(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023166059
(43)【公開日】2023-11-21
(54)【発明の名称】配筋検査装置、配筋検査方法およびプログラム
(51)【国際特許分類】
G01B 11/00 20060101AFI20231114BHJP
G01B 11/02 20060101ALI20231114BHJP
E04G 21/12 20060101ALI20231114BHJP
【FI】
G01B11/00 H
G01B11/02 H
E04G21/12 105Z
E04G21/12 ESW
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022076810
(22)【出願日】2022-05-09
(71)【出願人】
【識別番号】591036457
【氏名又は名称】三菱電機エンジニアリング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003166
【氏名又は名称】弁理士法人山王内外特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】久柴 拓也
(72)【発明者】
【氏名】平 謙二
【テーマコード(参考)】
2F065
【Fターム(参考)】
2F065AA01
2F065AA04
2F065AA12
2F065AA26
2F065DD03
2F065FF04
2F065FF44
2F065JJ26
2F065QQ08
2F065QQ24
2F065QQ25
2F065QQ31
2F065QQ41
2F065RR06
2F065SS01
(57)【要約】
【課題】 同じ節間隔の鉄筋であっても鉄筋径を求めることができる配筋検査装置、配筋検査方法およびプログラムを提供する。
【解決手段】 配筋検査装置(1)は、鉄筋の長手方向に沿って並んだ複数の画素の画素値からなる走査線を、鉄筋の長手方向に直交する方向の画素ごとに取得し、走査線の画素値を周波数変換した特徴量を算出し、算出した特徴量を基準の特徴量と照合した結果に基づいて、鉄筋と背景との境目位置を特定し、境目位置を用いて第1の鉄筋径を特定し、学習モデルを用いて第2の鉄筋径を推論し、第1の鉄筋径および第2の鉄筋径を用いて計測結果の鉄筋径を判定する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉄筋が配筋された検査領域の三次元情報を取得する三次元情報取得部と、
前記三次元情報を用いて、前記検査領域から検査対象の配筋平面を特定する平面特定部と、
前記検査領域の撮像画像を、検査対象の前記配筋平面に正対した正対化画像に変換する画像変換部と、
前記正対化画像を用いて前記配筋平面における鉄筋位置情報を検出する位置検出部と、
検査対象の前記配筋平面における前記鉄筋位置情報に基づいて前記正対化画像から鉄筋画像を抽出する画像抽出部と、
前記正対化画像において鉄筋の長手方向に沿って並んだ複数の画素の画素値からなる走査線を、鉄筋の長手方向に直交する方向の画素ごとに取得し、前記走査線の画素値を周波数変換した特徴量を算出し、算出した特徴量を基準の特徴量と照合した結果に基づいて鉄筋と背景との境目位置を特定し、前記境目位置を用いて第1の鉄筋径を特定する特徴量算出部と、
前記鉄筋画像が入力されると鉄筋径を出力する学習モデルを用いて第2の鉄筋径を推論する推論部と、
前記第1の鉄筋径および前記第2の鉄筋径を用いて計測結果の鉄筋径を判定する鉄筋径判定部と、
前記計測結果の鉄筋径を表示するための計測結果情報を生成して出力する計測結果情報生成部と、を備えた
ことを特徴する配筋検査装置。
【請求項2】
前記特徴量算出部は、前記正対化画像において鉄筋の長手方向に沿って並んだ複数の画素の輝度値からなる前記走査線を、鉄筋の長手方向に直交する方向の画素ごとに取得し、前記走査線の輝度値を周波数変換した特徴量を算出する
ことを特徴とする請求項1に記載の配筋検査装置。
【請求項3】
前記特徴量算出部は、前記走査線のうち、当該走査線に平行な鉄筋と別の鉄筋とが交差している部分をマスクし、当該マスクを施した前記走査線の画素値を周波数変換して特徴量を算出する
ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の配筋検査装置。
【請求項4】
前記特徴量算出部は、前記走査線を鉄筋の長手方向に沿った複数の区間に分け、前記区間ごとに算出した特徴量を基準の特徴量と照合した結果に基づいて鉄筋と背景との前記境目位置を特定し、前記境目位置を用いて特定した前記第1の鉄筋径を有する鉄筋の本数に基づいて、複数の鉄筋による重ね継手および当該重ね継手の長さを検出する
ことを特徴とする請求項3に記載の配筋検査装置。
【請求項5】
前記鉄筋径判定部は、前記第1の鉄筋径および前記第2の鉄筋径のうち、予め定められた判定条件を満たす鉄筋径を前記計測結果の鉄筋径と判定する
ことを特徴とする請求項1に記載の配筋検査装置。
【請求項6】
前記鉄筋径判定部は、前記第1の鉄筋径と前記第2の鉄筋径とを統計処理して得られた鉄筋径を前記計測結果の鉄筋径と判定する
ことを特徴とする請求項1に記載の配筋検査装置。
【請求項7】
配筋検査装置による配筋検査方法であって、
三次元情報取得部が、鉄筋が配筋された検査領域の三次元情報を取得するステップと、
平面特定部が、前記三次元情報を用いて、前記検査領域から検査対象の配筋平面を特定するステップと、
画像変換部が、前記検査領域の撮像画像を、検査対象の前記配筋平面に正対した正対化画像に変換するステップと、
位置検出部が、前記正対化画像を用いて前記配筋平面における鉄筋位置情報を検出するステップと、
画像抽出部が、検査対象の前記配筋平面における前記鉄筋位置情報に基づいて前記正対化画像から鉄筋画像を抽出するステップと、
特徴量算出部が、前記正対化画像において鉄筋の長手方向に沿って並んだ複数の画素の画素値からなる走査線を、鉄筋の長手方向に直交する方向の画素ごとに取得し、前記走査線の画素値を周波数変換した特徴量を算出し、算出した特徴量を基準の特徴量と照合した結果に基づいて鉄筋と背景との境目位置を特定し、前記境目位置を用いて第1の鉄筋径を特定するステップと、
推論部が、前記鉄筋画像が入力されると鉄筋径を出力する学習モデルを用いて第2の鉄筋径を推論するステップと、
鉄筋径判定部が、前記第1の鉄筋径および前記第2の鉄筋径を用いて計測結果の鉄筋径を判定するステップと、
計測結果情報生成部が、前記計測結果の鉄筋径を表示するための計測結果情報を生成して出力するステップと、を備えた
