方スカートの上側装着点と下側装着点との間の距離が、完全収縮構成における外方スカートの上側装着点と下側装着点との間の距離の約20%、約30%、約40%、約50%、または約60%(約20%~約60%の間など)まで伸長され、結果として外方スカートが人工弁のフレームに対して部分的に平坦化する場合に、完了するとみなすことが可能である。他の実装形態では、拡張可能人工弁が、第1の部分収縮構成へとクリンプ状になされるとみなすことが可能であり、したがって、プロセスブロック206は、人工弁が完全拡張構成における人工弁の直径の約60%または約50%(約40%~約60%の間など)の直径を有する場合に、完了するとみなすことが可能である。さらなる実施形態では、拡張可能人工弁は、第1の部分収縮構成へとクリンプ状になされるとみなすことが可能であり、したがって、プロセスブロック206は、弁外径が、流出側部にて約15~20mm、および流入側部にて約15~26mmである場合に、完了するとみなすことが可能である。弁の流入側部と流出側部との間の外径の差は、外方スカートに起因し、外方スカートは、流入端部部分の外径に約1~5mmを加え得る。
【0089】
プロセスブロック208で、人工弁は、クリンプ化顎部に完全に挿入される。
【0090】
クリンプ化プロセスは、プロセスブロック210で、第2の部分収縮構成へと拡張可能人工弁をクリンプ状にすることによって継続し得る。いくつかの実施形態では、拡張可能人工弁は、第2の部分収縮構成へとクリンプ状になされるとみなすことが可能であり、したがって、プロセスブロック210は、外方スカートの上側装着点と下側装着点との間の距離が、完全収縮構成における外方スカートの上側装着点と下側装着点との間の距離の約70%、約80%、または約90%(少なくとも約70%など)まで伸長され、結果として外方スカートが人工弁のフレームに対してさらに平坦化する場合に、完了するとみなすことが可能である。他の実施形態では、拡張可能人工弁は、第2の部分収縮構成へとクリンプ状になされるとみなすことが可能であり、したがって、プロセスブロック206は、人工弁が完全拡張構成における人工弁の直径の約40%または約30%(わずか約40%など)の直径を有する場合に、完了するとみなすことが可能である。外方スカートは、第2の部分収縮構成における弁の流入端部部分の外径に約1~4mmを加え得る。
【0091】
任意選択で、クリンプ化プロセスは、プロセスブロック212で、完全収縮構成へと拡張可能人工弁をクリンプ化することによって継続し得る。いくつかの実施形態では、拡張可能人工弁は、完全収縮構成へとクリンプ状になされるとみなすことが可能であり、したがって、プロセスブロック212は、人工弁10のフレーム12の直径が約5mm未満である場合に、完了するとみなすことが可能である。さらなる実施形態では、人工弁10のフレーム12は、完全クリンプ状構成において約14Fr未満の直径を有する。非限定的な一例では、26mm人工弁のフレームは、完全クリンプ状態にある場合に、約14Fr未満の直径を有する。外方スカートは、完全収縮構成における弁の流入端部部分の外径に約1Frを加え得る。
【0092】
クリンプ化プロセスは、プロセスブロック214で、クリンプ化デバイスから人工弁を除去することによって継続し得る。プロセスブロック202、204、206、208、および/または210のいずれかの完了時に、プロセスは、任意の適切な期間にわたり停止され得る。すなわち、次のプロセスブロックは、先行するプロセスブロックの終焉時に即座に開始される必要がない。
【0093】
様々な実施形態において、人工弁は、ステップ206または210の完了時にクリンプ化デバイスから除去され、次いで、保管および/または保健医療提供者への発送のために滅菌パッケージ内に包装され得る。プロセス200の残りのステップは、エンドユーザにより完了されることとなる。特定の実施形態では、クリンプ状になされたまたは部分的にクリンプ状になされた人工弁は、乾燥状態で包装される。代替的な実施形態では、クリンプ状になされたまたは部分的にクリンプ状になされた人工弁は、保存溶液を収容する容器内で「湿潤」状態で包装される。
【0094】
図53~
