(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023166064
(43)【公開日】2023-11-21
(54)【発明の名称】煙感知器
(51)【国際特許分類】
G08B 17/103 20060101AFI20231114BHJP
G08B 17/107 20060101ALI20231114BHJP
【FI】
G08B17/103 Z
G08B17/107 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022076821
(22)【出願日】2022-05-09
(71)【出願人】
【識別番号】000233826
【氏名又は名称】能美防災株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001461
【氏名又は名称】弁理士法人きさ特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】窪川 貴之
(72)【発明者】
【氏名】内田 真道
【テーマコード(参考)】
5C085
【Fターム(参考)】
5C085AA01
5C085AA03
5C085AB01
5C085AC03
5C085BA31
5C085BA33
5C085CA30
5C085FA11
5C085FA20
5C085FA40
(57)【要約】
【課題】熱検知用のセンサを用いることなく、煙が発生しない火災を検知することのできる煙感知器を提供する。
【解決手段】検煙部に向かって発光する発光素子と、検煙部に流入した流入物によって散乱した発光素子の光を受光する受光素子と、を有する煙感知器において、第1壁部と、第2壁部と、第2壁部を直接的又は間接的に支持する支持部材と、を備え、第1壁部は、第2壁部がない場合に、発光素子からの光を反射させて受光素子に入射させる位置に設けられており、第2壁部は、発光素子と第1壁部との間を遮って発光素子からの光を受光素子以外の方向に反射させる、又は発光素子と第1壁部との間を遮って発光素子からの光を吸収するものであり、第2壁部又は支持部材は、火災による熱により少なくとも一部が変形又は溶融する材料で構成されている。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
検煙部に向かって発光する発光素子と、
前記検煙部に流入した流入物によって散乱した前記発光素子の光を受光する受光素子と、を有する煙感知器において、
第1壁部と、
第2壁部と、
前記第2壁部を直接的又は間接的に支持する支持部材と、を備え、
前記第1壁部は、前記第2壁部がない場合に、前記発光素子からの前記光を反射させて前記受光素子に入射させる位置に設けられており、
前記第2壁部は、前記発光素子と前記第1壁部との間を遮って前記発光素子からの前記光を前記受光素子以外の方向に反射させる、又は前記発光素子と前記第1壁部との間を遮って前記発光素子からの前記光を吸収するものであり、
前記第2壁部又は前記支持部材は、火災による熱により少なくとも一部が変形又は溶融する材料で構成されている
煙感知器。
【請求項2】
前記第1壁部の耐熱温度は、前記第2壁部の耐熱温度よりも高い
請求項1に記載の煙感知器。
【請求項3】
検煙部に向かって発光する発光素子と、
前記検煙部に流入した流入物によって散乱した前記発光素子の光を受光する受光素子と、を有する煙感知器において、
壁部を備え、
前記壁部は、前記発光素子からの前記光を反射させて前記受光素子に入射させる位置に設けられており、
前記壁部は、火災による熱により、前記光が透過する又は前記光を吸収する第1の色から前記光を反射させる第2の色に変化する塗料が塗布されている
