(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023165869
(43)【公開日】2023-11-17
(54)【発明の名称】二次電池および電池パック
(51)【国際特許分類】
H01M 10/04 20060101AFI20231110BHJP
H01M 50/119 20210101ALI20231110BHJP
H01M 50/184 20210101ALI20231110BHJP
H01M 50/186 20210101ALI20231110BHJP
H01M 50/193 20210101ALI20231110BHJP
H01M 50/176 20210101ALI20231110BHJP
H01M 50/54 20210101ALI20231110BHJP
H01M 50/55 20210101ALI20231110BHJP
H01M 10/0585 20100101ALI20231110BHJP
H01M 50/284 20210101ALI20231110BHJP
H01M 50/545 20210101ALN20231110BHJP
【FI】
H01M10/04 Z
H01M50/119
H01M50/184 A
H01M50/186
H01M50/193
H01M50/176
H01M50/54
H01M50/55 101
H01M10/0585
H01M50/284
H01M50/545
【審査請求】有
【請求項の数】17
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023163710
(22)【出願日】2023-09-26
(62)【分割の表示】P 2021553417の分割
【原出願日】2020-10-19
(31)【優先権主張番号】P 2019198901
(32)【優先日】2019-10-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000006231
【氏名又は名称】株式会社村田製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001357
【氏名又は名称】弁理士法人つばさ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】長岡 修一
(72)【発明者】
【氏名】清水 良史
(72)【発明者】
【氏名】端野 優
(57)【要約】
【課題】優れた電池特性を得ることが可能な二次電池を提供する。
【解決手段】二次電池は、第1導電部材と、その第1導電部材に対向する第2導電部材と、第1導電部材と第2導電部材との間に配置され、第1導電部材および第2導電部材が互いに対向する対向方向においてセパレータを介して互いに積層された複数の電極を含み、その複数の電極が第1導電部材に隣接された第1電極と第2導電部材に隣接された第2電極とを含む電池素子と、第1導電部材と第2導電部材との間において電池素子の周囲領域のうちの少なくとも一部に配置され、対向方向において順に積層された第1接着層、絶縁層および第2接着層を含み、第1接着層および第2接着層のそれぞれがポリオレフィン系樹脂を含み、絶縁層が絶縁性樹脂を含む封止部材とを備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1導電部材と、
前記第1導電部材に対向する第2導電部材と、
前記第1導電部材と前記第2導電部材との間に配置され、前記第1導電部材および前記第2導電部材が互いに対向する対向方向においてセパレータを介して互いに積層された複数の電極を含み、前記複数の電極が前記第1導電部材に隣接された第1電極と前記第2導電部材に隣接された第2電極とを含む、電池素子と、
前記第1導電部材と前記第2導電部材との間において前記電池素子の周囲領域のうちの少なくとも一部に配置され、前記対向方向において順に積層された第1接着層、絶縁層および第2接着層を含み、前記第1接着層および前記第2接着層のそれぞれがポリオレフィン系樹脂を含み、前記絶縁層が絶縁性樹脂を含む、封止部材と
を備え、
前記複数の電極のそれぞれの平面形状を規定する外縁は、前記セパレータの平面形状を規定する外縁よりも内側に後退している、
二次電池。
【請求項2】
前記複数の電極は、前記対向方向において前記セパレータを介して互いに積層された正極および負極を含み、
前記セパレータの平面形状と前記正極の平面形状と前記負極の平面形状とに関しては、前記セパレータの平面形状の面積≧前記負極の平面形状の面積≧前記正極の平面形状の面積という関係が成立している、
請求項1に記載の二次電池。
【請求項3】
前記ポリオレフィン系樹脂は、酸変性ポリオレフィンを含む、
請求項1または請求項2に記載の二次電池。
【請求項4】
前記絶縁性樹脂は、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、エポキシ系樹脂、アクリル系樹脂、フッ素系樹脂、ポリウレタン系樹脂、珪素系樹脂、フェノール系樹脂およびそれらの2種類以上の共重合体のうちの少なくとも1種を含む、
請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の二次電池。
【請求項5】
前記第1電極および前記第2電極のうちの少なくとも一方は、活物質層を含み、
前記第1導電部材および前記第2導電部材のうちの少なくとも一方は、前記活物質層に隣接されている、
請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載の二次電池。
【請求項6】
前記第1電極および前記第2電極のうちの少なくとも一方は、前記対向方向において積層された集電体および活物質層を含み、
前記第1導電部材および前記第2導電部材のうちの少なくとも一方は、前記集電体に隣接されている、
請求項1記載ないし請求項4のいずれか1項に記載の二次電池。
【請求項7】
前記複数の電極は、前記対向方向において前記セパレータを介して互いに積層された正極および負極を含み、
前記第1電極は、前記正極および前記負極のうちの一方であり、
前記第2電極は、前記正極および前記負極のうちの他方である、
請求項1ないし請求項6のいずれか1項に記載の二次電池。
【請求項8】
前記複数の電極は、前記対向方向において順に積層された第1負極、正極および第2負極を含み、
前記第1電極は、前記第1負極であり、
前記第2電極は、前記第2負極である、
請求項1ないし請求項6のいずれか1項に記載の二次電池。
【請求項9】
さらに、前記正極に接続され、前記第1導電部材と前記第2導電部材との間の領域よりも外部に導出された正極端子を備えた、
請求項8記載の二次電池。
【請求項10】
前記第1負極および前記第2負極は、互いに連結されている、
請求項8または請求項9に記載の二次電池。
【請求項11】
前記複数の電極は、前記対向方向において順に積層された第1正極、負極および第2正極を含み、
前記第1電極は、前記第1正極であり、
前記第2電極は、前記第2正極である、
請求項1ないし請求項6のいずれか1項に記載の二次電池。
【請求項12】
さらに、前記負極に接続され、前記第1導電部材と前記第2導電部材との間の領域よりも外部に導出された負極端子を備えた、
請求項11記載の二次電池。
【請求項13】
前記第1正極および前記第2正極は、互いに連結されている、
請求項11または請求項12に記載の二次電池。
【請求項14】
前記第1導電部材および前記第2導電部材は、互いに連結されている、
請求項1ないし請求項13のいずれか1項に記載の二次電池。
【請求項15】
複数の前記封止部材を備え、
前記複数の封止部材は、前記対向方向において互いに積層されている、
請求項1ないし請求項14のいずれか1項に記載の二次電池。
【請求項16】
前記封止部材は、さらに、
前記第1接着層と前記絶縁層との間に介在すると共に前記第1接着層と前記絶縁層との密着性を向上させる第1密着層と、
前記第2接着層と前記絶縁層との間に介在すると共に前記第2接着層と前記絶縁層との密着性を向上させる第2密着層と
のうちの少なくとも一方を含み、
前記第1密着層および前記第2密着層のそれぞれは、イソシアネート系接着促進剤、ポリエチレンイミン系接着促進剤、ポリエステル系接着促進剤、ポリウレタン系接着促進剤およびポリブタジエン系接着促進剤のうちの少なくとも1種を含む、
請求項1ないし請求項15のいずれか1項に記載の二次電池。
【請求項17】
請求項1ないし請求項16のいずれか1項に記載の二次電池と、
前記二次電池の動作を制御する制御部と、
前記制御部の指示に応じて前記二次電池の動作を切り換えるスイッチ部と
を備えた、電池パック。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本技術は、セパレータを介して互いに積層された複数の電極を含む電池素子を備えた二次電池およびその二次電池を用いた電池パックに関する。
【背景技術】
【0002】
携帯電話機などの多様な電子機器が普及している。そこで、小型かつ軽量であると共に高エネルギー密度が得られる電源として、二次電池の開発が進められている。この二次電池は、電子機器にそのまま搭載されている他、1個または2個以上の二次電池を備えた電池パックとしても搭載されている。また、二次電池は、積層型の電池素子を備えており、その積層型の電池素子では、複数の電極がセパレータを介して互いに積層されている。二次電池の構成は、電池特性に影響を及ぼすため、その二次電池の構成に関しては、様々な検討がなされている。
【0003】
具体的には、外装材を設ける工程を必要としない低コストの二次電池を実現するために、折り曲げられた正極(または負極)の間に負極(または正極)が配置されていると共に、その折り曲げられた正極(または負極)のうちの集電体の外周部同士が互いにシールされている(例えば、特許文献1参照)。また、電池寿命(防湿性など)を改善するために、電極端子部材の先端部が露出された状態において電池構体が外装材(金属箔)により包まれているため、その電池構体が外装材により密封されている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003-068364号公報
【特許文献2】特開2000-058014号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
二次電池の電池特性を改善するために様々な検討がなされているが、その電池特性は未だ十分でないため、改善の余地がある。
【0006】
本技術はかかる問題点に鑑みてなされたもので、その目的は、優れた電池特性を得ることが可能な二次電池および電池パックを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本技術の一実施形態の二次電池は、第1導電部材と、その第1導電部材に対向する第2導電部材と、第1導電部材と第2導電部材との間に配置され、第1導電部材および第2導電部材が互いに対向する対向方向においてセパレータを介して互いに積層された複数の電極を含み、その複数の電極が第1導電部材に隣接された第1電極と第2導電部材に隣接された第2電極とを含む電池素子と、第1導電部材と第2導電部材との間において電池素子の周囲領域のうちの少なくとも一部に配置され、対向方向において順に積層された第1接着層、絶縁層および第2接着層を含み、第1接着層および第2接着層のそれぞれがポリオレフィン系樹脂を含み、絶縁層が絶縁性樹脂を含む封止部材とを備え、その複数の電極のそれぞれの平面形状を規定する外縁がセパレータの平面形状を規定する外縁よりも内側に後退しているものである。
【0008】
「ポリオレフィン系樹脂」とは、ポリオレフィン、ポリオレフィンの誘導体およびポリオレフィンの変性体のうちのいずれか1種類または2種類以上を含む樹脂(高分子化合物)の総称であり、そのポリオレフィンは、鎖状でもよいし、環状でもよい。ポリオレフィン系樹脂の詳細に関しては、後述する。「絶縁性樹脂」の種類は、特に限定されないが、ポリオレフィン系樹脂は、ここで説明する「絶縁性樹脂」から除かれる。
【0009】
本技術の一実施形態の電池パックは、二次電池と、その二次電池の動作を制御する制御部と、その制御部の指示に応じて二次電池の動作を切り換えるスイッチ部とを備え、その二次電池が上記した本技術の一実施形態の二次電池の構成と同様の構成を有するものである。
【発明の効果】
【0010】
本技術の一実施形態の二次電池によれば、第1導電部材と第2導電部材との間に電池素子が配置されており、その電池素子がセパレータを介して互いに積層された複数の電極を含んでいる。また、第1導電部材と第2導電部材との間において電池素子の周囲領域のうちの少なくとも一部に封止部材が配置されており、その封止部材が第1接着層(ポリオレフィン系樹脂)、絶縁層(絶縁性樹脂)および第2接着層(ポリオレフィン系樹脂)を含んでいる。さらに、複数の電極のそれぞれの平面形状を規定する外縁がセパレータの平面形状を規定する外縁よりも内側に後退している。よって、優れた電池特性を得ることができる。また、本技術の一実施形態の電池パックにおいても、同様の効果を得ることができる。
【0011】
なお、本技術の効果は、必ずしもここで説明された効果に限定されるわけではなく、後述する本技術に関連する一連の効果のうちのいずれの効果でもよい。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本技術の一実施形態の二次電池(電極端子なし型)の構成を表す斜視図である。
【
図2】
図1に示したA-A線に沿った二次電池の構成を表す断面図である。
【
図3】
図1に示したB-B線に沿った二次電池の構成を表す断面図である。
【
図4】本技術の一実施形態の二次電池(電極端子あり型)の構成を表す斜視図である。
【
図5】
図4に示したA-A線に沿った二次電池の構成を表す断面図である。
【
図6】
図4に示したB-B線に沿った二次電池の構成を表す断面図である。
【
図10】構成例1の電池素子の構成を表す断面図である。
【
図11】構成例1の電池素子の構成を表す他の断面図である。
【
図12】構成例2の電池素子の構成を表す断面図である。
【
図13】構成例2の電池素子の構成を表す他の断面図である。
【
図14】構成例3の電池素子の構成を表す断面図である。
【
図15】構成例3の電池素子の構成を表す他の断面図である。
【
図16】構成例4の電池素子の構成を表す断面図である。
【
図17】構成例4の電池素子の構成を表す他の断面図である。
【
図18】構成例5の電池素子の構成を表す断面図である。
【
図19】構成例5の電池素子の構成を表す他の断面図である。
【
図20】構成例6の電池素子の構成を表す断面図である。
【
図21】構成例6の電池素子の構成を表す他の断面図である。
【
図22】変形例1の二次電池(電極端子あり型)の構成を表す断面図である。
【
図23】変形例1の二次電池(電極端子あり型)の構成を表す他の断面図である。
【
図24】変形例1の電池素子に用いられる封止部材の構成を表す平面図である。
【
図25】変形例2の電池素子の構成を表す断面図である。
【
図26】変形例2の電池素子の構成を表す他の断面図である。
【
図27】変形例3の電池素子の構成を表す断面図である。
【
図28】変形例3の電池素子の構成を表す他の断面図である。
【
図29】変形例4の電池素子の構成を表す断面図である。
【
図30】変形例4の電池素子の構成を表す他の断面図である。
【
図31】変形例5の電池素子の構成を表す断面図である。
