(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023165740
(43)【公開日】2023-11-17
(54)【発明の名称】フィルムカートリッジ、フィルムユニットおよび層転写装置
(51)【国際特許分類】
B65C 9/18 20060101AFI20231110BHJP
B65C 9/30 20060101ALI20231110BHJP
G03G 21/16 20060101ALI20231110BHJP
B41F 16/00 20060101ALI20231110BHJP
【FI】
B65C9/18
B65C9/30
G03G21/16 104
B41F16/00 H
【審査請求】有
【請求項の数】31
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023143355
(22)【出願日】2023-09-05
(62)【分割の表示】P 2019098136の分割
【原出願日】2019-05-24
(31)【優先権主張番号】P 2018246433
(32)【優先日】2018-12-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000005267
【氏名又は名称】ブラザー工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100116034
【弁理士】
【氏名又は名称】小川 啓輔
(74)【代理人】
【識別番号】100144624
【弁理士】
【氏名又は名称】稲垣 達也
(72)【発明者】
【氏名】市川 智也
(57)【要約】
【課題】転写層を含む被支持層に作業者が触れることを抑制し、支持層に残っている被支持層が剥がれ落ちることを抑制することが可能なフィルムカートリッジ、フィルムユニットおよび層転写装置を提供する。
【解決手段】フィルムカートリッジ(200)は、転写層(F22)を含む被支持層(F2)および支持層(F1)を有する多層フィルム(F)が巻回される供給リール(31)と、多層フィルム(F)を巻き取るための巻取リール(35)を備える。多層フィルム(F)は、被支持層(F2)が供給軸部(31A)に接触するようにして、供給軸部(31A)に巻回され、かつ被支持層(F2)が巻取軸部(35A)に接触するようにして、巻取軸部(35A)に巻回されている。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シートに形成されたトナー像の上に転写層を転写する層転写装置に着脱可能なフィルムカートリッジであって、
前記転写層を含む被支持層と、前記被支持層を支持する支持層と、を有する多層フィルムが巻回される供給軸部と、前記供給軸部の軸方向端部に配置される供給ギヤと、を有する供給リールと、
前記供給リールを収容する供給ケースと、
を備え、
前記多層フィルムは、前記被支持層が前記供給軸部に接触するようにして、前記供給軸部に巻回され、
前記供給ケースは、前記軸方向の端部に設けられる2つの側壁と、前記2つの側壁のうち、前記供給ギヤに近い一方の側壁から前記軸方向に離れて位置し、かつ前記供給ギヤの少なくとも一部を前記軸方向から覆う外側壁と、を有し、
前記供給ギヤは、少なくとも一部が前記一方の側壁と前記外側壁との間に位置していることを特徴とするフィルムカートリッジ。
【請求項2】
前記多層フィルムを巻き取るための巻取軸部を有する巻取リールをさらに備え、
前記供給リールは前記側壁に回転可能に支持されていることを特徴とする請求項1に記載のフィルムカートリッジ。
【請求項3】
前記供給ギヤは、前記供給ケースに形成された切欠から外部に露出しており、
前記外側壁は、前記切欠の前記供給リールの回転軸回りの角度α1の範囲において、前記供給リールの軸方向に沿って見て、前記供給ギヤの歯先と重ならないことを特徴とする請求項2に記載のフィルムカートリッジ。
【請求項4】
前記外側壁は、前記切欠の前記供給リールの回転軸回りの角度α1の範囲において、前記供給リールの軸方向に沿って見て、前記供給ギヤの歯底と重ならないことを特徴とする請求項3に記載のフィルムカートリッジ。
【請求項5】
前記供給ケースは、ホルダに対して前記供給リールの回転軸回りに回動させることで装着され、
前記切欠の前記供給リールの回転軸回りの角度α1は、前記供給ケースが前記ホルダに対して装着されるときの回動角度α2よりも大きいことを特徴とする請求項3または請求項4に記載のフィルムカートリッジ。
【請求項6】
前記巻取リールは、前記巻取軸部の両端部に設けられるフランジと、前記巻取リールの軸方向において前記フランジの外側に配置される巻取ギヤと、を有することを特徴とする請求項2から請求項5のいずれか1項に記載のフィルムカートリッジ。
【請求項7】
前記巻取ギヤは、前記巻取軸部と同軸に配置されることを特徴とする請求項6に記載のフィルムカートリッジ。
【請求項8】
前記支持層が透明であることを特徴とする請求項2から請求項7のいずれか1項に記載のフィルムカートリッジ。
【請求項9】
請求項2から請求項8のいずれか1項に記載のフィルムカートリッジと、
前記供給リールおよび前記巻取リールを支持するホルダと、
前記供給リールから引き出される前記多層フィルムの前記支持層に接触して、前記多層フィルムの進行方向を変更する第1案内軸と、
前記第1案内軸で案内された前記多層フィルムの前記支持層に接触して、前記多層フィルムの進行方向を変更する第2案内軸と、を備えるフィルムユニット。
【請求項10】
前記供給リールおよび前記巻取リールは、前記ホルダに対して着脱可能であることを特徴とする請求項9に記載のフィルムユニット。
【請求項11】
前記供給リールおよび前記巻取リールは、前記ホルダに対して、前記供給リールの軸方向に直交する方向に着脱可能であることを特徴とする請求項10に記載のフィルムユニット。
【請求項12】
請求項2から請求項5のいずれか一項に記載のフィルムカートリッジと、
前記供給リールおよび前記巻取リールを支持し、前記供給ケースを取り外し可能に装着可能なホルダと、
前記供給リールから引き出される前記多層フィルムの前記支持層に接触して、前記多層フィルムの進行方向を変更する第1案内軸と、
前記第1案内軸で案内された前記多層フィルムの前記支持層に接触して、前記多層フィルムの進行方向を変更する第2案内軸と、
前記供給ケースを前記ホルダに対して着脱する時に前記供給ケースを所定方向にガイドする着脱ガイドと、を備え、
前記供給ケースを前記ホルダから取り外す際において前記着脱ガイドでガイドされる前記供給ケースの移動方向が、前記供給リールから前記多層フィルムが引き出される方向とは反対方向の成分を含まない方向となることを特徴とするフィルムユニット。
【請求項13】
前記第1案内軸は、前記供給ケースを前記所定方向に投影した領域の外に配置されていることを特徴とする請求項12に記載のフィルムユニット。
【請求項14】
前記供給リールの回転軸と前記巻取リールの回転軸を含む平面と直交する直交方向に前記供給ケースを投影した領域内に、前記第1案内軸の少なくとも一部が配置されていることを特徴とする請求項12または請求項13に記載のフィルムユニット。
【請求項15】
前記供給ケースは、長尺状の係合部を有し、
前記着脱ガイドは、
前記係合部を前記所定方向にガイドするガイド溝と、
前記ガイド溝に繋がり、前記係合部を回動可能に保持する円形の保持穴と、を有し、
前記ガイド溝の幅は、前記係合部の長辺よりも小さく、かつ、前記係合部の短辺より大きく、
前記保持穴の直径は、前記係合部の長辺よりも大きいことを特徴とする請求項12から請求項14のいずれか1項に記載のフィルムユニット。
【請求項16】
前記ホルダは、前記係合部が前記保持穴で保持された状態の前記供給ケースの回転を規制する規制部を有し、
前記規制部で回転が規制された状態の前記供給ケースの前記係合部の長手方向は、前記所定方向と交差していることを特徴とする請求項15に記載のフィルムユニット。
【請求項17】
前記供給ケースは、前記供給リールの前記多層フィルムを外部に引き出すための第1開口を有し、
前記第1開口は、上流端と、前記上流端から前記供給リールの回転方向の下流側に位置する下流端と、を有し、
前記供給ケースの回転が前記規制部で規制された状態において、前記下流端は、前記第1案内軸と前記供給軸部の共通内接線に沿った多層フィルムと、前記第1案内軸と前記供給軸部の共通外接線であって、前記巻取リールに対して遠い側の共通外接線との間に位置することを特徴とする請求項16に記載のフィルムユニット。
【請求項18】
前記ホルダは、前記層転写装置のガイドによってガイドされるボスを有し、
前記ボスおよび前記係合部は、前記供給リールの回転軸上に位置することを特徴とする請求項15から請求項17のいずれか1項に記載のフィルムユニット。
【請求項19】
前記第2案内軸で案内された前記多層フィルムの前記被支持層に接触して、前記多層フィルムの進行方向を変更して前記巻取リールに案内する第3案内軸を備え、
前記第3案内軸は、
前記巻取軸部の中心と前記第2案内軸の中心を結ぶ直線よりも前記供給リール側に位置する第1位置と、
