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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023016587
(43)【公開日】2023-02-02
(54)【発明の名称】車両用空調装置
(51)【国際特許分類】
   B60H 1/22 20060101AFI20230126BHJP
   B60H 1/00 20060101ALI20230126BHJP
   B60H 1/32 20060101ALI20230126BHJP
【FI】
B60H1/22 651C
B60H1/00 103H
B60H1/32 623Z
B60H1/32 626B
B60H1/32 623C
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021121011
(22)【出願日】2021-07-21
(71)【出願人】
【識別番号】000001845
【氏名又は名称】サンデン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000383
【氏名又は名称】弁理士法人エビス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松村 尭之
(72)【発明者】
【氏名】大庭 健三
(72)【発明者】
【氏名】清水 宣伯
【テーマコード(参考)】
3L211
【Fターム(参考)】
3L211AA10
3L211AA11
3L211BA06
3L211BA14
3L211DA04
3L211DA28
3L211EA16
3L211EA38
3L211FB05
3L211GA04
3L211GA26
3L211GA34
(57)【要約】
【課題】運転モードの遷移時において、車室内へ供給される空気の吹出温度の変動を抑制し、吹出温度を安定させる。
【解決手段】冷媒を圧縮する圧縮機を備え、圧縮した冷媒を凝縮・減圧・蒸発させる冷媒回路と、前記冷媒の熱を車室内に供給する空気に熱交換するための熱交換器を備え、前記熱交換器にて熱交換する空気の空気流通路に内気又は外気の割合を切り換えて導入する内外気切換装置を備える車室内空調ユニットと、前記冷媒回路を制御すると共に前記内外気切換装置を制御する制御装置とを備える車両用空調装置において、前記制御装置は、同一の空調目的を有し前記冷媒回路の冷媒流路を切り換える複数の運転モードを選択的に実行可能であり、前記運転モードの遷移に対応して、前記圧縮機の回転数を低下させると共に、前記内外気切換装置を内気循環に切り換える、車両用空調装置を提供する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷媒を圧縮する圧縮機を備え、圧縮した冷媒を凝縮・減圧・蒸発させる冷媒回路と、
前記冷媒の熱を車室内に供給する空気に熱交換するための熱交換器を備え、前記熱交換器にて熱交換する空気の空気流通路に内気又は外気の割合を切り換えて導入する内外気切換装置を備える車室内空調ユニットと、
前記冷媒回路を制御すると共に前記内外気切換装置を制御する制御装置とを備える車両用空調装置において、
前記制御装置は、同一の空調目的を有し前記冷媒回路の冷媒流路を切り換える複数の運転モードを選択的に実行可能であり、前記運転モードの遷移に対応して、前記圧縮機の回転数を低下させると共に、前記内外気切換装置を内気循環に切り換える車両用空調装置。
【請求項2】
前記制御装置は、前記内外気切換装置を内気循環に切り換えた後に、前記圧縮機の回転数を所定時間低下させる請求項1記載の車両用空調装置。
【請求項3】
前記制御装置は、前記圧縮機の回転数を所定時間低下させた後、所定の条件を満たす場合に、前記内外気切換装置を外気導入に切り換える、請求項2記載の車両用空調装置。
【請求項4】
前記制御装置は、前記内外気切換装置を外気導入に切り換えるタイミングに合わせて前記圧縮機の回転数を増加させる、請求項3記載の車両用空調装置。
【請求項5】
前記制御装置は、前記圧縮機の回転数を所定時間減少させた後、所定の条件に従って、前記圧縮機の回転数を段階的に増加させる、請求項3記載の車両用空調装置。
【請求項6】
前記制御装置は、前記車室内に供給する空気の温度が所定温度を超えた場合に、前記内外気切換装置を外気導入に切り換える、請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の車両用空調装置。
【請求項7】
前記運転モードの遷移は、前記空気流通路に導入する空気の少なくとも一部を外気として空調を行う運転モードから、該運転モードと同一の空調目的を有する他の運転モードへの遷移である、請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の車両用空調装置。
【請求項8】
前記空調目的は、車室内の暖房であり、
前記運転モードは、前記冷媒回路の冷媒に室外熱交換器によって吸熱を行う外気吸熱暖房モードと、前記冷媒回路の冷媒に温調対象物用熱交換器によって吸熱を行う廃熱回収暖房モードとを含み、
