(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023165915
(43)【公開日】2023-11-17
(54)【発明の名称】心臓弁の弁尖に人工腱索をクランプするための装置及びシステム
(51)【国際特許分類】
A61F 2/24 20060101AFI20231110BHJP
【FI】
A61F2/24
【審査請求】有
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023166262
(22)【出願日】2023-09-27
(62)【分割の表示】P 2021571867の分割
【原出願日】2020-07-02
(31)【優先権主張番号】62/873,354
(32)【優先日】2019-07-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】506192652
【氏名又は名称】ボストン サイエンティフィック サイムド,インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】BOSTON SCIENTIFIC SCIMED,INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(74)【代理人】
【識別番号】100142907
【弁理士】
【氏名又は名称】本田 淳
(72)【発明者】
【氏名】エッゲルト、ジョエル ティ.
(72)【発明者】
【氏名】アボット、アーロン
(72)【発明者】
【氏名】シューイ、ダニエル
(72)【発明者】
【氏名】ロール、ジェームズ ピー.
(57)【要約】
【課題】心臓弁の弁尖をクランプするためのシステムを提供すること。
【解決手段】システムは、クランプと、クランプスプレッダと、第1フィラメントとを備える。クランプは、当該クランプの第1端部に第1クランプアームと第2クランプアームとを備る。第1、第2クランプアームは、閉鎖形態と開放形態とを有する。第1、第2クランプアームは、心臓弁の弁尖と固定的に係合する。クランプスプレッダは、ベースと、ベースに対し相対的に回転可能なレバーとを備える。レバーはクランプを閉鎖形態と開放形態との間で移動させる。第1フィラメントは、ベースに対し相対的にレバーを動かして両クランプアームを閉鎖形態と開放形態との間で動かすようにレバーから延びる。
【選択図】
図13C
【特許請求の範囲】
【請求項1】
心臓弁の弁尖をクランプするためのシステムであって、該システムは、
第1端部と第2端部とを有するクランプと、
クランプスプレッダと、
第1フィラメントと
を備え、
前記クランプは、当該クランプの第1端部に第1クランプアームと第2クランプアームとを備え、
前記第1クランプアームと前記第2クランプアームは、両クランプアームが互いに閉鎖距離に配置される閉鎖形態と、両クランプアームが互いに離れた、前記閉鎖距離よりも大きい開放距離に配置される開放形態とを有し、
前記第1クランプアームと前記第2クランプアームは、前記心臓弁の弁尖と固定的に係合するように構成され、
前記クランプスプレッダは、ベースと、前記ベースに対し相対的に回転可能なレバーとを備え、
前記レバーは前記クランプを前記閉鎖形態と前記開放形態との間で移動させるように構成され、
前記第1フィラメントは、前記ベースに対し相対的に前記レバーを動かして両クランプアームを前記閉鎖形態と前記開放形態との間で動かすように前記レバーから延びる、システム。
【請求項2】
第1チャネルが前記ベースを通って延びるとともに前記第1クランプアームを受け入れるように構成されており、
第2チャネルが前記レバーを通って延びるとともに前記第2クランプアームを受け入れるように構成される、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
第1アパーチャが前記ベースを通って延びる前記第1チャネルと整合するように前記第1クランプアームに画成されており、
第2アパーチャが前記レバーを通って延びる前記第2チャネルと整合するように前記第2クランプアームに画成される、請求項2に記載のシステム。
【請求項4】
前記クランプと前記クランプスプレッダとを互いに結合するように、前記第1クランプアーム及び前記ベースに整合するアパーチャとチャネル、又は、前記第2クランプアーム及び前記レバーに整合するアパーチャとチャネルに配置されたピンと、
前記第1クランプアームを前記ベースから、又は、前記第2クランプアームを前記レバーから、少なくともいずれか一方を解除するために、整合するアパーチャ及びチャネルの外に引き抜くように前記ピンを操作するべく前記ピンに結合された解除フィラメントと
をさらに備える、請求項3に記載のシステム。
【請求項5】
第2フィラメントをさらに備え、前記第2フィラメントは、前記第1クランプアーム又は前記第2クランプアームの少なくとも一方に結合され、前記クランプスプレッダから当該第1クランプアーム又は当該第2クランプアームの少なくとも一方を解除するように操作可能である、請求項1に記載のシステム。
【請求項6】
前記ベースに結合された遠位端を有するカテーテルをさらに備える、請求項1に記載のシステム。
【請求項7】
両クランプアームの一方又は双方に配置される1つ以上の突起をさらに備え、前記1つ以上の突起は、棘、スパイク、フック、及びタインからなる群から選択される、請求項1に記載のシステム。
【請求項8】
前記1つ以上の突起は、、第1平面内において前記第1クランプアームと前記第2クランプアームの一方に沿って延びる列内に配置された複数の突起と、第1平面とは異なる第2平面内において前記第1クランプアームと前記第2クランプアームの他方に沿って延びる列内に配置された複数の突起とからなる、請求項7に記載のシステム。
【請求項9】
前記クランプの前記第2端部は人工腱索と結合するように構成される、請求項1に記載のシステム。
【請求項10】
前記クランプは0.08グラム未満の重量である、請求項1に記載のシステム。
【請求項11】
前記クランプは、前記第1クランプアームと前記第2クランプアームとを前記閉鎖形態に付勢するように配置されるばね部分をさらに備える、請求項1に記載のシステム。
【請求項12】
心臓弁の弁尖にクランプするために開放形態から閉鎖形態に移行するためのクランプスプレッダであって、
前記クランプスプレッダはベースを備え、前記ベースはクランプの第1クランプアームと結合されるように構成されており、
前記クランプスプレッダは前記ベースに対して相対的に回転するレバーを備え、前記レバーは、