前記直線よりも前記供給リールとは反対側であって、前記第2案内軸から前記巻取リールに巻回された多層フィルムのロールの最大径よりも大きく離れた第2位置と、に移動可能であることを特徴とする請求項9から請求項18のいずれか1項に記載のフィルムユニット。
【請求項20】
前記ホルダは、ベースフレームと、前記ベースフレームに移動可能に支持される規制フレームと、を有し、
前記規制フレームは、前記第3案内軸を有し、前記巻取リールの着脱方向への移動を規制する規制位置と、前記巻取リールの移動の規制を解除する解除位置との間で移動可能であり、
前記規制フレームが規制位置に位置するときに前記第3案内軸が前記第1位置に位置し、前記規制フレームが解除位置に位置するときに前記第3案内軸が前記第2位置に位置することを特徴とする請求項19に記載のフィルムユニット。
【請求項21】
前記ベースフレームは、前記供給リールを保持する第1保持部と、前記巻取リールを保持する第2保持部と、前記第1保持部と前記第2保持部とを連結する連結部と、を有し、
前記連結部は、前記供給リールの回転軸と前記巻取リールの回転軸を含む平面の一方側に配置されていることを特徴とする請求項20に記載のフィルムユニット。
【請求項22】
前記規制フレームに設けられるロック部材であって、前記ベースフレームに係合することで、前記規制フレームが前記規制位置から前記解除位置に移動することを規制するロック部材を備え、
前記多層フィルムから前記第3案内軸にかかる付勢力によって、前記ロック部材が前記ベースフレームに付勢されることを特徴とする請求項20または請求項21に記載のフィルムユニット。
【請求項23】
前記規制フレームは、前記規制位置に位置する状態において、前記供給リールから最も遠くに位置する一端部を有し、
前記一端部は、前記巻取リールを外部に臨ませる第2開口を有することを特徴とする請求項20から請求項22のいずれか1項に記載のフィルムユニット。
【請求項24】
前記ベースフレームの外表面は、前記供給リールの回転軸と前記巻取リールの回転軸を含む平面と直交する直交方向において、前記第3案内軸に対して前記巻取リールの回転軸と同一側であって、前記巻取リールの回転軸よりも前記第3案内軸から離れた位置に位置する第1面を有し、
前記規制フレームは、前記直交方向において、前記巻取リールの回転軸よりも前記第3案内軸から離れた回動軸を中心にして前記ベースフレームに対して回動可能であり、
前記巻取リールは、前記供給リールから最も遠い最遠部を有し、
前記規制フレームの前記一端部は、前記規制フレームが前記規制位置に位置する状態において、前記最遠部よりも前記供給リールに近いことを特徴とする請求項23に記載のフィルムユニット。
【請求項25】
前記第2開口は、前記多層フィルムの幅よりも大きく、
前記第2開口の縁のうち前記多層フィルムの外面と対向する縁から前記巻取リールの回転軸までの距離が、前記巻取リールに巻回された多層フィルムのロールの最大半径よりも大きいことを特徴とする請求項24に記載のフィルムユニット。
【請求項26】
前記ホルダは、前記巻取リールの軸方向両端に取手を有することを特徴とする請求項9から請求項25のいずれか1項に記載のフィルムユニット。
【請求項27】
前記取手は、前記第1案内軸と前記第2案内軸とに架かる多層フィルムよりも、前記第1案内軸および前記第2案内軸とは反対側に突出することを特徴とする請求項26に記載のフィルムユニット。
【請求項28】
前記層転写装置に対して前記供給リールの軸方向に直交する方向に着脱可能であることを特徴とする請求項9から請求項27のいずれか1項に記載のフィルムユニット。
【請求項29】
前記層転写装置に設けられる駆動源から駆動力を受け、駆動力を前記巻取リールに伝達する駆動伝達部材を備えることを特徴とする請求項9から請求項28のいずれか1項に記載のフィルムユニット。
【請求項30】
前記供給リールの回転軸と前記巻取リールの回転軸を含む平面と直交する直交方向おいて、前記第2案内軸は、前記第1案内軸よりも前記供給リールから遠い位置に位置することを特徴とする請求項9から請求項29のいずれか1項に記載のフィルムユニット。
【請求項31】
請求項9から請求項30のいずれか1項に記載のフィルムユニットが着脱可能な筐体を備える層転写装置であって、
前記多層フィルムを加熱する加熱部材と、
前記加熱部材との間で前記多層フィルムを挟む加圧部材と、を備え、
前記筐体は、第3開口を有する筐体本体と、前記第3開口を開閉するカバーと、を備え、
前記加圧部材は、前記カバーに設けられることを特徴とする層転写装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、シートに形成されたトナー像上に転写層を転写するためのフィルムカートリッジ、フィルムユニットおよび層転写装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、フィルムカートリッジとして、内部に転写層を有する多層フィルムが巻回された供給リールおよび巻取リールを備え、層転写装置に対して着脱可能に構成されたものが知られている(特許文献1参照)。この技術では、多層フィルムは、転写層を支持する支持層をさらに有している。そして、支持層が供給リールおよび巻取リールに接触するようにして、多層フィルムが供給リールおよび巻取リールに巻回されている。これにより、供給リールに巻回された多層フィルムのロールの外表面に被支持層が配置されて外部に露出し、巻取リールに巻回された多層フィルムのロールの外表面に被支持層が配置されて外部に露出している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来技術では、供給リールに巻回された多層フィルムのロールの外表面に被支持層が配置されて外部に露出するので、多層フィルムが巻回された供給リールをフィルムユニットのホルダに取り付ける作業において、作業者が被支持層に触れてしまい、転写層を含む被支持層が傷つくおそれがある。また、層転写を行った後に巻取リールに巻き取られた多層フィルムのロールの外表面に位置する被支持層が外部に露出するので、支持層に残っている被支持層が剥がれ落ちるおそれがある。
【0005】
供給リールをホルダに取り付ける作業中において転写層を含む被支持層に作業者が触れてしまうことを抑制するとともに、層転写後に支持層に残っている被支持層が剥がれ落ちることを抑制することが望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述の背景に鑑み、シートに形成されたトナー像の上に転写層を転写する層転写装置に着脱可能なフィルムカートリッジを開示する。フィルムカートリッジは、前記転写層を含む被支持層と、前記被支持層を支持する支持層と、を有する多層フィルムが巻回される供給軸部を有する供給リールと、前記多層フィルムを巻き取るための巻取軸部を有する巻取リールと、を備える。
前記多層フィルムは、前記被支持層が前記供給軸部に接触するようにして、前記供給軸部に巻回され、かつ前記被支持層が前記巻取軸部に接触するようにして、前記巻取軸部に巻回されている。
【0007】
また、前記したフィルムカートリッジと、前記供給リールおよび前記巻取リールを支持するホルダと、前記供給リールから引き出される前記多層フィルムの前記支持層に接触して、前記多層フィルムの進行方向を変更する第1案内軸と、前記第1案内軸で案内された前記多層フィルムの前記支持層に接触して、前記多層フィルムの進行方向を変更する第2案内軸と、を備えるフィルムユニットを開示する。
【0008】
この構成によれば、被支持層が供給軸部に接触するようにして、多層フィルムが供給軸部に巻回されているので、供給リールをホルダに取り付ける際に、作業者が供給リールに巻回された多層フィルムに触れてしまっても、作業者は支持層に触れるだけで被支持層には触れないため、被支持層を保護することができる。また、被支持層が巻取軸部に接触するようにして、多層フィルムが巻取軸部に巻回されているので、巻取リールに巻き取られた多層フィルムにおいて、支持層に残っている被支持層が剥がれ落ちることを、支持層で抑えることができる。
【0009】
前記フィルムカートリッジは、前記供給リールを収容する供給ケースを備えていてもよい。また、前記供給リールは、前記供給ケースに回転可能に支持されていてもよい。また、前記供給リールは、前記供給リールの軸方向端部に供給ギヤを有し、前記供給ギヤは、前記供給ケースに形成された切欠から外部に露出しているものとすることができる。また、前記供給ケースは、前記軸方向の端部に設けられる2つの側壁と、前記2つの側壁のうち、前記供給ギヤに近い一方の側壁から前記軸方向に離れて位置し、かつ前記供給ギヤの少なくとも一部を前記軸方向から覆う外側壁と、前記一方の側壁と前記外側壁とを連結する外周壁と、を有し、
前記供給ギヤは、少なくとも一部が前記一方の側壁と前記外側壁との間に位置しており、かつ前記外周壁に形成された切欠から外部に露出していてもよい。また、前記供給リールは前記側壁に回転可能に支持されていてもよい。
【0010】
前記外側壁は、前記切欠の前記供給リールの回転軸回りの角度α1の範囲において、前記供給リールの軸方向に沿って見て、前記供給ギヤの歯先と重ならないことが望ましい。また、前記外側壁は、前記切欠の前記供給リールの回転軸回りの角度α1の範囲において、前記供給リールの軸方向に沿って見て、前記供給ギヤの歯底と重ならないことが望ましい。
