(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023165748
(43)【公開日】2023-11-17
(54)【発明の名称】天然油由来の超長鎖多価不飽和脂肪酸
(51)【国際特許分類】
C11C 1/04 20060101AFI20231110BHJP
A23L 33/12 20160101ALI20231110BHJP
A23D 9/013 20060101ALI20231110BHJP
A61K 31/232 20060101ALI20231110BHJP
A61K 31/201 20060101ALI20231110BHJP
A61P 3/02 20060101ALI20231110BHJP
【FI】
C11C1/04
A23L33/12
A23D9/013
A61K31/232
A61K31/201
A61P3/02
【審査請求】有
【請求項の数】31
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023145865
(22)【出願日】2023-09-08
(62)【分割の表示】P 2021085914の分割
【原出願日】2016-05-12
(31)【優先権主張番号】62/160,690
(32)【優先日】2015-05-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】517393743
【氏名又は名称】エーパックス ノルウェー アクスイェ セルスカプ
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100117019
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100141977
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 勝
(74)【代理人】
【識別番号】100150810
【弁理士】
【氏名又は名称】武居 良太郎
(72)【発明者】
【氏名】ハーラル ブレイビク
(72)【発明者】
【氏名】ハーラル スベンセン
(57)【要約】
【課題】天然油組成物から超長鎖多価不飽和脂肪酸が濃縮された組成物を得る。
【解決手段】魚油、イカ油、藻類油およびオキアミ油等の天然油由来の高濃度の超長鎖多価不飽和脂肪酸(VLCPUFAs)を含む組成物の製造方法、加えて前記天然資源から単離された高濃度の超長鎖多価不飽和脂肪酸 を含む組成物、同一の鎖長を有するが不飽和度が異なる前記超長鎖多価不飽和脂肪酸画分を単離する方法を提供する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
天然油組成物から超長鎖多価不飽和脂肪酸が濃縮された組成物を得る方法であって、下記工程を含む、方法:
A) C1-C5アルコールおよび式R1(C=O)R2(式中R1 および R2は独立してC1-C5アルキルである)に示されるケトンからなる群から選択される有機溶媒の存在下、塩基、及び水を用いて、天然資源由来の超長鎖多価不飽和脂肪酸を含む油組成物を加水分解し、超長鎖多価不飽和脂肪酸の遊離脂肪酸塩を含む組成物を形成させ;
B) 工程A)で生成された超長鎖多価不飽和脂肪酸の遊離脂肪酸塩を含む組成物を酸と反応させて、超長鎖多価不飽和脂肪酸の遊離脂肪酸を含む組成物を形成させ; そして
C) 超長鎖多価不飽和脂肪酸の遊離脂肪酸を含む前記組成物中に存在する、前記超長鎖多価不飽和脂肪酸を濃縮して、少なくとも5重量%の超長鎖多価不飽和脂肪酸を含む濃縮組成物を生成する、工程。
【請求項2】
天然油組成物から超長鎖多価不飽和脂肪酸が濃縮された組成物を得る方法であって、下記工程を含む、方法:
a) C1-C5アルコールおよび式R1(C=O)R2(式中R1 および R2は独立してC1-C5アルキルである)に示されるケトンからなる群から選択される有機溶媒の存在下、塩基、及び水を用いて、天然資源由来の超長鎖多価不飽和脂肪酸を含む油組成物を加水分解し、超長鎖多価不飽和脂肪酸の遊離脂肪酸塩を含む組成物を形成させ;
b) 前記組成物を(i)沈殿物および(ii)超長鎖多価不飽和脂肪酸の遊離脂肪酸塩を含む濾液を形成させる条件に付し;
c) 前記沈殿物を除去し、超長鎖多価不飽和脂肪酸の遊離脂肪酸塩を含む濾液を得て;
d) 超長鎖多価不飽和脂肪酸の遊離脂肪酸塩を含む前記濾液を酸と反応させ、超長鎖多価不飽和脂肪酸の遊離脂肪酸を含む組成物を形成させ;および、
e) 超長鎖多価不飽和脂肪酸の遊離脂肪酸を含む前記組成物中に存在する前記超長鎖多価不飽和脂肪酸を濃縮して、少なくとも5重量%の超長鎖多価不飽和脂肪酸を含む濃縮組成物を生成させる、工程。
【請求項3】
前記天然油出発物質が、藻類油、オキアミ油、イカ油または魚油であるか、もしくは藻類油、オキアミ油、イカ油または魚油より得られる、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記天然油出発物質が、魚油である、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
工程a) における加水分解の前に、より短鎖の脂肪酸が油組成物から除去されている、請求項1~4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
工程a) で加水分解された前記油組成物が、魚油またはイカ油のEPAおよび/またはDHA濃縮物を製造するために使用された蒸留残渣である、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
出発原料の前記油組成物が、魚油またはイカ油のEPAおよび/またはDHA濃縮物を製造するために使用された抽出物の残渣である、請求項5に記載の方法。
【請求項8】
工程a) に続いて、超長鎖多価不飽和脂肪酸の遊離脂肪酸塩を含む前記組成物または超長鎖多価不飽和遊離脂肪酸を含む前記組成物から、より短鎖の脂肪酸が除去される、請求項1~2のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
工程a) で製造された超長鎖多価不飽和脂肪酸の遊離脂肪酸塩を含む組成物を、親油性溶媒で処理し不鹸化物質の存在量を減少させる、請求項1~8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
工程c) で製造された超長鎖多価不飽和脂肪酸の遊離脂肪酸塩を含む濾液を、親油性溶媒で処理し不鹸化物質の存在量を減少させる、請求項1~8のいずれかに記載の方法。
【請求項11】
工程a) で添加される塩基が、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化リチウム、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸リチウム、炭酸水素カリウム、炭酸水素ナトリウムおよび炭酸水素リチウムからなる群から選択される1以上の成分を含む、請求項1~10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
