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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023166078
(43)【公開日】2023-11-21
(54)【発明の名称】誘導加熱調理器
(51)【国際特許分類】
   H05B 6/12 20060101AFI20231114BHJP
【FI】
H05B6/12 334
H05B6/12 312
H05B6/12 324
H05B6/12 303
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022076842
(22)【出願日】2022-05-09
(71)【出願人】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000176866
【氏名又は名称】三菱電機ホーム機器株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100116964
【弁理士】
【氏名又は名称】山形 洋一
(74)【代理人】
【識別番号】100120477
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 賢改
(74)【代理人】
【識別番号】100135921
【弁理士】
【氏名又は名称】篠原 昌彦
(74)【代理人】
【識別番号】100083840
【弁理士】
【氏名又は名称】前田 実
(72)【発明者】
【氏名】吉田 秀人
(72)【発明者】
【氏名】竹下 みゆき
(72)【発明者】
【氏名】岩蕗 寛康
(72)【発明者】
【氏名】文屋 潤
(72)【発明者】
【氏名】栗城 勇介
(72)【発明者】
【氏名】倉本 康司
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 匡薫
【テーマコード(参考)】
3K151
【Fターム(参考)】
3K151CA01
3K151CA24
3K151CA48
3K151CA71
(57)【要約】
【課題】被加熱物についての情報を容易に得ることができる誘導加熱調理器を提供する。
【解決手段】誘導加熱調理器1は、直流電圧を高周波電圧に変換して出力するインバータ13と、被加熱物16を熱する加熱コイル15と、被加熱物16の負荷特性を検知する負荷特性検知手段17と、インバータ13を制御するとともに、負荷特性検知手段17によって検知された検知結果に基づく負荷特性に関する情報を出力する制御装置19と、制御装置19から出力された情報を、誘導加熱調理器1の使用者に報知する報知手段18とを備える。被加熱物16が予め定められた位置に載置された場合、報知手段18は、使用者に情報を報知する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
誘導加熱調理器であって、
直流電圧を高周波電圧に変換して出力するインバータと、
前記高周波電圧が印加され、被加熱物を熱する加熱コイルと、
前記被加熱物の負荷特性を検知する負荷特性検知手段と、
前記インバータを制御するとともに、前記負荷特性検知手段によって検知された検知結果に基づく前記負荷特性に関する情報を出力する制御装置と、
前記制御装置から出力された前記情報を、前記誘導加熱調理器の使用者に報知する報知手段と
を備え、
前記被加熱物が予め定められた位置に載置された場合、前記報知手段は、前記使用者に前記情報を報知する
ことを特徴とする誘導加熱調理器。
【請求項2】
前記情報は、前記被加熱物に対して出力可能な前記加熱コイルの最大出力値を含むことを特徴とする請求項1に記載の誘導加熱調理器。
【請求項3】
前記情報は、前記被加熱物に対する加熱のしやすさを示す指標を含むことを特徴とする請求項1又は2に記載の誘導加熱調理器。
【請求項4】
前記負荷特性検知手段は、前記予め定められた位置における前記被加熱物の有無の検知を常に実行しており、
前記負荷特性検知手段は、前記予め定められた位置に載置された前記被加熱物を検知した時点で、前記負荷特性に関する前記情報の取得を実行する
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の誘導加熱調理器。
【請求項5】
前記負荷特性検知手段は、前記予め定められた位置における前記被加熱物の有無の検知を一定時間間隔で実行しており、
前記負荷特性検知手段は、前記予め定められた位置に載置された前記被加熱物を検知した時点で、前記負荷特性に関する前記情報の取得を実行する
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の誘導加熱調理器。
【請求項6】
前記使用者が操作可能な負荷特性取得指示手段をさらに備え、
