(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023166068
(43)【公開日】2023-11-21
(54)【発明の名称】減光式流体検知装置
(51)【国際特許分類】
G01N 21/59 20060101AFI20231114BHJP
G08B 17/103 20060101ALI20231114BHJP
【FI】
G01N21/59 Z
G08B17/103
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022076825
(22)【出願日】2022-05-09
(71)【出願人】
【識別番号】000233826
【氏名又は名称】能美防災株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100127845
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 壽彦
(72)【発明者】
【氏名】横田 博之
【テーマコード(参考)】
2G059
5C085
【Fターム(参考)】
2G059AA01
2G059BB01
2G059CC19
2G059DD12
2G059EE01
2G059KK01
5C085AA03
5C085BA32
5C085CA08
5C085FA16
(57)【要約】
【課題】監視対象空間の状態に影響を与えないように粉塵等による汚損を防止して監視対象空間に存在する流体を正確に検知することができる減光式流体検知装置を提供する。
【解決手段】本発明に係る減光式流体検知装置1は、発光素子を有する発光部3と受光素子を有する受光部5とを監視対象空間を隔てて配置し、前記監視対象空間内に存在する流体を検知するものであって、発光素子又は受光素子の前方に気体による旋回流を発生させる旋回流発生空間と、該旋回流発生空間を囲む壁部とを備え、該壁部に設けられて前記旋回流発生空間内に前記気体を吐出して旋回流を発生させる第1吐出口29を有することを特徴とするものである。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
発光素子を有する発光部と受光素子を有する受光部とを監視対象空間を隔てて配置し、前記監視対象空間内に存在する流体を検知する減光式流体検知装置であって、
前記発光素子又は前記受光素子の前方に気体による旋回流を発生させる旋回流発生空間と、該旋回流発生空間を囲む壁部とを備え、
該壁部に設けられて前記旋回流発生空間内に前記気体を吐出して旋回流を発生させる第1吐出口を有することを特徴とする減光式流体検知装置。
【請求項2】
前記発光素子又は前記受光素子の前方にレンズが設けられ、
前記壁部における前記第1吐出口よりも後方に設けられて前記レンズ近傍に気体を吐出する第2吐出口を有することを特徴とする請求項1に記載の減光式流体検知装置。
【請求項3】
前記第2吐出口は、前記壁部の全周に亘って設けられていることを特徴とする請求項2に記載の減光式流体検知装置。
【請求項4】
前記第1吐出口に前記気体を供給する第1供給流路と前記第2吐出口に前記気体を供給する第2供給流路が前記壁部に設けられ、前記第1供給流路と前記第2供給流路が連通していることを特徴とする請求項2又は3に記載の減光式流体検知装置。
【請求項5】
前記第1吐出口は、前記壁部の前端近傍に設けられていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の減光式流体検知装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、監視対象空間内に存在する流体を検知する減光式流体検知装置に関する。
【背景技術】
【0002】
減光式流体検知装置の一例として、例えば、減光式煙濃度計がある。
減光式煙濃度計は、監視対象空間を隔てて配置される発光部と受光部からなり、発光部が発光した光が煙によって減光されることで、監視対象空間における煙濃度を検出するものである。
【0003】
従来の減光式煙濃度計は、発光部の発光素子及び受光部の受光素子の正面に設けられるレンズに煙が接触することで、煙に含まれる粉塵等によりレンズが汚損する場合があった。
発光部及び受光部のレンズが汚損すると、レンズの汚損によって発光部が発光した光が減光されるので、煙濃度測定の誤差の原因となっていた。
【0004】
上記のようなレンズの汚損を防止する方法が、例えば特許文献1に開示されている。
特許文献1の「防塵機構」は、レンズ前面に清浄な空気を吹き付けることでレンズの汚損を防止するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記特許文献1の方法において、レンズに吹き付けた防塵用の空気は監視対象空間に排出される。防塵用の空気が監視対象空間に排出されると監視対象空間の状態が乱れて変化するので、本来の煙濃度を正確に検出できないという問題がある。