ことを特徴する配筋検査方法。
【請求項8】
コンピュータを、請求項1に記載の配筋検査装置として機能させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、配筋検査装置、配筋検査方法およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
鉄筋コンクリート構造物の施工においては、鉄筋を組み上げる配筋を行った後に、鉄筋が設計通り配筋されているかを検査する配筋検査が行われる。例えば、特許文献1には、配筋された鉄筋が撮影された画像を用いて当該鉄筋の径を特定する配筋確認支援システムが記載されている。当該システムは、配筋された鉄筋が撮影された画像から鉄筋の長手方向に沿って並んだ画素の輝度値の一次元分布を取得し、上記一次元分布を周波数解析した波形を用いて鉄筋の節間隔を特定する。そして、当該システムは、JIS規格において複数の節間隔のそれぞれと対応付けられた呼び名(鉄筋径)から、特定した節間隔に対応する呼び名を、当該鉄筋の径として特定する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、鉄筋径と節間隔は必ずしも一対一に対応していないため、特許文献1に記載された配筋確認支援システムでは、鉄筋径を正確に求めることができないという課題があった。例えば、節がねじ状に形成されたねじ節鉄筋では、同じ節間隔(ねじ山のピッチ)に異なる呼び名が対応付けられている場合がある。
【0005】
本開示は上記課題を解決するものであり、同じ節間隔の鉄筋であっても鉄筋径を求めることができる配筋検査装置、配筋検査方法およびプログラムを得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示に係る配筋検査装置は、鉄筋が配筋された検査領域の三次元情報を取得する三次元情報取得部と、三次元情報を用いて、検査領域から検査対象の配筋平面を特定する平面特定部と、検査領域の撮像画像を、検査対象の配筋平面に正対した正対化画像に変換する画像変換部と、正対化画像を用いて配筋平面における鉄筋位置情報を検出する位置検出部と、検査対象の配筋平面における鉄筋位置情報に基づいて正対化画像から鉄筋画像を抽出する画像抽出部と、正対化画像において鉄筋の長手方向に沿って並んだ複数の画素の画素値からなる走査線を、鉄筋の長手方向に直交する方向の画素ごとに取得し、走査線の画素値を周波数変換した特徴量を算出し、算出した特徴量を基準の特徴量と照合した結果に基づいて、鉄筋と背景との境目位置を特定し、境目位置を用いて第1の鉄筋径を特定する特徴量算出部と、鉄筋画像が入力されると鉄筋径を出力する学習モデルを用いて第2の鉄筋径を推論する推論部と、第1の鉄筋径および第2の鉄筋径を用いて計測結果の鉄筋径を判定する鉄筋径判定部と、計測結果の鉄筋径を表示するための計測結果情報を生成して出力する計測結果情報生成部と、を備える。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、鉄筋の長手方向に沿って並んだ複数の画素の画素値からなる走査線を、鉄筋の長手方向に直交する方向の画素ごとに取得し、走査線の画素値を周波数変換した特徴量を算出し、算出した特徴量を基準の特徴量と照合した結果に基づいて、鉄筋と背景との境目位置を特定し、境目位置を用いて第1の鉄筋径を特定し、学習モデルを用いて第2の鉄筋径を推論し、第1の鉄筋径および第2の鉄筋径を用いて計測結果の鉄筋径を判定する。これにより、本開示に係る配筋検査装置は、同じ節間隔の鉄筋であっても鉄筋径を求めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】実施の形態1に係る配筋検査装置の構成を示すブロック図である。
【
図2】実施の形態1に係る配筋検査方法を示すフローチャートである。
【
図3】配筋検査領域の撮影処理の概要を示す説明図である。
【
図4】
図4A、
図4Bおよび
図4Cは、検査領域の構造体における各段の平面を示す関数とアウトライヤおよびインライヤとの関係を示すグラフである。
【
図5】撮影画像を正対化画像に変換する処理を示す説明図である。
【
図6】正対化画像における鉄筋の位置を検出する処理を示す説明図である。
【
図7】
図7A、
図7Bおよび
図7Cは、マスク画像における鉄筋部分に対応する線分を特定する処理を示す説明図である。
【
図8】正対化画像から鉄筋の部分画像を抽出する処理を示す説明図である。
【
図9】
図9Aおよび
図9Bは、正対化画像を用いて鉄筋径を判定する処理を示す説明図である。
【
図10】正対化画像から求めた周波数変換スペクトルと参照用スペクトルとの相関を算出する処理を示説明図である。
【
図11】配筋検査領域における重ね継手を示す説明図である。
【
図12】
図12Aおよび
図12Bは、実施の形態1に係る配筋検査装置の機能を実現するハードウェア構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
実施の形態1.
図1は、実施の形態1に係る配筋検査装置1の構成を示すブロック図である。配筋検査装置1は、ステレオカメラ2が撮影した検査対象の配筋平面の画像に基づいて、配筋平面に配筋された鉄筋を検査し、検査結果を表示部3に表示する。検査対象の配筋平面とは、骨格として複数の鉄筋が配筋されて構成された建築または土木の構造体に含まれる平面である。例えば、配筋検査装置1は、配筋平面における鉄筋の径(鉄筋の種類;呼び名)を判定して、判定した径の鉄筋が配筋されている本数と、鉄筋同士が隣り合う間隔とを検査する。配筋検査装置1には、タブレット端末、スマートフォンまたはパーソナルコンピュータ(PC)が使用される。
【0010】
鉄筋には、例えば、JIS規格に基づく16種類の鉄筋がある。16種類の鉄筋には、D4、D5、D6、D8、D10、D13、D16、D19、D22、D25、D29、D32、D35、D38、D41およびD51という「呼び名」が付与されている。呼び名は、鉄筋の公称直径を丸めた径の大きさを示している。例えば、呼び名がD10である鉄筋の公称直径は、9.53(mm)であり、呼び名がD13である鉄筋の公称直径は、12.7(mm)であり、呼び名がD16である鉄筋の公称直径は、15.9(mm)である。なお、建築物の骨格として一般的に使用される鉄筋は、D10以降の鉄筋である。
【0011】