【
図32】変形例5の電池素子の構成を表す他の断面図である。
【
図33】変形例7の封止部材の構成を表す断面図である。
【
図34】二次電池の適用例(電池パック:単電池)の構成を表すブロック図である。
【
図35】二次電池の適用例(電池パック:組電池)の構成を表すブロック図である。
【
図36】二次電池の適用例(電動車両)の構成を表すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本技術の一実施形態に関して、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、説明する順序は、下記の通りである。
1.二次電池
1-1.全体の構成
1-2.電池素子の詳細な構成
1-3.動作
1-4.製造方法
1-5.作用および効果
2.変形例
3.二次電池の用途
3-1.電池パック(単電池)
3-2.電池パック(組電池)
3-3.電動車両
3-4.その他
【0014】
<1.二次電池>
まず、本技術の一実施形態の二次電池に関して説明する。
【0015】
ここで説明する二次電池は、電極反応物質の吸蔵および放出を利用して電池容量が得られる二次電池であり、正極および負極と共に電解液を備えている。
【0016】
この二次電池では、充電途中において負極の表面に電極反応物質が析出することを防止するために、その負極の充電容量が正極の放電容量よりも大きくなっている。すなわち、負極の単位面積当たりの電気化学容量は、正極の単位面積当たりの電気化学容量よりも大きくなるように設定されている。
【0017】
以下では、電極反応物質がリチウムである場合を例に挙げる。電極反応物質であるリチウムの吸蔵および放出を利用する二次電池は、いわゆるリチウムイオン二次電池である。
【0018】
<1-1.全体の構成>
まず、二次電池の全体の構成に関して説明する。以下では、2種類の二次電池の構成、すなわち電極端子なし型の二次電池100および電極端子あり型の二次電池200のそれぞれの構成に関して説明する。
【0019】
図1は、電極端子なし型の二次電池100の斜視構成を表している。
図2は、
図1に示したA-A線に沿った二次電池100の断面構成を表していると共に、
図3は、
図1に示したB-B線に沿った二次電池100の断面構成を表している。
【0020】
図4は、電極端子あり型の二次電池200の斜視構成を表している。
図5は、
図4に示したA-A線に沿った二次電池200の断面構成を表していると共に、
図6は、
図4に示したB-B線に沿った二次電池200の断面構成を表している。
【0021】
図7は、封止部材40(40M)の平面構成を表していると共に、
図8は、封止部材40の断面構成を表している。
図9は、封止部材40(40N)の平面構成を表しており、
図7に対応している。
図7では、封止部材40M(開口部40Kを除く。)に網掛けを施している。
図9では、封止部材40Nに網掛けを施していると共に、封止部材40Mを破線で示している。
【0022】
ただし、
図2、
図3、
図5および
図6のそれぞれでは、電池素子30の構成を模式的に示している。電池素子30の詳細な構成に関しては、後述する(
図10~
図21参照)。
【0023】
[電極端子なし型]
電極端子なし型の二次電池100は、
図1~
図3に示したように、上層導電外装部材10と、下層導電外装部材20と、電池素子30と、封止部材40とを備えている。この二次電池100では、上層導電外装部材10と下層導電外装部材20との間に電池素子30が配置されていると共に、その上層導電外装部材10と下層導電外装部材20との間において電池素子30の周囲に封止部材40が配置されている。これにより、電池素子30は、上層導電外装部材10、下層導電外装部材20および封止部材40により形成された空間の内部に収納(封入)されている。
【0024】
(上層導電外装部材および下層導電外装部材)
上層導電外装部材10は、電池素子30を収納するために用いられる導電性の外装部材(第1導電部材)であり、導電性材料のうちのいずれか1種類または2種類以上を含んでいる。この導電性材料は、金属および合金などであり、より具体的には、上層導電外装部材10は、金属箔などである。ただし、導電性材料の種類は、後述するように、電池素子30の構成(上層導電外装部材10の極性)に応じて決定される。上層導電外装部材10の形成材料(導電性材料)の種類と電池素子30の構成との関係に関しては、後述する。この上層導電外装部材10は、特に、後述するように、外装部材として機能するだけでなく、集電体(および電極端子)としても機能する。上層導電外装部材10の平面形状(XY面に沿った面の形状)は、特に限定されないが、4辺を有する矩形などである。
【0025】
下層導電外装部材20は、上記した上層導電外装部材10の機能、物性、材質および平面形状と同様の機能、物性、材質および平面形状を有している外装部材(第2導電部材)であり、その上層導電外装部材10に対向している。すなわち、下層導電外装部材20は、上層導電外装部材10と同様に、外装部材として機能するだけでなく、集電体(および電極端子)としても機能する。ただし、下層導電外装部材20の形成材料(導電性材料)の種類は、上層導電外装部材10の形成材料(導電性材料)の種類と同様に、電池素子30の構成(下層導電外装部材20の極性)に応じて決定される。このため、下層導電外装部材20の形成材料の種類は、上層導電外装部材10の形成材料の種類と同じである場合もあるし、上層導電外装部材10の形成材料の種類と異なる場合もある。
【0026】
上層導電外装部材10および下層導電外装部材20は、互いに分離されている。上層導電外装部材10と下層導電外装部材20との間に電池素子30が配置されている状態において、上層導電外装部材10および下層導電外装部材20のそれぞれの外周縁部同士は、封止部材40を介して互いに接着されている。
【0027】
(電池素子)
電池素子30は、リチウムの吸蔵および放出を利用した電極反応(充放電反応)を進行させる二次電池100の主要部であり、上層導電外装部材10と下層導電外装部材20との間に配置されている。電池素子30の平面形状は、特に限定されないが、上層導電外装部材10および下層導電外装部材20のそれぞれの平面形状と同様に、矩形などである。
【0028】
この電池素子30は、後述するように、複数の電極31と、セパレータ34と、液状の電解質である電解液とを含んでいる(
図10~
図21参照)。具体的には、複数の電極31は、上層導電外装部材10および下層導電外装部材20が互いに対向する方向(Z軸方向に沿った対向方向D)において、互いに接触しないようにセパレータ34を介して互いに積層されている。電解液は、複数の電極31およびセパレータ34のそれぞれに含浸されている。
【0029】
ただし、複数の電極31およびセパレータ34を含む積層構造のうちの最上層および最下層のそれぞれは、セパレータ34ではなく電極31である。このため、複数の電極31は、最上層電極35および最下層電極36を含んでいる。最上層電極35は、複数の電極31のうちの最上層に位置する(上層導電外装部材10に最も近い)電極31(第1電極)である。最下層電極36は、複数の電極31のうちの最下層に位置する(下層導電外装部材20に最も近い)電極31(第2電極)である。
【0030】
最上層電極35は、上層導電外装部材10に隣接されているため、その上層導電外装部材10に連結されている。すなわち、最上層電極35は、上層導電外装部材10に対して電気的に接続されている。最下層電極36は、下層導電外装部材20に隣接されているため、その下層導電外装部材20に連結されている。すなわち、最下層電極36は、下層導電外装部材20に対して電気的に接続されている。
【0031】
セパレータ34の平面形状の面積は、複数の電極31のそれぞれの平面形状の面積よりも大きくなるように設定されているため、複数の電極31のそれぞれは、セパレータ34の外縁よりも内側に配置されていてもよい。すなわち、各電極31の外縁は、セパレータ34の外縁よりも外側に突出しておらずに、そのセパレータ34の外縁よりも内側に後退していてもよい。これにより、各電極31の位置は、上層導電外装部材10および下層導電外装部材20のそれぞれに各電極31が接触しないように調整されている。
【0032】
ここで、複数の電極31は、後述するように、正極32および負極33を含んでいる。この場合において、最上層電極35が正極32および負極33のうちのいずれであるかは、電池素子30の構成に応じて決定されると共に、最下層電極36が正極32および負極33のうちのいずれであるかは、電池素子30の構成に応じて決定される。最上層電極35および最下層電極36のそれぞれの種類(正極32または負極33)と電池素子30の構成との関係に関しては、後述する。
【0033】
なお、複数の電極31が正極32および負極33を含んでいる場合には、正極32、負極33およびセパレータ34のそれぞれの平面形状の面積は、セパレータ34の平面形状の面積≧負極33の平面形状の面積≧正極32の平面形状の面積という関係が成立するように設定されていてもよい。
【0034】
すなわち、セパレータ34の平面形状の面積と負極33の平面形状の面積とは、互いに同じでもよいと共に、負極33の平面形状の面積と正極32の平面形状の面積とは、互いに同じでもよい。この場合には、正極32および負極33のうちの一方または双方は、必要に応じて、絶縁シートおよび絶縁フィルムなどの絶縁材を介して上層導電外装部材10および下層導電外装部材20のうちの一方または双方から絶縁されていてもよい。絶縁材の形成材料は、特に限定されないが、ポリエチレンなどの高分子材料のうちのいずれか1種類または2種類以上である。
【0035】
(封止部材)
封止部材40は、上層導電外装部材10と下層導電外装部材20との間において、電池素子30の周囲に設けられた空間のうちの一部または全部を封止している。このため、封止部材40は、上層導電外装部材10と下層導電外装部材20との間において、電池素子30の周囲領域のうちの一部または全部に配置されている。この「周囲領域」とは、封止部材40が配置されていない状態において、上層導電外装部材10と下層導電外装部材20との間において電池素子30の周囲に生じる空間(隙間)である。
【0036】
具体的には、封止部材40は、
図7に示したように、開口部40Kを有する枠型の平面形状を有しており、電池素子30は、開口部40Kの内部に配置されている。この場合には、封止部材40は、電池素子30の周囲領域のうちの全部に配置されている。封止部材40の外縁(輪郭)の平面形状は、特に限定されないが、上層導電外装部材10および下層導電外装部材20のそれぞれの平面形状と同様に、矩形などである。開口部40Kの平面形状は、特に限定されないが、電池素子30の平面形状に対応する形状などである。
【0037】
また、封止部材40は、
図8に示したように、対向方向Dにおいて順に積層された接着層41、絶縁層42および接着層43を含んでいる。接着層41、絶縁層42および接着層43は、上層導電外装部材10から下層導電外装部材20に向かう方向において、この順に配置されている。
【0038】
接着層41は、上層導電外装部材10に接着される第1接着層である。この接着層41は、熱融着法などを用いて上層導電外装部材10に接着可能であるポリオレフィン系樹脂のうちのいずれか1種類または2種類以上を含んでおり、より具体的には、そのポリオレフィン系樹脂のフィルムである。ただし、接着層41は、単層でもよいし、多層でもよい。接着層41が多層である場合において、各接着層41は、互いに同じ種類のポリオレフィン系樹脂を含んでいてもよいし、互いに異なる種類のポリオレフィン系樹脂を含んでいてもよい。
【0039】
「ポリオレフィン系樹脂」とは、上記したように、ポリオレフィン、ポリオレフィンの誘導体およびポリオレフィンの変性体のうちのいずれか1種類または2種類以上を含む樹脂(高分子化合物)の総称であり、そのポリオレフィンは、鎖状でもよいし、環状でもよい。「ポリオレフィンの誘導体」とは、1種類または2種類以上の官能基が導入されたポリオレフィンであり、その官能基の種類は、特に限定されない。「ポリオレフィンの変性体」とは、1種類または2種類以上の変性物が導入されたことに起因して全体の性質が変化したポリオレフィンであり、その変性物の種類は、特に限定されない。具体的には、ポリオレフィンは、ポリプロピレンなどであると共に、ポリオレフィン系樹脂は、鎖状ポリオレフィン、環状ポリオレフィン、カルボン酸変性鎖状ポリオレフィンおよびカルボン酸変性環状ポリオレフィンなどである。封止性が担保されながら、十分な密着性が得られるからである。
【0040】
中でも、上記した変性物は、酸および酸無水物のうちのいずれか1種類または2種類以上であることが好ましい。すなわち、ポリオレフィン系樹脂は、酸および酸無水物のうちのいずれか1種類または2種類以上が導入された酸変性ポリオレフィンであることが好ましく、不飽和カルボン酸および不飽和カルボン酸無水物のうちのいずれか1種類または2種類以上によりグラフト変性されたポリオレフィンであることがより好ましい。封止性および密着性のそれぞれがより向上するからである。
【0041】
不飽和カルボン酸の種類は、特に限定されないが、マレイン酸などである。不飽和カルボン酸無水物の種類は、特に限定されないが、マレイン酸無水物などである。
【0042】
なお、接着層41は、上記したポリオレフィン系樹脂と共に、絶縁性の充填剤を含んでいてもよい。この充填剤は、無機系充填剤および有機系充填剤のうちのいずれか1種類または2種類以上を含んでいる。無機系充填剤は、炭素材料(カーボンおよびグラファイトなど)、酸化ケイ素(シリカ)、酸化アルミニウム、チタン酸バリウム、酸化鉄、シリコンカーバイド、酸化ジルコニウム、ケイ酸ジルコニウム、酸化マグネシウム、酸化チタン、アルミ酸カルシウム、水酸化カルシウム、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウムおよび炭酸カルシウムなどである。有機系充填剤は、フッ素樹脂、フェノール樹脂、ユリア樹脂、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、ベンゾグアナミン・ホルムアルデヒド縮合物、メラミン・ホルムアルデヒド縮合物、ポリメタクリル酸メチル架橋物およびポリエチレン架橋物などである。上層導電外装部材10と下層導電外装部材20との短絡が抑制されやすくなるからである。
【0043】
接着層41の厚さは、特に限定されないが、20μm~80μm、好ましくは30μm~50μmである。封止性および接着性のそれぞれが担保されやすくなるからである。
【0044】
絶縁層42は、絶縁性樹脂のうちのいずれか1種類または2種類以上を含んでおり、より具体的には、その絶縁性樹脂のフィルムである。「絶縁性樹脂」の種類は、上記したように、特に限定されないが、ポリオレフィン系樹脂は、ここで説明する「絶縁性樹脂」から除かれる。
【0045】
具体的には、絶縁性樹脂は、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、エポキシ系樹脂、アクリル系樹脂、フッ素系樹脂、ポリウレタン系樹脂、珪素系樹脂およびフェノール系樹脂などのうちのいずれか1種類または2種類以上を含んでいる。封止部材40の絶縁性が担保されるからである。ただし、絶縁性樹脂は、上記したポリエステル系樹脂などのうちの任意の2種類以上の共重合体を含んでいてもよい。また、絶縁層42は、単層でもよいし、多層でもよい。絶縁層42が多層である場合において、各絶縁層42は、互いに同じ種類の絶縁性樹脂を含んでいてもよいし、互いに異なる種類の絶縁性樹脂を含んでいてもよい。