なお、発光素子及び受光素子の正面にレンズが設けられていない場合も、発光素子及び受光素子が粉塵によって汚損されるので上記と同様の問題が生じる。
【0007】
本発明は、かかる課題を解決するためになされたものであり、監視対象空間の状態に影響を与えることなく粉塵等による汚損を防止して監視対象空間に存在する流体を正確に検知することができる減光式流体検知装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(1)本発明に係る減光式流体検知装置は、発光素子を有する発光部と受光素子を有する受光部とを監視対象空間を隔てて配置し、前記監視対象空間内に存在する流体を検知するものであって、前記発光素子又は前記受光素子の前方に気体による旋回流を発生させる旋回流発生空間と、該旋回流発生空間を囲む壁部とを備え、該壁部に設けられて前記旋回流発生空間内に前記気体を吐出して旋回流を発生させる第1吐出口を有することを特徴とするものである。
【0009】
(2)また、上記(1)に記載のものにおいて、前記発光素子又は前記受光素子の前方にレンズが設けられ、前記壁部における前記第1吐出口よりも後方に設けられて前記レンズ近傍に気体を吐出する第2吐出口を有することを特徴とするものである。
【0010】
(3)また、上記(2)に記載のものにおいて、前記第2吐出口は、前記壁部の全周に亘って設けられていることを特徴とするものである。
【0011】
(4)また、上記(2)又は(3)に記載のものにおいて、前記第1吐出口に前記気体を供給する第1供給流路と前記第2吐出口に前記気体を供給する第2供給流路が前記壁部に設けられ、前記第1供給流路と前記第2供給流路が連通していることを特徴とするものである。
【0012】
(5)また、上記(1)乃至(3)のいずれかに記載のものにおいて、前記第1吐出口は、前記壁部の前端近傍に設けられていることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明においては、発光素子又は前記受光素子の前方に気体による旋回流を発生させる旋回流発生空間と、旋回流発生空間を囲む壁部とを備え、壁部に設けられて旋回流発生空間内に気体を吐出して旋回流を発生させる第1吐出口を有することにより、気体を拡散させて排出することができる。したがって、排出された気体が監視対象空間の状態に影響を与えにくく、本来の監視対象空間の状態を正しく測定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】実施の形態にかかる減光式流体検知装置の発光部の断面図である。
【
図2】実施の形態にかかる減光式流体検知装置の全体構成を示す図である。
【
図3】
図1のA-A矢視端面図であり、第1吐出口の形状を示す図である。
【
図4】
図2のB-B断面図であり、気体の流れを示す図である。
【
図5】
図1の発光部において発生する旋回流と、発光部から排出される気体の流れを示す図である。
【
図6】実施例にかかる本発明例の流体解析の結果を示す図である(気体流量1L/mm)。
【
図7】実施例にかかる本発明例の流体解析の結果を示す図である(気体流量4L/mm)。
【
図8】実施例にかかる比較例の流体解析の結果を示す図である(気体流量1L/mm)。
【
図9】従来の減光式流体検知装置における課題を説明する図である(その1)。
【
図10】従来の減光式流体検知装置における課題を説明する図である(その2)。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の一実施の形態に係る減光式流体検知装置の説明に先立ち、まず、従来の減光式流体検知装置とその課題について、監視対象空間の煙の濃度を測定する煙濃度計を例に挙げて説明する。
【0016】
煙濃度計である従来の減光式流体検知装置は、発光素子を有する発光部と受光素子を有する受光部によって構成され、発光部と受光部を監視対象空間を隔てて対向配置し、発光部が発光する監視光が監視対象空間内に存在する煙によって減光されることで、監視対象空間(光路長)における煙濃度を検出するものである(
図2参照)。
【0017】
図9(a)、
図9(b)に、従来の減光式流体検知装置の発光部37における光軸方向の断面を模式的に示す。発光部37は、
図9(a)、
図9(b)に示すように、発光素子39の正面に設けられたレンズ9と、レンズ9を囲うように設けられた円筒状のフード部材11を備えている。
【0018】
従来の発光部37では、
図9(a)に示すように、フード部材11内に煙41が流入してフード部材11内に設けられたレンズ9に接触すると、