煙感知器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、散乱光式の煙感知器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、火災の発生を感知する火災感知器において、煙を感知することにより火災を感知する煙感知器、及び熱を感知することにより火災を感知する熱感知器が知られている。さらに、煙感知機能及び熱感知機能を備える、いわゆる複合型の火災感知器も提案されている(たとえば、特許文献1参照)。特許文献1の火災感知器は、煙感知用の発光部と受光部、及び熱感知用の熱検知センサを備える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の火災感知器は、熱検知センサを備えるので、煙が発生しない火災の場合でも、熱検知センサにより火災を感知することができる。しかし、特許文献1のような複合型の火災感知器では、煙感知用のセンサであるフォトダイオードに加え、熱感知用のセンサであるサーミスタが必要になる。このため、煙感知器又は熱感知器のように、煙又は熱のどちらか一方のみを感知する火災感知器と比べて、複数のセンサを備える複合型の火災感知器は製造費用が増加するという課題があった。
【0005】
本開示は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、熱検知用のセンサを用いることなく、煙が発生しない火災を感知することのできる煙感知器を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の煙感知器は、検煙部に向かって発光する発光素子と、検煙部に流入した流入物によって散乱した発光素子の光を受光する受光素子と、を有する煙感知器であって、第1壁部と、第2壁部と、第2壁部を直接的又は間接的に支持する支持部材と、を備え、第1壁部は、第2壁部がない場合に、発光素子からの光を反射させて受光素子に入射させる位置に設けられており、第2壁部は、発光素子と第1壁部との間を遮って発光素子からの光を受光素子以外の方向に反射させる、又は発光素子と第1壁部との間を遮って発光素子からの光を吸収するものであり、第2壁部又は支持部材は、火災による熱により少なくとも一部が変形又は溶融する材料で構成されている。
また、本開示の他の煙感知器は、検煙部に向かって発光する発光素子と、検煙部に流入した流入物によって散乱した発光素子の光を受光する受光素子と、を有する煙感知器であって、壁部を備え、壁部は、発光素子からの光を反射させて受光素子に入射させる位置に設けられており、壁部は、火災による熱により、光が透過する又は光を吸収する第1の色から光を反射させる第2の色に変化する塗料が塗布されている。
【発明の効果】
【0007】
本開示の煙感知器によれば、火災による熱により、発光素子からの光が壁部により反射され、受光素子に入射するようになる。よって、火災において煙が発生しない場合でも、発光素子からの光が受光素子に入射するため、熱検知用のセンサを用いることなく火災の発生を感知することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】実施の形態1に係る煙感知器をカバー本体と光学台カバーと固定部に分解してカバー本体側から見た斜視図である。
【
図2】実施の形態1に係る煙感知器の分解図である。
【
図3】実施の形態1に係る煙感知器をカバー本体と光学台カバーと固定部に分解して固定部側から見た斜視図である。
【
図4】実施の形態1に係る煙感知器の第1壁部と第2壁部を説明する図である。
【
図5】実施の形態1に係る煙感知器の第1壁部を説明する図である。
【
図6】実施の形態1に係る煙感知器の第2壁部を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本開示の実施の形態及び変形例について、図面を参照して説明する。本開示は、以下の実施の形態及び変形例に限定されるものではなく、本開示の主旨を逸脱しない範囲で種々に変形することが可能である。また、本開示は、以下の実施の形態及び変形例に示す構成のうち、組合せ可能な構成のあらゆる組合せを含むものである。また、以下の説明において、理解を容易にするために方向を表す用語(例えば「上」、「下」、「右」、「左」、「前」、「後」など)を適宜用いるが、これらは説明のためのものであって、本開示を限定するものではない。
【0010】
また、図面に示す装置は、本開示の装置の一例を示すものであり、図面に示された装置によって本開示の装置が限定されるものではない。また、各図において、同一の符号を付したものは、同一の又はこれに相当するものであり、これは明細書の全文において共通している。
【0011】
実施の形態1.