前記制御装置は、前記外気吸熱暖房モードから前記廃熱回収暖房モードへの遷移に対応して、前記圧縮機の回転数を低下させると共に、前記内外気切換装置を内気循環に切り換える、請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の車両用空調装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に適用されるヒートポンプ式の車両用空調装置であって、同一の空調目的について複数の運転モードを有する車両用空調装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、圧縮機、室内熱交換器、室外熱交換器、及び膨張弁が接続された冷媒回路を備え、室内熱交換器において冷媒と熱交換した空気を車室内に供給して車室内の空調を行うヒートポンプ式の車両用空調装置が知られている。
【0003】
このような車両用空調装置において、例えば、冷媒回路に温調対象物用熱交換器を設け、温調対象物の廃熱を回収して暖房運転に利用するものがある。例えば、特許文献1の車両用空調装置では、暖房運転時の冷媒の吸熱源を、室外熱交換器とする外気吸熱モードと、冷媒-熱媒体熱交換器とする廃熱回収モードと、を含む複数の運転モード備え、これらの運転モードを選択的に切り換えて実行する。運転モードの切り換えは、室外熱交換器の冷媒入口側に設けた電子膨張弁や、冷媒-熱媒体熱交換器の冷媒入口前に設けた電子膨張弁の開度を制御して、冷媒の流路の切換え、分流、分流量の調整を行うことにより実現している。
【0004】
ところで、運転モードの切り換えに際して、電子膨張弁の制御に伴って異音が生じることがある。例えば、外気吸熱モードから廃熱回収モードへの切換えの際に、冷媒-熱媒体熱交換器手前の電子膨張弁を開放するが、冷媒-熱媒体熱交換器にはそれまで冷媒が流入していなかったため、電子膨張弁前後の冷媒の圧力差が大きく、電子膨張弁の開放時に冷媒-熱媒体熱交換器に冷媒が急激に流れ始めることにより比較的大きい異音(騒音)が発生する。このため、特許文献1では、運転モードの切換え時に圧縮機の回転数を減少させて電子膨張弁前後の圧力差を小さくすることで、騒音を抑制している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2020-97363号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述のように、運転モードの切換え時に、圧縮機の回転数を減少させると、車両用空調装置全体としてシステムバランスが変化し、車室内に供給する空気の流通路に配置された室内熱交換器における熱交換能力が変動する。このため、車室内に供給される空気の吹出温度が変化して、乗員に不快感を与えることがある。
【0007】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、運転モードの遷移時において、車室内へ供給される空気の吹出温度の変動を抑制し、吹出温度を安定させること、などを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一形態は、冷媒を圧縮する圧縮機を備え、圧縮した冷媒を凝縮・減圧・蒸発させる冷媒回路と、前記冷媒の熱を車室内に供給する空気に熱交換するための熱交換器を備え、前記熱交換器にて熱交換する空気の空気流通路に内気又は外気の割合を切り換えて導入する内外気切換装置を備える車室内空調ユニットと、前記冷媒回路を制御すると共に前記内外気切換装置を制御する制御装置とを備える車両用空調装置において、前記制御装置は、同一の空調目的を有し前記冷媒回路の冷媒流路を切り換える複数の運転モードを選択的に実行可能であり、前記運転モードの遷移に対応して、前記圧縮機の回転数を低下させると共に、前記内外気切換装置を内気循環に切り換える、車両用空調装置を提供する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、運転モードの遷移時において、車室内へ供給される空気の吹出温度の変動を抑制し、吹出温度を安定させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の実施形態に係る車両用空調装置の冷媒回路Rの概略構成を示す図である。
図2】本発明の実施形態に係る車両用空調装置の制御装置としての空調ECUの概略構成を示すブロック図である。
図3】本発明の実施形態に係る車両用空調装置において、外気吸熱暖房モードにおける冷媒回路Rの冷媒の流れを示す図である。
図4】本発明の実施形態に係る車両用空調装置において、廃熱回収暖房モードにおける冷媒回路Rの冷媒の流れ及び機器温度調整回路においてモータユニットの温度を調整する場合の熱媒体の流れを示す図である。
図5】本参考例に係る車両用空調装置において、外気吸熱暖房モードから廃熱回収暖房モードへの遷移時における、空調ECUによる圧縮機、室外膨張弁及びチラー膨張弁を含む各膨張弁に対する制御と、それらの制御に対する吹出温度の変化を示すグラフである。
