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特開2023-166027ガス透過セル、試料固定治具、ガス透過度測定装置、及びガス透過度測定方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023166027
(43)【公開日】2023-11-17
(54)【発明の名称】ガス透過セル、試料固定治具、ガス透過度測定装置、及びガス透過度測定方法
(51)【国際特許分類】
   G01M 3/02 20060101AFI20231110BHJP
【FI】
G01M3/02 L
【審査請求】有
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023171570
(22)【出願日】2023-10-02
(62)【分割の表示】P 2019134587の分割
【原出願日】2019-07-22
(71)【出願人】
【識別番号】390000686
【氏名又は名称】株式会社住化分析センター
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】佐渡 学
(72)【発明者】
【氏名】原田 謙吾
(72)【発明者】
【氏名】高萩 寿
(57)【要約】
【課題】様々な形状の試料のガス透過度が測定可能なガス透過セル等を提供する。
【解決手段】本開示の一態様に係るガス透過セルは、試料固定治具と試料固定補助部材と検出チェンバーとを備え、試料固定治具は検出チャンバーに着脱可能に取り付けられる。本開示の一態様に係るガス透過セルは、試料固定治具と検出チェンバーとを備え、試料固定治具には、Oリング式継手のボディー部が開口部に連通するように固定されている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
気体に含まれる標的成分の試料に対する透過度を測定するガス透過セルであって、
第1面及び第2面と、当該第1面から第2面に貫通する開口部とを有し、上記開口部を閉塞し、かつ上記試料が上記第1面側及び第2面側の両面に対して露出するように上記試料を固定する試料固定治具と、
上記第1面側、及び第2面側の何れかに上記試料を固定するための試料固定補助部材と、
上記開口部を上記第2面側から包囲する凹部を有し、当該凹部の内側に検出ガスを供給する検出チャンバーと、を備え、
上記試料は、環状構造を有する試料であり、
上記試料固定補助部材は、金属板と、ボルトとを備え、
上記金属板と上記試料固定治具とによって上記環状構造を有する試料を挟み、上記ボルトを締めることによって上記環状構造を有する試料を挟みこむように固定し、
上記試料固定治具は、上記検出チャンバーに着脱可能に取り付けられる、ガス透過セル。
【請求項2】
気体に含まれる標的成分の試料に対する透過度を測定するガス透過セルであって、
第1面及び第2面と、当該第1面から第2面に貫通する開口部とを有し、上記開口部を閉塞し、かつ上記試料が上記第1面側及び第2面側の両面に対して露出するように上記試料を固定する試料固定治具と、
上記開口部を上記第2面側から包囲する凹部を有し、当該凹部の内側に検出ガスを供給する検出チャンバーと、を備え、
上記試料固定治具は、上記検出チャンバーに着脱可能に取り付けられ、
上記試料はOリングであり、
上記試料固定治具には、ブラインドナットとボディー部とを備えたOリング式継手の上記ボディー部が、上記開口部に連通するように固定されている、
ガス透過セル。
【請求項3】
上記試料固定治具がリーク試験材をさらに備え、
上記ブラインドナットが開口を有し、
上記リーク試験材で上記ブラインドナットが有する開口を閉塞する、請求項2に記載のガス透過セル。
【請求項4】
上記気体を供給する供給チャンバーをさらに備え、
当該供給チャンバーは、その内側に上記気体が供給される供給凹部を有し、
上記第1面側から上記開口部を包囲し、当該供給凹部を閉塞するようにして、当該供給チャンバーを着脱可能に取り付ける、請求項1~3のいずれか一項に記載のガス透過セル。
【請求項5】
上記試料固定治具は、上記検出チャンバーおよび上記供給チャンバーの少なくとも1つに治具固定部材によって固定される、請求項4に記載のガス透過セル。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか一項に記載のガス透過セルに着脱可能に取り付けられる試料固定治具であって、第1面及び第2面と、当該第1面から第2面に貫通する開口部とを有し、上記開口部を閉塞し、かつ上記試料が上記第1面側及び第2面側の両面に対して露出するように上記試料を固定する、試料固定治具。
