(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023165872
(43)【公開日】2023-11-17
(54)【発明の名称】治療用ナノバイオロジー組成物での訓練された免疫の阻害
(51)【国際特許分類】
A61K 45/00 20060101AFI20231110BHJP
A61K 47/24 20060101ALI20231110BHJP
A61K 47/42 20170101ALI20231110BHJP
A61K 9/51 20060101ALI20231110BHJP
A61P 37/06 20060101ALI20231110BHJP
A61K 47/28 20060101ALI20231110BHJP
A61K 47/14 20170101ALI20231110BHJP
A61P 9/10 20060101ALI20231110BHJP
A61P 19/02 20060101ALI20231110BHJP
A61P 1/04 20060101ALI20231110BHJP
A61P 37/02 20060101ALI20231110BHJP
A61P 29/00 20060101ALI20231110BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20231110BHJP
A61K 51/04 20060101ALI20231110BHJP
A61K 31/55 20060101ALI20231110BHJP
A61K 31/551 20060101ALI20231110BHJP
A61K 31/436 20060101ALI20231110BHJP
A61P 9/00 20060101ALI20231110BHJP
A61K 9/127 20060101ALI20231110BHJP
【FI】
A61K45/00
A61K47/24
A61K47/42
A61K9/51
A61P37/06
A61K47/28
A61K47/14
A61P9/10
A61P19/02
A61P1/04
A61P37/02
A61P29/00
A61P43/00 121
A61K51/04 200
A61K31/55
A61K31/551
A61K31/436
A61P9/00
A61K9/127
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023163975
(22)【出願日】2023-09-26
(62)【分割の表示】P 2020545065の分割
【原出願日】2018-11-20
(31)【優先権主張番号】62/734,664
(32)【優先日】2018-09-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/588,790
(32)【優先日】2017-11-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】516291619
【氏名又は名称】アイカーン スクール オブ メディスン アット マウント サイナイ
(71)【出願人】
【識別番号】520172339
【氏名又は名称】スティヒティング カトリエク ユニバーシテイト
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【弁理士】
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【弁理士】
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100202751
【弁理士】
【氏名又は名称】岩堀 明代
(74)【代理人】
【識別番号】100208580
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 玲奈
(74)【代理人】
【識別番号】100191086
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 香元
(72)【発明者】
【氏名】モルダー,ウィレム
(72)【発明者】
【氏名】オチャンド,ジョルディ
(72)【発明者】
【氏名】ファヤド,ザヒ
(72)【発明者】
【氏名】ダイフェンヴォーダン,ラファエル
(72)【発明者】
【氏名】トゥニセン,ブラム
(72)【発明者】
【氏名】ペレツ-メディナ,カルロス
(72)【発明者】
【氏名】ネテア,ミハイ
(72)【発明者】
【氏名】ヨーステン,レオ
(57)【要約】
【課題】訓練された免疫の影響を受ける患者を治療するための組成物および方法の提供。
【解決手段】訓練された免疫の結果としての骨髄系細胞、その幹細胞および前駆体の長期間の応答性亢進を低減するためのナノバイオロジー組成物であって、ナノスケール構築物と、前記ナノスケール構築物に組み込まれている阻害剤薬物とを含み、
前記ナノスケール構築物は、リン脂質と、apoA-IまたはapoA-Iのペプチドミメティックとを含む多成分の担体組成物であり、
前記薬物は、造血幹細胞(HSC)、CMP、または骨髄系細胞の中の、インフラマソームの阻害剤、代謝経路の阻害剤、および/またはエピジェネティクス経路の阻害剤であり、
前記ナノバイオロジー組成物は、水性環境において、直径約8nm~約400nmの大きさを有する自己集積するナノディスクまたはナノスフィアである、
ナノバイオロジー組成物。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
訓練された免疫の影響を受ける患者において訓練された免疫の結果としての骨髄系細胞、その幹細胞および前駆体の長期間の応答性亢進を低減するために前記患者を処置する方法であって、
ナノバイオロジー組成物を、応答亢進性の自然免疫応答を低減するために有効な量で、前記患者に投与するステップであって、
前記ナノバイオロジー組成物が、(i)ナノスケール構築物と、(ii)前記ナノスケール構築物に組み込まれている阻害剤薬物とを含み、
前記ナノスケール構築物が、(a)リン脂質と、(b)apoA-IまたはapoA-Iのペプチドミメティックとを含む多成分の担体組成物であり、
前記薬物が、造血幹細胞(HSC)、CMP、または骨髄系細胞の中の、インフラマソームの阻害剤、代謝経路の阻害剤、および/またはエピジェネティクス経路の阻害剤であり、
前記ナノバイオロジー組成物が、水性環境において、直径約8nm~約400nmの大きさを有する自己集積するナノディスクまたはナノスフィアであり、
前記ナノスケール構築物が、前記薬物を、前記患者の骨髄、血液、および/または脾臓における骨髄系細胞、骨髄系前駆細胞、または造血幹細胞へと送達することにより、前記患者の応答亢進性の自然免疫応答が低減される、
ステップを含む、
方法。
【請求項2】
訓練された免疫の影響を受ける患者において訓練された免疫の結果としての骨髄系細胞、その幹細胞および前駆体の長期間の応答性亢進を低減するために前記患者を処置する方法であって、
ナノバイオロジー組成物を、応答亢進性の自然免疫応答を低減するために有効な量で、前記患者に投与するステップであって、
前記ナノバイオロジー組成物が、(i)ナノスケール構築物と、(ii)前記ナノスケール構築物に組み込まれている阻害剤薬物とを含み、
前記ナノスケール構築物が、(a)リン脂質と、(b)apoA-IまたはapoA-Iのペプチドミメティックと、(c)1つ以上のトリグリセリド、脂肪酸エステル、疎水性ポリマー、およびステロールエステルを含む疎水性マトリックスとを含む多成分の担体組成物であり、
前記薬物が、造血幹細胞(HSC)、CMP、または骨髄系細胞の中の、インフラマソームの阻害剤、代謝経路の阻害剤、および/またはエピジェネティクス経路の阻害剤であり、
前記ナノバイオロジー組成物が、水性環境において、直径約8nm~約400nmの大きさを有する自己集積するナノディスクまたはナノスフィアであり、
前記ナノスケール構築物が、前記薬物を、前記患者の骨髄、血液、および/または脾臓における骨髄系細胞、骨髄系前駆細胞、または造血幹細胞へと送達することにより、前記患者の応答亢進性の自然免疫応答が低減される、
ステップを含む、
方法。
【請求項3】
訓練された免疫の影響を受ける患者において応答亢進性の自然免疫応答を低減するために前記患者を処置する方法であって、
ナノバイオロジー組成物を、応答亢進性の自然免疫応答を低減するために有効な量で、前記患者に投与するステップであって、
前記ナノバイオロジー組成物が、(i)ナノスケール構築物と、(ii)前記ナノスケール構築物に組み込まれている阻害剤薬物とを含み、
前記ナノスケール構築物が、(a)リン脂質またはリン脂質の混合物と、(b)apoA-IまたはapoA-Iのペプチドミメティックと、(c)1つ以上のトリグリセリド、脂肪酸エステル、疎水性ポリマー、およびステロールエステルから選択される疎水性マトリックスと、(d)コレステロールとを含む多成分の担体組成物であり、
前記ナノバイオロジー組成物が、水性環境において、直径約8nm~約400nmの大きさを有する自己集積するナノディスクまたはナノスフィアであり、
前記阻害剤薬物が、疎水性薬物または結合されている脂肪族鎖もしくはコレステロールもしくはリン脂質で誘導体化される親水性薬物のプロドラッグであり、
前記薬物が、造血幹細胞(HSC)、CMP、または骨髄系細胞の中の、インフラマソーム、代謝経路、またはエピジェネティクス経路の阻害剤であり、
前記ナノスケール構築物が、前記薬物を、前記患者の骨髄、血液、および/または脾臓における骨髄系細胞、骨髄系前駆細胞、または造血幹細胞へと送達することにより、前記患者の応答亢進性の自然免疫応答が低減される、
ステップを含む、
方法。
【請求項4】
移植レシピエントである患者において長期間の同種移植片の認容性を促進させる方法であって、
ナノバイオロジー組成物を、長期間の同種移植片の認容性を促進させるために有効な量で、前記患者に投与するステップであって、
前記ナノバイオロジー組成物が、(i)ナノスケール構築物と、(ii)前記ナノスケール構築物に組み込まれている阻害剤薬物とを含み、
前記ナノスケール構築物が、(a)リン脂質またはリン脂質の混合物と、(b)apo A1またはapo A1のペプチドミメティックとを含む多成分の担体組成物であり、
前記ナノバイオロジー組成物が、水性環境において、直径約8nm~約400nmの大きさを有する自己集積するナノディスクまたはナノスフィアであり、
前記阻害剤薬物が、疎水性薬物または結合されている脂肪族鎖もしくはコレステロールもしくはリン脂質で誘導体化される親水性薬物のプロドラッグであり、
前記薬物が、造血幹細胞(HSC)、CMP、または骨髄系細胞の中の、インフラマソーム、代謝経路、またはエピジェネティクス経路の阻害剤であり、
前記ナノスケール構築物が、前記薬物を、前記患者の骨髄、血液、および/または脾臓における骨髄系細胞、骨髄系前駆細胞、または造血幹細胞へと送達することにより、前記移植レシピエントの患者において長期間の同種移植片の認容性が促進される、
ステップを含む、
方法。
【請求項5】
移植レシピエントである患者において長期間の同種移植片の認容性を促進させる方法であって、
ナノバイオロジー組成物を、長期間の同種移植片の認容性を促進させるために有効な量で、前記患者に投与するステップであって、
前記ナノバイオロジー組成物が、(i)ナノスケール構築物と、(ii)前記ナノスケール構築物に組み込まれている阻害剤薬物とを含み、
前記ナノスケール構築物が、(a)リン脂質またはリン脂質の混合物と、(b)apo A1またはapo A1のペプチドミメティックと、(c)1つ以上のトリグリセリド、脂肪酸エステル、疎水性ポリマー、およびステロールエステルから選択される疎水性マトリックスとを含む多成分の担体組成物であり、
前記ナノバイオロジー組成物が、水性環境において、直径約8nm~約400nmの大きさを有する自己集積するナノディスクまたはナノスフィアであり、
前記阻害剤薬物が、疎水性薬物または結合されている脂肪族鎖もしくはコレステロールもしくはリン脂質で誘導体化される親水性薬物のプロドラッグであり、
前記薬物が、造血幹細胞(HSC)、CMP、または骨髄系細胞の中の、インフラマソーム、代謝経路、またはエピジェネティクス経路の阻害剤であり、
前記ナノスケール構築物が、前記薬物を、前記患者の骨髄、血液、および/または脾臓における骨髄系細胞、骨髄系前駆細胞、または造血幹細胞へと送達することにより、前記移植レシピエントの患者において長期間の同種移植片の認容性が促進される、
ステップを含む、
方法。
【請求項6】
移植レシピエントである患者において長期間の同種移植片の認容性を促進させる方法であって、
ナノバイオロジー組成物を、長期間の同種移植片の認容性を促進させるために有効な量で、前記患者に投与するステップであって、
前記ナノバイオロジー組成物が、(i)ナノスケール構築物と、(ii)前記ナノスケール構築物に組み込まれている阻害剤薬物とを含み、
前記ナノスケール構築物が、(a)リン脂質またはリン脂質の混合物と、(b)apo A1またはapo A1のペプチドミメティックと、(c)1つ以上のトリグリセリド、脂肪酸エステル、疎水性ポリマー、およびステロールエステルから選択される疎水性マトリックスと、(d)コレステロールとを含む多成分の担体組成物であり、
前記ナノバイオロジー組成物が、水性環境において、直径約8nm~約400nmの大きさを有する自己集積するナノディスクまたはナノスフィアであり、
前記阻害剤薬物が、疎水性薬物または結合されている脂肪族鎖もしくはコレステロールもしくはリン脂質で誘導体化される親水性薬物のプロドラッグであり、
前記薬物が、造血幹細胞(HSC)、CMP、または骨髄系細胞の中の、インフラマソーム、代謝経路、またはエピジェネティクス経路の阻害剤であり、
前記ナノスケール構築物が、前記薬物を、前記患者の骨髄、血液、および/または脾臓における骨髄系細胞、骨髄系前駆細胞、または造血幹細胞へと送達することにより、前記移植レシピエントの患者において長期間の同種移植片の認容性が促進される、
ステップを含む、
方法。
【請求項7】
前記訓練された免疫の結果としての骨髄系細胞、その幹細胞、および前駆体の長期間の応答性亢進が、少なくとも7~30日間低減される、請求項1~6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記訓練された免疫の結果としての骨髄系細胞、その幹細胞、および前駆体の長期間の応答性亢進が、少なくとも30~100日間低減される、請求項1~6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記訓練された免疫の結果としての骨髄系細胞、その幹細胞、および前駆体の長期間の応答性亢進が、100日間超低減される、請求項1~6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記訓練された免疫の影響を受ける患者が、臓器移植のレシピエントであるか、またはアテローム性動脈硬化、関節炎、クローン病を含む炎症性腸疾患、自己免疫疾患、自己炎症性病態を罹患しているか、または脳卒中および心筋梗塞を含む心血管イベントを罹患していたことがある、請求項1~6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記ナノバイオロジー組成物が、1回投与され、前記訓練された免疫の結果としての骨髄系細胞、その幹細胞、および前駆体の長期間の応答性亢進が、少なくとも30日間低減される、請求項1~6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
前記ナノバイオロジー組成物が、複数回投与レジメンにおいて毎日1日あたり少なくとも1回投与され、前記訓練された免疫の結果としての骨髄系細胞、その幹細胞、および前駆体の長期間の応答性亢進が、少なくとも30日間低減される、請求項1~6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
訓練された免疫が、骨髄における骨髄系細胞およびその前駆体および幹細胞の最初の侵襲の後の再刺激に対する代謝およびエピジェネティクスの再配置により引き起こされるサイトカイン排出の増大が認められる二次的な応答性亢進により定義される、請求項1~6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
訓練された免疫が、骨髄系自然免疫細胞の、骨髄におけるこれら細胞またはその前駆体および幹細胞を刺激する最初の侵襲により誘導され、エピジェネティクス、代謝、および転写の再配置を介して行われる、二次的な刺激での再刺激の後の著しいサイトカイン産生からの長期間の応答性の増大により定義される、請求項1~6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
前記代謝経路またはエピジェネティクス経路の阻害剤が、NOD2受容体阻害剤、mTOR阻害剤、リボソームタンパク質S6キナーゼβ-1(S6K1)阻害剤、HMG-CoAレダクターゼ阻害剤(スタチン)、ヒストンH3K27デメチラーゼ阻害剤、BETブロモドメイン遮断阻害剤、ヒストンメチルトランスフェラーゼおよびアセチルトランスフェラーゼの阻害剤、DNAメチルトランスフェラーゼおよびアセチルトランスフェラーゼの阻害剤、インフラマソーム阻害剤、セリン/スレオニンキナーゼAkt阻害剤、HIF-1-αとしても知られている低酸素誘導因子1-αの阻害剤、ならびにそれらの1つ以上の混合物を含む、請求項1~6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
前記患者が、移植レシピエントであるか、またはアテローム性動脈硬化、関節炎、もしくは炎症性腸疾患を罹患しているか、または心血管イベントを罹患していたことがある、請求項1~6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
前記患者が、移植を経験しており、前記移植組織が、肺組織、心臓組織、腎臓組織、肝臓組織、網膜組織、角膜組織、皮膚組織、膵臓組織、腸組織、生殖器組織、卵巣組織、骨組織、腱組織、骨髄、または血管組織である、請求項1~6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項18】
前記方法を、ナイーブな応答亢進性ではないレベルまでサイトカインの産生を回復させるため、および長く持続するナイーブな応答亢進性ではないサイトカイン産生のレベルを、移植後の受け入れのため前記患者に誘導するために、移植前に行う、請求項1~6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項19】
前記ナノバイオロジー組成物が、骨髄、血液、および/または脾臓における骨髄系細胞、骨髄系前駆細胞、および造血幹細胞での薬物の集積をもたらすために、2回以上の投与を含む処置レジメンで、前記患者に投与される、請求項1~6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項20】
前記ナノバイオロジー組成物との併用療法として免疫抑制剤を共投与することを含む、請求項1~6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項21】
訓練された免疫を阻害するためのナノバイオロジー組成物であって、
ナノスケール構築物と、(ii)前記ナノスケール構築物に組み込まれている阻害剤薬物とを含み、
前記ナノスケール構築物が、(a)リン脂質またはリン脂質の混合物と、(b)apo A1またはapo A1のペプチドミメティックとを含む多成分の担体組成物であり、
前記ナノバイオロジー組成物が、水性環境において、直径約8nm~約400nmの大きさを有する自己集積するナノディスクまたはナノスフィアであり、
前記阻害剤薬物が、疎水性薬物または結合されている脂肪族鎖もしくはコレステロールもしくはリン脂質で誘導体化される親水性薬物のプロドラッグであり、
前記薬物が、造血幹細胞(HSC)、CMP、または骨髄系細胞の中の、インフラマソーム、代謝経路、またはエピジェネティクス経路の阻害剤である、
ナノバイオロジー組成物。
【請求項22】
訓練された免疫を阻害するためのナノバイオロジー組成物であって、
ナノスケール構築物と、(ii)前記ナノスケール構築物に組み込まれている阻害剤薬物とを含み、
前記ナノスケール構築物が、(a)リン脂質またはリン脂質の混合物と、(b)apo A1またはapo A1のペプチドミメティックと、(c)1つ以上のトリグリセリド、脂肪酸エステル、疎水性ポリマー、およびステロールエステルから選択されるマトリックス脂質とを含む多成分の担体組成物であり、
前記ナノバイオロジー組成物が、水性環境において、直径約8nm~約400nmの大きさを有する自己集積するナノディスクまたはナノスフィアであり、
前記阻害剤薬物が、疎水性薬物または結合されている脂肪族鎖もしくはコレステロールもしくはリン脂質で誘導体化される親水性薬物のプロドラッグであり、
前記薬物が、造血幹細胞(HSC)、CMP、または骨髄系細胞の中の、インフラマソーム、代謝経路、またはエピジェネティクス経路の阻害剤である、
ナノバイオロジー組成物。
【請求項23】
訓練された免疫を阻害するためのナノバイオロジー組成物であって、
ナノスケール構築物と、(ii)前記ナノスケール構築物に組み込まれている阻害剤薬物とを含み、
前記ナノスケール構築物が、(a)リン脂質またはリン脂質の混合物と、(b)apo A1またはapo A1のペプチドミメティックと、(c)1つ以上のトリグリセリド、脂肪酸エステル、疎水性ポリマー、およびステロールエステルから選択されるマトリックス脂質と、(d)コレステロールとを含む多成分の担体組成物であり、
前記ナノバイオロジー組成物が、水性環境において、直径約8nm~約400nmの大きさを有する自己集積するナノディスクまたはナノスフィアであり、
前記阻害剤薬物が、疎水性薬物または結合されている脂肪族鎖もしくはコレステロールもしくはリン脂質で誘導体化される親水性薬物のプロドラッグであり、
前記薬物が、造血幹細胞(HSC)、CMP、または骨髄系細胞の中の、インフラマソーム、代謝経路、またはエピジェネティクス経路の阻害剤である、
ナノバイオロジー組成物。
【請求項24】
前記代謝経路またはエピジェネティクス経路の阻害剤が、NOD2受容体阻害剤、mTOR阻害剤、リボソームタンパク質S6キナーゼβ-1(S6K1)阻害剤、HMG-CoAレダクターゼ阻害剤(スタチン)、ヒストンH3K27デメチラーゼ阻害剤、BETブロモドメイン遮断阻害剤、ヒストンメチルトランスフェラーゼおよびアセチルトランスフェラーゼの阻害剤、DNAメチルトランスフェラーゼおよびアセチルトランスフェラーゼの阻害剤、インフラマソーム阻害剤、セリン/スレオニンキナーゼAkt阻害剤、HIF-1-αとしても知られている低酸素誘導因子1-αの阻害剤、ならびにそれらの1つ以上の混合物を含む、請求項21~23のいずれか1項に記載のナノバイオロジー組成物。
【請求項25】
訓練された免疫を阻害するためのナノバイオロジー組成物を製造するためのプロセスであって、
阻害剤薬物をナノスケール構築物に組み込むステップであって、
前記ナノスケール構築物が、(a)リン脂質またはリン脂質の混合物と、(b)apo A1またはapo A1のペプチドミメティックとを含む多成分の担体組成物であり、
前記ナノバイオロジー組成物が、水性環境において、直径約8nm~約400nmの大きさを有する自己集積するナノディスクまたはナノスフィアであり、
前記阻害剤薬物が、疎水性薬物または結合されている脂肪族鎖もしくはコレステロールもしくはリン脂質で誘導体化される親水性薬物のプロドラッグであり、
前記薬物が、造血幹細胞(HSC)、CMP、または骨髄系細胞の中の、インフラマソーム、代謝経路、またはエピジェネティクス経路の阻害剤である、
ステップを含む、
プロセス。
【請求項26】
訓練された免疫を阻害するためのナノバイオロジー組成物を製造するためのプロセスであって、
阻害剤薬物をナノスケール構築物に組み込むステップであって、
前記ナノスケール構築物が、(a)リン脂質またはリン脂質の混合物と、(b)apo A1またはapo A1のペプチドミメティックと、(c)1つ以上のトリグリセリド、脂肪酸エステル、疎水性ポリマー、およびステロールエステルから選択されるマトリックス脂質とを含む多成分の担体組成物であり、
前記ナノバイオロジー組成物が、水性環境において、直径約8nm~約400nmの大きさを有する自己集積するナノディスクまたはナノスフィアであり、
前記阻害剤薬物が、疎水性薬物または結合されている脂肪族鎖もしくはコレステロールもしくはリン脂質で誘導体化される親水性薬物のプロドラッグであり、
前記薬物が、造血幹細胞(HSC)、CMP、または骨髄系細胞の中の、インフラマソーム、代謝経路、またはエピジェネティクス経路の阻害剤である、
ステップを含む、
プロセス。
【請求項27】
訓練された免疫を阻害するためのナノバイオロジー組成物を製造するためのプロセスであって、
阻害剤薬物をナノスケール構築物に組み込むステップであって、
前記ナノスケール構築物が、(a)リン脂質またはリン脂質の混合物と、(b)apo A1またはapo A1のペプチドミメティックと、(c)1つ以上のトリグリセリド、脂肪酸エステル、疎水性ポリマー、およびステロールエステルから選択されるマトリックス脂質と、(d)コレステロールとを含む多成分の担体組成物であり、
前記ナノバイオロジー組成物が、水性環境において、直径約8nm~約400nmの大きさを有する自己集積するナノディスクまたはナノスフィアであり、
前記阻害剤薬物が、疎水性薬物または結合されている脂肪族鎖もしくはコレステロールもしくはリン脂質で誘導体化される親水性薬物のプロドラッグであり、
前記薬物が、造血幹細胞(HSC)、CMP、または骨髄系細胞の中の、インフラマソーム、代謝経路、またはエピジェネティクス経路の阻害剤である、
ステップを含む、
プロセス。
【請求項28】
前記構築物が、マイクロフルイディクス、スケールアップマイクロフルイダイザー技術、超音波処理、有機-水間の注入、または脂質フィルムの水和を使用して組み合わせられる、請求項25~27のいずれか1項に記載の製造のためのプロセス。
【請求項29】
骨髄、血液、および脾臓における集積を造影するためのナノバイオロジー組成物であって、
ナノスケール構築物と、(ii)前記ナノスケール構築物に組み込まれている阻害剤薬物と、(iii)前記ナノスケール構築物に組み込まれているポジトロン断層撮影(PET)の造影用放射性同位体とを含み、
前記ナノスケール構築物が、(a)リン脂質またはリン脂質の混合物と、(b)アポリポタンパク質A-I(apoA-I)またはapoA-Iのペプチドミメティックとを含む多成分の担体組成物であり、
前記ナノバイオロジー組成物が、水性環境において、直径約8nm~約400nmの大きさを有する自己集積するナノディスクまたはナノスフィアであり、
前記阻害剤薬物が、疎水性薬物または結合されている脂肪族鎖もしくはコレステロールもしくはリン脂質で誘導体化される親水性薬物のプロドラッグであり、
前記薬物が、造血幹細胞(HSC)、CMP、または骨髄系細胞の中の、インフラマソーム、代謝経路、またはエピジェネティクス経路の阻害剤であり、
前記PET造影用放射性同位体が、89Zr、124I、64Cu、18F、および86Yから選択され、前記PET造影用放射性同位体が、安定したナノバイオロジー組成物-放射性同位体のキレートを形成するのに適したキレート剤を使用して前記ナノバイオロジー組成物と錯体形成されている、
ナノバイオロジー組成物。
【請求項30】
骨髄、血液、および脾臓における集積を造影するためのナノバイオロジー組成物であって、
ナノスケール構築物と、(ii)前記ナノスケール構築物に組み込まれている阻害剤薬物と、(iii)前記ナノスケール構築物に組み込まれているポジトロン断層撮影(PET)の造影用放射性同位体とを含み、
前記ナノスケール構築物が、(a)リン脂質またはリン脂質の混合物と、(b)アポリポタンパク質A-I(apoA-I)またはapoA-Iのペプチドミメティックと、(c)1つ以上のトリグリセリド、脂肪酸エステル、疎水性ポリマー、およびステロールエステルから選択されるマトリックス脂質とを含む多成分の担体組成物であり、
前記ナノバイオロジー組成物が、水性環境において、直径約8nm~約400nmの大きさを有する自己集積するナノディスクまたはナノスフィアであり、
前記阻害剤薬物が、疎水性薬物または結合されている脂肪族鎖もしくはコレステロールもしくはリン脂質で誘導体化される親水性薬物のプロドラッグであり、
前記薬物が、造血幹細胞(HSC)、CMP、または骨髄系細胞の中の、インフラマソーム、代謝経路、またはエピジェネティクス経路の阻害剤であり、
前記PET造影用放射性同位体が、89Zr、124I、64Cu、18F、および86Yから選択され、前記PET造影用放射性同位体が、安定したナノバイオロジー組成物-放射性同位体のキレートを形成するのに適したキレート剤を使用して前記ナノバイオロジー組成物と錯体形成されている、
ナノバイオロジー組成物。
【請求項31】
骨髄、血液、および脾臓における集積を造影するためのナノバイオロジー組成物であって、
ナノスケール構築物と、(ii)前記ナノスケール構築物に組み込まれている阻害剤薬物と、(iii)前記ナノスケール構築物に組み込まれているポジトロン断層撮影(PET)の造影用放射性同位体とを含み、
前記ナノスケール構築物が、(a)リン脂質またはリン脂質の混合物と、(b)アポリポタンパク質A-I(apoA-I)またはapoA-Iのペプチドミメティックと、(c)1つ以上のトリグリセリド、脂肪酸エステル、疎水性ポリマー、およびステロールエステルから選択されるマトリックス脂質と、(d)コレステロールとを含む多成分の担体組成物であり、
前記ナノバイオロジー組成物が、水性環境において、直径約8nm~約400nmの大きさを有する自己集積するナノディスクまたはナノスフィアであり、
前記阻害剤薬物が、疎水性薬物または結合されている脂肪族鎖もしくはコレステロールもしくはリン脂質で誘導体化される親水性薬物のプロドラッグであり、
前記薬物が、造血幹細胞(HSC)、CMP、または骨髄系細胞の中の、インフラマソーム、代謝経路、またはエピジェネティクス経路の阻害剤であり、
前記PET造影用放射性同位体が、89Zr、124I、64Cu、18F、および86Yから選択され、前記PET造影用放射性同位体が、安定したナノバイオロジー組成物-放射性同位体のキレートを形成するのに適したキレート剤を使用して前記ナノバイオロジー組成物と錯体形成されている、
ナノバイオロジー組成物。
【請求項32】
訓練された免疫の影響を受ける患者の骨髄、血液、および/または脾臓の中のナノバイオロジー組成物の集積を造影するポジトロン断層撮影(PET)の方法であって、
ナノバイオロジー組成物を、応答亢進性自然免疫応答を阻害するのに有効な量で、前記患者に投与するステップであって、
前記ナノバイオロジー組成物が、(i)ナノスケール構築物と、(ii)前記ナノスケール構築物に組み込まれている阻害剤薬物と、(iii)前記ナノスケール構築物に組み込まれているポジトロン断層撮影(PET)放射性同位体とを含み、
前記ナノスケール構築物が、(a)リン脂質と、(b)apoA-IまたはapoA-Iのペプチドミメティックとを含む多成分の担体組成物であり、
前記阻害剤薬物が、疎水性薬物または結合されている脂肪族鎖もしくはコレステロールもしくはリン脂質で誘導体化される親水性薬物のプロドラッグであり、
前記薬物が、造血幹細胞(HSC)、CMP、または骨髄系細胞の中の、インフラマソーム、代謝経路、またはエピジェネティクス経路の阻害剤であり、
前記PET造影用放射性同位体が、89Zr、124I、64Cu、18F、および86Yから選択され、前記PET造影用放射性同位体が、安定したナノバイオロジー組成物-放射性同位体のキレートを形成するのに適したキレート剤を使用して前記ナノバイオロジー組成物と錯体形成されており、
前記ナノバイオロジー組成物が、水性環境において、直径約8nm~約400nmの大きさを有する自己集積するナノディスクまたはナノスフィアであり、
前記ナノスケール構築物が、安定したナノバイオロジー組成物-放射性同位体のキレートを、前記患者の骨髄、血液、および/または脾臓における骨髄系細胞、骨髄系前駆細胞、または造血幹細胞へと送達する
ステップと、
(2)前記患者の身体の骨髄、血液、および/または脾臓の中の安定したナノバイオロジー組成物-放射性同位体のキレートの体内分布を視覚化するために、前記患者のPET造影を行うステップと
を含む、方法。
【請求項33】
訓練された免疫の影響を受ける患者の骨髄、血液、および/または脾臓の中のナノバイオロジー組成物の集積を造影するポジトロン断層撮影(PET)の方法であって、
ナノバイオロジー組成物を、応答亢進性自然免疫応答を阻害するのに有効な量で、前記患者に投与するステップであって、
前記ナノバイオロジー組成物が、(i)ナノスケール構築物と、(ii)前記ナノスケール構築物に組み込まれている阻害剤薬物と、(iii)前記ナノスケール構築物に組み込まれているポジトロン断層撮影(PET)放射性同位体とを含み、
前記ナノスケール構築物が、(a)リン脂質と、(b)apoA-IまたはapoA-Iのペプチドミメティックと、(c)1つ以上のトリグリセリド、脂肪酸エステル、疎水性ポリマー、およびステロールエステルから選択されるマトリックス脂質とを含む多成分の担体組成物であり、
前記阻害剤薬物が、疎水性薬物または結合されている脂肪族鎖もしくはコレステロールもしくはリン脂質で誘導体化される親水性薬物のプロドラッグであり、
前記薬物が、造血幹細胞(HSC)、CMP、または骨髄系細胞の中の、インフラマソーム、代謝経路、またはエピジェネティクス経路の阻害剤であり、
前記PET造影用放射性同位体が、89Zr、124I、64Cu、18F、および86Yから選択され、前記PET造影用放射性同位体が、安定したナノバイオロジー組成物-放射性同位体のキレートを形成するのに適したキレート剤を使用して前記ナノバイオロジー組成物と錯体形成されており、
前記ナノバイオロジー組成物が、水性環境において、直径約8nm~約400nmの大きさを有する自己集積するナノディスクまたはナノスフィアであり、