【0011】
前記供給ケースは、前記フィルムカートリッジとは別のホルダに対して前記供給リールの回転軸回りに回動させることで装着される構成とすることができる。この場合、前記切欠の前記供給リールの回転軸回りの角度α1は、前記供給ケースが前記ホルダに装着されるときの回動角度α2よりも大きいことが望ましい。
【0012】
また、前記巻取リールは、前記巻取軸部の両端部に設けられるフランジと、前記巻取リールの軸方向において前記フランジの外側に配置される巻取ギヤと、を有するもとのすることができる。また、前記巻取ギヤは、前記巻取軸部と同軸に配置されていてもよい。
また、前記支持層は、透明であってもよい。
【0013】
前記フィルムユニットにおいて、前記供給リールおよび前記巻取リールは、前記ホルダに対して着脱可能であってもよい。
【0014】
これによれば、例えば各リールとホルダが着脱不能となるフィルムユニットと比べ、ホルダを使いまわすことができるので、環境保護に寄与することができる。
【0015】
また、前記供給リールおよび前記巻取リールは、前記ホルダに対して、前記供給リールの軸方向に直交する方向に着脱可能であってもよい。
【0016】
また、前記フィルムカートリッジが前記供給リールを収容する供給ケースを備える形態において、前記フィルムユニットは、前記供給ケースを前記ホルダに対して着脱する時に前記供給ケースを所定方向にガイドする着脱ガイドをさらに備え、前記供給ケースを前記ホルダから取り外す際において前記着脱ガイドでガイドされる前記供給ケースの移動方向が、前記供給リールから前記多層フィルムが引き出される方向とは反対方向の成分を含まない方向となっていてもよい。
【0017】
これによれば、供給ケースをホルダから取り外す際に、第1案内軸と供給リールの間にかかる多層フィルムのテンションが弱まっていくので、供給ケースをホルダから容易に取り外すことができる。
【0018】
また、前記第1案内軸は、前記供給ケースを前記所定方向に投影した領域の外に配置されていてもよい。
【0019】
これによれば、供給ケースの着脱時に、供給ケースが第1案内軸に干渉するのを抑えることができる。
【0020】
また、前記供給リールの回転軸と前記巻取リールの回転軸を含む平面と直交する直交方向に前記供給ケースを投影した領域内に、前記第1案内軸の少なくとも一部が配置されていてもよい。
【0021】
これによれば、供給リールの回転軸と巻取リールの回転軸とを結ぶ方向において、供給ケースを巻取リールに近づけることができるので、フィルムユニットの大型化を抑制することができる。
【0022】
また、前記供給ケースは、長尺状の係合部を有し、前記着脱ガイドは、前記係合部を前記所定方向にガイドするガイド溝と、前記ガイド溝に繋がり、前記係合部を回動可能に保持する円形の保持穴と、を有し、前記ガイド溝の幅は、前記係合部の長辺よりも小さく、かつ、前記係合部の短辺より大きく、前記保持穴の直径は、前記係合部の長辺よりも大きくてもよい。
【0023】
これによれば、係合部の長手方向を所定方向に揃えて係合部をガイド溝に差し込んでいき、係合部が保持穴に到達したときに、供給ケースを回動させることで、係合部がガイド溝から所定方向に抜けなくなるので、簡単な操作で供給ケースを着脱ガイドに着脱することができる。
【0024】
また、前記ホルダは、前記係合部が前記保持穴で保持された状態の前記供給ケースの回転を規制する規制部を有し、前記規制部で回転が規制された状態の前記供給ケースの前記係合部の長手方向は、前記所定方向と交差していてもよい。
【0025】
これによれば、係合部の向きを規制部によって決めることができるので、供給ケースが着脱ガイドから外れるのを抑制することができる。
【0026】
また、前記供給ケースは、前記供給リールの前記多層フィルムを外部に引き出すための第1開口を有し、前記第1開口は、上流端と、前記上流端から前記供給リールの回転方向の下流側に位置する下流端と、を有し、前記供給ケースの回転が前記規制部で規制された状態において、前記下流端は、前記第1案内軸と前記供給軸部の共通内接線に沿った多層フィルムと、前記第1案内軸と前記供給軸部の共通外接線であって、前記巻取リールに対して遠い側の共通外接線との間に位置していてもよい。
【0027】
これによれば、下流端を、多層フィルムを使い切る直前の状態の多層フィルムに対して、干渉させずに、かつ、できるだけ近くに配置することができるので、第1開口の大きさを小さくすることができ、供給ケースの剛性を高くすることができる。
【0028】
また、前記ホルダは、前記層転写装置のガイドによってガイドされるボスを有し、前記ボスおよび前記係合部は、前記供給リールの回転軸上に位置していてもよい。
【0029】
また、前記フィルムユニットは、前記第2案内軸で案内された前記多層フィルムの前記被支持層に接触して、前記多層フィルムの進行方向を変更して前記巻取リールに案内する第3案内軸を備え、前記第3案内軸は、前記巻取軸部の中心と前記第2案内軸の中心を結ぶ直線よりも前記供給リール側に位置する第1位置と、前記直線よりも前記供給リールとは反対側であって、前記第2案内軸から前記巻取リールに巻回された多層フィルムのロールの最大径よりも大きく離れた第2位置と、に移動可能であってもよい。
【0030】
これによれば、第3案内軸が第1位置に位置するときには、第2案内軸で折り曲げられている多層フィルムの角度を鋭角にすることができるので、層転写時においてシートに重ねられている多層フィルムを、層転写後にシートから剥離する際において、転写層をシートからきれいに剥離させることができる。また、第3案内軸が第2位置に位置するときには、第2案内軸と第3案内軸との軸間距離が、巻取リールに巻回された多層フィルムのロールの最大径よりも大きいので、第2案内軸と第3案内軸の間を通して巻取リールを容易に取り外すことができる。
【0031】
また、前記ホルダは、ベースフレームと、前記ベースフレームに移動可能に支持される規制フレームと、を有し、前記規制フレームは、前記第3案内軸を有し、前記巻取リールの着脱方向への移動を規制する規制位置と、前記巻取リールの移動の規制を解除する解除位置との間で移動可能であり、前記規制フレームが規制位置に位置するときに前記第3案内軸が前記第1位置に位置し、前記規制フレームが解除位置に位置するときに前記第3案内軸が前記第2位置に位置していてもよい。
【0032】
これによれば、巻取リールを取り外す際に、規制フレームを解除位置に移動させると、規制フレームとともに第3案内軸が移動して第2位置に移動するので、巻取リールの取外作業を容易に行うことができる。
【0033】
また、前記ベースフレームは、前記供給リールを保持する第1保持部と、前記巻取リールを保持する第2保持部と、前記第1保持部と前記第2保持部とを連結する連結部と、を有し、前記連結部は、前記供給リールの回転軸と前記巻取リールの回転軸を含む平面の一方側に配置されていてもよい。
【0034】
これによれば、第1保持部と第2保持部との間に空間が形成されるので、層転写装置において、第1保持部と第2保持部との間に加熱ローラを配置することができる。
【0035】
また、前記フィルムユニットは、前記規制フレームに設けられるロック部材であって、前記ベースフレームに係合することで、前記規制フレームが前記規制位置から前記解除位置に移動することを規制するロック部材を備え、前記多層フィルムから前記第3案内軸にかかる付勢力によって、前記ロック部材が前記ベースフレームに付勢されていてもよい。
【0036】
これによれば、多層フィルムからの付勢力を利用してロック部材をベースフレームに係合させるので、例えば規制フレームが規制位置でガタつかないようにバネなどを設ける構成に比べ、コストを低下させることができる。
【0037】
また、前記規制フレームは、前記規制位置に位置する状態において、前記供給リールから最も遠くに位置する一端部を有し、前記一端部は、前記巻取リールを外部に臨ませる第2開口を有していてもよい。
【0038】
この場合、前記支持層は、透明であってもよい。
【0039】
これによれば、規制フレームの第2開口から、透明の支持層を通して転写層を視認可能となるので、多層フィルムの交換時において、ユーザ等が転写層の種類(色)を間違えてしまうのを抑制することができる。
【0040】
また、前記ベースフレームの外表面は、前記供給リールの回転軸と前記巻取リールの回転軸を含む平面と直交する直交方向において、前記第3案内軸に対して前記巻取リールの回転軸と同一側であって、前記巻取リールの回転軸よりも前記第3案内軸から離れた位置に位置する第1面を有し、前記規制フレームは、前記直交方向において、前記巻取リールの回転軸よりも前記第3案内軸から離れた回動軸を中心にして前記ベースフレームに対して回動可能であり、前記巻取リールは、前記供給リールから最も遠い最遠部を有し、前記規制フレームの前記一端部は、前記規制フレームが前記規制位置に位置する状態において、前記最遠部よりも前記供給リールに近くてもよい。
【0041】
これによれば、規制フレームの一端部が巻取リールの最遠部よりも供給リールの近くに配置されているので、ベースフレームの第1面をテーブルなどの載置面に載せた状態であっても、規制フレームを大きく回動させることができ、巻取リールを容易に交換することができる。