【請求項7】
請求項1~5のいずれか一項に記載のガス透過セルと、
上記試料を透過して上記検出チャンバーに達した標的成分を検出する検出部と、を備えているガス透過度測定装置。
【請求項8】
請求項1~5のいずれか一項に記載のガス透過セルに上記気体を供給し、上記試料を透過して上記検出チャンバーに達した上記標的成分を検出する検出工程を含む、ガス透過度測定方法。
【請求項9】
上記検出工程において、上記試料に負荷を加えつつ、上記検出チャンバー内に達した標的成分を測定する、請求項8に記載のガス透過度測定方法。
【請求項10】
上記試料を上記気体に曝露する前に、上記試料を上記第1面側及び上記第2面側の両側から上記検出ガスに曝露し、上記検出チャンバー内に供給される検出ガスに含まれる標的成分の量を測定するバックグラウンド測定工程を含む、請求項9に記載のガス透過度測定方法。
【請求項11】
請求項4に記載のガス透過セルを収納する収納部と、
上記第2面側から上記開口部を包囲する上記供給凹部を開放するように上記供給チャンバーを移動させる移動部と、
上記試料を透過して上記検出チャンバーに達した標的成分を検出する検出部と、を備えている、ガス透過度測定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガス透過セル、試料固定治具、ガス透過度測定装置、及びガス透過度測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
水蒸気や酸素等のガスの透過度測定を行う際に使用する測定試料は、フィルムやシート等の平坦な試料が主流であった。例えば、特許文献1には、フィルム等の平坦な試料を湾曲させた状態で固定してガスバリア試験を行うガスバリア試験方法が開示されている。
【0003】
近年は、完成品等の製品自体のガス透過測定試験が高まっている。例えば、特許文献2~4には、包装容器等の立体形状を有する試料のガス透過測定用治具が開示されている。また、特許文献5には、プラスチック成形体を透過した測定対象ガスを測定する前に、加熱等により水分の影響を除去してプラスチック成形体を調整することで、ガスバリア性の測定精度を向上させる方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2018-21813号公報(2018年2月8日公開)
【特許文献2】特開2012-58219号公報(2012年3月22日公開)
【特許文献3】特開2006-47257号公報(2006年2月16日公開)
【特許文献4】特開平11-304630号公報(1999年11月5日公開)
【特許文献5】国際公開第2004/077006号(2004年9月10日公開)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
立体形状を有する試料のガス透過度測定を行う場合、当該立体形状を有する試料専用の測定装置を用意する必要がある。特許文献2~4の測定治具は、様々な形状の試料の測定に対応できない可能性がある。また、特許文献5は、コストが高くなる可能性がある。また、検出器間の測定誤差も考慮する必要があり、同一の装置および検出器において、様々な形状の試料のガス透過度が測定可能な装置の開発が望まれる。
【0006】
本発明の一実施形態は、様々な形状の試料のガス透過度が測定可能なガス透過セルを実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者等は下記の構成を採用することにより上記課題を達成することが可能であることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明は、気体に含まれる標的成分の試料に対する透過度を測定するガス透過セルであって、第1面及び第2面と、当該第1面から第2面に貫通する開口部とを有し、上記開口部を閉塞し、かつ上記試料が上記第1面側及び第2面側の両面に対して露出するように上記試料を固定する試料固定治具と、上記開口部を上記第2面側から包囲する凹部を有し、当該凹部の内側に検出ガスを供給する検出チャンバーと、を備え、上記試料固定治具は、上記検出チャンバーに着脱可能に取り付けられる、ガス透過セルである。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、様々な形状の試料におけるガス透過度が測定可能なガス透過セルを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本実施形態に係るガス透過度測定装置の一例を示す概略図である。