前記制御装置は、前記負荷特性取得指示手段からの指示に基づいて前記被加熱物の前記負荷特性を前記負荷特性検知手段から取得し、前記負荷特性に関する情報を前記報知手段に向けて出力する
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の誘導加熱調理器。
【請求項7】
前記負荷特性検知手段は、前記予め定められた位置に載置された前記被加熱物を検知した場合、前記負荷特性に関する前記情報の取得を実行することを特徴とする請求項6に記載の誘導加熱調理器。
【請求項8】
前記誘導加熱調理器は、もう1つのインバータをさらに備え、
前記制御装置は、複数の前記インバータが同時に駆動しないように、複数の前記インバータの各々を間欠駆動させる
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の誘導加熱調理器。
【請求項9】
前記誘導加熱調理器は、もう1つの加熱コイルをさらに備え、
前記使用者に報知される前記情報には、複数の前記加熱コイルのうちの第1の加熱コイルによる加熱状況に応じた、複数の前記加熱コイルのうちの第2の加熱コイルの情報が含まれることを特徴とする請求項8に記載の誘導加熱調理器。
【請求項10】
前記誘導加熱調理器は、もう1つの加熱コイルをさらに備え、
複数の前記加熱コイルのうちの第1の加熱コイルが前記被加熱物を熱している場合に、複数の前記加熱コイルのうちの第2の加熱コイルによって加熱される位置にもう1つの被加熱物が載置されたとき、前記使用者に報知される前記情報には、前記第1の加熱コイルが加熱を行っている状態での前記第2の加熱コイルの最大出力を示す情報と、前記第1の加熱コイルが加熱を停止した状態での前記第2の加熱コイルの最大出力を示す情報とが含まれることを特徴とする請求項8に記載の誘導加熱調理器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、誘導加熱調理器に関する。
【背景技術】
【0002】
加熱コイルにおける加熱出力を段階的に調整するとともに動作時間を適切に制御することで、部品の過度な発熱を防止する誘導加熱調理器が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2020-042969号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の技術では、加熱しやすさなどの、被加熱物についての情報を事前に知ることができないという課題がある。
【0005】
本開示の目的は、上記のような問題を解決するためになされたものであり、加熱しやすさなどの、被加熱物についての情報を容易に得ることができる誘導加熱調理器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様に係る誘導加熱調理器は、
直流電圧を高周波電圧に変換して出力するインバータと、
前記高周波電圧が印加され、被加熱物を熱する加熱コイルと、
前記被加熱物の負荷特性を検知する負荷特性検知手段と、
前記インバータを制御するとともに、前記負荷特性検知手段によって検知された検知結果に基づく前記負荷特性に関する情報を出力する制御装置と、
前記制御装置から出力された前記情報を、前記誘導加熱調理器の使用者に報知する報知手段と
を備え、
前記被加熱物が予め定められた位置に載置された場合、前記報知手段は、前記使用者に前記情報を報知する
ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、使用者は、予め定められた位置に被加熱物を載置することにより、加熱しやすさなどの、その被加熱物についての情報を容易に得ることができる誘導加熱調理器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施の形態1に係る誘導加熱調理器の構成を概略的に示す図である。
図2】被加熱物の種類に対する、負荷特性及び加熱のしやすさを示す図である。
図3】実施の形態1に係る誘導加熱調理器における被加熱物の負荷特性を使用者に報知するための制御装置の動作の一例を概略的に示すフローチャートである。
図4】実施の形態2に係る誘導加熱調理器の構成を概略的に示す図である。
図5】実施の形態2に係る誘導加熱調理器における被加熱物の負荷特性を使用者に報知するための制御装置の動作の一例を概略的に示すフローチャートである。
図6】実施の形態3に係る誘導加熱調理器の構成を概略的に示す図である。
図7】実施の形態3に係る誘導加熱調理器における被加熱物の負荷特性を使用者に報知するための制御装置の動作の一例を概略的に示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
実施の形態1.
