(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023166074
(43)【公開日】2023-11-21
(54)【発明の名称】保安装置及びその保安方法
(51)【国際特許分類】
G01F 3/22 20060101AFI20231114BHJP
【FI】
G01F3/22 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022076833
(22)【出願日】2022-05-09
(71)【出願人】
【識別番号】501418498
【氏名又は名称】矢崎エナジーシステム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100145908
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 信雄
(74)【代理人】
【識別番号】100136711
【弁理士】
【氏名又は名称】益頭 正一
(72)【発明者】
【氏名】永田 晃太
(72)【発明者】
【氏名】東 一裕
【テーマコード(参考)】
2F030
【Fターム(参考)】
2F030CB02
2F030CB03
2F030CC13
2F030CE09
2F030CE17
2F030CF11
(57)【要約】
【課題】より適切な保安処理を実行することができる保安装置及びその保安方法を提供する。
【解決手段】ガスメータ20は、1又は複数台の検知装置10から監視領域における異常状態を示す異常情報を受信する。ガスメータ20は、1又は複数台の検知装置10からの異常情報に基づいて保安処理を実行する制御部を備え、制御部は、複数の異常情報の組合せに基づいて保安処理の内容を変更する。制御部は、複数の異常情報が特定の組合せに該当する場合、遮断弁を即時遮断に変更したり、発呼先を周囲のガスメータ20aに変更したりする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
監視領域における異常状態を検知する1又は複数台の検知装置から、監視領域における異常状態を示す異常情報を受信する保安装置において、
前記1又は複数台の検知装置からの前記異常情報に基づいて保安処理を実行する保安処理部を備え、
前記保安処理部は、複数の前記異常情報の組合せに基づいて保安処理の内容を変更する
ことを特徴とする保安装置。
【請求項2】
前記保安処理部は、複数の前記異常情報が特定の組合せに該当する場合、遮断弁を即時遮断に変更する
ことを特徴とする請求項1に記載の保安装置。
【請求項3】
前記保安処理部は、複数の前記異常情報が特定の組合せに該当する場合、発呼先を周囲のガスメータに変更する
ことを特徴とする請求項1に記載の保安装置。
【請求項4】
監視領域における異常状態を検知する1又は複数台の検知装置から、監視領域における異常状態を示す異常情報を受信する保安装置の保安方法において、
前記1又は複数台の検知装置からの前記異常情報に基づいて保安処理を実行する保安工程を備え、
前記保安工程では、複数の前記異常情報の組合せに基づいて保安処理の内容を変更する
ことを特徴とする保安装置の保安方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、保安装置及びその保安方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ガスメータや遮断弁の保安装置とガス警報器や火災報知器の検知装置とを無線接続して情報の送受信を行う無線システムが提案されている(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の無線システムでは、検知装置からの情報に基づいてガスメータ内の遮断弁を動作させる等の保安を行うことが可能である。しかし、このような無線システムでは、検知装置からの誤った情報に基づいて遮断弁を動作させたり、保安装置がガス管理センター等と通信接続されている場合にはガス管理センター等に誤った通信をしてしまったりすることがあり、適切な保安を行うことについて問題があるものであった。
【0005】
本発明はこのような従来の課題を解決するためになされたものであり、その目的とするところは、より適切な保安処理を実行することができる保安装置及びその保安方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の保安装置は、監視領域における異常状態を検知する1又は複数台の検知装置から、監視領域における異常状態を示す異常情報を受信する保安装置において、前記1又は複数台の検知装置からの前記異常情報に基づいて保安処理を実行する保安処理部を備え、前記保安処理部は、複数の前記異常情報の組合せに基づいて保安処理の内容を変更する。
【0007】
また、本発明の保安装置の保安方法は、監視領域における異常状態を検知する1又は複数台の検知装置から、監視領域における異常状態を示す異常情報を受信する保安装置の保安方法において、前記1又は複数台の検知装置からの前記異常情報に基づいて保安処理を実行する保安工程を備え、前記保安工程では、複数の前記異常情報の組合せに基づいて保安処理の内容を変更する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、より適切な保安処理を実行することができる保安装置及びその保安方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の実施形態に係る保安装置を含む通信システムの構成図である。
