(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023166057
(43)【公開日】2023-11-21
(54)【発明の名称】表示装置
(51)【国際特許分類】
B60K 35/00 20060101AFI20231114BHJP
G09G 5/36 20060101ALI20231114BHJP
G09G 5/00 20060101ALI20231114BHJP
G09G 5/02 20060101ALI20231114BHJP
【FI】
B60K35/00 A
G09G5/36 520P
G09G5/00 510Z
G09G5/02 B
G09G5/36 510B
G09G5/36 520C
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022076807
(22)【出願日】2022-05-09
(71)【出願人】
【識別番号】000231512
【氏名又は名称】日本精機株式会社
(72)【発明者】
【氏名】佐原 祐介
【テーマコード(参考)】
3D344
5C182
【Fターム(参考)】
3D344AA21
3D344AA30
3D344AB01
3D344AC25
5C182AA02
5C182AA03
5C182AA05
5C182AB15
5C182AB25
5C182AB31
5C182AB33
5C182AC03
5C182AC35
5C182BA14
5C182BA47
5C182CA11
5C182CA21
5C182CB04
5C182CB11
5C182CB44
5C182CC27
(57)【要約】
【課題】視認される情報意匠画像の傾斜の度合いを強調することで、視認者が十分な奥行き感を実感できるようにする。
【解決手段】車両1の前方風景と重なる虚像Vとして視認者5に視認される重畳画像を表示するHUD装置10であって、重畳画像の表示制御を行い、重畳画像の表示領域内において車両1の前方路面よりも視認者5側に立ち上がって視認される情報意匠画像Cを表示可能な制御部31及び表示部20を備え、情報意匠画像Cは、下側から上側に向かって幅狭となる先細り形状の第1領域C1と、先細り形状の第1領域C1の左上部及び右上部に位置する第2領域C2と、を含み、制御部31及び表示部20は、第1領域C1の背面に、傾きを強調するための傾き強調画像Fを裏当て状態にて表示する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の前方風景と重なる虚像として視認者に視認される重畳画像を表示する表示装置であって、
前記重畳画像の表示制御を行い、前記重畳画像の表示領域内において前記車両の前方路面よりも前記視認者側に立ち上がって視認される情報意匠画像を表示可能な表示制御手段を備え、
前記情報意匠画像は、
下側から上側に向かって幅狭となる先細り形状の第1領域と、
前記先細り形状の第1領域の左上部及び右上部に位置する第2領域と、
を含み、
前記表示制御手段は、
前記第1領域の背面に、傾きを強調するための傾き強調画像を裏当て状態にて表示する
ことを特徴とする表示装置。
【請求項2】
前記傾き強調画像は、
前記第1領域の前記情報意匠画像に対し、色度、明度、及び彩度のうち、少なくとも1つが異なる
ことを特徴とする請求項1記載の表示装置。
【請求項3】
前記第1領域は、
前記先細り形状をなす左斜辺及び右斜辺を有しており、
前記傾き強調画像は、
上底、下底、左脚、及び右脚を有する略台形形状を備えており、
前記下底に対する前記左脚の傾斜角は、前記第1領域において前記左斜辺が水平線となす傾斜角以下であり、
前記下底に対する前記右脚の傾斜角は、前記第1領域において前記右斜辺が水平線となす傾斜角以下である
ことを特徴とする請求項1又は請求項2記載の表示装置。
【請求項4】
前記傾き強調画像は、
下部から上部へ向かって段階的に階調が異なる複数の領域として表示される
ことを特徴とする請求項1又は請求項2記載の表示装置。
【請求項5】
前記情報意匠画像は、
前記第1領域の前記傾き強調画像と前記第2領域との境界が、ブラー処理によりぼかし表示される
ことを特徴とする請求項1又は請求項2記載の表示装置。