図9(b)に示すように、煙41に含まれる粉塵43等によってレンズ9が汚損されていた。レンズ9の表面が汚損されると、レンズ9に付着した粉塵43によって発光素子39が発光する監視光45が減光されるため、煙濃度測定の誤差の原因となっていた。
【0019】
そこで、特許文献1に開示されたように、レンズ9の表面に清浄な空気等の気体を吹き付けて粉塵43の付着を防止する方法(エアパージ)が用いられていた。
エアパージを用いる場合、例えば
図10(a)に示すように、発光部47のフード部材11におけるレンズ9の近傍に注入口31を設け、注入口31からパージ用気体25をレンズ9に向かって注入する。これにより、
図10(b)に示すように、フード部材11の内部に流入した煙41がパージ用気体25と共にフード部材11から排出されるので、レンズ9の汚損が防止できる。
【0020】
しかし、
図10の発光部47の場合、フード部材11から排出されたパージ用気体25が監視対象空間に流入する。前述したように、パージ用気体25が監視対象空間に流入すると監視対象空間の状態が乱れて変化するため、本来の煙濃度を正確に検出できないという問題がある。
【0021】
そこで発明者は、監視対象空間の状態に影響を与えにくいエアパージの方法を鋭意検討し、パージ用気体をフード部材から排出する際に監視対象空間に流入しにくいように拡散させて排出することで監視対象空間に流入するパージ用気体を低減できるという知見を得た。本発明はかかる知見に基づいてなされたものであり、以下本発明の一実施の形態について具体的に説明する。
【0022】
本実施の形態の減光式流体検知装置1は、
図2に示すように、発光素子を有する発光部3と受光素子を有する受光部5とを監視対象空間を隔てて配置し、監視対象空間内に存在する流体を検知するものである。発光部3と受光部5は光軸を合わせて固定板7に固定されている。
本実施の形態も前述した従来例と同様に、減光式流体検知装置1が監視対象空間の煙の濃度を測定する煙濃度計である場合を例に挙げて説明する。なお、本発明は煙濃度計の他、ガスの濃度を測定するガス濃度計等にも適用が可能であり、本実施の形態によって本発明を限定するものではない。
【0023】
図2に示した減光式流体検知装置1の発光部3について、
図1、
図3、
図4を用いてその構造を詳細に説明する。
図1は、発光部3の光軸方向における断面図である。
図3は、
図1のA-A矢視端面図であり、
図4は、
図3のB-B断面図である。なお、
図4においては、後述する第4フード片23を外した状態を図示している。
以下の発光部3の説明では、対向する受光部5側を前、受光部5側の反対側を後ろとしている。また、受光部5は発光部3と同様の構造であるため説明を省略する。
【0024】
本実施の形態の減光式流体検知装置1の発光部3は、
図1に示すように、発光素子(図示省略)と、発光素子の前方に設けられたレンズ9と、レンズ9の前方にレンズ9を囲むように設けられた円筒状のフード部材11を備えている。フード部材11は本発明の壁部に相当するものであり、フード部材11の内部空間が本発明の旋回流発生空間に相当する。
【0025】
フード部材11は4つの円筒状の部材から構成されており、これらの部材はボルト13によって連結されて、レンズが取り付けられた基端部15に接続されている(
図1、
図4参照)。フード部材11を構成する4つの部材を基端部15側から順に第1フード片17、第2フード片19、第3フード片21、第4フード片23とする。
【0026】
第2フード片19及び第3フード片21には、
図3、
図4に示すように、第2フード片19及び第3フード片21を軸方向に貫通するボルト孔27が、周方向に等間隔で4つ設けられている。ボルト孔27の内径はボルト13のボルト軸より大径に形成されており、ボルト13を挿通した状態でボルト軸との間に隙間が形成される。そして、この隙間が、後述する第1吐出口29にパージ用気体25を供給するための第1供給流路28となっている。なお、
図3においては、ボルト孔27の形状を分かりやすくするため、ボルト13の図示を省略している。また、
図4においても一部のボルト13の図示を省略している。
【0027】
第3フード片21の前端面には、
図3に示すように、ボルト孔27から第3フード片21の内面に至るように凹部21aが4つ形成されている。4つの凹部21aは第4フード片23が第3フード片21の前端面に組み合わされることで、フード部材11の内部にパージ用気体25を吐出する4つの第1吐出口29を形成する。
また、凹部21aにおけるボルト孔27から第3フード片21の内面に向かう方向は、