【0046】
「ポリエステル系樹脂」とは、ポリエステルおよびその誘導体を含む樹脂(高分子化合物)の総称である。このように「系」が誘導体まで含む樹脂の総称であることは、名称中に「系」が含まれているポリアミド系樹脂などの他の樹脂に関しても同様である。
【0047】
中でも、絶縁性樹脂は、フッ素系樹脂を含んでいることが好ましい。封止部材40の絶縁性が向上するからである。
【0048】
絶縁層42の厚さは、特に限定されないが、5μm~40μm、好ましくは10μm~30μmである。封止性および接着性のそれぞれが担保されやすくなるからである。
【0049】
接着層43は、下層導電外装部材20に接着される第2接着層である。接着層43の形成材料に関する詳細は、上層導電外装部材10の代わりに下層導電外装部材20に接着可能であることを除いて、接着層41の形成材料に関する詳細と同様である。ただし、接着層43の形成材料(ポリオレフィン系樹脂)の種類は、接着層41の形成材料(ポリオレフィン系樹脂)の種類と同じでもよいし、接着層41の形成材料の種類と異なってもよい。また、接着層43は、単層でもよいし、多層でもよい。
【0050】
封止部材40が接着層41,43および絶縁層42を含む多層構造を有しているのは、絶縁層42により上層導電外装部材10と下層導電外装部材20との間の絶縁性が担保されながら、接着層41,43により上層導電外装部材10および下層導電外装部材20のそれぞれに対する封止部材40の密着性が向上するからである。これにより、集電体としても機能する上層導電外装部材10および下層導電外装部材20が互いに接触および導通しなくなるため、その上層導電外装部材10と下層導電外装部材20との短絡が防止される。しかも、電池素子30の周囲が封止されるため、後述する電解液などの電池素子30の構成要素が上層導電外装部材10と下層導電外装部材20との間から外部に漏れにくくなる。
【0051】
なお、封止部材40の数は、特に限定されない。このため、上層導電外装部材10と下層導電外装部材20との間に1個の封止部材40が配置されていてもよいし、上層導電外装部材10と下層導電外装部材20との間に2個以上の封止部材40が配置されていてもよい。すなわち、後者の場合には、二次電池100が複数個の封止部材40を備えており、その複数個の封止部材40が対向方向Dにおいて互いに積層されていてもよい。電池素子30の周囲の封止性がより向上するため、電解液などがより漏れにくくなるからである。
【0052】
[電極端子あり型]
電極端子あり型の二次電池200は、
図4~
図6に示したように、新たに電極端子50を備えていると共に複数の封止部材40を備えていることを除いて、電極端子なし型の二次電池100の構成(
図1~
図3、
図7および
図8)と同様の構成を有している。
【0053】
電極端子50は、電池素子30から上層導電外装部材10および下層導電外装部材20のそれぞれの外側に向かう方向に延在している。すなわち、電極端子50の一端部は、電池素子30に連結されていると共に、その電極端子50の他端部は、上層導電外装部材10と下層導電外装部材20との間の領域よりも外部に導出されている。
【0054】
具体的には、電極端子50は、複数の電極31のうちの特定の電極31に連結されているため、その特定の電極31に対して電気的に接続されている。電極端子50の接続先である電極31が正極32および負極33のうちのいずれであるかは、電池素子30の構成に応じて決定される。電極端子50の接続先である電極31の種類(正極32または負極33)と電池素子30の構成との関係に関しては、後述する。
【0055】
この電極端子50を備えている二次電池200は、上記したように、複数の封止部材40を備えている。
【0056】
具体的には、二次電池200は、
図7に示した開口部40Kを有している枠型の封止部材40(40M)を2個備えていてもよい。2個の封止部材40Mのそれぞれは、上記したように、電池素子30の周囲領域のうちの全部に配置されている。この場合には、2個の封止部材40Mが電極端子50を介して互いに重ねられているため、
図6に示したように、その2個の封止部材40により電極端子50が挟まれている。これにより、電極端子50は、上層導電外装部材10および下層導電外装部材20のそれぞれから2個の封止部材40Mを介して離間(絶縁)されている。
【0057】
または、二次電池200は、
図7に示した開口部40Kを有している枠型の封止部材40(40M)と、
図9に示した開口部40Kを有していない非枠型の封止部材40(40N)とを備えていてもよい。この封止部材40Nは、電極端子50の幅(Y軸方向の寸法)よりも大きな幅を有しており、電池素子30の周囲領域のうちの一部に配置されている。この場合には、封止部材40M,40Nが電極端子50を介して互いに重ねられているため、
図6に示したように、その封止部材40M,40Nにより電極端子50が挟まれている。これにより、電極端子50は、上層導電外装部材10および下層導電外装部材20のそれぞれから封止部材40M,40Nを介して離間(絶縁)されている。
【0058】
<1-2.電池素子の詳細な構成>
次に、電池素子30の詳細な構成に関して説明する。上記した二次電池100,200のそれぞれに適用される電池素子30の構成としては、さまざまな構成が考えられる。以下の説明では、随時、既に説明した
図1~
図9を参照する。
【0059】
電池素子30の構成は、上記したように、対向方向Dにおいてセパレータ34を介して複数の電極31が互いに積層されていると共に、その複数の電極31が最上層電極35および最下層電極36を含んでいれば、特に限定されない。すなわち、正極32および負極33を含んでいる複数の電極31において、正極32および負極33のそれぞれの積層数は、任意に設定可能である。もちろん、セパレータ34の積層数も同様に、任意に設定可能である。
【0060】
以下では、多様なバリエーションが考えられる電池素子30の構成を代表して、6種類の電池素子30の構成(構成例1~6)に関して順に説明する。
【0061】
[構成例1(電極端子なし型)]
図10および
図11のそれぞれは、電極端子なし型の二次電池100に適用される構成例1の電池素子30の断面構成を表しており、
図2および
図3のそれぞれに対応している。
【0062】
構成例1の電池素子30は、
図10および
図11に示したように、1個のセパレータ34を介して2個の電極31(1個の正極32および1個の負極33)が積層された積層構造を有している。すなわち、正極32、セパレータ34および負極33は、上層導電外装部材10から下層導電外装部材20に向かう方向において、この順に配置されている。
【0063】
この場合には、最上層電極35が正極32であると共に、最下層電極36が負極33である。これにより、最上層電極35である正極32が上層導電外装部材10に隣接されているため、その上層導電外装部材10が正極32の集電体として機能すると共に、最下層電極36である負極33が下層導電外装部材20に隣接されているため、その下層導電外装部材20が負極33の集電体として機能する。
【0064】
上層導電外装部材10は、正極32の集電体として機能するために、アルミニウム、アルミニウム合金およびステンレスなどの導電性材料のうちのいずれか1種類または2種類以上を含んでいる。下層導電外装部材20は、負極33の集電体として機能するために、銅、銅合金、ステンレス、ニッケルおよびニッケルメッキ鋼板などの導電性材料のうちのいずれか1種類または2種類以上を含んでいる。
【0065】
(正極)
最上層電極35である正極32は、正極活物質層32Bを含んでいる。このため、上層導電外装部材10は、正極32の活物質層である正極活物質層32Bに隣接されている。
【0066】
正極活物質層32Bは、リチウムを吸蔵および放出する正極活物質のうちのいずれか1種類または2種類以上を含んでいる。ただし、正極活物質層32Bは、さらに、正極結着剤および正極導電剤などを含んでいてもよい。
【0067】
正極活物質の種類は、特に限定されないが、リチウム含有遷移金属化合物などのリチウム含有化合物である。このリチウム含有遷移金属化合物は、リチウムと共に1種類または2種類以上の遷移金属元素を含んでおり、さらに、1種類または2種類以上の他元素を含んでいてもよい。他元素の種類は、任意の元素(ただし、遷移金属元素を除く。)であれば、特に限定されない。中でも、他元素は、長周期型周期表における2族~15族に属する元素であることが好ましい。なお、リチウム含有遷移金属化合物は、酸化物でもよいし、リン酸化合物、ケイ酸化合物およびホウ酸化合物などでもよい。
【0068】
酸化物の具体例は、LiNiO2 、LiCoO2 、LiCo0.98Al0.01Mg0.01O2 、LiNi0.5 Co0.2 Mn0.3 O2 、LiNi0.8 Co0.15Al0.05O2 、LiNi0.33Co0.33Mn0.33O2 、Li1.2 Mn0.52Co0.175 Ni0.1 O2 、Li1.15(Mn0.65Ni0.22Co0.13)O2 およびLiMn2 O4 などである。リン酸化合物の具体例は、LiFePO4 、LiMnPO4 、LiFe0.5 Mn0.5 PO4 およびLiFe0.3 Mn0.7 PO4 などである。
【0069】
正極結着剤は、合成ゴムおよび高分子化合物などのうちのいずれか1種類または2種類以上を含んでいる。合成ゴムは、スチレンブタジエン系ゴム、フッ素系ゴムおよびエチレンプロピレンジエンなどである。高分子化合物は、ポリフッ化ビニリデン、ポリイミドおよびカルボキシメチルセルロースなどである。「系」の意味は、上記した通りである。
【0070】
正極導電剤は、炭素材料などの導電性材料のうちのいずれか1種類または2種類以上を含んでいる。この炭素材料は、黒鉛、カーボンブラック、アセチレンブラックおよびケッチェンブラックなどである。ただし、正極導電剤は、導電性を有していれば、金属材料および導電性高分子などでもよい。
【0071】
(負極)
最下層電極36である負極33は、負極活物質層33Bを含んでいる。このため、下層導電外装部材20は、負極33の活物質層である負極活物質層33Bに隣接されている。
【0072】
負極活物質層33Bは、リチウムを吸蔵および放出する負極活物質のうちのいずれか1種類または2種類以上を含んでいる。ただし、負極活物質層33Bは、さらに、負極結着剤および負極導電剤などを含んでいてもよい。負極結着剤および負極導電剤のそれぞれに関する詳細は、正極結着剤および正極導電剤のそれぞれに関する詳細と同様である。
【0073】
負極活物質の種類は、特に限定されないが、炭素材料および金属系材料などである。炭素材料は、易黒鉛化性炭素、難黒鉛化性炭素および黒鉛などである。金属系材料は、リチウムと合金を形成可能な金属元素および半金属元素であり、より具体的には、ケイ素およびスズなどである。ただし、金属系材料は、単体でもよいし、合金でもよいし、化合物でもよいし、それらの2種類以上の混合物でもよい。
【0074】
金属系材料の具体例は、SiB4 、SiB6 、Mg2 Si、Ni2 Si、TiSi2 、MoSi2 、CoSi2 、NiSi2 、CaSi2 、CrSi2 、Cu5 Si、FeSi2 、MnSi2 、NbSi2 、TaSi2 、VSi2 、WSi2 、ZnSi2 、SiC、Si3 N4 、Si2 N2 O、SiOv (0<v≦2または0.2<v<1.4)、LiSiO、SnOw (0<w≦2)、SnSiO3 、LiSnOおよびMg2 Snなどである。
【0075】
(セパレータ)
セパレータ34は、正極32と負極33との接触に起因する短絡を防止しながらリチウムを通過させる絶縁性の多孔質膜である。セパレータ34の構成(材質など)は、特に限定されない。このセパレータ34は、単層膜でもよいし、多層膜でもよい。
【0076】
具体的には、セパレータ34は、ポリテトラフルオロエチレン、ポリプロピレンおよびポリエチレンなどの高分子化合物のうちのいずれか1種類または2種類以上を含んでいる。
【0077】
なお、セパレータ34は、アラミドセパレータなどの不織布セパレータでもよいし、セラミック塗布セパレータでもよい。このセラミック塗布セパレータは、上記した多孔質膜の表面にアルミナなどが塗布されたセパレータであり、二次電池100,200の安全性を向上させる。
【0078】
(電解液)
電解液は、上記したように、複数の電極31(正極32および負極33)およびセパレータ34のそれぞれに含浸されており、溶媒および電解質塩を含んでいる。溶媒および電解質塩のそれぞれの種類は、1種類だけでもよいし、2種類以上でもよい。
【0079】
溶媒は、非水溶媒(有機溶剤)を含んでおり、その非水溶媒を含んでいる電解液は、いわゆる非水電解液である。この非水溶媒は、炭酸エステル系化合物、カルボン酸エステル系化合物およびラクトン系化合物などである。炭酸エステル系化合物は、炭酸エチレン、炭酸プロピレン、炭酸ジメチル、炭酸ジエチルおよび炭酸メチルエチルなどである。カルボン酸エステル系化合物は、酢酸エチル、プロピオン酸エチルおよびトリメチル酢酸エチルなどである。ラクトン系化合物は、γ-ブチロラクトンおよびγ-バレロラクトンなどである。この他、非水溶媒は、1,2-ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン、1,3-ジオキソランおよび1,4-ジオキサンなどでもよい。
【0080】
また、非水溶媒は、不飽和環状炭酸エステル、ハロゲン化炭酸エステル、スルホン酸エステル、リン酸エステル、酸無水物、ニトリル化合物およびイソシアネート化合物などのうちのいずれか1種類または2種類以上を含んでいてもよい。不飽和環状炭酸エステルは、炭酸ビニレン、炭酸ビニルエチレンおよび炭酸メチレンエチレンなどである。ハロゲン化炭酸エステルは、フルオロ炭酸エチレンおよびジフルオロ炭酸エチレンなどである。スルホン酸エステルは、1,3-プロパンスルトンなどである。リン酸エステルは、リン酸トリメチルなどである。酸無水物は、無水コハク酸、無水グルタル酸、無水マレイン酸、無水エタンジスルホン酸、無水プロパンジスルホン酸、無水スルホ安息香酸、無水スルホプロピオン酸および無水スルホ酪酸などである。ニトリル化合物は、アセトニトリルおよびスクシノニトリルなどである。イソシアネート化合物は、ヘキサメチレンジイソシアネートなどである。
【0081】
電解質塩は、リチウム塩などの軽金属塩のいずれか1種類または2種類以上である。このリチウム塩は、六フッ化リン酸リチウム(LiPF6 )、四フッ化ホウ酸リチウム(LiBF4 )、トリフルオロメタンスルホン酸リチウム(LiCF3 SO3 )、ビス(フルオロスルホニル)イミドリチウム(LiN(FSO2 )2 )、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドリチウム(LiN(CF3 SO2 )2 )、リチウムトリス(トリフルオロメタンスルホニル)メチド(LiC(CF3 SO2 )3 )およびビス(オキサラト)ホウ酸リチウム(LiB(C2 O4 )2 )などである。電解質塩の含有量は、特に限定されないが、溶媒に対して0.3mol/kg~3.0mol/kgである。高いイオン伝導性が得られるからである。
【0082】
