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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023166085
(43)【公開日】2023-11-21
(54)【発明の名称】防災情報連携システム
(51)【国際特許分類】
   G08B 29/00 20060101AFI20231114BHJP
   G08B 29/16 20060101ALI20231114BHJP
   G08B 17/00 20060101ALI20231114BHJP
   H04L 43/08 20220101ALI20231114BHJP
   H04L 43/0823 20220101ALI20231114BHJP
   H04L 43/10 20220101ALI20231114BHJP
   H04L 45/247 20220101ALI20231114BHJP
【FI】
G08B29/00 Z
G08B29/16
G08B17/00 Z
H04L43/08
H04L43/0823
H04L43/10
H04L45/247
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022076854
(22)【出願日】2022-05-09
(71)【出願人】
【識別番号】000003403
【氏名又は名称】ホーチキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079359
【弁理士】
【氏名又は名称】竹内 進
(72)【発明者】
【氏名】増田 誠良
【テーマコード(参考)】
5C087
5G405
5K030
【Fターム(参考)】
5C087AA02
5C087AA10
5C087BB03
5C087BB11
5C087BB18
5C087CC04
5C087CC46
5C087DD02
5C087DD04
5C087DD08
5C087EE07
5C087EE18
5C087FF01
5C087FF02
5C087FF04
5C087GG06
5C087GG10
5C087GG22
5C087GG29
5C087GG30
5C087GG38
5C087GG45
5C087GG70
5C087GG83
5G405AA01
5G405AA04
5G405AA06
5G405BA01
5G405BA07
5G405CA11
5G405CA14
5G405CA19
5G405CA50
5G405EA31
5K030GA14
5K030LB08
5K030MA04
5K030MB05
5K030MC03
5K030MC08
5K030MD02
(57)【要約】      (修正有)
【課題】実設備から2重化された防災情報基盤システムを経由して連携先システムまでの防災情報連携システムの動作状態の監視を可能として防災情報の連携の確実性、安定性及び信頼性を向上可能とする。
【解決手段】実設備である火災報知設備10からイベント信号を2重化された第1防災情報基盤システム12(12-1)と第2防災情報基盤システム12(12-2)に送信し、メインシステムとして稼働する防災情報基盤システムの一方からイベント信号を連携先システムの利用者端末16まで送信する防災情報連携システムは、疑似設備100から第1防災情報基盤システム12(12-1)又は第2防災情報基盤システム12(12-2)を経由して連携先システムの試験端末110に至る第1通信経路及び第2通信経路に擬似イベント信号を送信し、試験端末110で第1通信経路及び第2通信経路の通信状態を検出する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
防災監視を行う実設備で発生した所定のイベントを示すイベント情報を含むイベント信号を2重化された第1防災情報基盤システムと第2防災情報基盤システムの各々に送信すると共に、少なくとも前記第1防災情報基盤システム又は前記第2防災情報基盤システムの何れか一方から前記イベント情報を含むイベント信号を連携先システムへ送信し、前記連携先システムが前記イベント信号を受信し利用者端末に前記イベント信号に基づく信号を利用者端末へ送信する連携先情報管理システムを備える防災情報連携システムであって、
前記実設備から前記第1防災情報基盤システムまでの通信環境、及び前記実設備から前記第2防災情報基盤システムまでの通信環境を模擬した通信環境に設置される擬似設備と、
連携先システムに前記連携先情報管理システムと接続される試験端末と、
を備え、
前記疑似設備から、第1防災情報基盤システムを経由して前記試験端末に至る第1通信経路と、第2防災情報基盤システムを経由して前記試験端末に至る第2通信経路との各々へ前記イベント信号と同じ信号形式の擬似イベント信号を送信し、
前記第1通信経路及び前記第2通信経路の通信状態を検出することを特徴とする防災情報連携システム。
【請求項2】
請求項1記載の防災情報連携システムにおいて、
前記第1通信経路及び前記第2通信経路の通信状態の検出として、前記第1通信経路による前記擬似イベント信号の通信所要時間及び前記第2通信経路による前記擬似イベント信号の通信所要時間を検出することを特徴とする防災情報連携システム。
【請求項3】
請求項2記載の防災情報連携システムにおいて、
前記通信所要時間の検出は、所定回数における前記第1通信経路の通信所要時間の平均値及び前記第2通信経路の通信所要時間の平均値を検出することを特徴とする防災情報連携システム。
【請求項4】
請求項2記載の防災情報連携システムにおいて、
前記擬似設備は、疑似イベント信号の各々を識別可能とするイベント情報を含む疑似イベント信号を送信すると共に、疑似イベント信号を送信した送信時刻と送信した疑似イベント信号に含まれるイベント情報とを対応させた送信時刻情報を前記試験端末に送信し、
前記試験端末は、前記疑似イベント信号を受信した受信時刻及び前記疑似イベント信号に含まれるイベント情報を検出し、前記疑似設備から受信した送信時刻情報から検出したイベント情報に対応した送信時刻と前記検出した受信時刻に基づき、前記第1通信経路による前記擬似イベント信号の通信所要時間及び前記第2通信経路による前記擬似イベント信号の通信所要時間を検出することを特徴とする防災情報連携システム。
【請求項5】
請求項4記載の防災情報連携システムにおいて、
前記送信時刻情報は、前記連携先情報管理システムを経由しない通信経路により送信されることを特徴とする防災情報連携システム。
【請求項6】
請求項2記載の防災情報連携システムにおいて、
前記第1通信経路の通信所要時間及び前記第2通信経路の通信所要時間の両方が所定の許容時間条件を充足する場合には、防災情報連携システムは正常と判断し、
前記第1通信経路の通信所要時間が前記許容時間条件を充足せず、第2通信経路の通信所要時間が前記許容時間条件を充足する場合には、前記第1防災情報基盤システムの異常と判断し、
前記第1通信経路の通信所要時間が前記許容時間条件を充足し、第2通信経路の通信所要時間が前記許容時間条件を充足しない場合には、前記第2防災情報基盤システムの異常と判断し、
前記第1通信経路及び前記第2通信経路の通信所要時間の両方が前記許容時間条件を充足しない場合には、防災情報連携システムは異常と判断することを特徴とする防災情報連携システム。
【請求項7】
請求項6記載の防災情報連携システムにおいて、
2重化された前記第1防災情報基盤システムと前記第2防災情報基盤システムは、何れか一方がメインシステムとして稼働し、他方がサブシステムとして稼働し、
前記メインシステムとして稼働している前記第1防災情報基盤システム又は前記第2防災情報基盤システムの異常が判断された場合には、前記メインシステムとして稼働している防災情報基盤システムを停止させ、前記サブシステムとして稼働している防災情報基盤システムをメインシステムに切り替えて稼働させることを特徴とする防災情報連携システム。
【請求項8】
請求項1記載の防災情報連携システムにおいて、
前記利用者端末は、前記イベント信号に基づく信号に含まれるイベント情報を表示し、
前記試験端末は、前記利用者端末と同じ通信環境に配置された前記利用者端末の種別に対応した端末であり、前記疑似設備から自己までの前記第1通信経路及び前記第2通信経路の通信状態を表示することを特徴とする防災情報連携システム。
【請求項9】
請求項1記載の防災情報連携システムにおいて、
前記実設備は、前記第1防災情報基盤システム及び第2防災情報基盤システムに所定の無線通信装置を使用して通信接続され、
前記擬似設備は、前記実設備の設置場所に設置され、前記実設備で使用される無線通信装置を介して前記第1防災情報基盤システム及び前記第2防災情報基盤システムに通信接続されることを特徴とする防災情報連携システム。
【請求項10】
請求項1記載の防災情報連携システムにおいて、
前記実設備は、感知器及び受信機を備えた防災設備であり、
前記擬似設備は、前記受信機に対応した擬似受信機、又はコンピュータによるプログラムの実行で実現される擬似受信機機能であることを特徴とする防災情報連携システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、防災設備において監視される火災、障害、震災、水害等に関する各種の防災情報を、2重化された防災情報基盤システムで管理して、連携先システムに防災情報を連携する防災情報連携システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、防災設備の一種である火災報知設備で監視される火災、障害等に関する防災情報を、火災報知設備以外、例えば利用者の端末等に受信表示させるといった2次活用は、火災報知設備からの接点移報信号による移報連携や、施設内の空調設備、照明設備、電気設備、防犯・防災設備等に対して通信仕様を統一するBAS標準プロトコル(BACnet等)を用いた設備内連携といった限られた領域内で活用することが主流であり、インターネット等の公衆回線を利用した防災情報の連携は、その確実性の保証が困難な観点から敬遠されていた。