【請求項6】
前記傾き強調画像は、
少なくとも一部分が、地形図における地形情報に対応した形状又は色彩を有する
ことを特徴とする請求項1又は請求項2記載の表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、視認者に対して所望の表示を行う表示装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば特許文献1に記載の表示装置が知られている。この表示装置は、
視認者から車両の前方風景と重なる虚像として視認される重畳画像を表示する。その際、ユーザにより設定された案内経路や車両の現在地近傍の地図情報等を示す情報意匠画像(第2画像)を、車両の前方路面よりも視認者側に立ち上がるように傾斜して視認されるように表示することで、奥行き感を現出させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来の表示装置では、視認者によっては、情報意匠画像の傾斜の度合いが弱く視認され、十分な奥行き感を実感できない場合があるという問題点があった。
【0005】
そこで、本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、視認される情報意匠画像の傾斜の度合いを強調することで視認者が十分な奥行き感を実感できる表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、車両1の前方風景と重なる虚像Vとして視認者5に視認される重畳画像を表示する表示装置10であって、前記重畳画像の表示制御を行い、前記重畳画像の表示領域内において前記車両1の前方路面よりも前記視認者5側に立ち上がって視認される情報意匠画像Cを表示可能な表示制御手段31,20を備え、前記情報意匠画像Cは、下側から上側に向かって幅狭となる先細り形状の第1領域C1と、前記先細り形状の第1領域C1の左上部及び右上部に位置する第2領域C2と、を含み、前記表示制御手段31,20は、前記第1領域C1の背面に、傾きを強調するための傾き強調画像Fを裏当て状態にて表示することを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、視認される情報意匠画像の傾斜の度合いを強調することで視認者が十分な奥行き感を実感できる表示装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の一実施形態によるヘッドアップディスプレイ(HUD)装置の車両への搭載態様を表す説明図。
【
図4】
図3より第1領域、第2領域、傾き強調画像を抽出して表す説明図。
【
図5】
図4より傾き強調画像のみを抽出して表す説明図。
【
図6】傾き強調画像の左脚・右脚の傾斜を第1領域の左斜辺・右斜辺の傾斜よりも緩くした場合の、
図4に相当する説明図。
【
図7】
図6より傾き強調画像のみを抽出して表す説明図。
【
図8】コンテンツ画像のうち第2領域に含まれる画像を切り欠いた態様とした比較例を表す説明図。
【
図9】傾き強調画像にて階調表現を用いる変形例における、運転者により視認される虚像を表す説明図。
【
図10】
図9より第1領域、第2領域、傾き強調画像を抽出して表す説明図。
【
図12】傾き強調画像に地形図に類似の形状・色彩表現を組み込む変形例における、運転者により視認される虚像を表す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の一実施形態に係る表示装置について図面を参照して説明する。
【0010】
本実施形態に係る表示装置は、
図2に示す車両用表示システム100に含まれるHUD(Head-Up Display)装置10である。HUD装置10は、
図1に示すように、車両1のダッシュボード2の内部に設けられ、車両1に関する情報(以下適宜、「車両情報」と言う)だけでなく、車両情報以外の情報も統合的に運転者5に報知する。なお、車両情報は、車両1自体の情報だけでなく、車両1の運行に関連した車両1の外部の情報も含む。
【0011】