図6】本発明の実施形態に係る車両用空調装置において、外気吸熱暖房モードから廃熱回収暖房モードへの遷移時における、空調ECUによる圧縮機、室外膨張弁及びチラー膨張弁を含む各膨張弁に対する制御と、それらの制御に対する吹出温度の変化を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しつつ詳細に説明する。以下の説明において、同一の符号は同一の機能の部位を示しており、各図における重複説明は適宜省略する。
【0012】
図1に、本発明の実施形態に係る車両用空調装置1の概略構成を示す。車両用空調装置1は、例えば、エンジン(内燃機関)が搭載されていない電気自動車(EV)やエンジンと走行用の電動モータを供用する所謂ハイブリッド自動車などの車両に適用することができる。このような車両は、バッテリ(例えば、リチウム電池)が搭載され、外部電源からバッテリに充電された電力を、走行用のモータを含むモータユニットに供給することで駆動し、走行する。車両用空調装置1も、バッテリから供給される電力によって駆動する。
【0013】
本実施形態に係る車両用空調装置1は、冷媒を圧縮する圧縮機2を有し、圧縮した冷媒を凝縮・減圧・蒸発させる冷媒回路Rを備え、冷媒回路Rを用いたヒートポンプ運転を行うことにより車室内の空調(暖房、冷房、除湿、及び除霜)を行う。また、冷媒回路Rに設けられる熱媒体回路としての機器温度調整回路61を用いてバッテリ55やモータユニット65等の車載機器(温調対象物)に対する冷却や暖機を行う。なお、以下の説明において、冷媒とは、ヒートポンプ(圧縮・凝縮・膨張・蒸発)における状態変化を伴う冷媒回路Rの循環媒体であり、熱媒体とは、このような状態変化を伴わずに熱の吸収と放熱を行う媒体である。
【0014】
冷媒回路Rは、冷媒を圧縮する圧縮機2と、車室内の空気を通気循環させるHVACユニット10の空気流通路3内に設けられ、圧縮機2から吐出された高温高圧の冷媒を放熱させて車室内に供給する空気を加熱する室内熱交換器としての室内コンデンサ(放熱器)4と、暖房時に冷媒を減圧膨張させる室外膨張弁6と、冷房時には冷媒を放熱させる放熱器(凝縮器)として機能し、暖房時には冷媒を吸熱させる蒸発器として機能すべく冷媒と外気との間で熱交換を行わせる室外熱交換器7と、冷媒を減圧膨張させる室内膨張弁8と、空気流通路3内に設けられて冷房時及び除湿時に車室内外から冷媒に吸熱させて車室内に供給する空気を冷却する室内熱交換器としての吸熱器9と、アキュムレータ12等が冷媒配管13A~13Gにより接続されて構成されている。
【0015】
室外膨張弁6及び室内膨張弁8は、いずれも図示しないパルスモータにより駆動される電子膨張弁であり、パルスモータに加えられるパルス数によって全閉から全開までの間で開度が適宜制御される。室外膨張弁6は、室内コンデンサ4から流出し室外熱交換器7に流入する冷媒を減圧膨張させる。室内膨張弁8は、吸熱器9に流入する冷媒を減圧膨張させると共に、吸熱器9における冷媒の吸熱量を調整する。
【0016】
室外熱交換器7の冷媒出口と吸熱器9の冷媒入口とは冷媒配管13Aにより接続されている。冷媒配管13Aには、室外熱交換器7側から順に、逆止弁18と室内膨張弁8とが設けられている。逆止弁18は、吸熱器9に向かう方向が順方向となるように冷媒配管13Aに設けられる。冷媒配管13Aは、逆止弁18よりも室外熱交換器7側の位置で冷媒配管13Bに分岐している。
【0017】
冷媒配管13Aから分岐した冷媒配管13Bは、アキュムレータ12の冷媒入口に接続されている。冷媒配管13Bには、室外熱交換器7側から順に、暖房運転時に開放される電磁弁21及び逆止弁20が設けられている。逆止弁20は、アキュムレータ12に向かう方向が順方向となるように接続されている。冷媒配管13Bの電磁弁21と逆止弁20との間は冷媒配管13Cに分岐している。冷媒配管13Bから分岐した冷媒配管13Cは、吸熱器9の冷媒出口に接続されている。アキュムレータ12の冷媒出口と圧縮機2とは、冷媒配管13Dにより接続されている。
【0018】
圧縮機2の冷媒出口と室内コンデンサ4の冷媒入口とは、冷媒配管13Eにより接続されている。室内コンデンサ4の冷媒出口には冷媒配管13Fの一端が接続され、冷媒配管13Fの他端側は室外膨張弁6を介して室外熱交換器7の冷媒入口側に接続されている。冷媒配管13Fは、室外膨張弁6の冷媒上流側で冷媒配管13Gに分岐している。冷媒配管13Gは、冷媒配管Aの逆止弁18と室内膨張弁8との間に接続されている。冷媒配管13Gの冷媒配管Aとの接続点より冷媒上流側には、電磁弁22が設けられている。
【0019】
これにより、冷媒配管13Gは室外膨張弁6、室外熱交換器7及び逆止弁18の直列回路に対して並列に接続され、室外膨張弁6、室外熱交換器7及び逆止弁18をバイパスする回路となる。
【0020】
上述のように、車室内の空気を通気循環させるHVACユニット10には空気流通路3が設けられ、空気流通路3の空気上流側から順に吸熱器9及び室内コンデンサ4が配置されている。空気流通路3の吸熱器9の空気上流側には、外気吸込口24と内気吸込口25の各吸込口が形成されている。外気吸込口24及び内気吸込口25には、吸込切換ダンパ26(内外気切換装置)が設けられている。吸込切換ダンパ26により、空気流通路3に導入する車室内の空気である内気又は車室外の空気である外気の割合を調整する。
