(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023165969
(43)【公開日】2023-11-17
(54)【発明の名称】集積型GRINレンズ
(51)【国際特許分類】
G02B 6/32 20060101AFI20231110BHJP
【FI】
G02B6/32
【審査請求】有
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023169228
(22)【出願日】2023-09-29
(62)【分割の表示】P 2021134262の分割
【原出願日】2021-08-19
(71)【出願人】
【識別番号】304056637
【氏名又は名称】株式会社中原光電子研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100119677
【弁理士】
【氏名又は名称】岡田 賢治
(74)【代理人】
【識別番号】100160495
【弁理士】
【氏名又は名称】畑 雅明
(74)【代理人】
【識別番号】100173716
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 真理
(74)【代理人】
【識別番号】100115794
【弁理士】
【氏名又は名称】今下 勝博
(72)【発明者】
【氏名】中原 基博
(72)【発明者】
【氏名】有島 功一
(57)【要約】
【課題】本開示は、光ファイバとGRINレンズを接続する際にアクティブ調心の不要なGRINレンズを提供することを目的とする。
【解決手段】本開示は、予め定められた位置に配列されている複数のGRINレンズ(12)と、前記複数のGRINレンズを保持するレンズ保持部(11)と、前記複数のGRINレンズの両側に配置され、ガイドピンと当接する複数の位置決め用V溝(15)と、を備える本開示の集積型GRINレンズである。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の光ファイバアレイに配列されている第1の複数の光ファイバと接続可能な位置に配列されている、石英ガラスからなる第1の複数の石英系GRINレンズと、
前記第1の複数の石英系GRINレンズを保持する、石英ガラスからなるレンズ保持部と、
前記レンズ保持部に固定され、前記第1の複数の石英系GRINレンズの光路長を調整するためのスペーサと、
前記スペーサに設けられ、前記第1の複数の光ファイバと接続可能な位置に前記第1の複数の石英系GRINレンズを配列させる位置決め用のガイドピンと当接する複数の位置決め用V溝と、
を備える集積型GRINレンズであって、
前記複数の位置決め用V溝を前記ガイドピンと当接させることで、前記第1の複数の光ファイバ、前記第1の複数の石英系GRINレンズ、当該集積型GRINレンズと異なる集積型GRINレンズに備わる第2の複数の石英系GRINレンズ、及び前記第2の複数の石英系GRINレンズに接続されている第2の複数の光ファイバの調心が可能であり、
前記第1の複数の石英系GRINレンズ及び前記レンズ保持部は、石英ガラスで一体に形成されている、
集積型GRINレンズ。
【請求項2】
前記第1の複数の石英系GRINレンズは、GRINレンズ径を変えることによりg値が設定されており、かつ前記第2の複数の石英系GRINレンズに向けて集光されるような長さを有する、
請求項1に記載の集積型GRINレンズ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、集積型GRINレンズに関する。
【背景技術】
【0002】
GRINレンズ(屈折率分布型レンズ)がアレイ状に並んだ集積型GRINレンズが提案されている(例えば、特許文献1参照。)。集積型GRINレンズを使用すれば、材料がガラスであるためガラス製光ファイバとの整合性が良く、熱膨張によって光ファイバのコア中心位置とGRINレンズの中心位置がずれることはなく損失が増加しない。
【0003】