前記クランプの第2クランプアームと、
フィラメントであって、前記レバーを操作して前記第2クランプアームを、前記第1クランプアームに対して閉鎖距離にある閉鎖形態から前記第1クランプアームに対して前記閉鎖距離よりも大きい開放距離にある開放形態に移行させるように、操作可能な前記フィラメントと
に結合されるように構成される、クランプスプレッダ。
【請求項13】
前記レバーは前記フィラメントと結合するために構成された第1端部と、前記ベースの第1端部に揺動可能に連結された第2端部とを有する、請求項12に記載のクランプスプレッダ。
【請求項14】
第1チャネルが前記ベースに延びて通るとともに、前記第1クランプアームを受け入れるように構成されており、
第2チャネルが前記レバーに延びて通るとともに、前記第2クランプアームを受け入れるように構成される、請求項12に記載のクランプスプレッダ。
【請求項15】
前記ベースを通る前記第1チャネルは、前記第1クランプアームのアパーチャと実質的に整合するように構成されているとともに、前記第1クランプアームの前記アパーチャを通って延びる第1ピンを受け入れるように構成されており、
前記レバーを通る前記第2チャネルは、前記第2クランプアームのアパーチャと実質的に整合するように構成されているとともに、前記第2クランプアームの前記アパーチャを通って延びる第2ピンを受け入れるように構成される、請求項14に記載のクランプスプレッダ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概して、心臓弁の弁尖をクランプするための医療装置の分野に関する。特に、本発明は、患者内に人工腱索を送達するための医療装置、システム及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
僧帽弁疾患は、通常、侵襲的外科的介入を介して又は2つの小さい開口部を形成する弁尖を合わせて挟む複雑な挟み付け若しくは自己弁の僧帽弁置換により修復される。これらの手法は、危険なバイパス手術を伴う可能性があり、バイパス手術は、僧帽弁を直接目視及び修復のために露出させる患者の胸部及び心腔の切開を含み得る。外科リングの植込みと合わせた患者の弁尖の切除、部分的除去及び/又は修復は、外科医が患者の僧帽弁輪の直径を縮小させ、従って弁尖が適切に接合し、僧帽弁逆流を低減させることを可能にするために使用される複雑な技法である。いくつかの技法は、逆流をわずかに低減させることができるが、耐久性のある解決法を提供しないことがあり得、弁の損傷した腱索を修復及び/又は置換しない。従って、僧帽弁疾患に対する経管的解決法が必要である。
【発明の概要】
【0003】
心臓弁の弁尖のクランプを含む本発明の医療装置、システム及び方法により、種々の有利な医学的転帰を実現することができる。
本発明の実施形態は、概して、心臓弁の弁尖のクランプにより、フィラメントのための接続点を提供することを支援し得る。1つの態様では、心臓弁の弁尖をクランプするためのシステムは、クランプを含み得る。クランプは、第1端部に複数のアームを含み得る。複数のアームは、当該アームが互いに向かい合う閉鎖形態と、閉鎖形態におけるアーム間の閉鎖距離よりも大きいアーム間の開放距離において当該アームが互いに離れる方に向く開放形態とを有し得る。閉鎖距離は、ゼロミリメートルであり得る。ばね部分は、第2端部において複数のアームに結合され得る。ばね部分は、アームを閉鎖形態に付勢するように構成され得る。クランプのアームは、心臓弁の弁尖と固定的に係合するように構成され得る。クランプの第2端部は、人工腱索に結合するように構成され得る。
【0004】
本明細書又は他に記載される様々な実施形態において、スプレッダは、クランプを閉鎖形態と開放形態との間で移行させるように構成され得る。スプレッダは、ベースを含み得る。ピンは、ベースから延び得る。レバーは、ピンを中心に回動可能に配置され得る。第1チャネルは、複数のアームの1つの第1アパーチャと概ね平行にベースを通して延び得、且つ複数のアームの1つを受け入れるように構成され得る。第2チャネルは、複数のアームの1つの第2アパーチャと概ね平行にレバーを通して延び得、且つ複数のアームの1つを受け入れるように構成され得る。第1フィラメントは、レバーから延び得る。フィラメントは、レバー及びクランプを閉鎖形態と開放形態との間で移動させるように構成され得る。カテーテルは、ベースに結合された当該カテーテルの遠位端を有し得る。第1ピンは、第1アパーチャ及び第1チャネル内に配置され得る。第2ピンは、第2アパーチャ及び第2チャネル内に配置され得る。第2フィラメントは、第1ピンを第2ピンに結合し得る。1つ以上の突起は、複数のアームの1つ以上の上に配置され得る。1つ以上の突起は、棘、スパイク、フック及びタインからなる群から選択され得る。1つ以上の突起は、複数の列に沿って配置された複数の突起であり得、該複数の列は、当該複数の突起が異なる平面にあるように前記複数のアームの少なくとも1つに沿って延びる。突起は、弁尖の壁の厚さを通して50%以下だけ延び得、例えば、突起は、弁尖の壁内に延びない場合があり、代わりに組織を変形し得る。突起は、アームからの距離だけ延び得る。該距離は約0.5ミリメートルから約1.5ミリメートルまでであり得る。クランプは、0.08グラム未満の重量であり得る。
【0005】
一態様では、心臓弁の弁尖をクランプするためのクランプは、本体を含み得る。本体は、第1端部に複数のアームを含み得る。複数のアームは、アームは、互いに向かい合う閉鎖形態と、アームが互いに離れる方に向く開放形態とを有し得る。クランプのアームは、心臓弁の前記弁尖と固定的に係合するように構成され得る。クランプの第2端部は、人工腱索と結合するように構成され得る。
【0006】
本明細書又は他に記載される様々な実施形態において、本体は、第2端部にコイル状のばね部分を含み得る。ばね部分は、アームを閉鎖形態に付勢するように構成され得る。長手方向軸は、第1端部及び第2端部を通して延び得る。クランプは、複数のアームの第1アームに隣接して配置され、且つ第1アームに沿って長手方向軸に延びる第1カバーを含み得る。第2カバーは、複数のアームの第2アームに隣接して配置され、且つ第2アームに沿って長手方向軸に延び得る。ピンは、第1カバー、第2カバー、及びコイル状のばね部分を通して延び得る。第1アームと概ね平行である中心軸を有する第1チャネルは、第1カバーに設けられ得る。第2アームと概ね平行である中心軸を有する第2チャネルは、第2カバーに設けられ得る。第1チャネル及び第2チャネルは、スプレッダの第2及び第3アパーチャと概ね整合するように構成され得る。第1ピンは、第1チャネル及び第2アパーチャ内に延び得る。第2ピンは、第2チャネル及び第3アパーチャを通して延び得る。フィラメントが第1ピンを第2ピンに結合し得る。タブがアームを開放形態と閉鎖形態との間で移行させるように構成され得る。開放形態及び閉鎖形態は、それぞれ安定した形態であり得る。