図3に示すように、第3フード片21の径方向から所定の角度θだけ傾いている。これにより、4つの第1吐出口29から図中の破線矢印に示すようにパージ用気体25が吐出され、これにより、フード部材11の内部にパージ用気体25による旋回流が発生する。
【0028】
第2フード片19には、
図1に示すように、パージ用気体25を注入するための注入口31が設けられている。また、第2フード片19の後端面には円環状に形成された凹溝部19aが設けられており、凹溝部19aは第1フード片17が第2フード片19の後端面に組み合わされることで第2供給流路33を形成する。
第2供給流路33は、
図4に示すように、第1供給流路28を形成するボルト孔27の後端と接続している。したがって、第1供給流路28は第2供給流路33と連通しており、注入口31から供給されるパージ用気体25は、第2供給流路33を介して第1供給流路28に供給される。
【0029】
第2供給流路33のレンズ9側の側壁には、
図1の拡大図に示すようにスリット状の第2吐出口35が設けられており、第2吐出口35からパージ用気体25がレンズ9の近傍に吐出される。
このスリット状の第2吐出口35はフード部材11の内周面全周に亘るように設けられているので、第2吐出口35からパージ用気体25が吐出されることで、パージ用気体25がレンズ9に満遍なく吹き付けられる。
なお、本実施の形態は第2吐出口35の形状を限定するものではないので、レンズ9の近傍にパージ用気体25を吐出するものであればどのような形状でも構わない。もっとも、本実施の形態の第2吐出口35のような全周に亘って連続するスリット形状や、複数の孔が全周に亘って間欠的に設けられている形状であると、効率的にレンズ9の汚損を防止できるのでより好ましい。
【0030】
上記のように構成された本実施の形態の減光式流体検知装置1におけるパージ用気体25の流れを
図4、
図5に基づいて具体的に説明する。なお、発光部3と受光部5は同様の構造であるため、下記の説明では発光部3を例に挙げて説明する。
図4、
図5共に、パージ用気体25の流れを矢印で示す。
【0031】
第2フード片19の注入口31(
図1参照)から注入されたパージ用気体25は、円環状の第2供給流路33に供給され、第2供給流路33を循環する。そして、
図4に示すように、第2供給流路33を循環するパージ用気体25の一部が第1供給流路28(ボルト孔27)に流入し、一部が第2吐出口35からレンズ9の近傍に吐出される。
第2吐出口35からパージ用気体25が吐出されることで、レンズ9の全周に亘るようにパージ用気体25が吹き付けられて、レンズ9に粉塵等が付着するのを防止する。その後、第2吐出口35から吐出されたパージ用気体25はフード部材11の前方へ流れる。
【0032】
一方、第1供給流路28(ボルト孔27)に流入したパージ用気体25は、フード部材11の前端近傍に形成された第1吐出口29から吐出される。第1吐出口29から吐出されたパージ用気体25は、
図5の濃いグレー矢印に示すように、フード部材11の内部で旋回流を形成する。
【0033】
そして、第2吐出口35から吐出されたパージ用気体25がフード部材11の前端近傍に到達すると、上述した旋回流に合流する。第2吐出口35から吐出されたパージ用気体25が第1吐出口29から吐出されたパージ用気体25による旋回流に合流すると、
図5の淡いグレー矢印に示すように、気流にねじれが生じる。フード部材11の内部でパージ用気体25の気流にねじれが生じることで、光軸と同方向であった流れ方向が光軸から逸れるような方向に変化する。これにより、パージ用気体25は、フード部材11の径外方向に拡散するようにフード部材11から排出される。
【0034】
なお、上述した拡散効果は、旋回流がフード部材11の前端近傍に発生することでより大きくなる。したがって、第1吐出口29はフード部材11の前端近傍に設けられているのが好ましい。
【0035】
上述したように、本実施の形態によれば、フード部材11の前端近傍にパージ用気体25を吐出して旋回流を発生させる第1吐出口29を設けたことにより、光軸方向から逸れるようにパージ用気体25を拡散させて排出することができる。これにより、光軸と同方向にパージ用気体25を排出していた従来例と比べてパージ用気体25が監視対象空間に流入しにくくなる。したがって、パージ用気体25が監視対象空間の状態に影響を与えにくくなり、本来の監視対象空間の状態を正しく検出することができる。
【0036】