1本の光ファイバで複数の信号光を伝送する空間多重技術により、光ファイバのコアを通過する光パワー密度が極めて大きくなっている。光パワー密度が大きい場合、光ファイバ端面の小さな異物、傷などで反射または散乱した光によって端面が破損し、通信障害が発生する可能性がある。このため、光ファイバの接続端面でのパワー密度を下げることが求められている。
【0004】
また、データセンタなどにおいて、対向する光ファイバどうしの接続作業を行う際、接続端面への微小なゴミの付着による接続特性の劣化が問題となっており、接続時のビーム径を大きくしコリメート光にすることが喫緊の課題となっている。このため光ファイバの先端にGRINレンズを付けてビーム径を広げコリメート光にする方法が注目されている。
【0005】
しかし、光ファイバの光軸とGRINレンズの光軸を精度良く一致させて接続しなければ、GRINレンズから出射される光はコリメート光になったとしても光ファイバの光軸から角度がついて出射される。この場合、対向する光ファイバどうしを接続するために、互いに逆方向に出射されたコリメート光を対向して結合しようとしても、低損失で結合する事は困難である。
【0006】
これを解決するため、光ファイバに光を入射させGRINレンズからのコリメート光の角度を検知しながら光軸が一致するように光ファイバとGRINレンズの位置合わせをするアクティブ調心技術が一般的であった。しかし、アクティブ調心は調心に時間がかかり、コストアップになるため、産業的な利用価値の点で極めて大きな欠点となっていた。特に光ファイバが複数配列された場合にはこの欠点はさらに顕著になっていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本開示は、光ファイバとGRINレンズを接続する際にアクティブ調心の不要なGRINレンズを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示は、GRINレンズを配列した集積型GRINレンズによって、本開示の課題を解決する。
【0010】
具体的には、本開示の集積型GRINレンズは、
予め定められた位置に配列されている複数のGRINレンズと、
前記複数のGRINレンズを保持するレンズ保持部と、
前記複数のGRINレンズの両側に配置され、位置決め用のガイドピンと当接する複数の位置決め用V溝と、
を備える。
【0011】
具体的には、本開示の光ファイバの接続方法は、
本開示の2つの集積型GRINレンズに備わる前記位置決め用V溝を共通のガイドピンに当接させ、
前記集積型GRINレンズに備わる各GRINレンズを、前記集積型GRINレンズごとに異なる光ファイバの先端に固定し、
2つの前記集積型GRINレンズに備わる前記レンズ保持部を互いに接続する。
【0012】
本開示では、
前記レンズ保持部が着脱可能なアダプタで保持されており、
前記複数の位置決め用V溝が、前記アダプタに形成されていてもよい。
この場合、本開示の光ファイバの接続方法は、
本開示の前記アダプタに備わる前記位置決め用V溝をガイドピンに当接させ、
前記集積型GRINレンズに備わる各GRINレンズを光ファイバの先端に固定し、
その後、前記集積型GRINレンズから前記アダプタを取り外す。
【発明の効果】
【0013】
本開示の集積型GRINレンズは、複数の位置決め用V溝を備えるため、位置決め用のガイドピンに当接させるだけで光ファイバとGRINレンズの光軸を一致させて接続する事ができる。このため、本開示は、光ファイバとGRINレンズを接続する際にアクティブ調心の不要なGRINレンズを提供することができる。
【0014】
さらに、本開示の集積型GRINレンズは、光ファイバとGRINレンズを簡単に光軸一致させて接続し、光ファイバとGRINレンズの光軸と平行なコリメータ光を出射させることができるため、対向する光ファイバの接続端面でのパワー密度を下げ、かつコネクタ端面のゴミ付着による接続損失の影響を除去することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本開示の実施形態に係る集積型GRINレンズの一例を示す。
【
図2】本開示の実施形態に係るスペーサの一例を示す。
【
図3】本開示の実施形態に係る集積型GRINレンズの一例を示す。