【0003】
そこで、公衆回線を利用した防災情報の連携では、障害時における安定稼働及びレジリエンス(障害回復力)を向上させ、その確実性を保証することを目的とし、インターネットを経由して通信接続可能なクラウドサーバにプラットフォームとして構築される防災情報基盤を2重化して、一方の防災情報基盤システムで異常が発生しても、他方の防災情報基盤システムで同じく管理している防災情報を連携先システムへ送信できる防災情報連携システムが検討されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2020-154910号公報
【特許文献2】特開2018-206320号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、クラウドサーバ上に2重化した防災情報基盤システムの異常監視は、クラウドサーバ上のソフトウェアによる監視をメインとしており、その監視のリアルタイム性に課題がある。
【0006】
また、公衆回線を利用した防災情報の連携では、その連携先が他の事業体のシステムである場合もあり、クラウドサーバ上に構築される自事業体の防災情報基盤システムとは仕様が大きな異なる可能性もあり、連携先となる事業体の情報管理システムを含めてクラウドサーバのソフトウェアで異常監視することは困難である。
【0007】
更に、火災や災害等は頻繁に発生するものではないため、防災情報を含むイベント信号が各防災設備から常時送信されているわけではなく、通常運用において、イベント信号を用いて各防災設備から防災情報基盤システムを経由して連携先システムまでの通信状態を一気通貫で確認することは困難である。
【0008】
本発明は、通常運用において、実設備から2重化された防災情報基盤システムを経由して連携先システムまでの防災情報連携システムの動作状態の監視を可能として防災情報の連携の確実性、安定性及び信頼性を向上可能とする防災情報連携システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
(防災情報連携システム)
本発明は、防災監視を行う実設備で発生した所定のイベントを示すイベント情報を含むイベント信号を2重化された第1防災情報基盤システムと第2防災情報基盤システムの各々に送信すると共に、少なくとも第1防災情報基盤システム又は第2防災情報基盤システムの何れか一方からイベント情報を含むイベント信号を連携先システムへ送信し、連携先システムがイベント信号を受信し利用者端末にイベント信号に基づく信号を利用者端末へ送信する連携先情報管理システムを備える防災情報連携システムであって、
実設備から第1防災情報基盤システムまでの通信環境、及び実設備から第2防災情報基盤システムまでの通信環境を模擬した通信環境に設置される擬似設備と、
連携先システムに連携先情報管理システムと接続される試験端末と、
を備え、
疑似設備から、第1防災情報基盤システムを経由して試験端末に至る第1通信経路と、第2防災情報基盤システムを経由して試験端末に至る第2通信経路との各々へイベント信号と同じ信号形式の擬似イベント信号を送信し、第1通信経路及び第2通信経路の通信状態を検出することを特徴とする。
【0010】
(通信所要時間の監視)
第1通信経路及び第2通信経路の通信状態の検出として、第1通信経路による擬似イベント信号の通信所要時間及び第2通信経路による擬似イベント信号の通信所要時間を検出する。
【0011】
(通信所要時間の平均値)
通信所要時間の検出は、所定回数における第1通信経路の通信所要時間の平均値及び第2通信経路の通信所要時間の平均値を検出する。
【0012】
(通信所要時間の検出)
擬似設備は、疑似イベント信号の各々を識別可能とするイベント情報を含む疑似イベント信号を送信すると共に、疑似イベント信号を送信した送信時刻と送信した疑似イベント信号に含まれるイベント情報とを対応させた送信時刻情報を試験端末に送信し、
試験端末は、疑似イベント信号を受信した受信時刻及び疑似イベント信号に含まれるイベント情報を検出し、疑似設備から受信した送信時刻情報から検出したイベント情報に対応した送信時刻と検出した受信時刻に基づき、第1通信経路による擬似イベント信号の通信所要時間及び第2通信経路による擬似イベント信号の通信所要時間を検出する。
【0013】
(送信時刻情報の通信経路)
送信時刻情報は、連携先情報管理システムを経由しない通信経路により送信される。
【0014】
(システム動作状態の判断)
第1通信経路の通信所要時間及び第2通信経路の通信所要時間の両方が所定の許容時間条件を充足する場合には、防災情報連携システムの正常と判断し、
第1通信経路の通信所要時間が許容時間条件を充足せず、第2通信経路の通信所要時間が許容時間条件を充足する場合には、第1防災情報基盤システムの異常と判断し、
第1通信経路の通信所要時間が許容時間条件を充足し、第2通信経路の通信所要時間が許容時間条件を充足しない場合には、第2防災情報基盤システムの異常と判断し、
第1通信経路及び第2通信経路の通信所要時間の両方が許容時間条件を充足しない場合には、防災情報連携システムの異常と判断する。
【0015】
(2重化システムの異常対応)
2重化された第1防災情報基盤システムと第2防災情報基盤システムは、何れか一方がメインシステムとして稼働し、他方がサブシステムとして稼働し、
メインシステムとして稼働している第1防災情報基盤システム又は第2防災情報基盤システムの異常が判断された場合には、メインシステムとして稼働している防災情報基盤システムを停止させ、サブシステムとして稼働している防災情報基盤システムをメインシステムに切り替えて稼働させる。
【0016】
(利用者端末と試験端末)
利用者端末は、イベント信号に基づく信号に含まれるイベント情報を表示し、
試験端末は、利用者端末と同じ通信環境に配置された利用者端末の種別に対応した端末であり、疑似設備から自己までの第1通信経路及び第2通信経路の通信状態を表示する。
【0017】
(実設備と擬似設備の通信接続)
実設備は第1防災情報基盤システム及び第2防災情報基盤システムに所定の無線通信装置を使用して通信接続され、
擬似設備は、実設備の設置場所に設置され、実設備で使用される無線通信装置を介して第1防災情報基盤システム及び第2防災情報基盤システムに通信接続される。
【0018】
(擬似設備)
実設備は、感知器及び受信機を備えた防災設備であり、
擬似設備は、受信機に対応した擬似受信機、又は、コンピュータによるプログラムの実行で実現される擬似受信機機能である。
【発明の効果】
【0019】
(防災情報連携システムの効果)
本発明は、防災監視を行う実設備で発生した所定のイベントを示すイベント情報を含むイベント信号を2重化された第1防災情報基盤システムと第2防災情報基盤システムの各々に送信すると共に、少なくとも第1防災情報基盤システム又は第2防災情報基盤システムの何れか一方からイベント情報を含むイベント信号を連携先システムへ送信し、連携先システムがイベント信号を受信し利用者端末にイベント信号に基づく信号を利用者端末へ送信する連携先情報管理システムを備える防災情報連携システムであって、実設備から第1防災情報基盤システムまでの通信環境、及び実設備から第2防災情報基盤システムまでの通信環境を模擬した通信環境に設置される擬似設備と、連携先システムに連携先情報管理システムと接続される試験端末と、を備え、疑似設備から、第1防災情報基盤システムを経由して試験端末に至る第1通信経路と、第2防災情報基盤システムを経由して試験端末に至る第2通信経路との各々へイベント信号と同じ信号形式の擬似イベント信号を送信し、第1通信経路及び第2通信経路の通信状態を検出するようにしたため、通常運用において、実設備からイベント信号を送信することなく、疑似設備からの疑似イベント信号により2重化された防災情報基盤システムを経由して試験端末までの防災情報連携システムの通信状態を検出でき、通信状態から防災情報連携システムの動作状態が正常か異常かを常時監視することを可能とし、防災情報連携の確実性、安定性及び信頼性を向上可能とする。
【0020】
また、2重化された防災情報基盤システムの何れか一方を待機状態としてイベント信号を連携先システムに送信しない場合であっても、イベント信号を使用せずに疑似設備からの疑似イベント信号を使用して防災情報連携システムの通信状態を検出するため、イベント信号の送信を行わない待機状態としている防災情報基盤システムも含めて防災情報連携システムの動作状態が正常か異常かを常時監視することを可能とする。
【0021】
(通信所要時間の監視の効果)
また、第1通信経路及び第2通信経路の通信状態の検出として、第1通信経路による擬似イベント信号の通信所要時間及び第2通信経路による擬似イベント信号の通信所要時間を検出するようにしたため、検出された第1通信経路と第2通信経路の通信所要時間に基づき、防災情報連携システム、当該システムを構成するための機器、装置等の性能劣化による障害(故障)に至る前の異常の予知を可能とする。
【0022】
(通信所要時間の検出の効果)