前記塩基が水酸化リチウム、炭酸リチウムまたは炭酸水素リチウムを含み、前記超長鎖一価不飽和脂肪酸のリチウム塩が工程c) で除去された沈殿物から回収される、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記超長鎖多価不飽和遊離脂肪酸が、蒸留、クロマトグラフィー、抽出または酵素処理を用いて工程e) において濃縮される、請求項1~12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
濃縮される前に超長鎖多価不飽和遊離脂肪酸がアルキルエステルに変換される、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
工程e) において生成された濃縮組成物中に存在する、同一の鎖長を有するが不飽和度が異なる超長鎖多価不飽和脂肪酸が、尿素分別を用いて分離される、請求項1~14のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
工程e) で製造された濃縮組成物が、少なくとも10重量%の超長鎖多価不飽和脂肪酸を含む、請求項1~15のいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
工程e) で製造された濃縮組成物が、少なくとも20重量%の超長鎖多価不飽和脂肪酸を含む、請求項1~15のいずれか1項に記載の方法。
【請求項18】
前記多価不飽和脂肪酸の混合物を含む組成物から、同一の鎖長を有するが異なる不飽和度を有する超長鎖多価不飽和脂肪酸の分離画分を単離する方法であって、画分を尿素分別に付すことを含む方法。
【請求項19】
魚油、イカ油、オキアミ油または藻類油に由来する超長鎖多価不飽和脂肪酸を少なくとも5重量%含む、濃縮組成物。
【請求項20】
前記組成物が、超長鎖多価不飽和脂肪酸を少なくとも10重量%含む、請求項19に記載の組成物。
【請求項21】
前記組成物が、超長鎖多価不飽和脂肪酸を少なくとも20重量%含む、請求項20に記載の組成物。
【請求項22】
前記組成物が、超長鎖多価不飽和脂肪酸をエチルエステル形態で含む、請求項19~21のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項23】
前記組成物が、超長鎖多価不飽和脂肪酸をトリグリセリド形態で含む、請求項19~21のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項24】
(a)少なくとも5重量%の超長鎖多価不飽和脂肪酸;および(b)少なくとも5重量%の1種以上のC20-C22多価不飽和脂肪酸を含む、栄養食品組成物または医薬組成物。
【請求項25】
前記組成物が、超長鎖多価不飽和脂肪酸を少なくとも10重量%含む、請求項24に記載の組成物。
【請求項26】
前記組成物が、超長鎖多価不飽和脂肪酸を少なくとも20重量%含む、請求項25に記載の組成物。
【請求項27】
前記超長鎖多価不飽和脂肪酸が、少なくとも5重量%のC28:7 および/またはC28:8 の超長鎖多価不飽和脂肪酸を含む、請求項24~26に記載の組成物。
【請求項28】
前記組成物が、C20-C22長鎖多価不飽和脂肪酸を少なくとも25重量%含む、請求項24~26に記載の組成物。
【請求項29】
前記組成物が、オメガ-3 DPAを少なくとも5重量%含む、請求項24~28のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項30】
前記組成物が超長鎖多価不飽和脂肪酸および/またはC20-C22多価不飽和脂肪酸をエチルエステル形態で含む、請求項24~29のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項31】
前記組成物が超長鎖多価不飽和脂肪酸および/またはC20-C22多価不飽和脂肪酸をトリグリセリド形態で含む、請求項24~29のいずれか1項に記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
一態様において、本発明は、魚油、イカ油、藻類油およびオキアミ油などの天然油由来の、高濃度の超長鎖多価不飽和脂肪酸(VLCPUFA)を含む組成物の製造方法に関する。 他の態様において、本発明は、前記の天然資源から単離された高濃度の超長鎖多価不飽和脂肪酸を含む組成物に関し、同様に、前記の高濃度に濃縮された組成物に由来する、同一の鎖長であるが異なる不飽和度を有する超長鎖多価不飽和脂肪酸の分離分画を単離する工程に関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
長鎖多価不飽和脂肪酸(LCPUFA)、特に長鎖オメガ-3脂肪酸(LCn3)の中で、鎖長C20~C22の脂肪酸は文献おいて最も関心を持たれてきた。EPA(エイコサペンタエン酸)とDHA(ドコサヘキサエン酸)の略語は、魚油や他の供給源から得られる貴重なオメガ-3酸を説明する際に広く知られる名前となっている。また、植物由来のα-リノール酸(ALA)を豊富に含む製品も市販されている。これに関し、脂質は式X:YnZ(式中、Xはアルキル鎖中の炭素原子の数であり、Yは前記鎖中の二重結合の数である)によって記載されることが意図され、ここで「nZ」はメチル末端基から第1の二重結合までの炭素原子の数である。 性質上、二重結合はすべてシス型である。
【0003】
多価不飽和脂肪酸においては、各二重結合は、隣接する一つのメチレン(-CH2)基によって分離される。この命名法を使用すると、EPAは20:5n3であり、 DHAは22:6n3であり、ALAはC18:3n3である。さらに本明細書では、用語「超長鎖多価不飽和脂肪酸」(またはVLCPUFAs)は、22個を超える炭素原子の鎖長を有する多価不飽和脂肪酸(またはPUFAs)を意味し、用語「超長鎖一価不飽和脂肪酸」(またはVLCMUFAs)は、22個を超える炭素原子の鎖長を有する一価不飽和脂肪酸(またはMUFAs)を意味するものとする。用語「VLCn3」は22炭素原子以上の鎖長を有する多価不飽和オメガ-3脂肪酸を意味すると意図され、「VLCn3」はVLCPUFAのサブグループを表すことが理解される。
【0004】
EPAおよびDHAを多く含む海洋産オメガ-3濃縮物を製造するために、従来の工業的製造工程は、短鎖脂肪酸と同様にC22脂肪酸よりも大きい分子の両方を除去することによって、C20-C22画分を濃縮するように設計されている。前記製造工程の例は、分子/短経路蒸留、尿素分別、抽出およびクロマトグラフィー手段であり、これらはすべて、海洋産脂肪酸のC20-22画分および他の供給源由来の同様の材料を濃縮するために利用することができる。前記操作の総説はBreivik H (2007) Concentrates. In: Breivik H (ed) Long-Chain Omega-3 Specialty Oils. The Oily Press, PJ Barnes & Associates, Bridgwater, UK, pp 111-140.に提供されている。
【0005】
オメガ-3酸は非常に酸化を受けやすい。 オリゴマー/ポリマー酸化生成物の上限を規制する薬局方および自主基準に従うために、例えば蒸留、抽出および同様の手段によって、DHAの鎖長を超える成分を除去することが一般的である。 さらに、このような海洋産油のより高い分子量の成分は、典型的には、コレステロールを含む前記油の望ましくない不鹸化成分並びに臭素化ジフェニルエーテルのような有機汚染物質と関連する。
【0006】