図1は、実施の形態1に係る誘導加熱調理器1の構成を概略的に示す図である。
図1に示される誘導加熱調理器1は、整流回路11、フィルタ12、インバータ13、共振コンデンサ14、加熱コイル15、被加熱物16、負荷特性検知手段17、報知手段18、および制御装置19を有する。
【0010】
交流電源10は、例えば、商用電源、電力変換器などの電源である。例えば、誘導加熱調理器1が家庭用誘導加熱調理器の場合、交流電源10は商用電源である。
【0011】
図1に示される例では、整流回路11は、交流電源10に接続されている。整流回路11は、交流電源10から入力された交流電圧を直流電圧に変換する。図1に示される例では、交流電源10から入力された交流電圧が整流回路11によって直流電圧に変換されるが、本実施の形態はこの構成に限られない。例えば、整流回路11を使用せずに、直流電源からフィルタ12に直流電圧が供給されてもよい。
【0012】
フィルタ12は、整流回路11とインバータ13との間に設けられており、整流回路11及びインバータ13に接続されている。フィルタ12は、インバータ13より発生するノイズを除去するものである。図1に示される例では、フィルタ12は、LCフィルタである。ただし、LCフィルタとは異なる構成のパッシブフィルタをフィルタ12として使用しても良く、能動素子を用いたアクティブフィルタをフィルタ12として使用しても良い。
【0013】
インバータ13は、フィルタ12と共振コンデンサ14との間に設けられており、フィルタ12及び共振コンデンサ14に接続されている。インバータ13は、高周波電圧を出力し、共振コンデンサ14及び加熱コイル15に向けて高周波電流を流す。
【0014】
インバータ13は、直流電圧を数十kHzの高周波電圧に変換して出力する。図1に示される例では、インバータ13は、二つのスイッチング素子によって構成されるハーフブリッジインバータ回路を有する。ただし、インバータ13は図1に示される例に限られず、他の回路構成でも良い。例えば、インバータ13は、4つのスイッチング素子によって構成されるフルブリッジインバータ回路を有しても良く、単一のスイッチング素子を用いるシングルエンデッドインバータ回路を有しても良い。
【0015】
高周波電圧は、共振コンデンサ14及び加熱コイル15に印加される。
共振コンデンサ14と加熱コイル15は、インバータ13の出力電圧を受けて高周波電流が流れる共振負荷であり、それぞれインバータ13の出力端子に対して直列接続される。
【0016】
加熱コイル15は、被加熱物16を熱する。被加熱物16は、例えば、加熱コイル15の上に載置され電磁誘導の原理により加熱される調理容器である。
電磁誘導により被加熱物16に渦電流が流れると、被加熱物16にジュール熱が発生し、被加熱物16が加熱される。
【0017】
図1に示される例では、整流回路11、フィルタ12、インバータ13、共振コンデンサ14、および加熱コイル15がそれぞれ一つずつ接続されているが、これら全ての要素または一部の要素が複数接続されていても良い。すなわち、図1に示される各要素の個数は、図1に示される例に限定されない。
【0018】
負荷特性検知手段17は、加熱コイル15上に載置された被加熱物16の電気特性などの負荷特性を検知する。例えば、負荷特性検知手段17は、予め定められた位置における被加熱物16の有無の検知を常に実行している。負荷特性検知手段17は、予め定められた位置における被加熱物16の有無の検知を一定時間間隔で実行しても良い。予め定められた位置は、加熱コイル15によって加熱される位置であり、例えば、加熱コイル15上の位置である。負荷特性検知手段17は、予め定められた位置に載置された被加熱物16を検知した時点で、被加熱物16の負荷特性に関する情報の取得を実行する。被加熱物16の負荷特性に関する情報は、例えば、被加熱物16に対して出力可能な加熱コイル15の最大出力値、被加熱物16に対する加熱のしやすさを示す指標などの情報を含む。
【0019】
図1に示される例では、負荷特性検知手段17は、電圧検出手段171と、電流検出手段172とを有する。
【0020】
電圧検出手段171は、インバータ13から出力される電圧を検出する。