【0021】
すなわち、後述する空調ECU(制御装置)11によって吸込切換ダンパ26の開度を制御することで、吸込切換ダンパ26の開度に応じた割合で、空気流通路3内に導入される空気の一部または全部が外気となるように制御したり(外気導入)、空気流通路3に内気のみを導入して車室内に内気を循環(内気循環)させるように制御したりすることができる。吸込切換ダンパ26の空気下流側には、導入した内気や外気を空気流通路3に送給するための室内送風機(ブロワファン)27が設けられている。
【0022】
空気流通路3における室内コンデンサ4の空気下流側には、補助ヒータ23が設けられている。図1に示す補助ヒータ23は、例えば、PTCヒータ(電気ヒータ)であり、補助ヒータが通電されて発熱することにより車室内の暖房を補完する。
【0023】
空気流通路3における室内コンデンサ4の空気上流側には、空気流通路3内に流入して吸熱器9を通過した後の空気流通路3内の空気(内気や外気)を室内コンデンサ4及び補助ヒータ23に通風する割合を調整するエアミックスダンパ28が設けられている。空気流通路3を流通した空気は、空気流通路3におけるエアミックスダンパ28の空気下流側に設けられた吹出口29により車室内に供給される。
なお、補助暖房手段として、例えば、圧縮機廃熱によって加熱した温水を空気流通路3に配置したヒータコアに循環させることにより、送風空気を加熱する形態とすることもできる。
【0024】
冷媒回路Rには、温調対象物から冷媒に吸熱させる温調対象物用熱交換器としての冷媒-熱媒体熱交換器64が接続されている。冷媒-熱媒体熱交換器64は、冷媒流路64Aと熱媒体流路64Bとを備え、冷媒回路Rの一部を構成すると同時に、熱媒体回路としての機器温度調整回路61の一部を構成する。
【0025】
具体的には、冷媒-熱媒体熱交換器64は冷媒回路Rに以下のように接続される。
冷媒回路Rにおいて、冷媒配管13Aに設けられた逆止弁18の下流側であって、室内膨張弁8の冷媒上流側には、分岐回路としての冷媒配管16Aの一端が接続されている。冷媒配管16Aの他端は、冷媒-熱媒体熱交換器64の冷媒流路64Aの入口に接続されている。冷媒配管16Aにはチラー膨張弁73が設けられている。
【0026】
チラー膨張弁73は、図示しないパルスモータにより駆動される電子膨張弁であり、パルスモータに加えられるパルス数によって全閉から全開までの間で開度が適宜制御される。チラー膨張弁73は、冷媒-熱媒体熱交換器64の冷媒流路64Aに流入する冷媒を減圧膨張させると共に、冷媒-熱媒体熱交換器64の冷媒流路64Aの下流側における冷媒の過熱度を調整する。
【0027】
冷媒-熱媒体熱交換器64の冷媒流路64Aの出口には冷媒配管16Bの一端が接続されている。冷媒配管16Bの他端は冷媒配管13Bにおいて逆止弁20とアキュムレータ12との間に接続されている。このように、これらのチラー膨張弁73、冷媒-熱媒体熱交換器64の冷媒流路64A等も冷媒回路Rの一部を構成する。
【0028】
冷媒回路Rを循環する冷媒は、冷媒-熱媒体熱交換器64によって、機器温度調整回路61を循環する熱媒体と熱交換を行う。機器温度調整回路61は、バッテリ55やモータユニット65等の被温調対象に熱媒体を循環させてバッテリ55やモータユニット65の温度を調整する。なお、モータユニット65には、走行用の電動モータと電動モータを駆動するインバータ回路等の発熱機器も含まれる。被温調対象として、バッテリ55やモータユニット65の他に、車両に搭載されて発熱する機器を適用することができる。
【0029】
機器温度調整回路61は、バッテリ55やモータユニット65に熱媒体を循環させるための循環装置としての第1循環ポンプ62及び第2循環ポンプ63と、空気-熱媒体熱交換器67と、流路切換装置としての三方弁81,82,83,84とを備え、これらが熱媒体配管17A~17Fにより接続されて構成されている。
【0030】
冷媒-熱媒体熱交換器64において、熱媒体流路64Bの冷媒吐出側に熱媒体配管17Aの一端が接続され、熱媒体入口に熱媒体配管17Aの他端が接続されている。熱媒体配管17Aには、冷媒-熱媒体熱交換器64の熱媒体吐出側から順に、三方弁81、第1循環ポンプ62、空気-熱媒体熱交換器67、モータユニット65、三方弁82、三方弁83、バッテリ55、第2循環ポンプ63、及び三方弁84が設けられている。
【0031】
熱媒体配管17Aにおいて、三方弁83の一端には熱媒体配管17Bの一端が接続され、熱媒体配管17Bの他端は、熱媒体配管17Aのバッテリ55と第2循環ポンプ63との間に接続される。熱媒体配管17BにはECHヒータ58が設けられている。
【0032】