なお、ここでは、最上層電極35が正極32であると共に、最下層電極36が負極33であるとした。しかしながら、対向方向Dにおいて電池素子30を反転させることにより、最上層電極35が負極33であると共に、最下層電極36が正極32であるとしてもよい。この場合には、最上層電極35である負極33が上層導電外装部材10に隣接されるため、その上層導電外装部材10が負極33の集電体として機能すると共に、最下層電極36である正極32が下層導電外装部材20に隣接されるため、その下層導電外装部材20が正極32の集電体として機能する。
【0083】
[構成例2(電極端子なし型)]
図12および
図13のそれぞれは、電極端子なし型の二次電池100に適用される構成例2の電池素子30の断面構成を表しており、
図2および
図3のそれぞれに対応している。なお、セパレータ34および電解液のそれぞれの詳細は上記した通りであり、以降においても同様である。
【0084】
構成例2の電池素子30は、
図12および
図13に示したように、構成例1の電池素子30と同様に、1個のセパレータ34を介して2個の電極31(1個の正極32および1個の負極33)が積層された積層構造を有している。すなわち、正極32、セパレータ34および負極33は、上層導電外装部材10から下層導電外装部材20に向かう方向において、この順に配置されている。
【0085】
この場合には、最上層電極35が正極32であると共に、最下層電極36が負極33であるため、その最上層電極35である正極32に隣接されている上層導電外装部材10が正極32の集電体として機能すると共に、その最下層電極36である負極33に隣接されている下層導電外装部材20が負極33の集電体として機能する。上層導電外装部材10および下層導電外装部材20のそれぞれの形成材料(導電性材料)に関する詳細は、構成例1の電池素子30と同様である。
【0086】
ただし、正極32は、正極集電体32Aと、その正極集電体32Aの片面に形成された正極活物質層32Bとを含んでおり、その正極活物質層32Bは、セパレータ34と正極集電体32Aとの間に配置されている。これにより、上層導電外装部材10は、正極活物質層32Bではなく、正極32の集電体である正極集電体32Aに隣接されている。この正極集電体32Aは、アルミニウム、アルミニウム合金およびステンレスなどの導電性材料のうちのいずれか1種類または2種類以上を含んでいる。正極活物質層32Bに関する詳細は、上記した通りである。
【0087】
また、負極33は、負極集電体33Aと、その負極集電体33Aの片面に形成された負極活物質層33Bとを含んでおり、その負極活物質層33Bは、セパレータ34と負極集電体33Aとの間に配置されている。これにより、下層導電外装部材20は、負極活物質層33Bではなく、負極33の集電体である負極集電体33Aに隣接されている。この負極集電体33Aは、銅、銅合金、ステンレス、ニッケルおよびニッケルメッキ鋼板などの導電性材料のうちのいずれか1種類または2種類以上を含んでいる。負極活物質層33Bに関する詳細は、上記した通りである。
【0088】
なお、構成例1の電池素子30と同様に、対向方向Dにおいて電池素子30を反転させることにより、最上層電極35が負極33であると共に、最下層電極36が正極32であるとしてもよい。この場合には、上記したように、上層導電外装部材10が負極33の集電体として機能すると共に、下層導電外装部材20が正極32の集電体として機能する。
【0089】
[構成例3(電極端子あり型)]
図14および
図15のそれぞれは、電極端子あり型の二次電池200に適用される構成例3の電池素子30の断面構成を表しており、
図5および
図6のそれぞれに対応している。
【0090】
構成例3の電池素子30は、
図14および
図15に示したように、2個のセパレータ34を介して3個の電極31(1個の正極32および2個の負極33)が積層された積層構造を有している。すなわち、第1負極である負極33と、セパレータ34と、正極32と、セパレータ34と、第2負極である負極33とは、上層導電外装部材10から下層導電外装部材20に向かう方向において、この順に配置されている。
【0091】
この場合には、最上層電極35が負極33であると共に、最下層電極36も負極33である。これにより、最上層電極35である負極33が上層導電外装部材10に隣接されるため、その上層導電外装部材10が負極33の集電体として機能すると共に、最下層電極36である負極33が下層導電外装部材20に隣接されるため、その下層導電外装部材20が負極33の集電体として機能する。負極33の集電体として機能する上層導電外装部材10および下層導電外装部材20のそれぞれの形成材料(導電性材料)に関する詳細は、上記した通りである。
【0092】
正極32は、正極集電体32Aと、その正極集電体32Aの両面に形成された2個の正極活物質層32Bとを含んでいる。ただし、正極集電体32Aの一部は、電極端子50として機能するために、上層導電外装部材10と下層導電外装部材20との間の領域よりも外部に導出されている。すなわち、正極集電体32Aは、電極端子50、より具体的には正極端子32Tとして機能する突出部32Cを含んでいる。この正極端子32Tとして機能する突出部32Cは、正極集電体32Aのうちの本体部分(突出部32C以外の部分)に連結されており、その本体部分と一体化されている。
図15では、突出部32Cと正極集電体32Aのうちの本体部分との境界に破線を付している。
【0093】
ただし、突出部32Cは、正極集電体32Aと別体化されているため、その正極集電体32Aから物理的に分離されていてもよい。この場合には、溶接法などを用いて突出部32Cが正極集電体32Aに接続されていてもよい。
【0094】
最上層電極35である負極33および最下層電極36である負極33のそれぞれは、負極活物質層33Bを含んでいる。このため、上層導電外装部材10は、負極33の活物質層である負極活物質層33Bに隣接されていると共に、下層導電外装部材20は、負極33の活物質層である負極活物質層33Bに隣接されている。負極活物質層33Bに関する詳細は、上記した通りである。
【0095】
[構成例4(電極端子あり型)]
図16および
図17のそれぞれは、電極端子あり型の二次電池200に適用される構成例4の電池素子30の断面構成を表しており、
図5および
図6のそれぞれに対応している。
【0096】
構成例4の電池素子30は、
図16および
図17に示したように、構成例3の電池素子30と同様に、2個のセパレータ34を介して3個の電極31(1個の正極32および2個の負極33)が積層された積層構造を有している。すなわち、負極33、セパレータ34、正極32、セパレータ34および負極33は、上層導電外装部材10から下層導電外装部材20に向かう方向において、この順に配置されている。
【0097】
この場合には、最上層電極35が負極33であると共に、最下層電極36も負極33であるため、その最上層電極35である負極33に隣接されている上層導電外装部材10が負極33の集電体として機能すると共に、その最下層電極36である負極33に隣接されている下層導電外装部材20が負極33の集電体として機能する。上層導電外装部材10および下層導電外装部材20のそれぞれの形成材料(導電性材料)に関する詳細は、構成例3の電池素子30と同様である。
【0098】
正極32は、正極集電体32Aと、その正極集電体32Aの両面に形成された2個の正極活物質層32Bとを含んでおり、その正極集電体32Aは、電極端子50(正極端子32T)として機能する突出部32Cを含んでいる。正極集電体32A(突出部32Cを含む。)および正極活物質層32Bのそれぞれに関する詳細は、上記した通りである。
【0099】
最上層電極35である負極33および最下層電極36である負極33のそれぞれは、負極集電体33Aと、その負極集電体33Aの片面に形成された1個の負極活物質層33Bとを含んでいる。このため、上層導電外装部材10は、最上層電極35である負極33の集電体である負極集電体33Aに隣接されていると共に、下層導電外装部材20は、最下層電極36である負極33の集電体である負極集電体33Aに隣接されている。負極集電体33Aおよび負極活物質層33Bのそれぞれに関する詳細は、上記した通りである。
【0100】
[構成例5(電極端子あり型)]
図18および
図19のそれぞれは、電極端子あり型の二次電池200に適用される構成例5の電池素子30の断面構成を表しており、
図5および
図6のそれぞれに対応している。
【0101】
構成例5の電池素子30は、
図18および
図19に示したように、2個のセパレータ34を介して3個の電極31(2個の正極32および1個の負極33)が積層された積層構造を有している。すなわち、第1正極である正極32と、セパレータ34と、負極33と、セパレータ34と、第2正極である正極32とは、上層導電外装部材10から下層導電外装部材20に向かう方向において、この順に配置されている。
【0102】
この場合には、最上層電極35が正極32であると共に、最下層電極36も正極32である。これにより、最上層電極35である正極32が上層導電外装部材10に隣接されているため、その上層導電外装部材10が正極32の集電体として機能すると共に、最下層電極36である正極32が下層導電外装部材20に隣接されているため、その下層導電外装部材20が正極32の集電体として機能する。正極32の集電体として機能する上層導電外装部材10および下層導電外装部材20のそれぞれの形成材料(導電性材料)に関する詳細は、上記した通りである。
【0103】
最上層電極35である正極32および最下層電極36である正極32のそれぞれは、正極活物質層32Bを含んでいる。このため、上層導電外装部材10は、正極32の活物質層である正極活物質層32Bに隣接されていると共に、下層導電外装部材20は、正極32の活物質である正極活物質層32Bに隣接されている。正極活物質層32Bに関する詳細は、上記した通りである。
【0104】
負極33は、負極集電体33Aと、その負極集電体33Aの両面に形成された2個の負極活物質層33Bとを含んでいる。ただし、負極集電体33Aの一部は、電極端子50として機能するために、上層導電外装部材10と下層導電外装部材20との間の領域よりも外部に導出されている。すなわち、負極集電体33Aは、電極端子50、より具体的には負極端子33Tとして機能する突出部33Cを含んでいる。この負極端子33Tとして機能する突出部33Cは、負極集電体33Aのうちの本体部分(突出部33C以外の部分)に連結されており、その本体部分と一体化されている。
図19では、突出部33Cと負極集電体33Aのうちの本体部分との境界に破線を付している。
【0105】
ただし、突出部33Cは、負極集電体33Aと別体化されているため、その負極集電体33Aから物理的に分離されていてもよい。この場合には、溶接法などを用いて突出部33Cが負極集電体33Aに接続されていてもよい。
【0106】
[構成例6(電極端子あり型)]
図20および
図21のそれぞれは、電極端子あり型の二次電池200に適用される構成例6の電池素子30の断面構成を表しており、
図5および
図6のそれぞれに対応している。
【0107】
構成例6の電池素子30は、
図20および
図21に示したように、構成例5の電池素子30と同様に、2個のセパレータ34を介して3個の電極31(2個の正極32および1個の負極33)が積層された積層構造を有している。すなわち、正極32、セパレータ34、負極33、セパレータ34および正極32は、上層導電外装部材10から下層導電外装部材20に向かう方向において、この順に配置されている。
【0108】
この場合には、最上層電極35が正極32であると共に、最下層電極36も正極32であるため、その最上層電極35である正極32に隣接されている上層導電外装部材10が正極32の集電体として機能すると共に、その最下層電極36である正極32に隣接されている下層導電外装部材20が正極32の集電体として機能する。上層導電外装部材10および下層導電外装部材20のそれぞれの形成材料(導電性材料)に関する詳細は、構成例5の電池素子30と同様である。
【0109】
最上層電極35である正極32および最下層電極36である正極32のそれぞれは、正極集電体32Aと、その正極集電体32Aの片面に形成された正極活物質層32Bとを含んでいる。このため、上層導電外装部材10は、最上層電極35である正極32の集電体である正極集電体32Aに隣接されていると共に、下層導電外装部材20は、最下層電極36である正極32の集電体である正極集電体32Aに隣接されている。正極集電体32Aおよび正極活物質層32Bのそれぞれに関する詳細は、上記した通りである。
【0110】
負極33は、負極集電体33Aと、その負極集電体33Aの両面に形成された2個の負極活物質層33Bとを含んでおり、その負極集電体33Aは、電極端子50(負極端子33T)として機能する突出部33Cを含んでいる。負極集電体33A(突出部33Cを含む。)および負極活物質層33Bのそれぞれに関する詳細は、上記した通りである。
【0111】
<1-3.動作>
この二次電池は、以下で説明するように動作する。充電時には、電池素子30において、正極32からリチウムが放出されると共に、そのリチウムが電解液を介して負極33に吸蔵される。また、放電時には、電池素子30において、負極33からリチウムが放出されると共に、そのリチウムが電解液を介して正極32に吸蔵される。充放電時には、リチウムがイオン状態で吸蔵および放出される。
【0112】
<1-4.製造方法>
二次電池を製造する場合には、以下で説明する手順により、電池素子30を作製したのち、二次電池100,200を組み立てる。以下の説明では、随時、既に説明した
図1~
図21を参照する。
【0113】
[電極端子なし型]
電極端子なし型の二次電池100を製造する場合には、最初に、セパレータ34を介して複数の電極31(正極32および負極33)を互いに積層させることにより、積層体を形成したのち、その積層体に電解液を含浸させることにより、電池素子30を作製する。電池素子30の積層構造に関する詳細は、構成例1,2に関して説明した通りである(
図10~
図13参照)。
【0114】
(正極の作製)
正極32を作製する場合には、最初に、正極活物質と、必要に応じて正極結着剤および正極導電剤などとを混合することにより、正極合剤とする。続いて、有機溶剤などの溶媒に正極合剤を投入することにより、ペースト状の正極合剤スラリーを調製する。最後に、正極集電体32Aの片面または両面に正極合剤スラリーを塗布することにより、正極活物質層32Bを形成する。こののち、ロールプレス機などを用いて正極活物質層32Bを圧縮成型してもよい。この場合には、正極活物質層32Bを加熱してもよいし、圧縮成型を複数回繰り返してもよい。
【0115】
なお、正極集電体32Aを用いないで正極32を作製する場合には、上記した正極合剤スラリーを調製したのち、上層導電外装部材10および下層導電外装部材20のうちの一方または双方の表面に正極合剤スラリーを塗布することにより、正極活物質層32Bを形成してもよい。
【0116】
(負極の作製)
負極33を作製する場合には、上記した正極32の作製手順と同様の手順により、負極集電体33Aに負極活物質層33Bを形成する。具体的には、負極活物質と、必要に応じて負極結着剤および負極導電剤などとを混合することにより、負極合剤としたのち、有機溶剤などの溶媒に負極合剤を投入することにより、ペースト状の負極合剤スラリーを調製する。続いて、負極集電体33Aの片面または両面に負極合剤スラリーを塗布することにより、負極活物質層33Bを形成する。こののち、負極活物質層33Bを圧縮成型してもよい。
【0117】