【
図2】
図1に示したガスメータの詳細を示す機能構成図である。
【
図3】本実施形態に係る保安方法の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を好適な実施形態に沿って説明する。なお、本発明は以下に示す実施形態に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において適宜変更可能である。また、以下に示す実施形態においては、一部構成の図示や説明を省略している箇所があるが、省略された技術の詳細については、以下に説明する内容と矛盾が発生しない範囲内において、適宜公知又は周知の技術が適用されていることはいうまでもない。
【0011】
図1は、本発明の実施形態に係る保安装置を含む通信システムの構成図である。
図1に示す通信システム1は、複数の検知装置10と、ガスメータ(保安装置)20との間で無線通信を行うものである。
【0012】
検知装置10は、例えばガス警報器や火災報知器であって、監視領域における異常状態を検知するものである。ガス警報器は、都市ガス、LPガス及び一酸化炭素等の検知対象ガスの高濃度異常を検知して、その旨を報知するものである。火災報知器は、熱や煙及び一酸化炭素等が火災時のものに相当するかを検知して、火災時に相当する場合にはその旨を報知するものである。
【0013】
ガスメータ20は、需要者側で使用されるガスを計量するものである。
図2は、
図1に示したガスメータ20の詳細を示す機能構成図である。
図2に示すガスメータ20は、流量センサ21と、制御部(保安処理部)22と、表示部23と、遮断弁24と、通信部25とを備えている。
【0014】
流量センサ21は、例えば超音波センサによって構成され、流路における燃料ガスの流速を計測し、流速と流路断面積とに基づいて単位時間当たりのガス流量を算出するものである。流量センサ21は、算出した単位時間当たりのガス流量の情報を制御部22に送信する。
【0015】
制御部22は、ガスメータ20の全体を制御するものであって、漏洩や地震等の検知時に遮断弁を弁閉させて保安を図る機能等を有している。また、制御部22は、流量センサ21から送信される単位時間当たりのガス流量の情報に基づいてガスの積算流量を表示部23に表示させるようになっている。また、制御部22は、記憶部22aを備えている。記憶部22aはガスメータ20が動作するのに必要なプログラム及びデータ等が記憶されたものである。
【0016】
表示部23は、ガスの積算流量を表示させるものである。また、表示部23は、遮断弁24が弁閉状態であるのか、遮断弁24の弁閉時における遮断理由、及び、警告内容等を表示する。
【0017】
遮断弁24は、ガスメータ20内の流路を解放したり閉塞したりするものである。遮断弁24が閉塞状態(弁閉状態)となると需要側への燃料ガスの供給が遮断されることとなる。
【0018】
通信部25は、検知装置10(
図1参照)と通信を行うものである。通信部25は、制御部22によって生成される電文を検知装置10に対して無線送信することで、相手側に自己の状態を伝達したり、相手側に対して所定の動作を要求したり等する。また、通信部25は、検知装置10からも電文を受信する。本実施形態において検知装置10は、少なくとも自己が監視領域における異常状態を検知した場合、異常内容と異常レベルとを含む異常情報を送信する。ここで、検知装置10がガス警報器である場合、異常内容とはガス漏れやCO検知等であり、異常レベルはガス濃度やCO濃度である。また、検知装置10が火災報知器である場合、異常内容とは熱検知や煙検知等であり、異常レベルは温度や煙の濃さである。本実施形態においてガスメータ20の通信部25は、このような異常内容と異常レベルとを含む異常情報の情報を受信する。なお、通信部25は、検知装置10より無線にて異常情報を受信する場合には限らず、有線にて異常情報を受信してもよい。
【0019】
さらに、本実施形態において制御部22は、受信した異常情報に基づいて保安処理を実行する。一例を挙げると、制御部22は、異常情報を受信した場合、例えば所定時間待機のうえ異常状態が継続しているようであれば遮断弁24を弁閉する処理(保安処理の1つ)を実行したり、その旨をガス事業者30(
図1参照)へ通知する処理(保安処理の1つ)を実行したりする。このとき、制御部22は、所定時間待機することで、例えばスプレー等のガスに反応したり、焼肉等の煙に反応したりといった一時的な異常検知に基づいて遮断弁24が弁閉しないようにしている。
【0020】
加えて、本実施形態において制御部22は、1又は複数台の検知装置10から受信した複数の異常情報の組合せに基づいて保安処理の内容を変更する。例えば、制御部22は、通信部25を介して異なる検知装置10から異常内容がガス漏れである旨の異常情報を受信した場合、ガス漏れの可能性が高いことから、待機時間を待つことなく即時に遮断弁24を弁閉させる。同様に、制御部22は、同一又は異なる検知装置10から異常内容がCO異常と煙異常との異常情報を受信した場合、火災の可能性が高いことから、待機時間を待つことなく即時に遮断弁24を弁閉させる。さらに、制御部22は、火災の可能性が高いことから、周囲のガスメータ20a(
図1参照)に対して通信を行う。これを受けた周囲のガスメータ20aは例えば遮断弁24を閉じることとなる。すなわち、制御部22は、通常ではガス事業者30へ行う発呼先を周囲のガスメータ20aに変更する。
【0021】