また、熱媒体配管17Aには、熱媒体配管17C~17Fが設けられている。熱媒体配管17Cは、第1循環ポンプ62と空気-熱媒体熱交換器67との間と、モータユニット65と空気-熱媒体熱交換器67との間を接続することで空気-熱媒体熱交換器67をバイパスする。熱媒体配管17Dは、モータユニット65と三方弁82の間と、三方弁81の一端とを接続する。熱媒体配管17Eは、三方弁82の一端と、三方弁84と冷媒-熱媒体熱交換器64との間とを接続する。熱媒体配管17Fは、三方弁84の一端と、三方弁82と三方弁83との間とを接続する。
【0033】
このように、冷媒-熱媒体熱交換器64の熱媒体流路64Bは機器温度調整回路61の一部を構成する。機器温度調整回路61をこのような構成とすることで、三方弁81,82,83,84を制御して、機器温度調整回路61においてバッテリ55のみ、モータユニット65のみ、または、バッテリ55及びモータユニット65の双方に熱媒体を循環させて、これらの温度を調整することができる。
【0034】
機器温度調整回路61で使用される熱媒体としては、例えば水、HFO-1234yfのような冷媒、クーラント等の液体、空気等の気体が採用可能である。尚、本実施形態ではクーラントを熱媒体として採用している。また、バッテリ55やモータユニット65の周囲には例えば熱媒体が当該バッテリ55やモータユニット65と熱交換関係で流通可能なジャケット構造が施されているものとする。
【0035】
チラー膨張弁73が開いている場合、冷媒配管13Gや室外熱交換器7から流出した冷媒の一部又は全部は、冷媒配管16Aに流入しチラー膨張弁73で減圧された後、冷媒-熱媒体熱交換器64の冷媒流路64Aに流入して蒸発する。一方、冷媒-熱媒体熱交換器64の熱媒体流路64Bには、機器温度調整回路61を循環し、バッテリ55やモータユニット65から吸熱した熱媒体が流入する。冷媒は、冷媒-熱媒体熱交換器64の冷媒流路64Aを流れる過程で熱媒体流路64Bを流れる熱媒体から吸熱した後、アキュムレータ12を経て圧縮機2に吸い込まれる。
【0036】
図2に、車両用空調装置1の制御装置としての空調ECU11の概略構成を示す。空調ECU11は、走行を含む車両全般の制御を司る車両コントローラ35とCAN(Controller Area Network)やLIN(Local Interconnect Network)等の車載ネットワークにより相互に通信可能に接続され、情報の送受信を行う。空調ECU11及び車両コントローラ35には何れもプロセッサを備えたコンピュータの一例としてのマイクロコンピュータを適用することができる。
【0037】
空調ECU11には、以下の各センサや検出器が接続され、これらの各センサや検出器等の出力が入力される。
具体的には、空調ECU11には、車両の外気温度Tamを検出する外気温度センサ33、外気吸込口24及び内気吸込口25から空気流通路3に導入される空気の温度を検出するHVAC吸込温度センサ36、車室内の空気の温度Tinを検出する内気温度センサ37、吹出口29から車室内に吹き出される空気の温度を検出する吹出温度センサ41、圧縮機2の吐出冷媒圧力(吐出圧力Pd)を検出する吐出圧力センサ42、圧縮機2の吐出冷媒温度Tdを検出する吐出温度センサ43、圧縮機2の吸込冷媒温度Tsを検出する吸込温度センサ44、室内コンデンサ4の温度TCIを検出する室内コンデンサ温度センサ46、室内コンデンサ4の圧力(室内コンデンサ4を出た直後の冷媒圧力:室内コンデンサ出口圧力Pci)を検出する室内コンデンサ圧力センサ47と、吸熱器9の温度Teを検出する吸熱器温度センサ48、吸熱器9の冷媒圧力を検出する吸熱器圧力センサ49、設定温度や空調運転の切り換えを設定するための空調操作部53、室外熱交換器7の温度TXOを検出する室外熱交換器温度センサ54、室外熱交換器7の冷媒圧力PXOを検出する室外熱交換器圧力センサ56、及び、空調ECU11には、冷媒-熱媒体熱交換器64の熱媒体流路64Bを出て熱媒体回路を循環する熱媒体の温度Tw(以下、「チラー水温」という)を検出する熱媒体温度センサ79、が接続されている。
【0038】
一方、空調ECU11の出力には、圧縮機2、補助ヒータ23、室内送風機(ブロワファン)27、吸込切換ダンパ26、エアミックスダンパ28、室外膨張弁6、室内膨張弁8と、電磁弁21,22、三方弁81,82,83,84、チラー膨張弁73、第1循環ポンプ62、第2循環ポンプ63が接続されている。空調ECU11は各センサの出力と空調操作部53にて入力された設定、車両コントローラ35からの情報に基づいてこれらを制御する。
【0039】
このように構成された車両用空調装置1の運転時における動作について説明する。本実施形態における空調ECU11(制御装置)は、同一の空調目的に対して、冷媒回路の冷媒流路が切り換わる複数の運転モードを有し、複数の運転モードから適宜選択して実行することができる。例えば、空調ECU11は、「暖房」を目的とする運転モードとして、室外熱交換器7によって吸熱を行う外気吸熱暖房モードと、冷媒-熱媒体熱交換器64によって吸熱を行う廃熱回収熱暖房モードと、を含む少なくとも2つの運転モードを有しており、これらを適宜選択して実行することができる。
【0040】
以下、「暖房」を目的とする上記2つの運転モード及び運転モードの遷移(切換え)について説明する。なお、「暖房」を目的とする運転モードとして、上記2つの運転モードのほかに、室外熱交換器7及び冷媒-熱媒体熱交換器64の双方によって吸熱を行う併用暖房モードを更に有していてもよい。