しかしながら、オメガ-3酸を含む生物学的に活性なPUFASは、DHAのC22鎖長に限定されない。Poulos(Poulos A (1995) Very long chain fatty acids in higher animals - a review, Lipids 30:1-14)によると、VLCPUFAはほとんどの動物細胞の通常の成分である可能性が高いが、これらをいくつかの組織で検出するために高感度の分析操作が要求される場合がある。同様に、Poulosら(The occurrence of polyenoic fatty acids with greater than 22 carbon atoms in mammalian spermatozoa、Biochem J. (1986) 240; 891-895)は、VLCPUFAが様々な哺乳動物精子(ヒトを含む)において確認されてきたことを開示し、一方、Rotsteinら(Synthesis of very long chain (up to 36 carbon) tetra, penta and hexaenoic fatty acids in retina, Biochem J. (1988) 249, 191-200)は、ウシ網膜からの特定のVLCPUFAの単離を開示している。
【0007】
American Oil Chemist’s’ Society’s Lipid Library(http://lipidlibrary.aocs.org/Lipids/fa_poly/index.htm)によると、オメガ-3およびオメガ-6ファミリーの両方のVLCPUFAが網膜、脳および精子に存在する。最近、2014年11月20日付American Oil Chemist’s’ Society’s Lipid Libraryにおいて哺乳類におけるVLCPUFAの代謝に関する総説がアップデートされた。(http://aocs.files.cmsplus.com/AnnualMeeting/images/lipidimporthtml/lipidlibrary/Lipids/fa_poly/index.htm)。この総説は、VLCPUFAが哺乳類の体内で網膜組織、精巣、脳および精子の中において単離されるという情報を提示する。さらに、前記総説は、VLCPUFAの価値ある生理学的役割について、眼および大脳組織の最適な機能ならびに男性の受胎能力の重要性を含む、非常に有用な情報を提供する。一方、総説では、LCPUFAとは異なり、食物源からVLCPUFAを得ることができないため、より短い鎖長の脂肪酸前駆体からその場で合成されなければならないと述べている。
【0008】
前記考察の結果、遺伝子組換え技術を用いたVLCPUFAの生産に多くの研究が集中している。 例えば、Andersonら(US 2009 / 0203787A1、US 2012 / 0071558A1およびUS 2014 / 0100280A1)は、ELOVL4遺伝子を用いたC28-C38 VLCPUFAを産生するための遺伝子組換えプロセスを開示している。Andersonらは、VLCPUFAは少数の器官または特定の動物種において極少量しか見出されないことから、「前記VLC-PUFAの僅かなμg得るためにもウシ網膜のような天然資源から抽出されなければならない。その結果、C28-C38VLC-PUFAの研究は限定され、商業的生産の手段は存在していない」と述べている(米国特許第2009 / 0203787A1号の段落13)。
【0009】
そのことから、特定の前記VLCPUFA類が、過去にEPA / DHA組成物製造プロセスの廃棄物とみなされてきた組成物を含む、商業的に有用な量の海産油より抽出されることは全く予期しないことであった。
【0010】
本発明の概要
【0011】
一態様では、本発明は、天然油組成物から超長鎖多価不飽和脂肪酸が濃縮された組成物を得る方法であって、下記工程を含む:
A) C1-C5アルコールおよび式R1(C=O)R2(式中R1 および R2は独立してC1-C5アルキルである)に示されるケトンからなる群から選択される有機溶媒の存在下、塩基、及び水を用いて、天然資源由来の超長鎖多価不飽和脂肪酸を含む油組成物を加水分解し、超長鎖多価不飽和脂肪酸の遊離脂肪酸塩を含む組成物を形成させ;
B) 工程A)で生成された超長鎖多価不飽和脂肪酸の遊離脂肪酸塩を含む組成物を酸と反応させて、超長鎖多価不飽和脂肪酸の遊離脂肪酸を含む組成物を形成させ; そして
C) 超長鎖多価不飽和脂肪酸の遊離脂肪酸を含む前記組成物中に存在する、前記超長鎖多価不飽和脂肪酸を濃縮して、少なくとも5重量%の超長鎖多価不飽和脂肪酸を含む濃縮組成物を生成する、工程。
【0012】
別の態様では、本発明は、天然油組成物から超長鎖多価不飽和脂肪酸が濃縮された組成物を得る方法であって、下記工程を含む:
天然油組成物から超長鎖多価不飽和脂肪酸が濃縮された組成物を得る方法であって、下記工程を含む、方法:
a) C1-C5アルコールおよび式R1(C=O)R2(式中R1 および R2は独立してC1-C5アルキルである)に示されるケトンからなる群から選択される有機溶媒の存在下、塩基、及び水を用いて、天然資源由来の超長鎖多価不飽和脂肪酸を含む油組成物を加水分解し、超長鎖多価不飽和脂肪酸の遊離脂肪酸塩を含む組成物を形成させ;
b) 前記組成物を(i)沈殿物および(ii)超長鎖多価不飽和脂肪酸の遊離脂肪酸塩を含む濾液を形成させる条件に付し;
c) 前記沈殿物を除去し、超長鎖多価不飽和脂肪酸の遊離脂肪酸塩を含む濾液を得て;
d) 超長鎖多価不飽和脂肪酸の遊離脂肪酸塩を含む前記濾液を酸と反応させ、超長鎖多価不飽和脂肪酸の遊離脂肪酸を含む組成物を形成させ;および、
e) 超長鎖多価不飽和脂肪酸の遊離脂肪酸を含む前記組成物中に存在する超長鎖多価不飽和脂肪酸を濃縮して、少なくとも5重量%の超長鎖多価不飽和脂肪酸を含む濃縮組成物を生成させる、工程。
【0013】
更なる態様では、本発明は、尿素分別を用いて、同一の鎖長を有するが異なる程度の不飽和度を有する超長鎖多価不飽和脂肪酸の分離画分を単離する方法に関する。
【0014】
別の態様において、本発明は、魚油、イカ油、オキアミ油または藻類油に由来する超長鎖多価不飽和脂肪酸を少なくとも5重量%含む濃縮組成物に関する。
【0015】
さらに別の態様では、本発明は、(a)少なくとも5重量%の超長鎖多価不飽和脂肪酸;および(b)少なくとも5重量%の1種以上のC20-C22多価不飽和脂肪酸を含む、栄養強化または医薬組成物に関する。
【0016】
発明の詳細な説明
【0017】
一態様では、本発明は、天然油組成物から超長鎖多価不飽和脂肪酸が濃縮された組成物を得る方法であって、下記工程を含む工程を示す:
A) C1-C5アルコールおよび式R1(C=O)R2(式中R1 および R2は独立してC1-C5アルキルである)に示されるケトンからなる群から選択される有機溶媒の存在下、塩基、及び水を用いて、天然資源由来の超長鎖多価不飽和脂肪酸を含む油組成物を加水分解し、超長鎖多価不飽和脂肪酸の遊離脂肪酸塩を含む組成物を形成させ;
B) 工程A)で生成された超長鎖多価不飽和脂肪酸の遊離脂肪酸塩を含む組成物を酸と反応させて、超長鎖多価不飽和脂肪酸の遊離脂肪酸を含む組成物を形成させ; そして
C) 超長鎖多価不飽和脂肪酸の遊離脂肪酸を含む前記組成物中に存在する、前記超長鎖多価不飽和脂肪酸を濃縮して、少なくとも5重量%の超長鎖多価不飽和脂肪酸を含む濃縮組成物を生成する、工程。