擬似設備は、疑似イベント信号の各々を識別可能とするイベント情報を含む疑似イベント信号を送信すると共に、疑似イベント信号を送信した送信時刻と送信した疑似イベント信号に含まれるイベント情報とを対応させた送信時刻情報を試験端末に送信し、試験端末は、疑似イベント信号を受信した受信時刻及び疑似イベント信号に含まれるイベント情報を検出し、疑似設備から受信した送信時刻情報から検出したイベント情報に対応した送信時刻と検出した受信時刻に基づき、第1通信経路による擬似イベント信号の通信所要時間及び第2通信経路による擬似イベント信号の通信所要時間を検出するようにしたため、異なる通信経路となる第1通信経路と第2通信経路の各々を経由して送信される疑似イベント信号について、擬似設備からの擬似イベント信号の送信時刻と試験端末での擬似イベント信号の受信時刻から通信所要時間を個別に検出することができ、防災情報連携システムの動作状態が正常か異常かの判断を適確に行うことを可能とする。
【0023】
(送信時刻情報の通信経路の効果)
また、送信時刻情報は、連携先情報管理システムを経由しない通信経路により送信されるため、連携先情報管理システムが送信時刻情報を利用者端末に送付しない通信プロトコルであってあったとしても、試験端末が送信時刻情報を取得できる等、連携先システムの構成によらず試験端末が送信時刻情報を取得できる。
【0024】
(システム動作状態の判断の効果)
また、第1通信経路の通信所要時間及び第2通信経路の通信所要時間の両方が所定の許容時間条件を充足する場合には、防災情報連携システムの正常と判断し、第1通信経路の通信所要時間が許容時間条件を充足せず、第2通信経路の通信所要時間が許容時間条件を充足する場合には、第1防災情報基盤システムの異常と判断し、第1通信経路の通信所要時間が許容時間条件を充足し、第2通信経路の通信所要時間が許容時間条件を充足しない場合には、第2防災情報基盤システムの異常と判断し、第1通信経路及び第2通信経路の通信所要時間の両方が許容時間条件を充足しない場合には、防災情報連携システムの異常と判断するようにしたため、第1通信経路及び第2通信経路の何れかにおいても疑似イベント信号の通信所要時間が許容時間内にあれば防災情報連携システム、当該システムを構成するための機器、装置等が正常に動作していることが確認でき、一方、第1通信経路及び第2通信経路擬似の何れかで擬似イベント信号の通信所要時間が許容時間を超えて長くなった場合には、防災情報連携システムに含まれる何れかのシステム、当該システムを構成するための機器、装置等が異常であることを確認することが可能となり、障害又は故障に至る前の異常の予知を可能とし、事前に適切な対処を可能とする。また、通信所要時間が許容時間を超えた通信経路から異常発生場所を特定することができ、適切な対処を可能とする。
【0025】
(2重化システムの異常対応の効果)
また、2重化された第1防災情報基盤システムと第2防災情報基盤システムは、何れか一方がメインシステムとして稼働し、他方がサブシステムとして稼働し、メインシステムとして稼働している第1防災情報基盤システム又は第2防災情報基盤システムの異常が判断された場合には、メインシステムとして稼働している防災情報基盤システムを停止させ、サブシステムとして稼働している防災情報基盤システムをメインシステムに切り替えて稼働させるようにしたため、通信所要時間に基づく防災情報連携システムの動作状態の判断結果に基づき、二重化されている防災情報基盤システムのメインシステムとサブシステムの切替えを行い、連携先システムまで防災情報を連携させる動作の確実性、安定性及び信頼性を向上可能とする。
【0026】
(利用者端末と試験端末の効果)
また、利用者端末は、イベント信号に基づく信号に含まれるイベント情報を表示し、試験端末は、利用者端末と同じ通信環境に配置された利用者端末の種別に対応した端末であり、疑似設備から自己までの第1通信経路及び第2通信経路の通信状態を表示するようにしたため、防災情報の連携先となる連携先システムでスマートフォン、タブレット等の携帯端末、パーソナルコンピュータ等の様々な種別の利用者端末を利用している場合には、その利用者端末の種別に対応した種別の試験端末を準備し、試験端末ごとに第1通信経路と第2通信経路の通信状態を検出することで、イベント信号の送信による防災情報の連携に近い形式で疑似イベント信号の送信を行って、より正確に防災情報連携システムの異常を監視することを可能とする。
【0027】
(実設備と擬似設備の通信環境)
また、実設備は第1防災情報基盤システム及び第2防災情報基盤システムに所定の無線通信装置を使用して通信接続され、擬似設備は、実設備の設置場所に設置され、実設備で使用される無線通信装置を介して第1防災情報基盤システム及び第2防災情報基盤システムに通信接続されるようにしたため、実設備と擬似設備の通信環境を可能な限り近似させ、イベント信号の送信による防災情報の連携に近い形で疑似イベント信号の送信を行って、より正確に防災情報連携システムの動作状態の異常を監視する。
【0028】
(擬似設備の効果)
また、実設備は、火災感知器及び受信機を備えた防災設備であり、擬似設備は、受信機に対応した擬似受信機、又は、コンピュータによる模擬プログラムの実行で実現される擬似受信機機能であることから、防災設備の受信機に、防災情報連携システムの動作状態を監視するために擬似イベント信号を送信させ、防災監視や防災情報の連携動作を中断させる必要がない。また、防災情報連携システムの動作状態の異常を監視するために、疑似設備は疑似イベント信号を送信できればよく、実設備のように火災、障害等のイベントを監視する必要がないことから、必要最低限の構成とすることができ、費用を抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1】防災情報連携システムの実施形態を示した説明図である。
図2】防災情報の連携における通信経路を示した説明図である。
図3】防災情報連携システムの防災情報の連携動作を示したタイムチャートである。
図4】防災情報連携システムの動作状態を監視するための通信経路を示した説明図である。
図5】試験端末で検出される通信所要時間を含む通信情報をリスト形式で示した説明図である。
図6】防災情報連携システムの動作状態の判断情報を示した説明図である。
図7】防災情報連携システムの動作状態の監視動作を示したタイムチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下に、本発明に係る防災情報連携システムの実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。尚、以下の実施形態により、本発明が限定されるものではない。
【0031】
[実施形態の基本的な概念]
まず、実施形態の基本的概念について説明する。実施形態は、概略的に、防災情報連携システムに関するものである。
【0032】
防災情報連携システムとは、防災監視を行う実設備で発生した所定のイベント、例えば火災報知設備が設置された建物で発生した火災や障害等のイベント(発生事象)を示すイベント情報を含むイベント信号を、例えばインターネットを含む公衆回線汎用通信網を経由して通信接続可能な防災情報基盤システムに送信して防災情報基盤システムからイベント信号を防災情報の連携先となる連携先システムへ送信して防災情報を連携するものである。
【0033】
また、防災情報基盤システムは、2重化された第1防災情報基盤システムと第2防災情報基盤システムを備え、実設備から送信されたイベント信号を少なくとも第1防災情報基盤システムと第2防災情報基盤システムの何れか一方から連携先システムに送信し、一方をメインシステムとして稼働し、他方をサブシステムとして稼働するものである。また、連携システムは、イベント信号を受信し利用者端末にイベント信号に基づく信号を利用者端末へ送信する連携先情報管理システムを備えるものである。
【0034】
ここで、「防災情報基盤システム」とは、実設備から送信されるイベント信号に基づき、防災情報を収集して管理するための場所であり、インターネット等の公衆回線汎用通信網を介して通信接続可能なコンピュータシステム、例えばクラウドサーバを用いた防災情報プラットフォーム、当該システムを構築するための機器、装置等を含む概念である。また、「防災情報」とは、火災、犯罪、震災、水害等の人の生活や社会に被害をもたらす各種に関する情報を含む概念である。
【0035】
また、「メインシステムとして稼働する防災情報基盤システム」とは、防災情報の連携にあたり主として稼働するシステムであり、メインシステムとしてどのように稼働させるかは任意であるが、例えば実設備からイベント信号を受信してイベント信号に含まれるイベント情報を蓄積すると共に、蓄積した当該イベント情報を含むイベント信号を、連携先システムに送信する動作を行う。
【0036】
また、「サブシステムとして稼働する防災情報基盤システム」とは、防災情報の連携にあたり主として稼働するシステムで異常があった場合に防災情報の連携に支障が起きないようにバックアップするためのシステムであり、サブシステムとしてどのように稼働させるかは任意であるが、例えば実設備からイベント信号を受信してイベント信号に含まれるイベント情報を蓄積するが、蓄積した当該イベント情報を示すイベント信号を連携先情報管理システムへの送信は行わず、メインシステムの異常発生に備えて活性待機し、メインシステムとして稼働している防災情報基盤システムで異常があった場合に、メインシステムに切り替わり(昇格して)、メインシステムとして稼働することで、連携先システムに対してイベント信号を途切れることなく送信し防災情報の連携を維持するものである。尚、「活性待機」とは、サブシステムが稼働状態で待機していることを意味し、「ホットスタンバイ」を含む概念である。