【0041】
[暖房を目的とする各運転モードについて]
(1)外気吸熱暖房モード
図3は、外気吸熱暖房モードにおける冷媒回路Rの冷媒の流れ(矢印)を示している。空調ECU11により(オートモード)、或いは、空調操作部53へのマニュアル操作(マニュアルモード)により暖房運転が選択され、空調ECU11が外気吸熱暖房モードを実行する場合、電磁弁21を開放し、室内膨張弁8を全閉とし、チラー膨張弁73及び電磁弁22を全閉とする。また、室外膨張弁6の弁開度を制御可能な状態とする。さらに、吸込切換ダンパ26によって外気吸込口24を開放する。
【0042】
空調ECU11は、室内送風機27を運転して外気吸込口24から取り込んだ外気を含む空気を空気流通路3に流通させ、エアミックスダンパ28によって室内送風機27から吹き出された空気が室内コンデンサ4及び補助ヒータ23に通風される状態とする。同時に、圧縮機2を運転して、圧縮機2から吐出された高温高圧のガス冷媒を室内コンデンサ4に流入させる。室内コンデンサ4には空気流通路3内の空気が通風されるので、空気流通路3内の空気は室内コンデンサ4内の高温冷媒により加熱され、加熱された空気が吹出口29から車室内に供給される。一方、室内コンデンサ4内の冷媒は空気に熱を奪われて冷却され、凝縮液化する。
【0043】
室内コンデンサ4で液化した冷媒は室内コンデンサ4を出た後、冷媒配管13Fを経て室外膨張弁6に至る。冷媒は、室外膨張弁6で減圧された後、室外熱交換器7に流入し、室外熱交換器7において蒸発し、車両の走行により流入する外気から吸熱する。即ち、冷媒回路Rがヒートポンプとなる。
【0044】
室外熱交換器7を出た低温低圧の冷媒は冷媒配管13A及び冷媒配管13B、電磁弁21、逆止弁20を経てアキュムレータ12に流入する。冷媒はアキュムレータ12で気液分離された後、ガス冷媒が冷媒配管13Dを経て圧縮機2に吸い込まれる循環を繰り返す。このような循環を行うことで、車室内の暖房が行われることとなる。
【0045】
空調ECU11は、外気吸熱暖房モードによる暖房運転中、空調操作部53においてユーザによって設定された設定温度に基づいて定められる目標吹出温度TAOから目標室内コンデンサ圧力PCO(室内コンデンサ4の圧力PCIの目標値)を算出する。空調ECU11は、目標室内コンデンサ圧力PCOと、室内コンデンサ圧力センサ47が検出する室内コンデンサ4の冷媒圧力(室内コンデンサ圧力PCI)に基づいて圧縮機2の回転数を制御する。
【0046】
また、空調ECU11は、室内コンデンサ温度センサ46が検出する室内コンデンサ4の温度(室内コンデンサ温度TCI)及び室内コンデンサ圧力センサ47が検出する室内コンデンサ圧力PCIに基づいて室外膨張弁6の弁開度を制御する(外気吸熱暖房モード実行時における弁動作の通常制御)。また、室内コンデンサ4による暖房能力が不足する場合には補助ヒータ23に通電して発熱させ、暖房を補完する。
【0047】
一方、機器温度調整回路61では、第1循環ポンプ62によって、モータユニット65と熱媒体配管17A,17C,17Cに熱媒体を循環させる。また、第2循環ポンプ63によって、バッテリ55と熱媒体配管17A,17Fに熱媒体を循環させる。
【0048】
(2)廃熱回収暖房モード
図4は、廃熱回収暖房モードにおける冷媒回路Rの冷媒の流れ及び機器温度調整回路61の熱媒体の流れを示している。
空調ECU11は、廃熱回収暖房モードを実行する場合、電磁弁21を閉じ、室外膨張弁6と室内膨張弁8を全閉とし、電磁弁22を開く。また、チラー膨張弁73を開いてその弁開度を制御可能な状態とする。
【0049】
また、空調ECU11は、吸込切換ダンパ26によって外気吸込口24を開放し、室内送風機27を運転して外気吸込口24から取り込んだ外気を含む空気を空気流通路3に流通させ、エアミックスダンパ28によって室内送風機27から吹き出された空気が室内コンデンサ4及び補助ヒータ23に通風される状態とする。
【0050】
空調ECU11によって圧縮機2を運転すると、圧縮機2から吐出された高温高圧のガス冷媒が室内コンデンサ4に流入され、室内コンデンサ4には空気流通路3内の空気が通風される。空気流通路3内の空気は室内コンデンサ4内の高温冷媒により加熱され、加熱された空気が吹出口29から車室内に供給される。一方、室内コンデンサ4内の冷媒は空気に熱を奪われて冷却され、凝縮液化する。
【0051】
室内コンデンサ4から出た全ての冷媒は電磁弁22に流れ、冷媒配管13G、13Aを経て冷媒配管16Aに流入する。冷媒は、冷媒配管16Aを通過してチラー膨張弁73で減圧された後、冷媒配管16Aを経て冷媒-熱媒体熱交換器64の冷媒流路64Aに流入して蒸発する。このときに吸熱作用を発揮する。冷媒流路64Aで蒸発した冷媒は、冷媒配管16Bを経て冷媒配管13Bの逆止弁20の下流側に流入し、アキュムレータ12、冷媒配管13Dを経て圧縮機2に吸い込まれる循環を繰り返す。このような循環を行うことで、車室内の暖房が行われることとなる。
【0052】