なお、本実施の形態は、フード部材11の前端近傍にパージ用気体を吐出して旋回流を発生させる第1吐出口29と、レンズ9の近傍にパージ用気体25を吐出する第2吐出口35を備えたものであったが、本発明はこの限りではなく、第1吐出口29のみを備えたものでもよい。第1吐出口29のみが形成されている場合にも、フード部材11の内部には気流が生じるので、レンズ9の表面に粉塵が付着しにくい。また、旋回流を形成するパージ用気体25自体も、フード部材11から排出される際にはフード部材11の径外方向に拡散して排出されるので、実施の形態と同様、監視対象空間の状態に影響を与えにくい。もっとも、実施の形態のように第1吐出口29の後方に第2吐出口35を設けた場合にはフード部材11の後方から前方へ向かう気流が生じるので、パージ用気体25がフード部材11から排出されやすく、かつ外部の煙がフード部材11に流入しにくくなって好ましい。
また、他の態様として、第1吐出口29におけるボルト孔27から第3フード片21の内面に向かう方向を、第3フード片21の軸方向前方にさらに傾けるようにしてもよい。パージ用気体25を吐出する方向を、第3フード片21の径方向に対して所定の角度θで傾けると共に軸方向に対しても前方に傾けるようにすることで、発生した旋回流がフード部材11の前端方向に流れやすくなる。これにより、第2吐出口35を設けなくともパージ用気体25がフード部材11から排出されやすく、かつ外部の煙がフード部材11に流入しにくくなる。
【0037】
また、本実施の形態では、円筒状のフード部材11を用いて旋回流発生空間を形成するものであったが、旋回流発生空間を形成する方法としてはこの限りではなく、例えばコンクリート壁等に穿設された孔の内部にレンズを設置するような壁埋込式のものに本発明を適用してもよい。この場合、孔の内部空間が旋回流発生空間となるので、孔の側壁に第1吐出口や第2吐出口を設けてパージ用気体を孔内に供給するとよい。
【0038】
また、本実施の形態は、第1吐出口29にパージ用気体25を供給する第1供給流路28と第2吐出口35にパージ用気体25を供給する第2供給流路33とが連通するように構成された例であったが、第1供給流路28と第2供給流路33とを連通させず、それぞれにパージ用気体25を注入するようにしてもよい。
【0039】
なお、上記実施の形態は発光素子と受光素子の正面にレンズが設けられている例を挙げて説明したが、レンズが設けられていない場合にも本発明は効果的である。前述したように、発光素子及び受光素子の正面にレンズが設けられていない減光式流体検知装置の場合も、発光素子及び受光素子自体が粉塵等によって汚損されると測定誤差の原因となるので、本発明を適用することでこれを防止し、上記と同様の効果を得ることができる。
【実施例0040】
本発明の減光式流体検知装置による作用効果について、流体解析を行って具体的に確認したので、その結果について以下に説明する。
本発明例として、実施の形態で説明した減光式流体検知装置1の発光部3においてパージ用気体に窒素を用いてエアパージを行った場合の流体解析結果を
図6、
図7に示す。
図6はパージ用気体の流量を1L/minとした場合、
図7はパージ用気体の流量を4L/minとした場合の流体解析結果である。
【0041】
また、比較例として、第1吐出口29からパージ用気体を吐出しない場合、即ち、フード部材11内に旋回流を発生させなかった場合の流体解析結果を
図8に示す。
図8のパージ用気体の流量は
図6と同じ1L/minとした。
図6~
図8において、図中の矢印は気体の流れ方向、色の濃淡はパージ用気体である窒素と環境の空気との混合割合を表しており、色が濃い部分はパージ用気体の濃度が高く、色が薄い部分はパージ用気体の濃度が低いことを示している。
【0042】
図8に示す比較例では、パージ用気体が光軸と同方向でフード部材11から排出されており、特に光軸近傍でパージ用気体の濃度が濃く、監視対象空間に多くのパージ用気体が流入していることが分かる。
これに対し、
図6、
図7に示す本発明例では、フード部材11から排出されるパージ用気体がフード部材11の径外方向に拡散しており、比較例と比べて、監視対象空間にパージ用気体が流入しにくいのが分かる。
上記のように、フード部材11内に旋回流を発生させることで、監視対象空間にパージ用気体が流入しにくくなり、監視対象空間の状態に影響を与えにくくなることが確認できた。
【0043】
また、
図6、
図7を比較すると、パージ用気体の流量を増やすことで、より光軸から逸れるようにパージ用気体が排出されていることが分かる。これは、パージ用気体の流量増加に伴って旋回流の強さが増し、パージ用気体の拡散力が増すからである。この特性を用いれば、劣悪な測定環境、例えば、レンズ面に向かって強風が吹くような環境下でも優位に測定を行うことができる。レンズ面に向かう風が吹く場合、フード部材内に粉塵が入り込みやすくなるので、パージ用気体の流量を増加してこれに対抗する必要がある。しかし、従来例のようにパージ用気体の流量を増加すると、監視対象空間の状態に与える悪影響も大きくなる。
この点、本発明例であれば、パージ用気体の流量を増加しても監視対象空間の状態に与える悪影響は大きくならないので劣悪な測定環境にも好適である。