【0042】
また、前記第2開口は、前記多層フィルムの幅よりも大きく、前記第2開口の縁のうち前記多層フィルムの外面と対向する縁から前記巻取リールの回転軸までの距離が、前記巻取リールに巻回された多層フィルムのロールの最大半径よりも大きくてもよい。
【0043】
これによれば、巻取リールに巻き取られることで、巻取リールに巻回される多層フィルムのロールの径が徐々に大きくなっていっても、多層フィルムが第2開口の縁に干渉することを抑制することができる。
【0044】
また、前記ホルダは、前記巻取リールの軸方向両端に取手を有していてもよい。
【0045】
これによれば、層転写装置に対してフィルムユニットを着脱する作業を容易に行うことができる。
【0046】
また、前記取手は、前記第1案内軸と前記第2案内軸とに架かる多層フィルムよりも、前記第1案内軸および前記第2案内軸とは反対側に突出していてもよい。
【0047】
これによれば、ユーザが取手を掴む際に、多層フィルムに触れてしまうことを抑制することができる。
【0048】
また、前記フィルムユニットは、前記層転写装置に対して前記供給リールの軸方向に直交する方向に着脱可能であってもよい。
【0049】
また、前記フィルムユニットは、前記層転写装置に設けられる駆動源から駆動力を受け、駆動力を前記巻取リールに伝達する駆動伝達部材を備えていてもよい。
【0050】
また、前記供給リールの回転軸と前記巻取リールの回転軸を含む平面と直交する直交方向おいて、前記第2案内軸は、前記第1案内軸よりも前記供給リールから遠い位置に位置していてもよい。
【0051】
また、前記フィルムユニットが着脱可能な筐体を備える層転写装置は、前記多層フィルムを加熱する加熱部材と、前記加熱部材との間で前記多層フィルムを挟む加圧部材と、を備える。
前記筐体は、第3開口を有する筐体本体と、前記第3開口を開閉するカバーと、を備える。
前記加圧部材は、前記カバーに設けられている。
【発明の効果】
【0052】
前記したフィルムカートリッジ、フィルムユニットおよび層転写装置によれば、供給リールをホルダに取り付ける作業中において転写層に作業者が触れてしまうことを抑制するとともに、層転写後に支持層に残っている転写層が剥がれ落ちることを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【
図1】一実施形態に係るフィルムユニットが装着された層転写装置を示す図である。
【
図2】層転写装置のカバーを開けた状態を示す図である。
【
図3】多層フィルムと各軸との関係を示す断面図(a)と、多層フィルムの層を詳細に示す断面図(b)である。
【
図6】供給ケースの第1開口周りの構造を示す断面図である。
【
図7】係合部と着脱ガイドの関係を示す断面図(a),(b)である。
【
図8】フィルムユニットを軸方向から見た側面図である。
【
図9】規制フレームを解除位置に移動させた状態を示す断面図(a)と、規制位置に位置する規制フレームを第2開口側から見た図(b)である。
【
図10】ロック部材とベースフレームとの関係を示す断面図である。
【
図11】供給リールの供給ギヤ側の構造を示す断面図である。
【
図13】供給ケースの切欠を説明する図であり、係合部を保持穴内に入れた状態を示す図(a)と、(a)の状態から供給ケースを回動させて装着完了した状態を示す図(b)である。
【発明を実施するための形態】
【0054】
一実施形態について、適宜図面を参照しながら詳細に説明する。なお、以下の説明においては、まず、層転写装置の全体構成を簡単に説明した後、フィルムユニットおよびフィルムカートリッジの構成について説明する。
以下の説明において、方向は、
図1に示す方向で説明する。すなわち、
図1の右側を「前」とし、
図1の左側を「後」とし、
図1の紙面手前側を「左」とし、
図1の紙面奥側を「右」とする。また、
図1の上下を「上下」とする。
【0055】
図1に示すように、層転写装置1は、例えばレーザプリンタ等の画像形成装置でシートSにトナー像を形成した後、シートSのトナー像の上にアルミニウム等の箔を転写するための装置である。層転写装置1は、筐体2と、シートトレイ3と、シート搬送部10と、フィルム供給部30と、転写部50とを備えている。
【0056】
筐体2は、樹脂などからなり、筐体本体21と、カバー22とを備えている。筐体本体21は、上部に第3開口21A(
図2参照)を有している。第3開口21Aは、筐体本体21に後述するフィルムユニットFUを着脱するための開口である。カバー22は、第3開口21Aを開閉するための部材である。カバー22の後端部は、筐体本体21に回動可能に支持されている。
【0057】
シートトレイ3は、用紙、OHPフィルム等のシートSが載置されるトレイである。シートトレイ3は、筐体2の後部に設けられている。なお、シートSは、トナー像が形成された面を下向きにしてシートトレイ3上に載置される。
【0058】
シート搬送部10は、シート供給機構11と、シート排出機構12とを備えている。シート供給機構11は、シートトレイ3上のシートSを一枚ずつ転写部50に向けて搬送する機構である。シート供給機構11は、ピックアップローラと搬送ローラを備えている。
【0059】
シート排出機構12は、転写部50を通過したシートSを筐体2の外部に排出する機構である。シート排出機構12は、複数の搬送ローラを備えている。
【0060】
フィルム供給部30は、シート供給機構11から搬送されたシートSに重ねるように多層フィルムFを供給する部分である。フィルム供給部30は、フィルムユニットFUと、モータ等の駆動源80を備えている。
【0061】
フィルムユニットFUは、
図2に示すように、後述する供給リール31の軸方向に直交する方向において、筐体本体21に着脱可能となっている。フィルムユニットFUは、供給リール31と、巻取リール35と、第1案内軸41と、第2案内軸42と、第3案内軸43とを備えている。フィルムユニットFUの供給リール31には、多層フィルムFが巻回されている。
【0062】
図3(a)に示すように、多層フィルムFは、支持層F1と、被支持層F2とを有する。支持層F1は、高分子材料からなるテープ状の透明な基材であり、被支持層F2を支持している。
【0063】
図3(b)に示すように、被支持層F2は、剥離層F21と、転写層F22と、接着層F23とを有する。剥離層F21は、支持層F1から転写層F22を剥離しやすくするための層であり、支持層F1と転写層F22との間に配置されている。剥離層F21は、支持層F1から剥離しやすい透明な材料、例えばワックス系樹脂を含んでいる。
【0064】
転写層F22は、トナー像に転写される層であり、箔を含んでいる。箔とは、金、銀、銅、アルミニウム等の金属であって薄く延された金属である。また、転写層F22は、金色、銀色、赤色などの着色材料と、熱可塑性樹脂とを含む。転写層F22は、剥離層F21と接着層F23との間に配置されている。
【0065】
接着層F23は、転写層F22をトナー像に接着しやすくするための層である。接着層F23は、後述する転写部50によって加熱されたトナー像に付着しやすい材料、例えば塩化ビニル系樹脂やアクリル系樹脂を含んでいる。
【0066】
供給リール31は、樹脂などからなり、多層フィルムFが巻回される供給軸部31Aを有している。多層フィルムFは、転写層F22を含む被支持層F2が供給軸部31Aに接触するようにして、供給軸部31Aに巻回されている。すなわち、多層フィルムFは、支持層F1を外側、被支持層F2(転写層F22)を内側にして、供給リール31に巻回されている。これにより、供給軸部31Aに巻かれたロール状の多層フィルムFのうち最も外側に位置する部分において、支持層F1が被支持層F2の外側に位置している。
【0067】
巻取リール35は、樹脂などからなり、多層フィルムFを巻き取るための巻取軸部35Aを有している。多層フィルムFは、転写層F22を含む被支持層F2が巻取軸部35Aに接触するようにして、巻取軸部35Aに巻回されている。すなわち、多層フィルムFは、支持層F1を外側、被支持層F2(転写層F22)を内側にして、巻取リール35に巻回される。これにより、巻取軸部35Aに巻かれたロール状の多層フィルムFのうち最も外側に位置する部分において、支持層F1が被支持層F2の外側に位置している。
【0068】
なお、
図3等においては、便宜上、供給リール31および巻取リール35の両方に多層フィルムFが最大に巻回された状態を図示することとする。実際には、フィルムユニットFUが新品の状態においては、供給リール31に巻回されたロール状の多層フィルムFの径は最大となっており、巻取リール35には多層フィルムFが巻回されていない、もしくは、巻取リール35に巻回されたロール状の多層フィルムFの径は最小となっている。また、フィルムユニットFUの寿命時(多層フィルムFを使い切ったとき)においては、巻取リール35に巻回されたロール状の多層フィルムFの径は最大となり、供給リール31には多層フィルムFが巻回されていない、もしくは、供給リール31に巻回されたロール状の多層フィルムFの径は最小となる。
【0069】