車両用表示システム100は、車両1内において構成されるシステムであり、HUD装置10と、周辺情報取得部40と、前方情報取得部50と、カーナビゲーション(カーナビ)装置60と、ECU(Electronic Control Unit)70と、操作部80と、を備える。
【0012】
<HUD装置>
HUD装置10は、
図1に示すように、コンバイナ処理されたフロントガラス3に向けて表示光Lを射出する。フロントガラス3で反射した表示光Lは、運転者5側へと向かう。運転者5は、視点をアイボックス4内におくことで、フロントガラス3の前方に、表示光Lが表す画像を虚像Vとして視認することができる。つまり、HUD装置10は、フロントガラス3の前方位置に虚像Vを表示する。これにより、運転者5は、虚像Vを前方風景と重畳させて観察することができる。
【0013】
HUD装置10は、
図2に示す表示部20及び制御装置30と、図示しない反射部とを備える。
【0014】
<表示部>
表示部20は、制御装置30の制御により、虚像Vとして運転者5に視認される重畳画像を表示する。
表示部20は、例えば、TFT(Thin Film Transistor)型のLCD(Liquid Crystal Display)や、LCDを背後から照明するバックライト等を有する。バックライトは、例えばLED(Light Emitting Diode)から構成されている。
表示部20は、制御装置30の制御の下で、バックライトに照明されたLCDが画像を表示することにより表示光Lを生成する。生成した表示光Lは、反射部で反射した後に、フロントガラス3に向けて射出される。
【0015】
<反射部>
反射部は、例えば、折り返しミラーと凹面鏡の二枚の鏡から構成される。折り返しミラーは、表示部20から射出された表示光Lを折り返して凹面鏡へと向かわせる。凹面鏡は、折り返しミラーからの表示光Lを拡大しつつ、フロントガラス3に向けて反射させる。これにより、運転者5に視認される虚像Vは、表示部20に表示されている画像が拡大されたものとなる。
【0016】
なお、以下では、虚像Vとして運転者5に視認される画像を表示部20が表示することを「重畳画像を表示する」とも言う。また、制御装置30が表示部20の表示制御を行うことを「重畳画像の表示制御を行う」とも言う。また、表示部20は、重畳画像を表示することができれば、LCDを用いたものに限られず、OLED(Organic Light Emitting Diodes)、DMD(Digital Micro mirror Device)、LCOS(Liquid Crystal On Silicon)などの表示デバイスを用いたものであってもよい。
【0017】
<制御装置>
制御装置30は、HUD装置10の全体動作を制御するマイクロコンピュータからなり、制御部31と、ROM32と、RAM33とを備える。また、制御装置30は、図示しない構成として、駆動回路や、車両1内の各種システムと通信を行うための入出力回路を備える。なお、制御装置30や制御部31の構成は、以下に説明する機能を充足する限りにおいては任意である。
【0018】
<ROM及びRAM>
ROM32は、動作プログラムや各種の画像データを予め記憶する。RAM33は、各種の演算結果などを一時的に記憶する。
【0019】
<制御部>
制御部31は、表示部20を駆動制御する。例えば、制御部31は、CPU31aで表示部20のバックライトを駆動制御し、CPU31aと協働して動作するGDC31bで表示部20のLCDを駆動制御する。制御部31及び表示部20が表示制御手段の一例である。
【0020】
制御部31は、ROM32に記憶された動作プログラムを実行するCPU31aと、CPUと協働して画像処理を実行するGDC(Graphics Display Controller)31bとを備える。
GDC31bは、例えば、GPU(Graphics Processing Unit)、FPGA(Field-Programmable Gate Array)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)等から構成されている。特に、ROM32には、後述の表示制御を行うための動作プログラムが格納されている。
【0021】
<重畳画像の表示>