【
図4】本開示の実施形態に係る集積型GRINレンズの一例を示す。
【
図5】本開示の実施形態に係る集積型GRINレンズの一例を示す。
【
図6】本開示の実施形態に係る集積型GRINレンズの一例を示す。
【
図7】本開示の実施形態に係る集積型GRINレンズの一例を示す。
【
図8】本開示の実施形態に係る集積型GRINレンズの一例を示す。
【
図9】本開示の実施形態に係る集積型GRINレンズの一例を示す。
【
図10】本開示の実施形態に係る集積型GRINレンズの一例を示す。
【
図11】本開示の実施形態に係る集積型GRINレンズの一例を示す。
【
図12】本開示の実施形態に係る集積型GRINレンズの一例を示す。
【
図13】本開示の実施形態に係る集積型GRINレンズの一例を示す。
【
図14】本開示の実施形態に係る集積型GRINレンズの一例を示す。
【
図15】本実施形態の集積型GRINレンズの波長フィルタへの適用例を示す。
【
図16】本実施形態の集積型GRINレンズの波長フィルタへの適用例を示す。
【
図17】
図17に示す波長フィルタにおける光線軌跡の一例を示す。
【
図18】本開示の光ファイバの接続構成の一例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本開示の実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、本開示は、以下に示す実施形態に限定されるものではない。これらの実施の例は例示に過ぎず、本開示は当業者の知識に基づいて種々の変更、改良を施した形態で実施することができる。なお、本明細書及び図面において符号が同じ構成要素は、相互に同一のものを示すものとする。
【0017】
(第1の実施形態)
図18に、本開示の実施形態に係る光ファイバの接続構成の一例を示す。本開示の光ファイバの接続方法は、集積型GRINレンズ23-1及び23-2をそれぞれ光ファイバ21及び25の先端に接着固定するレンズ固定手順と、集積型GRINレンズ23-1及び23-2を接続するレンズ接続手順と、を備える。
【0018】
レンズ固定手順では、例えば、集積型GRINレンズ23-1をガイドピン14に当接させ、集積型GRINレンズ23-1に備わる各GRINレンズ12を光ファイバ21を配列している光ファイバアレイ22に接着固定する。集積型GRINレンズ23-2を光ファイバ25の先端に接着固定する際も同様に、集積型GRINレンズ23-2を光ファイバアレイ24に接着固定する。
【0019】
レンズ接続手順では、集積型GRINレンズ23-1及び23-2を接続する。このとき、集積型GRINレンズ23-1及び23-2の間に、集積型GRINレンズ23-1及び23-2の光路長を調整するためのスペーサ26を配置してもよい。
【0020】
光ファイバ21の本数は2以上の任意の数でありうる。光ファイバ21の間隔は任意であり、等間隔であってもよいし、不等間隔であってもよい。また、光ファイバ21は1列であってもよいし、2列以上であってもよい。また、光ファイバアレイ22及び24は、
図18(a)に示す光ファイバ21及び24をV溝で固定したものであってもよいが、
図18(b)に示すような光ファイバ21及び24を任意の筐体中に固定したものであってもよい。また、光ファイバ21は、シングルモードファイバであってもよいし、マルチモードファイバであってもよいが、以下の実施形態では光ファイバ21及び24がマルチモードファイバである場合について説明する。以下、本開示の集積型GRINレンズについて、詳細に説明する。
【0021】
図1に、本実施形態の集積型GRINレンズの一例を示す。本開示の集積型GRINレンズは、複数のGRINレンズ(屈折率分布型レンズ)12が配列されている。GRINレンズ12の数は2以上の任意の数でありうるが、本実施形態では8個の例を示す。
【0022】
本実施形態では、GRINレンズ12は、ガラスからなるレンズ保持部11に埋め込まれ、一体に形成されている。この構成は、例えば、石英ガラスロッドにGRINレンズ12の母体を配置し、これらを延伸することで作製することができる。これにより、GRINレンズ12を高精度で配置することができる。なお、レンズ保持部11は石英ガラスに限らず、任意の成分が含まれる無機ガラスであってもよい。