16種類の鉄筋のそれぞれには「節の平均間隔の最大値」が規定されている。例えば、D10の鉄筋における節の平均間隔の最大値は、6.7(mm)であり、D13の鉄筋の節における平均間隔の最大値は、8.9(mm)であり、D16の鉄筋における節の平均間隔の最大値は、11.1(mm)である。このように、16種類の鉄筋には、節の平均間隔の最大値が規定されているだけなので、実際の鉄筋における節の間隔は、メーカまたは生産ロットによって異なる。また、ねじ節鉄筋は、節間隔が同じであっても径が異なることがある。
【0012】
配筋検査装置1は、ステレオカメラ2が撮影した配筋平面の画像において鉄筋の長手方向に沿って並んだ複数の画素の画素値からなる走査線を、鉄筋の長手方向に直交する方向の画素ごとに取得し、走査線の画素値を周波数変換した特徴量を算出する。そして、配筋検査装置1は、算出した特徴量を基準の特徴量と照合した結果に基づいて、鉄筋と背景との境目位置を特定し、境目位置を用いて鉄筋径を特定する。この鉄筋径を第1の鉄筋径とする。
【0013】
さらに、配筋検査装置1は、鉄筋の画像が入力されると鉄筋径を出力する学習モデルを用いて、鉄筋径を推論する。この鉄筋径を第2の鉄筋径とする。配筋検査装置1は、第1の鉄筋径と第2の鉄筋径とを用いて、計測結果の鉄筋径を判定する。
このように、配筋検査装置1は、鉄筋の画像を用いて上記2つの方法で求めた鉄筋径を比較して、最終的な計測結果の鉄筋径を求めるので、同じ節間隔の鉄筋であっても鉄筋径を正確に求めることが可能である。
【0014】
ステレオカメラ2は、不図示の左撮影部、右撮影部および三次元情報生成部を有した撮影部である。左撮影部は、左側から見た左視点画像を撮影する。右撮影部は、右側から見た右視点画像を撮影する。三次元情報生成部は、左視点画像および右視点画像に対してステレオマッチング処理を行うことにより、三次元画像を、三次元情報として生成する。表示部3は、配筋検査装置1が備える表示装置である。
【0015】
表示部3は、例えば、液晶ディスプレイ(Liquid Crystal Display;LCD)または有機EL(Electroluminescence)表示装置である。記憶部4は、様々な鉄筋径についての鉄筋特徴情報を記憶する。鉄筋特徴情報は、前述した基準の特徴量であり、鉄筋の長手方向に沿って並んだ複数の画素からなる走査線の画素値を周波数変換して得られた参照用の周波数変換スペクトルである。例えば、周波数変換は高速フーリエ変換(以下、FFTという。)である。
【0016】
配筋検査装置1は、三次元情報取得部11、平面特定部12、画像変換部13、位置検出部14、画像抽出部15、特徴量算出部16、推論部17、鉄筋径判定部18、および計測結果情報生成部19を備える。三次元情報取得部11は、ステレオカメラ2によって検査対象の配筋平面が撮影された三次元画像を、三次元情報として取得する。
【0017】
平面特定部12は、三次元情報取得部11が取得した三次元情報を用いて、検査領域から検査対象の配筋平面を特定する。例えば、平面特定部12は、配筋平面を含む構造体の三次元画像から、複数の三次元点が含まれる平面候補を検出し、平面候補との距離が閾値以下である三次元点の個数を、平面候補ごとに算出する。そして、平面特定部12は、複数の平面候補のうち、三次元点の個数が最も多い平面候補を、検査対象の配筋平面として特定する。検査対象の配筋平面は、上記構造体の最前面に位置する平面である。
【0018】
画像変換部13は、検査領域の撮像画像を、検査対象の配筋平面に正対した正対化画像に変換する。正対化画像は、ステレオカメラ2と検査対象の配筋平面との距離が一定で、かつ、ステレオカメラ2に検査対象の配筋平面が正対している画像である。
例えば、画像変換部13は、配筋平面において格子状に配筋された鉄筋による矩形の4隅の4点の位置座標を用いて、ホモグラフィ変換行列を推定する。そして、画像変換部13は、ホモグラフィ変換行列に基づいて、撮影画像を正対化画像に変換する。
なお、正対化画像における全ての画素は、ステレオカメラ2との距離が一定になるようにスケーリングされている。これにより、正対化画像では、ステレオカメラ2と検査対象の配筋平面との距離に応じた鉄筋の大きさの違いが補正されている。
【0019】
位置検出部14は、画像変換部13が生成した正対化画像を用いて検査対象の配筋平面における鉄筋位置情報を検出する。例えば、位置検出部14は、正対化画像を閾値で二値化して鉄筋以外の部分がマスクされたマスク画像を生成し、マスク画像の鉄筋部分の画素をカウントすることにより、正対化画像に含まれる検査対象の配筋平面における鉄筋位置を検出する。
【0020】
画像抽出部15は、検査対象の配筋平面における鉄筋位置情報に基づいて、正対化画像から鉄筋画像を抽出する。例えば、画像抽出部15は、検査対象の配筋平面における鉄筋位置情報に基づいて、正対化画像における鉄筋画像を鉄筋ごとに特定し、鉄筋の長手方向に同じ大きさである複数の部分画像を、鉄筋画像から順に抽出する。画像抽出部15が抽出した複数の部分画像は、鉄筋の画像ごとに推論部17に出力される。
【0021】
特徴量算出部16は、正対化画像において鉄筋の長手方向に沿って並んだ複数の画素の画素値からなる走査線を、鉄筋の長手方向に直交する方向の画素ごとに取得し、FFTにより走査線の画素値を周波数変換した特徴量を算出する。そして、特徴量算出部16は、算出した特徴量を基準の特徴量と照合した結果に基づいて鉄筋と背景との境目位置を特定し、境目位置を用いて第1の鉄筋径を特定する。
【0022】
推論部17は、鉄筋画像が入力されると鉄筋径を出力する学習モデルを用いて、第2の鉄筋径を推論する。例えば、学習モデルは、画像抽出部15が鉄筋の画像ごとに抽出した複数の部分画像が入力されると第2の鉄筋径を推論する機械学習モデルである。
学習アルゴリズムには、例えば、深層学習(Deep Learning)、ニューラルネットワーク、遺伝的プログラミング、機能論理プログラミング、または、サポートベクターマシンを用いてもよい。
【0023】
鉄筋径判定部18は、第1の鉄筋径および第2の鉄筋径を用いて、計測結果の鉄筋径を判定する。例えば、鉄筋径判定部18は、第1の鉄筋径および第2の鉄筋径のうち、予め定められた判定条件を満たす鉄筋径を計測結果の鉄筋径と判定する。判定条件は、JIS規格における鉄筋径と同一または最も近い値のものを計測結果と判定する、といった条件である。また、鉄筋径判定部18は、第1の鉄筋径と第2の鉄筋径を統計処理して得られた鉄筋径を計測結果の鉄筋径と判定してもよい。統計処理には、例えば、平均値、最大値または最小値を算出する処理がある。
【0024】