【0037】
このような防災情報連携システムについて、実施形態は、2重化された防災情報基盤システムを経由して連携先情報管理システムの利用者端末に至るまでの防災情報連携システムの動作状態を一気貫通で常時監視可能として、防災情報連携システムの確実性、安定性及び信頼性を向上可能とするために、擬似設備と、連携先システムに連携先情報管理システムと接続される試験端末とを備え、疑似設備から、第1防災情報基盤システムを経由して試験端末に至る第1通信経路と、第2防災情報基盤システムを経由して試験端末に至る第2通信経路との各々へイベント信号と同じ形式の擬似イベント信号を送信し、第1通信経路及び第2通信経路の通信状態を検出するものである。
【0038】
ここで、「擬似設備」とは、実設備から第1防災情報基盤システムまでの通信環境、及び実設備から第2防災情報基盤システムまでの通信環境を模擬した通信環境に設置されるものであり、つまり疑似設備を用いた防災情報連携システムの動作状態の監視の通信環境が、実設備から連携先情報管理システムまでの防災情報の連携の通信環境に近似するように疑似設備が設置される。
【0039】
また、実設備の通信環境に擬似設備の通信環境が可能な限り近しいことが望ましいことから、実設備が第1防災情報基盤システム及び第2防災情報基盤システムに無線通信装置、例えば無線LAN通信装置を使用して通信接続されている場合には、擬似設備を実設備の設置場所に設置し、実設備で使用される無線通信装置を介して第1防災情報基盤システム及び第2防災情報基盤システムに通信接続される。
【0040】
また、「擬似設備」は、擬似イベント信号を送信するものであればその構成は任意であるが、例えば実設備が感知器及び受信機を備えた防災設備であったとすると、擬似設備は、受信機に対応した擬似受信機、又は、コンピュータ装置で実行されることで擬似受信機としての機能を実現するコンピュータプログラムである。
【0041】
また、「擬似イベント信号」とは、防災情報連携システムの動作状態を監視するために実在しない疑似的に発生したものとするイベントを示す擬似イベント情報を含むイベント信号であり、その信号形式は、実設備で発生したイベントを示すイベント情報を含むイベント信号と同じであり、疑似イベント信号に含まれる疑似イベント情報がイベント信号のイベント情報に相当する。また、イベント信号に含まれるイベント情報として、例えばイベント内容を示すイベント内容情報と、各信号を識別可能とするための固有のイベントID(イベント識別情報)がイベント信号に含まれ、疑似イベント信号も同じく疑似イベントであることを示すイベント内容情報と固有のイベントID(イベント識別情報)が含まれる。
【0042】
このため、擬似設備から防災情報連携システムの動作状態の監視のために送信する擬似イベント信号は、実設備から送信されるイベント信号と同様に処理することができ、第1防災情報基盤システム、第2防災情報基盤システム及び連携先情報管理システムの通信プロトコル等を変更することなく、実設備からのイベント信号と同様に処理できる。
【0043】
また、「第1通信経路及び第2通信経路の通信状態の検出」として、第1通信経路による擬似イベント信号の通信所要時間及び第2通信経路による擬似イベント信号の通信所要時間を検出するものである。この場合、通信所要時間の検出について、例えば所定回数における第1通信経路の通信所要時間の平均値及び第2通信経路の通信所要時間の平均値を検出する。
【0044】
ここで、通信所要時間の検出する手法は任意であるが、例えば擬似設備が、疑似イベント信号の各々を識別可能とするイベント情報を含む(例えば固有のイベントIDを含む)疑似イベント信号を送信すると共に、疑似イベント信号を送信した送信時刻と送信した疑似イベント信号に含まれるイベント情報とを対応させた送信時刻情報を試験端末に送信し、試験端末が、疑似イベント信号を受信した受信時刻及び疑似イベント信号に含まれるイベント情報を検出し、疑似設備から受信した送信時刻情報から検出したイベント情報に対応した送信時刻と検出した受信時刻に基づき、第1通信経路による擬似イベント信号の通信所要時間及び第2通信経路による擬似イベント信号の通信所要時間を検出する。
【0045】
また、疑似設備が送信する送信時刻情報は、連携先情報管理システムを経由しない通信経路により送信されるものである。また、「第1通信経路及び第2通信経路とは異なる通信経路」としては、例えば送信時刻情報をテキスト情報としてメールにして送信するための公知のメール通信経路等がある。
【0046】
また、防災情報連携システムは、検出された通信所要時間に基づき、防災情報連携システムの動作状態を判断する。防災情報連携システムの動作状態の判断は任意であるが、例えば第1通信経路及び第2通信経路の通信所要時間の両方が所定の許容時間条件を充足する場合には、防災情報連携システムの正常と判断し、第1通信経路の通信所要時間が許容時間条件を充足せず、第2通信経路の通信所要時間が許容時間条件を充足する場合には、第1防災情報基盤システムの異常と判断し、第1通信経路の通信所要時間が許容時間条件を充足し、第2通信経路の通信所要時間が許容時間条件を充足しない場合には、第2防災情報基盤システムの異常と判断し、第1通信経路及び第2通信経路の通信所要時間の両方が許容時間条件を充足しない場合には、防災情報連携システムの異常と判断する。
【0047】
ここで、「異常の判断」は、対象システムの異常を必ずしも確定するものではなく、「異常の可能性が高い」、「異常発生の予兆がある」といった判断を含む概念である。
【0048】
また、メインシステムとして稼働している第1防災情報基盤システム又は第2通信経路に属する第2防災情報基盤システムの異常が判断された場合には、メインシステムとして稼働している防災情報基盤システムを停止させ、サブシステムとして稼働している防災情報基盤システムをメインシステムに切り替えて(昇格させて)稼働させることで、防災情報の連携を途切れさせないようにする。
【0049】
また、「利用者端末」は、イベント信号に基づく信号に含まれるイベント情報を表示し、試験端末は、利用者端末と同じ通信環境に配置された利用者端末の種別に対応した端末であり、疑似設備から自己までの第1通信経路及び第2通信経路の通信状態を表示する。ここで、利用者端末が、例えばスマートフォン、タブレット等の携帯端末、パーソナルコンピュータである場合には、その利用者端末と同じ携帯端末、パーソナルコンピュータが試験端末として準備される。
【0050】
以下、具体的な実施形態を説明する。以下に示す具体的な実施形態では、「実設備」が「火災感知器と受信機で構成された火災報知設備」であり、「第1防災情報基盤システム及び第2の防災情報基盤システム」が「防災情報プラットフォームとして機能する防災情報基盤をインターネット等の公衆回線汎用通信網を介して通信接続可能なクラウドサーバを用いて二重化されて構築されたシステム」であり、「連携先システム」が「第1防災情報基盤システム及び第2の防災情報基盤システムと通信接続する連携先情報管理システムと、利用者端末と、試験端末と、検出された通信所要時間に基づき、防災情報連携システムの動作状態を判断する監視先端末とを備えるシステム」である場合について説明する。
【0051】
[実施形態の具体的内容]
防災情報連携システムの実施形態について、より詳細に説明する。その内容については以下のように分けて説明する。
a. 防災情報連携システム
b. 火災報知設備
c. 2重化された防災情報基盤システム
d. 連携先情報管理システム
e. 防災情報の連携動作
e1.通信経路
e2.2重化された防災情報の連携動作
f.システムの動作状態の監視
f1.擬似火災報知設備
f2.第1通信経路と第2通信経路
f3.試験端末
f4.通信所要時間に基づくシステムの動作状態の判断
g.システムの動作状態の監視動作
h.本発明の変形例
【0052】
[a.防災情報連携システム]
本発明による防災情報連携システムについて説明する。当該説明にあっては、防災情報連携システムの実施形態を示した図1を参照する。
【0053】
図1に示すように、防災情報連携システムは、通常運用において、防災情報を連携するための構成として、実設備として機能する火災報知設備10、2重化された第1防災情報基盤システム12(12-1)と第2防災情報基盤システム12(12-2)、連携先システムが備える連携先情報管理システム14及び利用者端末16が設けられる。
【0054】
また、火災報知設備10は、公衆回線汎用通信網18を経由して2重化された第1防災情報基盤システム12(12-1)と第2防災情報基盤システム12(12-2)に通信接続される。第1防災情報基盤システム12(12-1)と第2防災情報基盤システム12(12-2)は、一方がメインシステムとして稼働(動作)し、他方がサブシステムとして稼働(動作)する。ここでは、初期設定として第1防災情報基盤システム12(12-1)がメインシステムとして稼働し、第2防災情報基盤システム12(12-2)がサブシステムとして稼働するものとして説明する。
【0055】
2重化された第1防災情報基盤システム12(12-1)と第2防災情報基盤システム12(12-2)は、例えば地震や風水害等の影響を同時に受ける等、システムを構築するための装置、機器等が同時に障害を引き起こすことを回避するために、地理的に離れた遠隔地にシステムを構築するための装置、機器等が設置されており、例えば一方のシステムを構築するための装置、機器等は東京地区に設置され、他方のシステムを構築するための装置、機器等は大阪地区に設置されている。尚、防災情報の連携が途切れないようにすることができるのであれば、第1防災情報基盤システム12(12-1)と第2防災情報基盤システム12(12-2)をどのように構築するかは任意である。