制御部31のCPU31aは、GDC31bと協働して、ROM32に記憶された各種の画像データに基づき、重畳画像の制御を行う。GDC31bは、CPU31aからの表示制御指令に基づき、表示部20の表示動作の制御内容を決定する。GDC31bは、表示部20に表示する1画面を構成するために必要な画像パーツデータをROM32から読み込み、RAM33へ転送する。
また、GDC31bは、RAM33を使って、画像パーツデータやHUD装置10の外部から通信により受け取った各種の画像データを元に、1画面分の絵データを作成する。そして、GDC31bは、RAM33で1画面分の絵データを完成させたところで、画像の更新タイミングに合わせて、表示部20に転送する。これにより、表示部20に虚像Vとして運転者5に視認される重畳画像が表示される。また、虚像Vとして視認される画像を構成する各画像には予めレイヤが割り当てられており、制御部31は、各画像の個別の表示制御が可能となっている。
【0022】
なお、CPU31aによるコンテンツ画像の表示制御については、後述する。
【0023】
<各部との通信制御>
制御部31のCPU31aは、周辺情報取得部40、前方情報取得部50、カーナビ装置60、ECU70、操作部80の各々と通信を行う。当該通信としては、例えば、CAN(Controller Area Network)、Ethernet、MOST(Media Oriented Systems Transport)、LVDS(Low Voltage Differential Signaling)などの通信方式が適用可能である。
【0024】
周辺情報取得部40は、車両1の周辺(外部)の情報を取得するものであり、車両1とワイヤレスネットワークとの通信(V2N:Vehicle To cellular Network)、車両1と他車両との通信(V2V:Vehicle To Vehicle)、車両1と歩行者との通信(V2P:Vehicle To Pedestrian)、車両1と路側のインフラとの通信(V2I:Vehicle To roadside Infrastructure)を可能とする各種モジュールから構成される。つまり、周辺情報取得部40は、車両1と車両1の外部との間でV2X(Vehicle To Everything)による通信を可能とする。
【0025】
例えば、周辺情報取得部40は、WAN(Wide Area Network)に直接アクセスできる通信モジュール、WANにアクセス可能な外部装置(モバイルルータなど)や公衆無線LAN(Local Area Network)のアクセスポイント等と通信するための通信モジュールなどを備え、インターネット通信を行う。また、周辺情報取得部40は、人工衛星などから受信したGPS(Global Positioning System)信号に基づいて車両1の位置を算出するGPSコントローラを備える。これらの構成により、V2Nによる通信を可能とする。
【0026】
また、周辺情報取得部40は、所定の無線通信規格に準拠した無線通信モジュールを備え、V2VやV2Pによる通信を行う。
また、周辺情報取得部40は、路側のインフラと無線通信する通信装置を有し、例えば、安全運転支援システム(DSSS:Driving Safety Support Systems)の基地局から、インフラストラクチャーとして設置された路側無線装置を介して、物体情報や交通情報を取得する。これによりV2Iによる通信が可能となる。
【0027】
この実施形態では、周辺情報取得部40は、自車である車両1(以下適宜、単に「自車1」と称する)の外部に存在する車両、信号機、歩行者などの各種物体の位置、大きさ、属性などを示す物体情報をV2Iにより取得し、制御部31に供給する。なお、物体情報は、V2Iに限られず、V2Xのうち任意の通信により取得されてもよい。
また、周辺情報取得部40は、V2Iにより車両1の周辺道路の位置や形状を含む交通情報を取得し、制御部31に供給する。また、周辺情報取得部40のGPSコントローラからの情報に基づき、制御部31は、自車1の位置を算出する。
【0028】