【0007】
一態様では、心臓弁の弁尖をクランプする方法は、弁を通してカテーテルを挿入することを含み得る。カテーテルは、カテーテルの遠位端に配置され、且つクランプに可逆的に結合されたスプレッダを含み得る。クランプ及びスプレッダは、弁尖に近接して位置決めされ得る。クランプが弁尖の周囲で閉鎖形態に移行するように、カテーテルを通して延びる第1フィラメントに対する張力をスプレッダに解放及び結合し得る。スプレッダがクランプを解放するように、スプレッダ及びクランプから複数のピンを取り除かれ得る。スプレッダがクランプを閉鎖形態から開放形態に移行させるように、第1フィラメントに張力を加えることができる。クランプは、弁尖の周囲で再配置され得る。クランプが弁尖の周囲で閉鎖形態に移行するように、カテーテルを通して延びる第1フィラメントに対する張力を解放し得る。クランプに取り付けられた人工腱索は、乳頭筋に固定され得る。弁尖は、動揺弁尖であり得る。
【0008】
本発明の非限定的な実施形態は、概略的であり、且つ正確な縮尺で描かれるように意図されていない添付の図を参照して例として記載される。図において、図示されているそれぞれの同一又は略同一の構成要素は、概して単一の数字で表される。明確にする目的のため、当業者が本発明を理解することを可能にするために例示が必要でない場合、すべての図においてすべての構成要素に符号が付されているわけでなく、各実施形態のすべての構成要素が示されているわけではない。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】血流逆流中の僧帽弁の動揺弁尖の断面図を示す。
【
図2A】本発明の一実施形態による、閉鎖形態におけるクランプの斜視図を示す。
【
図3A】本発明の一実施形態によるクランプの斜視図を示す。
【
図4A】本発明の一実施形態によるクランプの斜視図を示す。
【
図5A】本発明の一実施形態によるクランプの斜視図を示す。
【
図6A】本発明の一実施形態によるクランプの斜視図を示す。
【
図7A】本発明の一実施形態によるクランプの斜視図を示す。
【
図8A】本発明の一実施形態によるクランプの斜視図を示す。
【
図9A】本発明の一実施形態によるクランプの斜視図を示す。
【
図10A】本発明の一実施形態によるクランプの斜視図を示す。
【
図11A】本発明の一実施形態によるクランプの斜視図を示す。
【
図12A】本発明の一実施形態による、閉鎖形態におけるクランプの側面図を示す。
【
図13A】本発明の一実施形態による、閉鎖形態における、心臓弁の弁尖をクランプするためのシステムの斜視図を示す。
【
図14A】本発明の一実施形態による、心臓弁の弁尖をクランプするためのクランプの断面図を示す。
【
図15】本発明の一実施形態による、弁尖をクランプするためのシステムの断面図を示す。
【
図16】本発明の一実施形態による、代替的な突起を有する
図2A~
図2Eのクランプの斜視図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明は、記載する特定の実施形態に限定されない。本明細書で用いる用語は、特定の実施形態を説明する目的のみのものであり、添付の請求項の範囲を越えて限定的であることを意図されない。本明細書で用いるすべての技術用語は、別段の定義がない限り、本発明が属する技術分野における当業者が一般に理解するものと同じ意味を有する。
【0011】
本発明の実施形態は、心臓弁に選択的にアクセスするための医療装置及びシステム(例えば、大腿静脈等を通して挿入される経管装置)に関して具体的に説明される場合があるが、こうした医療装置及びシステムは、弁の弁尖をクランプするか又は組織壁をクランプすることを必要とする種々の医療処置で使用され得ることが理解されるべきである。開示する医療装置及びシステムは、異なるアクセス点及び手法を介して、例えば経皮的、内視鏡的、腹腔鏡下又はそれらの組合せでも挿入され得る。
【0012】
本明細書で用いる場合の単数形「1つの(a)」、「1つの(an)」及び「その」は、文脈上明確な別段の指示がない限り、複数形を同様に含むように意図されている。本明細書で用いる場合の「備える/からなる」及び/若しくは「備えている/からなる」又は「含む」及び/若しくは「含んでいる」という用語は、述べられている特徴、領域、ステップ、要素及び/又は構成要素の存在を明記するが、1つ以上の他の特徴、領域、完全体、ステップ、動作、要素、構成要素及び/又はそれらの群の存在又は追加を排除するものではない。
【0013】
本明細書で用いる場合の「近位端」は、患者内に装置を導入するときに装置に沿って医療従事者の最も近くに位置する装置の端部を指し、「遠位端」は、植込み、位置決め又は送達中に装置に沿って医療従事者から最も遠くに位置する装置又は物体の端部を指す。
【0014】
本明細書で用いる場合の接続詞「及び」は、文脈上明確な別段の指示がない限り、そのように結合されている構造体、構成要素、特徴等の各々を含み、接続詞「又は」は、文脈上明確な別段の指示がない限り、そのように結合されている構造体、構成要素、特徴等の1つ又は他のものを単独で且つ任意の組合せ及び数で含む。
【0015】
本明細書では、すべての数値は、明示的に示されているか否かに関わらず、「約」という用語によって修飾されていると想定される。数値に関連して、「約」という用語は、概して、記載されている値と均等である(すなわち同じ機能又は結果を有する)と当業者がみなす数の範囲を指す。多くの場合、「約」という用語は、最も近い有効数字に丸められる数を含み得る。「約」という用語の他の使用(すなわち数値以外に関連する使用)は、別段の指示がない限り、本明細書に関連して理解され、且つ文脈と一貫するように、それらの通常の且つ慣例的な定義を有するものと想定することができる。端点による数値範囲の記載は、その端点を含む、その範囲内のすべての数を含む(例えば、1~5は、1、1.5、2、2.75、3、3.80、4及び5を含む)。
【0016】