空調ECU11は、廃熱回収暖房モードによる暖房運転中、空調操作部53においてユーザによって設定された設定温度に基づいて定められる目標吹出温度TAOから目標室内コンデンサ圧力PCO(室内コンデンサ4の圧力PCIの目標値)を算出する。空調ECU11は、この目標室内コンデンサ圧力PCOと、室内コンデンサ圧力センサ47が検出する室内コンデンサ4の冷媒圧力(室内コンデンサ圧力PCI)に基づいて圧縮機2の回転数を制御する。
【0053】
また、空調ECU11は、室内コンデンサ温度センサ46が検出する室内コンデンサ4の温度(室内コンデンサ温度TCI)及び室内コンデンサ圧力センサ47が検出する室内コンデンサ圧力PCIに基づいてチラー膨張弁73の弁開度を制御する(廃熱回収暖房モード実行時における弁動作の通常制御)。また、室内コンデンサ4による暖房能力が不足する場合には補助ヒータ23に通電して発熱させ、暖房を補完する。
【0054】
一方、機器温度調整回路61では、バッテリ55の温度を調整してバッテリ55から熱を回収する場合、モータユニット65の温度を調整してモータユニット65から熱を回収する場合、バッテリ55及びモータユニット65の温度を調整して、両者から熱回収する場合の3つの場合がある。
【0055】
図4では、モータユニット65の温度を調整してモータユニット65から熱を回収する例を示している。
図4に示すモータユニット65から熱を回収する場合には、熱媒体は、第1循環ポンプ62により循環される。第1循環ポンプ62を出た熱媒体は、熱媒体配管17A、17Cを経てモータユニット65に流入し、モータユニット65において熱交換する。モータユニット65で熱交換した熱媒体は、熱媒体配管17Aから三方弁82及び熱媒体配管17Eを経て冷媒-熱媒体熱交換器64の熱媒体流路64Bに至る。熱媒体は、冷媒-熱媒体熱交換器64の冷媒流路64A内で蒸発する冷媒により吸熱されて冷却される。冷媒の吸熱作用で冷却された熱媒体は、冷媒-熱媒体熱交換器64を出て、三方弁81を経て第1循環ポンプ62により熱媒体配管17A経て再びモータユニット65に流入する循環を繰り返す。
【0056】
このように廃熱回収暖房モードでは、冷媒回路Rの冷媒が冷媒-熱媒体熱交換器64にて蒸発し、機器温度調整回路61の熱媒体のみから吸熱する。即ち、冷媒は室外熱交換器7に流入して蒸発することは無く、冷媒は熱媒体を介してモータユニット65から熱を汲み上げることになるので、モータユニット65を冷却し、モータユニット65から汲み上げた熱を室内コンデンサ4に搬送して車室内を暖房することができる。
【0057】
[運転のモード遷移について]
以下、図5及び図6を用いて、外気吸熱暖房モードから廃熱回収暖房モードへの遷移について説明する。
図5及び図6は、運転モードの遷移に際して、空調ECU11による圧縮機2、室外膨張弁6及びチラー膨張弁73を含む各膨張弁に対する制御と、それらの制御に対する吹出温度の変化を示すグラフである。図5は、参考例に係る車両用空調装置についての制御及び制御結果を示し、図6は本実施形態における車両用空調装置1についての制御及び制御結果を示す。
【0058】
(1)参考例における運転モードの遷移
図5に示すように、参考例に係る車両用空調装置では、空調ECU11によって外気吸熱暖房モードから廃熱回収暖房モードへの遷移が開始されると、圧縮機2の運転を直ちに停止させ、圧縮機2の運転が停止した状態で、各膨張弁の開閉を切り換えるための遷移制御を行う。すなわち、空調ECU11は、電磁弁21を閉じ、室外膨張弁6と室内膨張弁8を全閉とし、電磁弁22を開くよう制御する。このとき、室外膨張弁6が全閉となるように制御しながら、室外膨張弁6が全閉となるまでの間に、チラー膨張弁73の開度が狙い値となるように制御する。チラー膨張弁73は、室内コンデンサ4の温度等に基づいて弁開度を制御可能な状態とする。
【0059】
また、空調ECU11は、三方弁81を切り換えて、機器温度調整回路61においてモータユニット65を循環する熱媒体が冷媒-熱媒体熱交換器64に流入するように制御する。これにより、冷媒-熱媒体熱交換器64において、モータユニット65の廃熱を汲み上げた熱媒体と冷媒回路Rを循環した冷媒とが熱交換する。
その後、空調ECU11は、予め定めた条件に従って圧縮機2を運転させ、段階的に回転数を増加させるように制御する。
【0060】
上述の運転モード遷移に際して、空調ECU11は、吸込切換ダンパ26を動作させず、吸込切換ダンパ26は内気吸込口25を閉塞し、外気吸込口24を開放した状態を継続させている。このとき、圧縮機2は、運転を一時的に停止し、所定時間経過後に運転を再開するが、再開後も所定の期間は外気吸熱暖房モードでの運転中よりも少ない回転数で圧縮機2を運転する。このため、車両用空調装置1全体としてシステムバランスが変化する。
【0061】
より具体的には、外気吸熱暖房モードでの運転中に、冷媒は圧縮機2で十分に圧縮されて いたが、運転モード遷移制御時に、圧縮機2は運転を停止又は回転数を減少させて運転されるので、圧縮機2での冷媒の圧縮能力が停止又は低下した状態となる。このため、室内コンデンサ4を通過する冷媒の温度が低下し、室内コンデンサ4における冷媒と空気との熱交換能力が低下する。これにより、外気吸込口24から導入されて空気流通路3を通過する空気が室内コンデンサ4では十分に加熱されず、吹出口29から車室内へ供給される空気の吹出温度が低下して、乗員に不快感を与えるおそれがある。