前方情報取得部50は、例えば、車両1の前方風景を撮像するステレオカメラや、自車1から自車1の前方に位置する物体までの距離を測定するLIDAR(Laser Imaging Detection And Ranging)などの測距センサや、車両1の前方に位置する物体を検出するソナー、超音波センサ、ミリ波レーダ等から構成される。
この実施形態では、前方情報取得部50は、ステレオカメラにより撮像した前方風景画像を示す前方画像データや、測距センサが測定した物体までの距離を示すデータや、その他の検出データをCPU31aに送信する。
【0029】
カーナビ装置60は、人工衛星などから受信したGPS信号に基づいて車両1の位置を算出するGPSコントローラを含む。カーナビ装置60は、地図データを記憶する記憶部を有し、GPSコントローラからの位置情報に基づいて、現在位置近傍の地図データを記憶部から読み出し、ユーザにより設定された目的地までの案内経路を決定する。そして、カーナビ装置60は、現在の車両1の位置や決定した案内経路に関する情報を制御部31に出力する。
【0030】
また、カーナビ装置60は、地図データを参照することにより、車両1の前方の施設の名称・種類や、施設と車両1との距離などを示す情報を制御部31に出力する。地図データでは、道路形状情報(車線、道路の幅員、車線数、交差点、カーブ、分岐路等)、制限速度などの道路標識に関する規制情報、車線が複数存在する場合の各車線についての情報などの各種情報が位置データと対応付けられている。カーナビ装置60は、これらの各種情報を経路案内情報として、制御部31に出力する。
なお、カーナビ装置60は、車両1に搭載されたものに限られず、制御部31との間で有線又は無線により通信を行い、カーナビゲーション機能を有する携帯端末(スマートフォン、タブレットPCなど)により実現されてもよい。
【0031】
ECU70は、車両1の各部を制御するものであり、例えば、車両1の現在の車速を示す車速情報をCPU31aへ送信する。なお、CPU31aは、車速センサから車速情報を取得してもよい。また、ECU70は、エンジン回転数などの計測量や、車両1自体の警告情報(燃料低下や、エンジン油圧異常など)や、その他の車両情報をCPU31aへ送信する。
【0032】
ECU70から取得した情報に基づいて、CPU31aは、GDC31bを介して、表示部20に車速、エンジン回転数、各種警告などを示す車両情報を表示させることが可能となっている。つまり、後述のコンテンツ画像Cの他に、虚像Vの表示領域内に車両情報を示す車両情報画像Eも表示可能となっている(後述の
図3参照)。
【0033】
操作部80は、運転者5による各種操作を受け付けるものであり、受け付けた操作内容を示す信号を制御部31に供給する。例えば、操作部80は、運転者5による、虚像Vの表示モードの切替操作などを受け付ける。
【0034】
<コンテンツ画像の表示>
本実施形態の特徴である、CPU31aによるコンテンツ画像の表示制御について、以下に順を追って説明する。
【0035】
制御部31は、例えば、操作部80が所定の操作を受け付けたことを契機に、
図3に示すように、虚像Vを表示する。コンテンツ画像Cは、虚像Vの表示領域内において視認者側に立ち上がって視認される態様(例えば、視認者に正対して視認される態様)の画像である。コンテンツ画像Cが情報意匠画像の一例である。制御部31は、カーナビ装置60からの経路案内情報に基づき、コンテンツ画像Cの表示制御を行う。
【0036】
<表示位置及び表示距離の制御>
このとき、
図3において虚像Vが示している実線の枠は、虚像Vの表示領域を示し、コンテンツ画像Cは、当該表示領域内に虚像として視認される画像である。これは、虚像Vとして運転者5に視認される重畳画像を表示する表示部20において、当該重畳画像の表示領域内にコンテンツ画像が表示されることと同義である。制御部31は、虚像Vの表示領域内におけるコンテンツ画像Cの表示位置と、コンテンツ画像Cの表示距離とを制御する。
【0037】
表示位置の制御とは、運転者5から見て、虚像Vの表示領域内における任意の位置に画像が表示されるように制御部31が表示部20を制御することである。また、表示距離の制御とは、運転者5から見て、コンテンツ画像Cが車両1からどのくらい前方に表示されるかの制御である。つまり、表示距離の制御とは、車両1の前方に所定距離向かった位置にコンテンツ画像Cが視認されるように制御部31が表示部20を制御することである。