【0018】
典型的には、工程A)で製造された超長鎖多価不飽和脂肪酸の遊離脂肪酸塩を含む組成物は、形成されると沈殿物が生じるような条件に供され; 前記沈殿物を除去し、それにより、工程B)の前に濾液を形成する。
【0019】
したがって、前記態様では、本発明は、天然油組成物から超長鎖多価不飽和脂肪酸の濃縮組成物を得る方法であって、下記工程を含む方法に関する:
a) C1-C5アルコールおよび式R1(C=O)R2(式中R1 および R2は独立してC1-C5アルキルである)に示されるケトンからなる群から選択される有機溶媒の存在下、塩基、及び水を用いて、天然資源由来の超長鎖多価不飽和脂肪酸を含む油組成物を加水分解し、超長鎖多価不飽和脂肪酸の遊離脂肪酸塩を含む組成物を形成させ;
b) 前記組成物を(i)沈殿物および(ii)超長鎖多価不飽和脂肪酸の遊離脂肪酸塩を含む濾液を形成させる条件に付し;
c) 前記沈殿物を除去し、超長鎖多価不飽和脂肪酸の遊離脂肪酸塩を含む濾液を得て;
d) 超長鎖多価不飽和脂肪酸の遊離脂肪酸塩を含む前記濾液を酸と反応させ、超長鎖多価不飽和脂肪酸の遊離脂肪酸を含む組成物を形成させ;および、
e) 超長鎖多価不飽和脂肪酸の遊離脂肪酸を含む前記組成物中に存在する前記超長鎖多価不飽和脂肪酸を濃縮して、少なくとも5重量%の超長鎖多価不飽和脂肪酸を含む濃縮組成物を生成させる、工程。
【0020】
予備的には、工程A)の3工程(すなわち、工程B)における酸性化の前に沈殿物の形成および除去を必要としない工程)は、工程a)と同等であり;工程B)は、工程d)と同等であり、工程C)は工程e)と同等である。したがって、以下の説明において、工程a)の説明は工程A)にも等しく適用可能であり;工程d)の説明は工程B)にも等しく適用可能であり;工程e)の説明は工程C)にも同様に適用可能である。
【0021】
工程a)(または工程A))において加水分解される超長鎖多価不飽和脂肪酸を含む油組成物は、超長鎖多価不飽和脂肪酸を含む任意の天然資源に由来し、天然資源には魚類、オキアミなどの甲殻類、藻類、プランクトン、および高等植物などの植物が含まれるが、これらに限定されない。原材料の選択も制限されることなく、出発原料としては、典型的には、カタクチイワシ科、アジ科、ニシン科、キュウリウオ科、サケ科およびサバ科のような魚類または頭足綱類の動物より得られた油のエステル交換、および続く物理化学的精製プロセスによって得られる。前記の油の由来となる特定の魚類には、ニシン、カラフトシシャモ(カペリン)、カタクチイワシ(アンチョビ)、サバ、ブルーホワイトニング(blue whiting)、イカナゴ(sand eel)、イカ、タラ(cod)内臓およびタラ(pollock)内臓が含まれる。
【0022】
特定の実施形態では、出発原料となる油組成物は、C18以下の鎖長を有する脂肪酸(「短鎖脂肪酸」)の量が減少され、多くが飽和脂肪酸であり、そのような出発原料となる油組成物は、前記短鎖脂肪酸を前記組成物から除去するために、予め濃縮工程(短経路蒸留または抽出など)に付される。海洋産油の飽和脂肪酸の大部分は、典型的には比較的短い鎖長(ニシン油の大部分はC14およびC16)を有するため、前記手段はまた、出発物質中の飽和脂肪酸含量を著しく減少させる。
【0023】
1つの好ましい出発物質は、オメガ-3-濃縮物の製造のための従来の2段階短経路/分子蒸留手段の第2段階より得られる残渣である。現在のところ、当該残渣は従来の工程より得られる副産物の量が低いことを示す。 従って、約60重量%のオメガ-3濃度を有するオメガ-3酸の濃縮物は、典型的には、エチル化海洋産油の2段階短経路蒸留によって製造される:
1. 第1段階では、鎖長C18までの脂肪酸のエチルエステル含量が減少する。
2. 第2段階では、第1段階からの残留物を、オメガ-3酸、特にEPAおよびDHAが豊富な留出物を単離するために蒸留装置に通す。エチルエステル濃縮物の場合、当該留出物は最終生成物であってもよい。最終生成物がトリグリセリド生成物として市販される場合、グリセロールとのさらなるエステル交換工程が必要である。
【0024】
前記第2の蒸留または連続する蒸留からの残渣は、多量の部分グリセリドを含み、コレステロールが濃縮される。このような残渣の商業価値は今日では非常に低い。しかし、当該残渣は、高濃度のDHAおよびEPAに加えて、原料油のVLCPUFAの大部分を含有するであろう。 驚くべきことに、前記残渣を本発明に従って処理することにより、VLCPUFAだけでなく、DHAおよび/またはEPAおよび/または他のC18-C22オメガ-3酸、特にDPA(22:5n3)に富む遊離脂肪酸生成物を得ることができる。
【0025】
他の実施形態では、出発油組成物は、工程a)(または工程A))における加水分解の前に、短鎖脂肪酸を除去していない。このような実施形態では、短鎖脂肪酸は、典型的には、蒸留、抽出、酵素分別手段および/またはクロマトグラフィーなどの当業者に周知のプロセスを用いて、工程a)(または工程A))における出発油組成物の加水分解の後に除去される。そのような除去は、超長鎖多価不飽和脂肪酸の遊離脂肪酸塩を含む組成物、または超長鎖多価不飽和脂肪酸の遊離脂肪酸を含む組成物より行ってもよい。
【0026】
本発明の方法の工程a)(または工程A))において、油組成物は、C1~C5アルコールおよび式R1(C=O)R2(式中R1およびR2は独立してC1~C5アルキルである)で示されるケトンからなる群から選択される有機溶媒の存在下、塩基、及び水を用いる反応により加水分解され、C24-C28 超長鎖多価不飽和脂肪酸の遊離脂肪酸を含む組成物を形成させる。
【0027】
使用される有機溶媒は、C1~C5アルコールおよび式R1(C=O)R2(式中R1およびR2は独立してC1~C5アルキルである)で示されるケトンからなる群から選択される。前記溶媒は通常、油組成物1kg当たり0.5~8L、好ましくは1~4Lの量で添加される。存在させる水の量は、選択される特定の反応物に依存し、当業者によって容易に最適化され得る。
【0028】
使用される塩基は、典型的には水酸化カリウムを含むが、水酸化ナトリウム、水酸化リチウム、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸リチウム、重炭酸カリウム、重炭酸ナトリウムおよび重炭酸リチウムのような他の塩基も使用することができる。前記の塩基は、油の完全な加水分解物を得るのに十分な量で添加される。水酸化カリウムを使用する利点は、周囲のエタノールと水の両方に容易に溶解でき、不必要に全溶媒量を増加させることなく適切に溶媒の所望の含水量を設定させることができるからである。
【0029】
特定の実施形態では、使用される塩基は、炭酸リチウム、重炭酸リチウムまたは水酸化リチウムなどのリチウム塩を含む。リチウム塩は、水和物、例えば水酸化リチウム一水和物として使用することができる。このようなリチウム塩は、典型的には水溶液の形態で使用されるが、当該塩は、使用される特定の有機溶媒に可溶性である場合に固体として添加されてもよい。したがって、例えば有機溶媒としてエタノールを使用する場合、水酸化リチウムを固体として使用することができる。そのような実施形態では、油組成物中に存在する飽和および一価不飽和脂肪酸のリチウム塩が形成されるまで、油組成物、リチウム塩および有機溶媒を混合する。このような混合は、成分の容量および濃度、選択された特定の成分、使用される攪拌の程度、選択された温度等の因子に依存して、数分またはそれ以下から数時間またはそれ以上の範囲であり得る。典型的には、成分を約15℃~80℃の温度で数分~24時間混合する。