図2】本実施形態に係るガス透過セルの一例を示す部分拡大図である。
図3】本実施形態に係るガス透過セルの一例を示す部分拡大図である。
図4】本実施形態に係るガス透過セルの一例を示す部分拡大図である。
図5】本実施形態に係るガス透過セルの一例を示す部分拡大図である。
図6】本実施形態に係るガス透過セルの一例を示す部分拡大図である。
図7】本実施形態に係るガス透過セルの一例を示す図である。
図8】供給チャンバーを外した、本実施形態に係るガス透過セルの一例を示す図である。
図9】本実施形態に係るガス透過セルの試料の一例を示す図である。
図10】本実施形態に係るガス透過セルの一例を示す図である。
図11】本実施形態に係るガス透過セルの一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
<ガス透過度測定装置200>
以下、本発明の一実施形態について、図1を参照して以下に説明する。図1は、一実施形態に係るガス透過度測定装置200を示す概略図である。図1に示すように、ガス透過度測定装置200は、ガス透過セル100と検出部13とを備えている。ガス透過セル100を収納する収納部(不図示)を備えていてもよい。なお、ガス透過度測定装置200は、ガス透過セル100を収納した状態において、図1における紙面上側に第1面1aと供給チャンバー2とが配置され、紙面下側に第2面1bと検出チャンバー6とが配置されているが、一実施形態に係るガス透過度測定装置では、ガス透過セルは、供給チャンバーと検出チャンバーとの間に試料固定治具が配置されていればよく、例えば、検出チャンバーが供給チャンバーに対して上側に配置されてもよく、試料固定治具を固定した状態で、検出チャンバーと供給チャンバーとが左右に並んで配置されていてもよい。
【0012】
〔ガス透過セル100〕
ガス透過セル100は、試料固定治具1と、供給チャンバー2と、検出チャンバー6と、を備え、供給チャンバー2と、供給チャンバー2に対向するように配置される検出チャンバー6との間に、試料固定治具1を配置し、当該試料固定治具1に試料10を固定する。
【0013】
(試料固定治具1)
図1に示すように、試料固定治具1は、第1面1a、第2面1b、および開口部(なお、開口部の内面を第3面1cとする)、を有する。試料固定治具1は、好ましくは、第1面1aと第2面1bとが互いに平行な平板状の治具(部材)であり、当該板状の治具の中心付近に第1面1aから第2面1bへと貫通する開口部が設けられ、第1面1aの周縁部分にて供給チャンバー2の供給凹部5の開口部を塞ぎ、第2面1bの周縁部分にて検出チャンバー6の凹部9の開口部を塞ぐ。試料固定治具1は検出チャンバー6に着脱可能に取り付けられている。試料固定治具1が検出チャンバー6から着脱可能であることにより、試料の形状や大きさに応じて、試料固定治具1を取り換えればよく、試料専用の測定装置を準備する必要がない。試料固定治具1の材質には、試料よりもガス透過度の低い材質であればよく、例えば、金属およびセラミックス等が挙げられる。
【0014】
図1の例では、試料固定治具1は、第1面1aから第2面1bに貫通(連通)する開口部が設けられている。試料10は開口部を閉塞するように試料固定治具1の開口部に固定されている。試料10と開口部の第3面1cとは隙間なく固定していればよく、例えば、接着剤、グリース、及びシーリング剤(不図示)等を試料10と第3面1cとの隙間に充填してもよい。
【0015】
試料固定治具1は、試料10によって試料固定治具1の開口部1cを閉塞した状態において、その第1面1a側(供給凹部5側)及び第2面1b側(凹部9側)の両面に対して試料10が露出するように、検出チャンバー6から着脱可能に固定されている。この状態において、ガス透過セル100は、試料固定治具1に固定されるガス透過セル100の供給凹部5(第1空間)と凹部9(第2空間)とが隔てられる。
【0016】
上記構成によって、試料固定治具1に固定された試料10は、第1面1a側(供給凹部5側)において、対象ガス(気体,第1ガス)に曝され、同時に第2面1b側(凹部9側)において、検出ガス(第2ガス)に曝されることが可能になる。
【0017】
(供給チャンバー2)
供給チャンバー(ガス供給室)2は、対象ガスが供給される供給凹部5を内側に備える。供給チャンバー2は、供給凹部5によって試料固定治具1の第1面1a側から開口部1hを包囲しつつ、供給凹部5の開口を試料固定治具1によって閉塞するように取り付けられる。
【0018】
対象ガスとして、測定の対象となる標的成分を含む気体が挙げられる。対象ガスの例として、水蒸気、酸素、窒素、ヘリウム、水素、アルゴン、二酸化炭素、一酸化炭素等の無機系ガス;メタン等の有機系ガス;等が挙げられる。
