(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023165756
(43)【公開日】2023-11-17
(54)【発明の名称】エラミプレチドの合成に有用な結晶性ジペプチド
(51)【国際特許分類】
C07K 5/068 20060101AFI20231110BHJP
C07C 271/22 20060101ALI20231110BHJP
C07C 279/14 20060101ALI20231110BHJP
【FI】
C07K5/068
C07C271/22
C07C279/14
【審査請求】有
【請求項の数】20
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023147376
(22)【出願日】2023-09-12
(62)【分割の表示】P 2020554100の分割
【原出願日】2019-03-28
(31)【優先権主張番号】62/651,430
(32)【優先日】2018-04-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】522012798
【氏名又は名称】ステルス バイオセラピューティクス インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】STEALTH BIOTHERAPEUTICS INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100139723
【弁理士】
【氏名又は名称】樋口 洋
(74)【代理人】
【識別番号】100116540
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 香
(72)【発明者】
【氏名】スコット エム ダンカン
(72)【発明者】
【氏名】マーティン ピー レッドモン
(57)【要約】
【課題】エラミプレチドの合成において、カップリング反応後の精製を可能にする新規方法を開発する。
【解決手段】L-Lys(Boc)-Phe-NH2およびBoc-D-Arg-DMTの結晶形態が開示されている。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
表1に記載する2θの値にXRPDパターンにおける特徴的ピークを有する、化合物(I)の結晶形態。
【化1】
【請求項2】
図1に示す2θの値にXRPDパターンにおける特徴的ピークを有する、化合物(I)の結晶形態。
【化2】
【請求項3】
4.7、6.2、12.4、15.8、16.5、18.0、18.2、18.8および19.8の2シータ(°2θ)の値にXRPDパターンにおける特徴的ピークを有する、化合物(I)の結晶形態。
【化3】
【請求項4】
4.7、6.2、11.3、12.4、13.3、15.0、15.8、16.5、17.0、17.7、18.0、18.2、18.8、19.8、22.0、および22.8の2シータ(°2θ)の値にXRPDパターンにおける特徴的ピークを有する、請求項3に記載の結晶形態。
【請求項5】
表2に記載する2θの値にXRPDパターンにおける特徴的ピークを有する、化合物(II)の結晶形態。
【化4】
【請求項6】
図2に示す2θの値にXRPDパターンにおける特徴的ピークを有する、化合物(II)の結晶形態。
【化5】
【請求項7】
9.3、12.1、16.6、17.6、18.0、18.8、および19.4の2シータ(°2θ)の値にXRPDパターンにおける特徴的ピークを有する、化合物(II)の結晶形態。
【化6】
【請求項8】
9.3、12.1、13.7、16.3、16.6、17.6、18.0、18.8、19.4、21.3、23.0、24.2、および25.1の2シータ(°2θ)の値にXRPDパターンにおける特徴的ピークを有する、請求項7に記載の結晶形態。
【発明の詳細な説明】
【関連出願の相互参照】
【0001】
この出願は、2018年4月2日に出願された米国仮特許出願第62/651,430号の優先権の利益を主張する。
【背景技術】
【0002】
エラミプレチド(MTP-131)は、ミトコンドリア機能障害に関連する疾患を処置する治療可能性があるミトコンドリア標的ペプチド化合物である。エラミプレチドは4アミノ酸残基を含み、典型的な直線的および収束的液相ペプチド合成法に従って合成されてきた。これまで使用されてきたエラミプレチドを生成する合成経路は、脱保護化合物をペプチドカップリングにさらすために特定の保護基を選択的に除去し、一方で不要な副反応を防ぐために他の保護基を残すように、さまざまな差別的に保護されたペプチドの調製を必要とする。保護基があっても、そのようなカップリング反応および関連ステップは不純物を生成する。したがって、カップリング反応後の精製を可能にするエラミプレチドを精製する新規方法を開発する必要性がある。目的反応生成物の結晶化は、必要な精製を達成するための1つの方法である。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0003】
L-Lys(Boc)-Phe-NH2およびBoc-D-Arg-DMTの結晶形態が開示されており、DMTは、エラミプレチドの合成における中間体であるジメチルチロシンの略語である。
【図面の簡単な説明】
【0004】
【
図1】結晶性L-Lys(Boc)-Phe-NH
2のXRPDパターンである。
【
図2】結晶性Boc-D-Arg-DMTのXRPDパターンである。
【発明を実施するための形態】
【0005】
エラミプレチドは、ミトコンドリア機能障害に関連する疾患においてさまざまな治療効果を有することが示されている。従来のエラミプレチドまでの合成経路は、所望の中間体のレベルを高めるためにクロマトグラフィー分離に依存するため、スケールアップに関して課題を提示した。本明細書では、エラミプレチドの合成において精製中間体として使用することができるL-Lys(Boc)-Phe-NH2およびBoc-D-Arg-DMTの結晶形態を開示する。
【0006】
本発明の一態様は、化合物(I)の結晶形態に関し、この化合物はL-Lys(Boc)-Phe-NH
2としても知られている:
【化1】
【0007】
化合物(I)の結晶形態は、エラミプレチドの合成に使用することができる。
【0008】