【0038】
表示距離の制御については、制御部31が虚像Vの表示領域内におけるコンテンツ画像Cを、奥行きを持たせた態様で表示制御可能であることにより実現される。例えば、当該奥行きを持たせた態様でコンテンツ画像Cを表示するには、ROM32に予め3D画像データを格納しておき、後述の物体情報等から算出可能な、画像の重畳対象となる物体の位置や車両1から当該物体までの距離に基づいて、遠近法(例えば、一点透視図法)を用いてコンテンツ画像Cを描画制御する。
【0039】
また、表示部20の表示面(LCDの表示面や、DMDやLCOSを用いた場合にはスクリーン)を傾けて配置することにより、虚像Vが表示される仮想面(表示部20の表示面に対応する面)を車両1の上下方向に対して前方に傾けて設定することでコンテンツ画像Cに奥行きを持たせてもよい。この場合、運転者5の視点から視認させたい像の前記仮想面への射影を考慮して、制御部31は、コンテンツ画像Cを奥行きを持たせた態様で描画制御すればよい。運転者5の視点位置として、制御部31は、ROM32内に予め格納した想定される視点位置を用いてもよいし、運転者5の視点位置を検出する視点検出部(図示せず)からの視線情報を用いてもよい。
【0040】
この実施形態では、上記のようにコンテンツ画像Cの表示位置と表示距離とを制御可能であることにより、制御部31は、虚像Vの表示領域内にコンテンツ画像Cを表示可能となっている。
【0041】
<パース度>
なおこのとき、実景は、前方路面に沿って運転者5に視認される。このように、前方路面に沿って視認される状態をパース度「100%」とする。一方、前方路面よりも運転者5側に起き上がって視認されるとともに、運転者5と正対して視認される画像をパース度「0%」とする。パース度100%~0%の間の度合は、視認される画像の前方路面から運転者5に向かっての起き上がり度合に対応する。コンテンツ画像Cは、パース度0%で表示される。但し、コンテンツ画像Cは、運転者5側に立ち上がって視認されるものであれば、パース度0%よりも大きい度合のパース度で表示されてもよい。前述した、車両情報画像Eについても、例えば、運転者5と正対して視認されるようにパース度0%で表示される。
【0042】
<コンテンツ画像の詳細>
本実施形態では、上述のような制御部31の制御により表示されるコンテンツ画像Cには、
図3に示すように、俯瞰態様で表した、車両1の現在地近傍の地図情報画像D0と、ユーザがカーナビ装置60により設定した目的地に対応した目的地画像D1と、上記目的地までの案内経路に応じた案内経路画像D2と、矢印画像で表される車両1の現在地情報画像D3と、例えば店舗等の適宜のPOI(Point of interst)を表すPOI画像D4と、が含まれる。
【0043】
またコンテンツ画像Cは、下側から上側に向かって幅狭となる先細り形状の第1領域C1と、その先細り形状の第1領域C1の左上部及び右上部にそれぞれ位置する第2領域C2,C2と、に区分される。明確化のために、
図3からそれら第1領域C1、第2領域C2,C2を(後述の傾き強調画像Fとともに)抜き出して、
図4に示す。
図4及び
図3に示すように、本実施形態では、制御部31の制御により、先細り形状の第1領域C1の背面に、傾きを強調するための傾き強調画像Fが裏当て状態にて表示される。傾き強調画像Fは、第1領域C1におけるコンテンツ画像C(例えば地図情報画像D0、目的地画像D1、案内経路画像D2、現在地情報画像D3等)に対し、色度、明度、及び彩度のうち、少なくとも1つが異なるように表示される。
【0044】
このとき、第1領域C1は、
図4に示すように、前述の先細り形状をなす左斜辺Ca及び右斜辺Cbと上底Ccと下底Cdとを有する、略等脚台形形状を備えている。左斜辺Caが水平線となす傾斜角、言い換えれば下底Cdとなす角はθLであり、右斜辺Cbが水平線となす傾斜角、言い換えれば下底Cdとなす角はθR(この例ではθL≒θR)である。
図4から、さらに傾き強調画像Fのみを抜き出して、
図5に示す。
図5に示すように、傾き強調画像Fは、左脚Faと右脚Fbと上底Fcと下底Fdとを有する、略台形形状を備えている。そして、この例では、下底Fdに対する左脚Faの傾斜角θ1は、