【0019】
供給凹部5には、対象ガスを供給する第1供給口3と、対象ガスを排出する第1排気口4とが設けられている。第1供給口3と第1排気口4はそれぞれ、供給凹部5の上部に設けられていても、側部に設けられていてもよい。また、第1供給口3と第1排気口4はそれぞれ、一つであっても複数であってもよい。
【0020】
図1の例では、供給凹部5の第1供給口3から矢印12aの方向に対象ガスが供給されて、供給凹部5中に対象ガスが充填される。そして、供給凹部5の第1排気口4から矢印12bの方向に対象ガスが排気される。このとき、供給凹部5の内側において、試料固定治具1の第1面1a側に露出している試料10が対象ガスに曝される。図1の例では、ここで、対象ガスが矢印12cの方向に供給される。また、試料10を透過した気体が矢印12dの方向に達する。
【0021】
(検出チャンバー6)
検出チャンバー(検出ガス室)6は、試料固定治具1の第2面1b側から、開口部を包囲する凹部9を含む。検出チャンバー6の凹部9は、試料10を挟んで供給凹部5に対向する位置に設けられる。検出チャンバー6の凹部9の内側に検出ガスが供給される。このとき、検出チャンバー6の凹部9の内側において、試料固定治具1の第2面1b側に露出している試料10が対象ガスに曝される。
【0022】
検出ガスには、対象ガスおよび対象ガスに含まれる標的成分を検出部に運ぶキャリアガスが挙げられる。キャリアガスは、測定の対象となる標的成分を含む対象ガスに対して不活性であれば特に限定されない。キャリアガスの例として、窒素、アルゴン、ヘリウム、酸素等のガスが挙げられる。また、一実施形態に係るガス透過セルを備えるガス透過度測定装置では、凹部9に検出ガスを充填することに代えて、凹部9内を真空状態にして、ガス透過度の評価を行ってもよい。
【0023】
検出チャンバー6の凹部9には、検出ガスを供給する第2供給口7と、検出ガスを排出する第2排気口8とが設けられている。第2供給口7と第2排気口8はそれぞれ、凹部9の下部に設けられていても、側部に設けられていてもよい。また、第2供給口7と第2排気口8はそれぞれ、一つであっても複数であってもよい。
【0024】
図1の例では、凹部9の第2供給口7から矢印12eの方向に検出ガスが供給されて、凹部9中に検出ガスが充填される。そして、凹部9の第2排気口8から矢印12fの方向に検出ガスが排気される。第2排気口8は、ガス透過度測定装置200の検出部に接続されている。図1の例では、矢印12cの方向に供給され、試料10を透過した対象ガスが矢印12dの方向に到達し、検出ガスと共に第2排気口8を経由して、検出部13に達する。
【0025】
〔試料10〕
試料10は、平坦な試料であってもよく、立体的な試料でもよい。試料10の形状に応じて試料固定治具1を取り換えればよく、ガス透過セル100の容積を変更せずに、異なる形態の試料を測定することができる。また、試料固定治具1の交換は簡便かつ迅速に行うことができ、コストが安く、様々な形状の試料を測定することができる。さらに、本実施形態に係るガス透過セル100によって、製品自体のガス透過度と製品を構成する部材のガス透過度との比較が可能である。
【0026】
〔検出部13〕
検出部(検出器)13は、試料を透過して検出チャンバー6に達した標的成分を検出する。すなわち、検出部13は、供給凹部5から試料を透過して凹部9に達した対象ガス(目的ガス)を検出する。検出部13としては、キャリアガスによって運ばれる目的ガスを検出できるものであればよく、検出対象に応じて公知の検出手段を適宜選択すればよい。例えば、目的ガスとして水蒸気を検出する場合には、公知の水分計を検出部13として用いることができる。その他、検出部には、例えば、大気圧イオン化質量分析計、質量分析計、酸素濃度計、露点計、ガスセンサー、検知管、及び赤外吸収分光計等の検出装置を挙げることができる。検出部は、さらに、検出ガスに含まれる標的成分を採取するためのガス捕集キットを備え、ガス捕集キットにより捕集した標的成分をGC-MS(ガスクロマトグラフィー-質量分析)、HPLC(高速(高圧)液体クロマトグラフィー)、及びIC(イオンクロマトグラフィー)によって検出してもよい。
【0027】
ガス透過度測定装置200は、ガス透過セル100を備えている。ガス透過度測定装置200は、その内部にガス透過セル100を収納した状態において、試料10を透過した対象ガス(目的ガス)を検出部13により検出し、試料の目的ガスに対する透過度を測定する。ガス透過度測定装置200は、ガス透過セル100を収納した状態において、供給凹部5及び凹部9の内側の温度および湿度等を調製する調整部(不図示)を備えていてもよい。