第1案内軸41は、供給リール31から引き出される多層フィルムFの進行方向を変更するための軸である。第1案内軸41は、樹脂などからなっている。第1案内軸41は、多層フィルムFの支持層F1に接触している。第1案内軸41は、供給リール31の回転軸X1と巻取リール35の回転軸X2を含む平面FFと直交する直交方向に後述する供給ケース32を投影した領域AR1(図の破線で挟まれる領域)内に配置されている。
【0070】
第2案内軸42は、第1案内軸41で案内された多層フィルムFの進行方向を変更するための軸である。第2案内軸42は、樹脂などからなっている。第2案内軸42は、多層フィルムFの支持層F1に接触している。第2案内軸42は、回転軸X1,X2を含む平面FFと直交する直交方向おいて、第1案内軸41よりも供給リール31から遠い位置に位置している。
【0071】
第3案内軸43は、第2案内軸42で案内された多層フィルムFの進行方向を変更して巻取リール35に案内する軸である。第3案内軸43は、樹脂などからなっている。第3案内軸43は、多層フィルムFの被支持層F2(接着層F23)に接触している。
【0072】
図1に示すように、フィルムユニットFUを層転写装置1に装着した状態において、巻取リール35は、筐体2に設けられた駆動源80によって図示反時計回りに回転駆動される。巻取リール35が回転すると、供給リール31に巻回された多層フィルムFが引き出され、引き出された多層フィルムFが巻取リール35に巻き取られていく。詳しくは、箔転写中において、後述する加圧ローラ51と加熱ローラ61によって多層フィルムFが送り出されることで、供給リール31から多層フィルムFが引き出される。そして、加圧ローラ51と加熱ローラ61から送り出された多層フィルムFが、巻取リール35に巻き取られていく。
【0073】
第1案内軸41は、トナー像を下にした状態で搬送されるシートSに対して、供給リール31から引き出された多層フィルムFを、被支持層F2(
図3参照)を上にした状態で下から重ねるように案内している。第1案内軸41は、供給リール31から引き出された多層フィルムFの搬送方向を変えて、シートSの搬送方向と略平行に多層フィルムFを案内する。
【0074】
第2案内軸42は、転写部50を通過した多層フィルムFと接触し、転写部50を通過した多層フィルムFの搬送方向をシートSの搬送方向とは異なる方向に変更している。転写部50を通過してシートSと重なった状態で搬送された多層フィルムFは、第2案内軸42を通過する際にシートSとは異なる方向に案内され、シートSから剥離される。
【0075】
転写部50は、シートSと多層フィルムFを重ねた状態で加熱および加圧することで、シートSに形成されたトナー像の上に転写層F22を転写するための部分である。転写部50は、加圧部材の一例としての加圧ローラ51と、加熱部材の一例としての加熱ローラ61とを備えている。転写部50は、加圧ローラ51と加熱ローラ61のニップ部において、シートSと多層フィルムFを重ねて加熱および加圧する。
【0076】
加圧ローラ51は、円筒状の芯金の周囲をシリコンゴムからなるゴム層で被覆したローラである。加圧ローラ51は、多層フィルムFの上側に配置され、シートSの裏面(トナー像が形成された面と反対側の面)と接触可能となっている。
【0077】
加圧ローラ51は、両端部がカバー22に回転可能に支持されている。加圧ローラ51は、加熱ローラ61との間でシートSおよび多層フィルムFを挟み、駆動源80によって回転駆動されることで加熱ローラ61を従動回転させる。
【0078】
加熱ローラ61は、円筒状に形成された金属管の内部にヒータを配置したローラであり、多層フィルムFおよびシートSを加熱している。加熱ローラ61は、多層フィルムFの下側に配置され、多層フィルムFと接触している。
【0079】
なお、本実施形態では、加熱ローラ61を多層フィルムFに対して接触・離間させるための接離機構70によって加熱ローラ61を移動させている。接離機構70は、カバー22を閉じている状態においては、シートSが転写部50に供給されるタイミングに合わせて加熱ローラ61を、多層フィルムFに接触する接触位置に移動させている。また、接離機構70は、カバー22が開けられた場合や、転写部50においてシートSに箔転写を行わない場合には、加熱ローラ61を、多層フィルムFから離間する離間位置に位置させている。
【0080】
このように構成された層転写装置1では、シートSの表面を下向きにしてシートトレイ3に載置されたシートSが、シート供給機構11により一枚ずつ転写部50に向けて搬送される。シートSは、転写部50のシート搬送方向における上流側で、供給リール31から供給された多層フィルムFと重ねられ、シートSのトナー像と多層フィルムFが接触した状態で転写部50に搬送される。
【0081】
転写部50においては、シートSと多層フィルムFが加圧ローラ51と加熱ローラ61の間のニップ部を通過する際に、加熱ローラ61と加圧ローラ51により加熱および加圧され、トナー像の上に箔が転写、すなわち、多層フィルムFの接着層F23がトナー像に接着される。
【0082】
箔が転写された後、シートSと多層フィルムFは密着した状態で第2案内軸42まで搬送される。シートSと多層フィルムFが第2案内軸42を通過すると、多層フィルムFの搬送方向がシートSの搬送方向と異なる方向に変わるため、シートSから多層フィルムFが剥離、すなわち、トナー像に接着した接着層F23、箔を含む転写層F22、および剥離層F21を含む、被支持層F2が、多層フィルムFの支持層F1から剥離される。なお、被支持層F2が支持層F1から剥離される際において、被支持層F2の一部、詳しくは剥離層F21の一部が支持層F1に残ることがある。
【0083】
シートSから剥離され、シートS上のトナー像に接着した被支持層F2から剥離した支持層F1を含む多層フィルムFは、巻取リール35に巻き取られていく。一方、多層フィルムFが剥離されたシートSは、シート排出機構12によって、箔が転写された表面を下に向けた状態で、筐体2の外部に排出される。
【0084】
図4および
図5に示すように、フィルムユニットFUは、樹脂などからなるホルダ100と、ホルダ100に着脱可能なフィルムカートリッジ200とを備えている。フィルムカートリッジ200は、前述した多層フィルムFが巻回された供給リール31および巻取リール35と、供給ケース32とを備えている。供給リール31(詳しくは、供給ケース32)および巻取リール35は、ホルダ100に対して、供給リール31の軸方向に直交する方向に着脱可能となっている。
【0085】
図4および
図13(a)に示すように、供給ケース32は、供給リール31を収容する中空のケースである。供給ケース32は、樹脂などからなり、外周壁32Aと、2つの側壁32Bと、外側壁32Jを有する。2つの側壁32Bは、供給リール31の軸方向の端部に設けられる。供給リール31は、供給ケース32の各側壁32Bに回転可能に支持されている。外側壁32Jは、2つの側壁32Bのうち、供給ギヤ31Gに近い一方の側壁32Bから軸方向に離れて位置する。また、外側壁32Jは、供給ギヤ31Gの少なくとも一部を軸方向から覆う。外周壁32Aは、供給リール31の供給軸部31Aに巻回された多層フィルムFを覆う略円筒状の部分を有する。また、外周壁32Aは、供給ギヤ31Gの外周を覆う部分であって、一方の側壁32Bと外側壁32Jとを連結する部分を有する。本実施形態において、供給リール31を覆う外周壁32Aと供給ギヤ31Gを覆う外周壁32Aとは繋がっているが、この2箇所の外周壁32Aは、一方の側壁32Bによって分かれていてもよい。
【0086】
図4に示すように、各側壁32Bは、供給リール31の軸方向から見て長尺状の係合部32Cを有している(
図13(a)も参照)。各係合部32Cは、後述するホルダ100の着脱ガイドGによってガイドされる部位であり、角丸長方形状に形成されている。
【0087】
供給リール31は、供給軸部31Aのうち供給リール31の軸方向端部に供給ギヤ31G(
図13(a)も参照)を有している。供給ギヤ31Gは、供給リール31の軸方向と直交する方向に沿って見て、少なくとも一部が一方の側壁32Bと外側壁32Jとの間に位置している。供給ギヤ31Gは、一方の側壁32Bと外側壁32Jとを連結する外周壁32Aに形成された切欠32Fから外部に露出している。これにより、供給ギヤ31Gを外部のギヤと噛み合わせることができる。また、供給ギヤ31Gは、少なくとも一部が外側壁32Jで覆われていることで、フィルムカートリッジ200がホルダ100に装着されるときなどにおいて、外部の物体が供給リール31の軸方向から供給ギヤ31Gに干渉するのを抑制することができる。
【0088】
図6に示すように、外周壁32Aは、第1開口32Dを有している。第1開口32Dは、供給リール31の多層フィルムFを外部に引き出すための開口である。第1開口32Dは、上流端E1と、上流端E1から供給リール31の回転方向の下流側に位置する下流端E2とを有している。
【0089】
フィルムカートリッジ200がホルダ100に装着された状態において、下流端E2は、第1案内軸41と供給軸部31Aの共通内接線L1に沿った多層フィルムFと、第1案内軸41と供給軸部31Aの共通外接線L2との間に位置している。ここで、フィルムカートリッジ200がホルダ100に装着された状態とは、後述する規制部150(