(煙感知器)
図1は、実施の形態1に係る煙感知器100をカバー本体10と光学台カバー20と固定部2に分解してカバー本体10側から見た斜視図である。煙感知器100は、カバー本体10と、複数の支柱11と、保護板12と、光学台カバー20と、光学台30と、基板40と、裏カバー50と、取付金具51とを備える。カバー本体10と、複数の支柱11と、保護板12と、光学台カバー20とが煙感知器100のカバー部1を構成する。
【0012】
カバー本体10は略ドーム形状を有する。カバー本体10には、複数の支柱11により保護板12が接続されている。複数の支柱11は、周方向に隙間SPを空けて設けられている。複数の支柱11のそれぞれは、例えば、略三角形状を有するリブである。複数の支柱11は、熱により容易に変形又は溶融する素材により構成される。例えば、複数の支柱11は、ABS樹脂又はACS樹脂により構成される。
【0013】
光学台カバー20は、カバー本体10側が略円形の平板20aで閉塞された円筒形状を有する。光学台カバー20は、カバー本体10の内側に収容される。より詳しくは、光学台カバー20は、保護板12と支柱11とカバー本体10とで囲まれた空間に収まり、保護板12と固定部2との間に保持される。光学台カバー20の内側には、光学台30が収容される。光学台カバー20は、熱により容易に変形又は溶融する素材により構成される。例えば、光学台カバー20は、ABS樹脂又はACS樹脂により構成される。
【0014】
固定部2は、光学台30と、基板40と、裏カバー50とから構成される。裏カバー50には、基板40が固定される。基板40は、裏カバー50に固定されればよく、固定方法については特に限定されない。裏カバー50には、基板40が固定された面とは反対の面に取付金具51が取り付けられる。固定部2は、取付金具51によって、設置面に設けられた受け具(図示せず)に取り付けられる。煙感知器100の設置面とは、天井又は壁などである。裏カバー50の直径は、カバー本体10の直径よりも短い。裏カバー50は、カバー本体10の内側に収容される。このため、カバー部1が固定部2を覆うことになり、カバー部1により固定部2が保護される。カバー部1と固定部2とが組み合わせられた構成については後述する。
【0015】
光学台30は、基板40に固定される。光学台30は、基板40に固定されればよく、固定方法については特に限定されない。光学台30は略円筒形状の部材である。光学台30は、外光が入ることを防ぐために、光学台カバー20に覆われる。光学台カバー20は、保護板12と支柱11とカバー本体10とで囲まれた空間に収まった状態で、保護板12により外側から、裏カバー50に向かって押さえつけられる。すなわち、光学台カバー20は、支柱11と保護板12により直接的に支持されている。そのため、光学台カバー20と光学台30とは、ねじなどで固定されなくてもよい。
【0016】
図2は、実施の形態1に係る煙感知器100の分解図である。
図2は、水平な天井に取り付けられた煙感知器100を分解して、斜め下方から見た状態を示す。このため、取付金具51が最上部に示され、カバー本体10が最下部に示されている。
【0017】
裏カバー50に固定される基板40には、後述する発光素子31と受光素子32とが設けられる。発光素子31及び受光素子32は、基板40の平面のうち、裏カバー50に接する平面とは反対の面に設けられる。発光素子31及び受光素子32は、基板40に固定された光学台30を貫通して、光学台カバー20に向かって延在する。
【0018】
発光素子31は、例えばLEDである。発光素子31は、所定のタイミングで、光学台30の内側に位置する検煙部34に向かって発光する。受光素子32は、例えばフォトダイオードである。受光素子32は、光学台30の検煙部34に煙などの流入物が入ると、発光素子31から出る光が流入物の粒子に反射して生じる散乱光を検出する。すなわち、煙感知器100は、光電式スポット型感知器である。検煙部34については後述する。
【0019】
光学台30の円筒形状の周壁35の内側には、ラビリンス壁36が設置されている。さらに光学台30の円筒形状の周壁35の内側には、第1壁部61が設けられる。ラビリンス壁36及び第1壁部61は、光学台30のベース板30aに設けられる。ラビリンス壁36及び第1壁部61は、光学台30のベース板30aから光学台カバー20に向かって延在する。第1壁部61は、光学台カバー20の平板20aに接触してもよい。第1壁部61についてのその他の詳細は後述する。
【0020】
図3は、実施の形態1に係る煙感知器100をカバー本体10と光学台カバー20と固定部2に分解して固定部2側から見た斜視図である。