計測結果情報生成部19は、計測結果の鉄筋径を表示させるための計測結果情報を生成して出力する。例えば、計測結果情報生成部19は、計測結果の鉄筋径を表示させるための表示制御情報を、計測結果情報として表示部3に出力する。表示部3は、計測結果情報を用いて計測結果の鉄筋径を表示する。
【0025】
図2は、実施の形態1に係る配筋検査方法を示すフローチャートである。
三次元情報取得部11は、鉄筋が配筋された検査領域の三次元情報を取得する(ステップST1)。
図3は、配筋検査領域の撮影処理の概要を示す説明図であって、鉄筋20が配筋された複数の配筋平面の三次元画像2Cを示している。
図3に示すように、ステレオカメラ2は、左視点画像2Aおよび右視点画像2Bを撮影すると、左視点画像2Aおよび右視点画像2Bを用いて三次元画像2Cを生成する。三次元情報取得部11は、ステレオカメラ2から三次元画像2Cを取得する。
【0026】
平面特定部12は、三次元画像2Cを用いて、検査領域における複数の配筋平面から、検査対象の配筋平面を特定する(ステップST2)。ここで、三次元画像2Cにおいて、ステレオカメラ2に近い、すなわち前面であるほど、鉄筋20は大きく写り、ステレオカメラ2から遠くなると、鉄筋20は小さく写る。鉄筋20が大きく写るということは、三次元画像2Cにおける鉄筋20に対応する三次元点が多いことを意味する。反対に、鉄筋20が小さく写るということは、三次元画像2Cにおける鉄筋20に対応する三次元点が少ないことを意味する。さらに、前面の平面であるほど、ステレオカメラ2との間を遮蔽する後面の鉄筋などの遮蔽物が少なく、オクルージョンが発生しにくい。
【0027】
そこで、平面特定部12は、例えば、RANSAC(RANdom SAmple Consensus)法により、最前面の平面を特定する。平面特定部12は、三次元画像2Cからランダムに検出した三次元点群を用いて、平面候補を示す関数の推定を繰り返し実行する。
図4A、
図4Bおよび
図4Cは、各層の平面を示す関数P(1)、P(2)、およびP(3)とアウトライヤ31およびインライヤ32との関係を示すグラフであり、XY座標面における三次元点を示している。アウトライヤ31は、許容可能な範囲に含まれない三次元点であり、インライヤ32は、許容可能な範囲に含まれる三次元点である。
【0028】
RANSAC法は、関数P(1)、P(2)およびP(3)を表すパラメータごとに、インライヤ32となる三次元点の数がカウントされ、カウント数が最も多いパラメータが最適なパラメータに決定される。すなわち、決定されたパラメータを適用した関数で表される平面候補が最前面の平面の推定結果とされる。
図4A、
図4Bおよび
図4Cから明らかなように、関数P(3)を表すパラメータにおいて、インライヤ32となる三次元点の数が最も多いので、平面特定部12は、関数P(3)で表される平面候補を最前面の平面として特定する。
【0029】
次に、画像変換部13は、ステレオカメラ2が撮影した検査対象の配筋平面を含む検査領域の撮影画像を、正対化画像に変換する(ステップST3)。
図5は、撮影画像を正対化画像に変換する処理を示す説明図であって、三次元画像2Cおよび正対化画像2Dにおける最前面の配筋平面のみを示している。画像変換部13は、三次元画像2Cにおける検査対象の配筋平面に格子状に配筋された鉄筋20のうち、任意の矩形の4隅の4点を指定して、当該矩形がステレオカメラ2の正面から見た形状となるホモグラフィ変換行列を推定する。そして、画像変換部13は、ホモグラフィ変換行列に基づいて、三次元画像2Cが示す画像を正対化画像2Dに変換する。
【0030】
位置検出部14は、正対化画像を用いて、配筋平面における鉄筋位置情報を検出する(ステップST4-1)。
図6は、正対化画像における鉄筋の位置を検出する処理を示す説明図である。位置検出部14は、
図6に示すように、画像変換部13が三次元画像2Cから変換した正対化画像2Dを、マスク画像51に変換する。マスク画像51は、正対化画像2Dにおける鉄筋を示す領域を「1」で表し、それ以外の領域を「0」で表す二値の画素値を有した画像である。画素値が「1」の領域は、白画素の領域となり、画素値が「0」の領域は、黒画素の領域となる。
【0031】
例えば、位置検出部14は、左視点画像2Aおよび右視点画像2Bを用いて、同一位置にある鉄筋の画像上のずれ量を、左右の視差として算出し、視差を用いて鉄筋の画像部分を特定し、特定した画像部分の画素値を「1」とし、それ以外の画像部分を「0」としてマスク画像51を生成する。そして、位置検出部14は、マスク画像51において白画素のカウント数が閾値以上である位置を、鉄筋の位置として検出する。位置検出部14は、マスク画像51を回転させて白画素の数をカウントすることにより、鉄筋のX方向の位置およびY方向の位置を検出することができる。すなわち、正対化画像2Dにおいて、縦方向に並ぶ鉄筋の位置と横方向に並ぶ鉄筋の位置が検出される。
【0032】
次に、位置検出部14は、マスク画像51において鉄筋に対応する線分を特定する処理を行う。
図7A、
図7Bおよび
図7Cは、マスク画像における鉄筋部分に対応する線分を特定する処理を示す説明図である。
図7Aに示すように、マスク画像51において、白画素の領域A、領域Bおよび領域Cがある場合、どの領域が鉄筋の画像に対応するのか不明である。そこで、位置検出部14は、白画素の領域A、領域Bおよび領域Cを通る座標軸における領域Aの長さD(1)、領域Bの長さD(2)および領域Cの長さD(3)と、領域Aと領域Bとの間隔D(4)と、領域Bと領域Cとの間隔D(5)とを算出する。
【0033】
位置検出部14は、
図7Bに示すように、間隔D(4)および間隔D(5)のうち、閾値以上の間隔が空いた領域間は鉄筋ではないと判定し、閾値未満の間隔が空いた領域同士は同じ鉄筋に対応する画像領域であると判定する。例えば、位置検出部14は、閾値未満の間隔D(4)が空いた領域Aと領域Bを通り長さがD(6)である線分52で示す画像領域を、同じ鉄筋に対応する画像領域であると判定する。またD(5)は閾値以上であるので、位置検出部14は、マスク画像51において、領域Bと領域Cとの間に鉄筋に対応する画像領域がないと判定する。位置検出部14は、マスク画像51において鉄筋の画像領域であると判定した部分の位置情報を正対化画像2Dに付与し、この正対化画像2Dを画像抽出部15および特徴量算出部16に出力する。
【0034】
画像抽出部15は、検査対象の配筋平面における鉄筋位置情報に基づいて、正対化画像から鉄筋画像を抽出する(ステップST4-2)。
図8は、正対化画像から鉄筋20の部分画像を抽出する処理を示す説明図である。