前記ナノスケール構築物が、安定したナノバイオロジー組成物-放射性同位体のキレートを、前記患者の骨髄、血液、および/または脾臓における骨髄系細胞、骨髄系前駆細胞、または造血幹細胞へと送達する
ステップと、
(2)前記患者の身体の骨髄、血液、および/または脾臓の中の安定したナノバイオロジー組成物-放射性同位体のキレートの体内分布を視覚化するために、前記患者のPET造影を行うステップと
を含む、方法。
【請求項34】
訓練された免疫の影響を受ける患者の骨髄、血液、および/または脾臓の中のナノバイオロジー組成物の集積を造影するポジトロン断層撮影(PET)の方法であって、
ナノバイオロジー組成物を、応答亢進性自然免疫応答を阻害するのに有効な量で、前記患者に投与するステップであって、
前記ナノバイオロジー組成物が、(i)ナノスケール構築物と、(ii)前記ナノスケール構築物に組み込まれている阻害剤薬物と、(iii)前記ナノスケール構築物に組み込まれているポジトロン断層撮影(PET)放射性同位体とを含み、
前記ナノスケール構築物が、(a)リン脂質と、(b)apoA-IまたはapoA-Iのペプチドミメティックと、(c)1つ以上のトリグリセリド、脂肪酸エステル、疎水性ポリマー、およびステロールエステルから選択されるマトリックス脂質と、(d)コレステロールとを含む多成分の担体組成物であり、
前記阻害剤薬物が、疎水性薬物または結合されている脂肪族鎖もしくはコレステロールもしくはリン脂質で誘導体化される親水性薬物のプロドラッグであり、
前記薬物が、造血幹細胞(HSC)、CMP、または骨髄系細胞の中の、インフラマソーム、代謝経路、またはエピジェネティクス経路の阻害剤であり、
前記PET造影用放射性同位体が、89Zr、124I、64Cu、18F、および86Yから選択され、前記PET造影用放射性同位体が、安定したナノバイオロジー組成物-放射性同位体のキレートを形成するのに適したキレート剤を使用して前記ナノバイオロジー組成物と錯体形成されており、
前記ナノバイオロジー組成物が、水性環境において、直径約8nm~約400nmの大きさを有する自己集積するナノディスクまたはナノスフィアであり、
前記ナノスケール構築物が、安定したナノバイオロジー組成物-放射性同位体のキレートを、前記患者の骨髄、血液、および/または脾臓における骨髄系細胞、骨髄系前駆細胞、または造血幹細胞へと送達する
ステップと、
(2)前記患者の身体の骨髄、血液、および/または脾臓の中の安定したナノバイオロジー組成物-放射性同位体のキレートの体内分布を視覚化するために、前記患者のPET造影を行うステップと
を含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連案件に対する相互参照
本願は、全体が本明細書で参照によって組み込まれている、2018年11月20日に出願の米国特許出願番号第62/588,790号および2018年9月21日に出願の米国特許出願番号第62/734,664号に対する優先権を主張する。
【0002】
連邦政府による資金提供を受けたR&Dの記載
本発明は、アメリカ国立衛生研究所により認可された承認番号R01 HL118440の下、政府の支援を受けてなされたものである。政府は、本発明において特定の権利を有する。
【0003】
発明の分野
本発明は、骨髄、脾臓、および血液における骨髄系細胞およびその前駆体および幹細胞の最初の侵襲の後の再刺激に対する代謝およびエピジェネティクスの再配置(rewiring)によりもたらされるサイトカイン排出の増大が認められる、二次的な長期間の応答性亢進である、訓練された免疫を阻害することにより、臓器移植を受けたことがあるか、またはアテローム性動脈硬化、関節炎、クローン病を含む炎症性腸疾患、自己免疫疾患、および/もしくは自己炎症性病態を罹患しているか、または脳卒中および心筋梗塞を含む心血管イベントの後の患者を処置する治療用ナノバイオロジー組成物および方法に関する。
【背景技術】
【0004】
自己免疫および免疫系の機能不全を罹患している患者への現在の処置は、不適切である。臓器移植を受けたことがあるか、またはアテローム性動脈硬化、関節炎、クローン病を含む炎症性腸疾患、糖尿病を含む自己免疫疾患、および/もしくは自己炎症性病態を罹患しているか、または脳卒中および心筋梗塞を含む心血管イベントの後の患者は、持続可能であり、一次処置自体よりも副作用の問題をもたらさない処置のパラダイムを必要としている。
【発明の概要】
【0005】
よって、従来技術のこれらおよび他の欠陥に対処するために、本発明の好ましい実施形態において、訓練された免疫(trained immunity)を阻害するための治療用作用物質を用いて、それを必要とする患者を処置する方法が提供される。
【0006】
訓練された免疫は、骨髄、脾臓、および血液における骨髄系細胞およびその前駆体および幹細胞の最初の侵襲の後の再刺激に対する代謝およびエピジェネティクスの再配置により引き起こされるサイトカイン排出の増大が認められる二次的な長期間の応答性亢進により定義される。訓練された免疫(自然免疫記憶とも呼ばれる)はまた、骨髄および脾臓におけるこれら細胞またはその前駆体および幹細胞を刺激する最初の侵襲により誘導され、エピジェネティクス、代謝、および転写の再配置を介して行われる、骨髄系自然免疫細胞の二次的な刺激での再刺激の後の長期間の応答性の増大(たとえば著しいサイトカイン産生)により定義される。
【0007】
訓練された免疫の影響を受ける患者の処置
本発明の非限定的な好ましい実施形態では、訓練された免疫の影響を受ける患者において自然免疫応答を低減するために前記患者を処置する方法であって、
ナノバイオロジー組成物を、応答亢進性の自然免疫応答を低減するために有効な量で、前記患者に投与するステップであって、
前記ナノバイオロジー組成物が、(i)ナノスケール構築物と、(ii)前記ナノスケール構築物に組み込まれている阻害剤薬物とを含み、
前記ナノスケール構築物が、(a)リン脂質と(b)アポリポタンパク質A-I(apoA-I)またはapoA-Iのペプチドミメティックとを含む多成分の担体組成物であり、
前記ナノバイオロジー組成物が、水性環境において、直径約8nm~約400nmの大きさを有する自己集積するナノディスクまたはナノスフィアであり、
前記阻害剤薬物が、疎水性薬物または結合されている脂肪族鎖もしくはコレステロールもしくはリン脂質で誘導体化される親水性薬物のプロドラッグであり、
前記薬物が、造血幹細胞(HSC)、CMP(骨髄系共通前駆体:common myeloid progenitor)、または骨髄系細胞の中の、インフラマソーム、代謝経路、またはエピジェネティクス経路の阻害剤であり、
前記ナノスケール構築物が、前記薬物を、前記患者の骨髄、血液、および/または脾臓における骨髄系細胞、骨髄系前駆細胞、または造血幹細胞へと送達することにより、前記患者において訓練された免疫により引き起こされる応答亢進性の自然免疫応答が低減される、
ステップを含む、
方法が提供される。
【0008】
本発明の非限定的な好ましい実施形態では、訓練された免疫の影響を受ける患者において自然免疫応答を低減するために前記患者を処置する方法であって、
前記ナノスケール構築物が、
リン脂質と、
アポリポタンパク質A-I(apoA-I)またはapoA-Iのペプチドミメティックと、
1つ以上のトリグリセリド、脂肪酸エステル、疎水性ポリマー、またはステロールエステルまたはそれらの組み合わせを含む疎水性マトリックスと
を含む多成分の担体組成物である、
方法が提供される。
【0009】
本発明の別の非限定的な好ましい実施形態では、訓練された免疫の影響を受ける患者において応答亢進性の自然免疫応答を低減するために前記患者を処置する方法であって、
前記ナノスケール構築物が、
リン脂質と、
アポリポタンパク質A-I(apoA-I)またはapoA-Iのペプチドミメティックと、
1つ以上のトリグリセリド、脂肪酸エステル、疎水性ポリマー、またはステロールエステルまたはそれらの組み合わせを含む疎水性マトリックスと、
コレステロールと
を含む多成分の担体組成物である、
方法が提供される。
【0010】
同種移植片の認容性の促進
本発明の非限定的な好ましい実施形態では、移植レシピエントである患者の同種移植片の認容性を促進させる方法であって、
ナノバイオロジー組成物を、永続的な同種移植片の認容性を誘導するのに有効な量で、前記患者に投与するステップであって、
前記ナノバイオロジー組成物が、(i)ナノスケール構築物と、(ii)前記ナノスケール構築物に組み込まれている阻害剤薬物とを含み、
前記ナノスケール構築物が、(a)リン脂質またはリン脂質の混合物と、(b)アポリポタンパク質A-I(apoA-I)またはapoA-Iのペプチドミメティックとを含む多成分の担体組成物であり、
前記ナノバイオロジー組成物が、水性環境において、直径約8nm~約400nmの大きさを有する自己集積するナノディスクまたはナノスフィアであり、
前記阻害剤薬物が、疎水性薬物または結合されている脂肪族鎖もしくはコレステロールもしくはリン脂質で誘導体化される親水性薬物のプロドラッグであり、
前記薬物が、造血幹細胞(HSC)、CMP、または骨髄系細胞の中の、インフラマソーム、代謝経路、またはエピジェネティクス経路の阻害剤であり、
前記ナノスケール構築物が、前記薬物を、前記患者の骨髄、血液、および/または脾臓における骨髄系細胞、骨髄系前駆細胞、または造血幹細胞へと送達することにより、前記移植レシピエントの患者において永続的な同種移植片の認容性が誘導される、
ステップを含む、方法が提供される。
【0011】
本発明の非限定的な好ましい実施形態では、移植レシピエントである患者の同種移植片の認容性を促進させる方法であって、
前記ナノスケール構築物が、
リン脂質またはリン脂質の混合物と、
アポリポタンパク質A-I(apoA-I)またはapoA-Iのペプチドミメティックと、
1つ以上のトリグリセリド、脂肪酸エステル、疎水性ポリマー、およびステロールエステルから選択されるマトリックス脂質と
を含む多成分の担体組成物である、
方法が提供される。
【0012】
本発明の非限定的な好ましい実施形態では、移植レシピエントである患者の同種移植片の認容性を促進させる方法であって、前記ナノスケール構築物が、
リン脂質またはリン脂質の混合物と、
アポリポタンパク質A-I(apoA-I)またはapoA-Iのペプチドミメティックと、
1つ以上のトリグリセリド、脂肪酸エステル、疎水性ポリマー、およびステロールエステルから選択されるマトリックス脂質と、
コレステロールと
を含む多成分の担体組成物である、
方法が提供される。
【0013】
持続効果
本発明の非限定的な好ましい実施形態では、本明細書中の方法のいずれか1つにおいて、応答亢進性の自然免疫応答が、少なくとも7~30日間、低減される。
【0014】
本発明の非限定的な好ましい実施形態では、本明細書中の方法のいずれか1つにおいて、応答亢進性の自然免疫応答が、少なくとも30~100日間、低減される。
【0015】
本発明の非限定的な好ましい実施形態では、本明細書中の方法のいずれか1つにおいて、訓練された免疫の結果としての骨髄系細胞、その幹細胞および前駆体の長期間の応答性亢進(応答亢進性の自然免疫応答)が、少なくとも100日~最大数年間、低減される。
【0016】
本発明の非限定的な好ましい実施形態では、本明細書中の方法のいずれか1つにおいて、ナノバイオロジー組成物は、1回投与され、訓練された免疫の結果としての骨髄系細胞、その幹細胞および前駆体の長期間の応答性亢進が、少なくとも30日間低減される。
【0017】
本発明の非限定的な好ましい実施形態では、本明細書中の方法のいずれか1つにおいて、ナノバイオロジー組成物が、複数回投与レジメンにおいて毎日1日あたり少なくとも1回投与され、訓練された免疫の結果としての骨髄系細胞、その幹細胞および前駆体の長期間の応答性亢進が、少なくとも30日間低減される。
【0018】
本発明の非限定的な好ましい実施形態では、本明細書中の方法のいずれか1つにおいて、訓練された免疫が、骨髄、脾臓、および血液における骨髄系細胞およびその前駆体および幹細胞の最初の侵襲の後の再刺激に対する代謝およびエピジェネティクスの再配置により引き起こされるサイトカイン排出の増大が認められる、二次的な長期間の応答性亢進により定義される。
【0019】
本発明の非限定的な好ましい実施形態では、本明細書中の方法のいずれか1つにおいて、訓練された免疫は、骨髄における骨髄系自然免疫細胞またはその前駆体および幹細胞を刺激する最初の侵襲により誘導され、エピジェネティクス、代謝、および転写の再配置を介して行われる、骨髄系自然免疫細胞の二次的な刺激での再刺激後の著しいサイトカイン産生からの長期間の応答性の増大により定義される。
【0020】
疾患、障害、および病態
本発明の非限定的な好ましい実施形態では、本明細書中の方法のいずれか1つにおいて、訓練された免疫の影響を受ける患者は、臓器移植のレシピエントであるか、またはアテローム性動脈硬化、関節炎、クローン病を含む炎症性腸疾患、糖尿病を含む自己免疫疾患、自己炎症性病態を罹患しているか、または脳卒中および心筋梗塞を含む心血管イベントを罹患していたことがある。
【0021】
本発明の非限定的な好ましい実施形態では、本明細書中の方法のいずれか1つにおいて、患者は、移植レシピエントであるか、またはアテローム性動脈硬化、関節炎、もしくは炎症性腸疾患を罹患しているか、または心血管イベントを罹患していたことがある。
【0022】
本発明の非限定的な好ましい実施形態では、本明細書中の方法のいずれか1つにおいて、患者は、移植を受けたことがあり、移植組織は、肺組織、心臓組織、腎臓組織、肝臓組織、網膜組織、角膜組織、皮膚組織、膵臓組織、腸組織、生殖器組織、卵巣組織、骨組織、腱組織、骨髄、または血管組織である。
【0023】
本発明の非限定的な好ましい実施形態では、本明細書中の方法のいずれか1つにおいて、本方法は、ナイーブな、応答亢進性ではないレベルまでサイトカインの産生を回復させるため、および長く持続するナイーブな応答亢進性ではないサイトカイン産生のレベルを誘導するために、移植前に行われ、好ましくは、移植後の受け入れのため前記患者に対して炎症性骨髄系細胞の免疫抑制骨髄系細胞に対する比を減少させる。
【0024】
本発明の非限定的な好ましい実施形態では、本明細書中の方法のいずれか1つにおいて、ナノバイオロジー組成物は、骨髄、血液、および/または脾臓における骨髄系細胞、骨髄系前駆細胞、および造血幹細胞における薬物の集積をもたらすための前記患者への1つ以上の投与を含む処置レジメンにおいて投与される。
【0025】
阻害剤
本発明の非限定的な好ましい実施形態では、本明細書中の方法のいずれか1つにおいて、阻害剤は、インフラマソーム阻害剤または代謝経路もしくはエピジェネティクス経路の阻害剤であり、たとえば、限定するものではないが、NOD2受容体阻害剤、mTOR阻害剤、リボソームタンパク質S6キナーゼβ-1(S6K1)阻害剤、HMG-CoAレダクターゼ阻害剤(スタチン)、ヒストンH3K27デメチラーゼ阻害剤、BETブロモドメイン遮断阻害剤、ヒストンメチルトランスフェラーゼおよびアセチルトランスフェラーゼの阻害剤、DNAメチルトランスフェラーゼおよびアセチルトランスフェラーゼの阻害剤、セリン/スレオニンキナーゼAkt阻害剤、HIF-1-αとしても知られている低酸素誘導因子1-αの阻害剤、ならびにそれらの1つ以上の混合物などを含む。
【0026】
本発明の非限定的な好ましい実施形態では、本明細書中の方法のいずれか1つにおいて、ナノバイオロジー組成物との併用療法として免疫療法薬物との共投与を含む方法が提供される。
【0027】
ナノバイオロジー組成物
本発明の非限定的な好ましい実施形態では、訓練された免疫を阻害するためのナノバイオロジー組成物であって、
ナノスケール構築物と、(ii)前記ナノスケール構築物に組み込まれている阻害剤薬物とを含み、
前記ナノスケール構築物が、(a)リン脂質またはリン脂質の混合物と、(b)アポリポタンパク質A-I(apoA-I)またはapoA-Iのペプチドミメティックとを含む多成分の担体組成物であり、
前記ナノバイオロジー組成物が、水性環境において、直径約8nm~約400nmの大きさを有する自己集積するナノディスクまたはナノスフィアであり、
前記阻害剤薬物が、疎水性薬物または結合されている脂肪族鎖もしくはコレステロールもしくはリン脂質で誘導体化される親水性薬物のプロドラッグであり、
前記薬物が、造血幹細胞(HSC)、CMP、または骨髄系細胞の中の、インフラマソーム、代謝経路、またはエピジェネティクス経路の阻害剤である、
ナノバイオロジー組成物が提供される。
【0028】
本発明の非限定的な好ましい実施形態では、訓練された免疫を阻害するためのナノバイオロジー組成物であって、
前記ナノスケール構築物が、
リン脂質またはリン脂質の混合物と、
アポリポタンパク質A-I(apoA-I)またはapoA-Iのペプチドミメティックと、
1つ以上のトリグリセリド、脂肪酸エステル、疎水性ポリマー、およびステロールエステルから構成される疎水性マトリックスと
を含む多成分の担体組成物である、
ナノバイオロジー組成物が提供される。
【0029】
本発明の非限定的な好ましい実施形態では、訓練された免疫を阻害するためのナノバイオロジー組成物であって、
前記ナノスケール構築物が、
リン脂質またはリン脂質の混合物と、
アポリポタンパク質A-I(apoA-I)またはapoA-Iのペプチドミメティックと、
1つ以上のトリグリセリド、脂肪酸エステル、疎水性ポリマー、およびステロールエステルから構成される疎水性マトリックスと、
コレステロールと
を含む多成分の担体組成物である、
ナノバイオロジー組成物が提供される。
【0030】
本発明の非限定的な好ましい実施形態では、訓練された免疫を阻害するためのナノバイオロジー組成物であって、
代謝経路またはエピジェネティクス経路の阻害剤が、NOD2受容体阻害剤、mTOR阻害剤、リボソームタンパク質S6キナーゼβ-1(S6K1)阻害剤、HMG-CoAレダクターゼ阻害剤(スタチン)、ヒストンH3K27デメチラーゼ阻害剤、BETブロモドメイン遮断阻害剤、ヒストンメチルトランスフェラーゼおよびアセチルトランスフェラーゼの阻害剤、DNAメチルトランスフェラーゼおよびアセチルトランスフェラーゼの阻害剤、インフラマソーム阻害剤、セリン/スレオニンキナーゼAkt阻害剤、HIF-1-αとしても知られている低酸素誘導因子1-αの阻害剤、ならびにそれらの1つ以上の混合物を含む、
ナノバイオロジー組成物が提供される。
【0031】
製造のためのプロセス
本発明の非限定的な好ましい実施形態では、訓練された免疫を阻害するためのナノバイオロジー組成物を製造するためのプロセスであって、
阻害剤薬物をナノスケール構築物に組み込むステップであって、
前記ナノスケール構築物が、(a)リン脂質またはリン脂質の混合物と、(b)アポリポタンパク質A-I(apoA-I)またはapoA-Iのペプチドミメティックとを含む多成分の担体組成物であり、
前記ナノバイオロジー組成物が、水性環境において、直径約8nm~約400nmの大きさを有する自己集積するナノディスクまたはナノスフィアであり、
前記阻害剤薬物が、疎水性薬物または結合されている脂肪族鎖もしくはコレステロールもしくはリン脂質で誘導体化される親水性薬物のプロドラッグであり、
前記薬物が、造血幹細胞(HSC)、CMP、または骨髄系細胞の中の、インフラマソーム、代謝経路、またはエピジェネティクス経路の阻害剤である、
ステップを含む、プロセスが提供される。
【0032】
本発明の非限定的な好ましい実施形態では、訓練された免疫を阻害するためのナノバイオロジー組成物を製造するためのプロセスであって、
前記ナノスケール構築物が、
リン脂質またはリン脂質の混合物と、
アポリポタンパク質A-I(apoA-I)またはapoA-Iのペプチドミメティックと、
1つ以上のトリグリセリド、脂肪酸エステル、疎水性ポリマー、およびステロールエステルから構成される疎水性マトリックスと
を含む多成分の担体組成物である、
プロセスが提供される。
【0033】
本発明の非限定的な好ましい実施形態では、訓練された免疫を阻害するためのナノバイオロジー組成物を製造するためのプロセスであって、
前記ナノスケール構築物が、
リン脂質またはリン脂質の混合物と、
アポリポタンパク質A-I(apoA-I)またはapoA-Iのペプチドミメティックと、
1つ以上のトリグリセリド、脂肪酸エステル、疎水性ポリマー、およびステロールエステルから構成される疎水性マトリックスと、
コレステロールと
を含む多成分の担体組成物である、
プロセスが提供される。
【0034】
本発明の非限定的な好ましい実施形態では、製造するためのプロセスであって、前記構築物が、マイクロフルイディクス、高圧のホモジナイゼーション スケールアップマイクロフルイダイザー技術、超音波処理、有機-水間の注入(organic-to-aqueous infusion)、または脂質フィルムの水和を使用して組み合わせられる、プロセスが提供される。
【0035】
放射標識したナノバイオロジー組成物および使用方法
本発明の非限定的な好ましい実施形態では、骨髄、血液、および脾臓における集積を造影するためのナノバイオロジー組成物であって、
ナノスケール構築物と、(ii)前記ナノスケール構築物に組み込まれている阻害剤薬物と、(iii)前記ナノスケール構築物に組み込まれているポジトロン断層撮影(PET)の造影用放射性同位体とを含み、
前記ナノスケール構築物が、(a)リン脂質またはリン脂質の混合物と、(b)アポリポタンパク質A-I(apoA-I)またはapoA-Iのペプチドミメティックとを含む多成分の担体組成物であり、
前記ナノバイオロジー組成物が、水性環境において、直径約8nm~約400nmの大きさを有する自己集積するナノディスクまたはナノスフィアであり、
前記阻害剤薬物が、疎水性薬物または結合されている脂肪族鎖もしくはコレステロールもしくはリン脂質で誘導体化される親水性薬物のプロドラッグであり、
前記薬物が、造血幹細胞(HSC)、CMP、または骨髄系細胞の中の、インフラマソーム、代謝経路、またはエピジェネティクス経路の阻害剤であり、
前記PET造影用放射性同位体が、89Zr、124I、64Cu、18F、および86Yから選択され、
前記PET造影用放射性同位体が、安定したナノバイオロジー組成物-放射性同位体のキレートを形成するのに適したキレート剤を使用して前記ナノバイオロジー組成物と錯体形成されている
ナノバイオロジー組成物が提供される。
【0036】
本発明のさらなる非限定的な好ましい実施形態では、骨髄、血液、および脾臓における集積を造影するためのナノバイオロジー組成物であって、
ナノスケール構築物と、(ii)前記ナノスケール構築物に組み込まれている阻害剤薬物と、(iii)前記ナノスケール構築物に組み込まれているポジトロン断層撮影(PET)の造影用放射性同位体とを含み、
前記ナノスケール構築物が、(a)リン脂質またはリン脂質の混合物と、(b)アポリポタンパク質A-I(apoA-I)またはapoA-Iのペプチドミメティックと、(c)1つ以上のトリグリセリド、脂肪酸エステル、疎水性ポリマー、およびステロールエステルから構成される疎水性マトリックスとを含む多成分の担体組成物であり、
前記ナノバイオロジー組成物が、水性環境において、直径約8nm~約400nmの大きさを有する自己集積するナノディスクまたはナノスフィアであり、
前記阻害剤薬物が、疎水性薬物または結合されている脂肪族鎖もしくはコレステロールもしくはリン脂質で誘導体化される親水性薬物のプロドラッグであり、
前記薬物が、造血幹細胞(HSC)、CMP、または骨髄系細胞の中の、インフラマソーム、代謝経路、またはエピジェネティクス経路の阻害剤であり、
前記PET造影用放射性同位体が、89Zr、124I、64Cu、18F、および86Yから選択され、
前記PET造影用放射性同位体が、安定したナノバイオロジー組成物-放射性同位体のキレートを形成するのに適したキレート剤を使用して前記ナノバイオロジー組成物と錯体形成されている
ナノバイオロジー組成物が提供される。
【0037】
本発明のさらなる非限定的な好ましい実施形態では、骨髄、血液、および脾臓における集積を造影するためのナノバイオロジー組成物であって、
ナノスケール構築物と、(ii)前記ナノスケール構築物に組み込まれている阻害剤薬物と、(iii)前記ナノスケール構築物に組み込まれているポジトロン断層撮影(PET)の造影用放射性同位体とを含み、
前記ナノスケール構築物が、(a)リン脂質またはリン脂質の混合物と、(b)アポリポタンパク質A-I(apoA-I)またはapoA-Iのペプチドミメティックと、(c)1つ以上のトリグリセリド、脂肪酸エステル、疎水性ポリマー、およびステロールエステルから構成される疎水性マトリックスと、(d)コレステロールとを含む多成分の担体組成物であり、
前記ナノバイオロジー組成物が、水性環境において、直径約8nm~約400nmの大きさを有する自己集積するナノディスクまたはナノスフィアであり、
前記阻害剤薬物が、疎水性薬物または結合されている脂肪族鎖もしくはコレステロールもしくはリン脂質で誘導体化される親水性薬物のプロドラッグであり、
前記薬物が、造血幹細胞(HSC)、CMP、または骨髄系細胞の中の、インフラマソーム、代謝経路、またはエピジェネティクス経路の阻害剤であり、
前記PET造影用放射性同位体が、89Zr、124I、64Cu、18F、および86Yから選択され、
前記PET造影用放射性同位体が、安定したナノバイオロジー組成物-放射性同位体のキレートを形成するのに適したキレート剤を使用して前記ナノバイオロジー組成物と錯体形成されている
ナノバイオロジー組成物が提供される。
【0038】
本発明の非限定的な好ましい実施形態では、訓練された免疫の影響を受ける患者の骨髄、血液、および/または脾臓の中のナノバイオロジー組成物の集積を造影するポジトロン断層撮影(PET)の方法であって、
ナノスケール構築物と、(ii)前記ナノスケール構築物に組み込まれている阻害剤薬物と、(iii)前記ナノスケール構築物に組み込まれているポジトロン断層撮影(PET)の造影用放射性同位体とを含む、骨髄、血液、および脾臓における集積を造影するためのナノバイオロジー組成物を前記患者に投与するステップであって、
前記ナノスケール構築物が、(a)リン脂質またはリン脂質の混合物と、(b)アポリポタンパク質A-I(apoA-I)またはapoA-Iのペプチドミメティックとを含む多成分の担体組成物であり、
前記ナノバイオロジー組成物が、水性環境において、直径約8nm~約400nmの大きさを有する自己集積するナノディスクまたはナノスフィアであり、
前記阻害剤薬物が、疎水性薬物または結合されている脂肪族鎖もしくはコレステロールもしくはリン脂質で誘導体化される親水性薬物のプロドラッグであり、
前記薬物が、造血幹細胞(HSC)、CMP、または骨髄系細胞の中の、インフラマソーム、代謝経路、またはエピジェネティクス経路の阻害剤であり、
前記PET造影用放射性同位体が、89Zr、124I、64Cu、18F、および86Yから選択され、
前記PET造影用放射性同位体が、安定したナノバイオロジー組成物-放射性同位体のキレートを形成するのに適したキレート剤を使用して前記ナノバイオロジー組成物と錯体形成されている、
ステップと、
(2)前記患者の身体の骨髄、血液、および/または脾臓の中の安定したナノバイオロジー組成物-放射性同位体のキレートの体内分布を視覚化するために、前記患者のPET造影を行うステップと
を含む、方法が提供される。
【0039】
本発明のさらなる非限定的な好ましい実施形態では、訓練された免疫の影響を受ける患者の骨髄、血液、および/または脾臓の中のナノバイオロジー組成物の集積を造影するポジトロン断層撮影(PET)の方法であって、
ナノスケール構築物と、(ii)前記ナノスケール構築物に組み込まれている阻害剤薬物と、(iii)前記ナノスケール構築物に組み込まれているポジトロン断層撮影(PET)の造影用放射性同位体とを含む、骨髄、血液、および脾臓における集積を造影するためのナノバイオロジー組成物を前記患者に投与するステップであって、
前記ナノスケール構築物が、(a)リン脂質またはリン脂質の混合物と、(b)アポリポタンパク質A-I(apoA-I)またはapoA-Iのペプチドミメティックと、(c)1つ以上のトリグリセリド、脂肪酸エステル、疎水性ポリマー、およびステロールエステルから構成される疎水性マトリックスとを含む多成分の担体組成物であり、
前記ナノバイオロジー組成物が、水性環境において、直径約8nm~約400nmの大きさを有する自己集積するナノディスクまたはナノスフィアであり、
前記阻害剤薬物が、疎水性薬物または結合されている脂肪族鎖もしくはコレステロールもしくはリン脂質で誘導体化される親水性薬物のプロドラッグであり、
前記薬物が、造血幹細胞(HSC)、CMP、または骨髄系細胞の中の、インフラマソーム、代謝経路、またはエピジェネティクス経路の阻害剤であり、
前記PET造影用放射性同位体が、89Zr、124I、64Cu、18F、および86Yから選択され、
前記PET造影用放射性同位体が、安定したナノバイオロジー組成物-放射性同位体のキレートを形成するのに適したキレート剤を使用して前記ナノバイオロジー組成物と錯体形成されている、
ステップと、
(2)前記患者の身体の骨髄、血液、および/または脾臓の中の安定したナノバイオロジー組成物-放射性同位体のキレートの体内分布を視覚化するために、前記患者のPET造影を行うステップと
を含む、方法が提供される。
【0040】
本発明の非限定的な好ましい実施形態では、訓練された免疫の影響を受ける患者の骨髄、血液、および/または脾臓の中のナノバイオロジー組成物の集積を造影するポジトロン断層撮影(PET)の方法であって、
ナノスケール構築物と、(ii)前記ナノスケール構築物に組み込まれている阻害剤薬物と、(iii)前記ナノスケール構築物に組み込まれているポジトロン断層撮影(PET)の造影用放射性同位体とを含む、骨髄、血液、および脾臓における集積を造影するためのナノバイオロジー組成物を前記患者に投与するステップであって、
前記ナノスケール構築物が、(a)リン脂質またはリン脂質の混合物と、(b)アポリポタンパク質A-I(apoA-I)またはapoA-Iのペプチドミメティックと、(c)1つ以上のトリグリセリド、脂肪酸エステル、疎水性ポリマー、およびステロールエステルから構成される疎水性マトリックスと、(d)コレステロールとを含む多成分の担体組成物であり、
前記ナノバイオロジー組成物が、水性環境において、直径約8nm~約400nmの大きさを有する自己集積するナノディスクまたはナノスフィアであり、
前記阻害剤薬物が、疎水性薬物または結合されている脂肪族鎖もしくはコレステロールもしくはリン脂質で誘導体化される親水性薬物のプロドラッグであり、
前記薬物が、造血幹細胞(HSC)、CMP、または骨髄系細胞の中の、インフラマソーム、代謝経路、またはエピジェネティクス経路の阻害剤であり、
前記PET造影用放射性同位体が、89Zr、124I、64Cu、18F、および86Yから選択され、
前記PET造影用放射性同位体が、安定したナノバイオロジー組成物-放射性同位体のキレートを形成するのに適したキレート剤を使用して前記ナノバイオロジー組成物と錯体形成されている、
ステップと、
(2)前記患者の身体の骨髄、血液、および/または脾臓の中の安定したナノバイオロジー組成物-放射性同位体のキレートの体内分布を視覚化するために、前記患者のPET造影を行うステップと
を含む、方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0041】
移植
【
図1】
図1は、ドナーおよび移植されていない心臓におけるビメンチンおよびHMGB1の発現の4つの画像の免疫染色パネル(n=3/3つの独立した実験のグループあたりのマウス、t検定;**P<0.01)であり、ビメンチンおよびHMGB1が、臓器移植後にアップレギュレートされており、移植片浸潤するマクロファージの訓練を促進させることを示している。
【
図2】
図2は、ドナーおよび移植されていない心臓におけるビメンチンおよびHMGB1の発現のリアルタイムPCRにおけるmRNAの発現の倍数のグラフである(n=3/3つの独立した実験のグループあたりのマウス、t検定;**P<0.01)であり、ビメンチンおよびHMGB1が、臓器移植後にアップレギュレートされており、移植片浸潤するマクロファージの訓練を促進させることを示している。
【
図3】
図3は、ドナーおよび移植されていない心臓におけるビメンチンおよびHMGB1の発現2つのパネルの棒グラフの隣のウェスタンブロット解析の4つの画像のパネル(n=3/3つの独立した実験のグループあたりのマウス、t検定;**P<0.01)であり、ビメンチンおよびHMGB1が、臓器移植後にアップレギュレートされており、移植片浸潤するマクロファージの訓練を促進させることを示している。
【
図4】
図4は、フローサイトメトリー解析の4つのパネルの図面であり、移植片浸潤するマクロファージにおけるデクチン1およびTLR4の発現を示す(n=2つの独立した実験のグループあたり3匹のマウス)。
【
図5】
図5は、フローサイトメトリー解析の3つのパネルの図面であり、WT、デクチン1KOおよびTLR4KOの未処置のレシピエントマウスに由来する移植片浸潤するマクロファージにおけるLy-6Cの発現を示す(n=2つの独立した実験のグループあたり3匹のマウス)。
【
図6】
図6は、4つのパネルの棒グラフの図面であり、ビメンチンおよびHMGB、ならびにβグルカンおよびLPSで訓練したマウスの単球の炎症性サイトカインの産生およびクロマチンの免疫沈降を示す(n=3つの独立した実験、一元ANOVA、**P<0.01;破線は、対照の訓練されていない条件を表している)。
【
図7】
図7は、3つのパネルの棒グラフの図面であり、移植片浸潤するマクロファージのサイトカインおよび乳酸塩の産生を示す(n=2つの独立した実験のグループあたり4匹のマウス、一元ANOVA、**P<0.01)。
【
図8】
図8は、4つのパネルの棒グラフの図面であり、移植片浸潤するマクロファージのクロマチンの免疫沈降を示す(n=2つの独立した実験のグループあたり4匹のマウス、一元ANOVA、*P<0.05;**P<0.01)。
【
図9】