図3に示すように、光学台カバー20の円筒形状の外周の内側には、第2壁部62が設けられる。すなわち、第2壁部62は、光学台カバー20に直接的に支持される。第2壁部62は、光学台カバー20の平板20aの光学台30側の面に設けられる。第2壁部62は、光学台カバー20の平板20aから固定部2に向かって延在する。第2壁部62は、光学台30のベース板30a(
図2参照)に接触してもよい。第2壁部62についてのその他の詳細は後述する。
【0021】
図4は、実施の形態1に係る煙感知器100の第1壁部61と第2壁部62を説明する図である。
図4の(a)は、煙感知器100を側面から見た図である。
図4の(b)は、
図4の(a)中のA-A断面を示す図である。
図4の(a)に示すように、煙感知器100を側面から目視した場合、固定部2は、カバー部1に覆われているため、裏カバー50に取り付けられる取付金具51の一部しか見えない。光学台カバー20は、カバー本体10の複数の支柱11の間の隙間SPから目視できる。
【0022】
図4の(b)に示すように、発光素子31から垂直に延びる第1仮想線L1と、受光素子32から垂直に延びる第2仮想線L2の交点を中心としたその周囲を検煙部34と称する。検煙部34は、光学台30の周壁35の内側に設けられた複数のラビリンス壁36よりも、光学台30の中心側にある。発光素子31は、光学台30の中心側に位置する検煙部34に向かって発光する。また、受光素子32は、検煙部34に流入した煙などの流入物によって散乱した発光素子31の光を受光する。
【0023】
図4の(b)に示すように、カバー部1と固定部2が組み合わせられた状態において、発光素子31と第1壁部61との間には、第2壁部62が位置する。第2壁部62の表面は光を反射する色で構成される。例えば、第2壁部62の表面は白色である。このため、発光素子31が検煙部34に向かって発する光は、第2壁部62により反射させられる。第2壁部62により反射した光は、光学台30の周壁35及びラビリンス壁36に吸収される。このため、定常時においては、第1壁部61に発光素子31から発せられた光は入射しない。また、第2壁部62の表面は、光を吸収する色で構成されてもよい。例えば、第2壁部62の表面は黒色である。この場合、発光素子31が検煙部34に向かって発する光は、第2壁部62に吸収される。このため、定常時においては、第1壁部61に発光素子31から発せられた光が入射しない。
【0024】
第2壁部62は、熱により容易に変形又は溶融する素材により構成される。例えば、第2壁部62は、ABS樹脂又はACS樹脂により構成される。第1壁部61は、耐熱温度が、第2壁部62の耐熱温度よりも高くなるように、第2壁部62とは異なる素材で構成してもよい。例えば、第1壁部61をポリカーボネートで構成してもよい。
【0025】
図5は、実施の形態1に係る煙感知器100の第1壁部61を説明する図である。
図5の(a)は、固定部2を側面から見た図である。
図5の(b)は、
図5の(a)中の矢印方向に固定部2を見た図である。
図4の(a)と
図5の(a)を比較すると分かるように、煙感知器100を側面から見た場合、固定部2はカバー部1に覆われるためその大部分が目視されない。
【0026】
第1壁部61は、光学台30のベース板30aに垂直に設けられて、発光素子31からの光を反射させて受光素子32に入射させる。第1壁部61は、発光素子31から発せられた光が入射する位置に設けられる。すなわち、第1壁部61は、発光素子31の光軸を中心とした照射角の範囲内に設置されている。受光素子32は、発光素子31からの光が第1壁部61で反射された反射光が入射する位置に設けられる。
【0027】
図5の(b)では、発光素子31から発せられて第1壁部61に入射する光を第1入射光71、第1壁部61で反射させられて受光素子32に入射する光を第1反射光81として矢印で概念的に示している。第1入射光71は、発光素子31の照射角内の光を代表したものである。また、第1壁部61の壁面に対して垂直な線を第3仮想線L3、発光素子31からの光が第1壁部61に入射する角度を角度θ1、発光素子31からの光が第1壁部61により反射する角度を角度φ1で表している。第1壁部61は、発光素子31からの光を受光素子32に入射するように反射させることができればよい。よって、角度θ1は特に限定されるものではない。例えば、発光素子31からの光が第1壁部61に入射する角度θ1は33°である。この場合、光の反射の法則により、発光素子31からの光が、第1壁部61により反射する角度φ1も33°である。