図8に示すように、画像抽出部15は、正対化画像から、長手方向に沿った鉄筋20の正対化画像2Eを抽出する。さらに、画像抽出部15は、正対化画像2Eから順次同一の大きさの部分画像2F(1)、2F(2)および2F(3)を抽出して、推論部17に出力する。部分画像2F(1)、2F(2)および2F(3)は、例えば、縦横が同じ画素数の正方形の画像である。画像抽出部15は、正対化画像2Dにおける全ての鉄筋20について部分画像の抽出を行う。
【0035】
特徴量算出部16は、正対化画像から算出した特徴量を基準の特徴量と照合した結果に基づいて、鉄筋と背景との境目位置を特定し、特定した境目位置を用いて第1の鉄筋径を特定する(ステップST5-1)。
図9Aおよび
図9Bは、正対化画像を用いて、鉄筋径を判定する処理を示す説明図である。
図9Aは、正対化画像2Eにおいて鉄筋の長手方向に沿って並んだ複数の画素の輝度値からなる走査線i(i=0~n、0<k<n)を示している。特徴量算出部16は、
図9Aに示すように、走査線iを、鉄筋の長手方向に直交する方向の画素ごとに取得し、FFTにより走査線iの輝度値を周波数変換した特徴量(周波数変換スペクトル)を、鉄筋の長手方向に直交する方向の画素ごとに算出する。
【0036】
図9Bは、正対化画像2Eにおける鉄筋外の背景部分の走査線i=0の輝度値の変化量および走査線i=0の輝度値を周波数変換した周波数変換スペクトルと、鉄筋上の走査線i=kの輝度値の変化量および走査線i=kの輝度値を周波数変換した周波数変換スペクトルと、鉄筋外の背景部分の走査線i=nの輝度値の変化量および走査線i=nの輝度値を周波数変換した周波数変換スペクトルと、鉄筋特徴情報である参照用の周波数変換スペクトルとを示している。走査線iで輝度値の大小が生じていると、その輝度値の変化が、周波数変換スペクトルにおけるピークとなる。
【0037】
特徴量算出部16は、正対化画像2Eにおいて、鉄筋の長手方向に直交する方向(
図9Aの左側から右側への方向)に、鉄筋外に対応する部分の走査線i=0から走査線i=nまで、画素ごとに走査線iを取得する。次に、特徴量算出部16は、画素ごとの走査線iの輝度値を周波数変換した周波数変換スペクトルを算出する。続いて、特徴量算出部16は、走査線iの輝度値を周波数変換した周波数変換スペクトルを、記憶部4に記憶された鉄筋特徴情報と比較する。鉄筋特徴情報は、鉄筋画像において予め算出しておいた鉄筋上の走査線の輝度値を周波数変換した周波数スペクトルである。
【0038】
例えば、特徴量算出部16は、正対化画像2Eにおいて画素ごとに算出した周波数変換スペクトルのうち、鉄筋特徴情報である周波数変換スペクトルと類似するスペクトルを、鉄筋上の走査線iに対応するものと判定する。続いて、特徴量算出部16は、鉄筋と背景との境目位置に対応する走査線i(
図9Aの左側の境目と右側の境目)を特定し、特定した走査線i同士の間隔を算出する。この後、特徴量算出部16は、走査線i同士の間隔を実空間の長さに変換することで、第1の鉄筋径を算出する。例えば、ステレオカメラ2が配筋平面との間で、撮影距離1.5メートルで正対化していた場合、撮影画像が水平方向200opxであると、実空間では、0.75mm/pxである。
【0039】
鉄筋特徴情報は、日射の影響により鉄筋および影が大きく写った撮影画像を用いて算出した走査線iの輝度値の周波数変換スペクトルを含んでもよいし、フラッシュ撮影等により鉄筋が白く光った撮影画像を用いて算出した走査線iの輝度値の周波数変換スペクトルを含んでもよい。このような鉄筋特徴情報を用いることにより、特徴量算出部16は、影または鉄筋の白光りがある鉄筋画像であっても鉄筋と背景との境目を正確に特定できる。
【0040】
鉄筋画像の走査を開始する始点と走査を終了する終点は、例えば、JIS規格における最大鉄筋径に一定の余裕値を加算した走査範囲を設け、当該走査範囲内に鉄筋画像を設定する。これにより、当該走査範囲の一方側が始点となり他方側が終点となる。また、鉄筋画像の走査を開始する始点と走査を終了する終点は、不図示の入力装置を用いてユーザが設定してもよい。
【0041】
図10は、正対化画像から求めた周波数変換スペクトルと参照用スペクトルとの相関を算出する処理を示説明図である。
図10において、実線のスペクトルが、鉄筋特徴情報である参照用の周波数変換スペクトルであり、破線のスペクトルが、正対化画像から求めた周波数変換スペクトルである。例えば、特徴量算出部16は、これらのスペクトルの相関を全周波数域で評価する相関演算(1)と、スペクトルに最初に現れる第1のピーク同士の相関を評価する相関演算(2)と、スペクトルに次に現れる第2のピーク同士の相関を評価する相関演算(3)とを行う。
【0042】
相関演算(1)において、特徴量算出部16は、鉄筋特徴情報であるスペクトルに最初に現れた第1のピークの強度をPeakAとし、正対化画像から求めたスペクトルに最初に現れた第1のピークの強度をPeakBとした場合、(min(PeakA,PeakB)-4)~256で表す相関評価範囲で、両スペクトルの相関を示す相関スコア(1)を算出する。相関演算(2)において、特徴量算出部16は、PeakA±10で表す相関評価範囲で、両スペクトルの相関を示す相関スコア(2)を算出する。相関演算(3)において、特徴量算出部16は、(PeakA×2)±10で表す相関評価範囲で、両スペクトルの相関を示す相関スコア(3)を算出する。
【0043】
特徴量算出部16は、相関スコア(1)、相関スコア(2)および相関スコア(3)のそれぞれの値に応じた重み係数を決定する。そして、特徴量算出部16は、決定した重み係数を相関スコア(1)、相関スコア(2)および相関スコア(3)に乗算してから加算したものを、全体の相関スコアとする。特徴量算出部16は、全体の相関スコアを閾値と比較し、全体の相関スコアが閾値以上である場合に、正対化画像から求めたスペクトルが鉄筋特徴情報に類似すると判定する。
【0044】
また、特徴量算出部16は、走査線iのうち、走査線iに平行な鉄筋と別の鉄筋とが交差している部分をマスクし、当該マスクを施した走査線iの画素値を周波数変換して特徴量を算出する。配筋平面では、鉄筋が格子状に配筋されており、鉄筋と鉄筋とが交差する部分がある。この部分は、走査線iに沿った鉄筋の長手方向に直交する方向に別の鉄筋が配置されているため、鉄筋と背景との境目を正確に特定できない。そこで、特徴量算出部16は、走査線iに平行な鉄筋と別の鉄筋とが交差している部分をマスクし、当該マスクを施した走査線iの画素値を周波数変換して特徴量を算出する。これにより、特徴量算出部16は、鉄筋と背景との境目を正確に特定することができる。
【0045】