【0028】
ガス透過度測定装置200によれば、ガス透過セル100において、試料の形状や大きさに応じて、試料固定治具を取り換えればよく、試料専用の測定装置を準備する必要がない。したがって、汎用性が高い。
【0029】
ガス透過度測定装置200は、第1面1a側から開口部1cを包囲する供給凹部5を開放するように、供給チャンバー2と、試料を固定した試料固定治具1を固定した検出チャンバー6との少なくとも一方を移動させるための移動部(不図示)を備えていてもよい。移動部を備えることによって、試料に負荷を加えながら試料のガス透過度を測定するときに、ガス透過セルから供給チャンバーを容易に取り外し易い。
【0030】
<ガス透過度測定方法>
本実施形態に係るガス透過度測定方法は、ガス透過セル100に対象ガスを供給し、試料を透過して検出チャンバー6に達した標的成分を検出する検出工程を含む。ガス透過セル100を用いることによって、様々な形状の試料のガス透過度の測定を行うことができる。従って、本発明の一実施形態に係るガス透過セルを用いて、ガス透過度を測定する方法も、本発明の範疇である。
【0031】
<別の実施形態に係る試料固定治具>
本実施形態に係るガス透過セルおよびガス透過セルが備えている試料固定治具は、上述の実施形態に限定されない。以下に試料固定治具への固定の一例について、図2~6を参照して以下に説明する。図2~6は、試料が固定された試料固定治具を示す概略図である。
【0032】
〔試料固定治具11〕
図2の例では、円筒形状を有する試料20の側面が、試料固定治具11の開口部11hの内側に固定されている。すなわち、試料20が試料固定補助部材14によって、試料固定治具11の第3面11cに固定されている。試料固定治具11の第1面11aが供給凹部5側に露出し、第2面11bが凹部9側に露出する。当該固定により、ガス透過セル100の供給凹部5と凹部9とが隔てられる。
【0033】
(試料固定補助部材14)
試料固定補助部材14は、試料固定治具の開口部11hの第1面11a、第2面11b、および第3面側11cの何れかに試料20を固定する。試料固定補助部材14の例として、パッキン、開口部11cに嵌合可能な金属板等の板が挙げられる。
【0034】
図2の例において、試料固定治具11の第3面11cは、第2面11bに対して鋭角に傾斜している。この構成により、試料20が試料固定補助部材14を介して第3面11cに固定し易くなる。
【0035】
また、開口部11hにおける第3面11cには、タップ(ねじ山、不図示)が設けられており、当該タップに螺合できるように、試料固定補助部材14の側面部にねじ山(不図示)が設けられていてもよい。このような、試料固定補助部材14を用いることによって、試料を試料固定治具11により強固に固定することができ、開口部11hを試料20によって閉塞することができる。また、例えば、開口部11hを構成する第3面11cと試料固定補助部材14の側面とは、試料固定補助部材14で開口部11hを閉塞したときにおいて、第3面11cと試料固定補助部材14の側面とが互いに吸着し、これによりシールされるように高い面精度で互いの面が成形されていてもよい。
【0036】
〔試料固定治具21〕
図3の例として、試料固定治具21は、試料固定補助部材24によって、第1面21a側において試料30が供給凹部5の内側に配置されるように試料30を固定し、このとき、第2面21b側に向かって開口部21hの内側から試料30が露出する。試料30は、試料固定治具21の開口部21hを覆うように固定され、ガス透過セル100の供給凹部5(第1面21a側)と凹部9(第2面21b側)とが隔てられる。
【0037】
(試料固定補助部材24)
図3の例では、試料固定補助部材24によって、試料固定治具21の第1面21aに固定されている。試料固定補助部材24は、試料30を対象ガスに曝すことができるように、環状構造を有する金属板等であり得る。試料固定補助部材24と試料固定治具21とは、試料固定補助部材24と試料30との間に環状のパッキン24aを配置し、試料固定治具21(第1面21a)と試料30の間に環状のパッキン24bを配置し状態にて試料30を挟み、ボルト(補助部材固定具)15を締めることによって試料30を挟みこむように試料固定治具21に固定する。
【0038】
〔試料固定治具31〕