【0056】
メインシステムとして稼働している第1防災情報基盤システム12(12-1)は、公衆回線汎用通信網18を経由して連携先情報管理システム14に通信接続される。サブシステムとして稼働している第2防災情報基盤システム12(12-2)は、メインシステムとして稼働している第1防災情報基盤システム12(12-1)の異常に備えて待機状態(活性待機状態)にあり、公衆回線汎用通信網18を経由して連携先情報管理システム14に通信接続されていない。
【0057】
また、第1防災情報基盤システム12(12-1)と第2防災情報基盤システム12(12-2)は公衆回線汎用通信網18を経由して通信接続し、死活監視のために、例えば互いに死活信号を定期的に送信し、相手方から死活信号を受信している場合には相手方は正常と判断し、相手方から死活信号が所定回数連続して得られない場合には相手方の異常と判断し、サブシステムがメインシステムの異常と判断した場合には、サブシステムがメインシステムに昇格して、防災情報基盤システムとしての機能を維持する縮退動作を行う。
【0058】
公衆回線汎用通信網18は、不特定多数の利用者によって共有して利用される回線による通信網であり、例えば申込みを行った一般利用者がログインIDとパスワードの設定により、コンピュータ等の各種の機器や装置を通信接続して利用することを可能とする通信網であり、インターネット、有線LAN、無線LAN、携帯電話網などの1又は複数の通信網で構成される公知の通信網である。
【0059】
連携先情報管理システム14は、公衆回線汎用通信網18を介して連携される防災情報を受け取るために、例えば企業等の事業体が保有するシステムであり、その事業体に所属する従業員等の関係者の保有する利用者端末16に対して必要な防災情報を含む各種情報を提供するために、その事業体専用の専用通信網20を経由して利用者端末16と通信接続される。専用通信網20は、連携先情報管理システム14を保有する事業体の従業員等の関係者のみにログインIDとパスワードを発行して限られた人に利用を可能とするイントラネット等の通信網であり、例えば構内LAN等公知の通信網である。
【0060】
また、防災情報連携システムは、通常運用中に防災情報連携システムの動作状態の監視を行うため、火災報知設備10に対応して擬似設備として機能する擬似火災報知設備100が設けられ、連携先システムに利用端末16に対応して試験端末110、監視先端末112が設けられている。
【0061】
また、防災情報連携システムに設けられた火災報知設備10、第1防災情報基盤システム12(12-1)、第2防災情報基盤システム12(12-2)、連携先情報管理システム14、利用者端末16、擬似火災報知設備100、試験端末110及び監視先端末112の各々は、相互に時刻情報を一致させるため、公知のタイムサーバ等との通信により時刻同期されている。
【0062】
[b.火災報知設備]
続いて、火災報知設備10について説明する。図1に示すように、火災報知設備10は、受信機22、火災感知器24及び通信部26を備える。火災報知設備10は、監視対象となる、例えば第1防災情報基盤システム12(12-1)、第2防災情報基盤システム12(12-2)を保有する企業等の事業体のビルや事業所等の施設に設置され、火災感知器24は、監視対象の監視領域に設置され、当該監視領域で発生した火災を検知して火災信号を受信機22に送信する。ここで、「監視領域」とは、火災報知設備によって火災を監視する領域であり、監視対象が施設である場合には施設内の部屋、廊下、階段、エレベータホール等、或いは建物外の駐車場等の任意の領域を含む概念である。
【0063】
受信機22は、火災感知器24から火災信号を受信して火災警報や障害の発生を検知して障害警報を、例えば音と表示により報知すると共に、火災や障害等のイベントを示すイベント内容情報と当該イベント内容情報を一意に識別するためのイベントIDを生成し、イベント内容情報とイベントIDを含むイベント信号を通信部26に出力する。尚、以下の説明では、火災報知設備10(受信機22)から送信するイベント信号を「連携元イベント信号」という場合がある。
【0064】
ここで、イベント内容情報は、イベント内容及びイベント発生場所を含む情報である。イベント内容は、発生したイベントの種別を示すものであり、火災、火災復旧、障害等を含むものである。イベント発生場所は、例えば火災を検出した火災感知器24の設置場所であり、連携先の利用者端末16で容易に発生場所が把握できるようにするため、例えば「1階01号室」、「1階エレベータホール」等の地区名が用いられる。尚、複数の監視対象に対応して火災報知設備が設置される場合には、イベント発生場所に各火災報知設備の設置場所を含むようにしても良く、火災感知器24の設置場所の情報は含まず、各火災報知設備の設置場所の情報をイベント発生場所としても良い。
【0065】
通信部26は、受信機22から出力された連携元イベント信号を、公衆回線汎用通信網18を経由して第1防災情報基盤システム12(12-1)と第2防災情報基盤システム12(12-2)の2個所に送信するものである。通信部26の構成や機能は任意であるが、例えばルータ機能を備えたWi-Fi(登録商標)通信装置等の無線LAN通信装置が設けられ、同時に2カ所にイベント信号を送信するためにマルチキャスト又は同報通信方式として知られた公知の通信を行うものである。
【0066】
[c.2重化された防災情報基盤システム]
続いて、2重化された防災情報基盤システムについて説明する。図1に示すように、第1防災情報基盤システム12(12-1)は、制御部28(28-1)、通信部30(30-1)、記憶部32(32-1)及び操作表示部34(34-1)を備える。
【0067】
第1防災情報基盤システム12(12-1)は、具体的には、CPU,メモリ、各種入出力ポートを備えたコンピュータ回路、ハードデイスク等の外部記憶装置、キーボード、ディスプレイ等を備えたコンピュータ装置を用いて構築され、防災情報の管理を行う防災情報基盤して機能するものであり、例えばクラウドサーバとして防災情報の管理を行う防災情報基盤して機能する防災情報プラットフォームをクラウドサーバ上に構築したものである。
【0068】
また、制御部28(28-1)は、通信部30(30-1)を介して火災報知設備10から送信された連携元イベント信号を受信した場合に、当該連携元イベント信号に含まれるイベント内容情報及びイベントIDを時刻情報に紐づけて記憶部32(32-1)に記憶してイベント履歴情報として蓄積する制御を行う。
【0069】
また、初期設定によりメインシステムとして稼働している第1防災情報基盤システム12(12-1)の制御部28(28-1)は、火災報知設備10から連携元イベント信号を受信して記憶部32(32-1)に蓄積したイベント履歴情報からイベント内容情報とイベントIDを含むイベント信号を生成し、通信部30(30-1)から連携先情報管理システム14へ送信させる制御を行う。
【0070】
また、第2防災情報基盤システム12(12-2)は、制御部28(28-2)、通信部30(30-2)、記憶部32(32-2)及び操作表示部34(34-2)で構成され、基本的には第1防災情報基盤システム12(12-1)と同様であり、その説明は省略する。
【0071】
相違点として、初期設定によりサブシステムとして稼働している第2防災情報基盤システム12(12-1)の制御部28(28-2)は、火災報知設備10から連携元イベント信号を受信して記憶部32(32-1)に蓄積したイベント履歴情報からイベント内容情報とイベントIDを含むイベント信号を生成して連携先情報管理システム14へ送信させる制御は行わない。
【0072】
また、制御部28(28-1),28(28-2)は、例えば所定の周期ごとに、互いに死活信号を送信させ、相手方から死活信号を受信した場合には相手方は正常と判断するが、所定回数連続して死活信号が得られない場合には、相手方の異常と判断し、所定の縮退制御を行う。縮退制御とは、サブシステムであるがメインシステムに昇格してメインシステムとして稼働する制御である。
【0073】
尚、以下の説明では、第1防災情報基盤システム12(12-1)、及び第1防災情報基盤システム12(12-2)から送信するイベント信号を「連携先イベント信号」という場合がある。
【0074】
[d.連携先情報管理システム]
続いて、連携先情報管理システムについて説明する。図1に示すように、連携先情報管理システム14は、制御部36、通信部38、記憶部40及び操作表示部42を備える。具体的には、CPU,メモリ、各種入出力ポートを備えたコンピュータ回路、ハードデイスク等の外部記憶装置、キーボード、ディスプレイ等を備えたコンピュータ装置を用いて構築され、連携された防災情報を管理する機能を備えるものであり、例えばサーバとして企業業務の全般について情報の運用管理を行う機能を備えるものであり、その機能の一部として連携された防災情報の管理機能が含まれるものである。
【0075】
連携先情報管理システム14に対して専用通信網20を介して利用者端末16が通信接続される。利用者端末16の種類や機能は任意であるが、例えば、タブレット端末、スマートフォン等の携帯端末、パーソナルコンピュータ等が含まれる。
【0076】
連携先情報管理システム14の処理を行うサーバの実体や利用者端末16、試験端末110が同じ建物内に存在する場合については、専用通信網20は当該建物内に存在するLAN(ローカルエリアネットワーク)で構成することが好適である。