【0030】
任意の工程b)において、工程a)において形成された超長鎖多価不飽和脂肪酸の遊離脂肪酸塩を含む組成物は、沈殿物が形成されるような条件に供される。典型的には、室温または室温未満、例えば10℃未満、さらには約0℃以下に冷却する(または前記組成物を冷却したままにする)ことを含む。1価不飽和脂肪酸および他の望ましくない成分を除去するための別の方法は、比較的高温で、例えば10~30℃で形成される沈殿物を除去し、次いで反応混合物の体積を減少させるために、沈殿物の1つまたは複数のさらなる分画を除去する前に、適切な蒸発プロセスによって1つまたは複数工程により処理することができる。沈殿物が形成されたら、沈殿物を工程c)で除去して、超長鎖多価不飽和脂肪酸の遊離脂肪酸塩を含む濾液を得る。必要であれば、リチウム塩および適切な超長鎖1価不飽和脂肪酸(VLCMUFA)を含む出発物質が工程a)で使用される場合、前記VLCMUFAは商業的使用のために沈殿物から回収することができる。
【0031】
場合により、(i)工程a)で生成された超長鎖多価不飽和脂肪酸の遊離脂肪酸塩を含む組成物または、(ii)工程c)で生成された超長鎖多価不飽和脂肪酸の遊離脂肪酸塩を含む濾液のいずれかを、存在する不鹸化物質の量を減少させるために、親油性溶媒で処理することができる。親油性の性質のため、コレステロールと同様に、DDT、PCB、ダイオキシン類、PBDEなどの汚染物質は、通常、前記の不鹸化物質と関連する。典型的に使用される親油性溶媒としては、酢酸エチル、ヘキサンおよび二酸化炭素が挙げられる。 親油性溶媒はまた、脂肪酸のエステル、例えば脂肪酸エチルエステルまたは脂肪酸トリグリセリドを含むことができる。後者の溶媒群には、魚油および他の食用油由来の脂肪酸エチルエステル(画分)と同様に、魚油または食用油トリグリセリド(例えば大豆油)が含まれ得る。
【0032】
本発明の方法の工程d)において、超長鎖多価不飽和脂肪酸の遊離脂肪酸塩を含む濾液を酸と反応させて、超長鎖多価不飽和脂肪酸の遊離脂肪酸を含む組成物を形成する。(工程Bでは、工程Aで形成された超長鎖多価不飽和脂肪酸の遊離脂肪酸塩を含む組成物を酸と反応させる。)典型的に使用される酸としては、クエン酸、塩酸、硫酸などが挙げられる。
【0033】
次いで、工程d)(または工程B)において形成された遊離VLCPUFA類を濃縮し、超長鎖多価不飽和脂肪酸の濃縮組成物を形成する。 このような濃縮は、蒸留、抽出、酵素処理、クロマトグラフィーおよび/または当業者に公知の他の分別法などの工程を用いて達成することができる。 前記技術を用いることにより、重量で5%、10%、15%、20%、30%またはそれ以上のVLCPUFAを含む組成物を得ることができる。
【0034】
別の態様では、本発明は、尿素分別を使用することによって、異なる程度の不飽和度を有するVLCPUFAを分離する方法に関する。 これに関して、尿素分別は、EPAおよびDHAのようなC20-C22オメガ-3脂肪酸の濃縮物の商業的製造のための有益な手段であることは、当該技術分野において周知である。 具体的には、前記PUFA類から飽和および低不飽和の脂肪酸を除去するために尿素分別が典型的に使用され、前記PUFAの濃度が上昇する。 驚くべきことに、VLCPUFAの総濃度を同様に増加させるためには尿素分別は効果的でないことが見出されている。 蒸留による高分子量成分の除去に加えて、これは、市販のオメガ-3濃縮物中に有意な濃度のVLCPUFAが観察されない1つの理由であり得る。
【0035】
しかしながら、尿素分別は、同一の鎖長を有するVLCPUFAの各群内の脂肪酸の単離された画分を達成するために効果的に使用され得ることが予想外に見出された。したがって、分別手段として尿素を使用することにより、各鎖長において最も不飽和度の高いVLCPUFAの相対含量を非尿素複合体画分中で増加させることができ、一方で、同時に、不飽和度の低いVLCPUFAの相対的な含有量は、脂肪酸の尿素錯体画分中で増加させることができる。したがって、例えば、最も少ない数の二重結合を有する脂肪酸は、尿素付加物(UA)としてC28:4n3、C28:5n3、C28:6n3、C28:7n3およびC28:8n3 VLCPUFAを含む混合物から段階的に単離することができ、最も高い不飽和度を有する脂肪酸、特にC28:8n3は非尿素付加物(NUA)画分にかなりの程度で留まる。前記技術を用いると、少なくとも5重量%、少なくとも8重量%または少なくとも10重量%のC28:7および/またはC28:8超長鎖多価不飽和脂肪酸を含む組成物を生成することができる。同時に、C28:4n3、C28:5n3および/またはC28:6n3が濃縮された画分も生成することができる。同様に、C24:5n3および/またはC24:6n3が濃縮された画分を含む組成物も製造することができる。
【0036】
前記の尿素分別は、関連する出発材料に典型的に用いられる条件下で行われ、その条件は周知であるか、または当業者によって容易に決定され得る。 これに関して、尿素分別の使用は、欧州特許第255,824B1およびBreivik H (2007) Concentrates; in Breivik H (ed) Long-Chain Omega-3 Specialty Oils. The Oily Press, PJ Barnes & Associates, Bridgwater, UK, pp 111-140に開示され、参照によりこれらの開示は本明細書に組込まれる。 尿素は、典型的には、量(油の重量部あたり0.3~5重量部の範囲)、反応条件下(例えば、室温から80℃の間の温度で)、商業的に濃縮されたPUFA組成物の濃縮物において典型的に適用される時間で添加される。
【0037】
別の態様では、本発明は、魚油、イカ油、オキアミ油または藻油に由来する超長鎖多価不飽和脂肪酸を少なくとも5重量%含む濃縮組成物に関する。 典型的には、前記組成物は、10重量%超、20重量%超、30重量%超、40重量%超、50重量%超、60重量%超または70重量%の超長鎖多価不飽和脂肪酸を含んでいてもよい。 前記組成物は、遊離脂肪酸の形態であってもよく、または当業者に周知の方法を用いることによって、エチルエステルおよび/またはトリグリセリド形態の超長鎖多価不飽和脂肪酸を含んでもよい。
【0038】
さらに別の態様では、本発明は、(a)少なくとも5重量%の超長鎖多価不飽和脂肪酸; および(b)少なくとも5重量%の1種以上のC20-C22多価不飽和脂肪酸を含む栄養補助組成物または医薬組成物を表す。特定の実施形態では、前記組成物は、少なくとも10重量%、少なくとも15重量%、または少なくとも20重量%またはそれ以上の超長鎖多価不飽和脂肪酸を含む。特定の実施形態では、本発明のこのような組成物は、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも40重量%、少なくとも50重量%、少なくとも60重量%、または少なくとも70重量%のC20-C22長鎖多価不飽和脂肪酸を含む。さらに、他の実施形態では、本発明の組成物は、少なくとも5%、少なくとも8%または少なくとも10重量%のDPA(22:5n 3)を含む。そのような栄養補助組成物または医薬組成物は、遊離脂肪酸の形態であってもよく、または当業者に周知の方法を用いることによって、超長鎖多価不飽和脂肪酸および/またはC20-C22長鎖多価不飽和脂肪酸エチルエステルおよび/またはトリグリセリドの形態の酸を含んでいてもよい。