【0021】
電流検出手段172は、加熱コイル15に流れる電流を検出する。
【0022】
本実施の形態では、負荷特性検知手段17は、インバータ13から出力される電圧を検出し、且つ加熱コイル15に流れる電流を検出することによって、被加熱物16の負荷特性を検知する。ただし、負荷特性検知手段17は、電圧又は電流を検出する方法以外の方法によって被加熱物16の負荷特性を検知してもよい。また、負荷特性検知手段17を、二つの電圧検出手段で構成するなど、検出する電圧や電流の組み合わせを変えても良い。
【0023】
報知手段18は、負荷特性検知手段17によって検知された検知結果に基づく被加熱物16の負荷特性に関する情報を、誘導加熱調理器1の使用者に報知する。以下、「誘導加熱調理器1の使用者」を単に「使用者」ともいう。被加熱物16に対する加熱のしやすさを示す指標は、例えば、被加熱物16の電気抵抗値である。
【0024】
被加熱物16が予め定められた位置に載置された場合、報知手段18は、使用者に被加熱物16の負荷特性に関する情報を報知する。報知手段18によって使用者に報知される情報は、例えば、被加熱物16を用いた時に設定可能な最大火力を示す数値、被加熱物16の加熱しやすさを示す5段階の数値、又はこれらの数値を表すグラフでもよい。
【0025】
報知手段18は、例えば、情報が表示されるディスプレイでもよく、音又は音声等を発してもよく、光を点灯又は点滅させるランプ等でもよい。また、報知手段18は、他の異なる情報を報知する手段と共用されてもよく、必ずしも専用の報知手段である必要はない。
【0026】
制御装置19は、負荷特性検知手段17から入力された誘導加熱調理器1の動作状態に基づいてインバータ13の駆動信号を生成し、インバータ13を制御する。制御装置19は、負荷特性検知手段17によって検知された検知結果に基づく負荷特性に関する情報を報知手段18に向けて出力する。
【0027】
実施の形態1におけるインバータ13は、少なくとも以下の三つの動作状態を有する。インバータ13の第一の状態は、被加熱物16の有無を検知している状態である。インバータ13の第二の状態は、被加熱物16の負荷特性を検知している状態である。インバータ13の第三の状態は、被加熱物16を加熱している状態である。
【0028】
インバータ13の第一の状態において、制御装置19は、被加熱物16の有無を検知するための動作として、例えば、短いパルス電圧を定期的に出力して負荷特性検知手段17から得られる情報で負荷の変化を判断する、などの方法で被加熱物16の存在を検知する。
【0029】
被加熱物16の有無を検知する方法として、物理的なセンサ、温度情報などのインバータ13を使用しない手段によって検知する方法を用いてもよい。この場合、インバータ13はスイッチングを行わない待機状態となる。
【0030】
インバータ13の第二の状態において、予め定められた位置に載置された被加熱物16の負荷特性を検知するためにインバータ13は出力周波数をスイープする動作を行う。制御装置19は、インバータ13の第二の状態における負荷特性検知手段17の検知結果に基づいて負荷特性を取得する。
【0031】
インバータ13の第三の状態において、制御装置19は、負荷特性検知手段17から得られた負荷特性及び使用者の設定火力に基づいて設定された駆動周波数でインバータ13を制御する。これにより、制御装置19によって制御された電力で被加熱物16が加熱される。
【0032】
図2は、被加熱物16の種類に対する、負荷特性及び加熱のしやすさを示す図である。
図2では、「磁性」と表示された領域は磁性被加熱物を示し、「非磁性」と表示された領域は非磁性被加熱物を示す。
【0033】
一般に、被加熱物16としての金属鍋は2種類に大別することができる。具体的には、金属鍋は、鉄又はステンレスなどの磁性鍋と、アルミ又は銅などの非磁性鍋に分類することができる。この場合、磁性鍋は磁性被加熱物であり、非磁性鍋は非磁性被加熱物である。
【0034】