本明細書における「一実施形態」、「いくつかの実施形態」、「他の実施形態」等への言及は、記載する実施形態が特定の特徴、構造又は特性を含み得るが、すべての実施形態が特定の特徴、構造又は特性を必ずしも含まなくてよいことを示すことに留意されたい。さらに、こうした語句は、必ずしも同じ実施形態を指していない。さらに、一実施形態に関連して特定の特徴、構造又は特性が記載されている場合、明らかに反対の意味で述べられていない限り、明示的に記載されているか否かに関わらず、他の実施形態に関連してこうした特徴、構造又は特性に関わることは、当業者の知識の範囲内にある。すなわち、以下に記載する様々な個々の要素は、特定の組合せで明示的に示されていない場合でも、それにも関わらず、当業者によって理解されるように、他の追加の実施形態を形成するか、又は記載した実施形態を補完し且つ/若しくはその重要性を高めるように互いに組合せ可能又は配置可能であるものとして想定される。
【0017】
房室心臓弁機能不全を含む心疾患は、患者心拍出量を低減させ、それにより患者の生活の質が低下し、及び寿命が縮まる。
図1に示す心臓154を参照すると、心疾患が進行するに従い、乳頭筋152を弁尖151に連結する腱索155は、非弾性的に延び、且つ断裂する場合がある。延びた及び/又は断裂した腱索156により、動揺弁尖150がもたらされ得る。動揺弁尖150は、正常な心機能のために弁シールを形成する能力がなくなり得る。例えば、ベクトル158の方向における異常な血流逆流が発生する場合がある。逆流により、心血管系を通して適切な供給量の血液が送達されることが阻止される。
【0018】
心疾患を治療するために、弁の1つ以上の弁尖及び/又は腱索の再配置、修復及び/又は置換が望ましい場合がある。本発明の装置、システム及び方法は、心疾患を治療するために、単独で又は他の装置、システム及び方法とともに使用することができる。本発明の実施形態をともに実装することができる装置、システム及び方法の例としては、限定されないが、弁尖と、乳頭筋又は心臓壁との間の人工腱索に調整可能に張力をかけるための装置、システム及び方法(Devices,Systems,and Methods for Adjustably Tensioning an Artificial Chordae Tendineae Between a Leaflet and a
Papillary Muscle or Heart Wall)という名称の米国特許出願第_号明細書[代理人整理番号8150.0591]、人工腱索のための装置、システム及び方法(Devices,Systems,and Methods for
Artificial Chordae Tendineae)という名称の米国特許出願第_号明細書[代理人整理番号8150.0594]及び乳頭筋又は心臓壁に人工腱索を固定するための装置、システム及び方法(Devices,Systems,and
Methods for Anchoring an Artificial Chordae Tendineae to a Papillary Muscle or Heart Wall)という名称の米国特許出願第_号明細書[代理人整理番号8150.0593]に記載されているものが挙げられ、これらの出願の各々は、本出願と同じ日に出願され、その全体があらゆる目的のために参照により本明細書に援用される。そこに記載されている装置の例を変更して、本発明の実施形態又は1つ若しくは複数の特徴を組み込むことができる。
【0019】
弁及び/又は腱索の1つ以上の弁尖の再配置、修復及び/又は置換は、弁の1つ以上の弁尖に固定される1つ以上の装置を含み得る。本明細書に記載する装置の実施形態は、弁尖にクランプすることにより弁に固定することができる。これらの装置は、弁の弁尖を操作し、且つ/又は弁尖に取り付けられた装置を送達するために、他の装置、システム又は用具を把持又は取り付ける固定点を提供することができる。
【0020】
図2A~
図2Eを参照すると、本発明による心臓弁の弁尖をクランプするためのクランプ200の一実施形態が示されており、クランプ200は、クランプ200の第1端部200pに2つのアーム202を含む。
図2A~
図2Cでは、アーム202は、閉鎖形態であり、閉鎖形態では、アーム202は、互いに向かい合う。クランプ200の第2端部200dは、ばね部分204であり得る。ばね部分204は、アーム202を閉鎖形態に付勢するように構成することができる。第2端部200dのばね部分204は、アーム202の場所におけるクランプ200の幅よりも広く、閉鎖形態と開放形態との間で移行するクランプ200に対する応力を低減させる。アーム202の各々は、各アーム202の端部にアパーチャ208を有する。各アパーチャ208は、アーム202の各々に概ね沿って延びる中心軸208aを有し、且つ(
図13A~
図15の説明に関して後述するように)クランプ200を閉鎖形態と開放形態との間で操作するための係止ピンを受け入れるように構成される。各アーム202は突起206を含み、該突起は各アーム202に沿って延び、組織内にめり込むように構成される。突起の各々は、クランプ200の第1端部200pに向かう平滑面206pを有し、該平滑面206pは、第1端部200pから第2端部200dに向かってアーム202間に移動する組織を受け入れるように構成される。各突起206は、係合端206dも含み、係合端206dは第2端部200dに向かって、アーム202間で組織内にめり込むように構成される。各突起206の係合端206dに対して、クランプ200の第2端部200dに向かって角度を付けることができるため、突起206は、組織内に係合端206dをめり込ませ、且つ/又は組織に摩擦力を与えることにより、クランプ200に対するアーム202間の組織の移動に抵抗することができる。
図2D及び
図2Eは、開放形態におけるクランプ200を示す。開放形態では、アーム202は互いに離れる方に向く。開放形態は、閉鎖形態よりも組織(例えば、弁尖)を容易に受け入れることができ、且つ組織をクランプするように容易に再配置することができる。開放形態では、アーム202は、様々な角度の量、例えば約50°、約60°、約90°等であり得る弧長αだけ、互いから離れている。弧長αは、クランプ200が弁の組織の少なくとも一部を囲繞することができるのに十分であり得る。クランプの第1端部200pの第1厚さ210pは、第2端部200dの第2厚さ210dと概ね均等であり得る。代わりに、第1厚さ210pは、第2厚さ210dと異なり得、この厚さの差は、第1厚さ210pから第2厚さ210dまで徐々に変化することができる。例えば、第1厚さ210pは、第2厚さ210dよりも薄いことができ、その逆もあり得る。例えば、クランプの1つ以上の厚さ210p、210dは、約0.7mmの第1厚さ210p及び約0.1mmから約3.0mmまでの第2厚さ等、約0.1mmから約3.0mmまでであり得る。クランプの幅212は、概ね一様であり得るか、又はクランプに沿って変化し得、約2mmから約20mmまでであり得る。クランプの長さ214は、例えば、約5mmから約20mmまでであり得る。クランプの高さ216は、例えば、約0.7mmから約10mmまでであり得る。