図4の例として、試料固定治具31では、金属板等の試料固定補助部材34と試料固定治具31とによって試料40を挟み、ボルト(補助部材固定具)25を締めることによって試料40を挟みこむ。試料40はガスケット等の環状構造を有する試料であり、環状構造における外周面が試料固定治具31の溝部31i側において露出し、環状構造における内周面が試料固定治具31の第3面31l側において露出するように試料40が固定される。また、当該固定により、試料固定補助部材34と試料40とによって、開口部31hが閉塞される。これにより、ガス透過セル100の供給凹部5と凹部9とが隔てられる。
【0039】
試料固定補助部材34において、ボルト25によって試料固定治具31の下段面31eに固定されている。補助部材固定具25は、試料40と段差面31dとの間に設けられている。試料40は下段面31e上に設けられている。試料固定治具31に溝部31iを設けることによって、試料40の少なくとも一部が試料固定治具31の溝部31i内側に固定されるため、試料40に厚みがあったとしても、当該試料40がガス透過セルにおける供給チャンバーと干渉することを防ぐことができる。
【0040】
〔試料固定治具41〕
図5の例として、試料固定治具41には、Oリング50とブラインドナット44とボディー部54とを備えたOリング式継手が、例えば、溶接によって固定されている。
【0041】
試料固定治具41では、Oリング50をOリング継手のボディー部54に配置し状態で、試料固定治具41に固定し、ブラインドナット44によりOリング50の内側を塞いだ状態でガス透過評価を行うことができる。ここで、Oリング50は、試料固定治具41の第2面41b側に対して露出し、試料固定治具41の開口部41hから導入される検出ガスに曝されるように固定される。また、Oリング50は、ブラインドナット44により被覆された状態で、ボディー部54と、ブラインドナット44との間隙において、試料固定治具41の第1面41a側に対して露出し、対象ガスに曝される。すなわち、Oリング式継手を製品として使用し得る状態に置き、Oリング式継手における(i)Oリング50自身から透過した対象ガス、(ii)ボディー部54とOリング50との隙間からリーク(漏出)した対象ガス、及び(iii)ブラインドナット44とOリング50との隙間からリークした対象ガスの合計を検出することができ、検知された対象ガスの合計により、対象ガスの透過及びリークの程度を評価することができる。よって、実際の使用環境でのガス透過の評価を行うことができる。
【0042】
また、例えば、ガス透過評価試験中に供給チャンバー2を開放し、ブラインドナット44に対する締め付けトルクを変更することによって、当該トルクの変更に伴う、Oリング式継手における対象ガスの透過及びリークの程度の変化を評価することができる。
【0043】
〔試料固定治具51〕
図6の例として、試料固定治具51は、開口を有するブラインドナット44によりOリング50を被覆し、当該ブラインドナット44の開口をリーク試験材16により閉塞した状態でガス透過度の評価を行う。ここで、Oリング50は、試料固定治具51の第2面51b側に対して露出し、検出ガスに曝されるように固定される。また、Oリング50は、ブラインドナット44により被覆された状態で、ボディー部54と、ブラインドナット44との間隙において、試料固定治具51の第1面51a側に対して露出し、対象ガスに曝される。すなわち、Oリング式継手を製品として使用し得る状態に置き、(i)Oリング50自身から透過した対象ガス、(ii)ボディー部54とOリング50との隙間からリーク(漏出)した対象ガス、及び(iii)ブラインドナット44とOリング50との隙間からリークした対象ガスの合計を検出することができ、検知された対象ガスの合計により、対象ガスの透過及びリークの程度を評価することができる。よって、実際の使用環境でのガス透過の評価を行うことができる。
【0044】
また、リーク試験材16を設け、例えば、ガス透過評価試験中に供給チャンバー2を開放し、ブラインドナット44に対する締め付けトルクを変更することによって、試料固定治具41の場合と同様に、当該トルクの変更に伴う、Oリング式継手における対象ガスの透過及びリークの程度の変化を評価することができる。なお、リーク試験材16の例として、金属棒やガラス棒等の透過が無い試験材が挙げられる。
【0045】
<別の実施形態に係るガス透過セル>
試料固定治具1は、供給チャンバー2および検出チャンバー6それぞれと、気密性を有して固定されていればよい。例えば、図7の例では、供給チャンバー2の周縁部分および検出チャンバー6の周縁部分において、複数の治具固定部材17によって、試料固定治具1が固定されている。
【0046】