【0028】
図6は、実施の形態1に係る煙感知器100の第2壁部62を説明する図である。
図6の(a)は、カバー部1を側面から見た図である。
図6の(b)は、
図6の(a)中の矢印方向にカバー部1を見た図である。
【0029】
図6の(b)では、光学台カバー20が光学台30と組み合わせられた状態において、発光素子31が位置する領域を発光素子領域31aとして表し、受光素子32が位置する領域を受光素子領域32aとして示している。そして、発光素子31から発せられる光は、発光素子領域31aから発せられたように図示されている。また、
図6の(b)では、発光素子31から発せられた光が第2壁部62に入射する光を第2入射光72、第2壁部62で反射させられた反射光を第2反射光82として矢印で概念的に示している。第2入射光72は、発光素子31の照射角内の光を代表したものである。
【0030】
第2壁部62は、発光素子31から発せられた光が入射する位置に設けられる。すなわち、第2壁部62は、発光素子31の光軸を中心とした照射角の範囲内に設置されている。受光素子32は、第2壁部62で反射した発光素子31の反射光が入射しない位置に設けられる。すなわち、受光素子32は、第2壁部62からの反射光の光軸を中心とした照射角の範囲外に設置されている。
【0031】
また、
図6の(b)では、第2壁部62の壁面に対して垂直な線を第4仮想線L4、発光素子31からの光が第2壁部62に入射する角度を角度θ2、発光素子31からの光が第2壁部62により反射する角度を角度φ2で表している。第2壁部62は、発光素子31からの光が第1壁部61に入射することを防ぐ位置に設けられればよく、角度θ2は特に限定されるものではない。例えば、発光素子31からの光が第2壁部62に入射する角度θ2は30°である。この場合、光の反射の法則により、発光素子31からの光が、第2壁部62により反射する角度φ2も30°である。
【0032】
(煙感知処理)
以下、煙感知器100による煙感知処理を説明する。定常時においては、煙を含まない清浄な空気が、煙感知器100の検煙部34に流入物として流入する。このため、検煙部34において発光素子31からの光が散乱することはなく、第2壁部62が光を反射する色である場合は、発光素子31からの光は第2壁部62により反射させられ周壁35及びラビリンス壁36に吸収される。また、第2壁部62が光を吸収する色である場合は、発光素子31からの光は第2壁部62により吸収される。言い換えると、定常時においては、発光素子31からの光は第1壁部61には入射せず、受光素子32は発光素子31からの光を受光しない。
【0033】
火災発生時に煙が発生した場合、検煙部34に流入物として煙が流入する。発光素子31からの光は、検煙部34に流入した煙により散乱光となる。受光素子32は、この散乱光を受光する。煙感知器100は、受光素子32が散乱光を受光することで火災を感知する。
【0034】
しかし、火災発生時であっても煙が発生しない場合がある。本実施の形態においては、第2壁部62が熱により容易に変形又は溶融する素材により構成される。このため、発光素子31と第1壁部61との間を遮る第2壁部62が火災の熱により一部が変形又は溶融し、発光素子31からの光が第1壁部61に入射することになる。そうすると、受光素子32は、第1壁部61で反射された発光素子31の反射光を受光する。その結果、煙感知器100が火災を感知することができる。
【0035】
また、火災発生時に煙が発生しても、煙濃度が低レベルである場合など、受光素子32が受光する受光量が少なく、煙感知器100が火災と判定しないことがある。しかし、本実施の形態においては、第2壁部62が火災の熱により一部が変形又は溶融することで、発光素子31からの光が第1壁部61に入射することになる。そうすると、受光素子32は、第1壁部61で反射された発光素子31の反射光を受光する。その結果、受光素子32の受光量が増加するため、煙感知器100が火災と判定することができる。
【0036】
また、第1壁部61の耐熱温度が第2壁部62の耐熱温度より高い場合、火災が発生した場合の熱により、第2壁部62が第1壁部61よりも先に変形又は溶融することになる。このため、第2壁部62の一部が火災の熱により変形又は溶融した場合には、第1壁部61は火災の熱の影響を受けずに、発光素子31からの光を受光できる形態を保持できる。したがって、煙感知器100が、火災の熱により、より確実に火災を感知することができる。
【0037】