【0039】
本明細書に開示される各成分、化合物、置換基、またはパラメーターは、単独で、または本明細書に開示された各成分、化合物、置換基、またはパラメーターの1つ以上と組合せて用いるために開示されるものとして解釈されるべきである。
【0040】
本明細書に開示された各成分、化合物、置換基またはパラメーターのための各々の量/値または量/値の範囲もまた、本明細書に開示される他の任意の成分、化合物、置換基またはパラメーターのための各々の量/値または量/値の範囲と組合せて開示されていると解釈され、また、本明細書に開示される2つ以上の成分、化合物、化合物、置換基またはパラメーターのための量/値または量/値の範囲の任意の組合せもまた、本明細書の目的のために各々の組合せにおいて開示されると解釈される。
【0041】
さらに、本明細書に開示される各範囲の各下限は、本明細書に開示される各範囲の各上限と組合せにおいて、同じ構成要素、化合物、置換基またはパラメーターについて開示されると解釈されるべきであることが理解される。したがって、2つの範囲の開示は、各範囲の各下限を各範囲の各上限と組み合わせることによって導かれる4つの範囲の開示として解釈されるべきである。3つの範囲の開示は、各範囲の各下限と各範囲の各上限とを組み合わせることによって導かれる9つの範囲の開示として解釈されるべきである。さらに、明細書または実施例に開示された成分、化合物、置換基またはパラメーターの特定の量/値は、範囲の下限または上限のいずれかの開示として解釈されるべきであり、したがって、成分、化合物、置換基またはパラメーターのための範囲を形成するために、本出願のほかのいずれかに開示される同じ成分、化合物、置換基またはパラメーターのための任意の他の下限または上限または特定の量/値とともに組合せられることが可能である。
【実施例0042】
以下の実施例は、本発明の原理に従って本発明を例示するために提供されるが、添付の特許請求の範囲に示される場合を除き、いかなる場合でも本発明を限定するものとして解釈されるべきではない。当該実施例において、全てのパーセンテージは、他に特定がない限り重量による;例えば、表中、脂肪酸含有量はGC面積%として分析される。さらに、脂肪酸分析は、長さがC30以下の脂肪酸についてのみ完了した。
【0043】
実施例1
ニシン油を反応させてエチルエステルを生成させた。 短鎖脂肪酸エチルエステルの含有量を減少させるために、エチルエステルを短経路蒸留装置に1回通した。19%の残渣を回収し、次の分別工程のための出発物質として利用した。
【0044】
前記残留物40gを96%エタノール40mlに溶解し、5N KOH24mlおよび5N LiOH48mlと反応させた。反応混合物を40℃で一晩保持し、次いで氷浴中で4時間冷却した。沈殿したリチウム塩を濾過により除去した後、濾液をクエン酸水溶液で酸性化し、遊離脂肪酸5.54gを単離した(収率14%)。
【0045】
GCクロマトグラフィーは、DHAの後に十分に溶出する2つのピークを示し、6.0および1.6面積%の濃度であった。GC / MS分析に基づき、前記2つのピークは、それぞれC24:5n3およびC24:6n3として同定された。オメガ-3酸の従来の分析よりも長い時間GC / MSクロマトグラムを実行することにより、さらなるピークが観察された。
【0046】
実施例2
表1の第2欄に記載されるエチル化ニシン油の短鎖脂肪酸エチルエステルの含量は、短経路蒸留(VTA、モデルVK83-6-SKR-G脱気装置付)を使用し、2工程の蒸留操作により減少された。 第1の蒸留は、温度113℃、流量7.4kg /時および減圧度0.01mbarで行われた。当該操作により、留出物30.1%および残留物69.9%が得られた。該蒸留からの残渣は、同じ流量および減圧度を用いた蒸留を再度通過させたが、この時点での温度は152℃であった。70.5%の留出物および29.5%の残留物が得られた。当該第2の蒸留残留物のエチルエステルの組成は、以下の表1の第3欄に示されている。
【0047】
第2の蒸留残留物1.00kgの2部分をそれぞれ、96%エタノール1000ml、5N水酸化カリウム400mlおよび5N水酸化リチウム水溶液1400mlの混合物中で加水分解した。40℃4時間の反応時間の後、得られた反応混合物を翌朝まで氷浴に保存した。沈殿物を濾過により除去した後、濾液を4N塩酸で酸性化して遊離脂肪酸を分離し、合計363.2gの生成物(36.3%)を単離した。当該濾液の脂肪酸組成は、表1の第4欄に記載される。
【0048】
該生成物を、温度145℃、流速4.1ml /分および圧力10
-3~10
-4 mbarで短経路蒸留(Leybold KDL 4)を用いて蒸留した(2つの蒸留をそれぞれ同じ条件下で行うための実際的な理由のため)。これにより65%の留出物と35%の残留物が得られた。該蒸留からの残渣は、同じ流量および減圧度を用いた蒸留を再度通過させたが、今回は温度133℃および流量約3.5mlで行った。当該最終的な蒸留により留出物55%および残渣45%が得られた。この第2の蒸留留出物および残留物のエチルエステルの組成は、表1の第5欄に示される。
【表1】
1 C20:1n11を含む
2 C22:1n9を含む
3 最終生成物のみ分析
GC 面積%による結果。出発原料および中間体油について、多くのVLCPUFAが定量限界以下の量で存在することに注意。
【0049】
表1の第3欄のリチウム分離生成物は、約8.3%の定量化されたVLCn3と、合計78.8%のオメガ-3酸(全てGC面積%として分析された)を含んでいた。当該生成物の第2の蒸留後の残留物は、34%の同定されたC24-C30VLCn3および合計83.6%のオメガ-3酸を含有していた。 また、留出物は83%以上のオメガ-3酸を含み、うち8%が同定されたVLCn3であった。
【0050】
当業者は、使用前に、例えば吸着、抽出、蒸留またはクロマトグラフィー手段により、すべての上記生成物をさらに精製可能であることを理解するであろう。
【0051】
実施例3
実施例2で使用したものと同じニシン油出発物質を前記実施例に記載の2工程の最初の蒸留工程に付し第2の蒸留残留物を得た(出発原料のニシン油および第2の蒸留物の分析はそれぞれ表2の第2欄および第3欄に示す)。
【0052】
第2の蒸留残留物300gを、水酸化ナトリウム40gを含む96%エタノール1000mlの混合物中で加水分解した。80℃、1時間の反応時間の後、得られた反応混合物を20℃に冷却した。濾過により沈殿物を除去した後、濾液を過剰のクエン酸により水中で酸性化して遊離脂肪酸を分離し、合計47.2gの生成物が単離された。 蒸留のためにより多くの物質を得るために、この手段を繰り返した。 当該濾液の組成は表2の第4欄に記載される。
【0053】
該生成物(90g)を温度110℃、流速5.5ml /分および圧力10
-3 mbarで短経路蒸留(VTA、モデルVKL-70-4-SKR-T)を用いて蒸留した。該蒸留からの残留物を同じ蒸留装置に125℃、流量5.5ml /分および圧力10
-3 mbarで2回通過させた。 蒸留により29gの最終残渣が得られた。 この最終蒸留残留物のエチルエステルの組成を表2の第5欄に示す。
【表2】
1 C20:1n11を含む