特定の実施形態において、結晶形態の多形は、粉末X線回折(XRD)によって特徴付けられる。θは、度(°)で測定される回折角を表す。特定の実施形態では、XRDで使用される回折計は、回折角θの2倍として回折角を測定する。したがって、特定の実施形態では、本明細書に記載の回折パターンは、角度2θに対して測定されるX線強度を指す。
【0009】
特定の実施形態において、化合物(I)の結晶形態は溶媒和されない(例えば、結晶格子は溶媒の分子を含まない)。特定の代替の実施形態において、化合物(I)の結晶形態は溶媒和される。ある場合には、溶媒は水である。
【0010】
一態様では、本発明は、
図1に示す粉末X線回折(XRPD)パターンにおける特徴的ピークを有する化合物(I)の結晶形態を特徴とする。
【0011】
別の態様では、本発明は、表1に示す2シータ(°2θ)の値に粉末X線回折(XRPD)パターンにおける特徴的ピークを有する化合物(I)の結晶形態を特徴とする。
【0012】
別の態様では、本発明は、4.7、6.2、12.4、15.8、16.5、18.0、18.2、18.8、および19.8の2シータ(°2θ)の値に粉末X線回折(XRPD)パターンにおける特徴的ピークを有する化合物(I)の結晶形態を特徴とする。
【0013】
別の態様では、本発明は、4.7、6.2、11.3、12.4、13.3、15.0、15.8、16.5、17.0、17.7、18.0、18.2、18.8、19.8、22.0、および22.8の2シータ(°2θ)の値に粉末X線回折(XRPD)パターンにおける特徴的ピークを有する化合物(I)の結晶形態を特徴とする。
【0014】
表1および
図1における各ピークの相対強度および2θ値は、結晶形態は同じであるが特定の条件下で変化またはシフトする場合がある。当業者は、それらのXRPDデータを比較することにより、所与の結晶形態が表1および
図1に記載されているものと同じ結晶形態であるかどうかを容易に決定できるであろう。
【0015】
本発明の一態様は、化合物(II)の結晶形態に関し、この化合物はBoc-D-Arg-DMTとも呼ばれ、双性イオンの形で描画することもできる:
【化2】
【0016】
化合物(II)の結晶形態はエラミプレチドの合成に使用することができる。
【0017】
特定の実施形態において、結晶形態の多形は、粉末X線回折(XRD)によって特徴付けられる。θは、度(°)で測定される回折角を表す。特定の実施形態では、XRDで使用される回折計は、回折角θの2倍として回折角を測定する。したがって、特定の実施形態では、本明細書に記載の回折パターンは、角度2θに対して測定されるX線強度を指す。
【0018】
特定の実施形態において、化合物(II)の結晶形態は溶媒和されない(例えば、結晶格子は溶媒の分子を含まない)。特定の代替の実施形態では、化合物(II)の結晶形態は溶媒和される。ある場合には、溶媒は水である。
【0019】
一態様では、本発明は、
図2に示す粉末X線回折(XRPD)パターンにおける特徴的ピークを有する化合物(II)の結晶形態を特徴とする。
【0020】
別の態様では、本発明は、表2に示す2シータ(°2θ)の値に粉末X線回折(XRPD)パターンにおける特徴的ピークを有する化合物(II)の結晶形態を特徴とする。
【0021】
別の態様において、本発明は、9.3、12.1、16.6、17.6、18.0、18.8、および19.4の2シータ(°2θ)の値に、粉末X線回折(XRPD)パターンにおける特徴的ピークを有する化合物(II)の結晶形態を特徴とする。
【0022】
別の態様では、本発明は、9.3、12.1、13.7、16.3、16.6、17.6、18.0、18.8、19.4、21.3、23.0、24.2、および25.1の2シータ(°2θ)の値に、粉末X線回折(XRPD)パターンにおける特徴的ピークを有する化合物(II)の結晶形態を特徴とする。
【0023】
表2および
図2の各ピークの相対強度および2シータ(2θ)値は、結晶形態は同じであるが特定の条件下で変化またはシフトする場合がある。当業者は、それらのXRPDデータを比較することにより、所与の結晶形態が表2および
図2に記載されているものと同じ結晶形態であるかどうかを容易に決定できるはずである。
【実施例0024】
【0025】
実施例1.L-Lys(Boc)-Phe-NH
2
(化合物I)
例示的な合成経路
【化3】
【0026】
【0027】
【0028】
【0029】
【0030】
【0031】
【0032】
実施例2.Boc-D-Arg-DMT-OH
【化4】
【0033】
【0034】
・化合物IIのHCl塩を製造するための製造プロセス
【0035】
・化合物IIの双性イオン形態の調製
【化5】
1.粗HCl塩をCH
3OH/H
2O(1/1、v/v)に懸濁させる。
2.懸濁液を45~50℃に加熱する。
3.透明な溶液が形成された後、Na
2CO
3の水溶液(1.2当量)を添加する。添加中、固体は沈殿し始める。
4.懸濁液を45℃で1時間撹拌し、次に15℃に冷却し、さらに1時間撹拌する。
5.固形物を濾過により単離し、乾燥させて、HPCLにより高純度(99.4面積%)を有する化合物IIを提供する。この実証実行の残留溶媒、含水量、および強熱残分を補正する計算されたw/wアッセイは98.7%であった。
【0036】
双性イオン化合物の形成は、安定で、取り扱いが容易で、かつ高結晶性の高純度材料をもたらした。
【0037】
実施例3.結晶性L-Lys(Boc)-Phe-NH
2のXRPDピークリスト
【表1-1】
【表1-2】
【0038】
実施例4.結晶性Boc-D-Arg-DMTのXRPDピークリスト
【表2-1】
【表2-2】
【0039】
参照による援用
上記の説明で言及されたすべてのUS特許、ならびにUSおよびPCT公開特許出願は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0040】
同等物
理解を明確にするために実例および例示により本発明をある程度詳細に説明しており、本発明またはその特定の実施形態の範囲に影響を与えることなく条件、配合物および他のパラメータの範囲内で本発明を修正または変更することによって同じことを実施でき、そのような修正または変更が添付の特許請求の範囲内に含まれることが意図されていることは当業者に明らかであろう。