特開2023-165938IP Force 特許公報全文掲載

技術分野

走査電子型顕微鏡用の電界放出電子銃チャンバー並びに当該電子銃チャンバーを含む電子銃及び走査電子顕微鏡に関する。 前記電子銃チャンバーは、特に略立方体形状を有し得るものに関する。 前記走査電子型顕微鏡は、特に低加速電圧(具体的には、最大加速電圧が15kV)でも使用し得るものに関する。 本願では、前記「電界放出」を「フィールドエミッション」又は「Field Emission」の略称として単に「FE」と称することもある。また本願では、前記「略立方体形状」を「キュービック(Cubic)」と称することもある。

要約特許出願時に添付された[要約書]

【課題】 フィールドエミッション電子源からの電子線の最大加速電圧が15kVの走査型電子顕微鏡用フィールドエミッション電子銃チャンバーで、簡単で小型化可能なものを提供すること。
【解決手段】 本発明の解決手段は、以下の通りである。
以下を備える、走査型電子顕微鏡用の電子銃チャンバー:
(a)フィールドエミッション電子源を脱着する部位を備える電子源チャンバー;
(b)前記部位に設置される前記電子源から放出される電子線の方向に電子線が通過する、前記電子源チャンバーに隣接して設けられた中間室;
(c)前記中間室に設けられるエアロックバルブ設置部;
(d)前記電子源チャンバー及び前記中間室の連続する面のそれぞれに設けられた、予備真空排気用ポンプ用の排気孔;並びに
(e)前記電子源チャンバーと前記中間室に備えられている、前記予備真空排気用ポンプ用の排気孔を直接開閉する開閉手段。
【選択図】 なし

発明が解決しようとする課題[発明の詳細な説明]から抜粋

一方で近年、走査型電子顕微鏡として広く一般に普及している最大加速電圧を15kVとする走査型電子顕微鏡においても、その電子源として高性能であるフィールドエミッション電子源を使用することが切望されており、その検討及び研究開発がなされている。 しかし、フィールドエミッション電子源を使用する従来の走査型電子顕微鏡(すなわち、フィールドエミッション電子源を使用する、最大加速電圧が30kVの既存の走査型電子顕微鏡)で使用されている技術を、最大加速電圧が15kVの走査型電子顕微鏡にそのまま適用すると、フィールドエミッション電子源を使用するために必要な高真空を達成するための構造、具体的には、フィールドエミッション電子源から電子線を発生させて加速させる部分(本願では、これを「フィールドエミッション電子銃」と称することもある)を収容する真空容器(本願では「電界放出電子銃チャンバー」又は「フィールドエミッション電子銃チャンバー」と称することもある)とその真空排気系統部分の構造が複雑で大型になる等の様々な問題を生じ、製造コストが非常に高くなってしまう。この点について、図1と2を用いて以下に詳述する。

課題を解決するための手段[発明の詳細な説明]から抜粋

本願発明者は鋭意研究した結果、走査型電子顕微鏡用のフィールドエミッション電子銃チャンバーを構成する電子源チャンバーと中間室に設置される予備排気バルブの従来の設置手段を新規な手段とすること、及び/又は従来のエアロックバルブの設置手段や構造を新規な手段とすること等により、課題が解決されることを見出し、本願発明を完成するに至った。

発明の効果[発明の詳細な説明]から抜粋

本願発明によれば、以下に述べる効果を奏することができるので、電子源としてフィールドエミッション電子源を使用することが可能で、当該電子源からの電子線の最大加速電圧を15kVとする走査型電子顕微鏡用のフィールドエミッション電子銃チャンバーでありながら、これまでにない、簡単で小型化可能な構造を有するものを提供することができる。その結果、製造コストにも優れる当該フィールドエミッション電子銃チャンバーを提供することが可能になる。
また、本願発明によれば、前記フィールドエミッション電子銃チャンバーを含む、電子銃及び走査型電子顕微鏡を提供することにより、電子銃及び走査型電子顕微鏡の製造コスト削減を図ることができる。