図4に示した、第1領域C1において左斜辺Caが水平線となす傾斜角θLと等しくなっている。同様に、下底Fdに対する右脚Fbの傾斜角θ2は、第1領域C1において右斜辺がCbが水平線となす傾斜角θRと等しくなっている。
【0045】
なお、
図4及び
図5にそれぞれ対応する
図6及び
図7に示すように、傾き強調画像Fにおける左脚Faの傾斜を第1領域C1における左斜辺Caの傾斜よりも緩くし、右脚Fbの傾斜を第1領域C1における右斜辺Cbの傾斜よりも緩くしてもよい。すなわちこの場合、
図7に示す傾き強調画像Fにおける下底Fdに対する左脚Faの傾斜角θ1が、
図6に示す、第1領域C1において左斜辺Caが水平線となす傾斜角θLよりも小さくなり、
図7に示す傾き強調画像Fにおける下底Fdに対する右脚Fbの傾斜角θ2が、
図6に示す、第1領域C1において右斜辺がCbが水平線となす傾斜角θRよりも小さくなる。
【0046】
<実施形態の効果>
以上説明したように、本実施形態のHUD装置10においては、運転者5から車両1の前方風景と重なる虚像Vとして視認される重畳画像が表示される。その際、制御部31及び表示部20により、コンテンツ画像Cが、車両1の前方路面よりも運転者5側に立ち上がるように傾斜して視認されるように表示される。
【0047】
このとき、コンテンツ画像Cは、下側から上側に向かって幅狭になる第1領域C1と、その先細り形状の第1領域C1の左上部及び右上部に位置する第2領域C2と、を含んでいる。そして制御部31及び表示部20は、それら第1領域C1及び第2領域C2のうち、下側から上側に向かって先細り形状となっている第1領域C1の背面に対し傾き強調画像Fを裏当て状態で表示する。これにより、第1領域C1の傾きが特に強調され、視認されるコンテンツ画像Cの傾斜の度合いを強調して表示することができるので、運転者5が十分な奥行き感を実感することができる。
【0048】
なお、単にコンテンツ画像Cの傾きを強調するためだけであれば、例えば
図8に比較例として示すように、(上記のように傾き強調画像Fを設けることなく)コンテンツ画像Cのうち第2領域C2に含まれる画像を切り欠いた態様として先細り形状の第1領域C1に含まれる画像のみを表示する手法も考えられる。
しかしながらこの場合、
図8と
図3とを対比すれば分かるように、上記のように切り欠いた態様とした分、情報を表示可能な面積が減少して表示する情報量が少なくなるという問題が生じる。本実施形態によれば、そのような弊害を回避し、表示する情報量の減少を防止しつつ、コンテンツ画像Cの傾きを強調することができる。
【0049】
また、本実施形態では特に、傾き強調画像Fとそれが裏当てする第1領域C1のコンテンツ画像Cとの間で色度、明度、彩度等に差を設けることにより、互いの区別を容易にすることができ、視認性を向上することができる。
【0050】
また、本実施形態では特に、例えば
図4及び
図5に示したように傾き強調画像Fの左足・右足の傾斜角θ1,θ2を第1領域C1の左斜辺Ca・右斜辺Cbの傾斜角θL,θRと等しくすることで、傾き強調画像Fと第1領域C1との傾きどうしが揃って、見た目に調和のとれた違和感のない画像表示とすることができる。
また、例えば
図6及び
図7に示したように傾き強調画像Fの左足・右足の傾斜角θ1,θ2を第1領域C1の左斜辺Ca・右斜辺Cbの傾斜角θL,θRよりも小さくすることで、傾き強調画像Fのほうがより傾いた態様となるため、奥行き感をさらに強調することができる。
【0051】
なお、本発明は、上記実施形態に限られるものではなく、その趣旨及び技術的思想を逸脱しない範囲内で種々の変形が可能である。以下、そのような変形例を順を追って説明する。上記実施形態と同等の部分には同一の符号を付し、適宜説明を省略又は簡略化する。
【0052】
(1)傾き強調画像において階調表現を用いる場合
すなわち例えば、上記
図3、
図4、
図5にそれぞれ対応する、
図9、
図10、
図11に示すように、傾き強調画像Fを、下部から上部へ向かって段階的に階調が異なる複数の領域として表示してもよい。図示の例では、下部から上部へ向かって、領域F1、領域F2、領域F3の順となる3つの領域に区分して表示されている。