図2に示される例では、誘導加熱された磁性鍋についての抵抗値と周波数特性との関係、及び誘導加熱された非磁性鍋についての抵抗値と周波数特性との関係が示されている。図2に示されるように、磁性鍋は、材質の抵抗率が非磁性鍋と比較すると大きいため、低い駆動周波数でも大きな電力を得ることができる。そのため、インバータ13の損失が小さく抑えられる。また、同一電力を得る場合においては抵抗が大きい方が必要な電流の大きさが小さくなる。そのため、加熱コイル15で発生する銅損も小さく抑えることができる。
【0035】
一方で、図2に示されるように、非磁性鍋は抵抗率が非常に小さく、周波数を高くしなければ大きな電力を得ることができないため、インバータ13の損失が磁性鍋より大きい傾向となる。さらに、抵抗が小さいことで加熱コイル15に大電流を流す必要があるため、銅損も磁性鍋加熱時よりも大きくなる。以上のように、非磁性鍋は加熱効率が悪く、加熱しにくい被加熱物であると言える。そのため、インバータ13の部品発熱又は加熱コイル15の過度な発熱を防止するために出力電力を制限する必要がある場合がある。以上のような情報を使用者が被加熱物16を使用する際に把握することで、火力制限が発生する可能性がある鍋の使用を回避するか、火力制限され得ることを承知で使用するかを選択可能となる。
【0036】
図3は、実施の形態1に係る誘導加熱調理器1における被加熱物16の負荷特性を使用者に報知するための制御装置19の動作の一例を概略的に示すフローチャート100である。
【0037】
最初に、使用者は、負荷特性を取得したい被加熱物16を加熱コイル15上に載置をする(ステップS101)。ステップS101では、インバータ13は、第一の状態である。
【0038】
制御装置19は、被加熱物16の載置を検知し、被加熱物16の負荷特性を取得するための取得指示をインバータ13に送る(ステップS102)。
【0039】
インバータ13に取得指示が入力されると、インバータ13は、第一の状態から第二の状態に移行し、出力周波数をスイープする。制御装置19は、インバータ13の第二の状態における回路の電圧及び、電流情報などの情報を負荷特性検知手段17から取得する(ステップS103)。
【0040】
制御装置19は、負荷特性検知手段17から取得した情報に基づいて被加熱物16の電気特性などの負荷特性を取得する(ステップS104)。
【0041】
制御装置19は、以上の動作によって取得した負荷特性に基づいて報知内容を決定し、
報知手段18は、制御装置19から出力された検知結果に基づく負荷特性に関する情報を、使用者に報知する(ステップS105)。
【0042】
なお、フローチャート100からわかるように、負荷特性の検知、使用者への報知といった動作は加熱指示に関係なく動作するものであって使用者が被加熱物16を載置することで行われる。したがって、使用者は被加熱物16を載置することにより加熱に適しているか、また、十分な火力が得られるかを判断可能であり、加熱指示を出すことなく適切な被加熱物16を選択することができる。
【0043】
以上に説明したように、実施の形態1に係る誘導加熱調理器1によれば、使用者は加熱したい被加熱物16を、予め定められた位置に載置することにより、その被加熱物16を使用した場合の最大火力、加熱しやすさなどの、その被加熱物16についての情報を容易に得ることができる。
【0044】
実施の形態2.
図4は、実施の形態2に係る誘導加熱調理器2の構成を概略的に示す図である。
実施の形態2において、実施の形態1の構成要素と同一又は対応する部分については同一符号を付し、その説明を省略する。
【0045】
実施の形態2に係る誘導加熱調理器2は、実施の形態1の構成要素に加えて、使用者が操作可能な負荷特性取得指示手段20をさらに有する。
【0046】
負荷特性取得指示手段20は、使用者が操作可能となるように配置される。なお、負荷特性取得指示手段20の操作方法に限定はない。負荷特性取得指示手段20は、静電式タッチボタン及び音声認識などの複数の手段で操作可能に構成されていても良い。また、負荷特性取得指示手段20は、他の機能の操作手段と併用でも良く、必ずしも負荷特性取得指示専用の操作手段である必要はない。例えば、静電式タッチボタンを押す長さによって指示内容が変わる方式を用いて、加熱指示と負荷特性取得指示とを同一の操作手段で実現しても良い。
【0047】