本願発明が奏する効果は、具体的には以下のとおりである。
1.本願発明によれば、これまでにない、簡単で小型化可能な構造を有するという効果を奏する。
本願発明によれば、そのフィールドエミッション電子銃チャンバーを構成する、電子源チャンバー、中間室、エアロックバルブ、及び予備排気バルブを、小型の略立方体形状(例えば、略70mm立方のステンレスブロック)の機械加工によって、複雑な溶接作業を行うことなく簡単に製作することが可能である。そのため、その構造は、これまでにないもので、また、フィールドエミッション電子源を使用する従来の走査型電子顕微鏡において必要不可欠であった配管(具体的には、真空排気用配管)とフランジを溶接する構造に比べて、格段に小型でコンパクトな構造になる。従って、本願発明によれば効果を奏することができる。その結果、製造コストに優れるという効果も奏する。
この点について詳述すると、フィールドエミッション電子源を使用する従来の走査型電子顕微鏡におけるフィールドエミッション電子銃チャンバーとその真空排気系部の構造は、フランジと配管をつなぎ合せることが必要であったのに対し、本願発明のフィールドエミッション電子銃チャンバーは、小型の略立方体形状のステンレスブロック(塊)に対して、溶接作業を行うことなく穴加工を行うことにより簡単に制作することができる。その結果、非常に小型でコンパクトな合理性に富んだ構造が得られる。しかも、ブロック構造なので、ベーク用の加熱ヒーターとして、帯状のヒーターを電子源に巻き付けて加熱するヒーターや電子源を完全に囲った高価な専用ヒーターの代わりに、ブロック内にカートリッジヒーターを取り付けて使用することが可能になるので、加熱効率の向上を図ることができる。例えば、本願発明のフィールドエミッション電子銃チャンバーは、上述のとおり、金属ブロック構造なので、このブロックに穴(例えば、直径(φ)約8mm×長さ(L)約50mm)の穴を加工し、安価なシースヒーターを埋め込んで使用することが可能である。溶接箇所がない小型の一体構造のため、このような埋め込み型ヒーターにより効率よく充分に加熱することができる。

2.本願発明によれば、電子源としてフィールドエミッション電子源を使用する、最大加速電圧が15kVの走査型電子顕微鏡用のフィールドエミッション電子銃チャンバーとして使用できるという効果を奏する。
本願発明によれば、上述のとおり、小型の略立方体形状(例えば、略70mm立方のステンレスブロック)の機械加工によって、フィールドエミッション電子源を使用する従来の走査型電子顕微鏡におけるフィールドエミッション電子銃チャンバーとその真空排気系部を構成する、予備排気バルブ、真空排気用配管、及びエアロックバルブが全て備わっているフィールドエミッション電子銃チャンバーを提供できるので、これをそのまま、電子源としてフィールドエミッション電子源を使用する、最大加速電圧が15kVの走査型電子顕微鏡用のフィールドエミッション電子銃チャンバーとして使用できる。従って、本願発明によれば効果を奏することができる。

3.本願発明によれば、高価な市販の外付けの予備排気バルブが不要になるという効果を奏することができる。
本願発明によれば、フィールドエミッション電子源を使用する従来の走査型電子顕微鏡において使用されていた高価な市販の外付けの予備排気バルブ(具体的には、図1及び2の粗引バルブ6)も、エアロックバルブ(図1及び2のエアロックバルブ3)とともに本体の中に納まるコンパクトな設計になるため、当該予備排気バルブを取り付ける必要がなくなる。従って、本願発明によれば効果を奏することができる。その結果、製造コストに優れるという効果も奏する。

4.本願発明によれば、操作や設計が簡単になるという効果を奏することができる。
本願発明によれば、フィールドエミッション電子源を使用する従来の走査型電子顕微鏡において使用されていた予備排気バルブ(具体的には、図1及び2の粗引バルブ6)が1つの弁構造で開閉することが可能になるので、操作や設計が簡単になる。従って、本願発明によれば効果を奏することができる。