【0021】
本発明の様々な実施形態において、クランプの1つ以上のアームは、閉鎖形態と開放形態との間でクランプを移行させ得る装置とともに使用される係止機構を有し得る。係止機構は、アパーチャ、チャネルのための縁部、タブ等を含み得る。これらの係止機構に係止ピン、チャネル、クランプ等の追加の装置が係合し得る。追加の装置は、係止機構と係合して、クランプを閉鎖形態と開放形態との間で移行させることができ、追加の装置は、係止機構を係合解除して、クランプを1つ以上の装置から患者内に送達することができる。
【0022】
図3A及び
図3Bを参照すると、本発明による心臓弁の弁尖をクランプするためのクランプの一実施形態が示されており、このクランプは、クランプの第1端部300pに2つのアーム301、302を含む。アーム301、302は、アーム301、302が互いに向かい合う閉鎖形態と、アーム302が、閉鎖形態におけるアーム301、302間の距離よりも大きい、互いに離れるアーム301、302間の距離において互いに離れる方に向く開放形態との間で移行することができる。クランプの第2端部300dのばね部分304は、アーム301、302を閉鎖形態に付勢するように構成される。一方のアーム301は突起306を含み、該突起306は、アーム302に沿って延び、組織内にめり込むように構成される。突起306の各々は、クランプ300の第2端部300dに向かって角度を付けており、組織内に突起306をめり込ませ、且つ/又は組織に摩擦力を与えることにより、クランプに対するアーム301、302間の組織の移動に抵抗することができる。アーム302の一方は、スロット307を含み、スロットは、アーム302の長さの一部に沿って延びており、突起306の周囲にアーム302のストラットによって画定された窓を提供することにより、突起306が組織内にめり込ませることに役立ち得、且つ/又は空のスロット307のないクランプと比較して、使用される材料を低減させることにより、クランプ300の重量を軽くし得る。
図4A及び
図4Bでは、アーム301の突起306は、アーム301に対して垂直に角度が付けられる。
図5A~
図6Bでは、一方のアーム302の突起306は、アーム302の長手方向軸に沿って延び、対向するアーム301の突起305は、対向するアーム301の長手方向軸に隣接する2つの間隔を空けて配置された列で延びる。突起305は、クランプが摺動し得る方向(例えば、弁尖の端部の方に向けられた方向)の反対であるように向けることができる。いくつかの実施形態では、突起305は、それぞれ互いに異なる平面にあり、隣接する突起305からの引裂伝播を低減させることができる。いくつかの実施形態では、突起は、棘、スパイク、フック、タイン等であり得る。
【0023】
様々な実施形態において、クランプは、弁尖にクランプを固定させるのに十分なクランプ力を提供し、且つ人工腱索等のように、取り付けられたフィラメントに対して実質的な定着体を提供するのに適切な材料から構成されるように製造することができる。一態様では、クランプは、弁修復の労力を妨害し得る過度の重力を与えることなく、クランプが弁組織に固定的に取付されることを可能にするのに十分な力を提供するように製造することができる。このように、クランプは、クランプの重量が弁尖又は近くの組織に悪影響を与えないように、必要とされるよりも著しく大きくない質量を有する。例えば、クランプは、例えば、クランプの重量が弁尖動作を望ましくないように干渉する可能性がないように、約0.10グラム未満、約0.08グラム未満等の重量であり得る。クランプは、例えば、ニチノール、ポリマー、ゴム、ナイロン、ステンレス鋼、ニッケルチタン、白金、それらの組合せ等の様々な材料を含み得る。
【0024】
図7A及び
図7Bを参照すると、本発明による心臓弁の弁尖をクランプするためのクランプの一実施形態が示されており、このクランプは、当該クランプの第1端部700pに2つのアーム701、702を含む。アーム701、702は、アーム701、702が互いに向かい合い、且つ/又は概ね同じ平面に位置合せされる閉鎖形態と、アーム701、702が相対的に異なる平面において互いに離れる方に向く開放形態との間で移行することができる。閉鎖形態では、第2アーム702は、第1アーム701内に延びる。クランプの第2端部700dにおけるばね部分704であり、ここで、アーム701、702の各々は、クランプを構成する同じワイヤフィラメントの一部として互いに接続する。ばね部分704は、コイル状のばねとすることができ、アーム702を閉鎖形態に付勢するように構成される。単一のワイヤフィラメントがクランプを構成しており、クランプに鋭い部分がないように、ワイヤフィラメントが端部で終端することなく、第1アーム702からばね部分704へ、そして第2アーム702まで延びる。
図8A及び
図8Bは、
図7A及び
図7Bのクランプのアーム701、702よりも薄い幅輪郭を有する第1アーム801及び第2アーム802を示す。
図9A及び
図9Bは、クランプを構成するワイヤフィラメントが第2アーム902の端部902pを構成する2つの端部で終端する、第1アーム901及び第2アーム902を示す。
図10A及び
図10Bは、クランプを示し、このクランプは、クランプの第1端部1000pに第1アーム1001及び第2アーム1002を有する。クランプを構成する単一のワイヤフィラメントは、第2アーム1002の端部1002pで終端する。クランプは、クランプの第2端部1000dにおいて、アーム1001、1002を閉鎖形態に付勢するように構成されるばね部分1004を含む。
【0025】
図11A~
図11Cを参照すると、本発明による心臓弁の弁尖をクランプするためのクランプの一実施形態が示されており、このクランプは本体1101を含み、本体1101の第1端部1101pには2つのアーム1102、1103がある。アーム1102、1103は、
図11A~