【0023】
また、レンズ保持部11が無機ガラスの場合、多くのガラス製光ファイバとの整合性が良く、熱膨張によって光ファイバのコア中心位置とGRINレンズの中心位置がずれることはなく損失が増加しない。
【0024】
本実施形態のGRINレンズ12は、接続されている光ファイバのビーム径を拡大して出射する任意のレンズ長を有する。例えば、本実施形態のGRINレンズ12が1/4ピッチのレンズ長を有することで、光ファイバのビーム径をGRINレンズ12のGRINレンズ径に応じたビーム径に拡大し、平行光を出射することができる。ここで、本開示のGRINレンズ12のレンズ長は、1/4ピッチに限らず、対向して配置されているGRINレンズ12に向けてわずかに集光されるよう、1/4ピッチよりも少し長くてもよい。このように、GRINレンズ12のレンズ長が略1/4ピッチであることで、GRINレンズ12の端面からビーム径を拡大してコリメート光(平行ビーム)を出射/入射させることができる。
【0025】
また、集積型GRINレンズ23-1のGRINレンズ12は、接続されている光ファイバ21のビーム径を拡大して、対向している集積型GRINレンズ23-2のGRINレンズ12で集光され、接続されている光ファイバ15に入射される。このとき、GRINレンズ間の接続損失はビーム径に大きく依存することが知られている。
【0026】
ここで、GRINレンズ12の光線軌跡は次の式1で表される。
【数1】
r0:ビームのレンズ中心からの距離
r1:光線の周期がgz時のビームのレンズ中心からの距離
z:レンズ長
n
0:中心屈折率
g:屈折率分布定数
θ
0:ビーム入射角度
【0027】
コリメート光となる条件、gz=1/4π+nπを代入し、GRINレンズ12の中心に入射する(r0=0)を仮定すると、式1は
【数2】
となり、コリメート光のビーム半径は入射角度に比例し、中心屈折率n
0及び屈折率分布定数gの積に反比例することが判る。
【0028】
従って、式2よりGRINレンズ12の中心屈折率n0が小さく、g値を小さくすることによって、コリメート光のビーム径が大きくなりレンズ間の伝送損失は小さくできることが判る。
【0029】
本実施形態のGRINレンズ12は、石英系のGRINレンズであり、多成分系のイオン交換型GRINレンズより中心屈折率が低い。また、石英系GRINレンズはGRINレンズ母材を線引きして、GRINレンズ径を変えることにより所望のg値を有するGRINレンズが製造できる。
【0030】
線引きよりで細くなったGRINレンズ径をr、外径の屈折率をn(r)とすると、g値は次式で表わされる。
【数3】
式3よりg値はGRINレンズ径rに反比例する。
【0031】
ここで、石英(n=1.457)にGeドープして作製した一般的なGRINレンズ母材のn0値は約1.475である。GRINレンズ径rは、光ファイバの出射径より大きくするため、光ファイバ21又は25のコア径(62.5μm)より大きく、光ファイバアレイ22又は24のピッチ間隔(250μm)より小さい範囲とする。
【0032】
以上より、式3に代入すると、g値は1.25~4.98の範囲となる。適切なg値を設定し、本開示の目的であるビーム径を拡大して伝送損失を小さくすることが容易にできる。なお、本実施例では石英にGeをドープしたGRINレンズを示したが、他の組成でも同様に適切なg値を上記の手法で設定できる。
【0033】
ここで、集積型GRINレンズ23-1及び23-2の間にスペーサ26が配置されている。スペーサ26は、集積型GRINレンズ23-1に備わる各GRINレンズ12と集積型GRINレンズ23-2に備わる各GRINレンズ12との間に空間が生じないよう、透明体で充填するものであり、例えば透明なガラスが例示できる。これにより、本実施形態は集積型GRINレンズ23-1に備わるGRINレンズ12から集積型GRINレンズ23-2に備わるGRINレンズ12までの光路がガラス中に閉じ込められているため、その両端面が平面であるにも関わらずレンズ作用を持ち、空気中のほかいかなる屈折率の液体中または気体中でもそのレンズ機能は全く損なわれることなく端面からビーム径を拡大してコリメート光(平行ビーム)を出射/入射させることができる。