2 C22:1n9を含む
3 最終生成物のみ分析
GC 面積%による結果。出発原料および中間体油について、多くのVLCPUFAが定量限界以下の量で存在することに注意。
【0054】
表2の第4欄のナトリウム分別生成物は、約3.42%の定量化されたVLCn3と、合計67.55%のオメガ-3酸(全てGC面積%として分析された)を含んでいた。当該生成物の蒸留後の最終残留物は、7.06%の同定されたC24-C30VLCn3および合計78.28%のオメガ-3酸を含有していた。
【0055】
当業者は、使用前に、例えば吸着、抽出、蒸留またはクロマトグラフィー手段により、すべての上記生成物をさらに精製可能であることを理解するであろう。
【0056】
実施例4
オメガ-3-酸濃縮物を製造するために利用される、約46%のEPAおよび約13%のDHAを含有するエチル化イワシ油およびサバ油の最終的な商業規模での蒸留からの残留物997.6g(出発物質)を、水酸化カリウム168.6gを含有する1.6Lの96%エタノール中で40℃、4時間加熱することにより加水分解した。氷浴中で冷却後、濾過および過剰の塩酸を用いた酸性化による沈殿の除去により、704.4gの油状生成物を単離した。 生成物の酸価は207であり、生成物は実質的に遊離脂肪酸で構成されることを示した。
【0057】
該生成物218.6gを、流速3.5ml /分、140℃で短経路蒸留(Leybold KDL 4)に通した。 該蒸留からの残渣34.9グラム(16%)は、表3に示す組成を有した。生成物は、同定されたVLCPUFAの16.3%および合計88.3%のオメガ-3酸を含んでいた。該生成物の重要な側面は、DHAおよびEPAに加え、10.4%のC22:5n3(オメガ-3DPA)を含有することである。オメガ-3 DPA(全てシス体の7,10,13,16,19-ドコサペンタエノール酸)は重要なオメガ-3脂肪酸であり、該脂肪酸をこのように高含有量で含む市販のオメガ-3製品はごくわずかしか存在しない。
【0058】
当業者は、使用前に、例えば吸着、抽出、蒸留またはクロマトグラフィー手段により、すべての上記生成物をさらに精製可能であることを理解するであろう。
【0059】
【0060】
実施例5
実施例4に記載のものと同じ、エチル化イワシ油およびサバ油の最終的な商業規模での蒸留からの残留物1003gを、96%エタノール1.00L、5N KOH水溶液0.400Lおよび5N LiOH水溶液1.400Lの混合物中、40℃、4時間加熱することにより加水分解した。 氷浴中で一晩冷却し、濾過により沈殿物を除去し、その後酸性化した後、707.2gの油状生成物を単離した。
【0061】
さらなる分別の出発点を示す、当該生成物の重要な側面は、DHAおよびEPAに加えて既に7.4%のC22:5n3(オメガ-3DPA)を含有することである。オメガ3 DPA(全てシス体の7,10,13,16,19-ドコサペンタエノール酸)は重要なオメガ-3脂肪酸であり、該脂肪酸をこのように高含有量で含む市販のオメガ-3製品はごくわずかしか存在しない。魚油とは対照的に、藻類油/単一細胞油は、しばしば有意な量の別のDPA酸(全シス4,7,10,13,16-ドコサペンタエン酸)を含有する。この後者のDPA酸は、実際には非常に異なる生物学的作用を持つオメガ-6酸であるが、有益なオメガ-3DPAとしばしば混同される。
【0062】
該生成物を130℃、流速4.3~5.2ml / min、圧力10-3~10-4mbarで実験室用短路蒸留(Leybold KDL 4)を通過させた。該蒸留からの留出物は409.8g(42.3%)であり、表4(R1)に示す組成を有していた。
【0063】
同じ圧力およびカラム温度を有する同じ実験室用の短路蒸留装置を、以下に記載される全ての後続の蒸留工程に適用した。
【0064】
上記の第1の蒸留からの残渣395.8gを、2回目として平均流速5.2ml /分で蒸留した。この第2の蒸留からの残渣117.7g(33%)は表4(R2)に示す組成を有していた。
【0065】
上記の第2の蒸留からの残渣236.7gを、3回目として平均流速4.5ml /分で蒸留した。 この第3の蒸留からの残渣108.0g(44.8%)は表4(R3)に示す組成を有していた。
【0066】
上記の第3の蒸留からの残渣130.3gを、4回目として平均流速3.4ml /分で蒸留した。 この第4の蒸留からの残渣36.5g(27.9%)は、表4(R4)に示す組成を有していた。
【0067】
当業者は、本明細書の他の実施例による加水分解からの生成物もまた、実施例5に説明される手順によるさらなる分別に非常に適していることを理解するであろう。
【0068】
当業者は、表4に記載される全ての生成物を、例えば1つ以上の吸着、抽出、酵素分別手順、蒸留および/またはクロマトグラフィー手段により、使用前にさらに精製してもよいことも理解するであろう。
【0069】
分子/短経路蒸留は、脂肪酸分別のために適応しやすい手段である。異なる温度および圧力を含む異なる蒸留設計を選択することによって、得られる脂肪酸画分が表4の脂肪酸画分とは明らかに異なる可能性があることは、当業者には明らかであろう。
【表4】
【0070】
実施例6
約36%のEPAおよび約26%のDHAを含有するオメガ-3酸濃縮物を製造するために利用されたエチル化されたイワシおよびサバ油の最終的な商業規模での蒸留からの残留物2040gを、367gの水酸化ナトリウムを含有する4.0kgの90%エタノール中、80℃で1時間加熱することによって加水分解した。 この残留物出発物質の組成を表5に示す。20℃に冷却した後、濾過および酸性化によっていくらかの沈殿物を除去して、1584gの油状生成物を単離した。 この油状生成物の組成も表5に示す。
【0071】
該油状生成物1518gを、130~140℃、0.003mbar、流速5.5ml /分で数回、実験室用の短経路蒸留(VTA、モデルVKL-70-4-SKR-T)に通し、 留出物中の短鎖脂肪酸を除去する一方で、VLCPUFAを残留物中に濃縮した。 次いで残留物画分を170℃、0.003 mbar、流速5.5ml /分で蒸留して、留出物画分中のVLCPUFAを分取し、残留物中に重質量成分を残した。
【0072】
二重に蒸留された油分(「蒸留物」)(50g)は、表5に示す組成を有した。生成物は、同定されたVLCPUFAの9.54%およびオメガ-3酸の合計87,68%を含有していた。
【0073】
当業者は、使用前に、例えば吸着、抽出、蒸留またはクロマトグラフィー手段により、すべての上記生成物をさらに精製可能であることを理解するであろう。
【0074】
【0075】
実施例7
表1の第2欄に記載されるサバ油の短鎖脂肪酸エチルエステルの含量は、短経路蒸留(VTA、モデルVK83-6-SKR-G脱気装置付)を使用し、2工程の蒸留操作により減少された。流量6 kg/時および減圧度0.02 mbarで行われた。第1のカラムでは125 °Cであったのに対し、第2のカラムでは温度139° Cであった。当該操作により、55.4%の留出物1が得られた。留出物30.1%および残留物69.9%が得られた。34.5%の留出物2および10.1%の残渣2が得られた。該蒸留からの残渣は、同じ流量および減圧度を用いた蒸留を再度通過させたが、この時点での温度は152℃であった。70.5%の留出物および29.5%の残留物が得られた。残留物2のエチルエステルの組成は、以下の表6の第3欄に示される。