図55は、クリンプ化デバイス215を使用して外方スカート18を備える人工弁10をクリンプ状にするコンテクストにおいて、外方スカートを備える拡張可能かつ収縮可能な人工弁をクリンプ状にするための複数ステッププロセス200のプロセスブロック204~210を概略的に示す。クリンプ化デバイス215は、可変直径クリンプ化穴217を画定する複数の周方向に配置されたクリンプ化顎部216(図面ではそれらの内の2つが図示される)を備えることが可能である。クリンプ化顎部216は、穴217のサイズを縮小するために相互に対して径方向に内方に移動され、それにより穴217内に配設された人工弁を径方向に圧縮することが可能である。クリンプ化デバイス215の構造に関するさらなる詳細は、米国特許第7,530,253号に開示されている。
【0095】
図53に示すように、完全拡張構成における人工弁10の流出端部部分19は、クリンプ化デバイス215のクリンパ顎部216同士の間に外方スカート18の上側エッジ162まで挿入され得る。外方スカート18を備える人工弁10の流入端部部分15は、クリンパ顎部が(径方向内方に移動するように作動された場合に)外方スカート18に接触しないように、クリンパ顎部216から突出する。代替的な実施形態では(図示せず)、人工弁10は、クリンパ顎部216が(作動された場合に)複数の交互する突出部164および切欠部166に接触するが、外方スカート18の残りの部分には接触しないように、クリンプ化デバイス215内へと複数の交互する切欠部166まで挿入され得る(
図41)。
【0096】
図54に示すように、クリンパ顎部は、矢印218の方向に径方向に内方に移動され、結果として人工弁10は、第1の部分収縮構成222へと径方向に圧縮される。人工弁10が収縮することにより、外方スカート18の上側装着点と下側装着点との間の距離が延び、結果として外方スカートは、人工弁10のフレーム12に対して部分的に平坦化される。第1の部分収縮構成222へとクリンプ状になされた後に、人工弁10は、クリンプ化デバイス215のクリンパ顎部216に完全に挿入される(
図55)。
【0097】
図56に示すように、クリンパ顎部は、矢印220の方向にさらに径方向に内方に移動され、結果として人工弁10は、第2の部分収縮構成224へと径方向に圧縮される。人工弁10が収縮することにより、外方スカート18の上側装着点と下側装着点との間の距離が延び、結果として外方スカートは、人工弁10のフレーム12に対してさらに平坦化される。
【0098】
人工弁10は、第2の部分クリンプ状構成224へとクリンプ状になされた後に、クリンプ化デバイスから除去され得る。例えば、いくつかの実施形態では、人工弁10は、第2の部分収縮構成へとクリンプ状になされ、次いでクリンプ化デバイスから除去され、保管または保健医療提供者への発送のために包装され得る。人工弁は、被験者内への植込み前に医師により完全にクリンプ状になされ得る。他の実施形態では、人工弁10は、クリンプ化デバイスからの除去前に完全収縮構成へとさらにクリンプ状になされ、次いで保管および/または保健医療提供者への発送のために包装され得る。
【0099】
人工弁がクリンプ状になされる度合いは、特定の弁および/またはクリンプ化デバイスごとに必要に応じて調節され得る。例えば、拡張可能人工弁は、第1の度合いで第1の部分クリンプ状構成へとクリンプ状になされ、次いで第2の度合いで第2の部分クリンプ状構成へとクリンプ状になされ、次いで第3の度合いで完全にクリンプ状になされ得る。別の代替的な実施形態では、拡張可能人工弁がクリンプ状になされる度合いは、継続的に可変的であり、クリンプ化プロセスにより弁尖が結果として得られる圧力などの適切な因子に基づき決定され得る。
【0100】