図7の例は、2つの治具固定部材17は、供給チャンバー2の外部から供給凹部5の側壁部を貫通し、供給チャンバー2と試料固定治具1とを固定するボルトであり得る。また、2つの治具固定部材17は、検出チャンバー6における凹部9の側壁部を貫通し、検出チャンバー6と試料固定治具1とを固定するボルトであり得る。ボルト以外の治具固定部材の例として、例えば、クランプ等が挙げられる。治具固定部材17で試料固定治具1を固定することにより、簡便かつ高い気密性で供給チャンバー2および検出チャンバー6に固定することができる。
【0047】
また、図8の例は、検出チャンバー6に治具固定部材17によって試料固定治具1が固定されている。試料がガス透過セル100に固定されている状態で、供給チャンバー2は取り外されている(開放されている)。供給チャンバー2は取り外されている(開放されている)ときに、後述のように、試料10に負荷をかけることによって、負荷を与えた後の試料10のガス透過度を測定することができる。
【0048】
また、ガス透過セル100に試料が固定された状態で供給チャンバー2が取り外し可能であることによって、大気に曝露したときの試料のガス透過を評価することができる。また、大気に曝露していない試料のガス透過と比較もすることができる。
【0049】
<ガス透過セル100によるシリンジ60の固定>
本実施形態に係るガス透過セル100は、図9に示すシリンジ(試料)60のガス透過を測定することができる。従来のガス透過セルまたはガス透過度測定装置では、シリンジ全体のガス透過度しか測定することができなかった。また、従来技術では、後述するバックグラウンド測定を行うことができなかった。
【0050】
(シリンジ60)
本実施形態に係るガス透過セル100の場合、図10の例のように、プランジャー63を外した状態のシリンジ60(シリンジ本体62、キャップ65および接続部66)のガス透過を評価することができる。接続部66として、例えば、シリンジ針等、樹脂製またはガラス製の接続部が挙げられ、例えば、樹脂製またはガラス製の接続部はシリンジ60と一体成形されていてもよく、接続部66が樹脂製である場合、キャップ65と螺合するねじ山が設けられていてもよい。また、図11の例のように、キャップ65を外した状態のシリンジ60(シリンジ本体62、プランジャー63および接続部66)のガス透過を評価することができる。また、本実施形態に係るガス透過セル100を用いることによって、従来よりも短時間でシリンジのガス透過評価を行うことができる。
【0051】
図10および図11の例は、シリンジ本体62の側面が、試料固定治具61の開口部61hの内側に固定されている。すなわち、シリンジ60がゴムパッキン等の試料固定補助部材64によって、試料固定治具61の第3面61cに固定されている。
【0052】
また、試料固定治具61に固定するシリンジ60の向きや固定位置を変更することによって、ガス透過を評価したい部位のガス透過度を測定することができる。
【0053】
<別の実施形態に係るガス透過度測定方法>
なお、一実施形態に係るガス透過度測定方法は、上述の実施形態に限定されない。例えば、別の本実施形態に係るガス透過度測定方法では、検出工程において、試料に負荷を加えつつ、検出チャンバー6内に達した標的成分を測定してもよい。
【0054】
図8に示すように、別の実施形態に係るガス透過度測定方法では、ガス透過度測定装置200内において、ガス透過セル100における供給チャンバー2が取り外されている(開放されている)。これにより、ガス透過セル100に固定されている試料10の、第1面1a側に露出している部分に負荷を与えることができる。負荷の例として、トルクの変更;振動、傷、光、熱等の付与;塩水、有機溶媒、熱水、腐食性液体等の液体の浸漬;氷、金属等の固体の接触;等が挙げられる。
【0055】
すなわち、別の本実施形態に係るガス透過度測定方法では、検出工程において試料10に負荷を加えつつ、検出チャンバー6内に達した標的成分を測定することによって、様々な環境条件下での試料の多段階評価が可能である。例えば、試料に負荷を与えることに伴う形状変化に伴うガス透過度の変化を測定することができる。
【0056】
〔さらに別の実施形態に係るガス透過度測定方法〕
さらに別の本実施形態に係るガス透過度測定方法は、検出工程の他の工程を含んでいてもよい。他の工程として、バックグラウンド測定工程を包含する。
【0057】
(バックグラウンド測定工程)
バックグラウンド測定工程は、試料を対象ガスに曝露する前に、試料を第1面1a側及び第2面側の少なくとも一方から検出ガスに曝露し、検出チャンバー6内に供給される検出ガスに含まれる標的成分の量を測定する。バックグラウンド測定工程を行うことによって、ガス透過測定の精度が向上する。