負荷特性検知手段17は、予め定められた位置に載置された被加熱物16を検知した場合、負荷特性に関する情報の取得を実行する。制御装置19は、負荷特性取得指示手段20からの指示に基づいて被加熱物16の負荷特性を負荷特性検知手段17から取得し、負荷特性に関する情報を報知手段18に向けて出力する。
【0048】
実施の形態2におけるインバータ13は、少なくとも以下の二つの動作状態を有する。インバータ13の第一の状態は、被加熱物16の負荷特性を検知している状態である。インバータ13の第二の状態は、被加熱物16を加熱している状態である。すなわち、実施の形態2におけるインバータ13は、被加熱物16の有無を検知している状態を有しない点で実施の形態1とは異なる。
【0049】
図5は、実施の形態2に係る誘導加熱調理器2における被加熱物16の負荷特性を使用者に報知するための制御装置19の動作の一例を概略的に示すフローチャート200である。
図5に示されるフローチャート200において、実施の形態1におけるフローチャート100と異なる点は、被加熱物16が載置されてから負荷特性を検知するまでの処理である。
【0050】
最初に、使用者は、負荷特性を取得したい被加熱物16を加熱コイル15上に載置をする(ステップS201)。ステップS201では、インバータ13は、動作しない。
【0051】
使用者は、被加熱物16を載置した後、負荷特性取得指示手段20を用いて制御装置19に負荷特性を取得するための動作の指示である動作開始指示(「負荷特性取得指示」ともいう。)を入力する。制御装置19は、負荷特性取得指示手段20から動作開始指示を受信すると、被加熱物16の負荷特性を取得するための取得指示をインバータ13に送る(ステップS202)。
【0052】
インバータ13に取得指示が入力されると、インバータ13は、出力周波数をスイープする。負荷特性検知手段17は、予め定められた位置に載置された被加熱物16を検知し、負荷特性に関する情報の取得を実行する。制御装置19は、インバータ13の回路の電圧及び電流情報などの情報を負荷特性検知手段17から取得する(ステップS203)。
【0053】
制御装置19は、負荷特性検知手段17から取得した情報に基づいて被加熱物16の電気特性などの負荷特性を取得する(ステップS204)。
【0054】
制御装置19は、以上の動作によって取得した負荷特性に基づいて報知内容を決定し、
報知手段18は、制御装置19から出力された検知結果に基づく負荷特性に関する情報を、使用者に報知する(ステップS205)。
【0055】
以上に説明したように、実施の形態2に係る誘導加熱調理器2によれば、使用者は、負荷特性取得指示手段20を操作することで、任意のタイミングで負荷特性取得動作を実行することができる。そのため、被加熱物16の有無を検知するための不要な検知動作を防ぐことができ、無駄な電力消費の発生、別途センサを設けることによる部品増加などを回避することができる。
【0056】
さらに、実施の形態2に係る誘導加熱調理器2によれば、負荷特性検知手段17は、負荷特性取得指示手段20に入力された動作開始指示に基づいて被加熱物16の有無を検知してもよい。被加熱物16の有無を検知する動作を常に実行する必要がなくなる上、被加熱物16の有無の検知の失敗を防ぐことができる。
【0057】
実施の形態3.
図6は、実施の形態3に係る誘導加熱調理器3の構成を概略的に示す図である。
なお、実施の形態3において、実施の形態1の構成要素と同一又は対応する部分については同一符号を付し、その説明を省略する。
【0058】
実施の形態3に係る誘導加熱調理器3は、二つのインバータ13a、13bと、二つの共振コンデンサ14a、14bと、二つの加熱コイル15a、15bと、二つの負荷特性検知手段17a、17bとを有する。すなわち、整流回路11及びフィルタ12が共用化され、複数の加熱コイル15a、15bが誘導加熱調理器3における回路に接続されている。
【0059】
制御装置19は、複数のインバータ13a、13bが同時に駆動しないように、複数のインバータ13a、13bの各々を間欠駆動させる。
【0060】