【0034】
なお、スペーサ26は、例えば、
図2(a)に示すような透明体261である。スペーサ26は、
図2(b)に示すように、集積型GRINレンズ23-1に備わる各GRINレンズ12と集積型GRINレンズ23-2に備わる各GRINレンズ12との間が透明体262であればよく、その他の領域261は透明体262間を遮光するものであってもよい。また、
図2(c)に示すように、スペーサ26は各GRINレンズ12との間が単なる空間263であっても良く、2つの集積型GRINレンズ間の距離を一定に保つ機能のみを有するように集積型GRINレンズ23の外周と同じ形状のフレームからなる構造でも良い。
【0035】
レンズ保持部11は、ガイドピン14と当接する2つの位置決め用V溝15が設けられている。2つの位置決め用V溝15は、GRINレンズ12に対して予め定められた位置に配置されている。例えば、集積型GRINレンズ23-1に備わるレンズ保持部11の位置決め用V溝15は、ガイドピン14と当接した際に、各GRINレンズ12が光ファイバ21と接続される位置に配置されている。集積型GRINレンズ23-2の位置決め用V溝15も同様である。これにより、集積型GRINレンズ23を下側又は上側からガイドピン14に押し当てることで、光ファイバ21及び25を高精度で接続することができる。
【0036】
レンズ保持部11は、
図3に示すように、着脱可能なアダプタ13に保持されていてもよい。
図3(a)はガイドピン14に垂直な断面構造を示し、
図3(b)はA-A断面構造を示す。11Sはスペーサ26側の表面、11Aは光ファイバアレイ22又は24側の表面である。アダプタ13は、任意の部材で構成することができ、例えばテフロン(登録商標)系などの樹脂で構成することができる。
【0037】
図3では、アダプタ13がレンズ保持部11を配置するための貫通孔を備え、当該貫通孔にレンズ保持部11が保持されている例を示す。この構成を採用した場合、レンズ保持部11を下側からガイドピン14に押し当て(
図3(a))、レンズ保持部11及び各GRINレンズ12を光ファイバアレイ22又は24の先端に接着した後、アダプタ13をスペーサ26側に引き抜くことで(
図3(b))、アダプタ13を取り外すことができる。これにより、本実施形態は、接着剤がガイドピン14に当たるのを防ぐことができ、集積型GRINレンズ23を小さくすることができる。なお、レンズ保持部11は予めアダプタ13に保持されていてもよいが、光ファイバアレイ22又は24への固定時にレンズ保持部11をアダプタ13に取り付けてもよい。なお、アダプタ13は光ファイバアレイ22又は24の先端に接着した後、取り外さず残していてもよい。
【0038】
図3(b)ではアダプタ13の厚みT13がレンズ保持部11の厚みT11と同じである例を示したが、アダプタ13の厚みT13はT11よりも大きくてもよい。例えば、
図4に示すように、厚みT13はレンズ保持部11及びスペーサ26の厚み以上であってもよい。この構成の場合、スペーサ26をレンズ保持部11と同じ形状にし、予めこれらを接着しておき、スペーサ26及びレンズ保持部11をアダプタ13で保持する。これにより、スペーサ26及びレンズ保持部11を小型化かつ軽量化することができる。なお、
図4ではスペーサ26が透明体である例を示すが、前述の通り空間を採用してもよい。
【0039】
図5に、
図3に示すレンズ保持部11のA-A断面構成の別例を示す。
図5では、アダプタ13の光ファイバアレイ22又は24側の面からスペーサ26側の面に向かって閉じている。このように、レンズ保持部11のうちのアダプタ13と接触する部分に、レンズ保持部11の厚み方向のテーパを有する。これにより、本実施形態は、アダプタ13を取り外しやすくすることができる。
【0040】
図6に、レンズ保持部11の着脱構成例を示す。アダプタ13がレンズ保持部11を配置するための切り欠き34を備え、レンズ保持部11が着脱可能に切り欠き34に保持される。切り欠き34及びレンズ保持部11の形状は、着脱の観点から、台形などのアダプタ13の外縁に近づくにつれて広がっている形状を採用することができる。