また、光学台カバー20も熱により容易に変形又は溶融する素材により構成される。このため、第2壁部62を直接的に支持する光学台カバー20が火災の熱により一部又は全部が変形又は溶融する。光学台カバー20が変形又は溶融すると、光学台カバー20に設けられている第2壁部62の位置や設置角度がずれる。第2壁部62の位置や設置角度がずれることで、発光素子31からの光が第2壁部62に反射しないため第1壁部61に入射することになる。そうすると、受光素子32は、第1壁部61で反射された発光素子31の反射光を受光する。その結果、煙感知器100が火災を感知することができる。
【0038】
また、上記以外に支柱11が熱により容易に変形又は溶融する素材により構成される形態がある。光学台カバー20は、保護板12と支柱11とカバー本体10とで囲まれた空間に収容されている。さらに、光学台カバー20と光学台30は固定されておらず、光学台カバー20は保護板12により固定部2に押しつけられることで、光学台30を覆っている。このような構成のため、支柱11が火災の熱により一部又は全部が変形又は溶融することで、保護板12が光学台カバー20を支持できなくなり光学台カバー20が落下したり、保護板12に支持されている光学台カバー20の位置がずれたりする。第2壁部62は光学台カバー20に設けられているため、光学台カバー20が落下すると第2壁部62が消失することになる。また、光学台カバー20の位置がずれると、光学台カバー20に設けられている第2壁部62の位置や設置角度もずれることになる。すなわち、第2壁部62を間接的に支持する支柱11が変形又は溶融することで、第2壁部62が消失したり、第2壁部62の位置や設置角度がずれたりして、発光素子31からの光が第2壁部62に反射せず第1壁部61に入射することになる。そうすると、受光素子32は、第1壁部61で反射された発光素子31の反射光を受光する。その結果、煙感知器100が火災を感知することができる。
【0039】
なお、光学台カバー20が外れたりずれたりすることで、光学台30に外光が入る場合がある。この場合、受光素子32の受光量が定常的に増加する。しかし、外光による受光量の増加は、受光素子32からの出力信号を処理する処理回路が備えるコンデンサによってノイズとしてカットされる。このため、外光により受光素子32の受光量が増加するだけでは、煙感知器100は火災とは判定しない。
【0040】
煙感知器100では、定常時においては発光素子31からの光が、第2壁部62及び/又は周壁35に吸収され、火災時においては、第2壁部62の少なくとも一部が欠損及び/又は移動することで、発光素子31からの光が、第1壁部61により受光素子32に向かって反射される関係が満たされればよい。発光素子31、受光素子32、第1壁部61、及び第2壁部62それぞれの設置位置及び設置角度などは特に限定されない。
【0041】
以上のように、本実施の形態に係る煙感知器100は、検煙部34に向かって発光する発光素子31と、検煙部34に流入した流入物によって散乱した発光素子31の光を受光する受光素子32と、を有し、第1壁部61と、第2壁部62と、第2壁部62を直接的又は間接的に支持する支持部材と、を備え、第1壁部61は、第2壁部62がない場合に、発光素子31からの光を反射させて受光素子32に入射させる位置に設けられており、第2壁部62は、発光素子31と第1壁部61との間を遮って発光素子31からの光を受光素子32以外の方向に反射させる、又は発光素子31と第1壁部61との間を遮って発光素子31からの光を吸収するものであり、第2壁部62又は支持部材は、火災による熱により少なくとも一部が変形又は溶融する材料で構成されている。
【0042】
当該構成において、第2壁部62を直接的に支持する支持部材とは光学台カバー20であり、第2壁部62を間接的に支持する支持部材とは支柱11及び保護板12である。第2壁部62、第2壁部62を直接的に支持する光学台カバー20、又は第2壁部62を間接的に支持する支柱11は、火災による熱により、少なくとも一部が変形又は溶融する。このため、発光素子31からの光が、第1壁部61により反射され、受光素子32に入射するようになる。よって、火災において煙が発生しない場合でも、発光素子31からの光が受光素子32に入射するため、煙感知器100は火災を感知することができる。
【0043】
また、本実施の形態に係る煙感知器100において、第1壁部61の耐熱温度は、第2壁部62の耐熱温度よりも高い。火災の熱により第2壁部62の一部が変形又は溶融しても、第1壁部61が発光素子31からの光を受光できる形態を保持できるため、煙感知器100はより確実に火災を感知することができる。
【0044】
実施の形態2.