なお、負極集電体33Aを用いないで負極33を作製する場合には、上記した負極合剤スラリーを調製したのち、上層導電外装部材10および下層導電外装部材20のうちの一方または双方の表面に負極合剤スラリーを塗布することにより、負極活物質層33Bを形成してもよい。
【0118】
(二次電池の組み立て)
二次電池100を組み立てる場合には、下層導電外装部材20と、
図7および
図8に示した封止部材40(40M)と、電池素子30と、上層導電外装部材10とをこの順に積層させる。この場合には、封止部材40Mに設けられている開口部40Kの内部に電池素子30を収容する。こののち、熱融着法などを用いて封止部材40(接着層41,43)のうちの4辺の外周縁部を上層導電外装部材10および下層導電外装部材20のそれぞれに接着させる。これにより、上層導電外装部材10と下層導電外装部材20との間に封止部材40を介して電池素子30を収納する。よって、上層導電外装部材10と下層導電外装部材20との間に電池素子30が封入されるため、電極端子なし型の二次電池100が完成する。
【0119】
[電極端子あり型]
電極端子あり型の二次電池200を製造する場合には、電極端子50(正極端子32T)として機能する突出部32Cを含む正極集電体32Aまたは電極端子50(負極端子33T)として機能する突出部33Cを含む負極集電体33Aを用いると共に、
図7~
図9に示した封止部材40(40M,40Nを用いることを除いて、電極端子なし型の二次電池100の製造手順と同様の手順を行う。電池素子30の積層構造に関する詳細は、構成例3~6に関して説明した通りである(
図14~
図21参照)。封止部材40としては、上記したように、枠型の封止部材40Mだけを用いてもよいし、枠型の封止部材40Mと非枠型の封止部材40Nとを併用してもよい。これにより、上層導電外装部材10および下層導電外装部材20から電極端子50が導出されながら、その上層導電外装部材10と下層導電外装部材20との間に電池素子30が封止部材40を介して封入されるため、電極端子あり型の二次電池200が完成する。
【0120】
<1-5.作用および効果>
この二次電池(電極なし型の二次電池100および電極あり型の二次電池200)によれば、上層導電外装部材10と下層導電外装部材20との間に電池素子30が配置されており、その電池素子30がセパレータ34を介して互いに積層された複数の電極31を含んでいる。また、上層導電外装部材10と下層導電外装部材20との間において電池素子30の周囲領域のうちの一部または全部に封止部材40が配置されており、その封止部材40が接着層41(ポリオレフィン系樹脂)、絶縁層42(絶縁性樹脂)および接着層43(ポリオレフィン系樹脂)を含んでいる。
【0121】
この場合には、上記したように、絶縁層42により上層導電外装部材10と下層導電外装部材20との間の絶縁性が担保されながら、接着層41,43により上層導電外装部材10および下層導電外装部材20のそれぞれに対する封止部材40の密着性が向上する。これにより、上層導電外装部材10と下層導電外装部材20とが短絡しにくくなると共に、その上層導電外装部材10と下層導電外装部材20との間から電解液などが漏洩しにくくなる。よって、電解液などを用いた充放電反応が安定かつ継続的に進行するため、優れた電池特性を得ることができる。
【0122】
特に、ポリオレフィン系樹脂が酸変性ポリオレフィンを含んでいれば、接着層41,43のそれぞれの封止性および密着性が向上するため、より高い効果を得ることができる。
【0123】
また、絶縁性樹脂がポリエステル系樹脂などを含んでいれば、絶縁層42の絶縁性が担保される。よって、上層導電外装部材10と下層導電外装部材20とが十分に短絡しにくくなるため、より高い効果を得ることができる。
【0124】
また、正極32が正極活物質層32Bを含んでおり、上層導電外装部材10および下層導電外装部材20のうちの一方または双方が正極活物質層32Bに隣接されていれば、上層導電外装部材10および下層導電外装部材20のうちの一方または双方が正極32の集電体として利用されながら充放電反応が安定に進行するため、より高い効果を得ることができる。ここで説明した作用および効果は、負極33が負極活物質層33Bを含んでおり、上層導電外装部材10および下層導電外装部材20のうちの一方または双方が負極活物質層33Bに隣接されている場合においても、同様に得られる。
【0125】
また、正極32が正極集電体32Aおよび正極活物質層32Bを含んでおり、上層導電外装部材10および下層導電外装部材20のうちの一方または双方が正極集電体32Aに隣接されていれば、上層導電外装部材10および下層導電外装部材20のうちの一方または双方が正極32の集電体の一部として利用されながら充放電反応が安定に進行するため、より高い効果を得ることができる。ここで説明した作用および効果は、負極33が負極集電体33Aおよび負極活物質層33Bを含んでおり、上層導電外装部材10および下層導電外装部材20のうちの一方または双方が負極集電体33Aに隣接されている場合においても、同様に得られる。
【0126】
また、複数の電極31が正極32および負極33を含んでおり、最上層電極35が正極32および負極33のうちの一方であり、最下層電極36が正極32および負極33のうちの他方であれば、1個の正極32および1個の負極33を利用して充放電反応が安定に進行するため、より高い効果を得ることができる。
【0127】
また、複数の電極31が負極33、正極32および負極33を含んでおり、最上層電極35が2個の負極33のうちの一方であり、最下層電極36が2個の負極33のうちの他方であれば、1個の正極32および2個の負極33を利用して充放電反応が安定に進行するため、より高い効果を得ることができる。この場合には、正極端子32Tとして機能する電極端子50が正極32に接続されており、その電極端子50が上層導電外装部材10および下層導電外装部材20の間の領域よりも外部に導出されていれば、複数の電極31が1個の正極32および2個の負極33を含んでいる場合においても電極端子50を利用して充放電反応が安定に進行するため、さらに高い効果を得ることができる。
【0128】
また、複数の電極31が正極32、負極33および正極32を含んでおり、最上層電極35が2個の正極32のうちの一方であり、最下層電極36が2個の正極32のうちの他方であれば、2個の正極32および1個の負極33を利用して充放電反応が安定に進行するため、より高い効果を得ることができる。この場合には、負極端子33Tとして機能する電極端子50が負極33に接続されており、その電極端子50が上層導電外装部材10および下層導電外装部材20の間の領域よりも外部に導出されていれば、複数の電極31が2個の正極32および1個の負極33を含んでいる場合においても電極端子50を利用して充放電反応が安定に進行するため、さらに高い効果を得ることができる。
【0129】
また、複数の封止部材40が積層されていれば、電池素子30の周囲の封止性がより向上する。よって、電解液などがより漏洩しにくくなるため、より高い効果を得ることができる。
【0130】
<2.変形例>
次に、上記した二次電池の変形例に関して説明する。二次電池の構成は、以下で例示するように、適宜、変更可能である。ただし、以下で説明する一連の変形例のうちの任意の2種類以上は、互いに組み合わされてもよい。
【0131】
[変形例1]
図5および
図6に示した電極あり型の二次電池200では、上層導電外装部材10および下層導電外装部材20が互いに分離されている。このため、二次電池200の製造工程では、熱融着法などを用いて封止部材40(接着層41,43)のうちの4辺の外周縁部を上層導電外装部材10および下層導電外装部材20のそれぞれに接着させている。
【0132】
しかしながら、
図5に対応する
図22および
図6に対応する
図23に示したように、上層導電外装部材10および下層導電外装部材20が互いに連結されていてもよい。すなわち、二次電池200は、上層導電外装部材10および下層導電外装部材20の代わりに、双方の機能を兼ねる導電外装部材60を備えていてもよい。
【0133】
この導電外装部材60は、上層導電外装部材10および下層導電外装部材20の双方の機能を兼ねることができるように折り曲げられた1個の部材である。このため、導電外装部材60は、上層導電外装部材10に対応する導電外装部60Xと、下層導電外装部材20に対応する導電外装部60Yと、その導電外装部60X,60Yを互いに接続させる接続部60Zとを含んでいる。ここでは、導電外装部60X,60Yおよび接続部60Zは、全体で1個の部材であるため、互いに一体化されている。ただし、導電外装部60X,60Yおよび接続部60Zは、全体で2個の部材または3個の部材であるため、互いに別体化されていてもよい。
【0134】
なお、
図23では、図示内容を簡略化しているが、導電外装部材60の極性によっては、電池素子30と導電外装部材60(接続部60Z)との間に隙間が設けられていてもよい。すなわち、電池素子30は、導電外装部材60の極性に応じて、接続部60Zに隣接されていてもよいし、接続部60Zから離間されていてもよい。
【0135】
図22および
図23に示した電極端子あり型の二次電池200には、上記した構成例3~6の電池素子30が適用可能である。すなわち、二次電池200は、構成例3の電池素子30(
図14および
図15)を備えていてもよいし、構成例4の電池素子30(
図16および
図17)を備えていてもよいし、構成例5の電池素子30(
図18および
図19)を備えていてもよいし、構成例6の電池素子30(
図20および
図21)を備えていてもよい。
【0136】
二次電池200が構成例3,4の電池素子30を備えている場合には、最上層電極35である負極33および最下層電極36である負極33が導電外装部材60に隣接されるため、その導電外装部材60が負極33の集電体として機能する。負極33の集電体として機能する導電外装部材60の形成材料(導電性材料)に関する詳細は、上記した通りである。
【0137】
二次電池200が構成例5,6の電池素子30を備えている場合には、最上層電極35である正極32および最下層電極36である正極32が導電外装部材60に隣接されるため、その導電外装部材60が正極32の集電体として機能する。正極32の集電体として機能する導電外装部材60の形成材料(導電性材料)に関する詳細は、上記した通りである。
【0138】
この場合には、
図23に示したように、封止部材40の一部を除去してもよい。具体的には、封止部材40は、
図7に対応する
図24に示したように、接続部60Zに対応する部分が切断されていてもよい。すなわち、開口部40Kが導電外装部材60(接続部60Z)に到達するまで拡張されることにより、封止部材40が部分的に切断されていてもよい。接続部60Zを含む導電外装部材60を用いた場合には、その接続部60Zにより電池素子30が遮蔽(封止)されるからである。このため、接続部60Zにより電池素子30が遮蔽される場所には、封止部材40が配置されていなくてもよい。
【0139】
なお、封止部材40の一部を除去する代わりに、
図7に示した開口部40Kを有する封止部材40を用いる場合において、その開口部40Kを横切るようにY軸方向に延在する折り曲げ線Lに沿いながら、X軸方向において封止部材40を折り曲げてもよい。
【0140】
この二次電池200を製造する場合には、上層導電外装部材10および下層導電外装部材20の代わりに導電外装部材60を用いることを除いて、
図5および
図6に示した二次電池200の製造手順と同様の手順を行う。この場合には、導電外装部材60を折り曲げることにより、導電外装部60X,60Yの間に電池素子30および封止部材40を挟み込む。また、熱融着法などを用いて封止部材40(接着層41,43)のうちの3辺の外周縁部を上層導電外装部材10および下層導電外装部材20のそれぞれに接着させることにより、その上層導電外装部材10と下層導電外装部材20との間に電池素子30を封入する。
【0141】
この場合においても、封止部材40を利用して上層導電外装部材10と下層導電外装部材20との短絡が防止されながら電解液などの漏洩が抑制されるため、同様の効果を得ることができる。
【0142】
なお、
図23では、X軸方向における一方側(
図23中の左側)に接続部60Zが配置されているため、その接続部60Zを介して導電外装部60X,60Yが互いに接続されている。しかしながら、接続部60Zの設置位置(設置範囲を含む。)、すなわち導電外装部材60の折り曲げ位置は、その接続部60Zを介して導電外装部60X,60Yが互いに接続可能であれば、特に限定されない。
【0143】
具体的には、ここでは図示しないが、Y軸方向における一方側(
図23中の手前側)に接続部60Zが配置されているため、その接続部60Zを介して導電外装部60X,60Yが互いに接続されていてもよいし、Y軸方向における他方側(
図23中の奥側)に接続部60Zが配置されているため、その接続部60Zを介して導電外装部60X,60Yが互いに接続されていてもよい。
【0144】
もちろん、X軸方向における一方側(
図23中の左側)に配置された接続部60Zと、Y軸方向における一方側(
図23中の手前側)に配置された接続部60Zと、Y軸方向における他方側(
図23中の奥側)に配置された接続部60Zとのうちの任意の2個以上が配置されているため、その2個以上の接続部60Zを介して導電外装部60X,60Yが互いに接続されていてもよい。
【0145】
これに伴い、封止部材40は、
図24に示したように、1個の接続部60Zに応じて1箇所において部分的に除去されている場合に限られず、2個以上の接続部60Zに応じて2箇所以上において部分的に除去されていてもよい。
【0146】
[変形例2]
図16および
図17に示した構成例4の電池素子30では、最上層電極35である負極33(負極集電体33Aおよび負極活物質層33B)と最下層電極36である負極33(負極集電体33Aおよび負極活物質層33B)とが互いに分離されていると共に、2個のセパレータ34も互いに分離されている。
【0147】
しかしながら、
図16に対応する
図25および
図17に対応する
図26に示したように、最上層電極35である負極33(負極集電体33Aおよび負極活物質層33B)と最下層電極36である負極33(負極集電体33Aおよび負極活物質層33B)とが互いに連結されていると共に、2個のセパレータ34も互いに連結されていてもよい。すなわち、電池素子30は、2個の負極集電体33Aの機能を兼ねる負極集電体38Aと、2個の負極活物質層33Bの機能を兼ねる負極活物質層38Bと、2個のセパレータ34の機能を兼ねるセパレータ39を備えていてもよい。
【0148】
負極集電体38Aは、最上層電極35である負極33の集電体および最下層電極36である負極33の集電体の双方の機能を兼ねることができるように折り曲げられている。このため、負極集電体38Aは、最上層電極35である負極33の集電体に対応する集電部38AXと、最下層電極36である負極33の集電体に対応する集電部38AYと、その集電部38AX,38AYを互いに接続させる接続部38AZとを含んでいる。ここでは、集電部38AX,38AYおよび接続部38AZは、全体で1個の部材であるため、互いに一体化されている。ただし、集電部38AX,38AYおよび接続部38AZは、全体で2個の部材または3個の部材であるため、互いに別体化されていてもよい。
【0149】