報知手段18によって使用者に報知される情報には、複数の加熱コイル15a、15bのうちの第1の加熱コイル(例えば、加熱コイル15a)による加熱状況に応じた、複数の加熱コイル15a、15bのうちの第2の加熱コイル(例えば、加熱コイル15b)の情報が含まれる。実施の形態3において、第1の加熱コイルが加熱コイル15aの場合、第2の加熱コイルは加熱コイル15bであり、第1の加熱コイルが加熱コイル15bの場合、第2の加熱コイルは加熱コイル15aである。
【0061】
実施の形態3に係る誘導加熱調理器3では、第1の加熱コイル(例えば、加熱コイル15a)が被加熱物16aを熱している場合に、第2の加熱コイル(例えば、加熱コイル15b)によって加熱される位置にもう1つの被加熱物16bが載置されたとき、報知手段18によって使用者に報知される情報には、第1の加熱コイルが加熱を行っている状態での第2の加熱コイルの最大出力を示す情報と、第1の加熱コイルが加熱を停止した状態での第2の加熱コイルの最大出力を示す情報とが含まれてもよい。
【0062】
加熱コイル15a、15bの出力は、例えば、加熱の大きさを示す火力である。この場合、加熱コイル15a、15bの最大出力は、最大火力である。
【0063】
実施の形態3に係る誘導加熱調理器3の構成によれば、複数の加熱コイル15a、15bを有しているため、複数の被加熱物16a、16bを同時に加熱することが可能である。
【0064】
一般に、複数のインバータを同時に動作すると、駆動周波数によっては干渉音が発生し、使用者に不快感を与える虞がある。その対策として、例えば、二つのインバータを交互に駆動することで干渉音の発生を防ぐ駆動方法がある。この場合、各インバータを間欠駆動にする必要があるため、単体のインバータを駆動して加熱する場合よりも出力可能な電力が低下する。その結果、単体のインバータを駆動して加熱する場合、十分な火力が得られるが、二つのインバータを同時に駆動して加熱する場合、十分な火力が得られない可能性がある。
【0065】
図7は、実施の形態3に係る誘導加熱調理器3における被加熱物16aの負荷特性を使用者に報知するための制御装置19の動作の一例を概略的に示すフローチャート300である。
【0066】
誘導加熱調理器3は、複数の被加熱物16a、16bを同時に加熱可能であって、間欠駆動を行う制御動作であるため、二つのインバータ13a又は13bのうちの一方の動作が他方の動作に影響する。そこで、実施の形態3に係る誘導加熱調理器3においては、負荷特性と誘導加熱調理器3の動作状態とを考慮した最大火力を使用者に報知する。
【0067】
そのため、二つの加熱コイル15a又は15bのうちの一方によって加熱される位置に載置された被加熱物16a又は16bの負荷特性を取得する際に、他方の加熱コイルが加熱中の場合は加熱条件を報知内容に反映させる。したがって、二つのインバータ13a又は13bのうちの一方が駆動している状態において報知される他方の最大火力と、一方のインバータが駆動していない状態において報知される最大火力は、前者の方が小さくなる。
【0068】
また、二つのインバータ13a又は13bのうちの一方のインバータが駆動している状態であっても、駆動していない加熱コイル15a又は15bが出力可能な最大火力を使用者に報知しても良い。この報知を行うことで、二つのインバータ13a又は13bのうちの一方が停止していれば、必要な火力を得ることが可能なのか否かを使用者に知らせることができる。
【0069】
以上に説明したように、実施の形態3に係る誘導加熱調理器3によれば、複数の被加熱物16a、16bを同時に加熱可能な構成であって、誘導加熱調理器3の動作状態に応じた最大火力を使用者に報知することが可能となる。また、動作状態が異なる場合の最大火力、例えば一方のインバータ13a又は13bを駆動している場合と駆動していない場合とのそれぞれにおける他方のインバータ13a又は13bの最大火力を使用者に報知することで、必要な火力を得るために必要な行動を使用者に促すことができ、誘導加熱調理器3の利便性を向上させることができる。
【0070】
以上、好ましい実施の形態及び変形例について説明したが、上述した実施の形態及び変形例における特徴は、互いに組み合わせることができる。さらに、上述した実施の形態等に種々の変形及び置換を加えることができる。