図12参照)によって供給ケース32の回転が規制された状態を示す。また、第1案内軸41と供給軸部31Aの共通外接線L2は、巻取リール35に対して遠い側と近い側に存在する2つの共通外接線のうち、巻取リール35に対して遠い側の共通外接線である。また、共通内接線L1に沿った多層フィルムFは、供給リール31に巻回されていた多層フィルムFがすべて引き出された状態において、第1案内軸41と供給軸部31A間で張られている多層フィルムFを示す。
【0090】
図4に戻って、巻取リール35は、前述した巻取軸部35Aと、2つのフランジ35Bと、駆動伝達部材の一例としての巻取ギヤ35Cとを有している。巻取軸部35Aのうち巻取リール35の軸方向端部は、筐体本体21に形成された第2ガイドGD2(
図2参照)でガイドされる部位であり、フランジ35Bよりも外側に突出している。
【0091】
フランジ35Bは、巻取軸部35Aに巻回される多層フィルムFの幅方向の移動を規制するための部位である。フランジ35Bは、巻取軸部35Aよりも大径の円板状に形成されており、巻取軸部35Aの両端部に設けられている。
【0092】
巻取ギヤ35Cは、層転写装置1に設けられる駆動源80から駆動力を受け、駆動力を巻取軸部35Aに伝達するためのギヤである。巻取ギヤ35Cは、軸方向において、フランジ35Bの外側に配置されている。巻取ギヤ35Cは、巻取軸部35Aと同軸に配置されている。
【0093】
図5に示すように、ホルダ100は、ベースフレーム110と、ベースフレーム110に回動可能(移動可能)に支持される規制フレーム120とを有している。ベースフレーム110は、第1保持部111と、第2保持部112と、2つの連結部113と、2つの取手114とを有している。
【0094】
第1保持部111は、供給ケース32を保持する部位である。第1保持部111は、供給ケース32を介して供給リール31を保持している。第1保持部111は、断面視略円弧状の外周壁111Aと、2つの側壁111Bとを有する。
【0095】
外周壁111Aは、供給ケース32の外周面に沿って配置されている。各側壁111Bは、供給リール31の軸方向において、外周壁111Aの各端部に配置されている。
【0096】
各側壁111Bは、第1案内軸41を軸方向で挟んでおり、第1案内軸41を回転可能に支持している。各側壁111Bは、供給ケース32の着脱時に供給ケース32を所定方向にガイドする着脱ガイドGを有している。着脱ガイドGは、各側壁111Bの軸方向内側の面(供給ケース32と軸方向で対面する内面)に形成されている。
【0097】
図7(a),(b)に示すように、着脱ガイドGは、ガイド溝G1と、保持穴G2とを有している。ガイド溝G1は、係合部32Cを所定方向(図の矢印方向)にガイドする溝である。ガイド溝G1の幅(所定方向に直交する長さ)は、係合部32Cの長辺よりも小さく、かつ、係合部32Cの短辺より大きくなっている。
【0098】
ガイド溝G1で係合部32Cをガイドする方向である所定方向は、以下のように設定されている。
図7(b)に示すように、供給ケース32をホルダ100から取り外す際においてガイド溝G1でガイドされる供給ケース32の移動方向DD、つまり取り外す方向が、供給リール31から多層フィルムFが引き出される方向DR1とは反対方向DR2の成分を含まない方向となるように、所定方向が設定されている。また、供給リール31の軸方向に直交する方向となるように、所定方向が設定されている。ここで、「供給リール31から多層フィルムFが引き出される方向DR1」は、供給リール31に巻回されている多層フィルムFのロールの径の大きさによって変わる方向であるが、供給リール31に巻回された多層フィルムFがすべて引き出された状態における方向をいう。
【0099】
本実施形態では、ガイド溝G1は、供給ケース32をホルダ100から所定方向に取り外す際に、供給リール31と第1案内軸41の軸間距離が徐々に小さくなるように、供給ケース32の係合部32Cをガイドしている。詳しくは、供給リール31がホルダ100に装着された状態において、供給リール31の回転軸X1を通り、かつ、所定方向に沿った直線L3と第1案内軸41の中心の距離D2が、供給リール31と第1案内軸41の軸間距離D1よりも小さくなるように、所定方向が設定されている。
【0100】
第1案内軸41は、供給ケース32がホルダ100に装着された状態において、供給ケース32を所定方向に投影した領域AR2(図の破線で挟まれた領域)の外に配置されている。
【0101】
保持穴G2は、係合部32Cを回動可能に保持する円形の穴であり、ガイド溝G1に繋がっている。保持穴G2の中心は、回転軸X1と一致している。保持穴G2の直径は、係合部32Cの長辺よりも大きくなっている。係合部32Cをガイド溝G1に通して保持穴G2内に入れた後、供給ケース32を回転軸X1回りで図示反時計回りに回動させると、供給ケース32が、
図12に示す規制部150と接触して位置決めされることで、供給ケース32がホルダ100に装着される。
【0102】
規制部150は、係合部32Cが保持穴G2で保持された状態の供給ケース32の回転を規制する部位である。規制部150は、ホルダ100の一方の側壁111Bに設けられている。また、供給ケース32は、規制部150と接触する接触部32Eを有している。接触部32Eは、供給ケース32の一方の側壁32B(供給ギヤ31Gが配置される側の側壁32B)に設けられている。
【0103】
そして、規制部150で回転が規制された状態の供給ケース32の係合部32Cの長手方向が、所定方向と交差するように、規制部150および接触部32Eの位置が規定されている。言い換えると、規制部150で回転が規制された状態の供給ケース32の係合部32Cの長手方向が、
図7(b)に示す移動方向DDを含む所定方向に沿った直線L3と交差する。
【0104】
ここで、
図13に示すように、切欠32Fは、供給ケース32の回転軸X1回りの角度α1が180°よりも小さい。ここでの角度α1は、
図13において、回転軸X1と外周壁32Aの切欠32Fに隣接する端部とを繋いだ2つの直線がなす角度である。これにより、切欠32Fが大きすぎることによる外周壁32Aの剛性低下を抑制することができる。また、切欠き32Fの角度α1は、供給ケース32をホルダ100に装着されるときの回動角度α2よりも大きい。回動角度α2は、係合部32Cをガイド溝G1に通して保持穴G2内に入れた後、接触部32Eが規制部150に当接するまでの回動角度である。これにより、供給ケース32の外周壁32Aが、供給ギヤ31Gが噛み合う第2ギヤ134(
図5参照)に干渉するのを抑制することができる。
【0105】
また、回転軸X1が延びる方向に沿って見て、外側壁32Jは、切欠32Fが形成された角度α1の範囲において、供給ギヤ31Gの歯先と重ならない。また、回転軸X1が延びる方向に沿って見て、外側壁32Jは、切欠32Fが形成された角度α1の範囲において、供給ギヤ31Gの歯底と重ならない。すなわち、外側壁32Jの切欠32Fが形成された角度α1の範囲の縁部32Hと回転軸X1との距離は、供給ギヤ31Gの歯先円の半径よりも小さく、また、歯底円の半径よりも小さい。このため、供給ケース32をホルダ100に装着するときに、第2ギヤ134が供給ケース32の外側壁32Jに干渉することが抑制される。
【0106】
図5に戻って、2つのうち一方の側壁111Bには、ギヤ機構130が設けられている。ギヤ機構130は、筐体本体21に設けられる図示せぬトルクリミッタの負荷を供給リール31に付与するための機構である。なお、ギヤ機構130の構造については、後で説明する。
【0107】
各側壁111Bは、円柱状のボス111Cを有している。詳しくは、後述するギヤ機構130が設けられる側の側壁111Bは、ギヤカバーGCを介してボス111Cを有している。ここで、ギヤカバーGCは、ギヤ機構130を覆うカバーであり、ボス111Cを有している。ギヤカバーGCは、側壁111Bに軸方向外側の面に固定されている。
【0108】
各ボス111Cは、フィルムユニットFUの筐体本体21への着脱時において、筐体本体21に形成された第1ガイドGD1(
図2参照)でガイドされる部位である。一方のボス111Cは、側壁111Bの軸方向外側の面から突出している。他方のボス111Cは、ギヤカバーGCの軸方向外側の面から突出している。
【0109】
第2保持部112は、巻取リール35を保持する部位である。詳しくは、第2保持部112は、規制フレーム120とともに、中空のケースを構成しており、中空のケース内に巻取リール35を収容している。
【0110】
第2保持部112は、被覆部112Aと、2つの側壁112Bとを有する。被覆部112Aは、巻取リール35に巻回された多層フィルムFを覆う部位である。各側壁112Bは、巻取リール35の軸方向において、被覆部112Aの各端部に配置されている。
【0111】
2つの連結部113は、第1保持部111と第2保持部112とを連結する部位である。詳しくは、各連結部113は、供給リール31の軸方向に間隔を開けて配置されている。軸方向の一方側の連結部113は、第1保持部111の一方側の側壁111Bと、第2保持部112の一方側の側壁112Bとを連結している。また、軸方向の他方側の連結部113は、第1保持部111の他方側の側壁111Bと、第2保持部112の他方側の側壁112Bとを連結している。