図9は、mTORi-HDLナノバイオロジー組成物の、透過型電子顕微鏡(TEM)の50nmの尺度の画像での、mTORi-HDLとしての阻害剤-HDL複合体を形成するための、阻害剤-HDL複合体、アポリポタンパク質A1(apoA1、アポリポタンパク質A-IまたはapoA-Iとも称される)+二本鎖および一本鎖のホスホコリン化合物の混合物(DMPC/MHPC)+ラパマイシンの哺乳類の標的阻害剤(mTORi)の1つの非限定的な例の構成要素および構築物の図解である。
図9は、一態様において、mTORi-HDLのナノ免疫療法が、in vitroでナイーブ細胞の値まで訓練された免疫を妨げ、血液における骨髄系細胞、ならびに骨髄および脾臓における幹細胞および前駆細胞に対するアビディティーを妨げ、in vivoで全身に分布していることを示している。
【
図10】
図10は、3つのパネルのグラフであり、in vitroで訓練されたヒトのマクロファージのサイトカインおよび乳酸塩の産生を示す。(n=3つの独立した実験、t検定、*P<0.05;破線は、対照の非βグルカンで訓練された条件を表す)。
図10は、一態様において、mTORi-HDLのナノ免疫療法が、in vitroで、ナイーブ細胞の値まで訓練された免疫を妨げ、血液における骨髄系細胞ならびに骨髄および脾臓における幹細胞および前駆細胞に対するアビディティーを妨げ、in vivoで全身に分布していることを示している。
【
図11】
図11は、4つのパネルのグラフであり、in vitroで訓練されたヒトのマクロファージのクロマチン免疫沈降を示す(n=3つの独立した実験、t検定、*P<0.05;破線は、対照の非βグルカンで訓練された条件を表す)。
図11は、一態様において、mTORi-HDLのナノ免疫療法が、in vitroで、ナイーブ細胞の値まで訓練された免疫を妨げ、血液における骨髄系細胞ならびに骨髄および脾臓における幹細胞および前駆細胞に対するアビディティーを妨げ、in vivoで全身に分布していることを示している。
【
図12】
図12は、標識された阻害剤-HDL複合体の1つの非限定的な例の構成要素および構築物の標識の図解である。放射性同位体
89Zrまたは蛍光色素DiOもしくはDiRのいずれかでmTORi-HDLを標識する。
図12は、一態様において、mTORi-HDLのナノ免疫療法が、in vitroで、ナイーブ細胞の値まで訓練された免疫を妨げ、血液における骨髄系細胞ならびに骨髄および脾臓における幹細胞および前駆細胞に対するアビディティーを妨げ、in vivoで全身に分布していることを示している。
【
図13】
図13は、mTORi-HDLナノバイオロジー組成物のマイクロ-PET/CTおよび細胞特異性の図解である。
図13は、一態様において、mTORi-HDLのナノ免疫療法が、in vitroで、ナイーブ細胞の値まで訓練された免疫を妨げ、血液における骨髄系細胞ならびに骨髄および脾臓における幹細胞および前駆細胞に対するアビディティーを妨げ、in vivoで全身に分布していることを示している。
【
図14】
図14は、代表的なマイクロ-PET/CTの3D融合画像、およびPETの最大値投影グラフ(MIP)、およびこれら結果(平均値±SEM、n=3)のグラフである。
図14は、一態様において、mTORi-HDLのナノ免疫療法が、in vitroで、ナイーブ細胞の値まで訓練された免疫を妨げ、血液における骨髄系細胞ならびに骨髄および脾臓における幹細胞および前駆細胞に対するアビディティーを妨げ、in vivoで全身に分布していることを示している。
【
図15】
図15は、骨髄系細胞およびリンパ系細胞による蛍光標識されたDiO mTORi-HDLの取り込みの4つのパネルのグラフ図である(n=5匹のマウス/グループ、一元ANOVA、**P<0.01)。
図15は、一態様において、mTORi-HDLのナノ免疫療法が、in vitroで、ナイーブ細胞の値まで訓練された免疫を妨げ、血液における骨髄系細胞ならびに骨髄および脾臓における幹細胞および前駆細胞に対するアビディティーを妨げ、in vivoで全身に分布していることを示している。
【
図16】
図16は、骨髄前駆体による蛍光標識されたDiO mTORi-HDLの取り込みの1つのパネルのグラフ(平均値±SEM、n=5)である。
図16は、一態様において、mTORi-HDLのナノ免疫療法が、in vitroで、ナイーブ細胞の値まで訓練された免疫を妨げ、血液における骨髄系細胞ならびに骨髄および脾臓における幹細胞および前駆細胞に対するアビディティーを妨げ、in vivoで全身に分布していることを示している。
【
図17】
図17は、完全に同種異系のC57BL/6のレシピエント(H2b)に移植されたBALB/cドナーの心臓(H2d)の図解である。
図17は、一態様において、mTORi-HDLのナノ免疫療法が、同種移植片における骨髄系細胞を標的とし、訓練された免疫を妨げることを示している。
【
図18】
図18は、
89Zr-mTORi-HDLの静脈内投与から24時間後のマイクロ-PET/CTの3D融合画像である一連のパネル画像である(n=2つの独立した実験のグループあたり3匹のマウス)。
図18は、一態様において、mTORi-HDLのナノ免疫療法が、同種移植片における骨髄系細胞を標的とし、訓練された免疫を妨げることを示している。
【
図19】
図19は、
89Zr-mTORi-HDLの静脈内投与から24時間後のネイティブな心臓(N)および移殖された心臓(Tx)におけるex vivoでのオートラジオグラフィーの一対の画像およびグラフである(n=2つの独立した実験のグループあたり3匹のマウス、t検定、*P<0.05)。
図19は、一態様において、mTORi-HDLのナノ免疫療法が、同種移植片における骨髄系細胞を標的とし、訓練された免疫を妨げることを示している。
【
図20】
図20は、同種移植片における骨髄系細胞およびリンパ系細胞による蛍光標識されたDiO mTORi-HDLの取り込みの棒グラフである(n=3つの独立した実験のグループあたり4匹のマウス;一元ANOVA、*P<0.05;**P<0.01)。
図20は、一態様において、mTORi-HDLのナノ免疫療法が同種移植片における骨髄系細胞を標的とし、訓練された免疫を妨げることを示している。
【
図21】
図21は、移植後6日目の、プラセボまたはmTORi-HDLのいずれかで処置したレシピエント由来の同種移植片におけるLy-6Chi/Ly-6CloMφの比の円グラフの対である(n=3つの独立した実験のグループあたり4匹のマウス;一元ANOVA、*P0.05;**P<0.01)。
図21は、一態様において、mTORi-HDLのナノ免疫療法が同種移植片における骨髄系細胞を標的とし、訓練された免疫を妨げることを示している。
【
図22】
図22は、プラセボまたはmTORi-HDLで処置したレシピエント由来の移植片内のMφにおけるmTORおよび解糖経路についてのGSEA遺伝子アレイ解析の一対のグラフのうちの1つである(n=3匹のマウス/グループ)。
図22は、一態様において、mTORi-HDLのナノ免疫療法が同種移植片における骨髄系細胞を標的とし、訓練された免疫を妨げることを示している。
【
図23】
図23は、プラセボまたはmTORi-HDLで処置したレシピエント由来の移植片内MφにおけるmTORおよび解糖経路についてのGSEA遺伝子アレイ解析の一対のグラフのうちの2つ目である(n=3匹のマウス/グループ)。
図23は、一態様において、mTORi-HDLのナノ免疫療法が同種移植片における骨髄系細胞を標的とし、訓練された免疫を妨げることを示している。
【
図24】
図24は、プラセボまたはmTORi-HDLで処置したレシピエント由来の移植片浸潤するマクロファージのサイトカインおよび乳酸塩の産生の棒グラフである3つのパネルの図面である(n=3つの独立した実験のグループあたり4匹のマウス、t検定、*P<0.05、**P<0.01)。
図24は、一態様において、mTORi-HDLのナノ免疫療法が同種移植片における骨髄系細胞を標的とし、訓練された免疫を妨げることを示している。
【
図25】
図25は、プラセボまたはmTORi-HDLで処置したレシピエント由来の移植片浸潤するマクロファージのクロマチンの免疫沈降の棒グラフの4つのパネルの図面である(n=3つの独立した実験のグループあたり4匹のマウス、t検定、*P<0.05;**P<0.01)。
図25は、一態様において、mTORi-HDLのナノ免疫療法が同種移植片における骨髄系細胞を標的とし、訓練された免疫を妨げることを示している。
【
図26】
図26は、CD8 T細胞抑制アッセイおよびCD4 Treg増殖アッセイを使用する、プラセボで処置したレシピエントおよびmTORi-HDLで処置したレシピエント由来の移植片浸潤するMφの機能的な特徴の9つのパネルのグラフ図である。(n=3つの独立した実験のグループあたり4匹のマウス、t検定、**P<0.01)。
図26は、一態様において、相乗的な治療としての、mTORi-HDLでの訓練された免疫のナノ免疫療法およびT細胞のCD40の活性化(訓練された免疫ではない)の組み合わせが、臓器移植の認容性を促進することを示している。
【
図27】
図27は、プラセボで処置したレシピエントおよびmTORi-HDLで処置したレシピエント由来の移植片浸潤するCD4+CD25+Treg細胞のパーセンテージの、1対の円グラフである(n=3つの独立した実験のグループあたり4匹のマウス、t検定、**P≦0.01)。
図27は、一態様において、相乗的な治療としての、mTORi-HDLでの訓練された免疫のナノ免疫療法およびT細胞のCD40の活性化(訓練された免疫ではない)の組み合わせが、臓器移植の認容性を促進することを示している。
【
図28】
図28は、プラセボで処置したレシピエントおよびmTORi-HDLで処置したレシピエントにおけるCD169+の移植片浸潤するMregの喪失の、5つのパネルのグラフ図である(n=3つの独立した実験のグループあたり5匹のマウス、t検定、**P<0.01)。
図28は、一態様において、相乗的な治療としての、mTORi-HDLでの訓練された免疫のナノ免疫療法およびT細胞のCD40の活性化(訓練された免疫ではない)の組み合わせが、臓器移植の認容性を促進することを示している。
【
図29】
図29は、CD169+移植片浸潤するMregの喪失の後の移植片の生存の線グラフである(n=5匹のマウス/グループ、カプランマイヤー **P<0.01)。
図29は、一態様において、相乗的な治療としての、mTORi-HDLでの訓練された免疫のナノ免疫療法およびT細胞のCD40の活性化(訓練された免疫ではない)の組み合わせが、臓器移植の認容性を促進することを示している。
【
図30】
図30は、CCR2欠損レシピエントマウスにおけるCD11c+細胞の喪失の後の移植片の生存の線グラフである(n=5匹のマウス/グループ、カプランマイヤー、**P<0.01)。
図30は、一態様において、相乗的な治療としての、mTORi-HDLでの訓練された免疫のナノ免疫療法およびT細胞のCD40の活性化(訓練された免疫ではない)の組み合わせが、臓器移植の認容性を促進することを示している。
【
図31】
図31は、TRAF6i-HDLナノ免疫療法を伴うかまたは伴わずに、in vivoでアゴニスティック促進性(agonistic stimulatory)のCD40 mAbを投与したmTORi-HDLで処置したレシピエントの移植片の生存の線グラフである(n=5匹のマウス/グループ、カプランマイヤー、**P<0.01)。
図31は、一態様において、相乗的な治療としての、mTORi-HDLでの訓練された免疫のナノ免疫療法およびT細胞のCD40の活性化(訓練された免疫ではない)の組み合わせが、臓器移植の認容性を促進することを示している。
【
図32】
図32は、プラセボ、ビヒクルのHDL、mTORi-HDL、TRAF6i-HDL、およびmTORi-HDL/TRAF6i-HDLで処置したレシピエントの移植片の生存の線グラフである(n=7~8匹のマウス/グループ、カプランマイヤー、**P<0.01)。
図32は、一態様において、相乗的な治療としての、mTORi-HDLでの訓練された免疫のナノ免疫療法およびT細胞のCD40の活性化(訓練された免疫ではない)の組み合わせが、臓器移植の認容性を促進することを示している。
【
図33】
図33は、移植後100日目のmTORi-HDL/TRAF6i-HDLで処置したレシピエント由来の心臓の同種移植片の免疫組織化学検査の2つのパネルの画像である(n=5匹のマウス/グループ;倍率×200)。
図33は、一態様において、相乗的な治療としての、mTORi-HDLでの訓練された免疫のナノ免疫療法およびT細胞のCD40の活性化(訓練された免疫ではない)の組み合わせが、臓器移植の認容性を促進することを示している。
【
図34】
図34は、移植後6日目の未処置の拒絶するレシピエント由来の移植片浸潤する骨髄の単球のクロマチン免疫沈降アッセイ(ChIP)の4つのパネルの棒グラフのシリーズである。ChIPは、ヒストンH3K4のトリメチル化を評価するために行った。4つの訓練された免疫に関連する遺伝子の存在量を、qPCRにより試験した(n=3、ウィルコクソンの符号順位検定、**P<0.01。1つの実験由来の結果)。
図34は、一態様におけるmTORi-HDLの発達およびin vivoでの分布を示している。
【
図35】
図35は、mTOR阻害剤(mTORi)のラパマイシンの化学構造の図である。
【
図36】
図36は、mTORi-HDLナノバイオロジー組成物の円盤状の形態を示す透過型電子顕微鏡写真の画像である。
【
図37】
図37は、野生型のC57/B16マウスにおけるmTORi-HDLの体内分布の画像の図式的な棒グラフの図である。肝臓、脾臓、肺、腎臓、心臓、および筋肉での集積を示す、PBS対照(臓器の最初の行)またはDiR標識したmTORi-HDLのいずれかを注射した臓器の代表的な近赤外蛍光画像(NIRF)。
図37は、一態様における、mTORi-HDLの発達およびin vivoでの分布を示している。
【
図38】
図38は、対照のグループおよびmTORi-HDL-DiRのグループにおける各臓器の総シグナルを除算することにより計算される、各臓器における対照とのmTORi-HDL-DiRの集積に対する比が棒により表される、棒グラフである(n=4匹のマウス/グループ。3つの実験からの結果)。
図38は、一態様における、mTORi-HDLの発達およびin vivoでの分布を示している。
【
図39】
図39は、移植された心臓、腎臓、肝臓、および脾臓における平均ID(%)/g)によるPETで定量化された取り込みの値の棒グラフである(n=3匹のマウス。3つの実験からの結果)。
図39は、一態様におけるmTORi-HDLの発達およびin vivoでの分布を示している。
【
図40】
図40は、血液、脾臓、および移植された心臓における骨髄系細胞を区別するためのフローサイトメトリーのゲート戦略の21のパネル図である。灰色のヒストグラムは、DiO標識したmTORi-HDLを注射したマウスにおける免疫細胞の分布を対照(黒色のヒストグラム)と比較して示す。
図40は、一態様における、in vivoでのmTORi-HDLの細胞の標的化を示す。
【
図41】
図41は、血液および脾臓における、好中球、単球/マクロファージ、Ly-6CloおよびLy-6Chi単球/マクロファージ、樹状細胞、およびT細胞の平均蛍光強度(MFI)の2つのパネルの棒グラフの図である(n=4匹のマウス/グループ、一元ANOVA、*P<0.05;**P<0.01。3つの実験からの結果)。
図41は、一態様における、in vivoでのmTORi-HDLの細胞の標的化を示す。
【
図42】
図42は、血液、脾臓、および移植された心臓においてT細胞を区別するためのフローサイトメトリーのゲート戦略の9つのパネル図を伴う3つのパネル図である。灰色のヒストグラム(右)は、DiO標識したmTORi-HDLを注射したマウスにおけるT細胞分布を、対照の動物の分布(黒色のヒストグラム)と比較して示す。
図42は、一態様におけるin vivoでのmTORi-HDLの細胞の標的化を示す。
【
図43】
図43は、血液および移植された心臓における単球/マクロファージ、CD3+T、CD4+T、およびCD8+T細胞の平均蛍光強度(MFI)の3つのパネル図である(n=4匹のマウス/グループ、一元ANOVA、**P<0.01。3つの実験からの結果)。
図43は、一態様におけるin vivoでのmTORi-HDLの細胞の標的化を示す。
【
図44】
図44は、移植後6日目に、プラセボ、経口でのラパマイシン(5mg/kg)およびmTORi-HDL(5mg/kg)で処置した同種移植片レシピエントの同種移植片、血液、および脾臓から回収した細胞懸濁物のフローサイトメトリー解析の12のパネル図である。白血球、好中球、マクロファージ(Mφ)、および樹状細胞(DC)の総数が示されている(n=4匹のマウス/グループ、一元ANOVA、*P<0.05;**P<0.01。3つの実験からの結果)。
図44は、一態様において、mTORi-HDLがin vivoで、骨髄およびTregのコンパートメントのバランスを取り戻すことを示している。
【
図45】
図45は、プラセボ、経口でのラパマイシン(5mg/kg)、およびmTORi-HDL(5mg/kg)で処置した同種移植片レシピエント由来の血液、脾臓、および心臓の同種移植片におけるLy-6C
hi単球のLy-6C
lo単球に対する比の9つのパネル図である(n=グループあたり4、一元ANOVA、*P<0.05;**P<0.01。3つの実験からの結果)。
図45は、一態様において、mTORi-HDLがin vivoで、骨髄およびTregのコンパートメントのバランスを取り戻すことを示している。
【
図46】
図46は、プラセボ、経口でのラパマイシン(5mg/kg)、およびmTORi-HDL(5mg/kg)で処置した同種移植片レシピエント由来の移植片浸潤するCD4+CD25+vs.CD4+CD25-T細胞のパーセンテージの3つのパネルの円グラフの図である(n=4匹のマウス/グループ、一元ANOVA、**P<0.01。3つの実験からの結果)。
図46は、一態様において、mTORi-HDLがin vivoで、骨髄およびTregのコンパートメントのバランスを取り戻すことを示している。
【
図47】
図47は、訓練された免疫のナノ免疫療法との相乗的な併用療法の訓練されていない免疫の部分である、TRAF6阻害剤の化学構造の図である。
【
図48】
図48は、TRAF6i-HDLの円盤状の形態を示す透過型電子顕微鏡の画像である。このナノ粒子は、それぞれDLSおよびHPLCにより決定される、平均19.2±3.1nmの流体力学半径および平均84.6±8.6%の薬物組み込み効率を有する。
【
図49】
図49は、経口のラパマイシン、静脈内のラパマイシン、および経口のラパマイシン+TRAF6i-HDLの移植片生存曲線の線グラフである(n=各グループで8匹のマウス)。このバックグラウンドは、
図23由来の、プラセボ、HDLビヒクル、TRAF6i-HDL、mTORi-HDL、およびmTORi-HDL/TRAF6i-HDLの併用療法の移植片生存曲線を示している。
図49は、一態様において、併用したmTORi-HDLおよびTRAF6i-HDLのナノバイオロジー組成物の治療効果を示している。
【
図50】
図50は、移植後100日目に回収したmTORi/TRAF6i-HDLで処置した移植レシピエント由来の、ヘマトキシリン/エオシン(H&E)、過ヨウ素酸シッフ(PAS)、およびマッソントリクロームでの代表的な腎臓および肝臓の免疫組織化学画像の6つのパネルの図面である。腎臓は、腎臓の実質の3つのコンパートメントにおいて有意な変化を示していない。糸球体硬化症のエビデンスはなく、糸球体は正常と思われる。尿細管は、有意な萎縮症を示さないか、または空胞化、刷子縁の喪失、または有糸分裂を含む上皮細胞の損傷のエビデンスを全く示していない。肝臓は、正常な腺房および小葉の構造を有している。門脈路および肝実質における炎症または線維症のエビデンスは存在しない。肝細胞は正常であり、胆汁うっ滞、封入(inclusions)、またはアポトーシスのエビデンスはない(n=4匹のマウス;倍率×200)。
図50は、一態様における組み合わせたmTORi-HDLおよびTRAF6i-HDLのナノバイオロジー組成物の治療効果を示す。
【
図51】
図51は、mTORi-HDL処置に関連する毒性の棒グラフの図の対である。レシピエントのマウスに、同じ治療のアウトカム(30日間の100%の同種移植片の生存)をもたらすように、mTORi-HDL処置レジメン(移植後0日目、2日目、および5日目に、5mg/kg)、またはラパマイシンの経口投与(oral rapamycin a treatment dose)(15日間に毎日5mg/kg)のいずれかを行った。mTORi-HDLは、血中尿素窒素(BUN)または血清クレアチニンに有意な作用を有さないが、腎臓毒性のパラメータは、経口ラパマイシンとmTORi-HDLとの間に統計的な差異を示している。シンジェニックなレシピエントとmTORi-HDLレシピエントとの間に差異は観察されなかった(n=4匹のマウス/グループ、一元ANOVA、*P<0.05;**P<0.01。3つの実験からの結果)。
図51は、一実施形態における併用されたmTORi-HDLおよびTRAF6i-HDLのナノバイオロジー組成物の治療効果を示している。 アテローム性動脈硬化
【
図52】
図52は、ヒトのアポリポタンパク質A-I(apoA-I)、リン脂質DMPCおよびMHPC、ならびにmTOR阻害剤のラパマイシンを組み合わせることにより構築された、mTORi-HDLの異なる成分の概略図である。
図52は、一実施形態において、mTORi-HDLが動脈硬化プラークを標的化し、マクロファージおよび炎症性Ly6
Chi単球において集積することを示している。Apoe-/-マウスは、12週間の高コレステロール食において、動脈硬化プラークを発生させた。
【
図53】
図53は、PBS(対照)またはDiR標識したmTORi-HDLを注射したApoe-/-マウスの大動脈全体のIVIS造影の3つのパネル図である。大動脈は、注射から24時間後に回収された。
【
図54】
図54は、大動脈全体におけるCD45+細胞のフローサイトメトリーのゲート戦略の9つのパネル図である。Lin+細胞、マクロファージ、およびLy6Chi単球の同定(上部)、各細胞種における代表的なヒストグラム(中央)およびDiOシグナルの定量化(下部)。大動脈は、DiO標識したmTORi-HDLの注射から24時間後に回収された。
図54は、一態様において、mTORi-HDLが動脈硬化プラークを標的化し、マクロファージおよび炎症性Ly-6
Chi単球において集積することを示している。すべての図面で、データは、平均値±SDとして提示されている(*p<0.05、**p<0.01、***p<0.001)。P値は、マン・ホイットニーのU検定(両側)を使用して計算した。
【
図55】
図55は、対照グループとmTORi-HDLとを比較した6つのパネルの組織画像および2つのパネルの円グラフの図である。
【
図56】右は、対照グループとmTORi-HDLとを比較した、プラーク領域、コラーゲン含有量、Mac3陽性領域、およびMac3のコラーゲンに対する比の、4つのパネル図である。
図55~56は、一態様におけるmTORi-HDL動脈硬化プラーク炎症を示している。Apoe-/-マウスを、12週間高コレステロール食に供し、その後、高コレステロール食を続けながら1週間処置を行った。
【
図57】
図57は、mTORi-HDLで処置したマウスvs対照マウスの大動脈基部におけるプロテアーゼ活性の減少を示したX線コンピュータ断層撮影を用いた並行蛍光分子断層撮像の対である。mTORi-HDLマウスは有意な低減を示した。
【
図59】
図59は、ヒトのアポリポタンパク質A-I(apoA-I)、リン脂質POPCおよびPHPC、ならびにS6K1阻害剤のPF-4708671を組み込むことにより構築された、S6K1i-HDLナノバイオロジー組成物の異なる成分の概略図である。
【
図60】
図60は、DiR標識したS6K1i-HDLを注射したApoe-/-マウスの臓器のIVIS造影の図解である。臓器は、注射から24時間後に回収された。
【
図61】
図61は、DiO標識したS6K1i-HDLの静脈内注射後の大動脈プラークにおける異なる白血球のサブセットのDiOシグナルの定量化の5つのパネル図である(n=グループあたり2~4)。
【
図62】
図62は、大動脈全体におけるマクロファージおよびLy6C(hi)単球細胞の定量のグラフの対であり、対照、rHDLのみ、mTORi-HDL、およびS6K1i-HDLの処置を比較している。Apoe-/-マウスを、12週間高コレステロール食に供し、その後、高コレステロール食を続けながら1週間処置を行った。
【
図63】
図63は、訓練された免疫がoxLDLにより誘導されることにより、5日後に細胞がLPSで再刺激される際にTNFαサイトカイン産生の増幅をもたらす、ヒト接着性単球のin vitroでの解析を示す。この応答は、mTORi-HDLおよびS6K1i-HDLにより軽減された(n=6)。
図63は、RPMI単独vs.mTORi-HDLおよびRPMI単独vs.S6K1i-HDLを比較した、RPMIおよびoxLDL侵襲のTNFαのpg/mLでの値のグラフの対である。
【
図64】
図64は、経時的な大きさによる様々なプロドラッグの製剤のグラフ図である。
【
図65】
図65は、プロドラッグの経時的な大きさのグラフ図である。
【
図66】
図66は、様々なプロドラッグの経時的な分散度の平均のグラフ図である。
【
図67】
図67は、様々なプロドラッグの薬物の回収(パーセント)のグラフ図である。
【
図68】
図68は、様々なプロドラッグの加水分解(パーセント)のグラフ図である。
【
図69】
図69は、様々なプロドラッグのapoA-Iの回収(パーセント)のグラフ図である。
【
図70】
図70は、様々なプロドラッグのゼータ電位のグラフ図である。
【
図71】
図71は、脂肪族vsコレステロールマトリックスに組み込まれている薬物(マロネート)のフラクションのグラフ図である。
【
図72】
図72は、脂肪族に組み込まれている薬物(JQ1)vsコレステロールマトリックスに組み込まれている薬物(JQ1)のフラクションのグラフ図である。
【
図73】
図73は、薬物(GSK-J4)単独vs脂肪族に組み込まれている薬物(GSK-J4)vsコレステロールに組み込まれている薬物(GSK-J4)のフラクションのグラフ図である。
【
図74】
図74は、薬物(ラパマイシン)単独vs脂肪族に組み込まれている薬物(ラパマイシン)のフラクションのグラフ図である。
【
図75】
図75は、組み込まれている薬物(PF-4708671 S6K1i)の経時的なフラクションのグラフ図である。
【
図77】
図77は、ナノバイオロジー組成物により送達される放射性同位体を使用したPET造影の図解であり、マウス、ウサギ、サル、およびブタのモデルの骨髄および脾臓におけるナノバイオロジー組成物の集積を示す。
【発明を実施するための形態】
【0042】
本発明は、訓練された免疫を阻害するためのナノバイオロジー組成物、当該ナノバイオロジー組成物を作製する方法、上記ナノバイオロジー組成物へ薬物を組み込む方法、リン脂質、脂肪族鎖、およびステロールなどの官能基化されたリンカー部分と薬物を組み込んだプロドラッグ製剤を目的とする。
【0043】
炎症は、組織の損傷に対する防御機構として自然免疫細胞により誘発される。訓練された免疫と称され、自然免疫記憶とも呼ばれる免疫記憶の古来の機構は、骨髄、血液、および/または脾臓における骨髄系自然免疫細胞またはその前駆体および幹細胞を刺激する最初の侵襲により誘導され、エピジェネティクス、代謝、および転写の再配置を介して行われる、骨髄系自然免疫細胞の二次的な刺激での再刺激後の長期間の応答性の増大(たとえば著しいサイトカイン産生)により定義される。
【0044】
訓練された免疫は、骨髄、血液、および/または脾臓における骨髄系細胞、骨髄前駆体、および造血幹細胞の最初の侵襲の後の再刺激に対する、代謝およびエピジェネティクスの再配置により引き起こされるサイトカイン排出の増大が認められる、二次的な長期間の応答性亢進により定義される。
【0045】
本発明は、1つの好ましい実施形態において、訓練された免疫の根底にあるエピジェネティクスおよび代謝の修飾を妨げる、組み込まれているmTOR阻害剤のラパマイシンを担持するかまたは有するナノバイオロジー組成物(mTORi-HDL)の送達に基づく、骨髄系細胞に特異的なナノ免疫療法を目的とする。本発明は、最初の侵襲により誘導され、1つまたは複数の二次的な刺激での再刺激後のサイトカイン排出の増大を特徴とする、骨髄および脾臓および血液における骨髄系細胞およびその幹細胞および前駆体の代謝およびエピジェネティクスの再配置の結果である、長期間の応答性が増大している訓練された免疫を阻害することにより、臓器移植を受けたことがあるか、またはアテローム性動脈硬化、関節炎、クローン病を含む炎症性腸疾患、糖尿病を含む自己免疫疾患、および/もしくは自己炎症性病態を罹患しているか、または脳卒中および心筋梗塞を含む心血管イベントの後の患者を処置する治療用ナノバイオロジー組成物および方法に関する。
【0046】
定義
ナノバイオロジー組成物
用語「ナノバイオロジー組成物(nanobiologic)」は、訓練された免疫を阻害するための組成物であって、
ナノスケール構築物と、(ii)ナノスケール構築物に組み込まれている阻害剤薬物とを含み、
前記ナノスケール構築物が、(a)リン脂質またはリン脂質の混合物と、(b)アポリポタンパク質A-I(apoA-I)またはapoA-Iのペプチドミメティックとを含み、任意選択で(c)1つ以上のトリグリセリド、脂肪酸エステル、疎水性ポリマー、およびステロールエステルから構成される疎水性マトリックスと、同様に任意選択で(d)コレステロールとを含む多成分の担体組成物であり、
前記ナノバイオロジー組成物が、水性環境において、直径約8nm~約400nmの大きさを有する自己集積するナノディスクまたはナノスフィアであり、
前記阻害剤薬物が、疎水性薬物または結合されている脂肪族鎖もしくはコレステロールもしくはリン脂質で誘導体化される親水性薬物のプロドラッグであり、
前記薬物が、造血幹細胞(HSC)、CMP、または骨髄系細胞の中の、インフラマソーム、代謝経路、またはエピジェネティクス経路の阻害剤である
組成物を表す。
【0047】
概念の検証のために、HDLに組み込まれているmTORの阻害剤(mTORi-HDL)またはHDLに組み込まれているS6K1の阻害剤(S6K1i-HDL)は、本明細書中のデータ作成のためのナノバイオロジー組成物として機能した。
【0048】
ナノスケール構築物
用語「ナノスケール構築物」(NA)は、有効なペイロード、たとえば薬物を担持するための多成分の担体組成物を表す。
【0049】
一つの好ましい実施形態では、ナノスケール構築物は、下位成分:(a)リン脂質と、(b)アポリポタンパク質A-I(apoA-I)またはapoA-Iのペプチドミメティックとを有する、有効なペイロードを担持するための多成分の担体組成物を含む。
【0050】
別の好ましい実施形態では、「ナノスケール構築物」(NA)は、訓練された免疫を阻害する有効なペイロード、たとえば薬物を担持するための多成分の担体組成物であって、下位成分:(a)リン脂質と、(b)アポリポタンパク質A-I(apoA-I)またはapoA-Iのペプチドミメティックと(c)1つ以上のトリグリセリド、脂肪酸エステル、疎水性ポリマー、およびステロールエステルを含む疎水性マトリックスとを有する、多成分の担体組成物を表す。
【0051】
別の好ましい実施形態では、「ナノスケール構築物」(NA)は、訓練された免疫を阻害する有効なペイロード、たとえば薬物を担持するための多成分の担体組成物であって、下位成分:(a)リン脂質と、(b)アポリポタンパク質A-I(apoA-I)またはapoA-Iのペプチドミメティックと(c)1つ以上のトリグリセリド、脂肪酸エステル、疎水性ポリマー、およびステロールエステルを含む疎水性マトリックスと、(d)コレステロールとを有する、多成分の担体組成物を表す。
【0052】
リン脂質
用語「リン脂質」は、2つの疎水性脂肪酸の「尾」と、リン酸基からなる親水性の「頭部」とからなる両親媒性化合物を表す。この2つの成分は、グリセロール分子によりまとめて結合されている。リン酸基は、単純な有機分子、たとえばコリン、エタノールアミン、またはセリンで修飾され得る。
【0053】
コリンは、化学式R-(CH2)2-N-(CH2)4を有する重要な生体活性栄養素を表す。ホスホ-部分がR-である場合、ホスホコリンと呼ばれる。
【0054】
適切なリン脂質の例として、限定するものではないが、ホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルイノシトール、ホスファチジルセリン、スフィンゴミエリン、または他のセラミド、およびリン脂質含有オイル、たとえばレシチンオイルが挙げられる。リン脂質の組み合わせまたはリン脂質と他の物質との混合物が使用され得る。
【0055】
本組成物に使用され得るリン脂質の非限定的な例として、ホスファチジルコリン(PC)、ホスファチジルグリセロール(PG)、ホスファチジルセリン(PS)、ホスファチジルエタノールアミン(PE)、およびホスファチジン酸/エステル(PA)、およびリソホスファチジルコリンが挙げられる。
【0056】