負極活物質層38Bは、最上層電極35である負極33の活物質層および最下層電極36である負極33の活物質層の双方の機能を兼ねることができるように折り曲げられている。このため、負極活物質層38Bは、最上層電極35である負極33の活物質層に対応する活物質部38BXと、最下層電極36である負極33の活物質層に対応する活物質部38BYと、その活物質部38BX,38BYを互いに接続させる接続部38BZとを含んでいる。ここでは、活物質部38BX,38BYおよび接続部38BZは、全体で1個の部材であるため、互いに一体化されている。ただし、活物質部38BX,38BYおよび接続部38BZは、全体で2個の部材または3個の部材であるため、互いに別体化されていてもよい。
【0150】
この電池素子30を製造する場合には、負極集電体33A、負極活物質層33Bおよびセパレータ34の代わりに負極集電体38A、負極活物質層38Bおよびセパレータ39を用いることを除いて、
図16および
図17に示した電池素子30の製造手順と同様の手順を行う。この場合には、負極集電体38Aおよびセパレータ39のそれぞれを折り曲げると共に、その折り曲げられた負極集電体38Aに沿うように負極活物質層38Bを形成する。
【0151】
この場合においても、封止部材40を利用して上層導電外装部材10と下層導電外装部材20との短絡が防止されながら電解液などの漏洩が抑制されるため、同様の効果を得ることができる。
【0152】
なお、
図25では、Y軸方向における一方側(
図25中の左側)に接続部38AZが配置されているため、その接続部38AZを介して集電部38AX、38AYが互いに接続されている。しかしながら、接続部38AZの設置位置(設置範囲を含む。)、すなわち負極集電体38Aの折り曲げ位置は、その接続部38AZを介して集電部38AX,38AYが互いに接続可能であれば、特に限定されない。
【0153】
具体的には、ここでは図示しないが、X軸方向における一方側(
図25中の手前側)に接続部38AZが配置されているため、その接続部38AZを介して集電部38AX,38AYが互いに接続されていてもよいし、X軸方向における他方側(
図25中の奥側)に接続部38AZが配置されているため、その接続部38AZを介して集電部38AX,38AYが互いに接続されていてもよい。
【0154】
もちろん、Y軸方向における一方側(
図25中の左側)に配置された接続部38AZと、X軸方向における一方側(
図25中の手前側)に配置された接続部38AZと、X軸方向における他方側(
図25中の奥側)に配置された接続部38AZとのうちの任意の2個以上が配置されているため、その2個以上の接続部38AZを介して集電部38AX,38AYが互いに接続されていてもよい。
【0155】
ここで説明した接続部38AZの設置位置の変更に関する詳細は、接続部38BZに関しても適用可能である。すなわち、
図25では、Y軸方向における一方側(
図25中の左側)に接続部38BZが配置されているが、X軸方向における一方側(
図25中の手前側)に接続部38BZが配置されていてもよいし、X軸方向における他方側(
図25中の奥側)に接続部38BZが配置されていてもよい。もちろん、Y軸方向における一方側(
図25中の左側)に配置された接続部38BZと、X軸方向における一方側(
図25中の手前側)に配置された接続部38BZと、X軸方向における他方側(
図25中の奥側)に配置された接続部38BZとのうちの任意の2個以上が配置されていてもよい。
【0156】
なお、接続部60Zの位置と接続部38AZ,38BZのそれぞれの位置との関係は、任意に設定可能である。すなわち、接続部60Zの位置は、接続部38AZ,38BZのそれぞれの位置と同じもよいし、接続部38AZ,38BZのそれぞれの位置と異なってもよい。
【0157】
[変形例3]
同様に、
図14に対応する
図27および
図15に対応する
図28に示したように、構成例3の電池素子30において、最上層電極35である負極33(負極活物質層33B)と最下層電極36である負極33(負極活物質層33B)とが互いに連結されていてもよい。
図27および
図28に示した電池素子30の構成は、負極集電体38Aを備えていないことを除いて、
図25および
図26に示した電池素子30の構成と同様である。この場合においても、同様の効果を得ることができる。
【0158】
もちろん、変形例3においても、上記した変形例2において説明したように、接続部38BZの設置位置を変更してもよい。
【0159】
[変形例4]
図20および
図21に示した構成例6の電池素子30では、最上層電極35である正極32(正極集電体32Aおよび正極活物質層32B)と最下層電極36である正極32(正極集電体32Aおよび正極活物質層32B)とが互いに分離されていると共に、2個のセパレータ34も互いに分離されている。
【0160】
しかしながら、
図20に対応する
図29および
図21に対応する
図30に示したように、最上層電極35である正極32(正極集電体32Aおよび正極活物質層32B)と最下層電極36である正極32(正極集電体32Aおよび正極活物質層32B)とが互いに連結されていると共に、2個のセパレータ34も互いに連結されていてもよい。すなわち、電池素子30は、2個の正極集電体32Aの機能を兼ねる正極集電体37Aと、2個の正極活物質層32Bの機能を兼ねる正極活物質層37Bと、2個のセパレータ34の機能を兼ねるセパレータ39を備えていてもよい。
【0161】
正極集電体37Aは、最上層電極35である正極32の集電体および最下層電極36である正極32の集電体の双方の機能を兼ねることができるように折り曲げられている。このため、正極集電体37Aは、最上層電極35である正極32の集電体に対応する集電部37AXと、最下層電極36である正極32の集電体に対応する集電部37AYと、その集電部37AX,37AYを互いに接続させる接続部37AZとを含んでいる。ここでは、集電部37AX,37AYおよび接続部37AZは、全体で1個の部材であるため、互いに一体化されている。ただし、集電部37AX,37AYおよび接続部37AZは、全体で2個の部材または3個の部材であるため、互いに別体化されていてもよい。
【0162】
正極活物質層37Bは、最上層電極35である正極32の活物質層および最下層電極36である正極32の活物質層の双方の機能を兼ねることができるように折り曲げられている。このため、正極活物質層37Bは、最上層電極35である正極32の活物質層に対応する活物質部37BXと、最下層電極36である正極32の活物質層に対応する活物質部37BYと、その活物質部37BX,37BYを互いに接続させる接続部37BZとを含んでいる。ここでは、活物質部37BX,37BYおよび接続部37BZは、全体で1個の部材であるため、互いに一体化されている。ただし、活物質部37BX,37BYおよび接続部37BZは、全体で2個の部材または3個の部材であるため、互いに別体化されていてもよい。
【0163】
この電池素子30を製造する場合には、正極集電体32A、正極活物質層32Bおよびセパレータ34の代わりに正極集電体37A、正極活物質層37Bおよびセパレータ39を用いることを除いて、
図20および
図21に示した電池素子30の製造手順と同様の手順を行う。この場合には、正極集電体37Aおよびセパレータ39のそれぞれを折り曲げると共に、その折り曲げられた正極集電体37Aに沿うように正極活物質層37Bを形成する。
【0164】
この場合においても、封止部材40を利用して上層導電外装部材10と下層導電外装部材20との短絡が防止されながら電解液などの漏洩が抑制されるため、同様の効果を得ることができる。
【0165】
なお、
図29では、Y軸方向における一方側(
図29中の左側)に接続部37AZが配置されているため、その接続部37AZを介して集電部37AX、37AYが互いに接続されている。しかしながら、接続部37AZの設置位置(設置範囲を含む。)、すなわち正極集電体37Aの折り曲げ位置は、その接続部37AZを介して集電部37AX,37AYが互いに接続可能であれば、特に限定されない。
【0166】
具体的には、ここでは図示しないが、X軸方向における一方側(
図29中の手前側)に接続部37AZが配置されているため、その接続部37AZを介して集電部37AX,37AYが互いに接続されていてもよいし、X軸方向における他方側(
図29中の奥側)に接続部37AZが配置されているため、その接続部37AZを介して集電部37AX,37AYが互いに接続されていてもよい。
【0167】
もちろん、Y軸方向における一方側(
図29中の左側)に配置された接続部37AZと、X軸方向における一方側(
図29中の手前側)に配置された接続部37AZと、X軸方向における他方側(
図29中の奥側)に配置された接続部37AZとのうちの任意の2個以上が配置されているため、その2個以上の接続部37AZを介して集電部37AX,37AYが互いに接続されていてもよい。
【0168】
ここで説明した接続部37AZの設置位置の変更に関する詳細は、接続部37BZに関しても適用可能である。すなわち、
図29では、Y軸方向における一方側(
図29中の左側)に接続部37BZが配置されているが、X軸方向における一方側(
図29中の手前側)に接続部37BZが配置されていてもよいし、X軸方向における他方側(
図29中の奥側)に接続部37BZが配置されていてもよい。もちろん、Y軸方向における一方側(
図29中の左側)に配置された接続部37BZと、X軸方向における一方側(
図29中の手前側)に配置された接続部37BZと、X軸方向における他方側(
図29中の奥側)に配置された接続部37BZとのうちの任意の2個以上が配置されていてもよい。
【0169】
なお、接続部60Zの位置と接続部37AZ,37BZのそれぞれの位置との関係は、任意に設定可能である。すなわち、接続部60Zの位置は、接続部37AZ,37BZのそれぞれの位置と同じでもよいし、接続部37AZ,37BZのそれぞれの位置と異なってもよい。
【0170】
[変形例5]
同様に、
図18に対応する
図31および
図19に対応する
図32に示したように、構成例5の電池素子30において、最上層電極35である正極32(正極活物質層32B)と最下層電極36である正極32(正極活物質層32B)とが互いに連結されていてもよい。
図31および
図32に示した電池素子30の構成は、正極集電体37Aを備えていないことを除いて、
図29および
図30に示した電池素子30の構成と同様である。この場合においても、同様の効果を得ることができる。
【0171】
もちろん、変形例5においても、上記した変形例4において説明したように、接続部37BZの設置位置を変更してもよい。
【0172】
[変形例6]
変形例1の二次電池200の構成と、変形例2~5の電池素子30のうちのいずれかの構成とは、互いに組み合わされてもよい。
【0173】
具体的には、
図22~
図24に示した電極端子あり型の二次電池200に、
図25および
図26に示した変形例2の電池素子30が適用されてもよい。この場合には、二次電池200が導電外装部材60を備えていると共に、電池素子30が負極33(負極集電体38Aおよび負極活物質層38B)およびセパレータ39を備えている。
【0174】
また、
図22~
図24に示した電極端子あり型の二次電池200に、変形例3の電池素子30が適用されてもよい。この場合には、二次電池200が導電外装部材60を備えていると共に、電池素子30が負極33(負極活物質層38B)およびセパレータ39を備えている。
【0175】
また、
図22~
図24に示した電極端子あり型の二次電池200に、
図27および
図28に示した変形例4の電池素子30が適用されてもよい。この場合には、二次電池200が導電外装部材60を備えていると共に、電池素子30が正極32(正極集電体37Aおよび正極活物質層37B)およびセパレータ39を備えている。
【0176】
また、
図22~
図24に示した電極端子あり型の二次電池200に、変形例5の電池素子30が適用されてもよい。この場合には、二次電池200が導電外装部材60を備えていると共に、電池素子30が正極32(正極活物質層37B)およびセパレータ39を備えている。
【0177】
これらの場合においても、封止部材40を利用して複数の電極31(正極32および負極33)間の短絡が防止されながら電解液などの漏洩が抑制されるため、同様の効果を得ることができる。
【0178】
[変形例7]
図8に対応する
図33に示したように、封止部材40は、さらに、接着促進剤層44,45を備えていてもよい。
【0179】
接着促進剤層44は、接着層41と絶縁層42との間に介在する第1密着層であり、その接着層41と絶縁層42との密着性を向上させる。接着促進剤層45は、接着層43と絶縁層42との間に介在する第2密着層であり、その接着層43と絶縁層42との密着性を向上させる。接着促進剤層44,45のそれぞれは、接着促進剤を含んでおり、その接着促進剤は、イソシアネート系接着促進剤、ポリエチレンイミン系接着促進剤、ポリエステル系接着促進剤、ポリウレタン系接着促進剤およびポリブタジエン系接着促進剤のうちのいずれか1種類または2種類以上である。ただし、接着促進剤層44に含まれている接着促進剤層の種類と接着促進剤層45に含まれている接着促進剤との種類は、互いに同じでもよいし、互いに異なってもよい。
【0180】
中でも、接着促進剤は、イソシアネート系接着促進剤を含んでいることが好ましい。接着層41と絶縁層42との密着性が十分に向上すると共に、接着層43と絶縁層42との密着性が十分に向上するからである。
【0181】
この場合においても、封止部材40による封止性および絶縁性が担保されるため、同様の効果を得ることができる。この場合には、特に、接着層41,43のそれぞれが絶縁層42から剥離しにくくなるため、封止性を著しく向上させることができる。
【0182】
ただし、封止部材40は、接着促進剤層44,45のうちのいずれか一方だけを備えていてもよい。封止部材40が接着促進剤層44,45のうちのいずれか一方だけでも備えていれば、封止部材40が接着促進剤層44,45のうちのいずれも備えていない場合と比較して、封止部材40による封止性が向上するからである。
【0183】
[変形例8]
多孔質膜であるセパレータ34を用いた。しかしながら、ここでは具体的に図示しないが、多孔質膜であるセパレータ34の代わりに、高分子化合物層を含む積層型のセパレータを用いてもよい。
【0184】
具体的には、積層型のセパレータは、上記した多孔質膜である基材層と、その基材層の片面または両面に設けられた高分子化合物層とを含んでいる。正極32および負極33のそれぞれに対するセパレータの密着性が向上するため、電池素子30の位置ずれが発生しにくくなるからである。これにより、電解液の分解反応などが発生しても、二次電池100,200が膨れにくくなる。高分子化合物層は、ポリフッ化ビニリデンなどの高分子化合物を含んでいる。物理的強度に優れていると共に、電気化学的に安定だからである。
【0185】
なお、基材層および高分子化合物層のうちの一方または双方は、複数の無機粒子および複数の樹脂粒子などの複数の粒子のうちのいずれか1種類または2種類以上を含んでいてもよい。二次電池100,200の発熱時において複数の粒子が放熱するため、その二次電池100,200の耐熱性および安全性が向上するからである。複数の粒子は、酸化アルミニウム(アルミナ)、窒化アルミニウム、ベーマイト、酸化ケイ素(シリカ)、酸化チタン(チタニア)、酸化マグネシウム(マグネシア)および酸化ジルコニウム(ジルコニア)などのうちのいずれか1種類または2種類以上を含んでいる。
【0186】