さらに、特徴量算出部16は、走査線iを鉄筋の長手方向に沿った複数の区間に分け、区間ごとに算出した特徴量を基準の特徴量と照合した結果に基づいて鉄筋と背景との境目位置を特定し、境目位置を用いて特定した第1の鉄筋径を有する鉄筋の本数に基づいて、複数の鉄筋による重ね継手および当該重ね継手の長さを検出してもよい。
図11は、配筋検査領域における重ね継手を示す説明図である。
図11においては、鉄筋20Aと鉄筋20Bが重ね継手となっている。特徴量算出部16は、鉄筋20Aの長手方向に沿った複数の区間に分ける。記憶部4は、重ね継手における鉄筋同士の間に対応した走査線の輝度値の周波数変換スペクトルを含む鉄筋特徴情報を記憶する。
【0046】
例えば、鉄筋20Aに別の鉄筋が交差している部分の間を特徴量の取得区間とし、各区間で特徴量を算出して第1の鉄筋径を算出する。鉄筋20Aと鉄筋20Bとの重ね継手の部分は、鉄筋20Aと鉄筋20Bとの境目の部分における走査線iの輝度値の周波数変換スペクトルが鉄筋と背景との境目とは異なる波形となる。
図11において、鉄筋20A側から走査を画素ごとに開始していくと、鉄筋20Aと背景との境目に対応する周波数変換スペクトルが取得され、続いて鉄筋20A上に対応する周波数変換スペクトルが取得される。さらに走査を進めると、鉄筋20Aと鉄筋20Bの境目に対応する周波数変換スペクトルが取得される。さらに走査を進めていくと、鉄筋20Bに対応する周波数変換スペクトルが取得されてから、鉄筋20Bと背景との境目に対応する周波数変換スペクトルが取得される。これらの周波数変換スペクトルを鉄筋特徴情報と比較することにより、特徴量算出部16は、鉄筋20Aが鉄筋20Bと重ね継手になっていることを判定できる。
また、上記区間ごとに第1の鉄筋径を判定することにより、特徴量算出部16は、鉄筋20Bが検出され始めた位置および鉄筋20Bのみが検出され始めた位置を特定できるので、特定した位置に基づいて重ね継手の長さを判定することも可能である。
【0047】
図2において、推論部17は、正対化画像2Dから抽出された鉄筋の画像が入力されると、鉄筋径を出力する学習モデルを用いて、第2の鉄筋径を推論する(ステップST5-2)。学習モデルは、例えば、鉄筋画像から抽出された複数の部分画像と、各部分画像に付与された鉄筋径を示す正解ラベルとのセットである学習用データを用いて生成される。推論部17は、学習モデルを用いて部分画像ごとに推論を行い、第2の鉄筋径Dの鉄筋が写っている確率と鉄筋以外が写っている確率とを部分画像ごとに算出する。
【0048】
学習モデルは、同じ鉄筋画像についての全ての部分画像についての推論結果を平均することにより、当該鉄筋画像の推論結果を算出する。例えば、推論結果には、各種類の鉄筋が写る確率を平均した値と、鉄筋以外のもの(NON)が写る確率を平均した値とが含まれる。推論部17は、この推論結果に基づいて第2の鉄筋径を判定する。
なお、学習モデルは、日射の影響により鉄筋および影が大きく写った鉄筋の部分画像、およびフラッシュ撮影等により鉄筋が白く光った部分画像を含む学習データを用いて生成されたものであってもよい。このような学習データを用いて学習モデルを生成することにより、学習モデルは、影または鉄筋の白光りがあっても鉄筋と背景との境目を認識して、第2の鉄筋径を正確に推論できるようになる。
【0049】
次に、鉄筋径判定部18は、第1の鉄筋径および第2の鉄筋径を用いて計測結果の鉄筋径を判定する(ステップST6)。例えば、鉄筋径判定部18は、第1の鉄筋径および第2の鉄筋径のうち、予め定められた判定条件を満たす鉄筋径を、計測結果の鉄筋径と判定する。判定条件がJIS規格における鉄筋径と同一または最も近い値のものを計測結果と判定するものである場合、鉄筋径判定部18は、第1の鉄筋径および第2の鉄筋径をJIS規格における鉄筋径と比較し、第1の鉄筋径および第2の鉄筋径のいずれかまたは両方がJIS規格における鉄筋径と同一または最も近い値であると、当該鉄筋径を、計測結果と判定する。これにより、鉄筋径を正確に求めることが可能である。
【0050】
また、鉄筋径判定部18は、第1の鉄筋径と第2の鉄筋径を統計処理して得られた鉄筋径を計測結果の鉄筋径と判定してもよい。統計処理には、例えば、平均値、最大値または最小値を算出する処理がある。鉄筋径判定部18は、第1の鉄筋径と第2の鉄筋径の平均値、もしくは、第1の鉄筋径および第2の鉄筋径のうちの最大値または最小値を、計測結果と判定する。さらに、鉄筋径判定部18は、第1の鉄筋径と第2の鉄筋径とを統計処理して得られた鉄筋径が上記判定条件を満たす場合に、当該鉄筋径を判定結果と判定してもよい。このようにしても、鉄筋径を正確に求めることが可能である。
【0051】
計測結果情報生成部19は、計測結果の鉄筋径を表示するための計測結果情報を生成して出力する(ステップST7)。例えば、計測結果情報生成部19は、計測結果の鉄筋径を電子黒板に表示する表示制御情報を、計測結果情報として表示部3に出力する。表示部3は、画面情報である電子黒板上に計測結果の鉄筋径を表示する。表示部3に表示された計測結果の鉄筋径を参照することにより、検査者が計測結果の鉄筋径を適宜確認することが可能である。
【0052】
配筋検査装置1が備える三次元情報取得部11、平面特定部12、画像変換部13、位置検出部14、画像抽出部15、特徴量算出部16、推論部17、鉄筋径判定部18および計測結果情報生成部19の機能は、処理回路により実現される。すなわち、配筋検査装置1は、
図2に示したステップST1からステップST7の処理を実行するための処理回路を備える。処理回路は、専用のハードウェアであってもよいが、メモリに記憶されたプログラムを実行するCPU(Central Processing Unit)であってもよい。
【0053】
図12Aは、配筋検査装置1の機能を実現するハードウェア構成を示すブロック図である。
図12Bは、配筋検査装置1の機能を実現するソフトウェアを実行するハードウェア構成を示すブロック図である。
図12Aおよび
図12Bにおいて、入力インタフェース100は、ステレオカメラ2から配筋検査装置1へ出力される三次元データを中継するインタフェースである。出力インタフェース101は、配筋検査装置1から表示部3へ出力される検査結果などを中継するインタフェースである。
【0054】
処理回路が
図12Aに示す専用のハードウェアの処理回路102である場合、処理回路102は、例えば、単一回路、複合回路、プログラム化したプロセッサ、並列プログラム化したプロセッサ、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field-Programmable Gate Array)またはこれらを組み合わせたものが該当する。