【0053】
本変形例によれば、傾き強調画像Fにおいて複数の領域F1,F2,F3で諧調を段階的に異ならせることで、傾き強調画像F自体を奥行きを感じる表示態様とすることができ、より奥行き感を強調することができる。
【0054】
(2)傾き鏡像画像の境界をブラー処理する場合
すなわち、詳細な図示を省略するが、コンテンツ画像Cにおいて、第1領域C1の傾き強調画像Fと第2領域C2との境界部分領域(言い換えれば、例えば
図5における左斜辺Caを挟んだ左側領域と右側領域、及び、右斜辺Cbを挟んだ左側領域と右側領域)を、ブラー処理によりぼかし表示するようにしてもよい。
【0055】
本変形例によれば、傾き強調画像Fと第2領域C2との境界をぼかして曖昧にすることで、傾き強調画像Fとその裏当て対象となる第1領域C1のコンテンツ画像Cとの切り分けが明確になり、違和感なく表示を重畳することができる。
【0056】
(3)地形図に類似の形状・色彩表現を組み込む場合
すなわち例えば、上記
図3、
図5にそれぞれ対応する、
図11、
図12に示すように、傾き強調画像Fの少なくとも一部分を、地形図における地形情報に対応した形状又は色彩を有するようにしてもよい。
図示の例では、傾き強調画像Fの中に、領域Fp、領域Fq、領域Fr、領域Fsが含まれている。例えば、領域Fp及び領域Fqは、地図情報画像D0において小高い丘や台地等、周囲に比べて標高が高いエリアに該当する画像である。これに対応し、それら領域Fp,Fqは、地形図において丘陵や山岳等を表すときの色彩・模様等(この例では複数の等高線及びそれらの間の領域における色分け表示)と同様の形状又は色彩を備えるように、表示される。
また例えば、領域Fr及び領域Fsは、地図情報画像D0において池や湖や水路や川等、何らかの水源・流水等が存在するエリアに該当する画像である。これに対応し、それら領域Fr,Fsは、地形図において池、湖、水路、川、運河、濠、等を表すときの色彩・模様等(この例では複数の等高線及びそれらの間の領域における色分け表示)と同様の形状又は色彩を備えるように、表示される。
【0057】
本変形例によれば、傾き強調画像Fの少なくとも一部を地形情報に対応した形状や色彩とすることで、地形情報と関連性を持たせた色の塗分けとすることができる。この結果、第1領域C1におけるコンテンツ画像Cに機能性を持たせつつ、その奥行き感を強調することができる。
【0058】
(4)その他
例えば、表示光Lの投射対象は、フロントガラス3に限定されず、板状のハーフミラー、ホログラム素子等により構成されるコンバイナであってもよい。また、以上に説明した虚像Vを表示する表示装置としては、HUD装置10に限られない。表示装置は、車両1の運転者5の頭部に装着されるヘッドマウントディスプレイ(HMD:Head Mounted Display)として構成されてもよい。つまり、表示装置は、車両1に搭載されているものに限られず、車両1で使用されるものであればよい。
【0059】
以上の説明では、本発明の理解を容易にするために、公知の技術的事項の説明が適宜省略されている。
【符号の説明】
【0060】
1 車両
2 ダッシュボード
3 フロントガラス
4 アイボックス
5 運転者(視認者)
10 HUD装置(表示装置)
20 表示部(表示制御手段)
30 制御装置
31 制御部(表示制御手段)
31a CPU
31b GDC
32 ROM
33 RAM
40 周辺情報取得部
50 前方情報取得部
60 カーナビゲーション装置
70 ECU
80 操作部
100 車両用表示システム
C コンテンツ画像(情報意匠画像)
C1 第1領域
C2 第2領域
Ca 左斜辺
Cb 右斜辺
Cc 上底
Cd 下底
D0 地図情報画像
D1 目的地画像
D2 案内経路画像
D3 現在地情報画像
D4 POI画像
E 車両情報画像
F 傾き強調画像
F1 領域
F2 領域
F3 領域
Fa 左脚
Fb 右脚
Fc 上底
Fd 下底
Fp 領域
Fq 領域
Fr 領域
Fs 領域
L 表示光
V 虚像
θ1 下底に対する左脚の傾斜角
θ2 下底に対する右脚の傾斜角
θL 左斜辺が水平線となす傾斜角
θR 右斜辺が水平線となす傾斜角