具体的な例として、DDPC CAS-3436-44-0 1,2-ジデカノイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン、DEPA-NA CAS-80724-31-8 1,2-ジエルコイル-sn-グリセロ-3-ホスフェート(ナトリウム塩)、DEPC CAS-56649-39-9 1,2-ジエルコイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン、DEPE CAS-988-07-2 1,2-ジエルコイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン、DEPG-NA 1,2-ジエルコイル-sn-グリセロ-3[ホスホ-rac-(1-グリセロール...)(ナトリウム塩)、DLOPC CAS-998-06-1 1,2-ジリノレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン、DLPA-NA 1,2-ジラウロイル-sn-グリセロ-3-ホスフェート(ナトリウム塩)、DLPC CAS-18194-25-7 1,2-ジラウロイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン、DLPE 1,2-ジラウロイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン、DLPG-NA 1,2-ジラウロイル-sn-グリセロ-3[ホスホ-rac-(1-グリセロール...)(ナトリウム塩)、DLPG-NH4 1,2-ジラウロイル-sn-グリセロ-3[ホスホ-rac-(1-グリセロール...)(アンモニウム塩)、DLPS-NA 1,2-ジラウロイル-sn-グリセロ-3-ホスホセリン(ナトリウム塩)、DMPA-NA CAS-80724-3 1,2-ジミリストイル-sn-グリセロ-3-ホスフェート(ナトリウム塩)、DMPC CAS-18194-24-6 1,2-ジミリストイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン、DMPE CAS-988-07-2 1,2-ジミリストイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン、DMPG-NA CAS-67232-80-8 1,2-ジミリストイル-sn-グリセロ-3[ホスホ-rac-(1-グリセロール...)(ナトリウム塩)、DMPG-NH4 1,2-ジミリストイル-sn-グリセロ-3[ホスホ-rac-(1-グリセロール...)(アンモニウム塩)、DMPG-NH4/NA 1,2-ジミリストイル-sn-グリセロ-3[ホスホ-rac-(1-グリセロール...)(ナトリウム/アンモニウム塩)、DMPS-NA 1,2-ジミリストイル-sn-グリセロ-3-ホスホセリン(ナトリウム塩)、DOPA-NA 1,2-ジオレオイル-sn-グリセロ-3-ホスフェート(ナトリウム塩)、DOPC CAS-4235-95-4 1,2-ジオレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン、DOPE CAS-4004-5-1 1,2-ジオレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン、DOPG-NA CAS-62700-69-0 1,2-ジオレオイル-sn-グリセロ-3[ホスホ-rac-(1-グリセロール...)(ナトリウム塩)、DOPS-NA CAS-70614-14-1 1,2-ジオレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホセリン(ナトリウム塩)、DPPA-NA CAS-71065-87-7 1,2-ジパルミトイル-sn-グリセロ-3-ホスフェート(ナトリウム塩)、DPPC CAS-63-89-8 1,2-ジパルミトイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン、DPPE CAS-923-61-5 1,2-ジパルミトイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン、DPPG-NA CAS-67232-81-9 1,2-ジパルミトイル-sn-グリセロ-3[ホスホ-rac-(1-グリセロール...)(ナトリウム塩)、DPPG-NH4 CAS-73548-70-6 1,2-ジパルミトイル-sn-グリセロ-3[ホスホ-rac-(1-グリセロール...)(アンモニウム塩)、DPPS-NA 1,2-ジパルミトイル-sn-グリセロ-3-ホスホセリン(ナトリウム塩)、DSPA-NA CAS-108321-18-2 1,2-ジステアロイル-sn-グリセロ-3-ホスフェート(ナトリウム塩)、DSPC CAS-816-94-4 1,2-ジステアロイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン、DSPE CAS-1069-79-0 1,2-ジステアロイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン、DSPG-NA CAS-67232-82-0 1,2-ジステアロイル-sn-グリセロ-3[ホスホ-rac-(1-グリセロール...)(ナトリウム塩)、DSPG-NH4 CAS-108347-80-4 1,2-ジステアロイル-sn-グリセロ-3[ホスホ-rac-(1-グリセロール...)(アンモニウム塩)、DSPS-NA 1,2-ジステアロイル-sn-グリセロ-3-ホスホセリン(ナトリウム塩)、EPC Egg-PC、HEPC 水素添加されたEgg PC、HSPC 水素添加されたSoy PC、LYSOPC MYRISTIC CAS-18194-24-6 1-ミリストイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン、LYSOPC PALMITIC CAS-17364-16-8 1-パルミトイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン、LYSOPC STEARIC CAS-19420-57-6 1-ステアロイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン、ミルク由来のスフィンゴミエリン、MPPC 1-ミリストイル-2-パルミトイル-sn-グリセロ 3-ホスホコリン、MSPC 1-ミリストイル-2-ステアロイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン、PMPC 1-パルミトイル-2-ミリストイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン、POPC CAS-26853-31-6 1-パルミトイル-2-オレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン、POPE 1-パルミトイル-2-オレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン、POPG-NA CAS-81490-05-3 1-パルミトイル-2-オレオイル-sn-グリセロ-3[ホスホ-rac-(1-グリセロール)...](ナトリウム塩)、PSPC 1-パルミトイル-2-ステアロイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン、SMPC 1-ステアロイル-2-ミリストイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン、SOPC 1-ステアロイル-2-オレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン、SPPC 1-ステアロイル-2-パルミトイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリンが挙げられる。
【0057】
一部の好ましい実施形態では、リン脂質の具体的な非限定的な例として、ジミリストイルホスファチジルコリン(DMPC)、ダイズレシチン、ジパルミトイルホスファチジルコリン(DPPC)、ジステアロイルホスファチジルコリン(DSPC)、ジラウロイル(dilauryloly)ホスファチジルコリン(DLPC)、ジオレオイルホスファチジルコリン(DOPC)、ジラウロイル(dilaurylolyl)ホスファチジルグリセロール(DLPG)、ジミリストイルホスファチジルグリセロール(DMPG)、ジパルミトイルホスファチジルグリセロール(DPPG)、ジステアロイルホスファチジルグリセロール(DSPG)、ジオレオイルホスファチジルグリセロール(DOPG)、ジミリストイルホスファチジン酸(DMPA)、ジミリストイルホスファチジン酸(DMPA)、ジパルミトイルホスファチジン酸(DPPA)、ジパルミトイルホスファチジン酸(DPPA)、ジミリストイルホスファチジルエタノールアミン(DMPE)、ジパルミトイルホスファチジルエタノールアミン(DPPE)、ジミリストイルホスファチジルセリン(DMPS)、ジパルミトイルホスファチジルセリン(DPPS)、ジパルミトイルスフィンゴミエリン(DPSP)、ジステアロイルスフィンゴミエリン(DSSP)、およびそれらの混合物が挙げられる。
【0058】
特定の実施形態では、本組成物が2種類以上のリン脂質を含む(から本質的になるまたはからなる)場合、2種類のリン脂質の重量比は、約1:10~約10:1、約2:1~約4:1、約1:1~約5:1、約2:1~約5:1、約6:1~約10:1、約7:1~約10:1、約8:1~約10:1、約7:1~約9:1、または約8:1~約9:1の範囲であり得る。たとえば、2種類のリン脂質の重量比は約1:10、約1:9、約1:8、約1:7、約1:6、約1:5、約1:4、約1:3、約1:2、約1:1、約2:1、約3:1、約4:1、約5:1、約6:1、約7:1、約8:1、約9:1、または約10:1であり得る。
【0059】
一実施形態では、(a)本発明のナノスケール構築物のリン脂質は、2本鎖のジアシル-リン脂質および一本鎖のアシル-リン脂質/リゾ脂質の混合物を含む(から本質的になるまたはからなる)。
【0060】
一実施形態では、(a)のリン脂質は、(DMPC)、および(MHPC)である、リン脂質およびリゾ脂質の混合物である。
【0061】
DMPCのMHPCに対する重量比は、約1:10~約10:1、約2:1~約4:1、約1:1~約5:1、約2:1~約5:1、約6:1~約10:1、約7:1~約10:1、約8:1~約10:1、約7:1~約9:1、または約8:1~約9:1の範囲であり得る。DMPCのMHPCに対する重量比は、約1:10、約1:9、約1:8、約1:7、約1:6、約1:5、約1:4、約1:3、約1:2、約1:1、約2:1、約3:1、約4:1、約5:1、約6:1、約7:1、約8:1、約9:1、または約10:1であり得る。
【0062】
一実施形態では、(a)のリン脂質は、(POPC)および(PHPC)である、リン脂質およびリゾ脂質の混合物である。
【0063】
POPCのPHPCに対する重量比は、約1:10~約10:1、約2:1~約4:1、約1:1~約5:1、約2:1~約5:1、約6:1~約10:1、約7:1~約10:1、約8:1~約10:1、約7:1~約9:1、または約8:1~約9:1の範囲であり得る。DMPCのMHPCに対する重量比は、約1:10、約1:9、約1:8、約1:7、約1:6、約1:5、約1:4、約1:3、約1:2、約1:1、約2:1、約3:1、約4:1、約5:1、約6:1、約7:1、約8:1、約9:1、または約10:1であり得る。
【0064】
C4~C30の鎖長の範囲にあり、飽和型または不飽和型であり、シスまたはトランスであり、置換されていないかまたは1~6つの側鎖で置換されており、リゾ脂質が添加されていないかまたは添加されているリン脂質は全て、本明細書中記載されるナノスケール構築物またはナノ粒子/ナノバイオロジー組成物での使用で企図されていることに留意されたい。
【0065】
さらに、他の合成バリアントおよび他のリン脂質頭部基を有するバリアントも企図されている。
【0066】
リゾ脂質
用語「リゾ脂質」は、本明細書中使用される場合、非限定的な実施形態における、1-ミリストイル-2-ヒドロキシ-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(MHPC)、1-パルミトイル-2-ヘキサデシル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(PHPC)および1-ステアロイル-2-ヒドロキシ-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(SHPC)などの、(アシル-、単鎖)を含む。
【0067】
アポリポタンパク質A-I(apoA-I)(apoA1)
用語「アポリポタンパク質A-I」または「apoA-I」は、「アポリタンパク質A1」または「apoA1」でもあり、ヒトのAPOA1遺伝子がコードするタンパク質を表し、本明細書中使用される場合は、apoA-Iのペプチドミメティックをも含む。アポリポタンパク質A1(apoA-I)は、(b)ナノスケール構築物における下位成分である。
【0068】
疎水性マトリックス
用語「疎水性マトリックス」は、ナノバイオロジー組成物のコアまたは増量剤または構造調節剤を表す。構造の調節として、(1)(a)リン脂質と(b)apoA-Iとのみから作製されるナノスケール構築物の粒径を増大または設計するために疎水性マトリックスを使用すること、(2)ナノスケール構築物粒子の大きさおよび/または形状を増大または減少させる(設計する)こと、(3)ナノスケール構築物粒子の疎水性コアを増大または減少させる(設計する)こと、(4)疎水性薬物を組み込むナノバイオロジー組成物の特性および/または混和性を増大または減少させる(設計する)こと、ならびに(5)ナノスケール構築物粒子の体内分布の特性を増大または減少させることが挙げられる。
【0069】
ナノスケール構築物の粒径、硬性、粘度、および/または体内分布は、添加される疎水性分子の量および種類により加減され得る。非限定的な例として、(a)リン脂質と(b)apoA-Iとのみから作製されるナノスケール構築物は、直径10nm~50nmを有し得る。(c)トリグリセリドなどの疎水性マトリックス分子を添加することは、ナノスケール構築物を最小10nmから少なくとも30nmまで膨張させる。より多くのトリグリセリドを添加することは、ナノスケール構築物の直径を、本発明の範囲内で、少なくとも50nm、少なくとも75nm、少なくとも100nm、少なくとも150nm、少なくとも200nm、少なくとも300nm、および最大400nmに増大させ得る。
【0070】
生成方法は、均一の大きさのナノスケール構築物粒子を調製することができ、あるいは、ろ過を行わないか、またはある範囲の異なる大きさのナノスケール構築物粒子を調製し、生成後のステップでこれらを再度組み合わせるかのいずれかにより、均一ではない大きさのナノスケール構築物粒子の混合物を調製し得る。ナノスケール構築物粒子の大きさを大きくすると、より多くの薬物が組み込まれ得る。しかしながら、たとえば120nm超といった大きな大きさは、ナノスケール構築物粒子の処置される患者の組織内への拡散を限定するか、妨げるか、または遅延し得る。小さなナノスケール構築物粒子は、粒子あたりにそれほど多くの薬物を保持しないが、たとえば移植組織および周辺組織、動脈硬化プラークなどといった、訓練された免疫に冒されている骨髄、血液、または脾臓、または他の局在組織にアクセスすることができる(体内分布)。単回の投与またはレジメンで均一ではないナノ粒子の大きさの混合物を使用することは、自然免疫の応答性亢進の即時低減をもたらし得、同時に、数日間、数週間、数カ月間、および数年間持続し得る持続可能な長期間の自然免疫の応答性亢進の低減をもたらし得、ここでナノバイオロジー組成物は、造血幹細胞(HSC)、CMP、および骨髄系細胞、たとえば単球、マクロファージ、および他の短期間の循環細胞の代謝、エピジェネティクス、およびインフラマソームの経路を戻すか、改変するか、または再度調節している。
【0071】
他の(c)疎水性マトリックス分子、たとえばコレステロール、脂肪酸エステル、疎水性ポリマー、ステロールエステル、および異なる種類のトリグリセリド、またはそれらの特定の混合物などを添加することは、特定の目的に特に望ましい特徴を強調するように、ナノスケール構築物粒子をさらに設計し得る。大きさ、硬性、および粘度は、充填および体内分布に影響を与え得る。
【0072】
非限定的な例として、最大充填能は、薬剤-充填スフェロイドの体積でナノスケール構築物粒子の内部の容積を除算することにより決定され得る。
【0073】
粒子:2.2nm~3.0nmのリン脂質壁を有する100nmの球状の粒子を想定しており、内径94nmで体積(L)@4/3π(r)3をもたらす。
【0074】
薬物:12×12×35オングストロームでかまたは1.2×1.2×3.5nmのシリンダーとしてのシロリムス(ラパマイシン)を想定している(ここで、複数、たとえば7つまたは9つの薬物分子のシリンダー、または複数の薬物+トリグリセリド(triglyeride)などの疎水性マトリックス担体は、1.75nmの半径を有し、Vol(small)@4/3π(r)3の直径3.5nmのスフェロイドを想定し得る)。
【0075】
最大充填能(calc):100nmの粒子の中に約19,372個の3.5nmのスフェロイド。
【0076】
生物学的に関連する脂質として、脂肪アシル、グリセロ脂質、グリセロリン脂質、スフィンゴ脂質、ステロール脂質、プレノール脂質、糖脂質(saccharolipid)、およびポリケチドが挙げられる。42,000超の脂質の完全なリストが、https://www.lipidmaps.orgで得ることができる。
【0077】
トリグリセリド
「トリグリセリド」および同様の文言は、グリセロールおよび3つの脂肪酸由来のエステルを意味する。トリグリセリドを記載するために本明細書で使用される表記は、脂肪酸を記載するために以下で使用されるものと同じである。トリグリセリドは、以下の脂肪酸:C18:1、C14:1、C16:1のポリ不飽和型および飽和型のいずれかの組み合わせとグリセロールを含み得る。脂肪酸は、任意の順序でグリセロール分子に結合し得、たとえば、いずれかの脂肪酸が、エステル結合を形成するためにグリセロール分子のヒドロキシル基のいずれかと反応し得る。C18:1脂肪酸のトリグリセリドは、単純に、トリグリセリドの脂肪酸の成分が、C18:1脂肪酸由来かこれに基づくことを意味する。すなわち、C18:1トリグリセリドは、グリセロールと、各脂肪酸が1つの二重結合を有するそれぞれ18つの炭素原子の3つの脂肪酸とのエステルである。同様に、C14:1のトリグリセリドは、グリセロールと、各脂肪酸が1つの二重結合を有するそれぞれ14つの炭素原子の3つの脂肪酸とのエステルである。同様に、C16:1のトリグリセリドは、グリセロールと、各脂肪酸が1つの二重結合を有するそれぞれが16の炭素原子の3つの脂肪酸とのエステルである。C14:1および/またはC16:1の脂肪酸と組み合わせたC18:1脂肪酸のトリグリセリドは、(a)C18:1のトリグリセリドが、C14:1のトリグリセリドもしくはC16:1のトリグリセリドもしくはその両方と混合されているか;または(b)トリグリセリドの脂肪酸の成分の少なくとも1つが、C18:1脂肪酸由来かもしくはこれに基づき、他の2つが、C14:1脂肪酸および/もしくはC16:1脂肪酸由来かまたはこれに基づくことを意味する。
【0078】
脂肪酸
「脂肪酸」および同様の用語は、飽和しているかまたは飽和していない長い脂肪族の尾を有するカルボン酸を意味する。脂肪酸は、リン脂質およびトリグリセリドへとエステル化され得る。本明細書中使用される場合、脂肪酸の鎖長は、飽和されているかまたは飽和されておらず、シスまたはトランスであり、置換されていないかまたは1~6つの側鎖で置換されている、C4~C30を含む。不飽和脂肪酸は、炭素原子間に1つ以上の二重結合を有する。飽和脂肪酸は、二重結合を全く含まない。脂肪酸を記載するために本明細書で使用される表記は、炭素原子の大文字「C」、続いて、脂肪酸における炭素原子の数を説明する数、続いて、コロン、および脂肪酸における二重結合の数のための別の数を含む。たとえば、C16:1は、1つの二重結合を含む16の炭素原子の脂肪酸、たとえばパルミトレイン酸を意味する。この表記におけるコロンの後の数は、脂肪酸における二重結合の位置を表すものではなく、二重結合の炭素原子に結合した水素原子が互いにシスであるかどうかを表すものでもない。この表記の他の例として、C18:0(ステアリン酸)、C18:1(オレイン酸)、C18:2(リノール酸)、C18:3(a-リノレン酸)、およびC20:4(アラキドン酸)が挙げられる。
【0079】
ステロールおよびステロールエステル
用語「ステロール」、たとえば限定するものではないがコレステロールもまた、本明細書中記載される方法および化合物で利用され得る。ステロールは、C-3位にのみヒドロキシル基を含み他の官能基を含まない動物性または植物性のステロイドである。一般的に、ステロールは、27~30個の炭素原子と、5/6位、および任意選択で7/8、8/9、または他の位置に1つの二重結合とを含む。これら不飽和の種類以外の他のステロールは、水素付加により得られる飽和化合物である。適切な動物性ステロールの一例として、コレステロールがある。適用の観点から好ましい、適切なフィトステロールの典型的な例として、エルゴステロール、カンプエステロール、スチグマステロール、ブラシカステロール、好ましくはシトステロールまたはシトスタノール、より好ましくはβ-シトステロールまたはβ-シトスタノールがある。記載されたフィトステロールの他に、好ましくはこれらのエステルが使用される。このエステルの酸の成分は、式(I):R1CO-OH(I)(式中、R1COは、2~30の炭素元素と、0および/または1、2、3つの二重結合とを含む脂肪族の直鎖または分枝鎖のアシル基である)に対応するカルボン酸に戻り得る。典型的な例として、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸、カプリル酸、2-エチルヘキサン酸、カプリン酸、ラウリン酸、イソトリデカン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、パルミトレイン酸、ステアリン酸、イソステアリン酸、オレイン酸、エライジン酸、ペトロセリン酸(petroselic acid)、リノール酸、共役リノール酸(CLA)、リノレン酸、エレオステアリン酸(elaeosteric add)、アラキン酸(arachic acid)、ガドレイン酸、ベヘン酸、およびエルカ酸がある。
【0080】
疎水性ポリマー
マトリックスを作製するために使用される疎水性ポリマー(単数または複数)は、ヒトの使用で認可された(すなわち生体適合性であり、FDAにより認可されている)ポリマーの群から選択され得る。このようなポリマーは、たとえば、限定するものではないが、以下のポリマー、当該ポリマーの誘導体、コポリマー、ブロックコポリマー、分枝状ポリマー、およびポリマー混合物を含む:ポリアルケンジカルボキシレート(polyalkenedicarboxlates)、ポリ酸無水物、ポリ(アスパラギン酸)、ポリアミド、ポリブチレンサクシネート(PBS)、ポリブチレンサクシネート-co-アジペート(PBSA)、ポリ(ε-カプロラクトン)(PCL)、ポリ-アルキレンカーボネートを含むポリカーボネート(PC)、脂肪族ポリエステルおよびポリエステル-アミドを含むポリエステル、ポリエチレンサクシネート(PES)、ポリグリコリド(PGA)、ポリイミンおよびポリアルキレンイミン(PI、PAI)、ポリラクチド(PLA、PLLA、PDLLA)、ポリ乳酸-co-グリコール酸(PLGA)、ポリ(1-リジン)、ポリメタクリレート、ポリペプチド、ポリオルトエステル、ポリ-p-ジオキサノン(PPDO)、(疎水性)修飾-多糖、ポリシロキサンおよびポリ-アルキル-シロキサン、ポリ尿素、ポリウレタン、ならびにポリビニルアルコール。
【0081】
生加水分解性
本明細書中使用される場合、特段記載のない限り、用語「生加水分解性アミド」、「生加水分解性エステル」、「生加水分解性カルバメート」、「生加水分解性カーボネート」、「生加水分解性ウレイド」、「生加水分解性ホスフェート」は、それぞれ、1)化合物の生物学的な活性を妨害しないが、取り込み、作用の持続期間、もしくは作用の発生などのin vivoでの好適な特性を化合物に提供し得るか;または2)生物学的に不活性であるが、in vivoにおいて生物学的に有効な化合物へと変換される、化合物のアミド、エステル、カルバメート、カーボネート、ウレイド、ホスフェートを意味する。生加水分解性エステルの例として、限定するものではないが、低級アルキルエステル、低級アシルオキシアルキルエステル(たとえばアセトキシルメチル、アセトキシエチル、アミノカルボニルオキシメチル、ピバロイルオキシメチル、およびピバロイルオキシエチルエステル)、ラクトニル(lactonyl)エステル(たとえばフタリジルおよびチオフタリジルエステル)、低級アルコキシアシルオキシアルキルエステル(たとえばメトキシカルボニル-オキシメチル、エトキシカルボニルオキシエチルおよびイソプロポキシカルボニルオキシエチルエステル)、アルコキシアルキルエステル、コリンエステル、およびアシルアミノアルキルエステル(たとえばアセトアミドメチルエステル)が挙げられる。生加水分解性アミドの例として、限定するものではないが、低級アルキルアミド、α-アミノ酸アミド、アルコキシアシルアミド、およびアルキルアミノアルキルカルボニルアミドが挙げられる。生加水分解性カルバメートの例として、限定するものではないが、低級アルキルアミン、置換されているエチレンジアミン、アミノ酸、ヒドロキシアルキルアミン、複素環式アミンおよび芳香族複素環式アミン、ならびにポリエーテルアミンが挙げられる。
【0082】
ナノスケール構築物を生成する方法
方法が以下に記載されており、これら方法に関連するバリアントが存在する。
【0083】
方法1-フィルム
リン脂質、(プロ)ドラッグおよび任意選択のトリグリセリドまたはポリマーを、(通常クロロホルム、エタノール、またはアセトニトリルに)溶解する。次に、この溶液を、真空下で蒸発させて、これら成分のフィルムを形成する。その後、バッファー溶液を添加してフィルムを水和させ、ベジクル懸濁物を作製する。
【0084】
リン脂質、(プロ)ドラッグ、および任意選択のトリグリセリドまたはポリマーを、(通常クロロホルム、エタノール、またはアセトニトリルに)溶解する。次に、この溶液を、有機溶媒が完全に蒸発するまで、撹拌しながら温和に加熱したバッファー溶液に注入または滴下し、ベジクル懸濁物を作製する。
【0085】
AまたはBを使用して作製したベジクル懸濁物に、アポリポタンパク質A-I(apoA-I)(apoA-IはまたすでにBにあり得ることに留意されたい)-(変性を回避するために滴下して使用する)を添加し、得られた混合物を、外部の氷水槽を使用して完全に冷却しながら、tip sonicatorを使用して30分間超音波処理する。得られたナノバイオロジー組成物および他の副生成物を含む溶液を、ナノバイオロジー組成物の推定される大きさに応じた分子量のカットオフを有するSartorius Vivaspinチューブに移す(通常、10,000~100,000kDaのカットオフを有するVivaspinチューブが使用される)。これらチューブを、溶媒の容量の約90%がフィルターを通過するまで遠心分離する。その後、残りの溶液の容量におおよそ相当する容量のバッファーを添加し、容量のおよそ半分がフィルターを通過するまでチューブを再度回転させる。これを、残りの溶液がポリエーテルスルホンの0.22μmのシリンジフィルターを通るまで2回反復し、最終的なナノバイオロジー組成物の溶液を得る。
【0086】
方法2-マイクロフルイディクス
別の手法では、リン脂質、(プロ)ドラッグ、および任意選択のトリグリセリド、コレステロール、ステリルエステル、またはポリマーを、(通常エタノールまたはアセトニトリルに)溶解し、シリンジに充填する。さらに、リン酸緩衝生理食塩水におけるアポリポタンパク質A-I(apoA-I)の溶液を、第2のシリンジに充填する。マイクロフルイディクスのポンプを使用して、両方のシリンジの中身を、マイクロボルテックスのプラットフォームを使用して混合する。得られたナノバイオロジー組成物および他の副生成物を含む溶液を、粒子の推定される大きさに応じた分子量のカットオフを有するSartorius Vivaspinチューブに移す(通常、10,000~100,000kDaのカットオフを有するVivaspinチューブが使用される)。これらチューブを、溶媒の容量の約90%がフィルターを通過するまで遠心分離する。その後、残りの溶液の容量におおよそ相当する容量のリン酸緩衝生理食塩水を添加し、容量のおよそ半分がフィルターを通過するまでチューブを再度回転させる。これを、残りの溶液がポリエーテルスルホンの0.22μmのシリンジフィルターを通るまで2回反復し、最終的なナノバイオロジー組成物の溶液を得る。
【0087】
方法3-マイクロフルイダイザー
本発明に係る別の好ましい方法では、ナノスケール構築物および最終的なナノバイオロジー組成物を調製するために、マイクロフルイダイザー技術が使用される。
【0088】
マイクロフルイダイザーは、潜行ジェットの原則(submerged jet principle)で作動する小さな粒径物質を調製するための装置である。ナノ粒子を得るためにマイクロフルイダイザーを作動させる際では、あらかじめ混合されている流れを2つの流れに分けるセラミックのブロックのチャネルのシステムからなるいわゆるインターアクションチャンバーを介して、高圧ポンプによりこの流れに力を加える。正確に制御されているせん断、乱流、およびキャビテーションの力が、マイクロフルイダイゼーションの間インターアクションチャンバーの中にもたらされる。この2つの流れは、せん断をもたらすように高速で組み合わせられる。これによって得られた生成物は、さらに小さな粒子を得るために、マイクロフルイダイザーへと再循環され得る。
【0089】
従来の製粉プロセスを超えるマイクロフルイダイゼーションの利点として、最終的な生成物の異物混入の実質的な低減、およびスケールアップ作製の簡便性が挙げられる。
【0090】
マイクロフルイダイザーの例1-1L
ナノスケール構築物およびラパマイシンナノバイオロジー組成物の形成
この例は、ラパマイシンの濃度がナノスケール構築物/エマルジョン中4~8mg/mLであり、製剤が1Lのスケールで作製される、ラパマイシンとナノスケール構築物とを含む医薬組成物の調製を例示する。
【0091】
ラパマイシン(7200mg)を、36mLのクロロホルム/t-ブタノールに溶解する。次にこの溶液を、POPC/PHPCのリン脂質の混合物、apoA-I、トリカプリリン、およびコレステロールを含むナノスケール構築物溶液(3(w/v)%)900mLに添加した。この混合物を、10,000~15,000rpmで5分間ホモジナイズし(Vitris homogenizer model Tempest I.Q.)、粗製のエマルジョンを形成し、次に、高圧のホモジナイザーに移した。乳化を、エマルジョンを再循環させつつ、20,000psiで行う。結果得られた系を、ロータリーエバポレーターに移し、溶媒を、40℃、減圧下(25mmHg)で迅速に除去する。得られた分散系は半透明である。この分散系を、複数のろ過器で段階的にろ過する。ろ過された製剤の大きさは、8~400nmである。
【0092】
マイクロフルイダイザーの例2-5L
ナノスケール構築物およびラパマイシンのナノバイオロジー組成物の形成
この例は、ラパマイシンとナノスケール構築物とを含む医薬組成物の調製を例証しており、この製剤は、5Lのスケールでなされる。
【0093】
ラパマイシンを、クロロホルム/t-ブタノールに溶解する。次にこの溶液を、POPC/PHPCのリン脂質の混合物、apoA-Iのペプチドミメティック、C16-C20トリグリセリドの混合物、コレステロールおよび1つ以上のステリルエステルの混合物、ならびに疎水性ポリマーを含むナノスケール構築物溶液(1~5(w/v)%)に添加する。この混合物を、10,000~15,000rpmで5分間ホモジナイズし(Vitris homogenizer model Tempest I.Q.)、粗製のエマルジョンを形成した後、高圧のホモジナイザーに移す。乳化を、エマルジョンを再循環させつつ、20,000psiで行う。得られた系をロータリーエバポレーターに移し、溶媒を、40℃、減圧下(25mmHg)で迅速に除去する。得られた分散系は半透明である。この分散系を、複数のろ過器で段階的にろ過する。ろ過された製剤の大きさは、35~100nmである。
【0094】
マイクロフルイダイザーの例3-凍結乾燥
ナノバイオロジー組成物を、上記の例のいずれかのように形成する。この分散系を、さらに60時間凍結乾燥する(FTS Systems,Dura-Dry μP,Stone Ridge,N.Y.)。得られた凍結乾燥ケーキは、滅菌水または0.9(w/v)%の滅菌された生理食塩水を添加することにより元の分散系へと容易に再構成することができる。再構成後の粒径は、凍結乾燥前と同じである。
【0095】
プロドラッグ
本明細書中使用される場合、特段他の記載がない限り、用語「プロドラッグ」は、本化合物を提供するように生物学的条件下(in vitroまたはin vivo)で加水分解、酸化、または他の方法で反応し得る化合物の誘導体を意味する。プロドラッグの例として、限定するものではないが、生加水分解性アミド、生加水分解性エステル、生加水分解性エーテル、生加水分解性カルバメート、生加水分解性カーボネート、生加水分解性ウレイド、および生加水分解性ホスフェートの類縁体などの生加水分解性部分を含む本発明のナノバイオロジー組成物の誘導体が挙げられる。プロドラッグの他の例は、非生加水分解性があるが、にもかかわらず安定性および官能性を提供する部分を含む。プロドラッグの他の例として、-NO、-NO2、-ONO、または-ONO2の部分を含む本発明のナノバイオロジー組成物の誘導体が挙げられる。プロドラッグは、通常、たとえば1 Burger’s Medicinal Chemistry and Drug Discovery,172-178,949-982(Manfred E.Wolff ed.,5th ed.1995)、およびDesign of Prodrugs(H.Bundgaard ed.,Elselvier,N.Y.1985)に記載される方法のようなよく知られている方法を使用して、調製され得る。
【0096】