積層型のセパレータを作製する場合には、高分子化合物および有機溶剤などを含む前駆溶液を調製したのち、基材層の片面または両面に前駆溶液を塗布する。
【0187】
この積層型のセパレータを用いた場合においても、正極32と負極33との間においてリチウムが移動可能になるため、同様の効果を得ることができる。
【0188】
[変形例9]
液状の電解質である電解液を用いた。しかしながら、ここでは具体的に図示しないが、電解液の代わりに、ゲル状の電解質である電解質層を用いてもよい。
【0189】
電解質層を用いた電池素子30では、セパレータ34および電解質層を介して正極32および負極33が互いに積層されている。この場合には、正極32とセパレータ34との間に電解質層が介在していると共に、負極33とセパレータ34との間に電解質層が介在している。
【0190】
具体的には、電解質層は、電解液と共に高分子化合物を含んでおり、その電解質層中では、電解液が高分子化合物により保持されている。電解液の構成は、上記した通りである。高分子化合物は、ポリフッ化ビニリデンなどを含んでいる。電解質層を形成する場合には、電解液、高分子化合物および有機溶剤などを含む前駆溶液を調製したのち、正極32および負極33の両面に前駆溶液を塗布する。
【0191】
この電解質層を用いた場合においても、正極32と負極33との間において電解質層を介してリチウムが移動可能になるため、同様の効果を得ることができる。
【0192】
ただし、正極32とセパレータ34との間に電解質層が介在しているのに対して、負極33とセパレータ34との間に電解質層が介在していなくてもよい。または、正極32とセパレータ34との間に電解質層が介在していないのに対して、負極33とセパレータ34との間に電解質層が介在していてもよい。
【0193】
<3.二次電池の用途>
次に、上記した二次電池の用途(適用例)に関して説明する。
【0194】
二次電池の用途は、主に、駆動用の電源または電力蓄積用の電力貯蔵源などとして二次電池を利用可能である機械、機器、器具、装置およびシステム(複数の機器などの集合体)などであれば、特に限定されない。電源として用いられる二次電池は、主電源でもよいし、補助電源でもよい。主電源とは、他の電源の有無に関係なく、優先的に用いられる電源である。補助電源は、主電源の代わりに用いられる電源でもよいし、必要に応じて主電源から切り替えられる電源でもよい。二次電池を補助電源として用いる場合には、主電源の種類は二次電池に限られない。
【0195】
二次電池の用途の具体例は、以下の通りである。ビデオカメラ、デジタルスチルカメラ、携帯電話機、ノート型パソコン、コードレス電話機、ヘッドホンステレオ、携帯用ラジオ、携帯用テレビおよび携帯用情報端末などの電子機器(携帯用電子機器を含む。)である。電気シェーバなどの携帯用生活器具である。バックアップ電源およびメモリーカードなどの記憶用装置である。電動ドリルおよび電動鋸などの電動工具である。着脱可能な電源としてノート型パソコンなどに搭載される電池パックである。ペースメーカおよび補聴器などの医療用電子機器である。電気自動車(ハイブリッド自動車を含む。)などの電動車両である。非常時などに備えて電力を蓄積しておく家庭用バッテリシステムなどの電力貯蔵システムである。なお、二次電池の電池構造は、上記したラミネートフィルム型および円筒型でもよいし、それら以外の他の電池構造でもよい。また、電池パックおよび電池モジュールなどとして、複数の二次電池が用いられてもよい。
【0196】
中でも、電池パックおよび電池モジュールは、電動車両、電力貯蔵システムおよび電動工具などの比較的大型の機器などに適用されることが有効である。電池パックは、後述するように、単電池を用いてもよいし、組電池を用いてもよい。電動車両は、二次電池を駆動用電源として作動(走行)する車両であり、上記したように、二次電池以外の駆動源を併せて備えた自動車(ハイブリッド自動車など)でもよい。電力貯蔵システムは、二次電池を電力貯蔵源として用いるシステムである。家庭用の電力貯蔵システムでは、電力貯蔵源である二次電池に電力が蓄積されているため、その電力を利用して家庭用の電気製品などを使用可能である。
【0197】
ここで、二次電池のいくつかの適用例に関して具体的に説明する。以下で説明する適用例の構成は、あくまで一例であるため、適宜、変更可能である。
【0198】
<3-1.電池パック(単電池)>
図34は、単電池を用いた電池パックのブロック構成を表している。ここで説明する電池パックは、1個の二次電池を用いた簡易型の電池パック(いわゆるソフトパック)であり、スマートフォンに代表される電子機器などに搭載される。
【0199】
この電池パックは、
図34に示したように、電源61と、回路基板62とを備えている。この回路基板62は、電源61に接続されていると共に、正極端子63、負極端子64および温度検出端子(いわゆるT端子)65を含んでいる。
【0200】
電源61は、1個の二次電池を含んでいる。この二次電池では、正極リードが正極端子63に接続されていると共に、負極リードが負極端子64に接続されている。この電源61は、正極端子63および負極端子64を介して外部と接続可能であるため、その正極端子63および負極端子64を介して充放電可能である。回路基板62は、制御部66と、スイッチ67と、PTC素子68と、温度検出部69とを含んでいる。ただし、PTC素子68は省略されてもよい。
【0201】
制御部66は、中央演算処理装置(CPU:Central Processing Unit )およびメモリなどを含んでおり、電池パック全体の動作を制御する。この制御部66は、必要に応じて電源61の使用状態の検出および制御を行う。
【0202】
なお、制御部66は、電源61(二次電池)の電池電圧が過充電検出電圧または過放電検出電圧に到達すると、スイッチ67を切断させることにより、電源61の電流経路に充電電流が流れないようにする。また、制御部66は、充電時または放電時において大電流が流れると、スイッチ67を切断させることにより、充電電流を遮断する。過充電検出電圧および過放電検出電圧は、特に限定されない。一例を挙げると、過充電検出電圧は、4.2V±0.05Vであると共に、過放電検出電圧は、2.4V±0.1Vである。
【0203】
スイッチ67は、充電制御スイッチ、放電制御スイッチ、充電用ダイオードおよび放電用ダイオードなどを含んでおり、制御部66の指示に応じて電源61と外部機器との接続の有無を切り換えるスイッチ部である。このスイッチ67は、金属酸化物半導体を用いた電界効果トランジスタ(MOSFET:Metal-Oxide-Semiconductor Field-Effect Transistor )などを含んでおり、充放電電流は、スイッチ67のON抵抗に基づいて検出される。
【0204】
温度検出部69は、サーミスタなどの温度検出素子を含んでおり、温度検出端子65を用いて電源61の温度を測定すると共に、その温度の測定結果を制御部66に出力する。温度検出部69により測定される温度の測定結果は、異常発熱時において制御部66が充放電制御を行う場合および残容量の算出時において制御部66が補正処理を行う場合などに用いられる。
【0205】
<3-2.電池パック(組電池)>
図35は、組電池を用いた電池パックのブロック構成を表している。以下の説明では、随時、単電池を用いた電池パック(
図34)の構成要素を引用する。
【0206】
この電池パックは、
図35に示したように、正極端子81および負極端子82を含んでいる。具体的には、電池パックは、筐体70の内部に、制御部71と、電源72と、スイッチ部であるスイッチ73と、電流測定部74と、温度検出部75と、電圧検出部76と、スイッチ制御部77と、メモリ78と、温度検出素子79と、電流検出抵抗80とを備えている。
【0207】
電源72は、2個以上の二次電池が互いに接続された組電池を含んでおり、その2個以上の二次電池の接続形式は、特に限定されない。このため、接続方式は、直列でもよいし、並列でもよいし、双方の混合型でもよい。一例を挙げると、電源72は、2並列3直列となるように互いに接続された6個の二次電池を含んでいる。
【0208】
制御部71、スイッチ73、温度検出部75および温度検出素子79の構成は、制御部66、スイッチ67および温度検出部69(温度検出素子)の構成と同様である。電流測定部74は、電流検出抵抗80を用いて電流を測定すると共に、その電流の測定結果を制御部71に出力する。電圧検出部76は、電源72(二次電池)の電池電圧を測定すると共に、アナログ-デジタル変換された電圧の測定結果を制御部71に供給する。
【0209】
スイッチ制御部77は、電流測定部74および電圧検出部76から入力される信号に応じてスイッチ73の動作を制御する。このスイッチ制御部77は、電池電圧が過充電検出電圧または過放電検出電圧に到達すると、スイッチ73(充電制御スイッチ)を切断させることにより、電源72の電流経路に充電電流が流れないようにする。これにより、電源72では、放電用ダイオードを介して放電だけが可能になり、または充電用ダイオードを介して充電だけが可能になる。また、スイッチ制御部77は、充電時または放電時において大電流が流れると、充電電流または放電電流を遮断する。
【0210】
なお、スイッチ制御部77を省略することにより、制御部71がスイッチ制御部77の機能を兼ねてもよい。過充電検出電圧および過放電検出電圧は、特に限定されないが、単電池を用いた電池パックに関して説明した場合と同様である。
【0211】
メモリ78は、不揮発性メモリであるEEPROM(Electrically Erasable Programmable Read-Only Memory )などを含んでおり、そのメモリ78には、制御部71により演算された数値および製造工程において測定された二次電池の情報(初期状態の内部抵抗、満充電容量および残容量など)などが記憶されている。
【0212】
正極端子81および負極端子82は、電池パックを用いて稼働する外部機器(ノート型のパーソナルコンピュータなど)および電池パックを充電するために用いられる外部機器(充電器など)などに接続される端子である。電源72(二次電池)は、正極端子81および負極端子82を介して充放電可能である。
【0213】
<3-3.電動車両>
図36は、電動車両の一例であるハイブリッド自動車のブロック構成を表している。この電動車両は、
図36に示したように、筐体90の内部に、制御部91と、エンジン92と、電源93と、モータ94と、差動装置95と、発電機96と、トランスミッション97およびクラッチ98と、インバータ99,101と、各種センサ102とを備えている。また、電動車両は、差動装置95およびトランスミッション97に接続された前輪用駆動軸103および一対の前輪104と、後輪用駆動軸105および一対の後輪106とを備えている。
【0214】
この電動車両は、エンジン92およびモータ94のうちのいずれか一方を駆動源として用いて走行可能である。エンジン92は、ガソリンエンジンなどの主要な動力源である。エンジン92を動力源とする場合には、駆動部である差動装置95、トランスミッション97およびクラッチ98を介してエンジン92の駆動力(回転力)が前輪104および後輪106に伝達される。なお、エンジン92の回転力が発電機96に伝達されるため、その回転力を利用して発電機96が交流電力を発生させると共に、その交流電力がインバータ101を介して直流電力に変換されるため、その直流電力が電源93に蓄積される。一方、変換部であるモータ94を動力源とする場合には、電源93から供給された電力(直流電力)がインバータ99を介して交流電力に変換されるため、その交流電力を利用してモータ94が駆動する。モータ94により電力から変換された駆動力(回転力)は、駆動部である差動装置95、トランスミッション97およびクラッチ98を介して前輪104および後輪106に伝達される。
【0215】
なお、制動機構を介して電動車両が減速すると、その減速時の抵抗力がモータ94に回転力として伝達されるため、その回転力を利用してモータ94が交流電力を発生させてもよい。この交流電力は、インバータ99を介して直流電力に変換されるため、その直流回生電力は、電源93に蓄積される。
【0216】
制御部91は、CPUなどを含んでおり、電動車両全体の動作を制御する。電源93は、1個または2個以上の二次電池を含んでおり、外部電源と接続されている。この場合には、電源93は、外部電源から電力を供給されることにより、電力を蓄積させてもよい。各種センサ102は、エンジン92の回転数を制御すると共に、スロットルバルブの開度(スロットル開度)を制御するために用いられる。この各種センサ102は、速度センサ、加速度センサおよびエンジン回転数センサなどのうちのいずれか1種類または2種類以上を含んでいる。
【0217】
なお、電動車両がハイブリッド自動車である場合を例に挙げたが、その電動車両は、エンジン92を用いずに電源93およびモータ94だけを用いて作動する車両(電気自動車)でもよい。
【0218】
<3-4.その他>
ここでは具体的に図示しないが、二次電池の適用例としては他の適用例も考えられる。
【0219】
具体的には、二次電池は、電力貯蔵システムに適用可能である。この電力貯蔵システムは、一般住宅および商業用ビルなどの家屋の内部に、制御部と、1個または2個以上の二次電池を含む電源と、スマートメータと、パワーハブとを備えている。
【0220】
電源は、家屋の内部に設置された冷蔵庫などの電気機器に接続されていると共に、その家屋の外部に停車されたハイブリッド自動車などの電動車両に接続可能である。また、電源は、家屋に設置された太陽光発電機などの自家発電機にパワーハブを介して接続されていると共に、スマートメータおよびパワーハブを介して外部の火力発電所などの集中型電力系統に接続されている。
【0221】
または、二次電池は、電動ドリルおよび電動鋸などの電動工具に適用可能である。この電動工具は、ドリル部および鋸刃部などの可動部が取り付けられた筐体の内部に、制御部と、1個または2個以上の二次電池を含む電源とを備えている。
【実施例0222】
本技術の実施例に関して説明する。
【0223】
(実験例1~10)
図1~
図3に示した電極端子なし型の二次電池100と、
図4~
図6に示した電極端子あり型の二次電池200とを作製したのち、その二次電池100,200の電池特性を評価した。
【0224】
[二次電池の作製]
以下で説明する手順により、構成例2の電池素子30を用いた二次電池100を作製したと共に、構成例4,6のそれぞれの電池素子30を用いた二次電池200を作製した。
【0225】
(構成例2の電池素子を用いた電極端子なし型の二次電池の作製)
最初に、正極32を作製した。この場合には、最初に、正極活物質(LiCoO2 )91質量部と、正極結着剤(ポリフッ化ビニリデン)3質量部と、正極導電剤(黒鉛)6質量部とを混合することにより、正極合剤とした。続いて、有機溶剤(N-メチル-2-ピロリドン)に正極合剤を投入したのち、その有機溶剤を撹拌することにより、ペースト状の正極合剤スラリーを調製した。続いて、コーティング装置を用いて、突出部32Cを含んでいない正極集電体32A(アルミニウム箔,厚さ=12μm)の片面に正極合剤スラリーを塗布したのち、その正極合剤スラリーを乾燥させることにより、正極活物質層32Bを形成した。最後に、ロールプレス機を用いて正極活物質層32Bを圧縮成型した。これにより、正極集電体32Aの片面に正極活物質層32Bが形成されたため、正極32が作製された。
【0226】