図11Cに示すように、アーム1102、1103が互いに向かい合う閉鎖形態と、アーム1102、1103が互いに離れる方に向く開放形態とを有する。本体1101の第2端部1101dにコイル状のばね部分1104があり得る。ばね部分1104は、アーム1102、1103を閉鎖形態に付勢するように構成される。第1端部1101p及び第2端部1101dを通して長手方向軸lが延び得る。アーム1102に隣接して第1カバー1110を配置することができ、第1カバー1110は、アーム1102に沿って長手方向軸lに延び得る。対向するアーム1103に隣接して第2カバー1112を配置することができ、第2カバー1112は、アーム1103に沿って長手方向軸lに延び得る。カバー1110、1112は、突起1106を含み、突起1106は、カバー1110、1112に沿って延び、且つ組織内にめり込むように構成される。ピン1114は、第1カバー1110、第2カバー1112、コイル状のばね部分1104及び長手方向軸lを通して延び得る。第1カバー1110の上に、第1カバー1100に沿って延びる第1チャネル1108を設けることができ、第1チャネル1108は、アーム1102と概ね平行であり得る中心軸を有する。第2カバー1112の上に、第2カバー1112に沿って延びる第2チャネル1109を設けることができ、第2チャネル1109は、対向するアーム1103と概ね平行であり得る中心軸を有する。チャネル1108、1109は、アーム1102、1103を収容しており、各チャネル1108、1109は、アーム1102、1103のない部分を有する。該部分は、アーム1102、1103の各々から離れるように延び、ピン(例えば、後述するようなスプレッダの係止ピン)を収容可能である。カバー1110、1112は、ピン1114を中心に回動可能であり、アーム1102、1103の開閉により移動する。カバーは、カバー1110、1112が互いに干渉することなくこの回動を可能にするように、ピン1114の近くにクリアランス空間1115を含む。
【0026】
図12A及び
図12Bを参照すると、本発明の一実施形態による心臓弁の弁尖をクランプするためのクランプの一実施形態が示されており、このクランプは、タブ1205によって揺動可能に接続される2つのアーム1202を備えたフレーム本体1201を含む。第1ピン1213は、2つのアーム1202とフレーム本体1201のタブ1205とを通して延び、アーム1202が第1ピン1213を中心に回動することができる。アーム1202に隣接して第1カバー1210を配置することができ、第1カバー1210は、アーム1202に沿って長手方向軸lに延び得る。対向するアーム1202に隣接して第2カバー1212を配置することができ、第2カバー1212は、アーム1202に沿って長手方向軸lに延び得る。カバー1210、1212は、突起1206を含み、突起1206は、カバー1210、1212に沿って延び、且つ組織内にめり込むように構成される。第2ピン1214は、第1カバー1210、第2カバー1212及び長手方向軸lを通して延び得る。アーム1202は、アーム1202が組織と係合するように構成される、
図12Aに示すように安定した閉鎖形態と、アーム1202が互いから間隔を空けて配置される、
図12Bに示すように安定した開放形態とを有する。開放形態は、互いから所与の度数α、例えば約50°、約60°、約90°等だけアーム1202を引き離すことができる。クランプは、フレーム本体1201のアーム1202がカバー1210、1212とともに互いから離れ且つ互いに向かって移動するように、タブ1205を長手方向軸lに沿って動かすことにより、閉鎖形態と開放形態との間で移行する。タブ1205が長手方向軸lに沿って移動すると、アーム1202は、第1ピン1213を中心に回転し、カバー1210、1212は、第2ピン1214を中心に回転する。タブ1205は、タブアパーチャ1205aを通して(例えば、フィラメント、ワイヤ、テザー、押し部材、カテーテル、ボーデンケーブル等を介して)操作することができる。タブ1205は、アーム1202を開放形態と閉鎖形態との間で移行させるために一定の距離だけ移動することができ、該距離は、例えば、約0.51ミリメートル(約0.02インチ)等であり得る。カバー1210、1212は、カバー1210、1212が互いに干渉することなく回動を可能にするために、ピン1214に隣接するクリアランス空間1215を含む。
【0027】
図13A~
図13Cを参照すると、本発明による心臓弁の弁尖をクランプするシステムの実施形態が示されており、このシステムは、本発明を通して記載するように、閉鎖形態と開放形態とを有するアーム1302が第1端部にあるクランプ1300を含む。クランプ1300は、
図13A及び
図13Bでは閉鎖形態であり、
図13Cでは開放形態である。クランプ1300は、第2端部において、アーム1302を閉鎖形態に付勢するばね部分1304を有する。クランプ1300にスプレッダ1320を解放可能に結合し得る。スプレッダ1320は、クランプ1300を閉鎖形態と開放形態との間で移行させ得る。スプレッダ1320は、ベース1322を含み、ベース1322から第1ピン1324が延びる。第1ピン1324を中心としてレバー1326を回転可能に配置することができる。ベース1322は、第1チャネル1341を含み、レバー1326は、第2チャネル1342を含み、各チャネルは、クランプ1300のアーム1302を受け入れるように構成される。各アーム1302の端部は、アパーチャ1308を含む。各アパーチャ1308は、概ねアーム1302の各々に沿って延びる中心軸を有し、2つの係止ピン1310の一方を受け入れるように構成される。一方の係止ピン1310は、第1チャネル1341を通してアーム1302のアパーチャ1308内に延び、他方の係止ピン1310は、第2チャネル1342を通して対向するアーム1302のアパーチャ1308内に延びる。係止ピン1310は、アーム1302をベース1322及びレバー1326に固定して、スプレッダ1320がアーム1302を開放形態と閉鎖形態との間で操作することができるようにし、それにより、クランプ1300は、スプレッダ1320から解放することができない。アーム1302は、チャネル1341、1342内で係止されるため、アーム1302は、レバー1326の移動により閉鎖形態と開放形態との間で移行することができる。レバー1326は、レバー1326のスロット1332に結合し得る第1フィラメント1330の動きによって第1ピン1324を中心に移動することができる。レバー1326は、第1ピン1324を中心に回転する際、第2チャネル1342内にあるアーム1302も移動させる一方、対向するアーム1302は、ベース1322の第1チャネル1341内に固定される。いくつかの実施形態では、ピン1310は、依然としてアパーチャ1308内に延びつつ、第1チャネル1341及び第2チャネル1342ではなく、ベース1322及びレバー1326の各々の第3アパーチャ及び第4アパーチャを通して延び得る。係止ピン1310の各端部に第2フィラメント1312を結合して、第2フィラメント1312を把持し、係止ピン1310がアパーチャ1308及びチャネル1341、1342から取り除かれるように第2フィラメント1312を引っ張り、それによりベース1322及びレバー1326からアーム1302を解放するようにすることができる。