5.本願発明によれば、予備排気バルブのシールとして安価なポリイミドシートを使用できるという効果を奏することができる。

6.本願発明によれば、走査型電子顕微鏡としての信頼性向上や真空排気負荷の軽減を図ることができるという効果を奏する。
本願発明によれば、傾斜面を開閉するエアロックバルブを、閉めるときの面圧が、Оリングの設置面(以下、「Оリング面」と称することもある)と垂直になるように駆動させることにより、その駆動力がシールするОリング面に直接かかることになる。そのため、シール性が向上し、フィールドエミッション電子源を使用する従来の走査型電子顕微鏡に比べ、走査型電子顕微鏡としての信頼性が向上する。従って、本願発明によれば効果を奏することができる。
その際、当該エアロックバルブの構造を、傾斜面を開閉するエアロックバルブのОリング面のОリングの内側を凹み穴とし、この凹み穴にはめ込むように円筒状の凸部を設ける構造とすることにより(図5、図6A及びB参照)、Оリング表面への電子ビーム照射を回避することができる。
さらに、傾斜面を開閉するエアロックバルブにおいて、シールするОリング面で電子線に露出している部分に対して当該電子線を遮蔽するための開閉式の遮蔽板を凸部に設けることにより(図6A及びB参照)、Оリング表面を電子ビーム経路から完全に隠すことができ、これにより照射をОリング表面への電子ビーム照射を完全に回避することが可能になる。
このように、本願発明におけるエアロックバルブは、簡単な構造であるにもかかわらず、Оリングの電子ビーム照射を回避することができ、且つビーム経路への露出も避けることができ、更に中間室(図5、図6A及びBによれば、中間室1)の外に設けることができるので、真空排気負荷の軽減などが可能である。従って、本願発明によれば効果を奏することができる。
また、本願発明におけるエアロックバルブの駆動部は、中間室(図5、図6A及びBによれば、中間室1)の外に設置することができるので、Оリングによる摺動シールを採用することが可能である。これは、従来の方法では、エアロックバルブの駆動シャフトの移動部の真空シールに、高価な真空ベローズ(例えば、溶接ベローや成型ベロー)が必要とされることを考えると、大きなコストダウンになるため、製造コストに優れる。

7.本願発明によれば、電子源としてフィールドエミッション電子源を使用する走査型電子顕微鏡用の高加速電圧フィールドエミッション電子銃チャンバーとしても使用することが可能という効果を奏する。
具体的には、本願発明によれば、電子源としてフィールドエミッション電子源を使用する走査型電子顕微鏡用のフィールドエミッション電子銃チャンバーとして、最大加速電圧が15kV以上の加速度(例えば、30~60kVの高加速電圧)でも使用することが可能である。
本願発明では、フィールドエミッション電子源を使用する、最大加速電圧を15kV以上の30~60kVとする高加速電圧の走査型電子顕微鏡用のフィールドエミッション電子銃チャンバーを考えた場合、最大加速電圧が15kVの場合よりも高圧碍子が大きくなるため、小型の略立方体形状(例えば、略70mm立方のステンレスブロック)の機械加工によって作ることができる、最大加速電圧が15kVの走査型電子顕微鏡用のフィールドエミッション電子銃チャンバーには入らなくなってしまう。このような場合は、本願発明の略立方体形状(キュービック)のフィールドエミッション電子銃チャンバーの上部に、ステンレス製の円筒形電子源室をつなぎ、大型のスパッタイオンポンプ(SIP)を装備することによってこの問題を解決できる。また、予備排気バルブ、真空排気用配管、及びエアロックバルブはそのまま機能するので変える必要はない。側面にあるコンフラット真空フランジ(例えば、規格サイズ:ICF70)の真空チャンバーを高真空に排気するためのスパッタイオンポンプ(SIP)は、上部の円筒形電子源室に付けられた大型スパッタイオンポンプ(SIP)に取って代わるので必要なくなる。そのため、本願発明によれば、高加速電圧の走査型電子顕微鏡用のフィールドエミッション電子銃チャンバーを製作する場合でも、容易に製作することができる。従って、本願発明によれば効果を奏することができる。
このように、本願発明では、予備排気バルブ、真空排気用配管、及びエアロックバルブが備わっている略立方体形状(キュービック)のフィールドエミッション電子銃チャンバーの上方向に高加速電圧に適応した大きさの真空チャンバーを結合することで、高加速電圧フィールドエミッション電子銃チャンバーとしても採用することができる。この場合、チャンバーの大きさに対応してスパッタイオンポンプ(SIP)の大型化が必要になるが、従来のフィールドエミッション電子銃チャンバーで必要とされる外付けの予備排気バルブや配管(パイプ)を無くすことができるので、コンパクトなすっきりした形になる。このように構造が単純化されるので、焼出しベークヒーター、及び磁気シールドなどの外付け構造物の設計が容易になるという効果が得られる。