次に、負極33を作製した。この場合には、最初に、負極活物質(黒鉛)93質量部と、正極結着剤(ポリフッ化ビニリデン)7質量部とを混合することにより、負極合剤とした。続いて、有機溶剤(N-メチル-2-ピロリドン)に負極合剤を投入したのち、その有機溶剤を撹拌することにより、ペースト状の負極合剤スラリーを調製した。続いて、コーティング装置を用いて、突出部33Cを含んでいない負極集電体33A(銅箔,厚さ=15μm)の片面に負極合剤スラリーを塗布したのち、その負極合剤スラリーを乾燥させることにより、負極活物質層33Bを形成した。最後に、ロールプレス機を用いて負極活物質層33Bを圧縮成型した。これにより、負極集電体33Aの両面に負極活物質層33Bが形成されたため、負極33が作製された。
【0227】
次に、電解液を調製した。この場合には、溶媒(炭酸エチレンおよび炭酸エチルメチル)に電解質塩(六フッ化リン酸リチウム)を投入したのち、その溶媒を撹拌した。溶媒の混合比(重量比)は、炭酸エチレン:炭酸エチルメチル=50:50とした。電解質塩の含有量は、溶媒に対して1mol/kgとした。これにより、溶媒中において電解質塩が分散または溶解されたため、電解液が調製された。
【0228】
最後に、正極32、負極33および電解液を用いて二次電池100を組み立てた。最初に、電解液が含浸されたセパレータ34(多孔質ポリエチレンフィルム,厚さ=15μm)を介して正極32および負極33を互いに積層させた。この場合には、正極活物質層32Bおよび負極活物質層33Bがセパレータ34を介して互いに対向するように、正極32および負極33のそれぞれの向きを調整した。これにより、電解液の一部が正極32および負極33のそれぞれに含浸されたため、
図12および
図13に示したように、最上層電極35が正極32であると共に最下層電極36が負極33である構成例2の電池素子30が作製された。
【0229】
続いて、上層導電外装部材10と下層導電外装部材20との間に、
図7および
図8に示した封止部材40(40M)を介して電池素子30を配置した。この場合には、開口部40Kの内部に電池素子30が収容されることにより、その電池素子30が上層導電外装部材10および下層導電外装部材20により封止部材40を介して挟まれるようにした。ここでは、
図8に示したように、接着層41,43および絶縁層42を含む多層構造を有する封止部材40を用いた。この場合には、表1に示したように、封止部材40Mの使用枚数を1枚または2枚とした。2枚の封止部材40Mを用いる場合には、その2枚の封止部材40を互いに積層させた。上層導電外装部材10、下層導電外装部材20および封止部材40のそれぞれの詳細な構成(材質、厚さ(μm)、層構造および種類)は、表1に示した通りである。
【0230】
封止部材40の「種類」に関する詳細は、以下で説明する通りである。「40M×1」は、1個の封止部材40Mを用いたことを表している。「40M×2」は、2個の封止部材40Mを用いたことを表している。
【0231】
接着層41,43のそれぞれとしては、酸変性ポリオレフィンであるマレイン酸変性ポリプロピレン(PP:Polypropylene )フィルムを用いた。絶縁層42としては、フッ素系樹脂であるエチレンとテトラフルオロエチレンとの共重合体(ETFE:Ethylene-tetrafluoroethylene)フィルムを用いた。
【0232】
最後に、熱融着法を用いて、接着層41を上層導電外装部材10に接着させると共に、接着層43を下層導電外装部材20に接着させた。これにより、上層導電外装部材10と下層導電外装部材20との間に電池素子30が挟まれた状態において、その上層導電外装部材10と下層導電外装部材20との間の隙間(電池素子30の周囲領域)が封止されたため、
図1~
図3に示したように、電極端子なし型の二次電池100が完成した。
【0233】
(構成例4の電池素子を用いた電極端子あり型の二次電池の作製)
以下で説明することを除いて、構成例2の電池素子30を用いた電極端子なし型の二次電池100の作製手順と同様の手順を経ることにより、構成例4の電池素子30を用いた電極端子あり型の二次電池200を作製した。
【0234】
正極32を作製する場合には、突出部32C(正極端子32Tとして機能する電極端子50)を含んでいる正極集電体32A(アルミニウム箔,厚さ=12μm)を用いて、その正極集電体32Aの両面(突出部32Cを除く。)に正極活物質層32Bを形成した。
【0235】
電池素子30を作製する場合には、電解液が含浸された2個のセパレータ34を介して1個の正極32および2個の負極33を互いに積層させると共に、
図7~
図9に示した封止部材40(40M,40N)を用いた。この場合には、正極活物質層32Bおよび負極活物質層33Bがセパレータ34を介して互いに対向するように、正極32および負極33のそれぞれの向きを調整した。これにより、
図16および
図17に示したように、最上層電極35が負極33であると共に最下層電極36が負極33である構成例4の電池素子30が作製された。
【0236】
上層導電外装部材10、下層導電外装部材20および封止部材40のそれぞれの詳細な構成は、表1に示した通りである。
【0237】
封止部材40の「種類」に関する詳細は、以下で説明する通りである。「40M×2」は、上記したように、2個の封止部材40Mを用いたことを表している。「40M+40N」は、1個の封止部材40Mと1個の封止部材40Nとを併用したことを表している。
【0238】
(構成例6の電池素子を用いた電極端子あり型の二次電池の作製)
以下で説明することを除いて、構成例2の電池素子30を用いた電極端子なし型の二次電池100の作製手順と同様の手順を経ることにより、構成例6の電池素子30を用いた電極端子あり型の二次電池200を作製した。
【0239】
負極33を作製する場合には、突出部33C(負極端子33Tとして機能する電極端子50)を含んでいる負極集電体33A(銅箔,厚さ=15μm)を用いて、その負極集電体33Aの両面(突出部33Cを除く。)に負極活物質層33Bを形成した。
【0240】
電池素子30を作製する場合には、電解液が含浸された2個のセパレータ34を介して2個の正極32および1個の負極33を互いに積層させると共に、
図7~
図9に示した封止部材40(40M,40N)を用いた。この場合には、正極活物質層32Bおよび負極活物質層33Bがセパレータ34を介して互いに対向するように、正極32および負極33のそれぞれの向きを調整した。これにより、
図20および
図21に示したように、最上層電極35が正極32であると共に最下層電極36が正極32である構成例6の電池素子30が作製された。
【0241】
上層導電外装部材10、下層導電外装部材20および封止部材40のそれぞれの詳細な構成は、表1に示した通りである。
【0242】
(比較例の電池素子を用いた二次電池の作製)
比較のために、以下で説明する電極端子なし型の二次電池100および電極端子あり型の二次電池200も作製した。
【0243】
第1に、外装部材として上層導電外装部材10および下層導電外装部材20の代わりにラミネートフィルムを用いると共に、電池素子30に追加の電極端子を接続させたことを除いて、構成例2の電池素子30を用いた電極なし型の二次電池100の作製手順と同様の手順を経た。
【0244】
ラミネートフィルムを用いて二次電池100を組み立てる場合には、最初に、2枚のラミネートフィルムを準備した。ラミネートフィルムの構成は、表1に示した通りであり、そのラミネートフィルムは、内層(ポリエチレン(PE:Polyethylene)フィルム)、金属層(アルミニウム箔)および外層(PEフィルム)がこの順に積層された金属ラミネートフィルムである。続いて、2枚のラミネートフィルムの間に電池素子30を配置した。最後に、熱融着法を用いて各ラミネートフィルム(内層)の外周縁部を加熱することにより、そのラミネートフィルムの外周縁部同士を互いに接着させた。この場合には、溶接法を用いて正極集電体32Aにアルミニウム製のリード線の一端部を接続させると共に、そのリード線の他端部をラミネールフィルムの外部に導出させた。また、溶接法を用いて負極集電体33Aに銅製のリード線の一端部を接続させると共に、そのリード線の他端部をラミネールフィルムの外部に導出させた。
【0245】
第2に、多層構造の封止部材40(接着層41,43および絶縁層42)の代わりに単層構造の封止部材40(PEフィルム)を用いたことを除いて、構成例4,6のそれぞれの電池素子30を用いた電極あり型の二次電池200の作製手順と同様の手順を経た。単層の封止部材40の構成は、表1に示した通りである。
【0246】
【0247】
[電池特性の評価]
二次電池100,200の電池特性(密閉特性およびサイクル特性)を評価したところ、表1に示した結果が得られた。
【0248】
密閉特性を調べる場合には、最初に、上記した作製手順により、100μl(=100mm3 )の電解液を用いて二次電池100,200を作製したのち、その二次電池100,200の重量(保存前の重量)を測定した。続いて、恒温槽(温度=60℃)中において二次電池100,200を保存(保存時間=90日間)したのち、その二次電池100,200の重量(保存後の重量)を測定した。最後に、重量変化率(%)=[(保存後の重量-保存前の重量)/保存前の重量]×100を算出した。
【0249】
サイクル特性を調べる場合には、最初に、二次電池の状態を安定化させるために、常温環境中(温度=23℃)において二次電池を1サイクル充放電させた。続いて、同環境中において二次電池を1サイクル充放電させることにより、2サイクル目の放電容量を測定した。続いて、同環境中において充放電サイクル数が500サイクルに到達するまで二次電池を繰り返して充放電させることにより、500サイクル目の放電容量を測定した。最後に、容量維持率(%)=(500サイクル目の放電容量/2サイクル目の放電容量)×100を算出した。
【0250】
充電時には、0.5Cの電流で電圧が4.20Vに到達するまで定電流充電したのち、その4.20Vの電圧で電流が0.02Cに到達するまで定電圧充電した。放電時には、0.2Cの電流で電圧が3.00Vに到達するまで定電流放電した。0.5Cとは電池容量(理論容量)を2時間で放電しきる電流値であり、0.02Cとは上記した電池容量を50時間で放電しきる電流値であり、0.2Cとは上記した電池容量を5時間で放電しきる電流値である。
【0251】
[考察]
表1から明らかなように、電池特性は、封止部材40の構成に応じて大きく変動した。
【0252】
具体的には、いわゆるラミネートフィルム型の二次電池に用いられるラミネートフィル(金属ラミネートフィルム)を用いた場合(実験例7)には、重量変化率が2桁に到達したと共に、容量維持率が70%台まで減少した。この原因は、二次電池の封止状態が十分でないことに起因して、保存期間中において金属ラミネートフィルム中の隙間を経由して二次電池の内部から外部に電解液が流出したため、その二次電池の内部に残存している電解液の量が減少したからであると考えられる。
【0253】
また、単層の封止部材40を用いた場合(実験例8~10)には、上記したラミネートフィルムを用いた場合(実験例7)と比較して、重量変化率がより増加したと共に、容量維持率がより減少した。この原因は、二次電池の封止状態が不足していることに起因して、保存期間中において電解液の流出量が増加したため、その電解液の残存量が減少したからであると考えられる。
【0254】
これに対して、多層(接着層/絶縁層/接着層)の封止部材40を用いた場合(実験例1,3,5)には、上記したラミネートフィルムを用いた場合(実験例7)と比較して、重量変化率が大幅に減少したと共に、容量維持率が大幅に増加した。具体的には、多層の封止部材40を用いたところ、重量変化率が1桁台の前半まで抑えられたと共に、90%以上の高い容量維持率が得られた。この原因は、二次電池の封止状態が十分であることに起因して、保存期間中において電解液の流出量が大幅に減少したため、その電解液の残存量が大幅に増加したからであると考えられる。
【0255】
特に、電極端子なし型の二次電池100において、2個の封止部材40Mを用いた場合(実験例2)には、1個の封止部材40Mを用いた場合(実験例1)と比較して、重量変化率がより減少したと共に、容量維持率がより増加した。また、電極あり型の二次電池200において、2個の封止部材40Mを用いた場合(実験例4,6)には、封止部材40M,40Nを併用した場合(実験例3,5)と比較して、重量変化率がより減少したと共に、容量維持率がより増加した。
【0256】
[まとめ]
表1に示した結果から、二次電池(電極なし型の二次電池100および電極あり型の二次電池200)において、上層導電外装部材10と下層導電外装部材20との間に、セパレータ34を介して互いに積層された複数の電極31を含む電池素子30が配置されていると共に、上層導電外装部材10と下層導電外装部材20との間において電池素子30の周囲領域のうちの一部または全部に、接着層41(ポリオレフィン系樹脂)、絶縁層42(絶縁性樹脂)および接着層43(ポリオレフィン系樹脂)を含む封止部材40が配置されていると、優れた密閉性が得られたため、優れたサイクル特性も得られた。よって、二次電池において優れた電池特性が得られた。
【0257】
以上、一実施形態および実施例を挙げながら本技術に関して説明したが、その本技術の構成は、一実施形態および実施例において説明された構成に限定されないため、種々に変形可能である。
【0258】
具体的には、電池素子の素子構造が積層型である場合に関して説明したが、その電池素子の素子構造は、特に限定されない。具体的には、電池素子の素子構造は、電極(正極および負極)などが巻回されている巻回構造でもよいし、電極などがジグザグに折り畳まれている九十九折り型などでもよい。
【0259】
また、リチウムの吸蔵および放出を利用して電池容量が得られるリチウムイオン二次電池に関して説明したが、その二次電池の種類は、特に限定されない。具体的には、二次電池の種類は、リチウムの析出および溶解を利用して電池容量が得られるリチウム金属二次電池でもよい。また、二次電池の種類は、リチウムの吸蔵および放出を利用した電池容量と、リチウムの析出および溶解を利用した電池容量との双方が得られる二次電池でもよい。この場合には、負極活物質としてリチウムを吸蔵および放出する材料が用いられると共に、負極活物質の充電可能な容量が正極活物質の放電容量よりも小さくなるように設定される。
【0260】
また、電極反応物質がリチウムである場合に関して説明したが、その電極反応物質は、特に限定されない。具体的には、電極反応物質は、リチウム以外の他の軽金属でもよい。この軽金属は、ナトリウムおよびカリウムなどの他のアルカリ金属でもよいし、ベリリウム、マグネシウムおよびカルシウムなどのアルカリ土類金属でもよいし、アルミニウムなどの他の軽金属でもよい。
【0261】
本明細書中に記載された効果は、あくまで例示であるため、本技術の効果は、本明細書中に記載された効果に限定されない。よって、本技術に関して、他の効果が得られてもよい。
10…上層導電外装部材、20…下層導電外装部材、30…電池素子、31…電極、32…正極、32A,37A…正極集電体、32B,37B…正極活物質層、32C,33C…突出部、32T…正極端子、33…負極、33A,38A…負極集電体、33B,38B…負極活物質層、33T…負極端子、34,39…セパレータ、35…最上層電極、36…最下層電極、40(40M,40N)…封止部材、41,43…接着層、42…絶縁層、50…電極端子、60…導電外装部材、100,200…二次電池、D…対向方向。