実施の形態1では、第1壁部61と第2壁部62とを備えた煙感知器100を説明した。本実施の形態では、第2壁部62を備えず、光学台30に1つの反射壁を備えた煙感知器を説明する。以下、実施の形態1との相違点を中心に説明する。
【0045】
本実施の形態の煙感知器は、実施の形態1の第1壁部61と同様の位置に、色が変化する塗料が塗布された壁部を備える。しかし、実施の形態1とは異なり、第2壁部62を備えない。このため、定常時においても、壁部に発光素子31から発せられた光が入射する。
【0046】
壁部は、光が透過する又は光を吸収する色から、温熱により光を反射させる色に変化する。定常時には、壁部の色は、光が透過する又は光を吸収する色である。このため、定常時には、発光素子31からの光は、壁部を透過するか、壁部に吸収され、受光素子32は発光素子31の反射光を受光しない。しかし、火災が発生した場合、火災の熱により、壁部の色が光を反射させる色に変化する。このため、発光素子31からの光が壁部により反射させられ、受光素子32は発光素子31の反射光を受光する。その結果、煙感知器が火災を感知できる。壁部には、例えば、光を吸収する黒色から、周囲温度の上昇により光を反射させる白色に変化する塗料が塗布されている。
【0047】
以上のように、本実施の形態に係る煙感知器は、検煙部34に向かって発光する発光素子31と、検煙部34に流入した流入物によって散乱した発光素子31の光を受光する受光素子32と、を有する煙感知器であって、壁部を備え、壁部は、発光素子31からの光を反射させて受光素子32に入射させる位置に設けられており、壁部は、火災による熱により、光が透過する又は光を吸収する第1の色から光を反射させる第2の色に変化する塗料が塗布されている。
【0048】
このように煙感知器を構成した場合にも、火災による熱により、壁部が光を反射させる色に変化することで、発光素子31からの光が壁部により反射され、受光素子32に入射するようになる。よって、火災において煙が発生しない場合でも、発光素子31からの光が受光素子32に入射するため、煙感知器は火災を感知することができる。したがって、実施の形態1と同様の効果を得ることができる。
【0049】
<変形例>
上記の他の態様として、ラビリンス壁36を含む検煙部34の全体又は一部に、火災による熱により、光が透過する又は光を吸収する第1の色から光を反射させる第2の色に変化する塗料を塗布するものがあげられる。本変形例では実施の形態2とは異なり、第1壁部61と第2壁部62を備えない。定常時には、ラビリンス壁36を含む検煙部34又はその一部は光が透過するまたは光を吸収する色であり、火災が発生した際には、火災の熱によってラビリンス壁36を含む検煙部34全体またはその一部が光を反射させる第2の色に変化する。そうすることにより、第1壁部61と第2壁部62を備えていない構造のため、発光素子31からの光が受光素子32に直接入射することはないが、ラビリンス壁36を含む検煙部34全体又はその一部に反射した後に受光素子32に入る発光素子31からの光量が増加するため、煙が発生しない火災であっても発報することが可能な実施の形態1又は2と同様の効果を得ることができる。
【符号の説明】
【0050】
1 カバー部、2 固定部、10 カバー本体、11 支柱、12 保護板、20 光学台カバー、20a 平板、30 光学台、30a ベース板、31 発光素子、31a 発光素子領域、32 受光素子、32a 受光素子領域、34 検煙部、35 周壁、36 ラビリンス壁、40 基板、50 裏カバー、51 取付金具、61 第1壁部、62 第2壁部、71 第1入射光、72 第2入射光、81 第1反射光、82 第2反射光、100 煙感知器、L1 第1仮想線、L2 第2仮想線、L3 第3仮想線、L4 第4仮想線、SP 隙間、θ1 角度、θ2 角度、φ1 角度、φ2 角度。