ナノバイオロジー組成物との薬物の適合性を上げることは、以下に記載の戦略を使用して達成され得る。薬物は、コレステロールなどの疎水性部分に共有結合される。必要に応じて、プロドラッグの手法は、不安定な結合を介して達成することができ、たとえば酵素により切断可能なプロドラッグをもたらし得る。
【0097】
その後、誘導体化された薬物は、in vivoでの薬物送達に使用される脂質ベースのナノバイオロジー組成物へと組み込まれる。薬物誘導体化の主な目的は、親の薬物と比較して高い疎水性で薬物-コンジュゲートを形成することである。結果として、ナノバイオロジー組成物の中の薬物-コンジュゲートの保持は、親薬物の保持と比較して高められることにより、漏出が低減され標的組織への送達が改善される。プロドラッグ戦略の事例では、異なる種類の疎水性部分が、in vivoで異なる開裂速度を生じさせることにより、有効な薬物がもたらされる速度に影響を与え、よって、ナノバイオロジー組成物-薬物の構築物の全体的な治療効果に影響を与え得る。
【0098】
特に、脂質、ステロール、ポリマー、および脂肪族の側鎖が、疎水性部分として使用され得る。疎水性を増大させるための炭素鎖を有するmTORi HDLナノバイオロジー組成物の最適な誘導体化が、これら方法により合成されている。さらに、さらなる実施形態において、HDLにトリグリセリドを含めることにより、mTOR阻害剤などの有効な作用物質を充填するための、より大きく、より混和性の高い疎水性コアが作製される。
【0099】
第2の有効な作用物質との併用
ナノバイオロジー組成物は、本発明の方法および組成物において、他の薬理学的に有効な化合物(「第2の有効な作用物質」)と併用され得る。特定の併用は、特定の種類の移植、アテローム性動脈硬化、関節炎、炎症性腸疾患、ならびに、望ましくない自己免疫の活性に関連しているかこれを特徴とする特定の疾患および病態の処置において、相乗的に作用すると考えられている。
【0100】
またナノバイオロジー組成物は、特定の第2の有効な作用物質に関連する有害作用を軽減するために作用し得、一部の第2の有効な作用物質は、ナノバイオロジー組成物に関連する有害作用を軽減するために使用され得る。
【0101】
小分子の二次的な作用物質
本発明のナノバイオロジー組成物との併用療法で使用され得る小分子薬物として、プレドニゾン、プレドニゾロン、メチルプレドニゾロン、デキサメタゾン(dezmethasone)、ベタメタゾン、アセチルサリチル酸、フェニルブタゾン、インドメタシン、ジフルニサル、スルファサラジン、アセトアミノフェン、メフェナム酸、メクロフェナム酸、フルフェナム酸、イブプロフェン、ナプロキセン、フェノプロフェン、ケトプロフェン、フルルビプロフェン、オキサプロジン、ピロキシカム、テノキシカム、サリチル酸塩、ニメスリド、セレコキシブ、ロフェコキシブ、バルデコキシブ、ルミラコキシブ、パレコキシブ、エトリコキシブ、メトトレキサート、レフルノミド、スルファサラジン、アザチオプリン、シクロホスファミド、抗マラリア薬ヒドロキシクロロキンおよびクロロキン、d-ペニシラミン、ならびにシクロスポリンが挙げられる。
【0102】
用量
用量は、全般的に、1日あたり、レシピエント(哺乳類)の体重1kgあたり5μg~100mgであり、通常、1日あたり5μg~10mg/kg体重の範囲にある。この量は、1日あたり単回投与で提供されてもよく、またはより一般的には、1日の総用量が同じであるように1日あたりの複数の(たとえば2、3、4、5、または6つの)下位用量で提供され得る。その塩または溶媒和物の有効量は、阻害剤を含むナノバイオロジー組成物の化合物の有効量の比率に応じて決定されてもよく、ここで、阻害剤またはその薬学的に許容される塩、溶媒和物、多形、互変異性体、またはプロドラッグは、ナノスケール構築物(IMPEPi-NA)を使用したナノバイオロジー組成物として製剤化されている。
【0103】
別の好ましい実施形態では、阻害剤は、mTOR阻害剤(mTORi-NA)、S6K1阻害剤(S6K1i-NA)、ジエチルマロネート(DMM)、3BP、2-DG(DMM-NA)(一般的に解糖を阻害する-Gly-NA)、またはカンプトテシン(Hif-1a)、またはタクロリムス+ナノスケール構築物を含み得る。
【0104】
併用療法
訓練された免疫を阻害するための本発明の化合物、ならびにその塩および溶媒和物、およびその生理学的に機能的な誘導体は、単独で使用されてもよく、または疾患および病態を処置するための他の治療用作用物質と併用されてもよい。二次的な治療用作用物質とナノバイオロジー組成物の併用療法は、既知の免疫抑制剤の化合物との共投与を含み得る。例示的な免疫抑制剤として、限定するものではないが、スタチン;mTOR阻害剤、たとえばラパマイシンまたはラパマイシン類縁体;TGF-βシグナリング作用物質;TGF-β受容体アゴニスト;ヒストンデアセチラーゼ(HDAC)阻害剤;コルチコステロイド;ミトコンドリア機能の阻害剤、たとえばロテノン;P38阻害剤;NF-κβ阻害剤;アデノシン受容体アゴニスト;プロスタグランジンE2アゴニスト;ホスホジエステラーゼ阻害剤、たとえばホスホジエステラーゼ4阻害剤;プロテアソーム阻害剤;キナーゼ阻害剤;Gタンパク質共役受容体アゴニスト;Gタンパク質共役受容体アンタゴニスト;グルココルチコイド;レチノイド;サイトカイン阻害剤;サイトカイン受容体阻害剤;サイトカイン受容体活性化因子;PPAR(ペルオキシゾーム増殖剤応答性受容体:peroxisome proliferator-activated receptor)アンタゴニスト;PPARアゴニスト;ヒストンデアセチラーゼ阻害剤;カルシニューリン阻害剤;ホスファターゼ阻害剤、および酸化されているATPが挙げられる。
【0105】
また免疫抑制剤は、IDO、ビタミンD3、シクロスポリンA、アリール炭化水素受容体阻害剤、レスベラトロール、アザチオプリン(azathiopurine)、6-メルカプトプリン、アスピリン、ニフルミン酸、エストリオール、トリプトライド(tripolide)、インターロイキン(たとえばIL-1、IL-10)、シクロスポリンA、siRNA標的化サイトカイン、またはサイトカイン受容体などを含む。スタチンの例として、アトルバスタチン(LIPITOR.RTM.,TORVAST.RTM.)、セリバスタチン、フルバスタチン(LESCOL.RTM.,LESCOL.RTM.XL)、ロバスタチン(MEVACOR.RTM.,ALTOCOR.RTM.,ALTOPREV.RTM.)、メバスタチン(COMPACTIN.RTM.)、ピタバスタチン(LIVALO.RTM.,PIAVA.RTM.)、ロスバスタチン(PRAVACHOL.RTM.,SELEKTINE.RTM.,LIPOSTAT.RTM.)、ロスバスタチン(CRESTOR.RTM.)、およびシンバスタチン(ZOCOR.RTM.,LIPEX.RTM.)が挙げられる。
【0106】
移植
「移植可能な移植片」は、対象に投与され得る、細胞、組織、および臓器(全体または一部)などの生体物質を表す。移植可能な移植片は、たとえば臓器、組織、皮膚、骨、神経、腱、ニューロン、血管、脂肪、角膜、多能性細胞、分化した細胞(in vivoまたはin vitroで得られるかまたは導きだされる)などの生体物質の自家移植片、同種移植片、または異種移植片であり得る。一部の実施形態では、移植可能な移植片は、たとえば、軟骨、骨、細胞外マトリックス、またはコラーゲンマトリックスから形成される。また移植可能な移植片は、移植され得る組織および臓器における単細胞、細胞の懸濁物、および細胞であり得る。移植可能な細胞は、通常、治療機能、たとえば、レシピエント対象において欠けているかまたは減少している機能を有する。一部の移植可能な細胞の非限定的な例として、島細胞、β細胞、肝細胞、造血幹細胞、神経幹細胞、ニューロン、グリア細胞、またはミエリン形成細胞がある。移植可能な細胞は、改変されていない細胞、たとえばドナー対象から得られ、遺伝的改変またはエピジェネティクスの改変を全く伴わずに移植で使用可能な細胞であり得る。他の実施形態では、移植可能な細胞は、改変された細胞、たとえば、遺伝的欠陥を有する対象から得られこの遺伝的欠陥が修正されている細胞、またはリプログラミングされた細胞由来の細胞、たとえば対象から得られた細胞由来の分化した細胞であり得る。
【0107】
「移植」は、(たとえばドナー対象から、in vitroでの供給源(たとえば、分化した自家性または異種性のネイティブなまたは誘導性の多能性細胞から)レシピエント対象の中に、および/または同じ対象における1つの身体の位置から別の身体の位置へと、移植可能な移植片を移す(移動させる)プロセスを表す。
【0108】
一実施形態では、移植組織は、肺組織、心臓組織、腎臓組織、肝臓組織、網膜組織、角膜組織、皮膚組織、膵臓組織、腸組織、生殖器組織、卵巣組織、骨組織、腱組織、または血管組織である。
【0109】
一実施形態では、移植組織は、インタクトな臓器として移植される。
【0110】
本明細書中使用される場合、「レシピエント対象」は、別の対象由来の移殖される細胞、組織、または臓器を受領する対象または受領したことのある対象である。
【0111】
本明細書中使用される場合、「ドナー対象」は、レシピエント対象への細胞、組織、または臓器の移植前に、移植される細胞、組織、または臓器が除去される対象である。
【0112】
一実施形態では、ドナー対象は霊長類である。さらなる実施形態では、ドナー対象はヒトである。一実施形態では、レシピエント対象は霊長類である。一実施形態では、レシピエント対象はヒトである。一実施形態では、ドナー対象およびレシピエント対象の両方がヒトである。よって、本発明の主題は、異種移植の実施形態を含む。本明細書中使用される場合、「免疫系による拒絶」は、ドナーから移植された細胞、組織、または臓器を非自己と認識するレシピエント対象の免疫系の超急性、急性、および/または慢性の応答、およびその結果の免疫応答のイベントである。
【0113】
用語「同種異系」は、物質が導入される個体と同じ種の異なる動物由来のいずれかの物質を表す。2つ以上の個体は、1つ以上の位置で遺伝子が同一ではない場合に、互いが同種異系であると言われる。
【0114】
用語「自家性」は、同じ個体由来のいずれかの物質であって、後に同じ個体に再導入される物質を表す。
【0115】
本明細書中使用される場合、「免疫抑制薬」は、レシピエント対象の免疫応答を抑制するために使用される薬学的に許容される薬物である。非限定的な例として、ラパマイシンが挙げられる。
【0116】
薬学的な送達
本明細書中使用される場合、「予防上有効な」量は、物質が投与される対象において所定の病態の発症を予防または遅延させるために有効な物質の量である。予防上有効な量は、所望の予防上の結果を達成するために必要な用量および期間で有効な量を表す。通常、予防上の用量は、疾患の初期よりも前かまたは疾患の初期に対象で使用されるため、予防上有効な量は、治療上有効な量よりも少ない。
【0117】
本明細書中使用される場合、「治療上有効な」量は、物質が投与される、所定の病態を罹患している対象の当該病態の症状または原因を処置、寛解、または弱めるために有効な物質の量である。
【0118】
一実施形態では、治療上または予防上有効な量は、投与あたり約1mgの作用物質/kg対象~約1gの作用物質/kg対象である。別の実施形態では、治療上または予防上有効な量は、約10mgの作用物質/kg対象~500mgの作用物質/対象である。さらなる実施形態では、治療上または予防上有効な量は、約50mgの作用物質/kg対象~200mgの作用物質/kg対象である。さらなる実施形態では、治療上または予防上有効な量は、約100mgの作用物質/kg対象である。さらなる実施形態では、治療上または予防上有効な量は、50mgの作用物質/kg対象、100mgの作用物質/kg対象、150mgの作用物質/kg対象、200mgの作用物質/kg対象、250mgの作用物質/kg対象、300mgの作用物質/kg対象、400mgの作用物質/kg対象、および500mgの作用物質/kg対象から選択される。
【0119】
処置および予防の方法
本発明の方法は、様々な種類の移植、アテローム性動脈硬化、関節炎、炎症性腸疾患、ならびに望ましくない自己免疫の活性に関連しているかまたはこれを特徴とする疾患および病態を処置する方法、予防する方法、および/または管理する方法を包有する。本明細書中使用される場合、特段他の記載がない限り、用語「処置する(treating)」は、特定の疾患または障害の症状の発症の後の、本発明の化合物または他の追加的な有効な作用物質の投与を表す。
【0120】
状態、障害、または病態の「処置」(treatingまたはtreatment)との文言は、
状態、障害、もしくは病態を罹患し得るかもしくは罹患しやすいとされ得るが、当該状態、障害、もしくは病態の臨床的な症状を未だ経験していないかもしくはそれを呈していない人物における状態、障害、もしくは病態の発症の臨床的な症状の出現の予防もしくは遅延;または
状態、障害、もしくは病態の阻害、すなわち疾患の発症もしくはその再発(維持処置の場合)もしくはその少なくとも1つの臨床症状、兆候、もしくは試験(test)の停止、低減、もしくは遅延;または
疾患の軽減、すなわち、状態、障害、もしくは病態、もしくはその臨床症状もしくは無症状の症状もしくは兆候のうちの少なくとも1つの退行を引き起こすこと
を含む。
【0121】
本明細書中使用される場合、特段他の記載がない限り、用語「予防(preventing)」は、特に、移植、アテローム性動脈硬化、関節炎、炎症性腸疾患、ならびに望ましくない自己免疫の活性に関連しているかこれを特徴とする他の疾患および障害のリスクがある患者への、症状を発症する前の投与を表す。用語「予防(prevention)」は、特定の疾患または障害の症状の阻害を含む。移植、アテローム性動脈硬化、関節炎、炎症性腸疾患、ならびに望ましくない自己免疫の活性に関連しているかこれを特徴とする疾患および障害の家族歴を有する患者が、予防レジメンにとって好ましい候補者である。
【0122】
本明細書中使用される場合、特段他の記載がない限り、用語「管理(managing)」は、特定の疾患もしくは障害を罹患したことのある患者の特定の疾患もしくは障害の再発を予防すること、および/または疾患もしくは障害を罹患したことのある患者が寛解に留まる時間を長くすることを含む。
【0123】
別の実施形態では、本発明は、移植、アテローム性動脈硬化、関節炎、炎症性腸疾患を処置、予防、および/または管理する方法であって、本発明のナノスケールの粒子またはその薬学的に許容される塩、溶媒和物、水和物、立体異性体、クラスレート、もしくはプロドラッグを、限定するものではないが外科手術、免疫療法、生物学的療法、放射線療法、または移植を処置、予防、もしくは管理するために現在使用されている他の薬物ではないものをベースとする療法を含む従来の治療と併用して(たとえば従来の治療の前、最中、または後に)、投与することを含む、方法を包有する。
【0124】
身体の内部での薬物の集積のPET造影のための放射標識
本発明の非限定的な好ましい実施形態では、放射性医薬品組成物、ならびに訓練された免疫の影響を受ける患者の骨髄、血液、および/または脾臓の中のナノバイオロジー組成物の集積を放射性医薬により造影する方法であって、
ナノバイオロジー組成物を、応答亢進性の自然免疫応答を促進させるために有効な量の前記患者に投与するステップであって、
前記ナノバイオロジー組成物が、(i)ナノスケール構築物と、(ii)前記ナノスケール構築物に組み込まれている阻害剤薬物と、(iii)前記ナノスケール構築物に組み込まれているポジトロン断層撮影(PET)造影剤とを含み、
前記ナノスケール構築物が、(a)リン脂質と、(b)apoA-IまたはapoA-Iのペプチドミメティックと、任意選択で(c)1つ以上のトリグリセリド、脂肪酸エステル、疎水性ポリマー、またはステロールエステル、またはそれらの組み合わせを含む疎水性マトリックスと、任意選択で(d)コレステロールとを含む多成分の担体組成物であり、
前記代謝経路またはエピジェネティクス経路の阻害剤が、NOD2受容体阻害剤、mTOR阻害剤、リボソームタンパク質S6キナーゼβ-1(S6K1)阻害剤、HMG-CoAレダクターゼ阻害剤(スタチン)、ヒストンH3K27デメチラーゼ阻害剤、BETブロモドメイン遮断阻害剤、ヒストンメチルトランスフェラーゼおよびアセチルトランスフェラーゼの阻害剤、DNAメチルトランスフェラーゼおよびアセチルトランスフェラーゼの阻害剤、インフラマソーム阻害剤、セリン/スレオニンキナーゼAkt阻害剤、HIF-1-αとしても知られている低酸素誘導因子1-αの阻害剤、ならびにそれらの1つ以上の混合物を含み、
前記PET造影剤が、89Zr、124I、64Cu、18F、および86Yから選択され、前記PET造影剤が、安定した薬物-作用物質のキレートを形成するのに適切なキレート剤を使用してナノバイオロジー組成物と錯体形成しており、
前記ナノバイオロジー組成物が、水性環境において、直径約8nm~約400nmの大きさを有する自己集積するナノディスクまたはナノスフィアであり、
前記ナノスケール構築物が、安定した薬物-作用物質のキレートを、前記患者の骨髄、血液、および/または脾臓における骨髄系細胞、骨髄系前駆細胞、または造血幹細胞へと送達する
ステップと、
(ii)前記患者の身体の骨髄、血液、および/または脾臓の中の安定した薬物-作用物質のキレートの体内分布を視覚化するために、前記患者のPET造影を行うステップと
を含む、
方法が提供される。
【0125】
さらに、造影の結果を検証するために、ガンマ線計測またはオートラジオグラフィーを使用する89Zr標識したナノ粒子の組織の取り込みを定量化するための、ex vivoでの方法が使用され得る。
【0126】
これはまた、同じまたは隣接する切片における組織学的染色および/または免疫組織化学的な染色を伴うオートラジオグラフィーにより得られる放射活性の蓄積パターンを比較することにより目的の組織の中のナノ物質の領域分布の評価を可能にする、オートラジオグラフィーベースの組織学に対する新規の取り組みを提供する。
【0127】
現在、ナノ治療用物質のin vivoにおける事象を評価するために最も使用されている方法は、蛍光色素に依存している。しかしながらこれら技術は、自己蛍光、クエンチング、FRET、および環境(たとえばpHまたは溶媒の極性)に対するフルオロフォアの高感受性により、定量的ではない。ナノ粒子の標識としての磁気共鳴画像法の造影剤の統合が試用されているが、著しいペイロードおよび用量(dosing)を必要とし、ナノ粒子製剤の完全性を損ねている。核の造影剤は、これら欠点を有しておらず、特に89Zrが、PET造影に必要なポジトロンの放出および比較的長い物理的な半減期(78.4時間)のため適切であり、除去されるのが遅い物質の長期的な研究を可能にし、近くにサイクロトロンがある必要性を排除する。
【0128】
本発明者らの手法は、89Zrを使用するナノバイオロジー組成物を機能付与するための優れた方法を提供する。DSPE-DFOは、脂質の単層または二重層の中にDFOキレート剤を固定するための安定した方法を表す。さらに、DFOは、ナノ粒子のプラットフォームの外側に存在するため、ナノ粒子は、製剤化された後に標識され得る。これは、放射線が遮蔽される条件下でこれらの製剤化を行う必要性を排除し、使用される必要がある活量を低減させる。最後に、DSPE-DFOを組み込み、89Zrを導入する温和な条件は、幅広い様々なナノ粒子の種類および製剤化方法と適合可能である。
【0129】
本発明のさらなる別の好ましい実施形態では、製剤においてさらなる安定性が望まれる場合、本発明において、C34-DFO6と称される親油性DFO誘導体が、同じプロトコルの後に組み込まれ得る。
【0130】
本発明のさらなる非限定的な好ましい実施形態では、本発明は、まず粒子を製剤化し、次に、市販のp-NCS-Bz-DFOを用いてタンパク質の成分を官能基付与し、最後に、本発明者らの一般的な手法を使用して89Zrを導入することにより調製される放射標識したタンパク質でコーティングしたナノ粒子を含む。
【0131】
実施例
移植免疫の結果-実施例1~13
実施例1-移植免疫-ドナーの同種移植片は、ビメンチンおよびHMGB1を発現し、マクロファージの局所的な訓練を促進する。
同種移植片の免疫を促進させるマクロファージ活性経路を解明するために、訓練された免疫に関連する非永続的なエピジェネティクスのリプログラミングにより引き起こされる炎症性サイトカイン産生の増大を伴うマクロファージの機能的状態を評価した。無菌性の炎症(sterile inflammation)下で存在し得るデクチン1およびTLR4アゴニストのビメンチンおよびHMGB1(high mobility group box 1)の役割が示された。
【0132】
BALB/c(H2d)の心臓は、記載されるように完全に同種異系のC57BL/6(H2b)レシピエントに移植され、
図1~3のデータは、これらタンパク質が、臓器移植後にドナーの同種移植片でアップレギュレートしたことを示している。これは、ビメンチンおよびHMGB1が、局所的に移植片浸潤するマクロファージの訓練を促進できることを示している。
【0133】
確認するために、フローサイトメトリーによる移植片浸潤するマクロファージで発現したデクチン1およびTLR4を、
図4に示す。欠損レシピエントマウスを使用したデクチン1およびTLR4の発現の不存在は、移植片浸潤する炎症性Ly6Chiマクロファージの集積を予防した(
図5)。逆に、デクチン1またはTLR4の欠損は、同種移植片において、同種移植片の認容性を促進する、Ly6Cloマクロファージの集積を促進した。
【0134】
ドナーの同種移植片がビメンチンおよびHMGB1をアップレギュレートしたことが証明され、ビメンチンおよびHMGB1が、マクロファージの訓練を促進することが示された。精製された単球がβグルカンに曝露された後LPSで再刺激される、確立されたin vitroでの訓練された免疫モデルを使用して、同様の増大が、ビメンチンおよびHMGB1での刺激の後の炎症促進性サイトカインTNFαおよびIL-6の産生で観察され(
図6)、これは、これらタンパク質のマクロファージの訓練を誘導する特性を表す。ビメンチンおよびHMGB1が移植片浸潤するマクロファージの局所的な訓練を誘導したことを検証するために、これら細胞を、心臓の同種移植片から流動選別し、炎症促進性サイトカインおよび解糖産物を産生するこれらの特性を評価した。デクチン1またはTLR4の欠損が、ex vivoでのLPS刺激の後に、移植片浸潤するマクロファージによる炎症促進性のTNFαおよびIL-6の発現ならびに乳酸塩の産生を有意に少なくしたことが示された(
図7)。タンパク質の発現と合致して、デクチン1またはTLR4の非存在が、移植片浸潤するマクロファージにおいて、炎症促進性サイトカインTNFαおよびIL-6ならびに解糖酵素ヘキソキナーゼ(HK)およびホスホフルクトキナーゼ(PFKP)のプロモーターでのH3K4me3のエピジェネティクスの変化を予防した(
図8)。まとめると、データは、骨髄の単球前駆体(
図34)が、移植後早期に同種移植片へと遊走し、ビメンチン/HMGB1の局所的な曝露の後に訓練された状態となることを示している。
【0135】
実施例2-移植免疫-mTORi-HDLナノ免疫療法は、in vitroにおいて訓練された免疫を予防する。
本発明の別の好ましい態様では、高密度リポタンパク質(HDL)のナノバイオロジー組成物に基づくナノ免疫療法が、骨髄系細胞を標的とするように開発された。ラパマイシンの哺乳類の標的(mTOR)は、訓練された免疫を介してサイトカイン産生(シグナル3)を調節するため、mTOR阻害剤のラパマイシン(
図35)は、mTORi-HDLナノバイオロジー組成物を提供するために、ヒトの血漿から単離されたコロナ状の天然のリン脂質およびアポリポタンパク質A-I(apoA-I)に被包された。
【0136】
結果得られたナノバイオロジー組成物は、それぞれ高速液体クロマトグラフィーおよび動的光散乱により決定される、62±1:1%の薬物被包効率および平均12.7±4.4nmの流体力学的径を有していた。透過型電子顕微鏡により、mTORi-HDLが円盤状の構造を有することが明らかとなった(
図9および36;STAR法)。
【0137】
実施例3-移植免疫-免疫モデル
精製されたヒトの単球がβグルカンに曝露されている、確立しているin vitroでの訓練された免疫モデルを使用して、LPSでの再刺激後のサイトカインおよび乳酸塩の産生の増大が観察された。逆に、訓練期間の間にmTORi-HDLで処置されたβグルカンで訓練されたヒトの単球は、LPSの再刺激の後に有意に少ないサイトカインおよび乳酸塩の産生を呈した(
図10)。この結果は、訓練された免疫がmTORに依存することを示した。著しいサイトカインおよび解糖の応答は、マクロファージのエピジェネティクスのリプログラミングの結果であり得るため、開口したクロマチンを表す、ヒストンH3K4のトリメチル化が評価された(
図11;STAR法)。mTORi-HDL処置は、ヒトの単球の訓練された免疫に関連する4つの炎症の遺伝子のプロモーターの値でのエピジェネティクスの変化を予防した。
【0138】
実施例4-移植免疫-体内分布
蛍光染色(DiOもしくはDiR)したかまたはジルコニウム89で放射標識したmTORi-HDLの体内分布および免疫細胞の特異性が、野生型のC57BL/6マウス(
図13)におけるコンピュータ断層撮影(PET-CT)造影、ex vivoでの近赤外蛍光(NIRF)造影、およびフローサイトメトリーとin vivoでのポジトロン断層撮影の組み合わせを使用して、示されている(
89Zr-mTORi-HDL;
図12;STAR法)。これら図面は、優先的に骨髄系細胞と結合しているが、T細胞またはB細胞とは結合していない(
図15)、腎臓、肝臓、および脾臓における
89Zr-mTORi-HDLの集積の検出を示す(
図14および
図37~38)。
【0139】
重要なことに、長期間の治療効果の導入を促進させる、骨髄における強力なmTORi-HDLの集積が観察され(
図14~15)、いくつかの骨髄系細胞およびその前駆体に結合していた(
図16)。
【0140】
実施例5-移植免疫-mTORi-HDLナノ免疫療法は、in vivoでの訓練された免疫を予防する。
mTORi-HDL処置を、実験的な心臓移植マウスモデルに適用し(
図17)、上述のように、同種移植片の標的化および免疫細胞の特異性を決定した。異所性の心臓移植片を受け取ってから6日後に、マウスを
89Zr-mTORi-HDLを用いて静脈内で処置した。このナノ免疫療法を24時間循環および分布させた後に、マウスを、PET-CTに供した。図面は、心臓の同種移植片において顕著な
89Zr-mTORi-HDLの存在を示している(
図18および39;STAR法)。マウスを屠殺した後、ネイティブな心臓および同種移植片を、ex vivoでの
89Zrの定量化のために回収した。また図面は、ネイティブな心臓(N)(11.1±1.9×103計数/単位領域)と比較して2.3倍である、心臓の同種移植片(Tx)における放射活性(25.2±2.4×103計数/単位領域)を示している(
図19)。
【0141】
実施例6-移植免疫-免疫細胞の特異性
ナノ免疫療法は、好ましい臓器分布パターンおよび心臓の同種移植片の取り込みを示したため、蛍光色素DiOで標識されているmTORi-HDLの免疫細胞の特異性を評価した。静脈内投与から24時間後に、心臓の同種移植片、ならびに血液および脾臓を回収し、DC、マクロファージ、好中球、およびT細胞におけるmTORi-HDLの分布についてフローサイトメトリーにより測定した。骨髄系細胞に向かうmTORi-HDLの細胞の優先傾向が図面に示されており、ここで同種移植片、血液、および脾臓においてDCまたは好中球のいずれかよりもマクロファージによる著しい取り込みが見られる(
図20および40~41)。T細胞は、乏しいmTORi-HDLの取り込みを呈しており(
図42および43)、mTORi-HDLの骨髄系細胞を優先する標的化を強調している。
【0142】
実施例7-移植免疫-処置レジメン
移植日および手術後2日目および5日目での用量あたり5mg/kgのラパマイシンでの3回のmTORi-HDLの静脈内注射を含む処置レジメンを評価した。mTORi-HDL処置またはプラセボのいずれかを受けたマウスの同種移植片、血液、および脾臓における骨髄系細胞のコンパートメントをプロファイリングした、標的化のデータと同じく、マクロファージ、好中球、およびDCの全体数は、プラセボで処置したマウスまたは経口のラパマイシン(手術後0日目、2日目、および5日目に5mg/kg)で処置したマウスと比較して、mTORi-HDLで処置したレシピエントの同種移植片、血液、および脾臓において有意に少なかった(
図44)。
【0143】
実施例8-移植免疫-マクロファージのサブセット
明らかに異なる免疫調節の性質を有する2つの異なるマクロファージのサブセット(Ly-6ChiおよびLy-6Clo)の分布に及ぼすmTORi-HDLナノ免疫療法の効果もまた、図面に提供されている。移植から6日後に、未処置のレシピエントマウスは、同種移植片、血液、および脾臓において炎症性Ly-6Chiマクロファージの数を増加させた(
図21および45)。対照的に、mTORi-HDLで処置したレシピエントは、Ly-6Cloマクロファージの数を増加させた。このデータは、Ly-6Chiマクロファージは、移植片拒絶の間マクロファージの大部分を構成しているが、本発明者らのmTORi-HDLナノ免疫療法は、Ly-6Cloマクロファージの集積を促進することを示している。この変化は、経口ラパマイシンで処置した動物では観察されなかった(
図45)。
【0144】
実施例9-移植免疫-分子経路
プラセボまたはmTORi-HDLのいずれかで処置した動物の同種移植片由来の流動選別されたマクロファージから単離されたmRNAのGSEA(Gene Set Enrichment Analysis)を使用して、mTORi-HDLナノ免疫療法により標的化された分子経路を示した。遺伝子アレイの結果は、訓練された免疫に関連するmTORおよび解糖の経路が、mTORi-HDLにより負に制御されたことを示した(
図22~23)。心臓の同種移植片由来のマクロファージを、炎症性サイトカイン(シグナル3)および解糖産物を産生する特性を証明するために、流動選別および評価した。mTORi-HDL処置は、ex vivoでのLPS刺激の後の移植片浸潤するマクロファージによるTNFαおよびIL-6のタンパク質発現および乳酸塩の産生を有意に少なくすることを示した(
図24)。in vitroでの観察と合致して(
図10および11)、mTORi-HDL処置はまた、移植片浸潤するマクロファージにおけるH3K4me3のエピジェネティクスの変化を予防した(
図25;STAR法)。
【0145】
実施例10-移植免疫-臓器移植の認容性
図26~33は、mTORi-HDLナノ免疫療法が臓器移植の認容性を促進することを示している。
図26~33は、移植片浸潤するマクロファージの免疫機能を示している。Ly-6Cloマクロファージの抑制機能は、カルボキシフルオレセインジアセタートスクシンイミジルエステル(CFSE)で標識したCD8+T細胞のin vitroでの増殖を阻害する特性により測定した。mTORi-HDLで処置したレシピエントマウスの同種移植片から得られたLy-6Cloマクロファージは、in vitroにおいてT細胞増殖を阻害することが観察された(
図26)。同じmTORi-HDLで処置した同種移植片のLy-6Cloマクロファージは、免疫抑制性のFoxp3を発現する制御性T細胞(Treg)を増殖させる。これらデータと合致して、mTORi-HDLで処置したレシピエントの同種移植片において有意により多くのCD4+CD25+T細胞が観察された(
図27)。これら結果は、mTORi-HDL処置が、Ly-6Clo制御性マクロファージ(Mreg)の発達を促進させることにより移植の認容性を支援することを示唆した。
【0146】
実施例11-移植免疫-移植レシピエント
図面に示されるように、移植レシピエントにおけるLy-6Clo Mregの機能的な役割を、in vivoにおけるLy-6Clo Mregを喪失させることにより、示す。簡潔に述べると、BALB/c(H2d)ドナーの心臓の同種移植片を、mTORi-HDLで処置した完全に同種異系のC57BL/6のCD169ジフテリア毒素(DT)受容体(DTR)(H2b)レシピエントマウスに移植した。移植の日に、制御性Ly-6Clo Mregを、DT投与により喪失させ(
図28)、mTORi-HDL処置にもかかわらず、早期の移植片拒絶(12.3±1.8日)をもたらした(
図29)。
【0147】
野生型の単球の養子移植は、同種移植片の生存を回復させ、これによりナノ免疫療法は、Mregを介してその効果を発揮することが示された(
図29)。これをさらに、CD11c-DTRマウスを、これらマウスにおけるDTの投与がCD11c+DCを喪失させる移植レシピエントとして使用して、確認した。これは、移植片の生存の長期化が、CD11c+DCとは無関係であることを示した。対照的に、Ly-6Chiの循環性単球が少ないCCR2欠損レシピエントマウスにおける移植片の生存は、長期間持続しなかった(
図30)。全体的に、これら実験は、マクロファージが、mTORi-HDLナノ免疫療法により促進される臓器移植の認容性に必要とされることを示している。
【0148】
実施例12-移植免疫-共刺激の遮断
活性化されたマクロファージは、T細胞の移植片応答性同種免疫を促進させる大量のIL-6およびTNFαを産生する。レシピエントのIL-6およびTNFαの不存在は、CD40-CD40Lの共刺激性の遮断(co-stimulatory blockade)を行うことと相乗作用して、永続的な同種移植片の認容性を誘導する。これは、mTORi-HDLの有効性を増強するために同時に起こる共刺激性の遮断(シグナル2)により示された。説明するために、CD40-TRAF6阻害性HDL(TRAF6i-HDL)からなる第2のナノ免疫療法処置を使用した(
図47および48)。CD40シグナリングの阻害に対する特異性を、アゴニスティックなCD40mAb(クローンFGK4.5)を使用して示し、mTORi-HDLで処置したレシピエントにおいて拒絶を誘導した。TRAF6i-HDLナノバイオロジー組成物での処置は、刺激性CD40 mAbの有害作用を予防することを示し、mTORi-HDLで媒介される同種移植片の生存を回復させた(