【0077】
しかし、連携先情報管理システム14が複数の建物に対してサービスを提供する等、連携先情報管理システム14が利用者端末16、試験端末110と同一の建物内に存在しない場合等を考慮して、専用通信網20の少なくとも一部に公衆回線汎用通信網を用いるようにしても良い。
【0078】
[e.防災情報の連携動作]
続いて、防災情報連携システムの防災情報の連携動作について説明する。当該説明にあっては、防災情報の連携における通信経路を示した図2、及び防災情報連携システムの防災情報の連携動作を示したタイムチャートである図3を参照する。
【0079】
(e1.通信経路)
まず、防災情報の連携における通信経路について説明する。図2に示すように、メインシステムとして稼働している第1防災情報基盤システム12(12-1)側については、火災報知設備10から第1防災情報基盤システム12(12-1)及び連携先情報管理システム14を経由して利用者端末16に至る通信経路が形成され、当該通信経路を介して火災報知設備10で発生したイベント内容情報及びそのイベントIDを含むイベント信号が利用者端末16まで送信され、利用者端末16でイベント情報が受信表示される。
【0080】
これに対して、サブシステムとして稼働している第2防災情報基盤システム12(12-2)側については、火災報知設備10から第2防災情報基盤システム12(12-2)に至る通信経路が形成され、当該通信経路を介して第1防災情報基盤システム12(12-1)に送信されたイベント信号と同じイベント信号が第2防災情報基盤システム12(12-2)に送信されるが、第2防災情報基盤システム12(12-2)で受信されてイベント履歴情報として蓄積されるに留まり、連携先情報管理システム14を経由して利用者16端末まで送信されることはない。
【0081】
(e2.2重化された防災情報の連携動作)
次に、2重化された防災情報の連携動作について説明する。図3に示すように、第1防災情報基盤システム12(12-1)がメインシステムに設定され(ステップS1)、第2防災情報基盤システム12(12-2)がサブシステムに設定され(ステップS2)、それぞれ動作している。尚、この場合の動作は、第1防災情報基盤システム12(12-1)と第2防災情報基盤システム12(12-2)の制御部28(28-1),28(28-2)の制御による動作である。
【0082】
イベントが発生し(ステップS3)、火災報知設備1が連携元イベント信号を第1防災情報基盤システム12(12-1)及び第2防災情報基盤システム12(12-2)へ送信する(ステップS4)。
【0083】
ここで、連携元イベント信号は、イベント内容情報とイベントIDを含むものであるから、例えばイベントとして監視対象となる施設の1階のエレベータホールで火災が発生したとすると、「〇〇時〇〇分 1階エレベータホールで火災発生」というイベント内容情報と、当該イベント内容情報を一意に識別するためのイベントIDとして例えば「ID001」を含む。
【0084】
そして、連携元イベント信号を受信した第1防災情報基盤システム12(12-1)は、受信した連携元イベント信号に含まれるイベント内容情報及びイベントIDを取得し、取得したイベント内容情報及びイベントIDと、受信した時刻を示す時刻情報とを相互に関連付けて、記憶部32(32-1)にイベント履歴情報として記憶させて蓄積する。続いて、第1防災情報基盤システム12(12-1)は、蓄積したイベント履歴情報からイベント内容情報及びイベントIDを含む連携先イベント信号を生成して連携先情報管理システム14へ送信し、利用者端末16にイベント情報を受信表示させる(ステップS5,S7,S8)。
【0085】
一方、連携元イベント信号を受信した第2防災情報基盤システム12(12-2)は、受信した連携元イベント信号に含まれるイベント内容情報及びイベントIDを取得し、取得したイベント内容情報及びイベントIDと、受信した時刻を示す時刻情報とを相互に関連付けて、記憶部32(32-2)にイベント履歴情報として記憶して蓄積するが、連携先イベント信号を生成して連携先情報管理サーバ14へ送信する動作は行わない(ステップS6)。
【0086】
ここで、第1防災情報基盤システム12(12-1)及び第2防災情報基盤システム12(12-2)による相手方の監視動作を説明する。
【0087】
第1防災情報基盤システム12(12-1)及び第2防災情報基盤システム12(12-2)が、相手方の動作が正常か異常かを判断するために、相互に死活信号を所定の周期、例えば1分周期で繰り返し送信し、死活信号の受信が続くことにより、相手方のシステムが正常に動作していると判断する。これに対し死活信号を所定回数連続して受信しなかった場合には、相手方の動作が異常と判断する。
【0088】
メインシステムとして動作している第1防災情報基盤システム12(12-1)で異常が発生したとすると(ステップS9)、サブシステムとして動作している第2防災情報基盤システム12(12-2)は、第1防災情報基盤システム12(12-1)から死活信号を受信しなくなることから、メインシステムの異常を判断し(ステップS10)、縮退制御を行う。
【0089】
縮退制御として、具体的には、第2防災情報基盤システム12(12-2)が、第1防災情報基盤システム12(12-1)に対し自己がメインシステムとして動作することの承認を要求するための昇格要求を送信し、メインシステム側から所定時間以内に応答がない場合、或いは承認する旨の応答があった場合、メインシステムに昇格設定し、メインシステムとしての動作を開始する(ステップS11)。
【0090】
この場合、第1防災情報基盤システム12(12-1)で異常が発生してから第2防災情報基盤システム12(12-2)がメインシステムとしての動作を開始するまでの間、メインシステムとして動作していた第1防災情報基盤システム12(12-1)から連携先情報管理システム14へ連携先イベント信号が送信されていない可能性があることから、第2防災情報基盤システム12(12-2)は死活信号を受信しなくなったときからメインシステムとしての動作を開始するまでの間に受信した連携元イベント信号に含まれるイベント内容情報及びイベントIDを記憶部32(32-1)に蓄積されたイベント履歴情報から特定し、特定したイベント内容情報及びイベントIDを含む連携先イベント信号を生成して連携先情報管理システム14へ送信し、利用者端末16でイベント情報を受信表示させる。
【0091】
第2防災情報基盤システム12(12-2)がメインシステムに昇格した後に、イベントが発生し(ステップS13)、火災報知設備10から連携元イベント信号が送信されると(ステップS14)、第2防災情報基盤システム12(12-2)は、受信した連携元イベント信号に含まれるイベント内容情報及びイベントIDを取得し、取得したイベント内容情報及びイベントIDと、受信した時刻を示す時刻情報とを相互に関連付けて、記憶部32(32-2)にイベント履歴情報として記憶させて蓄積すると共に、イベント内容情報及びイベントIDを含む連携先イベント信号を生成して連携先情報管理システム14へ送信し、利用者端末16でイベント情報を受信表示させる(ステップS15,S16,S17)。
【0092】
一方、異常が発生した第1防災情報基盤システム12(12-1)については、連携動作を停止し、発生した異常を修復するための異常修復動作を行う(ステップS12)。尚、自己による異常修復動作で復旧できない場合には、人による必要な修理等が行われて復旧することになる。
【0093】
第1防災情報基盤システム12(12-1)が異常修復動作又は修理等により復旧すると(ステップS18)、第2防災情報基盤システム12(12-2)が死活信号を受信しなくなったときから再び死活信号を受信するまでの間に火災報知設備10から送信された連携元イベント信号に対応したイベント履歴情報については、第1防災情報基盤システム12(12-1)の記憶部32(32-1)に蓄積されていない可能性があることから、第2防災情報基盤システム12(12-2)は、第1防災情報基盤システム12(12-1)に蓄積されていない可能性のあるイベント履歴情報を特定し、特定したイベント内容情報及びイベントIDを含むイベント信号を生成して第1防災情報基盤システム12(12-1)へ送信し、両者のイベント履歴情報を一致させる蓄積同期(ミラーリング)を行う(ステップS19,S20)。
【0094】
イベント履歴情報の同期後、第1防災情報基盤システム12(12-1)は、サブシステムに降格設定して連携動作を開始する(ステップS21)。
【0095】
つまり、その後は、第1防災情報基盤システム12(12-1)がサブシステムとして動作し、第2防災情報基盤システム12(12-2)がメインシステムとして動作することとなり、イベントが発生し、火災報知設備10の受信機22から連携元イベント信号が送信されると、第2防災情報基盤システム12(12-2)が受信した連携元イベント信号に基づき記憶部32(32-2)にイベント履歴情報を蓄積すると共に、イベント内容情報及びイベントIDを含む連携先イベント信号を生成して連携先情報管理システム14へ送信し、利用者端末16にイベント情報を受信表示させ、第1防災情報基盤システム12(12-1)は受信した連携元イベント信号に基づき記憶部32(32-1)にイベント履歴情報を蓄積するが、連携先情報管理サーバ14へ送信する動作は行わない(ステップS22~S27)。
【0096】
[f.システムの動作状態の監視]