【0076】
1500g前記残留物2を、水酸化リチウム一水和物168gおよび水酸化カリウム70.5gを含有するエタノール(96%)4.5L中で80℃、1時間加熱することにより、加水分解した。20℃に冷却後、濾過により沈殿物を除去し、水中の過剰のクエン酸を用いて酸性化し、油状生成物812gを単離した。該油状生成物の組成は、表6の第4欄に詳述される。
【0077】
留出物中の短鎖脂肪酸を除去するため、前記油状生成物775gを、130~140℃、0.003mbar、流速5.5ml /分で数回、実験室用短路蒸留(VTA、モデルVKL-70-4-SKR-T)に数回通し、一方、VLCPUFAは残留物中において濃縮された。次いで残渣画分を170℃、0.003 mbar、流速5.5ml /分で蒸留して留出物画分中のVLCPUFAを分取し、残渣中に重質量成分を残した。このような残留分画は、表6の第5欄に与えられた脂肪酸の分析結果を有する。
【0078】
二重に蒸留された油分(蒸留物)(150g)は、表6の第6欄に示される組成を有した。生成物は、同定された7.41%VLCPUFAおよびオメガ-3酸合計70.99%を含有していた。
【0079】
本実験は、短経路蒸留装置中でVLCPUFAを蒸留することが可能であることを示しており、これは油から重質量成分を除去し、油の純度および色を改善するための重要な工程である。
【0080】
当業者は、使用前に、例えば吸着、抽出、蒸留またはクロマトグラフィー手段により、すべての上記生成物をさらに精製可能であることを理解するであろう。
【0081】
【0082】
実施例8
表1の第2欄に記載されるサバ油の短鎖脂肪酸エチルエステル(出発原料)の含量は、流速6kg /時および圧力0.02mbarで、短経路蒸留(VTA、モデルVK83-6-SKR-G脱気装置付)を使用し、2工程の蒸留操作により減縮された。第1カラムの温度は125℃であり、一方、第2カラムの温度は139℃であった。当該操作により、蒸留物1が55.4%、留出物2が34.5%、残渣2が10.1%で得られた。前記残渣2のエチルエステルの組成は、以下の表7の欄3に示される。
【0083】
上記残渣2の1000gを、140gの水酸化ナトリウムを含むエタノール(96%)3.0kg中、80℃で1時間加熱することによって加水分解した。 20℃に冷却した後、過剰のクエン酸を用いた濾過および酸性化による沈殿物を除去し、油状生成物310gを単離した。 油状生成物は、表7の第4欄に列挙した組成を有していた。
【0084】
留出物中の短鎖脂肪酸を除去するため、前記生成物300gを、130-134°C、0.003mbar、流速5.5ml /分で数回、実験室用短路蒸留(VTA、モデルVKL-70-4-SKR-T)に数回通し、一方、VLCPUFAは残留物中において濃縮された。このような残留画分の組成は表7の第5欄に示される。残渣画分を170℃、0.003 mbar、流速5.5ml /分で蒸留して留出物画分中のVLCPUFAを分取し、重質量成分は残渣中に残したままとした。
【0085】
二重に蒸留された油分(蒸留液)(112 g)は、表7の第6欄に示される組成を有した。生成物は、同定された7.41%VLCPUFAおよびオメガ-3酸合計70.99%を含有していた。
【0086】
本実験は、短経路蒸留装置中でVLCPUFAを蒸留することが可能であることを示しており、これは油から重質量成分を除去し、油の純度および色を改善するための重要な工程である。
【0087】
当業者は、使用前に、例えば吸着、抽出、蒸留またはクロマトグラフィー手段により、すべての上記生成物をさらに精製可能であることを理解するであろう。
【0088】
【0089】
実施例9
約46%のEPAおよび約13%のDHAを含有するオメガ-3-酸濃縮物を生成するために利用されるエチル化されたイワシおよびサバ油の最終的な商業規模の蒸留からの残渣の加水分解により得られた40.2gの遊離脂肪酸(FFA) を200mlの96%エタノール中の120gの尿素とともに80℃で1.5時間撹拌した。 混合物を水と氷の混合物を含むバッチ中で一晩放置した。 第1の濾過尿素付加物またはUA1を得るために濾過した後、濾液を減圧下で元の容量の約半量となるまで蒸発させた。 得られた混合物を約4℃で一晩保存した。 沈殿した物質(第2の濾過尿素付加物またはUA2)を濾過により除去した。
【0090】
単離した尿素付加物(UA1およびUA2)を4N HClで酸性化し、ヘキサン/水で抽出した。 ヘキサンを減圧蒸発させて除去した。前記方法において第1の濾過UA1からの尿素付加物から10.3gの遊離脂肪酸を単離し、第2の濾過UA2からの尿素付加物から遊離脂肪酸1.51gを単離した。
【0091】
等量の水を添加して最終濾液を処理し、塩酸で酸性化し、ヘキサンで抽出し、ヘキサン溶媒を除去した後、14.7gの非尿素付加物(NUA)FFAを単離した。
【0092】
表8において、VLCn3類の中で、各鎖長について、NUA生成物は、二重結合の数が最も多いVLCn3の濃度が増加しているが、二重結合の数が最も少ないVLCn3の濃度は減少することが観察される。 鎖長が24の場合、UA1では濃度が減少するが、C24:6n3がNUAにおいて濃縮が高められる(up-concentrated)ことにより示される。 これに対して、脂肪酸C24:5n3はUA1およびUA2中に濃縮が高められる(up-concentrated)されているが、当該脂肪酸はNUA生成物から実質的に除去されている。 C24:5n3およびC24:6n3は、後者が前者よりも二重結合をさらに1つ含む点のみが異なる。 高度に関連した構造を有する2つの超長鎖多価不飽和脂肪酸が実質的に物理的な分離が可能となることは非常に驚くべきことである。
【0093】
同様に、表8は、C26:4n3およびC28:4n3がNUA生成物中に見出されず、一方、C28:8n3がNUA中で濃縮が高められる(up-concentrated)ことを示している。
【表8】
【0094】
実施例10
3つの別個の各実験において、実施例9で使用した遊離脂肪酸出発原料40gを96%200mlおよび1.5,2.0および3.0重量部の尿素中、80℃で1.5時間撹拌した。
【0095】
NUC画分を上記の実施例9と同じ方法で単離した。 前記実験の結果を表9に示す。前記結果からは、NUC生成物中の全VLCn3濃度の増加は観察されない。 これは、全ての実験において、尿素付加物が、出発FFA組成物よりも高濃度のVLCPUFAを含有することを意味する。
【0096】
上記のように、驚くべきことに、尿素分別は、同じ鎖長を有するVLCPUFAを分離するための手段として使用できることが観察されている:C24:5n3はC24:6n3より分離され、C28:8n3は、より不飽和度が低いC28n3-酸より分離される。
【0097】
したがって、この方法は、同一の鎖長を有するVLCPUFAの各群内の脂肪酸を相対的に分離する結果をもたらす。 例:C28:4n3、C28:5n3、C28:6n3、C28:7n3およびC28:8n3の混合物から、最も少ない数の二重結合を有する脂肪酸を尿素付加物として段階的に除去することができ、一方で、最も高い不飽和度の脂肪酸、特にC28:8n3が非付加物画分に残る。
【0098】
驚くべきことに、尿素分別は、例えばC28オメガ-3酸の混合物から、実質的に純粋なC28:8n3の製造の比較的低コストの代替手段として利用することができる。
【0099】