図31)。
【0149】
実施例13-移植免疫-完全に同種異系のドナーの心臓
ナノ免疫療法の、完全に同種異系のドナーの心臓の移植片の生存を長期化させる特性を、図面に示す。手術後0日目、2日目、および5日目に、用量あたり5mg/kgの上述の3つの用量レジメンを使用する際に、mTORi-HDL処置は、プラセボ、HDLビヒクル、および経口/静脈内ラパマイシンでの処置と比較して心臓の同種移植片の生存を有意に増大させた(
図32および49)。その後、処置レジメンを、mTORi-HDL(シグナル3)およびTRAF6i-HDL(シグナル2)のナノバイオロジー組成物を組み合わせることにより試験した。このmTORi-HDL/TRAF6i-HDLでの処置は、相乗的に、臓器移植の認容性を促進させ、移植後100日目に、70%超の同種移植片の生存をもたらした。この併用処置は、mTORi-HDLの単独療法およびTRAF6i-HDL単独療法よりもはるかに優れており(
図32)、毒性または慢性的な同種移植片の脈管障害についての組織病理学的エビデンスを伴わなかった(
図33および50)。
【0150】
まとめると、このデータは、HDLベースのナノ免疫療法が、訓練された免疫に関連するマクロファージ由来の炎症性サイトカインの産生を予防することを示した。さらに、HDLベースのナノ免疫療法は、経口ラパマイシンよりも少ない毒性を呈し、オフターゲットの副作用を伴うことなく長期間治療の利点をもたらした(
図51)。
【0151】
実施例14-移植免疫-材料および方法
マウス
雌性のC57BL/6J(B6 WT、H-2b)およびBALB/c(H-2d)のマウスは、Jackson Laboratoryから購入した。8週齢のC57BL/6J(Foxp3tm1Flv/J)、CCR2欠損、およびCD11c-DTRのマウスは、Jackson Laboratoryから購入した。C57BL/6J CD169DTRマウスは、Masato Tanaka(Kawaguchi,Japan)(Miyake et al.,2007)から得た。動物を、8~10週齢(体重、20~25g)で登録した。すべての実験は、Mount Sinai Animal Care and Utilization Committeeにより承認されたプロトコルにしたがい一致した8~12週齢の雌性のマウスで行った。
【0152】
ヒトのサンプル
インフォームドコンセントを記載した後に、集められた性別が特定されていない健常なドナーから、バフィーコートを得た(Sanquin blood bank,Nijmegen,The Netherlands)。健常なドナーの性別および年齢は回収しておらず、よって利用することができない。
【0153】
方法の詳細
血管形成された心臓移植
以前記載されたように(Corry et al.,1973)、BALB/cの心臓を、完全に血管形成された異所性移植片として、C57BL/6マウスに移植した。ドナーとレシピエントの大動脈との間の端側吻合、およびドナーの肺動脈幹とレシピエントの下大静脈との間の端側吻合を確立することにより、レシピエントの腹膜腔に心臓を移植した。その後、心臓の同種移植片の生存を、毎日の触診を介して評価した、拒絶反応を、心収縮の完全な停止として定義し、開腹手術による直接的な視覚化により確認した。移植片の生存を、カプランマイヤーの生存解析を使用してグループ間で比較した。
【0154】
アポリポタンパク質A-I(apoA-I)の単離
ヒトのapoA-Iを、以前に記載の手法(Zamanian-Daryoush et al.,2013)により、ヒトのHDL濃縮物(Bioresource Technology)から単離した。簡潔に述べると、臭化カリウム溶液(密度:1.20g/mL)を、この濃縮物の上に重ね、超遠心分離法により、精製したHDLを得た。精製したフラクションを、脱脂のためクロロホルム/メタノール溶液に添加した。結果得られた乳濁した溶液をろ過し、apoA-I沈殿物を、一晩乾燥させた。このタンパク質を、6Mの塩酸グアニジンで復元し、得られた溶液を、PBSに対して透析した。最後に、apoA-I PBS溶液を、0.22μmのフィルターを介してろ過し、タンパク質の独自性および純度を、ゲル電気泳動および分子ふるいクロマトグラフィーにより確立した。
【0155】
ナノバイオロジー組成物の合成
mTORi-HDLナノ粒子を、修正した脂質フィルムの水和の方法を使用して合成した。簡潔に述べると、1,2-ジミリストイル-sn-グリセロ-3-ホスファチジルコリン(DMPC)、1-ミリストイル-2-ヒドロキシ-sn-グリセロ-ホスホコリン(MHPC)(両方ともAvanti Polar Lipidsから購入)およびラパマイシン(Selleckchem)を、クロロホルム/メタノール(10:1v/v)の混合物に、3:1:0.5の重量比で溶解した。溶媒を蒸発させた後、PBSにおけるヒトのapoA-Iを、5:1の重量比のリン脂質:apoA-Iにおいて、脂質のフィルムを水和するために添加し、氷冷槽で20分間インキュベートさせた。得られた混合物を、氷冷槽においてプローブソニケーター(probe sonicator)を使用して15分間ホモジナイズし、mTORi-HDLナノ粒子を得た。mTORi-HDLを、洗浄し、10kDaの分子量のカットオフ(MWCO)フィルターチューブを使用した遠心ろ過により濃縮した。凝集物を、遠心およびろ過(0.22μm)を使用して除去した。治療の研究のため、移植の日ならびに移植後2日目および5日目に、5mg/kgのラパマイシンの用量で、動物に、経口投与または尾静脈注射(mTORi-HDLまたは静脈内Ra)を行った。
【0156】
HDLナノバイオロジー組成物の大きさおよび表面の電荷を、動的光散乱(DLS)およびZ電位の測定により決定した。精製後の最終的な組成を、標準的なタンパク質およびリン脂質の定量化の方法(ビシンコニン酸アッセイおよびマラカイトグリーンリン酸塩アッセイ)により決定し、薬物の濃度を、参照化合物の較正曲線と比較してHPLCにより確立した。バッチ間の±15%の変動を、認容可能とみなした。
【0157】
mTORi-HDLナノ粒子の放射標識
mTORi-HDLを、前述の手法(Perez-Medina et al.,2015)にしたがい、89Zrで放射標識した。簡潔に述べると、標識の準備のできたmTORi-HDLを、1モル%のリン脂質のキレート剤DSPE-DFOを、最初の製剤におけるDMPCを犠牲にして添加することにより得た。89Zrでの放射標識は、DFOを有するナノ粒子を、PBSにおける89Zr-シュウ酸塩(pH=7.1)と37℃で1時間反応させることにより達成した。89Zr-mTORi-HDLを、10kDaのMWCOチューブを使用した遠心ろ過により単離した。放射性化学的な収率は、75±2%であった(n=2)。
【0158】
マイクロ-PET/CTの造影および体内分布の試験
マウス(n=6;3匹は心臓移植片を有する[重量:18.8±1.0g])に、移植片移植から6日後に、尾の側静脈を介して、0.2mLのPBS溶液における単回の89Zr-mTORi-HDL(0.17±0.01mCi、約0.25mgのapoA-I)の用量を注射した。24時間後に、動物に、イソフルラン(Baxter Healthcare,Deerfield,USA)/酸素ガス混合物(導入では2%、維持では1%)を用いて麻酔をかけ、次に、Inveon PET/CT system(Siemens Healthcare Global,Erlangen,Germany)を使用してスキャンを行った。最小3000万の同時に起きる事象を記録する、全身のPETスタティックスキャンを、15分間行った。このエネルギーおよび合致のタイミングウィンドウは、それぞれ350~700keVおよび6nsであった。画像データは、PET応答の不均一性、デッドタイムの数え落とし、ポジトロンの分岐比および注射時間に対する物理的な壊変を訂正するために正規化されているが、減衰、散乱、または部分的な体積の平均化の訂正は適用されなかった。再構築された画像における計測比は、89Zrを含むマウスの大きさに合わせた水に相当するファントムを造影することから派生されるシステム較正因子を使用して、活性濃度に変換した(組織1グラムあたり注射された用量のパーセンテージ(ID(%))。画像を、ASIPro VMTMソフトウェア(Concorde Microsystems,Knoxville,USA)、およびInveon Research Workplace(Siemens Healthcare Global,Erlangen,Germany)ソフトウェアを使用して解析した。全身の標準的な低倍率CTスキャンを、80kVの電圧および500μAの電流で設定されたX線管を用いて行った。CTスキャンを、合計220度で120の回転ステップを使用して入手し、フレームあたり145msの露出で、120sの推定スキャン時間をもたらした。PET/CTスキャンの直後に、動物を屠殺し、目的の組織、-腎臓、心臓、肝臓、脾臓、血液、骨、皮膚、および筋肉を回収し、重量計測し、放射活性含有量を決定するためにWizard2 2480自動のガンマカウンター(Perkin Elmer,Waltham,USA)で計測した。この値を、壊変により訂正し、1グラムあたり注射された用量のパーセンテージに変換した(ID(%)/g)。移植された心臓の中の放射活性分布を決定するために、ネイティブな検体および移植された検体を、フィルムカセッテにおいて、ホスホルイメージングプレート(phsphorimaging plate)(BASMS-2325,Fujifilm,Valhalla,USA)に接触させ、-20℃で4時間載置した。このプレートを、Typhoon 7000IPプレートリーダー(GE Healthcare,Pittsburgh,USA)を用いて25μmのピクセル解像度で読み取った。画像を、ImageJソフトウェアを使用して解析した。
【0159】
免疫蛍光顕微鏡
移植した心臓を回収し、細分し、Tissue-Tek OCT(Sakura)において直接凍結し、免疫試験のため調製物において-80℃で保存した。8μmの切片を、ポリリジンでコーティングしたスライドにとりつけて、Leica 1900CM凍結ミクロトームを使用して切断し、アセトン(-20℃で20分間)固定した後、1%のBSAおよび5%のヤギまたはウサギの血清を含むブロッキングバッファーと共にインキュベートした。次にこのスライドを、Abcam製の1/100のラットの抗マウスデクチン1(クローン2A11)またはウサギの抗マウスビメンチン(クローンEPR3776)と共に、4℃で一晩インキュベートした。一晩インキュベートした後、スライドをPBSで洗浄し、次にJackson Immunoresearchから購入したコンジュゲートヤギモノクロナール抗ウサギCy-3(1/800)またはヤギモノクロナール抗ウサギCy-2(1/500)と共にインキュベートした。すべてのスライドを、Dapiを含むVectashield(Vector Laboratories)で封入して、蛍光を保存した。画像を、Leica DMRA2蛍光顕微鏡(Wetzlar)およびデジタル式のHamamatsuの電荷結合素子カメラを用いて得た。別々の、緑色、赤色、および青色の画像を回収し、ImageJソフトウェア(NIH)で解析した。
【0160】
移植片浸潤する白血球の単離
マウスの心臓を、in situで1%のヘパリンを含むHBSSですすいだ。外植した心臓を小さな断片に切断し、HBSS(Cellgro)中400U/mlのコラゲナーゼA(Sigma-Aldrich)、10mMのHEPES(Cellgro)、および0.01%のDNase I(MP Biomedicals)を用いて、37℃で40分間消化させた。消化された懸濁物を、ナイロンメッシュに通し、遠心分離し、細胞のペレットを、完全なHBSSで再懸濁し、染色し、フローサイトメトリーにより解析した(BD LSR-II;BD Biosciences)。
【0161】
フローサイトメトリーおよびセルソーティング
骨髄系細胞の染色のため、マウスのCD45(クローン30-F11)、CD11b(クローンM1/70)、CD11c(クローンN418)、F4/80(クローンCI:A3.1)、Ly-6C(クローンHK1.4)、および対応するアイソタイプの対照に特異的な蛍光色素が結合したmAbは、eBioscienceから購入した。Ly-6G(クローン1A8)mAbは、Biolegendから購入した。T細胞の染色では、CD3(クローン2C11)、CD4(クローンGK1.5)、CD8(クローン53-6.7)、およびCD25(クローンPC61.5)に対する抗体は、eBioscienceから購入した。絶対的な細胞計測を、countbrightビーズ(Invitrogen)を使用して行った。骨髄、脾臓、腎臓、および肝臓における前駆体、骨髄系細胞、およびリンパ系細胞の染色のため、マウスのB220/CD45R(クローンRA3-6B2)、CD34(クローンRAM34)、CD16/32(クローン93)、CD90(クローン53-2.1)、CD19(クローン1D3)、CD115(クローンAFS98)、およびCD135(クローンA2F10)に特異的な蛍光色素が結合したmAbは、eBioscienceから購入し;CD49b(クローンDX5)、MHCII(クローンM5/114.15.2)およびSca-1(クローンD7)は、Biolegendから購入し;
CD64(クローンX54-5/7.1)、CD117(クローン2B8)、およびCD172α(クローンP84)は、BD Biosciencesから購入した。フローサイトメトリー解析は、LSR II(BD Biosciences)で行い、FlowJoソフトウェア(Tree Star,Inc.)で解析した。結果を、バックグラウンドを超える細胞染色または細胞計数(ミリリットルあたりの細胞)のパーセンテージとして表した。移植片浸潤する骨髄系細胞を精製するために、ドナーの心臓の単細胞懸濁物は、マウントサイナイアイカーン医科大学(Icahn School of Medicine at Mount Sinai)のフローサイトメトリーの共用資源施設(Flow Cytometry Shared Resource Facility)で、InFlux cell sorter(BD)にて、選別され、96%超の純度を達成した。
【0162】
ヒトの単球の訓練された免疫の実験
ヒトの単球を単離し、前述のように訓練させた。PBMCの単離を、パイロジェンフリーのPBSでの血液の希釈およびFicoll-Paque(GE Healthcare,UK)上での分画密度遠心法により行った。その後、単球の単離を、Percoll(Sigma)上での高浸透圧密度勾配遠心分離により行った。単球(1×107)を、10mlの培地用量において10cmのペトリ皿(Greiner)にプレーティングし、陰性対照としての培養培地単独と共に、またはmTORi-HDL(1μg/ml)を含むかもしくは含まない5μg/mlのβグルカンと共に、24時間(10%の集められたヒトの血清において)インキュベートした。6日目に、細胞をプレートからはがし、1×105個のマクロファージを、96ウェルの平底プレートに再度播種し、200μlのRPMIまたは大腸菌のLPS(セロタイプ055:B5,Sigma-Aldrich、10ng/ml)のいずれかで24時間再度刺激した後、上清を回収し、-20℃で保存した。サイトカイン産生を、TNFαおよびIL-6に関する市販のELISAキット(R&D systems)を製造社の説明にしたがい使用して、上清において決定した。残りの細胞を、1%のメタノールフリーのホルムアルデヒドで固定し、超音波処理した。免疫沈降を、H3K4me3に対する抗体(Diagenode,Seraing,Belgium)を使用して行った。DNAを、MinElute PCR精製キット(Quiagen)で単離し、サイバーグリーン法を使用してqPCR解析でさらに処理した。サンプルを、比較Ct法により製造社の説明にしたがい解析した。
【0163】
マウスの単球の訓練された免疫の実験
骨髄の単球を、単球単離キット(Miltenyi)を使用して単離した。単球前駆体(48ウェルプレート中1×106/ウェル)を、10ng/mlの組み換えマウスのGM-CSF(peprotech)を用いてin vitroで6日間分化させた。6日目に、10μg/mlのβグルカン(Sigma)または100μg/mlのビメンチン(R&D systems)のいずれかを、培養物に24時間添加した。3日間休ませた後、マクロファージを、10ng/mlのLPS(Sigma)または20μg/mlのHMGB1(R&D systems)のいずれかで24時間再刺激した。サイトカインの産生を、TNFαおよびIL-6に関する市販のELISAキット(R&D systems)を使用して上清において決定し、残りの細胞を、クロマチン免疫沈降(ChIP)アッセイに使用した。
【0164】
マウスのクロマチン免疫沈降(ChIP)
in vitroでの骨髄由来の訓練されたマクロファージまたは移植片浸潤するマクロファージを、このアッセイに使用した。以下の抗体:抗H3K4me3(39159;Active Motif)、および抗IgG(ab171870;Abcam)を使用した。ChIPの後にqPCRを行う実験では、架橋を10分間行った。超音波処理では、本発明者らは、冷却機能を備えたBioruptor(Diagenode)を使用し、これを、本発明者らは、約200~1,000塩基対(bp)のDNAフラグメントを作製するように最適化した。ライセートを、適切なアイソタイプが一致する対照の抗体(ウサギのIgG;Abcam)を使用して2時間あらかじめ清澄化処理(pre-clear)した。特異的な抗体を、磁性ビーズ(Dynabeads(登録商標)M-280 Sheep Anti-Rabbit IgG;ThermoFisher Scientific)に4℃で一晩結合させた。次に、抗体が結合したビーズおよびクロマチンを、回転させながら4℃で一晩免疫沈澱させた。洗浄した後、脱架橋(reverse crosslinking)を65℃で一晩行った。RNaseおよびプロテイナーゼK(Roche)で消化させた後、DNAを、MinElute kit(Qiagen)で単離し、下流のアプリケーションで使用した。qPCRを、iQ SYBR Green Supermix(Bio-Rad)を製造社の説明にしたがい使用して行った。プライマーは、Primer3 online toolを使用して設計し;Integrated Genomics Viewer(IGV;Broad)上で視覚化されたマウスのmm10ゲノムと相互比較した。
【0165】
抑制アッセイ
C57BL/6(H-2b)マウスの脾臓を、ゆっくりと単細胞懸濁物に解離し、赤血球細胞を、低浸透圧性ACK溶解バッファーを使用して除去した。脾細胞を、5μMの濃度のCFSE(Invitrogen製の分子プローブを使用)で標識した後、氷上で30分間、抗CD8 mAbで染色した。レスポンダーCFSE+CD8+T細胞を、FACS Aria II(BD Biosciences)を用いて、98%超の純度で選別した。CFSE+CD8+T細胞を、刺激因子としての抗CD3/CD28マイクロビーズと共に使用した。刺激されたCFSE+CD8+T細胞を、移植片浸潤するLy-6Cloマクロファージ、mTORi-HDL、またはプラセボと共に、5%のCO2インキュベータにおいて、37℃で72時間培養した。T細胞の増殖を、CD8+T細胞でのCFSE希釈のフローサイトメトリー解析により測定した。
【0166】
Treg増殖アッセイ
C57BL/6-Foxp3tm1Flv/J(H-2b)マウスの脾臓を、ゆっくりと単細胞の懸濁物に解離し、赤血球細胞を、低浸透圧性ACK溶解バッファーを使用して除去した。脾細胞を、抗CD4mAbを用いて氷上で30分間染色した。レスポンダーCD4+細胞を、FACS Aria II(BD Biosciences)を使用して98%超の純度で選別した。CD4+T細胞を、刺激因子としての抗CD3/CD28マイクロビーズと共に使用した。刺激されたCD4+T細胞を、移植片浸潤するLy-6Cloマクロファージ、mTORi-HDL、またはプラセボと共に、5%のCO2インキュベータにおいて、37℃で72時間培養した。Tregの増殖を、CD4+T細胞でのFoxp3-RFPのフローサイトメトリー解析により測定した。
【0167】
酵素結合免疫吸着測定法(ELISA)
骨髄由来のマクロファージを、上述のように訓練させた。移植片浸潤するマクロファージを上述のように単離した。in vitroで訓練されたマクロファージおよび移植片浸潤するマクロファージにより産生されたTNF-αおよびIL-6サイトカインを、ELISA(R&D Systems)によって製造社のプロトコルにしたがい評価した。
【0168】
マイクロアレイ解析
移植片浸潤するレシピエントのLy-6Cloマクロファージを、移植後6日目に、mTORi-HDLで処置したレシピエントおよびプラセボの拒絶するレシピエントから選別した。98%超の純度を達成するために、細胞を、FACS Aria II sorter(BD Biosciences)を用いて2回選別した。選別した細胞のマイクロアレイ解析を、合計6つのAffymetrix Mouse Exon GeneChip 2.0 arrays(Thermo Fisher Scientific)を用いて行い、目的のサンプルを三連で行った。生のCELファイルデータを、Affymetrix Expression Consoleソフトウェアを使用して正規化した。遺伝子発現を、gene filter packageを使用したIQR(0.25)フィルタに基づきフィルタリングした。log2正規化しフィルタリングしたデータ(P<0.05に調節)を、さらなる解析に使用した。遺伝子のシグネチャーの比較を、mTORi-HDLで処置したレシピエント由来の移植片内のLy6Cloマクロファージとプラセボで処置したレシピエント由来の移植片内のLy6Cloマクロファージとの間で行った。GSEAを、Gene pattern version 3.9.6からのGSEA version 17を使用して行った。解析に使用したパラメータは、以下の通りであった。Gene sets c2.cp.biocarta.v5.1.symbols.gmt;c2.cp.kegg.v5.1.symbols.gmt;c2.cp.reactome.v5.1.symbols.gmt;c6.all.v5.1.symbols.gmt(Oncogenic Signatures);c7.all.v5.1.symbols.gmt(Immunologic signatures)およびh.all.v5.1.symbols.gmt(Hallmarks)を、GSEAの作動に使用した。各遺伝子セットの結果から有意な経路を選択するために、0.25のfdr q値を、カットオフとして使用した。コアの濃縮(core enrichment)に寄与する遺伝子のみを考慮した。
【0169】
in vivoにおけるマクロファージの喪失
CD169を発現するLy-6Cloマクロファージを喪失させるために、移植から24時間後、48時間後、および72時間後に、ヘテロ接合性のCD169-DTRレシピエントに、10ng/g体重のDT(Sigma-Aldrich)を腹腔内注射した。
【0170】
定量化および統計解析
統計解析
結果は、平均値±SEMとして表される。2つのグループ間の統計的な比較を、マン・ホイットニー検定または対応のある測定ではウィルコクソンの符号順位検定を使用して評価した。3つ以上のグループ間の比較は、クラスカル・ウォリス検定、次にDunnの多重比較検定を使用することにより解析した。カプランマイヤー曲線を、同種移植片の生存解析に対してプロットし、グループ間の差異を、ログランク検定を使用して評価した。0.05以下のP値を、統計的に有意であるとみなした。GraphPad Prism 7を、統計解析に使用した。
【0171】
データおよびソフトウェアの利用可能性
この公報で論述されるマイクロアレイのデータは、NCBIに預けられており、GEOシリーズの寄託番号GSE119370:https://urldefense.proofpoint.com/v2/url?u=https-3A_www.ncbi.nlm.nih.gov_geo_query_acc.cgi-3Facc-3DGSE119370&d=DwIEAg&c=shNJtf5dKgNcPZ6Yh64b-A&r=UQzd7yXCG-7V6o6EdZSeY_KvCshJgQzt0LAtZPqCh9Q&m=cuA3YUXFJvxExRDD8AweBNKmcjdYXoyMojyj9IZeQf8&s=f1i6P2_K57m-i40hkuoOxGuMsZH_IKcvtAi3C-9QfmQ&e=を介してアクセス可能である。
【0172】
アテローム性動脈硬化の結果-実施例15~17
実施例15-mTORi-HDLおよび単球、マクロファージの標的化
図52~61を参照すると、単球およびマクロファージの役割に加えて、T細胞、内皮細胞、および平滑筋細胞を含む他の細胞種が、アテローム性動脈硬化の病態形成に重要な役割を果たしている。mTORシグナリングは、細胞に広く関連しているため、全身のmTORの阻害は、アテローム発生に関与する全ての細胞種に影響するであろう。本発明者らは、具体的には単球およびマクロファージにおける、mTOR経路を阻害する作用を調査した。これを達成するために、本発明者らは、著しい標的化効率で単球およびマクロファージへの薬物送達を促進するHDLベースのナノバイオロジー組成物を開発した。
【0173】
mTORi-HDLは、ヒトのアポリポタンパク質A-I(apoA-I)と、リン脂質の1-ミリストイル-2-ヒドロキシ-sn-グリセロ-ホスホコリン(MHPC)と1,2-ジミリストイル-sn-グリセロ-3-ホスファチジルコリン(DMPC)とから構築されており、mTOR阻害剤ラパマイシンが組み込まれていた(
図52)。mTORi-HDLは、動的光散乱により決定される際に、23nm±9nm(PDI=0.3)と測定された。蛍光色素(DiOまたはDiR)を組み込んだmTORi-HDLのバリアントを、蛍光技術により検出できるように合成した。静脈内投与から24時間後に行ったex vivoでの近赤外蛍光(NIRF)の造影により、DiR標識したmTORi-HDLが、主にApoe-/-マウスの肝臓、脾臓、および腎臓で集積することが示された。著しいDiRの取り込みが、このマウスモデルにおいて優先的にプラークが発生する部位である、大動脈洞領域で観察された(
図53)。
【0174】
細胞の特異性を、フローサイトメトリーにより評価した。この目的のため、DiO標識したmTORi-HDLを製剤化し、静脈内注射した。本発明者らは、DiO標識したmTORi-HDLが、大動脈に存在するマクロファージの91%およびLy6Chi単球の93%により取り込まれたことを観察した。さらに、樹状細胞の50%および好中球の73%が、mTORi-HDLナノバイオロジー組成物を含むことを見出した(
図54)。最低限度~無視できる程度のmTORi-HDLの取り込みが、非骨髄系(Lin+)細胞で観察された。これら結果は、血液、脾臓、および骨髄における本発明者らの知見を反映しており、骨髄系の細胞、特にLy6Chi単球およびマクロファージが、著しいmTORi-HDLの取り込みを示すことを表している。
【0175】
実施例16-mTORi-HDLは、プラーク炎症を低減する。
プラーク炎症に及ぼすmTORi-HDLの効果を評価するために、本発明者らは、アテローム硬化性病変を発症させるために12週間高コレステロール食に供した20週齢のApoe-/-マウスを使用した。これらに引き続き高コレステロール食を与えながら、すべてのマウスを、1週間の間、PBS(対照、n=7)またはmTORi-HDL(5mg/kgのラパマイシンを含む、n=10)の静脈注射で4回処置した。最後の注入から24時間後に、マウスを安楽死させた。大動脈洞領域におけるプラークの定量的な組織解析は、対照と比較して、プラークの大きさまたはコラーゲン含有量で差異を示さなかった(
図55)。本発明者らは、プラークのマクロファージ含有量の33%(P=0.02)の減少を観察した。プラークにおけるMac3のコラーゲンに対する比は、35%(P=0.004)減少し、mTORi-HDLグループにおけるより安定したプラークの表現型を示している(
図55)。
【0176】
次に、本発明者らは、大動脈基部領域のプロテアーゼ活性を視覚化するために、コンピュータ断層撮影(FMT-CT)で蛍光分子の断層撮影を行った。本発明者らは、上述と同じマウスモデルおよび処置レジメンを使用した。造影の24時間前に、対照マウス(n=8)およびmTORi-HDLで処置したApoe-/-マウス(n=10)に、活性化できるpan-カテプシンプロテアーゼセンサーの単回注射を行った。このプロテアーゼセンサーは、活性化したマクロファージにより取り込まれ、エンドリソソームで切断され、酵素活性の関数として蛍光を回収する。mTORi-HDLは、プロテアーゼ活性を30%減少させた(P=0.03、
図58)。これらのデータはともに、単球およびマクロファージにおけるmTORシグナリング経路の阻害が、アテローム性動脈硬化の炎症活性の迅速な低減をもたらす明らかなエビデンスを提供した。これは、本発明者らがこの事象が起こる機構を解明する動機となった。
【0177】
実施例17-S6K1i-HDLならびにプラークの単球およびマクロファージの標的化
mTORシグナリング経路がアテローム性動脈硬化における単球およびマクロファージの動態を制御する機構の理解を追求するために、本発明者らは、mTOR-S6K1(S6K1:リボソームタンパク質S6キナーゼβ-1)シグナリングの系に焦点を当てた。S6K1シグナリングは、転写、翻訳、細胞増殖、および細胞の代謝を含む基本的な細胞のプロセスを調節することが知られているが、アテローム性動脈硬化における自然免疫応答を制御する際の役割についてはほとんど知られていない。この目的のため、本発明者らは、PF-4708671という特異的なS6K1阻害剤を含むHDLナノバイオロジー組成物(S6K1i-HDL)を構築した(
図59)。このナノバイオロジー組成物は、ヒトのアポリポタンパク質A-I(apoA-I)とリン脂質の1-ミリストイル-2-ヒドロキシ-sn-グリセロ-ホスホコリン(MHPC)および1,2-ジミリストイル-sn-グリセロ-3-ホスファチジルコリン(DMPC)とから構築されており、PF-4708671が組み込まれている(
図59)。S6K1i-HDLは、動的光散乱により決定される際に、34nm±10nm(PDI=0.3)と測定された。
【0178】
Apoe-/-マウスへの注入から24時間後に行ったex vivoでの近赤外蛍光(NIRF)造影により、DiR標識したS6K1i-HDLが、主に肝臓、脾臓、および腎臓で集積したことが示された(
図60)。さらに、著しいDiRの取り込みが、大動脈洞領域で観察された(
図60)、これは本発明者らが、mTORi-HDLで見出したものと非常に類似している。細胞の特異性を、DiO標識したS6K1i-HDLを使用する大動脈全体のフローサイトメトリーにより解析した(
図61)。DiO陽性細胞のパーセンテージは、マクロファージでは87%、Ly6Chi単球では84%、樹状細胞では64%、および好中球では71%であった(
図61)。非骨髄系(Lin+)細胞の取り込みは、無視できるものであった。これら結果は、ナノバイオロジー組成物の性質が、治療のペイロードとは無関係であることを示し、これにより本発明者らがアテローム性動脈硬化におけるmTORおよびS6K1の阻害を明確に試験することを可能にした。1週間のS6K1i-HDL処置は、mTORi-HDLと比較してプラーク炎症の低減において同様の傾向を示した(
図62)。
【0179】
次に、in vitroにおける実験を、訓練された免疫を前述(Bekkering et al.,2018)のようにoxLDLにより誘導したヒトの接着性単球で、行った。本発明者らは、mTORi-HDLおよびS6K1i-HDLのナノバイオロジー組成物での処置が、oxLDL誘導性の訓練された免疫を阻害するかどうかを調査した。実際に、本発明者らは、TLR-4およびTLR-2を介したリポ多糖LPSでの再刺激に関するサイトカイン産生の減少を見出した(
図63)。
【0180】
実施例18-アテローム性動脈硬化の概要および論述
単球およびマクロファージは、宿主の防御機構の重要な構成要素を構成している。外来の病原体を認識すると、これら貪食細胞は、活性化し、感染症を回復させるために炎症反応を開始する。無菌の物質も、危険なシグナルとして認知され、炎症反応を刺激する可能性がある。これは、場合によっては適切であり得るが、同様に、たとえばアテローム性動脈硬化などでは不適応でもあり得る。
【0181】
酸化低密度リポタンパク質コレステロール(oxLDL)およびコレステロール結晶は、アテローム性動脈硬化における病原体の自然免疫応答に対する主要な刺激である。OxLDLは、顆粒球-単球の前駆体細胞の転写のリプログラミングを誘導し、骨髄由来の炎症促進性単球の産生および放出を刺激する。これにより、マクロファージへと分化する炎症性単球のプラークへの動員が増大する。さらに重要な一部として、プラークの炎症は、マクロファージの局所的な増殖により持続される。
【0182】
またOxLDLおよびコレステロール結晶は、マクロファージの炎症の活性化に関与している。OxLDLコレステロールは、核内因子κB(NF-κB)を活性化するSRB1(scavenger receptor class B member 1)と共にToll様受容体4(TLR4)およびTLR6のヘテロ二量体により形成されるシグナリング複合体の活性化を介して、マクロファージを刺激し得る。コレステロール結晶は、マクロファージにおけるファゴリソソームの損傷によりNLRP3インフラマソームの活性化を誘導する。
【0183】
コレステロールがアテローム性動脈硬化で現在進行している自然免疫細胞の活性化を刺激する別の機構は、「訓練された免疫」である。訓練された免疫は、自然免疫記憶としても知られており、エピジェネティクスの変更を介して構成される非特異的な免疫記憶を誘引する。このプロセスは、oxLDLにより誘発され得、長期間持続する炎症促進性応答を特徴とするマクロファージの表現型をもたらす。oxLDL誘導性の訓練された免疫は、NLRP3インフラマソームの活性化を介して媒介される。よって訓練された免疫は、アテローム性動脈硬化における炎症活性の持続に関与している。