【0041】
この構成を採用した場合、レンズ保持部11を切り欠き34に配置し(
図6(a))、アダプタ13を下側からガイドピン14に押し当て(
図6(b))、レンズ保持部11及び各GRINレンズ12を光ファイバアレイ22又は24の先端に接着した後、アダプタ13を下に引き抜くことで(
図6(c))、アダプタ13を取り外すことができる。
【0042】
図7に、レンズ保持部11の着脱構成例を示す。アダプタ13がレンズ保持部11を配置するための貫通孔31を備え、レンズ保持部11が貫通孔31の所定の位置で係合する係合部を備える。係合部は、ガイドピン14に対して予め定められた位置にGRINレンズ12を配列させるものであり、例えば、2つの位置決め用のV溝15を結ぶ直線に平行な方向に対して突出する凸部32をレンズ保持部11が備え、凸部32に係合する切り欠き33を貫通孔31が備える。
【0043】
この構成を採用した場合、凸部32と切り欠き33が係合するようにレンズ保持部11を貫通孔31に配置したとき(
図7(a))、位置決め用V溝15に対して予め定められた位置に複数のGRINレンズ12が配列される。この状態でアダプタ13を下側からガイドピン14に押し当て(
図7(b))、レンズ保持部11及び各GRINレンズ12を光ファイバアレイ22又は24の先端に接着した後、アダプタ13を下に引き抜くことで(
図7(c))、アダプタ13を取り外すことができる。これにより、レンズ保持部11が着脱しやすいように貫通孔31を大きくした場合であっても、アダプタ13に対して一定の位置にGRINレンズ12を配置することができる。
【0044】
図8に示すように、
図6に示す切り欠き34及びレンズ保持部11は、所定の位置で互いに係合する凸部32及び切り欠き33を備えていてもよい。
【0045】
なお、
図7及び
図8における凸部32及び切り欠き33の形状は任意であり、三角形に限らず多角形であっても良い。また、貫通孔31が凸部を備え、レンズ保持部11が当該凸部と係合する切り欠きを備えていてもよい。さらに、本開示は、
図9に示すように、GRINレンズ12が二次元配列されていてもよい。
【0046】
(第2の実施形態)
図10に、本実施形態の集積型GRINレンズの一例を示す。第1の実施形態ではGRINレンズ12がレンズ保持部11に埋め込まれている集積型の構成を備えるが、本実施形態ではレンズ保持部11に設けられている整列用V溝41にGRINレンズ12が接着剤42で固定される組立型の構成を備える。
【0047】
この構成を採用した場合、レンズ保持部11の整列用V溝41にGRINレンズ12を配置し、リッド43でGRINレンズ12を押さえつけながら、GRINレンズ12を接着剤42で固定する。そして、レンズ保持部11を下からガイドピン14に押し当て、レンズ保持部11及びGRINレンズ12を光ファイバアレイ22又は24の端面に接着固定する。
【0048】
なお、レンズ保持部11へのGRINレンズ12の固定は、光ファイバアレイ22又は24の端面への実装時であってもよいが、この実装前に予め行っていてもよい。この場合、レンズ保持部11はGRINレンズ12を配置するための整列用V溝41を備えなくてもよい。例えば、レンズ保持部11とは別に整列用V溝41と同じ位置に配置された整列用V溝を用意し、これを用いてGRINレンズ12を整列させ、その状態でレンズ保持部11にGRINレンズ12を接着剤で固定してもよい。
【0049】
図10ではリッド43がガイドピン14の間に配置されている例を示すが、本開示はこれに限定されない。例えば、
図11に示すように、ガイドピン14を跨いでリッド43を長くする。これにより、リッド43の接着面積を広くすることができる。リッド43の幅W43は、任意であるが、例えば、レンズ保持部11の幅W11と同じであってもよい。
【0050】
図10及び
図11ではGRINレンズ12と当接するリッド43の表面が平坦である例を示したが、本開示はこれに限定されない。例えば、