配筋検査装置1が備える三次元情報取得部11、平面特定部12、画像変換部13、位置検出部14、画像抽出部15、特徴量算出部16、推論部17、鉄筋径判定部18および計測結果情報生成部19の機能を別々の処理回路で実現してもよく、これらの機能をまとめて一つの処理回路で実現してもよい。
【0055】
処理回路が
図12Bに示すプロセッサ103である場合、配筋検査装置1が備える三次元情報取得部11、平面特定部12、画像変換部13、位置検出部14、画像抽出部15、特徴量算出部16、推論部17、鉄筋径判定部18および計測結果情報生成部19の機能は、ソフトウェア、ファームウェアまたはソフトウェアとファームウェアとの組み合わせにより実現される。なお、ソフトウェアまたはファームウェアは、プログラムとして記述されてメモリ104に記憶される。
【0056】
プロセッサ103は、メモリ104に記憶されたプログラムを読み出して実行することにより、配筋検査装置1が備える三次元情報取得部11、平面特定部12、画像変換部13、位置検出部14、画像抽出部15、特徴量算出部16、推論部17、鉄筋径判定部18および計測結果情報生成部19の機能を実現する。例えば、配筋検査装置1は、プロセッサ103によって実行されるときに、
図2に示したステップST1からステップST7の処理が結果的に実行されるプログラムを記憶するためのメモリ104を備える。
これらのプログラムは、三次元情報取得部11、平面特定部12、画像変換部13、位置検出部14、画像抽出部15、特徴量算出部16、推論部17、鉄筋径判定部18および計測結果情報生成部19が行う処理の手順または方法を、コンピュータに実行させる。メモリ104は、コンピュータを、三次元情報取得部11、平面特定部12、画像変換部13、位置検出部14、画像抽出部15、特徴量算出部16、推論部17、鉄筋径判定部18および計測結果情報生成部19として機能させるためのプログラムが記憶されたコンピュータ可読記憶媒体であってもよい。
【0057】
メモリ104は、例えば、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、フラッシュメモリ、EPROM(Erasable Programmable Read Only Memory)、EEPROM(Electrically-EPROM)などの不揮発性または揮発性の半導体メモリ、磁気ディスク、フレキシブルディスク、光ディスク、コンパクトディスク、ミニディスク、DVDなどが該当する。
【0058】
配筋検査装置1が備える三次元情報取得部11、平面特定部12、画像変換部13、位置検出部14、画像抽出部15、特徴量算出部16、推論部17、鉄筋径判定部18および計測結果情報生成部19の機能の一部を、専用のハードウェアで実現し、他の一部を、ソフトウェアまたはファームウェアで実現してもよい。
例えば、三次元情報取得部11は、専用のハードウェアである処理回路102によって機能を実現し、平面特定部12、画像変換部13、位置検出部14、画像抽出部15、特徴量算出部16、推論部17、鉄筋径判定部18および計測結果情報生成部19は、プロセッサ103がメモリ104に記憶されたプログラムを読み出して実行することによって機能を実現する。このように、処理回路は、ハードウェア、ソフトウェア、ファームウェアまたはこれらの組み合わせにより上記機能を実現することができる。
【0059】
なお、配筋検査装置1は、推論部17が用いる学習モデルを生成する学習装置を備えてもよい。また、配筋検査装置1は、外部装置に記憶された学習モデルを、ネットワークを介したデータ通信で取得してもよい。さらに、学習モデルは、例えば、操作部(
図1において不図示)を使用して入力された正解ラベルが付与された部分画像を、学習用データとして用いてもよい。これにより、推論部17は、現場ごとに生成された学習モデルを用いて鉄筋径を推論することが可能であり、配筋検査の精度が向上する。
【0060】
以上のように、実施の形態1に係る配筋検査装置1は、鉄筋の長手方向に沿って並んだ複数の画素の画素値からなる走査線を、鉄筋の長手方向に直交する方向の画素ごとに取得し、走査線の画素値を周波数変換した特徴量を算出し、算出した特徴量を基準の特徴量と照合した結果に基づいて、鉄筋と背景との境目位置を特定し、境目位置を用いて第1の鉄筋径を特定し、学習モデルを用いて第2の鉄筋径を推論し、第1の鉄筋径および第2の鉄筋径を用いて計測結果の鉄筋径を判定する。これにより、配筋検査装置1は、同じ節間隔の鉄筋であっても鉄筋径を求めることができる。
【0061】
実施の形態1に係る配筋検査装置1において、特徴量算出部16は、正対化画像において鉄筋の長手方向に沿って並んだ複数の画素の輝度値からなる走査線を鉄筋の長手方向に直交する方向の画素ごとに取得し、走査線の輝度値を周波数変換した特徴量を算出する。これにより、配筋検査装置1は、正対化画像を用いて第1の鉄筋径を正確に実測することができる。
【0062】
実施の形態1に係る配筋検査装置1において、特徴量算出部16は、走査線のうち、当該走査線に平行な鉄筋と別の鉄筋とが交差している部分をマスクし、当該マスクを施した走査線の画素値を周波数変換して特徴量を算出する。鉄筋同士が交差する部分をマスクすることにより、特徴量算出部16は、正対化画像を用いて第1の鉄筋径を正確に実測することができる。
【0063】
実施の形態1に係る配筋検査装置1において、特徴量算出部16は、走査線を鉄筋の長手方向に沿った複数の区間に分け、区間ごとに算出した特徴量を基準の特徴量と照合した結果に基づいて鉄筋と背景との境目位置を特定し、境目位置を用いて特定した前記第1の鉄筋径を有する鉄筋の本数に基づいて複数の鉄筋による重ね継手および当該重ね継手の長さを検出する。これにより、特徴量算出部16は、鉄筋による重ね継手および当該重ね継手の長さを検出することができる。
【0064】
実施の形態1に係る配筋検査装置1において、鉄筋径判定部18は、第1の鉄筋径および第2の鉄筋径のうち、予め定められた判定条件を満たす鉄筋径を、計測結果の鉄筋径と判定する。これにより、鉄筋径判定部18は、検査領域の撮像画像から実測された第1の鉄筋径と、学習モデルによって推論された第2の鉄筋径とを用いて、計測結果の鉄筋径を正確に判定することができる。
【0065】