図13Cは、カテーテル1334の遠位端に結合されたスプレッダ1320のベース1322を示す。第1フィラメント1330は、医療従事者によって操作されるようにカテーテル1334内に近位側に延びる。ベース1322は、カテーテル1334に結合されるため、クランプ1300を送達するために患者内の標的位置までカテーテル1334を挿入することができる。また、ベース1322は、カテーテル1334に固定されるため、第1フィラメント1330がアーム1302を収容するレバー1326を操作する際、レバー1326は、ばね部分1304の付勢に抗して作用し、レバー1326内のアーム1302をベース1322内の固定アーム1302から離れるように移動させることにより、クランプ1300を閉鎖形態から開放形態に移動させる。
【0028】
さらに
図13A~
図13Cを参照すると、本発明による心臓弁の弁尖をクランプする方法の一実施形態は、カテーテル1334を弁に向かって(例えば、弁を通して)挿入することを含み得る。いくつかの実施形態では、カテーテル1334は、カテーテル1334の遠位端に配置されたスプレッダ1320を含むことができ、スプレッダ1320は、患者及び/又は作業チャネルを通して進めるために、閉鎖形態におけるクランプ1300に可逆的に結合し得る。カテーテル1334が弁の標的側の近くになると、レバー1326に結合された第1フィラメント1330を近位側に引っ張り、第1フィラメント1330に対する張力を保持することにより、クランプ1300を開放形態に移行させ得る。レバー1326は、第1ピン1324を中心に回転し、ベース1322内の対向するアーム1302から離れるようにレバー1326内のアーム1302を移動させる。クランプ1300が開放形態である状態で、カテーテル1334は、クランプを弁の弁尖に近接する(例えば、動揺弁尖の周囲の)位置まで移動させて、アーム1302が弁尖のいずれかの側にあるようにすることができる(例えば、後述する
図14A~
図15を参照されたい)。クランプ1300が弁尖の周囲の適所にある状態で、第1フィラメント1330に対する張力を解放して、クランプ1300の付勢されたばね部分1304がクランプ1300を弁尖の周囲で閉鎖形態に移行させ得る。医療従事者は、任意選択的に、必要に応じてクランプ1300を再配置するように第1フィラメント1330を再度近位側に引き寄せることにより、スプレッダ1320及びクランプ1300を再度開放することができる。例えば、偶発的に解放された場合、クランプ1300を展開した後により適切な位置が分かった場合又はクランプ1300に取り付けられた人工腱索における張力を構成するために、クランプ1300を再配置することが望ましいことがあり得る。クランプ1300が適所になると、係止ピン1310に取り付けられた第2フィラメント1312を(例えば、把持具、第3フィラメント等により)引っ張って、アーム1302のアパーチャ1308からピン1310が取り除かれるようにすることができる。ピン1310が取り除かれると、クランプは、スプレッダ1320に固定されなくなり、スプレッダ1320は、クランプ1300を解放する。クランプ1300は、弁尖上に送達されたままにすることができ、患者内からカテーテル1334及びスプレッダ1320を(例えば、外側シース内において)開放形態又は(例えば、レバー1326をベース1322に向かって付勢するスプレッダ1320内のばねにより)閉鎖形態で引き抜くことができる。追加的に又は代替的に、第4フィラメント(例えば、人工腱索)とともにクランプを送達することができ、第4フィラメントは、クランプ1300(例えば、ばね部分1304)から、(例えば、人工腱索を弁尖に且つ乳頭筋に固定する)医療処置において使用される別の装置(例えば、アンカ)まで延び得る。
【0029】
図14A及び
図14Bを参照すると、本発明による心臓弁の弁尖150をクランプしている、
図2A~
図2Eのクランプ200の実施形態が示されている。クランプ200は、その2つのアーム202が弁尖150に隣接し、弁尖150の両側に1つのアーム202がある、閉鎖形態で示されている。クランプ200の第2端部200dにあるばね部分204は、この閉鎖形態では、2つのアーム202を互いに向かって付勢する。図示する実施形態では、クランプ200は、第1端部200pが先行することにより、弁尖の周囲に配置され、弁尖150は、2つのアーム202間に入っている。クランプ200は、弁尖150を受け入れる開放形態と、弁尖150と係合する閉鎖形態との間でアーム202を関節運動させることができる別の装置、例えばスプレッダを使用して、弁尖150の上に送達され得る。クランプ200は、例えば、アパーチャ208から係止ピンを取り除くことにより、送達のためにスプレッダから係止解除され得る。クランプ200が弁尖150上に送達された際、弁尖150は、突起206の1つ以上の平滑面206pと係合した可能性がある。閉鎖形態では、突起の大部分の係合端206dは、少なくとも部分的に弁尖150内にめり込み得る。めり込まれた突起206は、弁尖150の壁の厚さの約50%未満だけ入る。ばね部分204は、アーム202及び/又は突起206を弁尖150の上に押し付け、突起206をめり込み得るクランプ力を提供するように構成される。いくつかの実施形態では、突起及び/又はばね部分は、弁尖の壁の約25%未満、弁尖の壁の10%未満、弁尖の壁の50%超等だけめり込むように構成することができる。例えば
図14Cを参照すると、突起206は、弁尖150の壁内に延びない場合があり、代わりに、クランプが、弁尖内に突起206が延びることなく弁尖150と係合するように、突起206間で弁尖を変形することができる。クランプの形状、例えばクランプのばね部分204及び/又はアーム202の形状は、突起206を弁尖150内に且つ/又は弁尖150を通して突き刺さず、弁尖150がクランプ内で変形される余地を残す量の力を提供することができる。いくつかの実施形態では、突起は、約0.1ミリメートルから約2.0ミリメートルまで、約0.5ミリメートルから約1.5ミリメートルまで、約0.7ミリメートル等であり得る、アームからの距離だけ延び得る。いくつかの実施形態では、突起及び/又はばね部分は、クランプを第1送達部位から第2送達部位に、第1送達部位に対する著しい影響なしに再配置することができるように、組織が突起によって突き刺されないように構成することができる。この送達位置において、クランプ200のアーム202は、弁尖150と固定的に係合され、クランプ200の第2端部200dは、