図12に示すように、リッド43の表面にもGRINレンズ12を2つの面で支える整列用V溝44を備えていてもよい。これにより、GRINレンズ12の間隔をより正確にすることができる。
【0051】
ここで、この構成の場合、リッド43とレンズ保持部11を固定するために用いた接着剤がガイドピン14に達するのを防ぐための構成を、リッド43又はレンズ保持部11の少なくとも一方に備えていてもよい。例えば、リッド43又はレンズ保持部11の少なくとも一方に液だまり45を設ける。
【0052】
リッド43におけるガイドピン14を配置するための形状は、
図12に示すように、位置決め用V溝であってもよい。この場合、リッド43におけるガイドピン14を配置するための位置決め用V溝は、ガイドピン14と当接しないようにする。また、レンズ保持部11及びリッド43におけるガイドピン14を配置するための形状は、ガイドピン14を貫通させやすいよう、
図13に示すように、片方が広がったテーパ状であってもよい。
【0053】
なお、
図10から
図13では、各整列用V溝41に1本のGRINレンズ12が固定される例を示したが、本開示はこれに限定されない。例えば、
図14に示すように、整列用V溝41に2本以上のGRINレンズ12が固定されていてもよい。
【0054】
(第3の実施形態)
図15に、本実施形態の集積型GRINレンズ23-1及びスペーサ26の一例を示す。本実施形態では、集積型GRINレンズ23-1とスペーサ26の間に波長フィルタ51が備わる。波長フィルタ51は、GRINレンズ12に応じた特定波長の光を透過する機能を備え、全て異なっていてもよいし、いずれかが共通の波長であってもよい。
【0055】
スペーサ26の表面に波長フィルタ51を予め固定し、集積型GRINレンズ23-1、スペーサ26及び集積型GRINレンズ23-2を接続する。これにより、光ファイバアレイ22及び24を接続するだけで、WDMフィルタを構成することができる。
【0056】
図16に、WDMフィルタへの更なる適用例を示す。この例では、スペーサ26と集積型GRINレンズ23-2の間に波長フィルタ51が配置され、スペーサ26における波長フィルタ51に対向する面にミラー52が配置されている。波長フィルタ51及びミラー52はスペーサ26に予め固定されている。
【0057】
図16に示すWDMフィルタについての光線軌跡の一例を
図17に示す。光ファイバ25-1はGRINレンズ12Aの中心からずれた位置に接続される。光ファイバ25-1からGRINレンズ12Bに入射した光はスペーサ26に斜めに入射され、波長フィルタ51Bに向けてミラー52で反射される。波長フィルタ51Bで透過された光はGRINレンズ12Aを通過し、光ファイバ25-2に入射される。GRINレンズ12Bに入射した光のうちの一部は波長フィルタ51Bで反射される。波長フィルタ51Bで反射された光は、波長フィルタ51Cに向けてミラー52で反射される。これらを繰り返し、波長フィルタ51B~51Eをそれぞれ透過した光が光ファイバ25-2~25-5に入射される。この採用することで、波長分離多重を行うことができる。
【0058】
なお、上述の実施形態では位置決め用V溝15をガイドピン14に当接させることでGRINレンズ12の位置合わせを行う例を示したが、位置決め用V溝15に代えて位置決め精度の高いガイドピン孔を用いてGRINレンズ12の位置合わせを行ってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0059】
本開示は複数の光ファイバの任意の光接続に適用することができ、産業上極めて利用価値が高い。
【符号の説明】
【0060】
11:レンズ保持部
12:GRINレンズ(屈折率分布型レンズ)
13:アダプタ
14:ガイドピン
15:位置決め用V溝
21、25:光ファイバ
22、24、122、124:光ファイバアレイ
23、23-1、23-2:集積型GRINレンズ
26:スペーサ
31:貫通孔
32:凸部
33、34:切り欠き
41、44:整列用V溝
42:接着剤
43:リッド
45:液だまり
51:波長フィルタ
52:ミラー
261:スペーサにおける透明体以外の領域
262:透明体
263:空間