【0071】
以下、本開示の諸態様を付記としてまとめて記載する。
【0072】
(付記1)
誘導加熱調理器であって、
直流電圧を高周波電圧に変換して出力するインバータと、
前記高周波電圧が印加され、被加熱物を熱する加熱コイルと、
前記被加熱物の負荷特性を検知する負荷特性検知手段と、
前記インバータを制御するとともに、前記負荷特性検知手段によって検知された検知結果に基づく前記負荷特性に関する情報を出力する制御装置と、
前記制御装置から出力された前記情報を、前記誘導加熱調理器の使用者に報知する報知手段と
を備え、
前記被加熱物が予め定められた位置に載置された場合、前記報知手段は、前記使用者に前記情報を報知する
ことを特徴とする誘導加熱調理器。
(付記2)
前記情報は、前記被加熱物に対して出力可能な前記加熱コイルの最大出力値を含むことを特徴とする付記1に記載の誘導加熱調理器。
(付記3)
前記情報は、前記被加熱物に対する加熱のしやすさを示す指標を含むことを特徴とする付記1又は2に記載の誘導加熱調理器。
(付記4)
前記負荷特性検知手段は、前記予め定められた位置における前記被加熱物の有無の検知を常に実行しており、
前記負荷特性検知手段は、前記予め定められた位置に載置された前記被加熱物を検知した時点で、前記負荷特性に関する前記情報の取得を実行する
ことを特徴とする付記1から3のいずれか1項に記載の誘導加熱調理器。
(付記5)
前記負荷特性検知手段は、前記予め定められた位置における前記被加熱物の有無の検知を一定時間間隔で実行しており、
前記負荷特性検知手段は、前記予め定められた位置に載置された前記被加熱物を検知した時点で、前記負荷特性に関する前記情報の取得を実行する
ことを特徴とする付記1から3のいずれか1項に記載の誘導加熱調理器。
(付記6)
前記使用者が操作可能な負荷特性取得指示手段をさらに備え、
前記制御装置は、前記負荷特性取得指示手段からの指示に基づいて前記被加熱物の前記負荷特性を前記負荷特性検知手段から取得し、前記負荷特性に関する情報を前記報知手段に向けて出力する
ことを特徴とする付記1から5のいずれか1項に記載の誘導加熱調理器。
(付記7)
前記負荷特性検知手段は、前記予め定められた位置に載置された前記被加熱物を検知した場合、前記負荷特性に関する前記情報の取得を実行することを特徴とする付記6に記載の誘導加熱調理器。
(付記8)
前記誘導加熱調理器は、もう1つのインバータをさらに備え、
前記制御装置は、複数の前記インバータが同時に駆動しないように、複数の前記インバータの各々を間欠駆動させる
ことを特徴とする付記1から7のいずれか1項に記載の誘導加熱調理器。
(付記9)
前記誘導加熱調理器は、もう1つの加熱コイルをさらに備え、
前記使用者に報知される前記情報には、複数の前記加熱コイルのうちの第1の加熱コイルによる加熱状況に応じた、複数の前記加熱コイルのうちの第2の加熱コイルの情報が含まれることを特徴とする付記8に記載の誘導加熱調理器。
(付記10)
前記誘導加熱調理器は、もう1つの加熱コイルをさらに備え、
複数の前記加熱コイルのうちの第1の加熱コイルが前記被加熱物を熱している場合に、複数の前記加熱コイルのうちの第2の加熱コイルによって加熱される位置にもう1つの被加熱物が載置されたとき、前記使用者に報知される前記情報には、前記第1の加熱コイルが加熱を行っている状態での前記第2の加熱コイルの最大出力を示す情報と、前記第1の加熱コイルが加熱を停止した状態での前記第2の加熱コイルの最大出力を示す情報とが含まれることを特徴とする付記8又は9に記載の誘導加熱調理器。
【符号の説明】
【0073】
1,2,3 誘導加熱調理器、 10 交流電源、 11 整流回路、 12 フィルタ、 13,13a,13b インバータ、 14 共振コンデンサ、 15,15a,15b 加熱コイル、 16,16a,16b 被加熱物、 17,17a,17b 負荷特性検知手段、 18 報知手段、 19 制御装置、 20 負荷特性取得指示手段、 171,171a,171b 電圧検出手段、 172,172a,172b 電流検出手段。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7