さらに、制御部22は、異常内容の組合せに限らず、異常レベルを加えた特定の組合せが成立するときに保安処理の内容を変更することが好ましい。すなわち、制御部22は、異常内容について特定の組合せに該当し、異常レベルも特定の組合せに該当する場合に保安処理の内容を変更することが好ましい。例えば制御部22は、異なる検知装置10から高濃度(異常レベル)のガス漏れである旨の異常情報を受信した場合、ガス漏れの可能性が高いことから、待機時間を待つことなく即時に遮断弁24を弁閉させる等、保安処理の内容を変更するようにしてもよい。同様に、制御部22は、同一又は異なる検知装置10から高レベル(異常レベル)のCO異常と高レベル(異常レベル)の煙異常との異常情報を受信した場合、火災の可能性が高いことから、待機時間を待つことなく即時に遮断弁24を弁閉させる等、保安処理の内容を変更するようにしてもよい。なお、この場合において、制御部22は、高レベルのCO異常と高レベルの煙異常とであることから燻燃火災である等、検知装置10よりも詳細な異常状態を判断するようにしてもよい。
【0022】
次に、本実施形態に係るガスメータ20の処理を説明する。
図3は、本実施形態に係る保安方法の一例を示すフローチャートである。
【0023】
まず、ガスメータ20の制御部22は、異常情報を受信したかを判断する(S1)。異常情報が受信されていない場合(S1:NO)、異常情報が受信されるまで、この処理が繰り返される。
【0024】
異常情報が受信された場合(S1:YES)、制御部22は、異常情報を複数受信したかを判断する(S2)。異常情報が複数受信されていない場合(S2:NO)、処理はステップS4に移行する。
【0025】
異常情報が複数受信された場合(S2:YES)、制御部22は、異常情報が特定の組合せであるかを判断する(S3)。異常情報が特定の組合せでない場合(S3:NO)、処理はステップS4に移行する。
【0026】
ステップS4において制御部22は、ステップS1において異常情報を受信してから所定時間経過したかを判断する(S4)。所定時間が経過した場合(S4:YES)、制御部22は、通常の保安処理(本実施形態において遮断弁24の弁閉や、ガス事業者30への発呼)を実行する(S5)。その後、
図3に示す処理は終了する。
【0027】
一方、所定時間が経過していない場合(S4:NO)、処理はステップS2に移行する。また、異常情報が特定の組合せである場合(S3:YES)、制御部22は、通常の保安処理と異なる特定の保安処理(本実施形態において遮断弁24の即時遮断や、周囲のガスメータ20aへの通知)を実行する(S6)。その後、
図3に示す処理は終了する。
【0028】
このようにして、本実施形態に係るガスメータ20によれば、制御部22は、複数の異常情報の組合せに基づいて保安処理の内容を変更する。このため、例えば検知装置10において誤った異常検出の可能性があるときには保安処理(遮断弁24の弁閉等)については所定の待機時間を設けるところ、異常検出の誤りの可能性が非常に低いときには即時に特定の保安処理を行うことができる。従って、より適切な保安処理を実行することができる。
【0029】
また、複数の異常情報が特定の組合せに該当する場合、遮断弁24を即時遮断に変更する。このため、複数の異常情報の組合せによって異常検出の誤りの可能性が非常に低いか否かを判断でき、非常に低いときに即時に遮断弁24を閉じることができる。これにより、例えば火災やガス漏れの可能性が高い場合に遮断弁24を即時遮断して、より一層適切な保安処理を実行することができる。
【0030】
また、複数の異常情報が特定の組合せに該当する場合、発呼先を周囲のガスメータ20aに変更する。このため、複数の異常情報の組合せによって異常検出の誤りの可能性が非常に低いか否かを判断でき、非常に低いときに周囲のガスメータ20aへ通知して、周囲のガスメータ20aにおける遮断弁24の遮断等につなげることができる。これにより、例えば火災やガス漏れの可能性が高い場合に周囲への影響も考慮した保安処理とでき、より一層適切な保安処理を実行することができる。
【0031】
以上、実施形態に基づき本発明を説明したが、本発明は上記実施形態に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、適宜公知や周知の技術や他の技術を組合せてもよい。
【0032】
例えば本実施形態においては検知装置10とガスメータ20との通信に基づいてガスメータ20が保安処理の内容を変更しているが、特に保安を行う装置であればガスメータ20に限らず、例えばガス流路に設けられる単体の遮断弁であってもよいし、厨房用の自動消火装置であってもよい。
【0033】
また、検知装置10とガスメータ20との通信については有線であっても無線であってもよく、特に無線である場合には通信機能部が外付けされるようになっていてもよい。このため、例えば通信機能を備えないガスメータに中継器(通信部25)が外付けされてガスメータ20が構成されてもよい。外付けに関しては、通信機能を備えないガスメータと中継器とが通信線を介して接続されていてもよいし、通信機能を備えないガスメータの端子台等の端子部に中継器の端子が直接接続されて通信線を介在しない接続がされてもよい。検知装置10も同様である。
【0034】
さらに、制御部22は、例えば火災等の異常状態が広がる様子を想定して最初に異常状態が検知された検知装置10の次に距離的に近い検知装置10において異常状態が検知されたか否かについても特定の組合せとして判断してもよい。
【符号の説明】
【0035】
1 :通信システム
10 :検知装置
20 :ガスメータ(保安装置)
20a:周囲のガスメータ
22 :制御部(保安処理部)
24 :遮断弁