【0184】
訓練された免疫で起こる骨髄系細胞のエピジェネティクスのリプログラミングは、細胞機構の顕著な変質に関連している。好気的解糖への代謝のシフトは、訓練された免疫を誘導する。グルコースの代謝だけではなく他の代謝経路、特に、グルタミノリシスおよびコレステロール合成経路も関与している。興味深いことに、これら代謝経路のいずれかによる訓練された免疫の誘導は、ラパマイシン標的タンパク質(mTOR)の活性化に依存しており、よって説得力のある、訓練された免疫を予防する標的である。mTORシグナリング経路は、細胞の栄養状態の組み込み型のセンサーとして作用し、マクロファージの炎症活性を代謝的に協調することにより、自然免疫細胞の機能に重要な役割を果たしている。
【0185】
アテローム硬化性の単球およびマクロファージにおけるmTORシグナリング経路を阻害する効果を、mTOR-S6K1系に焦点を当てて、アポリポタンパク質E欠損(Apoe-/-)マウスで調査した。骨髄系細胞で特異的な阻害を達成するために、本発明者らは、それぞれmTORまたはS6K1を組み込んだ2つの異なる高密度リポタンパク質(HDL)ナノバイオロジー組成物を静脈内投与した。本発明者らは、マクロファージ増殖および炎症活性の減少の組み合わせを介してプラークの炎症が迅速に減少したことを観察した。
【0186】
mTORシグナリングネットワークは、全ての真核細胞の栄養状態に応答して同化および異化のバランスをとるために重要である。これは、細胞の活性、成長、および分裂の制御において主要な役割を果たしている。本発明では、本発明者らは、mTORおよびS6K1のシグナリングが、エネルギーを必要とするプロセスであるアテローム性動脈硬化における単核の貪食細胞の増殖および炎症活性に影響する、機構的なフレームワークのエビデンスを提供する。
【0187】
請求および論述されるように、本発明者らは、HDLナノバイオロジー組成物の使用により達成されるmTORおよびS6K1の細胞に特異的な阻害は、迅速にプラークの炎症を抑制することを示している。本発明者らは、これを、マクロファージの局所的な増殖の減少および炎症状態の抑制の結果と観察した。プラークから単離した単球およびマクロファージのトランスクリプトーム解析は、mTORおよびS6K1の阻害の影響を受ける重要な細胞プロセスを明らかにした。これらは、細胞の成長および増殖、代謝、ならびに食作用の機能に関連するプロセスを含んでいた。
【0188】
組織のマクロファージは、局所的な増殖により、自己により維持され得る。この自己再生能は、進行したプラークにおけるマクロファージの増殖数に大きく寄与している。本発明のデータは、mTORおよびS6K1のシグナリングを遮断することによるマクロファージの増殖の薬理的な阻害が、プラークの炎症の迅速な低減をもたらしたことを示している。
【0189】
トランスクリプトーム解析により、転写および翻訳ならびに細胞の成長および分裂を調節する経路に関連する遺伝子の発現の変質が明らかとなった。本発明者らの知見は、別の活性化したマクロファージでなされた知見に類似している。マクロファージの活性化がインターロイキン4(IL-4)により優先的に誘導される蠕虫誘導性感染症のマウスモデルにおいて、大量のマクロファージの局所的な増殖が観察された。その後、IL-4受容体が、IL-4誘導性増殖に寄与するホスファチジルイノシチド3-キナーゼ(PI3K)-Aktシグナリング経路を標的とすることが示された。PI3K-Akt経路はmTOR活性化を直接調節するため、mTORは、恐らくはこれら作用の媒介に関与していた。
【0190】
増殖に及ぼす作用に加えて、本発明者らは、mTORi-HDLおよびS6K1i-HDLが、自然免疫記憶応答の開始から骨髄系細胞をそらすことを観察した。mTORの活性化に対する訓練された免疫の依存性は、以前に強固に確立されていたが、本発明者らのデータは、これが同様に、S6K1シグナリングでも当てはまることを明らかにしている。しかしながら、興味深いことに、S6K1は、このリボソームタンパク質が、インスリン受容体基質1(IRS1)のリン酸化を阻害できるため、単にmTORの下流の標的ではないことに留意されたい。これによりS6K1は、mTORの調節において上流にある、インスリン様増殖因子1受容体(IGFR)およびホスファチジルイノシチド3-キナーゼ(PI3K)-Aktのシグナリングを抑制する。
【0191】
訓練された免疫で起こるエピジェネティクスのリプログラミングは、細胞代謝の顕著な変化と密接に関連している。in vitroにおいて、訓練された単球は、好気的解糖へと切り替わり、恐らくは、再活性化後の代謝の必要条件でそれらを調製する。
【0192】
代謝の変化は、エピジェネティクスのプロセスに影響を与え、アセチルコエンザイムA、サクシネート、およびα-ケトグルタール酸塩などの代謝物が、ヒストンのアセチル化およびメチル化に直接影響し得ることが明らかである。これに関連して、本発明者らが、顕著にダウンレギュレートされた酸化的リン酸化を観察したことは興味深い。このことは、mTOR-S6K1阻害が解糖をも抑制することが知られているため、マクロファージを低いATP産生状態にさせる可能性がある。この低いエネルギー状態は、炎症反応を編成するマクロファージの特性に負に影響を与えるであろう。この代謝のリプログラミングがどの程度訓練された免疫に影響するかは、ここでは調査されていないが、現在の研究の範囲外にある。
【0193】
アテローム性動脈硬化は、複合的な免疫応答を誘引する脂質駆動性の炎症性疾患であり、マクロファージは、この主因であると考えられている。本発明者らがこの試験で提示したデータは、mTORシグナリングがマクロファージの慢性的な不適応の炎症応答の根底にあることを示すことにより、この疾患の発病に新規の知見を提供する。訓練された免疫の形態の炎症の活性化およびマクロファージの増殖の両方が、mTORシグナリングネットワークの支援の下にあることが示された。これら新規の機構の見識は、アテローム性動脈硬化における自然免疫応答の機能不全を軽減するための新規の治療の機会を提供する。
【0194】
実施例19-アテローム性動脈硬化 材料および方法
マウス
雌性のApoe-/-マウス(B6.129P2-Apoetm1Unc)をこの試験に使用した。動物のケアおよび手法は、マウントサイナイアイカーン医科大学から承認された制度のプロトコルに基づくものであった。8週齢のApoe-/-マウスは、The Jackson Laboratoryから購入した。すべてのマウスに、高コレステロール食(0.2重量%のコレステロール;15.2kcal%のタンパク質、42.7kcal%の炭水化物、42.0kcal%の脂肪;Harlan TD. 88137)を12週間与えた。同腹仔を、無作為に処置グループに割り当てた。
【0195】
in vitroの実験を、RAW264.7細胞株または骨髄由来のマクロファージ(BMDM)のいずれかで行った。RAW264.7細胞を、T型の75cm2のフラスコ(Falcon)において、高グルコースダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)(Gibco Life Technologies)で培養した。BMDMは、細胞培養皿において、15%のL929細胞条件培地を添加したロズウェルパーク記念研究所培地(RPMI)で培養した。すべての細胞は、5%のCO2の大気下、37℃でインキュベートした。
【0196】
ヒトの対象
in vitroにおけるヒトの単球に関する試験では、インフォームドコンセントを記載した後に健常なドナーから、バフィーコートを入手した(Sanquin blood bank,Nijmegen,The Netherlands)。組織学的解析では、ヒトの動脈硬化プラークのサンプルを、4名の患者から入手した。4名の患者全てが、頸動脈内膜剥離術(carotid endarterectomy)に適応していた。両試験に含まれている対象の性別は知られているが、性別の関連付けは、グループの大きさが小さいことにより解析することはできない。対象のグループへの割り当て(allocation)は、適用可能ではない。
【0197】
ナノバイオロジー組成物の合成
rHDLナノバイオロジー製剤を、本明細書中示されるように合成した。mTORi-HDLでは、mTORC1複合体阻害剤のラパマイシン(3mg、3.3μmol)を、1-ミリストイル-2-ヒドロキシ-sn-グリセロ-ホスホコリン(MHPC)(6mg、12.8μmol)および1,2-ジミリストイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(DMPC)(18mg、26.6μmol)(Avanti Polar Fipids)と組み合わせた。S6Ki-HDLでは、S6K1の阻害剤のPF-4708671(1.5mg、4.6μmol)を、1-パルミトイル-2-オレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(POPC)(18mg、23.7μmol)および1-パルミトイル-2-ヒドロキシ-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(PHPC)(6mg、12.1μmol)と組み合わせた。この化合物および脂質を、メタノールおよびクロロホルムに溶解し、混合した後、真空下で乾燥し、薄い脂質フィルムとして回収した。ヒトのアポリポタンパク質A1(apoA-I)のPBS溶液(5ml中4.8mg)を、この脂質フィルムに添加した。混合物を、氷冷した超音波処理槽において、15~30分間インキュベートした。その後、この溶液を、tip sonicatorを使用して0℃で20分間超音波処理して、rHDLベースのナノバイオロジー組成物を形成した。得られた溶液を、3000rpmで100 MWCOビバスピンチューブを使用することによる遠心ろ過によって濃縮し、約1mlの容量を得た。PBS(5ml)を添加し、この溶液を約1mlに濃縮した。再度PBS(5ml)を添加し溶液を約1mlに濃縮した。残存する溶液を、0.22μmのPESシリンジフィルターを介してろ過して、最終的なナノバイオロジー組成物の溶液を得た。標的化および体内分布の実験のために、mTORi-HDLおよびS6K1i-HDLの類縁体を、蛍光色素のDiRまたはDiO(Invitrogen)を組み込むことにより調製した。
【0198】
ナノバイオロジー組成物での処置
20週齢のApoe-/-に、PBS、空のrHDLナノバイオロジー組成物、mTORi-HDL(5mg/kgのmTORi)、またはS6Ki-HDL(5mg/kgのS6K1i)のいずれかを、片側尾静脈注射を介して投与した。
【0199】
7日間にわたり、マウスに高コレステロール食を与えつつ、4回注射することにより処置した。標的化および体内分布の実験のため、マウスに単回静脈内注射を行った。最後の注射から24時間後に、すべての動物を安楽死させた。
【0200】
蛍光分子断層撮影/X線コンピュータ断層撮影
ナノバイオロジー組成物での処置の後に、マウスに、5ナノモルのpan-カテプシンプロテアーゼセンサー(ProSense 680,PerkinElmer,Cat no.NEV10003)を注射した。24時間後に、動物を、特注のカートリッジに載置し、前述(ref)のように連続したイソフルラン投与を用いて造影の間鎮静させた。最初に動物を、高解像度のCTスキャナー(Inveon PET-CT,Siemens)を使用して、尾静脈カテーテルを介して55μL/分の速度でのCT造影剤(isovue-370,Bracco Diagnostics)を連続注入して、スキャンした。その後動物を、同じカートリッジにおいて、FMTスキャナー(PerkinElmer)を使用することによりスキャンした。露光時間が370~400msのCTのX線源を、80kVpおよび500mAで作動させた。高解像度の造影CT画像を使用して大動脈基部を局在化し、これを、定量的なFMTプロテアーゼ活性のマップのため目的の体積の位置を導くために使用した。画像の融合は、位置合わせマーカーに依存していた。画像の融合および解析は、OsiriX v.6.5.2(The Osirix Foundation,Geneva)を使用して行った。
【0201】
近赤外蛍光造影
マウスに、DiR(0.5mg/kg)標識したmTORi-HDL(5mg/kg)またはS6K1i-HDL(5mg/kg)を単回静脈内注射した。肝臓、脾臓、肺、腎臓、心臓、および筋肉の組織を、NIRF造影のため回収した。蛍光画像を、IVIS 200 system(Xenogen)を使用し、2秒の露光時間で、745nmの励起フィルターおよび820nmの発光フィルターを使用して得た。ROIは、供給業者により提供されるソフトウェアを用いて各組織で出され、この後に定量的な解析を、これらROIの中の放射効率の平均を使用して行った。
【0202】
単細胞懸濁物の調製
血液を、心臓穿刺により回収し、その後マウスを、20mLの冷却されたPBSで灌流させた。脾臓および大腿骨を回収した。大動脈基部から腸骨分岐点(iliac bifurcation)までの大動脈の脂肪をゆっくりと除去し、回収した。この大動脈を、PBSにおけるリベラーゼTH(4U/ml)(Roche)、デオキシリボヌクレアーゼ(DNase)I(40U/ml)(Sigma-Aldrich)、およびヒアルロニダーゼ(60U/ml)(Sigma-Aldrich)を含む酵素消化溶液を使用して、37℃で60分間消化させた。細胞を、70μmのセルストレーナーを介してろ過し、血清含有培地で洗浄した。血液を、溶解バッファーと共に4分間インキュベートし、血清含有培地で洗浄した。脾臓をすりつぶし、70μmのセルストレーナーを介してろ過し、溶解バッファーと共に4分間インキュベートし、血清含有培地で洗浄した。骨髄を、PBSを用いて大腿骨から流し、70μmのセルストレーナーを介してろ過し、溶解バッファーと共に30秒間インキュベートし、血清含有培地で洗浄した。
【0203】
フローサイトメトリー
単細胞懸濁物を、以下のモノクローナル抗体:抗CD11b(クローンM1/70)、抗F4/80(クローンBM8);抗CD11c(クローンN418)、抗CD45(クローン30-F11)、抗Ly6C(クローンAL-21)、ならびに抗CD90.2(クローン53-2.1)、抗Ter119(クローンTER119)、抗NK1.1(クローンPK136)、抗CD49b(クローンDX5)、抗CD45R(クローンRA3-6B2)、および抗Ly6G(クローン1A8)を含む系統カクテル(Lin)で染色した。異なる集団に対する新規に作製された細胞の寄与を、5-ブロモ-2’-デオキシウリジン(BrdU)でのin vivoでの標識により決定した。抗BrdU抗体を、製造社のプロトコルにしたがい使用した(BD APC-BrdU Kit)。マクロファージを、CD45+、CD11bhi、Lin-/low、CD11clo、およびF4/80hiとして同定した。Ly6Chi単球を、CD45+、CD11bhi、Lin-/low、CD11cloおよびLy6Chiとして同定した。データは、LSRIIフローサイトメーター(BD Biosciences)を使用して入手し、このデータは、FlowJo v10.0.7(Tree Star)を使用して解析した。
【0204】
組織学検査および免疫組織化学検査
組織学的解析用の組織を回収し、ホルマリンに固定し、パラフィンに包埋した。マウスの大動脈基部を4μmの切片に区分し、大動脈基部あたり合計90~100の断面を作製した。8つの断面を、ヘマトキシリンおよびエオシン(H&E)で染色し、動脈硬化プラークの大きさの測定に使用した。シリウスレッド染色を、コラーゲン含有量の解析のために使用した。免疫組織化学染色のため、マウスの大動脈基部およびヒトの頸動脈内膜剥離術(CEA)の切片を、脱パラフィンし、PBS中4%のFCSを使用して30分間ブロッキングし、抗原回収溶液(DAKO)において95℃で10分間インキュベートした。マウスの大動脈基部の切片を、ラットの抗マウスMac3モノクローナル抗体(1:30、BD Biosciences)で免疫染色した。マウスの大動脈基部およびCEAのサンプルのプロサポシンは、両方とも、ウサギの抗ヒトプロサポシン一次抗体(1:500、Abcam)を、ビオチン化ヤギ抗ウサギ二次抗体(1:300、DAKO)と組み合わせて使用して、染色した。CEAのサンプルのマクロファージは、ロバの抗マウスCD68一次抗体(1:300、Abcam)を、ビオチン化ロバ抗マウス二次抗体(1:300;Jackson ImmunoResearch)と組み合わせて染色した。抗体の染色は、Immpact AMEC red(Vectorlabs)またはジアミノベンジリデン(DAB)のいずれかにより視覚化した。切片は、Leica DM6000顕微鏡(Leica Microsystems)またはVENTANA iScan HTスライドスキャナー(Ventana)を使用して解析した。
【0205】
レーザー・キャプチャー・マイクロダイセクション
レーザー・キャプチャー・マイクロダイセクションを、24の大動脈基部の切片(6μm)で行った。凍結した切片を、等級化されたエタノール溶液(70%で2回、95%で2回、100%で1回)で脱水させ、ジエチルピロカーボネート(DEPC)で処置した水で洗浄し、MayerのH&Eで染色し、キシレンで透明処理した。8つの切片ごとに、1つの切片を、CD68染色(Abd Serotec、1:250希釈)に使用し、レーザー・キャプチャー・マイクロダイセクションを導くために使用した。プラーク内でCD68を多く含む領域を同定し、ArcturusXT LCM Systemを使用して回収した。
【0206】
RNAシーケンシング
レーザー・キャプチャー・マイクロダイセクションにより回収したCD68+細胞を、RNAの単離(PicoPure RNA Isolation Kit,Arcturus)、およびその後の製造社のプロトコル(Ovation Pico WTA System,NuGEN)によるRNAの増幅およびcDNAの調製に使用した。回収されたサンプルの質および濃度を、Agilent 2100バイオアナライザーを使用して測定した。RNAシーケンシングでは、ペアエンドライブラリー(pair-end libraries)を調製し、検証した。この純度、フラグメントの大きさ、収率、および濃度を決定した。クラスター作製の間、ライブラリーの分子を、Illuminaのフローセル上でハイブリダイズした。その後、ハイブリダイズした分子を、ブリッジ増幅(bridge amplification)を使用して増幅させて、不均一なクラスターの集団をもたらした。このデータセットは、Ilumina HiSeq 2500シーケンサーを使用して得た。
【0207】
細胞増殖のELISA
細胞増殖の定量化のため、DNA合成の間のBrdUの組み込みに基づく比色分析のイムノアッセイを使用した(Roche,Switzerland)。RAW264.7細胞を、ウェルあたり2.5×103個の細胞で、96ウェルの透明な平底培養プレート(Falcon)に播種し、一晩接着させた。接着した細胞を、mTORiまたはS6K1iのいずれかと共に24時間インキュベートさせた。インキュベーションの後に、BrdU標識溶液を各ウェルに添加し(1:1000)、37℃で2時間インキュベートした。製造社の説明にしたがい、細胞を固定し、抗BrdU PODと共に1.5時間インキュベートした。基質溶液を添加した後、サンプルの吸光度を、GloMax-Multi+プレートリーダー(Promega)を用いて450nmで測定した。
【0208】
代謝の細胞外フラックス解析
BMDMを、XF-96細胞培養プレート(Seahorse Bioscience)に、2.5×103細胞/ウェルでプレーティングし、接着させた。BMDMを、mTORiまたはS6K1iのいずれかと共に16時間インキュベートさせた。酸素消費速度(OCR)を、XL-96 Flux Analyzer(Seahorse Bioscience)で測定した。オリゴマイシン、カルボニルシアニド-4-(トリフルオロメトキシ)フェニルヒドラゾン(FCCP)、およびロテノンの添加に対する応答を使用して、すべての呼吸性の特徴を計算した。完了後に、DNA含有量を、細胞数における差異を補完するためにCyQuantで測定した。
【0209】
酸化したLDLの調製
LDLを、KBr-密度勾配超遠心分離法を使用して健常な志願者由来の血清から単離した。血漿密度を、KBrでd=1.100g/mLに調節した。サンプルを、SW41 Ti rotorにおいて32,000rpmで22時間遠心分離した。酸化したLDLを、前述(Tits et al.,2011)のように、LDLを20μmolのCuSO4/Lと共に振とうウォーターバスにおいて37℃で15分間インキュベートすることにより調製した。
【0210】
ヒトのPBMCおよび単球の単離
PBMCの単離を、パイロジェンフリーのPBSで血液を希釈し、Ficoll-Paque上で分画密度遠心法を行うことにより、行った。細胞を、PBSで3回洗浄した。単球のパーコール単離を、前述(Repnik et al.,2003)のように行った。簡単に述べると、150~200×106のPBMCを、高浸透圧のパーコール溶液(48,5%のパーコール、41,5%の無菌水、0.16Mのろ過滅菌されたNaCl)の上に置き、580gで15分間遠心した。相間の層を単離し、細胞を、冷却したPBSで1回洗浄した。細胞を、50μg/mlのゲンタマイシン、2mMのglutamax、および1mMのピルビン酸塩を補充したRPMI培養培地に再懸濁し、Beckman Coulterのカウンターを使用して計測した。パーコール単離した単球を、ポリスチレンの平底プレート(Corning,NY,USA)に37℃で1時間接着させることによるさらなる精製ステップを、追加し、その後、温められたPBSを用いた洗浄ステップを行い、最大純度を得た。(これは、Bekkering et al.,2016に記載されるように、たった3%のT細胞の異物混入まで純度を増大させる)。
【0211】
単球の訓練および阻害の実験
ヒトの単球を、前述(Bekkering et al.,2016)のように訓練させた。簡単に述べると、100,000個の細胞を、平底の96ウェルプレートに添加した。温められたPBSで洗浄した後、単球を、陰性対照としての培養培地のみ、2μg/mLのβグルカン、10μg/mlのoxLDL、または10~5000ng/mlのプロサポシンのいずれかと共に24時間(10%の集められたヒトの血清において)インキュベートした。細胞を、200μlの温められたPBSで1回洗浄し、10%の集められたヒトの血清を含む培養培地において5日間インキュベートし、培地を1回交換した。細胞を、200μlのRPMI、LPS(10ng/ml)、またはPam3Cys(10μg/ml)で再刺激した。24時間後に、上清を回収し、サイトカイン測定まで-20℃で保存した。一部の実験では、細胞を、ナノバイオロジー組成物(対照としてのrHDLまたは10μMのmTORi-HDLまたは0.1μMのS6K1i-HDL)と共に1時間(oxLDL訓練の前に)あらかじめインキュベートした。訓練の刺激を、1時間後に細胞および阻害剤に追加し、残りの訓練期間の間阻害剤をそのままにした。24時間後に、刺激および阻害剤の両方を洗い出し、細胞を前述のように5日間休ませた。
【0212】
サイトカインおよび乳酸塩の測定
サイトカイン産生を、製造社の説明に従いヒトのTNFαおよびIL-6に関する市販のELISAキットを使用して、上清で決定した。
【0213】
RNAの単離およびqPCR
qRT-PCRでは、単球を上述のように訓練させるが、RNA抽出のために必要とされる量の細胞を適応させた。500,000細胞/ウェルを、24ウェルプレートに二連で播種した。0日目(1時間の接着および洗浄の後)、1日目(訓練および洗浄の後)、2日目、3日目、および6日目に、上清を除去し、細胞をTRIzol試薬に保存した。総RNAの精製を、製造社の説明にしたがい行った。RNA濃度を、NanoDropソフトウェアを使用して測定し、単離したRNAを、製造社の説明にしたがいiScript cDNA Synthesis Kitを使用して逆転写した。qPCRを、サイバーグリーン法を使用して行った。測定された遺伝子は、18Sおよびプロサポシンである。サンプルを、効率の訂正を伴う定量化方法により解析し、18Sを、ハウスキーピング遺伝子として使用した。0日目で刺激されていないサンプルの相対的なmRNA発現の値を、参照として使用した。
【0214】
定量化および統計解析
RNAシーケンシング解析
ペアエンドのシーケンシングの読み取りを、TopHat aligner(bowtie2)(Langmead and Salzberg,2012)を使用してヒトのゲノムhg19に割り当てた。次に、HTSeq(Anders et al.,2015)を使用して、GENCODEの遺伝子モデル release 22(Mudge and Harrow,2015)に基づく遺伝子レベルでの遺伝子発現を定量化した。遺伝子発現の生の読み取り計数(raw read count)を、サンプル間のシーケンシングライブラリーの大きさの差異を調節するためにM値のトリム平均(trimmed mean of M-values)正規化法を使用して、100万あたりの計数として正規化した。薬物処置と対照との間のDE遺伝子は、Bioconductor package limma(Ritchie et al.,2015)を使用して同定した。複数の試験の問題を訂正するために、limmaを使用して、標識の置換の後に、無作為なサンプルの統計およびP値を計算した。この手法を1,000回反復して、すべての遺伝子の偽陽性率(FDR)の値を推定するために、0のt統計およびP値の分布を得た。大動脈プラークから単離された細胞のDE遺伝子を、0.2未満の訂正されたP値でのカットオフを使用して同定した。0.05未満の訂正されたP値でのカットオフを使用して、RAW264.7細胞のDE遺伝子を同定した。重みづけした遺伝子共発現解析を、前述のアルゴリズム(Zhang and Horvath,2005)に従い様々な活性化した経路に関与する遺伝子のグループ(モジュール)を同定するように構築した。簡潔に述べると、ピアソン相関を、遺伝子の各対の間でコンピュータ計算して、類似性(相関)マトリックス(sij)を回収した。その後、べき関数
【数1】
を使用して、類似性マトリックスを隣接マトリックスA[aij](式中、aijは、ネットワーク中の2つのノード(遺伝子)iとjとの間の結合の強度である)に変換した。すべての遺伝子で、結合性(k)を、ネットワークにおける他の全ての遺伝子との結合強度の合計を取ることにより、決定した。パラメータは、スケールフリーであるトポロジーの基準を使用することにより選択され、これにより結果得られるネットワークの結合性の分布は、スケールフリーなトポロジーを概算した。次に、隣接マトリックスを使用して、トポロジーの重複マトリックスに基づき、ノードの非類似性の測定を定義した。遺伝子のモジュールを同定するために、本発明者らは、トポロジーの重複マトリックスに関する階層的クラスタリングを行った。その後、モジュールを、オンラインのアノテーションツールのDavid(https://david.ncifcrf.gov/)およびRevigo(http://revigo.irb.hr/)で解析した。またDE遺伝子を、KEGG MapperでKEGG(Kyoto Encyclopedia of Genes and Genomes) pathwayにマッピングした。
【0215】
統計解析
in vivoにおける実験の結果を、平均値±SDとして表した。差異の有意性を、ノンパラメトリックなマン・ホイットニーのU検定およびクラスカル・ウォリス検定を使用して計算した。
【0216】
in vitroにおけるヒトの単球の実験を、少なくとも6回行い、正規性の確認を、ヒストグラムおよびボックスプロットの肉眼での解析、ならびにGraphpad Prismを使用する正規性のアッセイを使用して行った。ノンパラメトリックなパラメータを、ウィルコクソンの符号順位検定を使用して両側で解析した。データは、平均値±SEMとして示されている。
【0217】
0.05未満のp値は、統計的に有意であるとみなした。すべてのデータは、Graphpad prism 5.0を使用して解析した(*p<0.05、**p<0.01、***p<0.001、****p<0.0001)。
【0218】
実施例20-プロドラッグ-一般的な材料および方法
全ての化学物質は、Sigma Aldrich、Medchem Express、またはSelleckchemから購入し、PESシリンジフィルターは、Celltreatから得た。World precision instrument製のNE-1002Xモデルのマイクロフルイディックポンプは、Microfluidic-chipshop製のZeonorヘリンボーン型ミキサー(#14-1038-0187-05)と組み合わせて使用した。粒子は、100kDaのMWCO 20mLのVivaspin遠心フィルターを使用して精製した。透析バッグは、Thermo Scientific製であった。ApoA-Iタンパク質は、文献の手法xxを使用して内部で精製した。ApoA-Iの分光的な定量化は、Bradfortアッセイを使用してBioTek Cytation 3イメージングプレートリーダーで行った。DLSおよびゼータ電位の測定は、Brookhaven instrument corporation ZetaPals analyzerで行い、数の分布の平均値を、粒径を決定するために採用した。1Hおよび13CのNMRのサンプルは、Bruker advance 600 consoleに連結したBruker 600 ultrashield磁石を使用して解析し、データは、Topspin version 3.5 pl 7を使用して処理した。
【0219】
ジメチルマロネートおよびその誘導体を除くすべての薬物の定量解析は、C18またはCNのカラムのいずれかを備えたShimadzu UFLC装置を使用してHPLC解析により行った。アセトニトリルおよび水を、移動相として使用し、化合物を、SPD-M20aダイオードアレイ検出器で検出した。ジメチルマロネートは、HP5MS 30m、0.25mm、0.25μmのカラムを備えたAgilent tech 5977B MSD 7890B GC-MSを使用して解析した。脂肪族およびコレステロール誘導体化マロネートを、移動相としてのイソプロパノール/水の混合物と、1-アミノアントラセン(antracene)のカラムを使用するWaters acquity UPC2 SFC-MSを使用して解析した。ナノ粒子の放射標識を、本発明者らが以前に報告した手法を使用して行った。
【0220】
実施例21-プロドラッグの合成-マロン酸塩誘導体
【化1】
(3S,8S,9S,10R,13R,14S,17R)-10,13-ジメチル-17-((R)-6-メチルへプタン-2-イル)-2,3,4,7,8,9,10,11,12,13,14,15,16,17-テトラデカヒドロ-1H-シクロペンタ[a]フェナントレン-3-イルエチルマロネート
コレステロール(194mg、0.50mmol)を、DCM(30mL)に溶解し、ピリジン(60μL、0.75mmol)を添加し、混合物を0℃に冷却した。エチル 3-クロロ-3-オキソプロパノアート(80μL、0.75mmol)を少量ずつ添加し、混合物を0℃で2時間撹拌し、室温に温め、さらに16時間撹拌した。水(60mL)を添加し、相を分離し、水相を、DCM(50mL)で2回洗浄した。組み合わせた有機フラクションを、MgSO
4を使用して真空下で乾燥させた。粗製生成物を、カラムクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル1:1)を使用して精製し、黄帯色の固体としての生成物を回収した。収率:243mg、49mmol。η=97%。
1H NMR(600MHz,CDCl
3)δ=5.41(br,1H),4.69(m,1H),4.22(q,J=7.1Hz,2H),3.37(s,2H),2.37(m,2H),2.1-1.1(m,26H),1.30(t,J=7.2Hz,3H),1.03(s,3H),0.92(d,J=6.5Hz,3H),0.87(dd,J=6.5,2.6Hz,6H),0.69(s,3H).
13C NMR(150MHz,CDCl
3)δ=166.88,166.20,139.52,123.07,75.40,61.61,56.85,56.30,50.17,42.48,42.16,39.89,39.70,38.05,37.09,36.74,36.36,35.97,32.07,32.02,28.41,28.19,27.76,24.46,24.01,23.01,22.75,21.21,19.48,18.90,14.28,12.04.Mass calc.for C
32H
52O
4=500.39D,mass found:501.67[M+H
+],369.63[マロネート-コレステロールの結合が分離しているフラグメント].
【0221】
実施例22-プロドラッグの合成-エチルオクタデシルマロネート
【化2】
1-オクタデカノール(250mg、1.08mmol)を、乾燥したクロロホルム(30mL)に40℃で溶解し、トリメチルアミン(165μL、119mmol)、次にエチル3-クロロ-3-オキソプロパノアート(140μL、1.30mmol)を添加した。この混合物を、2時間撹拌し、室温に冷却させ、水(3×30mL)で洗浄した。有機相を、MgSO
4を使用し真空下で乾燥させ、粗製生成物を、カラムクロマトグラフィー(クロロホルム中3%のメタノール)により精製し、黄帯色のワックスとしての生成物を回収した。収率=314mg、0.82mmol。η=76%。
1H NMR(600MHz,CDCl
3)δ=4.14(q,J=7.2Hz,1H),4.07(t,J=6.7Hz,1H),3.30(s,2H),1.61-1.44(m,4H),1.36-1.01(m,30H),1.21(t,J=7.2Hz,6H),0.81(t,J=6.8Hz,1H).