プロセス200は、外方スカートを有する多様な人工弁と共に、および多様なクリンプ化デバイスと共に使用され得る。人工弁をクリンプ状にし、人工弁がクリンプ状になされる速度を制御するプロセスは、様々なクリンプ化デバイスのいずれかにより制御および完了され得る。例えば、人工弁は、手動クリンプ化デバイス(米国特許第7,530,253号に開示されるものなど)を使用して手動で、または自動クリンプ化デバイス(2014年3月14日に出願された米国特許出願第14/211,775号に開示されるものなど)を使用して自動的にクリンプ状になされ得る。また、人工弁は、第1のクリンプ化ステップおよび第2のクリンプ化ステップのためにクリンプ化デバイス(米国特許第7,530,253号または米国特許出願第14/211,775号に開示される自動クリンプ化デバイスまたは手動クリンプ化デバイスなど)を使用して部分的にクリンプ状になされ、次いでクリンプ化デバイスから除去され、さらなるクリンプ化ステップにおいてクリンプ化コーンに通して人工弁の最終クリンプ状直径に等しい内径を有する送達シースまたはシリンダに引き込ませることも可能である(米国特許出願公開第2012/0239142号に記載されるものなど)。
【0101】
適切なクリンプ化デバイスは、電気モータまたは燃焼機関により駆動され得るか、圧力調整され得るか、または空圧もしくは油圧により駆動され得る。かかるシステムは、ボタン、レバー、ペダルなどのユーザ入力を収集するための様々なデバイスを備えることが可能である。
【0102】
開示される本発明の原理が適用され得る多数の可能な実施形態を鑑みて、示した実施形態は、本発明の好ましい例にすぎず、本発明の範囲を限定するものとして受け取られるべきではない点を理解されたい。むしろ、本発明の範囲は、以下の特許請求の範囲により定義される。したがって、本発明として特許請求されるものは、これらの特許請求の範囲内に含まれる全てのものである。
【符号の説明】
【0103】
10 人工心臓弁
12 フレーム
14 弁構造体
15 流入端部部分
16 内方スカート
17 中間部分
18 外方スカート
19 流出端部部分
20 継ぎ目ウィンドウ
22 第1の下側列Iの有角ストラット
24 第2の列IIの周方向延在有角ストラット
26 第3の列IIIの周方向延在有角ストラット
28 第4の列IVの周方向延在有角ストラット
30 軸方向延在ウィンドウフレーム部分
31 軸方向ストラット
32 第5の列Vの周方向延在有角ストラット
34 実質的に直線状の軸方向延在ストラット
36 開口
38 開口
40 弁尖
42a 角度
42b 角度
42c 角度
42d 角度
42e 角度
44 連接部
46 連接部
50 フレーム
52 周方向延在有角ストラット
54 連結部分
56 連結部分
58 軸方向延在ストラット
60 継ぎ目ウィンドウフレーム部分
62 スロットまたは継ぎ目ウィンドウ
64 連接部
70 縫合糸
72 補強ストリップ
78 第1のセットの繊維、またはヤーンもしくはストランド
80 第2のセットの繊維、またはヤーンもしくはストランド
82 上側エッジ
84 下側エッジ
86 短エッジ
88 短エッジ
90 短エッジ部分
92 短エッジ部分
94 縫合ライン
96 突出部
98 スリット
100 箇所
108 下側エッジ部分、流入エッジ部分
110 上側自由エッジ、流出エッジ
112 上側タブ
114 切欠部
116 下側タブ
118 軸方向エッジ部分
119 平滑な湾曲先端部分
120 実質的にV字形の中間エッジ部分
121 傾斜部分
122 継ぎ目部
124 可撓性コネクタ
126 ウェッジ
128 仮縫合糸
130 内方切欠部
132 外方切欠部
133 並縫いステッチ
134 櫛縫いステッチ
136 マーキング縫合糸
140 矩形
142 内方部分
143 内方エッジ
144 外方部分
145 長手方向軸
146 縫合ライン
148 縫合ライン
150 一次縫合ライン
152 かがり縫いステッチ
154 縫合ライン
156 ブランケット縫合糸
160 下側エッジ
162 上側エッジ
164 突出部
166 切欠部
168 縫合糸
170 布帛
172 軸方向
173 周方向
174 領域
176 第1のセットの繊維
178 第2のセットの繊維
179 折り目
180 細長シャフト
182 膨張可能バルーン1
215 クリンプ化デバイス
216 クリンプ化顎部、クリンパ顎部
217 可変直径クリンプ化穴
222 第1の部分収縮構成
224 第2の部分収縮構成
230 自己拡張可能布帛
232 第1のセットの繊維
234 第2のセットの繊維
236 軸方向
238 周方向
S2 厚さ
F1 力
F2 力
d1 ストラットの端部間の垂直方向距離
d2 距離
D1 最大径
D2 最小径
【外国語明細書】