【0112】
このように連結部113が形成されることで、ホルダ100は、前述した直交方向に貫通する貫通穴100Aを有している。各取手114は、各連結部113の上に配置されている。各取手114は、ホルダ100のうち巻取リール35の軸方向両端にそれぞれ配置されている。
【0113】
図8に示すように、連結部113は、供給リール31の回転軸X1と巻取リール35の回転軸X2を含む平面FFの一方側(図示上側)に配置されている。各取手114は、第1案内軸41と第2案内軸42とに架かる多層フィルムFよりも、第1案内軸41および第2案内軸42とは反対側(図示上側)に突出している。
【0114】
ベースフレーム110の外表面は、供給リール31の回転軸X1と巻取リール35の回転軸X2を含む平面FFと直交する直交方向において、第3案内軸43に対して巻取リール35の回転軸X2と同一側に位置する第1面110Aを有している。第1面110Aは、巻取リール35の回転軸X2よりも第3案内軸43から離れた位置に位置している。
【0115】
規制フレーム120は、
図8に示す規制位置と、
図9(a)に示す解除位置との間で回動可能となっている。規制フレーム120は、規制位置に位置するときにおいて、巻取リール35の着脱方向への移動を規制している。また、規制フレーム120は、解除位置に位置するときにおいて、巻取リール35の移動の規制を解除する。
【0116】
規制フレーム120は、第3案内軸43を有している。規制フレーム120が規制位置に位置するときに第3案内軸43が第1位置に位置し、規制フレーム120が解除位置に位置するときに第3案内軸43が第2位置に位置する。
【0117】
第3案内軸43は、第1位置に位置するときにおいて、巻取軸部35Aの中心(巻取リール35の回転軸X2)と第2案内軸42の中心を結ぶ直線L4よりも供給リール31側に位置している。第3案内軸43は、第2位置に位置するときにおいて、直線L4よりも供給リール31とは反対側に位置している。また、第3案内軸43は、第2位置に位置するときにおいて、第2案内軸42から、巻取リール35に巻回された多層フィルムFのロールの最大径よりも大きく離れている。つまり、第2案内軸42と第2位置に位置する第3案内軸43の軸間距離は、巻取リール35に巻回された多層フィルムFのロールの最大径よりも大きくなっている。
【0118】
規制フレーム120は、規制位置に位置する状態において、供給リール31から最も遠くに位置する一端部120Eを有している。詳しくは、一端部120Eは、供給リール31の回転軸X1と巻取リール35の回転軸X2を結ぶ直線に沿った方向において、供給リール31から最も遠い位置に位置している。
図9(b)に示すように、一端部120Eは、巻取リール35に巻回された多層フィルムFを、規制フレーム120が規制位置に位置する状態において外部に臨ませる第2開口120Aを有している。
【0119】
第2開口120Aの軸方向の長さD3は、多層フィルムFの幅D4よりも大きい。また、
図8に示すように、第2開口120Aの縁のうち多層フィルムFの外面と対向する縁E11から巻取リール35の回転軸X2までの距離D5は、巻取リール35に巻回された多層フィルムFのロールの最大半径よりも大きい。
【0120】
規制フレーム120は、回動軸121を中心にしてベースフレーム110に対して回動可能となっている。回動軸121は、前述した平面FFに直交する直交方向において、巻取リール35の回転軸X2よりも第3案内軸43から離れた位置に位置している。
【0121】
詳しくは、
図9(b)に示すように、規制フレーム120は、2つの側壁122と、各側壁122を連結する連結壁123とを有している。
図8に示すように、各側壁122は、ベースフレーム110に回動可能に支持されている。また、各側壁122は、第3案内軸43を回転可能に支持している。さらに、各側壁122には、巻取リール35の巻取軸部35Aが入る凹部122Aが形成されている。
【0122】
凹部122Aは、第2保持部112に形成された凹部112Dとともに、巻取軸部35Aを保持する穴を形成している。この穴は、巻取軸部35Aと遊びをもって係合する穴である。巻取軸部35Aは、軸方向に直交する方向において、穴内で移動可能となっている。
【0123】
巻取リール35は、供給リール31から最も遠い最遠部B1を有している。本実施形態では、巻取リール35のフランジ35Bが、最遠部B1を有している。最遠部B1は、供給リール31の回転軸X1と巻取リール35の回転軸X2を結ぶ直線に沿った方向において、供給リール31から最も遠くに位置している。
【0124】
規制フレーム120の一端部120Eは、規制フレーム120が規制位置に位置する状態において、最遠部B1よりも供給リール31に近い。詳しくは、一端部120Eは、供給リール31の回転軸X1と巻取リール35の回転軸X2を結ぶ直線に沿った方向において、最遠部B1よりも供給リール31に近い。
【0125】
図5に示すように、規制フレーム120には、2つのロック部材140が設けられている。各ロック部材140は、規制フレーム120の連結壁123に軸方向に移動可能に支持されている。また、各ロック部材140は、図示せぬバネによって、互いに離れる方向に付勢されている。
【0126】
ロック部材140は、操作部141と、延出部142とを有している。操作部141は、ユーザによって操作される部位である。各操作部141は、規制フレーム120の連結壁123の軸方向中央部に配置されている。
【0127】
延出部142は、操作部141から軸方向外側に向けて延びている。
図10に示すように、延出部142の先端部143は、ベースフレーム110の第2保持部112に形成された凹部112Cに係合している。そして、先端部143が凹部112Cに係合することによって、規制フレーム120が規制位置から解除位置に移動することが規制されている。
【0128】
先端部143は、操作部141が操作されていない状態において、図示せぬバネで凹部112Cに向けて付勢されることで、凹部112Cに係合する。また、先端部143は、操作部141がバネの付勢力に抗して移動された場合に、凹部112Cから外れるようになっている。
【0129】
ここで、
図8に示すように、規制フレーム120が規制位置に位置する状態において、第3案内軸43は、多層フィルムFから付勢力を受けるようになっている。詳しくは、規制フレーム120が規制位置に位置する状態において、巻取リール35が駆動されると、第2案内軸42と巻取軸部35Aとの間の多層フィルムFにテンションが加わり、多層フィルムFが第2案内軸42と巻取軸部35Aとの間で真っ直ぐな姿勢になろうとする。
【0130】
これにより、第3案内軸43、ひいては規制フレーム120は、多層フィルムFからの付勢力を受けて、規制位置から解除位置に向かう方向に付勢されている。
【0131】
そのため、
図10に示すように、ロック部材140の先端部143も、多層フィルムFから第3案内軸43にかかる付勢力によって、ベースフレーム110の凹部112Cの側面に付勢されるようになっている。つまり、ロック部材140の先端部143は、多層フィルムFからの付勢力を受けることによって、規制位置から解除位置に向けて付勢されて、凹部112Cの側面に接触するようになっている。
【0132】
図11に示すように、供給リール31に負荷を付与するためのギヤ機構130は、フレームギヤ131と、ギヤ列132とを備えている。フレームギヤ131は、筐体本体21に設けられる筐体ギヤ21Gと噛み合うギヤである。フレームギヤ131は、筐体ギヤ21Gを介して前述したトルクリミッタなどに連結されている。
【0133】
ギヤ列132は、供給ギヤ31Gの回転方向がフレームギヤ131の回転方向とは逆方向となるように、フレームギヤ131と供給ギヤ31Gを連結するギヤ列である。このように供給ギヤ31Gとフレームギヤ131の回転方向を逆にすることで、供給リール31から多層フィルムFが引き出されたときにおいて、供給リール31が第1ガイドGD1(
図2参照)から外れる方向に移動することが抑制されている。
【0134】
ギヤ列132は、第1ギヤ133と、第2ギヤ134とを備えている。第1ギヤ133は、フレームギヤ131に噛み合っている。第2ギヤ134は、2段ギヤであり、大径ギヤ部134Aと、小径ギヤ部134Bとを有する。
【0135】
大径ギヤ部134Aは、小径ギヤ部134Bよりも大径のギヤである。大径ギヤ部134Aは、第1ギヤ133に噛み合っている。小径ギヤ部134Bは、供給ギヤ31Gに噛み合っている。
【0136】
フレームギヤ131は、供給ギヤ31Gと同軸に配置されている。また、前述したボス111Cおよび係合部32Cは、供給リール31の回転軸X1上に位置している。
【0137】
次に、フィルムユニットFUの交換作業について説明する。
図1に示すように、フィルムユニットFU内の多層フィルムFをすべて箔転写に使用し終わった場合には、ユーザは、