8.本願発明によれば、上述のとおり、これまでにない、簡単で小型化可能な構造を有するフィールドエミッション電子銃チャンバーを低コストで提供することができるので、電子銃及び走査型電子顕微鏡の製造コスト削減を図ることができるという効果を奏する。

この発明についての権利主張の範囲[特許請求の範囲]

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この特許公報に記載されている図面[図面の簡単な説明]から抜粋

【図1】 一般的なフィールドエミッション電子銃チャンバーとその真空排気系部の外観図である。
【図2】 一般的なフィールドエミッション電子銃チャンバーとその真空排気系部の断面図(概略図)である。
【図3A】 本願発明の一実施態様の正面図と側面図(ともに概略図)である。
【図3B】 本願発明の一実施態様の正面図と側面図(ともに概略図)である。
【図4A】 一般的なフィールドエミッション電子銃チャンバーに設置されるエアロックバルブ(当該バルブのОリング設置面が駆動方向に対して水平のもの)の開閉時の概略図である。
【図4B】 一般的なフィールドエミッション電子銃チャンバーに設置されるエアロックバルブ(当該バルブのОリング設置面が駆動方向に対して5~15°で傾斜しているもの)の開閉時の概略図である。
【図5】 本願発明の一実施態様であるフィールドエミッション電子銃チャンバーに設置される遮蔽板付きエアロックバルブの開閉時の概略図である。
【図6A】 本願発明の一実施態様であるフィールドエミッション電子銃チャンバーに設置される遮蔽板付きエアロックバルブ部分(すなわち、図5のエアロックバルブ部分)の一実施態様の拡大図(概略図)である。
【図6B】 本願発明の一実施態様であるフィールドエミッション電子銃チャンバーに設置される遮蔽板付きエアロックバルブ部分(すなわち、図5のエアロックバルブ部分)の一実施態様の拡大図(概略図)である。
【図7A】 本願発明の一実施態様である走査型電子顕微鏡の概略図である。
【図7B】 本願発明の一実施態様である走査型電子顕微鏡(すなわち、図7A)の作動時の電子源チャンバーの圧力(P0)、中間室の圧力(P1)、試料室の圧力(P2)の各圧力(単位:Pa)と経過時間(単位:hr)との関係を示すグラフである。
【図8】 以下の条件下でのLaB6をエミッターとして使用するフィールドエミッション電子源の全エミッションプロファイルを示すグラフである(条件:電子源チャンバーの圧力(P0)=2.5×10-7Pa、中間室の圧力(P1)=1×10-5Pa、試料室の圧力(P2)=3×10-3Pa、エアロックバルブは開いた状態である。)。
1 中間室 2 電子源チャンバー 3 エアロックバルブ 4 電子源チャンバー排気用イオンポンプ又は中間室排気用イオンポンプ 5 真空排気用配管又は真空排気(粗引き) 6 予備排気バルブ(粗引バルブ) 7 電子顕微鏡鏡筒部 8 フィールドエミッション電子源チャンバー 9 真空排気系統部 10 試料室 11 試料台

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