続いて、防災情報連携システムの動作状態を監視する監視動作について説明する。防災情報連携システムの動作状態を監視するため、図1に示したように、防災情報連携システムは、火災報知設備10に対応して擬似設備として機能する擬似火災報知設備100が設けられ、連携先システムに利用端末16に対応して試験端末110、監視先端末112が設けられている。
【0097】
(f1.擬似火災報知設備)
まず、擬似火災報知設備について説明する。擬似火災報知設備100は、実設備としての火災報知設備10に対応して設けられたものであり、擬似受信機102と送信部104を備える。
【0098】
擬似受信機102は、システムの動作状態を監視するために所定のシステム監視タイミング、例えば1分周期で第1擬似イベント信号と第2擬似イベント信号を通信部104に順次出力する機能を備える。ここで、第1擬似イベント信号は、イベント内容情報と当該イベント内容情報を一意に識別するためのイベントIDを含む火災報知設備10から送信されるイベント信号と同じ形式の信号であり、イベント内容情報として「擬似イベント」である旨の情報と、イベントIDとして当該擬似イベントを一意に識別するための第1イベントIDを含んでいる。第2擬似イベント信号も第1擬似イベント信号と同様であるが、イベントIDとして第2イベントIDを含んでいる点で相違している。
【0099】
また、擬似受信機102は、第1擬似イベント信号を送信したときに第1送信時刻を検出して保持し、第2擬似イベント信号を送信したときに第2送信時刻を検出して保持する。更に、擬似受信機102は、第1擬似イベント信号及び第2擬似イベント信号を送信した後の所定のタイミングで、第1イベントIDと第1送信時刻を関連付けた情報、及び第2送信時刻と第2イベントIDを関連付けた情報を含む送信時刻情報を生成し、当該送信時刻情報を第1防災情報基盤システム12(12-1)、第2防災情報基盤システム12(12-2)及び連携先情報管理システム14を経由しない通信経路により、試験端末110まで送信する制御を行う。送信時刻情報の送信として、例えば擬似受信機102は、送信時刻情報をテキスト情報として添付したメールを作成し、メール通信経路を介して試験端末110へ当該送信時刻情報を送信する制御を行う。
【0100】
また、擬似受信機102には火災感知器24は接続されていなく、火災等のイベントを監視する機能や報知する機能はなく、擬似的にイベントが発生したとして疑似イベント信号を送信する機能がプログラムの実行により実現するコンピュータ回路で構成される。また、擬似受信機102は当該機能をコンピュータによる実行で実現するプロクラムということもできる。
【0101】
通信部104は、擬似受信機102から出力された第1擬似イベント信号を第1防災情報基盤システム12(12-1)へ送信し、続いて、擬似受信機102から出力された第2擬似イベント信号を第2防災情報基盤システム12(12-2)へ送信するものである。通信部104の構成や機能は任意であるが、実設備としての火災報知設備10に設けられた通信部26に可能な限り近しい通信環境を確保することが、擬似イベント信号を用いたシステム全体の通信状態の監視の精度を高めることから、通信部26と同じ通信装置、例えばルータ機能を備えたWi-Fi(登録商標)通信装置等の無線LAN通信装置が設けられ、特定の1カ所にイベント信号を送信するためのユニキャストとして知られた公知の通信を行うものである。尚、通信部26と通信部104は、1つの通信部として構成しても良い。
【0102】
(f2.第1通信経路と第2通信経路)
次に、システムの動作状態の監視に用いられる第1通信経路と第2通信経路について説明する。当該説明にあっては、システムの動作状態の監視のための通信経路を示した図4を参照する。尚、図4(A)は第1通信経路を示し、図4(B)は第2通信経路を示す。
【0103】
図4(A)に示すように、第1通信経路は、擬似火災報知設備100から送信される第1擬似イベント信号を第1防災情報基盤システム12(12-1)及び連携先情報管理システム14を経由して試験端末110まで送信する通信経路となる。また、図4(B)に示すように、第2通信経路は、擬似火災報知設備100から送信される第2擬似イベント信号を第2防災情報基盤システム12(12-2)及び連携先情報管理システム14を経由して試験端末110まで送信する通信経路となる。
【0104】
ここで、メインシステムとして動作しているシステムを第1防災情報基盤システム12(12-1)とし、サブシステムとして動作しているシステムを第2防災情報基盤システム12(12-2)とした場合には、第1防災情報基盤システム12(12-1)は、火災報知設備10から受信した連携元イベント信号に基づきイベント内容情報とイベントIDをイベント履歴情報として蓄積すると共に、イベント内容情報とイベントIDを含む連携先イベント信号を生成して連携先情報管理システム14に送信して利用者端末16にイベント情報を受信表示させており、擬似火災報知設備100から第1擬似イベント信号が送信された場合についても、同様にイベント信号の受信、イベント履歴情報の蓄積及びイベント信号の送信を行うことから、メインシステムとしての動作と変わりなく、疑似イベント信号を受信した場合にもそのまま動作する。
【0105】
このため、第1防災情報基盤システム12(12-1)は、第1擬似イベント信号を受信すると、第1擬似イベント信号に基づき「擬似イベント」を示すイベント内容情報と第1イベントIDをイベント履歴情報として蓄積すると共に、当該イベント内容情報及び第1イベントIDを含む第1擬似イベント信号を生成して連携先情報管理システム14を経由して試験端末110まで送信する。
【0106】
これに対して、第2防災情報基盤システム12(12-2)は、火災報知設備10から受信した連携元イベント信号に基づきイベント内容情報とイベントIDをイベント履歴情報として蓄積するが、連携先イベント信号を生成して連携先情報管理システム14へ送信する動作を行っておらず、サブシステムとしての動作では第2擬似イベント信号を連携先情報管理システム14側へ送信することができない。
【0107】
そこで、サブシステムとして動作する第2防災情報基盤システム12(12-2)については、第2擬似イベント信号を受信した場合には、イベント内容情報と第2疑似イベントIDをイベント履歴情報として蓄積する際に、当該第2擬似イベント信号に含まれるイベント内容情報が「擬似イベント」であることを識別し、サブシステムとしての機能を一時的に解除することで、受信した第2擬似イベント信号と同じ「擬似イベント」を示すイベント内容情報及び第2擬似イベントIDを含む第2擬似イベント信号を生成し、連携先情報管理システム14を経由して試験端末110まで送信するように動作を変更する。
【0108】
また、連携先防災管理システム14は、第1擬似イベント信号又は第2擬似イベント信号を受信した場合に、予め送信先として登録した試験端末110に対して受信した信号と同じ第1擬似イベント信号又は第2擬似イベント信号を送信する制御を行う。また、連携先防災管理システム14は、メール通信経路48により送信時刻情報をテキスト情報として添付したメールを受信した場合に、予め送信先として登録した試験端末110に対して受信した送信時刻情報を送信する制御を行う。
【0109】
(f3.試験端末)
次に、連携先情報管理システム14に通信接続される利用者端末16に対応して設けられた試験端末110について説明する。当該説明にあっては、試験端末110で検出される通信所要時間を含む通信情報をリスト形式で示した図5を参照する。
【0110】
試験端末110は、図4に示した第1通信経路44を経由して受信された第1擬似イベント信号の通信状態、及び第2通信経路46を経由して受信された第2擬似イベント信号の通信状態を検出するものであり、通信状態として、例えば第1擬似イベント信号の第1通信所要時間及び第2擬似イベント信号の第2通信所要時間を検出する。
【0111】
通信所要時間を検出するため、試験端末110は、図4(A)の第1通信経路44を介して第1擬似イベント信号を受信したときの第1受信時刻を当該受信した第1疑似イベント信号に含まれる第1イベントIDと合わせて検出すると共に、メール通信経路48を介して受信した送信時刻情報から当該受信した第1疑似イベント信号に含まれる第1イベントIDに対応した第1送信時刻を検出し、検出した第1受信時刻と第1送信時刻から、
(第1受信時刻)-(第1送信時刻)
として第1通信経路44の第1通信所要時間を検出する。
【0112】
また、試験端末110は、図4(B)の第2通信経路46を介して第2擬似イベント信号を受信したときの第2受信時刻を当該受信した第2疑似イベント信号に含まれる第2イベントIDと合わせて検出すると共に、メール通信経路48を介して受信した送信時刻情報から当該受信した第2疑似イベント信号に含まれる第2イベントIDに対応した第2送信時刻を検出し、検出した第2受信時刻と第2送信時刻から、
(第2受信時刻)-(第2送信時刻)
として第2通信経路46の第2通信所要時間を検出する。尚、実施形態では、所定回数の通信所要時間の平均値であると平均通信所要時間を検出する。
【0113】
図5は、試験端末110により検出された通信所要時間を含む通信情報50の一例であり、通信情報50は、第1イベントIDに対応して検出された第1送信時刻と第1受信時刻、及びこれらに基づき検出された第1通信所要時間とその平均第1通信所要時間Tave1を含んでいる。
【0114】
また、第2通信経路についても同様であり、通信情報50は、第2イベントIDに対応して検出された第2送信時刻と第2受信時刻、及びこれらに基づき検出された第2通信所要時間とその平均第2通信所要時間Tave2を含んでいる。
【0115】
(f4.通信所要時間に基づくシステムの動作状態の判断)