図15に関して記載及び例示するようなフィラメント、例えば1つ以上の人工腱索に結合し得る。
【0030】
図15を参照すると、本発明による心臓弁の弁尖150をクランプするためのシステムの一実施形態が示されており、このシステムは、弁尖150に取り付けられた4つのクランプ1500を含む。クランプ1500の各々は、人工腱索であるフィラメント1550の端部に取り付けられる。フィラメント1550は、アンカ1554にさらに取り付けられる係留フィラメント1552に取り付けられる。アンカ1554は、心臓154の乳頭筋152にめり込む。医療従事者は、フィラメント1550及び係留フィラメント1552が弁の弁尖150と機能するように心臓154の腱索を再現及び/又は置換することができるように、クランプ1500とアンカ1554との間のフィラメント1550、1552の長さを変更することにより、フィラメント1550及び係留フィラメント1552の長さ及び張力を調整することができる。医療従事者は、経食道心エコー法及び/又は蛍光透視法を介して観察することができる心臓弁逆流観察に応じて、フィラメント1550、1552を調整することができる。フィラメント1550、1552は、一端において、クランプ1500によって弁尖150に固定され、第2端部において、アンカ1554によって乳頭筋152に固定される。1つ以上のフィラメント1550に単一の係留フィラメント1552を結合して、複数のクランプ1500に対して1つの係留フィラメント1552及び1つのアンカ1554を使用することができるようにすることができる。いくつかの実施形態では、フィラメント1552及び係留フィラメント1552は、システムの心臓154内への送達中、1つ以上のクランプ1500に且つ互いに結合し得る。
【0031】
図16は、本発明の一実施形態による、代替的な突起1606a、1606b、1606c及び1606dを有する、
図2A~
図2Dのクランプの斜視図を示す。クランプは、互いから且つ/又はアーム1601、1602からオフセットしている様々な角度で向けられた突起1606a、1606b、1606c及び1606dを含む。第1突起1606aは、第1アーム1601の長手方向軸に対して第1角度で向けられる。第2突起1606bは、第2アーム1602の長手方向軸に対して、第1角度よりも大きい第2角度で向けられる。第3突起1606cは、第2アーム1602の長手方向軸に対して、第2角度よりも大きい第3角度で向けられる。第4突起1606dは、第2アーム1602の長手方向軸に対して、第3角度よりも大きい第4角度で向けられる。様々な実施形態が様々な角度で複数の突起を含み得る。いくつかの突起は、クランプの同じアーム又は対向するアームに沿って他の突起から代替的な角度で組織と係合し得る。
(付記)
好ましい実施形態として、上記実施形態から把握できる技術的思想について、以下記載する。
[項目1]
心臓弁の弁尖をクランプするためのシステムであって、
クランプを備え、
前記クランプは、第1端部に複数のアームを備え、前記アームは、当該アームが互いに向かい合う閉鎖形態と、前記閉鎖形態における前記アーム間の閉鎖距離よりも大きい前記アーム間の開放距離において当該アームが互いに離れる方に向く開放形態とを有し、
前記クランプは、第2端部に前記複数のアームに結合されたばね部分を備え、前記ばね部分は、前記アームを前記閉鎖形態に付勢するように構成され、
前記クランプの前記アームは、前記心臓弁の前記弁尖と固定的に係合するように構成されるとともに、前記クランプの前記第2端部は、人工腱索に結合するように構成され、
前記システムは、前記クランプを前記閉鎖形態と前記開放形態との間で移行させるように構成されたスプレッダをさらに備え、前記スプレッダは、
ベースと、
前記ベースから延びるピンと、
前記ピンを中心に回動可能に配置されたレバーと、
前記レバーから延び、前記レバー及び前記クランプを前記閉鎖形態と前記開放形態との間で移動させるように構成された第1フィラメントと
を備える、システム。
[項目2]
前記スプレッダは、
前記複数のアームの1つの第1アパーチャと概ね平行に前記ベースを通して延び、且つ前記複数のアームの1つを受け入れるように構成された第1チャネルと、
前記複数のアームの1つの第2アパーチャと概ね平行に前記レバーを通して延び、且つ前記複数のアームの1つを受け入れるように構成された第2チャネルと、
前記第1アパーチャ及び前記第1チャネル内に配置された第1ピンと、
前記第2アパーチャ及び前記第2チャネル内に配置された第2ピンと
をさらに備える、項目1に記載のシステム。
[項目3]
前記ベースに結合された遠位端を有するカテーテルをさらに備える、項目1又は2に記載のシステム。
[項目4]
前記第1ピンを前記第2ピンに結合する第2フィラメントをさらに備える、項目2に記載のシステム。
[項目5]
前記複数のアームの1つ以上の上に配置された1つ以上の突起をさらに備える、項目1~4のいずれか一項に記載のシステム。
[項目6]
前記1つ以上の突起は、棘、スパイク、フック、及びタインからなる群から選択される、項目5に記載のシステム。
[項目7]
前記1つ以上の突起は複数の列に沿って配置された複数の突起であり、該複数の列は、当該複数の突起が異なる平面にあるように前記複数のアームの少なくとも1つに沿って延びる、項目5又は6に記載のシステム。
[項目8]
前記突起は、前記アームの1つ以上から約0.5ミリメートルから約1.5ミリメートルまで延びる、項目5~7のいずれか一項に記載のシステム。
[項目9]
前記クランプは、0.08グラム未満の重量である、項目1~8のいずれか一項に記載のシステム。
【0032】
本明細書に開示され、且つ請求項に記載される装置及び/又は方法のすべては、本発明を考慮して過度の実験なしに作成及び実行することができる。本発明の装置及び方法は、好ましい実施形態に関して記載されているが、当業者であれば、本発明の概念、趣旨及び範囲から逸脱することなく、装置及び/又は方法に対して且つ本明細書に記載する方法のステップ又は一続きのステップにおいて変形形態を適用できることが明らかであり得る。当業者に対して明らかなこうした同様の置換形態及び変更形態のすべては、添付の特許請求の範囲によって規定される本発明の趣旨、範囲及び概念内にあると考えられる。