実施の形態1に係る配筋検査装置1において、鉄筋径判定部18は、第1の鉄筋径と第2の鉄筋径とを統計処理して得られた鉄筋径を、計測結果の鉄筋径と判定する。これにより、鉄筋径判定部18は、検査領域の撮像画像から実測された第1の鉄筋径と、学習モデルによって推論された第2の鉄筋径とを用いて、計測結果の鉄筋径を正確に判定することができる。
【0066】
実施の形態1に係る配筋検査方法は、三次元情報取得部11が、鉄筋が配筋された検査領域の三次元情報を取得し、平面特定部12が、三次元情報を用いて、検査領域から検査対象の配筋平面を特定し、画像変換部13が、検査領域の撮像画像を、検査対象の配筋平面に正対した正対化画像に変換し、位置検出部14が、正対化画像を用いて配筋平面における鉄筋位置情報を検出し、画像抽出部15が、検査対象の配筋平面における鉄筋位置情報に基づいて正対化画像から鉄筋画像を抽出し、特徴量算出部16が、正対化画像において鉄筋の長手方向に沿って並んだ複数の画素の画素値からなる走査線を、鉄筋の長手方向に直交する方向の画素ごとに取得し、走査線の画素値を周波数変換した特徴量を算出し、算出した特徴量を基準の特徴量と照合した結果に基づいて、鉄筋と背景との境目位置を特定し、境目位置を用いて第1の鉄筋径を特定し、推論部17が、鉄筋画像が入力されると鉄筋径を出力する学習モデルを用いて第2の鉄筋径を推論し、鉄筋径判定部18が、第1の鉄筋径および第2の鉄筋径を用いて計測結果の鉄筋径を判定し、計測結果情報生成部19が、計測結果の鉄筋径を示す計測結果情報を生成して出力する。これにより、同じ節間隔の鉄筋であっても鉄筋径を求めることができる配筋検査方法を提供できる。
【0067】
なお、実施の形態の任意の構成要素の変形もしくは実施の形態の任意の構成要素の省略が可能である。
【0068】
本開示の諸態様を以下に付記として記載する。
(付記1)
鉄筋が配筋された検査領域の三次元情報を取得する三次元情報取得部と、
前記三次元情報を用いて、前記検査領域から検査対象の配筋平面を特定する平面特定部と、
前記検査領域の撮像画像を、検査対象の前記配筋平面に正対した正対化画像に変換する画像変換部と、
前記正対化画像を用いて前記配筋平面における鉄筋位置情報を検出する位置検出部と、
前記正対化画像において鉄筋の長手方向に沿って並んだ複数の画素の画素値からなる走査線を、鉄筋の長手方向に直交する方向の画素ごとに取得し、前記走査線の画素値を周波数変換した特徴量を算出し、算出した特徴量を基準の特徴量と照合した結果に基づいて、鉄筋と背景との境目位置を特定し、前記境目位置を用いて第1の鉄筋径を特定する特徴量算出部と、
検査対象の前記配筋平面における前記鉄筋位置情報に基づいて前記正対化画像から鉄筋画像を抽出する画像抽出部と、
前記鉄筋画像が入力されると鉄筋径を出力する学習モデルを用いて第2の鉄筋径を推論する推論部と、
前記第1の鉄筋径および前記第2の鉄筋径を用いて計測結果の鉄筋径を判定する鉄筋径判定部と、
前記計測結果の鉄筋径を示す計測結果情報を生成して出力する計測結果情報生成部と、を備えた
ことを特徴する配筋検査装置。
(付記2)
前記特徴量算出部は、前記正対化画像において鉄筋の長手方向に沿って並んだ複数の画素の輝度値からなる走査線を、鉄筋の長手方向に直交する方向の画素ごとに取得し、前記走査線の輝度値を周波数変換した特徴量を算出する
ことを特徴とする付記1に記載の配筋検査装置。
(付記3)
前記特徴量算出部は、前記走査線のうち、当該走査線に平行な鉄筋と別の鉄筋とが交差している部分をマスクし、当該マスクを施した前記走査線の画素値を周波数変換して特徴量を算出する
ことを特徴とする付記1または付記2に記載の配筋検査装置。
(付記4)
前記特徴量算出部は、前記走査線を鉄筋の長手方向に沿った複数の区間に分け、前記区間ごとに算出した特徴量を基準の特徴量と照合した結果に基づいて鉄筋と背景との境目位置を特定し、境目位置を用いて特定した前記第1の鉄筋径を有する鉄筋の本数に基づいて複数の鉄筋による重ね継手および当該重ね継手の長さを検出する
ことを特徴とする付記1から付記3のいずれか一つに記載の配筋検査装置。
(付記5)
前記鉄筋径判定部は、前記第1の鉄筋径および前記第2の鉄筋径のうち、予め定められた判定条件を満たす鉄筋径を、計測結果の鉄筋径と判定する
ことを特徴とする付記1から付記4のいずれか一つに記載の配筋検査装置。
(付記6)
前記鉄筋径判定部は、前記第1の鉄筋径と前記第2の鉄筋径とを統計処理して得られた鉄筋径を、計測結果の鉄筋径と判定する
ことを特徴とする付記1から付記4のいずれか一つに記載の配筋検査装置。
(付記7)
配筋検査装置による配筋検査方法であって、
三次元情報取得部が、鉄筋が配筋された検査領域の三次元情報を取得するステップと、
平面特定部が、前記三次元情報を用いて、前記検査領域から検査対象の配筋平面を特定するステップと、
画像変換部が、前記検査領域の撮像画像を、検査対象の前記配筋平面に正対した正対化画像に変換するステップと、
位置検出部が、前記正対化画像を用いて前記配筋平面における鉄筋位置情報を検出するステップと、
画像抽出部が、検査対象の前記配筋平面における前記鉄筋位置情報に基づいて前記正対化画像から鉄筋画像を抽出するステップと、
特徴量算出部が、前記正対化画像において鉄筋の長手方向に沿って並んだ複数の画素の画素値からなる走査線を、鉄筋の長手方向に直交する方向の画素ごとに取得し、前記走査線の画素値を周波数変換した特徴量を算出し、算出した特徴量を基準の特徴量と照合した結果に基づいて、鉄筋と背景との境目位置を特定し、前記境目位置を用いて第1の鉄筋径を特定するステップと、
推論部が、前記鉄筋画像が入力されると鉄筋径を出力する学習モデルを用いて第2の鉄筋径を推論するステップと、
鉄筋径判定部が、前記第1の鉄筋径および前記第2の鉄筋径を用いて計測結果の鉄筋径を判定するステップと、
計測結果情報生成部が、前記計測結果の鉄筋径を示す計測結果情報を生成して出力するステップと、を備えた
ことを特徴する配筋検査方法。
(付記8)
コンピュータを、付記1から付記6のいずれか一つに記載の配筋検査装置として機能させるためのプログラム。
【符号の説明】
【0069】
1 配筋検査装置、2 ステレオカメラ、2A 左視点画像、2B 右視点画像、2C 三次元画像、2D,2E 正対化画像、2F(1)~2F(3) 部分画像、3 表示部、4 記憶部、11 三次元情報取得部、12 平面特定部、13 画像変換部、14 位置検出部、15 画像抽出部、16 特徴量算出部、17 推論部、18 鉄筋径判定部、19 計測結果情報生成部、20,20A,20B 鉄筋、31 アウトライヤ、32 インライヤ、51 マスク画像、52 線分、100 入力インタフェース、101 出力インタフェース、102 処理回路、103 プロセッサ、104 メモリ。