次に、通信所要時間に基づくシステムの動作状態の判断について説明する。当該説明にあっては、通信所要時間に基づき判断されたシステムの動作状態の判断情報52を示した図6を参照する。
【0116】
実施形態では、図1に示した試験端末110により検出された通信情報50を、例えば監視先端末112へ公衆回線汎用通信網18を経由して送信し、監視先端末112でシステムの動作状態を判断するようにしている。
【0117】
防災情報連携システムの動作状態として、通信所要時間が長くなるほど異常の度合いが高まることから、監視先端末112は、第1通信所要時間及び第2通信所要時間の各々を所定の許容時間条件と比較して防災情報連携システムの動作状態が正常か異常かを判断する。ここで、所定の許容時間条件は任意であるが、例えば通信所要時間が所定の許容時間未満又は当該許容時間以下であれば許容時間条件を充足するとして許容される。
【0118】
具体的には、監視先端末112は、図6に示すように、第1通信所要時間が所定の許容時間条件を充足せず、第2通信所要時間が所定の許容時間条件を充足する場合には、第1防災情報基盤システム12(12-1)の異常と判断する。
【0119】
また、監視先端末112は、第1通信所要時間が所定の許容時間条件を充足し、第2通信経路が所定の通信所要時間を許容時間条件を充足しない場合には、第2防災情報基盤システム12(12-2)の異常と判断する。
【0120】
また、監視先端末112は、第1通信経路の第1通信所要時間及び第2通信経路の第2通信所要時間の両方が許容時間条件を充足しない場合には、第1防災情報基盤システム12(12-1)及び第2防災情報基盤システム12(12-2)の両方が異常である場合や、連携先情報管理システム14が異常である場合等、複数の異常パターンが考えられるため、異常箇所を具体的に特定することなく防災情報連携システムの異常と判断する。尚、異常の可能性がある全ての箇所を候補として上げるようにしても良い。
【0121】
ここで、試験端末110は、利用者端末16の種別に対応した端末としている。例えば利用者端末16としてスマートフォン、タブレット、パーソナルコンピュータが利用されている場合、試験端末110として、スマートフォン、タブレット、パーソナルコンピュータが準備され、それぞれの試験端末110で第1通信所要時間と第2所要時間を検出し、各試験端末110で検出された第1通信所要時間と第2所要時間に基づき、防災情報連携システムの動作状態が判断される。
【0122】
また、監視先端末112による防災情報連携システムの動作状態の判断でメインシステムとして動作している何れか一方の防災情報基盤システムの異常が判断された場合には、異常が判断された防災情報基盤システムをメインシステムとしての動作を停止させ、サブシステムとして動作している他方の防災情報基盤システムをメインシステムに昇格して動作させる。
【0123】
[g.システムの動作状態の監視動作]
防災情報連携システムの動作状態の監視動作について説明する。当該説明にあっては、防災情報連携システムの動作状態の監視動作を示したタイムチャートである図7を参照する。尚、第1防災情報基盤システム12(12-1)がメインシステムとして動作し、第2防災情報基盤システム12(12-2)がサブシステムとして動作しているものと説明する。
【0124】
図7に示すように、防災情報連携システムの通常運用中に所定のシステム監視タイミングで、まず擬似火災報知設備100は、第1擬似イベント信号を第1防災情報基盤システム12(12-1)へ送信し、第1防災情報基盤システム12(12-1)は、第1擬似イベント信号を受信して、第1擬似イベント信号に含まれるイベント内容情報と第1イベントIDをイベント履歴情報として蓄積し、同じイベント内容情報と第1イベントIDを含む第1擬似イベント信号を生成し、連携先情報管理システム14を経由して試験端末110へ送信し、試験端末110は疑似イベント情報を受信表示して、第1擬似イベント信号を受信した第1表示時刻を検出する(ステップS101~S105)。
【0125】
また、擬似火災報知設備100は、第1擬似イベント信号を送信すると、第1擬似イベント信号を送信した第1送信時刻を検出すると共に、送信した第1疑似イベント信号の第1イベントIDと第1送信時刻を関連付ける(ステップS106、S107)。
【0126】
続いて、擬似火災報知設備100は、第2擬似イベント信号を第2防災情報基盤システム12(12-2)へ送信し、第2防災情報基盤システム12(12-2)は、第2擬似イベント信号を受信して、第2擬似イベント信号に含まれるイベント内容情報と第2イベントIDをイベント履歴情報として蓄積し、イベント内容情報の識別に基づきサブシステムの動作を一時的に解除し、同じイベント内容情報と第2イベントIDを含む第2擬似イベント信号を生成し、連携先情報管理システム14を経由して試験端末110へ送信し、試験端末110は疑似イベント情報を受信表示して、第2擬似イベント信号を受信した第2受信表示時刻を検出する(ステップS108~S112)。
【0127】
また、擬似火災報知設備100は、第2擬似イベント信号を送信すると、第2擬似イベント信号を送信した第2送信時刻を検出すると共に、送信した第2疑似イベント信号の第1イベントIDと第2送信時刻を関連付ける(ステップS113、S114)。
【0128】
続いて、擬似火災報知設備100は、第1イベントIDと第1送信時刻を関連付けた情報、及び第2イベントIDと第2送信時刻を関連付けた情報を含む送信時刻情報のテキストデータを生成してメール添付により試験端末110へメール送信し、試験端末110は、擬似受信機102からのメールを受信し、第1通信経路の第1通信所要時間及び第2通信経路の第2通信所要時間を検出し、検出結果となる通信情報50を監視先端末112へ送信してシステムの動作状態を判断させる(ステップS115~S119)。尚、第1通信所要時間及び第2通信所要時間は、所定回数の通信所要時間の平均値として検出するため、ステップS101~S116の処理が複数回行われるが。
その処理は省略している。
【0129】
そして、監視先端末112の判断結果に対応して、第1防災情報基盤システム12(12-1)及び第2防災情報基盤システム12(12-2)で、例えばサブシステムがメインシステムに昇格して動作を開始する等の処理が行われる(ステップS120、ステップS121)。
【0130】
[h.本発明の変形例]
最後に、本発明による防災情報連携システムの変形例について説明する。本発明の防災情報連携システムは、上記の実施形態以外に、以下の変形を含むものである。
【0131】
(複数の実設備の連携)
上記の実施形態は、1の火災報知設備の防災情報を2重化された第1防災情報基盤システムと第2防災情報基盤システムを経由して1の連携先情報管理システムの利用者端末に連携させる防災情報連携システムを例にとっているが、複数の異なる事業体の火災報知設備を2重化された第1防災情報基盤システムと第2防災情報基盤システムを経由して、複数の異なる事業体の連携先情報管理システムの利用者端末に連携させる防災情報連携システムであっても良い。
【0132】
(システムの動作状態の判断)
上記の実施形態は、通信状態として擬似イベント信号による第1通信経路と第2通信経路の通信所要時間を検出してシステムの動作状態を判断しているが、通信状態の検出は、これに限定されず任意であり、例えば擬似イベント信号による第1通信経路と第2通信経路の通信速度(bps)を検出してシステムの動作状態を判断しても良い。具体的には、擬似イベント信号のデータ量(ビット数)は一義的に決まっていることから、検出した通信所要時間と通信データ量に基づき通信速度(bps)を検出してシステムの動作状態を判断する。また、通信所要時間や通信速度以外として、例えばエラーレート等を検出してシステムの動作状態を判断しても良い。
【0133】
(システムの動作状態の監視)
上記の実施形態は、試験端末110で通信状態として通信所要時間を検出し、監視先端末112が検出結果に基づきシステムの動作状態を判断することで、システムの動作状態を監視しているが、通信状態の検出を試験端末110以外が行い、システムの動作状態の判断を監視先端末112以外が行うことを妨げない。例えば、監視先端末112を設けずに、システムの動作状態の判断を試験端末110で行うようにしても良く、連携先情報管理システム14が一括してこれらの処理を行うものとして構成し、試験端末110と監視先端末112とを設けないものとしても良い。また、試験端末110が監視先端末112を兼ねるように構成されても良い。
【0134】
(その他)
また、本発明は、その目的と利点を損なうことのない適宜の変形を含み、更に上記の実施形態に示した数値による限定は受けない。
【符号の説明】
【0135】
10:火災報知設備
12(12-1):第1防災情報基盤システム
12(12-2):第2防災情報基盤システム
14:連携先情報管理システム
16:利用者端末
18:公衆回線汎用通信網
20:専用通信網
22:受信機
24:火災感知器
26,30(30-1)、30(30-2)、38、104:通信部
28(28-1)、28(28-2)、36:制御部
32(32-1)、32(32-2)、40:記憶部
34(34-1)、34(34-2)、42:操作表示部
44:第1通信経路
46:第2通信経路
48:メール通信経路
50:通信情報
52:判断情報
100:擬似火災報知設備
102:擬似受信機
110:試験端末
112:監視先端末
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7