【0062】
(2)本実施形態における運転モードの遷移
図6に示すように、本実施形態においては、空調ECU11は、外気吸熱暖房モードから廃熱回収暖房モードへの遷移を開始すると、直ちに、吸込切換ダンパ26を動作させて外気吸込口24を閉塞すると共に内気吸込口25を開放して、空気流通路3に内気のみが導入されるように制御する(内気循環)。空調ECU11は、空気流通路3に内気のみが循環される状態で圧縮機2の運転を停止し、圧縮機2の運転が停止した状態で各膨張弁の開閉を切り換えるための遷移制御を行う。
【0063】
すなわち、空調ECU11は、空気流通路3を内気循環とし、かつ、圧縮機2の運転を停止させた状態で、電磁弁21、室外膨張弁6、及び、室内膨張弁8を全閉とし、電磁弁22を開くよう制御する。このとき、室外膨張弁6が全閉となるまでの間に、チラー膨張弁73の開度が狙い値となるように制御する。開度が狙い値となったチラー膨張弁73は、室内コンデンサ4の温度等に基づいて弁開度を制御可能な状態とする。その後、空調ECU11は、圧縮機2を再び運転させ、段階的に回転数を増加させるように制御する。
【0064】
圧縮機2を停止する期間、すなわち圧縮機2の運転を再開させるタイミング、回転数を増加させるタイミングは、予め定めておくことができる。また、例えば、吹出口29から吹き出される空気の吹出温度や室内コンデンサ温度TCIの検出結果に基づいて圧縮機2の回転数を増加させるタイミングを定めてもよい。
【0065】
空調ECU11は、圧縮機2の運転を所定時間停止又は所定時間回転数を減少させた後に、所定の条件を満たした場合に、外気吸込口24を開放するように吸込切換ダンパ26を制御して空気流通路3に外気を導入する。所定の条件としては、圧縮機2の回転数が通常の暖房運転時と同程になった場合や、吹出温度がユーザによって定められた設定温度と同程度になった場合など、予め定めることができる。この他、空調ECU11は、圧縮機2の回転数を増加させるタイミングと外気を導入するように吸込切換ダンパ26を切り換えるタイミングを同期させるように制御してもよい。
【0066】
なお、上述の例では、運転モード遷移時に、圧縮機2を一時的に停止(回転数をゼロ)とする例について説明したが、必ずしもゼロとする必要はなく、回転数を一時的に減少させるように制御してもよい。圧縮機2の回転数を減少させる又は運転を停止する時間は予め定めておくことができるほか、例えば、吹出温度によって定めてもよい。
【0067】
また、車室内に供給される空気を、室内コンデンサ4において冷媒回路Rを循環する冷媒と直接熱交換する例について説明したが、必ずしもこのような例に限られず、例えば、冷媒回路Rの冷媒と熱交換する熱媒体回路を設けるなどして、熱媒体を介して冷媒の熱を車室内に供給する空気に熱交換するようにしてもよい。
【0068】
このように、本実施形態に係る車両用空調装置1によれば、外気吸熱暖房モードから廃熱回収暖房モードへの遷移のように、空気流通路に導入する空気の少なくとも一部を外気として空調を行う運転モードから、この運転モードと同一の空調目的を有する他の運転モードへ遷移させる際に、吸込切換ダンパ26を制御して空気流通路を内気循環とする。
【0069】
これにより、運転モードが遷移する直前までに、室内コンデンサ4で設定温度まで加熱されて車室内を循環した空気を、再び室内コンデンサ4に通過させることができる。つまり、内気循環としたことで、室内コンデンサ4において冷媒と熱交換する空気の温度が外気よりも高い状態とすることができる。
【0070】
圧縮機2が回転数を減少させて運転され又は運転が停止されることで冷媒が十分に加熱されず室内コンデンサ4の熱交換能力が低下するが、上述のように、室内コンデンサ4において冷媒と熱交換する空気の温度が外気よりも高いため、室内コンデンサ4に高い熱交換能力を必要とせず、車室内に吹き出される空気の温度の低下を抑制することができる。
【0071】
以上、本発明の実施形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこれらの実施の形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があっても本発明に含まれる。
【符号の説明】
【0072】
1:車両用空調装置,2:圧縮機,3:空気流通路,4:室内コンデンサ、6:室外膨張弁,7:室外熱交換器,8:室内膨張弁,9:吸熱器,10:HVACユニット,11:空調ECU(制御装置),21:電磁弁,22:電磁弁,24:外気吸込口,25:内気吸込口,26:吸込切換ダンパ,27:室内送風機(ブロワファン),55:バッテリ,61:機器温度調整回路,62:第1循環ポンプ,63:第2循環ポンプ,64:冷媒-熱媒体熱交換器,65:モータユニット,73:チラー膨張弁
図1
図2
図3
図4
図5
図6