図2に示すように、筐体2のカバー22を持ち上げて、筐体本体21の第3開口21Aを開放させる。次いで、ユーザは、フィルムユニットFUを、筐体本体21の各ガイドGD1,GD2にガイドさせながら、筐体本体21から取り外す。
【0138】
この際、ユーザは、
図5に示す2つの取手114を手で掴んで、フィルムユニットFUを取り外すことができるので、フィルムユニットFUの取り外し作業を容易に行うことができる。
【0139】
その後、ユーザは、
図7(b)に示すように、フィルムユニットFUのホルダ100に対して供給ケース32を略45°回動させることで、係合部32Cの向きをガイド溝G1に合わせる。次いで、ユーザは、係合部32Cをガイド溝G1でガイドさせながら、供給ケース32を移動方向DDに沿って取り出す。
【0140】
この際、供給ケース32は、図の破線で挟まれた領域AR2を通過することになるので、供給ケース32が第1案内軸41に干渉するのを抑えることができる。また、移動方向DDが、供給リール31から多層フィルムFが引き出される方向DR1とは反対方向DR2の成分を含まない方向であるため、供給ケース32をホルダ100から取り外す際に、第1案内軸41と供給リール31の間にかかる多層フィルムFのテンションが弱まっていく。そのため、ユーザは、供給ケース32をホルダ100から容易に取り外すことができる。
【0141】
その後、ユーザは、
図8および
図9(a)に示すように、規制フレーム120を規制位置から解除位置に回動させる。ここで、規制位置において規制フレーム120の一端部120Eが巻取リール35の最遠部B1よりも供給リール31の近くに配置されているので、ベースフレーム110の第1面110Aをテーブルなどの載置面に載せた状態であっても、規制フレーム120を大きく回動させることができ、巻取リール35の取り外し作業を容易に行うことができる。
【0142】
また、規制フレーム120を解除位置に移動させると、規制フレーム120とともに第3案内軸43が移動して第2位置に位置するので、巻取リール35を容易に取り外すことができる。特に、第3案内軸43が第2位置に位置するときには、第2案内軸42と第3案内軸43との軸間距離が、巻取リール35に巻回された多層フィルムFのロールの最大径よりも大きいので、第2案内軸42と第3案内軸43の間を通して巻取リール35を容易に取り外すことができる。なお、新品のフィルムカートリッジ200をホルダ100に装着する作業や、フィルムユニットFUを筐体本体21に装着する作業は、前述した作業を逆の手順で行えばよいため、説明を省略する。
【0143】
以上、本実施形態によれば、前述した効果に加え、以下のような効果を得ることができる。
被支持層F2が供給軸部31Aに接触するようにして多層フィルムFが供給軸部31Aに巻回されることで、多層フィルムFが、支持層F1を外側、被支持層F2を内側にして、供給リール31に巻回されるので、ユーザが被支持層F2に触れてしまうことを抑制することができる。なお、本実施形態では、供給リール31に巻回された多層フィルムFを供給ケース32によって覆っているので、ユーザが供給リール31側の被支持層F2に触れてしまうことはないが、仮に、供給ケース32を設けなかった場合であっても、被支持層F2が支持層F1で保護されるので、ユーザが被支持層F2に触れてしまうことを抑制することができる。
【0144】
また、被支持層F2が巻取軸部35Aに接触するようにして、多層フィルムFが巻取軸部35Aに巻回されることで、巻取リール35に巻き取られた状態において、多層フィルムFの被支持層F2の外側に支持層F1が配置されるので、支持層F1に残っている被支持層F2が剥がれ落ちることを、支持層F1で抑えることができる。
【0145】
フィルムカートリッジ200をホルダ100に対して着脱可能とすることで、例えばフィルムカートリッジとホルダが着脱不能となるフィルムユニットと比べ、ホルダ100を使いまわすことができるので、環境保護に寄与することができる。
【0146】
回転軸X1,X2を含む平面FFと直交する直交方向に供給ケース32を投影した領域AR1内(
図3参照)に、第1案内軸41が配置されることで、回転軸X1,X2とを結ぶ直線に沿った方向において、供給ケース32を巻取リール35に近づけることができるので、フィルムユニットFUの大型化を抑制することができる。
【0147】
着脱ガイドGが、ガイド溝G1と円形の保持穴G2とを有することで、係合部32Cをガイド溝G1に差し込んだ後、係合部32Cが保持穴G2に到達したときに、供給ケース32を回動させることで、係合部32Cがガイド溝G1から所定方向に抜けなくなる。そのため、簡単な操作で供給ケース32を着脱ガイドGに着脱することができる。
【0148】
供給ケース32の回転を規制部150で規制することで、係合部32Cの長手方向の向きを所定方向に対して交差する向きとすることができるので、係合部32Cが着脱ガイドGから外れるのを抑制することができる。
【0149】
前記実施形態では、第1開口32Dの下流端E2を、第1案内軸41と供給軸部31Aの共通内接線L1に沿った多層フィルムFと、第1案内軸41と供給軸部31Aの共通外接線であって、巻取リール35に対して遠い側の共通外接線L2との間に配置している。これにより、下流端E2を、多層フィルムFを使い切る直前の状態の多層フィルムFに対して、干渉させずに、かつ、できるだけ近くに配置することができるので、第1開口32Dの大きさを小さくすることができ、供給ケース32の剛性を高くすることができる。
【0150】
第3案内軸43が第1位置に位置するときには、第2案内軸42で折り曲げられている多層フィルムFの角度を鋭角にすることができるので、箔転写時においてシートSに重ねられている多層フィルムFを、箔転写後にシートSから剥離する際において、転写層F22をシートSからきれいに剥離させることができる。
【0151】
第1保持部111と第2保持部112との間に空間が形成されるので、層転写装置1において、第1保持部111と第2保持部112との間に加熱ローラ61を配置することができる。
【0152】
多層フィルムFからの付勢力を利用してロック部材140をベースフレーム110に係合させるので、例えば規制フレームが規制位置でガタつかないようにバネなどを設ける構成に比べ、コストを低下させることができる。
【0153】
規制フレーム120の第2開口120Aから、透明の支持層F1および剥離層F21を通して転写層F22を視認可能となるので、多層フィルムFの交換時において、ユーザが転写層F22の種類(色)を間違えてしまうのを抑制することができる。
【0154】
第2開口120Aの大きさが前述したように規定されることで、巻取リール35に巻回される多層フィルムFのロールの径が徐々に大きくなっていっても、多層フィルムFが第2開口120Aの縁に干渉することを抑制することができる。
【0155】
取手114が、第1案内軸41と第2案内軸42とに架かる多層フィルムFよりも、第1案内軸41および第2案内軸42とは反対側に突出しているので、ユーザが取手114を掴む際に、多層フィルムFに触れてしまうことを抑制することができる。
【0156】
なお、上述の実施形態は、以下に例示するように様々に変形して実施することができる。
【0157】
前記実施形態では、回転軸X1,X2を含む平面FFと直交する直交方向に供給ケース32を投影した領域AR1内に、第1案内軸41の全体を配置したが、領域AR1内に、第1案内軸41の一部が配置されていてもよい。
【0158】
前記実施形態では、箔を含む転写層F22を例示したが、転写層は、例えば、箔や着色材料を含まず、熱可塑性樹脂から形成されていてもよい。
【0159】
前記実施形態では、多層フィルムFを4層で構成したが、多層フィルムは、転写層と支持層を有していれば、層の数はいくつであってもよい。
【0160】
前記実施形態では、フィルムカートリッジ200が着脱可能なホルダ100を備えるフィルムユニットFUを例示したが、例えば、フィルムカートリッジがホルダに着脱不能に固定されたフィルムユニットであってもよい。この場合、出荷前のフィルムユニットのフレームに供給リールを着脱不能に固定して取り付ける作業中において、供給リールに巻回された多層フィルムの転写層に作業者が触れてしまうことを抑制することができる。
【0161】
前記実施形態では、レーザプリンタ等の画像形成装置とは別の装置として層転写装置1を構成したが、層転写装置は画像形成装置と一体に構成されていてもよい。
【0162】
前記実施形態では、供給リール31および巻取リール35を、ホルダ100に対して、供給リール31の軸方向に直交する方向に着脱可能としたが、例えば、供給リールおよび巻取リールを、ホルダに対して、供給リールの軸方向に着脱可能に構成してもよい。
【0163】
前記実施形態では、駆動伝達部材として巻取ギヤ35Cを例示したが、駆動伝達部材は、例えばカップリングであってもよい。
【0164】
前記した実施形態および変形例で説明した各要素を、任意に組み合わせて実施してもよい。
【符号の説明】
【0165】
1 層転写装置
31 供給リール
31A 供給軸部
35 巻取リール
35A 巻取軸部
41 第1案内軸
42 第2案内軸
100 ホルダ
200 フィルムカートリッジ
F 多層フィルム
F1 支持層
F2 被支持層
F22 転写層
FU フィルムユニット
S シート