【0058】
〔まとめ〕
本実施形態に係るガス透過セルは、気体に含まれる標的成分の試料に対する透過度を測定するガス透過セルであって、第1面及び第2面と、当該第1面から第2面に貫通する開口部とを有し、上記開口部を閉塞し、かつ上記試料が上記第1面側及び第2面側の両面に対して露出するように上記試料を固定する試料固定治具と、上記開口部を上記第2面側から包囲する凹部を有し、当該凹部の内側に検出ガスを供給する検出チャンバー(検出ガス室)と、を備え、上記試料固定治具は、上記検出チャンバーに着脱可能に取り付けられる。
【0059】
本実施形態に係るガス透過セルは、上記開口部の内側、第1面側、及び第2面側の何れかに上記試料を固定するための試料固定補助部材をさらに備えていてもよい。
【0060】
本実施形態に係るガス透過セルは、上記気体を供給する供給チャンバー(ガス供給室)をさらに備え、当該供給チャンバーは、その内側に上記気体が供給される供給凹部を有し、上記第1面側から上記開口部を包囲し、当該供給凹部を閉塞するようにして、当該供給チャンバーを着脱可能に取り付けてもよい。
【0061】
本実施形態に係るガス透過セルは、上記試料固定治具が、上記検出チャンバーおよび上記供給チャンバーの少なくとも1つに治具固定部材によって固定されていてもよい。
【0062】
本実施形態に係るガス透過セルにおいて、上記試料はシリンジであってもよい。
【0063】
また、本実施形態に係る試料固定治具は、上記ガス透過セルに着脱可能に取り付けられる試料固定治具であって、第1面及び第2面と、当該第1面から第2面に貫通する開口部とを有し、上記開口部を閉塞し、かつ上記試料が上記第1面側及び第2面側の両面に対して露出するように上記試料を固定する。
【0064】
また、本実施形態に係るガス透過度測定装置は、上記ガス透過セルと、上記試料を透過して上記検出チャンバーに達した標的成分を検出する検出部と、を備えている。
【0065】
本実施形態に係るガス透過度測定方法は、上記ガス透過セルに上記気体を供給し、上記試料を透過して上記検出チャンバーに達した上記標的成分を検出する検出工程を含む。
【0066】
本実施形態に係るガス透過度測定方法は、上記検出工程において、上記試料に負荷を加えつつ、上記検出チャンバー内に達した標的成分を測定してもよい。
【0067】
本実施形態に係るガス透過度測定方法は、上記試料を上記気体に曝露する前に、上記試料を上記第1面側及び上記第2面側の両側から上記検出ガスに曝露し、上記検出チャンバー内に供給される検出ガスに含まれる標的成分の量を測定するバックグラウンド測定工程を含んでいてもよい。
【0068】
本実施形態に係るガス透過度測定装置は、上記ガス透過セルを収納する収納部と、上記第2面側から上記開口部を包囲する上記供給凹部を開放するように上記供給チャンバーを移動させる移動部と、上記試料を透過して上記検出チャンバーに達した標的成分を検出する検出部と、を備えていてもよい。
【0069】
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。さらに、各実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を組み合わせることにより、新しい技術的特徴を形成することができる。
【産業上の利用可能性】
【0070】
本発明は、ガス透過度の測定を必要とする、食品、医薬、有機ELデバイス、太陽電池等の各分野において広範囲に利用することができる。
【符号の説明】
【0071】
1、11、21、31、31a、31b、41、51、61 試料固定治具
1a、11a、21a、31j、41a、51a、61a 第1面
1b、11b、21b、31k、41b、51b、61b 第2面
1c、11c、21c、31l、41c、51c、61c 第3面
1h、11h、21h、31h、41h、51h、61h 開口部
2 供給チャンバー(ガス供給室)
3 第1供給口
4 第1排気口
5 供給凹部
6 検出チャンバー(検出ガス室)
7 第2供給口
8 第2排気口
9 凹部
10、20、30、40、50 試料
12a~12f ガス
13 検出部
14、24、34、44 試料固定補助部材
15、25 補助部材固定具
16 リーク試験材
17 治具固定部材
31d 段差面
31e 下段面
31i 溝部
54 ボディー部
60 シリンジ(試料)
62 シリンジ本体
63 プランジャー
65 キャップ
66 接続部
100 ガス透過セル
200 ガス透過度測定装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11