13C NMR(150MHz,CDCl
3)δ=166.77,65.84,61.65,41.85,32.10,29.87,29.74,29.68,29.54,29.38,28.63,25.96,22.86,14.28.Mass calc.for C
23H
44O
4=384.32D,mass found.386[M+H
+],408[M+Na
+].
【0222】
実施例23-プロドラッグの合成-GSK-J1-コレステロール
【化3】
(3S,8S,9S,10R,13R,14S,17R)-10,13-ジメチル-17-((R)-6-メチルへプタン-2-イル)-2,3,4,7,8,9,10,11,12,13,14,15,16,17-テトラデカヒドロ-1H-シクロペンタ[a]フェナントレン-3-イル3-((2-(ピリジン-2-イル)-6-(1,2,4,5-テトラヒドロ-3H-ベンゾ[d]アゼピン-3-イル)ピリミジン-4-イル)アミノ)プロパノアート
GSK-J1(25mg、64.2μmol)を、乾燥したクロロホルム(3mL)に溶解し、EDC.HCl(16.0mg、83.3μmol)および4-(ジメチルアミノ)ピリジン(2.3mg、18.8μmol)を添加し、混合物を30分間撹拌した。コレステロール(27mg、69.8μmol)を添加し、混合物を室温で一晩撹拌した。混合物を、水(3×5mL)で洗浄し、MgSO
4を使用して真空下で乾燥させた。粗製生成物を、分取TLC(クロロホルム中6%のメタノール)を使用して精製して、生成物を白色の固体として得た。収率=17.2mg、22.7μmol。η=35%。
1H NMR(600MHz,CDCl
3)δ=8.75(b,1H),8.45(d,J=7.3,1H),7.83(b,1H),7.36(b,1H),7.15(s,4H),5.57(s,1H),5.36(b,1H),4.64(m,1H),3.95(b,4H),3.63(q,J=6.2Hz,2H),3.03(m,4H),2.65(t,J=6.4,2H),2.33(d,J=7.5Hz,2H),2.1-1.0(m,26H),1.01(s,3H),0.92(d,J=6.5Hz,3H),0.86(dd,J=6.6,2.7Hz,6H),0.67(s,3H).
13C NMR(150MHz,CDCl
3)δ=171.45,163.60,162.45,161.40,155.17,149.88,140.95,139.68,137.02,130.19,126.67,124.83,123.74,122.96,79.68,74.77,56.86,56.31,50.18,47.68,42.49,39.90,39.70,38.29,37.80,37.14,37.07,36.76,36.37,35.97,34.63,32.08,29.90,28.41,28.20,27.96,24.47,24.01,23.02,22.76,21.21,19.48,18.90,12.04.Mass calc.for C
49H
67N
5O
2=757.53D,mass found.758.77[M+H
+],1516.27[2M+H
+].
【0223】
実施例24-プロドラッグの合成-GSK-J1-オクタデシル
【化4】
オクタデシル3-((2-(ピリジン-2-イル)-6-(1,2,4,5-テトラヒドロ-3H-ベンゾ[d]アゼピン-3-イル)ピリミジン-4-イル)アミノ)プロパノアート
GSK-J1(20mg、51.4μmol)を乾燥したクロロホルム(3mL)に溶解し、EDC.HCl(12.8mg、66.6μmol)および4-(ジメチルアミノ)ピリジン(1.8mg、14.8μmol)を添加し、混合物を30分間撹拌した。1-オクタデカノール(15.4mg、66.6μmol)を添加し、混合物を室温で一晩撹拌した。混合物を、水(3×5mL)で洗浄し、MgSO
4を使用して真空下で乾燥させた。粗製生成物を、分取TLC(クロロホルム中6%のメタノール)を使用して精製して、生成物を白色の固体として得た。収率=19.3mg、30.9μmol。η=60%。
1H NMR(600MHz,CDCl
3)δ=8.75(s,1H),8.45(d,J=7.7Hz,1H),7.81(t,J=7.1Hz,1H),7.35(b,1H),7.15(s,4H),5.55(s,1H),5.42(b,1H),4.10(t,J=6.8Hz,2H),3.95(s,4H),3.63(q,J=6.4Hz,2H),3.05-3.00(m,4H),2.66(t,J=6.6Hz,2H),1.62(dt,J=14.7,6.8Hz,4H),1.37-1.13(m,28H),0.88(t,J=7.0Hz,3H).
13C NMR(150MHz,CDCl
3)δ=172.13,163.74,162.54,156.41,149.39,141.03,136.80,130.17,126.64,124.48,123.60,120.07,79.65,65.29,47.64,37.74,37.09,34.36,32.11,29.89,29.79,29.71,29.55,29.46,28.77,26.11,22.88,14.32.Mass calc.for C
40H
59N
5O
2=641.47D,mass found.642.73[M+H+].
【0224】
実施例25-プロドラッグの合成-(+)JQ-1
【化5】
(S)-2-(4-(4-クロロフェニル)-2,3,9-トリメチル-6H-チエノ[3,2-f][1,2,4]トリアゾロ[4,3-a][1,4]ジアゼピン-6-イル)酢酸
(+)-JQ1(90mg、0.20mmol)を、クロロホルム中5%のTFA(5mL)に溶解し、40℃で16時間撹拌し、その後溶媒を蒸発させた。クロロホルム(5mL)を添加し、真空下で蒸発させ、これを2回反復して生成物を入手し、さらなる特徴付けを行うことなく使用した。収率=78mg、0.20mmol。η=>99%。
【0225】
実施例26-プロドラッグの合成-(+)JQ-1-オクタデシル
【化6】
オクタデシル(S)-2-(4-(4-クロロフェニル)-2,3,9-トリメチル-6H-チエノ[3,2-f][1,2,4]トリアゾロ[4,3-a][1,4]ジアゼピン-6-イル)アセタート
(S)-2-(4-(4-クロロフェニル)-2,3,9-トリメチル-6H-チエノ[3,2-f][1,2,4]トリアゾロ[4,3-a][1,4]ジアゼピン-6-イル)酢酸(78mg、0.20mmol)を、乾燥したクロロホルム(5mL)に溶解し、EDC.HCl(45mg、0.23mmol)および4-(ジメチルアミノ)ピリジン(37mg、0.30mmol)を添加し、混合物を30分間撹拌した。1-オクタデカノール(63mg、0.23mmol)を添加し、混合物を室温で16時間撹拌した。この混合物を、水(3×5mL)で洗浄し、MgSO
4を使用して真空下で乾燥させた。粗製生成物を、分取TLC(クロロホルム中6%のメタノール)を使用して精製して、生成物を白色のワックスとして得た。収率=40mg、61μmol。η=31%。
1H NMR(600MHz,CDCl
3)δ=7.40(d,J=8.2Hz,2H),7.32(d,J=8.6Hz,2H),4.60(m,1H),4.16(t,J=6.7Hz,2H),3.65-3.59(m,2H),2.67(s,3H),2.41(s,3H),1.74(s,3H),1.73-1.62(m,2H),1.39-1.32(m,2H),1.32-1.17(m,28H),0.87(t,J=6.9Hz,3H).
13C NMR(150MHz,CDCl
3)δ=171.87,163.91,155.57,150.05,136.92,136.79,132.45,131.04,130.87,130.54,130.01,128.85,65.15,53.99,37.08,32.11,29.89,29.81,29.75,29.55,29.49,28.85,26.13,22.88,14.60,14.32,13.29,12.06.Mass calc.for C
37H
53ClN
4O
2S=652.36D,mass found=653.6[M+H
+].
【0226】
実施例27-プロドラッグの合成-(+)JQ-1-コレステロール
【化7】
(3S,8S,9S,10R,13R,14S,17R)-10,13-ジメチル-17-((R)-6-メチルへプタン-2-イル)-2,3,4,7,8,9,10,11,12,13,14,15,16,17-テトラデカヒドロ-1H-シクロペンタ[a]フェナントレン-3-イル2-((S)-4-(4-クロロフェニル)-2,3,9-トリメチル-6H-チエノ[3,2-f][1,2,4]トリアゾロ[4,3-a][1,4]ジアゼピン-6-イル)アセタート
(S)-2-(4-(4-クロロフェニル)-2,3,9-トリメチル-6H-チエノ[3,2-f][1,2,4]トリアゾロ[4,3-a][1,4]ジアゼピン-6-イル)酢酸(75mg、0.19mmol)を乾燥したクロロホルム(5mL)に溶解し、EDC.HCl(50mg、0.26mmol)および4-(ジメチルアミノ)ピリジン(40mg、0.33mmol)を添加し、混合物を30分間撹拌した。コレステロール(92mg、0.23mmol)を添加し、混合物を室温で16時間撹拌した。混合物を、水(3×5mL)で洗浄し、MgSO
4を使用し真空下で乾燥させた。粗製生成物を、分取TLC(クロロホルム中6%のメタノール)を使用して精製して、生成物を白色の粉末として得た。収率=30mg、39μmol。η=21%。
1H NMR(600MHz,CDCl
3)δ=7.40(d,J=8.3Hz,2H),7.32(d,J=8.6Hz 2H),5.36(d,J=4.1Hz,1H),4.69(m,1H),4.60(t,1H),3.59(t,J=6.5Hz,2H),2.67(s,3H),2.41(s,3H),2.36(d,J=6.9Hz,2H),2.1-0.9(m,19H),1.68(s,3H),1.03(s,3H),0.91(d,J=6.5Hz,3H),0.87(m,3H),0.68(s,3H).
13C NMR(150MHz,CDCl
3)δ=171.21,163.87,155.58,150.03,139.81,136.91,136.80,132.47,131.02,130.87,130.54,130.00,128.87,122.84,74.70,56.89,56.32,54.08,50.23,42.50,39.93,39.70,38.28,37.29,37.22,36.81,36.37,35.97,32.10,32.03,29.89,28.03,24.47,24.01,23.01,22.75,21.23,19.52,18.91,14.58,13.30,12.05.Mass calc.for C
46H
61ClN
4O
2S=768.42D,mass found=769.82[M+H
+].
【0227】
実施例28-プロドラッグの合成-ラパマイシンプロドラッグ-C17H35
【化8】
ラパマイシン-C
18合成
ラパマイシン(Rapamacyin)(100mg、110μmol)およびビニルステレアート(stereate)(170mg、548μmol)を乾燥したトルエン(40mL)に溶解し、Novozyme 435(50mg)を添加した。混合物を、rotavapor上で、軽度の真空下にて、45℃で3日間撹拌した。必要に応じてさらにトルエンを添加した。Novozymeビーズをろ過し、溶媒を蒸発させ、粗製生成物をカラムクロマトグラフィー(クロロホルム中0~6%のMeOH)を使用して精製し、純粋な生成物を得た。収率=108mg、89.4μmol。η=84%。変換を、それぞれ官能基付与されていないラパマイシンおよび官能基付与されているラパマイシンにおいて2.73ppmおよび4.67ppmで存在する、エステル化されているアルコール基に隣接するプロトンに対応するシグナルのモニタリングを介して、
1H NMR(600MHz,CDCl
3)によりモニタリングした。Mass calc.for C
69H
113NO
14 1179.82D,mass found 1131.0[M-OCH
3-H
2O],1149.0[M-OCH
3],1203.0[M+Na
+]D(同様のフラグメント化パターンが、官能基付与されていないラパマイシンで観察された)。純度は、HPLCおよびTLCによりさらに確認された。
【0228】
実施例29-約35nmのナノバイオロジー組成物の合成
クロロホルムにおいて10mg/mlの原液から、1-パルミトイル-2-オレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(POPC、250μL)、1-パルミトイル-2-ヒドロキシ-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(PHPC、65μL)、コレステロール(15μL)、トリカプリリン(1000μL)、および(プロ)ドラッグ(65μL)を、20mlのバイアルで組み合わせて真空下で乾燥させた。得られたフィルムを、アセトニトリル:メタノール混合物(95%:5%、3mLの総体積)に再度溶解した。別に、PBSにおけるApoA-Iタンパク質の溶液(0.1mg/ml)を調製した。マイクロフルイディクスの設定を使用して、両溶液を、脂質溶液では0.75ml/分の流速およびApoA-Iの溶液では6ml/分の速度で、同時にヘリンボーン型ミキサーに注入した。得られた溶液を、4000rpmで100 MWCOビバスピンチューブを使用する遠心ろ過により濃縮して、5mLの容量を得た。PBS(5mL)を添加し、溶液を5mLに濃縮し、再度PBS(5mL)を添加し、溶液を約3mLに濃縮した。残りの溶液を、0.22μmのPESシリンジフィルターを介してろ過し、最終的なナノバイオロジー組成物の溶液を得た。FACS測定用のナノバイオロジー組成物を得るために、3,3’-ジオクタ(oacta)デシルオキサカルボシアニン過塩素酸塩(DIO-C18、0.25mg)をアセトニトリル溶液に添加した。89Zr標識用のナノバイオロジー組成物を得るために、DSPE-DFO(50μg)をアセトニトリル溶液(内部で作製)に添加した。ナノバイオロジー組成物の合成をスケールアップするために、十分な量が生成されるまで、上記の手法を単純に反復した。
【0229】
PF-4708671薬物(S6K1i)では、恐らくは水およびアセトニトリルにおける高い溶解度のため、1%未満の薬物の回収が上記の手法を使用して観察された。本発明者らのナノバイオロジー組成物ライブラリーにこの薬物をさらに組み込むことができるように、これを、超音波処理法を使用して統合した。ここで、同一の脂質および薬物のフィルムが、アセトニトリル溶液を乾燥させることにより形成された。このフィルムに、ApoA-I(2.4mg)を含有するPBS(10mL)を添加し、溶液を、超音波浴槽で5分間超音波処理した。その後、得られた懸濁物を、tip sonicatorを使用して0℃で30分間超音波処理した。得られた透明な溶液を、マイクロフルイディクスにより作製されたナノバイオロジー組成物と同じVivaspinおよびシリンジフィルターの手法を使用して精製した。
【0230】
実施例30-約15nmのナノバイオロジー組成物の合成
15nmの大きさのナノ粒子の合成のため、35nmの大きさの粒子と同様のマイクロフルイディクスの手法を使用した。ここで、アセトニトリル混合物(再度10mg/mlの原液由来)は、POPC(250μL)、PHPC(15μL)、コレステロール(13μL)を含んでいた。このアセトニトリル溶液は、0.75mL/分の速度で注入した。ApoA-I溶液(PBS中0.1mg/mL)は、3mL/分で注入した。FACS測定用のナノバイオロジー組成物を得るために、DIO-C18(0.25mg)をアセトニトリル溶液に添加した。89Zr標識用のナノバイオロジー組成物を得るために、DSPE-DFO(50μg)をアセトニトリル溶液に添加した。
【0231】
実施例31-約65nmのナノバイオロジー組成物の合成
65nmの大きさのナノ粒子の合成のため、35nmの大きさの粒子と同様のマイクロフルイディクスの手法を使用した。ここで、アセトニトリル混合物(再度10mg/mlの原液由来)は、POPC(250μl)、コレステロール(12μL)、トリカプリリン(1400μL)を含んでいた。このアセトニトリル溶液は、0.75mL/分の速度で注入した。ApoA-I溶液(PBS中0.1mg/ml)は、4mL/分で注入した。FACS測定用のナノバイオロジー組成物を得るために、DIO-C18(0.25mg)をアセトニトリル溶液に添加した。89Zr標識用のナノバイオロジー組成物を得るために、DSPE-DFO(50μg)をアセトニトリル溶液に添加した。
【0232】
実施例32-約120nmのナノバイオロジー組成物の合成
120nmの大きさのナノ粒子の合成のため、35nmの大きさの粒子と同様のマイクロフルイディクスの手法を使用した。ここで、アセトニトリル混合物(再度10mg/mlの原液由来)は、POPC(100μl)、コレステロール(10μL)、トリカプリリン(4000μL)を含んでいた。アセトニトリル溶液は、0.75mL/分の速度で注入した。ApoA-I溶液(PBS中0.1mg/ml)は、1.5mL/分で注入した。FACS測定用のナノバイオロジー組成物を得るために、DIO-C18(0.25mg)をアセトニトリル溶液に添加した。89Zr標識用のナノバイオロジー組成物を得るために、DSPE-DFO(50μg)をアセトニトリル溶液に添加した。
【0233】
実施例33-DLSによる粒径および分散度の決定
最終的な粒子の溶液のアリコート(10μL)を、PBS(1mL)に溶解し、0.22μmのPESシリンジフィルターを介してろ過し、DLSにより解析して、数の平均のサイズ分布の平均値を決定した。その後、サンプルを、粒子の合成の後、および2日目、4日目、6日目、8日目、10日目に、直接解析した。
【0234】
図64は、開発した異なる4種類のナノ粒子の大きさおよび安定性を示す。大きな2つの粒子の放射標識での問題を解決するために、本発明者らはまた、従来より使用されているDSPE-DFOの代わりに、DFO-官能基付与されたAPAO1を使用した粒子の放射標識を調査している。DIOを充填した粒子で得た結果およびその良好な再現性に基づき、本発明者らは、この時点で、ナノバイオロジー組成物のライブラリーを作製するために35nmの粒子を採取した。
【0235】
図65は、10日の測定期間にわたる各ナノバイオロジー組成物の大きさの平均を示しており、2つの異なるバッチを、各種類の粒子で解析した。全てのナノバイオロジー組成物の経時的な大きさの平均もプロットされており、これらの大きさが経時的に一定のままであることを示している。
【0236】
図66は、10日の測定期間にわたる各ナノバイオロジー組成物の分散度の平均を示しており、2つの異なるバッチを、各種類の粒子で解析した。全てのナノバイオロジー組成物の経時的な分散度の平均もプロットされており、これら分散度が経時的に一定のままであることが示されている。
【0237】
実施例34-HPLCによる薬物の回収および加水分解
(プロ)ドラッグの回収および加水分解を、以下の手法を使用して決定した:粒子溶液のアリコート(200μL)を真空下で乾燥させ、アセトニトリル(600μL)を添加して、懸濁物を20分間超音波処理した。懸濁物を遠心分離して、いずれかの固体を沈殿させ、残りの溶液を、SFC-MSを使用して解析したマロネート誘導体、およびGC-MSを使用して解析したジメチルマロネートを除き、HPLCを使用して解析した。
【0238】
図67は、ナノバイオロジー組成物における(プロ)ドラッグの回収を示している。各種類のナノバイオロジー組成物の2つのバッチは、それぞれ二連で解析した。in vitroのサンプルでは、これを再度測定する。
【0239】
図68は、PBSにおいて4℃でのナノバイオロジー組成物の(プロ)ドラッグの経時的な加水分解を示している。ラパマイシンおよびC
18-ラパマイシンを充填したナノバイオロジー組成物でのみ、加水分解が観察され、これらの場合、大員環におけるエステルの加水分解のみが観察された。各種類のナノバイオロジー組成物の2つのバッチを解析した。ジメチルマロネートおよびPF-4708671を充填したナノバイオロジー組成物の加水分解は、これら薬物がそれぞれ0%の回収を有していたかまたは生加水分解性部分を含まないため、決定されなかった。
【0240】
実施例35-ApoA-Iの回収の決定
ApoA-Iの回収を、Bradfortアッセイを使用して分光学的に決定した。ナノバイオロジー組成物の溶液(10μL)および較正溶液(PBSにおいてわずかな(bare)ApoA-I)を、96ウェルプレートに載置し、Bradfort試薬(150μL)を添加し、混合物を室温で5分間インキュベートした後、544nmで吸光度を測定した。各種類のナノバイオロジー組成物の2つの異なるバッチのApoA-Iの回収の平均がプロットされる。すべての較正および解析物のサンプルは、二連で調製した。
【0241】
図69は、各種類のナノバイオロジー組成物の2つの異なるバッチでのApoA-Iの回収の平均を示す。すべての較正および解析物のサンプルは、二連で作製した。本発明者らは、in vitroの実験で作製したサンプルで、これを反復する。大きなエラーバーは、実際のApoA-Iの回収における差異を表すよりも使用される方法の不十分な再現性の結果である可能性が高い。
【0242】
実施例36-ゼータ電位の決定
ゼータ電位解析用のサンプルを、MilliQ水(1mL)に最終的な粒子溶液のアリコート(50μL)を溶解し、これを0.22μmのPESシリンジフィルターを介してろ過することにより調製した。すべてのサンプルは、三連で解析した。
【0243】
図70は、MilliQ水における各種類のナノバイオロジー組成物のゼータ電位を示す。サンプルは、三連で解析した。本発明者らは、in vitroでの実験で作製したサンプルでこれを反復する。
【0244】
実施例37-in vivo様条件下での薬物の放出の決定
in vivo様条件下でのナノバイオロジー組成物の安定性を比較するために、ナノ粒子を、37℃のウシ胎仔血清において透析した。粒子溶液(0.5mL)を、10kDaの透析バックに載置し、37℃のウシ胎仔血清(45mL)に懸濁した。所定の時点(合成から0、15、30、60、120、360分後)に、アリコート(50μL)を透析バッグから採取した。アリコートを真空下で乾燥させ、アセトニトリル(100μL)を添加し、溶液を20分間超音波処理した後、残りの懸濁物を遠心分離し、HPLCにより解析した。この透析実験を、ナノバイオロジー組成物の同じバッチを使用して二連で行った。得られた速度論的なデータを、異常値(赤色で表されており、144のデータポイント中5つ)を除去した後に双指数関数的減衰(bi-exponential decay)を使用して適合させ、その後、適合のY軸の切片を使用して正規化した。場合により、有意な量の加水分解生成物が観察された。このような加水分解された(プロ)ドラッグは、透析バッグから未だ拡散していないが、すでにナノバイオロジー組成物から漏出していると推定した。この理由のため、これらは、経時的なナノバイオロジー組成物に保持されている薬物の量の本発明者らの計算に含めなかった。
【0245】
図71は、ナノバイオロジー組成物由来のマロネート誘導体である、官能基付与されていないジメチルマロネートの放出が、0%の薬物の回収を提供し、よって透析されなかったことを示している。PBS(0.5mL)におけるナノバイオロジー組成物は、10kDaの透析バッグを使用して37℃のウシ胎仔血清(45mL)で透析された。実験は、二連で行われた。得られた時間依存性の薬物の濃度を、双指数関数的減衰を使用して適合し、その後正規化した。
【0246】
図72は、ナノバイオロジー組成物由来の(+)JQ-1およびその誘導体の放出を示す。PBS(0.5mL)におけるナノバイオロジー組成物は、10kDaの透析バッグを使用して37℃のウシ胎仔血清(45mL)で透析した。実験は、二連で行った。得られた時間依存性の薬物の濃度は、異常値(赤色)を除去した後に双指数関数的減衰を使用して適合し、その後正規化した。
【0247】
図73は、ナノバイオロジー組成物由来のGSK-J4およびその誘導体の放出を示す。PBS(0.5mL)におけるナノバイオロジー組成物は、10kDaの透析バッグを使用して37℃のウシ胎仔血清(45mL)で透析した。実験は、二連で行った。得られた時間依存性の薬物の濃度を、異常値(赤色)を除去した後に双指数関数的減衰を使用して適合し、その後正規化した。
【0248】
図74は、ナノバイオロジー組成物由来のラパマイシンおよびその誘導体の放出を示す。PBS(0.5mL)におけるナノバイオロジー組成物は、10kDaの透析バッグを使用して37℃のウシ胎仔血清(45mL)で透析した。実験は、二連で行った。得られた時間依存性の薬物の濃度は、双指数関数的減衰を使用して適切に適合できなかったが、代わりに、0分でのデータ点にしたがいデータを適合した。
【0249】
図75は、ナノバイオロジー組成物由来のPF-4708671の放出を示す。PBS(0.5mL)におけるナノバイオロジー組成物は、10kDaの透析バッグを使用して37℃のウシ胎仔血清(45mL)で透析した。実験は、二連で行った。得られた時間依存性の薬物の濃度を、双指数関数的減衰を使用して適合し、その後正規化した。
【0250】
実施例38-訓練された免疫の阻害薬の集積のPET造影のための放射標識
ここで
図76を参照すると、これは、放射性同位体標識プロセスの図解を示している。
【0251】
非限定的な例では、訓練された免疫の阻害剤の薬物/分子の放射性薬物学的標識は、様々な種類のキレート剤、主に、3つのヒドロキサム酸基を介して89Zrと安定したキレートを形成し得るデフェロキサミンB(DFO)を介して達成され得る。
【0252】
全般的にリン脂質を、キレート剤の化合物と結合し、ナノバイオロジー組成物を、プロモーター薬物または分子と共に調製し、最終的に、放射性同位体を、(すでにキレート剤が結合している)ナノバイオロジー組成物と錯体形成させる。
【0253】
プロトコル
このプロトコルは、89Zrでの本明細書中記載されるナノバイオロジー組成物のモジュール式の放射標識を教示する。このプロトコルは、リン脂質DSPEおよびキレート剤DFOのイソチオシアナート誘導体(p-NCS-Bz-DFO)の反応を介して得られるDSPE-DFOの合成、そのナノバイオロジー組成物への製剤化、およびナノ乳化、ならびにその後のこれらナノ製剤の89Zrでの放射標識を含む。
【0254】
放射性同位体89Zrは、近くにサイクロトロンがある必要性を排除し、抗体などの身体からゆっくりと除去させる試験する作用物質を可能にする、3.3日の物理的な壊変半減期のため、選択された。両方が本明細書中作用可能であると企図されているが、89Zrの相対的に低いポジトロンエネルギーは、124Iなどの他のアイソトープと比較して高い造影解像度を可能にする。
【0255】
本発明者らのナノ治療用物質の89Zrでの標識は、患者のポジトロン断層撮影(PET)によりin vivoにおける事象の非侵襲的な研究を可能にする。
【0256】
このプロトコルは、以下のステップ含む:
キレート剤のデフェロキサミンB(DFO)をリン脂質DSPEへ結合させることにより、異なる脂質ナノ粒子のプラットフォーム(約0.5wt%)において容易に統合する親油性キレート剤(DSPE-DFO)を形成すること;
L SEPDSPE-DFOを組み込んだナノスケール構築物製剤の調製(超音波処理の使用、熱い状態での滴下(hot dripping)を使用するナノ乳化、またはマイクロフルイディクスの使用);および
PBSにおいてpH約7および30~40℃で、89Zr-酸化物と共に、ナノ粒子を30~60分間混合することにより行われる、89ZrでのDSPE-DFO含有脂質ナノ粒子の標識。
【0257】
さらに、精製および特徴付けの方法が、放射性化学的に純粋な89Zr標識した脂質ナノ粒子を得るために使用され得る。精製は、通常、遠心ろ過またはPD-10脱塩カラムのいずれかを使用して行われ得、その後、サイズ排除ラジオHPLCを使用して評価され得る。通常、放射性化学的な収率は、80%超であり、95%超の放射性化学的な純度が通常得られる。
【0258】
一般的な造影戦略が、PET/CTまたは、PET/MRIにより89Zr標識したナノバイオロジー組成物のin vivoにおける事象を試験するために使用される。
【0259】
図77は、ナノバイオロジー組成物により送達される放射性同位体を使用したPET造影を示し、マウス、ウサギ、サル、およびブタのモデルの骨髄および脾臓におけるナノバイオロジー組成物の集積を示す。
【0260】
本明細書中の実施形態ならびにその様々な性質および利点の詳細は、添付の図面に示されており、続く記載に詳述されている非限定的な実施形態に準拠してより完全に説明されている。よく知られている構成要素および処理技術の記載は、本明細書中の実施形態を不必要に不明瞭にしないために除外されている。本明細書中使用される実施例は、単に、本明細書中の実施形態が実践され得る方法の理解を容易にするため、およびさらに当業者が本明細書中の実施形態を実践できるために、意図されている。よって、これら実施例は、本明細書中の実施形態の範囲を限定すると解釈すべきではない。
【0261】
むしろ、これら実施形態は、本開示が完全かつ徹底的であるように提供されており、当業者に本発明の範囲を完全に伝達するであろう。同様の番号は、全体を通して同様の要素を表す。本明細書中使用される場合、用語「および/または」は、関連する列挙された項目のうちの1つ以上のあらゆる組み合わせを含む。
【0262】
本明細書中使用される技術用語は、単に特定の実施形態を説明する目的のためにあり、本発明の完全な範囲を限定するようには意図されていない。本明細書中使用される場合、単数形「a」、「an」、および「the」は、文脈が他の意味を明記しない限り複数形をも含むように意図されている。さらに、用語「含む(comprises)」および/または「含んでいる(comprising)」は、本明細書で使用される場合、記載の特性、整数、ステップ、実施、要素、および/または構成要素の存在を特定するが、1つ以上の他の特性、整数、ステップ、実施、要素、構成要素、および/またはそれらのグループの存在または追加を除外しないことが理解される。
【0263】
他が定義されない限り、本明細書中使用されるすべての技術用語および科学用語は、当業者が一般に理解する意味と同じ意味を有する。本開示において、本開示で記載される実施形態が、従来の発明によって当該開示に先行する権利を有さないとの承認として解釈されるべきではない。この文書で使用される場合、用語「含んでいる(comprising)は、「限定するものではないが、含んでいる(including)」を意味する。
【0264】
当業者に明らかであるように、多くの修正および変更が、本発明の趣旨および範囲から逸脱することなくなされ得る。本明細書中列挙される方法および装置に加え、本開示の範囲内にある機能的に同等の方法および装置が、上記の説明から当業者に明らかである。このような修正および変更は、添付の特許請求の範囲内にあると意図されている。本開示は、添付の特許請求の範囲と、当該特許請求の範囲が対象とする均等物の完全な範囲とによってのみ限定される。本開示は、特定の方法、試薬、化合物、組成物、または生体系に限定されず、当然これらは変動し得ることを理解されたい。同様に、本明細書中使用される技術用語は、単に特定の実施形態を説明する目的のためにあり、限定すると意図されてはいないことを理解されたい。本明細書中の実質的にいずれかの複数形および/または単数形の使用で、当業者は、文脈および/または適用に適切であるように、複数形から単数形へ、および/または単数形から複数形へ、翻訳する場合がある。様々な単数形/複数形の変更が、明瞭にするために明記され得る。
【0265】
全般的に、本明細書中使用され、特に添付の特許請求の範囲(たとえば添付の特許請求の範囲のボディ)で使用される用語は、全般的に、「オープンな」用語として解釈される(たとえば用語「含んでいる(including)」は、「限定するものではないが、~を含む」と解釈すべきであり、用語「有する(having)」は、「少なくとも~を有する」と解釈すべきであり、用語「含む(includes)」は、「限定するものではないが、~を含む」と解釈すべきである、など)ことは、当業者によって理解されるであろう。さらに、事実上2つ以上の別の用語を提示する何等かの離接的な用語および/または文言は、明細書、特許請求の範囲、または図面にあるかどうかにかかわらず、これら用語のうちの1つ、これら用語のうちのいずれか、または両用語を含む可能性を企図していると理解すべきであることは、当業者の範囲内にあるであろう。たとえば、文言「AまたはB」は、「A」または「B」または「AおよびB」の可能性を含むと理解される。
【0266】
さらに、本開示の特定または対象がマーカッシュグループの観点から記載される場合、当業者は、これにより本開示が、マーカッシュグループのメンバーのいずれかの個々のメンバーまたは下位グループの観点でも記載されることを理解している。
【0267】
当業者により理解されるように、明細書を提供する観点などのあらゆる目的のため、本明細書中開示されるすべての範囲はまた、その可能性のあるあらゆる下位範囲および下位範囲の組み合わせをも包有する。すべての列挙された範囲は、同範囲を、十分に記載しており、少なくとも同等の下位区分に分けることができると容易に認識され得る。当業者に理解されるように、ある範囲は、それぞれの個々のメンバーを含む。
【0268】
様々な上記に開示される特性および機能ならびに他の特性および機能、またはそれらの代替物は、多くの他の異なる系または適用に組み合わせることができる。現在予期または予想されていないその様々な代替物、修正、バリエーション、または改善が、その後当業者によりなされてもよく、またこれらはそれぞれ、開示される実施形態により包有されていると意図されている。
【0269】
本明細書において本発明の実施形態を説明してきたが、修正および変更は、上記教示の観点から当業者によってなされ得ることに留意されたい。よって、添付の特許請求の範囲により定義される本発明の範囲および趣旨の中の開示される発明の特定の実施形態において、変更がなされ得ることを理解されたい。よって、特許法が必要とする詳細および特異性で本発明を記載してきたが、特許証によって請求され、望まれ、保護されるものは、添付の特許請求の範囲に記載されている。
【手続補正書】
【提出日】2023-10-26
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
本出願の明細書または図面に記載される発明。